関連審決 | 訂正2005-39221 無効2004-80202 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成18行ケ10208審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18行ケ10325審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18行ケ10509審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成19行ケ10147審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成17行ケ10815審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | インターネット / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 周知技術 / 慣用技術 / 技術常識 / 先行技術 / 明確性 / 発明が明確 / 特許出願日 / 技術的意義 / 置き換え / 置換 / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 加工 / 交換 / 設定登録 / 訂正審判 / 新規事項追加(新規事項の追加) / 誤訳の訂正 / 訂正の目的 / 請求の範囲 / 減縮 / 拡張 / 変更 / 釈明 / 独立特許要件 / 訂正明細書 / 要旨変更 / 合理的な理由 / |
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元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
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事件 |
平成
18年
(行ケ)
10278号
審決取消請求事件
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原告株式会社アーランド 訴訟代理人弁護士松村信夫,塩田千恵子,坂本優 訴訟代理人弁理士鍬田充生,阪中浩 被告特許庁長官中嶋誠 指定代理 人多喜鉄雄,板橋一隆,斉藤信人,徳永英男,田中敬規 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2007/05/15 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1原告の求めた裁判「特許庁が訂正2005-39221号事件について平成18年5月15日にした審決を取り消す 」との判決。。 第2事案の概要本件は,後記本件発明の特許権者である原告が,訂正審判の請求をしたところ,請求は成り立たないとの審決がされたため,同審決の取消しを求めた事案である。 1特許庁における手続の経緯( )本件特許(甲第10号証)1特許権者:株式会社アーランド(原告)発明の名称: レンジフードのフィルタ装置 (以下「本件発明」という ) 「 」 。 特許出願日:平成10年4月27日(特願平10-117489号)設定登録日:平成16年9月17日特許番号:特許第3597700号( )本件手続2本件特許につき,無効審判の請求がされ(無効2004-80202号 ,原告)は,上記審判手続において,平成17年1月28日に特許請求の範囲及び明細書の訂正を請求(同年3月24日訂正請求書の手続補正)したが,特許庁は,同年8月2日,訂正請求を認めないとした上 「特許第3597700号の請求項1〜3に ,係る発明についての特許を無効とする 」との審決をした。本件訂正審判請求は, 。 上記無効審決の取消訴訟(知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10678号)の係属中になされたものである。 審判請求日:平成17年12月2日(訂正2005-39221号 (甲第28)号証)手続補正日:平成18年3月29日(以下「本件手続補正」という )。 審決日:平成18年5月15日審決の結論: 本件審判の請求は,成り立たない 」 「 。 審決謄本送達日:平成18年5月25日2特許請求の範囲の記載請求項の数は,訂正審判請求前の明細書(特許時の明細書)に記載されたもの,訂正審判請求書添付の訂正明細書記載のもの,本件手続補正書添付の訂正明細書記載のものとも3個である(以下,訂正審判請求前の明細書を「本件明細書」と,訂正審判請求書添付の訂正明細書を「訂正明細書」と,本件手続補正書添付の訂正明細書を「補正明細書」という。。)( )本件明細書記載の特許請求の範囲1「 請求項1】レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設されている金 【属製フィルタを覆うためのフィルタ装置であって,前記金属製フィルタのフロント面をカバー可能なフィルタと,このフィルタの周縁部に取り付けられ,かつフィルタを,前記フロント面で緊張させて前記金属製フィルタに取付けるためのリング状伸縮性紐状体とで構成されており,前記金属製フィルタは剛性で方形プレート状に形成されているとともに,上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり,前記フィルタは,不織布で構成されているとともに,金属製フィルタのフロント面を被包可能なサイズを有し,かつ前記金属製フィルタに対応した相似形状の平面方形状に形成されており,金属製フィルタの裏面での紐状体の収縮により,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて,金属製フィルタに対してフィルタを取り付け,レンジフードの換気口に装着できるフィルタ装置。 【請求項2】レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設され,かつ剛性で方形プレート状に形成された複数の金属製フィルタ要素で構成された金属製フィルタを覆うためのフィルタ装置であって,前記複数の金属製フィルタ要素の全体又は個別の金属製フィルタ要素を被包可能なフィルタと,このフィルタの周縁部を収縮可能な紐状体とで構成されており,前記紐状体は,収縮率5〜60%の伸縮性紐状体で形成されている請求項1記載のフィルタ装置。 【請求項3】金属製フィルタ又はフィルタ要素のフロント面よりもサイズが大きく,平面方形状のフィルタのうち4つのコーナー部と各辺に対応する周縁部の少な,, くとも一箇所との挿通孔に伸縮性紐状体が挿通しており フィルタの取付状態では金属製フィルタ又はフィルタ要素の裏面において伸縮性紐状体を収縮させ,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させる請求項1又は2記載のフィルタ装置 」。 ( )訂正明細書記載の特許請求の範囲(甲第28号証。下線部が訂正箇所であ2る )。 「 請求項1】レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設され,かつ複 【数の金属製フィルタ要素で構成された金属製フィルタを覆うためのフィルタ装置であって,個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバー可能なフィルタと,このフィルタの周縁部に取り付けられ,かつフィルタを,前記フロント面で緊張させて前記個別の金属製フィルタ要素に取付けるためのリング状伸縮性紐状体とで構成されており,前記金属製フィルタ要素は剛性で方形プレート状に形成されているとともに,上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり,前記フィルタは,不織布で構成されているとともに,個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し,かつ前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されており,個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて,個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け,レンジフードの排気口に装着でき,排気口への装着状態において,紐状体が,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置するフィルタ装置。 【請求項2】レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設され,かつ剛性で方形プレート状に形成された複数の金属製フィルタ要素で構成された金属製フィルタを覆うためのフィルタ装置であって,前記個別の金属製フィルタ要素を被包可能なフィルタと,このフィルタの周縁部を収縮可能な紐状体とで構成されており,前記紐状体は,収縮率5〜60%の伸縮性紐状体で形成されている請求項1記載のフィルタ装置。 【請求項3】個別の金属製フィルタ要素のフロント面よりもサイズが大きく,平面方形状のフィルタのうち4つのコーナー部と各辺に対応する周縁部の少なくとも一箇所との挿通孔に伸縮性紐状体が挿通しており,フィルタの取付状態では,個別の金属製フィルタ要素の裏面において伸縮性紐状体を収縮させ,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させる請求項1又は2記載のフィルタ装置 」。 ( )補正明細書記載の特許請求の範囲(甲第29号証。下線部が補正後の訂正3箇所である )。 「 請求項1】レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設され,かつ複 【数の金属製フィルタ要素で構成された金属製フィルタを覆うためのフィルタ装置であって,個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバー可能なフィルタと,このフィルタの周縁部に取り付けられ,かつフィルタを,前記フロント面で緊張させて前記個別の金属製フィルタ要素に取付けるためのリング状伸縮性紐状体とで構成されており,前記個別の金属製フィルタ要素は剛性で方形プレート状に形成されているとともに,上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり,前記フィルタは,不織布で構成されているとともに,個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応して通気する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し,かつ前記個別の金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されており,個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて,個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け,レンジフードの排気口に装着でき,排気口への装着状態において,紐状体が,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応して通気する部分を部分的に覆う内方域に位置するフィルタ装置。 【請求項2】レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設され,かつ剛性で方形プレート状に形成された複数の金属製フィルタ要素で構成された金属製フィルタを覆うためのフィルタ装置であって,前記個別の金属製フィルタ要素を被包可能なフィルタと,このフィルタの周縁部を収縮可能な紐状体とで構成されており,前記紐状体は,収縮率5〜60%の伸縮性紐状体で形成されている請求項1記載のフィルタ装置。 【請求項3】個別の金属製フィルタ要素のフロント面よりもサイズが大きく,平面方形状のフィルタのうち4つのコーナー部と各辺に対応する周縁部の少なくとも一箇所との挿通孔に伸縮性紐状体が挿通しており,フィルタの取付状態では,個別の金属製フィルタ要素の裏面において伸縮性紐状体を収縮させ,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させる請求項1又は2記載のフィルタ装置 」。 3審決の理由の要点審決の理由は,( )本件手続補正に係る補正事項は,訂正審判請求書の要旨を変1更するものであって,特許法131条の2第1項の規定を満たさないので,本件手続補正を認めることはできないとし,( )本件訂正審判請求に係る訂正は,本件明2細書を訂正明細書に記載のとおりに訂正するもの(以下,この訂正を「本件訂正」という )であるとした上,(ア)本件訂正は,@特許請求の範囲の減縮,誤記又は 。 誤訳の訂正,明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しない訂正事項,A願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でなされたものではない訂正事項(新規事項の追加 ,B実質上特許請求の範 )囲を拡張する訂正事項をそれぞれ含み,同法126条1項ただし書,同条3項,同条4項の要件を満たさないとともに,(イ)本件訂正に係る請求項1の発明が,(a)同法36条6項2号の要件を満たさず (b)さらに @下記引用例5記載の発明 以 ,, (下「引用例5発明」という )並びに下記引用例1〜4,6〜16記載の各発明及 。 び周知慣用技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができ,A下記引用例3記載の発明並びに下記引用例1,2,4〜17記載の各発明及び周知慣用技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,同法29条2項により特許を受けることができないので,特許出願の際,独立して特許を受けることができず,同法126条5項の要件を満たさないので,本件訂正審判請求を認めることはできない,というものである(以下,上記( )の(イ)の(a)の判断を「明確2性判断 ,同(b)の@の判断を「容易想到性判断1 ,同Aの判断を「容易想到性判 」 」断2」といい,本件訂正に係る請求項1の発明を「訂正発明」という。。)なお,原告は,審判において,下記甲第1〜第9号証を提出した(本訴における証拠番号は 「審判甲第4号証」が「本訴甲第4号証の1」であるほかは,審判の ,証拠番号と共通である。。)引用例1:実願昭60-146162号(実開昭62-56117号)のマイクロフィルム(本訴甲第11号証)引用例2:実公平6-11056号公報(本訴甲第12号証)引用例3:実願平3-31109号(実開平4-118119号)のマイクロフィルム(本訴甲第13号証)引用例4:実願昭55-127345号(実開昭57-50631号)のマイクロフィルム(本訴甲第14号証)引用例5:実願平1-69332号(実開平3-10136号)のマイクロフィルム(本訴甲第15号証)引用例6:実願昭54-127351号(実開昭56-46728号)のマイクロフィルム(本訴甲第16号証)引用例7:実願昭57-9656号(実開昭58-111821号)のマイクロフィルム(本訴甲第17号証)引用例8:実公昭54-45019号公報(本訴甲第18号証)引用例9:実願昭57-120218号(実開昭59-25029号)のマイクロフィルム(本訴甲第19号証)引用例10:特開平6-137622号公報(本訴甲第20号証)引用例11:実願平4-248号 実開平5-54941号 のCD-ROM 本 ( )(訴甲第21号証)引用例12:実願平2-122840号(実開平4-78918号)のマイクロフィルム(本訴甲第22号証)引用例13:実願平2-8325号(実開平3-98922号)のマイクロフィルム(本訴甲第23号証)引用例14:特開平9-72589号公報(本訴甲第24号証)引用例15:特開平8-145428号公報(本訴甲第25号証)引用例16:特開平9-192428号公報(本訴甲第26号証)引用例17:1989年1月25日株式会社工業調査会発行の桜内雄二郎編「工業材料活用ハンドブック」第142〜145頁(本訴甲第27号証)甲第1号証:2001年(平成13年)11月20日株式会社小学館発行の「日本国語大辞典第二版第11巻」457頁甲第2号証:1996年(平成8年)9月30日株式会社日刊工業新聞社発行の「マグローヒル科学技術用語大辞典第3版」第534頁甲第3号証:2006年(平成18年)3月13日インターネット検索に係る三菱電機株式会社のホームページ「商品紹介デルタキャッチ形レンジフードファンについて」甲第4号証:住山孝治著「レンジフードの最新動向と課題」と題する論文甲第4号証の2:キッチン・バス工業会の「40年のあゆみサステナブル社会に貢献する工業会活動」と題する記念誌(表紙及び1〜3頁)1965-2005甲第5号証: 」と 「 TYPES OF COMMERCIAL KITCHEN VENTILATION HOODS題する文書甲第6号証:”」と題する文書 「Gaggenau 36Coanda Wall Mount Hood甲第7号証:原告従業員作成の平成18年3月24日付け「試験成績証明書」「」, 甲第8号証:平成4年4月25日株式会社大修館書店発行の 大漢語林 177178,1261頁甲第9号証:2006年(平成18年)3月13日インターネット検索に係る株式会社N.TECのホームページ「ガゲナウAH600-790レンジフード」審決の理由のうち,本件手続補正に対する判断の部分及び本件訂正に対する判断の部分は,以下のとおりである(略称及び引用する章の符号につき,本判決で指定したものに改めた部分がある。。)( )本件手続補正について1ア補正事項「平成18年3月29日付け手続補正書は,審判請求書に添付された訂正明細書を,当該補正書で補正される審判請求書に添付された補正明細書に記載のとおり補正しようとするものであり,この補正は,次の補正事項を含むものである。 ・・・・・・・・【補正事項a】本件明細書の請求項1における,『・・・,前記金属製フィルタは剛性で方形プレート状に形成されているとともに,上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり ・・・』につき,,『・・・,前記金属製フィルタ要素は剛性で方形プレート状に形成されているとともに,上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり ・・・』に訂正するものを, ,『, , ・・・ 前記個別の金属製フィルタ要素は剛性で方形プレート状に形成されているとともに上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり ・・・』に補正する。 ,【補正事項b】本件明細書の請求項1における,『,,, , ・・・ 前記フィルタは ・・・ 金属製フィルタのフロント面を被包可能なサイズを有し・・・』につき,『・・・,前記フィルタは ・・・,個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし,個 ,別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し ・・・』に訂正するものを, ,『・・・,前記フィルタは ・・・,個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし,個 ,別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応して通気する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し ・・・』に補正する。 ,【補正事項c】本件明細書の請求項1における,『・・・,前記フィルタは ・・・,かつ前記金属製フィルタに対応した相似形状の平面方形 ,状に形成されており ・・・』につき,,『・・・,前記フィルタは ・・・,かつ前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面 ,方形状に形成されており ・・・』に訂正するものを, ,『・・・,前記フィルタは ・・・,かつ前記個別の金属製フィルタ要素に対応した相似形状 ,の平面方形状に形成されており ・・・』に補正する。 ,【訂正事項d】本件明細書の請求項1における,『・・・,金属製フィルタの裏面での紐状体の収縮により ・・・,金属製フィルタに対して ,フィルタを取り付け,レンジフードの換気口に装着できるフィルタ装置 』につき,。 『・・・,個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により ・・・,個別の金属製 ,フィルタ要素に対してフィルタを取り付け,レンジフードの排気口に装着でき,排気口への装,, , , 着状態において 紐状体が 個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち 紐状体の収縮に対応しかつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置するフィルタ装置 』に訂正するものを, 。 『・・・,個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により ・・・,個別の金属製 ,フィルタ要素に対してフィルタを取り付け,レンジフードの排気口に装着でき,排気口への装,, , , 着状態において 紐状体が 個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち 紐状体の収縮に対応しかつフィルタが排気口のうち前記要素に対応して通気する部分を部分的に覆う内方域に位置するフィルタ装置 』に補正する 」。。 イ各補正事項に対する判断(ア)補正事項aについて「補正事項aは,具体的には,訂正明細書の請求項1における『前記金属製フィルタ要素は剛性で方形プレート状に形成されているとともに,上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり』との記載につき,その『前記金属製フィルタ要素』を『前記個別の金属製フィルタ要素』に補正するものである。 これによれば 『剛性で方形プレート状に形成されているとともに,上端部が排気口の上部 ,に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり』とされる物の対象物が 『前記金属製フィルタ要素』から『前記個別の金属製フ ,ィルタ要素』に置き換わったことになる。 更に,その訂正内容につき検討すると,当該補正事項aは 『前記金属製フィルタ要素 ,す , 』なわち,少なくとも単一の金属製フィルタ要素が上記の剛性で方形プレート状で挿入可能な形態を具備するとしていたところ,当該補正事項aにより 『個別の金属製フィルタ要素 ,すな , 』わち,それぞれの又は全ての金属製フィルタ要素が,上記の剛性で方形プレート状で挿入可能な形態を具備すると,実質上,置き換えられたものであるということができるものであり,また,当該補正事項は,少なくとも,そのように置き換える態様を含むものである。 してみれば,当該補正事項aは,訂正事項を変更し,更には,訂正内容を変更するので,訂正請求書の要旨を変更するといえる 」。 (イ)補正事項bについて「補正事項bは,具体的には,訂正明細書の請求項1における『前記フィルタは ・・・,か,つ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで・・・被包』を 『前,記フィルタは ・・・,かつ排気口のうち前記要素に対応して通気する部分を部分的に覆う内 ,方域に及んで・・・被包』に補正するものである。 これによれば,当該訂正事項bは,フィルタが関連するところの『排気口のうち前記要素に』 『 』 。 対応する部分 を 排気口のうち前記要素に対応して通気する部分 に置き換えるものである更に,その訂正内容につき検討すると,補正事項bでは,当該部分が『通気する』ことを別途付加し 『対応』するところの対象が『部分』から『通気する』又は『通気する部分』に変 ,移させるものである。 そうであれば,当該補正事項bは,訂正事項を変更し,更には,訂正内容を変更するので,訂正請求書の要旨を変更するといえる 」。 (ウ)補正事項cについて「補正事項cは,具体的には,訂正明細書の請求項1におけるフィルタの形状につき 『前記,金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に』を 『前記個別の金属製フィルタ要 ,素に対応した相似形状の平面方形状に』に補正するものである。 これによれば フィルタの形状が前記金属製フィルタ要素 に対応した相似形状から前 ,,『 』 ,『記個別の金属製フィルタ要素』に対応した相似形状に置き換わったことになる。 更に,その訂正の内容を検討すると,当該補正事項cは,フィルタの形状が 『前記金属製,フィルタ要素 ,すなわち,少なくとも一の金属製フィルタ要素に対応して相似形状であると 』していたところ,当該補正事項cにより,フィルタの形状が 『個別の金属製フィルタ要素 , , 』すなわち,それぞれの金属製フィルタ要素に対応して相似形状であると,実質上,置き換えられたものであるということができるものであり,また,当該補正事項は,少なくとも,そのように置き換える態様を含むものである。 してみれば,当該補正事項cは,訂正事項を変更し,更には,訂正内容を変更するので,訂正請求書の要旨を変更するといえる 」。 (エ)補正事項dについて「補正事項dは,具体的には,訂正明細書の請求項1における『・・・,かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置する・・・』を 『・・・,か,つフィルタが排気口のうち前記要素に対応して通気する部分を部分的に覆う内方域に位置する・・・』に補正するものである。 これによれば,当該訂正事項dは,上記訂正事項bと同じように,フィルタが関連するところの『排気口のうち前記要素に対応する部分』を『排気口のうち前記要素に対応して通気する部分』に置き換え,更に,その訂正内容につき検討すると,当該部分が『通気する』ことを別途付加し 『対応』するところの対象が『部分』から『通気する』又は『通気する部分』に変 ,移させるものである。 そうであれば,当該補正事項dは,訂正事項を変更し,更には,訂正内容を変更するので,訂正請求書の要旨を変更するといえる 」。 ウ本件手続補正についての審決の結論「上記補正事項a〜dは,平成17年12月2日付け本件審判請求書の要旨を変更するものであって,特許法第131条の2第1項の規定を満たさないものであり,したがって,当該補正事項を含む平成18年3月29日付け手続補正は認めることはできない 」。 ( )本件訂正に対する判断2ア本件訂正に係る訂正事項「本件訂正審判請求は,本件明細書を,訂正明細書に記載のとおりに訂正することを求めるものであって,その訂正は,次の訂正イを含むものである。 《訂正事項イ》本件明細書の請求項1における『 請求項1】レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設されている金属製フィルタ 【を覆うためのフィルタ装置であって,前記金属製フィルタのフロント面をカバー可能なフィルタと,このフィルタの周縁部に取り付けられ,かつフィルタを,前記フロント面で緊張させて前記金属製フィルタに取付けるためのリング状伸縮性紐状体とで構成されており,前記金属製フィルタは剛性で方形プレート状に形成されているとともに,上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり,前記フィルタは,不織布で構成されているとともに,金属製フィルタのフロント面を被包可能なサイズを有し,かつ前記金属製フィルタに対応した相似形状の平面方形状に形成されており,金属製フィルタの裏面での紐状体の収縮により,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて,金属製フィルタに対してフィルタを取り付け,レンジフードの換気口に装着できるフィルタ装置 』を,。 『 請求項1】レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設され,かつ複数の金属製フ 【ィルタ要素で構成された金属製フィルタを覆うためのフィルタ装置であって,個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバー可能なフィルタと,このフィルタの周縁部に取り付けられ,かつフィルタを,前記フロント面で緊張させて前記個別の金属製フィルタ要素に取付けるためのリング状伸縮性紐状体とで構成されており,前記金属製フィルタ要素は剛性で方形プレート状に形成されているとともに,上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり,前記フィルタは,不織布で構成されているとともに,個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し,かつ前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されており,個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて,個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け,レンジフードの排気口に装着でき,排気口への装着状態において,紐状体が,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置するフィルタ装置 』に訂正する。。 上記の訂正事項イは,具体的には,請求項1における,訂正事項(イ-1 『レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設されている金属製 ), ,, フィルタを覆うためのフィルタ装置であって 前記金属製フィルタの・・・ かつフィルタを前記フロント面で緊張させて前記金属製フィルタに取付けるためのリング状伸縮性紐状体とで構成されており 』を 『レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設され,かつ複数の ,,金属製フィルタ要素で構成された金属製フィルタを覆うためのフィルタ装置であって,個別の金属製フィルタ要素の・・・,かつフィルタを,前記フロント面で緊張させて前記個別の金属製フィルタ要素に取付けるためのリング状伸縮性紐状体とで構成されており 』に訂正し,,訂正事項(イ-2 『前記金属製フィルタは剛性で方形プレート状に形成されているととも )に,上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり 』を 『前記金属製フィルタ要素は剛性で方形プレート ,,状に形成されているとともに,上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり 』に訂正し,,訂正事項(イ-3 『前記フィルターは ・・・金属製フィルタのフロント面を被包可能なサ ),イズを有し 』を 『前記フィルターは ・・・個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバ ,,,ーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し 』に訂正し,,訂正事項(イ-4 『かつ前記金属製フィルタに対応した相似形状の平面方形状に形成され )ており 』を 『かつ前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されてお ,,り 』に訂正し,,訂正事項(イ-5 『金属製フィルタの裏面での紐状体の収縮により,前記フロント面のフ )ィルタに緊張力又は牽引力を作用させて,金属製フィルタに対してフィルタを取り付け,レンジフードの換気口に装着できる』を 『個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮に ,より,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて,個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け,レンジフードの排気口に装着でき 』に訂正し,,訂正事項(イ-6 『フィルタ装置 』を 『排気口への装着状態において,紐状体が,個別の )。,金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつフィルタが排気口のうち前記。』 。」 要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置するフィルタ装置に訂正するものであるイ訂正の目的の適否等についての判断(ア)訂正の目的の適否についてa訂正事項(イ-1)について「当該訂正事項(イ-1)は,具体的には,前段の『金属製フィルタ』を『複数の金属製フィ』,,『』() ルタ要素で構成された金属製フィルタ と訂正し また 後段の 金属製フィルタ2箇所『 』 ,,() を 個別の金属製フィルタ要素 と訂正するものであり このように 当該訂正事項 イ-1は,金属製フィルタにつきそれが複数の金属フィルタ要素からなることを限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 したがって,訂正事項(イ-1)は,特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する目的に該当する 」。 b訂正事項(イ-2)について「当該訂正事項(イ-2)は,訂正前の当該特定事項にあっては,金属製フィルタが概念的には複数の金属製フィルタ(要素)を含み,その金属製フィルタが,剛性で方形プレート状に形成され,上下端部が排気口の溝ないしはスリットに挿入可能であったところ,訂正後の当該特定事項にあっては,金属製フィルタ要素のみが規定され 『個別』の金属製フィルタ要素と規 ,定されないのであるから,複数の金属製フィルタ要素のうち一部の金属製フィルタは,剛性ではなく,方形プレート状ではなく,或いは,上下端部が溝ないしはスリットに挿入可能でない態様(例えば,側端部で別異の係止手段により係止可能)を含み得るものである。 ,, , このように 訂正前のものでは 金属製フィルタが複数の金属製フィルタからなる場合にはその全てが剛性で方形プレート状に形成され,上下端部が排気口の溝ないしはスリットに挿入可能であったところ,訂正後のものではそれを満たさない態様を含むことになるものである。 なお,訂正後の請求項1の記載では 『個別の金属製フィルタ要素』と『金属製フィルタ要 ,素』とが使い分けられているものである。 そうであれば,上記(イ-2)の訂正は発明を拡張させることから,その訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当せず,誤記又は誤訳の訂正,ないしは,明りょうでない記載の釈明を目的とするいずれのものにも該当しない 」。 c訂正事項(イ-4)について「当該訂正事項(イ-4)は,訂正前の当該特定事項にあっては,金属製フィルタが概念的には複数の金属製フィルタ(要素)を含み,フィルタが,全て,金属フィルタに対応した相似形状の平面方形状であったところ,訂正後の当該特定事項にあっては 『個別の』金属製フィル ,タ要素と規定されないことから,一部のフィルタが相似形状の平面方形状を呈さないところの態様が含まれることになる。 このように,訂正後のものは,訂正前の特定事項を満たさない態様を含むことになる。 なお,訂正後の請求項1の記載では 『個別の金属製フィルタ要素』と『金属製フィルタ要 ,素』とが使い分けられているものである。 そうであれば,当該訂正事項(イ-4)の訂正は発明を拡張させることから,その訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当せず,誤記又は誤訳の訂正,ないしは,明りょうでない記載の釈明を目的とするいずれのものにも該当しない 」。 d訂正の目的の適否の結論「以上のとおり,上記訂正事項(イ-2)及び(イ-4)は,特許請求の範囲の減縮,誤記又は誤訳の訂正,ないしは,明りょうでない記載の釈明の何れを目的とするものにも該当せず,当該訂正事項を含む本件審判請求の訂正は特許法第126条第1項ただし書きに規定される要件を満たし得ない 」。 (イ)新規事項の追加についてa訂正事項(イ-3)について当該訂正事項 イ-3 は 具体的には 請求項1におけるフィルターのサイズにつき金 「() ,, ,『属製フィルタのフロント面を被包可能な』ものを 『個別の金属製フィルタ要素のフロント面 ,をカバーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能な』ものに訂正するものである。 このように,当該訂正事項においては 『排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に ,覆う内方域に及んで』個別の金属製フィルタ要素を被包可能なとのことを請求項1の記載に付加するものである。 ところが,上記『排気口のうち前記要素に対応する部分』とはどのような部分をいうのか全く不明となっている。 すなわち,上記『排気口』はレンジフードの排気口を意味し,上記『要素』は金属製フィルタ要素を意味するものとしても,要素は全て排気口内に存在するものであるから,当該排気口と要素との関係から規定しようとする内容を把握することなどできない。 また,当該特定事項を除く請求項1に記載の発明では,レンジフードの排気口は複数存在するとは規定されないところ,上記特定事項は『排気口のうち・・・』と記載されるのであるから本件フィルタ装置においては排気口が複数存在することを前提としているようにも解されるものであり,当該特定事項は,請求項1の他の記載並びに当分野の技術常識とは整合しないものである。 更に,当該『排気口のうち前記要素に対応する部分』との特定事項が 『個別の金属製フィ ,ルタ要素の裏面のうち 』の特定事項の後段に記載されることからみて,上記『排気口のうち ,前記要素に対応する部分』とは,金属製フィルタ要素の裏面につき規定したものであると解したとしても,その場合も,当該特定事項を除く請求項1に記載の発明では,レンジフードの排気口に装着された金属製フィルタ要素の裏面にはフィルターと紐状体とが存在するだけであって,要素に対応する部分は見いだせず,金属製フィルタ要素の裏面につき,排気口のうち『要素に対応する部分』ないしは『要素に対応しない部分』とは,どのような部分であるか特定することなどできるものではない。 したがって 『排気口のうち前記要素に対応する部分』との箇所を特定することはできない ,ものである。 なお,甲第1及び8号証の記載をみても当該特定事項の意味するところが明らかになるものでもない。 そうであれば,当該訂正により付加しようとする特定事項は不明瞭な事項を含むという外はなく,そのように不明瞭なものを含む特定事項の付加が,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でなされたといえるものではない。 なお,当該訂正事項のうち 『排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域 ,に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能な』が 『フィルタ(ないしは紐状体)が,金 ,属製フィルタ要素におけるその裏面側の内方域を部分的に被包可能な』と訂正するものであると仮定しても,その特定事項は願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載される事項から,自明なこととして導き出せない。すなわち 『フィルタが内方域を部分的に被包』 ,とは『フィルタが内方域を完全に全部被包』する以外の形態の全ての被包の形態を包含するものであるところ,特許明細書又は図面では 『フィルタ2は ・・・金属製フィルタをカバー又 ,,は被包する (段落)及び『フィルタ2は,各金属製フィルタ要素・・・をカバー又は被 』0012包可能な広さを有している(段落)と記載され,その第1図及び3図ではフィルタが金 。』 0014属製フィルタの裏面の特定領域を覆う例が示され,かつ,紐状体が収縮する等の構成を備えているとしても,それらのことからフィルタが内方域を『部分的に』被包するとの上記の広い概念を自明なこととして導き出すことができないし,また,そもそも 『内方域』との概念につ ,いても,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載されずまた自明なこととして導き出すことはできないものである。 したがって,当該訂正事項の訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたということができず,また,当該訂正部分が『フィルタ() 』 , ないしは紐状体 が・・・内方域を部分的に被包 することを意味すると仮定したとしてもその特定事項の訂正については願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたということができない 」。 b訂正事項(イ-6)について「上記aの箇所で記載した理由と同じ理由により,訂正事項(イ-6)の訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたということができない 」。 c新規事項の追加についての結論「以上のとおり,訂正事項(イ-3)及び(イ-6)の訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でなされたものではなく,当該訂正事項を含む本件審判請求の訂正は特許法第126条第3項に規定する要件を満たしていない 」。 (ウ)拡張・変更について「訂正事項(イ-2)及び(イ-4)は,上記(ア)で記載したとおり,特許請求の範囲の請求項1で記載される内容を拡張するものであり,これらの訂正事項を含む本件審判請求の訂正は特許法第126条第4項に規定する要件を満たしていない 」。 ウ独立特許要件について「平成17年12月2日付け審判請求書における本件訂正のうち,まず,特許明細書の請求項1の上記訂正事項(イ-1)の訂正は前記したとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,このように,請求項1に関する本件訂正は,特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる事項を目的としてなされたものを含むので,以下に,訂正後の請求項1に係る発明につき独立特許要件の有無を検討する 」。 (ア)特許法36条6項2号(明確性判断)について「上記イの(イ)における訂正事項(イ-3)及び(イ-6)の訂正についての箇所で記載したとおり,訂正後の請求項1における『前記フィルタは ・・・,個別の金属製フィルタ要素の ,フロント面をカバーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し 』及び『排気口への装着状態において,紐状体が,個別の金 ,属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置する』との記載が,不明又は不明瞭であり,その意味するところが一義的に定まらない。 そうすると,特許を受けようとする訂正後の請求項1の発明が明確であるということができない。 したがって,訂正後の請求項1に係る発明につき,本件特許出願が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない 」。 (イ)特許法29条2項についてa訂正発明「訂正明細書の請求項1には,以下のことが記載されている。 省略(上記2の( )の【請求項1】のとおり)2上記(ア)で記載したとおり,訂正発明の特定事項である『前記フィルタは ・・・,個別の,金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで,』『 , 個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し及び 排気口への装着状態において紐状体が,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置する』についての記載が不明ないしは不明瞭であって,その意味するところが一義的に定まらないものであるが,本願の願書に添付された図1〜3に記載された態様を規定しているものと仮定して,発明の進歩性の有無につき検討する 」。 b引用例の記載(a)引用例3の記載「 C-1 『 実用新案登録請求の範囲] ()[[請求項1]レンジフードの吸気口に配設された金網等からなるフィルター部材の下面に着脱自在に装着されるフィルターであって,一端に上記フィルター枠体の端部が収容可能な袋状端部を設けた不織布からなるシート状フィルターと,上記シート状フィルターの他端部をフィルター部材に巻き込み状態で係止させる係止部材とからなることを特徴とするレンジフード用フィルター装置(第2頁左欄第1〜9行) 。』(C-2 『ところで,この種のレンジフードは,例えば図5に示すように,該フードのハウ )ジングに回転排気ファンを内蔵させると共に,ハウジングの下面に,前記ファンに臨む排気口をガスレンジに向かって開口してあり,該吸気口にはガード用金網等のフィルター部材が,吸気口を囲む開口周壁を覆う状態で張設され,金網等のフィルター部材を介して排気されるようになっている。 しかしながら,レンジフードは頻繁に使用されるために,上記金網等のフィルター部材のみで使用すると頻繁に洗浄が必要になり,金網内部に付着した油を洗浄除去するのが面倒であると共に,洗浄を怠って放置しておくと付着し凝固した油が滴状となってガスレンジ上に落下するという不衛生な事態をまねく問題があった(第4頁第13〜23行) 。』(C-3 『一方,この様な問題を解決するものとして不織布によるフィルター面を形成した )アルミニューム枠体をレンジフードの吸気口に着脱自在に装着して,アルミニューム枠体ごと使い捨てにしたフィルターが提案されており,業界内で浅型と称されるレンジフードが利用されている。 [考案が解決しようとする課題]しかしながら,この提案のフィルターは,浅型のレンジフードには適用可能であるが,深型のレンジフードのフィルターに使用すると,深型のレンジフードはフード自体が大型であり,しかもデザインを重視した製品であるので,外部に露出して取り付けることはデザインを低下させるため,フードの内部に収める必要があり,フードの内面に沿って取り付けるのが面倒であった(第4頁下から第5行〜第5頁第6行) 。』(C-4 『本考案は,上記従来および提案のレンジフード用フィルターの問題に鑑みて成さ )れたものであり,深型のレンジフードの金網製フィルター部材を利用して取り付けることができる簡便でかつ安価な使い捨て式のレンジフード用フィルターを提供することを目的とするものであり,レンジフードの吸気口に配設された金網等からなるフィルター部材の下面に着脱自在に装着されるフィルターであって,一端に上記フィルター枠体の端部が収容可能な袋状端部を設けた不織布からなるシート状フィルターと,上記シート状フィルターの他端部をフィルター部材に巻き込み状態で係止させる係止部材とからなることを特徴とするレンジフード用フィルター装置である(第5頁第14〜22行) 。』(C-5 『なお,図1から図4に示した本考案のレンジフード用フィルター装置Aは,いず )れもシート状フィルター2を下面側にして図5に示すように,深型のレンジフードBの吸気口に,金網製のフィルター部材4とともにフード内面の係止金具等10を利用して着脱自在に係止させて使用される。 また,油煙の吸着によってシート状フィルター2が汚れると,金網製フィルター部材4をフード内面から一旦取り外してシート状フィルター2を除去し,ついで新たなシート状フィルタ, 。, ー2と係止部材3を前記フィルター部材4に装着して レンジフードに再び取り付ける なお油煙で汚れたシート状フィルター2は,不織布製の柔軟なものであるので小さく丸めて日常のゴミとともに廃棄することができる(第7頁下から第5行〜第8頁第6行 」 。』 )(b)引用例4の記載「 D-1 『キッチン用レンジフード換気扇の前面カバーのガード(金属製のさく)第3図を ()網袋(ナイロンネット)で包み込みネジ止めする事に依って本体の換気扇第2図及び換気扇をとり囲んでいる箱第1図eに油汚れ等をつきにくくする事を特徴とする(第1頁第4〜10 。』行)(D-2 『そこで本考案の網袋(ナイロンネット)使用のフィルターであるがガード第3図 )を網袋で包み込む事によって二重のフィルターとなり,しかもネットであるので排気力もおとさず,しかもネットが汚れを充分吸収して,換気扇への汚れを遮断出来る(第2頁第17行。』〜第3頁第2行 」)(c)引用例5の記載「 E-1 『実用新案登録請求の範囲 ()1.換気口に取付けられる換気扇カバーであって,該換気扇カバーが,フィルタと,該フィルタの周縁部に設けられ,かつ上記周縁部を収縮可能な紐状体とを有することを特徴とする換気扇カバー。 2.換気口に着脱自在に取付けられた長尺状支持部材により,請求項1記載の換気扇カバーが支持された状態で取付けられていることを特徴とする換気扇カバーの取付構造(第1頁第4。』〜13行)(E-2 『しかしながら,換気扇が取付けられた換気口は,効率的に換気するため,換気部 )の容積や換気量等に応じて種々の大きさに設定されている。例えば,家庭の台所用換気扇,レンジフード用換気扇や業務用換気扇等では,自ずから換気量が異なり,換気量に応じた大きさの換気口が必要である。従って,上記構造の換気扇カバーでは,大きさの異なる換気口に対処できず,多種類の換気扇カバーを用意する必要がある。また上記換気扇カバーは,その構造が複雑で,枠体等を必要とするため,コスト高となる。 上記の点に鑑み,ウーリーナイロン製の筒状の生地のうち一方の開口部を結束し,他方の開口部の周縁部を袋状とし,該袋状部にゴム紐を通した換気扇カバーが提案されている(実開昭59-25029号公報参照 。)一方,換気扇は,換気口の前面が遮蔽部材で遮蔽されたタイプの換気扇と,換気口の前面が遮蔽されていない開口状態のタイプの換気扇とに大別される。また前者のタイプの換気扇としては,汚れた羽根を遮蔽し,美観をよくするため,換気口の前面が美装パネル等の遮蔽部材で覆われ,該パネルの側方開口部から吸引する換気扇や,換気口の前面が横方向等に並設された格子部材からなる遮蔽部材で遮蔽された換気扇が知られている。しかしながら,このタイプの換気扇に前記従来の換気扇カバーを適用すると,結束部を有しているため,外観が著しく損なわれる。 , , また後者のタイプの換気扇に適用すると フィルタがナイロン製生地で形成されているため換気扇の吸引力により,換気扇カバーが換気扇に吸込まれ虞がある。従って,換気扇の羽根が損傷したり,モータの負荷が増大したり,故障したりする原因ともなり,排気が阻害される場。, ,。』 合がある さらには ナイロン製生地で形成されたフィルタは燃え易く 安全性が十分でない(第2頁第5行〜第3頁末行)(E-3 『本考案の目的は,上記問題点に鑑みてなされたものであり,換気口の大きさが異 )なっていても,容易に取付けることができる安価な換気扇カバーを提供することにある。 また本考案の他の目的は,換気扇の前面が遮蔽されているか否かに拘わらず,柔軟なフィルタであっても外観が良好で換気扇へ吸込まれることのない換気扇カバーの取付構造を提供することにある(第4頁第1〜8行) 。』(E-4 『上記構成の換気扇カバーによれば,フィルタの周縁部には,該周縁部を収縮可能 )な紐状体が設けられているため,換気口を換気扇カバーで被冠し ・・・紐状体を収縮性材料 ,で形成することにより,換気口の大きさが異なっていても換気扇カバーを容易に取付けることができる(第4頁第15〜末行) 。』(E-5 『換気扇カバーは,フィルタ(1)と,該フィルタ(1)の周縁部に設けられた収 )縮性紐状体(2)とを有してい。より詳細には,フィルタ(1)は,その中央部を余した周縁部が全周に亘り内方へ折曲され,開口部(4)を有する袋状に形成されている(第5頁末行。』〜第6頁第4行)(E-6 『なお,フィルタ(1)は,通気性を有する材料で形成されていればよいが,難燃 )性不織布で形成されているのが好ましい(第6頁第4〜7行) 。』(E-7 『またフィルタ(1)のうち開口部(4)の周縁は,フィルタ(1)と固着又は縫 )合することにより,環状挿通孔(3)が形成されている。この環状挿通孔(3)には,フィルタ(1)の周縁部の長さよりも短く,収縮性を有する材料,例えば,合成ゴム等からなる環状の紐状体(2)が配されている(第6頁第14〜末行) 。』(E-8 『上記構造の換気扇カバーによると,換気口の前面が遮蔽部材等で遮蔽された換気 )扇に適用する場合には,紐状体(2)を伸張させ,開口部(4)を大きくした状態で,換気口(5)を換気扇カバーで被冠し,換気口(5)の枠部材(6)の端部等に紐状体(2)を掛止() , 。 した状態で紐状体 2 を解放することにより 換気扇カバーを容易に取付けることができるまた取付け状態においては,フィルタ(1)が上記遮蔽部材により支持されるので,柔軟なフィルタ(1)であっても,換気扇(7)の吸引力によりフィルタ(1)が換気口(5)に吸引されることがない。さらには,フィルタ(1)の中央部が取付状態において平面部(1a)を形成するので,換気口のフィルタ(1)は面一となり,美観を損ねることはない。なお,フィ()() , () ルタ 1 の大きさや紐状体 2 の伸縮力を調整することにより 異なる大きさの換気口 4にも容易に取付けることができる(第7頁第1〜17行) 。』(E-9 『また伸縮性紐状体(2)は,環状挿通孔(3)に収容された状態で配されている )必要はなく,縫合等の適宜の手段によりフィルタ(1)の周縁部と少なくとも部分的に一体に設けてもよい(第9頁第14〜17行 」 。』 )c容易想到性判断1(a)引用例5発明との対比「引用例5には,換気扇カバーとその取付構造に関する事項が記載されており,その具体的な構成につき検討する。 引用例5の前記摘示(E-1)では 『換気口に取付けられる換気扇カバーであって,該換 ,気扇カバーが,フィルタと,該フィルタの周縁部に設けられ,かつ上記周縁部を収縮可能な紐状体とを有する換気扇カバー』が示される。 そして,引用例5の前記摘示(E-2)で『レンジフード用換気扇・・・換気量に応じた大きさの換気口が必要である ・・・・多種類の換気扇カバーを用意する必要がある 』と記載さ 。 。 ,,() 『, , れ また 前記摘示 E-3 で 本考案の目的は 上記問題点に鑑みてなされたものであり換気口の大きさが異なっていても,容易に取付けることができる安価な換気扇カバーを提供することにある 』と記載され,これらの記載によれば,そこで記載される換気扇カバーはレン 。 ジフード用換気扇に取付けるものを含むものである。 ,,(), , また 当該フィルタは 前記摘示 E-6 によれば 不織布で形成されているものであり当該収縮可能な紐状体は,前記摘示(E-7)によれば,合成ゴム等からなる環状の外形を有するものである。 以上のことから,引用例5には,『換気口に取付けられるレンジフード用換気扇カバーであって,該換気扇カバーが,不織布からなるフィルタと,該フィルタの周縁部に設けられ,かつ上記周縁部を収縮可能な環状紐状体とを有するレンジフード用換気扇カバー』に関する発明(引用例5発明)が記載されているということができる。 そこで,訂正発明と引用例5発明とを対比する。 引用例5発明の『換気扇カバー『フィルタ『収縮可能な環状紐状体『換気口』は,訂 』,』, 』,正発明の『フィルタ装置『フィルタ『リング状伸縮性紐状体『排気口』にそれぞれ相当 』,』, 』,する。 よって,両者は,『フィルタ装置であって,フィルタと,このフィルタの周縁部に取り付けられるリング状伸縮性紐状体とで構成され,前記フィルタは,不織布で構成されている,レンジフードの排気口に装着できるフィルタ装置』である点で一致し,以下の点で相違する。 【相違点A】フィルタ装置が,訂正発明では 『レンジフードのフード内の排気口に着脱可能 ,に配設され,かつ複数の金属製フィルタ要素で構成された金属製フィルタを覆うための』ものであるのに対して,引用例5発明では,レンジフードの換気口に取り付けられるものの,上記事項が明示されない点【相違点B】当該フィルタが,訂正発明では 『個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカ ,バー可能な』ものであるのに対して,引用例5発明では,そのことが示されず,当該事項が明示されない点【相違点C】当該リング状伸縮性紐状体が,訂正発明では 『フィルタを,前記フロント面で ,緊張させて前記個別の金属製フィルタ要素に取付けるための』ものであるのに対し,引用例5発明では,金属製フィルタないしは金属製フィルタ要素が示されず,当該事項が明示されない点【相違点D】当該金属製フィルタ要素につき,訂正発明では 『前記金属製フィルタ要素は剛 ,性で方形プレート状に形成されているとともに,上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能である』とするの,, ,, に対して 引用例5発明では 金属製フィルタないしは金属製フィルタ要素が示されず またそのような使用法が示されず,当該事項が明示されない点【相違点E】当該フィルタにつき,訂正発明では 『前記フィルタは,個別の金属製フィルタ ,要素のフロント面をカバーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し,かつ前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されており,個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて,個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け,レンジフードの排気口に装着でき 』とするのに対して,引用例5発明 ,では,金属製フィルタないしは金属製フィルタ要素が示されず,当該事項が明示されない点【相違点F】当該フィルタ装置につき,訂正発明では 『排気口への装着状態において,紐状 ,体が,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置する』とするのに対して,引用例5発明では,金属製フィルタないしは金属製フィルタ要素が示されず,当該事項が明示されない点」(b)相違点についての判断「以下,上記相違点A〜Fに関する事項が容易に想到できるか否かにつき検討する。 【相違点A及びBについて】引用例5発明におけるレンジフード用換気扇カバーは,その換気扇の換気口に取付けられ,したがって,当該カバーのフィルタは換気口を覆うものであり,また,当該カバーは,その用途からみて明らかなように調理用排ガスを浄化するために用いられるものである。 一方,レンジフードの分野においては,フード内の排気口の位置に,剛性で四角形板状の金属フィルタ(訂正発明の『金属製フィルタ』及び『金属製フィルタ要素』に相当)を着脱自在に設け,かつ,その金属フィルタの表面側を不織布からなるフィルタで覆うことは,本件出願[,(, , 前の周知・慣用技術 必要ならば 引用例13 第1頁第5〜17行 第5頁第12〜16行第7頁下から第3行〜第8頁第7行,第9頁第9〜14行及び第5図及び第9図 ,引用例3)〔前記(C-4(C-5)及び図5 ,等の記載を参照]となっており,この周知・慣用技 ),〕術においては,そのフィルタは 『レンジフードのフード内の排気口の位置に着脱自在に設け ,られた剛性で四角形板状の金属フィルタにつき,その表面側を覆う』という使用形態で用いられるということができる。 そして,当該周知・慣用技術におけるフィルタは,引用例5発明のものと同じように,調理用排ガス処理機器の排出口部位において調理用排ガスを浄化する目的で用いられることは明白なことであり,また,それは,引用例5発明のものと同じように不織布という材料からなるものである。 更に,レンジフードの分野においては,フード内の排気口の位置に設けられる金属フィルタを複数個で構成することは,本件出願前における周知事項[必要ならば,引用例3〔前記(C-4(C-5)及び図5 ,引用例14(第2頁左欄第43行〜右欄第10行,5頁左欄第 ),〕, ),(,, 38〜42行 第5頁右欄第12〜14行及び図8引用例15 段落0014 00150017及び図2 ,等を参照]に外ならない。 )そうであれば,引用例5発明の『不織布からなるフィルタと,該フィルタの周縁部に設けられ,かつ上記周縁部を収縮可能な環状紐状体とを有するレンジフード用換気扇カバー』を,使,, 用目的及び使用材料が共通する上記周知・慣用のフィルタの使用形態で用いること すなわち『レンジフードのフード内の排気口の位置に着脱自在に設けられた剛性で四角形板状の金属フィルタにつき,その表面側を覆う』という使用形態で用いることに何等の困難も伴わないものであり,そして,その場合,上記周知事項の教示に従いフード内に当該金属製フィルタを複数個設けること,また,当該カバーで複数の金属フィルタを個別に覆うようにすることは当業者であれば直ちに想到することができるものである。 この場合,調理用排ガスを浄化する目的で当該カバーで当該金属フィルタを個別に覆うのであるから,当該カバーのフィルタにより金属フィルタのフロント面を個別にカバーするように,, , 覆うこと すなわち 個別の金属フィルタのフロント面をカバー可能なフィルタとすることは当業者であれば当然のこととしてなし得るものである。 以上のことから,引用例5発明の当該カバーを 『レンジフードのフード内の排気口に着脱 ,可能に配設された,複数の金属フィルタで構成された金属フィルタを覆う』ためのものとすること,引用例5発明のカバーのフィルタを 『個別の金属フィルターのフロント面をカバー可 ,能』なものとすることは当業者が直ちに想到できるものである。 してみれば,甲第5号証発明において,そのカバーを上記周知・慣用技術の使用形態で用い,, , ることにより また 上記の周知事項である金属フィルタを複数個で構成するとの教示に従い上記相違点A及びBに係る特定事項を具備するようにすることは当業者が直ちに想到できるものである。 【相違点Cについて】上記相違点A及びBについての箇所で説示したとおり,引用例5発明において,そのレンジフード用換気扇カバーを上記周知・慣用技術の使用形態で用いることにより,また,上記の周知事項である金属フィルタを複数個で構成するとの教示に従い,当該カバーで個別の金属フィルタのフロント面をカバーするように覆うことは当業者が容易に想到できるものである。 そして,引用例5発明の当該カバーは,その前記摘示(E-5)及び第1図の記載からみて明らかなように浅い袋状の外観を呈し,かつ,前記摘示(E-8)により,その袋の出口部に() , 設けられた伸縮可能な環状紐状体の収縮力により物品 換気口 に取り付けられるものでありそしてまた,上記したとおり金属フィルタは板状の外観を呈するものである。 してみれば,引用例5発明の袋状のカバーを板状の個別の金属フィルタに適用して金属フィルタのフロント面を覆うようにする場合には,必然的に,カバーのフィルタは金属フィルタのフロント面の全てを覆い,かつ,カバーの伸縮可能な環状紐状体は金属フィルタの裏面に配置され,これにより,更に必然的に,カバーのフィルタは個別の金属フィルタのフロント面を被包することになり,かつ,裏面に位置する環状紐状体の収縮力で,フィルタが,金属フィルタのフロント面で緊張されて,金属フィルタに個別に固定ないしは取り付けられるに至るものである。 また,そのようにすることは,引用例1に記載の技術からみても困難なく適宜実施できるものである。すなわち,引用例1において,筒織裁断物とその廻りに配置したゴム体からなるフィルター(実用新案登録請求の範囲を参照)を,ガードに取り付ける場合には,当該筒織裁断物をガードのフロント面の全面を完全に覆ったうえでその裏面に至るようになし,かつ,当該ゴムをガードの裏面に位置させる(第6及び7図を参照)ようにすることが,実質上,記載されるものであり,このように,繊維製フィルタ(筒織裁断物)と伸縮性紐状体(ゴム体)からなるフィルターを略板状物品(ガード)に取り付ける場合には,繊維性フィルタを,板状物品のフロント面の全面を完全に覆ったうえでその裏面にまで伸びるように配置し,かつ,伸縮性紐状体を板状物品の裏面に配置させる構造が教示されるのであるから,上記のように,引用例5発明のカバーを個別の金属フィルタに適用する場合には,カバーのフィルタが金属フィルタの前面を覆ったうえでその裏面に至るようになし,かつ,その環状紐状体を金属フィルタの裏面に配置させることとなし,これにより,カバーのフィルタは金属フィルタのフロント面を被包し,かつ,金属フィルタの裏面に位置する環状紐状体の収縮力で,フィルタを金属フィルタのフロント面で緊張させて金属フィルタに個別に固定ないしは取り付けるようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 このように,引用例5発明のレンジフード用換気扇カバーを上記周知・慣用技術の使用形態で用いることにより,また,上記の周知事項である金属フィルタを複数個で構成するとの教示に従い,個別の金属フィルタのフロント面をカバーするように覆うようにした場合において,その収縮可能な環状紐状体を 『フィルタを,前記フロント面で緊張させて前記個別の金属製 ,フィルタ要素に取付けるための』ものとすることは,自ずと導き出されるものであり,少なくとも,当業者が困難なく適宜なし得るものである。 してみれば,引用例5発明において,相違点A及びBに係る特定事項に加えて,上記相違点Cに係る特定事項を具備するようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 【相違点Dについて】上記相違点A及びBについての箇所で説示したとおり,引用例5発明において,そのレンジフード用換気扇カバーを上記周知・慣用技術の使用形態で用いることにより,また,上記の周知事項である金属フィルタを複数個で構成するとの教示に従い,当該カバーで個別の金属フィルタのフロント面をカバーするように覆うことは当業者が容易に想到できるものである。 この場合,当該周知・慣用の技術の使用形態においては,金属フィルタは剛性で四角形板状に形成されているものである。 そして,金属フィルタの如きフィルタ部材をレンジフードの排気口に設置する場合,排気口の上下部に設けた溝に挿入することにより同部材を取付けることは,本件出願前に周知・慣用事項〔必要ならば,引用例13(第2頁第7〜16行及び第9図 ,引用例14(第2頁左欄 )第43行〜右欄第10行,第5頁左欄第38〜42行,第5頁右欄第7〜14行及び図8)等の記載を参照〕となっている。 してみれば,引用例5発明において,そのカバーを上記周知・慣用技術の使用形態で用いるときには,被カバー部材である金属フィルタが剛性で方形プレート状に形成することは当然のこととして具備するものであるし,また,その金属フィルタのレンジフードの排気口への設置に際し,フィルタ部材をレンジフードの排気口の溝に挿入する上記周知・慣用事項を適用し,『金属フィルタは,上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能である』とすることに何らの困難も伴わない。 したがって,引用例5発明において,上記相違点A〜Cに係る特定事項に加えて,当該相違点Dに係る特定事項を具備するようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 【相違点Eについて】[前記フィルタは,個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し]との特定事項aについて上記相違点Cについての箇所で説示したとおり,引用例5発明の袋状のカバーを板状の個別の金属フィルタに適用して金属フィルタのフロント面を覆うようにした場合には,必然的に,カバーのフィルタは金属フィルタのフロント面の全てを覆い,かつ,カバーの伸縮可能な環状紐状体は金属フィルタの裏面に配置され,これにより,更に必然的に,カバーのフィルタは個別の金属フィルタのフロント面を被包することになり,かつ,裏面に位置する環状紐状体の収縮力で,フィルタが,金属フィルタのフロント面で緊張されて,金属フィルタに個別に固定ないしは取り付けられるに至るものである。また,そのようにすることは,引用例1に記載の技術からみても困難なく適宜実施できるものである。 この場合,当該フィルタは,金属フィルタの裏面に配置する環状紐状体の収縮力により,少なくとも金属フィルタの周縁部を含む裏面の一部を覆い,被包することになるものである。 そして,カバーのフィルタが金属フィルタを上記の如く覆い被包する場合において,当該フィルタが金属フィルタの裏面を覆う範囲(ないしは被包程度)に関し,訂正発明のように『前記フィルタは ・・・,個別の金属フィルタの裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気 ,口のうち前記金属フィルタに対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属フィルタを被包可能なサイズを有し』とすることは当業者が適宜なし得る設計事項に過ぎないものである。 すなわち (1)フィルタが金属フィルタの裏面の中央位置(ないしは中心位置)まで覆う ,ように被包すれば,金属フィルタの表裏に二重に存在するフィルタにより排ガスの浄化程度を高進させることができ,フィルタの装着をより確実なものとすることができる等の利点がある反面,フィルタを表裏二重に配することからフィルタ材料を多く消費し,単位面積単位時間当たりの排ガス処理量を減ずる虞がある等の欠点が生ずるものであり,一方,フィルタが金属製, , フィルタ要素の裏面の周端部のみを覆うように被包すれば 消費するフィルタ材料が節約でき排ガス処理量を減ずる虞がなくなる利点がある反面,その裏面での汚れ除去が低減し,フィルタの装着がより不完全なものとなる虞が生ずる等の欠点が生じ易いものであり,以上のことは当業者にとって自明なこととして把握できるものであり,ないしは,極めて容易に予測できるものである〔なお,更に必要であれば,排気口でフィルタを表裏二重に配置することの利点等については,引用例4の前記(D-2 ,等を参照し,また,被包の態様については,引用例 )1の第6及び7図と引用例4の第4図,等を参照されたい(2)そうであれば,カバーの 。〕。 フィルタが金属フィルタを上記の如く覆い被包する場合において,その被包する範囲については,排ガスの浄化性,フィルタ材料の節約性,フィルタの装着性等を考慮して適宜設定できる設計事項に外ならないものであり,したがって,訂正明細書の第1図又は第3図で示される如き金属製フィルタ要素の裏面の領域を被包できるように,フィルターサイズないしは被包するところの金属製フィルタ要素のサイズを設定して,訂正発明の上記特定事項を具備するようにすることに何等の困難も伴わない。 また,上記相違点Cについての箇所で説示したとおり,引用例5発明の袋状のカバーを板状の個別の金属フィルタに適用して金属フィルタのフロント面を覆うようにする場合には 『カ,バーのフィルタは金属フィルタのフロント面をカバー』するに至ることは明白なことである。 そうすると,引用例5発明において,相違点A〜Dに係る特定事項に加え,当該特定事項aを具備するようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 [前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されており]との特定事項bについて一般に,板状体を柔軟シート体で被包する場合には,該シート体と該板状体との平面形状が不一致であると,被包後に該シート体と該板状体との間に不必要な空間が発生したり,体裁が損なわれたり,また,該板状体に対して該シート体の材料に過不足が発生するなどの不都合が生ずるものであり,このことは,その該シート体に収縮性紐状体が取り付けられているか否かにかかわらず,当業者が自明なこととして把握できる。 してみれば,引用例5発明のカバーのフィルタで金属フィルタのフロント面を被包する場合には,上記不都合を避けるために,カバーのフィルタの形状を(紐状体を取り付ける前の形状を ,金属フィルタの四角形,すなわち,方形状にあわせて,訂正発明のように『個別の金属 )フィルタに対応した相似形状の平面方形状』に形成することは,当業者が当然のこととして実施し得るものであり,むしろそのようにしないことの方が不自然でさえある。 そうすると,引用例5発明において,相違点A〜Dに係る特定事項及び上記特定事項aに加え,当該特定事項bを具備するようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 [個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて,個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け,レンジフードの排気口に装着でき]との特定事項cについて上記相違点Cについての箇所で説示したとおり,引用例5発明の袋状のカバーを板状の個別の金属フィルタに適用して金属フィルタのフロント面を覆うようにした場合には,カバーの伸縮可能な環状紐状体は金属フィルタの裏面に配置され,カバーのフィルタは金属フィルタの前面を被包することになるものである。 そして,そのようにカバーの伸縮可能な環状紐状体が金属フィルタの裏面に配置され,カバーのフィルタは金属フィルタの前面を被包することになれば,必然的に,その裏面に配置された当該環状紐状体の収縮により,前記金属フィルタのフロント面の当該フィルタには緊張力又は牽引力が作用するようになるものであって,その作用の下に当該フィルタが金属フィルタに取付けられることになる。その結果,上記相違点Dについての箇所で記載したとおり,金属フィルタのレンジフードの排気口への設置に際し,フィルタ部材をレンジフードの排気口の溝に挿入する周知・慣用事項を適用した場合においては,当該フィルタは金属フィルタによりレンジフードの排気口に装着できるようになるものである。 そうすると,引用例5発明において,相違点A〜Dに係る特定事項及び上記特定事項aとbに加え,当該特定事項を具備するようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものであcる。 【相違点Fについて】上記相違点Cについての箇所で説示したとおり,引用例5発明の袋状のカバーを板状の個別の金属フィルタに適用して金属フィルタのフロント面を覆うようにした場合には,必然的に,カバーのフィルタは金属フィルタのフロント面の全てを覆い,かつ,カバーの伸縮可能な環状紐状体は金属フィルタの裏面に配置され,これにより,更に必然的に,カバーのフィルタは個別の金属フィルタのフロント面を被包することになり,かつ,裏面に位置する環状紐状体の収縮力で,フィルタが,金属フィルタのフロント面で緊張されて,金属フィルタに個別に固定ないしは取り付けられるに至るものである。また,そのようにすることは,引用例1に記載の技術からみても容易に導き出せるものである。 この場合,引用例5発明の環状紐状体は,そのフィルタと同じように,個別の金属フィルタの裏面に位置するだけでなく,その環状紐状体の収縮に対応して個別の金属フィルタの裏面に位置するものであり,したがって,環状紐状体が 『個別の金属製フィルタの裏面のうち,環 ,状紐状体の収縮に対応し,位置する』ことができるものである。 また,この場合,上記相違点Eの特定事項aについての箇所で記載したとおり,そのカバーのフィルタは 『・・・排気口のうち前記金属フィルタに対応する部分を部分的に覆う内方域 ,に及んで・・・』とのサイズを有するようにすることは当業者が適宜なし得るものであり,したがって,当該フィルタがそのようなサイズを有する場合には,当該フィルタを『排気口のうち前記金属フィルタに対応する部分を部分的に覆う内方域に及ぶ位置』に位置させることができるものである。 更に,この場合,当該環状紐状体は,該カバーのフィルタにおけるその周縁部に位置するものであって,カバーのフィルタの周縁部と,略,同じ位置に存在するものであるので,当該フィルタが『排気口のうち前記金属フィルタに対応する部分を部分的に覆う内方域に及ぶ位置』に位置するときは,当該環状紐状体を『排気口のうち前記金属フィルタに対応する部分を部分的に覆う内方域に及ぶ位置』に位置させることができるものである。 そして,上記相違点Dについての箇所で記載したとおり,金属フィルタのレンジフードの排気口への設置に際し,フィルタ部材をレンジフードの排気口の溝に挿入する周知・慣用事項を適用した場合においては,引用例5発明のカバーのフィルタないしはカバーは金属フィルタによりレンジフードの排気口に装着でき,その装着状態において,そのフィルタ及び環状紐状体の位置につき,上記したとおり,本件特定事項のように設定することは,当業者が困難なく適宜実施できるものである。 そうすると,引用例5発明において,相違点A〜Eに係る特定事項に加え,当該相違点Fに係る特定事項を具備するようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 そして,引用例5発明において相違点A〜Fに係る特定事項を具備することにより,ないしは,組み合わせて具備することによって格別予想し難い効果を奏したといえるものではない。 したがって,訂正発明は,引用例5,1〜4及び6〜16に記載された発明と周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである 」。 d容易想到性判断2(a)引用例3記載の発明との対比「引用例3には,その前記摘示(C-1)及びその図5によれば 『レンジフードの吸気口に ,配設された金網等からなる二つのフィルター部材の下面に,各々,着脱自在に装着されるレンジフード用フィルター装置であって,一端に上記フィルター枠体の端部が収容可能な袋状端部を設けた不織布からなるシート状フィルターと,上記シート状フィルターの他端部をフィルター部材に巻き込み状態で係止させる係止部材とからなるレンジフード用フィルター装置』に関する発明(以下,適宜 『引用例3発明』という)が記載されている。 ,そこで,訂正発明と引用例3発明とを対比する。 『 』,『 』(,, 引用例3発明の レンジフードの吸気口金網等からなるフィルター部材以下 適宜『』)『 』(,, 金網フィルター部材 という 及び 金網等からなる二つのフィルター部材以下適宜『 』) ,『 』, 二つの金網フィルター部材 という は 訂正発明の レンジフードのフード内の排気口『金属製フィルタ要素』及び『金属製フィルタ』にそれぞれ相当する。 また,引用例3発明における金網フィルター部材は,前記摘示(C-5)によれば,訂正発明と同じようにレンジフードのフード内の吸気口に着脱自在に係止されるということができるものであり,また,金属からなるものであるので訂正発明と同じように剛性であるということができるものであり,更に,その図1等の記載からみると訂正発明と同じように方形プレート状に形成されているものである。 そして,引用例3発明の『レンジフード用フィルター装置』は,訂正発明のように,レンジフードのフード内の吸気口に着脱可能に配設され,二つの金網フィルター部材で構成された金網フィルター部材を,前記(C-5)と図1及び5の記載からみて明らかなとおり,覆うものであり,この点で,訂正発明の『フィルタ装置』に相当するということができる。 よって,両者は,『レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設され,かつ複数の金属製フィルタ要素で構成された金属製フィルタを覆うためのフィルタ装置であって,前記金属製フィルタ要素は剛性で方形プレート状に形成されている,フィルタ装置』である点で一致し,以下の点で相違する。 【相違点イ】フィルタ装置につき,訂正発明では 『個別の金属製フィルタ要素のフロント面 ,をカバー可能なフィルタと,このフィルタの周縁部に取り付けられ,かつフィルタを,前記フロント面で緊張させて前記個別の金属製フィルタ要素に取付けるためのリング状伸縮性紐状体とで構成されている』という特定事項を具備するのに対して,引用例3発明では,そのレンジフード用フィルター装置は,訂正発明のようにフィルタとリング状伸縮性紐状体とで構成されておらず,したがって,当該特定事項を具備しない点【相違点ロ】該金属製フィルタ要素が,訂正発明では 『上端部が排気口の上部に形成された ,溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり』という特定事項を具備するのに対して,甲第3号証発明ではそのことが明示されない点【相違点ハ】当該フィルタ装置につき,訂正発明では 『前記フィルタは,不織布で構成され ,ているとともに,個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し,かつ前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されており,個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて,個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け,レンジフードの排気口に装着でき』という特定事項を具備するのに対して,引用例3発明では,そのレンジフード用フィルター装置は,不織布を含み,金網フィルター部材に取り付けられ,金網フィルター部材のフロント面をカバーするものであるものの,訂正発明のようにフィルタとリング状伸縮性紐状体とで構成されておらず,したがって,当該特定事項を全て具備しない点【引用例ニ】当該フィルタ装置につき,訂正発明では 『排気口への装着状態において,紐状 ,体が,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置する』とするのに対して,引用例5発明では,そのことが具体的に示されない点」(b)相違点についての判断「以下,上記相違点につき検討する。 【相違点イについて】引用例3発明におけるレンジフード用フィルター装置は不織布からなるシート状フィルターから構成されるものであって,前記(C-2)及び(C-3)で示されるように調理用排ガスを浄化するために用いられ,前記(C-5)と図1及び図5の記載からみて明らかなように,調理用排ガスを排出するレンジフードの吸気口前面に配設された二つの金網フィルター部材のフロント面を個別にカバーするものである。 更に,引用例3発明におけるレンジフード用フィルター装置は,金網フィルター部材に着脱自在に装着されるものである。 一方,調理用排ガスを処理する当該分野においては 『不織布フィルター部とその周縁部に ,設けたリング状伸縮性紐状体とからなり,その外観が浅い袋状の形状をなす調理用排ガス浄化用カバー体を,その紐状体の収縮力により,調理用排ガス処理機器の前面に位置する部材に着脱自在に取り付けること』は,本件出願前に周知・慣用事項[必要ならば,引用例5〔前記摘() ,() () 示 E-2 の台所用換気扇及びレンジフード用換気扇に関する記載E-6 〜 E-8〕,( ,,, 及び第1図引用例11 第2頁左欄第2〜6行 第3頁第4〜5行 第3頁第9〜12行第4頁第21〜22行及び図1 ,実公平7-12824号公報(第2頁左欄第6〜14行, )第3頁左欄第8〜15行,第3頁左欄第28〜48行及び第1図)等を参照]となっており,この場合,その不織布フィルター部は調理用排ガスを処理するために用いられることはその用途からみて明らかなことである。 このように,引用例3発明のレンジフード用フィルター装置と当該周知・慣用のカバー体とは,不織布を用いる点でフィルター部ないしはシート状フィルターの材質が同じものであり,, ,,, かつ 調理用排ガスを処理するという点でも同じ機能を有するものであり そのうえ 両者は共に,調理用排ガス処理機器の前面に位置する部材に着脱自在に取り付け得るものである。 してみれば,引用例3発明において,個別に金網フィルター部材のフロント面をカバーし,金網フィルター部材に取り付けられているところのレンジフード用フィルター装置を,上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けたリング状収縮性紐状体とからなるところのカバー体で,個別に,置換することは当業者が適宜なし得るものであり,その際,個別の金網フィルター部材に対して当該カバー体を取り付けることに何等の困難も伴わない。 この場合 『カバー体『不織布フィルター部』及び『リング状収縮性紐状体』は,訂正発 ,』,明の『フィルタ装置『フィルタ』及び『リング状収縮性紐状体』にそれぞれ相当する。 』,そして,引用例3発明のプレート状の金網フィルターに,袋状の当該カバー体を適用する場合,調理用排ガスの浄化漏れがないように,このカバー体の不織布フィルター部が金網フィルター部材のフロント面全面をカバーないしは覆うようにすることは当業者が当然のこととして実施するものであり,これにより,必然的に,カバー体のリング状収縮性紐状体は金網フィルター部材の裏面に位置することになって不織布フィルター部が金網フィルター部材の前面を被包することになり,かつ,裏面に位置するリング状収縮性紐状体が,その収縮力で不織布フィルター部を金網フィルター部材のフロント面で緊張させて金網フィルター部材に固定ないしは取り付けられるようになるものである。 このことは,引用例1に記載の技術からみても容易に導き出せるものである。すなわち,引用例1において,筒織裁断物とその廻りに配置したゴム体からなるフィルタ(実用新案登録請求の範囲を参照)を,ガードに取り付ける場合には,当該筒織裁断物をガードのフロント面の全面を完全に覆ったうえでその裏面に至るようになし,かつ,当該ゴムをガードの裏面に位置させる(第6及び7図を参照)ようにすることが,実質上,記載されるものであり,このように,繊維製フィルタ(筒織裁断物)と伸縮性紐状体(ゴム体)からなるフィルタを略板状物品(ガード)に取り付ける場合には,繊維性フィルタを,板状物品のフロント面の全面を完全に覆ったうえでその裏面にまで伸びるように配置し,かつ,伸縮性紐状体を板状物品の裏面に配置させる構造が教示されるのであるから,上記のように,引用例3発明の金網フィルター部材に上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けたリング状収縮性紐状体とからなるカバー体を適用する場合,上記教示に従い,不織布フィルタ部が金網フィルタ部材のフロント面を覆ったうえでその裏面に至るようになし,かつ,カバー体のリング状収縮性紐状体を金網フィルタ部材の裏面に配置させることにより,その不織布フィルタ部が金網フィルタ部材のフロント面を被包し,かつ,裏面に位置するリング状収縮性紐状体がその収縮力で不織布フィルタ部を金網フィルタ部材のフロント面で緊張下に金網フィルタ部材に固定ないしは取り付けるようになすことは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 以上のとおり,引用例3発明において,そのレンジフード用フィルタ装置を,上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けたリング状収縮性紐状体とからなるところのカバー体で置換することにより,そのカバー体(フィルタ装置)が『個別の金網フィルター部材のフロント面をカバー可能な不織布フィルター部と,この不織布フィルター部の周縁部に取り付けられ,かつ不織布フィルター部を,前記フロント面で緊張させて前記個別の金網フィルター部材に取付けるためのリング状伸縮性紐状体とで構成されている』との特定事項を自ずと具備するようになるものであり,ないしは,その特定事項を具備するようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 したがって,引用例3発明において,必要に応じて引用例1に記載の技術を参照して,上記, , 周知・慣用事項を適用することにより 相違点イに係る特定事項を具備するようにすることは当業者が適宜なし得ることに過ぎない。 【相違点ロについて】引用例3発明の金網フィルター部材につき,その図1の記載をみれば,金網フィルター部材( ) 。 の両端面 ないしは上端部及び下端部 が共に厚みの薄い平板形状を呈していることがわかるそうであれば,レンジフードの吸気口に溝(又はスリット)が設けられている場合には,引用,(「」。, 例3発明の金網フィルター部材は 本件発明1 判決注: 訂正発明 の誤記と認める 以下この部分を引用するときは,訂正した上で引用する )と同じように 『その上端部が排気口の 。,上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能である』といえるものである。したがって,この特定事項は,両者の実質上の相違点とはなり得ないものである。 仮に,そうでないとしても,引用例3発明の金網フィルター部材の如きフィルター部材につき,吸気口の上下部に設けた溝に当該フィルター部材を挿入することにより同部材を着脱自在に取付けることは,本件出願前に慣用事項[必要ならば,引用例13〔第2頁第7〜16行及び第9図 ,引用例14(第2頁左欄第43行〜右欄第10行,第5頁左欄第38〜42行, 〕第5頁右欄第12〜14行及び図8)等の記載を参照]となっており,したがって,引用例3発明において,その金網フィルタ部材のレンジフードの吸気口への設置に際し,当該慣用事項の技術を適用し,当該特定事項のようにすることに,何らの困難性も伴わない。 そうすると,この特定事項は,両者の実質的な相違点とはならないものであり,仮に,そうでないとしても,引用例3発明において,上記慣用事項を適用することにより当業者が適宜なし得るものである。 【相違点ハについて】[前記フィルタは,個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し]との特定事項Aについて上記相違点イについての箇所で説示したとおり,引用例3発明において,金網フィルター部材に取り付けられているレンジフード用フィルター装置を,上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けられたリング状収縮性紐状体を有するカバー体で置換すること,そして,その場合,リング状収縮性紐状体を金網フィルター部材の裏面に配置すること,かつ,不織布フィルター部で金網フィルター部材のフロント面を被包することは,当業者が適宜実施できるものである。 この場合,当該不織布フィルター部は,金網フィルター部材の裏面に配置するリング状収縮性紐状体の収縮力により,少なくとも金網フィルター部材の周縁部を含む裏面の一部を覆い,被包することになるものである。 そして,前記相違点Eの特定事項aについての箇所で記載した理由と同じ理由により,不織布フィルター部が金網フィルター部材を上記の如く覆い被包する場合において,金網フィルター部材の裏面において当該不織布フィルター部が覆い被包する範囲については,排ガスの浄化性,不織布フィルター部材料の節約性,不織布フィルター部の装着性等を考慮して適宜設定できる設計事項に外ならないものであり,したがって,訂正明細書の第1図又は第3図で示される如き金属製フィルタ要素の裏面の領域を被包できるように,不織布フィルター部のサイズないしは被包するところの金網フィルター部材のサイズを設定して,訂正発明のように『個別の金網フィルター部材の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記金網フィルター部材に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金網フィルター部材を被包可能なサイズを有し』との特定事項を具備するようにすることに何等の困難も伴わない。 また,上記相違点イについての箇所で説示したとおり,引用例3発明において,金網フィルター部材に取り付けられているレンジフード用フィルター装置を,上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けられたリング状収縮性紐状体を有するカバー体で置換した場合には 『カバー体のフィルター部は金属フィルタのフロント面をカバ ,ー』するに至ることは明白なことである。 そうすると,引用例3発明において,上記周知・慣用事項を適用する場合に,当該特定事項Aのようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 [前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されており]との特定事項Bについて一般に,板状体を柔軟シート体で被包する場合には,該シート体と該板状体との平面形状が不一致であると,被包後に該シート体と該板状体との間に不必要な空間が発生したり,体裁が損なわれたり,また,該板状体に対して該シート体の材料に過不足が発生するなどの不都合が生ずるものであり,このことは,その該シート体に収縮性紐状体が取り付けられているか否かにかかわらず,当業者が自明なこととして把握できる。 してみれば,引用例3発明において,金網フィルター部材に取り付けられているレンジフード用フィルター装置を,上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けられたリング状収縮性紐状体を有するカバー体で置換し,その不織布フィルターで金網フィルター部材を被包する場合には,上記不都合を避けるために,不織布フィルターの形状を,金網フィルター部材の四角形,すなわち,方形状にあわせて,訂正発明のように『個別の金網フィルター部材に対応した相似形状の平面方形状』に形成することは,当業者が当然のこととして実施し得るものであり,むしろそのようにしないことの方が不自然でさえある。 そうすると,引用例3発明において,上記周知・慣用技術の用途に適用する場合に,当該特定事項Bのようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 [個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて,個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け,レンジフードの排気口に装着でき]との特定事項Cについて上記相違点イについての箇所で説示したとおり,引用例3発明において,金網フィルター部材に取り付けられているレンジフード用フィルター装置を,上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けられたリング状収縮性紐状体を有するカバー体で置換すること,そして,その場合,リング状収縮性紐状体を金網フィルター部材の裏面に配置することは,当業者が適宜実施できるものである。 そして,このようにリング状収縮性紐状体を金網フィルター部材の裏面に配置すれば,必然的に,その紐状体の収縮により,前記金網フィルター部材のフロント面の不織布フィルター部に緊張力又は牽引力が作用するものであり,その結果,当該フィルター部が金網フィルター部材に取り付けられ,レンジフードの吸気口に装着できるように至るものである。 そうすると,引用例3発明に周知・慣用事項となっているカバー体を適用した場合に当該特定事項Cを具備することは,少なくとも当業者が適宜実施できるものに外ならない。 以上のとおり,引用例3発明に周知・慣用事項となっているカバー体を適用した場合に,当該相違点ハに係る特定事項を具備するようにすることは,当業者が困難なく適宜なし得るものである。 【相違点ニについて】上記相違点イについての箇所で説示したとおり,引用例3発明において,金網フィルター部材に取り付けられているレンジフード用フィルター装置を,上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けられたリング状収縮性紐状体を有するカバー体で置換すること,そして,その場合,リング状収縮性紐状体を金網フィルター部材の裏面に配置することは,当業者が適宜実施できるものである。 , , , この場合 引用例3発明のリング状収縮性紐状体は その不織布フィルター部と同じように個別の金網フィルター部材の裏面に位置するだけでなく,その紐状体の収縮に対応して個別の,, , 金網フィルター部材の裏面に位置するものであり したがって 当該リング状収縮性紐状体が『 , ,』 個別の金網フィルター部材の裏面のうち リング状収縮性紐状体の収縮に対応し 位置することができるものである。 また,この場合,上記相違点ハの特定事項Aについての箇所で記載したとおり,そのカバー体の不織布フィルター部は 『・・・排気口のうち前記金網フィルター部材に対応する部分を ,部分的に覆う内方域に及んで・・・』とのサイズを有するようにすることは当業者が適宜なし得るものであり,したがって,当該不織布フィルターがそのようなサイズを有する場合には,当該不織布フィルター部を『排気口のうち前記金網フィルター部材に対応する部分を部分的に覆う内方域に及ぶ位置』に位置させることができるものである。 更に,この場合,当該リング状収縮性紐状体は,該カバー体の不織布フィルター部におけるその周縁部に位置するものであって,カバーにおける不織布フィルター部の周縁部と,略,同じ位置に存在するものであるので,当該不織布フィルター部が『排気口のうち前記金網フィルター部材に対応する部分を部分的に覆う内方域に及ぶ位置』に位置するときは,当該リング状収縮性紐状体を『排気口のうち前記金属フィルタに対応する部分を部分的に覆う内方域に及ぶ位置』に位置させることができるものである。 そして,引用例3発明において,周知・慣用事項となっているカバー体を適用し,かつ,フィルタ部材をレンジフードの排気口の溝に挿入するところの相違点ロについての箇所で記載した慣用事項を適用した場合においては,カバー体の不織布フィルター部ないしはカバー体は,金網フィルター部材によりレンジフードの排気口に装着でき,その装着状態において,そのカバー体の不織布フィルター部及び金網フィルター部材の位置を上記したとおりに設定して,本件特定事項のようにすることは,当業者が困難なく適宜実施できるものである。 以上のとおり,引用例3発明において,周知・慣用事項(必要ならば,相違点イについての箇所を参照)となっているカバー体を適用し,かつ,フィルタ部材をレンジフードの排気口の溝に挿入する慣用事項(必要ならば,相違点ロについての箇所を参照)を適用した場合において,当該特定事項ニを具備するようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 そして,引用例3発明において,上記相違点イ〜ニに係る特定事項を具備することにより,ないしは,組み合わせて具備することにより格別予想し難い効果を奏したといえるものでもない。 したがって,訂正発明は,引用例3,1,2及び4〜17に記載された発明と周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである 」。 e請求人(原告)の主張に対する判断「請求人は,審判請求書第16頁第1行〜第21頁第7行において,訂正発明が『前記フィルタは,個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し』との特定事項を具備することにより奏するところの効果,すなわち,油煙等の捕捉性及び油分の捕捉性につき,縷々,主張するので,以下に検討する。 (1)本件明細書又は願書に最初に添付した明細書及び図面(この項では,単に 『明細書』,という)には『前記フィルタは,個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し』との特定事項が記載されておらず,また,当該特定事項が明細書に記載されないのであるから,当然のこととして,明細書には訂正発明が当該特定事項を具備することにより請求人の主張するような作用・効果につき教示ないしは示唆されるものは何もないのである。 そうであれば,請求人の主張する訂正発明の奏する効果は明細書の記載に基づかないものであり,本件訂正発明の進歩性を検討するに当り斟酌すべきものではない。 (2)請求人は,甲第2〜6及び9号証を提出し,レンジフードにおいては排ガス流にコアンダ効果が生ずる旨主張し,更に,甲第7号証の試験成績証明書を提示する。 しかし,甲第3〜6及び9号証では,誘導板,整流板,等の特別の部材を別途設けるもWallのであるし,また,甲第7号証では,フードが二方の壁に接するという特殊な配置のもとに更にファン位置が偏芯した排気装置を用いるものであって,その試験は訂正発明の主たる適用対象である本邦一般家庭の厨房条件下において行われたものとはいえない。なお,甲第2号証はコアンダ効果を説明するだけのものである。 (3)仮に,請求人の主張するように,金属製フィルタ要素の裏面の通気口を被包するフィルタは,排気ガスからの油煙等の捕捉性を幾分なりとも改善するという効果を奏するものであるとしても,そのように金属製フィルタ要素の裏面の通気口を被包すれば,フィルタが金属製フィルタのフロント面に加え裏面にも存在することになり,これにより,油煙等の捕捉性が改善されることは当然のこととして予測できるものであり,訂正発明が奏するというその効果は当業者の予測の域をでないものである。 また,油分の捕捉性については,通常フィルタ装置は油分が付着・流下する前に定期的に取り替えるものであってその効果はそもそも格別のものとはいえないものであり,仮に油分の捕捉性について何等かの効果があるとしても,金属製フィルタ要素の裏面に不織布からなるフィルタが存在すれば,そのフィルタはそれに接する油分を自ずと吸収・捕捉・保持するに至るようになるものであり,その場合の効果は自明なこととして把握できるものである。 (3)このように,請求人の主張する効果は,明細書の記載に基づかないものであり,また,その程度の効果は引用例1〜17及び周知技術から容易に予測できるものである 」。 (ウ)独立特許要件についての審決の結論「訂正後の本件請求項1に係る発明は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず,また,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず,これらの理由により,特許出願の際独立して特許を受けることができるとはいえない 」。 エ審決の「まとめ」「よって,本件審判の訂正請求は,特許法第126条第1項ただし書き,及び,同条第3項〜第5項の規定に適合しないので,当該請求を認めることができない 」。 第3原告の主張(審決取消事由)の要点審決は,本件手続補正に対する判断において,本件手続補正が訂正審判請求書の要旨を変更するものと誤って判断した(取消事由1)結果,本件訂正審判請求に係る訂正事項を,訂正明細書に基づいて認定した誤りがある。 仮に,本件訂正審判請求に係る訂正事項を,訂正明細書に基づいて認定すべきで,,() ()(), あるとしても 審決は @訂正事項 イ-2 〜 イ-4 及び イ-6 につき, ,, 訂正の目的等の適否についての判断を誤って 特許法126条1項ただし書 3項4項の要件を備えていないと判断し(取消事由2 ,さらに,訂正明細書の特許請 )求の範囲1項によって特定される発明(訂正発明)につき,独立特許要件の有無を判断するに当たって,明確性判断を誤り(取消事由3 ,容易想到性判断1,2を )誤り(取消事由4,5 ,さらに訂正発明の作用効果についての認定を誤った(取 )消事由6)結果,訂正発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないとの誤った結論に至ったものであるから,取り消されるべきである。 1取消事由1(本件手続補正を要旨変更とした誤り)( )補正事項aについて1審決は,補正事項aに係る補正により「 剛性で方形プレート状に形成されてい 『, , るとともに 上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり』とされる物の対象物が,『前記金属製フィルタ要素』から『前記個別の金属製フィルタ要素』に置き換わったことになる。更に,その訂正内容につき検討すると,当該補正事項aは 『前,記金属製フィルタ要素 ,すなわち,少なくとも単一の金属製フィルタ要素が上記 』の剛性で方形プレート状で挿入可能な形態を具備するとしていたところ,当該補正事項aにより 『個別の金属製フィルタ要素 ,すなわち,それぞれの又は全ての金 , 』, , 属製フィルタ要素が 上記の剛性で方形プレート状で挿入可能な形態を具備すると実質上,置き換えられたものであるということができるものであり,また,当該補正事項は,少なくとも,そのように置き換える態様を含むものである 」として,。 補正事項aが,訂正事項を変更し,訂正内容を変更するものであって,訂正請求書の要旨を変更するものに当たると判断した。 しかしながら,訂正明細書の請求項1において,補正事項aに係る「前記金属製フィルタ要素」の語句が「前記個別の金属製フィルタ要素」を意味することは,前後の文脈などから明白であり,このように補正をしたからといって,対象物に何ら変わりはない。訂正明細書は 「金属製フィルタ要素」との語句を 「個別の金属製 , ,フィルタ要素」と同義の部材を示すものとして使用しており,両者を区別して使い分けているのではない。 審決は,補正の前後の字句を形式的に対比し,単なる文言上の相違に基づいて判断しており,余りにも形式的な議論である。仮に,このような形式的な判断をすることになれば,同一請求項の複数の箇所で登場する部材について,完全に同一の用語を用いなければ,同じ部材を表すものではないという,極めて不可解な解釈が成り立つことになる。 したがって,審決の判断は誤りである。 ( )補正事項bについて2審決は,補正事項bは「フィルタが関連するところの『排気口のうち前記要素に対応する部分』を『排気口のうち前記要素に対応して通気する部分』に置き換えるものである。更に,その訂正内容につき検討すると,補正事項bでは,当該部分が『通気する』ことを別途付加し 『対応』するところの対象が『部分』から『通 ,気する』又は『通気する部分』に変移させるものである。そうであれば,当該補正事項bは,訂正事項を変更し,更には,訂正内容を変更するので,訂正請求書の要旨を変更するといえる 」と判断した。。 , ,「」 , しかしながら 訂正明細書の請求項1において 補正事項bに係る 排気口 は複数の金属製フィルタ要素が配設され,通気することが必須の場所である。このことに 「うち」及び「対応」の各語句の意味を併せ考慮すれば 「排気口のうち前記 , ,要素に対応する部分」とは 「通気する排気口のなかで(又は区域内において)前 ,記要素と相対する関係(一対一の関係)にある部分 ,すなわち「要素と相対する 」関係にある通気する部分」であることが明白である。そして,剛性の方形プレート状に形成された個別の金属製フィルタ要素は,それぞれ,四角枠状の非通気性外周域(又は外周枠)と,この外周域の内側に形成された多数の孔を有する四角形状の通気域とで構成されているから,上記補正事項bに係る補正前の「排気口のうち前記要素に対応する部分」が 「通気する部分」以外のものを意味することはない。 ,審決は,補正の前後の字句を形式的に対比し,単なる文言上の相違に基づいて,余りにも形式的に判断をしており,誤りであることが明らかである。 ( )補正事項cについて3審決は,補正事項cによれば 「フィルタの形状が 『前記金属製フィルタ要素』 ,,に対応した相似形状から 『前記個別の金属製フィルタ要素』に対応した相似形状 ,に置き換わったことになる。更に,その訂正の内容を検討すると,当該補正事項cは,フィルタの形状が 『前記金属製フィルタ要素 ,すなわち,少なくとも一の , 』金属製フィルタ要素に対応して相似形状であるとしていたところ,当該補正事項cにより,フィルタの形状が 『個別の金属製フィルタ要素 ,すなわち,それぞれの , 』金属製フィルタ要素に対応して相似形状であると,実質上,置き換えられたものであるということができるものであり,また,当該補正事項は,少なくとも,そのように置き換える態様を含むものである 」と判断した。。 しかしながら,上記( )と同様の理由により,審決の上記判断は誤りである。 1( )補正事項dについて4,「,, 『, 審決は補正事項dは 具体的には 訂正明細書の請求項1における ・・・かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置する・・・』を 『・・・,かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応して通気 ,する部分を部分的に覆う内方域に位置する・・・』に補正するものである。これによれば,当該訂正事項dは,上記訂正事項bと同じように,フィルタが関連するところの『排気口のうち前記要素に対応する部分』を『排気口のうち前記要素に対応して通気する部分』に置き換え,更に,その訂正内容につき検討すると,当該部分が 通気する ことを別途付加し対応 するところの対象が 部分 から 通 『』,『』『』『気する』又は『通気する部分』に変移させるものである。そうであれば,当該補正事項dは,訂正事項を変更し,更には,訂正内容を変更するので,訂正請求書の要旨を変更するといえる 」と判断した。。 しかしながら,上記( )と同様の理由により,審決の上記判断は誤りである。 22取消事由2(訂正の目的等の適否についての判断の誤り)( )訂正の目的の適否について1ア訂正事項(イ-2)について審決は,訂正事項(イ-2)につき 「訂正前の当該特定事項にあっては,金属 ,製フィルタが概念的には複数の金属製フィルタ(要素)を含み,その金属製フィルタが,剛性で方形プレート状に形成され,上下端部が排気口の溝ないしはスリットに挿入可能であったところ,訂正後の当該特定事項にあっては,金属製フィルタ要素のみが規定され 『個別』の金属製フィルタ要素と規定されないのであるから, ,複数の金属製フィルタ要素のうち一部の金属製フィルタは,剛性ではなく,方形プレート状ではなく,或いは,上下端部が溝ないしはスリットに挿入可能でない態様(例えば,側端部で別異の係止手段により係止可能)を含み得るものである 」と。 した上 「上記(イ-2)の訂正は発明を拡張させることから,その訂正は,特許 ,請求の範囲の減縮を目的とするものに該当せず,誤記又は誤訳の訂正,ないしは,明りょうでない記載の釈明を目的とするいずれのものにも該当しない 」と判断し。 た。 しかしながら,訂正明細書の請求項1において,訂正事項(イ-2)に係る「前記金属製フィルタ要素」の語句が「前記個別の金属製フィルタ要素」を意味することは明白である。審決は,請求項の記載の全体及び文脈を見ることなく,一部の記載又は字句の相違のみに基づいて形式的に判断する誤りを犯している。訂正明細書が 「金属製フィルタ要素」との語句を 「個別の金属製フィルタ要素」と同義の部 , ,材を示すものとして使用していることは,上記のとおりであり,審決がいうように「訂正後の請求項1の記載では 『個別の金属製フィルタ要素』と『金属製フィル ,タ要素』とが使い分けられている」ものではない。 したがって,審決が 「上記(イ-2)の訂正は発明を拡張させる」と判断した ,ことは誤りであり,これを前提として,訂正事項(イ-2)が 「特許請求の範囲,の減縮を目的とするものに該当せず 」とした判断も誤りである。 ,イ訂正事項(イ-4)について審決は,訂正事項(イ-4)につき 「当該訂正事項(イ-4)は,訂正前の当 ,, () 該特定事項にあっては 金属製フィルタが概念的には複数の金属製フィルタ 要素を含み,フィルタが,全て,金属フィルタに対応した相似形状の平面方形状であったところ,訂正後の当該特定事項にあっては 『個別の』金属製フィルタ要素と規 ,定されないことから,一部のフィルタが相似形状の平面方形状を呈さないところの態様が含まれることになる。このように,訂正後のものは,訂正前の特定事項を満たさない態様を含むことになる 」とした上 「訂正事項(イ-4)の訂正は発明 。,を拡張させることから,その訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当せず,誤記又は誤訳の訂正,ないしは,明りょうでない記載の釈明を目的とするいずれのものにも該当しない 」と判断した。。 しかしながら,上記( )と同様の理由により,審決の上記判断は誤りである。 2( )新規事項の追加について2ア訂正事項(イ-3)について審決は,訂正事項(イ-3)に係る「 排気口のうち前記要素に対応する部分を 『部分的に覆う内方域に及んで』個別の金属製フィルタ要素を被包可能なとのことを請求項1の記載に付加する」点につき 「上記『排気口のうち前記要素に対応する ,部分』とはどのような部分をいうのか全く不明となっている「上記『排気口』。」,はレンジフードの排気口を意味し,上記『要素』は金属製フィルタ要素を意味するものとしても,要素は全て排気口内に存在するものであるから,当該排気口と要素との関係から規定しようとする内容を把握することなどできない 」とした上 「不。,明瞭なものを含む特定事項の付加が,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でなされたといえるものではない 」と判断した。。 しかしながら 「排気口」は,複数の金属製フィルタ要素が配設され,通気する ,ことが必須の場所である。このことに 「うち」及び「対応」の各語句の意味を併 ,せ考慮すれば 「排気口のうち前記要素に対応する部分」とは 「通気する排気口の , ,なかで(又は区域内において)前記要素と相対する関係(一対一の関係)にある部分 ,すなわち「要素と相対する関係にある通気する部分」であることが明白であ 」る。また,金属製フィルタ要素の裏面をフィルタが覆う部分,及び個別の金属製フィルタ要素の裏面における紐状体の位置は,種々のレンジフードにより異なる個別の金属製フィルタ要素のサイズや紐状体の収縮作用に応じて個別に変化するものであるから,個別の金属製フィルタ要素などの他の部材と無関係に独立して規定できる性質のものではなく,各部材との関係でしか特定できないのであり 「排気口と,要素との関係から規定しようとする内容を把握することなどできない 」との審決。 ,,「 , の判断は失当であり これを理由として不明瞭なものを含む特定事項の付加が願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でなされたといえるものではない 」とした判断も誤りである。 。 審決は,さらに 「当該訂正事項のうち 『排気口のうち前記要素に対応する部分 ,,を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能な』が 『フ,ィルタ(ないしは紐状体)が,金属製フィルタ要素におけるその裏面側の内方域を部分的に被包可能な』と訂正するものであると仮定しても,その特定事項は願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載される事項から,自明なこととして導き出せない。すなわち 『フィルタが内方域を部分的に被包』とは『フィルタ ,が内方域を完全に全部被包』する以外の形態の全ての被包の形態を包含するものであるところ,本件明細書又は図面・・・からフィルタが内方域を『部分的に』被包するとの上記の広い概念を自明なこととして導き出すことができないし,また,そもそも 『内方域』との概念についても,願書に添付した明細書,特許請求の範囲 ,。」 又は図面に記載されずまた自明なこととして導き出すことはできないものであると判断した。 しかしながら,本件特許出願当時の技術常識に照らし,本件明細書及び図面に接した当業者にとって 「内方域」との概念は明確であり 「内方域」との概念及びフ , ,ィルタが内方域を「部分的に」被包するという概念も自明な事項として導き出すことができるものであって,審決の上記判断も誤りである。 イ訂正事項(イ-6)について審決は,訂正事項(イ-3)についてと同じ理由により 「訂正事項(イ-6) ,の訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたということができない 」と判断したが,上記アと同様の理由 。 により,上記判断は誤りである。 ( )拡張・変更について3,()(),「」 審決は 訂正事項 イ-2 及び同 イ-4 につき 上記 訂正の目的の適否における判断のとおり 「特許請求の範囲の請求項1で記載される内容を拡張する ,ものであり,これらの訂正事項を含む本件審判請求の訂正は特許法第126条第4項に規定する要件を満たしていない 」と判断したが,この判断が誤りであること 。 は,上記( )のとおりである。 13取消事由3(明確性判断の誤り)審決は,訂正発明に係る独立特許要件の判断において,訂正事項(イ-3)及び同(イ-6)につき,上記「新規事項の追加」における判断のとおり 「不明ない,しは不明瞭であり,また,その意味するところが一義的に定まらない 」とし 「特。,許を受けようとする訂正後の請求項1の発明が明確であるということができない。 したがって,訂正後の請求項1に係る発明につき,本件特許出願が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない 」と判断した。。 しかしながら,上記2の( )のア,イのとおり,訂正事項(イ-3)及び同(イ2-6)の意味するところは明確であり 「特許を受けようとする訂正後の請求項1 ,の発明が明確であるということができない」とした審決の判断は誤りである。 4取消事由4(容易想到性判断1の誤り)( )審決は,訂正発明に係る独立特許要件の判断において,訂正発明が,引用1例5発明並びに引用例1〜4及び6〜16記載の各発明及び周知慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと判断した(容易想到性判断1)が,以下のとおり,誤りである。 ( )相違点A及びBについての判断の誤り2ア審決は,訂正発明と引用例5発明との相違点A及びBにつき,引用例13及,「『 , び引用例3を周知例として引用し引用例5発明の 不織布からなるフィルタと該フィルタの周縁部に設けられ,かつ上記周縁部を収縮可能な環状紐状体とを有するレンジフード用換気扇カバー』を,使用目的及び使用材料が共通する上記周知・慣用のフィルタの使用形態で用いること,すなわち 『レンジフードのフード内の ,排気口の位置に着脱自在に設けられた剛性で四角形板状の金属フィルタにつき,そ』 」 の表面側を覆う という使用形態で用いることに何等の困難も伴わないものでありと判断した。 しかしながら,引用例5発明のレンジフード用換気扇は,換気口の前面が遮蔽部材(パネル)で遮蔽され,遮蔽部材の側方開口部から吸引するタイプの換気扇であり,しかも換気扇の枠体の端部等に紐状体を掛止して換気扇フィルタを取り付けるものであって,引用例3に記載されたような金属製フィルタの両端部で不織布フィルタを係止又は固定する周知慣用技術とは,発明の構成及び作用が大きく相違するから,引用例5発明と上記周知慣用技術とを関連づけることは困難である。 仮に,引用例5発明と上記周知慣用の技術とを組み合わせたとしても,周知慣用技術(引用例3記載の発明)は不織布フィルタの両側部が金属製フィルタに重ねてあるだけであり,引用例5発明も紐状体を枠体の端部等に掛止しているにすぎないから,不織布フィルタで金属製フィルタを被包することまでは導き出せない。審決は 「当該カバーのフィルタにより金属フィルタのフロント面を個別にカバーする ,ように覆うこと,すなわち,個別の金属フィルタのフロント面をカバー可能なフィルタとすることは,当業者であれば当然のこととしてなし得るものである 」と認。 定するが,引用例5及び周知例には,不織布フィルタで金属製フィルタを被包することは開示も示唆もされていないのである。 イまた,審決は,引用例3,14,15を周知例として挙げ 「レンジフード,の分野においては,フード内の排気口の位置に設けられる金属フィルタを複数個で構成することは,本件出願前における周知事項」であると認定した上 「引用例5,発明の『不織布からなるフィルタと,該フィルタの周縁部に設けられ,かつ上記周縁部を収縮可能な環状紐状体とを有するレンジフード用換気扇カバー』を,使用目的及び使用材料が共通する上記周知・慣用のフィルタの使用形態で用いること,すなわち 『レンジフードのフード内の排気口の位置に着脱自在に設けられた剛性で ,四角形板状の金属フィルタにつき,その表面側を覆う』という使用形態で用いる・・・その場合,上記周知事項の教示に従いフード内に当該金属製フィルタを複数個設けること,また,当該カバーで複数の金属フィルタを個別に覆うようにすることは当業者であれば直ちに想到することができるものである 」と判断した。。 , , しかしながら 排気口の位置に設けられる金属フィルタを複数個で構成するのは引用例3,14に見られるとおり,通気孔の形成された金属板フィルタを備えたレンジフードの場合であり,引用例5発明のように,換気口の前面が遮蔽部材(パネル)で遮蔽され,遮蔽部材の側方開口部から吸引するタイプの換気扇(引用例5発明)の場合ではない。上記のとおり,発明の構成及び作用が大きく相違する引用例5発明と周知慣用技術とを関連づけることは困難であり,そのような困難な関連付けを前提とした上で 「金属フィルタを複数個で構成する」ことを想起することは ,困難であるから,審決の上記判断も誤りである。 ( )相違点Cについての判断の誤り3ア審決は,訂正発明と引用例5発明との相違点Cにつき,上記相違点A及びBについての判断を前提とした上 「引用例5発明の当該カバーは ・・・浅い袋状の , ,外観を呈し,かつ ・・・その袋の出口部に設けられた伸縮可能な環状紐状体の収 ,縮力により物品(換気口)に取り付けられるものであり,そしてまた,上記したとおり金属フィルタは板状の外観を呈するものである。してみれば,引用例5発明の袋状のカバーを板状の個別の金属フィルタに適用して金属フィルタのフロント面を覆うようにする場合には,必然的に,カバーのフィルタは金属フィルタのフロント面の全てを覆い,かつ,カバーの伸縮可能な環状紐状体は金属フィルタの裏面に配置され,これにより,更に必然的に,カバーのフィルタは個別の金属フィルタのフロント面を被包することになり,かつ,裏面に位置する環状紐状体の収縮力で,フィルタが,金属フィルタのフロント面で緊張されて,金属フィルタに個別に固定ないしは取り付けられるに至るものである 」と判断した。。 しかしながら,審決の相違点A及びBについての判断が誤りであることは,上記( )のとおりである。また,引用例5発明の「浅い袋状」のカバーと,上記周知慣 2用技術に係るシート状フィルターとを関連付ける合理的な理由はない。すなわち,引用例5発明では紐状体を枠体の端部等に掛止するのであるから,枠体の存在しない周知慣用技術(引用例3記載の発明の金網フィルタ部材)にどのようにして掛止するのか理解できないし,また,引用例5発明では遮蔽部材又は格子状支持部材を有するレンジフードを想定しているが,このように遮蔽部材等を備えたレンジフードにおいて,上記周知慣用技術の金網フィルタ部材を覆うことは構造上不可能である。したがって,引用例5発明の「浅い袋状」のカバーと,上記周知慣用技術とを関連付けることは,困難であり,訂正発明を見て,初めて可能となるものである。 さらに,仮に,引用例5発明を上記周知慣用技術に適用したとしても,引用例5発明では紐状体を枠体の端部等に掛止し,周知慣用技術では不織布フィルタの両側部を単に金網フィルタ部材に重ねているだけであることに加え,引用例5発明は構造の全く異なる遮蔽部材等を有するレンジフード用換気扇を想定しているから,引用例5発明のカバーにより周知慣用技術の金網フィルタ部材を覆って包むことを想起し得るものではない。 イ審決は 引用例1により 繊維製フィルタ 筒織裁断物 と伸縮性紐状体 ゴ ,,()(ム体)から成るフィルタを略板状物品(ガード)に取り付ける場合に,繊維性フィルタを,板状物品のフロント面の全面を完全に覆ったうえでその裏面にまで伸びるように配置し,伸縮性紐状体を板状物品の裏面に配置させる構造が教示されるとした上 「引用例5発明のカバーを個別の金属フィルタに適用する場合には,カバー ,,, のフィルタが金属フィルタの前面を覆ったうえでその裏面に至るようになし かつその環状紐状体を金属フィルタの裏面に配置させることとなし,これにより,カバーのフィルタは金属フィルタのフロント面を被包し,かつ,金属フィルタの裏面に位置する環状紐状体の収縮力で,フィルタを金属フィルタのフロント面で緊張させて金属フィルタに個別に固定ないしは取り付けるようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである」と判断した。 しかしながら,引用例1に記載されたフィルタは,ウーリー加工したナイロン生地にゴムを取り付けたものであり,ウーリー加工したナイロン生地自身が大きな伸縮性を有するために,フィルタへのゴムの収縮力の伝播がガードの周縁部で規制され,ゴムの収縮力は,ガードの裏面のうち,周縁部の内側に位置するフィルタにし。,, , か作用しない したがって 引用例1の記載から 伸縮性に乏しい不織布においてガードの裏面にゴムを位置させることを想起し得るものではない。 ( )相違点Dについての判断の誤り4審決は,訂正発明と引用例5発明との相違点Dにつき,上記相違点A及びBについての判断を前提とした上,引用例13,14を周知例として挙げ 「金属フィル,タの如きフィルタ部材をレンジフードの排気口に設置する場合,排気口の上下部に設けた溝に挿入することにより同部材を取付けることは,本件出願前に周知・慣用事項・・・となっている。してみれば,引用例5発明において,そのカバーを上記周知・慣用技術の使用形態で用いるときには,被カバー部材である金属フィルタが剛性で方形プレート状に形成することは当然のこととして具備するものであるし,また,その金属フィルタのレンジフードの排気口への設置に際し,フィルタ部材をレンジフードの排気口の溝に挿入する上記周知・慣用事項を適用し 『金属フ,ィルタは,上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能である』とすることに何らの困難も伴わない 」と判断した。。 しかしながら,審決の相違点A及びBについての判断が誤りであることは,上記( )のとおりであるから,審決の上記判断も誤りである。 2( )相違点Eについての判断の誤り5アまず,審決は,相違点Eに係る訂正発明の「前記フィルタは,個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し」との特定事項に関し,相違点Cについての判断を前提として 「カバーのフィルタは個別の金 ,属フィルタのフロント面を被包することになり,かつ ・・・金属フィルタに個別 ,に固定ないしは取り付けられるに至るものである。また,そのようにすることは,引用例1に記載の技術からみても困難なく適宜実施できるものである 」と判断し。 たが,審決の相違点Cについての判断が誤りであることは,上記( )のとおりであ3るから,審決の上記判断も誤りである。 また,審決は 「カバーのフィルタが金属フィルタを上記の如く覆い被包する場 ,合において,当該フィルタが金属フィルタの裏面を覆う範囲(ないしは被包程度)に関し,訂正発明のように『前記フィルタは ・・・,個別の金属フィルタの裏面 ,のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記金属フィルタに対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属フィルタを被包可能なサイズを有し』とすることは当業者が適宜なし得る設計事項に過ぎない「カバーのフィルタが金 」,属フィルタを・・・被包する範囲については,排ガスの浄化性,フィルタ材料の節約性,フィルタの装着性等を考慮して適宜設定できる設計事項に外ならないものであり,したがって,訂正明細書の第1図又は第3図で示される如き金属製フィルタ要素の裏面の領域を被包できるように,フィルターサイズないしは被包するところの金属製フィルタ要素のサイズを設定して,訂正発明の上記特定事項を具備するようにすることに何等の困難も伴わない 」と判断した。。 しかしながら,フィルタ材料の節約と金属フィルタへの装着性の観点からは,裏面を覆う範囲に関し 「排気口のうち前記金属フィルタに対応する部分を部分的に ,覆う内方域」に及ばせる必要は全く考えられない。各引用例等に記載されたものにおいても,ゴム紐などは,換気扇におけるフレームなどの支持体,レンジフードにおける金属製フィルタの側面や金属製フィルタの周縁部に位置しているにすぎず,「金属製フィルタの裏面の通気口を被包する」という発想は全くない。訂正発明のように,レンジフードの汚染を有効に防止するという目的のために,個別の金属製フィルタ要素の裏面における不織布フィルタによる油煙や塵芥の捕捉という効果に着目し,金属製フィルタ要素裏面の内方域である通気域にまで不織布フィルタを延在させることは,当業者であっても容易に想起し得ないものである。したがって,審決の上記判断も誤りである。 イ次に,審決は 「前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状 ,に形成されており」との特定事項について,板状体を柔軟シート体で被包する場合の一般的な不都合について言及した上 「引用例5発明のカバーのフィルタで金属 ,フィルタのフロント面を被包する場合には,上記不都合を避けるために,カバーのフィルタの形状を(紐状体を取り付ける前の形状を ,金属フィルタの四角形,す )なわち,方形状にあわせて,訂正発明のように『個別の金属フィルタに対応した相似形状の平面方形状』に形成することは,当業者が当然のこととして実施し得るものであり,むしろそのようにしないことの方が不自然でさえある 」と判断した。。 しかしながら,引用例1や引用例3に記載されたフィルタは,いずれも「金属製」 ,, フィルタに対応した相似形状の平面方形状 に形成されているものではなく また金属製フィルタにフィルタを用いた先行技術文献は数件しかない。したがって,審決の上記判断は,先行技術から自然に導かれるものではなく,訂正発明から得られた後知恵によるものである。 ,,「 , ウまた 審決は個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて,個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け,レンジフードの排気口に装着でき 」との特,定事項について 「相違点Cについての箇所で説示したとおり,引用例5発明の袋 ,状のカバーを板状の個別の金属フィルタに適用して金属フィルタのフロント面を覆うようにした場合には,カバーの伸縮可能な環状紐状体は金属フィルタの裏面に配置され,カバーのフィルタは金属フィルタの前面を被包することになるものである 」と判断した。。 しかしながら,引用例5発明では紐状体を枠体の端部等に掛止しているだけであるから,仮に引用例5発明を板状の個別の金属フィルタに適用したとしても,不織布フィルタの紐状体を金網フィルター部材の周縁部に掛止することしか想起できず,金網フィルター部材を不織布フィルタで覆って包み,金網フィルター部材の裏面に紐状体を位置させることは想起し得ない。特に,引用例5発明は,遮蔽部材等を有するレンジフード用換気扇を想定しているから,金網フィルター部材を,不織布フィルタにより上記形態で覆って包むことを想起することは困難である。 ( )相違点Fについての判断の誤り6審決は,訂正発明と引用例5発明との相違点Fにつき 「相違点Cについての箇 ,所で説示したとおり,引用例5発明の袋状のカバーを板状の個別の金属フィルタに適用して金属フィルタのフロント面を覆うようにした場合には,必然的に,カバーのフィルタは金属フィルタのフロント面の全てを覆い ・・・カバーのフィルタは ,個別の金属フィルタのフロント面を被包することになり ・・・引用例5発明の環 ,状紐状体は ・・・ 個別の金属製フィルタの裏面のうち,環状紐状体の収縮に対応 ,『し,位置する』ことができるものである「この場合,上記相違点Eの特定事項 。」,aについての箇所で記載したとおり,そのカバーのフィルタは 『・・・排気口の,うち前記金属フィルタに対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで・・・』とのサイズを有するようにすることは当業者が適宜なし得るものであり,したがって,当該フィルタがそのようなサイズを有する場合には,当該フィルタを『排気口のうち前記金属フィルタに対応する部分を部分的に覆う内方域に及ぶ位置』に位置させることができるものである「更に,この場合,当該環状紐状体は,該カバーの 。」,フィルタにおけるその周縁部に位置するものであって,カバーのフィルタの周縁部と,略,同じ位置に存在するものであるので,当該フィルタが『排気口のうち前記』, 金属フィルタに対応する部分を部分的に覆う内方域に及ぶ位置 に位置するときは当該環状紐状体を『排気口のうち前記金属フィルタに対応する部分を部分的に覆う内方域に及ぶ位置』に位置させることができるものである「上記相違点Dにつ。」,いての箇所で記載したとおり,金属フィルタのレンジフードの排気口への設置に際し,フィルタ部材をレンジフードの排気口の溝に挿入する周知・慣用事項を適用した場合においては,引用例5発明のカバーのフィルタないしはカバーは金属フィルタによりレンジフードの排気口に装着でき,その装着状態において,そのフィルタ及び環状紐状体の位置につき,上記したとおり,本件特定事項のように設定することは,当業者が困難なく適宜実施できるものである 」と判断した。。 しかしながら,上記のとおり,引用例5発明と上記周知慣用技術とは,レンジフードの構造や取付け構造が全く異なるのであるから,そもそも,引用例5発明を上,, 記周知慣用技術の板状の個別の金属フィルタと関連付けることが困難であり 仮に引用例5発明を板状の個別の金属フィルタに適用したとしても,引用例5発明は,紐状体を枠体の端部等に掛止するのみであり,また,周知慣用技術は,不織布フィルタの両側部を単に金網フィルタ部材に重ねているだけであるから,不織布フィルタにより,金属フィルタのフロント面を覆って包むことは想起し得ないのであり,, 。 そうであれば 相違点Fに係る訂正発明の特定事項も当然想起することはできない5取消事由5(容易想到性判断2の誤り)( )審決は,訂正発明に係る独立特許要件の判断において,訂正発明が,引用1例3発明並びに引用例1,2,4〜17記載の各発明及び周知慣用技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものと判断した(容易想到性判断2)が,以下のとおり,誤りである。 ( )相違点イについての判断の誤り2ア審決は,訂正発明と引用例3発明との相違点イにつき,引用例5,引用例11及び実公平7-12824号公報を周知例として引用し 「調理用排ガスを処理 ,する当該分野においては 『不織布フィルター部とその周縁部に設けたリング状伸 ,縮性紐状体とからなり,その外観が浅い袋状の形状をなす調理用排ガス浄化用カバー体を,その紐状体の収縮力により,調理用排ガス処理機器の前面に位置する部材に着脱自在に取り付けること』は,本件出願前に周知・慣用事項・・・となっており「引用例3発明において,個別に金網フィルター部材のフロント面をカバー ,」,し,金網フィルター部材に取り付けられているところのレンジフード用フィルター装置を,上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けたリング状収縮性紐状体とからなるところのカバー体で,個別に,置換することは当業者が適宜なし得るものであり,その際,個別の金網フィルター部材に対して当該カバー体を取り付けることに何等の困難も伴わない 」と判断した。。 しかしながら,引用例3発明のフィルタはシート状であり 「外観が浅い袋状の,形状をなす」カバー体は,引用例3に記載も示唆もないから 「外観が浅い袋状の,形状をなす」カバー体を引用例3発明と関連付ける合理的な動機付けはない。 のみならず,引用例3発明のフィルタは,金網フィルタ部材の両側部を包むものではないが,審決が挙げる上記周知例も,換気扇の側部の枠体に伸縮性紐を係止しているにすぎず,側部の枠体を被包することは開示されていない。そこで,仮に,引用例3発明において,不織布フィルタ部で金網フィルタ部材の両側部を包むとすると,不織布フィルタ部の袋状端部の幅を金網フィルタ部材の端部の幅より大きくして,金網フィルタ部材の端部を収容することになるが,このような状態で,不織布フィルタ部の両側部を折り曲げて金網フィルタ部材の両側部を包むと,袋状端部の厚みが大きくなるため,金網フィルタ部材をレンジフードに装着することができなくなるだけでなく,不織布フィルタ部の他方の端部での折り曲げが規制され,これを係止部材に巻き込むことができなくなる。 ,, , したがって 引用例3発明において 金網フィルタ部材のフロント面をカバーし金網フィルタ部材に取り付けられているレンジフード用フィルタ装置を,上記周知慣用の不織布フィルタ部とその周縁部に設けたリング状伸縮性紐状体とからなるカバー体で置換することは,当業者といえども困難であり,審決の上記判断は誤りである。 イまた,審決は,引用例1により,繊維製フィルタ(筒織裁断物)と伸縮性紐状体(ゴム体)から成るフィルタを略板状物品(ガード)に取り付ける場合に,繊維性フィルタを,板状物品のフロント面の全面を完全に覆ったうえでその裏面にまで伸びるように配置し,伸縮性紐状体を板状物品の裏面に配置させる構造が教示されるとした上 「引用例3発明の金網フィルター部材に・・・不織布フィルター部 ,とその周縁部に設けたリング状収縮性紐状体とからなるカバー体を適用する場合,上記教示に従い,不織布フィルタ部が金網フィルタ部材のフロント面を覆ったうえでその裏面に至るようになし,かつ,カバー体のリング状収縮性紐状体を金網フィルタ部材の裏面に配置させることにより,その不織布フィルタ部が金網フィルタ部材のフロント面を被包し,かつ,裏面に位置するリング状収縮性紐状体がその収縮力で不織布フィルタ部を金網フィルタ部材のフロント面で緊張下に金網フィルタ部材に固定ないしは取り付けるようになすことは当業者が困難なく適宜なし得るものである 」と判断した。。 しかしながら,引用例1の記載から,伸縮性に乏しい不織布において,ガードの裏面にゴムを位置させることを想起し得るものではないことは,上記4の( )のイ3のとおりであり,審決の上記判断も誤りである。 ( )相違点ロについての判断の誤り3審決は,訂正発明と引用例3発明との相違点ロにつき 「引用例3発明の金網フ ,ィルター部材につき,その図1の記載をみれば,金網フィルター部材の両端面・・・が共に厚みの薄い平板形状を呈していることがわかる。そうであれば,レンジフードの吸気口に溝(又はスリット)が設けられている場合には,引用例3発明の金網フィルター部材は,訂正と同じように 『その上端部が排気口の上部に形成され ,た溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能である』といえるものである。したがって,この特定事項は,両者の実質上の相違点とはなり得ないものである 」と判断したが,引用例3には,レンジフード 。 の吸気口における金網フィルタ部材の装着用溝やスリットは,全く記載されていないから,上記判断は誤りである。 ( )相違点ハについての判断の誤り4ア審決は,まず,相違点ハに係る訂正発明の「前記フィルタは,個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し 」との特定,事項に関し 「引用例3発明において,金網フィルター部材に取り付けられている ,レンジフード用フィルター装置を,上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けられたリング状収縮性紐状体を有するカバー体で置換すること,そして,その場合,リング状収縮性紐状体を金網フィルター部材の裏面に配置すること,かつ,不織布フィルター部で金網フィルター部材のフロント面を被包することは,当業者が適宜実施できるものである「この場合,当該。」,不織布フィルター部は,金網フィルター部材の裏面に配置するリング状収縮性紐状体の収縮力により,少なくとも金網フィルター部材の周縁部を含む裏面の一部を覆い,被包することになるものである 」と判断した。。 しかしながら,引用例3発明は,不織布フィルタ部の両側部で金網フィルタ部材の両側部を覆い包むものではなく,また,周知例として引用されている文献に記載された発明でも,換気扇の側部の枠体に伸縮性紐を掛止しているにすぎず,換気扇の側部の枠体を覆って包んではいない。このように,引用例3及び周知例には,不織布フィルタで被包する(覆い包む)ことは,開示も示唆もされていないから,引用例3発明に上記周知慣用技術のカバー体を適用しても,金属製フィルタを不織布フィルタで被包することは導き出すことはできない。 また,審決は 「不織布フィルター部が金網フィルター部材を上記の如く覆い被 ,包する場合において,金網フィルター部材の裏面において当該不織布フィルター部が覆い被包する範囲については,排ガスの浄化性,不織布フィルター部材料の節約性,不織布フィルター部の装着性等を考慮して適宜設定できる設計事項に外ならないものであり,したがって ・・・金属製フィルタ要素の裏面の領域を被包できる ,ように,不織布フィルター部のサイズないしは被包するところの金網フィルター部材のサイズを設定して,訂正発明のように『個別の金網フィルター部材の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記金網フィルター部材に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金網フィルター部材を被包可能なサイズを有し』との特定事項を具備するようにすることに何等の困難も伴わない 」とも。 判断したが,この判断が誤っていることは,上記の( )のアのとおりである。 5イ次に,審決は,相違点ハに係る訂正発明の「前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されており 」との特定事項に関し,板状体を柔 ,軟シート体で被包する場合の一般的な不都合について言及した上 「引用例3発明,において,金網フィルター部材に取り付けられているレンジフード用フィルター装置を,上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けられたリング状収縮性紐状体を有するカバー体で置換し,その不織布フィルターで金網フィルター部材を被包する場合には,上記不都合を避けるために,不織布フィルターの形状を,金網フィルター部材の四角形,すなわち,方形状にあわせて,訂正発明のように『個別の金網フィルター部材に対応した相似形状の平面方形状』に形成することは,当業者が当然のこととして実施し得るものであり,むしろそのようにしないことの方が不自然でさえある 」と判断したが,この判断が誤り 。 であることは,上記4の( )のイと同様である。 5ウさらに,審決は,相違点ハに係る訂正発明の「個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて,個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け,レンジフードの排気口に装着でき 」との特定事項に関し 「引用例3発明において ・・・レン ,,,ジフード用フィルター装置を ・・・不織布フィルター部とその周縁部に設けられ ,たリング状収縮性紐状体を有するカバー体で置換すること,そして,その場合,リング状収縮性紐状体を金網フィルター部材の裏面に配置することは,当業者が適宜実施できるものである「このようにリング状収縮性紐状体を金網フィルター部 。」,材の裏面に配置すれば,必然的に,その紐状体の収縮により,前記金網フィルター部材のフロント面の不織布フィルター部に緊張力又は牽引力が作用するものであり,その結果,当該フィルター部が金網フィルター部材に取り付けられ,レンジフードの吸気口に装着できるように至るものである 」と判断したが,引用例3及び 。 周知例に,金網フィルタ部材を不織布フィルターで被包する(覆い包む)ことが開示も示唆もされていないことは,上記アのとおりであり,上記特定事項を当事者が適宜実施することは困難である。 ( )相違点ニについての判断の誤り5, ,「, 審決は 訂正発明と引用例3発明との相違点ニにつき引用例3発明において周知・慣用事項(必要ならば,相違点イについての箇所を参照)となっているカバー体を適用し,かつ,フィルタ部材をレンジフードの排気口の溝に挿入する慣用事項(必要ならば,相違点ロについての箇所を参照)を適用した場合において,当該特定事項ニを具備するようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである 」と判断したが 「外観が浅い袋状の形状をなす」カバー体を引用例3発明と関 。,連付ける合理的な動機付けがないことは,上記( )のアのとおりであり,また,引2用例3に,レンジフードの吸気口における金網フィルタ部材の装着用溝やスリットは,全く記載されていないことは,上記( )のとおりであるから,審決の上記判断3は誤りである。 6取消事由6(訂正発明の作用効果についての認定の誤り)審決は 「引用例5発明において相違点A〜Fに係る特定事項を具備することに ,より,ないしは,組み合わせて具備することによって格別予想し難い効果を奏したといえるものではない「引用例3発明において,上記相違点イ〜ニに係る特定事 」,項を具備することにより,ないしは,組み合わせて具備することにより格別予想し難い効果を奏したといえるものでもない 」として,訂正発明が予想し難い効果を 。 奏するものではないと判断した。 しかしながら,訂正発明は,不織布フィルタの周縁部に取り付けられたリング状伸縮性紐状体により,金属製フィルタ要素の裏面の内方域においても,排気口のうち個別の金属製フィルタ要素に対応する部分を,部分的に不織布フィルタで覆うことができるため,フロント面で捕捉できなかった油煙や塵芥を金属製フィルタ要素の裏面に位置する不織布フィルタにより捕捉することができるという効果を奏するのみならず,レンジフードの内側上部から流下した油分や,ファンに付着し,その回転駆動により飛散した油分をも,裏面の不織布フィルタで効率よく捕捉することができるという効果を奏するものである。そして,このような効果は,各引用例に記載されたものでも,周知事項でもないから,予測し難い顕著な作用効果というべきである。 なお,この点につき,審決は,本件明細書又は願書に最初に添付した明細書及び図面に 「 前記フィルタは,個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし, ,『個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し』との特定事項が記載されておらず ・・・当然のこ,ととして ・・・訂正発明が当該特定事項を具備することにより請求人の主張する ,ような作用・効果につき教示ないしは示唆されるものは何もない」として,当該作用効果に基づく主張を排斥するが,本件明細書(甲第10号証)には 「金属製フ,ィルタの裏面の紐状体により,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させる。すなわち,金属製フィルタの裏面での紐状体の収縮により,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて,金属製フィルタに対してフィルタを取り付け(段落【「フィルタ2は ・・・金属製フィルタをカバー又 ,」】),,0009は被包する (段落【「前記フィルタ2は,各金属製フィルタ要素・・・を 」】), 0012カバー又は被包可能な広さを有している(段落【)との各記載があり,こ 。」】 0014れらの記載及び第1,第3図から,上記特定事項を導くことができるから,審決の上記判断は誤りである。 第4被告の反論の要点1取消事由1(本件手続補正を要旨変更とした誤り)に対し( )補正事項aについて1訂正明細書の請求項1は 「個別の金属製フィルタ要素」との語句と「金属製フ ,ィルタ要素」との語句とを区別して用いている。そして 「前記金属製フィルタ要 ,素は剛性で方形プレート状に形成されているとともに,上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり 」との規定における「前記金属製フィルタ要素」との語句は, ,それが複数の要素又は個別の要素であるとの規定はないから,先に規定したところの複数ないしは個別の金属製フィルタ要素を含む態様だけでなく,単一の金属製フィルタ要素を含む態様の双方の態様を含み得るものである。したがって,補正事項aにおける「前記金属製フィルタ要素」を「前記個別の金属製フィルタ要素」とする補正は,訂正事項の同一性を損なうものである。 ( )補正事項bについて2ア訂正明細書の請求項1における「前記フィルタは ・・・,個別の金属製フ ,ィルタ要素の裏面のうち ・・・,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部 ,分的に覆う内方域に及んで・・・被包」の記載は,その意味するところが著しく不明瞭であるところ,これを,補正明細書のとおり 「前記フィルタは ・・・,個別 ,,の金属製フィルタ要素の裏面のうち ・・・,かつ排気口のうち前記要素に対応し ,」, て通気する部分を部分的に覆う内方域に及んで・・・被包 との記載に補正しても, 。,, その意味するところは やはり不明瞭という外はない このように 補正事項bは補正前の不明瞭な記載を,補正後であっても不明瞭である記載に補正するものであ,, 。 るから そもそも 補正前後における訂正事項が同一であるといえるものではない,「 」, イ補正事項bは排気口のうち前記要素に対応する部分 との規定においてその「部分」に対して「通気する」ことを別途限定もしくは付加し,又はその「対応する」を 「対応して通気する」ことに限定もしくは付加するものであって,少 ,なくとも 「通気」という新たな特定事項を導入するものであるから,補正事項b ,による補正は,明らかに審判請求書の要旨を変更するものである。 原告は,訂正明細書の請求項1において,補正事項bに係る「排気口」は,通気することが必須の場所であり 「排気口のうち」とは 「通気する排気口のなかで」 ,,という意味であると主張するが,レンジフードの排気口は,排気という処理に供されれば足りるものであって 「外気導入」の概念を含む通気という処理に供されな ,,「」 「」 ければならないものではないから排気口のうち を 通気する排気口のなかでとすることは 「通気」という広い概念を導入して「排気口のうち」との記載を拡 ,大して解釈したことになり,この解釈を前提とする原告の主張は成り立ち得ない。 ( )補正事項cについて3上記( )と同様の理由で,補正事項cに係る補正をすることにより,補正前と補1正後における訂正事項の同一性が損なわれるものである。 ( )補正事項dについて4上記( )と同様の理由で,補正事項dに係る補正をすることにより,補正前と補2正後における訂正事項の同一性が損なわれるものである。 2取消事由2(訂正の目的等の適否についての判断の誤り)に対し( )訂正の目的の適否について1ア訂正事項(イ-2)について訂正明細書の請求項1における,訂正事項(イ-2)に係る箇所では 「前記個,別の金属製フィルタ要素」ではなく 「前記金属製フィルタ要素」と記載されてい ,るところ 「前記金属製フィルタ要素」との語句は,必ずしも,個別の金属製フィ ,ルタ要素を意味するものではなく,請求項1において,他に「個別の金属製フィルタ要素 について記載されているからと行って 上記訂正事項 イ-2 に係る 前 」 ,()「記金属製フィルタ要素」が 「個別の金属製フィルタ要素」の意味であるというこ ,とはできない。 原告は,訂正明細書が 「金属製フィルタ要素」との語句を 「個別の金属製フィ , ,ルタ要素」と同義の部材を示すものとして使用していると主張するが,訂正明細書の請求項1の記載全体からみると 「金属製フィルタ要素」と「個別の金属製フィ ,ルタ要素」とが同義(又は,同一)であるということはできない。 そうすると訂正事項(イ-2)に係る訂正は,発明を拡張させることから,その訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするもの,誤記又は誤訳の訂正,明りょうでない記載の釈明を目的とするもののいずれにも該当せず,審決の同旨の判断に誤りはない。 イ訂正事項(イ-4)について上記アと同様の理由で,訂正事項(イ-4)に係る訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするもの,誤記又は誤訳の訂正,明りょうでない記載の釈明を目的とするもののいずれにも該当せず,審決の同旨の判断に誤りはない。 ( )新規事項の追加について2ア訂正事項(イ-3)について訂正明細書の請求項1において,訂正事項(イ-3)に係る「排気口のうち前記要素に対応する部分」との特定事項及び当該特定事項を含む請求項1の記載は,その意味内容が著しく不明瞭であることは,審決の説示のとおりであり,そうとすれば,訂正事項(イ-3)に係る訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたということができず,審決の同旨の判断に誤りはない。 イ訂正事項(イ-6)について上記アと同様の理由で,訂正事項(イ-6)に係る訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたということができず,審決の同旨の判断に誤りはない。 ( )拡張・変更について3訂正事項(イ-2)及び同(イ-4)に係る訂正が発明を拡張させるものであることは,上記( )のとおりであるから,審決の判断に誤りはない。 23取消事由3(明確性判断の誤り)に対し訂正明細書の請求項1において,訂正事項(イ-3)及び同(イ-6)に係る各「排気口のうち前記要素に対応する部分」との特定事項及び当該特定事項を含む請求項1の記載は,その意味内容が著しく不明瞭であることは,上記2の( )のとお2りであり,審決の明確性判断に誤りはない。 4取消事由4(容易想到性判断1の誤り)に対し( )引用例5発明のカバーで金属製フィルタを被包することの容易想到性につ1いて審決は,引用例5発明につき,換気扇に取り付ける前の換気扇カバーそれ自体を基に認定したものであって(審決書18頁2〜23行 ,引用例5発明のカバーの )使用形態は,引用例5の実施例に記載される換気扇に取り付けられる場合に限定されるものではなく,引用例5に具体的に示されていない,周知又は公知の換気扇等に使用する形態を幅広く含み得るものである。 しかるところ,引用例5発明のカバー(フィルタ)を,周知慣用技術である,レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設された,複数の金属製フィルタを覆うためのものとすること,及び,その場合に,引用例5発明のカバーを,個別の金属製フィルタのフロント面をカバーするように覆うものとすることが,当業者において直ちに想到し得るものであることは,審決書19頁34行〜20頁35行の記載のとおりであり,また,引用例5発明のカバーを,個別の金属フィルタのフロント面をカバーするように覆うものとする場合に,金属フィルタのフロント面を被包し,金属フィルタの裏面に位置する環状紐状体の収縮力で,フィルタを金属フィルタのフロント面で緊張させて,金属フィルタに個別に固定,又は取り付けるようにすることが,当業者において困難なく想到し得ることは,審決書21頁2行〜37行の記載のとおりである。 ( )金属製フィルタの裏面を覆う範囲を定めることの想到容易性について 2ア引用例5発明のカバー(フィルタ)により金属製フィルタを被包する場合において,そのフィルタが金属フィルタの裏面を覆う範囲は,フィルタの大きさ(平面サイズ)と金属フィルタの大きさ(平面サイズ)との関係によって,どのようにでも定め得るものであるところ,その範囲の設定は,排ガスの浄化性,フィルタ材料の節約性,フィルタの装着性等を考慮して,当業者が適宜定め得る設計事項であ,「, , り 訂正発明の 前記フィルタは ・・・個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有」するとの特定事項を備えることも,当業者が何らの困難も伴わずなし得ることは,審決書23頁13行〜24頁2行の記載のとおりである。 イ原告は,訂正発明のように,レンジフードの汚染を有効に防止するという目的のために,個別の金属製フィルタ要素の裏面における不織布フィルタによる油煙や塵芥の捕捉という効果に着目し,金属製フィルタ要素裏面の内方域である通気域にまで不織布フィルタを延在させることは,当業者であっても容易に想起し得ないものであると主張する。 しかしながら,訂正明細書及び図面には,訂正発明のフィルタ又はリング状縮性紐状体が,その装着時において,金属製フィルタ要素の裏面に延在又は位置させることが記載されているものの,その延在又は位置させる箇所については,フィルタを金属製フィルタ要素に装着する観点からのみ定められているにすぎず,当該フィルタ又は当該紐状体が,金属製フィルタ要素の裏面の通気領域を覆う又はそこに位置させることについて,着目したものではなく,まして,その裏面の通気領域を覆う場合の利点につき検討した形跡は窺われない。 そうすると,個別の金属製フィルタ要素の裏面における不織布フィルタによる油煙や塵芥の捕捉という点は,明細書又は図面の記載に基づく訂正発明の効果ということはできないから,原告の上記主張は失当である。 5取消事由5(容易想到性判断2の誤り)に対し審決(26頁19行〜33頁末行)の判断に誤りはなく,原告の主張は失当である。 6取消事由6(訂正発明の作用効果についての認定の誤り)に対し原告の主張は失当である。 第5当裁判所の判断1取消事由1(本件手続補正を要旨変更とした誤り)について便宜上,補正事項bから検討する。 , 「,, ( )補正事項bは 本件明細書の請求項1における ・・・ 前記フィルタは1・・・,金属製フィルタのフロント面を被包可能なサイズを有し ・・・」との記,載につき,本件訂正審判請求書において「・・・,前記フィルタは ・・・,個別,の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し ・,・・」との記載に訂正するとしたものを 「・・・,前記フィルタは ・・・,個別 , ,の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応して通気する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し ・・・」との記載に補正するとするものであって,具体的な補正事項は,訂 ,正明細書の請求項1に係る「前記フィルタは ・・・,かつ排気口のうち前記要素 ,に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで・・・被包」との訂正事項を 「前,記フィルタは ・・・,かつ排気口のうち前記要素に対応して通気する部分を部分 ,的に覆う内方域に及んで・・・被包」との訂正事項に補正するものである。 そうすると,補正事項bは,訂正明細書に係る訂正事項の「排気口のうち前記要素に対応する部分」との記載に係る「部分」の語句に対し,新たに「通気する」との限定を付したものであるか,又は 「対応する」との語句を,新たに「対応して ,通気する」と限定又は変更したものであって 「通気(する 」との新たな特定事項 ,)を導入したものであるから,本件訂正審判請求書によって訂正を求める事項の一部を変更するものであることは明白である。 ( )しかるところ,原告は,訂正明細書の請求項1に係る上記記載において,2@「排気口」が,複数の金属製フィルタ要素が配設され,通気することが必須の場所であり,A「排気口のうち前記要素に対応する部分」とは 「通気する排気口の,なかで(又は区域内において)前記要素と相対する関係(一対一の関係)にある部分 ,すなわち「要素と相対する関係にある通気する部分」ということであり,B 」剛性の方形プレート状に形成された個別の金属製フィルタ要素は,それぞれ,四角枠状の非通気性外周域(又は外周枠)と,この外周域の内側に形成された多数の孔を有する四角形状の通気域とで構成されていることを理由に挙げて,補正事項bに係る補正前の「排気口のうち前記要素に対応する部分」が 「通気する部分」以外 ,のものを意味することはないと主張する。 しかしながら,上記原告の主張は,結局,個別の金属製フィルタ要素には,非通気域(外周域又は外周枠)と通気域(外周域の内側)とが存在することを前提として,訂正明細書に係る訂正事項の「排気口のうち前記要素に対応する部分」が,排気口のうちの金属製フィルタ要素の通気域の部分のみを意味していると主張することに帰着するところ,訂正明細書の請求項1には,金属製フィルタ要素の外周域又は外周枠が非通気域であることは規定されておらず,そのことが技術常識であると認めるに足りる証拠もない。 のみならず,仮に,金属製フィルタ要素の外周域又は外周枠が非通気域であることを前提とするとしても,原告の主張を採用することはできない。 すなわち,まず,訂正明細書に係る訂正事項の「排気口のうち前記要素に対応する部分」との規定は 「排気口のうち前記要素(金属製フィルタ要素)が存在する ,部分」という意味に解することができるとしても,これをさらに限定した「排気口のうち金属製フィルタ要素の(一部分である)通気域が存在する部分」という意味であると解する根拠は存在しない。 もっとも,この点につき,原告は 「排気口」が,通気することが必須の場所で ,あるとして,通気しない箇所(例えば,金属製フィルタ要素の非通気域である外周域又は外周枠が位置する箇所)は 「排気口」ではないかのように主張する。しか ,, ,,「」 , しながら 訂正明細書の請求項1の記載には 本件訂正発明につき排気口 は<ア>複数の金属製フィルタ要素で構成された金属製フィルタが着脱可能に配設されるものであり,<イ>上部に金属製フィルタ要素の上端部が挿入可能な溝又はスリットが,下部に金属製フィルタ要素の下端部が挿入可能な溝が,それぞれ形成されており,<ウ>金属製フィルタ要素に対応する部分を有するものであることのみが規定されており,金属製フィルタ要素の非通気域である外周域又は外周枠が位置する箇所が「排気口」から除外されることを窺わせるような規定はないのみならず,上記<ア> <イ>の規定は 非通気域を含めた金属製フィルタが着脱可能に配設される あ ,, (るいは,溝又はスリットに挿入される)との意味と解されるから,金属製フィルタ要素の非通気域である外周域又は外周枠が位置する箇所も「排気口」であることが読み取れるものである。さらに,本件訂正発明は,複数の金属製フィルタ要素が,「排気口」に配設されるものであるところ,同形,同大の2枚の金属製フィルタ要素を横並びにして排気口の全面に配設した場合を想定すると,各金属製フィルタ要素には,他の金属製フィルタ要素と接する辺域に非通気域が存在するから 「排気,口」のほぼ中央に非通気領域が形成されることになるが,仮に,非通気域が「排気口」でないとすれば,上記「排気口」のほぼ中央に形成された非通気領域は「排気口」でないこととなり,さらに,上記2枚の金属製フィルタ要素の大きさ・形状が(,, ), 変われば 例えば 1枚の横幅が減少し これに応じて他1枚の横幅が増大すれば上記非通気領域が移動し,それに伴って 「排気口」でない部分も移動することに ,なるが,このように,本来,レンジフードを構成する部材ではない金属製フィルタ要素によって,レンジフードの構成要素である「排気口」が規定されるとするのは不自然というほかない。原告の上記主張は,明らかに失当である。 , 「 」 したがって 補正事項bに係る補正前の 排気口のうち前記要素に対応する部分が 「通気する部分」以外のものを意味することはないとの原告の主張を採用する ,ことはできないから,補正事項bは,本件訂正審判請求書の要旨を変更するものというべきであり,そうであれば,補正事項a,c,dにつき判断するまでもなく,本件手続補正に係る補正事項は特許法131条の2第1項の規定を満たさず,本件手続補正を認めることはできないとした審決の判断に誤りはない。 2取消事由3(明確性判断の誤り)について上記のとおり,本件手続補正を認めることはできないとした審決の判断に誤りはないから,本件訂正審判請求に係る訂正の可否は,本件訂正審判請求書の訂正事項に基づく訂正(本件訂正)について判断すべきところ,この点についての審決の判断のうち,まず,独立特許要件の具備の有無に関してした,明確性判断の当否の点から判断する。 ( )審決の明確性判断は,本件訂正後の請求項1の記載のうち,訂正事項(イ1-3)に係る「前記フィルタは ・・・,個別の金属製フィルタ要素のフロント面 ,をカバーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し 」との記載及び訂正事項(イ-6)に ,係る「排気口への装着状態において,紐状体が,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置する」との記載が,不明又は不明瞭であり,その意味するところが一義的に定まらないから,訂正発明が明確であるということができず,訂正発明につき,特許法36条6項2号に規定する要件を満たさないというものである。 しかるところ,訂正事項(イ-3)に係る上記記載は,フィルタのサイズを規定するものであり,フィルタが被包可能である,個別の金属製フィルタ要素のフロント面及び裏面双方の範囲を規定することにより,フィルタサイズを規定しようとするものと認められるところ,このうち 「フロント面」についての範囲は,その全 ,面であることが規定されているものと認められるが 「裏面」についての範囲に関 ,する規定は,明瞭ではなく,その意味することが一義的に定まるものということはできない。 すなわち,裏面についての範囲に関する規定は 「個別の金属製フィルタ要素の ,裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで」というものであり,このうち 「紐状体の収縮に対,応し 」の部分については,収縮してフィルタを緊張させたリング状伸縮性紐状体 ,により形成されるリングの外側が,フィルタによって覆われる部分となることは当然であるから,格別新たな特定事項を含むものでないとしても,その規定自体は明瞭であるといえる。しかしながら 「排気口のうち前記要素に対応する部分を部分 ,的に覆う内方域に及んで」との部分については 「排気口のうち前記要素に対応す ,る部分」が,排気口を断面的に見た場合に,その断面のうちの個別の金属製フィルタ要素が存在する部分と解されるとしても(そのように解する以外に,意味のある解釈はできない,これに続く「部分的に覆う」の語句については,日本語の用法 。)から見て,覆われる客体は「排気口(のうちの個別の金属製フィルタ要素が存在する部分 」と解する以外になく,他方,覆う主体については 「フィルタ」又は「個 ) ,」,「」, 別の金属製フィルタ要素 のいずれかしかないがフィルタ と解したとすると「フィルタが,排気口(のうちの個別の金属製フィルタ要素が存在する部分)を部分的に覆う」という,それ自体,意味不明な内容となるとともに,これに続く「内方域」との語句との繋がりの趣旨も明らかではない。また,覆う主体を「個別の金属製フィルタ要素 と解したとすると個別の金属製フィルタ要素が 排気口 の 」,「 ,(うちの個別の金属製フィルタ要素が存在する部分)を部分的に覆う」という,文言自体が矛盾を含み,やはり意味不明な内容となる上に,これに続く「内方域」との語句との繋がりの趣旨も明らかではない。なお 「内方域」の語句に関しては,そ ,れが,何の内方域であるのかが明示されておらず 「個別の金属製フィルタ要素」 ,の内方域である場合と 「排気口」の内方域である場合の両方が考えられるが,い ,ずれにしても,この語句を修飾し,特定する「排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う」の文言が,上記のとおり,意味不明である以上 「内方域」の,意味も明らかであるとはいえない。 ( )原告は 「排気口のうち前記要素に対応する部分」との文言につき 「通気2 , ,する排気口のなかで(又は区域内において)前記要素と相対する関係(一対一の関係)にある部分 ,すなわち「要素と相対する関係にある通気する部分」の意味で 」あるなどと主張するが,この主張が失当であることは上記1のとおりであるほか,「排気口のうち前記要素に対応する部分を「部分的に覆う「内方域」の各文 」,」,言が,一連のものとして,明瞭な意味を有することを明らかにするような主張はない。 ( )したがって,訂正事項(イ-3)に係る記載は,不明瞭であり,その意味3するところが一義的に定まらないから,訂正事項(イ-6)に係る記載について判断するまでもなく,訂正発明が明確であるということができず,訂正発明につき,特許法36条6項2号に規定する要件を満たさないとした審決の判断に誤りはない。 3取消事由4(容易想到性判断1の誤り)について次に,独立特許要件の具備の有無に関して,審決がした容易想到性判断1の当否につき判断する。 ( )「相違点A及びBについての判断の誤り」との主張について1ア原告は,引用例5発明と,引用例3に記載されたような金属製フィルタの両端部で不織布フィルタを係止又は固定する周知慣用技術とは,発明の構成及び作用が大きく相違し,引用例5発明と上記周知慣用技術とを関連づけることは困難であるから 「引用例5発明の『不織布からなるフィルタと,該フィルタの周縁部に設 ,けられ,かつ上記周縁部を収縮可能な環状紐状体とを有するレンジフード用換気扇カバー』を ・・・ レンジフードのフード内の排気口の位置に着脱自在に設けられ ,『た剛性で四角形板状の金属フィルタにつき,その表面側を覆う』という使用形態で用いることに何等の困難も伴わないものであり」とした審決の判断は誤りであると主張し,また,引用例5及び周知例によっては,不織布フィルタで金属製フィルタを被包することまでは導き出せないとも主張する。 イしかるところ,引用例5には,以下の記載がある。 (ア)「 産業上の利用分野]本考案は,使い捨て方式で換気口に取付け可能な [換気扇カバーとその取付構造に関する(1頁15〜17行) 。」(イ)「 従来の技術と考案が解決しようとする課題]従来,塵芥や異物の流入 [により,羽根の損傷,モータの負荷の増大や故障を防止するため,室内等の換気口に換気扇カバーが装着されている。この換気扇カバーは,通常,方形状の換気口に適合した所定寸法の枠体と,該枠体に取付けられたフィルタとで構成されている。 しかしながら,換気扇が取付けられた換気口は,効率的に換気するため,換気部の容積や換気量等に応じて種々の大きさに設定されている ・・・従って,上記構 。 造の換気扇カバーでは,大きさの異なる換気口に対処できず,多種類の換気扇カバーを用意する必要がある。また上記換気扇カバーは,その構造が複雑で,枠体等を必要とするため,コスト高となる。上記の点に鑑み,ウーリーナイロン製の筒状の生地のうち一方の開口部を結束し,他方の開口部の周縁部を袋状とし,該袋状部にゴム紐を通した換気扇カバーが提案されている・・・。一方,換気扇は,換気口の前面が遮蔽部材で遮蔽されたタイプの換気扇と,換気口の前面が遮蔽されていない開口状態のタイプの換気扇とに大別される。また前者のタイプの換気扇としては,汚れた羽根を遮蔽し,美観をよくするため,換気口の前面が美装パネル等の遮蔽部材で覆われ,該パネルの側方開口部から吸引する換気扇や,換気口の前面が横方向等に並設された格子部材からなる遮蔽部材で遮蔽された換気扇が知られている。しかしながら,このタイプの換気扇に前記従来の換気扇カバーを適用すると,結束部を有しているため,外観が著しく損なわれる。また後者のタイプの換気扇に適用すると,フィルタがナイロン製生地で形成されているため,換気扇の吸引力により,換気扇カバーが換気扇に吸込まれ虞がある。従って,換気扇の羽根が損傷したり,モータの負荷が増大したり,故障したりする原因ともなり,排気が阻害される場合がある。さらには,ナイロン製生地で形成されたフィルタは燃え易く,安全性が十分でない(1頁18行〜3頁末行) 。」(ウ)「本考案の目的は,上記問題点に鑑みてなされたものであり,換気口の大きさが異なっていても,容易に取付けることができる安価な換気扇カバーを提供することにある。また本考案の他の目的は,換気扇の前面が遮蔽されているか否かに拘わらず,柔軟なフィルタであっても外観が良好で換気扇へ吸込まれることのない換気扇カバーの取付構造を提供することにある(4頁1〜8行)。」(エ)「 課題を解決するための手段及び作用]本考案は,換気口に取付けられ [る換気扇カバーであって,該換気扇カバーが,フィルタと,該フィルタの周縁部に設けられ,かつ上記周縁部を収縮可能な紐状体とを有する換気扇カバーにより,上記課題を可決するものである。上記構成の換気扇カバーによれば,フィルタの周縁部には,該周縁部を収縮可能な紐状体が設けられているため,換気口を換気扇カバーで被冠し ・・・紐状体を収縮性材料で形成することにより,換気口の大きさ ,が異なっていても換気扇カバーを容易に取付けることができる(4頁9〜末行)。」(オ)「 実施例 ・・・換気扇カバーは,フィルタ(1)と,該フィルタ(1)の []周縁部に設けられた収縮性紐状体(2)とを有し・・・フィルタ(1)は,その中央部を余した周縁部が全周に亘り内方へ折曲され,開口部(4)を有する袋状に形成されている。なお,フィルタ(1)は,通気性を有する材料で形成されていればよいが,難燃性不織布で形成されているのが好ましい(5頁13行〜6頁7行) 。」(カ)「フィルタ(1)のうち開口部(4)の縁部は,フィルタ(1)と固着又は縫合することにより,環状挿通孔(3)が形成されている。この環状挿通孔(3)には,フィルタ(1)の周縁部の長さよりも短く,収縮性を有する材料,例えば,合成ゴム等からなる環状の紐状体(2)が配されている(6頁15〜末行)。」(キ)「上記構造の換気扇カバーによると,換気口の前面が遮蔽部材等で遮蔽された換気扇に適用する場合には,紐状体(2)を伸張させ,開口部(4)を大きくした状態で,換気口(5)を換気扇カバーで被冠し,換気口(5)の枠部材(6)の端部等に紐状体(2)を掛止した状態で紐状体(2)を解放することにより,換気扇カバーを容易に取付けることができる。また取付け状態においては,フィルタ(1)が上記遮蔽部材により支持されるので,柔軟なフィルタ(1)であっても,換気扇(7)の吸引力によりフィルタ(1)が換気口(5)に吸引されることがない。さらには,フィルタ(1)の中央部が取付状態において平面部(1a)を形成,(),。, するので 換気口のフィルタ 1 は面一となり 美観を損ねることはない なおフィルタ(1)の大きさや紐状体(2)の伸縮力を調整することにより,異なる大きさの換気口(4)にも容易に取付けることができる(7頁1〜17行)。」(ク)「また伸縮性紐状体(2)は,環状挿通孔(3)に収容された状態で配されている必要はなく,縫合等の適宜の手段によりフィルタ(1)の周縁部と少なくとも部分的に一体に設けてもよい(9頁14〜17行) 。」ウ他方,引用例3には 「本考案は,調理用ガスレンジの上方に配設されて排 ,煙を行うレンジフードに装着して使用される使い捨てタイプのレンジフード用フィルターに関するものであり (段落【「この種のレンジフードは ・・・吸 」】), ,0001気口にはガード用金網等のフィルター部材が吸気口を囲む開口周壁を覆う状態で張設され,金網等のフィルター部材を介して排気されるようになっている ・・・し。 かしながら,レンジフードは頻繁に使用されるために,上記金網等のフィルター部材のみで使用すると頻繁に洗浄が必要になり,金網内部に付着した油を洗浄除去するのが面倒であると共に,洗浄を怠って放置しておくと付着し凝固した油が滴状となってガスレンジ上に落下するという不衛生な事態をまねく問題があった(段落。」【】〜【「本考案は ・・・レンジフードの吸気口に配設された金網等00030004 】),,からなるフィルター部材の下面に着脱自在に装着されるフィルターであって,一端に上記フィルター枠体の端部が収容可能な袋状端部を設けた不織布からなるシート状フィルターと,上記シート状フィルターの他端部をフィルター部材に巻き込み状態で係止させる係止部材とからなることを特徴とするレンジフード用フィルター装置である(段落【「本考案の実施例を図面に従って説明すると,図1, 。」】),0008図2は本考案のレンジフード用フィルター装置Aの一実施例を示し ・・・不織布,1を・・・矩形体とし,その上端部を折り返すとともに折り返し部の両端を接着もしくは融着によって接合して・・・袋状端部2aを形成したシート状フィルター2と,上記不織布1と同じ材料で・・・浅い袋体3aよりなる係止部材3とから構成, , してあり レンジフードの吸気口に配設された金網等からなるフィルター部材4に前記シート状フィルターの袋状端部2aを被せるとともに,フィルター部材4の他端部にシート状フィルター2の他方の自由端部2bを巻き込み,この巻き込み状態のままで袋体よりなる係止部材3を装着してある。なお,前記フィルター部材4は,深型のレンジフードの金網性フィルター部材がそのまま使用され,シート状フィルター2を下面側にしてレンジフードに取り付けられる(段落【】〜。」0012【「図1から図4に示した本考案のレンジフード用フィルター装置Aは, 0013 】),いずれもシート状フィルター2を下面側にして図5に示すように,深型のレンジフードBの吸気口に,金網性のフィルター部材4とともにフード内面の係止金具等10を利用して着脱自在に係止させて使用される(段落【)との各記載があ 。」】0019り,これらの記載に図1,2,5を併せ見れば,引用例3には 「レンジフードの,フード内の排気口の位置に,剛性で四角形板状の金属フィルタを着脱自在に設け,その金属フィルタの油汚れを防止するため,不織布からなる使い捨てのフィルタで金属フィルタのフロント面を覆うこと」が記載されていると認められる。 また 引用例4にはキッチン用レンジフード換気扇の前面カバーのガード 金 ,,「 (属製のさく)第3図を網袋(ナイロンネット)で包み込みネジ止めする事に依って本体の換気扇第2図及び換気扇をとり囲んでいる箱第1図eに油汚れ等をつきにくくする事を特徴とする(実用新案登録請求の範囲「この考案はキッチンレン 。」 ),ジフード換気扇を使用する場合にどうしても避けられない油汚れ等を簡単に防ぐ事を目的としている(1頁12〜14行「本考案の網袋(ナイロンネット)使 。」),用のフィルターであるがガード第3図を網袋で包み込む事によって二重のフィルターとなり,しかもネットであるので排気力もおとさず,しかもネットが汚れを充分吸収して,換気扇への汚れを遮断出来る。ネットが汚れて来た場合も簡単に着脱が出来(どの機種もガードは手廻しのネジ止め)て,普通の家庭用の台所及び洗濯洗剤で洗う事で清潔を保てる(2頁17行〜3頁5行)との各記載があり,これら 。」の記載に第1,第3〜第5図を併せ見れば,引用例4には 「レンジフードのフー ,ド内の排気口の位置に,剛性で四角形板状の金属フィルタを着脱自在に設け,油汚れを防止するため,ナイロンネットで金属フィルタのフロント面を覆うこと」が記載されていると認められる。 そして,これらの引用例3,4の記載によれば,本件特許出願当時 「レンジフ,ードのフード内の排気口の位置に,剛性で四角形板状の金属フィルタを着脱自在に設け,その金属フィルタの油汚れを防止するため,不織布等からなる使い捨てのフィルタで金属フィルタのフロント面を覆うこと」は,周知慣用技術であったと認めることができる。 エさらに,引用例1には 「換気扇及びフードを通過する油分及びチリを,手 ,前でくいとめるもので,ウーリー加工をした細いナイロン生地( )を筒織りにし,1それを丸及び楕円形に裁断し,廻りにゴム(2)を取付け伸縮自由としたもので,丸及び正方形,長方形のあらゆる型のカバーに使用する事を可能にした,換気扇及びキッチンフードのフィルター (実用新案登録請求の範囲「本案を使用する時 」 ),は,カバーの外側からかぶせる丈でよい(2頁13〜15行「本案は上述の 。」),如き構造作用であるから,あらゆる換気扇及びキッチンフードのフィルターとして。」(),,, 使用出来るものである3頁3〜5行 との各記載があり また 引用例2には「この考案は,換気扇用のフィルター体に関する ・・・従来ある換気扇用フィル 。 ターとして,実開昭56-46728号公報のものが公知である ・・・また,キ。 ッチン用レンジフード換気扇のフィルターとして,実開昭57-50631号公報(判決注:引用例4)のものが公知である(1頁左欄下から2行〜右欄下から3 。」行「素材を不織布又は難燃不織布を用いてフィルター部を形成し,該フィルター ),部の周縁に弾性又は伸縮自在とする筒状の覆体を結合して換気扇用のフィルター体を構成する(2頁左欄44〜47行「図面の第2図を説明すれば ・・・方形 。」), ,状の換気扇カバー6の排気口5の前面に,前記したフィルター体Aのフィルター部1を位置させる。さらにフィルター体Aの覆体2の伸縮性及び弾性を利用して換気扇カバー6外周縁を覆う様にして手を離せば,該弾性により覆体2開口部は換気扇カバー6外周縁内側に絡みつく様に覆着する(2頁右欄23〜30行「図 。」),面の第4図を説明すれば,キッチンフード10の斜め上下間に,後記するフードカバー12を嵌着させる受11を形成する。方形状のフードカバー12の前面に,前記したフィルター体Bのフィルター部7を位置させる。さらに,フィルター体Bの覆体8を引っ張るようにフードカバー12外周縁より内側に向け覆う様にして手を離せば,覆体8の弾性により覆体8の開口部は収縮し,フードカバー12内側に絡みつくように覆着する。該フィルターBを覆着させたフードカバー12を,前記フードカバー12の受11に嵌着することによって,フィルター体Bの覆体8は受11の両内側とフードカバー12両外側の間に挟まれるため,フィルター体B全体が固定されるものである(2頁右欄48行〜3頁左欄11行)との各記載が 。」あって,これらの記載によれば,引用例1,2には,引用例5記載のような,方形のカバーが設けられているだけの通常の換気扇(第3,第4図)と,引用例3,4記載のようなフードが設けられたレンジフードの双方に用いられるフィルタが記載されていることが認められ,そうすると,本件特許出願前において,フィルタ部材を,通常の換気扇(引用例5)と,レンジフード(引用例3,4)の双方において用いるように検討することが,通常なされていたものであることが推認される。 オ上記イの引用例5の記載に係る換気扇は,換気口の前面が遮蔽部材で遮蔽され,遮蔽部材の側方開口部から吸引するタイプのものであることは,原告主張のとおりであり,この点を含め,引用例5記載の換気扇と,引用例3,4記載のレンジフードとは,構造に相違があることが認められるが,上記エのとおり,フィルタ部材を双方において用いるように検討することが,通常なされていたものと認められることにかんがみれば,そのような相違は,引用例5発明を,引用例3,4によって認められる上記「レンジフードのフード内の排気口の位置に,剛性で四角形板状の金属フィルタを着脱自在に設け,その金属フィルタの油汚れを防止するため,不織布等からなる使い捨てのフィルタで金属フィルタのフロント面を覆う」周知慣用技術に適用することを阻害するものということはできず,かえって,審決の説示のとおり,引用例5発明のフィルタ(換気扇用カバー)を 「同じ目的で用いられか ,」 , つ同じ繊維材料からなる 上記周知慣用技術に係るフィルタに替えて用いることは当業者であれば直ちに想到することができるものというべきである。 カまた,引用例5発明においては,取付け時,換気口の枠部材の端部等に紐状, ,,, 体を掛止した状態であることは 上記イの(キ)のとおりであり 引用例3 4にもフィルタによって金属製フィルタを被包することは記載されていない。 しかしながら,周知慣用技術の金属製フィルタに引用例5発明のフィルタを取り付ける場合には,金属製フィルタが薄板状であることから,その裏面に,引用例5発明のフィルタの収縮紐状体を挿通した開口部を位置するようにしなければ取り付けることができないことは明らかである。そうすると,引用例5発明のフィルタを上記周知慣用技術に適用する場合に,フィルタによって金属製フィルタを被包することは,当業者が当然に想到することであるにすぎない。 キしたがって,原告の上記アの主張はいずれも採用することができない。 ( )「相違点Cについての判断の誤り」との主張について2ア審決の相違点A及びBについての判断に誤りがないことは,上記( )のとお 1りであり,特に,引用例3記載の発明の金網フィルタ部材等,周知慣用技術に係る金属フィルタに枠体が存在せず,したがって,引用例5発明のフィルタの紐状体をこれに掛止することができないからこそ,当業者は,金属フィルタの裏面に,引用例5発明のフィルタの収縮紐状体を挿通した開口部を位置するようにすることを想到するものであることは,上記( )のカのとおりである。また,引用例5発明にお1いて周知慣用技術に適用するのは,引用例5発明のフィルタであって,引用例5発明の換気扇に遮蔽部材等が存在するとしても,そのことが,上記適用を阻害する事由となり得ないことは,上記( )のオのとおりである。 1したがって,引用例5発明では紐状体を枠体の端部等に掛止するのであるから,枠体の存在しない周知慣用技術(引用例3記載の発明の金網フィルタ部材)にどのようにして掛止するのか理解できないとか,引用例5発明を周知慣用技術に適用したとしても,引用例5発明では紐状体を枠体の端部等に掛止し,周知慣用技術では不織布フィルタの両側部を単に金網フィルタ部材に重ねているだけであることに加え,引用例5発明は構造の全く異なる遮蔽部材等を有するレンジフード用換気扇を想定しているから,引用例5発明のカバーにより周知慣用技術の金網フィルタ部材を覆って包むことを想起し得るものではないとする原告の主張は採用することができない。 イ原告は,引用例1に記載されたフィルタにつき,ウーリー加工したナイロン生地より成るフィルタ自身が大きな伸縮性を有し,フィルタへのゴムの収縮力の伝播がガードの周縁部で規制され,ゴムの収縮力は,ガードの裏面のうち,周縁部の内側に位置するフィルタにしか作用しないから,引用例1の記載から,伸縮性に乏しい不織布において,ガードの裏面にゴムを位置させることを想起し得るものではないと主張する。 しかしながら,たとえ,引用例1に記載されたフィルタが伸縮性を有するとしても,ガードの裏面のゴムの収縮力が,ガードの裏面のうち,周縁部の内側に位置するフィルタにしか作用せず,ガードのフロント面を覆うフィルタには全く作用しないと即断し得るものではない。のみならず,審決は 「伸縮性紐状体を板状物品の ,裏面に配置させる構造が教示される」ものとして,引用例1記載の発明を参照したものであるが,上記のとおり,周知慣用技術の金属製フィルタに引用例5発明のフィルタを取り付ける場合には,金属製フィルタが薄板状であることから,その裏面に,引用例5発明のフィルタの収縮紐状体を挿通した開口部を位置するようにしなければ取り付けることができないことは明らかであるところ,審決は 「引用例5,発明の袋状のカバーを板状の個別の金属フィルタに適用して金属フィルタのフロント面を覆うようにする場合には,必然的に ・・・カバーの伸縮可能な環状紐状体 ,は金属フィルタの裏面に配置され ・・・裏面に位置する環状紐状体の収縮力で, ,フィルタが,金属フィルタのフロント面で緊張されて,金属フィルタに個別に固定ないしは取り付けられるに至るものである (21頁12〜19行)ことを説示し 」た上で,引用例1の記載を参照したにすぎず,仮に,引用例1記載の発明においては,ゴムの収縮力がガードのフロント面を覆うフィルタには全く作用しないとしても,そのことは,審決の結論に影響を及ぼすものではない。したがって,原告の上記主張は,いずれにせよ,失当である。 ( )「相違点Dについての判断の誤り」との主張について3原告は,審決の相違点A及びBについての判断が誤りであることを前提として,相違点Dについての判断も誤りであると主張するが,審決の相違点A及びBについての判断に誤りがないことは,上記( )のとおりであり,したがって,原告の上記1主張は,前提を欠き,失当である。 ( )「相違点Eについての判断の誤り」との主張について4ア「前記フィルタは,個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし,個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し」との特定事項について上記2のとおり,本件訂正後の請求項1の上記特定事項に係る記載は,不明瞭であり,その意味するところが一義的に定まらないところ,審決は 「本願の願書に,添付された図1〜3に記載された態様を規定しているものと仮定して(14頁1,」4〜15行)容易想到性判断1,2に及ぶものであり,上記記載が,図1〜3に記載された態様を規定していること自体は,原告の争うところではないから,これに従って,審決の判断の当否を判断する。 (ア)原告は,まず,審決の相違点Cについての判断が誤りであることを前提として,上記特定事項についての判断が誤りであると主張するが,審決の相違点Cについての判断に誤りがないことは,上記( )のとおりであり,したがって,原告の2上記主張は,前提を欠き,失当である。 また,原告は,各引用例等に記載されたものにおいて,ゴム紐などは,換気扇におけるフレームなどの支持体,レンジフードにおける金属製フィルタの側面や金属製フィルタの周縁部に位置しているにすぎず,訂正発明のように,レンジフードの汚染を有効に防止するという目的のために,個別の金属製フィルタ要素の裏面における不織布フィルタによる油煙や塵芥の捕捉という効果に着目し,金属製フィルタ要素裏面の内方域である通気域にまで不織布フィルタを延在させることは,当業者であっても容易に想起し得ないと主張する。 (イ)しかしながら,訂正明細書には,以下の記載がある。 a「 発明が解決しようとする課題】従って,本発明の目的は,サイズ,取付け 【角度が異なっていても,種々のレンジフードに対して簡便かつ容易に取付けできる, 。, とともに 交換も容易なフィルタ装置を提供することにある 本発明の他の目的はレンジフードの金属製フィルタに対する取付および交換が簡便であり,金属製フィルタに緊密に装着できるとともに,しかもレンジフードの汚染を有効に防止できるフィルタ装置を提供することにある(段落【)。」】0007b「このようなフィルタ装置では,金属製フィルタ要素のフロント面をフィルタでカバー又は被冠(被包)し,フィルタの周縁部などの適所に取付けられた紐状体により,フロント面のフィルタを緊張させるという簡単な操作で,確実かつ安定にフィルタ装置を取り付けることができ,フィルタが金属製フィルタ要素から遊離するのを防止できる。例えば,フィルタの周縁部に配設された紐状体により,フィルタの周縁部を伸長させて金属製フィルタ要素をカバー又は被冠(被包)し,金属製フィルタ要素の裏面で,紐状体の伸長を解除すると,フィルタの周縁部を収縮させるという簡単な操作で,確実かつ安定にフィルタ装置を取り付けることができる。 また,上記とは逆の操作によりフィルタを交換することができる。しかも,フィル(,), タを固定するための特別な取付部材 例えば 磁石などの部品 を用いることなく金属製フィルタ要素に直接取り付けることができ,金属製フィルタの取付角度によってフィルタが垂れて隙間が生じたり,レンジフードの吸引力により取付部品が移動してフィルタがずれたり脱落することがない ・・・さらに,紐状体によりフロ 。 ント面でフィルタを緊張できるので,レンジフードの金属製フィルタ要素のサイズが異なっていても,フィルタを装着できる。特に,フィルタの周縁部が収縮可能である場合には,フィルタの装着および脱着が容易である(段落【)。」】0010c「フィルタ2は,各金属製フィルタ要素11a,11b,11cをカバー又は被包可能な広さを有している。すなわち,前記フィルタ2の紐状体3を伸長させて開口部5を拡大させ,前記フィルタ要素11a,11b,11cの全体又は個別のフィルタ要素のフロント面をカバー又は被包し,紐状体3の伸長を解除することにより,金属製フィルタ要素11a,11b,11cにフィルタ2を取付けることができる。また,フィルタ2を装着した金属製フィルタ11a,11b,11cは,レンジフード10の排気口に装着できる。フィルタの取り付け状態では,金属製フィルタ要素11a,11b,11cの裏面で紐状体3が収縮し,フロント面のフィルタには緊張力又は牽引力が作用するので,フィルタ2が金属製フィルタ又はフィ,。, ルタ要素から遊離したり脱落することがなく 高い密着性を確保できる そのため。, , レンジフード10の汚染を有効に防止できる また フィルタ2は上記と逆の操作すなわち,レンジフード10の排気口から取出した後,紐状体3を伸長し,開口部5を拡張することにより容易に取り外すことができ,フィルタ2の交換も容易である。さらに,フィルタ2の周縁部が紐状体3により収縮可能であるため,金属製フィルタ要素11a,11b,11cや金属製フィルタ11のサイズ,取付け角度が, , 異なっていても 1つのフィルタで多種類の金属製フィルタやその要素に対応でき他品種のフィルタを用意する必要がない(段落【)。」】0014d「フィルタは,金属製フィルタ要素のフロント面をカバー又は被包可能なサイズを有していればよく(段落【),」】0015e「 発明の効果】本発明では,レンジフードにおいて,サイズ,取付け角度の 【異なる種々のレンジフードの金属製フィルタ要素に対して,フィルタを緊張させて簡便かつ容易に取付けでき,交換も容易である。しかも,フィルタが金属性フィルタ要素から遊離するのを防止でき,レンジフードの汚染を有効に防止できる(段。」落【)0025 】,,,, (ウ)上記各記載によれば 本件訂正発明は フィルタ装置において @サイズ取付角度が異なる種々のレンジフードに使用できること,A取付,交換が簡便かつ容易であること,Bフィルタを金属製フィルタに,緊密,確実かつ安定的に装着し得ること,Cレンジフードの汚染を有効に防止し得ることを目的として,金属製フィルタ要素のフロント面をフィルタでカバー又は被冠(被包)し,フィルタの周縁, , 部などの適所に取付られた紐状体により フロント面でフィルタを緊張させることまた,金属製フィルタ要素のフロント面を被包するようにフィルタを取り付けた状態においては,フィルタの周縁部に設けた伸縮性の紐状体が,収縮して金属製フィルタ要素の裏面に位置するものであることが記載されているが,フィルタが,金属製フィルタ要素の裏面を覆う範囲を規定することについての技術的意義は,何ら記載されておらず,また 「フィルタは,金属製フィルタ要素のフロント面をカバー ,又は被包可能なサイズを有していればよく 」との記載によれば,フィルタが,金 ,属製フィルタ要素の裏面を覆う範囲を所定のものとすることが,上記@〜Cの目的を達成するために不可欠であると解することもできない。 すなわち,訂正明細書には,原告の主張するような,レンジフードの汚染を有効に防止するという目的のために,個別の金属製フィルタ要素の裏面における不織布フィルタによる油煙や塵芥の捕捉という効果に着目し,金属製フィルタ要素裏面の内方域である通気域にまで不織布フィルタを延在させることは,全く記載されていないのであるから,原告の上記(ア)の主張は,明細書の記載に基づくものということができず,失当といわざるを得ない。 そうすると,審決が,上記特定事項について 「カバーのフィルタが金属フィル ,タを・・・覆い被包する場合において,当該フィルタが金属フィルタの裏面を覆う範囲(ないしは被包程度)に関し,訂正発明のように『前記フィルタは ・・・,,個別の金属フィルタの裏面のうち,紐状体の収縮に対応し,かつ排気口のうち前記金属フィルタに対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属フィルタを被包可能なサイズを有し』とすることは当業者が適宜なし得る設計事項に過ぎない「カバーのフィルタが金属フィルタを・・・被包する範囲については,排ガス 」,の浄化性,フィルタ材料の節約性,フィルタの装着性等を考慮して適宜設定できる設計事項に外ならないものであり,したがって,訂正明細書の第1図又は第3図で示される如き金属製フィルタ要素の裏面の領域を被包できるように,フィルターサイズないしは被包するところの金属製フィルタ要素のサイズを設定して,訂正発明の上記特定事項を具備するようにすることに何等の困難も伴わない 」と判断した。 ことに,何らの誤りも存在しない。 イ相違点Eに係る訂正発明の「前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されており」との特定事項について原告は,上記特定事項について,審決が「引用例5発明のカバーのフィルタで金属フィルタのフロント面を被包する場合には ・・・カバーのフィルタの形状を 紐 , (状体を取り付ける前の形状を ,金属フィルタの四角形,すなわち,方形状にあわ )せて,訂正発明のように『個別の金属フィルタに対応した相似形状の平面方形状』に形成することは,当業者が当然のこととして実施し得るものであり,むしろそのようにしないことの方が不自然でさえある 」とした判断が,先行技術から自然に 。 , 。 導かれるものではなく 訂正発明から得られた後知恵によるものであると主張するしかしながら,審決が説示するとおり 「一般に,板状体を柔軟シート体で被包 ,する場合には,該シート体と該板状体との平面形状が不一致であると,被包後に該シート体と該板状体との間に不必要な空間が発生したり,体裁が損なわれたり,また,該板状体に対して該シート体の材料に過不足が発生するなどの不都合が生ずるものであり,このことは,その該シート体に収縮性紐状体が取り付けられているか否かにかかわらず,当業者が自明なこととして把握できる」ものであって,ある部材をカバー部材により覆う場合には,そのカバー部材を対象部材と相似形状とすることは,通常行われていることというべきであり,原告の上記主張は,到底採用することができない。 ウ相違点Eに係る訂正発明の「個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて,個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け,レンジフードの排気口に装着でき」との特定事項について原告は,引用例5発明を板状の個別の金属フィルタに適用したとしても,不織布フィルタの紐状体を金網フィルタ部材の周縁部に掛止することしか想起できず,金網フィルタ部材を不織布フィルタで覆って包み,金網フィルタ部材の裏面に紐状体を位置させることは想起し得ないとし,引用例5発明は,遮蔽部材等を有するレンジフード用換気扇を想定しているから,金網フィルタ部材を,不織布フィルタにより上記形態で覆って包むことを想起することは困難であると主張するが,この主張を採用し得ないことは,上記( )のアと同様である。 2( )「相違点Fについての判断の誤り」との主張について 5審決は,本件訂正後の請求項1の相違点Fに係る特定事項の記載を不明又は不明瞭であって,その意味するところが一義的に定まらないとし 「本願の願書に添付,された図1〜3に記載された態様を規定しているものと仮定して(14頁14〜,」15行)容易想到性判断1,2に及ぶものであるところ,上記記載が,図1〜3に記載された態様を規定していること自体は,原告の争うところではないから,これに従って,審決の判断の当否を判断する。 原告は,引用例5発明と上記周知慣用技術とは,レンジフードの構造や取付け構造が全く異なるから,そもそも,引用例5発明を上記周知慣用技術の板状の個別の金属フィルタと関連付けることが困難であるとか,引用例5発明を板状の個別の金属フィルタに適用したとしても,引用例5発明は,紐状体を枠体の端部等に掛止するのみであり,また,周知慣用技術は,不織布フィルタの両側部を単に金網フィルタ部材に重ねているだけであるから,不織布フィルタにより,金属フィルタのフロント面を覆って包むことは想起し得ないと主張し,この主張を前提として,相違点Fに係る訂正発明の特定事項も当然想起することはできないと主張する。 しかしながら,上記の前提となる主張が誤りであることは,上記( ),( )のとお12りであり,したがって,原告の上記主張も失当である。 ( )以上のとおり,審決の容易想到性判断1に係る取消事由として,原告が主6張するところは,すべて失当であり,審決の容易想到性判断1に誤りはない。 4取消事由6(訂正発明の作用効果についての認定の誤り)について原告は,訂正発明につき,金属製フィルタ要素の裏面の内方域においても,排気口のうち個別の金属製フィルタ要素に対応する部分を,部分的に不織布フィルタで覆うことができるため,フロント面で捕捉できなかった油煙や塵芥又はレンジフードの内側上部から流下した油分や,ファンから飛散した油分を,金属製フィルタ要素の裏面に位置する不織布フィルタにより効率よく捕捉することができるという,予測し難い顕著な効果を奏する旨主張する。 しかしながら,上記3の( )のアのとおり,訂正明細書に,個別の金属製フィル4タ要素の裏面における不織布フィルタによる油煙や塵芥の捕捉という効果に着目し,金属製フィルタ要素裏面の内方域である通気域にまで不織布フィルタを延在させることは,全く記載されていないから,原告の上記主張は,明細書の記載に基づかないものといわざるを得ず,採用することはできない。 5結論以上によれば,その余の取消事由について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから,棄却されるべきである。 |
裁判長裁判官 | 塚原朋一 |
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裁判官 | 石原直樹 |
裁判官 | 高野輝久 |