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関連審決 無効2005-80042
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成18行ケ10539審決取消請求事件 判例 特許
平成17ネ10085特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
平成17ネ10119特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
平成18ネ10051特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
平成18行ケ10452審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 新規性 /  公然知られ(29条1項1号) /  公然実施(29条1項2号) /  頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  発明の詳細な説明 /  技術的意義 /  特許発明 /  実施 /  構成要件 /  侵害 /  設定登録 /  訂正審判 /  訂正の許否 /  請求の範囲 /  減縮 /  拡張 /  変更 /  訂正明細書 / 
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事件 平成 18年 (行ケ) 10045号 審決取消請求事件
原告有 限会社新田鉄工
訴訟代理人弁理士山広宗則
同 岩本牧子
同 信末孝之
被告田 井能自動車株式会社
訴訟代理人弁理士古田剛啓
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2007/02/26
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が無効2005-80042号事件について平成17年12月20日にした審決を取り消す。
第2当事者間に争いのない事実1特許庁における手続の経緯被告は,発明の名称を「車両積み下ろし方法および同装置」とする特許第3265421号(平成10年5月19日出願,平成14年1月11日設定登録
以下「本件特許」という。)の特許の特許権者である。
原告は,本件特許につき特許無効審判を請求し,この審判請求は無効2005-80042号事件として審理され,その過程で,平成17年4月28日,被告から訂正請求(以下「本件訂正」という。)がされた。その結果,特許庁は,同年12月20日,本件訂正を認めた上で,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,平成18年1月6日,審決の謄本が原告に送達された。
2特許請求の範囲本件訂正前における本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし6の記載(以下,それぞれの発明を「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」といい,本件特許の明細書及び図面を「本件明細書」という。),本件訂正の内容及び本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし6の記載(以下,それぞれの発明を「訂正発明1」ないし「訂正発明6」といい,本件訂正後の明細書を「訂正明細書」という。)は,次のとおりである。
(1)本件特許発明「【請求項1】車両運搬車(R)のシャーシー(S)上の前方から後端部を経由してシャーシー(S)後端部の下位にわたって設けられた水平部(21a)・四分の一円弧部(21b)・鉛直部(21c)よりなるところのガイド(21)に沿い,車両運搬車(R)の荷台(20)を水平後方に移動し,その水平状態のまま地面(E)まで下降させて,その荷台(20)に車両(C)を載せ,水平状態のまま上昇させた後,前方に移動することによって車両(C)を車両運搬車(R)に載せることとしてなる車両積み下ろし方法。
【請求項2】車両運搬車(R)のシャーシー(S)上の前方から後端部を経由してシャーシー後端部の下位にわたって設けられたガイド(21)に沿って,そのガイド(21)を周回するチェーン(22)によって,前後方向に水平移動すると共に,荷台前端部がシャーシー(S)後端部に達した後,水平状態を維持したまま下限で地面(E)に接するまで上下方向に昇降移動する荷台(20)と,シャーシー(S)の後端部に基端部が回動自在に取付けられ,先端部がシャーシー(S)の後方で荷台(20)の下面に当接して荷台(20)の前後方向移動を下方から支持すると共に,荷台(20)の上下方向移動を達成する伸縮伸縮アームユニットユニット(30)と,からなる車両積み下ろし装置。
【請求項3】シャーシー(S)の後端部に支持脚基端部が回動自在に取付けられ,先端部を,荷台(20)を後方移動する際等に地面Eに接して,車両運搬車(R)の後端部にかかる荷重を支持する支持脚(40)を設けてなる請求項2に記載の車両積み下ろし装置。
【請求項4】伸縮アームユニット(30)の先端部に,車両(C)の前輪を前後から挟持するように支持して,車両(C)の前輪を持ち上げた状態で運搬する挟持具(60)を着脱自在に取付けてなる請求項2または3に記載の車両積み下ろし装置。
【請求項5】伸縮アームユニット(30)の先端部に,車両(C)の車体を支持して,車両(C)の車輪を持ち上げた状態で運搬する支持具(70)を着脱自在に取付けてなる請求項2または3に記載の車両積み下ろし装置。
【請求項6】伸縮アームユニット(30)の先端部に,車両運搬車(R)に搭載したウインチ(80)のワイヤー(81)を挿通した回動自在の回動滑車(82)を着脱自在に取付けて,ワイヤー(81)の先端部で車両(C)を牽引自在としてなる請求項2または3に記載の車両積み下ろし装置。」(2)本件訂正の内容以下,審決と同様に,各訂正事項をそれぞれ「訂正事項イ」ないし「訂正事項リ」という。
イ.特許請求の範囲請求項1,2における「ガイド(21)」を「レール(21)」に,発明の詳細な説明における「ガイド21」を「レール21」に,図面の簡単な説明における図15及び図16の説明中「ガイドとキャリッジ」を「レールとキャリッジ」に,及び符号の説明における「21ガイド」を「21レール」に訂正する。
ロ.特許請求の範囲請求項1において,「車両運搬車(R)の荷台(20)を」の後に,「,荷台用コロ(26)に下面を接触させ而も荷台下面に設けたガイド(20a)の側面を側面ガイドコロ(26b)に接触させ,レール21を挟む上下四つのキャリッジ用コロ(24)と左右方向のぶれを防止する側面ガイドコロ(24a)を有し且つ噛合範囲を大きくする遊び鎖車(29)を有する駆動鎖車(28)に噛合うと共にレール(21)を周回するチェーン(22)の両端部を固着したところのキャリッジ(23)によって前記荷台を」を挿入する。
ハ.特許請求の範囲請求項2における「シャーシ後端部の下位にわたって設けられた」の後に,「水平部(21a)・四分の一円弧部(21b)・鉛直部(21c)よりなるところの」を挿入する。
ニ.特許請求の範囲請求項2における「そのガイド(21)を周回するチェーン(22)によって」を「車両運搬車(R)の荷台(20)を,レール(21)を挟む上下四つのキャリッジ用コロ(24)と左右方向のぶれを防止する側面ガイドコロ(24a)を有し且つ噛合範囲を大きくする遊び鎖車(29)を有する駆動鎖車(28)に噛合うと共にレール(21)を周回するチェーン(22)の両端部を固着したところのキャリッジ(23)によって前記荷台(20)を」に訂正する。
ホ.特許請求の範囲請求項2において,「上下方向に昇降移動する荷台(20)と,」の後に,「荷台下面に接触する荷台用コロ(26)と,荷台下面に設けたガイド(20a)の側面に接触する側面ガイドコロ(26b)とが設けられ,」を挿入する。
ヘ.特許請求の範囲請求項2における「伸縮伸縮アームユニットユニット」を,「伸縮アームユニット」に訂正する。
ト.本件明細書段落【0016】中,「また,」と「荷台20が」の間の「キャリッジ23には,」を削除する。
チ.本件明細書段落【0022】中,「アーム比」を「アームコロ」と訂正する。
リ.その他本件明細書の発明の詳細な説明中において,上記特許請求の範囲におけるイないしヘの訂正に対応する箇所について,当該訂正の内容に整合するように訂正する。
(3)訂正発明「【請求項1】車両運搬者(R)のシャーシー(S)上の前方から後端部を経由してシャーシー(S)後端部の下位にわたって設けられた水平部(21a)・四分の一円弧部(21b)・鉛直部(21c)よりなるところのレール(21)に沿い,車両運搬車(R)の荷台(20)を,荷台用コロ(26)に下面を接触させ而も荷台下面に設けたガイド(20a)の側面を側面ガイドコロ(26b)に接触させ,レール21を挟む上下四つのキャリッジ用コロ(24)と左右方向のぶれを防止する側面ガイドコロ(24a)を有し且つ噛合範囲を大きくする遊び鎖車(29)を有する駆動鎖車(28)に噛合うと共にレール(21)を周回するチェーン(22)の両端部を固着したところのキャリッジ(23)によって前記荷台を水平後方に移動し,その水平状態のまま地面(E)まで下降させて,その荷台(20)に車両(C)を載せ,水平状態のまま上昇させた後,前方に移動することによって車両(C)を車両運搬車(R)に載せることとしてなる車両積み下ろし方法。
【請求項2】車両運搬車(R)のシャーシー(S)上の前方から後端部を経由してシャーシー後端部の下位にわたって設けられた水平部(21a)・四分の一円弧部(21b)・鉛直部(21c)よりなるところのレール(21)に沿って,車両運搬車(R)の荷台(20)を,レール(21)を挟む上下四つのキャリッジ用コロ(24)と左右方向のぶれを防止する側面ガイドコロ(24a)を有し且つ噛合範囲を大きくする遊び鎖車(29)を有する駆動鎖車(28)に噛合うと共にレール(21)を周回するチェーン(22)の両端部を固着したところのキャリッジ(23)によって前記荷台(20)を,前後方向に水平移動すると共に,荷台前端部がシャーシー(S)後端部に達した後,水平状態を維持したまま下限で地面(E)に接するまで上下方向に昇降移動する荷台(20)と,荷台下面に接触する荷台用コロ(26)と,荷台下面に設けたガイド(20a)の側面に接触する側面ガイドコロ(26b)とが設けられ,シャーシー(S)の後端部に基端部が回動自在に取付けられ,先端部がシャーシー(S)の後方で荷台(20)の下面に当接して荷台(20)の前後方向移動を下方から支持すると共に,荷台(20)の上下方向移動を達成する伸縮アームユニット(30)と,からなる車両積み下ろし装置。
【請求項3】シャーシー(S)の後端部に支持脚基端部が回動自在に取付けられ,先端部を,荷台(20)を後方移動する際等に地面Eに接して,車両運搬車(R)の後端部にかかる荷重を支持する支持脚(40)を設けてなる請求項2に記載の車両積み下ろし装置。
【請求項4】伸縮アームユニット(30)の先端部に,車両(C)の前輪を前後から挟持するように支持して,車両(C)の前輪を持ち上げた状態で運搬する挟持具(60)を着脱自在に取付けてなる請求項2または3に記載の車両積み下ろし装置。
【請求項5】伸縮アームユニット(30)の先端部に,車両(C)の車体を支持して,車両(C)の車輪を持ち上げた状態で運搬する支持具(70)を着脱自在に取付けてなる請求項2または3に記載の車両積み下ろし装置。
【請求項6】伸縮アームユニット(30)の先端部に,車両運搬車(R)に搭載したウインチ(80)のワイヤー(81)を挿通した回動自在の回動滑車(82)を着脱自在に取付けて,ワイヤー(81)の先端部で車両(C)を牽引自在としてなる請求項2または3に記載の車両積み下ろし装置。」3審決の理由別紙審決書の写しのとおりである。要するに,@本件訂正は,特許法134条の2第1項ただし書き及び同条5項において準用する同法126条3項及び4項の規定に適合し,適法な訂正と認められる,A訂正発明1及び2は,公然実施発明と同一ではなく,訂正発明3ないし6は,訂正発明2を更に限定したものであるから,同法29条1項1号又は2号に違反して特許の設定登録がされたものではない,B訂正発明1及び2は,本件特許の出願前に公知ないし公然実施された技術事項(甲第1ないし3号証,第5号証及び第13号証。以下「公然実施発明」という。)並びに特開平8-113073号公報(甲第15号証。以下「参考資料」という。),実願平5-75750号(実開平7-40264号)のCD-ROM(甲第16号証。以下「参考例1」という。),特開平5-305843号公報(甲第17号証。以下「参考例2」という。),特開平9-263238号公報(甲第18号証。以下「参考例3」という。)及び特開平5-246275号公報(甲第19号証。以下「参考例4」という。)の記載事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではなく,訂正発明3ないし6は,訂正発明2を更に限定したものであり,上記と同様に,当業者が容易に発明することができたものではない,とするものである。
審決は,上記結論を導くに当たり,公然実施発明の内容及び訂正発明1と公然実施発明との相違点を次のとおり認定した。
(1)公然実施発明の内容「車両のシャーシー上の前方から後端部を経由してシャーシー後端部の下位にわたって設けられた水平部・四分の一円弧部・鉛直部よりなるところのレールに沿って,チェーンが配置され,前後方向に水平移動すると共に,前端部がシャーシー後端部に達した後,水平状態を維持したまま下限で地面に接するまで上下方向に昇降移動する荷台と,荷台下面に接触する荷台用コロと,シャーシーの後端部に基端部が回動自在に取付けられ,先端部がシャーシーの後方で荷台の下面に当接して荷台の前後方向移動を下方から支持すると共に,荷台の上下方向移動を達成する伸縮アームユニットとからなる車両積み下ろし装置乃至は方法。」(2)相違点a訂正発明1は,「荷台用コロ(26)に下面を接触させ而も荷台下面に設けたガイド(20a)の側面を側面ガイドコロ(26b)に接触させ」る構成(以下「ガイドコロの構成」という。)を有するのに対して,公然実施発明はそのような構成を有するかどうか不明な点(以下,審決と同様に「相違点a」という。)b訂正発明1は,「レール21を挟む上下四つのキャリッジ用コロ(24)と左右方向のぶれを防止する側面ガイドコロ(24a)を有し且つ噛合範囲を大きくする遊び鎖車(29)を有する駆動鎖車(28)に噛合うと共にレール(21)を周回するチェーン(22)の両端部を固着したところのキャリッジ(23)」の構成(以下「キャリッジの構成」という。)を有するのに対して,公然実施発明はそのような構成を有するかどうか不明である点(以下,審決と同様に「相違点b」という。)第3原告主張の取消事由の要点審決は,本件訂正の許否の判断を誤り(取消事由1),この判断に誤りがないとしても,公然実施発明の認定を誤ったため訂正発明の新規性の判断を誤り(取消事由2),進歩性の判断をも誤った(取消事由3)ものであるところ,これらの誤りがいずれも結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法なものとして取り消されるべきである。
1取消事由1(本件訂正の許否の判断の誤り)(1)訂正事項ロ,ニ及びホは,形式上特許請求の範囲減縮するものであるが,発明の目的や作用効果の相違するような新たな構成要件を付加することにより,特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものである。
(2)本件訂正を認めると,平成9年11月20日から24日に開かれた第10回名古屋モーターショー(以下「モーターショー」という。)に展示された車両積み下ろし装置やその装置による車両積み下ろしの実演を観覧した第三者(原告を含む。)又は甲第1ないし第3号証の雑誌を読んだ第三者が本件訂正前の発明は公然実施発明であると確信して実施した場合に,本件訂正前には侵害とならなかった行為が本件訂正後には侵害行為とみなされるに至り,第三者は著しく不利益を受けることになる。
2取消事由2(公然実施発明認定の誤り・訂正発明の新規性判断の誤り)審決は,訂正発明1及び2が公然実施発明と同一ではなく,訂正発明3ないし6は,訂正発明2をより限定したものであるから,いずれも特許法29条1項1号又は2号に違反して特許の設定登録をなされたものではないと判断した。
しかし,甲第20号証及び第30号証により,モーターショーに展示された車両積み下ろし装置は,上記ガイドコロの構成,キャリッジの構成を備えたものであり,審決が公然実施発明と訂正発明との相違点として相違点a及びbを認定したことは誤りである。訂正発明1及び2の構成は,出願前に公然知られ得る状態にあった。
3取消事由3(訂正発明の進歩性判断の誤り)審決は,@相違点a及びbに係る構成は,参考資料又は参考例1ないし4に記載も示唆もされておらず,当該構成により,円滑な積み下ろし作業を可能にするという顕著な作用効果を奏するものであるから,訂正発明1は,公然実施発明並びに参考資料及び参考例1ないし4の記載事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない,A訂正発明2は装置の発明である点において訂正発明1と異なるが,公然実施発明との一致点及び相違点は訂正発明1におけるものと実質的に同じであるから,上記@と同様の理由で,訂正発明2は,当業者が容易に発明することができたものではない,B訂正発明3ないし6は,訂正発明2を更に限定したものであり,上記Aと同様の理由で,当業者が容易に発明することができたものではない,と判断した。
(1)相違点aについて,荷台用コロ(26)に下面を接触させることは,審決でも公然実施発明の構成として認めており,荷台下面に設けたガイド(20a)の側面を側面ガイドコロ(26b)に接触させることは,参考例1(甲第16号証)に記載された発明に基づいて想到容易である。
(2)相違点bについて,噛合範囲を大きくする遊び鎖車(29)を有する駆動鎖車(28)に噛合うと共にレール(21)を周回するチェーン(22)の点は,参考例3(甲第18号証)に記載された発明に基づいて想到容易であり,レール(21)を挟む上下四つのキャリッジ用コロ(24)と左右方向のぶれを防止する側面ガイドコロ(24a)を有し,チェーン(22)の両端部を固着したところのキャリッジ(23)の点は,参考資料(甲第15号証)に記載された発明に基づいて想到容易である。
ア訂正発明1において,駆動鎖車(28)と遊び鎖車(29)の位置関係は特定されていないので,スプロケットホイール8Bが,「鎖車(28)」に相当するものと考えれば,駆動されるスプロケットホイール8Bは,遊び鎖車(29)に相当するスプロケットホイール9A,9Cを有する点で,訂正発明1の構成と同一になる。
イ駆動位置をスプロケットホイール8Bにするか,スプロケットホイール9Bにするかは設計変更事項にすぎない。
ウ訂正発明1は,アームユニットを構成要件とするものではないから,訂正発明1について,駆動鎖車によってキャリッジはアームユニットと連動して正確に作動することができるという作用効果を奏するものと認めた審決の判断は,誤りである。
(3)訂正発明2ないし6についても,上記(1)及び(2)と同様の理由から,進歩性はない。
第4被告の反論の骨子審決の認定判断はいずれも正当であって,審決を取り消すべき理由はない。
1取消事由1(本件訂正の許否の判断の誤り)について訂正事項ロ,ニ及びホは,本件明細書に記載されていたものであり,これを請求項に加えても,発明の目的や作用効果は,訂正前と客観的に同一である。
2取消事由2(公然実施発明認定の誤り・訂正発明の新規性判断の誤り)について甲第20号証において,門前二夫は,「ワールドワークス社製『CW3型キャリー&レッカー装置』の計画図及び設計図は全て私が作成したものです。」と述べているが,同号証の別紙1及び2には,モーターショーの開催日より後の日付が記入されており,作図日より前に計画図及び設計図記載の装置が製作されていたことになるから,同号証には信憑性がない。
モーターショーのキャリアレッカーCWは,荷台に車両を載せない状態で展示したものである(乙第8号証)が,甲第30号証の写真には荷台に車両を載せ,かつ,荷台を移動させたときの写真が示されているから,同号証がモーターショーの会場で撮影された写真であるということには疑問が残り,同号証には信憑性がない。また,同号証の写真から,キャリッジ,ガイドコロ等の構成及び技術的な働きを理解することはできない。
甲号証の各写真には,少なくとも「遊び歯車を有する駆動歯車」は見られない。
したがって,訂正発明1及び2は公然実施発明と同一ではなく,訂正発明3ないし6は,訂正発明2をより限定したものであるから,いずれも公然実施発明と同一ではない。
3取消事由3(訂正発明の進歩性判断の誤り)について(1)甲第16号証の2つのローラ10D,10Eは鉛直に対して45度傾斜し,荷台3の鉛直荷重を常時受けており,荷台が左右方向に揺れたときには,ガイド3の下側傾斜面がローラ10D又は10Eの一方に沿って上昇するとともに他方のローラ10E又は10Dから離れ,左右方向のガイド機能は有せず,本件発明の側面ガイドコロ(26b)及びガイド(20a)とは異なっている。したがって,相違点aについて,荷台用コロ(26)に下面を接触させることは,審決でも公然実施発明の構成として認めており,荷台下面に設けたガイド(20a)の側面を側面ガイドコロ(26b)に接触させることは,参考例1(甲第16号証)に記載された発明に基づいて想到容易であるとはいえない。
(2)甲第18号証のスプロケットホイール9Bは常にチェーン10を張った状態に保つもので,スプロケットホイール9A,9B,9Cと,訂正発明の駆動鎖車(28),遊び鎖車(29,29)とでは,作用効果が異なる。したがって,相違点bについて,噛合範囲を大きくする遊び鎖車(29)を有する駆動鎖車(28)に噛合うと共にレール(21)を周回するチェーン(22)の点は,参考例3(甲第18号証)に記載された発明に基づいて想到容易とはいえない。
甲第15号証は,福祉車両の軽いシート昇降装置に関するものであり,重い車両昇降装置である訂正発明とは技術分野が異なるから,レール(21)を挟む上下四つのキャリッジ用コロ(24)と左右方向のぶれを防止する側面ガイドコロ(24a)を有し,チェーン(22)の両端部を固着したところのキャリッジ(23)の点は,参考資料(甲第15号証)に記載された発明に基づいて想到容易であるとはいえない。
(3)訂正発明2ないし6についても,上記(1)及び(2)と同様の理由から,進歩性を認めた審決の判断に誤りはない。
第5当裁判所の判断1取消事由1(本件訂正の許否の判断の誤り)について(1)本件明細書(甲第21号証)には,発明が「解決しようとする課題は,従来の車両Cを運搬台90に載せて搬送する車両運搬車Rの車両積み下ろし装置は,地面Eが軟弱等である場合,ブリッジ91を容易に降ろしきることができず運搬が困難となるので,こうした問題を解決する。また,より有意義な使用態様を探求する。」(段落【0006】)との記載があり,発明の効果として,「このように本発明に係る車両積み下ろし方法および車両積み下ろし装置10によれば,荷台20を水平姿勢を維持したまま下降させることとしたので,その先端部が地面Eに食い込むことがなく,よって軟弱な地面E,積雪のある地面E,あるいは損傷し易いアスファルト等,あらゆる条件の地面Eで車両Cを車両運搬車Rに容易に載せることができる。従って,車両C等の運搬作業効率を大幅に向上させることができる。」(段落【0032】)との記載があり,これらの記載は,訂正されていない。
訂正事項ロに関し,訂正明細書(甲第22号証)には,「本実施形態にあって,荷台20は,図9等に示すように,その前端部の荷台連結部20bに回動自在の接続ピン20cを介してキャリッジ23を有し,このキャリッジ23に,上下四つのキャリッジ用コロ24を回転自在にレール21を挟む状態で取付けると共に,左右方向のぶれを防止するために側面ガイドコロ24aを取付けている。このキャリッジ23には,チェーン22の両端部を固定している。…レール21のシャーシーS中心側は,レール21に沿い荷台20の下面に接し,荷台20の前後方向移動を円滑に達成するための荷台用コロ26を回転自在に取付けている。…また,荷台20がレール21から左右方向に外れるのを防止するための荷台20下面に設けた…ガイド20aの側面に接触する側面ガイドコロ26bをシャーシーSに取付けている。シャーシーSの中間部分には駆動鎖車28を固定し,この駆動鎖車28によってチェーン22を駆動させている。…駆動鎖車28の前後両側には遊び鎖車29を設け,駆動鎖車28とチェーン22との噛合い範囲を大きくし,動力の伝達をより確実なものとしている。」(段落【0016】〜【0017】)との記載がある。
上記の記載によれば,訂正事項ロに係る「荷台用コロ(26)に下面を接触させ而も荷台下面に設けたガイド(20a)の側面を側面ガイドコロ(26b)に接触させ」は,荷台20の前後方向移動を円滑に達成するための構成であり,「レール21を挟む上下四つのキャリッジ用コロ(24)と左右方向のぶれを防止する側面ガイドコロ(24a)を有し…レール(21)を周回するチェーン(22)の両端部を固着したところのキャリッジ(23)」は,荷台20を移動させるための構成であり,「噛合範囲を大きくする遊び鎖車(29)を有する駆動鎖車(28)に噛合う」は,動力の伝達をより確実なものとする構成であるものと認められる。訂正事項ニ及びホも,訂正内容としては訂正事項ロと同様である。
訂正事項ロ,ニ,ホのいずれも,本件特許発明1及び2の効果を奏するための「荷台を水平姿勢を維持したまま下降させる」との技術事項を実施するに際しての使用態様を具体化したものであって,付加された構成要件に多少の技術的意義は認められるにしても,本件特許発明1及び2の目的に沿ったものであり,発明の目的や作用効果を異にするような新たな構成を付加したものということはできない。上記によれば,訂正事項ロ,ニ,ホについては,特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものということはできない。
(2)原告は,本件訂正を認めると,モーターショーを観覧した第三者(原告を含む。)又は甲第1ないし第3号証の雑誌を読んだ第三者が本件訂正前の発明は公然実施発明であると確信して実施した場合に,本件訂正前には侵害とならなかった行為が本件訂正後には侵害行為とみなされるに至り,第三者は著しく不利益を受けることになると主張する。
しかしながら,特許について無効審判が請求されたとしても,特許権者において当該審判手続において訂正請求をし,あるいは訂正審判を請求することによって特許請求の範囲減縮することなどによって,無効審決を免れ得ることは,特許法上も予定されていることであるから,特許法の規定に照らして許容されるべき訂正がされ,それによって特許権者が無効審決を免れたからといって,第三者が不測の損害を被ったということはできない。原告が主張するところは,要するに本件訂正が許容されるべきものに該当しないことをいうに帰するものであって,およそ審決が本件訂正を認めたことについての違法をいう事由に該当するものとはいえない。
(3)上記によれば,本件訂正を認めた審決の判断に誤りはない。
2取消事由2(公然実施発明認定の誤り・訂正発明の新規性判断の誤り)について(1)甲第20号証について甲第20号証において,門前二夫は,「ワールドワークス社製『CW3型キャリー&レッカー装置』の計画図及び設計図は全て私が作成したものです。」と述べている。しかし,同号証の別紙1には「H10.1.19」の記載があり,別紙2には作成年月日として「平成10年1月17日」の記載がある。モーターショーの開催日が平成9年11月20日から24日までであることは,当事者間に争いがない。したがって,甲第20号証における門前の陳述は信用することができず,作図の日より前に計画図及び設計図記載の装置が製作されていたことは通常考えられないから,同号証は全体として信憑性がない。
(2)甲第30号証についてア被告は,(ア)甲第30号証(1)Aの写真の右後輪後側のタイヤハウジング下端には黒色の泥除けが垂設され,泥除けの黒色部分は左側で上方に延び,3個の後面表示燈取付用黒色板の後側に隠れており,表示燈取付用黒色板よりも下側に白色のタイヤハウジングが見えることは有り得ないのに,甲第1号証の左側の一番上の写真及び甲第5号証(1)の一番上の写真では,表示燈取付用黒色板の下側には白色タイヤハウジングの下端が見えており,食い違っていること,(イ)甲第30号証(1)Aの写真と甲第1号証の左側の一番上の写真及び甲第5号証(1)の一番上の写真とでは,泥除けのWORLDの文字の傾き方が違っていること,を挙げて甲第30号証の信憑性は極めて低いと主張する。
しかしながら,上記(ア)については,甲第30号証(1)Aの写真において,右後輪後側の泥除けの左側で上方に延びる黒色の部分が後面表示燈取付用黒色板であることは,同号証(1)@の写真から明らかであり,表示燈取付用黒色板の取付位置は右後輪後側の泥除けよりも車体後方寄りに離れ,タイヤハウジングの下端よりも上方にあるから,車体後方から写真を撮影すれば,表示燈取付用黒色板の下側に白色のタイヤハウジングが線状に写っても何ら不自然ではない。上記(イ)については,甲第30号証(1)Aの写真と甲第1号証の左側の一番上の写真及び甲第5号証(1)の一番上の写真における「WORLD」の文字の傾きに,有意な差異は認められない。したがって,被告の上記主張は採用することができない。
甲第32号証において,小島博は,甲第30号証の写真がモーターショーに展示されていたキャリアレッカー車CW-3を撮影したものであると述べており,甲第30号証の写真中にある「’97年11月21日」との日付もモーターショーの開催時期と符合する。甲第1号証(「BODYSHOPREPORT」,平成10年2月1日発行)は,モーターショーでキャリアレッカー車CW-3を発表したことを紹介する記事であり,床部が水平に上下する様子を示すL字型に配置された6葉の連続写真のうち2葉目ないし5葉目には,レッカー車の奥に赤いワンボックスカーがある様子,全写真を通じて,床面に青いシートが敷かれた様子が写っており,甲第30号証(1)@の写真には,これらと同様の様子が写っている。したがって,甲第30号証は,モーターショーの様子を撮影した写真と認めることができる。
イ訂正発明1と公然実施発明との相違点aに関するガイドコロの構成及び相違点bに関するキャリッジの構成は,訂正発明2においても同一であるから,以下,訂正発明1及び2を併せて検討する。
甲第30号証(2)Bの写真には,レール内方にコロ状の部材が設けられた様子が示され,同号証(1)@ないしB並びに(2)@及びAの写真には,キャリッジ状の部材が認められるものの,これらの写真からは,部材の細部の構成,機能を判然と理解することはできない。また,上記キャリッジ構成のうち,「噛合範囲を大きくする遊び鎖車(29)を有する駆動鎖車(28)に噛合うと共にレール(21)を周回するチェーン(22)の両端部をキャリッジに固着する点」については,それらしい様子を見いだすこともできない。したがって,甲第30号証がモーターショーの様子を撮影した写真にしても,当該モーターショーにおいてはキャリアレッカー車は,これを見る者が上記ガイドコロ及びキャリッジの構成を知り得る形態で展示されていたと認めることはできないから,当該展示により上記ガイドコロ及びキャリッジの構成を備えた車両積み下ろし装置の発明が本件出願前に公然知られ,あるいは公然と実施されたということはできない。
(3)以上のとおり,公然実施発明がガイドコロの構成及びキャリッジの構成を備えたものであると認めるに足りる証拠はないから,訂正発明と公然実施発明とを対比して,相違点a及びbがあるとした審決の認定に誤りはない。
訂正発明1及び2が公然実施発明と同一と認められない以上,訂正発明3ないし6は,訂正発明2をより限定したものであるから,いずれも公然実施発明と同一ということはできない。
3取消事由3(訂正発明の進歩性判断の誤り)について(1)原告は,相違点bについて,噛合範囲を大きくする遊び鎖車(29)を有する駆動鎖車(28)に噛合うと共にレール(21)を周回するチェーン(22)の点は,参考例3(甲第18号証)に記載された発明に基づいて想到容易であると主張する。
参考例3(甲第18号証)には,「以下本発明における実施の形態を図面に基づき説明する。図1から図3において1が台車,2が台車移動装置,3が走行レールを示す。台車1は上部に荷台4,下部に4つの車輪5,上下方向に長穴を設けたローラガイド6から構成されている。台車移動装置2は両端部に円弧を形成しているチェーンガイド7,2つのスプロケットホイール8A,8B,3つのスプロケットホイール9A,9B,9Cからなるチェーンテンショナー9,チェーン10,チェーン10に固着されたローラ11,位置決めガイドプレート12A,12B,減速機付きモータ13から構成される。走行レール3は2本のレール14A,14B,レール14A両端部に配されたストッパ15から構成される。台車移動装置2のチェーン10はチェーンガイド7からスプロケットホイール8A,スプロケットホイール9A,9B,9C,スプロケットホイール8B,チェーンガイド7へと周回している。また,スプロケットホイール9Bは図示しないスプリングなどによって,常にチェーン10を張った状態に保っている。台車1の移動時には減速機付きモータ13にてスプロケットホイール8Bが回転し,チェーン10が回転する」(段落【0008】〜【0009】)との記載がある。
上記記載によれば,甲第18号証において,チェーンを駆動するのはスプロケットホイール8Bであるところ,三つのスプロケットホイール9A,9B,9Cからなるチェーンテンショナー9は,「スプロケットホイール9Bは図示しないスプリングなどによって,常にチェーン10を張った状態に保っている。」との記載からも明らかなように,チェーン10を張った状態に保つためのもの,すなわちチェーンテンショナーとして機能するものであり,スプロケットホイール8Bの噛合範囲を大きくするものとはいえないから,「噛合範囲を大きくする遊び鎖車(29)を有する駆動鎖車(28)」を開示ないし示唆するものとはいえない。
訂正明細書(甲第22号証)の記載によれば,訂正発明1及び2は,この点の構成により,「駆動鎖車28とチェーン22との噛合い範囲を大きくし,動力の伝達をより確実なものとしている。」との効果を奏するものと認められる。そうすると,相違点a及びbのその余の構成について検討するまでもなく,訂正発明1及び2について,公然実施発明及び本件出願前に頒布された刊行物記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
ア原告は,訂正発明1において,駆動鎖車(28)と遊び鎖車(29)の位置関係は特定されていないので,スプロケットホイール8Bが,「鎖車(28)」に相当するものと考えれば,駆動されるスプロケットホイール8Bは,遊び鎖車(29)に相当するスプロケットホイール9A,9Cを有する点で,訂正発明1の構成と同一になると主張する。
しかしながら,三つのスプロケットホイール9A,9B,9Cからなるチェーンテンショナー9が,スプロケットホイール8Bの噛合範囲を大きくするものとはいえないことは,上記のとおりであるから,原告の主張を採用することはできない。
イ原告は,駆動位置をスプロケットホイール8Bにするか,スプロケットホイール9Bにするかは設計変更事項にすぎないと主張する。
しかしながら,仮に減速機付きモータ13にて駆動されるスプロケットホイール8Bを設ける場所が甲第18号証の図1,図2に示されるような位置に限られないとしても,チェーンテンショナーであるスプロケットホイール9Bを駆動することまで単なる設計変更ということはできない。
ウ原告は,訂正発明1はアームユニットを構成要件とするものではないから,訂正発明1について,駆動鎖車によってキャリッジはアームユニットと連動して正確に作動することができるという作用効果を奏するものと認めた審決の判断は誤りであると主張する。
訂正明細書の記載によれば,訂正発明1及び2は,この点の構成により,「駆動鎖車28とチェーン22との噛合い範囲を大きくし,動力の伝達をより確実なものとしている。」との効果を奏するものと認められることは,前記のとおりであるから,審決の表現に不適切な部分があるとしても,上記の判断を左右するものではない。
(2)訂正発明3ないし6は,訂正発明2に構成要件を付加して限定したものであるから,上記(1)において訂正発明2について述べたのと同様の理由から,これらの発明が公然実施発明及び本件出願前に頒布された刊行物記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
4結論以上に検討したところによれば,原告の主張する取消事由はいずれも理由がなく,審決を取り消すべきその他の誤りも認められない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 三村量一
裁判官 古閑裕二
裁判官 嶋末和秀