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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19ネ10085損害賠償請求控訴事件 判例 特許
平成17ネ10104特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
平成18ネ10051特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
平成17ネ10016特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
平成18ネ10065特許権侵害差止請求控訴事件 判例 特許
関連ワード 技術的思想 /  技術的範囲 /  技術的手段 /  発明の詳細な説明 /  参酌 /  技術的意義 /  均等 /  均等論 /  特許発明 /  実施 /  構成要件 /  のみ用いる /  具体的態様 /  差止請求(差止) /  侵害 /  不法行為(民法709条) /  実施権 /  通常実施権 /  独占的通常実施権 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 18年 (ネ) 10052号 特許権侵害差止等請求控訴事件
控訴人(原審原告)X
控訴人(原審原告)株式会社オカドラ
両名訴訟代理人弁護士木下洋平
同補佐人弁理士池田宏
被控訴人(原審被告)共立工業株式会社
訴訟代理人弁護士山崎司平,柳楽久司
同弁理士加藤雄二
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2007/03/27
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
全容
第1当事者の求めた裁判1控訴人ら「原判決を取り消す。被控訴人は原判決別紙物件目録記載2ないし5の乾燥装置を製造し,販売し,又は譲渡若しくは貸渡しのために展示してはならない。被控訴人は,同目録記載2ないし5の乾燥装置を廃棄せよ。被控訴人は控訴人Xに対し,1000万円及びこれに対する平成16年3月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。被控訴人は控訴人株式会社オカドラに対し,6000万円及びこれに対する平成16年3月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。訴訟費用は,第1,第2審とも被控訴人の負担とする 」との判決及び。
仮執行の宣言。
2被控訴人主文と同旨の判決。
第2事案の概要本件は,乾燥装置に関する特許権(以下「本件特許権1」という,回転巻上羽。)根を有する乾燥装置に関する特許権(以下「本件特許権2」という )及び被乾燥。
物の乾燥方法に関する特許権(以下「本件特許権3」といい,本件特許権1〜3を併せて「本件各特許権」という )を有する控訴人X(以下「控訴人X」という ) 。 。
及び控訴人Xから本件各特許権について独占的通常実施権の設定を受けている控訴人株式会社オカドラ(以下「控訴人オカドラ」という )が,被控訴人に対し,被 。
控訴人が,原判決別紙物件目録記載2〜5の各乾燥装置(以下,同目録記載2〜5の各乾燥装置を 同目録記載の標目に従って 順次イ号物件ロ号物件ハ , ,,「」,「」,「号物件」及び「ニ号物件」といい,これらを併せて「被控訴人各物件」という )。
を製造・販売しているとした上,被控訴人各物件が,本件特許権1,2に係る各特許請求の範囲第1項の発明の技術的範囲に属し,かつ,本件特許権3に係る特許請,, 求の範囲第1項の発明の使用にのみ用いるものであると主張して @本件特許権12の侵害に対する特許法100条1項に基づく(控訴人オカドラについては,同項の類推適用に基づく)請求として,被控訴人各物件の製造,販売又は譲渡若しくは貸渡しのための展示の差止めを,A本件特許権1,2の侵害に対する特許法100条2項に基づく(控訴人オカドラについては,同項の類推適用に基づく)請求として,被控訴人各物件の廃棄を,B本件各特許権の侵害に対する民法709条に基づく請求として,控訴人Xは,損害賠償金1000万円及びこれに対する不法行為開始後の日である平成16年3月27日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を,控訴人オカドラは,損害賠償金6000万円及びこれに対する前同様の遅延損害金の支払を,それぞれ求めた事案である。
原判決は,@本件各特許権に係る各特許請求の範囲第1項の発明における「複数」「 」「」, 枚の基羽根 又は 複数枚配設されている基羽根 との要件に係る 複数枚 とは本件各特許権に係る明細書の記載を参酌すると,それぞれ最下段に複数枚の基羽根が配設されていることを意味するものと解釈されるところ,被控訴人が製造販売する乾燥装置は,最下段に1枚の羽根しか有しておらず,また,同乾燥装置において使用されている乾燥方法は,最下段に1枚の羽根しか有していない乾燥装置において用いられている乾燥方法であるから,それぞれ上記各発明の構成要件を充足しない,A最下段に複数枚の基羽根を配設することは,上記各発明の本質的部分に当たり,これを充足しない上記乾燥装置又は乾燥方法が上記各発明と均等であるとすることはできない,として,控訴人らの請求を棄却した。
本件の前提となる事実,本件の争点及び争点についての当事者の主張は,下記1,, , のとおり訂正し 下記2のとおり 当事者双方の当審における主張を付加するほか原判決事実及び理由欄の「第2事案の概要」のとおりであるから,これを引用する。
1原判決の訂正( )原判決6頁10〜12行を次のとおり改める。
1「控訴人Xと控訴人オカドラは,平成11年6月15日,控訴人Xが,現に所有し,又は将来所有するすべての日本国特許権及び実用新案権につき,控訴人オカドラに独占的実施を許諾する旨の契約を締結した(甲7」)。
( )原判決9頁6〜9行を次のとおり改める。
2「被控訴人は,乾燥装置を製造し,販売している(以下,被控訴人が現実に製造販売している乾燥装置を「被控訴人装置」といい,被控訴人装置において現実に使用されている乾燥方法を「被控訴人方法」という。被控訴人装置の構成及び被控訴人方法の構成については,当事者間に争いがある」。)。
( )原判決9頁11〜13行を次のとおり改める。
3「被控訴人装置は,その構成に関する控訴人ら及び被控訴人のいずれの主張によっても,本件発明Aの構成要件A2ないしA4及びA6を充足し,また,本件発明Bの構成要件B2ないしB5及びB7を充足する。さらに,被控訴人方法は,その構成に関する控訴人ら及び被控訴人のいずれの主張によっても,本件発明Cの構成要件C1,C5を充足する(弁論の全趣旨」)。
( )原判決13頁10行,15頁10行,20頁1行,54頁4行,同頁5行,456頁18行,同頁19行,57頁12行,同頁17〜18行,同頁22行,58,,「」 「」。 頁7行 同頁11行 同頁21行の各 当初明細書 を 当初明細書C と改める( )原判決21頁25行の「本件発明Bの構成要件B2」を「本件発明Bの構成5要件B1」と改める。
( )原判決22頁5〜6行の「 以下「イ号方法」という」を削る。
6 ( 。)2当審における主張の付加(控訴人らの主張)( )原判決は,争点1(被控訴人装置は,本件発明Aの構成要件A1及び本件発1明Bの構成要件B1を充足するか。被控訴人方法は,本件発明Cの構成要件C2を充足するか )の1a(本件発明Aの構成要件A1,本件発明Bの構成要件B1及 。
び本件発明Cの構成要件C2の「複数枚」の意義 )について,本件発明Aの構成 。
, 「」 要件A1 本件発明Bの構成要件B1及び本件発明Cの構成要件C2の各 複数枚は,いずれも,最下段に複数枚の基羽根が配置されていることを意味するものと解,, , 釈し 被控訴人装置は 控訴人ら・被控訴人のいずれの主張による構成であっても最下段に1枚の羽根しか有していない乾燥装置とされるから,本件発明Aの構成要件A1又は本件発明Bの構成要件B1を充足せず,また,被控訴人方法は,最下段に1枚の羽根しか有していない乾燥装置において用いられる乾燥方法であるから,本件発明Cの構成要件C2を充足しないと判断したが,原判決の「複数枚」の解釈は,以下のとおり,誤りである。
ア本件発明A〜Cの技術的範囲は,特許法70条1項に基づき,本件特許権1〜3に係る各特許請求の範囲の請求項1の字義どおりに解釈されるべきであり,みだりに他の要件を付加することは許されない。特に,本件特許権1〜3に係る特許請求の範囲は,平成6年法律第116号による改正前の特許法36条5項により,「発明の構成に欠くことのできない事項のみ」が記載されたものであり,審決取消訴訟における判決であるが,最判昭和47年12月14日(民集26巻10号1888頁。フェノチアジン誘導体事件判決)が説示するとおり 「明細書中において,特許請求の範囲の項の占める重要性は,とうてい発明の詳細な説明の項又は図面等と同一に論ずることはできない」ものである。原判決は,このように重要性を有する特許請求の範囲において 「最下部の基羽根が複数枚であることの要否など羽根 ,の設置場所及び具体的態様等については,特許請求の範囲の記載からその内容が一義的に明らかであるとはいえない」などとした上 「複数枚」が最下段に複数枚の ,基羽根が配置されていることを意味するなどという特許請求の範囲に記載のない解釈を行ったが,原判決の考え方は,本件発明Cの審査経過に関する認定判断(原判決53頁22行〜59頁21行)に見られるように,発明の詳細な説明の記載にいたずらに拘泥し,特許請求の範囲の記載を軽視するものであって,特許法70条2項の「特許請求の範囲に記載された用語の意義の解釈」の名の下にこのような解釈がなされるのであれば,発明の詳細な説明とは別に特許請求の範囲を記載する意義はなくなってしまう。また,そもそも,発明の詳細な説明を含む本件各明細書(本件発明Aにつき甲2,本件発明Bにつき甲4,本件発明Cにつき甲6)の全体を通じて 「最下部に複数枚」という趣旨の記載は存在しない。 ,, 「」 イ本件発明Aの構成要件A1 本件発明Bの構成要件B1の 複数枚の基羽根は 「それぞれが平面から見て360度の円周範囲内の長さに定められた」もので ,あり,本件発明Cの構成要件C2に係る「複数枚配設されている基羽根」も同様である。そして1枚の基羽根の長さが,平面から見て360度の場合には,同一高さに複数枚を設けると,基羽根同士が干渉を起こしてしまうため,同一高さには1枚しか設けることができない。したがって,このことからも,最下部に複数枚の基羽, 。, 根を設けることが 本件各発明の必須の要件でないことは明らかである 原判決はこの点について,何ら判断を示していない。
ウ本件各明細書には,従来の1枚の垂直螺旋回転羽根式乾燥装置が有していた解決すべき課題が示されているが,当該課題は,巻上げの始まりの箇所が1箇所であること自体ではなく,乾燥槽内の底部に位置する被乾燥物の全量に比して上昇する被乾燥物の量が少なく,早期に被乾燥物を伝熱面に接触させることが難しいとともに,底部に被乾燥物が溜まった状態が続きやすく,乾燥効率を向上させ難かったという点である。そして,このような課題の解決策として,底部の羽根を複数枚にすることが不可欠というわけではない。上記のように,羽根の長さが平面から見て360度の場合には,複数枚を設けても干渉により全体の乾燥効率が妨げられるだけであるし,特開昭61-107082号公報(甲16)等により容易想到とされるおそれもあるからである。本件各明細書には,上記従来技術に関して,巻上げの始まりの箇所が1箇所であることに関連した課題Bのほかに,4個の課題が示されており,これらを総合すると,底部の羽根を複数枚にすることではなく,1枚の垂直螺旋回転羽根をばらばらに切り離した構成とすることが,課題の解決に資することは明らかである。
, , 原判決は 課題B及び作用効果B以外の課題及び作用効果は全く無視しているが1枚の垂直螺旋回転羽根をばらばらに切り離した構成は,最下部に1枚の基羽根しかないため,課題B及び作用効果Bに関しては,上記従来技術と同等であっても,その他の課題及び作用効果に関しては著しい向上が見られるはずであり,そうであれば,特許発明と同等の保護が与えられてよいはずである。
エ本件各特許権に係る出願当時,乾燥装置の技術分野において,複数の羽根を備えたものは存在しなかったのであるから,複数枚の羽根から成る乾燥装置は,複数枚の羽根が同一高さにあるか否かにかかわらず,全く新しい技術思想に基づくものであった。すなわち,本件各発明は,複数枚の基羽根方式の乾燥装置としてのパイオニア発明であり,それにふさわしい保護を受ける資格があるものである。
,( ,) ( )原判決は 争点4 被控訴人装置及び被控訴人方法は 本件各発明と均等か 2について,本件各発明は,課題Bを解決するための手段として,最下部の羽根を複数枚にする構成を採用し,これが本件各発明の本質的部分に当たるというべきであるから,これを充足しない被控訴人装置及び被控訴人方法が,本件各発明と均等であるということはできないと判断したが,以下のとおり,誤りである。
すなわち,本件各発明のような乾燥装置は,上下方向に広がった伝熱面を有効に利用して乾燥効率を高めようとするものである以上,伝熱面全体と被乾燥物の関係に注目する必要があり,この観点から,被控訴人装置における被乾燥物の挙動と,本件各発明(3枚羽根・4段方式のもの)における被乾燥物の挙動を対比してみると,両者は,最下部における巻上げ開始位置の数には相違があるものの,被乾燥物が伝熱面の全体にわたって薄膜状に広げられて伝熱面に接触している状態は,最下部を含めて相違がない。なお,最下部の基羽根は,上部に巻き上げられる被乾燥物の全体的重量を支える必要があるから,被控訴人装置においては,最下部における, , 。 基羽根の長さが 他の基羽根の長さの約2倍とされ 巻上げ能力が高められているこのような点にかんがみると,最下部の羽根を複数枚にする構成が,本件各発明の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分に当たるとすることは根拠がなく,従来の1枚の垂直螺旋回転羽根をばらばらに切り離し,360度以内の長さの複数枚の基羽根としたことが,本件各発明の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分に当たるというべきである。
(被控訴人の主張)( )控訴人らは,争点1の1aにつき,本件発明Aの構成要件A1,本件発明B1の構成要件B1及び本件発明Cの構成要件C2の各「複数枚」は,いずれも,最下段に複数枚の基羽根が配置されていることを意味するとした原判決の解釈が誤りであると主張する。
しかしながら,控訴人らが,原判決の「複数枚」に係る解釈を非難するに当たって引用するフェノチアジン誘導体事件最高裁判決は,控訴人らが自認するとおり,審決取消訴訟における判決であり,かつ,特許請求の範囲の記載がそれ自体極めて明瞭で,明細書中の他の記載事項等を参酌しなければ理解し得ない性質のものではなかった事案に関するものである。したがって,同最高裁判決は,特許権侵害訴訟における,それ自体極めて明瞭であるとは到底いえない本件各特許権に係る特許請求の範囲の記載の解釈について,参考となるものではない。原判決は,特許法70条2項に基づき,本件各明細書の発明の詳細な説明の記載を考慮して各特許請求の範囲の記載を正当に解釈したものである。
( )控訴人らは,本件各発明は,課題Bを解決するための手段として,最下部の2羽根を複数枚にする構成を採用し,これが本件各発明の本質的部分に当たるというべきであるから,これを充足しない被控訴人装置及び被控訴人方法が,本件各発明と均等であるということはできないとした原判決の判断が誤りであるとし,従来の1枚の垂直螺旋回転羽根をばらばらに切り離し,360度以内の長さの複数枚の基羽根としたことが,本件各発明の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分に当たると主張する。
しかしながら,仮にそうであるとすれば,本件各明細書において,最初の実施例として,垂直螺旋回転羽根を,それぞれの長さが360度以内となるようにばらばらに切り離して,複数枚とした装置又は当該装置を用いた方法が記載されているはずである。しかるに,本件各明細書に実施例として記載されているのは,最下段を含む各段の同一水平面内に複数の基羽根を配置したものだけであり,当該同一水平面内の複数の羽根の枚数や長さを異にしたり,基羽根を配置した段の数を異にした構成が何通りか示されているが,同一水平面内に配置した基羽根の数が1枚である構成の実施例は,一つとして記載されていない。このように,開示された実施例の全部に共通する,同一水平面(当然最下段を含む )内に複数の基羽根を配置する 。
構成が,本件各発明の本質的部分にほかならない。また,被控訴人装置における被乾燥物の挙動と,本件各発明(3枚羽根・4段方式のもの)における被乾燥物の挙動とに相違がないとする主張も物理的に誤りである。
したがって,控訴人らの上記主張も失当である。
第3当裁判所の判断1争点1(被控訴人装置は,本件発明Aの構成要件A1及び本件発明Bの構成要。, 。) 件B1を充足するか 被控訴人方法は 本件発明Cの構成要件C2を充足するかの1a(本件発明Aの構成要件A1,本件発明Bの構成要件B1及び本件発明Cの構成要件C2の「複数枚」の意義 )について。
( )当裁判所も,本件各発明の特許請求の範囲に記載された「複数枚」という用1語は,最下段に複数枚の基羽根が配置されていることを意味するものと解するものである。その理由は,後記( )のとおり付加し,後記( )のとおり,当審における控2 3訴人らの主張に対し判断するほかは,原判決事実及び理由欄の「第3争点に対する当裁判所の判断」の1の( )〜( )(46頁11行〜60頁3行)のとおりである13から,これを引用する。
( )原判決への付加2ア原判決53頁7行の次に,項を(ウ)項に改めて,下記のとおり付加する。
「(ウ)本件発明Aの構成要件A1の「複数枚」が,最下段に複数枚の基羽根が配置されていることを意味すると解釈されるべきであることは,本件特許権1に係る出願当初の明細書(乙14,以下「当初明細書A」という )の記載からも裏付け 。
られる。
すなわち,当初明細書Aには,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明として,下記の記載があった。
a特許請求の範囲「 請求項1】被乾燥物3を投入する内部が円筒形状の乾燥槽4と,伝熱手段か 【らの熱を被乾燥物3に伝える乾燥槽4内壁面の伝熱面2と,上記乾燥槽4の周囲に位置し,上記伝熱面2に熱を伝える伝熱手段と,上記乾燥槽4内に回転可能に配設された回転羽根とから成る乾燥装置1に於て;上記回転羽根は,それぞれの羽根が伝熱面2と間に被乾燥物3を伝熱面2に接触せしめ得るようなクリアランスUを有しつつ,上記伝熱面2に沿って回転方向Rと逆方向の斜め上方に伸び,且つこのそれぞれの羽根が平面かに見て360度の円周範囲内の長さを有する複数枚の基羽根5aから成る回転巻上羽根5であり,而もこの回転巻上羽根5は,上記被乾燥物3を複数枚の基羽根5a上に載せて巻き上げつつ,遠心力Pによって伝熱面2に押し付け,且つ伝熱面2に沿って連続して上昇させることで被乾燥物を乾燥させるよう構成されていることを特徴とする回転巻上羽根5を有する乾燥装置。
【】(「」。) 請求項2上記回転上羽根5 判決注: 回転巻上羽根5 の誤記と認めるの複数を乾燥槽4内の重力方向に沿って垂直に配設した中心回転軸21に多段と成して配設し,上記中心回転軸21を回転させて多段と成す回転巻上羽根5を回転させることにより,上記被乾燥物3を各段で巻き上げつつ,伝熱面2に押し付けて上昇させ,最下段の回転巻上羽根5から最上段の回転巻上羽根5まで連続して上昇さ。」 せて乾燥させることを特徴とする請求項1記載の回転巻上羽根を有する乾燥装置b発明の詳細な説明「【】 , (a)産業上の利用分野本発明は回転巻上羽根を有する乾燥装置に係わり更に詳しくは,被乾燥物を巻き上げつつ,伝熱面に押し付け乾燥させる乾燥装置に関する(段落【0001 ) 。」】(b)「 課題を解決する為の手段】上記目的を解決する為に,本発明は次の技術 【的手段を有する。即ち,実施例に対応する添付図面中の符号を用いてこれを説明すると,本発明は,被乾燥物3を投入する内部が円筒形状の乾燥槽4と,伝熱手段からの熱を被乾燥物3に伝える乾燥槽4内壁面の伝熱面2と,上記乾燥槽4の周囲に位置し,上記伝熱面2に熱を伝える伝熱手段と,上記乾燥槽4内に回転可能に配設された回転羽根とから成る乾燥装置1に於て;上記回転羽根は,それぞれの羽根が伝熱面2と間に被乾燥物3を伝熱面2に接触せしめ得るようなクリアランスUを有しつつ,上記伝熱面2に沿って回転方向Rと逆方向の斜め上方に伸び,且つこのそれぞれの羽根が平面かに見て360度の円周範囲内の長さを有する複数枚の基羽根5aから成る回転巻上羽根5であり,而もこの回転巻上羽根5は,上記被乾燥物3を複数枚の基羽根5a上に載せて巻き上げつつ,遠心力Pによって伝熱面2に押し付け,且つ伝熱面2に沿って連続して上昇させることで被乾燥物を乾燥させるよう。, 構成されていることを特徴とする回転巻上羽根5を有する乾燥装置であるまた他の特徴とする所は,上記回転上羽根5の複数を乾燥槽4内の重力方向に沿って垂直に配設した中心回転軸21に多段と成して配設し,上記中心回転軸21を回転させて多段と成す回転巻上羽根5を回転させることにより,上記被乾燥物3を各段で巻き上げつつ,伝熱面2に押し付けて上昇させ,最下段の回転巻上羽根5から最上段の回転巻上羽根5まで連続して上昇させて乾燥させることを特徴とする(段落。」【0013】〜【0014 )】(c)「次に,上記乾燥槽4底部4aには,回転巻上羽根5が設置されている。この回転巻上羽根5は,乾燥槽4底部4aの外側に取り付けたモータ17に連設しており,このモータ17によって回転軸5bを中心として回動可能となっている。
次に,上記回転巻上羽根5に着目する。上記回転巻上羽根5は,複数枚の基羽根5aから成り,この例では3枚の基羽根5aから成る。それぞれの基羽根5aは同一形状であり,この内の1枚に着目すると,被乾燥物3を伝熱面2に接触せしめ得るようなクリアランスUを有しつつ,上記伝熱面2に沿って回転巻上羽根5の回転方向Rと逆方向の斜め上方に伸びている。上記クリアランスUは,上記被乾燥物3を基羽根5a上に載せて巻き上げるときに,この被乾燥物3がクリアランスUから下に落下しにくく,而も上記回転巻上羽根5が伝熱面2に接触しないで良好に回転可能にする為の基羽根5aの外周端10aと伝熱面2との隙間である(段落【00。」23】〜【0024 )】(d)「そして,上記回転巻上羽根5の回転により,上記被乾燥物3が各基羽根5aの一端18から基羽根5aの平坦面8上に載り基羽根5aに沿って他端部19側へ移動してゆく。このとき,上記被乾燥物3には,基羽根5aによって回転しつつ上方へ向かう作用が働き, 結果被乾燥物3を巻き上げると共に,巻き上げによる遠心力Pによって伝熱面2に押し付ける(段落【0028 ) 。」】(e)「次に,図8を参照して第3実施例を説明する。この例では,上記回転巻上羽根5の基羽根5aの枚数を2枚にしている。そして,上記回転巻上羽根5の複数を乾燥槽4内の重力方向に沿って垂直に配設した中心回転軸21に多段と成して取り付けている。この回転巻上羽根5を多段と成した乾燥装置1の動作を説明すると,多段と成す回転巻上羽根5を回転させて上記乾燥槽4の底部4aに位置する被乾燥物3を最下段の回転巻上羽根5で巻き上げる。そして,伝熱面2に沿って乾燥されながら上昇してきた被乾燥物3を上の段の回転巻上羽根5によって再び巻き上げる。こうして,次々と各段の回転巻上羽根5によって巻き上げつつ,伝熱面2に, , 押し付け乾燥させた被乾燥物3を 最上級の回転巻上羽根5によって巻き上げた後乾燥物を得る。即ち,上記被乾燥物3は,乾燥槽4の底部4aから上部4bまで乾燥されながら連続して上昇してゆくものである。次に,図9を参照して第4実施例を説明する。この例では,1枚の円板の円周部を切り欠き,この切り欠き部分を起こして上記複数枚の基羽根5aを形成している。そして,この複数枚の基羽根5aから成る1つの回転巻上羽根5を中心回転軸21に固定している。次に,図10を参照して第5実施例を説明する。この例では,2つの回転巻上羽根5を上下で。,, 2段となるよう中心回転軸21に固定している この内 下段の回転巻上羽根5は上述した第4実施例で示した円板の円周部を切り欠いて複数の基羽根5aを形成した回転巻上羽根5である。他方,上段の回転巻上羽根5は,中空円板の円周部を切り欠き,この切り欠き部分を起こして上記複数枚の基羽根5aを形成した回転巻上羽根5である。そして,上記上段の回転巻上羽根5は,上記中心回転軸21に対して取付アーム22によって固定されている。そして,上記中心回転軸21を回転させて,上記2つめの回転巻上羽根5を回転させたとき,下段の回転巻上羽根5から上段の回転巻上羽根5まで被乾燥物3が連続して上昇する。次に,図11を参照して第6実施例を説明する。この例では,上述した中空円板の円周部を切り欠いて複数の基羽根5aを形成した回転巻上羽根5の複数を中心回転軸21に多段と成るよう固定している。そして,上記複数の回転巻上羽根5を回転させたとき,上記被乾燥物3が最下段の回転巻上羽根5から最上段の回転巻上羽根5まで連続して上昇する(段落【0038】〜【0042 ) 。」 】(f)「また,請求項2記載によると,回転巻上羽根を多段と成すことにより,上下方向に伸ばした伝熱面を有効に使用可能となる。また,上記被乾燥物を最下段の回転巻上羽根から最上段の回転巻上羽根まで連続して上昇させ乾燥させることができる。そして,上記連続的に被乾燥物を乾燥させることで,連続的に乾燥物を得ることができる(段落【0052 ) 。」】上記当初明細書Aの特許請求の範囲の請求項1には 「複数枚の基羽根」に関し ,て 「上記回転羽根は ・・・複数枚の基羽根5aから成る回転巻上羽根5であり」 ,,との記載があるから,当初明細書Aの請求項1記載の発明において,1ユニットの「回転巻上羽根5」が複数枚の「基羽根5a」から成るものであったことが認められる。
他方,請求項2は,請求項1の従属項であり,複数の「回転巻上羽根5」を中心回転軸21に多段と成して配設した請求項1記載の乾燥装置について規定していたものであるが,その記載から 「回転巻上羽根5」は,それが複数ある場合には, ,中心回転軸21に多段と成して配設し,最下段の「回転巻上羽根5」から最上段の「回転巻上羽根5」まで,各段に区分することができるような態様のものであったこと,すなわち,1ユニットの「回転巻上羽根5」は1段から成る態様のものであったことが認められる。そして,請求項2は 「回転巻上羽根5」自体の態様には ,何ら限定を加えていないから,その「回転巻上羽根5」の態様は,請求項1記載のものと同じはずであり,また,請求項1は,回転巻上羽根5について,それが1ユニットである場合と複数ある場合とを全く区別していないのであるから,上記のような回転巻上羽根5の態様は,1ユニットである場合にも当てはまるものというべきである。そうすると,請求項1の「回転巻上羽根5」も,1ユニットが1段から成る態様のものであり,かつ,その1ユニットが複数枚の「基羽根5a」から成る,, , ものであったことは上記のとおりであるから 結局 当初明細書Aの請求項1には基羽根5aが複数枚で1段をなすものであったことが記載されていたのであり,このことは,乾燥槽底部の最下段においても,もとより異なるところではない。
そして,当初明細書Aの発明の詳細な説明には,上記のとおり,特許請求の範囲の請求項1記載の発明及び請求項2記載の発明について,上記構成及び実施例等が記載されており,乾燥槽底部の最下段の基羽根が複数枚ではないことが窺われるような発明については,全く記載がない。
しかるところ,本件発明Aの特許請求の範囲(本件特許権1に係る特許請求の範囲の請求項1)は,上記当初明細書Aの記載の範囲内において補正を経たものであるから,上記のとおり,当初明細書Aに記載された発明が,乾燥槽底部の最下段に複数枚の基羽根が配設されたもの以外を含むものとは認められない以上,本件発明Aにおいて,乾燥槽底部の最下段に配設される基羽根が,複数枚であっても,1枚であってもよいとして,補正が許されるはずはなく(平成6年法律第116号による改正前の特許法17条以下 ,本件発明Aの乾燥槽底部の最下段に配設される基 )羽根は複数枚であるとの理解に基づいて,本件特許権1の特許査定及び登録がなされたことは明らかである 」。
イ原判決53頁21行の次に,項を(ウ)項に改めて,下記のとおり付加する。
「(ウ)本件発明Bの構成要件B1の「複数枚」が,最下段に複数枚の基羽根が配置されていることを意味すると解釈されるべきであることは,以下の点からも裏付けられる。
本件発明Bの特許請求の範囲の記載は上記(原判決4頁15行〜5頁8行)のとおりであるところ,この特許請求の範囲には 「複数枚の基羽根」に関して 「複数 , ,枚の基羽根5aから成る回転巻上羽根5」との記載があるから,本件発明Bにおいて,1ユニットの「回転巻上羽根5」が複数枚の「基羽根5a」から成ることが認められる。しかるところ,本件発明Bの特許請求の範囲は 「回転巻上羽根5」に ,ついては,上記のように複数枚の「基羽根5a」から成るということのほか,設置位置や具体的態様等を特定する記載を欠くものであって,一義的に明確であるといえないことは明らかである。
そこで,本件明細書2(甲4)の記載を参酌すると,請求項1の従属項である請求項3に 「上記回転上羽根5(判決注: 回転巻上羽根5」の誤記と認める )の , 「 。
複数を乾燥槽4内の重力方向に沿って垂直に配設した中心回転軸21に多段となして配設し,上記中心回転軸21を回転させて多段となす回転巻上羽根5の複数の基羽根5aを回転させることにより,上記被乾燥物3を各段で巻き上げつつ,伝熱面2に押し付けて上昇させ,最下段の回転巻上羽根5から最上段の回転巻上羽根5まで連続して上昇させて乾燥させることを特徴とする請求項1又は2記載の回転巻上羽根を有する乾燥装置 」との記載があり,この記載によれば 「回転巻上羽根5」 。 ,,, , は それが複数ある場合には 乾燥槽4内の中心回転軸21に多段となして配設し最下段の回転巻上羽根5から最上段の回転巻上羽根5まで,各段に区分することができるような態様のものであること,すなわち,1ユニットの回転巻上羽根5は1段から成る態様のものであることが認められる。そして,請求項3は 「回転巻上,羽根5」自体の態様には何ら限定を加えていないから,その「回転巻上羽根5」の態様は,請求項1記載のものと同じはずであり,また,請求項1は,回転巻上羽根5について,それが1ユニットである場合と複数ある場合とを全く区別していないのであるから,上記のような回転巻上羽根5の態様は,1ユニットである場合にも当てはまるものというべきである。そうすると,本件発明Bの「回転巻上羽根5」も,1ユニットが1段から成る態様のものであるところ,本件発明Bの特許請求の範囲において,1ユニットの回転巻上羽根5が複数枚の「基羽根5a」から成るものとされていることは,上記のとおりである。したがって,基羽根5aは,複数枚で1段をなすものであり,このことは,乾燥槽底部の最下段においても,もとより異なるところではない。
したがって,本件発明Bの構成要件B1に記載された「複数枚」という用語は,「乾燥槽底部の最下部に複数枚」と解されるものである 」。
( )当審における控訴人らの主張に対する判断3ア控訴人らは,争点1の1aにつき,本件発明Aの構成要件A1,本件発明Bの構成要件B1及び本件発明Cの構成要件C2の各「複数枚」は,いずれも,最下段に複数枚の基羽根が配置されていることを意味するとした原判決の解釈が誤りであると主張し,その根拠として,まず,本件発明A〜Cの技術的範囲は,特許法70条1項に基づき,本件特許権1〜3に係る各特許請求の範囲の請求項1の字義どおりに解釈されるべきであり,みだりに他の要件を付加することは許されないと主張する。
しかしながら,同法70条2項(平成14年法律第24号による改正前のもの)は 「前項の場合においては,願書に添付した明細書の特許請求の範囲以外の部分 ,の記載及び図面を考慮して,特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するも。」, 「」 のとすると定めるところ 本件各発明の特許請求の範囲に記載された 複数枚の用語が,特許請求の範囲の記載から一義的に明確であるといえないことは,以下のとおりである。
, ,( ) すなわち 本件発明Aの特許請求の範囲は 上記 原判決3頁14行〜4頁6行のとおりである。同特許請求の範囲において 「基羽根5a」の乾燥槽4内におけ ,る上下方向の設置位置及び複数枚の「基羽根5a」の相互の位置関係を規定する記載はほとんどないが,各「基羽根5a」は,回転中,被乾燥物を,平坦面8の一端部18側から平坦部8に載せて,斜め上方に伸びる他端部19側へ移動させた上,各「基羽根5a」ごとに上方へ巻き上げる作用を有することが規定されている。そうすると,少なくとも,被乾燥物が各「基羽根5a」の平坦面8の一端部18側から平坦面8に載って他端部19側へ移動するという技術事項を実現する前提として,回転当初及び回転中,複数枚の「基羽根5a」が,それぞれの平坦面8の一端部18において,被乾燥物(回転当初は重力によって乾燥槽の底部に堆積しているものと推認される )を平坦面8上に載せるための技術的手段が必要であり 「基羽 。 ,根5a」の乾燥槽4内における上下方向の設置位置がこれに関連することは明らかであるが 「基羽根5a」が複数枚であることや,その相互の位置関係がこの技術 ,事項と関連することも十分考えられるところである。他方,上記のとおり,複数枚の「基羽根5a」は,各「基羽根5a」ごとに被乾燥物を上方へ巻き上げるものであるから 「基羽根5a」が複数枚であることは,被乾燥物の巻上量を向上させる ,技術手段とされていることも窺われるところ,この点に対しても,複数枚の「基羽根5a」の設置位置や,相互の位置関係が関連を有するものである。そうすると,同特許請求の範囲の記載によっては 「基羽根5a」が複数枚であることの技術的 ,意義が一義的に明確であるということはできない。
また,本件発明Bの特許請求の範囲は,上記(原判決4頁15行〜5頁8行)のとおりであるが,同特許請求の範囲に関しても,本件発明Aの特許請求の範囲についてとほぼ同様のことがいい得るものである。本件発明Bの特許請求の範囲には,「複数枚の基羽根5aの内の,一つの基羽根5aの他端部19の高さ位置は,上記回転方向Rと逆方向に向って隣に位置する他の基羽根5aの一端部18の高さ位置より高い位置に位置し 」との記載があるから,複数枚の「基羽根5a」の相互の ,位置関係は,一見明確なようにも見えるが,上記記載のみでは,例えば,一つの基羽根5aの平坦面8の一端部18から他端部19に至るまでの全体が,回転方向Rと逆方向に向って隣に位置する他の基羽根5aの全体より高い位置にある態様が排除されるのかどうかなどは明らかではなく 「基羽根5a」が複数枚であることの ,技術的意義が,一義的に明確であるといえないことは本件発明Aの特許請求の範囲の場合と同様である。
本件発明Cの特許請求の範囲は,上記(原判決5頁16行〜6頁6行)のとおりであるが,同特許請求の範囲に関しても,本件発明Aの特許請求の範囲についてとほぼ同様のことがいい得るものである。本件発明Cの特許請求の範囲には 「回転,方向Rと逆方向に向かって一端部10から他端部11に向かって斜め上方に伸びるように形成されている基羽根5aの回転により,上記被乾燥物3が,上記基羽根5aの一端部10から上端面12にのり 」との記載があるが,複数枚配設されてい ,る基羽根5aのそれぞれにおいて,その回転により被乾燥物が基羽根5aの一端部10から上端面12に載るという技術事項を実現するための技術手段は 「基羽根,5a」の乾燥槽内における設置位置及び複数枚配設されている「基羽根5a」の相互の位置関係が明確でない以上,明らかであるとはいえず,結局 「基羽根5a」,が複数枚配設されていることの技術的意義は,一義的に明確であるとはいえない。
したがって,本件各発明の特許請求の範囲に基づいて,本件各発明の技術的範囲を解釈するに当たり,本件各明細書の特許請求の範囲以外の部分の記載及び図面を参酌する必要があることは明らかである。
イ控訴人らは,本件各発明の特許請求の範囲においては 「複数枚の基羽根」,は360度の円周範囲内の長さに定められたものであり,1枚の基羽根の長さが360度の場合には,同一高さに複数枚を設けると,基羽根同士が干渉を起こしてしまうため,同一高さには1枚しか設けることができないから,最下部に複数枚の基羽根を設けることは,本件各発明の必須の要件ではないと主張する。
しかしながら,本件各発明の特許請求の範囲においては 「360度の円周範囲 ,内の長さ (本件発明A,B「360度の円周範囲の中 (本件発明C)と規定 」), 」されているものであり,360度より小さい角度に対応する長さがこれに含まれることは明らかである(乾燥槽の最下段に複数枚の基羽根を設けるとした場合,その,,,, 最小枚数は2枚であり その場合に 360度の範囲内で 1枚は360度に近く他の1枚は0度に近いものとすることも,理論上はあり得るところ,そのような態, , 様も含めて 最下段の複数枚の基羽根を特許請求の範囲に記載しようとするときにその長さを「360度以内」と規定することは常套手段ともいうべき記載方法である。たとえ,乾燥槽の最下段に1枚の長さが360度であるような基羽根を2枚 。)設ける場合を想定したとしても,当該2枚の基羽根の各一端部(本件発明Aを例とすれば 「一端部18」に相当する部分)の位置をずらすことにより,基羽根同士 ,の干渉が生じない部分が生ずることになるから(上記一端部を180度ずらして,回転軸を中心とする点対称位置とした場合には,2枚合わせて360度の範囲で干渉が生じないことになる,本件各発明が実施できないというものではない。した 。)がって,本件各発明の特許請求の範囲における「360度の円周範囲内の長さ ,」「360度の円周範囲の中」との記載が,最下段に複数枚の基羽根を設けることと齟齬するものではない。
なお,控訴人らが主張するように,従来の1枚の垂直螺旋回転羽根をばらばらに切り離し,複数枚の基羽根としたことが,本件各発明の本質的部分であるとした場合,当該各基羽根の長さは,元が垂直螺旋状である以上,360度を超えても差し支えないはずであるから,これを「360度の円周範囲内の長さ」に限定するとすれば,360度に臨界的意義又は効果があるはずであるが,その点について,本件各明細書には,首肯するに足りる記載はない。
ウ控訴人らは,本件各明細書に示された,従来の1枚の垂直螺旋回転羽根式乾燥装置が有していた課題は,巻上げの始まりの箇所が1箇所であること自体ではなく,乾燥槽内の底部に位置する被乾燥物の全量に比して上昇する被乾燥物の量が少なく,早期に被乾燥物を伝熱面に接触させることが難しいとともに,底部に被乾燥, (, 物が溜まった状態が続きやすく 乾燥効率を向上させ難かったという点 すなわち課題B)であり,このような課題の解決策として,底部の羽根を複数枚にすることが不可欠ではないと主張する。
しかしながら,控訴人らが,上記課題の解決策として底部の羽根を複数枚にすることが不可欠ではないとする根拠として挙げる事由のうち,羽根の長さが360度の場合には複数枚を設けても干渉により全体の乾燥効率が妨げられるという点は,上記のとおり失当である。また,控訴人らは,底部の羽根を複数枚にすることが,特開昭61-107082号公報(甲16)等により容易想到とされるおそれがあることを理由に挙げるが,本件各明細書及び図面には,底部の羽根を複数枚とした実施例が記載されており,控訴人らの主張によっても,本件各発明が底部の羽根を複数枚にする態様を含んでいることは明白であるから,上記理由が失当であることは明らかである。
さらに,本件各明細書は,従来技術として1枚の垂直螺旋回転羽根から成る乾燥装置を挙げ,当該従来技術について,本件明細書A,Bでは課題Bを含む5個の課, ,, 題 本件明細書Cでは課題Bを含む4個の課題を指摘しているところ 控訴人らはこれらの課題を総合すると,底部の羽根を複数枚にすることではなく,1枚の垂直螺旋回転羽根をばらばらに切り離した構成とすることが,課題の解決に資するものと主張する。
しかしながら,当該従来技術に係る課題とは,課題Bのほか,@被乾燥物が粘性の強いものであった場合,被乾燥物がいったん一枚の垂直螺旋回転羽根や伝熱面のある部分に付着すると,他に搬送路がないので,上記付着部分で渋滞が生じ,団子状に拡大して上下の羽根の間が詰まって,被乾燥物の上昇がせき止められること,A垂直螺旋回転羽根が1枚であるため,垂直螺旋回転羽根と伝熱面の間のクリアランスは上から下まで存在し,当該クリアランスに,いったん被乾燥物に混じった異物が噛み込むと,異物の逃げ場がなく,垂直螺旋回転羽根が良好に回転しなくなるおそれがあったこと(本件明細書Cには,Aの課題の記載はない,C被乾燥物を。)遠心力によって伝熱面に押し付けたときに,垂直螺旋回転羽根の上下の羽根の間のピッチに,使用されない伝熱面部分が生じやすく,伝熱面全面を有効に活用していなかったこと,D垂直螺旋回転羽根には種々の被乾燥物に対する最良の回転速度があり,効率よく乾燥させようとした場合,上記回転速度の調節は欠かせないものであるが,この調節が面倒なものであったこと,というものであるところ,1枚の垂直螺旋回転羽根をばらばらに切り離したとの特定の構成が,上記各課題の解決にどのように作用するかについて,本件各明細書には何らの記載もないのみならず,本件各明細書の特許請求の範囲の「複数枚」という記載を 「乾燥槽底部の最下部に ,複数枚」という意味に解した上,上記各特許請求の範囲によって特定される各発明と比較して,1枚の垂直螺旋回転羽根をばらばらに切り離した構成とすることが,上記各課題の解決により資することを認めるに足りる証拠もなく,控訴人らの上記主張を採用することはできない。
なお,控訴人らは,この点に関連して,1枚の垂直螺旋回転羽根をばらばらに切り離した構成は,課題B及び作用効果Bに関しては,上記従来技術と同等であっても,その他の課題及び作用効果に関しては著しい向上が見られるはずであり,そうであれば,特許発明と同等の保護が与えられてよいはずであると主張するが,当該主張に係る1枚の垂直螺旋回転羽根をばらばらに切り離した構成が,本件各発明の技術的範囲(均等論に基づく場合を含む )に属さないとすれば,他の特許発明に 。
属するとの主張がない本件において 「特許発明と同等の保護」が付与される法律 ,上の根拠はなく,上記主張は,それ自体失当である。
エ控訴人らは,本件各発明は,複数枚の基羽根方式の乾燥装置としてのパイオニア発明であり,それにふさわしい保護を受ける資格があるものであるとも主張するが 本件においては 被控訴人装置が本件各発明の技術的範囲に属するか否か 均 ,, (等論による場合を含む )が問題なのであって,その点を離れ,本件各発明がパイ 。
オニア発明であるとか,それにふさわしい保護を受ける資格があるなどとする主張が無意味であることは明らかであり,上記主張もそれ自体失当である。
2争点4(被控訴人装置及び被控訴人方法は,本件各発明と均等か)について( )当裁判所も,最下部に複数枚の基羽根を配設する部分は,本件各発明の本質1的部分に当たるというべきであるから,これを充足しない被控訴人装置及び被控訴人方法が,本件各発明と均等であるということはできないと解する。その理由は,当審における控訴人らの主張に対し,後記( )のとおり判断するほかは,原判決事2実及び理由欄の「第3争点に対する当裁判所の判断」の2の( )〜( )(60頁5 13行〜61頁25行)のとおりであるから,これを引用する。
( )控訴人らは,被控訴人装置と,本件各発明の実施例の一つ(3枚羽根・4段2方式であり,したがって,最下段の基羽根も複数であるもの)において,被乾燥物が伝熱面の全体にわたって薄膜状に広げられて伝熱面に接触している状態は,最下,, , 部を含めて相違がなく 被控訴人装置においては 最下部における基羽根の長さが他の基羽根の長さの約2倍とされ,巻上げ能力が高められているとした上,このような点にかんがみると,最下部の羽根を複数枚にする構成が,本件各発明の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分(本質的部分)に当たるとすることは根拠がなく,従来の1枚の垂直螺旋回転羽根をばらばらに切り離し,360度以内の長さの複数枚の基羽根としたことが,本件各発明の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分に当たると主張し,被控訴人装置及び被控訴人方法が,本件各発明と均等であるということはできないとした原判決の判断が誤りであると主張する。
しかしながら,均等の要件に係る特許発明の本質的部分とは,明細書の特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうち,当該発明特有の課題解決のための技術手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分をいうものであるところ,本件各明細書の記載によって,本件各発明は,課題Bを解決するための技術手段として,最下部の羽根を複数枚にする構成を採用し,この構成を採用したことが,本件各発明特有の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分とされているものと認められることは,上記(原判決60頁13〜22行)のとおりである。このように,特許発明の本質的部分とは,当該特許発明に係る明細書の記載から把握されるものであって,客観的に見た場合に,上記課題解決のための, , 技術手段として 最下段の基羽根を複数枚とする構成が唯一のものであるかどうかあるいは最下段の基羽根を複数枚とする構成が,他の技術手段と比べ,優れているかどうかは別論である。
したがって,被控訴人装置と本件各発明の実施例の一つをそれぞれ現実に稼働させた上,両者における被乾燥物の実際の挙動や,乾燥効率等を比較して,それに差がないから,被控訴人装置における構成ないしこれと近似した構成が,本件各発明の本質的部分に当たるとするような主張は,仮に,両者における被乾燥物の実際の挙動や,乾燥効率等に係る部分の主張がそのとおりであるとしても,誤りであることは明らかである。上記主張を採用することはできない。
3以上によれば,控訴人らの請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないから,これを棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がない。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 石原直樹
裁判官 高野輝久
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