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関連審決 不服2001-23178
関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  発明特定事項 /  周知技術 /  同一の発明 /  遡及 /  分割出願 /  実質的に同一 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  減縮 /  変更 /  要旨変更 /  除斥 /  異議申立 / 
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事件 平成 16年 (行ケ) 269号 審決取消請求事件
原告 エイディシーテクノロジー株式会社
訴訟代理人弁理士 足立勉
被告 特許庁長官小川洋
指定代理人 片岡栄一 江畠博 高橋泰史 涌井幸一 宮下正之
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2005/02/21
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の請求
特許庁が不服2001―23178号事件について平成16年5月12日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,原告が,後記本願発明の特許出願をしたところ,拒絶査定を受け,これを不服として審判請求をしたところ,審判請求は成り立たないとの審決がされたため,同審決の取消しを求めた事案である。
1 特許庁における手続の経緯(当事者間に争いがない) 原告は,昭和63年6月6日に出願した特許出願(特願昭63-138679号)を分割した特許出願(特願平10-58567号)を分割した特許出願(特願平11-108025号)をさらに分割して,平成12年6月2日,特許庁に対し,発明の名称を「番組表示装置および番組表示方法」とする発明につき出願した(特願2000-166128号。以下「本願」という。)ところ,特許庁は,平成13年11月21日,拒絶の査定をした。
そこで,原告は,同13年12月26日,拒絶査定不服審判の請求をした(不服2001―23178号。以下「本件審判」という。)ところ,特許庁は,平成16年5月12日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)を行い,その謄本は,同16年5月25日,原告に送達された。
なお,原告は,拒絶査定を受けるに先立つ平成12年6月15日に手続補正をしたが(甲10),特許庁は,平成13年8月20日付け(起案日)拒絶理由通知書による拒絶理由通知をした(甲9)。そこで,原告は,同13年10月25日に手続補正をしたが(甲2),特許庁は,前記のとおり,同13年11月21日付け(起案日)拒絶査定書による拒絶査定をした(甲8)。そのため,原告は,同13年12月26日,本件審判の請求をするとともに,同日付け手続補正をした(甲3)。
2 特許請求の範囲 平成13年12月26日付け手続補正(甲3)により補正された明細書の請求項6の記載は,下記のとおりである(以下,この発明を「本願発明」という。)。なお,本願発明は,同13年10月25日付け手続補正書(甲2)における請求項7に係る発明と実質的に同一であるところ,上記請求項7に係る発明は,平成12年6月15日付け手続補正書(甲10)における請求項8に係る発明を減縮したものである。
記 「少なくともテレビの各番組とその開始時刻とその放映チャンネルとを含む情報を,外部からRAMに一旦取り込み, 該RAMに取り込まれた上記情報から当該番組表示方法に係る装置の電源が投入された日の複数チャンネルのテレビ放送の番組を取り出して縦もしくは横の内の1方向に並べて表示し, 上記RAMに取り込まれた上記情報中の当該番組表示方法に係る装置の電源が投入された日の同一チャンネルの番組を,その放送順に,上記1方向と垂直な方向に並べて表示し, 表示された上記情報から所望の番組が表示された表示箇所が選択されると, 上記選択された表示箇所に対応する番組のチャンネルを上記情報から読み出して出力し, 上記選択された表示箇所に対応する番組の開始時刻を上記情報から読み出して出力する ことを特徴とする番組表示方法。」 3 本件審決の理由の要旨 本件審決は,下記のとおり,本願発明は特開昭60-29957号公報(甲13。以下「引用例」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。)及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした。
記 (1) 本願発明と引用発明との対比 (一致点) 少なくともテレビの各番組とその開始時刻とその放映チャンネルとを含む情報を,外部から取り込み, 取り込まれた上記情報からテレビ放送の番組を取り出して表示し, 上記情報中の同一チャンネルの番組を,その放送順に,縦の方向に並べて表示し, 表示された上記情報から所望の番組が表示された表示箇所が選択されると, 上記選択された表示箇所に対応する番組のチャンネルを上記情報から読み出して出力し, 上記選択された表示箇所に対応する番組の開始時刻を上記情報から読み出して出力する 番組表示方法。 (相違点a) テレビ番組情報の取り込みに関し,本願発明においては,外部からのテレビ番組情報はRAMに一旦取り込むものであるのに対し,引用発明においては,このことについて特に示されていない点 (相違点b) 表示されるテレビ放送の番組内容に関し,本願発明においては,装置の電源が投入された日の番組であるのに対し,引用発明においては,このことについて特に示されていない点 (相違点c) テレビ放送の番組の表示形態に関し,本願発明においては,複数チャンネルのテレビ番組を縦もしくは横の1方向に並べ,かつ同一チャンネルの番組を上記1方向と垂直な方向に並べて表示するものであるのに対し,引用発明においては,同一チャンネルの番組を画面上で縦方向に並べて表示するものである点 (2) 判断 ア 相違点について 本願発明の各相違点に係る構成は,当業者が容易に想到することができたものである。
イ 効果について そして,本願発明の奏する効果も,引用例及び上記周知技術から当業者が十分に予測できたものであって,格別のものとはいえない。 ウ 手続について なお,請求人は,審査官が拒絶査定の謄本の備考欄で,補正前の請求項1及び請求項6は拒絶の理由が解消していないと指摘したことに対応して,当該請求項1及び請求項6を削除し他の請求項を残す手続補正をしたにもかかわらず,審査前置解除通知がなされたのは誤りであり,審査前置の段階で特許査定できない新たな拒絶の理由を発見した場合には,特許法163条2項の規定により新たに拒絶理由を通知すべきである旨主張する。
しかし,補正後の請求項6に係る発明(本願発明)が,特許法29条2項の規定に該当し進歩性を備えるものではないものであることは上記したとおりであるところ,その根拠となる引用例は,本件の審査手続きにおける拒絶理由通知(平成13年8月20日付け)において引用されたものである。
したがって,上記補正後の請求項6に係る発明に対しては,審査手続きにおいて提示された拒絶理由が該当するものであるから,請求人の上記主張は採用の限りではない。 なお,審査においてされた拒絶理由通知拒絶査定に対する審判においてもなお効力を有することは,特許法158条に規定されるとおりである。
(3) むすび 以上のとおりであって,本願の請求項6に係る発明(本願発明)は,引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。したがって,本願は,その余の請求項について論及するまでもなく,拒絶すべきものである。
原告が主張する本件審決の取消事由
1 取消事由1(除斥事由のある審判官が関与した手続の違法―特許法139条5号違反) 本件審決に関与した審判官3名のうち,A審判官(以下「A審判官」という。)は,本願について原告が平成13年10月25日付けでなした手続補正の申出を却下する平成14年7月2日付け決定(甲4),及び原告が平成13年12月26日付けでなした手続補正の申出を却下する平成14年7月2日付け決定(甲5)につき,いずれも原告が提起した補正却下決定の取消訴訟(東京高等裁判所平成14年(行ケ)第410号,同第411号)において,当事者である特許庁長官の指定代理人であった。したがって,同審判官は,特許法139条5号にいう「事件の当事者の代理人」であったというべきである。
すなわち, (1) 特許法139条5号所定の「事件」とは,本件審判事件だけに限定されず,本件審判に係る特許出願である本願についてされた補正却下決定の取消訴訟事件も含むと解すべきである。その根拠としては,@裁判官の除斥について定める民訴法23条において,「事件」とは,裁判の公正を担保する趣旨から広く解するとされている(甲27)ところ,特許法139条5号においても,審判の公正を担保するため,同様に考えるべきであること,A本願についての補正却下決定取消訴訟は,本件審判と密接な関係を有し,しかも,その判決は,本件審判の審決に重大な影響を及ぼすものであること,B特許法において,審判のみを意味する場合には「審判事件」という用語を用いているが,139条5号では,あえて「事件」という異なる用語を用いていること,C特許法139条6号は,「審判官が事件について不服を申し立てられた査定に審査官として関与したとき」との除斥事由を規定しているところ,この規定ぶりによれば,「事件」という用語は,審判だけではなく,同一の出願についての査定も含んでいると解されること,が挙げられる。
(2) 上記のとおり,補正却下決定取消訴訟も,拒絶査定不服審判と同一の「事件」に含まれると解すべきである以上,上記訴訟の当事者である特許庁長官は,自己の利害の有無にかかわらず,特許法139条5号における「事件の当事者」に当たる。
また,特許庁長官は,補正却下決定取消訴訟において,補正却下の妥当性を主張する立場にあったところ,補正却下が妥当であると出願は拒絶される可能性が高いから,結局,特許庁長官は,補正却下決定取消訴訟において,出願の拒絶の可能性を高める主張をする立場にあったのであり,言い換えれば,特許庁長官は,「特許の成立を阻止しようとする者」であったから,このような立場にある特許庁長官は明らかに「事件の当事者」に当たる。
(3) 拒絶査定に対する審判において審決をした審判官が,審決取消訴訟が提起され審決が取り消されて特許庁において再び審理が行われる場合に,その事件に審判官として関与することが可能であっても,前の審決に関与した審判官と,補正却下決定取消訴訟の被告である特許庁長官の指定代理人であった該審判官とを同視することはできない。
2 取消事由2(拒絶理由の未通知―特許法159条2項違反) 本件審決は,査定の理由と異なる理由で請求が成り立たないと判断したものであるにもかかわらず,新たな拒絶理由が原告に対して通知されていないから,本件審決は,特許法159条2項に違反する。
すなわち, (1) 拒絶査定(甲8)では,平成13年10月25日付け手続補正書(甲2)における請求項1及び6についての拒絶理由のみが指摘されていた。本願発明は,上記手続補正書における請求項7に係る発明と同一であるが,拒絶査定では,上記請求項7に係る発明についての拒絶理由は指摘されていない。したがって,本件審決の理由は,拒絶査定の理由とは異なるものである。
(2) 本願発明の拒絶理由は,審査手続においても通知されていない。
本願発明は,平成12年6月15日付け手続補正書(甲10)における請求項8に係る発明に対応する。上記請求項8に係る発明については,平成13年8月20日付け拒絶理由通知書(甲9)において,特許法29条2項による拒絶理由が通知されているが,同13年10月25日付け手続補正の結果,本願発明は,上記請求項8に係る発明とは大きく異なるものとなった。
具体的には,本願発明は,上記請求項8に係る発明にはない独特の発明特定事項として,「当該番組表示に係る装置の電源が投入された日の」との構成を有する。
このように,本願発明は,平成12年6月15日付け手続補正書における請求項8に係る発明とは大きく異なり,しかもはるかに限定された発明であるから,上記請求項8に係る発明について特許法29条2項による拒絶理由が通知されていても,本願発明が同じ拒絶理由に該当するとはいえない。
上記(1)のとおり,拒絶査定書に,平成13年10月25日付け手続補正書における請求項7に係る発明(本願発明と同一である。)について何ら記載されていないことからも,本願発明についての拒絶理由が解消されたと解すべきである。
(3) 特許庁が平成5年11月に公表した特許出願の審査の進め方に関する「審査ガイドライン」(甲11)には,「拒絶査定を行う際には,先に通知した拒絶理由が依然として解消されていないすべての請求項を指摘する。」,「意見書における出願人の主張及び補正内容に対する審査官の判断とともに,解消されていないすべての拒絶理由を明確に拒絶査定書に記載する。」と記載されている。
これによれば,本件についても,拒絶査定時には,平成13年10月25日付け手続補正書における請求項7に係る発明(本願発明と同一である。)の拒絶理由は解消されていたと解すべきであり,本願発明についての拒絶理由が通知されていたと解することはできない。
なお,審査ガイドラインには,適用対象となる出願が制限される旨の規定は一切ないから,これが,平成5年法の適用を受ける出願についての取り扱いを示したものであるとはいえない。
3 取消事由3(進歩性の判断の誤り―一致点の誤認・相違点の看過) 本件審決は,本願発明と引用発明との一致点として,「少なくともテレビの各番組とその開始時刻とその放映チャンネルとを含む情報を,外部から取り込み,…上記情報中の同一チャンネル の番組を,その放送順に,縦の方向に並べて表示し,」の点を認定する。
上記認定は,1つの列には,同一の放送局の番組表示のみを並べるということである。しかしながら,引用例の第21〜23図(甲13)では,横列のそれぞれに放送局名(チャンネル番号)が表示されている。このことは,それぞれの横列の放送局は,操作者が任意に設定するものであることを示している。したがって,引用発明は,同一選局番号の番組を縦の方向に並べるものではない。引用例の第21〜23図では,「1ch」の番組表示が縦に並んでいるが,これは操作者が「1ch」の番組表示を意図的に選択した結果にすぎない。
したがって,本件審決は,上記下線部を一致点として誤認し,相違点を看過したものである。
被告の反論
本件審決の判断に誤りはなく,原告の主張する本件審決の取消事由には理由がない。
1 取消事由1について 補正却下決定取消訴訟と拒絶査定不服審判とはいわゆる続審の関係にはない。また,拒絶査定不服審判で争われるのは,審査における拒絶査定が妥当であるかどうか,あるいは,本件特許出願が最終的に拒絶されるものであるかどうかであるのに対して,補正却下決定取消訴訟における争点は,手続補正を要旨変更であるとして却下したことが妥当であるかどうかであって,争点が異なる。したがって,両者が,同一の事件に含まれるということはできない。
また,補正却下決定取消訴訟の被告は,特許庁長官とされている(特許法179条)が,特許庁長官は,自己の利害のために特許の成立を阻止しようとする者ではないから,特許法139条にいう「事件の当事者」ということはできない。そして,補正却下決定取消訴訟の被告である特許庁長官の指定代理人が,関連する拒絶査定不服審判事件を担当したとしても,審判の公正が確保されないということはない。
そして,現行法においては,拒絶査定に対する審判において審決をした審判官は,審決取消訴訟が提起された後に審決が取り消されて特許庁において再び審理が行われる場合にも,その事件に審判官として関与することが可能である。すなわち,前の審決に関与した審判官は,後の審理において除斥原因があるとはされていない。前の審決に関与した審判官と,審決取消訴訟の被告である特許庁長官の指定代理人であった審判官とに格別違いはないから,後者についても,前者と同様に,除斥原因はないと解される。補正却下決定取消訴訟の被告である特許庁長官の指定代理人であったA審判官についても,同様である。
したがって,A審判官には,特許法139条5号に規定する除斥原因はない。
2 取消事由2について (1) 本件審決の引用例1ないし3は,平成12年6月15日付け手続補正書における請求項8に係る発明(本願発明に対応する。)を含む請求項1〜12に係る発明が,進歩性を備えるものではなく特許法29条2項の規定に該当するという理由の証拠として,平成13年8月20日付け拒絶理由通知書(甲9)の中で他の引用例とともに提示されたものである。
一方,特許法158条に規定されるように,審査においてされた手続は,拒絶査定に対する審判においても,なお効力を有するのであり,これを本件についてみれば,審査において上記拒絶理由通知書が出願人に送達されたことにより,特許法50条に規定する拒絶理由通知の手続がされ,これは審判においても効力を有するものということができる。
したがって,本願発明については,審査において特許法50条に規定する拒絶理由通知がされているものを,重ねてしなければならない理由はなく,本件審決が改めて拒絶理由通知をせずに直ちに審決をした点について,特許法159条2項に規定する手続に違反しているとはいえない。
(2) 原告が指摘する「審査ガイドライン」は,平成5年改正法の成立に伴い,改正法の運用のために平成5年11月に作成されたものであるから,基本的に平成5年法適用の出願(平成6年1月1日以降の出願)を対象とするものであることは明らかである(乙3,4参照)。
なお,本件分割出願について適用される昭和62年法の下では,審判における審理の結果,拒絶査定においては指摘されていないが特許要件を具備しないと認められる請求項があれば,審査段階で拒絶理由の通知がされていなくても新たな拒絶理由を通知することなく審判請求が成り立たない,とする運用である(乙5参照)。
3 取消事由3について 本件審決が認定した引用例の記載によれば,記録カード22を挿入した後,表示ボタン14を押すと第21図のようにモニターTV12の画面上に記録カード22の内容の第1頁目が表れること,すなわち,引用例の第21〜23図には,少なくとも,同一選局番号(1ch)の番組をその放送順に,画面上で縦の方向に並べて表示されることが示されていることは明らかである。
したがって,本件審決が,本願発明と引用発明との一致点として,「少なくともテレビの各番組とその開始時刻とその放映チャンネルとを含む情報を,外部から取り込み,…上記情報中の同一チャンネル の番組を,その放送順に,縦の方向に並べて表示し,」の点を認定したことに誤りはない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(除斥事由のある審判官の関与)について 特許庁における手続の経緯は,前記第2の1のとおりである(当事者間に争いがない)。原告は,本件審決に関与したA審判官には,本願についての補正却下決定の取消訴訟において,被告である特許庁長官の指定代理人であったから,本件審決には,特許法139条5号違反の瑕疵がある旨主張するので,この点について検討する。
証拠(甲1ないし7)によれば,平成16年5月12日付けでなされた本件審決には,A審判官が審判長として関与していること,一方,本願に関し原告が平成13年10月25日付けでなした手続補正の申出を却下する被告の決定,同じく原告が同13年12月26日付けでなした手続補正の申出を却下する被告の決定に対し,いずれも原告が東京高等裁判所に対し,特許庁長官を被告としてその取消しを求める行政訴訟を提起した(同庁平成14年(行ケ)第410号,第411号)ところ,いずれも平成15年9月29日に判決が言い渡された同訴訟事件において,A審判官が指定代理人として関与していたことが認められる。
ところで,特許法139条は,審判官が除斥されるべき事由を列挙し,その一つとして原告が主張する「審判官が事件について当事者,参加人若しくは特許異議申立人の代理人であるとき又はあったとき。」(平成15年法律第47号による改正前の5号)を定めている。同条は,審判官が事件や当事者と特殊な関係にあるためその事件を担当することが審判の公正と信頼からみて適当でないときに,審判の公正を保つためその審判事件の審理から除斥されることを定めたものであるが,同条5号にいう「事件」とは,前記のような趣旨によれば,当該審判事件及びそれに先行する審査手続の対象たる事件をいうと解するのが相当である。
そして,A審判官は,前記のとおり前記各訴訟事件の被告指定代理人になったにすぎず,本件審判請求や,その前審たる拒絶査定審査に,代理人として関与しているわけではないから,A審判官に同条5号の除斥事由があるということはできない。
原告は,特許庁長官が同号にいう「当事者」である旨を主張するが,前記のような特許法139条の趣旨からすると,同長官を当事者と解することはできない(特許法137条1項は,特許庁長官が,各審判事件の合議体を構成すべき審判官を指定しなければならない旨定めているところ,仮に,原告主張のような解釈を採れば,審判官が「当事者」によって指定されるという極めて不自然な事態となってしまう)。
原告の取消事由1の主張は理由がない。
2 取消事由2(拒絶理由の未通知)について 原告は,本件審決は査定の理由と異なる理由で請求が成り立たないと判断したものであるにもかかわらず,新たな拒絶理由が原告に対して通知されていないから,本件審決には特許法159条2項違反の瑕疵がある旨主張するので,この点について検討する。
(1) 前記事案の概要に後掲各証拠を併せれば,次の事実が認められる。
ア 原告は,平成12年6月15日,手続補正をしたが,その手続補正書(甲10)における請求項8に係る発明が,本願発明に対応するものであった。
イ 特許庁は,上記補正を前提に,平成13年8月20日付け拒絶理由通知書(甲9)による拒絶理由通知をしたところ,そこには,拒絶理由として,「1.この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」と記載された後に,請求項8を含む請求項1〜12が挙げられ,また,引用文献1〜4が提示されている。なお,上記引用文献1は,本件審決の理由に引用された引用例に対応する。
ウ これを受けて,原告は,平成13年10月25日,手続補正をしたところ,その手続補正書(甲2)における請求項7に係る発明は,上記請求項8に係る発明を減縮したものであり,かつ,本願発明と実質的に同一のものとなっている。
エ 特許庁は,上記補正を前提に,平成13年11月21日,拒絶査定をしたところ,拒絶査定書(甲8)には,「この出願については,平成13年8月20日付け拒絶理由通知書に記載した理由1.によって,拒絶すべきものである。なお,意見書並びに手続補正書の内容を検討したが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせない。」と記載されると共に,その備考として,「本願請求項1および6に係る発明は依然として平成13年8月20日付け拒絶理由通知書における各引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものである。」等と記載されている。
オ そこで,原告は,平成13年12月26日,本件審判の請求をするとともに,手続補正をしたところ,その手続補正書(甲3)における請求項6に係る発明が本願発明であり,これは,上記請求項7に係る発明と実質的に同一のものである。
カ 特許庁は,平成16年5月12日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との本件審決をした。本件審決は,本願発明が,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許を受けることができないと判断している。
(2) 以上の事実によれば,拒絶査定書(甲8)には,「この出願については,平成13年8月20日付け拒絶理由通知書に記載した理由1.によって,拒絶すべきものである。」と記載されているところ,上記拒絶理由通知書には,本願発明に対応する発明である,平成12年6月15日付け手続補正書における請求項8に係る発明について,引用例等に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり,特許法29条2項により特許を受けることができない旨記載されている。
一方,本件審決も,本願発明が,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから,特許を受けることができないと判断したものである。
そうであれば,本件審決が,査定の理由と異なる拒絶理由で請求が成り立たないと判断したということはできないから,本件審判手続において,改めて拒絶理由通知をする必要はなかったというべきである。
(3) なお,上記認定のとおり,拒絶査定書(甲8)には,その備考に,「本願請求項1および6に係る発明は依然として平成13年8月20日付け拒絶理由通知書における各引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものである。」と記載されており,ここには,本願発明と実質的に同一の発明である上記請求項7に係る発明については指摘がない。しかしながら,上記記載は,あくまで,備考として参考のために付記されたものにすぎないから,ここに上記請求項7に係る発明については指摘がなくても,上記認定のとおり,拒絶査定書に,「この出願については,平成13年8月20日付け拒絶理由通知書に記載した理由1.によって,拒絶すべきものである。」と記載されている以上,上記請求項7に係る発明についての拒絶理由が拒絶査定書に記載されていないということはできない。
また,仮に,拒絶査定書に,上記請求項7に係る発明についての拒絶理由が記載されていないと解しても,特許法158条には,審査においてした手続が,拒絶査定不服審判においても,効力を有する旨規定されているところ,上記認定のとおり,拒絶理由通知書には,本願発明に対応する請求項8に係る発明について,本件審決と同旨の拒絶理由が記載されている。そうであれば,本願発明についての拒絶理由は既に通知されていると解されるから,結局,本件審決に特許法159条2項違反の瑕疵があるということはできない。
(4)ア 原告は,本願発明が平成12年6月15日付け手続補正書における請求項8に係る発明を大幅に減縮したものであるから,拒絶理由が通知されていたことにはならない旨主張する。
しかしながら,本願発明に対応するものである上記請求項8に係る発明について,本件審決が引用した引用例を挙げて,拒絶理由が通知されている以上,本願発明が上記請求項8に係る発明をどのように減縮するものであっても,既に本願発明についての拒絶理由が通知されていたとみることができることは明らかである。したがって,原告の上記主張は理由がない。
イ また,原告は,特許庁が平成5年11月に公表した「審査ガイドライン」の記載によれば,拒絶査定で指摘されなかった請求項については拒絶理由が解消されたと解すべきであるから,本願発明についての拒絶理由が通知されていたと解することはできない旨主張する。
しかしながら,上記ガイドラインは,特許庁が特許法に基づき特許出願の審査を行うに際して定めた運用基準であり,これによって特許法の解釈が左右される筋合いのものではないから,原告の上記主張は理由がない。
なお,平成5年法律第26号(以下「平成5年改正法」という。)の運用について特許庁担当者が解説した「注解:改正特許・実用新案法の運用のてびき」(乙3)には,上記ガイドラインが平成5年改正法の運用に関して特許庁より公表されたものである旨記載されている。また,特許庁が定めた「特許・実用新案審査基準」(乙4)には,上記ガイドラインと同一内容を規定する(弁論の全趣旨)「審査の進め方」が収録されており,かつ,その適用を受ける出願が,平成5年改正法が施行された平成6年1月1日以降の出願であることが明記されている。
これらによれば,上記ガイドラインは,平成5年法による改正後の特許法の適用を受ける出願について定められたものであることが明らかである。しかるところ,本件分割出願は,原出願の出願日である昭和63年6月6日まで出願日が遡及する結果,平成5年改正法による改正前の特許法の適用を受けるものである(平成5年改正法附則2条1項)から,本件分割出願の審査に,上記ガイドラインが適用されるものとはいえない。
(5) 以上のとおり,本件審決には特許法159条2項,50条違反の瑕疵はなく,原告の取消事由2の主張も理由がない。
3 取消事由3(進歩性の判断の誤り―一致点の誤認・相違点の看過)について 原告は,引用例の第21〜23図(甲13)のそれぞれの横列の放送局は,操作者が任意に設定するものであって,引用発明は,同一選局番号の番組を縦の方向に並べるものではないから,本件審決は,一致点のうち「同一チャンネルの」の部分を誤認し,相違点を看過したものである旨主張するので,この点について検討する。
(1) 引用例には,第21〜23図に関して,次のように記載されている。
「次に動作を説明する。タイマー記録をしようとする場合,先ず磁気記録再生装置本体11のタイマー録画のための操作部の蓋11cを開き,カード挿入口13に記録カード22を挿入する。この記録 カード 22 には ,1箇月間 のこの 地域 で視聴可能 なTV 放送番組 が記録 されている 。記録 カード 22 を挿入 した 後,表示 ボタン 14 を押すと ,第21 図のように ,モニター TV 12 の画面上 に記録 カード 22の内容 の第1頁目 が表れる 。ここで P1は第1頁目 が表示 されている 事を表わしており ,次の行から TV 番組 の情報 が並んでいる (3行目よりもあとは省略している)。P1の次の行について,左から,日,時,番組タイトル,選局番号となっている。第21図において,Pの下にあるのがカーソルである。次にカーソルボタン17を押すと,1回押すごとにカーソルが下降してくる。例えば,5月5日の7:00〜7:20にある1chのニュースをタイマー録画設定する場合を考えてみると,カーソルを動かして第22図の如く所定の行の左端へカーソルを位置させる。
そして次に認識ボタン15を押すと,第23図のようにこの行の右端に*(アスタリスク)のマークが表われ,タイマー録画が設定される。なおこれを解除する場合は,解除すべき行の左端にカーソルを位置させて,削除ボタン16を押す。これにより*のマークが消え,タイマー録画設定が解除される。タイマー録画が設定されると,その情報は磁気記録再生装置本体11の記憶装置28に記憶され,所定日時にタイマー29によって,この記憶が読み出され,制御部30によって,所定日時,所定放送局の番組を所定時間録画作動する。
なお上記実施例においては,記録媒体として記録カード22を用いた例について説明したが,例えば印刷物の上をバーコードリーダのようなもので記録データを取り込む等,記録媒体及びその情報の取り込み方法については種々の方式を採用できることは勿論である。」(4頁右上欄3行〜左下欄18行) また,第21〜23図には,最上行に「P1」と表示され,その下に1行ずつ,「5月5日 6:00〜6:30 朝の声 1ch」,「5月5日 6:30〜7:00 テレビ体操 1ch」,「5月5日 7:00〜7:20 ニュース 1ch」…と順次表示されている。
(2) これらの記載によれば,引用例の第21図の画面表示は,記録カード22の内容の第1頁(5月5日の朝の6:00からの1chの番組内容が放送順に縦に並べられている。)が表示されたものであることが明らかである。したがって,引用発明は,同一の選局番号の番組を,その放送順に,縦の方向に並べて表示したものであると認められる。原告は,引用例の第21図等のそれぞれの横列の放送局は,操作者が任意に設定するものである旨主張するが,引用例の上記記載に照らし,採用できない。そうであれば,本件審決が,「少なくともテレビの各番組とその開始時刻とその放映チャンネルとを含む情報を,外部から取り込み,…上記情報中の同一チャンネル の番組を,その放送順に,縦の方向に並べて表示し,」の点を一致点として認定したことに誤りはなく,相違点の看過もないというべきである。
(3) 以上のとおりであるから,原告の取消事由3の主張も理由がない。
4 結論 以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に本件審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の本訴請求は理由がないから棄却し,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 青柳馨
裁判官 沖中康人
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