運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 無効2004-80145 訂正2005-39126
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成18行ケ10298審決取消請求事件 判例 特許
平成19行ケ10011審決取消請求事件 判例 特許
平成18行ケ10089審決取消請求事件 判例 特許
平成18行ケ10170審決取消請求事件 判例 特許
平成19行ケ10211審決取消当事者参加事件 判例 特許
関連ワード 技術的思想 /  新規性 /  進歩性(29条2項) /  同一技術分野(同一の技術分野) /  容易に発明 /  発明特定事項 /  一致点の認定 /  相違点の判断 /  周知技術 /  技術常識 /  援用権(援用) /  特許出願日 /  参酌 /  置き換え /  実施 /  設定登録 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  訂正明細書 /  取消決定 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 18年 (行ケ) 10245号 審決取消請求事件
原告株式会社イシダ
訴訟代理人弁護士伊原友己,加古尊温
同弁理士吉村雅人
被告株式会社寺岡精工
訴訟代理人弁理士志賀正武,高橋詔男,青山正和,増井裕士
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2007/03/08
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1原告の求めた裁判「特許庁が無効2004-80145号事件について平成18年4月17日にした審決を取り消す 」との判決。。
第2事案の概要本件は,後記本件発明の特許権者である原告が,被告の無効審判請求を受けた特許庁により,本件特許を無効とする旨の審決がなされたため,同審決の取消しを求めた事案である。
1特許庁における手続の経緯( )本件特許(甲第3号証)1特許権者:株式会社イシダ(原告)発明の名称: ラベルプリンタ」「特許出願日:平成8年2月15日(特願平8-54009号)設定登録日:平成13年4月27日特許番号:特許第3183621号( )本件手続2審判請求日:平成16年9月6日(無効2004-80145号)審決日:平成17年3月11日(無効審決。以下「第1次審決」という )。
第1次審決取消訴訟提起日:平成17年4月21日(当庁平成17年(行ケ)第10431号)訂正審判請求日:平成17年7月14日(訂正2005-39126号)( ) 第1次審決取消決定日:平成17年9月2日 特許法181条2項に基づく決定審決日:平成18年4月17日(以下,単に「審決」という )。
審決の結論: 訂正を認める。特許第3183621号の請求項1に係る発明に 「ついての特許を無効とする 」。
審決謄本送達日:平成18年4月27日(原告に対し)2本件発明の要旨審決が対象とした発明(平成17年7月14日付け訂正審判請求に係る請求書に添付され,特許法134条の3第5項,3項により,訂正請求に係るものとして援用したとみなされた特許請求の範囲の請求項1に記載された発明であり,以下「本件発明」という。なお,請求項の数は,訂正の前後を通じ,1個である )の要旨。
は,以下のとおりである。
「所定の通常データが印字された通常ラベルを発行する通常ラベル印字部と,上記通常データとは異なる値引価格と上記通常データとが印字された臨時ラベルを発行する臨時ラベル印字部とが備えられたラベルプリンタであって,ラベルを貼付する商品を指定する商品指定手段と,ラベルに印字するデータとして通常データと上記値引価格とを商品毎に記憶する印字データ記憶手段と,上記指定手段で指定された商品に関する上記記憶手段で記憶された印字データ中に,上記値引価格が含まれていないときは通常データのみが印字された通常ラベルを通常ラベル印字部に発行させ,上記値引価格が含まれているときには,上記通常ラベル印字部を作動させることなく,上記値引価格と通常データとが合わせて印字された臨時ラベルを臨時ラベル印字部に発行させる印字制御部とが備えられていることを特徴とするラベルプリンタ 」。
3審決の理由の要点審決の理由は,要するに,上記訂正請求に係るものとみなされた訂正(以下「本件訂正」という )を認め,本件訂正後の請求項1記載の発明(本件発明)が,特 。
開昭63-294340号公報(審判及び本訴甲第1号証。以下,単に「甲第1号」。) ( 。 証 という並びに特開昭62-119573号公報 審判及び本訴甲第2号証以下,単に「甲第2号証」という )にそれぞれ記載された発明(以下,甲第1号 。
証に記載された発明を「甲1発明」という )に基づいて,当業者が容易に発明を 。
することができたものであり,本件発明に係る特許は,特許法29条2項に違反してなされたものであるから,同法123条1項2号の規定に該当し,無効とすべきものであるというものである。
審決の理由中,本件発明が,甲第1号証及び甲第2号証にそれぞれ記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとの判断に係る部分は,以下のとおりである。
( )甲第1,第2号証の記載事項の認定1「甲第1号証及び甲第2号証には,本件発明に関連する事項として,それぞれ以下の事項が記載されている。
( )甲第1号証1『異種のラベルを発行可能な複数の印字装置を備え,商品の商品番号に応じて,適宜の印 a.字装置を選択してラベルを発行するラベルプリンタにおいて,商品番号毎に,発行するラベルの種類と印字データを設定する設定手段と,この設定手段によって設定されたラベルの種類と印字データを記憶する記憶手段と,この記憶手段に記憶されたラベルの種類と印字データに基づいて,商品番号に応じた印字装置を一つまたは複数自動的に選択してラベルを発行する制御部とを具備してなることを特徴とするラベルプリンタ(特許請求の範囲 。 。』)『この発明のラベルプリンタは,商品番号に対応して,複数の印字機構部についての使用b.方法等を予め記憶しておくことにより,その記憶部の記憶データに基づいて,複数の印字機構部を自動的に制御して,複数種のラベルを適宜のタイミングで発行する(2頁右上欄8行〜 。』13行)『第1図は外観構成を示す斜視図,第2図は電気的構成を示すブロック図である。これらc.の図において,1は,ラベルプリンタの本体である。この本体の内部には,第2図に示す制御, 。,,, 部が設けられており この制御部には秤2が接続されている 一方 本体1の前面には 第1第2の2つのラベル印字機構部3,4と,操作部5とが設けられている。第2の印字機構部4は,本体1から取り外し可能となっている(2頁右上欄19行〜左下欄7行 。 。』 )『,, (),d. 上記印字機構部3 4には サイズの違う計量ラベル 値付けラベル をセットしたり第1の印字機構部3に計量ラベルをセットし,第2の印字機構部4にPOPラベル(商品広告) , 。』 ラベル をセットしたりすることにより 種類の異なるラベルを適宜印字することができる(2頁左下欄14〜19行)『第5図は,RAM30の内部構成を示すものであり,各種の処理に使用されるワーキンe.グエリア31とPLU(プライスルックアップ)ファイル32と予約ファイル33・・・が設けられている。ワーキングエリア31には各種のレジスタと共に第10図に示すような第2の印字機構部4の使用モードフラグPF1〜PF4がある ・・・PLUファイル32は,第6 。
図に示すように,商品番号(PLUNo )毎に,商品の単価,風袋重量,有効日,品名等を .。,,,, 記憶するものである また 予約ファイル33は 第7図に示すように 商品番号に対応して後述する各種のフラグ,パック数(品出数量 ,特売品の特売期間,POPNo.等を記憶す )るものである ・・・予約ファイル33に記憶されるフラグとしては ・・・プロモーションラ 。 ,ベルの発行の予約があるときに立つYF4・・・がある(3頁左下欄1行〜右下欄9行) 。』『プロモーションラベルとは,第16図に示すような一般的計量ラベル(値付けラベル)f.の形状と印字フォーマットを持つが,印字データの色,ラベルの用紙の色,またはプリ印刷の内容が異なるものをいう。例えば,広告の品等で特に客の注意を引き付けたい場合に,他の計量ラベルとは異なる色(例えば,赤色,黄色等)のラベル用紙に印字したもの,あるいは予め『広告品』とプリ印刷されているラベル用紙に印字したものである。後者の場合には 『広告,品』等の広告文は,ラベルプリンタにて印字することも可能である (3頁右下欄16行〜4 』頁左上欄6行 。)『ラベルの発行データの入力には,ワーキングエリア31における第2の印字機構部4のg.使用モードフラグPF1〜PF4(第10図)の設定と,RAM30における予約ファイル33の設定とがある(4頁右上欄17行〜左下欄1行) 。』『 1)使用モードフラグPF1〜PF4の設定第1の印字機構部3が計量ラベルの発行h. (専用であるのに対し,第2の印字機構部4には次のような4つの使用目的がある 〈1〉使用。
しない 〈2〉プロモーションラベルを発行する 〈3〉POPラベルを発行する 〈4〉バー 。 。 。
コードラベルを発行する ・・・第2の印字機構部4の仕様選定モードを選択した後は,第2 。
の印字機構部4の使用目的の選定モード,または第2の印字機構部4のラベルサイズの選定モードが選択が可能となる ・・・第2の印字機構部4の使用目的を選択した場合には,それに 。
適合するラベル用紙を第2の印字機構部4にセットする必要がある(4頁左下欄3行〜5頁 。』左上欄14行)『 2)予約ファイル33の設定まず,操作・表示部12の表示画面をメニュー画面(第i. (11図(a )として 『4.予約の設定』の表示部分をタッチするこれにより,画面が第11 ),図(b)の予約モード画面となり,同時に示すような3種の予約の選択文字が表れる。第1は『品出し数量の予約』の選択文字,第2は『特売品番の予約』の選択文字である。第3は,第2の印字機構部4の使用目的〜に対応する選択文字,つまり上記(1)にて設定した使用モードフラグPF1〜PF4の内容に対応する選択文字である ・・・使用目的のプロモーション 。
ラベルの発行が選択されたときは 『プロモーションラベルの予約』と表示され (5頁左上欄 , 』15行〜右上欄12行)『予約モード画面において,第3の表示部分をタッチすることによって,POPラベルのj.予約,プロモーションラベルの予約,またはバーコードラベルの予約をする ・・・プロモー。
ションラベルを発行する商品に対応する商品番号を入力する(5頁右下欄14行〜6頁左上 。』欄11行 。)『実際のラベルの発行動作を,品番入力時と,ラベル印字時とに分けて説明する (1)品k. 。
番入力時品番が入力されることにより,第13図のフローに入り,まずは該当するPLUデータをPLUファイル32から読み出し,それを各レジスタにセットする・・・次に,予約フ(), , ァイル33をサーチし ステップSA2予約ファイル33に該当PLUがあった場合には予約データを読み出して各レジスタにセットする(ステップSA3,SA4・・・ 2)ラ)。(ベル印字時プリントキーを操作することにより,第14図のフローに入ってラベルを印字する ・・・このフローにおいては ・・・使用モードフラグPF3(PF2の誤記と認める ) 。 , 。
から,プロモーションラベルの印字モードであるか否かを判断する(ステップSB7 。使用)モードフラグPF3(PF2の誤記と認める )が立っているときは,プロモーションラベル 。
の印字モードであると判断してステップSB8に進み,予約ファイル33におけるフラグYF4から,プロモーションラベルの予約があるか否かを判断する ・・・ステップSB8にて, 。
予約ありと判断したとき,つまりフラグYF4が立っているときは,第2の印字機構部4にてプロモーションラベルを印字する(ステップSB9(6頁右上欄5行〜7頁左上欄末行) )。』第11図(f)から,プロモーションラベルの予約モード表示画面が複数の商品についてl.入力可能となっていることが看取できる。
第14図から,プロモーションラベル印字を印字するときプロモーションラベルの予約のm.有無すなわちフラグYF4が立っているか否かを判定し,立っていないときには,第1の印字機構部3で計量ラベルを印字し,立っているときには,第1の印字機構部3を作動させることなく,プロモーションラベルを第2の印字機構部4で印字させることが看取できる。
第16〜18図から,ラベルの大きさ及び印字内容(すなわち印字データ)が互いに異な n.る計量ラベル,POPラベル及びバーコードラベルの3つのラベルが看取できる。
( )甲第2号証2『品名が印字される品名欄と単価・重量・値段等が印字されるデータ欄とが配設されたラ a.ベルにおいて,前記品名欄又は前記データ欄の空白部に値引情報を印字したことを特徴とするラベル(特許請求の範囲,請求項1 。 。』 )『従来,ラベルプリンタにおいては,商品の単価や値段をPLU(プライス・ルック・アb.ップ)メモリに記憶させておき,通常の値段で商品を売る場合に既に設定されている単価を呼び出した後,重量を計り,重量×単価=値段としてラベル上に印字している。そして,値下げした場合にその値引情報を買い手に伝えるためには値引情報用のラベルを別に作成して商品に貼るか,商品棚に値引情報が記載された表示用紙等を貼っている。また,別の手段としては通常の大きさよりも大きいラベルを作成し,このラベルに通常時の重量・単価・値段を印字するとともに値下げ後の重量・単価・値段を別の欄に印字している(1頁右下欄4〜18行 。 。』 )『通常のラベルの品名欄又はデータ欄の空白部に値引情報を印字したので,商品の値段をc.値引したとき,通常のラベルを使用するだけで値引情報を得ることができ,従来のように二枚のラベルを貼ったり,大きなラベルを用いなくても値引の状態を買い手にアピールすることができるものである(3頁右上欄6〜12行」 。』 )。
( )甲1発明の認定2「記載における『広告品』等の広告文がラベルプリンタにて印字される計量ラベルの印字フf.ォーマット持つプロモーションラベルの印字データは,計量ラベルの印字データ(以下 『計,量ラベルデータ』という )と『広告品』等の広告文の印字データ(以下 『広告文データ』と 。 ,いう )とを合わせたデータであることが明らかである。 。
, , , また 第1の印字機構部3が計量ラベルの発行専用であるのに対し 第2の印字機構部4はプロモーションラベルを発行する,POPラベルを発行する及びバーコードラベルを発行するという同時に達成できない3つ使用目的のために使用されるものであって,これらのなかから1つ使用目的を選択した場合には,例えば,プロモーションラベルを発行する場合には,プロモーションラベルに適合するラベル用紙が,POPラベルを発行する場合には,POPラベルに適合するラベル用紙が,バーコードラベルを発行する場合には,バーコードラベルに適合するラベル用紙が,それぞれ第2の印字機構部4にセットされるものである(記載, , 及a.b.d.び参照 。h. )そうすると,甲第1号証から,第1の印字機構部3を計量ラベルの発行専用として計量ラベルに適合するラベル用紙がセットされるようにすると共に,第2の印字機構部4を,印字データが計量ラベルデータと広告文データとを合わせたものであるプロモーションラベル(以下,『広告文付加プロモーションラベル』という )の発行専用として当該広告文付加プロモーシ 。
ョンラベルに適合するラベル用紙をセットされるラベルプリンタの発明を捉えることができる。
以上のように捉えたラベルプリンタの発明においても,上記広告文付加プロモーションラベルの発行の予約があるとき,予約ファイル33に記憶されるフラグYF4を立てることは自明であって(記載参照 ,そうすると,フラグYF4が立っていないときには,計量ラベルデi. )ータのみが印字された計量ラベルを第1の印字制御部に発行させ,フラグYF4が立っているときには,上記第1の印字制御部3を作動させることなく,上記広告文付加プロモーションラベルを第2の印字制御部4に発行させる制御部を備えることも自明である(記載及び。
k.m. )以上のことを勘案すると,上記甲第1号証の記載〜から,以下の発明を捉えることがでa.n.きる。
『所定の計量ラベルデータが印字された計量ラベルを発行する第1の印字機構部3と,広告文付加プロモーションラベルを発行する,通常のラベルとはラベルの大きさ等が異なるラベルを発行可能な第2の印字機構部4とが備えられたラベルプリンタ1であって,ラベルを貼付する商品の商品番号を入力する操作部5と,商品番号(PLUNo )毎に,商品の単価,風袋重 .量,有効日,品名等を記憶するPLUファイル32及び商品番号毎に上記広告文付加プロモーションラベルの発行の予約があるとき立つフラグYF4を記憶する予約ファイル33のそれぞれから,操作部から入力される商品番号毎に,読み出されたPLUデータと予約データがセットされる各レジスタと,上記商品番号を入力する操作部5で入力された商品番号の商品に関する予約ファイル33におけるフラグYF4が,立っていないときには,計量ラベルデータのみが印字された計量ラベルを第1の印字機構部3に発行させ,フラグYF4が立っているときには,上記第1の印字機構部3を作動させることなく,上記広告文付加プロモーションラベルを第2の印字機構部4に発行させる制御部が備えられているラベルプリンタ1(甲1発明 」。』)( )対比・判断3「本件発明と甲1発明とを対比する。
ア.甲1発明の『計量ラベルデータ『計量ラベル『第1の印字機構部3『商品の品番 』,』, 』,を入力する操作部5印字制御部22ラベルプリンタ1 は それぞれ 本件発明の 通 』,『』,『』 ,,『常データ『通常ラベル『通常ラベル印字部『商品指定手段『印字制御部『ラベルプ 』,』,』,』,』,リンタ』に相当する。
イ.甲1発明の『第2の印字機構部4』は,計量ラベル(通常ラベル)とは異なる種類のラベル(記載a,より具体的には,サイズ,印字内容あるいは色が異なるラベル(記載d , .) .f.参照)を発行可能な印字部であり,本件発明の『臨時ラベル印字部』とは,通常ラベルとは異なる種類のラベルを発行する印字部(以下 『異種ラベル印字部』という )である点で共 , 。
通している。
ウ.甲1発明において,広告文付加プロモーションラベルの発行予約があるとき立つフラグYF4が立っているか否かを判定することは,発行されるべきラベルが上記広告文付加プロモーションラベルであるか否かを判定することであるから,ラベルの印字データ中に広告文データが含まれているかどうかを判定することを意味していることも明らかである。
.『』『』,() エ 甲1発明の 広告文データ と本件発明の 値引価格 とは 通常データ 計量データとは異なるデータである点で共通している。
オ.上記エ.から,甲1発明の『広告文付加プロモーションラベル』と本件発明の『通常データとは異なる値引価格と上記通常データとが印字された臨時ラベル』とは,通常データとは異なるデータと通常データとが印字されたラベル( 通常データとは異なるデータと通常デー 『タとが合わせて印字されたラベル』の意味も含めて,以下 『異データ付加ラベル』という ) , 。
である点で共通している。
カ.上記エ.から,甲1発明の『商品番号(PLUNo )毎に,商品の単価,風袋重量, .有効日,品名等を記憶するPLUファイル32及び商品番号毎に上記プロモーションラベルの発行の予約があるとき立つフラグYF4を記憶する予約ファイル33のそれぞれから,操作部から入力される商品番号毎に,読み出されたPLUデータと予約データがセットされる各レジスタ』と本件発明の『ラベルに印字するデータとして通常データと値引価格とを商品毎に記憶する印字データ記憶手段』とは,ラベルに印字するデータとして通常データと通常データとは異なるデータとを商品毎に記憶する印字データ記憶手段である点で共通している。
以上のことから,両者の一致点と相違点は以下のとおりである。
[一致点]所定の通常データが印字された通常ラベルを発行する通常ラベル印字部と,異データ付加ラベルを発行する異種ラベル印字部とが備えられたラベルプリンタであって,ラベルを貼付する商品を指定する商品指定手段と,ラベルに印字するデータとして通常データと上記通常データとは異なるデータとを商品毎に記憶する印字データ記憶手段と,上記指定手段で指定された商品に関する上記記憶手段で記憶された印字データ中に,上記通常データとは異なるデータが含まれていないときは通常データのみが印字された通常ラベルを通常ラベル印字部に発行させ,上記通常データとは異なるデータが含まれているときには,上記通常ラベル印字部を作動させることなく,上記異データ付加ラベルを異種ラベル印字部に発行させる印字制御部とが備えられているラベルプリンタ。
[相違点]A.異データ付加ラベルが,本件発明では値引価格(データ)が付加されたラベルであるのに対して,甲1発明では,広告文データ付加プロモーションラベルである点,B.印字制御部が,本件発明では,指定手段で指定された商品に関する記憶手段で記憶された印字データ中に,上記値引価格が含まれていないときは通常データのみが印字された通常ラベルを通常ラベル印字部に発行させ,値引価格が含まれているときには,上記通常ラベル印字部を作動させることなく,上記値引価格と通常データとが合わせて印字された臨時ラベルを臨時ラベル印字部に発行させる印字制御部であるのに対して,甲1発明では,そのような印字制御部ではない点。
[相違点の判断]相違点A及びBについて,上記甲第2号証には,商品に貼付する異データ付加ラベル,すなわち,通常データとは異なるデータと通常データとが合わせて印字されたラベルとして,通常時の重量・単価・値段(通常データ)を印字するとともに値下げ後の重量・単価・値段(値引価格)を印字するラベルが記載されていると共に,当該ラベルを,通常のラベルより大きくすることすなわち通常のラベルとは異なる種類のラベルとすることが記載されている(上記5 (2)b.参照 。 .)すなわち,上記甲第2号証には,異データ付加ラベルとして,ラベルの大きさが通常ラベルとは異なると共に,値引価格と通常データとが合わせて印字されるラベル(以下 『値引価格,付加ラベル』という )が記載されている。 。
そして,甲1発明において,通常のラベルとはラベルの大きさ等が異なるラベルを発行可能な第2の印字機構部4で,上記広告文データ付加プロモーションラベルに替えて,相違点Aのように,上記甲第2号証に記載された,ラベルの大きさが通常ラベルとは異なる値引価格付加ラベルを発行するようになすことは,格別阻害要因がなく,当業者が想到容易である。
それに伴い,相違点Bのように,指定手段で指定された商品に関する記憶手段で記憶された印字データ中に,上記値引価格が含まれていないときは通常データのみが印字された通常ラベルを通常ラベル印字部に発行させ,値引価格が含まれているときには,上記通常ラベル印字部を作動させることなく,上記値引価格付加ラベルを異種ラベル印字部に発行させる印字制御部を備えることも当然のことであり,その際,値引価格付加ラベル及び異種ラベル印字部を,それぞれ,臨時ラベル及び臨時ラベル印字部と称することも単なる称呼上の問題にすぎない 」。
「以上のとおり,相違点A及びBに係る本件発明の構成を採用することは,当業者にとって想到容易であり,これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって,本件発明は,甲1発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない 」。
第3原告の主張(審決取消事由)の要点審決は,甲1発明の認定を誤って,本件発明と甲1発明との一致点の認定を誤り(取消事由1 ,また,審決の認定に係る本件発明と甲1発明の相違点Aについて )の判断( 相違点A及びBについての判断」のうち,相違点Aに係る部分)を誤っ 「た(取消事由2)ものであるから,取り消されるべきである。
1取消事由1(一致点の認定の誤り)審決の甲1発明の認定及び本件発明と甲1発明との一致点の認定には,以下のとおり,誤りがある。
( )審決は 「甲1発明の『広告文データ』と本件発明の『値引価格』とは,通1 ,常データ(計量データ)とは異なるデータである点で共通している(11頁18。」〜19行)と認定した上,両者を「通常データとは異なるデータ「異データ」と」,して一括し,一致点の認定に及んだ。
,,「」, しかしながら 甲第1号証には 本件発明の 値引価格 に対応するものとして「特売価格」の記載があり(特売時のラベルを発行する場合には,第2の印字機構。),「」,「」 部は使用されないこの 特売価格 の記載を無視して 本件発明の 値引価格とは全く異質であり,しかも甲第1号証に記載のない「広告文データ」を,本件発明の「値引価格」と対比させることは,誤りである。
さらに,甲第1号証においては 「広告品」等の広告文は,予めラベル用紙にプ ,リ印刷されていることが通常とされ,例外的に「ラベルプリンタにて印字することも可能である」とされているにすぎず,その場合の具体的な構成(記憶させておくべきデータ,データベースの構造等)について,甲第1号証には記載も示唆もされていない。このような事情の下で 「広告文データ」と「値引価格」とを「通常デ ,ータとは異なるデータである点で共通している」と認定することは不当である。
( )審決は甲1発明の 広告文付加プロモーションラベル と本件発明の 通2 ,「『 』『常データとは異なる値引価格と上記通常データとが印字された臨時ラベル』とは,通常データとは異なるデータと通常データとが印字されたラベル・・・である点で共通している(11頁20〜25行)と認定した上,両者を「異データ付加ラベ 。」ル」として一括し,一致点の認定に及んだ。
しかしながら,本件発明の「臨時ラベル」の印字データには,必ず「値引価格」データが含まれているのであり,当該「値引価格」が印字された「臨時ラベル」を発行することが「臨時ラベル印字部」としての必須要件であるのに対し,甲1発明の「プロモーションラベル」の印字データには 「値引価格」は含まれないから, ,両者は共通するものではない。審決は,他方で「値引価格が付加されたラベル」であるか否かを,本件発明と甲1発明の相違点Aとして認定している(12頁10行〜12行)のであるから,それにもかかわらず,甲1発明の「広告文付加プロモーションラベル」と,本件発明の「臨時ラベル」を,あえて「異データ付加ラベル」として共通するものとすることは,両発明の対比・判断を誤らせるものであって,相当ではない。
さらに,本件発明は,本件訂正に係る訂正明細書(甲第4号証。以下「本件訂正明細書」という )に記載されているとおり 「通常ラベルと臨時ラベルとが別々に 。 ,印字されて発行されることから,商品にラベルを貼るときにラベルを二回貼付しなければならず面倒である (段落【)こと,及び「臨時ラベルが値引価格を表 」】0005示するものである場合には,その臨時ラベルを通常価格が表示された通常ラベルにできるだけ近づけて貼り付ける方がよく,そうしたときに貼付ミスによりラベル同士が重なってしまって印字された文字が読み取れなくなる (段落【)ことを 」】0006技術課題とし 「値引価格が含まれているときには・・・値引価格と通常データと ,が合わせて印字された臨時ラベルを臨時ラベル印字部に発行させる (請求項1)」構成によって解決したものである。これに対し,甲1発明の「広告文付加プロモーションラベル」には 「値引価格」は含まれないから,上記のような技術課題の認 ,識はあり得ず,そのことから,値引価格と通常データを合わせて印字させるという発想は生じない。したがって,甲1発明と本件発明が「異データ付加ラベル」として共通するとする審決の認定は不当である。
( )審決は 「甲1発明の『商品番号(PLUNo )毎に,商品の単価,風袋3 , .重量,有効日,品名等を記憶するPLUファイル32及び商品番号毎に上記プロモーションラベルの発行の予約があるとき立つフラグYF4を記憶する予約ファイル33のそれぞれから,操作部から入力される商品番号毎に,読み出されたPLUデータと予約データがセットされる各レジスタ』と本件発明の『ラベルに印字するデ』, ータとして通常データと値引価格とを商品毎に記憶する印字データ記憶手段 とはラベルに印字するデータとして通常データと通常データとは異なるデータとを商品。」() 毎に記憶する印字データ記憶手段である点で共通している11頁26〜34行,「」「」 , と認定した上 本件発明の 印字データ記憶手段 と甲1発明の 各レジスタ を「印字データ記憶手段」として一括し,一致点の認定に及んだ。
しかしながら,本件発明の「通常データと値引価格とを商品毎に記憶する印字データ記憶手段」は,複数の商品について,各商品毎に通常データ(単価等)と値引価格(M特価)とが記憶されている商品マスターを意味するものであり,このような構成により,指定された商品について 「値引価格」が設定されていれば印字部 ,を切り替え,かつ,ラベルに,通常データと「値引価格」を合わせて印字し,もって臨時ラベルを商品に一枚貼付するだけで通常データと値引価格との両方を商品に表示することができ,貼付ミスを防止し得るという作用効果を奏するものである。
これに対し 甲第1号証の記載を参酌すると 甲1発明の 各レジスタ は商 , ,「」 ,「品番号が入力される都度,当該商品番号に対応するPLUデータと予約データがセットされる各レジスタ」の意味にしか理解できず,操作部から指定された「商品番号」に対応する1つの商品のPLUデータ及び予約データが読み出されたときに,当該1つの商品の各データが一時的にセットされるものにすぎない このような レ。「ジスタ」が,本件発明の「複数の商品について,各商品毎に記憶する印字データ記憶手段 (商品マスター)に該当するとは到底いえず,本件発明の上記作用効果を 」奏することもできない。
したがって,審決が,本件発明の「印字データ記憶手段」と甲1発明の「各レジスタ」が共通すると認定したことは,誤りである。
( )審決は 「甲1発明において,広告文付加プロモーションラベルの発行予約4 ,があるとき立つフラグYF4が立っているか否かを判定することは,発行されるべきラベルが上記広告文付加プロモーションラベルであるか否かを判定することであるから,ラベルの印字データ中に広告文データが含まれているかどうかを判定することを意味していることも明らかである(11頁13〜17行)と認定した上, 。」甲1発明が 「印字データ中に,上記通常データとは異なるデータが含まれいてい ,ないとき (12頁3〜4行「上記通常データが含まれているとき (同頁5〜 」), 」6行)をそれぞれ判定し得るものとして,本件発明との一致点の認定に及んだ。
しかしながら,甲1発明の「フラグYF4」は印字部を切り替えるためだけに設定される「切替専用のフラグ」であって,印字データそのものではなく,したがって,甲1発明は,記憶手段で記憶された印字データ中に通常データとは異なるデータが含まれているか否かによって,印字部を切り替えるとはいえないから,審決の上記認定は誤りである。
のみならず,甲1発明において,フラグYF4が立っているか否かを判定することと,ラベルの印字データに広告文データが含まれているかどうかを判定することとは,同義ではない。すなわち,甲第1号証には,フラグYF4が立っているときには,印字部を「第2の印字機構部4」に切り替えてプロモーションラベルを印字することは記載されているが(7頁左上欄17〜20行 ,上記のとおり,甲第1 )号証に 「広告文データ」に関する記載はなく 「広告文データ」の設定とフラグY , ,F4の設定との関係についても記載されていないのであるから,フラグYF4が立っているからといって,当然 「広告文データ」の設定がなされているということ ,はできない。甲1発明において 「通常データと広告文データとが印字されたラベ ,ル」を発行させるためには,操作者は,フラグYF4を立てる操作をするだけでなく,これとは別個に,印字データとして「広告文データ」を設定する操作をしておくことが必要であり,そうとすれば,操作者による人為的ミスにより,両者が整合しない可能性が存在することになり,したがって,上記の点で,本件発明と甲1発明とが一致するとした審決の認定は誤りである。
,, , 被告は 甲1発明において プロモーションラベルの発行の予約があるときにはそれに連動して,当然にフラグYF4が立つかのような主張をするが,甲第1号証の記載を離れた被告自身の見解を述べるものにすぎない。かえって,甲第1号証の第11図(e)及び第12図には 「POPNO」が「0」である商品について ,「フラグYF3」が「1」であるもの(商品番号「0005」〜「0008 )が」記載されているから 「POPNO」を設定すれば,それに連動して「フラグY ,F3」が立つわけでないことは明らかであり,このことに照らしても,被告の主張は失当である。
2取消事由2(相違点Aについての判断の誤り)審決は,その認定に係る相違点Aにつき 「甲1発明において,通常のラベルと ,はラベルの大きさ等が異なるラベルを発行可能な第2の印字機構部4で,上記広告文データ付加プロモーションラベルに替えて,相違点Aのように,上記甲第2号証に記載された,ラベルの大きさが通常ラベルとは異なる値引価格付加ラベルを発行するようになすことは,格別阻害要因がなく,当業者が想到容易である 」と判断。
したが,以下のとおり,誤りである。
( )上記1の( )のとおり,甲第1号証には,本件発明の「値引価格」に対応す11るものとして 「特売価格」の記載があり,また,本件発明の「値引価格付加ラベ ,ル」に対応するものである「特売時のラベル」の発行についても記載されている。
審決は,甲第1号証の上記対応関係を無視し,全く異質の「プロモーションラベル」に替えて「値引価格付加ラベル」を発行させることについて論じているが,このような誤った置き替えを前提として,阻害要因の有無を判断することは無意味である。
甲1発明は 「特売時のラベル」を発行する際に,印字部の切替えが行われるわ ,,, , , けではなく 他方 甲第2号証に記載された発明では 印字部が1つしかないから印字部の切替えを行いようがない。それにもかかわらず,甲1発明に甲第2号証を適用すると,第2の印字機構部から値引価格付加ラベルが発行されるというのは,論理が飛躍している。
( )上記1の( )のとおり,甲1発明は,印字データそのものではなく,印字部24を切り替えるためだけに設定される「フラグYF4」によって印字部を切り替えるものであり,本件発明における 「印字データそのもの」である「値引価格」の有 ,無に応じて印字部を切り替えるという技術的思想は,甲第1号証に開示も示唆もされていない。そうすると,仮に,甲1発明の「広告文データ付加プロモーションラベル」に替えて,甲第2号証の「値引価格付加ラベル」を発行するようになしたとしても,それによって得られる発明は 「値引価格」とは別個に設定された「切替 ,専用のフラグ」によって印字部を切り替えるものにすぎず,本件発明とは異なるものである。
第4被告の反論の要点1取消事由1(一致点の認定の誤り)に対して,,「」, ( )原告は 甲第1号証には 本件発明の 値引価格 に対応するものとして1特売価格 の記載があるから これと異質であって 甲第1号証に記載のない 広 「」,,「告文データ」を,本件発明の「値引価格」と対比させることは誤りであると主張する。
しかしながら,発明の進歩性の判断において,通常,当該発明の特定事項と引用発明を特定するための事項とを比較する手法を採用しているが,その場合,各発明の技術思想を把握し,それらを特定する上で最も適切であるとする事項同士を対比すべきであって 「値引価格」と「特売価格」のように,文言が近似しているとい ,うだけで それらを対比しなければならないというものではない 本件発明は値 , 。,「引価格」によって印字機構部を切り替えるものであるのに対し,甲第1号証には,。, 広告文データによって印字機構部を切り替える甲1発明が記載されている そして甲1発明と本件発明とは,通常データではない臨時データによって印字機構部を切り替える点で共通し,その間の相違は,印字機構部の切替えに関与するデータの違いのみである。
したがって,甲第1号証に「特売価格」について明確に記載されていようと,審決が,甲1発明の「広告文データ」を,本件発明の「値引価格」と対比させたことに何らの誤りもない。
また,原告は,甲第1号証において,広告文をラベルプリンタで印字することは例外であるとか,具体的な構成(記憶させておくべきデータ,データベースの構造等)について,甲第1号証には記載も示唆もされていないと主張する。
しかしながら,甲第1号証には,広告文をラベルプリンタで印字することが可能である旨,明確に開示されているのであって,記載内容が例外であるか,例外でないかは,実際の製品の使用のされ方の問題であり,進歩性を判断する上での問題ではない。また,本件発明の出願時における技術常識参酌する場合,当業者であれば,甲第1号証の「ラベルプリンタに印字も可能」という記載からは,たとえ「広告品」データの詳細が記載されていなくも,例えば商品ファイルの品名等をラベルに印字するのと同じように 「広告品」データをラベルに印字することは当然に導 ,き出せる事項である。したがって 「広告文データ」について具体的な構成が全く ,記載も示唆もされていないという原告の主張は誤りである。
( )原告は,本件発明の「臨時ラベル」の印字データには,必ず「値引価格」2データが含まれているのに対し,甲1発明の「プロモーションラベル」の印字データには 「値引価格」は含まれないから,両者は共通するものではなく,甲1発明 ,の「広告文付加プロモーションラベル」と本件発明の「臨時ラベル」とを 「異デ,ータ付加ラベル」として共通するとした審決の認定が誤りであると主張する。
,, , しかしながら 甲第1号証には 広告文データが印字データ中に存在することで印字機構部を切り替える技術思想が開示されており,甲1発明と本件発明との対比において,通常データ以外の臨時データを印字データに含むことで,印字機構部を切り替えることを共通の概念として捉えることに何ら不都合はない。そして,原告が認めるとおり,審決は 「異データ付加ラベルが,本件発明では値引価格(デー ,タ)が付加されたラベルであるのに対して,甲1発明では,広告文データ付加プロモーションラベルである点」を相違点Aとして認定し,この点について判断しているのであるから,原告の主張は失当である。
また,原告は,甲1発明の「広告文付加プロモーションラベル」には 「値引価,格」は含まれないから 「通常ラベルと臨時ラベルとが別々に印字されて発行され ,ることから,商品にラベルを貼るときにラベルを二回貼付しなければならず面倒である「臨時ラベルが値引価格を表示するものである場合には,その臨時ラベルを 」,通常価格が表示された通常ラベルにできるだけ近づけて貼り付ける方がよく,そうしたときに貼付ミスによりラベル同士が重なってしまって印字された文字が読み取れなくなる」という技術課題の認識はあり得ないと主張するが,上記のような技術課題は 「値引価格」特有のものではなく 「広告文」であっても共通に抱えるもの , ,, ,。 であるから 甲1発明に上記課題の認識がないという主張は 明らかに誤りである( )原告は,甲1発明の「各レジスタ」が 「商品番号が入力される都度,当該3 ,商品番号に対応するPLUデータと予約データがセットされる各レジスタ」の意味,「」 ,「, にしか理解できず このような レジスタ が 本件発明の 複数の商品について各商品毎に記憶する印字データ記憶手段」に該当するとはいえず,本件発明の作用効果を奏することもできないと主張する。
しかしながら,仮に,甲1発明の「各レジスタ」が原告の主張するようなものであるとしても,そのような「各レジスタ」は 「値引価格」と「広告文データ」と ,の違いを別にすれば,本件発明の「ラベルに印字するデータとしての通常データと」。, 上記値引価格とを商品毎に記憶する印字データ記憶手段 にほかならない そして甲1発明においては,このようなレジスタにつき,指定した商品番号に通常とは異なるデータ,例えば,広告文データが設定されているか否かを判断して(実施例ではフラグYF4が設定されているかを判断するのであるが,広告文データを設定しないとフラグYF4は立たないので,実質上広告文データの設定を判断しているのと同じである,自動的に複数の印字機構部を切り替えることができるという,本 。)件発明と同じ作用効果を奏し得るものである。
したがって,原告の上記主張も誤りである。
( )原告は,甲1発明の「フラグYF4」は,印字データそのものではないか4ら,甲1発明は,記憶手段で記憶された印字データ中に通常データとは異なるデータが含まれているか否かによって,印字部を切り替えるとはいえないとして 「甲,1発明において,広告文付加プロモーションラベルの発行予約があるとき立つフラグYF4が立っているか否かを判定することは,発行されるべきラベルが上記広告文付加プロモーションラベルであるか否かを判定することであるから,ラベルの印字データ中に広告文データが含まれているかどうかを判定することを意味していることも明らかである 」とした審決の認定が誤りであると主張し,また,操作者に 。
よる人為的ミスにより,フラグYF4の設定と「広告文データ」の設定とが整合しない可能性が存在し,フラグYF4が立っているからといって,当然 「広告文デ,ータ」の設定がなされているということはできないとも主張する。
しかしながら,甲第1号証に「プロモーションラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF4 (3頁右下欄6〜8行)との記載があるとおり,フラグYF4 」は 例えば 広告品 という広告文データが選択され プロモーションラベルに 広 ,「」 ,「告品」との印字がなされることになる場合には,必ず立つこととなるものである。
仮に,原告が主張するようなミスが発生する場合が例外的にあるとしても,発明の新規性,進歩性を判断する上では,通常の場合に生じる作用を奏する発明を特定するための事項であれば比較判断する技術思想として採用し得るものであるから,例外的な場合に言及する原告の主張は失当である。
さらに,データの存在を,フラグで判断することとデータそのもので判断することは,いずれも互いに密接に関連する周知技術であり,したがって,一方の技術が開示されていれば,他方の技術も開示されているに等しいということができる。
したがって,審決の上記認定に何の誤りもない。
2取消事由2(相違点Aについての判断の誤り)に対し,,「」,「」 ( )原告は 甲第1号証には 本件発明の 値引価格値引価格付加ラベル1に対応するものとして 「特売価格「特売時のラベル」の記載があるから,審決 ,」,が,甲第1号証の「プロモーションラベル」に替えて 「値引価格付加ラベル」を ,発行させることについて検討するのは,上記対応関係を無視し,誤った置き替えを前提とするものである旨主張する。
しかしながら,上記1の( )のとおり,発明の進歩性の判断に当たり,当該発明1の特定事項と引用発明を特定するための事項とを比較する場合には,技術思想を特定する上で最も適切であるとする事項同士を対比すべきであって,単に文言が近似しているという理由だけで,それぞれを比較しなければならないものではない。甲1発明と本件発明とは,通常データではない臨時データによって印字機構部を切り替える点で共通し その間の相違は 印字機構部の切替えに関与するデータが値 ,, ,「引価格」か広告文データかという違いのみであるから,両者を審決のように比較することは,何ら誤りではなく,妥当なことである。そして,甲第2号証には,値引情報を買い手に伝えるため,違う大きさのラベルで,通常時の重量・単価・価格を印字するともに,値下げ後の重量・単価・値段を別の欄に印字する技術思想が少なくとも開示されており,したがって,甲第1,第2号証とも,ラベルプリンタという同一技術分野の発明であって,上記の内容を勘案すると,甲第1号証と甲第2号証を組み合わせ,第2の印字機構部から「値引価格付加ラベル」が発行されるとすることに何ら問題はなく,論理の飛躍ではない。
( )原告は,甲1発明は,印字データそのものではなく,印字部を切り替える2ためだけに設定される「フラグYF4」によって印字部を切り替えるものであると主張する。
しかしながら,上記1の( )のとおり,甲1発明のフラグYF4は,例えば,プ4ロモーションラベルに「広告品」との印字がなされることになる場合には,必ず立つこととなるものである。また,データの存在を,フラグで判断することとデータそのもので判断することは,いずれも互いに密接に関連する周知技術であり,したがって,一方の技術が開示されていれば,他方の技術も開示されているに等しいということができる。
したがって,原告の上記主張も誤りである。
第5当裁判所の判断1取消事由1(一致点の認定の誤り)について,,「」, ( )原告は 甲第1号証には 本件発明の 値引価格 に対応するものとして1発行に当たって第2の印字機構部を使用しない「特売価格」の記載があるから,審決が 「甲1発明の『広告文データ』と本件発明の『値引価格』とは,通常データ ,() 。」() 計量データ とは異なるデータである点で共通している11頁18〜19行,「 」,「」, と認定した上 両者を 通常データとは異なるデータ異データ として一括し一致点の認定に及んだのは,甲第1号証の上記記載を無視し,本件発明の「値引価格」とは全く異質であり,かつ,甲第1号証に記載のない「広告文データ」を,本件発明の「値引価格」と対比させて認定をした誤りがあると主張する。
確かに 甲第1号証にはフラグYF2を立てたときに設定される特売期間 日 ,,「 (数)は,日にちが変わる毎にデクリメントされるようになっている ・・・なお,。
, 。 特売に指定された商品の特売時の値段は 予めPLUファイル32に設定しておくそのため,PLUファイル32は,通常時の値段と,特売価格との2種類の設定ができるように構成されている(4頁左上欄最下行〜右上欄10行)との「特売価 。」格」に関する記載があり,また,甲第1号証の「プリントキーを操作することにより,第14図のフローに入ってラベルを印字する ・・・このフローにおいては, 。
まず,第10図の使用モードフラグPF1から,第2の印字機構部4が使用されることになるか否かを判断する(ステップSB1・・・使用モードフラグPF1が )。
立っていないときは,第2の印字機構部4の使用モードがPOPラベルの印字モードであるか否かを使用モードフラグPF2から判断する(ステップSB3 。使用)モードフラグPF2が立っているときは,POPラベルの印字モードであると判断してステップSB4に進み,予約ファイル33におけるフラグYF3から,POPラベルの予約があるか否かを判断する。フラグYF3が立っていないときは,予約なしと判断してステップSB2に進み,第1の印字機構部3にて計量ラベルのみを印字する。ステップSB4にて,予約ありと判断したとき,つまりフラグYF3が立っているときは,第1の印字機構部3にて計量ラベルを印字(ステップSB5), ()。 すると共に 第2の印字機構部4にてPOPラベルを印字 ステップSB6 するステップSB3にて,POPラベルの印字モードではないと判断したときは,使用モードフラグPF3から,プロモーションラベルの印字モードであるか否かを判断する(ステップSB7 。使用モードフラグPF3が立っているときは,プロモー )ションラベルの印字モードであると判断してステップSB8に進み,予約ファイル33におけるフラグYF4から,プロモーションラベルの予約があるか否かを判断する。フラグYF4が立っていないときは,予約なしと判断してステップSB2に進み,第1の印字機構部3にて計量ラベルのみを印字する。ステップSB8にて,予約ありと判断したとき,つまりフラグYF4が立っているときは,第2の印字機構部4にてプロモーションラベルを印字する(ステップSB9(6頁左下欄1)。」5行〜7頁左上欄末行)との記載によれば,甲1発明において 「特売期間」の設,定に係るフラグYF2が,印字機構部の選択に関与しないこと,すなわち 「特売,価格」は,通常の計量ラベルに印字されることが認められる。
しかしながら,審決が,この「特売価格」ではなく 「広告文データ」を,本件 ,発明の「値引価格」と対比させ,両者が「通常データ(計量データ)とは異なるデータである点で共通している 」と認定したことが誤りであるということはできな 。
い。
すなわち,発明の進歩性の判断に際し,当該発明の発明特定事項と,引用発明の発明を特定するための事項とを対比するに当たっては,当該発明の発明特定事項の機能,作用,性質等に着目し,引用発明のそれと共通する機能,作用,性質等を備える発明特定事項と対比することにより,両発明の一致点,相違点を認定することは,通常行われている手法である。
そして,本件発明の要旨に照らし,本件発明は,印字データ中に「値引価格」が含まれているときには,通常ラベルを発行する通常ラベル印字部ではなく,臨時ラベル印字部に,値引価格と通常データとが合わせて印字された臨時ラベルを発行させるものであることが認められる。
他方,甲1発明においては,上記のとおり 「特売価格」は,通常の計量ラベル ,に印字されるものであるのに対し,甲第1号証の「以下,この発明の一実施例を図面に基づいて説明する ・・・1は,ラベルプリンタの本体である。この本体1の 。
内部には,第2図に示す制御部が設けられており,この制御部には秤2が接続され。,,, ,, ている 一方 本体1の前面には 第1 第2の2つのラベル印字機構部3 4と操作部5とが設けられている(2頁右上欄17行〜左下欄6行「プロモーシ 。」 ),ョンラベルとは,第16図に示すような一般的計量ラベル(値付けラベル)の形状と印字フォーマットを持つが,印字データの色,ラベルの用紙の色,またはプリ印刷の内容が異なるものをいう。例えば ・・・予め『広告品』とプリ印刷されてい ,るラベル用紙に印字したものである ・・・ 広告品』等の広告文は,ラベルプリン 。『タにて印字することも可能であるが,プリ印刷したほうが見易く,またラベルプリンタによる場合よりも文字パターンが限定されないというメリットがある(3頁。」右下欄16行〜4頁左上欄9行「第1の印字機構部3が計量ラベルの発行専用で ),あるのに対し,第2の印字機構部4には次のような4つの使用目的がある。@使用しない。Aプロモーションラベルを発行する。BPOPラベルを発行する。
Cバーコードラベルを発行する。このような使用目的@〜Cに応じて,使用モードフラグPF1〜PF4を以下のようにして設定する(4頁左下欄4〜13 。」行「第2の印字機構部4の使用目的@〜Cを選択することにより,それに対応し ),てワーキングエリア31のフラグPF1〜PF4が立つ(第10図参照・・・と)。
ころで,第2の印字機構部4の使用目的を選択した場合には,それに適合するラベ。」(), ル用紙を第2の印字機構部4にセットする必要がある5頁左上欄3〜14行「使用モードフラグPF3が立っているときは,プロモーションラベルの印字モードであると判断してステップSB8に進み,予約ファイル33におけるフラグYF4から,プロモーションラベルの予約があるか否かを判断する。フラグYF4が立っていないときは,予約なしと判断してステップSB2に進み,第1の印字機構部。,, 3にて計量ラベルのみを印字する ステップSB8にて 予約ありと判断したときつまりフラグYF4が立っているときは,第2の印字機構部4にてプロモーションラベルを印字する(ステップSB9(7頁左上欄9〜末行。なお,この部分の )。」記載及びこれに先立つ6頁右下欄8行〜7頁5行の記載は,上記4頁左下欄4〜13行及び5頁左上欄3〜14行の記載と対比して,プロモーションラベルの発行及びPOPラベルの発行をそれぞれ選択した場合に設定される使用モードフラグPF, , 2及びPF3が相互に入れ替わっており 甲第1号証の単純な誤記と認められるが, , 予約ファイル33のフラグYF3 4との関係及び第14図との関係を考慮するとこれを整合させて,甲1発明を理解するためには,上記4頁左下欄4〜13行の記載中の「Aプロモーションラベルを発行する。BPOPラベルを発行する 」の。
部分を「APOPラベルを発行する。Bプロモーションラベルを発行する 」と。
改めることが最も簡便であるとの記載によれば 通常の計量ラベルデータと 広 。), 「告品」等の広告文データとから成るラベルを,プロモーションラベルとして,通常の計量ラベル印字機構部(第1の印字機構部3)とは異なる印字機構部(第2の印字機構部4)によって印字することが開示されているものと認められる(原告は,甲第1号証に「広告文データ」が記載されていないと主張するが,プリンタにより印字を行うために印字データが必要であることは当然であり,したがって,甲1発明のラベルプリンタが「広告品」等の広告文を印字する以上,当該広告文を印字するためのデータを予め何らかの手段に記憶しておく必要があることも明らかであって,審決は,当該データを「広告文データ」と称していることは,たやすく理解されるところであるから,上記主張は失当である。。)そうすると,本件発明の「値引価格」が,通常ラベルには印字されず,臨時ラベル印字部によって臨時ラベルにのみ印字されること,すなわち 「値引価格」に係,る印字データが通常のデータと異なるデータとしての機能,性質を有することに着目し,甲1発明において,通常の計量ラベルに印字される「特売価格」ではなく,通常の計量ラベル印字機構部とは異なる印字機構部によって,通常の計量ラベルとは異なるラベルに印字される「広告文」を,それに係るデータ(広告文データ)が通常のデータと異なるデータとしての機能,性質を有するものとして,本件発明の「値引価格」と対比することは合理的であり,したがって,審決の上記認定に誤りはない。
なお,原告は,甲第1号証においては 「広告品」等の広告文は,予めラベル用 ,紙にプリ印刷されていることが通常とされ,例外的に「ラベルプリンタにて印字することも可能である」とされているにすぎず,その場合の具体的な構成(記憶させておくべきデータ,データベースの構造等)について,甲第1号証には記載,示唆がされていないとも主張する。
しかしながら,甲第1号証の上記記載によれば 「計量データと広告文データと ,をラベルプリンタにより印字したプロモーションラベル」が開示されていることは明らかであり,たとえ,それが,最初に選択される態様ではないという意味で「例外的」であったとしても,発明の進歩性判断における,特許法29条2項で引用される同条1項3号所定の発明となり得ないということはできない。また,甲第1号証の上記記載に照らすと,当業者は,広告文と計量データとを含むラベルをプロモーションラベルとして,ラベルプリンタで印字するための設定,手段等を理解し得るものと認められ,その際,広告文データとして記憶させておくべきデータやデータベースの構造等についても,技術常識に基づき,通常採用する程度のものを採用すれば足りるものであるから,それらにつき,甲第1号証に具体的な記載がないとしても 「広告文データ」と「値引価格」とを「通常データとは異なるデータであ ,る点で共通している」と認定し,一致点の認定の基礎とすることに妨げはない。
( )原告は,本件発明の「臨時ラベル」の印字データには,必ず「値引価格」2データが含まれているのに対し,甲1発明の「プロモーションラベル」の印字データには 「値引価格」は含まれないから,両者は共通するものではなく,審決が, ,「甲1発明の『広告文付加プロモーションラベル』と本件発明の『通常データとは異なる値引価格と上記通常データとが印字された臨時ラベル』とは,通常データとは異なるデータと通常データとが印字されたラベル・・・である点で共通している(11頁20〜25行)と認定した上,両者を「異データ付加ラベル」として 。」一括し,一致点の認定に及んだことは相当でないと主張する。
しかしながら,本件発明が,印字データ中に「値引価格」が含まれているときには,臨時ラベル印字部に,値引価格と通常データとが合わせて印字された臨時ラベ,, 「」 ルを発行させるものであること 甲1発明が 通常の計量ラベルデータと 広告品等の広告文データとから成るラベルを,プロモーションラベルとして,通常の計量ラベル印字機構部(第1の印字機構部3)とは異なる印字機構部(第2の印字機構部4)によって印字すること,本件発明の「値引価格」に係る印字データ及び甲1発明の広告文データが,いずれも通常のデータと異なるデータとしての機能,性質を有することは,上記( )のとおりである。すなわち,本件発明の「臨時ラベル」1は,その印字データ中に「値引価格」データが含まれているのに対し,甲1発明の「プロモーションラベル」は,その印字データ中に「値引価格」は含まれていないが,両者は,通常データとは異なるデータと通常データとが印字されたラベルである限度では共通しているのであるから,審決が 「甲1発明の『広告文付加プロモ ,ーションラベル』と本件発明の『通常データとは異なる値引価格と上記通常データとが印字された臨時ラベル』とは,通常データとは異なるデータと通常データとが印字されたラベル・・・である点で共通している 」として,両者を「異データ付 。
」,,「, 加ラベル として一括し 一致点の認定を行った上 別途 異データ付加ラベルが本件発明では値引価格(データ)が付加されたラベルであるのに対して,甲1発明では,広告文データ付加プロモーションラベルである点」を相違点Aとして認定したことに,誤りはない。
また,原告は,本件発明は 「通常ラベルと臨時ラベルとが別々に印字されて発 ,行されることから,商品にラベルを貼るときにラベルを二回貼付しなければならず面倒である」こと,及び「臨時ラベルが値引価格を表示するものである場合には,その臨時ラベルを通常価格が表示された通常ラベルにできるだけ近づけて貼り付ける方がよく,そうしたときに貼付ミスによりラベル同士が重なってしまって印字された文字が読み取れなくなる」ことを技術課題としたものであるのに対し 「広告,文付加プロモーションラベル」に「値引価格」が含まれない甲1発明には,かかる技術課題の認識はないから値引価格と通常データを合わせて印字させるという発想は生じないと主張する。
,「 」 ,「」 しかしながら 甲1発明の 広告文付加プロモーションラベル が値引価格が含まれていないゆえに,仮に,上記技術課題の認識がなかったとしても,本件発明の「臨時ラベル」と甲1発明の「広告文付加プロモーションラベル」が,審決の認定に係る上記共通点を備え,相違点を有するものであることに影響を及ぼすものではないから,原告の上記主張も失当である。
( )原告は,本件発明の「印字データ記憶手段」は,複数の商品について,各3商品毎に通常データ(単価等)と値引価格(M特価)とが記憶されている商品マスターを意味するものであるのに対し,甲1発明の「各レジスタ」は,操作部から指定された「商品番号」に対応する1つの商品のPLUデータ及び予約データが読み, , 出されたときに 当該1つの商品の各データが一時的にセットされるものにすぎず本件発明の「複数の商品について,各商品毎に記憶する印字データ記憶手段 (商」品マスター)に該当するとはいえないから,審決が,甲1発明の「各レジスタ」と本件発明の「印字データ記憶手段」とが 「ラベルに印字するデータとして通常デ ,ータと通常データとは異なるデータとを商品毎に記憶する印字データ記憶手段である点で共通している 」と認定した上,両者を 「印字データ記憶手段」として一括 。,し,一致点の認定に及んだことは誤りであると主張する。
しかしながら,本件発明の要旨は,本件発明の「印字データ記憶手段」につき,「ラベルに印字するデータとして通常データと上記値引価格とを商品毎に記憶する印字データ記憶手段」と規定するのみであって 「複数の商品について ,各商品毎 ,」に記憶することは,規定されていない。したがって,仮に,甲1発明の「各レジスタ」が 「1つの商品」のPLUデータ及び予約データをセットするものであると ,しても 「1つの商品」に係るものであるがゆえに,本件発明の「印字データ記憶 ,手段」に該当しないということはできず,原告の上記主張は失当である。
もっとも,審決の「甲1発明の『商品番号(PLUNo )毎に,商品の単価, .風袋重量,有効日,品名等を記憶するPLUファイル32及び商品番号毎に上記プロモーションラベルの発行の予約があるとき立つフラグYF4を記憶する予約ファイル33のそれぞれから,操作部から入力される商品番号毎に,読み出されたPLUデータと予約データがセットされる各レジスタ』と本件発明の『ラベルに印字するデータとして通常データと値引価格とを商品毎に記憶する印字データ記憶手段』とは,ラベルに印字するデータとして通常データと通常データとは異なるデータとを商品毎に記憶する印字データ記憶手段である点で共通している(11頁26〜。」34行 との認定において 印字データ記憶手段に記憶されるものとされている ラ ), 「ベルに印字するデータとして・・・通常データとは異なるデータ」は,甲1発明については 「広告文データ」を意味するものである。 ,,,「,, しかるところ 甲第1号証にはPLUファイル32は 第6図に示すように商品番号(PLUNo )毎に,商品の単価,風袋重量,有効日,品名等を記憶す .るものである。また,予約ファイル33は,第7図に示すように,商品番号に対応して,後述する各種のフラグ,バック数(品出数量 ,特売品の特売期間,POP )No.等を記憶するものである。この予約ファイル33は固定語長ファイルであっ, 。 て いずれかの1項目を設定するだけですべての項目についての領域が確保される, ,, また この予約ファイル33に記憶されるフラグとしては 第9図に示すようにバック数(品出数量)つまり印字するラベルの枚数の予約があるときに立つフラグYF1,特売品の予約つまり特売する商品としての指定があるときに立つフラグYF2,後述するPOPラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF3,後述するプロモーションラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF4,および後述するバーコードラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF5がある(3頁。」左下欄10行〜右下欄9行「品番が入力されることにより,第13図のフローに ),入り,まずは該当するPLUデータをPLUファイル32から読み出し,それを各, ()。 レジスタにセットすると共に 操作・表示部12に表示させる ステップSA1・・・次に,予約ファイル33をサーチし(ステップSA2 ,予約ファイル33)に該当PLUがあった場合には,予約データを読み出して各レジスタにセットする(ステップSA3.SA4(6頁右上欄8〜17行)との記載があり,甲1発 )。」明の「各レジスタ」は,品番が入力されると,該当する「PLUデータ ,すなわ」ち,商品の単価,風袋重量,有効日,品名等と 「予約データ ,すなわち,各種の ,」フラグ,バック数(品出数量 ,特売品の特売期間,POPNo.等がセットされ )ることが示されているが 「広告文データ」が「各レジスタ」にセット(記憶)さ ,れる旨の明示の記載はない。
しかしながら,甲1発明において,計量ラベルデータと広告文データとをラベルプリンタで印字するプロモーションラベルを発行するようにする場合には,印字データである「広告文データ」を必要とすることは明らかである。他方,予約ファイル33に「POPNo 」が記憶され,予約データとして「各レジスタ」にセット .されることは,上記のとおりであるところ,甲第1号証の「POPラベルは,第17図に示すような商品広告ラベルである(4頁左上欄10〜11行「第8図 。」 ),はRAMにおける図形イメージファイルの構成を説明するための概念図 (8頁左」上欄9〜10行)との各記載及び図面第17,第8図に照らして,イメージファイルが「POPNo 」と図形データで構成され 「POPNo 」は,POPラベル . ,.のイメージデータに関する情報であることが認められる。そうすると,このPOPラベルの場合と同様に,計量ラベルデータと広告文データとを印字するプロモーションラベル(広告文付加プロモーションラベル)を発行する場合には 「予約ファ,イル33」に「広告文データ」に関する情報を記憶し,予約データとして「各レジスタ」にセットされるようにしなければならないことは当業者にとって自明のこと,,「」 「」() であるから 甲第1号証には広告文データ が 各レジスタ にセット 記憶されることが示唆されているものということができる。
したがって,審決の上記認定に誤りはない。
( )原告は,甲1発明の「フラグYF4」は印字部を切り替えるためだけに設4定される「切替専用のフラグ」であって,印字データそのものではなく,したがって,甲1発明は,記憶手段で記憶された印字データ中に通常データとは異なるデー, ,, タが含まれているか否かによって 印字部を切り替えるとはいえないから 審決が「甲1発明において,広告文付加プロモーションラベルの発行予約があるとき立つフラグYF4が立っているか否かを判定することは,発行されるべきラベルが上記広告文付加プロモーションラベルであるか否かを判定することであるから,ラベルの印字データ中に広告文データが含まれているかどうかを判定することを意味していることも明らかである11頁13〜17行 と認定した上 甲1発明が印 。」(),,「字データ中に,上記通常データとは異なるデータが含まれいていないとき (12」頁3〜4行「上記通常データが含まれているとき (同頁5〜6行)をそれぞれ ), 」判定し得るものとして,本件発明との一致点を認定したことが,誤りであると主張する。
しかるところ,甲第1号証には,上記( )のとおり 「PLUファイル32は,第3 ,6図に示すように,商品番号(PLUNo )毎に,商品の単価,風袋重量,有効 .日,品名等を記憶するものである。また,予約ファイル33は,第7図に示すように,商品番号に対応して,後述する各種のフラグ,バック数(品出数量 ,特売品)の特売期間,POPNo.等を記憶するものである。この予約ファイル33は固定語長ファイルであって,いずれかの1項目を設定するだけですべての項目について。, , の領域が確保されるまた この予約ファイル33に記憶されるフラグとしては第9図に示すように,バック数(品出数量)つまり印字するラベルの枚数の予約があるときに立つフラグYF1,特売品の予約つまり特売する商品としての指定があるときに立つフラグYF2,後述するPOPラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF3,後述するプロモーションラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF4,および後述するバーコードラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF5がある(3頁左下欄10行〜右下欄9行)との記載があるほか 「予約モ 。」 ,ード画面において,第3の表示部分をタッチすることによって,POPラベルの予約,プロモーションラベルの予約,またはバーコードラベルの予約をする。@POPラベルの予約まず,第11図(b)の画面において,第3の表示部分( P「」)。,() OPラベルの予約 の表示部分 をタッチする これにより 画面が第11図 e,,, .。 となり この画面において 商品番号と それに対応するPOPNo を入力するAプロモーションラベルの予約第3の表示部分に『3.プロモーションラベルの予約』の文字が表示されている予約モード画面において,その表示部分をタッチする。これにより,画面が第11図(f)となり,この画面において,プロモーションラベルを発行する商品に対応する商品番号を入力する ・・・以上のように。
して,ラベルの発行データを入力することにより,予約ファイル33の内容は,第12図のとおりとなる。例えば,商品番号『0001』の商品に関しては,フラグ,『』,『』,. 『』 YF1〜YF4が立ち バッグ数が 1特売日数が 2日POPNo が 1となる(5頁右下欄14行〜6頁右上欄4行)との記載があり,これらの記載に 。」よれば,甲1発明においては,操作者がプロモーションラベルの予約を行うことに連動して,フラグYF4が立つ(設定される)ことが認められる。そして,プロモーションラベルとして「広告文付加プロモーションラベル」を印字する以上 「広,告文」データが必要であることは明らかであること,広告文付加プロモーションラベルを発行する場合には 「予約ファイル33」に「広告文データ」に関する情報 ,を記憶するものであることは,上記( )のとおりであり,このことに,POPラベ3ルの予約画面である第11図(e)を参考として併せ考えれば,プロモーションラベルとして「広告文付加プロモーションラベル」を発行しようとする場合には,第11図(f)のようなプロモーションラベルの予約画面に,POPラベルの予約と同様 「広告文データ」に関する情報を指定して入力することにより,その予約を ,行うものであることが,当業者に自明なこととして認められる。
原告は,甲第1号証に「広告文データ」の設定とフラグYF4の設定との関係について記載されていないのであるから,フラグYF4が立っているからといって,当然 「広告文データ」の設定がなされているということはできないとか,甲1発 ,明において 「通常データと広告文データとが印字されたラベル」を発行させるた ,,, ,, めには 作業者は フラグYF4を立てる操作をするだけでなく これとは別個に印字データとして「広告文データ」を設定する操作をしておくことが必要であり,そうとすれば,操作者による人為的ミスにより,両者が整合しない可能性が存在すると主張するが 「広告文データ」の設定とフラグYF4の設定との関係につき, ,甲第1号証に直接の記載がないことは,原告主張のとおりであるとしても,プロモーションラベル一般に関する記載及びPOPラベルに関する記載等から 「広告文,付加プロモーションラベル」の発行ないし「広告文データ」の設定とフラグYF4の設定との関係は,上記のようであることが,当業者に自明なこととして認められるのであり,また,それによれば,操作者は,印字データとして「広告文データ」を設定する操作とフラグYF4を立てる操作とを別個にする必要はないと認められるのであるから,原告の上記主張は失当である。
そうすると 「広告文付加プロモーションラベル」の発行に関しては,フラグY ,F4が立っていることと 「ラベル」に印字される「広告文データ」が存在するこ ,ととは一義的な対応関係にあるものと認められ,そうであれば 「広告文付加プロ,モーションラベル」を発行するか否かを,フラグYF4が立っているか否かによって判定するということは 「ラベル」に印字される「広告文データ」が存在するか ,否かによって判定しているということと同様であると評価することができる。
なお,原告は 「フラグYF3」に関し,甲第1号証の第11図(e)及び第1 ,,「」 「」「」 「」 2図にはPOPNO が 0 である商品について フラグYF3 が 1であるものが記載されているから 「POPNO」を設定すれば,それに連動し ,て「フラグYF3」が立つわけでないと主張するところ,確かに,第12図には,「POPNO ( POPNo 」と同じものと解される )の設定と「フラグY 」「.。
F3」の設定とが整合していないもの(商品番号「0005」〜「0008 )が」存在する。しかしながら,甲第1号証には,上記のとおり 「POPラベルの発行 ,の予約があるときに立つフラグYF3「@POPラベルの予約まず,第11図 」,(b)の画面において,第3の表示部分( POPラベルの予約」の表示部分)を 「タッチする。これにより,画面が第11図(e)となり,この画面において,商品番号と,それに対応するPOPNo.を入力する ・・・以上のようにして,ラベ 。
ルの発行データを入力することにより,予約ファイル33の内容は,第12図のとおりとなる。例えば,商品番号『0001』の商品に関しては,フラグYF1〜Y,『』,『』,. 『』。」 F4が立ち バッグ数が 1特売日数が 2日POPNo が 1 となるとの記載があり,これらの記載によれば,甲1発明は 「商品番号」を指定し 「P ,,OPNo 」を入力することによりPOPラベルの発行の予約を行い,その予約に .連動してフラグYF3が立つものと考えることが自然である。また,甲第1号証には,上記( )のとおり 「予約ファイル33におけるフラグYF3から,POPラベ1 ,ルの予約があるか否かを判断する。フラグYF3が立っていないときは,予約なしと判断してステップSB2に進み,第1の印字機構部3にて計量ラベルのみを印字する。ステップSB4にて,予約ありと判断したとき,つまりフラグYF3が立っているときは,第1の印字機構部3にて計量ラベルを印字(ステップSB5)すると共に,第2の印字機構部4にてPOPラベルを印字(ステップSB6)する 」。
との記載があって,この記載からは,POPラベルを第2の印字機構部4によって印字するかどうかの判断は,フラグYF3が立っているか否かのみにより判断していることが認められる。そうすると,上記第12図における「POPNO」の設定と「フラグYF3」の設定との不整合は,同図の誤記と考えるしかなく,これにより,甲1発明において,プロモーションラベルの予約を行うことに連動してフラグYF4が立つとの上記認定が妨げられるものではない。
したがって,審決の上記認定に誤りはない。
( )以上によれば,審決の一致点の認定の誤りを主張する取消事由1は,理由5がない。
2取消事由2(相違点Aについての判断の誤り)について(「 」, ( )審決の相違点Aについての判断相違点A及びBについての判断 のうち1相違点Aに係る部分)につき,原告は,甲第1号証に,本件発明の「値引価格」に対応するものとして「特売価格」の,また,本件発明の「値引価格付加ラベル」に「」 ,, 対応するものである 特売時のラベル の発行についての記載があるから 審決が「プロモーションラベル」に替えて「値引価格付加ラベル」を発行させることについて論ずるのは,上記対応関係を無視し,誤った置き替えを前提として阻害要因の有無を判断するものであって,無意味であると主張する。
しかしながら,ともに印字データが通常のデータと異なるデータとしての機能,性質を有することに着目して,甲1発明の「広告文」を,本件発明の「値引価格」と対比することが合理的であって,このような対比に基づく一致点の認定に誤りがないことは,上記1の( )のとおりであり,また,審決の相違点Aの認定も,かか1る対比を前提とするものである。したがって,審決が,甲1発明において,通常の計量ラベルデータとともに「広告文」を印字する「広告文データ付加プロモーションラベル」に替えて,相違点Aに係る「値引価格付加ラベル」を発行させるようにすることが容易であるか否かを検討したことは当然であり,この点につき 「格別,阻害要因がなく,当業者が想到容易である」とした判断にも誤りはない。
また,原告は,甲1発明が「特売時のラベル」を発行する際に,印字部の切替えが行われるわけではなく,甲第2号証に記載された発明では,印字部が1つしかないにもかかわらず 甲1発明に甲第2号証を適用すると 第2の印字機構部から 値 , ,「引価格付加ラベル」が発行されるとするのは,論理が飛躍していると主張するが,審決が,甲1発明において,本件発明の「値引価格付加ラベル」と対比させ,共通すると認定したものは 「特売時のラベル」ではなく,第2の印字機構部4によっ ,て印字する「広告文付加プロモーションラベル」である(その認定に誤りがないことは,上記1の( )のとおりである )から,原告の上記主張は,前提を誤るもので2 。
あって,それ自体失当である。
( )原告は,甲1発明は 「フラグYF4」によって印字部を切り替えるもので2 ,あり,本件発明における 「印字データそのもの」である「値引価格」の有無に応 ,じて印字部を切り替えるという技術的思想は,甲第1号証に開示も示唆もされてい,,「 」, ないから 仮に 甲1発明の 広告文データ付加プロモーションラベル に替えて甲第2号証の「値引価格付加ラベル」を発行するようになしたとしても,それによって得られる発明は 「値引価格」とは別個に設定された「切替専用のフラグ」に ,よって印字部を切り替えるものにすぎず,本件発明とは異なるものであると主張する。
しかしながら,甲1発明においては 「広告文付加プロモーションラベル」を発 ,, , 行するか否かを フラグYF4が立っているか否かによって判定するということが「ラベル」に印字される「広告文データ」が存在するか否かによって判定しているということと同様であると評価し得ることは,上記1の( )のとおりである。そし4て,甲1発明の「広告文付加プロモーションラベル」を発行することを,甲第2号証記載の発明の 値引価格付加ラベル を発行することに置き換えた場合には値 「」 ,「引価格付加ラベル」を発行するか否かを,フラグYF4が立っているか否かによって判定することになるが,それが 「ラベル」に印字される「値引価格」が存在す ,るか否かによって判定しているということと同様であると評価し得ることは,上記1の( )の場合と同様であり,これが本件発明と異なるものであるということはで4きない。
したがって,原告の上記主張も失当である。
3結論以上によれば,原告の主張はすべて理由がなく,原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 石原直樹
裁判官 高野輝久