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関連審決 無効2005-80294
関連ワード 発明者 /  29条の2(拡大された先願の地位) /  出願公開 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  実質的に同一 /  技術的意義 /  実施 /  設定登録 /  請求の範囲 /  合理的な理由 / 
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事件 平成 18年 (行ケ) 10324号 審決取消請求事件
原告X
訴訟代理人弁護士山元眞士
被告株式会社システックキョーワ
訴訟代理人弁護士辰巳和男
同弁理士高田修治
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2007/03/28
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が無効2005-80294号事件について平成18年6月13日にした審決を取り消す。
第2当事者間に争いがない事実1特許庁における手続の経緯( )原告は,発明の名称を「地震時ロック方法及び地震対策付き棚」とする特1許第3650955号発明(平成11年3月18日出願〔以下「本件出願」という。〕,平成17年3月4日設定登録。以下「本件特許」という。)の特許権者である。
( )被告は,平成17年10月7日,原告を被請求人として,本件特許を無効2とすることを求めて審判の請求をした。
特許庁は,上記請求を無効2005-80294号事件として審理した上,平成18年6月13日,「特許第3650955号の請求項1〜4に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をし,その謄本は,同月23日,原告に送達された。
2本件出願の願書に添付した明細書(甲8,以下,願書添付の図面も含め,「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1ないし4の記載(以下,請求項1に記載された発明を「本件発明1」などといい,これらを一括して「本件各発明」という。)【請求項1】地震時に扉等がばたつくロック状態となるロック方法において棚本体側に取り付けられた装置本体の扉等が閉じられた状態からわずかに開かれるまで当たらない係止体が地震時に扉等の開く動きを許容しない状態になり,前記係止体は扉等の戻る動きとは独立し扉等の戻る動きで解除されず地震時に扉等の開く動きを許容しない状態を保持し,地震のゆれがなくなることにより扉等の戻る動きと関係なく前記係止体は扉等の開く動きを許容して動き可能な状態になる扉等の地震時ロック方法【請求項2】請求項1の地震時ロック方法を用いた地震対策付き開き戸【請求項3】請求項1の地震時ロック方法を用いた地震対策付き引き出し【請求項4】請求項1の地震時ロック方法を用いた地震対策付き棚3審決の理由審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本件各発明は,本件出願の出願日前の特許出願であって,その出願後に出願公開がされた特願平11-53488号(特開2000-248812号公報参照)の願書に最初に添付された明細書及び図面(甲7〔ただし,6頁以下の手続補正書に係る部分を除く。〕,以下「先願明細書」という。)に記載された発明(以下「先願発明」という。)と実質的に同一であり,本件各発明の発明者が先願発明の発明者と同一でなく,本件出願時において,その出願人が先願発明の出願人と同一でもないので,本件各発明に係る特許は,特許法29条の2に違反してされたものであり,無効とすべきであるとした。
第3原告主張の審決取消事由1審決は,先願発明の認定を誤り(取消事由),その結果,本件各発明は先願発明と実質的に同一であって,本件各発明に係る特許を無効とすべきであるとの誤った結論を導いたものであり,違法であるから取り消されるべきである。
2取消事由(先願発明の認定の誤り)( )審決は,「先願発明の『地震の揺れによって』『前記開き戸の開放度を若1干開く程度に規制する』ところの『地震時に開き戸の開放を規制する方法』は,本件発明1の『地震時に扉等がばたつくロック状態となるロック方法』に相当するといえる。」(審決謄本13頁第4段落)と認定したが,誤りである。
( )審決は,先願発明について,「先願明細書の段落【0027】には『そし2て,地震が終われば,係止体38の鍔部38bの上面に載っていた球体37が移動スペース34側へ転動するため,係止体38の動きの規制が自動的に解除され,弾性片43がその弾性力によって先端が元の状態に起き上がり,特別な解除動作を行わなくても平常時と同じ状態に復帰する。』と記載されていることから,被請求人(注,原告)が主張するように,『弾性片43は押し下げられた反力として係止体38に「上方への付勢力」を作用する』としても,当該弾性片43による上方への付勢力は,地震が終われば,係止体38の鍔部38bの上面に載っていた球体37が移動スペース34側へ転動できるのを妨げない程度に弱い力で作用する付勢力に設定されている,すなわち,弾性片43の上方への弾性力や当該弾性力による反力もこのような小さなものに設定されているということができる。そうすると,先願明細書の段落【0026】の『一方,地震時には,・・・係止体38の上動が阻止され,係止体38の下端が弾性片43を押し下げながら係止部42の垂直面42bに当接可能な状態になり,開き戸32の開放度が若干開く程度に規制される。』との記載は,・・・『地震時に扉等がばたつくロック状態となるロック方法』であるということができる。」(審決謄本16頁第3段落〜第4段落)として,先願発明について,「地震が終われば,弾性片43に押さえられていても,球体37が転動できる程度に弾性片43の上方への弾性力が弱く設定されている」と認定しているが,誤りであり,その誤った認定の結果,先願発明を「地震時に扉等がばたつくロック状態となるロック方法」であると誤って認定したものである。
先願明細書には,扉等とロック装置の相対位置関係について,図1の状態しか図示されていないこと,平常時と地震開始時の説明(段落【0025】〜【0026】)は,図1の状態から地震が開始される説明であることから,段落【0027】の地震終了時の説明は,図1の状態における説明と解釈するほかない。
そうすると,先願明細書の段落【0027】の前半の「地震が終われば,係止体38の鍔部38bの上面に載っていた球体37が移動スペース34側へ転動するため,係止体38の動きの規制が自動的に解除」されるという動作も,後半の「弾性片43がその弾性力によって先端が元の状態に起き上がり」という動作も,先願明細書の図1に示された状態で地震が終了した場合についての説明と解釈すべきである。そして,図1の状態においては,球体37は,弾性片43により押さえられていないから,結局,先願明細書の段落【0027】においては,球体37が弾性片43に押さえられている場合に球体37が転動できるか否かについて何ら記載されていない。
審決は,先願明細書の段落【0027】においては,球体37が弾性片43に押さえられている場合に球体37が転動できるか否かについての記載がないにもかかわらず,同段落について,係止部42が係止体38の側面に当たって,球体37が弾性片43に押さえられ,かつ,そうであっても,球体37が転動できる程度に弾性片43の上方への弾性力が弱く設定されているものと誤って認定した。
技術常識及びその後の先願明細書の補正内容に照らせば,先願発明の弾性片43は,球体37を摩擦力で転動不能にするのみならず,地震時のゆれ及び物がぶつかることによる衝撃によっても球体37が外れないように強く挟持するものであり,「弱い弾性片」でなく「十分に強い弾性片」と解するほかない。
すなわち,弾性片43が係止体38を押し上げながら「元の状態に起き上がる」状態は,図1の状態とは異なり,扉等がわずかに開いて,係止部42が係止体38(の側面)に当たった状態である。この状態から弾性片43が「元の状態に起き上がる」ためには,係止体38の下端部の鍔部が扉等側の係止部42の上端の突起に引っ掛かった際に,係止体38をその抵抗に抗して「元の状態」まで上昇させなければならないのであって,技術常識に照らすと,審決が認定するような「弱い弾性片」ではそのような抵抗に抗する力はない。
そして,先願発明について,平成11年4月13日付けで手続補正書が提出され,段落【0026】について,「球体37は,・・・強く挟持される」と補正されているのであり,この補正後の記載と先願明細書の段落【0027】の記載を矛盾なく理解するには,先願明細書の段落【0027】の記載は,図1の状態で地震終了した場合の説明であると解し,また,弾性片43は,球体37を摩擦力で転動不能にするだけでなく,地震時のゆれ及び物がぶっかることによる衝撃によっても球体37が外れないように強く挟持される程度以上に「十分に強い弾性片」であると解する必要がある。
以上のとおり,正しい解釈によれば,先願発明は,地震時にゆれが弱くなれば,弾性片43の弾性力によって,球体37が強く挟持され,転動不能になって,開き戸の往復動が停止するものであり,扉が「ばたつく」状態ではないものであって,先願明細書には,本件発明1の「地震時に扉等がばたつくロック状態となるロック方法」に相当するものは記載されておらず,それが記載されているとした審決の先願発明の認定は誤りであり,本件各発明と先願発明とが実質的に同一であるとはいえない。
第4被告の反論1本件各発明が先願発明と実質的に同一であるとした審決の認定に誤りはなく,原告主張の取消事由は理由がない。
2取消事由(先願発明の認定の誤り)について( )原告は,審決が,先願発明について,「地震が終われば,弾性片43に押1さえられていても,球体37が転動できる程度に弾性片43の上方への弾性力が弱く設定されている」と認定したのは誤りである旨主張するが,失当である。
そもそも,審決には,「地震が終われば,弾性片43に押さえられていても,球体37は転動できる」との記載は一切存在せず,上記主張は,原告による意図的な曲解である。先願明細書の段落【0027】には,「そして,地震が終われば,係止体38の鍔部38bの上面に載っていた球体37が移動スペース34側へ転動するため,係止体38の動きの規制が自動的に解除され,弾性片43がその弾性力によって先端が元の状態に起き上がり,特別な解除動作を行わなくても平常時と同じ状態に復帰する。」との記載があるだけであり,先願明細書に,原告が主張するような「弾性力が弱く設定されている」との記載や原告の主張を推測させるような記載は見当たらない。
( )審決は,「被請求人(注,原告)が主張するように,『弾性片43は押し2下げられた反力として係止体38に「上方への付勢力」を作用する』としても,当該弾性片43による上方への付勢力は,地震が終われば,係止体38の鍔部38bの上面に載っていた球体37が移動スペース34側へ転動できるのを妨げない程度に弱い力で作用する付勢力に設定されている,すなわち,弾性片43の上方への弾性力や当該弾性力による反力もこのような小さなものに設定されているということができる。」(審決謄本16頁第3段落)とし,「そうすると,先願明細書の段落【0026】の『一方,地震時には,…(中略)…係止体38の上動が阻止され,係止体38の下端が弾性片43を押し下げながら係止部42の垂直面42bに当接可能な状態になり,開き戸32の開放度が若干開く程度に規制される。』との記載は,地震時には,開き戸32は,閉じた状態から係止体38の下端が係止部42の垂直面42bに当接する状態までの移動は可能であるが,それ以上の移動は規制されていると解するのが相当であり,『地震時に扉等がばたつくロック状態となるロック方法』であるということができる。」(同頁第4段落)と認定判断した。そして,本件発明1の「地震時に扉等がばたつくロック状態」は,「係止体の係止部は扉等の係止具に係止することなく単に停止されるものである」と解釈されることから,先願明細書には,「地震時に扉等がばたつくロック状態となるロック方法」が記載されているということができるものである。
先願明細書にいう「地震時」とは,「地震開始時」から「地震終了時」までの時間帯を指すものであり,審決が,一定の時間帯を意味する「地震時」についての解釈を示しているにもかかわらず,原告は,あえて「地震終了時のみ」に固執した主張をしているものである。
( )原告は,先願明細書の段落【0027】の記載は,先願明細書の図1に示3された状態で地震が終了した場合についてのみの説明と解釈すべきである旨主張するが,同段落の記載を,原告主張のように,先願明細書の図1に示された状態で地震が終了した場合についてのみの説明と限定的に解釈しなければならない合理的な理由は全く存在せず,原告の上記主張は誤りである。
図面は,発明の技術内容を理解するための補助的機能を果たすものであるが,図面の添付は必須とされるものではないから,先願明細書において,「平常時(=地震開始時)」,「地震時」及び「地震終了時」におけるすべての場合の図面を添付する必要はなく,しかも「地震終了時」といっても,扉等がばたつく以上,係止体が種々の位置にあるときに地震が終了すると考えられるから,そのうちのある位置の図面を添付し,その他の場合は,段落【0027】のように文言で説明を補充することは差し支えない。
( )原告は,弾性片43が係止体38を押し上げながら「元の状態に起き上が4る」状態を想定すると,弾性片43が「元の状態に起き上がる」ためには係止体38の下端部の鍔部が扉等側の係止部42の上端の突起に引っ掛かった際に係止体38をその抵抗に抗して「元の状態」まで上昇させなければならず,技術常識に照らすと,審決が認定するような「弱い弾性片」ではそのような抵抗に抗する力はない旨主張する。
しかし,審決は,この点について,「先願明細書(注;甲第1号証である特願平11-53488号(特開2000-248812号公報参照)の願書に最初に添付された明細書又は図面である。)には,このような弾性片43による摩擦力や摩擦係数等に言及する記載は全くないし,また,被請求人が主張するような『強い付勢力』を発揮する弾性片と設定しなければならないことを示唆する記載も見出し得ない。」(審決謄本16頁第2段落)と認定し,この認定に何ら誤りはないから,原告の前記主張は失当である。
( )原告は,その主張の根拠として,先願発明について,平成11年4月135日付けで手続補正書が提出されて,その段落【0026】が「球体37は・・・強く挟持される」と補正されていることを挙げるが,特許法29条の2における「記載された発明」は,願書に最初に添付した明細書(先願明細書)に記載されていることが必要であり,その後の手続補正書の記載は考慮されないのであるから,失当である。
第5当裁判所の判断1取消事由(先願発明の認定の誤り)について( )審決は,先願明細書には,「家具,吊り戸棚等の開き戸付き収納装置に設1けられ,地震時に開き戸の開放を規制する開き戸の閉止装置であって,前記収納装置本体に上下動可能に設けられた係止体と,地震の揺れによって動作して前記係止体の動きを上動不能に阻止する阻止手段(球体37)と,前記開き戸に支持され前記開き戸の開閉に際して前記係止体の動きが阻止されたときにのみ前記係止体が係止可能な状態になって前記開き戸の開放度を若干開く程度に規制する規制手段とを備えている開き戸の閉止装置を用いた地震時に開き戸の開放を規制する方法。」(審決謄本6頁第3段落)との先願発明が記載されているとした上,「先願発明の『地震の揺れによって』『前記開き戸の開放度を若干開く程度に規制する』ところの『地震時に開き戸の開放を規制する方法』は,本件発明1の『地震時に扉等がばたつくロック状態となるロック方法』に相当するといえる。」(同13頁第4段落)と認定したのに対し,原告は,先願明細書には,本件発明1の「地震時に扉等がばたつくロック状態となるロック方法」に相当する構成は記載されておらず,本件発明1と先願発明とが実質的に同一であるとはいえない旨主張する。
( )本件発明1は,「地震時に扉等がばたつくロック状態となる方法」に係る2発明であり,その特許請求の範囲には,「地震時に扉等がばたつくロック状態となるロック方法において」との記載があるところ,「扉等がばたつくロック状態」について,これを限定する格別の記載は見当たらない。
一般的な用語例に従うと,「ロック」とは,「錠をおろすこと。鍵をかけること。錠。」(広辞苑第5版)とされ,扉についていえば,「ロック状態」とは,鍵をかけるなどして開かない状態をいうと解される。また,「ばたつく」とは,「ばたばたする。騒がしく動きまわる。じたばたする。」(同)などの意味を有する。そうすると,「扉等がばたつくロック状態」とは,「扉等がばたばたした状態にありながら,かつ,鍵をかけるなどして開かない状態」であると,一応理解することができる。しかし,その内容が一義的に理解されるとは,直ちに断定し難いところである。したがって,本件発明1が,これらの語のみで,特許請求の範囲が一義的に発明として特定されるのかは明らかではない。
( )本件明細書(甲8)には,以下の記載がある。 3ア「【発明が解決しようとする課題】本発明は以上の従来の課題を解決し地震時に係止体が扉等の戻る動きとは独立して動くことにより扉等の戻る動きで解除されず地震時にロック位置に到って振動し又はロック位置を保持する構成にすることにより解除機構を単純に出来る扉等の地震時ロック方法及び該方法を用いた地震対策付き棚の提供を目的とする。更に本発明の他の目的は係止体が扉等の戻る動きとは独立し扉等の戻る動きで解除されず地震時に扉等の開く動きを許容しない状態を保持し,地震のゆれがなくなることにより扉等の戻る動きと関係なく前記係止体は扉等の開く動きを許容して動き可能な状態になる構成にすることにより解除機構を単純に出来る扉等の地震時ロック方法及び該方法を用いた地震対策付き棚の提供を目的とする。」(段落【0003】)イ「【課題を解決するための手段】本発明は以上の目的達成のために:地震時に扉等がばたつくロック状態となるロック方法において棚本体側に取り付けられた装置本体の扉等が閉じられた状態からわずかに開かれるまで当たらない係止体が地震時に扉等の開く動きを許容しない状態になり,前記係止体は扉等の戻る動きとは独立し扉等の戻る動きで解除されず地震時に扉等の開く動きを許容しない状態を保持し,地震のゆれがなくなることにより扉等の戻る動きと関係なく前記係止体は扉等の開く動きを許容して動き可能な状態になる扉等の地震時ロック方法等を提案するものである。」(段落【0004】)ウ「以上で明らかな通り図1乃至図5の扉等の地震時ロック方法は棚の本体(90)側に取り付けられた装置本体(1)の係止体(2)が地震時に扉等の開く動きを停止させる位置であるロック位置へと動き,前記係止体(2)は扉等の戻る動きとは独立して動くことにより扉等の戻る動きで解除されず地震時にロック位置に到って振動し又はロック位置を保持し,地震のゆれがなくなることにより扉等の戻る動きと関係なく前記係止体(2)は待機位置へと戻る扉等の地震時ロック方法である。そして図示のものは地震時に装置本体(1)の係止体(2)が扉等の係止具(5)に係止し扉等のばたつきのほとんどないロック状態となる扉等の地震時ロック方法であった。」(段落【0005】【発明の実施の形態】,5頁7行目〜14行目)エ「その結果係止具(7)の絞り(7c)を係止部(6b)(溝を有するため溝が縮まって)は通過し開口端(7b)に到ることになる。開口端(7b)において係止部(6b)は段(6c)で係止保持力(係止解除力でもある)が確保される。すなわち段(6c)における係止保持力(係止解除力でもある)以下であれば開き戸(91)は地震のゆれの戻りから受ける力によっては解除されない。すなわち開き戸(91)が隙間を有した状態でロックされることは図1乃至図5の実施例のものと同様である。地震が終わると使用者は隙間を有してロックされている図10及び図11の状態の開き戸(91)を係止保持力以上の力で押す。これにより係止状態が解除され図10及び図11の状態から図6及び図7に示す様に係止体(6)は係止具(7)の絞り(7c)を通過し開口(7a)へと戻り開き戸(91)の開閉は自由になる。」(同段落,6頁37行目〜49行目),オ「以上で明らかな通り図6乃至図11の扉等の地震時ロック方法は棚の本体(90)側に取り付けられた装置本体(1)の係止体(6)が地震時に扉等の開く動きを許容しない状態になり,前記係止体(6)は扉等の戻る動きとは独立し扉等の戻る動きで解除されず地震時に扉等の開く動きを許容しない状態を保持し,地震のゆれがなくなることにより扉等の戻る動きと関係なく前記係止体(6)は扉等の開く動きを許容して動き可能な状態になる扉等の地震時ロック方法である。そして図示のものは地震時に装置本体(1)の係止体(6)が扉等の係止具(7)に係止し扉等のばたつきのほとんどないロック状態となる扉等の地震時ロック方法であった。」(同段落,7頁2行目〜9行目)カ「すなわち図1乃至図11の扉等の地震時ロック方法に共通することは地震時に装置本体(1)の係止体(2)(6)が扉等の係止具(5)(7)に係止し扉等のばたつきのほとんどないロック状態となることであった。以上の地震時ロック方法のいずれかに適用が可能な振動エリアAの他の実施例(但しこれに限るものではない)を図12乃至図17に示す。」(同段落,同頁10行目〜14行目)キ「次に図18及び図19の実施例は図6乃至図11に示したものと比較し地震時に扉等がばたつくロック状態となる扉等の地震時ロック方法であることを特徴とする。すなわち係止体(6)の係止部(6b)は扉等の係止具(7)に係止することなく単に停止されるものであり地震時に扉等がばたつくロック状態となる。次に図20の実施例は図1乃至図5に示したものと比較し地震時に扉等がばたつくロック状態となる扉等の地震時ロック方法であることを特徴とする。すなわち係止体(2)の係止部(2e)は扉等の係止具(5)の係止部(5a)に係止することなく単に停止されるものであり地震時に扉等がばたつくロック状態となる。」(同段落,同頁18行目〜25行目)ク「【発明の効果】本発明の扉等の地震時ロック方法及び該方法を用いた地震対策付き棚の実施例は以上の通りでありその効果を次に列記する。本発明の地震時ロック方法は特に係止体が扉等の戻る動きとは独立し扉等の戻る動きで解除されず地震時に扉等の開く動きを許容しない状態を保持し,地震のゆれがなくなることにより扉等の戻る動きと関係なく前記係止体は扉等の開く動きを許容して動き可能な状態になる構成にすることにより解除機構を単純に出来る。」(段落【0006】)( )上記によれば,本件明細書の図1ないし図17に示されたロック方法は,4地震時に扉等のばたつきのほとんどないロック状態となるものに係り(上記( )ウないしカ),本件発明1の実施例に相当するものではない。これに対3し,図18ないし図20に示されたロック方法のみが,地震時に扉等がばたつくロック状態となるものであり(同キ),本件発明1の実施例に相当するものである。
そして,本件明細書において,本件各発明について説明する部分は,発明が解決しようとする課題(上記ア),課題を解決するための手段(上記イ),発明の効果(上記ク)び上記キの実施例の説明と図18ないし図20しかない。
本件明細書には,前記のとおり,本件発明1の特許請求の範囲にいう「扉等がばたつくロック状態」について直接定義する記載はないものの,「地震時に扉等のばたつきのほとんどないロック状態」と「地震時に扉等がばたつくロック状態」を明確に区別しており,そのうちの「地震時に扉等がばたつくロック状態となる扉等の地震時ロック方法」に係る発明が本件発明1であるから,「ばたつきのほとんどない」構成と「ばたつく」構成との間にどのような相違があるのかが明確にされる必要がある。
この点について,上記( )ウの「そして図示のものは地震時に装置本体3(1)の係止体(2)が扉等の係止具(5)に係止し扉等のばたつきのほとんどないロック状態となる扉等の地震時ロック方法であった。」との記載や同カの「すなわち図1乃至図11の扉等の地震時ロック方法に共通することは地震時に装置本体(1)の係止体(2)(6)が扉等の係止具(5)(7)に係止し扉等のばたつきのほとんどないロック状態となることであった。」との記載によれば,「扉等のばたつきのほとんどないロック状態」とは,「装置本体(1)の係止体(2)が扉等の係止具(5)に係止」するものであることが分かる。
また,「扉等がばたつくロック状態」とは,上記( )キによれば,実施例3の図18,19及び図20で示されるものであり,棚の本体側に設けられた係止体について,「その係止体(6)の係止部(6b)が,扉等の係止具(7)に係止することなく単に停止される」ロック状態(図18,19),ないしは,「係止体(2)の係止部(2e)が,扉等の係止具(5)の係止部(5a)に係止することなく単に停止される」というロック状態(図20)を意味するものをいうと理解することができる。
以上によれば,係止体との関係で,「扉等のばたつきのほとんどないロック状態」は,扉等の係止具に「係止」するのに対し,「扉等がばたつくロック状態」は,扉等の係止具の係止部に「係止」するのでなく,単に「停止」するものをいうと認められる。
したがって,本件発明1にいう「扉等がばたつくロック状態」は,棚本体に設けられた係止体を用いて扉等の開閉を制御している状態であるが,係止体の存在にもかかわらず,扉等に設けられた係止具に「係止」せず,単に「停止」される状態をいうものと認められる。
そこで,さらに,「係止」と「停止」の技術的意義及び区別がどのようなものであるかが明らかにされる必要がある。
本件明細書の発明の詳細な説明において,この点に関する記載としては,「係止体(6)の係止部(6b)が,扉等の係止具(7)に係止することなく単に停止される」,「係止体(2)の係止部(2e)が,扉等の係止具(5)の係止部(5a)に係止することなく単に停止される」があるが,これらはいずれも「係止体の係止部」の機能,作用が記載されているのみである。
一般に,「係止」とは,「係わり合って止まること。」(平成12年8月28日日刊工業新聞社発行特許技術用語集-第2版-)などとされており,上記( )ウないしカを併せ考えると,本件明細書において,「係止」とは,3扉等が「開く方向にも閉じる方向にも動きが封殺されていること」を意味するものと理解できる。また,本件明細書においては,「停止」という用語が,「係止」と対比して使用されていることから,「停止」は,上記の「係止」とは異なる意味を有するものと理解することができる。このことに,「扉等がばたつくロック状態」が,前記( )のとおり,一般的な用語例に従うと,2「扉等がばたばたした状態にありながら,かつ,鍵をかけるなどして開かない状態」にあることを意味していることを併せ考えると,「扉等のばたつきのほとんどないロック状態」とは,「扉等が係止された状態」すなわち「扉等が,開く方向にも閉じる方向にも動きが封殺されるロック状態」をいうのに対し,本件発明1における「扉等がばたつくロック状態」とは,「扉等が,係止されることなく単に停止されるロック状態」であり,「扉等が,ロック位置からそれ以上開く方向への動きが封殺されるが,ロック位置から閉じる方向については,開く方向及び閉じる方向の動きが許容され,往復動可能となるロック状態」をいうものと,一応解釈することができる。
そして,扉等は,技術常識によれば,通常は,閉じられているものであるから,「扉等がばたつくロック状態」において,地震時において,通常時に閉じられている位置と前記ロック位置との間を往復動可能であるといえる。
前記( )クには,発明の効果として,「解除機構を単純に出来る」旨の記3載があるが,同効果は,地震時において,「扉等のばたつきのほとんどないロック状態」と対比される「扉等がばたつくロック状態」の効果とは認められず,「扉等がばたつくロック状態」により,どのような効果を奏するかについて,本件明細書には,何らの記載もない。
( )進んで,先願明細書(甲7〔ただし,6頁以下の手続補正書に係る部分5を除く。〕)についてみると,以下の記載がある。
ア「そのため,地震の揺れを感じると,鍔部38bの上面にいずれかの球体37が載置可能になり,蓋39の下面と係止体38の鍔部38bの上面との間に球体37が嵌まり込んで挟持され,これによって係止体38の動きが上動不能に阻止される。・・・このように,各球体37は,地震の揺れによって動作して係止体38の動きを上動不能に阻止する阻止手段として機能する。」(段落【0022】)イ「43は弾性片であり,図1,図3に示されるように,支持体41のほぼ中央にほぼ45゜屹立した状態で一体的に形成され,係止部42の手前に配置され,先端部分が係止体38の重量より大なる上向きの弾性力を有する。」(段落【0023】)ウ「・・・揺れがあるときには,開き戸32が開こうとすると,球体37の介入によって上動不能に動きが阻止された係止体38により,弾性片43が押し下げられ,係止体38の下端部が係止部42の左側の垂直面42bに当接して開き戸32の開放度が若干開く程度に規制される。」(段落【0024】)エ「次に動作について説明すると,平常時には,係止体38の上動が阻止されることはないため,開き戸32の開放に伴い,弾性片43の傾斜面43aに沿って係止体38が上動すると共に,開き戸43の閉塞に伴い,係止部42の傾斜面42aに沿って係止体38が上動し,開き戸32は自由に開閉することができる。」(段落【0025】)オ「一方,地震時には,揺れによって各球体37のうち少なくともひとつが係止体38の鍔部38b上面に載置することにより,蓋39の下面と係止体38の鍔部38bの上面との間に球体37が嵌まり込んで挟持され(図1中の1点鎖線及び2点差線〔注,「2点鎖線」の誤記と認める。〕),これによって係止体38の上動が阻止され,係止体38の下端が弾性片43を押し下げながら係止部42の垂直面42bに当接可能な状態になり,開き戸32の開放度が若干開く程度に規制される。」(段落【0026】)カ「そして,地震が終われば,係止体38の鍔部38bの上面に載っていた球体37が移動スペース34側へ転動するため,係止体38の動きの規制が自動的に解除され,弾性片43がその弾性力によって先端が元の状態に起き上がり,特別な解除動作を行わなくても平常時と同じ状態に復帰する。」(段落【0027】)キ図1には,球体(符合は付されていない)が蓋39の下面と係止体38の鍔部38bの上面との間に嵌まり込んで挟持された状態(1点鎖線及び2点鎖線で図示)と,球体37がケース33の内側に形成された移動スペース34(図2によれば3つ形成されている)に位置している状態(実線で図示)とが示されている。
( )そこで,先願明細書の上記記載に基づき,先願発明について検討すると,6先願発明は,平常時には,弾性片43の先端部分が係止体38の重量より大なる上向きの弾性力を有するため,弾性片43の傾斜面43aに沿って係止体38が上動し,係止体38の上動を阻止するものがないため,開き戸が自由に開閉し(上記( )イ,エ),地震時には,球体37のいずれかが係止体538の鍔部38bの上面に載置され(同オ),開き戸32の開く動きによって,弾性片43が係止体38に対して相対的に扉が開く方向に移動し,係止体38の下端が弾性片43の先端部分と接して弾性片43を押し下げることにより,係止体38が弾性片43による上向きの弾性力を受けても,蓋39の下面と係止体38の鍔部38bの上面との間に球体37が嵌まり込んで載置されていることから,係止体38の上動が阻止されるため,係止体38の下端は,係止部42の垂直面42bよりも扉が開く方向に移動することができず,開き戸32の開放度が若干開く程度に規制され(同ア,ウ,オ),地震が終了すると,球体37が移動スペース34側に転動し,係止体38の上動を阻止するものがなくなるため,特別な解除動作を行わなくとも,平常時と同じ状態,すなわち,開き戸が自由に開閉する状態に復帰する(同カ)ものであることが理解できる。そして,先願明細書の段落【0027】の記載(同カ)は,先願発明における一連の動作を記載した,段落【0025】の記載(同エ)及び段落【0026】の記載(同オ)と一体となって,地震終了時の状態について,一般的に説明したものであると認められる。
先願明細書には,弾性片43については,先端部分が係止体38の重量より大きい上向きの弾性力を有すること(同イ)が記載されているが,それは,平常時に開き戸が自由に開閉する(同エ)ための弾性力の下限を定めたものである。他方,先願明細書には,地震時には,開き戸の開く動きによって,係止体38が弾性片43を押し下げることが記載され,係止体38は,弾性片43の上向きの弾性力を受けることは理解できるが,地震時において,扉の開閉は,球体37の存在によって規制されると記載されていることは明確であり,地震時における弾性片43の弾性力について,扉の開閉に影響を及ぼす作用効果についての記載や示唆はない。その他,先願明細書において,弾性片43の弾性力について,上記の下限を定めた以外に,その程度を示唆する記載は認められない。
したがって,先願明細書において,弾性片43の弾性力について,通常時において,開き戸が自由に開閉するとの効果を有することを超えて,地震時における,その作用効果が記載されているとまでは認められない。
そうすると,先願明細書の記載に照らせば,先願発明は,地震時において,蓋39の下面と係止体38の鍔部38bの上面との間に球体37が嵌まり込んで載置されていることから,係止体38の上動が阻止されるため,開き戸32の開放度が若干開く程度に規制されるものではあるが,若干開く程度といえる範囲においては,開き戸の動きを規制するものはなく,開き戸は往復動可能であると認めるのが相当である。
一方,前記( )のとおり,本件発明1における「扉等がばたつくロック状4態」とは,「扉等が,ロック位置からそれ以上開く方向への動きが封殺されるが,ロック位置から閉じる方向については,開く方向及び閉じる方向の動きが許容され,往復動可能となるロック状態」をいうものと,一応解釈することができる。そして,本件明細書の実施例(図19,20)においては,地震時に扉の開く程度について,扉の厚みの1.5倍弱程度のものが示され,先願明細書の図1において,地震時に扉の開く程度について,扉の厚みの1.5倍弱程度のものが示されていることからすると,本件発明1における地震時に扉が往復動可能に開く程度は,先願発明における地震時に扉が往復動可能に開く程度を含むものであると認められる。
この点について,原告は,先願発明について,その弾性片43は,球体37を摩擦力で転動不能にするのみならず,地震時のゆれ及び物がぶつかることによる衝撃によっても球体37が外れないように強く挟持するものであり,「弱い弾性片」でなく「十分に強い弾性片」であり,先願発明は,地震時にゆれが弱くなれば,弾性片43の弾性力によって,球体37が強く挟持され,転動不能になって,開き戸の往復動が停止するものであり,地震時にゆれが弱くなれば扉の往復動が停止するものである点において,地震時に,ロック位置から閉じる方向の動きが許容されるという本件発明1の「扉等がばたつくロック状態となるロック方法」に相当するものはないとして,先願発明に「扉等がばたつくロック状態となるロック方法」に相当する構成があるとした審決の先願発明の認定の誤りを主張する。しかし,前記のとおり,先願発明は,地震時に,若干開く程度といえる範囲においては,開き戸の動きを規制するものはなく,開き戸は往復動可能であると認められるのであり,そうとすれば,地震時に,「扉等が,ロック位置からそれ以上開く方向への動きが封殺されるが,ロック位置から閉じる方向については,開く方向及び閉じる方向の動きが許容され,往復動可能となるロック状態」となるのであるから,先願発明に「扉等がばたつくロック状態となるロック方法」に相当する構成があると認定した審決に原告主張の誤りがあるとはいえない。
( )原告は,先願明細書の段落【0027】(前記( )カ)は,球体37は,7 5弾性片43により押さえられていない状態を示しているという,先願明細書の図1の状態(同キ)で地震が終了した場合の説明であり,そこには,球体37が弾性片43に押さえられている場合に球体37が転動できるか否かについては何ら記載されていない旨主張する。
しかし,前記( )のとおり,先願明細書の段落【0027】は,先願発明6における一連の動作を記載した,段落【0025】,【0026】と一体となるもので,地震終了時の状態の一般的な説明であることは明らかであり,また,そのように解したとしても矛盾はない。他方,段落【0025】,【0026】に続く一連の動作を説明しているにもかかわらず,段落【0027】においてのみ,地震終了時において,図1に示された状態のみの説明であることを記載,示唆するものは全くなく,むしろ,段落【0027】の「そして,地震が終われば,・・・弾性片43がその弾性力によって先端が元の状態に起きあがり,特別な解除動作を行わなくても平常時と同じ状態に復帰する。」との記載からは,原告の主張と異なり,地震終了時に係止体38の下端が弾性片43を押し下げているという,図1とは異なる状態においても,球体37が転動し,解除動作を必要とせずに,平常時と同じ状態に復帰することが記載されていると自然に理解できるものであり,原告の主張は採用できない。
また,原告は,先願発明の弾性片43は,「弱い弾性片」でなく「十分に強い弾性片」であり,先願発明は,地震時にゆれが弱くなれば,弾性片43の弾性力によって,球体37が強く挟持され,転動不能になって,開き戸の往復動が停止するものであるとの主張の根拠として,技術常識及びその後の先願明細書の補正内容を挙げ,弾性片43が係止体38を押し上げながら「元の状態に起き上がる」状態は,図1の状態とは異なり,扉等がわずかに開いて,係止部42が係止体38(の側面)に当たった状態であり,この状態から弾性片43が「元の状態に起き上がる」ためには,係止体38の下端部の鍔部が扉等側の係止部42の上端の突起に引っ掛かった際に,係止体38をその抵抗に抗して「元の状態」まで上昇させなければならないのであって,技術常識に照らすと,審決が認定するような「弱い弾性片」ではそのような抵抗に抗する力はないこと,及び,その後の先願明細書の補正内容を主張する。
しかし,先願明細書の図1においては,係止体38の下端部の鍔部や係止部42の上端の突起が示されているが,先願明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明において,係止体38の下端部の鍔部や係止部42の上端の突起の構成やその作用効果について触れた記載はなく,それらが先願発明において構成上の意味を有するものであるとは認められず,本件発明1との対比において認定される先願発明について,係止体38の下端部の鍔部や係止部42の上端の突起が先願発明の内容になるものではないから,原告の主張は,前提を欠くものである。その他,先願明細書において,弾性片43の弾性力について,その下限を定めた以外に,その程度を示唆する記載は認められず,原告の主張は理由がない。
また,本件で問題となるのは,先願明細書(特願平11-53488号の願書に最初に添付された明細書及び図面)に記載された発明であり,その後の補正された明細書における発明が問題となるものではないから,補正後の記載を根拠とする原告の主張は採用できないし,また,そのような補正後の記載を考慮しなくとも,先願明細書について,その内容を矛盾なく理解できることは上記のとおりである。
( )以上によれば,原告主張の取消事由は理由がない。
82以上のとおりであるから,原告主張の取消事由は理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 宍戸充
裁判官 柴田義明