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関連審決 無効2004-80107 訂正2005-39185
関連ワード 技術的思想 /  物の発明 /  頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  周知技術 /  出願公開 /  発明の詳細な説明 /  着想 /  援用権(援用) /  参酌 /  均等 /  容易に想到(容易想到性) /  特許発明 /  実施 /  設定登録 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  減縮 /  変更 /  訂正明細書 / 
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事件 平成 18年 (行ケ) 10143号 審決取消請求事件
原告X
訴訟代理人弁理士大矢広文
同 竹中一宣
被告渡 邊機開工業株式会社
訴訟代理人弁護士塩見渉
訴訟代理人弁理士鈴木正次
同 涌井謙一
同 山本典弘
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2007/04/25
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が無効2004-80107号事件について平成18年3月7日にした審決中特許第3032862号の請求項1乃至2に係る発明についての特 ,「許を無効とする 」との部分を取り消す。 。
第2当事者間に争いのない事実1特許庁における手続の経緯原告は,平成4年12月28日に出願した特願平4-360312号の一部を分割して,平成9年12月22日に発明の名称を「海苔異物除去装置」とする新たな特許出願(特願平9-365852号)とした特許第3032862号(平成12年2月18日設定登録。以下「本件特許」という。登録時の請求項の数は5である )の特許権者である。 。
被告は,平成16年7月21日,本件特許を無効とすることについて審判を請求し,この請求は無効2004-80107号事件(以下「本件審判」というとして特許庁に係属した その審理の過程において 原告は 平成16年 。) 。 ,,11月19日付で無効理由通知を受けたので,平成16年12月22日,本件特許に係る明細書 特許請求の範囲の記載を含むを訂正する請求をした 以 ( 。)(下,この訂正を「前訂正」という。前訂正により,請求項1が訂正され,請求項2,3及び5が削除され,請求項4が請求項2に繰り上げられるとともに,。)。,,,「。 訂正された特許庁は 審理の結果 平成17年6月22日訂正を認める特許第3032862号の請求項1乃至2に係る発明についての特許を無効とする 」との審決(以下「前審決」という )をした。 。 。
原告は,平成17年7月27日,前審決を不服として,知的財産高等裁判所に審決取消訴訟を提起した上,同年10月13日,本件特許の特許請求の範囲減縮等を目的とする訂正審判を請求した(訂正2005-39185号。以下 本件訂正審判 というところ 知的財産高等裁判所は 同年10月28 「」。),,日,特許法181条2項により前審決を取り消す旨の決定をした。
特許庁が,上記決定の確定を受けて本件審判の審理を再開したところ,原告は,平成17年11月21日,本件訂正審判の審判請求書に添付した訂正明細書援用して訂正請求をした(以下,この訂正を「本件訂正」といい,本件訂正後の本件特許に係る明細書及び図面を「本件明細書」という。本件訂正により,請求項1が訂正され,請求項2,3及び5が削除され,請求項4が請求項2に繰り上げられるとともに,訂正された。なお,前訂正は取り下げられたものとみなされた 特許法134条4項特許庁は 審理の結果 平成18年 ()。)。,,3月7日訂正を認める 特許第3032862号の請求項1乃至2に係る発 ,「。
。」(「」。), 明についての特許を無効とするとの審決 以下 本件審決 というをし同年3月17日,その謄本を原告に送達した。なお,特許庁は,本件審決中に明白な誤りがあったとして,平成18年6月16日,審決書中の誤記16か所(「」。)。 を訂正することを内容とする更正決定 以下 本件更正決定 というをした2特許請求の範囲本件明細書の特許請求の範囲の請求項1,2の各記載は,次のとおりである(,,「」,「」。)。 以下 請求項1 2に係る各発明を 本件発明1本件発明2 という【】 , 請求項1 海苔混合液から異物を分離除去する海苔異物除去装置において分離槽に,中に残された異物を外に取出すことができるように上方が開放している第1分離室と,その第1分離室に対して分離壁によって閉鎖状態に仕切られている第2分離室を設け,その分離壁に生海苔の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け,その細長い分離孔の孔幅を約0.5mm〜2mmの大きさにし,その分離孔の孔幅を孔全長にわたり同じ大きさにし,上方が開放している第1分離室には,前工程から海苔混合液を供給可能なポンプを備えた供給手段と,第2分離室から海苔混合液を吸引排出して第1分離室の海苔混合液を細長い分離孔に強制吸引するためのポンプを備えた排出手段を設け,第1分離室の底部に,第1分離室側に残された異物を取出す為の開閉可能な孔を設け,海苔混合液を細長い分離孔に通過させて上方が開放している第1分離室に異物を残すことを特徴とする海苔異物除去装置。
【請求項2】海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段を設け,海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔が詰まらないように水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにしたことを特徴とする請求項1記載の海苔異物除去装置。
3本件審決の理由別紙審決書写し及び更正決定書写しのとおりである。要するに,本件発明1は,本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開昭61-231294号公報 以下 本件審決と同じく刊行物1 という 甲1の1 に記載された (,,「」。)周知技術 以下 引用発明 という並びに特開平3-183459号公報 以 (「」。) (下 本件審決と同じく刊行物2 という 甲2 及び実願平2-71173 ,,「」。)( )(,, 号 実開平4-30893号 のマイクロフィルム 以下 本件審決と同じく刊行物3 という 甲3 記載の各発明 以下刊行物2発明刊行物3 「」。)(,「」,「」。) , 発明 というに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり本件発明2は,引用発明並びに刊行物2,刊行物3,実公昭61-44632号公報 以下 本件審決と同じく刊行物4 という 甲4 及び特開平2- (,,「」。)195863号公報 以下 本件審決と同じく刊行物5 という 甲5 記 (,,「」。)載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明1及び2についての特許はいずれも特許法29条2項の規定に違反してされた,というものである。なお,本件審決は,引用発明と同様の周知技術, (,, を示すものとして 実公昭63-15355号公報 以下 本件審決と同じく「刊行物1-1」という。甲1の2)記載の発明を例示している。
本件審決が上記結論を導くに当たり認定した引用発明の内容,本件発明1と引用発明との一致点・相違点は,次のとおりである。
(引用発明の内容)「分離槽に,上方が開放している第1分離室と,その第1分離室に対して分離壁によって閉鎖状態に仕切られている第2分離室を設け,その分離壁に,被処理物の厚みより僅かに大きくて被処理物の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け,上方が開放している第1分離室に被処理物を供給可能な供給手段とを備え,被処理物を分離孔に通過させ,異物を分離室の底部の穴から取り出す被処理物の異物除去装置」(一致点)「分離槽に,上方が開放している第1分離室と,その第1分離室に対して分離壁によって閉鎖状態に仕切られている第2分離室を設け,その分離壁に被処理物の厚みより僅かに大きくて被処理物の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け,上方が開放している第1分離室に被処理物を供給可能な供給手段とを備え,被処理物を分離孔に通過させ,異物を分離室の底部の穴から取り出す被処理物の異物除去装置」である点。
(相違点)(a)本件発明1の被処理物は海苔混合液であるのに対して,引用発明の被処理物は紙料等の繊維懸濁液である点。
(b)本件発明1の第1分離室は,中に残された異物を外に取出すことができるように上方が開放しているのに対して,引用発明にはそのような特定がない点。
(c)本件発明1の分離孔は,生海苔の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅であり,孔幅が約0.5mm〜2mmの大きさであり,孔幅が孔全長にわたり同じ大きさであるのに対して,引用発明にはそのような特定がない点。
(d)本件発明1の供給手段は,前工程から被処理物を供給可能なポンプを備えたものであるのに対して,引用発明にはそのような特定がない点。
(e)本件発明1は第2分離室から被処理物を吸引排出して第1分離室の被処理物を分離孔に強制吸引するためのポンプを備えた排出手段を備えたものであるの対して,引用発明ではそれがない点。
(f)本件発明1は,第1分離室の底部に,第1分離室側に残された異物を第1分離室から外に取出す為の開閉可能な孔を設け,異物を上方が開放している第1分離室に残すものであるの対して,引用発明は第1分離室の底部の孔から異物を連続的に取り出すものである点。
第3取消事由に係る原告の主張本件審決は,本件発明1と引用発明の対比を誤ったことにより,一致点の認定を誤り,相違点を看過する(取消事由1)とともに,相違点に関する判断を誤ったものであり 取消事由2また 本件発明2についての認定判断を誤っ (),,たものである(取消事由3)から,違法として取り消されるべきである。
1取消事由1(一致点認定の誤り・相違点の看過),, , 本件審決は 次のとおり 本件発明1と引用発明の対比を誤ったことにより一致点の認定を誤り,相違点を看過したものである。
(1)引用発明の 攪拌室7 は スクリーン1 2間の空間の上方が配管内に 「」 ,,開口しているものであって,上方が蓋で覆われていて中に残された異物を外に取出すことができるように上方が外部に開放しているものではない。これに対し,本件発明1の「上方が開放している第1分離室」とは,請求項1の記載から明らかなとおり中に残された異物を外に取出すことができるよう ,「に」上方が外部に開放しているものをいう。そうすると,引用発明の「攪拌室7」は,本件発明1の「上方が開放している第1分離室」に相当するとはいえない。
,「 」 したがって 引用発明の 被処理物である繊維懸濁液が流入する攪拌室7が本件発明1の「上方が開放している第1分離室」に相当し,両者が「分離槽に,上方が開放している第1分離室を備えること」で一致するとした本件審決の認定は誤りであり,本件審決は両者の相違点を看過したものというべきである。
「 」 (2)引用発明の 異物が排出される管10の環状リジェクト室9との接続部は,繊維懸濁液を供給しながら紙料等の繊維と共にスクリーンを通過できない異物の一部を連続的に常時流出させて排出するものである。これに対し,本件発明1の「異物を第1分離室から外に取出す為の孔」とは,異物除去作業中は閉鎖しておいて異物が溜まったときにのみ開放して溜まった異物を排出する開閉可能な孔である。そうすると,引用発明の「異物が排出される管10の環状リジェクト室9との接続部」は,本件発明1の「異物を第1分離室から外に取出す為の孔」とは,その性格を大きく異にするものというべきである。
したがって,引用発明の「異物が排出される管10の環状リジェクト室9との接続部との接続部」が本件発明1の「異物を第1分離室から外に取出す為の孔」に相当するとした本件審決の認定は誤りであり,これを前提とする一致点の認定にも誤りがあるというべきである。
2取消事由2(相違点に関する判断の誤り)引用発明は,本件発明1とは基本的な技術思想を異にし,また,刊行物2発明及び刊行物3発明は,本件発明1とは被処理物及び除去すべき異物が相違する。そして,分離孔の孔幅より大きな海苔混合液の異物を上方が開放している第1分離室に残して効率よく除去でき,第1分離室に残された異物を第1分離室外に容易に取出すことができるとともに第1分離室を容易に清掃できるという本件発明1の効果は,引用発明,刊行物2発明及び刊行物3発明からは予期し得ない。
, ,。 したがって 本件審決の相違点(a)ないし(f)に関する判断は 誤りである(1)相違点(a)の判断の誤りア引用発明は,管路の途中にスクリーンを設け,スクリーンに異物が詰まらないように異物の一部と液体とを連続的に流出させるものであり,しかも,スクリーン個所の異物を上方から外部に取出すことができない構造であるから,スクリーンの穴に繊維が詰まりにくい繊維懸濁液を通過させて異物を除去することができても,スクリーンの穴に生海苔や異物が詰まり易い海苔混合液を通過させて異物を除去することに用いることは不可能である。
,, 【】 これに対し 本件発明1は 本件明細書の特許請求の範囲の 請求項1における「開閉可能な排出孔」との記載に加え,発明の詳細な説明の「第1分離室の底部に開閉可能な孔を設けているので,第1分離室側に残った異物を容易に外へ除去できる段落 0005異物分離槽4と貯留 。」(【】),「槽5と還流槽6の底面……清掃時に開放される (段落【0006「作 」】),業終了後に孔4aの栓4bを開放して異物を除去する (段落【001」5第1分離室の底部に開閉可能な孔を設けているので 第1分離室側 】),「 ,に残った異物を容易に外へ除去できる段落 0022との記載によ 。」(【】),, , れば 本件発明1は 分離槽に溜めた海苔混合液を排出してからでないと清掃時に開放 できず また孔4aの栓4bを開放して異物を除去す 「」,,「る」ことができないから,第1分離室の上方が開放しているため,海苔混合液をいったん分離槽に溜めてから異物を除去するという,いわゆる「バッチシステム」を採用したものであることが明らかである。すなわち,本, , 件発明1は 引用発明とは基本的構成や作用効果を異にするものであって処理対象物にかかわらず,そもそも類似しないのである。
ちなみに,本件発明1の公開後,市販されている海苔異物除去装置は,いずれも本件発明1のように上方が外部に開放している蓋のない分離室を備えた構成である。かかる事実は,当業者であっても,引用発明における被処理物として,紙料等の繊維懸濁液に替えて,異物を含む海苔混合液とすることは,容易でなかったことを示すものである。
このように,繊維懸濁液から異物を除去する引用発明の技術思想と,本件発明1の海苔混合液から異物を除去する技術思想は基本的に相違するから,引用発明における被処理物として,紙料等の繊維懸濁液に替えて,異物を含む海苔混合液とするとの着想はおよそ考えられないものというべきである。
イ本件発明1の被処理物である「海苔混合液」とは,本件明細書に記載されているとおり海苔原藻を切断した生海苔を海水又は真水等で水に混入 ,「したもの段落 0001であり なお 海苔混合液は 従来から採 」(【】)(,,,「取した生海苔と水との混合液刊行物4ミンチ状に切断した生海苔と 」(),「水との混合液刊行物5自動海苔切断機で切断洗浄された海苔原料と 」(),「水が調合された海苔原料液 (特開平4-16172号公報〔乙2 )とし 」 〕て,知られていたところであり,除去の対象には,比較的小さな「小エビや小貝等の異物 (段落【0001 )が含まれる。 」】これに対し,刊行物2発明では,被処理物は,採取した海苔原藻(切断されていない生海苔)と水からなる混合液であり,除去の対象は,わら,繊維,小動物(かに,えび)等の比較的大きな不純物であり,また,刊行物3発明では,被処理物は,採取された生海苔であり,除去の対象は,ビニール,羽毛等の比較的大きな異物である。
このように,本件発明1の被処理物は,切断した生海苔と水からなる海苔混合液であり,刊行物2発明,刊行物3発明の被処理物や異物とは大きく相違する。
なお 被告は乙2を挙げるが 乙2に係る発明は桶6を流下している ,,,「海苔原料液2を撮像して得た画像信号を利用して異物を除去する」装置であって,本件発明1とは,異物が同一であるとしても,その構成,機能及び技術思想を異にするものである。
ウ以上のとおりであるから,相違点(a)に係る本件発明1の構成を容易想到であるとした本件審決の判断は,誤りである。
(2)相違点(b)の判断の誤り刊行物3発明は,被処理物が生海苔であり,本件発明1の被処理物である「海苔混合液」とは異なる。
また,引用発明は,繊維懸濁液を管路に圧送させて管路の途中に設けた攪拌室7のスクリーンによって異物を分離するものであって,ポンプにより圧送された繊維懸濁液が容器11に充満され,完全に繊維懸濁液で充満された状態となるから,攪拌室7の上方を外部に開放させることは不可能であり,また,中に残される異物を外に取出す必要性がない。
したがって,相違点(b)に係る本件発明1の構成を容易想到であるとした本件審決の判断は,誤りである。
(3)相違点(f)の判断の誤り刊行物2発明は,第1分離室に残った異物を開閉可能な排出孔から排出することについて開示も示唆もしていないし,刊行物3発明も,異物を開閉可能な排出孔から排出することを開示も示唆もしていない。また,引用発明には,異物を開閉可能な排出孔から排出することについて,開示も示唆も動機づけもない。
なお,引用発明では,リジェクト管10より排出された繊維物質の一部と異物の大部分は内部に残されることなく,常時排出され,再利用するために入り口管3に戻る構造となっている。
したがって,相違点(f)に係る本件発明1の構成を容易想到であるとした本件審決の判断は,誤りである。
(4)相違点(c)の判断の誤り刊行物2では,算盤玉列によってジグザグ隙間を形成しているので,ジグザグ隙間の隙間が各コーナー部において必ず大きくなるから,間隙tの幅を全長にわたり同じ大きさにすることは設計上不可能である。
また,本件発明1は,分離壁に細長い隙間を設けて遊転(回転自在)しない細長い隙間に海苔混合液を吸引通過させるようにしたもので,海苔混合液から隙間の間隙より大きい異物を確実に除去することを可能にしたものである。本件特許の出願前には,海苔混合液から隙間より大きい異物を確実に除去する海苔異物除去装置が提案されていなかったのであるから,海苔混合液から隙間より大きい異物を確実に除去し得ることは,格別の効果を奏するものといえる。
したがって,相違点(c)に係る本件発明1の構成を容易想到であるとした本件審決の判断は,誤りである。
(5)相違点(d)の判断の誤り刊行物2発明及び引用発明はいずれも閉鎖された管路にポンプ等で圧送して異物を除去するものであるから,引用発明において,刊行物2発明を勘案して,海苔混合液の供給手段を前工程から被処理物を供給可能なポンプを備えたとしても,その構成は,配管された管路に前工程から被処理物の海苔混合液を供給可能なポンプを備えるものにすぎず,本件発明1の構成を想起するものではない。
したがって,相違点(d)に係る本件発明1の構成を容易想到であるとした本件審決の判断は,誤りである。
(6)相違点(e)の判断の誤り引用発明及び刊行物2発明は,配管・管路の途中にスクリーン・間隙を設けるものであるがゆえに,送水手段として,圧送又は吸引のいずれかを適宜選択し得るものであるから,本件発明1のように,上方が外部に開放している第1分離室に対して分離壁によって閉鎖状態に仕切られている第2分離室を設ける場合に,送水手段として,圧送又は吸引のいずれかを適宜選択しうることを示すものではない。また,刊行物3発明の吸引装置は,空気を吸引するブロア等であって,海苔混合液を直接吸引排出する本件発明1の吸引ポンプとは性格を異にする。
したがって,相違点(e)に係る本件発明1の構成を容易想到であるとした本件審決の判断は,誤りである。
3取消事由3(本件発明2についての認定判断の誤り)本件審決は生海苔処理装置において 海苔混合液を吸引する箇所の分離壁 ,「 ,の細長い分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段を設け,分離孔の詰まりを( 。), 防止することは周知のこと 必要なら上記刊行物4乃至5参照であるから『海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段を設け,……海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにする』ことは周知技術の適用にすぎず,本件発明2も,本件発明1と同様の理由で,上記刊行物1記載の周知技術及び上記刊行物2乃至5に記, 」 載された発明に基づいて 当業者が容易に発明をすることができたものである( ),,。 審決書21頁11〜20行 と認定判断したが 以下のとおり 誤りである(1)本件発明2は 「水噴射手段を設け,海苔混合液が吸引される箇所の細長 ,い分離孔の詰まりを防ぐようにした」ことを特徴とし,海苔混合液が強制吸引されている個所の海苔混合液が吸引されている状態の分離孔に水を噴射してその分離孔が生海苔によって詰まるのを防ぐ構成を有する。なお,本件発明2は,海苔混合液が強制吸引されている箇所の分離孔に水を噴射してその分離孔が詰まらないようにすることを特徴とするもので,分離孔を海苔混合液が通過しないところへ移動させて分離孔の詰まりを除くようにしたものではない。
これに対し,本件審決が引用した刊行物4,5記載の発明は,いずれも生, , 海苔を通さないが 汚水や細かい不純物を通す小孔を洗浄するものであって海苔混合液を分離孔に強制吸引するものでも,分離孔に水を噴射して清掃するものでもないから,本件発明2とは関係のない発明である。
そうすると 刊行物4及び5を参照したとしても海苔混合液を吸引する , ,「箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段を設け,海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔が詰まらないように水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにする」ということができないことは明らかであるから 本件発明2が上記刊行物1 ,,「記載の周知技術及び上記刊行物2乃至5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである」とした本件審決の認定判断も誤りというべきである。
(2)被告は 実願昭47-80881号 実開昭49-36096号 のマイ , ( )クロフィルム 以下 本件審決と同じく刊行物6 という 甲6 及び特 (,,「」。)開昭55-111812号公報 以下 本件審決と同じく刊行物7 とい (,,「」。),,,, う 甲7 に言及するが 刊行物6 7記載の発明も 生海苔を通さないが,, 汚水や細かい不純物を通す小孔を洗浄するものであり 分離孔が詰まった後これを洗浄するものである。
これに対し,本件発明2は,請求項2における「海苔混合液が吸引される箇所の」との記載から明らかなとおり,海苔混合液が通過している分離孔が詰らないように清掃するものであって,海苔混合液が強制吸引されている位置の分離孔が生海苔によって詰まるのを防ぐものである。
このように,本件発明2は,刊行物6,7記載の発明とも大きく相違するから,被告の主張は失当である。
第4取消事由に対する被告の反論本件審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1取消事由1(一致点認定の誤り・相違点の看過)について本件審決における本件発明1と引用発明との対比及び一致点の認定は,本件明細書及び刊行物1の記載に基づくものであって,誤りはない。また,次のとおり,原告の主張はいずれも失当である。
(1)本件審決は 引用発明における 被処理物である繊維懸濁液が流入する攪 ,「拌室7」が本件発明1における「上方が開放している第1分離室」に相当するとする一方,引用発明と本件発明1との相違点の一つとして,本件発明1の第1分離室は,中に残された異物を外に取り出すことができるように上方が開放しているのに対して,引用発明にはそのような特定がない点(相違点(b))を認定している。
上記のとおり,本件審決は,引用発明の「被処理物である繊維懸濁液が流入する攪拌室7」が,本件発明1の「上方が開放している第1分離室」に相当するとしたものであって,本件発明1の「中に残された異物を外に取り出すことができるように上方が外部に開放している第1分離室」に相当するとしたものではない。原告の主張は,失当である。
(2)審決は 引用発明における 異物が排出される管10の環状リジェクト室 ,「9との接続部」が本件発明1における「異物を第1分離室から外に取り出す為の孔」に相当するとする一方,引用発明と本件発明1との相違点の一つとして,本件発明1は,第1分離室の底部に,第1分離室側に残された異物を第1分離室から外に取り出す為の開閉可能な孔を設け,異物を上方が開放している第1分離室に残すものであるのに対して,引用発明は,第1分離室の底部の孔から異物を連続的に取り出すものである点(相違点(f))を認定している。
上記のとおり,本件審決は,引用発明の「異物が排出される管10の環状リジェクト室9との接続部」が,本件発明1の「異物を第1分離室から外に取り出す為の孔」に相当するとしたものであって,本件発明1の「異物を第1分離室から外に取り出す為の開閉可能な孔」に相当するとしたものではない。原告の主張は,失当である。
2取消事由2(相違点に関する判断の誤り)について(1)相違点(a)の判断の誤りについてア原告は,本件発明1と引用発明とは,基本構成や作用効果を異にし,類似しない構成である旨主張するが,前記1のとおり,本件審決の一致点認定に誤りはなく,両者は基本構成を同一にするものである。
イ本件明細書の段落【0001【0002】の記載によれば,本件発明 】,1における「生海苔混合液」とは「海苔原藻を切断した生海苔を海水又は真水等の水に混入したもの」であるが,海苔混合液から異物を分離する装置が本件特許の出願前に既に提案されていたことは,本件明細書が自認しているところである。
また,本件特許の出願前である平成4年1月21日に出願公開された特開平4-16172号公報(乙2)には,自動海苔切断機で切断洗浄された海苔原料と水が調合された海苔原料液から,異物(小エビ,網クズ,ワラクズ等)を除去する海苔原料の異物選別装置が記載され,自動海苔切断機で切断洗浄されて海苔原料と水が調合された海苔原料液2が海苔原料液タンク1に貯えられ,ここからポンプ4,ホース5を介して海苔原料液2が溢水器3へ送られ,溢水器3から溢れた海苔原料液2が均一な厚さになって樋6を流下し,この樋6を流下している海苔原料液2を撮像して得た画像信号を利用して,異物(小エビ,網クズ,ワラクズ等)を除去することが記載されている。
さらに 刊行物4 5に示されるように海苔混合液 に対し洗浄等の ,,,「」所定の処理を行い,その過程で汚れを除去する処理を行うことは,本件特許の出願当時,周知の技術であった(ちなみに,刊行物5では,海苔受タンク2は上方が開放され 海苔切機によってミンチ状に切断された生海 ,「,苔が周知の海苔供給機60から落下供給されるようにしてある(2頁右。」上欄9行〜12行)とされている。。)このように 本件特許の出願当時海苔混合液 はもとより これから ,,「」,「」 ,, 小エビ を含む異物を分離・除去する必要性があることは 周知でありまた海苔混合液 から異物を分離・除去するという課題の解決を目指し ,「」た提案が既に行われていたものである。
ウ確かに,刊行物2発明において,異物分離処理の対象になっているものが,本件発明において異物分離処理の対象になっている「海苔混合液」と同一のものであるか否かについては,明確な特定がなく,また,刊行物3発明において,異物分離処理の対象になっているものは,本件発明1において異物分離処理の対象になっている「海苔混合液」とは相違する。
しかし 刊行物2には海苔原藻6と水との混合液1を送水筒2内に圧 ,,「送または吸引によって送水する2頁左上欄12行〜13行 との記載が 」( )あり,多量の水を含んだ状態の海苔原藻と水との混合液がフィルター11を介して下流側に強制吸引され,フィルター11を通過できない異物が分離・除去されるものであることは,明らかである。また,刊行物3には,ダクト2の下側に水平方向から送出パイプ8が接続されていることが図面において示され海洋で採取された生海苔10をホッパー1に移入し 吸 ,「 ,引装置4を駆動する。すると生海苔10は多孔仕切板3を通ってダクト2側へ吸い出され,送出パイプ8から次の工程へ送られる(3頁18行〜。」4頁2行)との記載があり,少なくとも,ダクト2の下側に水平方向から接続されている送出パイプ8を介して,異物11が分離・除去された後の生海苔10を移送できる程度の量の水分を含んだ生海苔10がホッパー1に移入され,ダクト2側に強制吸引されて,多孔仕切板3を通過できない異物11が分離・除去されるものであることは,明らかである。
エ上記によれば,本件発明1も,引用発明,刊行物2発明及び刊行物3発明も,分離処理の対象になっているものに対して,狭い隙間を強制的に通過させる処理を行い,狭い隙間を通過できたものを良品,狭い隙間を通過できなかったものを分離・除去すべき「異物」として分離・除去するという技術的思想である点において共通しており海苔混合液 から 本件発 ,「」,明1において分離・除去することを目的にしている「小エビ」を含む異物を分離・除去するという課題を解決する必要性は,本件特許の出願当時,周知であった。
そうすると,分離処理の対象になっているものに対して,狭い隙間を強制的に通過させる処理を行い,狭い隙間を通過できたものを良品,狭い隙間を通過できなかったものを分離・除去すべき「異物」として分離・除去するという刊行物2発明,刊行物3発明を参照し,引用発明において,異「」 ,, 物分離処理の対象物を 海苔混合液 とすることには困難性はなく またこれを阻害する要因もないというべきである。
なお 本件特許より2年ほど遅く出願された特許第2662538号 平 , (成6年11月24日出願,平成9年6月20日設定登録)の特許に関するものであるが,東京高等裁判所は,平成16年(行ケ)第214号事件の判決において生海苔混合液の異物分離装置の当業者は 繊維懸濁液から ,「 ,スリットを利用して繊維を通過させ,異物を分離する装置である引用発明を,生海苔混合液の異物分離装置に使用することを容易に想到し得るものであって,これを阻害する理由も見当たらない」と判示している(乙1の2 。)(2)相違点(b)の判断の誤りについてア本件発明1の「中に残された異物を外に取り出すことができるように上」 ,, 方が開放している との構成について説明する記載は 本件明細書中には段落 0022 の記載以外にはないが これによれば第1分離室に残 【】,,「された異物を第1分離室外に容易に取り出すことができる」というものということになる。
しかるところ,刊行物3発明は,第1分離室(ホッパー1)に対して分離壁(多孔仕切板)によって閉鎖状態に仕切られている第2分離室(ダクト)を設け,第2分離室(ダクト)側から強制吸引を行って,分離壁(多孔仕切板)を通過できない異物を分離壁(多孔仕切板)上に残し,この分離壁(多孔仕切板)上に残された異物を第1分離室(ホッパー1)の上方から取り出すことができるように,第1分離室(ホッパー1)の上方が開放されているものであるから 本件発明1のように中に残された異物を ,,「外に取り出すことができるように上方を開放する」ことは,本件特許の出願前に行われていた技術事項にすぎない。
なお,刊行物5にも示されるように,生海苔を海苔切機によってミンチ状に切断したものと水との混合液に対して,洗浄等の所定の処理を行う装置において,生海苔を海苔切機によってミンチ状に切断したものと水との混合液が貯留されるタンクの上方が開放することは,一般的に採用されていた構成にすぎない。
イ原告は,引用発明では,ポンプにより圧送された繊維懸濁液が容器11に充満され,完全に繊維懸濁液で充満された状態となる旨主張するが,刊行物1の「繊維懸濁液が管3より流入し,環状通路4を通り,旋回しながら攪拌室7を流下する」との記載及び第15図(特に矢印)の記載に照らせば,そのようにいうことはできない。
ウしたがって,本件審決の相異点(b)の判断に誤りはない。
(3)相違点(f)の判断の誤りについて引用発明,刊行物2発明,刊行物3発明は,分離処理の対象になっているものに対して,狭い隙間を強制的に通過させる処理を行い,狭い隙間を通過できたものを良品 狭い隙間を通過できなかったものを分離・除去すべき 異 , 「物」として分離・除去するという技術的思想である点において共通するものである。
,, , そして 引用発明では 分離・除去された異物を連続的に排出しているが刊行物2の「固形不純物の累積による送水圧力の変化を感知し得て,フィルター11を逆洗し 該不純物を排出し得る2頁右上欄2行〜10行 との ,」( )記載,刊行物3の「この異物11は,多孔仕切板3上の生海苔10がすべて吸い出された後,除去される(4頁5行〜7行)との記載のとおり,刊行 。」物2,3には,異物を間欠的に排出することが記載されている。
そして,分離処理の対象になっているものに対して,狭い隙間を強制的に通過させる処理を行い,狭い隙間を通過できたものを良品,狭い隙間を通過できなかったものを分離・除去すべき「異物」として分離・除去する技術において,ある程度異物が累積してから間欠的に異物を排出することは当業者が適宜選定しうることである。更に,間欠的に異物を排出する場合,排出口を開閉可能にしなければならないことは当業者に自明のことである。
したがって,本件審決の相異点(f)の判断に誤りはない。
なお,原告は,引用発明では,リジェクト管10より排出された繊維物質の一部と異物の大部分が,再利用するために入り口管3に戻る構造となっている旨指摘するが,これは「リジェクト戻り通路20」を有する刊行物1の第1図〜第13図に係る発明の場合である。本件審決における引用発明は,刊行物1の第14図 第15図に記載された発明であってリジェクト戻り , ,「通路20」に相当する構造を採用するものではないから,原告の指摘は失当である。
(4)相違点(c)の判断の誤りについて本件特許の出願当時分離又は除去すべき物質を含有する被処理物 を孔 ,「 」やスリットに通過させることにより,孔やスリットを通過できない「分離又」 「」,,, は除去すべき物質 を 被処理物 から除去する技術は 刊行物1 1-1特公昭33-3102号公報 以下 本件審決と同じく刊行物1-2 と (,,「」いう。甲1の3 ,刊行物2,3に記載されているように,周知であった。 )そして分離又は除去すべき物質を含有する被処理物 を孔やスリットに ,「 」通過させることにより,孔やスリットを通過できない「分離又は除去すべき物質」を前記「被処理物」から除去するにあたって,より均一な大きさのものを通過あるいは分離するために,孔やスリットの大きさを均一にすることは,当業者にとって自明な事項にすぎない。
したがって,本件審決の相違点(c)の判断に誤りはない。
(5)相違点(d)の判断の誤りについて引用発明の「被処理物である繊維懸濁液が流入する攪拌室7」が,本件発明1の「上方が開放している第1分離室」に相当するとの本件審決の認定に誤りはなく また 刊行物2にはこの送水筒2には海苔・水混合液1をフ ,,,「」, イルター11に向ってポンプ9で矢印a方向に圧送し との記載があるから刊行物2発明を勘案しつつ,引用発明において,海苔混合液の供給手段を前工程から被処理物を供給可能なポンプを備えたものとすることも当業者が適宜なし得るところであり,それにより当業者が予期し得ない格別の効果を奏するものでもないとした本件審決の相違点(d)の判断に誤りはない。
(6)相違点(e)の判断の誤りについてア刊行物2発明,刊行物3発明は,分離処理の対象になっているものに対して狭い隙間を強制的に通過させる処理を行うに際して,狭い隙間の下流側に強制吸引するための手段を採用して強制的に吸引しているおり強制,「吸引するためのポンプ」に相当する手段を備えている。また,刊行物2には分離又は除去すべき物質を含有する被処理物 を孔やスリットに通過 ,「 」させることにより,孔やスリットを通過できない「分離又は除去すべき物質」を前記「被処理物」から除去する技術において,孔やスリットに対し,「 」, て分離又は除去すべき物質を含有する被処理物 を上流側から圧送するあるいは,下流側から強制吸引する手段のどちらを採用するかは設計事項にすぎないことが記載されている。
したがって 引用発明において 本件発明1のように強制吸引するた ,,,「めのポンプ」を採用することに格別の困難性は認められない。
イ本件明細書は言及していないが 本件発明1において 第1分離室が 中 ,,「に残された異物を外に取り出すことができるように上方が開放している」意義は,狭い隙間の下流側に「強制吸引するためのポンプ」を採用し,分離処理の対象になっているものに対して,狭い隙間を強制的に通過させる処理を行い,狭い隙間を通過できたものを良品,狭い隙間を通過できなかったものを分離・除去すべき「異物」として分離・除去する上で,第2分離室の側を第1分離室より低い圧力にする必要があることから,要求されるものではないかと思われる。
しかし,この点は,刊行物3に示されるように,本件特許の出願当時,既に提案されていた技術にすぎない。すなわち,本件発明1では,第1分離室の水位を,分離壁に設けられている最上位の分離孔の位置より高く保つ必要がある。そして,この場合,第2分離室の側の圧力が,第1分離室, ,, の側の圧力より低くなり 第2分離室の水位が急速に低下するが これはまさに,刊行物3発明において,生海苔10を多孔仕切板3を通してダクト2側に吸い出して多孔仕切板3に引っかかるビニールや羽毛などの異物11を生海苔10から除去すべく,吸引装置4で吸引することによりダクト2側をホッパー1側より圧力が低い状態にすることと同等のことということができる。
ウしたがって,本件審決の相違点(e)の判断に誤りはない。
3取消事由3(本件発明2についての認定判断の誤り)について本件発明2は,本件発明1において,更に「海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段を設け,海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔が詰まらないように水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにした」ものである。すなわち,本件発明2は,海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにするものであって 原告が主張するように海苔混合液が通過して ,,「」 。 いる分離孔の詰まりを防ぐようにする と発明が特定されているものではないしかるところ,海苔から不純物を取り除く装置において,海苔や排水の汚れなどによって孔が目詰まりすることを防止するために,孔に向けて水を噴射することは刊行物6,7に記載されており,分離処理が行われる箇所(分離処理を受ける被処理物が通過する箇所である分離孔)に水を吹き付けて,孔の詰まり防止を図ることは,周知技術にすぎない。
そうすると海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水 ,「を噴射可能な水噴射手段を設け,海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔が詰まらないように水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにした」ことは,周知技術の適用にすぎないというべきである。
したがって本件発明2も 本件発明1と同様の理由で 上記刊行物1記載 ,「, ,の周知技術及び上記刊行物2乃至5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである」とした本件審決とした本件審決の認定判断に誤りはない。
第5当裁判所の判断1取消事由1(一致点認定の誤り・相違点の看過)について原告は,本件審決には,本件発明1と引用発明の対比を誤ったことにより,一致点の認定を誤り,相違点を看過した違法がある旨主張する。しかし,次のとおり,原告が本件審決の誤りであるとして指摘する点は,いずれも本件審決を正解しないものであって,主張自体失当である。
(1)原告は,本件発明1の「上方が開放している第1分離室」とは 「中に残,された異物を外に取出すことができるように」上方が外部に開放しているも,「 」 のをいうから 引用発明の 被処理物である繊維懸濁液が流入する攪拌室7が本件発明1の「上方が開放している第1分離室」に相当し,両者が「分離槽に,上方が開放している第1分離室を備えること」で一致するとした本件審決の認定には誤りがあるという。
,, , この点に関し 本件審決は 本件発明1と引用発明との一致点を前記第23 一致点 のとおり認定しているが 他方 本件発明1の構成のうち中 () ,, ,「に残された異物を外に取出すことができるように上方が開放している第1分離室」との点については,一致点から除外し,相違点(b)としている。
したがって,引用発明の「攪拌室7」は,中に残された異物を外に取出すことができるように上方が外部に開放しているものではないという原告指摘の点について,本件審決は,正に相違点(b)として審理の対象としているのであるから,その認定に原告主張の誤りがないことは明らかである。
(2)原告は 引用発明の 異物が排出される管10の環状リジェクト室9との ,「接続部」は,繊維懸濁液を供給しながら紙料等の繊維と共にスクリーンを通過できない異物の一部を連続的に常時流出させて排出するものであるのに対して,本件発明1の「異物を第1分離室から外に取出す為の孔」は,異物除去作業中は閉鎖しておいて異物が溜まったときにのみ開放して溜まった異物を排出する開閉可能な孔であるから,その性格を大きく異にするものであるという。
この点に関し 本件審決は 本件発明1は 第1分離室の底部に 第1分離 ,,,,室側に残された異物を第1分離室から外に取出す為の開閉可能な孔を設け,異物を上方が開放している第1分離室に残すものであるの対して,引用発明は,第1分離室の底部の孔から異物を連続的に取り出すものである点を,相違点(f)としている。
したがって,原告の上記指摘について,本件審決は正に相違点(f)として審理の対象としているのであるから,その認定に原告主張の誤りがないことは明らかである。
(3)上記のとおり 原告の主張は 本件審決を正解しないものであって 全く ,, ,採用の余地がない。
,(),,「() なお 刊行物1 甲1の1 には 図面と共にふるい板 スクリーンの穴を通過できる繊維物質と,通過できない異物を形状分離する為に使用される従来のふるい分け装置は,第14図及び第15図に示すように,表面に丸又はスリット状の穴を多数持つ円筒状のスクリーンが1個又は2個あるものが多用されている。図において容器11は円筒状の内外壁を持ち,各々内外スクリーン1,2が取り付けられ,室5,6,7を分離している。また内外スクリーン1,2の間には,複数個の細長い翼12があり,同翼12は回転自由なロータ13に取り付けられて翼速度10〜30m/sで動くようになっている。この装置では,濃度5%以下の繊維懸濁液が管3より流入し,環状通路4を通り,旋回しながら攪拌室7を流下する間に,良質繊維物質はスクリーン1,2の穴を通って精選室5,6に集められ管8より出て行く。
一方穴を通過できない異物は,環状リジェクト室9に達し,管10より排出される(1頁左下欄18行〜右下欄16行)との記載があり,刊行物1の 。」上記記載及び第14図,第15図によれば,引用発明における「攪拌室7」の上方が開口していること異物が排出される管10の環状リジェクト室9 ,「との接続部」から異物が外に取り出されることは,いずれも明らかであるか, 「 」, ら これらがそれぞれ本件発明1における 上方が開口している第1分離室「異物を第1分離室から外に取出す為の孔」に相当するとした本件審決の認定に誤りはない。
その他,本件審決が認定した一致点は,本件明細書及び刊行物1の記載に照らし,これを是認することができる。
よって,原告主張の取消事由1は理由がない。
2取消事由2(相違点に関する判断の誤り)について(1)相違点(a)の判断の誤りについてア原告は,引用発明の技術思想と本件発明1の技術思想は基本的に相違す, , , るから 引用発明における被処理物として 紙料等の繊維懸濁液に替えて異物を含む海苔混合液とするとの着想はおよそ考えられない旨主張する。
しかし,原告が引用発明及び本件発明1との相違として縷々主張する点は,相違点(b),(f)に関するものと解されるところ,本件審決のこれら,,, の相違点に関する判断に誤りがないことは 後記(2) (3)のとおりでありまた,引用発明及び本件発明1は,その被処理物を異にするものではあるが,いずれも分離壁に被処理物の厚みより僅かに大きくて被処理物の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設けるという構成を備えるものであり,水を含む被処理物をして,狭い孔幅を有する細長い分離孔を通過せしめることにより,被処理物中の異物を除去する装置であるという点で共通することは明らかである。
そして 下記イで説示するとおり 本件特許の出願当時 本件発明1の被 ,,,処理物である「海苔混合液」はもとより,海苔に付着又は混入した小エビ等を含め,異物を「海苔混合液」から分離・除去する必要があることも,周知であったから 当業者であれば 分離壁に被処理物の厚みより僅かに大 ,,きくて被処理物の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設けるという引用発明の構成を海苔混合液 から異物を除去するという目的に適用 ,「」することは,容易に想到することができたものというべきである。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
イ原告は,刊行物2発明及び刊行物3発明の被処理物や異物は,本件発明1とは大きく相違するから,相違点(a)に係る本件発明1の構成を容易想到であるとした本件審決の判断は誤りである旨主張する。
(ア)本件明細書 甲22 10 にはこの発明は 海苔抄き作業の前 (,),「,工程において海苔混合液(海苔原藻を切断した生海苔を海水又は真水等の水に混入したもの)から小エビや小貝等の異物を除去する海苔異物除去装置に関する段落 0001との記載があり 本件発明1にお 。」(【】),ける 生海苔混合液 とは海苔原藻を切断した生海苔を海水又は真水 「」,「等の水に混入したもの」であることが説明されている。
なお 本件明細書には従来の海苔異物分離装置としては ……その ,,「 ,最上位の沈殿槽に海苔混合液を供給し,各沈殿槽において生海苔より重い異物を沈殿させて除去するようにしたもの……が知られている段落」(0002との記載があり 海苔混合液から異物を分離ないし除去す 【】),, 。 る装置は 本件特許の出願前に既に提案されていたことがうかがわれる(イ)刊行物2(甲2)には,図面と共に次の記載がある。
「海苔・水混合液の送水筒内に該筒と直交する複数の平行軸を設け,該平行軸に複数の算盤玉をそれぞれ回転方向には遊転可能に,摺動方向には固定しかつ摺動方向に互いに接して設け,隣接平行軸に設けた上記算盤玉の傾斜面を間隙を介して互に平行に支持してなり,上記間隙から海苔原藻を通過させるように形成してなる海苔洗浄用フイルター(1。」頁左下欄5行〜12行)本発明は採取した海苔原藻に伴って紛れ込むわら 繊維 小動物 か 「 ,,(に,えびその他)などの不純物を除去する海苔洗浄用フイルターに関するものである(1頁左下欄19行〜右下欄2行) 。」「本発明は原藻中に混入する海水中の浮遊固形不純物と原藻とを充分に分離し得る海苔洗浄用フイルターを得ることを目的とする(1頁右。」下欄15行〜17行)「従って採取した海苔原藻6と水との混合液1を送水筒2内に圧送又は吸引によって送水すると,上記原藻6はその柔軟性及び表面潤滑性によって上記間隙tのジグザグ形状に倣い或は平行軸3,3と直角方向の原藻6は水圧によって間隙t内に進入する。そして該水圧を受けた原藻6は算盤玉4を遊転して該間隙tを通過するが固形不純物は平行軸3,3と平行又は直角にジグザグ形状の間隙tに引掛って通過することができないし,算盤玉4,4を逆転させることもなく該算盤玉4,4の一側。 , に溜る 固形不純物が溜ると水の通過不良を生じ水圧に変動を来すためこの変動を逆水圧センサー7が感知し感知信号を発信し,その信号によってポンプ9を停止し上記圧送又は吸引は停止し,さらに逆洗装置8を自動的に動作し,間隙tに逆流水を発生させるから一側に溜っている上記固形不純物は逆流し上記装置8の排出口10から排出された後,逆洗動作は止り,上述の動作を繰返すものである(2頁左上欄12行〜右 。」上欄10行)「直径150mmの塩ビ製送水筒2内に該筒2の中心線と直交する複数の平行軸3を固定して設け,該平行軸3に複数の算盤玉4をそれぞれ回転方向には遊転可能に,摺動方向には固定しかつ摺動方向に互に接し,,,, て設けてなり 隣接平行軸3 3に設けた上記算盤玉4 4の傾斜面55を間隙tを介して互に平行に支持して上記間隙tから海苔原藻6を通過させるようにしてフイルター11を形成するものである。算盤玉4は図示するように菱形であって円錐状傾斜面5,5を有しそのため上記間隙tは平行軸3の方向にジグザグ形に形成される。送水筒2は第1図に示すように円筒形であり,第3図に示すように角筒形であっても良い。
この送水筒2には海苔・水混合液1をフイルター11に向ってポンプ9で矢印a方向に圧送し,加圧側に圧力計7’による送水圧センサー7を設けたものであるが,フイルター11の出側に真空ポンプを設け,吸引側に負圧計(図示していない)を設けて送水圧センサー7となしても差支えない(2頁右上欄12行〜左下欄11行) 。」「本発明は上述のように構成したので採取した海苔原藻6を上記送水筒2内で算盤玉4の遊転作用によって上記間隙tに倣って容易に通過させ,該原藻6に混合している固形不純物は該間隙tを通過し難く固形不純物と上記原藻6とを充分選別分離して該原藻6を洗浄し得る効果がある。又固形不純物の累積による送水圧力の変化を感知し得て,フィルター11を逆洗し,該不純物を排出し得る便益がある(2頁右下欄9行。」〜17行)(ウ)刊行物3(甲3)には,図面と共に次の記載がある。
「多孔仕切板を備えたホッパーと,このホッパーの下部に連結されたダクトと,このダクトに配設されて,上記多孔仕切板上に移入された生海苔を上記ダクト側へ吸引する吸引装置とから成ることを特徴とする生海苔中の異物除去装置(明細書1頁5行〜9行) 。」「1はホッパーであり,その下部にはダクト2が連結されている。3はホッパー1とダクト2の境界部に配設された多孔仕切板であり,例えば細かい孔を有するメッシュにより作られている。4はダクト2に配設,, 。 された吸引装置であって パイプ5により ダクト2に連結されている6は吸入口に設けられたフィルター,7は生海苔吸引防止板である。ダクト2の下部には,送出パイプ8が連結されている。本装置は上記のよ, , うな構成より成り 海洋で採取された生海苔10をホッパー1に移入し吸引装置4を駆動する。すると,生海苔10は多孔仕切板3を通ってダクト2側へ吸い出され,送出パイプ8から次の工程へ送られる。また,生海苔10に混入するビニールや羽毛などの異物11は,多孔仕切板3に引っかかり,生海苔10から除去される。この異物11は,多孔仕切板3上の生海苔10がすべて吸い出された後,除去される(明細書3。」頁9行〜4頁7行)「本装置は,どの工程に設置してもよいものであるが,生海苔10がミンチ状に切断されると,異物11も細かく裁断されて除去することが困難になることから,裁断工程の前に設置することが望ましい(明細。」書4頁8行〜12行)(エ)刊行物2,3の上記(イ),(ウ)の各記載によれば,刊行物2発明及び刊行物3発明では 被処理物が 海苔原藻を切断した生海苔を海水又は ,,真水等の水に混入したものではないことが認められる(なお,刊行物2発明の被処理対象が「海苔混合液」であるか否かは明確でなく,刊行物3発明の被処理対象が「海苔混合液」とは相違することは,被告も認めるところである。。)しかしながら,刊行物2発明及び刊行物3発明は,被処理対象が本件発明1にいう「海苔混合液」とはいえるか否かはともかく,分離するためのフィルターあるいは多孔仕切板により繊維 小動物 かに えび ,「,(,その他 などの不純物 ないし 海水中の浮遊固形不純物 あるいは ビ )」「 」「ニールや羽毛など」の異物を含む生海苔と水の混合液中の生海苔のみを通過せしめ,異物を分離除去し,精製された海苔を得るものであることは,上記各記載に照らし,明らかである。
(オ)乙2には 図面と共にこの発明は 海苔原藻に付着又は混入した ,,「,小エビ,網クズ,ワラクズ,腐った海苔等の異物を自動海苔抄機で抄造する前に検出して排除する海苔原料の異物選別装置に関するものである(1頁左下欄19行〜右下欄2行「海苔原料タンク1には自動海 。」 ),苔切断機で切断洗浄されて海苔原料と水が調合された海苔原料液2が蓄えられている(2頁右上欄10行〜12行「小エビ,網クズ,ワラ 。」 ),クズ等の異物を確実に検出して,異物が混入した海苔原料液は異物受皿に排出される(3頁左下欄5行〜7行)との記載がある。 。」(),,「 , 刊行物4 甲4 には 図面と共にこの考案は採取した原藻を切断洗滌,熟成,調合海苔抄きなどの生海苔処理機の分野に属し,この考案の装置は,生海苔を洗滌,脱水することを目的とする生海苔洗滌脱水装置に関する(1頁2欄3行〜6行「採取した生海苔を吸引口より送 。」),り込み,切断機の切断刃を回転することによって長い原藻を適度に切断した後,送入ホースにより内筒内へ水と共に送り込む。ついで内筒を回転することによって,生海苔は水面下で攪拌,洗滌され,逐次上昇し,水面上に出てから能率よく脱水される。前記の螺旋植毛によって生海苔を上昇させながら,内筒の目詰まりを防止することができる。従って,汚れは内筒の小孔から均等に排水される(2頁3欄27行〜36行) 。」との記載がある。
刊行物5 甲5 には 図面と共に海苔切機によってミンチ状に切 (),,「断された生海苔が海苔供給機60から海苔受タンク2内に供給されると,その生海苔は水と共に攪拌翼5によって攪拌されて生海苔と水の混(), 。」 合体 以下海苔原料と称する になり その海苔受タンク2内に溜まる(3頁右下欄12行〜17行「一方海苔受タンク2内に供給された海 ),苔原料は……洗浄タンク17の底部に供給されてその中に溜まる。洗浄タンク17内に溜まった海苔原料は給水口27aから供給される真水とともに攪拌翼21によって攪拌されて洗浄され,その洗浄によって生じた汚れや塩分を含む汚水は洗浄タンク17の孔18から貯留容器15内に入り,排水口29から……排水される(4頁左上欄3行〜13行) 。」との記載がある。
(カ)上記(ア)で認定した本件明細書の段落 0002 の記載 上記(オ) 【】,, , で認定した乙2及び刊行物4 5の各記載並びに弁論の全趣旨によれば本件特許の出願当時海苔原藻を切断した生海苔を海水又は真水等の水 ,「に混入したもの」などの「海苔混合液」の概念は,周知であったことが認められる。
また,本件明細書の段落【0002】の記載,乙2及び弁論の全趣旨,「」 , によれば海苔混合液 から異物を分離・除去する必要性があることは当業者には周知であり また海苔混合液 から分離・除去すべき異物 ,,「」の一つとして,海苔に付着又は混入した小エビ等が知られていたことが認められる。
(キ)以上検討したところによれば,引用発明並びに刊行物2発明及び刊行物3発明は,いずれも水を含む被処理物をして,狭い隙間を有する分離手段を通過せしめることにより,被処理物中の異物を除去する装置であるという点で共通するところ,刊行物2発明及び刊行物3発明は,フィルターあるいは多孔仕切板により,生海苔と水の混合液中の生海苔のみを分離手段を通過せしめて,異物を分離除去し,精製された海苔を得るというものであり,また,本件特許の出願当時,海苔に付着又は混入した小エビ等を含め,異物を「海苔混合液」から分離・除去する必要があることも,周知であったことに鑑みると,当業者であれば,分離壁に被処理物の厚みより僅かに大きくて被処理物の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設けるという引用発明の構成を海苔混合液 から,「」異物を除去するという目的に適用することは,容易に想到することができたものというべきである。
原告の主張は,上記説示したところに照らし,採用することができない。
(2)相違点(b)の判断の誤りについて原告は,刊行物3発明は被処理物が本件発明1とは異なり,また,引用発明は,繊維懸濁液を管路に圧送させて管路の途中に設けた攪拌室7のスクリーンによって異物を分離するものであって,攪拌室7は,ポンプにより圧送された繊維懸濁液が容器11に充満され,完全に繊維懸濁液で充満された状態となるから,攪拌室7の上方を外部に開放させることは不可能であり,また,中に残される異物を外に取出す必要性がないから,相違点(b)に係る本件発明1の構成を容易想到であるとした本件審決の判断は誤りである旨主張する。
前記(1)イ(ウ)で認定した刊行物3の記載及び図面によれば 刊行物3発明,は,ホッパーと,ホッパーに対して多孔仕切板によって閉鎖状態に仕切られているダクトを備えており,ダクト側から強制吸引を行って,多孔仕切板を通過できない異物を多孔仕切板上に残すようにするものであるから,刊行物3発明のホッパーは,多孔仕切板上に残された異物をホッパーの上方から取, 。 り出すことができるように その上方が開放されているということができる, , また 前記1(3)で認定した刊行物1の記載及び第15図の記載によれば引用発明において,ポンプにより圧送された繊維懸濁液が容器11に充満され,完全に繊維懸濁液で充満された状態となると認めることはできない。
そうすると 引用発明において中に残された異物を外に取出すことがで ,,「きるように分離室の上方を解放することに格別の困難性は認められない」とした本件審決の判断は,これを是認することができる。
なお 前記(1)イ(エ)のとおり 刊行物3発明は 被処理物が海苔原藻を切 ,,,断した生海苔を海水又は真水等の水に混入したものではないが,前記(1)イ(カ) (キ)において説示したとおり 上記の点は 引用発明において中に , ,,,「残された異物を外に取り出すことができるように上方を開放する」ことの容易想到性にかかわるものとは認められない。
原告の主張は,上記説示したところに照らし,採用することができない。
(3)相違点(f)の判断の誤りについて原告は,刊行物2発明及び刊行物3発明は,異物を開閉可能な排出孔から排出することを開示・示唆しておらず,また,引用発明には,異物を開閉可能な排出孔から排出することについて,開示・示唆も動機づけもないから,相違点(f)に係る本件発明1の構成を容易想到であるとした本件審決の判断は誤りである旨主張する。
刊行物2及び3の前記(1)イ(イ)及び(ウ)で認定した各記載及び図面の記載によれば,刊行物2発明及び刊行物3発明は,異物が累積した時点でこれを排出するものであることが認められ,引用発明のように異物を連続的に排出するか,刊行物2発明及び刊行物3発明のように間欠的に排出するかは,当業者が適宜選定し得ることというべきであり,また,間欠的に異物を排出する場合に排出口を開閉可能にしなければならないことは,当業者にとって自明なことというべきである。
そうすると 引用発明において第1分離室の底部に第1分離室側に残さ ,,「れた異物を第1分離室から外に取出す為の開閉可能な孔を設け,海苔混合液を細長い分離孔に通過させて異物を上方が開放している第1分離室に残すことも当業者が適宜なし得る」とした本件審決の判断は,これを是認することができる。
原告の主張は,上記説示したところに照らし,採用することができない。
なお,本件審決における引用発明は,刊行物1の第14図,第15図に記載された発明であるところ,原告の指摘に係るリジェクト管10より排出された繊維物質の一部と異物の大部分が,再利用するために入り口管3に戻る, , 構造は 刊行物1の第1図〜第13図に係る発明についてのものであるから本件審決の判断を左右するものではない。
(4)相違点(c)の判断の誤りについて原告は,刊行物2では,算盤玉列によってジグザグ隙間を形成しているので,ジグザグ隙間の隙間が各コーナー部において必ず大きくなるから,間隙tの幅を全長にわたり同じ大きさにすることは設計上不可能である一方,本件発明1は,分離壁に細長い隙間を設けて遊転(回転自在)しない細長い隙間に海苔混合液を吸引通過させるようにしたもので,海苔混合液から隙間の間隙より大きい異物を確実に除去することを可能にしたものであって,格別の効果を奏するから,相違点(c)に係る本件発明1の構成を容易想到であるとした本件審決の判断は誤りである旨主張する。
しかし,前記1(3)で認定した刊行物1の記載,前記(1)イ(イ)及び(ウ)で認定した刊行物2及び3の各記載並びに弁論の全趣旨によれば,本件特許の出願当時分離又は除去すべき物質を含有する被処理物 を隙間を有する分 ,「 」離手段を通過させることにより,これを通過できない「分離又は除去すべき物質 を 被処理物 から除去する技術は周知であり分離又は除去すべき 」 「」 ,「」 , 物質を含有する被処理物 を隙間を有する分離手段を通過させることによりこれを通過できない「分離又は除去すべき物質」を上記「被処理物」から除, , 去するにあたって より均一な大きさのものを通過あるいは分離するために隙間を均一にすることは,当業者にとって自明な事項というべきである。
, ,, そして 前記(1)イ(オ)及び(カ)で説示したとおり 本件特許の出願当時「海苔混合液」はもとより,海苔に付着又は混入した小エビ等を含め,異物を「海苔混合液」から分離・除去する必要があることも周知であったから,分離壁に被処理物の厚みより僅かに大きくて被処理物の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設けるという引用発明の構成を海苔混合液 から,「」異物を除去するという目的に適用するに際し海苔混合液 の性状を考慮し ,「」て,分離孔を,生海苔の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅である約0.5mm〜2mmの孔幅とし,孔幅を孔全長にわたり同じ大きさとすることは,単なる設計事項にすぎず,当業者であれば容易に想到することができたというべきである。
そうすると 引用発明において分離孔の大きさ 形状を変更し 分離孔 ,,「,,を,生海苔原藻の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅を有する細長いものとし,孔幅が約0.5mm〜2mmの大きさとし,孔幅を孔, 」 全長にわたり同じ大きさにすることは 当業者が適宜設計的になし得る事項であるとした本件審決の判断は,これを是認することができる。
原告の主張は,上記説示したところに照らし,採用することができない。
(5)相違点(d)の判断の誤りについて原告は,刊行物2発明及び引用発明はいずれも閉鎖された管路にポンプ等で圧送して異物を除去するものであるから,引用発明において,刊行物2発明を勘案して,海苔混合液の供給手段を前工程から被処理物を供給可能なポンプを備えたとしても,その構成は,配管された管路に前工程から被処理物の海苔混合液を供給可能なポンプを備えるものにすぎず,本件発明1の構成を想起するものではないとして,相違点(d)に係る本件発明1の構成を容易想到であるとした本件審決の判断は誤りである旨主張する。
しかし 前記(2)で説示したとおり 引用発明において ポンプにより圧送 , ,,された繊維懸濁液が容器11に充満され,完全に繊維懸濁液で充満された状態となると認めることはできないから,引用発明が閉鎖された管路にポンプ等で圧送して異物を除去するものでないことを前提とする原告の主張は,採用することができない。
そして,前記1(3)で認定した刊行物1の記載,前記(1)イ(イ)で認定した刊行物2の記載及び弁論の全趣旨によれば,引用発明において,繊維懸濁液は供給ポンプにより圧送されているものと解され,また,刊行物2発明においても,海苔・水混合液はポンプで圧送されるものであることが認められるから 引用発明において海苔混合液の供給手段を前工程から被処理物を供 ,,「給可能なポンプを備えたものとすることも当業者が適宜なし得る」とした本件審決の判断は,これを是認することができる。
(6)相違点(e)の判断の誤りについて原告は,引用発明及び刊行物2発明は,配管・管路の途中にスクリーン・間隙を設けるものであるがゆえに,送水手段として圧送又は吸引のいずれかを適宜選択し得るものであるから,本件発明1のように,上方が外部に開放している第1分離室に対して分離壁によって閉鎖状態に仕切られている第2分離室を設ける場合に,送水手段として圧送又は吸引のいずれかを適宜選択しうることを示すものではなく,また,刊行物3発明の吸引装置は空気を吸引するブロア等であって,海苔混合液を直接吸引排出する本件発明1の吸引ポンプとは性格を異にするから,相違点(e)に係る本件発明1の構成を容易想到であるとした本件審決の判断は誤りである旨主張する。
しかし,原告の上記主張は,引用発明が閉鎖された管路にポンプ等で圧送して異物を除去するものでないことを前提とするものであるが,かかる前提が誤りであることは,既に説示したとおりである。
そして 前記(1)イ(イ)及び(ウ)で認定した刊行物2及び3の各記載によれ ,ば,刊行物2発明及び刊行物3発明は,いずれも「強制吸引するためのポンプ に相当する手段を備えており また 刊行物2には分離又は除去すべ 」 ,,,「き物質を含有する被処理物」を隙間を有する分離手段を通過させることにより,これを通過できない「分離又は除去すべき物質」を上記「被処理物」から除去する技術において 隙間を有する分離手段に対して分離又は除去す , ,「べき物質を含有する被処理物」を上流側から圧送し,あるいは下流側から強制吸引する手段が開示されている。
そうすると 引用発明において海苔混合液の異物を除去する場合に 送 ,,「 ,水手段として,第2分離室から海苔混合液を吸引排出して第1分離室の海苔混合液を分離孔に強制吸引するためのポンプを採用する程度のことは,当業者が適宜設計的になし得る事柄」であるとした本件審決の判断は,これを是認することができる。
(7)上記検討したところによれば 本件審決の相違点(a)ないし(f)に関する ,判断に誤りはなく,原告主張の本件発明1の効果も格別のものとは認められない したがって 本件発明1は 引用発明 刊行物2発明及び刊行物3発明 。,,,に基づいて,当業者が容易に想到することができたものというべきであり,原告主張の取消事由2は理由がない。
3取消事由3(本件特許発明2についての認定判断の誤り)について原告は,本件審決には,本件発明2についての認定判断を誤った違法がある旨主張するので,この点について検討する。
(1)原告は,本件審決が例示した刊行物4及び5を参照したとしても 「海苔,混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段を設け,海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔が詰まらないように水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにする」ということができない旨主張する。
検討するに,刊行物4,5(甲4,5)は,生海苔処理装置に関するものではあるが,海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段を設け,分離孔の詰まりを防止することを開示する(,,。), ものとは認められず 被告も この点については 明らかに争っていない本件審決が,周知技術として,刊行物4,5を例示したことは,不適切であったというべきである。
(2)被告は 刊行物6 7によれば 生海苔処理装置において 海苔混合液を ,,, ,吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段を, ,, 設け 分離孔の詰まりを防止することが周知であることは 明らかであって審決の結論に誤りはない旨主張する。
ア刊行物6(甲6)には,図面と共に次の記載がある。
「散水管(25)に穿設された散水口(26(27)より海水が回転 ),網筒(8)及び水絞り網筒(28)上に散水され海苔による目詰りを防止している(明細書7頁11行〜13行) 。」イ刊行物7(甲7)には,図面と共に次の記載がある。
(ア)「円筒面を網目構造とし横向きに配置された円筒状網かご(1)を回転させ乍ら上記網かごの一側部から海苔くずを含有する排水を上記網かご内に連続的に供給し,濾別され上記網かごの底部付近に集積した海苔くずを横方向に何れかの側部に移動させ乍ら上記網かごの開口部(32)から排出させることを特徴とする排水中の海苔くずの連続的除去方法(1頁左下欄6行〜13行) 。」(イ)「円筒表面を網目構造とし,横向きに配置され且つ一側部に取付けられた駆動軸 31 により回転される円筒状網かご 1上記網かご () (),内に海苔くずを含有する排水を供給するパイプ 13及び上記網かご (),をその外面から洗浄するための水を供給するパイプ(10)から主として成ることを特徴とする排水中の海苔くずの連続的除去装置(1頁右。」下欄10行〜16行)(ウ)「上記網かごの外側に沿って上記網かごと平行にパイプ(10)が設けられ 上記パイプの上記網かごの網に面した部分には多数の小穴 1 , (8)があけられ,上記パイプの一方は,水受けタンク(7)の中の水中ポンプ(6)に接続されており,上記網かごを洗浄する水を噴射することができる (3頁右上欄4行〜9行) 。
(エ)「水中ポンプ(6)による水はパイプ(10)を通して円周状網かご(1)に面した部分にあけた多数の小穴(18)より噴射され排水の汚れによる上記網かごの目詰りを防ぐ(4頁左上欄14行〜17行) 。」ウ刊行物6,7の上記各記載及び図面並びに弁論の全趣旨によれば,海苔から不純物を取り除く装置において,海苔や排水の汚れなどによって分離処理が行われる箇所(孔)が目詰まりすることを防止するために,孔に向けて水を噴射することは,本件特許の出願当時,周知であったと認めるのが相当である。
エ原告は,本件発明2は,海苔混合液が通過している分離孔が詰らないように清掃するものであるのに対し,刊行物6,7記載のものは,海苔混合液が通過する位置の分離孔が詰まった後,分離孔を濾過しない位置に到った上部大気中で詰まった生海苔を洗い落とし,洗浄するものであるから,本件発明2は,刊行物6,7記載のものとは大きく相違する旨主張する。
しかし 本件発明2は海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分 ,,「離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段を設け,海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔が詰まらないように水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにした」ものではあるが,水をいつ噴射するかは,本件発明2に係る海苔異物除去装置の使用の態様に,「」 。 すぎず物 の発明である本件発明2の構成を特定するものとはいえないまた,前記のとおり,海苔から不純物を取り除く装置において,海苔や排水の汚れなどによって分離処理が行われる箇所(孔)が目詰まりすることを防止するために,孔に向けて水を噴射することが周知であるところ,これを適用するに際し,孔の詰まりを防止するための水噴射をいつ行うかは,当業者であれば適宜実施できるというべきである。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
,,,,, オそうすると 前記(1)のとおり 本件審決が 周知技術として 刊行物45を例示したことは,不適切であったというべきであるが,この点は,本(,,「. 件審決の結論に影響しないものというべきである なお 本件審決はX刊行物の記載事項審決書12頁6行〜15頁23行 において 刊行物 」( ),1,1-1,2及び3の記載事項のほか,刊行物6及び7の記載事項を認定する一方,刊行物4,5の記載事項を認定していないこと,並びに,刊行物4〜7の記載内容等に照らせば,本件更正決定はこの点に触れていないものの,審決書21頁13行の「刊行物4乃至5」との記載,同頁18行及び23頁2行の「刊行物2乃至5」との記載は,それぞれ「刊行物6乃至7「刊行物2乃至3,6乃至7」とすべきところを誤記したものと 」,考えられる。また,被告は,刊行物7,8について,周知技術を示すものと位置づけている上,刊行物7,8がいずれも平成16年11月19日付け無効理由通知において引用されたものであることは原告も認めるところであって,原告が審判手続の段階で刊行物7,8について意見陳述の機会があったことも明らかであるから,本訴において,刊行物7,8を参酌することは許されるというべきである。原告も,被告が本訴において刊行物7,8に基づく主張をすることが許されない旨の主張をするものではない。。)(3)本件発明2は,本件発明1において 「海苔混合液を吸引する箇所の分離 ,壁の細長い分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段を設け,海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔が詰まらないように水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにした」ものであるところ,本件発明1についての審決の認定判断を是認できることは,前記1及び2において説示したとおりであり,また,上記(2)のとおり 「海苔混合液,を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段を設け,海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔が詰まらないように水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにした」ことは,周知技術の適用の域を超えるものではない。そうすると,本件発明2は,引用発明,刊行物2発明及び刊行物3発明に基づき,周知技術を参照して,当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。
したがって,本件発明2について,特許法29条2項に違反して特許されたとして,特許を無効とすべきものとした本件審決は,その結論において相当というべきである。
原告主張の取消事由3は理由がない。
4結論その他,原告は縷々主張するが,いずれも理由がない。
以上のとおりであるから,原告主張の取消事由は理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法はない。原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 三村量一
裁判官 古閑裕二
裁判官 嶋末和秀