審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成16ワ8508損害賠償等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18ワ1223特許権侵害行為差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成16ワ24626特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18ワ8811特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成16ワ26092特許権侵害差止請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 発明者 / 製造方法 / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 周知技術 / 慣用技術 / 29条の2(拡大された先願の地位) / 技術的範囲 / 出願公開 / 発明の詳細な説明 / 実質的に同一 / ライセンス / 特許出願日 / 出願経過 / 参酌 / 容易に想到(容易想到性) / 特許発明 / 実施 / 加工 / 構成要件 / 侵害 / 損害額 / 実施料 / 不法行為(民法709条) / 混同 / 拒絶査定不服審判 / 拒絶査定 / 拒絶理由通知 / 請求の範囲 / 拡張 / 異議申立 / |
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事件 |
平成
17年
(ワ)
6346号
損害賠償等請求事件
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愛媛県四国中央市<以下略> 原告大 王製紙株式会社 同訴訟代理人弁護士小池豊 同 櫻井彰人 同訴訟代理人弁理士永井義久 東京都中央区<以下略> 被告王 子ネピア株式会社 同訴訟代理人弁護士辻居幸一 同 渡辺光 同 竹内麻子 同 高石秀樹 同 外村玲子 同 奥村直樹 同 補佐人弁理 士平山孝二 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2007/02/15 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1被告は,原告に対し,金1億0109万4000円及び内金6932万8000円に対する平成17年3月1日から,内金3176万6000円に対する平成18年10月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2原告のその余の請求を棄却する。 3訴訟費用は,これを3分し,その1を被告の負担とし,その余は原告の負担とする。 - 2 -4この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1請求の趣旨被告は,原告に対し,金2億9700万円及び内金2億円に対する平成17年3月1日から,内金9700万円に対する平成18年10月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,原告が,被告に対し,被告の製造販売する紙おむつが,原告の有する「使い捨て紙おむつ」についての特許発明の技術的範囲に含まれるとして,特許権侵害に基づく損害賠償を求めた事案である。被告は,被告の製造販売する紙おむつは上記特許発明の技術的範囲に含まれず,また,原告の特許権には進歩性欠如の無効理由が存するので権利行使が許されないなどと主張して,これを争っている。 ( , 。) 1前提となる事実 当事者間に争いがないか 後掲各証拠によって認められる( ) 当事者1原告は,紙・板紙の製造加工,販売等を業とする株式会社である。 被告は,紙類,パルプ類等の製造,加工,売買等を業とする株式会社である。 ( ) 原告の有する特許権2原告は,下記の特許(以下 「本件特許」という )の特許権者である(甲 ,。 1,2 。)特 許 番 号第1970113号登録日平成7年9月18日出 願 番 号特願昭62-7471号出願日昭和62年1月16日公 開 番 号特開昭63-182403号公開日昭和63年7月27日発明の名称使い捨て紙おむつ( ) 本件特許出願の願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載3本件特許に係る明細書(平成5年11月12日付け手続補正後のもの。以下 「本件明細書」という。本判決末尾添付の特許公報(甲2)参照 )の , 。 特許請求の範囲の請求項1(以下「本件特許発明」という )の記載は次の。 とおりである。 「,, , 体液吸収体と 透水性トップシートと 非透水性バックシートとを有し前記透水性トップシートと非透水性バックシートとの間に前記体液吸収体が介在されており,前記体液吸収体の長手方向縁より外方に延びて前記透水性トップシートと前記非透水性バックシートとで構成されるフラップにおいて腰回り方向に弾性帯を有する使い捨て紙おむつにおいて,前記弾性体は弾性伸縮性の発泡シートであり,かつこの発泡シートが前記透水性トップシートと前記非透水性バックシートとの間に介在され,前記体液吸収体の長手方向縁と離間しており,前記トップシートのバックシートがわ面において,体液吸収体端部上と発泡シート上とに跨がってその両者に固着されるホットメルト薄膜を形成し,さらに前記離間位置において前記ホットメルト薄膜が前記非透水性バックシートに前記腰回り方向に沿って接合され,体液の前後漏れ防止用シール領域を形成したことを特徴とする使い捨て紙おむつ」( )構成要件の分説4本件特許発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれを「構成要件A@」のようにいう。。)A@体液吸収体と,透水性トップシートと,非透水性バックシートとを有し,前記透水性トップシートと非透水性バックシートとの間に前記体液吸収体が介在されており,A前記体液吸収体の長手方向縁より外方に延びて前記透水性トップシートと前記非透水性バックシートとで構成されるフラップにおいて腰回り方向に弾性帯を有する使い捨て紙おむつにおいて,B前記弾性体は弾性伸縮性の発泡シートであり,かつこの発泡シートが前記透水性トップシートと前記非透水性バックシートとの間に介在され,前記体液吸収体の長手方向縁と離間しており,C前記トップシートのバックシートがわ面において,体液吸収体端部上と発泡シート上とに跨がって(以下「跨って」と表記する )その両者に固。 着されるホットメルト薄膜を形成し,Dさらに前記離間位置において前記ホットメルト薄膜が前記非透水性バックシートに前記腰回り方向に沿って接合され,体液の前後漏れ防止用シール領域を形成したことEを特徴とする使い捨て紙おむつ( ) 本件特許の出願経過5本件特許の出願経過は,次のとおりである。 昭和62年1月16日特許出願(特願昭62-7471号 (乙1。),「」 以下 出願時の明細書を 本件出願当初明細書という )。 (。「」 昭和62年5月18日手続補正書 乙2 以下 本件第1手続補正書という )。 (。「」 昭和63年12月23日手続補正書 乙3 以下 本件第2手続補正書という )。 平成2年11月8日拒絶理由通知書(乙4。以下「本件第1拒絶理由通知書」という )。 (。「」。) 平成3年2月12日意見書 乙5 以下 本件第1意見書 という及び手続補正書(乙6。以下「本件第3手続補正書」という )。 平成3年7月17日拒絶理由通知書(乙7。以下「本件第2拒絶理由通知書」という )。 (。「」。) 平成3年10月4日意見書 乙8 以下 本件第2意見書 という及び手続補正書(乙9。以下「本件第4手続補正書」という )。 平成3年11月8日拒絶査定平成4年1月9日拒絶査定不服審判請求平成4年5月22日手続補正書(乙10。以下「本件第5手続補正書」という )。 平成5年10月25日審判事件に関する面接平成5年11月12日拒絶理由通知書(以下「本件第3拒絶理由通知書」という )発送。 平成5年11月12日手続補正書(乙11。以下「本件第6手続補正書」という )。 平成5年11月25日出願公告決定平成6年3月30日出願公告(特公平6-22511号)平成6年6月23日特許異議申立て平成6年9月28日特許異議申立理由補充書(乙12。以下「本件異議理由補充書」という )。 平成7年2月17日特許異議答弁書(乙13。以下「本件異議答弁書」という )。 平成7年3月22日「本件特許異議の申立ては,理由がないものとする 」旨の特許異議決定(乙14。以下「本 。 件異議決定」という )。 平成7年9月18日登録( ) 無効審判の申立て6被告は,平成18年10月17日,本件特許発明について無効審判を申し立てた(乙96 。)( ) 被告の製造,販売する製品7被告は,遅くとも平成14年5月から平成18年9月までの間,紙おむつ(商品名「ドレミ」Mサイズ及びLサイズ。以下「被告製品」という )の。 製造,販売及び販売の申出をした。 ( ) 被告製品の本件特許発明の充足性8被告製品は 本件特許発明の構成要件A@A及び構成要件Eを充足する 争 , (いがない。。)2本件における争点( ) 被告製品の構成(争点1)1( ) 被告製品が「ホットメルト薄膜 (構成要件C及びD)及び「体液の前後 2 」漏れ防止用シール領域 (構成要件D)を有するか(争点2-1 。 」 )( ) 被告製品の弾性帯が「体液吸収体の長手方向縁と離間 (構成要件B及び3 」D)しているか(争点2-2 。)( ) 本件特許発明が,特許法29条2項に違反しているか(争点3)4, ,, ( ) 仮に 争点2-1に関する原告の主張を前提とした場合 本件特許発明が 5特許法29条の2に違反しているか(争点4-1), ,, ( ) 仮に 争点2-1に関する原告の主張を前提とした場合 本件特許発明が6特許法29条2項に違反しているか(争点4-2)( ) 損害の額(争点5)7第3争点に関する当事者の主張1争点1(被告製品の構成)について( ) 原告の主張1ア被告製品の構成は,別紙物件目録1記載のとおりである。 ,。 イ被告が主張する別紙物件目録2記載の構成は 以下の3点で誤っている)透水性トップシート1に塗布されたホットメルト接着剤は「薄膜」を a形成しているにもかかわらず,別紙物件目録2では 「散点状又はスト,ライプ状」に形成されているとしている。 )ホットメルト接着剤の塗布状態が前身頃に比べて後身頃のほうが長いbにもかかわらず,別紙物件目録2では同程度としている。 )被告製品には,体液吸収体と弾性帯が接触又は重合しているものが存c在するとしている。 ( ) 被告の主張2被告製品の構成は,別紙物件目録2記載のとおりである。なお,被告製品には,弾性帯4が体液吸収体3の長手方向縁と離間しないで,接触又は重合している場合がある(別紙物件目録2の構成の説明( ) 。また,ホットメ4 )ルト接着剤5が弾性帯4又は体液吸収体3に接合し,非透水性バックシート2に接合しない場合がある(別紙物件目録2の図3 。このような製品であ )っても,特に問題なく使用できるので,現に製品として出荷されている。 2争点2-1 被告製品が ホットメルト薄膜構成要件C及びD 及び 体 (「」()「液の前後漏れ防止用シール領域 (構成要件D)を有するか)について 」( ) 原告の主張1ア「ホットメルト薄膜 (構成要件C及びD)について 」)「薄膜」とは,物の表面を覆う層やコーティングや皮などの意味であaる。本件明細書の第2図ないし第4図でも,ホットメルト接着剤が薄い層をなしている状態をもって「ホットメルト薄膜」としている。 以上より,本件特許発明にいう「ホットメルト薄膜」とは,ホットメルト接着剤により形成された物の表面を覆う薄い層,つまりホットメルト接着剤層をいう。当該ホットメルト接着剤層が透水性トップシートのバックシートがわ面に塗布されてホットメルト接着剤による薄い層を形成し,当該「ホットメルト接着剤層による薄い層」が吸収体端部上と発泡シート上に跨ってその両者に固着され,離間位置において非透水性バックシートに腰回り方向に沿って接合されることにより,吸収体の長手方向のずれを防止できる(甲2・3欄44行ないし45行)とともに,吸収体に浸透した体液の一部がトップシートに伝わって長手方向に漏れることを防止し(甲2・3欄48行ないし4欄11行 ,吸収体に浸透)した後,吸収体端縁に至った体液の一部が長手方向に流出し発泡シートとバックシートとの間から漏れることを防止する(甲2・4欄25行ないし32行)との作用効果を奏するものであれば,本件特許発明の「ホットメルト薄膜」に相当する。 )被告は,被告製品のホットメルト接着剤は,散点状又はストライプ状bに形成されており,隙間があり不連続に形成されているから,ホットメルト「薄膜」に該当しないと主張する。 しかし,被告製品のホットメルト接着剤が散点状又はストライプ状に形成されていることの立証がなく,ホットメルト接着剤層が形成されて(,,,)。 いることは明らかである 甲4ないし7 12の1・2 13 14また 「薄膜」とは,物の表面を覆う層やコーティングや皮などをい ,うのであって,孔などの隙間が存在していたとしても,マクロ的に見て層を形成していれば「薄膜」であることに変わりはなく,上記構成を有して上記作用効果を奏するものであれば,本件特許発明の「ホットメルト薄膜」といえるのである(甲8ないし10,15,16,25の1・2,26 。)被告製品のトップシート1のバックシートがわ面に塗布されたホットメルト接着剤は,塗布領域でホットメルト接着剤層を形成し(甲4ないし6 ,当該ホットメルト接着剤層により体液吸収体3の長手方向のず )れを防止するとともに,体液吸収体3に一旦浸透した体液が透水性トップシート1を通って長手方向に流れてその端部から滲み出すことを防止し,前後漏れ防止効果の高い使い捨て紙おむつを提供している(甲7)のであるから,本件特許発明の「ホットメルト薄膜」に相当する。 イ「体液の前後漏れ防止用シール領域 (構成要件D)について 」,「 」, 特許請求の範囲の記載より体液の前後漏れ防止用シール領域 とは発泡シートと体液吸収体との離間位置において,トップシートのバックシート側に形成されたホットメルト薄膜が非透水性バックシートに腰回り方向に沿って接合され,体液が吸収体から発泡シート側に漏れることを防止する領域を意味することが認められる。このことは,発明の詳細な説明及び本件明細書添付図面からも裏付けられる すなわち 本件特許発明の 体 。,「液の前後漏れ防止用シール領域」は,上記構成を採用することにより,本件明細書の第2図の構成の紙おむつに比べ 「前記シール領域を形成する ,と,そもそもこのシール領域で体液の長手方向の流出を阻止する」との作用効果を奏するのである。そして,当該「体液の前後漏れ防止用シール領域」は 「吸収体の端縁から紙おむつの長手方向端縁に流出する・・・体 ,液の長手方向の流出を阻止する」ものであり,一旦吸収体に浸透された体液のうち吸収体端部に流出してきたものを対象とする領域,つまり排泄された体液の一部の流出を阻止する領域をいうのであって,流出量が多いと流出を遅らせることはできるものの,完全に阻止することまではできないというものであり,従来技術に比べて「前後漏れ防止効果の高い使い捨ておむつを提供する」との効果を奏するものである。 被告製品のトップシート1に塗布されたホットメルト接着剤は「薄膜」を形成し,当該ホットメルト薄膜5は体液の浸み出しを防止する働きをしている。したがって,体液の浸み出しを防止する働きをするホットメルト薄膜5が別紙物件目録1の図2及び別紙物件目録2の図2に示す態様で離間位置に存在する以上,当該ホットメルト薄膜5が離間位置において「体液の前後漏れ防止用シール領域」を形成していることは明らかである(甲6,7 。現に,体液吸収体に浸透した体液の流れ込む量が多い後身頃の )ホットメルト接着剤の塗布領域は,前身頃に比べて広範囲とされている。 ウ被告の主張に対する反論)被告は,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明を根拠として 「ホッa ,トメルト薄膜」は 「非透水性バックシート」と同様な「非透水性」で ,あることが必要であるとか,本件特許発明の「ホットメルト薄膜」は非透水性であり,確実に漏れ防止機能を有することが記載されているなどと主張する。 しかし,発明の詳細な説明の記載によれば,本件特許発明の「ホットメルト薄膜」は 「非透水性バックシート」のように体液の浸み出しを ,防止する作用効果を奏するのではなく,体液が透水性トップシートを伝わることによる前後漏れを防止する作用効果を奏するものである。すなわち 「非透水性バックシート」と同様の「非透水性」を要求するもの ,ではないし,シートの厚み方向の漏れを防止する「非透水性バックシート」と異なり,体液の前後漏れ(長手方向の漏れ)の防止を図るものである。 また,発明の詳細な説明の記載から,長手方向への流出の防止という解釈を導くことはできるものの 「透水性トップシートから滲み出す逆 ,漏れを防止する」との解釈を導くことはできない。 したがって,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明を根拠とする被告の主張は失当である。 )被告は,本件出願当初明細書や原告が出願過程で提出した手続補正書b等の記載を根拠として 「ホットメルト薄膜」は「非透水性バックシー ,ト」と同様な「非透水性」である旨主張する。 しかし,被告が引用する本件出願当初明細書の記載は実施例の記載であって,ホットメルト薄膜以外の構成(材料)も使用可能であることを示したにすぎない。また 「ホットメルト薄膜」が防止するのは,体液 ,の長手方向の漏れであり 「非透水性バックシート」のごときシートの ,厚み方向の漏れ防止ではない。したがって,被告の主張は失当である。 被告は,原告(出願人)は,本件第5手続補正書において,特開昭61-100246号公報(乙15。以下「引用文献1」といい,引用文献1記載の発明を「引用発明1」という )について,本件特許発明と 。 引用発明1とは 「ホットメルト薄膜」を設ける点で共通することを認 ,めたのであって,引用文献1の「面状」はシート状(フィルム状)の意味であるから,ホットメルト接着剤が隙間無く連続的に形成されていることを意味すると主張する。しかし 「面状」とは「線状」に対する文 ,言であり 「面状」の意味がシート状(フィルム状)になるとの被告主 ,張は論理が飛躍している。 原告が,本件第5手続補正書において,特開昭60-173101号公報 乙16 以下 引用文献2 といい 引用文献2記載の発明を 引 (。「」,「用発明2」という )との相違点として指摘した,引用発明2において 。 は「点状に間欠的か紙おむつの長手方向に連続した線状かを想定し,腰回り方向に連続して接着することを想定していない」との意見は,本件特許発明が「ホットメルト薄膜」を使用して,体液の長手方向の漏れを防止する構成を採用しているのに対し,引用文献2では「ホットメルト接着剤が点状に間欠的か紙おむつの長手方向に連続した線状かを想定」しているから,体液は線状に塗布されたホットメルト接着剤の各線の間を抜けて長手方向に漏れることから,体液の長手方向への漏れを防止しようとする構成を採用していない点で異なっていることを示したものである。したがって,上記意見を根拠として,本件特許発明の「ホットメルト薄膜」について 「非透水性バックシート」と同様な「非透水性」 ,であるとの被告主張の解釈を導くことはできない。 )被告は 本件異議答弁書における記載等に基づき 本件特許発明の ホ c , ,「ットメルト薄膜」は「非透水性バックシート」と同様な「非透水性」である旨主張する。 しかし,被告が引用する本件異議答弁書における記載は,引用発明1がホットメルト薄膜を使用している点で本件特許発明と同様であることを述べたにすぎない。また,引用文献1に記載されたホットメルト薄膜が「不透水性被膜」であるからといって,当該「不透水性被膜」が本件明細書の「非透水性バックシート」と同様な「非透水性」機能を有するものであるとするのは論理の飛躍である。 ( ) 被告の主張2ア特許請求の範囲の記載について本件特許発明の構成要件Cには 「前記トップシートのバックシートが ,わ面において,体液吸収体端部上と発泡シート上とに跨ってその両者に固着されるホットメルト薄膜を形成し」と,構成要件Dには 「前記ホット,メルト薄膜が前記非透水性バックシートに前記腰回り方向に沿って接合され,体液の前後漏れ防止用シール領域を形成した」と記載されている。 特許請求の範囲の記載によれば,本件特許発明は,@「体液吸収体 ,」A 透水性トップシートB 非透水性バックシートC 弾性帯弾 「」, 「」, 「」(「性伸縮性の発泡シート,D「ホットメルト薄膜」の,@からDまでの 」)構成要素により構成される 「使い捨て紙おむつ」の発明である。 ,このうち,A「透水性トップシート」の「透水」とは「水がしみとおること」をいう。また 「しむ(浸む 」とは 「 液体が)ぬれとおる 」と ,),(。 いう意味である。B「非透水性バックシート」の「非透水」とは 「水が,ぬれとおらないこと」を意味している。他方 「体液の前後漏れ防止用シ ,ール領域」の「漏れ(漏る 」とは 「水や光などがすきまを通ってこぼ ),れる」ことをいい 「防止」とは「ふせぎとめること」をいう。したがっ ,て 「体液の前後漏れ防止用シール領域」の「漏れ防止」とは 「体液な , ,どがすきまを通ってこぼれることをふせぎとめること」であり 「シール,領域」とは 「体液などがすきまを通ってこぼれることをふせぎとめる領 ,域」を意味する。要するに 「漏れ防止」とは 「非透水性バックシート」 ,,の「非透水」とほぼ同義のことを意味していると解される。 ,「 」 , 構成要件Dの記載からすれば体液の前後漏れ防止用シール領域 は「ホットメルト薄膜」が「非透水性バックシート」に腰回り方向に沿って接合されることにより形成されるものであるから 「ホットメルト薄膜」 ,と「非透水性バックシート」との両者で体液が漏れるのを防止する機能を有するシール領域を形成することが要件となると解される。そうであるとすれば,構成要件C及びDの「ホットメルト薄膜」は 「非透水性バック,シート」と同様な「非透水性」であることが必須である。仮に 「ホット,メルト薄膜」が漏れを防止せず 「非透水性」でないのであれば 「ホッ , ,トメルト薄膜」の部分から漏れてしまうこととなるから 「ホットメルト,薄膜」と「非透水性バックシート」の接合部分でも漏れを防止することができないこととなり,漏れ防止機能を全く発揮することができない。 イ発明の詳細な説明の記載について)発明の詳細な説明には,次の記載がある。 a@「本発明の主たる目的は,前後漏れ防止を確実に達成できるとともに,着用感に優れた使い捨て紙おむつを提供することにある(甲。」2・3欄11行ないし13行)A「また,本発明ではホットメルト薄膜が,吸収体端部上と発泡シート上とに跨ってその両者に固着され,逆に吸収体端部上面がホットメルト薄膜により覆われるとともに,吸収体のトップシートに対する固定が図られ,かつその部分から少なくとも発泡シート上までの防漏手段とされている。したがって,吸収体の長手方向のずれを防止できるとともに,吸収体に一旦浸透した体液が長手方向に流れてその端部からトップシートから表面に滲み出すことを防止できる(3欄39。」行ないし47行)B「一旦,吸収体に吸収された尿が,幼児の動きにより吸収体が圧迫されると,逆戻り現象が生じ,この尿はトップシートを通って紙おむつの端部に至る。しかし,ホットメルト薄膜がトップシートの内面に吐着されているので,それ以上尿がトップシートを伝わることはない(3欄48行ないし4欄3行) 。」C「吸収体がトップシートに対して非固定であると,吸収体の長手方向端部において,吸収体上面とトップシートとの間に空間ができ,この空間でできた状態で排尿があると,尿が吸収体に吸収されることなくトップシートを伝わり前後漏れが生じやすい。これに対して,吸収体の端部がホットメルト薄膜によりトップシートに対して固定されていると,前記空間が生じることがなく,トップシートを伝わることによる前後洩れが防止される(4欄4行ないし11行) 。」D「第2図のように,本発明に係るシール領域(第3図の符号9で示す部分)を形成しない場合,吸収体の端縁から紙おむつの長手方向端縁に流出する体液は,発泡シートとバックシートとの間から漏れることがある。たとえば,発泡シートが液透過性である,あるいは発泡シートをその長手方向についてバックシートに対して間欠的に固定する場合などにおいては,その危険性が高い。これに対して,前記シール領域を形成すると,そもそもこのシール領域で体液の長手方向の流出を阻止するので,発泡シートの材質やそのバックシートに対する固定態様に関係なく,常に前後漏れを防止できる(4欄23行ないし。」34行)E発明の具体的構成には 「第1図および第3図は使い捨ておむつの ,第1実施例を示したもの」と記載されている(4欄38行ないし39行 。)F図面の簡単な説明には 「第1図は本発明の使い捨て紙おむつの一 ,部破断平面図,第2図はU-U線の相当部分の参考例の断面図,第3図および第4図は本発明の態様を異にするU-U線矢視図「7・」,・・ホットメルト薄膜「9・・・前後漏れ防止用シール領域」と 」,記載されている。 G第3図ないし第4図においても,ホットメルト薄膜7が隙間なしにシート状(フィルム状)に形成されている状態が明りょうに示されている。 )以上のとおり,本件特許発明において 「体液の前後漏れ防止用シーb ,ル領域」とは,ホットメルト薄膜を吸収体端部上と発泡シートに跨ってその両者に固着させることにより,吸収体端部上面をホットメルト薄膜で覆い,吸収体端部上面と透水性トップシートの間を防水し,もって,いったん透水性トップシート(ホットメルト薄膜が形成されていない部分)を通過した尿が,吸収体端部から逆流して,透水性トップシートから滲み出す逆漏れを防止するとともに(前記 )・@ないしB ,長手方a )向の流出を阻止し,発泡シートの材質,そのバックシートに対する固定態様に関係なく 常に前後漏れを防止しようとするものである 前記 ) , (a・CないしE 。)したがって 発明の詳細な説明の記載からしても 本件特許発明の ホ , ,「ットメルト薄膜」は,ホットメルト接着剤が隙間なくシート状(フィルム状)に形成され 「非透水性」の領域を形成するものであり 「体液 , ,の前後漏れ防止用シール領域」とは 「ホットメルト薄膜」と「非透水 ,性バックシート」により体液の漏れを防止する機能を有する領域を意味することは,明らかである。 ウ本件出願当初明細書について)本件出願当初明細書には,次の記載がある。 a@「さらに,吸収体3に吸収された体液が長手方向両端から漏れることを防止するために,ホットメルト薄膜7が,吸収体の端部からトップシート1と発泡シート6との間に跨って設けられており,このホットメルト薄膜7は発泡シート6をトップシート1に固着することも兼ねている。ホットメルト薄膜7に代えて,非透水性のプラスチックフィルムを使用することも可能である(乙1・5頁5行ないし12 。」行)A「他方,第3図例は,ホットメルト薄膜7を,発泡シート6と吸収体3の端との間でバックシート2に紙おむつの巾方向に連続的に溶接させてシール線部9を形成し,このシール線部9で体液の前後漏れ防止効果を高めたものである(7頁12行ないし16行) 。」,,「」ba)前記 )の@のとおり 本件出願当初明細書にはホットメルト薄膜に代えて 「非透水性のプラスチックフィルム」を使用することが記載 ,され 「ホットメルト薄膜」は「非透水性のプラスチックフィルム」と ,同様な「非透水性」の膜(フィルムないしシート)であることが具体的に記載されている。 また,前記 )のAのとおり,本件出願当初明細書には 「ホットメルa ,ト薄膜」を「非透水性バックシート」に連続的に(隙間なく)溶接させて「シール線部」を形成し,これにより体液の前後漏れ防止効果が達成されることが記載されている。 したがって,本件出願当初明細書には 「ホットメルト薄膜」が 「非 ,,透水性バックシート」と同様な「非透水性」の膜(具体的には,プラスチックフィルム)であることが記載されている。本件特許発明は,その後の補正があったとしても,本件出願当初明細書に開示された事項に限定されるのであり,前記各記載は,本件特許発明の技術的範囲の解釈にあたっては,十分に参酌されなければならない。 エ出願経過における原告(出願人)の陳述について)本件出願当初明細書には,特許請求の範囲に「ホットメルト薄膜」にa関する記載がなかった。原告は,本件第2手続補正書(乙3)で「ホットメルト薄膜」に関する記載を追加した。また,本件出願当初明細書の〔問題を解決するための手段〕の項に「ホットメルト薄膜」に関する記載を追加し 〔作用〕の項に「また,ホットメルト薄膜の存在により前 ,後漏れを防止できる 」との文を挿入した。 。 )審査官は 本件第1拒絶理由通知書 乙4 において 引用文献2 乙b ,(),(16)によれば,本件特許発明には進歩性がないと判断した。 原告(出願人)は,本件第1意見書(乙5)において,引用文献2との相違点として,次のとおり主張した。 「本願発明は,明細書記載の通り,ホットメルト薄膜により前後漏れ防止効果が一層高まる。すなわち,いったん吸収体に吸収された尿が,幼児の動きにより吸収体が圧迫されると,逆戻り現象が生じ,この尿はトップシートを通って紙おむつの端部に至る。しかし,ホットメルト薄膜がトップシートの内側に貼着されているので,それ以上尿がトップシートを伝わることはない(2頁下から2行ないし3頁7行) 。」原告は,本件第3手続補正書(乙6)により,本件出願当初明細書の〔問題を解決するための手段〕の項に「ホットメルト薄膜」に関する記載を追加し,また 「また,ホットメルト薄膜の存在により前後漏れを ,防止できる 」との内容を詳細に記載する補正をした。 。 さらに,本件出願当初明細書には実施例に関する記載が一切なかった,「()」「()」 。 のに対し実施例1及び実施例2に関する記載を追加した以上のとおり,原告は,本件第1意見書及び本件第3手続補正書において 「ホットメルト薄膜」が逆戻り現象(弾性帯が圧迫されると,尿 ,がトップシートを通って戻る現象)の防止のために重要であり 「ホッ,トメルト薄膜がトップシートの内面に貼着されているので,それ以上尿がトップシートを伝わることはない」旨強調した。 )審査官は 本件第2拒絶理由通知書 乙7 において 引用文献1 乙c ,(),(15)及び引用文献2(乙16)によれば,本件特許発明には進歩性がないと判断した。 )原告は,本件第2拒絶理由通知書に対し,本件第2意見書(乙8)にdおいて次のとおり意見を述べ,また,本件第4手続補正書(乙9)の内容を説明した。 「補正により,第1に縁の吸収体の長手方向端縁から離間した前記両シート間にあって腰回り方向に沿って弾性伸縮性の発泡シートを設けられていること,第2にホットメルト薄膜を前記吸収体の長手方向端縁と発泡シートとの間に位置において前記非透水性バックシートに接合して体液の前後漏れ防止用シール線部を形成したことが明確化されました 」。 (乙8・1頁6行ないし13行)「,( 。) , これに対して 引例発明a 被告注:引用発明2のことであるは『トップシートのバックシートがわ面において吸収体端部上と発泡シート上とに跨ってその両者に固着されるホットメルト薄膜を形成した』点において,開示も示唆もない。そこで,引例発明b(被告注:引用発明1のことである )には,この点に関する開示があるので,両発明を組 。 み合わせることで,本発明が容易に発明できたとの理由をもって,引例bが引用されたものと思料されます。しかし,引例aには,前記第1の点について開示がなく(すなわち,発泡シートは吸収体端部と重なっている ,引例bには,第2の点が開示されていません(乙8・1頁1 ) 。」4行ないし2頁6行)以上のとおり,原告は本件第2意見書において,引用発明1と本件特許発明とは 「トップシートのバックシートがわ面において吸収体端部 ,上とバックシートに固着されるホットメルト薄膜を形成した」点において,共通することを認めている。 原告は,本件第4手続補正書(乙9)において,本件出願当初明細書では実施例の一つであった第2図を 「参考例」に訂正した。また,本 ,件出願当初明細書の実施例の一つであった第5図及び第6図を削除し,従来の第7図を第5図に繰り上げ,これにより 「ホットメルト薄膜」 ,が非透水性バックシートに接合されていない実施例はすべて削除された。 )原告は,拒絶査定不服審判を請求し,本件第5手続補正書(乙10)eにおいて,引用発明1及び引用発明2について,次のとおり説明した。 「引例発明a(被告注:引用発明2のことである )は,吸収体の長手。 方向端縁とオーバーラップして弾性伸縮性の部材を,トップシートとバックシート間に設けたものである。引例発明b(被告注:引用発明1のことである )は,体液吸収体と,この縁より外方に延び着用者の腰部 。 対応位置にあって吸収体が存在しない透水性トップシートと非透水性バックシートとで構成される縁とを有する衣料において,吸収体端部上と縁間とに跨ってその両者に固着されるホットメルト薄膜を形成したものである(乙10・4頁5行ないし13行) 。」その上で,原告は,本件特許発明と引用発明1及び引用発明2との相違点について,次のとおり説明した。 「C.B項における接着が引例発明a(被告注:引用発明2のことである )では,同公報第2頁右下欄第5行〜第6行記載のように 『固定 。 ,の方法は接着剤6による点状又は線状接着が適当である』とし,点状に間欠的か紙おむつの長手方向に連続した線状かを想定し,腰周り方向に(,, 連続して接着することを想定していない点 なお 前記の記載において腰周り方向に線状と読むことは,その前の『伸長をできるだけ妨げぬ範囲内の巾で固定されている』との記載,および第2図の記載から適当ではない(乙10・5頁7行ないし16行) )。」「本願発明は,引例発明a(被告注:上記各記載を前提とすれば,引例発明bの誤記,すなわち,引用発明1のことである )のようにホット。 メルト薄膜を設けることが有効であることを前提にし,かつ弾性伸縮部,, 材を設けることを有効であるとの前提の下で その組み合わせにおいていかに前後漏れを防止するかについて考究して完成されたもので,その手段として ・・・Bホットメルト薄膜を前記吸収体の長手方向端縁と ,発泡シートとの間に位置において前記非透水性バックシートに接合して体液の前後漏れ防止用シール線部を形成すること,を構成としたものであります。かかる各引例にない構成により,前述の作用効果が奏せられるものであります(乙10・6頁9行ないし7頁7行) 。」以上のとおり,原告は本件特許発明と引用発明1とは 「ホットメル,ト薄膜」を設ける点で共通することを認めている。この引用文献1には「従来の接合のためのホットメルト塗布のように線状に塗布させるのではなく,面状に塗布される(乙15・3頁左上欄12行ないし13 。」行)と記載されている。ここでいう「面状」とは膜(シートないしフィルム ,シート状のことであり,ホットメルト接着剤が隙間なく連続的 )に形成されていることを意味する。 他方,原告は,引用発明2とは 「点状に間欠的か紙おむつの長手方 ,向に連続した線状かを想定し,腰周り方向に連続して接着することを想」 。 定していない 点が本件特許発明との相違点であることを強調している,,「」 , したがって 原告が 本件特許発明における ホットメルト薄膜 はホットメルト接着剤が隙間なくシート状(フィルム状)に形成されている状態を指していることは明らかである。 ,「」,f)特許庁は 本件特許発明について 発明の構成が不明瞭 であるため特許法36条3項及び4項に規定する要件を満たさない旨の本件第3拒絶理由通知書を発送した。 その際,原告は,本件第6手続補正書(乙11)により,本件出願当初明細書に記載されていた「ホットメルト薄膜7に代えて,非透水性のプラスチックフィルムを使用することも可能である 」との記載を削除。 した。しかし,これにより本件特許発明の技術的範囲が拡張されるものではない。 )原告(出願人)は,本件異議答弁書(乙13)において,次のとおりg主張した。 @本訴における引用文献1について「また,前記記載と重複するが本願発明の構成要件Eに関しては,甲第2号証(被告注:引用文献1である )中には『前記ホットメル 。 ト薄膜が前記透水性バックシート(被告注: 前記不透水性バックシ 「ート」の誤記と思われる )に前記腰回り方向に沿って接合され,体 。 液の前後漏れ防止用シール領域を形成した』構成については開示されているが・・・ (乙13・5頁8行ないし11行) 」「本願発明の要旨を概略すると,本願発明は前後漏れ防止の観点より甲第2号証に記載されるようなホットメルト薄膜を設けることが有効であることを前提とし,かつ着用感の向上性の観点より発泡性の弾性シート部材を設けることが有効であるとの知見の下,それらの組合せにおいて,いかにして両者の欠点を補うように組み合わせるかの点を考究してなされたものである。すなわち,弾性伸縮部材として発泡性シートを用いた場合には,発泡性シートが液透過性であるとか発泡シートをその長手方向に間歇的に固定した場合には発泡シートとバックシートとの間から体液が漏れ出す危険性がある。そのため,本願発明は発泡シートと吸収体との離間部分にシール線部を形成して前後漏れを完全に防止するようにしたものである。逆説的に言うと,前記シール線部を形成したため,弾性部材として発泡性シートを用いることが可能となっている ・・・このように,本願発明は両者の巧みな組 。 合せによりそれぞれの欠点を補うように構成され」ている(5頁20行ないし6頁8行 。)A特開昭61-207605号公報(乙17。以下「引用文献3」といい,引用文献3記載の発明を「引用発明3」という )について。 「甲第1号証(被告注:引用文献3である )における漏れ防止用 。 シールは,同号証の第11図から明らかなように,透液性のトップシートと不透液性のバックシートとを腰部回りに単に接合したシール構造であり,両シートが連続的に腰回りの方向に接合されている点で,逆に言うと両シート間に開口が形成されていない構成をもってシール構造としただけであり,該腰部において透液性トップシートに対しては何ら不透水処理が行われておらず,依然として吸収体に吸収された体液が吸収体の長手方向端部より滲み出し透液性のトップシートを通過して外部に漏れ出す問題を解決するものではない(3頁21行。」ないし28行)「これに対して,本願発明における漏れ防止用シールとは,腰部縁において透液性トップシートの内面側にホットメルト塗膜が形成されるとともに,弾性帯と吸収体端縁との離間位置において不透液性のバックシートと腰回りの方向に接合される構成をもって漏れ防止用シート(被告注: 漏れ防止用シール」の誤記と思われる )とするもの 「 。 である。すなわち,本願の漏れ防止用シールの場合には,ホットメルト塗膜により不透水とされるトップシート部分と素材的に不透水のバックシートとにより横V字状に不透水性のポケットが形成されるため,吸収体に吸収された体液が端部より滲み出すのを防止する。というものであり,甲第1号証記載のシール構造とはその作用および機能をまったく異にするものである(3頁28行ないし4頁7行 。 。」 )B引用文献1には,次の記載がある。 「上記表面シートとバックシートとの一体的接合部分から吸収体上に臨む位置に亘って延在するホットメルト不透水性被膜を形成したことを特徴とする吸収性物品(乙15・1頁左欄11行ないし14 。」行)「ホットメルトを面状に塗布することによりこの部分を不透水化することを特徴とする吸収性物品の製造方法(1頁右欄4行ないし 。」7行)「前記透水性シートの吸収体面側表面に適宜長さと幅を有するフィルム状の溶融合成樹脂を塗布して前記透水性シートに不透水性を付与したもの (2頁左下欄4行ないし6行) 」「本発明によれば ・・・透水性表面シートの吸収体側表面に溶融 ,合成樹脂が塗布され,この領域に不透水性の被膜が形成される(2。」頁左下欄12行ないし18行)「この部分において,吸収体に吸収されている体液が逆流するのが防止されるとともに,吸収性物品の長手方向端部から体液が洩れるのも防止される(2頁左下欄21行ないし右下欄3行) 。」「おむつ1の幅方向において,ホットメルト被膜6は必らずしも上記腰まわり部分の全域に亘って形成する必要はなく,少なくとも洩れ。, の生じ易いおむつ1の幅方向中央部分のみに形成してもよい ただし従来の接合のためのホットメルト塗布のように線状に塗布されるのではなく,面状に塗布される。このホットメルト被膜6は,透水性シート3に不透水性を賦与するためのもので」ある(3頁左上欄7行ないし15行 。)「本発明によれば,従来,約40μ厚のパラフィンシート等の防水材を使用していたところを,10〜25μ程度のホットメルト被膜形成により同等の洩れ防止効果を達成できる (4頁左上欄2行ないし 」5行)C以上のとおり 本件異議答弁書における引用文献1に関する原告 出 , (),「 」 願人 の主張からすれば 引用文献1の ホットメルト不透水性被膜が本件特許発明の ホットメルト薄膜 に該当し 本件特許発明の ホ 「」,「ットメルト薄膜」が引用文献1に開示されているように,溶融合成樹脂,パラフィンシートなどの防水材のような「非透水性」の素材を,面状,すなわちシート状に塗布するものであり,約40μ厚のパラフィンシート等の防水材と同等の漏れ防止効果を達成するものであることは明らかである。 また,本件異議答弁書における引用文献3に関する原告(出願人)の主張からすれば,本件特許発明の「ホットメルト薄膜」は 「非透,水性バックシート」と同様な「非透水性」であり 「ホットメルト薄,膜」と「非透水性バックシート」とにより,両者の接合面を頂点として「横V字状に不透水のポケット」を形成するものであることは明らかである。 さらに,引用文献3の「透液性トップシート」には不透水処理がなされていないため,いったん吸収体に吸収された体液が吸収体端部から逆流して,透液性のトップシートを通過することを原因とする逆漏れを防止することはできないのに対し,本件特許発明の「漏れ防止用シール」は,上記のようなトップシートからの逆漏れを防止する機能を果たすものでなければならないことは明らかである。 オ被告製品との対比について以上のとおり,本件特許発明の構成要件Dは 「ホットメルト薄膜」が ,「非透水性バックシート」に接合されることにより,両者で「体液の前後漏れ防止用シール領域 を形成することが要件と解される すなわちホ 」 。,「ットメルト薄膜」と「非透水性バックシート」との間で「体液の前後漏れ防止用シール領域」が形成されるのであり,そのためには 「ホットメル,ト薄膜」は 「非透水性バックシート」と同様な「非透水性」であること ,が必要である。 被告製品において,ホットメルト接着剤が追加塗布されている背中部分,「」, (, 及び腹部分は非透水性 ではなく トップシートの中央部分 原告は「」 。) この部分に ホットメルト薄膜 が形成されているとは主張していないと同程度の高い透水性を有しており,体液の前後漏れ防止機能を有するものではない(乙20 。)被告製品に形成されたホットメルト接着剤は 「吸収体に吸収された体 ,液が吸収体の長手方向端部より滲み出し透液性のトップシートを通過して外部に漏れだす問題を解決するもの」ではなく,この点において,原告が本件特許発明と「その作用および機能を全く異にする」と本件異議答弁書で認めた,引用文献3と何ら変わりはない。 よって,被告製品は,構成要件C及び構成要件Dを充足しない。 カ原告の主張に対する反論について)「薄膜」とは,薄い「膜」である 「膜」とは 「物の表面を覆う薄いa 。,」,「」,「 。」 皮 であり覆う とは布などをすっぽりとかけて見えなくすることである。 したがって,ホットメルト「薄膜」とは,ホットメルト接着剤が隙間なく連続的に形成されている状態を指すものと解するのが相当である。 本件明細書の図2ないし4においても,ホットメルト薄膜7が隙間なしに連続的に形成されている状態が明瞭に示されている。 これに対し,被告製品においては,尿を吸収する面である透水性トップシートを他の部材と固定するために,透水性トップシートの裏面(体液吸収体,弾性体側)にホットメルト接着剤を塗布している。ホットメルト接着剤は透水性トップシート裏面の全面に塗布され,さらに追加で背部と腹部の両端部に塗布されている。しかし,被告製品においては,ホットメルト接着剤が追加塗布された背中部分と腹部分においても,ホットメルト接着剤は散点状又はストライプ状に隙間をもって塗布されており,隙間のないシート状(フィルム状)の「薄膜」は存在しない(乙20,21,25ないし27,検乙1,2 。))原告の主張からすれば,被告製品のトップシートの背部と腹部の両端b部にホットメルト接着剤を追加で塗布した部分だけではなく,中央部分も,本件特許発明の「ホットメルト薄膜」を形成していることになる。 すなわち,被告製品のトップシートの両端部と中央部分とでは,ホットメルト接着剤の塗布量が異なるだけであり,ホットメルト接着剤の形成状態に明確な相違があるわけではない。したがって,原告の「ホットメルト薄膜」の解釈によれば,被告製品はトップシートの中央部分を含む全体に「ホットメルト薄膜」が形成されていたことにならざるを得ない。そうすると,被告製品のトップシートの全体が「体液の前後漏れ防止用シール領域を形成」する「ホットメルト薄膜」により覆われることにより,トップシートが「非透水性」となってしまうから,被告製品は「透水性トップシート」を有しないこととなり,本件特許発明の技術的範囲に属するものでないことになる。 )原告は,特許請求の範囲,発明の詳細な説明には 「ホットメルト薄c ,」 ,, 膜 が非透水性バックシートと同義と記載されておらず 出願経過から「」 ,「 」 前後漏れ とは長手方向の漏れを意味しシートの厚み方向の漏れではないと主張する。 , 。 しかし 被告製品は体液の長手方向への漏れを防止するものでもない原告は被告製品が体液の長手方向への漏れを防止する効果を奏することを示す証拠として,甲7及び甲14を提出するが,甲7及び甲14の実験は,被告製品が体液の長手方向への流出防止の作用効果を奏すること。 , の根拠とはならない 甲7及び甲14の試料2について得られた結果はたとえ,構成要件Cの「ホットメルト薄膜」が存在しなくても,また,構成要件Dの「体液の前後漏れ防止用シール領域」が存在しなくても,同様の結果が得られるのであり,被告製品が構成要件C及びDを充足することを示すものではない。すなわち,試料1では透水性トップシートが非透水性バックシートに接着されているため,透水性トップシートが透水性とはいえ,何もない試料2の場合よりも,特定の条件下において人工尿の流出が多少遅延しただけであり,透水性トップシートの裏面に「ホットメルト薄膜」及び「体液の前後漏れ防止用シール領域」が存在していることを示すものではない。 また,甲7及び甲14は,人工尿210tをMサイズの被告製品に注入した場合の結果を示したものにすぎず,他の条件によってどのような結果が生じるかは全く不明である。 3争点2-2(被告製品の弾性帯が「体液吸収体の長手方向縁と離間 (構成」要件B及びD)しているか)について( ) 原告の主張1被告は,被告製品には,弾性帯が「体液吸収体の長手方向縁と離間」していないものがあると主張する。しかし,このような構成の製品は存在しないので,被告の主張は失当である。 ( ) 被告の主張2ア弾性帯4は,透水性トップシート1と非透水性バックシート2との間に介在しているが,体液吸収体3の長手方向縁と離間しないで,接触又は重合している場合がある(被告物件目録U(4。))また,ホットメルト接着剤5は弾性帯4又は体液吸収体3に接合し,非透水性バックシート2に接合しない場合がある(被告物件目録図3 。)よって,被告製品は,本件特許発明の構成要件B及びDを充足しない。 イ被告製品の製造工程において,弾性帯と吸収体が接触あるいは重なる可能性は十分にある。このような製品であっても,特に問題なく使用できるので 現に製品として出荷されている このことは 被告製品において 体 , 。,「液の前後漏れ防止用シール領域」を形成することが設計上全く考慮されておらず,弾性帯と体液吸収体が離間しているか否かが重要でないことを示すものである。 4争点3(本件特許発明が特許法29条2項に違反しているか)について( ) 被告の主張1本件特許発明は,本件特許発明の出願日の前に公開された引用文献1(乙15)に記載された引用発明1と,引用文献2(乙16)に記載された引用発明2を組み合わせることにより,当業者が容易に想到できたものである。 したがって,本件特許発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから(特許法123条1項2号 ,特許権者である原告は,被告 )に対しその権利を行使することができない(特許法104条の3第1項 。)ア本件特許発明は,次のとおり分説できる(本件特許発明と引用発明1との間の一致点及び相違点を理解しやすくするため,構成要件BないしDの分説を細分化したものである。。)A@体液吸収体と,透水性トップシートと,非透水性バックシートとを有し,前記透水性トップシートと非透水性バックシートとの間に前記体液吸収体が介在されており,A前記体液吸収体の長手方向縁より外方に延びて前記透水性トップシートと前記非透水性バックシートとで構成されるフラップにおいて腰回り方向に弾性帯を有する使い捨て紙おむつにおいて,B@前記弾性体は弾性伸縮性の発泡シートであり,Aこの発泡シートが前記透水性トップシートと前記非透水性バックシ, , ートとの間に介在され 前記体液吸収体の長手方向縁と離間しておりC@前記トップシートのバックシートがわ面において ・・・ホットメ,ルト薄膜を形成し,A前記ホットメルト薄膜は,体液吸収体端部上と発泡シート上とに跨ってその両者に固着され,D@前記離間位置において,A前記ホットメルト薄膜が前記非透水性バックシートに前記腰回り方向に沿って接合され,体液の前後漏れ防止用シール領域を形成したことEを特徴とする使い捨て紙おむつイ引用文献1(乙15)には,次の記載がある。 )特許請求の範囲a「基本的には,透水性の表面シートと不透水性のバックシートと両シート間に介装される吸収体とから構成され,長手方向両端部において表面シートとバックシートが一体的に接合される吸収性物品において,上記透水性表面シートの吸収体側表面上の,上記吸収性物品の少なくとも幅方向中央領域に,上記表面シートとバックシートとの一体的接合部分から吸収体上に臨む位置に亘って延在するホットメルト不透水性被膜を形成したことを特徴とする吸収性物品(請求項(1 )。」)「・・・上記長尺の透水性表面シートの,吸収体と接触すべき側の表面において,透水性表面シートの少なくとも幅方向中央部分に,上記吸収体の断位置となるべき部分から上記吸収体上に臨む所望位置となるべき部分にかけて,ホットメルトを面状に塗布することによりこの部分を。」(()) 不透水化することを特徴とする吸収性物品の製造方法請求項 2)発明の詳細な説明b@「本発明は吸収体と該吸収体の上面に位置する透水性シートと吸収体の下面に位置する液不透過性シートとからなる体液吸収性物品において,該物品の長手方向両端部の前記透水性シートの吸収体面側表面に適宜長さと幅を有するフィルム状の溶融合成樹脂を塗布して前記透水性シートに不透水性を付与したもので,このように形成された不透水性領域の一端部を前記不透水性シートと一体に接合するとともにこの不透水性領域の他端部を前記吸収体上に位置させたことを特徴とするものである(2頁右上欄末行ないし左下欄10行) 。」A「 作用)上記したように,本発明によれば,使い捨ておむつ,生 (理用ナプキン等の体液吸収用の吸収性物品において,吸収性物品の長手方向両端部の表裏面シート接合部から吸収体上に臨む位置に亘って,透水性表面シートの吸収体側表面に溶融合成樹脂が塗布され,この領域に不透水性の被膜が形成される。したがって,従来のように肌ざわりを悪化させる洩れ防止材を使用せずとも,この吸収性物品の着用者が俯いてあるいは仰いて横臥する姿勢をとっても,この部分において,吸収体に吸収されている体液が逆流するのが防止されるとともに,吸収性物品の長手方向端部から体液が洩れるのも防止される 」。 (2頁左下欄11行ないし右下欄3行)B「本実施例によれば,おむつ1の長手方向両端部すなわち着用時腰まわり部に位置する,透水性表面シート3の吸収体側表面に,長さlに亘ってホットメルト被膜6が形成されている ・・・ホットメル1 。 ト被膜6は・・・従来の接合のためのホットメルト塗布のように線状に塗布されるのではなく,面状に塗布される(2頁右下欄18行。」ないし3頁左上欄13行)C「このホットメルト被膜6は,透水性シート3に不透水性を賦与するためのもので,市販のホットメルトを使用することができる(3。」頁左上欄14行ないし16行)「 , 。」 D合成樹脂被膜6の厚みとしては 10〜25μ程度で十分である(3頁左上欄18行ないし20行)E「 ホットメルト被膜6は )一般には,1〜3p程度吸収体8上 (,に重量されるのが好ましい(3頁右上欄16行ないし17行) 。」F「本発明によれば,従来,約40μ厚のパラフィンシート等の防水材を使用していたところを,10〜25μ程度のホットメルト被膜形成により同等の洩れ防止効果を達成できる (4頁左上欄2行ないし 」5行)ウ本件特許発明1と引用発明1とを対比すると,次のとおりである。 )構成要件A@a引用文献1の特許請求の範囲(1)項には 「基本的には,透水性の ,表面シートと不透水性のバックシートと両シート間に介装される吸収体とから構成され,長手方向両端部において表面シートとバックシートが一体的に接合される吸収性物品」と記載されている。 引用発明1と本件特許発明とを対比すると,引用発明1の「透水性の表面シート「不透水性のバックシート「両シート間に介装される 」, 」,吸収体」は,本件特許発明の「透水性トップシート「非透水性バッ」,クシート ,前記透水性トップシートと非透水性バックシートとの間に 」介在されている「体液吸収体」に,それぞれ相当する。 したがって,引用文献1には構成要件A@が記載されている。 )構成要件Cb引用文献1の特許請求の範囲(1)項には 「上記透水性表面シート ,の吸収体側表面上の,上記吸収性物品の少なくとも幅方向中央領域に,上記表面シートとバックシートとの一体的接合部分から吸収体上に臨む位置に亘って延在するホットメルト不透水性被膜を形成した」と記載されている。 引用発明1と本件特許発明とを対比すると,引用発明1の「上記透水性表面シートの吸収体側表面上「ホットメルト不透水性被膜」は, 」,本件特許発明の「吸収体上に臨む位置に亘って延在する(ホットメルト不透水性被膜「体液吸収体端部上・・・に固着させる(ホットメル )」,ト薄膜 」に相当する。)したがって,引用文献1には,構成要件C@が記載されている。 )構成要件Dc引用文献1の特許請求の範囲(1)項には 「上記表面シートとバッ ,クシートとの一体的接合部分から吸収体上に臨む位置に亘って延在するホットメルト不透水性被膜を形成した」との記載がある。さらに,引用文献1の発明の詳細な説明には,前記イ・ )@Aの記載がある。 b, , 引用発明1の体液吸収性物品においては フィルム状の溶融合成樹脂例えばホットメルト樹脂を吸収体面側表面に塗布して薄膜を形成して不透水性とした透水性の表面シートを不透水性のバックシートと一体に接合するとともに,不透水性領域の他端部を吸収体上に位置させることによって,吸収性物品の長手方向端部からの体液の漏れ,すなわち体液の前後漏れが防止される構造となっており,体液の前後漏れ防止用シール領域が形成されている。 また 「本実施例によれば,おむつ1の長手方向両端部すなわち着用 ,時腰まわり部に位置する,透水性表面シート3の吸収体側表面に,長さl に亘ってホットメルト被膜6が形成されている(2頁右下欄181 。」行ないし3頁左上欄1行)との記載から,引用文献1のホットメルト被膜6は腰回り方向に形成されていると解することができる。 そうすると,引用文献1に記載の体液吸収性物品においては,ホットメルト薄膜が不透水性のバックシートに腰回り方向に沿って接合され,体液の前後漏れ防止用シール領域が形成されていることになるから(引用文献1の第2図の符号「6a」の部分 ,引用発明1の「上記表面シ )ートとバックシートとの一体的接合部分から・・・延在するホットメルト不透水性被膜を形成した」ことは,本件特許発明の「ホットメルト薄膜が前記非透水性バックシートに前記腰回り方向に沿って接合され,体液の前後漏れ防止用シール領域を形成した」ことに相当する。 したがって,引用文献1には,構成要件DAが記載されている。 )構成要件Ed引用文献1の発明の詳細な説明には,同発明が「使い捨て紙おむつ」に関する発明である旨の記載がある。 エ本件特許発明と引用発明1との相違点本件特許発明と引用発明1とは 「体液吸収体と,透水性トップシート ,と,非透水性バックシートとを有し,前記透水性トップシートと非透水性バックシートとの間に前記体液吸収体が介在されており「前記トップ,」,シートのバックシートがわ面において,体液吸収体端部上に固着されるホットメルト薄膜を形成し,さらに「前記ホットメルト薄膜が前記非透 ,」水性バックシートに前記腰回り方向に沿って接合され,体液の前後漏れ防止用シール領域を形成したことを特徴とする使い捨て紙おむつ」との点で一致する。 一方,本件特許発明は,)体液吸収体の長手方向縁より外方に延びて透水性トップシートと非a1透水性バックシートとで構成されるフラップにおいて腰回り方向に,弾性帯を有していること(構成要件AA))前記弾性帯が,弾性伸縮性の発泡シートからなること(構成要件Ba2@))前記発泡シートが透水性トップシートと非透水性バックシートとの間bに介在され,前記体液吸収体の長手方向縁と離間していること(構成要件BA))前記ホットメルト薄膜が,トップシートのバックシートがわ面においcて,体液吸収体端部上と発泡シート上とに跨ってその両者に固着されていること(構成要件CA)という構成を有するのに対し,引用文献1には,上記各構成が記載されていない点で相違する。 なお,発泡シート(弾性帯)が体液吸収体の長手方向縁と離間しており構成要件BAホットメルト薄膜が体液吸収体端部上と発泡シート 弾 (), (性帯)上とに跨ってその両者に固着されており(構成要件CA ,ホット)メルト薄膜による「体液の前後漏れ防止用シール領域」が形成されている場合は(構成要件DA ,その位置は必然的に「離間位置」となるから, ),「 」 本件特許発明の進歩性判断に際して体液の前後漏れ防止用シール領域が形成される位置を独立して論ずる必要はない。そもそも,構成要件D@は,前記離間位置において「体液の前後漏れ防止用シール領域」が形成されることを叙述する記述である。 オ引用文献2(乙16)には,次の記載がある。 )特許請求の範囲a「液透過性のトップシート,液不透過性のバックシート,前記両シートの間に位置する吸収体およびつかいすておむつを装着するための係止具を有する実質的に長方形のつかいすておむつにおいて,バックシートに対し少なくとも1つの短辺側端部に近接する横手方向に通気性かつ伸縮性帯状部材(3)が取り付けられていることを特徴とするつかいすておむつ(請求項1)。」「通気性かつ伸縮性帯状部材がバックシートのウエスト部を覆う位置に設けられている特許請求の範囲第1項記載のつかいすておむつ(請。」求項2))発明の詳細な説明b@「本発明はウエスト部モレ防止及びウエスト部のフィット性を向上させた構造を有するつかいすておむつに関する(1頁右欄10行。」ないし12行)A「本発明者らは ・・・バックシートに対しその横手方向に柔らか ,く,弾性を有する比較的幅広い,不織布状の通気性をともなった伸縮性部材を取りつけることにより,おむつのウエスト部を柔らかく,しかも比較的広い圧接面積で密着させたテープの着脱に際し,バックシートと一体となって伸縮し,着脱を容易にし,ウエスト部のモレ・・。」 ・を有効に防止することができることを見いだし本発明に到達した(2頁左上欄20行ないし右上欄10行)B「本発明の伸縮性部材がウエスト部に有効に働くためには吸収体と重ならない部分が20o以上の巾であることが好ましい。但し伸縮性部材の一部が吸収体と重なっていてもよい(2頁右上欄20行な 。」いし左下欄3行)C「このおむつは第2図,第3図から明らかなように通気性かつ伸縮性帯状部材(不織布状弾性体)3が,トップシート1とバックシート4との間で吸収体上部係止具(テープ)5側に位置し,バックシート4の横手方向に沿って吸収体2に重ならない部分が20o以上の巾であるか,吸収体2との重なり部分が少なくとも横手方向において不織布状弾性体3の伸張をできるだけ妨げぬ範囲内の巾で固定されている(2頁左下欄16行ないし右上欄5行) 。」D「・・・又,かかる効果的な構成のためには吸収体を伸縮性部材からある程度遠ざけることも必要である。吸収体に重ならない部分の巾が20o以上であると吸収体を壊すことなく伸縮性部材が伸縮し,かつおむつウエスト部を着用者の肌に密着させることができ効果的である(3頁左欄18行ないし右欄4行) 。」(。「」 カ )特開昭58-115107号公報乙22以下引用文献4-1aという )には,図10,図11の他に,次の記載がある。 。 @「 20)特許請求の範囲第1項記載の使い棄ておむつであって, (ウエストシールと股部シールに接して置かれた伸縮発泡材料を備えている使い棄ておむつ(2頁右上欄9行ないし12行) 。」A「身頃のおのおのには着用者の肌に触れる面シートと,吸収パッドと不透水性の裏地シートがあり,対になった伸縮片は身頃の両側に取付けられる1対の伸縮片はウエストシールに供され,かつ着用者におむつを適合させるためのウエストバンドとなっている(2頁右下。」欄4行ないし9行)B「対になっている伸縮片22,24および26,28はヒートシールし ・・・高温溶融接着剤・・・によって裏地シート12に接合さ ,れる(3頁左上欄15行ないし18行) 。」C「第11図の如く発泡材76,78はウエスト部分と裾口に当てられている(3頁左下欄13行ないし15行) 。」D「 図面の簡単な説明 ・・・第11図は発泡材をつけた他の実施 〔〕例を示す図である(3頁右下欄15行ないし16行) 。」)特開昭51-66055号公報(乙23。以下「引用文献4-2」とbいう )には,第14図ないし第16図等の図面の他に,次の記載があ 。 る。 @「本発明は吸収性物品に関し,特に使い棄ておむつに関するものである(1頁右欄12行ないし13行) 。」A「本発明の第15図及び第16図の実施例では,弾性気泡帯片61は両端部63をテープフアスナー42の固着部43の接着剤で保持し,且弾性帯片をフラップ48の裏側の面30の上に渡している 」。 (5頁左下欄13行ないし右下欄2行)B「61・・・弾性気泡帯片 (9頁右下欄9行ないし10行) 」キ引用発明1と引用発明2との組合せについて)相違点)についてaa1引用発明2の特許請求の範囲1項には 「バックシートに対し少なく ,とも1つの短辺側端部に近接する横手方向に通気性かつ伸縮性帯状部材(3)が取り付けられていることを特徴とするつかいすておむつ 」と。 記載されている。また,特許請求の範囲2項には 「通気性かつ伸縮性,帯状部材がバックシートのウエスト部を覆う位置に設けられている特許請求の範囲第1項記載のつかいすておむつ 」と記載されている。 。 引用文献2の「実質的に長方形のつかいすておむつにおいて,バックシートに対し少なくとも1つの短辺側端部に近接する横手方向」の部分及び「バックシートのウエスト部を覆う位置 (引用文献2の第1図の 」符号3参照)は,本件特許発明の「前記体液吸収体の長手方向縁より外方に延びて前記透水性トップシートと前記非透水性バックシートとで構成されるフラップ」に相当する。 )相違点)についてba2引用発明2の「伸縮性帯状部材(3 」は,本件特許発明の「弾性伸 )縮性の発泡シートからなる弾性体」に相当する。 仮に 「伸縮性帯状部材(3 」が「発泡シート」と異なるとしても, ,)本件特許出願前において,使い捨ておむつの業界において,着用時の腰回りに使用する伸縮性帯状部材として,発泡シート(発泡体)を用いることは,周知慣用技術であった(引用文献4-1・2 。)したがって,相違点)は,引用文献2に記載されているか,少なくa2とも,本件特許出願当時における周知慣用技術に基づけば実質的な相違とはいえないものである。 )相違点 )についてcb@引用文献2の特許請求の範囲1項には 「バックシートに対し少な ,くとも1つの短辺側端部に近接する横手方向に通気性かつ伸縮性帯状部材(3)が取り付けられている」旨が記載されている。また,発明の詳細な説明には 「伸縮性部材・・・は吸収体と重ならない部分が ,20o以上の巾であることが好ましい。但し伸縮性部材の一部が吸収体と重なっていてもよい 」と記載されている。この記載は,両者が 。 重ならない構成が好ましいことを意味しているから,本件特許発明の「弾性帯は・・・体液吸収体の長手方向縁と離間して」いる構成を開示している。 したがって,相違点 )は,引用文献2に記載されている。 bA原告は,引用発明2は,吸収体2と不織布状弾性体3とが一部において重なっている(オーバーラップしている)ことを前提としていると主張する。 引用発明2において,吸収体(表面)を構成する材料は,不織布などの他の材料と比較してゴワゴワしており伸縮性に乏しいものであるため,不織布などの弾性伸縮部材と吸収体がオーバーラップしている部分は弾性伸縮部材の伸縮が阻害されるため,弾性伸縮部材の伸縮性が有効に働くためには,吸収体と重ならない面積が広いことが好ましく,このことは,引用文献2においても「本発明の伸縮性部材がウエスト部に有効に働くためには吸収体と重ならない部分が20o以上の巾であることが好ましい 」と記載されている。 。 以上のとおり,伸縮性部材がウエスト部に有効に働くためには,弾。, 性伸縮部材が吸収体とオーバーラップしないことが好ましい そして「伸縮性部材の一部が吸収体と重なっていてもよい」場合には,オーバーラップしている部分は弾性伸縮部材の伸縮が阻害されることを考慮して 「伸縮性帯状部材(不織布状弾性体)3が ・・・横手方向 , ,に沿って吸収体2に重ならない部分が20o以上の巾であるか,吸収体2との重なり部分が少なくとも横手方向において不織布状弾性体3の伸張をできるだけ妨げぬ範囲内の巾で固定されている 」と記載さ。 れている。 すなわち,両者の「重ならない部分が20o以上の巾である」との記載は,当然のことながらオーバーラップは存在せず,重ならない部分がウエスト部にフィットして充分に伸縮するため,伸縮性部材がウエスト部に有効に働くものであるか,または,オーバーラップが存在している場合でもその重なり部分が充分に小さく 「不織布状弾性体,3の伸張をできるだけ妨げぬ範囲内の巾」であり,オーバーラップしている部分によって弾性伸縮部材の伸縮が阻害される程度は小さいため,伸縮性部材がウエスト部に有効に働くものであることを示すものである。 さらに,引用文献2における 「かかる効果的な構成のためには吸 ,収体を伸縮性部材からある程度遠ざけることも必要である 」等の記。 載は,伸縮性部材が吸収体と重なっていない構成を前提とした記載である。 ,, 。 以上のとおり 引用発明2は 構成要件BAの構成を開示している原告は 「吸収体2に重ならない部分が20o以上の巾であるか, ,吸収体2との重なり部分が少なくとも横手方向において不織布状弾性体3の伸張をできるだけ妨げぬ範囲内の巾で固定されている」という記載を捉えて,不織布状弾性体3が吸収体2と離間しているものと開示しているとは到底読めないと主張する。しかし,上記記載は「伸縮性部材の一部が吸収体と重なっていてもよい」旨の記述を受けて,その場合には,オーバーラップしている部分は弾性伸縮部材の伸縮が阻害されることを考慮すべきことを具体的に説明したものであり,常にオーバーラップしていることを示した記載ではない。 同様に 「ここで重要なことは伸縮性部材が吸収体に重ならない部 ,分の巾と,それと一体となっておむつを構成するバックシートの横手方向の伸びである」という記載部分も 「伸縮性部材の一部が吸収体 ,と重なっていてもよい」旨の記述を受けて,その場合には,オーバーラップしている部分は弾性伸縮部材の伸縮が阻害されることを考慮すれば,バックシートが少なくとも20%の伸びを有することが好ましいことを記述しているものであり,常にオーバーラップしていることを示した記載ではない。 )相違点 )についてdc@引用発明1は 「長手方向端部からの体液の洩れを防止」するとい ,う課題を解決するために 「 透水性の)表面シートと(不透水性の) ,(バックシートとの一体的接合部分から吸収体上に臨む位置に亘って延」 。 在するホットメルト不透水性被膜を形成 することを要旨としているすなわち,吸収性物品(おむつ)の「着用者が俯いてあるいは仰いて横臥する姿勢をとっ」た場合に 「吸収体に吸収されている体液が ,逆流」したり 「吸収性物品の長手方向端部から体液が洩れ」たりす ,るという問題がある。引用発明1は,吸収体シートと該吸収体の上面に位置する透水性シートと吸収体の下面に位置する液不透過性シートとからなる体液吸収性物品において,該物品の長手方向両端部の前記透水性シートの吸収体面側表面に適宜長さと幅を有するフィルム状の溶融合成樹脂を塗布して前記透水性シートに不透水性を付与したもので,このように形成された不透水性領域の一端部を前記不透水性シートと一体に接合するとともにこの不透水性領域の他端部を前記吸収体上に位置させ,もって,上記課題を解決したものである。 したがって,引用発明1に引用発明2を組み合わせて,おむつの腰回りに発泡シートからなる弾性帯を設けた場合には 「長手方向端部,からの体液の洩れ防止」という上記課題を解決するためには 「ホッ,」 , トメルト不透水性被膜 が存在する領域を弾性帯上まで延長した上で「ホットメルト不透水性被膜」と「不透水性シート」とを一体に接合することが不可欠であるから,引用発明1と引用発明2を組み合わせて,おむつの腰回りに発泡シートからなる弾性帯を設けた場合には,「ホットメルト不透水性被膜」が存在する領域を弾性帯上まで延長することは,当業者が容易になし得ることである。 したがって,引用発明1と引用発明2を組み合わせた場合には,相違点 )の構成を採用することは当業者が当然に行う設計事項にすぎcない。 A原告は,引用発明1はトップシートをバックシートに固定するものであるのに対し,引用発明2はトップシートを伸縮性帯状部材3に固定しないものであるとして,両発明を組み合わせる動機付けや契機はないと主張する。 まず,引用文献2における,伸縮性帯状部材3がバックシートに固定されていることを開示する旨の記載は,伸縮性帯状部材3がトップシートに固定されていないことを開示する記述ではない。 次に,引用文献2において実施例として記載されている態様は,吸収体2と不織布状弾性体3との間に「離間」が存在しない場合を例に挙げて説明しており,吸収体2と不織布状弾性体3との間の位置において,ホットメルト薄膜により,トップシートとバックシートを接合して「体液の前後漏れ防止用シール領域」を形成することは物理的に不可能である。しかし,引用文献1には,構成要件C@及びDAが記載されているのであって,引用発明2において,吸収体2と不織布状弾性体3との間に「離間」が存在する場合に,引用発明1と組み合わ, (), せれば 吸収体2と不織布状弾性体3との間の 離間 位置においてホットメルト薄膜でトップシートとバックシートが接合された「体液の前後漏れ防止用シール領域」を形成することについては,何らの困難性も認められない。 以上述べたとおり,引用発明2において (吸収体2と不織布状弾 ,性体3との間に「離間」が存在しない場合には,構成要件DAの「体液の前後漏れ防止用シール領域」を形成することは物理的に不可能であるが ,吸収体2と不織布状弾性体3との間に「離間」が存在する )場合は,構成要件DAの「体液の前後漏れ防止用シール領域」を形成することに何らの阻害要因もないのである。 )ホットメルト薄膜がバックシートと離間位置において固着することにeついて「伸縮性部材」の厚さは通常約2o程度と極薄い。しかも,引用文献1に基づき使い捨て紙おむつを製造する場合には,トップシートのバックシート側にホットメルトを塗布する工程の後に,トップシートと他の部材を接合するために上下方向からローラーで押圧するので(乙15・,), 3頁左下欄の下から3行ないし右下欄16行 第5図及び第6図参照伸縮性部材と体液吸収体間に塗布されたホットメルトは必然的にバックシートに固着されるのである。むしろ,ホットメルトがバックシートと固着しないように製造することは不可能である。 , ,, したがって 引用発明1と引用発明2を組み合わせれば その構成は必然的に「離間位置」においてホットメルトがバックシートと固着する構成となる。 )引用発明1と引用発明2を組み合わせることの容易性についてf引用発明1は,引用文献1の発明の詳細な説明中の 「着用者が俯い,てあるいは仰いて横臥する姿勢をとっても,この部分において,吸収体に吸収されている体液が逆流するのが防止されるとともに,吸収性物品の長手方向端部から体液が洩れるのも防止される (乙15・2頁左下」欄20行ないし右下欄3行)という記載から明らかなとおり,ウエスト部の前後漏れ防止を目的とする発明である。 また,引用発明2も 「ウエスト部のモレ・・・を有効に防止するこ ,と (乙16・1頁右欄10行ないし12行,2頁右上欄7行ないし9 」行)を目的とする発明である。 すなわち,引用発明1及び引用発明2は,いずれも使い捨ておむつに関する発明である点で共通するのみならず,ウエスト部(着用時腰回り部)の前後漏れを防止するという共通の目的を有している(かかる目的は 「前後漏れ防止を確実に達成できる・・・紙おむつを提供する」と ,いう本件特許発明の目的とも共通である。。)したがって,当業者が引用発明1に引用発明2を組み合わせることについて,障害は全くないから,両発明を組み合わせることは,極めて容易である。 ク結論以上のとおり,本件特許発明は,引用発明1と引用発明2を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものである。 したがって,本件特許発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許無効審判により無効にされるべきも( ),, のと認められるから 特許法123条1項2号特許権者である原告は被告に対し,その権利を行使することができない(特許法104条の3第1項 。)( ) 原告の主張2ア引用文献1に「体液の前後漏れ防止用シール領域 (構成要件DA)の」記載はないことについて引用発明1は 「吸収性物品の長手方向端部からの洩れを防止」するた ,めに長手方向両端部における「表面シートとバックシートとの一体的接合部分」を構成するホットメルト被膜が 「吸収体上に臨む位置に亘って延 ,在する」ものである。 これに対し,本件特許発明の「体液の前後漏れ防止用シール領域」は,「吸収性物品の長手方向端部」に存在するのではなく,吸収性物品の長手方向端部に「発泡シート」を設け,当該「発泡シート」から「吸収体の長手方向端縁」までの間の離間位置において「体液の長手方向の流出を阻止する」ための接合領域であり,したがって,引用発明1のホットメルト被膜による「長手方向両端部に」おける「表面シートとバックシートとの一体的接合部分」が本件特許発明の「体液の前後漏れ防止用シール領域」に相当するものではない。 すなわち,引用発明1のホットメルト被膜は,非透水性バックシートに腰回り方向に沿って接合されたものでなく「体液の前後漏れ防止用シール領域」を有しないから,本件特許発明の「発泡シートが液透過性である,あるいは発泡シートをその長手方向についてバックシートに対して間欠的に固定する場合などにおいて」吸収体の端縁に至った体液の一部が長手方向に流出するのを阻止する作用効果を奏するものではない。 かかる構成上及び作用効果上の相違を捨象して,引用発明1のホットメルト被膜による「表面シートとバックシートとの一体的接合部分」を,本件特許発明の「体液の前後漏れ防止用シール領域」に相当するとの被告主張は誤りである。 イ相違点 )についてb)引用発明2は 「本発明者らはこれら従来のつかいすておむつの欠点 a ,を改良すべく鋭意研究の結果,バックシートに対しその横手方向に柔らかく,弾性を有する比較的幅広い,不織布状の通気性をともなった伸縮性部材を取りつけることにより,おむつのウエスト部を柔らかく,しかも比較的広い圧接面積で密着させたテープの着脱に際し,バックシートと一体となって伸縮し,着脱を容易にし,ウエスト部のモレ,ムレを有効に防止することができることを見いだし本発明に到達した 」という。 。,, , ものである このように 伸縮性部材は 幅広でウエスト部を柔らかくしかも比較的広い圧接面積で密着させたものを使用するのが,同発明の骨子であることは明らかである。 引用発明2は,従来技術として挙げられた特開昭58-87303号公報(甲19)と基本構造を同じくすることを前提としているのであるから,伸縮性帯状部材3が吸収体2と重なり,これが「離間」していない構造を前提にしていることは明らかである。 )引用文献2の特許請求の範囲の請求項5における「通気性かつ伸縮性b帯状部材の吸収体と重ならない部分の巾が20o以上」との記載から,引用発明2においては,伸縮性帯状部材が吸収体と重なっている(オーバーラップしている)ことを前提として「重ならない部分の巾」を規定していることは直接的に文言上明らかである。 しかも,不織布状弾性体3が「吸収体上部係止具(テープ)5側に位置し,バックシート4の横手方向に沿って吸収体2に重ならない部分が20o以上の巾であるか,吸収体2との重なり部分が少なくとも横手方向において不織布状弾性体3の伸張をできるだけ妨げぬ範囲内の巾で固定されている 」と記載されているように,吸収体2に重ならない部分 。 が20o以上の巾であるか,吸収体2との重なり部分が少なくとも横手方向において不織布状弾性体3の伸張をできるだけ妨げぬ範囲内の巾で固定されていると記載されているから,結局,第1図及び第2図のように,吸収体2と不織布状弾性体3とは一部に重なっていることを前提としていることは明らかである。 )被告は 「但し伸縮性部材の一部が吸収体と重なっていてもよい 」とc , 。 の記載や 「かかる効果的な構成のためには吸収体を伸縮性部材からあ ,る程度遠ざけることも必要である」との記載などから,伸縮性部材の一部が吸収体と重なっていないことが好ましいことが示唆されていると主張する。 しかし 「但し伸縮性部材の一部が吸収体と重なっていてもよい 」 , 。 との記載は 明細書及び図面の記載全体からすれば その前の記載の 本 , ,「発明の伸縮性部材がウエスト部に有効に働くためには吸収体と重ならない部分が20o以上の巾である」との,吸収体2と伸縮性部材3とは一部が重なっている(オーバーラップしている)ことを前提にした記載を受けて,その伸縮性部材3の「吸収体と重ならない部分が20o以上の巾である」としても「一部が吸収体と重なっている」ものであるとする確認的な記載である。 「かかる効果的な構成のためには吸収体を伸縮性部材からある程度遠」「」 , ざけることも必要である との記載における かかる効果的な構成 はこれに先だって「不織布弾性帯」を巾広にする構成 「ウエスト部の伸,縮をより効果的に構成させるため」に「不織布弾性体を少なくとも20%の伸びを有するバックシートと組合せる」構成が記載されているのであるから,吸収体との重なりに言及したものではないことが明らかである 「吸収体を伸縮性部材からある程度遠ざけることも必要である」と 。 の記載は 「吸収体を伸縮性部材からある程度遠ざけ」て伸縮性部材を ,巾広いものにすることが 「ウエスト部の伸縮をより効果的に構成させ ,るため」に好ましいとの趣旨の記載である。 しかも 「吸収体を伸縮性部材からある程度遠ざけることも必要であ ,る」との記載に続いて 「吸収体に重ならない部分の巾が20o以上で ,あると吸収体を壊すことなく伸縮性部材が伸縮し,かつおむつウエスト部を着用者の肌に密着させることができ効果的である 」との記載があ。 る。この「重ならない部分の巾」の規定からして,伸縮性部材が吸収体に重なることが前提とされ,また 「吸収体に重ならない部分の巾が2 ,0o以上である」と,伸縮性部材が伸縮する際に,伸縮性部材と吸収体との重なり部分の影響によって「吸収体を壊すことなく」伸縮性部材が伸縮するというものであるから,伸縮性部材が吸収体に重なるものであるとの前提が二重に記載されている。 )被告は,伸縮性部材3と吸収体2との間の表面摩擦を伸縮の阻害要因dとして考えているようである。しかし,吸収体の材料が不織布などの他の材料と比較して表面相互の摩擦が伸縮の阻害要因となるものではなく,不織布などの弾性伸縮部材と吸収体がオーバーラップしている部分は弾性伸縮部材の伸縮が阻害されるものではない。 )したがって,引用文献2は,伸縮性部材が吸収体と重なることを前提eにしているのであって,相違点)を開示し,あるいは示唆するもので bはない。 ウ相違点)についてa2引用発明1と引用発明2とを組み合わせる,あるいは,引用発明2の伸縮性帯状部材として発泡シートとする構成を採用する契機は存在しない。 エ相違点 )についてc引用発明1はトップシートをバックシートに固定するものであり,これに対し,引用発明2はトップシートを伸縮性帯状部材3に固定しないものである。引用発明2が,伸縮性帯状部材の伸縮時に伸縮性帯状部材3及びバックシート4の破れを生じることがないとしつつ,トップシート1の破れに言及していないことは,トップシート1を伸縮性帯状部材3に固定しないことの証左である。また,引用発明2においてトップシートのバックシート側の面における接着剤による伸縮性帯状部材への固定は,引用発明2が作用効果を奏する上で阻害要因となる。 したがって,構成要件Cを形成する契機がそもそも存在しない。また,引用発明1の「ホットメルト不透水性被膜」を弾性帯上まで延長する契機は存しない。 さらに,引用発明2は,弾性帯と体液吸収体の長手方向縁とが離間しておらず,しかも伸縮性帯状部材3とバックシート4との間を液が通る可能性について一切考慮がなく,当然に,その長手方向手前で「体液の前後漏」 , れ防止用シール領域 を形成するとの考えがないことは明らかであるから被告の主張はいかなる観点からも採るに足りないものである。 オ引用発明1と引用発明2の組合せについて)構成要件AAに関する動機付けについてa引用発明1は,ポリエチレンフィルムなどの「洩れ防止材」の使用を避けて,ホットメルト不透水性被膜のみの使用によって 「長手方向端,部からの漏れを防止する」のであるから,引用発明1は,他の部材を長手方向端部に設けないことを前提にすることは明らかである。 したがって,引用発明1にあえて伸縮性帯状部材などの他の部材を設ける動機付けは存在しないし,伸縮性帯状部材を設けることは,引用発明1の課題及び作用効果の阻害要因となる。 )構成要件CAが,引用発明1に発泡シートを設けた場合,設計事項にbすぎないとの主張について引用発明1においては 「一体的接合部分」が吸収性物品の「長手方 ,向両端部」を構成して長手方向の漏れを防止するものであるから,長手方向端部の一体的接合部分からの吸収性物品の延長は (長手方向の漏,れを防止する観点からも)全く想定していないのであり 「ホットメル,ト不透水性被膜」が存在する領域を伸縮性帯状部材上まで延長するとの仮定の構成は,いかなる観点からも想定し得ない。 仮に,引用発明2のトップシートとバックシートとの間に伸縮性帯状, ,, 部材を設ける構成を 引用発明1に組み込むとしても 引用発明1には「ホットメルト不透水性被膜」が存在する領域を「一体的接合部分」よりさらに延長することにつき開示や示唆はないことはもちろん,引用発明2は,トップシートとバックシートとの「一体的接合部分」の手前に(吸収体がわに)伸縮性帯状部材を設ける構成を開示しているものであり,被告主張の「ホットメルト不透水性被膜」が存在する領域を 「一,体的接合部分」の反対がわに(伸縮性帯状部材上まで)延長するとの構成と相反することになるのであり,論理付けとして明らかに矛盾する。 本件特許発明においては,ホットメルト薄膜を発泡シート上にまで跨らせることによって,体液がトップシートを伝わることが防止され,その結果,体液が長手方向端縁に至りそこから流出することが防止される。 ,, のである かかる特有の作用効果から考えても 本件特許発明において体液の前後漏れ防止用シール領域の形成とともに 「体液吸収体端部上,と発泡シート上とに跨って・・・両者に固着されるホットメルト薄膜を形成」する構成が必要となるのであって,被告主張は後者の構成を無視している。 )相違点 )についてcb既に述べたとおり,引用文献2が伸縮性帯状部材と吸収体とが離間している場合を開示もしくは示唆しているとの前提自体が誤りである。そして 「ホットメルト不透水性被膜」が存在する領域を伸縮性帯状部材 ,上まで延長する動機付けは存しない。したがって,引用発明1に引用発明2を組み合わせても,伸縮性帯状部材が体液吸収体の長手方向縁と離間させる構成は,想到し得ない。 )「体液の前後漏れ防止用シール領域」についてd,「 」 既に述べたとおり 引用文献1は 体液の前後漏れ防止用シール領域を開示又は示唆しない。引用発明1に引用発明2を組み合わせても,上記構成が想到されるものではない。 5争点4-1(仮に,争点2-1に関する原告の主張を前提とした場合,本件特許発明が,特許法29条の2に違反しているか)について( ) 被告の主張1原告は,ホットメルト接着剤が連続的にシート状(フィルム状)に形成されていない,ホットメルト接着剤が散点状ないしストライプ状に形成されたものも本件特許発明の「ホットメルト薄膜」に相当すると主張する。仮に,原告の技術的範囲の解釈を前提とすれば,本件特許発明は,昭和60年12月24日出願に係る実開昭62-106904号公報(乙37。以下「先願明細書」といい,同公報に記載された考案を「先願考案」という )に記載。 された発明と実質的に同一である。 したがって,本件特許発明は,特許法29条の2の規定により特許を受けることができないものであり,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから(特許法123条1項2号 ,特許権者である原告は,被告 )に対しその権利を行使することができない(特許法104条の3第1項 。)ア本件特許発明と先願考案とを対比すると,次のとおりである。 )構成要件A@a先願明細書の実用新案登録請求の範囲1項には「液透過性の表面シートと液不透過性の裏面シートの間に吸収材を有する使いすておむつにおいて 」と記載されている。この点は 〔考案の構成〕の項において「吸 , ,収材3は綿状パルプ,吸水紙,高吸水性ポリマーとから成り,ポリエチレンなどから成る裏面シート2と,ポリエチレン,あるいはポリプロピレン等の不織布などから成る表面シート1との間にホットメルト接着によって固定されている 」と具体的に説明されている。 。 先願考案と本件特許発明とを対比すると,先願考案の「液透過性の表面シート「液不透過性の裏面シート「吸収体」が,本件特許発明 」, 」,の「透水性トップシート「非透水性バックシート ,前記透水性トッ 」,」「」 プシートと非透水性バックシートとの間に介在されている 体液吸収体に,それぞれ相当する。 したがって,先願明細書には,構成要件A@が記載されている。 )構成要件AAb先願明細書の実用新案登録請求の範囲1項には 「且つ,前記両シー,, 」。 トの間に ・・・クッション性シートを介在させた と記載されているまた,先願明細書の第1図及び第2図には,延在した「液透過性の表面シート1」と「液不透過性の裏面シート2」とで構成された上端部分及び下端部分において 「クッション性シート6a/b」が腰回り方向に ,配置されている 「クッション性シート」については 〔考案の構成〕 。 ,の項において「・・・柔軟性,折りまげ時の強度などの点からは発泡性ポリエチレンシートが望ましい 」と説明されているし(4頁14行な 。 いし18行「クッション性」という名称に鑑みても,これが「弾性」 ),を有することは明らかである。 先願考案と本件特許発明とを対比すると,先願考案の「液透過性の表面シートと液不透過性の裏面シートとで構成された上端部分及び下端部分「クッション性シート」が,本件特許発明の「フラップ「弾性 」, 」,帯」に,それぞれ相当する。 したがって,先願明細書には,構成要件AAが記載されている。 )構成要件B@c先願明細書の実用新案登録請求の範囲2項には 「クッション性シー,トが発泡性プラスチックシートである」と記載されている 「クッショ。 ン性シート」は 「クッション性」という名称から明らかなとおり 「弾 , ,性伸縮性」を有している。また 「発泡性プラスチックシートとしては ,・・・柔軟性・・・などの点からは発泡性ポリエチレンシートが望ましい と記載されていることからも発泡性ポリエチレンシート が 柔 」 ,「 」 「軟性 ,すなわち「弾性伸縮性」を有することは明らかである。 」したがって,先願考案の「 発泡性プラスチックシートである)クッ (」 ,「 」 ション性シート は 本件特許発明における 弾性伸縮性の発泡シートに相当するから,先願明細書には,構成要件B@が記載されている。 )構成要件BAd先願明細書の第1図及び第2図には 「液透過性の表面シート1」と ,「液不透過性の裏面シート2」との間において 「クッション性シート ,」,「 」 , 6a/b が介在されており この クッション性シート6a/b は「吸収体3」の長手方向縁と離間していることが示されている。 したがって,先願明細書には,構成要件BAが記載されている。 )構成要件C@Ae先願明細書には 「吸収材3は・・・裏面シート2と・・・表面シー ,ト1との間にホットメルト接着によって固定されている。また・・・発泡性プラスチックシート6a,6bもホットメルト接着により固定し一体化されている 」と記載されている(5頁18行ないし6頁5行 。 。 )かかる記載から,少なくとも先願考案は 「吸収材3」が「表面シート ,1」との間にホットメルト接着によって固定されており,且つ 「クッ,ション性シート6a/b」も「表面シート1」との間にホットメルト接着により固定し一体化していることが分かる。 さらに,先願明細書の第2図には 「クッション性シート6a/b」 ,「」 ,「 」 と 吸収体3 との間の離間位置において液透過性の表面シート1と「液不透過性の裏面シート2」とが固着されている構成が示されている 既に述べたとおり 離間位置の両隣に位置する 吸収材3 及び ク 。, 「」「ッション性シート6a/b」が「表面シート1」とホットメルト接着により固定されていることに鑑みれば,先願明細書の第2図は,ホットメルト接着剤が「吸収材3」及び「クッション性シート6a/b」上とに跨ってその両者に固着されている結果として,離間部分において「表面シート1」と「裏面シート2」とがホットメルト接着剤により固着されている状態を示していると理解される。 したがって,先願明細書には,構成要件Cのうち 「表面シート1」,の「裏面シート2」がわ面において「ホットメルト接着剤」が塗布されており,この「ホットメルト接着剤」が「吸収材」上と「クッション性」 。 シート 上とに跨ってその両者に固着されている構成が記載されている一方,先願考案は 「ホットメルト接着剤」が「薄膜」であるか否か ,が明らかでない点において,本件特許発明と一応相違する。 しかし,後記5・( )ウのとおり,前後漏れ防止を目的として紙おむ1つの端部(腹部・背部)に「ホットメルト薄膜」を塗布することは多くの文献に記載されており,実際に販売されていた製品にも採用されていた周知技術であったことから(乙15,69ないし80,83ないし85 ,この点は実質的な相違点とはいえない。 ))構成要件D@Af,「 」 先願明細書の第1図及び第2図にはクッション性シート6a/b「」 ,「 」 と 吸収体3 との間の離間位置において液透過性の表面シート1と「液不透過性の裏面シート2」とがホットメルト接着剤により固着されている構成が示されている。 また,第1図及び第2図に加えて,請求項1の「両シートの間に,該おむつの腰回り方向の両側縁部の長さに等しいかあるいは若干短い長さ・・・を有するクッション性シートを介在させた という記載から液」,「透過性の表面シート1」と「液不透過性の裏面シート2」とがホットメルト接着剤により固着されている領域が,腰回り方向に沿って存在することは明らかである。 先願明細書は,該離間位置において「表面シート1」と「裏面シート2」とがホットメルト接着剤により固着されている領域が「体液の前後漏れ防止用シール領域」であることを明記していない。しかし,これは周知技術である「ホットメルト薄膜」を形成することにより当然得られる効果にすぎず,実質的な相違点ではない。 したがって,先願明細書には,構成要件D@Aが記載されている。 )構成要件Eg先願明細書の実用新案登録請求の範囲1項には 「・・・を特徴とす,る使いすておむつ」と記載されている。 イ以上のとおり,先願明細書には,本件特許発明のすべての構成要件が記載されているから,本件特許発明は,先願考案と実質的に同一である。 したがって,原告の技術的範囲の解釈に従えば,本件特許発明は,先願考案に基づいて,特許法29条の2の規定により特許を受けることができないものである。 ( ) 原告の主張2ア被告の主張は,時機に後れた攻撃防御方法として許されない(民事訴訟法157条1項 。)イ原告は 「ホットメルト接着剤が散点状ないしストライプ状に形成され ,たもの」についてまで,本件特許発明の技術的範囲に属する旨の主張をしているのではない。現に,被告製品は,被告がいう「ホットメルト接着剤が散点状ないしストライプ状に形成されたもの」ではなく,前後漏れ防止効果を有する「ホットメルト薄膜」を形成していることは明らかであるから,被告の仮定主張は前提において失当なものである。 ウ先願考案においては 「トップシートのバックシートがわ面において, ,体液吸収体端部上」にホットメルト薄膜を有しない。 先願明細書の「吸収材3は・・・裏面シート2と・・・表面シート1との間にホットメルト接着によって固定されている。また・・・発泡性プラスチックシート6a,6bもホットメルト接着により固定し一体化されている 」との記載は,吸収材3の裏面シート2及び表面シート1に対する 。 固定をホットメルト接着により行う旨の記載である。 先願考案には,トップシートのバックシートがわ面においてホットメルト接着剤を「薄膜」として体液の長手の流出を防止するための構成にかかる記載は全く存在しない。 また,先願明細書及び図面に,ホットメルト接着の部位(領域)や塗布状態などの具体的な態様が記載されていないことは,その出願前に当業者において通常に行われていたものと同様であると解するのが相当である。 そこで検討すると 「吸収性の芯材は,公知の適当な手段,例えば,線 ,模様又は他の模様に施された接着剤・・・身体側のライナ,外側カバー又はその両方に固定される 」との記載(乙17・5頁右上欄16行ないし 。 20行「吸収性の芯22がライナー20とカバー21の間に位置し, ),線状または点状の接着剤・・・ライナーかカバーのいずれかまたはその両方に固定される」との記載(乙38・6頁右下欄18行ないし7頁左上欄2行)からしても,本件特許発明のような「ホットメルト薄膜」によって吸収材が固定されるものではないことは明らかである。 また,先願明細書に記載の使い捨ておむつにおける,吸収材を裏面シート及び表面シートに対してホットメルト接着により固定する場合のホットメルト接着剤の塗布形態は,当然に表面シートを通して体液を速やかに吸収体に受け入れさせる必要があるから,防漏手段を構成する「ホットメルト薄膜」であってはならないのである。 したがって,先願考案には,本件特許発明の「トップシートのバックシートがわ面において,体液吸収体端部上と発泡シート上とに跨ってその両者に固着され ,前後漏れ防止効果を有する「ホットメルト薄膜」は記載 」されておらず,しかも,先願考案における「ホットメルト接着」は本件特許発明の「ホットメルト薄膜」とは異なるのである。 エ先願考案には 「体液の前後漏れ防止用シール領域」を形成する構成が ,ない。 先願明細書を精読すれば 「本件考案におけるクッション性シートは, ,使い捨ておむつの腹部,背部からの尿の漏れを防止し」と記載されている(4頁8行ないし10行 。したがって,クッション性シートが,使い捨 )ておむつの腹部,背部からの尿の漏れを防止しているのであって,第2図の「クッション性シート6a,6b」より長手方向内側の括れ部分が使い, 。, 捨ておむつの腹部 背部からの尿の漏れを防止しているのではない またその括れ部分が何を意味するのか明らかでもない。 クッション性シート自体が,使い捨ておむつの腹部,背部からの尿の漏れを防止していることは 「不織布シートとして・・・撥水処理されてい ,れば本考案の目的を満たすことが出来る ・・・積層紙は撥水処理されて 。 いることが望ましい 」との記載(4頁18行ないし5頁8行)からも明 。 。,, , らかである すなわち かかる記載は 発泡性プラスチックシートのほか不織布シート又は積層紙を使用する場合において,それらに撥水処理による撥水性を与えて,不織布シート又は積層紙を透過させないようにすることにより,尿の漏れを防止することを意味するからである。 オ少なくとも,以上の点からして,本件特許発明が,先願考案と実質的に同一であるということはできない。 6争点4-2(仮に,争点2-1に関する原告の主張を前提とした場合,本件特許発明が,特許法29条2項に違反しているか)について( ) 被告の主張1原告は,ホットメルト接着剤が連続的にシート状(フィルム状)に形成されていない,ホットメルト接着剤が散点状ないしストライプ状に形成されたものも本件特許発明の「ホットメルト薄膜」に相当すると主張する。仮に,原告の技術的範囲の解釈を前提とすれば,本件特許発明は,特開昭61-207606号公報(乙38。以下「引用文献5」という )に記載された発。 明(以下「引用発明5」という )と実質的に同一,又は,特開昭61-1 。 00246号公報(乙15。引用文献1)と組み合わせることによって,当業者が容易に想到し得たものである。また,本件特許出願日前,紙おむつの() , 端部 腹部・背部 からの前後漏れを防止することは周知の技術課題でありこの前後漏れ防止を目的として紙おむつの端部に「ホットメルト」を塗布するという解決主題は,引用文献1に記載されているのみならず,多くの公知文献に記載されており,実際に販売されていた製品にも採用されていた周知技術であったことから(乙68ないし80,83ないし85 ,当業者が引)用発明5に引用発明1を組み合わせることは極めて容易である。また,当業者が,引用発明5に上記周知技術を組み合わせることも極めて容易である。 したがって,本件特許発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから(特許法123条1項2号 ,特許権者である原告は,被告 )に対しその権利を行使することができない(特許法104条の3第1項 。)ア本件特許発明と引用発明5とを対比すると,次のとおりである。 )構成要件A@a引用文献5には 「例えば,使い捨てパンツ10の身体側ライナー2 ,0つまり内側パネルは,そこを通って吸収芯18に吸収される流体を通過させる任意のフレキシブルな多孔性シートで形成でき ・・・ (1,」2頁左下欄7行ないし10行「またライナーは,所望の水分透過度 ),を得るように穿孔されたプラスチック膜,発泡プラスチックの網状材,あるいはスクリム材で形成してもよい(12頁左下欄下から4行な 。」いし末行 という記載がある これらの記載からみて 引用発明5の 身 )。,「」 ,「」。 体側ライナー は 本件特許発明の 透水性トップシート に相当するまた,外側カバーについて,パンツ10の外側カバー21の材料として,不織繊維材の外側層とプラスチック材の内側層を有する複合布が適しているとした上で(12頁右下欄下から2行ないし13頁左上欄7行「多くの種類の使い捨て衣類において,内側層は水分バリヤーつ ),まり液体不浸透性を与えるものである(13頁右上欄8行ないし1 。」0行)と記載している。これらの記載からみて,引用発明5の「外側カバー」は,本件特許発明の「非透水性バックシート」に相当する。 引用文献5には,吸収芯について 「使い捨てパンツ10の吸収芯2 ,2等,使い捨て衣類に含まれる吸収芯は,身体側ライナーを通過した廃液を吸収及び保持可能な任意の適切な材料で形成し得る(12頁右。」下欄3行ないし6行)と記載され,この文献で用いる「使い捨て衣類」として,使い捨ておむつ,大人の失禁症用衣類が例示されている(5頁左下欄9行ないし20行)ことから,上記の「廃液」は本件特許発明における「体液」に相当することは明らかであり,したがって,引用文献5の「吸収芯」は,本件特許発明の「体液吸収体」に相当する。 引用文献5には 「パンツ・・・は・・・身体側ライナー20と外側 ,カバー21を有する。吸収性の芯22がライナー20とカバー21の間に位置し ・・・当該分野で周知な任意の適切な手段でライナーかカバ ,」 , ーのいずれかまたはその両方に固定される と記載されていることから引用文献5の「吸収芯」は,身体側ライナーと外側カバーの間に介在していることが理解される。 引用発明5と本件特許発明とを対比すると,引用発明5の「身体側ライナー「外側カバー「吸収芯」が,本件特許発明の「透水性トッ 」,」,プシート「非透水性バックシート ,前記透水性トップシートと非透 」,」水性バックシートとの間に介在されている「体液吸収体」に,それぞれ相当する。 したがって,引用文献5には,構成要件A@が記載されている。 )構成要件AAb引用文献5の第24図を見ると,延在した「身体側ライナー72」と「」 ,「」 外側カバー71 とで構成された上端部分において弾性要素70が腰回り方向に配置されている。 そして,引用文献5の図1,2及び4を参照すると,弾性要素が結合する外側カバーの周辺部及び身体側ライナーの周辺部は,ウエストバンド11に対応する部分であって,吸収芯の長手方向縁より外側に延びている部分であるから,本件特許発明の「前記体液吸収体の長手方向縁より外方に延びて前記透水性トップシートと前記非透水性バックシートとで構成されるフラップ」に相当し,また,引用文献5の弾性要素はウエストバンドの全周囲に沿って延びており,実施例における「弾性要素」は一対の対向する面状表面を含んだ矩形断面のフラットな弾性テープであって(16頁右下欄9行ないし11行 ,帯状の形状であるから,引 )用文献5のパンツは前記フラップにおいて腰回り方向に弾性帯を有するということができる。 引用発明5と本件特許発明とを対比すると,引用発明5の「弾性要素が結合する外側カバーの周辺部及び身体側ライナーの周辺部「弾性」,要素」が,本件特許発明の「フラップ「弾性帯」に,それぞれ相当 」,する。 したがって,引用文献5には構成要件AAが記載されている。 )構成要件B@c@引用文献5には,弾性要素の材質について 「各種市販の材料を使 ,用可能である」と説明されている(14頁左上欄16行 。)本件特許出願日前に 「発泡シート」が「各種市販の材料」であっ ,たことは,引用文献5の12項左下欄において,身体ライナーの材料として 「発泡プラスチックの網状材」が挙げられていることから明 ,らかである。また,1984年発行のフレグランスジャーナル65(乙85)においても「・・・種々の解決策が提案されている。ユニ・チャームがムーニーで採用したウレタンフォームの幅広エラスティックはその典型的な例である 」と記載されているとおり(99頁右 。 欄25行ないし27行「発泡」性であるウレタンフォームからな ),る弾性帯が商業化された紙おむつのギャザー部に実際に使用されていたことからも,明らかである(乙88・4頁左上欄2行ないし6行においても,伸縮部材の素材として「発泡性ウレタン」を使用することが記載されている )。 したがって,当業者にとって,引用発明5の「弾性要素」に「弾性伸縮性の発泡シート」が当然に含まれていると理解されるのであるから,引用文献5には「弾性伸縮性の発泡シート」が開示されているといえる。 A仮に,そうでないとしても,本件特許出願当時には,使い捨て紙おむつの腰回りに発泡シートからなる弾性体を設けることは周知の設計事項であった(乙22,23,37 。)B以上のとおりであるから,引用文献5には「弾性要素」として「弾性伸縮性の発泡シート」が開示されているといえるし,仮に,この点が明示されていなくても「弾性要素」を「弾性伸縮性の発泡シート」とすることは本件特許出願当時の周知技術に基づく設計事項にすぎないから,実質的な相違点ではない。 したがって,引用文献5には構成要件B@が記載されている。 )構成要件BAd引用文献5には,弾性要素の配置について 「第4図に示してあるよ ,うに,弾性要素25がその第1つまり外表面26に沿って使い捨てパンツ10の外側カバー21の内側層24の周辺部に結合されると共に,その反対の第2つまり内表面27に沿って衣類の身体側ライナー20の周辺部に結合されている。第1,2図に戻ると,弾性要素25はパンツ10のウエストバンド11の全周囲に沿って延びている;つまり弾性要素25の一部は第4図に示すごとくウエストバンド11の一部にそって延びた前面パネル14の周辺部に結合され,弾性要素25の他部はウエストバンド11の残りに沿って延びたパンツの後面パネル15の周辺部に結合してある 」と記載されている(7頁右上欄11行ないし左下欄3 。 行 。かかる記載から,引用文献5の弾性要素は,身体側ライナーと外 )側カバーとの間に介在していることが理解される。 また,引用文献5の第24図から「身体側ライナー72」と「外側カバー71」との間に「弾性要素70」が介在し,この「弾性要素70」は「吸収性の芯」の長手方向縁と離間していることは明らかである。 したがって,引用文献5には,構成要件BAが記載されている。 )構成要件Ce, , @引用文献5には 弾性要素と身体側ライナーとの間の結合について「弾性要素の外表面64が接着剤の薄層65に沿って外側カバーに結合され,弾性要素の内表面66が接着剤の薄層67に沿って身体側ライナーに結合されている。接着剤層65,67は,液体接着剤,熱溶融接着剤,感圧接着剤等,弾性要素の材料を衣類の材料へ接合するのに適した任意の接着剤で形成できる。伸縮化開口を形成するその他の, , 構造的特徴は前述した通りで 上記の取り付け用に選ばれる接着剤は本発明の目的のため弾性要素が収縮されたとき,2つの層の接合点にのみ結合されねばならない 」と記載されている(16頁右上欄下か 。 ら3行ないし左下欄8行 。ここで 「熱溶融接着剤」はホットメル ),ト接着剤のことであるから,引用文献5に記載の使い捨てパンツにおいては,身体側ライナーの外側カバーがわ面において,弾性要素上に固着されるホットメルト薄層が形成されているものである。 A引用文献5の第24図を参照すると,弾性要素が吸収芯と離間しており,該離間位置において,身体側ライナーと外側カバーとが接着層により接着されている構成が示されている。 そして,弾性要素はウエストバンドの全周囲に沿って延びていることから,弾性要素と吸収芯との間の領域における身体側ライナーと外側カバーとの間の接着もウエストバンドの全周囲に沿って延びている,すなわち,腰回り方向に沿っていると理解することができる。 ここで「接着剤層」はホットメルト接着剤の層であってもよいので(16頁左下欄1行ないし4行 ,弾性要素と吸収芯との間の領域に )おいては,ホットメルト接着剤の「薄層 (16頁右上欄下から2行 」ないし左下欄1行)が外側カバー層に接合されている態様が,引用文献5に記載されていることとなる。 ところで,引用文献5において 「この構造は本願と同時に出願さ ,れ,本出願人に譲受された参考文献としてここに含まれる」と述べられている「等の米国特許出願」について 「第24図はこれら両Ales ,方の代替例を示している。同図に示した使い捨て衣類の部分は,それぞれが円形断面のフィラメントまたは糸から成る複数の離間した弾性要素70を有し,この構造は本願と同時に出願され,本出願人に譲受された参考文献としてここに含まれる等の米国特許出願第Ales号,名称『マルチストランド伸縮化開口を備えた使い捨て衣類』に記載され,特許請求されている 」と記載されている(16頁右下欄下 。 から7行ないし17頁左上欄2行 。)そして 「等の米国特許出願」とは,引用文献5に対応する欧 ,Ales州特許出願公開第0187726A2号明細書(乙81)の記載によると,米国特許出願第690349号であり(乙81・40頁5行ないし6行 ,同米国特許出願に対応する特開昭61-207607号 )公報(乙82)には,開口の構造について,次のとおり記載されている。 「使い捨て衣服における弾性要素30と組合わさった内側及び外側端部の他の構造は,第4図の断面図に示されている。間隔がおかれた弾性要素30間の領域34内の内側及び外側端部31と32の部分は接着剤40の層にそってお互いに接着している。内側及び外側端部は,音波シーリング,ヒートシーリング,及びその類似のもの等の他の適当な手段によって領域34内でお互いに接着させることもできる。内側及び外側端部の部分は,一番内側の弾性要素30に隣接してある領域35にそった接着層41の手段によってもお互いに接着させられる。領域34と35は,第1図において脚部開口13の回りの領域34に関して示したように,伸縮自在開口の周囲に伸びている(乙。」82・4頁左下欄7行ないし20行)このように,一番内側の弾性要素のさらに内側には,吸収芯が存在するのであるから,引用発明5においては,引用文献5において引用されている文献における記載に照らしても,伸縮自在なウエスト開口において,吸収芯と弾性要素とが離間しているとともに,該離間位置において内側端部と外側端部が接着層により接着されている。 Bまた,引用文献5には 「吸収性の芯22がライナー20とカバー ,21の間に位置し,線状または点状の接着剤・・・等当該分野で周知な任意の適切な手段にライナーかカバーのいずれかまたはその両方に固定される」と記載されている(6頁右下欄18行ないし7頁左上欄2行 。)Cしたがって,引用文献5には,構成要件Cのうち 「身体側ライナ,ー」の「外側カバー」がわ面において「ホットメルト薄層」が形成されており,この「ホットメルト薄層」が「吸収芯」上と「弾性要素」上とに跨ってその両者に固着されている構成が記載されている。 一方,引用発明5は 「ホットメルト薄層」が「薄膜」であるか否 ,かが明らかでない点において,本件特許発明と一応相違する(相違点1 。))構成要件Df既に述べたとおり,引用文献5には,第24図の開示,及び,同文献において引用されている文献における記載に照らし,ウエスト開口において,吸収芯と弾性要素とが離間しているとともに,該離間位置において内側端部と外側端部が接着層により接着されている構成が開示されている。 一方,引用発明5は,該離間位置において内側端部と外側端部が接着層により接着されている領域が「体液の前後漏れ防止用シール領域」であることが明記されていない点で,本件特許発明と一応相違する(相違点2 。))構成要件Eg引用文献5に開示されている「使い捨て衣類」として,使い捨てオム, ( ), ツ 大人の失禁症用衣類等が挙げられ 5頁左下欄9行ないし20行使い捨て衣類を形成する材料として熱可塑性フィルム等の軽量フィルムやシート,熱可塑性またはセルロース性繊維,紙,被覆フィルムや被覆紙の不織シート,及びこうした材料の各種複合物が挙げられていること(5頁左下欄最終行ないし右下欄5行 ,また 「第1,2図は,本発 ),明に従って構成された・・・使い捨てパンツ・・・を・・・示している(6頁右下欄4行ないし7行)と記載されていることから,引用 。」文献5に記載の使い捨てパンツは使い捨て紙おむつに相当するものである。 したがって,引用文献5には,構成要件Eが記載されている。 イ以上のとおりであるから,本件特許発明と引用発明5とを対比すると,両者は次の点で相違する。 )相違点1(構成要件C)a本件特許発明においては,トップシートのバックシートがわ面において,体液吸収体端部上と発泡シート上とに跨ってその両者に固着されるホットメルト薄膜が形成されているのに対し,引用発明5では,吸収芯端部上にそれに固着されるホットメルト「薄膜」が形成されていることが明示的には示されていない点。 )相違点2(構成要件D)b本件特許発明においては,弾性帯と体液吸収体の長手方向縁との間の離間位置において,ホットメルト薄膜が非透水性バックシートに腰回り方向に沿って接合されて 「体液の前後漏れ防止用シール領域」を形成 ,しているのに対し,引用発明5では,離間位置において,ホットメルト薄層が外側シートに腰回り方向に沿って接合されて形成された領域が,「体液の前後漏れ防止用シール領域」であることが明示的には示されていない点。 ウ相違点1について)引用文献1には,使い捨て紙おむつにおいて,長手方向端部から体液aが漏れるという技術的課題を解決するために,透水性トップシートの端部に不透水性を賦与するためのホットメルト被膜を,接合のために線状塗布ではなく「面状に」塗布したことにより,パラフィンシート等の防水材を使用した場合と同等の漏れ防止効果を達成した発明が記載されている。 )上記の点に関連して,本件特許出願日前の各文献(乙85,69,6b8,70,73,74,76,83,84,71,72,77ないし80,70,75)からも明らかなとおり,本件特許出願当時の当業者間において,使い捨ておむつの端部(腹部・背部)にホットメルト薄膜を形成して「漏れ防止」を図ることは周知技術であった。このことは,当業者にとって,使い捨ておむつの長手方向端部からの体液の漏れを防止することを目的として,引用発明5に引用発明1を組み合わせて本件特許発明を想到することが極めて容易であったことを強く裏付けるものである。 )引用文献5においては 「線状又は点状の接着剤,感圧テープ,超音c ,波シール,熱シール等当該分野で周知な任意の適切な手段」によって,「吸収性の芯22」が「身体側ライナー20」に固定されることが記載されている(6頁右下欄下から3行ないし7頁左上欄4行 。)ホットメルトは溶融時に接着する接着剤であるから,引用文献1に記載された使い捨ておむつにおいて,表面シートとバックシートの接合部分から吸収体上に臨む位置に亘ってホットメルトが塗布された場合に,表面シートとバックシートが接合されるとともに,ホットメルトが塗布された表面シートがそれに対向する吸収体に固着し得ることが理解できる。 そうすると,引用発明5の使い捨て紙おむつにおいて,引用文献1の記載に基づき,また,本件特許出願日前の周知技術に基づき,使い捨ておむつの長手方向端部からの体液の漏れを防止することを目的として,吸収芯上と弾性要素上とに跨ってホットメルト薄膜を形成し,ホットメルト薄膜を介して身体側ライナーを吸収芯に固着することは,当業者が極めて容易になし得ることである。 エ相違点2について引用文献5に記載の使い捨てパンツでは,吸収芯と弾性要素との間の離間した領域において,ホットメルト接着剤の薄層を介して身体側ライナーと外側カバーが接着している。 そして,引用文献1によれば,ホットメルト被膜は透水性シートに不透水性を賦与するものであり(3頁左上欄下から7行ないし5行 ,また,)外側カバーの内側層は水分バリヤーつまり液体不浸透性を与えるものであるから(引用文献5の13頁右上欄8行ないし10行 ,ホットメルト薄)層を介して身体側ライナーと外側カバーとが接着した部分において吸収芯に吸収されている体液の逆流が防止され,かつ,この部分において,使い捨てパンツの長手方向端部から体液が漏れるのも防止されることとなる。 このように,ホットメルト薄層を介して身体側ライナーと外側カバーとが接着した部分は,本件特許発明の使い捨ておむつにおける,ホットメルト薄膜が非透水性バックシートに腰回り方向に沿って接合された領域と同じ作用を奏するのであるから 「体液の前後漏れ防止用シール領域」であ ,るということができる。 いずれにしても,既に述べたとおり,引用発明5の使い捨ておむつにおいて,引用文献1の記載に基づき,また,本件特許出願日前の周知技術に基づき,使い捨ておむつの長手方向端部からの体液の漏れを防止することを目的として,吸収芯上と弾性要素上とに跨ってホットメルト薄膜を形成, , し ホットメルト薄膜を介して身体側ライナーを吸収芯に固着することは当業者が極めて容易になし得ることである。 そして,吸収芯上と弾性要素上とに跨ってホットメルト薄膜を形成すれば「体液の前後漏れ防止用シール領域」が形成されることは,引用文献1の次の記載から明らかである。 「本発明によれば ・・・吸収性物品の長手方向両端部の表裏面シート接 ,合部から吸収体上に臨む位置に亘って,透水性表面シートの吸収体側表面に溶融合成樹脂が塗布され,この領域に不透水性の被膜が形成される ・。 ・・この吸収性物品の着用者が俯いてあるいは仰いて横臥する姿勢をとっても,この部分において,吸収体に吸収されている体液が逆流するのが防止されるとともに,吸収性物品の長手方向端部から体液が洩れるのも防止される(2頁左下欄11行ないし右下欄3行 (なお 「溶融合成樹脂」 。」 ),がホットメルト被膜を意味することについて,2頁右下欄下から3行ないし3頁左上欄1行参照)また,周知技術に基づき,吸収芯上と弾性要素上とに跨ってホットメルト薄膜を形成すれば 「体液の前後漏れ防止用シール領域」が形成される ,ことは明らかである。 したがって,相違点2は実質的な相違点ではない。 オ以上のとおりであるから,引用発明5は,本件特許発明と実質的に同一であるか,引用発明1又は周知技術を組み合わせて,当業者が容易に想到し得たものである。 したがって,原告主張の技術的範囲の解釈に従えば,本件特許発明は,引用文献5に基づいて,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 ( ) 原告の主張2ア被告の主張は,時機に後れた攻撃防御方法として許されない(民事訴訟法157条1項 。)イ原告は 「ホットメルト接着剤が散点状ないしストライプ状に形成され ,たもの」についてまで,本件特許発明の技術的範囲に属する旨の主張をしているのではない。現に,被告製品は,被告がいう「ホットメルト接着剤が散点状ないしストライプ状に形成されたもの」ではなく,前後漏れ防止効果を有する「ホットメルト薄膜」を形成していることは明らかであるから,被告の仮定主張は前提において失当なものである。 ウ被告の主張は,次のとおり誤っている。 a)引用発明5は,本件特許発明の構成要件C及びDの「ホットメルト薄膜」を有しない。 引用文献5のものの吸収性の芯の固定は 「吸収性の芯22がライナ ,ー20とカバー21の間に位置し,線状または点状の接着剤・・・ライナーかカバーのいずれかまたはその両方に固定される (6頁右下欄1」8行ないし7頁左上欄2行)というものであるから,本件特許発明の構成要件C及びDのホットメルト薄膜の要件を充足しないことは明らかである。とりわけ,構成要件CAを充足しないことは明らかである。 b)引用発明5は,本件特許発明の「体液の前後漏れ防止用シール領域」を形成する構成を有しない。 本件特許発明は,構成要件Bに「弾性帯は弾性伸縮性の発泡シート」とされているように 「面状表面を含んだ 「シート」であり,第24 ,」図実施例の「円形断面のフィラメントまたは糸から成る複数の離間した弾性要素70 (16頁右下欄16行ないし18行)ではない。したが 」って,この前提において被告の主張は既に誤っている。 また,第24図実施例において,3本の円形断面のフィラメント又は糸から成るものが図示されているが,被告は,そのすべてを弾性帯とみなすのか,あるいは吸収体側の1本を弾性帯とみなすのかについても不明である。しかも 「身体側ライナー72」との間の接着剤がどのよう ,な形態で接合されているかも不明である。 したがって,被告の主張は全く理由がない。 , 。 エ本件特許発明と引用発明5とを対比すると 相違点は次のとおりである,「」,a)本件特許発明においては 弾性部材が 発泡シート であるのに対し引用発明5ではその明示がない点。 )本件特許発明においては 「トップシートのバックシートがわ面におb ,いて,体液吸収体端部上と発泡シート上とに跨ってその両者に固着されるホットメルト薄膜を形成」しているのに対し,引用発明5は,ホットメルト接着剤を体液吸収体端部上と発泡シート上とに跨って形成するものではなく,トップシートのバックシートがわ面において,弾性要素との「接合点が弾性要素の伸長方向及びそれを横切る方向に沿って相互に離間して」いるのであり,しかも,仮に,吸収体との間が固定されるとしても 「線状又は点状の接着剤」によるものである点。 ,)本件特許発明においては 「離間位置において 「トップシートのバッc ,」クシートがわ面」における「ホットメルト薄膜が前記非透水性バックシートに前記腰回り方向に沿って接合され,体液の前後漏れ防止用シール領域を形成した」ものであるのに対し,引用発明5では 「離間位置に,おいて」トップシートとバックシートとを接合したものではない点。 )相違点は上記のとおりであるから,引用発明5に引用発明1を組み合dわせても,本件特許発明を容易に想到し得ないことは明らかである。 オ引用発明5と引用発明1との組合せについて)引用発明1は,腰回り部分に弾性要素を有しないのであるから,弾性a要素を有する引用発明5にいかなる形態で適用するのか論理付けの主張がない。しかも,引用発明5は,身体側ライナー20と外側カバー21に対する吸収性の芯22の結合形態と,弾性要素の結合形態とを,明らかに相違させているものであるから,少なくともホットメルト接着剤を体液吸収体端部上と弾性要素上とに跨って形成するものではなく,引用発明1を適用する動機付けがそもそも存在しないのである。 ,,,。 b)被告は 周知技術の証拠として 乙68ないし80 85等を挙げるしかし,その周知技術というのも極めて抽象的な記載にとどまるほか,個別的なバラバラな技術を挙げるもので採るに足りないものである。 )引用発明5に,あえて引用発明1を適用した場合には,溶融時に接着cする面状の接着剤であるから,引用発明5の弾性要素との「接合点が弾性要素の伸長方向及びそれを横切る方向に沿って相互に離間して」結合させる構成とならず 「従来の代表的な構造であるひだ寄せまたはギャ ,ザー寄せ開口の代りに裁縫仕立ての外観を与える」という引用発明5の目的を達成できないことになり,明らかな阻害要因が存する。 7争点5(損害の額)について( ) 原告の主張1ア被告は,遅くとも平成14年5月から現在まで,被告製品を製造,販売し,販売の申出をしている。 被告が平成14年5月1日から平成18年9月末日までに販売した被告製品の売上額は,次の額を下回らない。 )平成14年5月1日から平成17年2月末日99億0400万円a)平成17年3月1日から平成18年9月末日45億3800万円 bイ本件特許権の実施料率は,売上高の少なくとも3%をもって相当と認められる。 発明協会発行の「実施料率(第5版 」において,平成4年度から平成 )10年度における「パルプ・紙・紙加工・印刷 (それには,紙製衛生材 」料である「使い捨て紙おむつ」も含まれる )の実施料率は,イニシャル 。 有りで5%,イニシャル無しでは3%のものが最も多く,本件はイニシャル無しであるから,合理的実施料率としては3%とするのが相当である。 ところで,上記のような合理的実施料率は,特許侵害又はその可能性を認めて,特許を尊重する者が任意にライセンスに応じる場合の実施料率であり,ライセンスを受けることを拒否し,侵害訴訟に至って最後まで戦った相手に対する実施料率とは異なるものである。任意のライセンシーに対する実施料率と侵害訴訟に至って戦った相手に対する実施料率については差を設けるのは当然のことである。特許法の改正において,旧102条2項の「通常」という文言が削除されたことも,上記の差を設けるべきとするアプローチを正当化するものである。 したがって,本件訴訟において,原告が主張する実施料率3%は合理性があるものであって,当然に認められるべきものである。 ウ前記ア,イによれば,本件特許権の侵害による原告の損害額は次のとおりである(特許法102条3項 。))平成14年5月1日から平成17年2月末日a2億9712万円(本訴では,内金2億円を請求する))平成17年3月1日から平成18年9月末日b1億3614万円(本訴では,内金9700万円を請求する)エよって,原告は,2億9700万円及び内金2億円につき不法行為の後の日であることが明らかな平成17年3月1日から,内金9700万円につき不法行為の後の日であることが明らかな平成18年10月1日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 ( ) 被告の主張2ア被告製品の売上額が,原告主張のとおりであることは認め,その余は否認ないし争う。 イ本件特許の実施料率は売上の0.2%が相当である。 すなわち,本件特許発明には,従来技術と比較して明確な作用効果が認められない。また,本件特許発明は,使い捨て紙おむつ製品のほんの一部分に実施される技術にすぎない。さらに,被告の知る限り,同業他社が本件特許発明のライセンスを受けた実績もない。しかも,本件特許発明よりも明確な効果の認められる使い捨て紙おむつに関する特許について,被告と同業他社とのライセンスの実績において0.5%をかなり下回る実施料率も実際に存在する。そして,使い捨て紙おむつ製品は,売上額が極めて大きいものの,被告製品のようなテープ型紙おむつの市場にあっては,価格競争が極めて厳しく,利益を確保するのは容易ではない。 第4当裁判所の判断1争点1(被告製品の構成)について( )透水性トップシートに塗布されたホットメルト接着剤の形状について1ア証拠(甲4,5)によれば,被告製品の透水性トップシートの非透水性バックシートがわ面に,カーボントナーを刷毛を用いて塗布し,その後,ホットメルト接着剤に付着していないカーボントナーをドライヤーで吹き飛ばしたところ,被告製品の透水性トップシートの非透水性バックシートがわ面のホットメルト接着剤は,腹側及び背中側において,中央部に比べて濃密に塗布されていることが認められる。 被告は,この実験について,ホットメルト接着剤に付着していないカーボントナーでも繊維の間に入り込んだものは,ドライヤーで吹き飛ばすことは到底できないのであって,ホットメルト接着剤に付着していないカーボントナーを除去するには洗剤を用いて洗浄する必要があると主張する。 しかし,証拠(甲5)によれば,ホットメルトが塗布されていない領域では,ドライヤーでカーボントナーを除去すると,不織布にはカーボントナ。,(, ーが残存しないことが確認されたことが認められる 一方 証拠 甲1117,検乙2)によれば,台所用洗剤を含んだ洗浄水を用いて洗浄した場合,ホットメルト接着剤に付着したカーボントナーまでもが除去される可能性があることが認められる。したがって,ドライヤーによるカーボントナーの除去は適切な手法というべきであり,上記実験結果は採用できる。 イ証拠(甲6)によれば,被告製品の透水性トップシートの非透水性バックシートがわ面に人工尿を霧吹きで塗布し,バックシートがわ面から10sの重りを10秒間載せたところ,中央部では液が滲み出した一方で,体液吸収体の端部上に対応する位置では液が滲み出さなかったことが認められる。 一方,証拠(乙42)によれば,同様の実験をぬれ張力試験用混合液の, ., ., ., ., . 量を 4 7g 3 7g 2 4g 1 3gとして行ったところ 47gと3.7gの場合,体液吸収体の端部,中央部とも,ぬれ張力試験用混合液が,透水性トップシートのバックシートがわ面から肌当接面へ滲みだしており,体液吸収体の端部と中央部とで差が見られないこと,2.4gの場合,体液吸収体の端部付近では,透水性トップシートのバックシートがわ面から肌当接面へのぬれ張力試験用混合液の滲み出しはほとんど観察されず,体液吸収体の中央部では,透水性トップシートのバックシートがわ面から肌当接面へのぬれ張力試験用混合液の滲み出しが観察されたこと,1.3gの場合,体液吸収体の端部,中央部とも,透水性トップシートのバックシートがわ面から肌当接面への滲み出しは殆ど観察されず,体液吸収体の端部と中央部とで差が見られないことが認められる。 上記各実験によれば,被告製品から透水性トップシートを剥離して,同トップシートのバックシートがわ面からの透水性を試験した場合,端部は中央部に比べて透水性が低いことが認められる(乙42においても,混合液の量が2.4gの場合にその相違が見られる。かかる透水性の相違 。)からすれば,ホットメルト接着剤の塗布状態に相違があるものと推認できる。 ウさらに,証拠(乙20)によれば,カーボントナーが付着した透水性トップシートを台所用洗剤を含んだ洗浄水でよく洗い,よくすすいでからホットメルト接着剤の塗布された領域を観察した場合であっても,トップシートの端部には中央部に比べてホットメルト接着剤が濃密に塗布されていること(写真17ないし24)が認められる。 エしたがって,証拠(甲3)及び前記各証拠によって認められるホットメルト接着剤の塗布状況によれば,被告製品では 「透水性トップシート1 ,の非透水性バックシート2がわ面において,体液吸収体3端部上と弾性帯(発泡シート)4上とに跨ってその両者に固着されるホットメルト接着剤層5を形成し「弾性帯と体液吸収体の長手方向縁の離間位置において, 」,ホットメルト接着剤層5が非透性バックシート2に腰回り方向に沿って接」(,「 」 合され ていることが認められる なお この ホットメルト接着剤層5が,本件特許発明の「ホットメルト薄膜」に該当するか否かは,次に判断するとおりである。用語の混同を避けるため,被告製品の構成は「ホットメルト接着剤層5」として説明することとする。。)オ被告は,被告製品におけるホットメルト接着剤層は,散点状又はストライプ状であり 「ホットメルト薄膜」には当たらないと主張する。 ,証拠(乙20,47,60)によれば,被告製品におけるホットメルト接着剤は,透水性トップシート裏面の全面に塗布され,さらに追加で背部と腹部の両端部に塗布されること 追加塗布は ファイバースプレー法 ス ,,(リット状の隙間から熱せられて溶融したホットメルト接着剤が吐出し,さらにその隙間の両側に隣接した2本のスリット状の隙間から圧縮空気が噴出しており,吐出したホットメルト接着剤は圧縮空気によって霧状となって飛ばされ,塗布面である透水性トップシートの裏面に突きつけられ,塗布されるというもの ,又は,ウエーブ法(複数の小さな孔から熱せられ )て溶融したホットメルト接着剤が吐出し,さらにその孔に隣接した別の孔から圧縮空気が噴出しており,吐出したホットメルト接着剤は圧縮空気によって左右に振られて,糸状となって塗布面である透水性トップシートの裏面に塗布されるというもの)によってなされることが認められる。 かかる追加塗布の方法によって製造された被告製品のホットメルト接着剤層の具体的形状が散点状あるいはストライプ状ではないことは,ホットメルト接着剤が明らかにストライプ状に塗布されている平成5年当時の被告紙おむつ製品(甲18,検甲2,乙26)と被告製品の写真(乙20の写真17及び21)とを対比すれば明らかである。また,後記のとおり,被告製品について行った様々な実験結果は,被告製品におけるホットメルト接着剤層が散点状あるいはストライプ状であることとは矛盾した結果を示すものである。 したがって,被告製品におけるホットメルト接着剤層が,散点状又はストライプ状であるものと認めることはできない。 ( )ホットメルト接着剤層の領域について2ア証拠(甲6)によれば,被告製品の透水性トップシートの非透水性バックシートがわ面に人工尿を霧吹きで塗布し,バックシートがわ面から10sの重りを10秒間載せたところ,中央部では液が滲みだした一方で,体液吸収体の端部上に対応する位置では液が滲み出さなかったこと,液が滲み出さない領域は,腹側に比べ背中側が広いことが認められる。 上記実験結果によれば,透水性トップシートの両端にあるホットメルト接着剤層は,腹側に比べ,背中側が広範であることが認められる。 イところで,乙20の写真17及び写真21は,甲6と異なり,腹側のホットメルト接着剤層の方が,背中側よりも広範であることを示している。 被告は,乙20について,写真27は「腹部」の写真であると記載したものの,背部の写真であること,写真28は「背部」の写真であると記載したものの,腹部の写真であることを認める一方で,写真17及び写真21()。,(,, の説明に誤りはないと主張する 乙24しかし 証拠 甲22 3242,乙27)に照らせば,乙20の写真17及び写真21についても背部と腹部を取り違えて説明しているものと認められる。 ウしたがって,被告製品のホットメルト接着剤層は,前身頃に比べて後身頃のほうが長い領域にわたって存在していることが認められる。 ( ) 体液吸収体と弾性帯が接触又は重合している製品の存否について3被告は,被告製品は,毎分数百枚の速度で生産しているので,吸収体の切断長さが変動したり,吸収体をバックシートに取り付ける時の走行方向の位置が変動することは当然起こることであって,弾性体と吸収体が接触あるいは重なる可能性も十分にあるが,特に問題なく使用できるので製品として出荷していると主張する(かかる製品の例として,乙20の写真25ないし28参照 。)しかし,かかる態様の製品は,体液吸収体から弾性帯の方向に容易に漏れが生じることになるので,不良品というべきであり,本来的に予定された製品ではないというべきである。また,かかる態様の製品の出現割合について具体的な主張立証は何らなされていない。よって,体液吸収体と弾性帯が接触又は重合している不良品が出現し得るからといって,かかる構成の被告製品が一定の割合で存在するものと認めることはできない。 ( ) 結論4したがって,被告製品の構成は,次に訂正するほかは,別紙物件目録1記載のとおりであると認められる。すなわち,同目録1中 「ホットメルト薄,膜」は「ホットメルト接着剤層」と訂正し,構成の説明( )は 「前記離間6 ,位置において,ホットメルト接着剤層5が非透水性バックシート2に腰回り方向に沿って接合されている 」と訂正するほかは,同目録記載のとおりで 。 ある。 2争点2-1 被告製品が ホットメルト薄膜構成要件C及びD 及び 体 (「」()「液の前後漏れ防止用シール領域 (構成要件D)を有するか)について 」( ) 本件特許発明の特許請求の範囲の記載には 「ホットメルト薄膜 (構成1 ,」要件C及びD「前記ホットメルト薄膜が・・・体液の前後漏れ防止用シ ),ール領域を形成し (構成要件D)との記載がある 「薄膜」という語の用 」 。 い方は人さまざまで,物理概念として確立されているわけではないことから(甲9・ 薄膜作製応用ハンドブック,本件特許発明にいう「ホットメル 「 」)ト薄膜」とは,どのような形状のものを指し,あるいは,どの程度の密度でホットメルト接着剤が塗布されているものであるかについて,特許請求の範囲の文言によっては,一義的に明白ではない。したがって,本件明細書の記載を参酌し,その上で 「ホットメルト薄膜 (構成要件C及びD)及びホ ,」「 」() ットメルト薄膜から成る 体液の前後漏れ防止用シール領域構成要件Dの意義を解釈する必要がある。 ( ) 本件明細書(甲2)には,次のとおり記載されている。 2ア発明が解決しようとする問題点「本発明の主たる目的は,前後漏れ防止を確実に達成できるとともに,着用感に優れた使い捨て紙おむつを提供することにある(甲2・3欄。」11行ないし13行)イ作用)「また,本発明ではホットメルト薄膜が,吸収体端部上と発泡シートa上とに跨ってその両者に固着され,逆に吸収体端部上面がホットメルト薄膜により覆われるとともに,吸収体のトップシートに対する固定が図られ,かつその部分から少なくとも発泡シート上までの防漏手段とされている。したがって,吸収体の長手方向のずれを防止できるとともに,吸収体に一旦浸透した体液が長手方向に流れてその端部からトップシートから表面に滲み出すことを防止できる(3欄39行ないし47行) 。」)「一旦,吸収体に吸収された尿が,幼児の動きにより吸収体が圧迫さbれると,逆戻り現象が生じ,この尿はトップシートを通って紙おむつの端部に至る。しかし,ホットメルト薄膜がトップシートの内面に吐着されているので,それ以上尿がトップシートを伝わることはない(3。」欄48行ないし4欄3行))「吸収体がトップシートに対して非固定であると,吸収体の長手方向c端部において,吸収体上面とトップシートとの間に空間ができ,この空間でできた状態で排尿があると,尿が吸収体に吸収されることなくトップシートを伝わり前後漏れが生じやすい。これに対して,吸収体の端部がホットメルト薄膜によりトップシートに対して固定されていると,前記空間が生じることがなく,トップシートを伝わることによる前後洩れが防止される(4欄4行ないし11行) 。」)「しかも,吸収体がその端部において,トップシートに固定されるこdとにより,吸収体の位置決めがなされ,幼児の激しい運動により,吸収体がトップシートとバックシート間において丸まり,もって尿の吸収が不十分となる事態を防ぐことができる(4欄12行ないし16行) 。」)「第2図のように,本発明に係るシール領域(第3図の符号9で示すe部分)を形成しない場合,吸収体の端縁から紙おむつの長手方向端縁に流出する体液は,発泡シートとバックシートとの間から漏れることがある。たとえば,発泡シートが液透過性である,あるいは発泡シートをその長手方向についてバックシートに対して間欠的に固定する場合などにおいては,その危険性が高い。これに対して,前記シール領域を形成す, , ると そもそもこのシール領域で体液の長手方向の流出を阻止するので発泡シートの材質やそのバックシートに対する固定態様に関係なく,常に前後漏れを防止できる(4欄23行ないし34行) 。」ウ発明の具体的構成)「第1図および第3図は使い捨ておむつの第1実施例を示したもの」aである(4欄38行ないし39行 。))「さらに,吸収体3に吸収された体液が長手方向両端から漏れることbを防止するために,ホットメルト薄膜7が,吸収体の端部からトップシート1と発泡シート6との間に跨って設けられており,このホットメル。」 ト薄膜7は発泡シートをトップシート1に固着することも兼ねている(5欄1行ないし6行))「ホットメルト薄膜7を,発泡シート6と吸収体3の端との間でバッcクシート2に紙おむつの巾方向に連続的に溶着させてシール領域9を形成し,このシール領域9での体液の前後漏れ防止効果を高めたものである(5欄46行ないし6欄2行) 。」エ実施例2「紙おむつの前後をフアスニングテープにより組み立てるとともに,横置きにし,着用者のうつぶせ状態を再現させるようにした。次いで,紙おむつの中央部分に人工尿を徐々に注入し,紙おむつ端部からその尿が漏れ始めるまでの,人工尿の注入量を測定した。 その結果,ホットメルト薄膜を設けない場合には,注入量が130tであったのに対して,本発明にしたがってホットメルト薄膜を設けた場合,注入量が210tであった。この結果から,本発明の紙おむつ構造によれば,トップシートを伝わって尿が漏れることが少ないことが判明した 」。 (6欄25行ないし35行)オ発明の効果「本発明によれば,着用感に優れ,かつ前後漏れ防止効果の高い使い捨て紙おむつが提供される(6欄37行ないし38行) 。」カ図面の簡単な説明「第1図は本発明の使い捨て紙おむつの一部破断平面図,第2図はU-U線の相当部分の参考例の断面図,第3図および第4図は本発明の態様を異にするU-U線矢視図「7・・・ホットメルト薄膜「9・・・前 」, 」,後漏れ防止用シール領域」と記載されている。 ( ) 本件明細書においては,上記のとおり 「ホットメルト薄膜」について明3 ,確な定義がないことからすれば,ホットメルト薄膜とは,ホットメルト接着剤によって構成される「薄い膜状のもの」であるといえても,いかなる状態であれば「ホットメルト薄膜」といえるかは明確ではない。そこで,本件明,「」, 細書の上記記載をみるに 本件特許発明における ホットメルト薄膜 とは吸収体端部上と発泡シート上とに跨ってその両者に固着して形成され,吸収体の長手方向のずれを防止するとともに,吸収体に一旦浸透した体液が長手方向に流れてトップシートを伝わることによる前後漏れを防止すること,あるいは,その端部のトップシートから表面に滲み出すことによる前後漏れを防止するという作用効果を奏するものである。そして,その実施例2においては,横置き状態にした紙おむつの中央部分に人口尿を注入したところ,そ, , の尿が漏れ始めるまでの注入量が ホットメルト薄膜がない場合が130t同薄膜がある場合が210tであったことからすれば,本件特許発明における「ホットメルト薄膜」は,紙おむつ端部から尿の漏れをある程度まで防止する機能を奏するものということができるものの,透液性のシートを不透液性のシートに変える機能を奏する膜であるとまでいうことができないことは明らかである。 また,本件特許発明は,上記ホットメルト薄膜を吸収体の長手方向端縁と発泡シートとの間の離間位置において非透水性バックシートに接合して「体液の前後漏れ防止用シール領域」を形成することによって,吸収体の端縁から紙おむつの長手方向端縁に流出する体液が,発泡シートとバックシートの間から漏れることを防止するものである。そして,シール領域を形成しない例(本件明細書の第2図)と対比して,上記効果が説明されているところ,第2図の構成の場合,吸収体の端縁から紙おむつの長手方向への流出が防止されていない。したがって,従来技術として示された第2図の構成と対比すれば 「体液の前後漏れ防止用シール領域」における漏れ防止効果について ,は,厚み方向におけるバックシートと同程度の非透水性であることまでを要するものではなく,前記の「ホットメルト薄膜」と同程度の漏れ防止効果を奏するものであれば足りると解するのが相当である。 ( ) 被告は,本件特許発明の「ホットメルト薄膜」とは,ホットメルト接着剤4が隙間なく連続的に形成されている状態を指すものと解するのが相当であると主張する。しかし,証拠(甲15,16,25の1・2)によれば,おむつにおける接着剤層を「網目状の模様 (甲15,16 ,あるいは 「くも 」),」() , の巣状塗膜甲25の1・2 と説明する例があることが認められること及び,本件特許発明における前記実施例2によれば,尿の注入量が210tになると端部から尿が漏れ始める程度の「ホットメルト薄膜」が形成されることからすれば,本件特許発明における「ホットメルト薄膜」といえるためには,必ずしもホットメルト接着剤層が隙間なく連続的に形成されている状態であることを要するものではないことは明らかである。また,体液吸収体を固着するためには,ホットメルトが隙間なく連続的に接着した状態である必要はないし,吸収体に一旦浸透した体液が長手方向に流れてトップシートを伝わることにより前後漏れを生じることを防止するためにも,トップシートのバックシート側にホットメルトが隙間なく連続的に接着した状態である必要はない。さらに,端部のトップシート側から表面に滲み出した体液による前後漏れを防止するという点も,トップシート表面に滲み出た体液が長手方向に流れることを防止することができれば,その前後漏れが防止されることからしても,本件特許発明における「ホットメルト薄膜」は非透水性のものと同程度に連続した接着剤層を要求しているものではないというべきである。したがって,被告の上記主張は 「ホットメルト薄膜」の意義を過度に ,限定するものであって,採用することができない。そして 「体液の前後漏,れ防止用シール領域」についても,既に述べたとおり,上記「薄膜」と同程度の作用効果を果たしていれば足りるのであって 「体液の前後漏れ防止用 ,シール領域」を構成する「ホットメルト薄膜」を非透水性と同程度のものと解することはできない。 ( ) 被告は,出願経過を参酌すれば,本件特許発明の「ホットメルト薄膜」は5非透水性と解すべきであると主張する。しかし,以下に述べるとおり,被告の主張は採用することができない。 ア )本件出願当初明細書(乙1)には,次の記載がある。 a「さらに,吸収体3に吸収された体液が長手方向両端から漏れることを防止するために,ホットメルト薄膜7が,吸収体の端部からトップシート1と発泡シート6との間に跨って設けられており,このホットメルト薄膜7は発泡シート6をトップシート1に固着することも兼ねている。ホットメルト薄膜7に代えて,非透水性のプラスチックフィルムを使用することも可能である(乙1・5頁5行ないし12行) 。」「他方,第3図例は,ホットメルト薄膜7を,発泡シート6と吸収体3の端との間でバックシート2に紙おむつの巾方向に連続的に溶接させてシール線部9を形成し,このシール線部9で体液の前後漏れ防止効果を高めたものである(7頁12行ないし16行) 。」)被告は,本件出願当初明細書において 「ホットメルト薄膜」は 「非b ,,透水性バックシート」と同様な「非透水性」の膜(具体的には,プラスチックフィルム)であることが記載されていると主張する。 しかし,本件出願当初明細書の「ホットメルト薄膜7に代えて,非透」, 水性のプラスチックフィルムを使用することも可能である との記載は「ホットメルト薄膜」に代わる一実施例を記載したものにすぎず,ホットメルト薄膜が非透水性のプラスチックフィルムと同等のものであることを述べた趣旨のものと解することはできない。被告の主張は採用することができない。 イ )原告(出願人)作成の本件第1意見書(乙5)には,次の記載があaる。 「本願発明は,縁部分において,@トップシートとバックシートとの間にあって腰回り方向に沿って弾性伸縮性の発泡シートを設けるとともに,A前記トップシートのバックシートがわ面において吸収体端部上と発泡シート上とに跨ってその両者に固着されるホットメルト薄膜を形成したものであります。 これに対して,引例発明(判決注:引用発明2のことである )は,。 前記@の構成において,共通するものの,Aの構成すなわち 『トップ,シートのバックシートがわ面において吸収体端部上と発泡シート上とに』, 跨ってその両者に固着されるホットメルト薄膜を形成した 点において開示も示唆もない。 かかる相違点によって,本願発明は,明細書記載の通り,ホットメルト薄膜により前後漏れ防止効果が一層高まる。すなわち,いったん吸収体に吸収された尿が,幼児の動きにより吸収体が圧迫されると,逆戻り現象が生じ,この尿はトップシートを通って紙おむつの端部に至る。しかし,ホットメルト薄膜がトップシートの内側に貼着されているので,それ以上尿がトップシートを伝わることはない(2頁6行ないし3。」頁7行))原告は,本件第3手続補正書(乙6)により,本件出願当初明細書のb〔問題を解決するための手段〕の項に「ホットメルト薄膜」に関する記載を追加し,また 「また,ホットメルト薄膜の存在により前後漏れを ,防止できる 」との内容を詳細に記載する補正をした。さらに,本件出 。 願当初明細書には実施例に関する記載が一切なかったところ 「 実施,(例1 」及び「 実施例2 」に関する記載を追加した。 )())本件第1意見書と本件第3手続補正書は,本件特許発明と本件第1拒 c絶理由通知書で示された引用発明2とを対比すると,前記 )@の構成 aは共通するものの,前記)Aの構成は引用文献2に開示も示唆もされ aていないことを指摘するものである。すなわち,本件第3手続補正書で追加された実施例1は,ホットメルト薄膜を設けた実施例と,同薄膜を設けない比較例とを比べて,吸収体のずれが生じないことを具体的に述べたにすぎず,実施例2もホットメルト薄膜を設けた実施例と同薄膜を設けない比較例とを比べて,紙おむつ端部から尿が漏れ始めるまでの尿の注入量が異なることを述べたにすぎないものである。したがって,前記各記載は,本件特許発明には,引用発明2と異なり 「ホットメルト,薄膜」が存在することを指摘したにとどまるものと解するのが相当であって,さらに「ホットメルト薄膜」の内容についてまで陳述した趣旨と解することはできない。 ウ )本件第2意見書(乙8)には,次の記載がある。 a「補正により,第1に縁の吸収体の長手方向端縁から離間した前記両シート間にあって腰回り方向に沿って弾性伸縮性の発泡シートを設けられていること,第2にホットメルト薄膜を前記吸収体の長手方向端縁と発泡シートとの間に位置において前記非透水性バックシートに接合して。」 体液の前後漏れ防止用シール線部を形成したことが明確化されました(乙8・1頁6行ないし13行)「これに対して,引例発明a(判決注:引用発明2のことである )。 は 『トップシートのバックシートがわ面において吸収体端部上と発泡 ,シート上とに跨ってその両者に固着されるホットメルト薄膜を形成した』点において,開示も示唆もない。そこで,引例発明b(判決注:引用発明1のことである )には,この点に関する開示があるので,両発 。 , , 明を組み合わせることで 本発明が容易に発明できたとの理由をもって引例bが引用されたものと思料されます。しかし,引例a(判決注:引用文献2のことである )には,前記第1の点について開示がなく(す 。 なわち,発泡シートは吸収体端部と重なっている ,引例b(判決注:)引用文献1のことであるには 第2の点が開示されていません乙 。), 。」(8・1頁14行ないし2頁6行))本件第2意見書は,引用発明1と引用発明2との組合せによって容易bに想到できるとの本件第2拒絶理由通知書に対し,本件第4手続補正書乙9 によって 本件特許発明が本件第2意見書記載の二つの特徴 前 (), (記))を有することを明確にした上で,引用発明2には上記第1の特a徴の開示がなく,引用発明1には上記第2の特徴の開示がないことを指摘したものである。したがって,本件第2意見書の記載を,引用発明1と本件特許発明とは 「トップシートのバックシートがわ面において吸 ,収体端部上とバックシートに固着されるホットメルト薄膜を形成した」点において共通することを,原告(出願人)も当然に認めていた趣旨と解することはできない。 エ )本件第5手続補正書(乙10)には,次の記載がある。 a「引例発明a(判決注:引用発明2のことである )は,吸収体の長。 手方向端縁とオーバーラップして弾性伸縮性の部材を,トップシートとバックシート間に設けたものである。引例発明b(判決注:引用発明1のことである )は,体液吸収体と,この縁より外方に延び着用者の腰 。 部対応位置にあって吸収体が存在しない透水性トップシートと非透水性バックシートとで構成される縁とを有する衣料において,吸収体端部上と縁間とに跨ってその両者に固着されるホットメルト薄膜を形成したものである(4頁5行ないし13行) 。」「そこで,本願発明と引用発明とを対比すると,次記の点において相違する ・・・。 . ( 。) C B項における接着が引例発明a 判決注:引用発明2のことであるでは,同公報第2頁右下欄第5行〜第6行記載のように 『固定の方法,は接着剤6による点状又は線状接着が適当である』とし,点状に間欠的か紙おむつの長手方向に連続した線状かを想定し,腰周り方向に連続して接着することを想定していない点(なお,前記の記載において,腰周り方向に線状と読むことは,その前の『伸長をできるだけ妨げぬ範囲内の巾で固定されている』との記載,および第2図の記載から適当ではない(5頁7行ないし16行) )。」「本願発明は,引例発明a(判決注:上記記載を前提とすれば,引例発明bの誤記,すなわち,引用発明1のことである )のようにホット。 メルト薄膜を設けることが有効であることを前提にし,かつ弾性伸縮部,, 材を設けることを有効であるとの前提の下で その組み合わせにおいていかに前後漏れを防止するかについて考究して完成されたもので,その手段として ・・・Bホットメルト薄膜を前記吸収体の長手方向端縁と ,発泡シートとの間に位置において前記非透水性バックシートに接合して体液の前後漏れ防止用シール線部を形成すること,を構成としたものであります。かかる各引例にない構成により,前述の作用効果が奏せられるものであります(6頁9行ないし7頁7行) 。」)上記記載は,引用発明1がホットメルト薄膜を有することを前提としbている。しかし,上記記載は,それ以上に,本件特許発明のホットメルト薄膜と引用発明1のホットメルト薄膜が同一のものであるとは述べておらず,したがって,引用発明1の記載から導かれるホットメルト薄膜と本件特許発明のホットメルト薄膜が同義であるという趣旨の被告の主張は理由がない。また,引用発明2のホットメルト接着剤が点状か間欠的に紙おむつの長手方向に連続した線状であることを述べた記載は,かかる引用発明2の接着態様のもとでは長手方向への体液の漏れを防止しようとする本件特許発明の効果を奏し得ないことを述べる趣旨であるから,上記記載をもとに,被告主張の解釈を導くことはできない。 オ )本件異議答弁書(乙13)には,次の記載がある。 a@特開昭61-100246号公報(本訴における引用文献1)について「また,前記記載と重複するが本願発明の構成要件Eに関しては,甲第2号証(判決注:引用文献1のことである )中には『前記ホッ。 トメルト薄膜が前記透水性バックシート(判決注: 前記不透水性バ「」。) , ックシート の誤記と認めるに前記腰回り方向に沿って接合され体液の前後漏れ防止用シール領域を形成した』構成については開示されている(5頁8行ないし11行) 。」「本願発明の要旨を概略すると,本願発明は前後漏れ防止の観点より甲第2号証に記載されるようなホットメルト薄膜を設けることが有効であることを前提とし,かつ着用感の向上性の観点より発泡性の弾性シート部材を設けることが有効であるとの知見の下,それらの組合せにおいて,いかにして両者の欠点を補うように組み合わせるかの点を考究してなされたものである。すなわち,弾性伸縮部材として発泡性シートを用いた場合には,発泡性シートが液透過性であるとか発泡シートをその長手方向に間歇的に固定した場合には発泡シートとバックシートとの間から体液が漏れ出す危険性がある。そのため,本願発明は発泡シートと吸収体との離間部分にシール線部を形成して前後漏れを完全に防止するようにしたものである。逆説的に言うと,前記シール線部を形成したため,弾性部材として発泡性シートを用いることが可能となっている ・・・このように,本願発明は両者の巧みな組 。 合せによりそれぞれの欠点を補うように構成され」ている(5頁20行ないし6頁8行 。)A特開昭61-207605号公報(本訴における引用文献3)について「甲第1号証(判決注:引用文献3のことである )における漏れ。 防止用シールは,同号証の第11図から明らかなように,透液性のトップシートと不透液性のバックシートとを腰部回りに単に接合したシール構造であり,両シートが連続的に腰回りの方向に接合されている点で,逆に言うと両シート間に開口が形成されていない構成をもってシール構造としただけであり,該腰部において透液性トップシートに対しては何ら不透水処理が行われておらず,依然として吸収体に吸収された体液が吸収体の長手方向端部より滲み出し透液性のトップシートを通過して外部に漏れ出す問題を解決するものではない(3頁。」21行ないし28行)「これに対して,本願発明における漏れ防止用シールとは,腰部縁において透液性トップシートの内面側にホットメルト塗膜が形成されるとともに,弾性帯と吸収体端縁との離間位置において不透液性のバックシートと腰回りの方向に接合される構成をもって漏れ防止用シート(判決注: 漏れ防止用シール」の誤記と認める )とするもので 「 。 ある。すなわち,本願の漏れ防止用シールの場合には,ホットメルト塗膜により不透水とされるトップシート部分と素材的に不透水のバックシートとにより横V字状に不透水性のポケットが形成されるため,吸収体に吸収された体液が端部より滲み出すのを防止する。というものであり,甲第1号証記載のシール構造とはその作用および機能をまったく異にするものである(3頁28行ないし4頁7行 。 。」 ))本件異議決定(乙14)は,次のとおり,引用発明3及び引用発明1bに基づいて本件特許発明が容易に想到し得るとの異議理由には理由がないと判断した。 @「・・・本願発明の構成の一部である『前記離間位置において前記ホットメルト薄膜が前記非透水性バックシートに前記腰回り方向に沿って接合され,体液の前後漏れ防止用シール領域を形成した』構成に関しては甲第1号証(判決注:引用文献3のことである )に記載は。 ない。特許異議申立人は,甲第1号証の第10図及び第11図に本願発明の上記構成が示唆されており,液体漏れを防止するシール領域が形成される点が教示されているというが,第10図及び第11図に関する説明は上記に尽きるのであって,第10〜11図及びそれらに関する記載から,ホットメルト薄膜が非透水性バックシートに腰回り方向に沿って接合され体液の前後漏れ防止用シール領域を形成している構成が記載ないし示唆されているとは認められない。また,液体漏れの防止に関する上記記載は,伸縮手段の構造に基づくものというべきであって本願発明でいう前後漏れ防止用シール領域の形成によるものとはいえない(6頁3行ないし20行) 。」A「甲第2号証(判決注:引用文献1のことである )には,吸収物。 品およびその製造方法に関して記載されており,本願発明の使い捨て紙おむつの前提となる基本構成において共通する点は認められるが,本願発明の構成の一部である『前記離間位置において前記ホットメルト薄膜が前記非透水性バックシートに前記腰回り方向に沿って接合され,体液の前後漏れ防止用シール領域を形成した』点に関しては何ら記載がない(7頁1行ないし8行) 。」)原告(出願人)は,本件異議答弁書において,前記 )@のとおり,c a本件特許発明は引用発明1に記載されるようなホットメルト薄膜を設けることが有効であることを記載しているものの,全体としては,発泡シートと吸収体との離間部分にシール線部を形成して弾性部材として発泡性シートを用いること及びこれとホットメルト薄膜を組み合わせることによる効果を強調しているにすぎない。したがって,このホットメルト薄膜についての記載から,直ちに引用発明1のホットメルト薄膜の構成(素材)及びその効果と本件特許発明のホットメルト薄膜の構成及び効。,() , 果が同一であるとまで解することはできない また 原告 出願人 は同答弁書において,前記)Aのとおり,引用発明3は,透液性トップaシートに対して何ら不透水処理が行われていないものであるとして,引用発明3のシール構造と本件特許発明とはその作用及び機能を全く異にすると述べている。原告(出願人)は,この中で引用発明3との違いを強調するあまり,本件特許発明のホットメルト薄膜を「不透水」のものと記載している。しかし,この記載は本件明細書の前記の実施例2その他の各記載と明らかに矛盾するものであること,及び,本件異議決定においても,上記のとおり,引用文献1及び同3は「体液の前後漏れ防止用シール領域」について何ら記載のないことを理由に特許異議申立てを排斥しているのであって,原告の本件異議答弁書におけるこの記載を前提に判断しているものではないことからすれば,かかる引用文献3との構成の相違と無関係な出願経過における出願人の陳述を理由として,本件明細書の発明の詳細な説明とも明らかに矛盾する内容で,本件特許発明の技術的範囲を限定して解釈するのは相当ではない。 カ以上によれば,本件特許発明の「ホットメルト薄膜」については,上記のような出願経過を考慮しても,被告主張のように,これを「不透水性」のものとすることは相当ではない。 ( )被告製品の「ホットメルト薄膜 (構成要件C及びD)及び「体液の前6 」後漏れ防止用シール領域 (構成要件D)の充足性について 」ア目視による観察結果について)カーボントナーを付着させての観察結果についてa証拠(甲4,5,乙20,27)によれば,被告製品の透水性トップシートの非透水性バックシートがわ面に,カーボントナーを刷毛を用いて塗布し,その後,ホットメルト接着剤に付着していないカーボントナーをドライヤーで吹き飛ばした場合(甲4,5)及び台所用洗剤を含んだ洗浄水又は水道水でよく洗い,よくすすいだ場合(乙20,27)のいずれにおいても,被告製品の透水性トップシートの非透水性バックシートがわ面のホットメルト接着剤は,腹側及び背中側において,中央部に比べて濃密に塗布されていることが認められる。 )電子顕微鏡による観察結果についてb@証拠(乙25)には,被告製品の腹側端部から採取した試料を電子顕微鏡(倍率95倍)で観察したところ,切断面を写した写真3ない,「」 し14及び平面を写した写真15ないし19において それぞれ Dと記載されている箇所がホットメルト接着剤であると記載されている。また,証拠(乙28)には,被告製品の中央部から採取した試料を電子顕微鏡(倍率95倍)で観察したところ,切断面を写した写真2ないし10及び平面を写した写真11ないし14において,それぞれ「D」と記載されている箇所がホットメルト接着剤であると記載されている。いずれの証拠の電子顕微鏡写真においても 「(ホット,」Dメルト接着剤層)と記載されているところは,ところどころに分布して存在しているにすぎない。 ( ) 証拠 乙31・株式会社住化分析センター作成の分析・試験報告書には,被告製品の腹側端部から採取した試料を電子顕微鏡(倍率100倍)で観察したところ,ホットメルト接着剤はトップシートと吸収体との間のところどころに分布しているにすぎず,膜は形成されていないとの意見が記載されている。 これに対し,証拠(甲23,28)には,乙25,28においてホットメルト接着剤が存在するとして指摘されている箇所以外にも,多くの箇所においてホットメルト接着剤が存在するとの意見が記載されている。 A証拠(甲24)には,被告製品の腹側端部から採取した,長さ方向約2o,幅方向約14oの試料を電子顕微鏡(倍率120倍ないし110倍)で幅方向約3oの切断面について観察したところ,ホットメルト接着剤の領域が撮影幅の約8割ないし9割に及んでいることが,写真を示して説明されている。 証拠(甲29・株式会社東レリサーチセンター作成の測定分析結果), ,, 報告書 には 被告製品の腹側端部から採取した 長さ方向約10o幅方向約20oの試料の幅方向切断面について電界放射走査電子顕微鏡で二次電子像観察を行ったところ,2.4oの写真幅においてホットメルト接着剤が塗布されている領域が約8割に及んでいることが,写真を示して説明されている。 これに対し,証拠(乙35)には,甲29の観察は画像の鮮明さに欠けるし,ホットメルト接着剤と指摘された部分にホットメルト接着剤でないものが含まれているとの意見が記載されている。 B証拠(乙39・事実実験公正証書)には,被告製品の端部における試料を電子顕微鏡(40倍)で観察し,嘱託人代理人らの事前の説明を基に,公証人が観察を行い,公証人が観察画面のうち最も多くホットメルト接着剤が付着していると判断した画面をそれぞれ4枚ずつ印刷添付して公正証書を作成したことが記載されている。電子顕微鏡写真のうち,被告製品のトップシートとティッシュの試料の切断面を撮影した写真においては,ホットメルト接着剤層がところどころに存在しているだけであるものの,同試料のうちティッシュを平面から撮影した写真M2b及びL2bにおいては,ティッシュのトップシートがわ面においてホットメルト接着剤層が不規則な小枝状の形状で幾本も存在していることが認められる。 C上記のとおり,被告製品のトップシートとティッシュからなる試料を切断し,この切断面を電子顕微鏡を用いて目視観察を行った場合,ホットメルト接着剤層が存在する割合は,観察者の主観ないし判断基準により左右される面があることは否定できない。また,乙39の公正証書に添付されている写真M2b及びL2b(試料のティッシュを平面から撮影したもの)からすると,ホットメルト接着剤層は,トップシート側のティッシュの平面を不規則な小枝状に幾本も存在しているのであるから,切断面によって,ホットメルト薄膜が存在する密度に濃淡が生じるのは不自然ではない。 )四酸化オスミウムで染色した後の観察c( 。 @証拠 乙31・株式会社住化分析センター作成の分析・試験報告書以下「乙31実験」という )には,ホットメルト接着剤がスチレン 。 -ブタジエン共重合体(以下「SBR」という )であるとのことか。 ら,SBRが四酸化オスミウムによって染色され,一方,ティッシュ等の紙繊維やトップシート(ポリプロピレン)は染色されないことを利用して,四酸化オスミウムによる24時間の染色を行ったこと,染色されたSBRの部分は,目視の場合は黒色に,電子顕微鏡の場合は白色に観察されること,観察の結果,染色された部分はところどころに分布していて,膜は形成されていないことが記載されている。しか,( ), し 同号証の写真14 被告製品を平面から撮影したもの によれば被告製品におけるホットメルト接着剤層は,糸状でかつ不規則なスパイラル状で存在していることが認められるのであり,これを切断面で見ても膜状のものが認められないことは当然である。 A一方,証拠(甲30,31,45。いずれも株式会社東レリサーチセンター作成の測定・分析結果報告書)によれば,四酸化オスミウムによる24時間の染色と,48時間の染色を対比すると,後者の方が染色が進むものであること,及び,被告製品においては,乙31の写真14に比べ,糸状で,かつ,不規則ながらも密度の濃いスパイラル状のホットメルト接着剤層が存在していること(甲30の写真3等)が認められる。 もっとも,乙20の写真17ないし写真24(ファイバースプレー法及びウエーブ法により製造された被告製品のオスミウム染色後の写真)並びに乙41の写真11(おむつMサイズの48時間染色後のもの)と写真12(おむつLサイズの48時間染色後のもの)とを比較すると,ウエーブ法により製造された被告製品におけるホットメルト接着剤層のスパイラル状の形状は,甲30,31,45の各写真と酷似しているものの,ファイバースプレー法により製造された被告製品におけるホットメルト接着剤層の形状は,スパイラル性が弱い曲線形状となっている(以下,これを「準スパイラル状」という。。)Bなお,証拠(乙41・株式会社住化分析センター作成の分析・試験報告書。以下「乙41実験」という )には,24時間の染色と48 。 時間の染色とで染色領域に大きな違いは認められないとの記載があるものの,乙41の写真5ないし12及び甲37によれば,48時間の染色の方がより鮮明に染色されており,糸状でより密度の濃いスパイラル状のホットメルト接着剤層が存在することが認められる(四酸化オスミウムによる染色については,24時間の染色による乙31実験, (, に比べれば 48時間染色の写真が掲載されている上記証拠 甲3031,45)がより信頼しうるものである。。)また,証拠(乙41)には,四酸化オスミウムによる48時間の染色後の試料について赤外分光測定(IR)を行ったところ,目視の場合に濃く黒色に変色している箇所からのみ,SBRのブタジエンに由来する699pの吸収が確認され,薄く変色している箇所では,6-199pの吸収が認められなかった旨の記載がある。 -1しかし,証拠(甲39の1・2,40)によれば,ブタジエンのピークは910pと960pであり,699pのピークはスチレ-1 -1 -1ンであること,乙41の図3及び図6にはスチレンに由来する699pの特性吸収だけがみられ,ブタジエンに由来する910pと9-1 -160pの特性吸収が観測されていないという不自然さがあることが-1認められる。さらに,証拠(甲38,検甲6の1・2)によれば,乙31実験の目視観察用試料(吸収体,非透液性バックシート及び外装シートを取り除いたものであると乙41実験の目視観察用試料 吸 。) (収体,非透液性バックシート及び外装シートを取り除いていないものである )とについて,四酸化オスミウムによる48時間の染色をす 。 ると,乙41実験の試料は,乙31実験の試料に比較して,黒色に染色された線が連続していない箇所が多く,また,吸収体中の吸収ポリマーも黒色に変色されるため,48時間の染色をしても濃い黒色に染色できていないことが認められる。このように,乙41実験は,四酸化オスミウムによる染色後の試料を目視で適切に観察したことを裏付ける意味で提出されたものであるが,根本的事柄に誤りが多く,全体として採用することができない。 なお,これらの点について,被告は 「ブタジエンに由来する69 ,9p」は「スチレンに由来する699p」の誤記であったと主張-1 -1し(乙43 ,誤記を訂正した乙44を提出する。さらに,被告製品 )に追加塗布されるホットメルト接着剤には「スチレン-水素添加ブタジエン共重合体」と「スチレン-ブタジエン共重合体」との二種類があり,Mサイズには前者が,Lサイズには後者が使用されていて,前者の場合,ブタジエンの二重結合の大部分が水素添加により二重結合ではなくなっているので,IR分析ではブタジエンの二重結合が検出されないと主張する(乙52 。)しかしながら,被告の上記主張は,乙41を提出後に原告から指摘を受けた後の主張であり,これによっても,被告が主張する趣旨で乙41を採用することはできない。 )目視観察による被告製品のホットメルト接着剤層についてd以上によれば,被告製品のホットメルト接着剤層は,全体にわたり散点状ないしストライプ状の接着剤層が形成されている上に,ファイバースプレー法あるいはウエーブ法により背部と腹部の両端部に追加塗布されるものであり,上記の四酸化オスミウムによる染色実験から追加塗布部分を平面的に見ると,糸状で濃い密度において不規則なスパイラル状ないし準スパイラル状に存在しているものであり,糸状で不規則であるため,これを幅方向に切断した断面の電子顕微鏡写真で見ると,ホットメルト接着剤層が濃く存在している部分と薄く存在している部分とがあるものと認められる(さらに,判断者の主観ないし判断基準の差異によるばらつきもあることは前記のとおりである。なお,被告製品につ 。)いては,四酸化オスミウムによる染色実験においても,ホットメルト接, , 着剤層の散布形状が 糸状でかつ不規則で濃密なスパイラル状のものと糸状でかつ不規則で濃密な準スパイラル状のものと2種類存在するのは,被告製品が上記2種類の製法により製造されていることによるものと推認される(なお,上記のようなスパイラル状のホットメルト接着剤層を電子顕微鏡等で拡大してみたときに,前記のように,小枝状に見えるものと推認される。。)イ被告製品を用いた実験について)本件特許発明の「ホットメルト薄膜」は,前記認定のとおり,吸収体a端部上と発泡シート上とに跨ってその両者に固着して形成され,吸収体の長手方向のずれを防止するとともに,吸収体に一旦浸透した体液が長手方向に流れてトップシートを伝わることによる前後漏れを防止すること,あるいは,その端部のトップシート側から表面に滲み出すことによる前後漏れを防止するという作用効果を奏するものであり,また,上記ホットメルト薄膜を吸収体の長手方向端縁と発泡シートとの間の離間位置において非透水性バックシートに接合して「体液の前後漏れ防止用シール領域」を形成することによって,吸収体の端縁から紙おむつの長手方向端縁に流出する体液が,発泡シートとバックシートの間から漏れることを防止するものである。そして,このような「ホットメルト薄膜」及び「体液の前後漏れ防止用シール領域」の漏れ防止効果は,本件明細書の実施例2の記載,及び,紙おむつにおける接着剤層を「網目状の模様 (甲15,16 ,あるいは 「くもの巣状塗膜 (甲25の1・2) 」),」と説明する例があることからいっても,ホットメルト接着剤層が隙間なく連続的に形成された,不透液性といえる程度のものである必要はないことも前記認定のとおりである。したがって,被告製品における不規則なスパイラル状あるいは準スパイラル状の散布形状のホットメルト接着剤層が,本件特許発明の上記効果を奏するか否かを次に判断する。 )証拠(甲7,14,43の1・2,44)によれば,被告製品(試料b1)と被告製品から透水性トップシートをドライヤーで熱をかけて剥離したもの(試料2)について,30度の傾斜台上に設置して上部から人工尿を7ml/秒で1回あたり70mlを約10分間隔で合計3回注入したところ,試料2の場合は,3回目の注入後に離間位置を越えて長手方向に人工尿が流出し,一方,試料1では流出しなかったことが認められる(以下,この実験を「甲7等実験」という。。)かかる実験方法は,紙おむつの吸収性能測定方法の一つである斜面モレ評価方法(製品を斜面台にセットして,5〜10ml/秒の排尿速度で,人工尿を30g〜50g滴下して,人工尿が製品から漏れ出すまでにおむつが吸収した液量を吸水量とする )に沿うものであり(甲12 。 の1・ 紙おむつの性能と評価方法 ,甲12の2 ,また,月齢18か 「 」)月の幼児の排尿が1回あたり40〜75mlであり,排尿速度が5〜7ml/秒であること(甲13)に照らし,被告製品の用法に沿った合理的な実験方法というべきである。 )一方,証拠(乙49・事実実験公正証書)によれば,被告が,被告製c品のMサイズについて,30度の傾斜台上に設置して上部から人工尿を7ml/秒で注入する3種類の実験,すなわち,連続注入テスト(上記速度で連続注入して,人工尿が漏れるまでの時間を測定する,3分。)間隔注入テスト(人工尿を7ml/秒の注入速度で10秒間注入し,その後3分間放置し,また10秒間注入し,その後3分間放置することを繰り返し,人工尿が漏れるまでの時間を測定する )及び10分間隔注。 入テスト(人工尿を7ml/秒の注入速度で10秒間注入し,その後10分間放置し,また10秒間注入し,その後10分間放置することを繰り返し,人工尿が漏れるまでの時間を測定する )を行ったことが認め 。 られる(以下「乙49実験」という。。)被告の行った3種類の実験のうち,連続注入テストでは約31秒後,すなわち約217mlの人工尿を注入した後に濾紙に流れ出たのであり,本件明細書の実施例2(注入量210tで漏れが生じた )と同様。 の結果を示すものである。また,3分間隔注入テストにおいては,1回目の注入開始後6分57秒(すなわち,3回目の注入終了後間もなく)又は9分44秒(すなわち,4回目の注入終了後間もなく)で漏れ出しが生じている。そして,10分間隔注入テストでは,試料1-3のほかは,1回目の注入開始後約30分(すなわち,4回目の注入途中ないし注入終了後まもなく)で漏れ出しが生じている。試料1-3は1回目の注入開始後20分31秒(すなわち,3回目の注入終了後まもなく)で漏れ出しが生じているところ,写真46によれば,右方に偏って人工尿が流れたために不適切な実験になったものと考えられる(甲52 。し)たがって,10分間隔注入テストは,原告の行った実験(3回目の注入を終えた時点で漏れが生じないとの結果が得られた )と同様の結果を。 示すものである。 ,, , したがって 甲7等実験は 乙49実験の結果とも沿うものであって信用できるものである。 )証拠(乙50,51,54,66)によれば,被告が端部に追加のホdットメルト接着剤を塗布しない試料(試料B)を作成して,人工尿注入実験を行ったところ,市販品(試料A)と試作品(試料B)との間で,漏れの発生について顕著な相違がなかったことが認められる(以下「乙50等実験」という。仮に,この実験結果が正当なものであれば, 。)被告製品のホットメルト接着剤層が本件特許発明の作用効果を奏していないことを示す有力な証拠となる。 しかし,証拠(甲47)によれば,五つの試料Bの平均重量は42.7gであること,市場で購入したロットの異なる被告製品(ドレミLサイズ)の9パックの平均重量は,38.9gから40.3gであること。, 。 が認められる すなわち 試料Bは市販品に比べ重いことが認められるそして,証拠(甲50,56の1・2)によれば,試料Bの体液吸収体を解体したところ,市場で購入した被告製品とは内容物が異なっていたこと,試料Bには高吸収性ポリマーが含まれておらず,パルプのみが含まれ,パルプ量が被告製品の約2倍となっていたことが認められる。したがって,試料Bは,高吸収性ポリマーを含有する被告製品と比べて,(, 体液吸収体の構造及び吸収量が異なっているというべきである 被告は乙67,91,92を提出して,試料Bには高吸収性ポリマーが含有されていると主張する。しかし,甲50,56の1・2によれば,市販品との相違は単に目視することによって明らかであるし,乙67,92で用いた試料Bが乙50で用いた試料Bと同一の構成を有するかも不明であるので,被告の主張は採用することができない。さらに,証拠(甲。)48,49,検乙4)によれば,試料Bを作成する過程において,通常の製造スピードよりも遅くなったからか,ヒートシール部の熱融着が強固になされた可能性があること,証拠(甲51の1・2)によれば,試料Bは,中央部付近のホットメルト接着剤が市販品よりも多く塗布されている可能性があることが認められる。 このように,乙50等実験は,試料Bが端部に追加のホットメルト接着剤を塗布しないほかは,市販品(試料A)と同一の構成を有すること, , を前提とするものであるところ かかる点に様々な疑問があることから採用することができない。 )証拠(乙53)によれば,被告製品のMサイズについて,@特段の加e工を施さないもの(試料A ,A背側端部のトップシートをドライヤー )で加熱しながら紙おむつ端部から吸収体端部の手前まで剥離し,剥離した部分のトップシートの一部をはさみで切り取り,吸収体端部が露出した状態にしたもの(試料B ,B背側端部のトップシートをドライヤー )で加熱しながら吸収体端部の手前まで剥離し,トップシートを弾性体の部分だけ指で加圧して弾性体に接着させ,弾性体と吸収体の離間部のトップシートとバックシートは接着していない状態にしたもの(試料C)の三種の試料につき,30度の傾斜台上に設置して上部から人工尿を7ml/秒の注入速度で10秒間注入し,その後10分間放置し,また10秒間注入し,その後10分間放置することを繰り返し,人工尿が漏れるまでの時間を測定する実験を行ったことが認められ(以下「乙53実験」という,被告は,各実験結果において顕著な相違がなかったと 。)主張する。 しかし,試料A-1,A-2は,1回目の注入開始後約30分(すなわち,4回目の注入途中ないし注入終了後まもなく)で漏れ出しが生じていて,乙49実験と同様の結果を示すのに対し,試料A-4,A-5の場合は,人工尿の流れに照らし,本件特許発明の作用効果を奏する部位とは別の箇所から漏れ出しが生じていることが明らかであり(写真65及び69 ,不適切な実験になったものと考えられる(甲52 。し ) )たがって,乙49実験の結果及び原告による検証実験(甲52)の結果(3回目の注入終了の5秒後においても滲み出しが生じない )と併せ。 考えれば,試料Aは3回目の注入終了後においても漏れが生じないものと認められる。一方,試料B及び試料Cの場合については,多くの場合において,3回目の注入終了後まもなく漏れが生じ,原告による検証実(), , 験 甲52 においても 試料Bの場合は3回目の注入終了の5秒後に試料Cの場合は3回目の注入終了の24秒後に漏れが生じるというように,同様の結果が得られている。 したがって,乙53実験は,試料Aと試料B及び試料Cとの間に顕著な相違がないことを示すものとはいえず,むしろ試料Aが,試料B及び試料Cと比較して,滲み出しを防止する効果を有することの裏付けとなり得るものである。 )証拠(乙55,56)によれば,乙53実験の三種の試料について,f人工尿を5ml/秒の注入速度で連続注入して,人工尿が漏れるまでの,,,, 時間を測定する実験を行ったところ 試料A 試料B 試料Cについて漏れが発生するまでの時間及び注入量はほとんど変わりがなかったことが認められる。 しかし,証拠(甲53)によれば,連続注入した場合は,吸収体のない立体ギャザーの起立端縁近傍へと人工尿が広がりながら先に液が流れ,端部のヒートシールされていないところから漏れるか,ヒートシールで長手方向への流れがせき止められて,立体ギャザーより内側に流れて漏れていること,つまり,おむつ端部からの滲み出しは,立体ギャザー間の位置で生じているのではなく,吸収体のない側部の立体ギャザー部から液が漏れていることが認められる。したがって,前記実験を基に被告製品が本件特許発明の作用効果を奏していないということはできない。 )証拠(乙57)によれば,被告製品のMサイズにおいて,吸収体であgるパルプ(綿状のもの)及び吸収ポリマー(粉状のもの)を除去した試料で人工尿注入実験を行ったところ,5ml/秒による注入を開始して0.3秒後には人工尿が弾性体と吸収体の離間部で領域を越え,0.4秒後には端部から人工尿が漏れだしたことが認められる。 しかし,本件特許発明は,吸収体端部からの滲み出しを防止するものであるから,吸収体の存在を前提として滲み出し防止の効果を検証するのが相当であり,排尿速度と同等の勢いで吸収体から尿が滲み出すとは考えられないのであるから(甲54 ,前記実験を基に被告製品が本件 )特許発明の作用効果を奏していないということはできない。 )以上に検討した結果によれば,被告製品の「ホットメルト接着剤層」hは,吸収体に一旦浸透した体液が長手方向に流れてトップシートを伝わることによる前後漏れを防止すること,あるいは,その端部のトップシート側から表面に滲み出すことによる前後漏れを防止するとともに,上記ホットメルト薄膜を吸収体の長手方向端縁と発泡シートとの間の離間位置において非透水性バックシートに接合して「体液の前後漏れ防止用シール領域」を形成することによって,吸収体の端縁から紙おむつの長手方向端縁に流出する体液が,発泡シートとバックシートの間から漏れることを防止する,との本件特許発明と同じ作用効果を奏しているものと認められる。 このような結論は,被告製品に関する電子顕微鏡による観察の結果や四酸化オスミウムで染色した後の観察の結果にも沿うものである。すなわち,被告製品のホットメルト接着剤層を四酸化オスミウムで染色して観察すると,ホットメルト接着剤層が糸状でかつ不規則で濃密なスパイラル状あるいは準スパイラル状に存在していることは前記認定のとおりである。そして,被告製品において不織布の繊維流れ方向は長手方向であること(甲34)を併せ考えると,長手方向に配された繊維の隙間に糸状でかつ不規則で濃密なスパイラル状ないし準スパイラル状にホットメルト接着剤層が存在することによって,長手方向への体液の漏れが防止されることが推認されるのである。なお,このようなホットメルト接着剤層によっては,トップシートの厚み方向への体液の漏れは防止され難いものと考えられる。 そして,ホットメルト接着剤層がこのような形態であれば,一切断面を電子顕微鏡で観察した結果(乙25,28,31,39)においてホットメルト接着剤がところどころにしか存在しないということは何ら不合理なことではないことは前記のとおりである。また,ホットメルト接着剤層領域にホットメルト接着剤が不規則で濃密なスパイラル状ないし準スパイラル状に存在することによっても,連続的な長手方向への体液の漏れ防止という本件特許発明の作用効果が奏されていることが推認されることも上記認定のとおりである。 また,おむつにおける接着剤層を「網目状の模様 (甲15,16 ,」)あるいは 「くもの巣状塗膜 (甲25の1・2)と説明する例がある ,」ことが認められること(甲15,16,25の1・2,26)からすれば,当業者は,不織布の繊維の隙間にホットメルト接着剤層が不規則で濃密なスパイラル状ないし準スパイラル状に存在した場合,ホットメルト接着剤が存在する領域(長手方向に一定の幅を有するものである )。 全体を見れば,ホットメルトから成る「薄膜」が形成されていると理解するといっても差し支えないというべきである。 ウ耐水度試験及び透水性試験について証拠(乙20,21,検乙2)によれば,被告製品について耐水度試験(水面上に設けられたクランプに試料をセットし,水面下の水中と連結管で接続された水準装置の水面の高さを,試料面の高さから一定の速度で上昇させ,試料が,試料面の高さと水準装置の水面の高さとの差の水圧を保持できなくなって,水が試料上に滲み出すときの,水準装置の水面の高さを耐水度とする試験)を行ったところ,トップシートの背中部分(トップシートの端部 は トップシートの中央部と同程度の高い透水性を示し い ) , (, .),, () ずれも 0 0p一方 バックシートは不透水性である 21p以上こと,透水性試験(青色着色液を1t滴下してその吸収状態を観察する試験)において,被告製品の端部及び中央部のいずれも青色着色液が容易にトップシート下の吸収体に到達したこと,ホットメルト接着剤を50μm塗布した試料を用いて上記実験を行ったところ,非透水性のバックシートと同様の耐水度を示し,透水性試験においてもトップシート下の吸収体に到達しなかったことが認められる(以下 「乙20実験等」という。 ,。)上記試験結果は,トップシートの端部が中央部と同程度の高い透水性を有することを示すものである。しかし,上記試験は,トップシートの厚み方向の漏れを検証する実験であって,長手方向の漏れを防止するという本件特許発明の作用効果を検証する実験としては相当でない。被告製品においては,ホットメルト接着剤層が不織布繊維の隙間にスパイラル状ないしは準スパイラル状に存在することによって長手方向への漏れを防止しているのであるから,厚み方向への漏れが防止されていないとしても,このことにより,被告製品のホットメルト接着剤層が本件特許発明の「ホットメルト薄膜」に該当しなくなるというわけではない。本件特許発明における「ホットメルト薄膜」は,トップシートの長手方向の前後漏れを防止することを重要な作用効果の一つとしているのであるから,上記試験は,被告製品が本件特許発明の作用効果を奏し得ないことを立証するものではない。 エ結論以上によれば,被告製品の糸状でかつ不規則で濃密なスパイラル状ないし準スパイラル状のホットメルト接着剤層5は,本件特許発明の「ホットメルト薄膜」に該当し,ホットメルト接着剤層5が非透水性バックシート2の腰回り方向に沿って接合されることによって形成している領域は,本件特許発明の「体液の前後漏れ防止用シール領域」に該当することが認められ,これを覆すに足りる証拠はない。 3争点2-2(被告製品の弾性帯が「体液吸収体の長手方向縁と離間 (構成」要件B及びD)しているか)について前記1で述べたとおり,被告製品において,弾性帯は体液吸収体の長手方向縁と離間しているのであって,これと異なる構成のものであることを認めるに足りる証拠はない。したがって,被告製品の弾性帯が「体液吸収体の長手方向縁と離間 (構成要件B及びD)していることは明らかである。 」以上のとおりであるから,被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に含まれるものである。なお,被告製品について,体液吸収体と弾性帯が接触又は重合している不良品が出現し得るとしても,そのような不良品が一定の割合で存在していることについて何ら具体的な主張立証がないことは前記のとおりである。 4争点3(本件特許発明が特許法29条2項に違反しているか)について( ) 証拠(乙15)によれば,引用文献1には,次の記載がある。 1ア特許請求の範囲「基本的には,透水性の表面シートと不透水性のバックシートと両シート間に介装される吸収体とから構成され,長手方向両端部において表面シートとバックシートが一体的に接合される吸収性物品において,上記透水性表面シートの吸収体側表面上の,上記吸収性物品の少なくとも幅方向中央領域に,上記表面シートとバックシートとの一体的接合部分から吸収体上に臨む位置に亘って延在するホットメルト不透水性被膜を形成したことを特徴とする吸収性物品(請求項(1 )。」)「・・・上記長尺の透水性表面シートの,吸収体と接触すべき側の表面において,透水性表面シートの少なくとも幅方向中央部分に,上記吸収体の断位置となるべき部分から上記吸収体上に臨む所望位置となるべき部分にかけて,ホットメルトを面状に塗布することによりこの部分を不透水化することを特徴とする吸収性物品の製造方法(請求項(2 )。」)イ発明の詳細な説明)「本発明は吸収体と該吸収体の上面に位置する透水性シートと吸収体aの下面に位置する液不透過性シートとからなる体液吸収性物品において,該物品の長手方向両端部の前記透水性シートの吸収体面側表面に適宜長さと幅を有するフィルム状の溶融合成樹脂を塗布して前記透水性シートに不透水性を付与したもので,このように形成された不透水性領域の一端部を前記不透水性シートと一体に接合するとともにこの不透水性領域の他端部を前記吸収体上に位置させたことを特徴とするものである(2頁右上欄末行ないし左下欄10行) 。」)「 作用)上記したように,本発明によれば,使い捨ておむつ,生理b (用ナプキン等の体液吸収用の吸収性物品において,吸収性物品の長手方向両端部の表裏面シート接合部から吸収体上に臨む位置に亘って,透水性表面シートの吸収体側表面に溶融合成樹脂が塗布され,この領域に不透水性の被膜が形成される。したがって,従来のように肌ざわりを悪化させる洩れ防止材を使用せずとも,この吸収性物品の着用者が俯いてあるいは仰いて横臥する姿勢をとっても,この部分において,吸収体に吸収されている体液が逆流するのが防止されるとともに,吸収性物品の長手方向端部から体液が洩れるのも防止される(2頁左下欄11行な 。」いし右下欄3行))「本実施例によれば,おむつ1の長手方向両端部すなわち着用時腰まcわり部に位置する,透水性表面シート3の吸収体側表面に,長さl に 1亘ってホットメルト被膜6が形成されている ・・・ホットメルト被膜 。 6は・・・従来の接合のためのホットメルト塗布のように線状に塗布されるのではなく,面状に塗布される(2頁右下欄18行ないし3頁 。」左上欄13行))「このホットメルト被膜6は,透水性シート3に不透水性を賦与するdためのもので,市販のホットメルトを使用することができる(3頁。」左上欄14行ないし16行)「 , 。」e)合成樹脂被膜6の厚みとしては 10〜25μ程度で十分である(3頁左上欄18行ないし20行))「 ホットメルト被膜6は )一般には,1〜3p程度吸収体8上に重f (,量されるのが好ましい(3頁右上欄16行ないし17行) 。」)「本発明によれば,従来,約40μ厚のパラフィンシート等の防水材gを使用していたところを,10〜25μ程度のホットメルト被膜形成により同等の洩れ防止効果を達成できる (4頁左上欄2行ないし5行) 」( ) 本件特許発明1と引用発明1とを対比すると,次のとおりである。 2ア構成要件A@引用文献1の特許請求の範囲(1)項には 「基本的には,透水性の表 ,面シートと不透水性のバックシートと両シート間に介装される吸収体とから構成され,長手方向両端部において表面シートとバックシートが一体的に接合される吸収性物品」と記載されている。 引用発明1と本件特許発明とを対比すると,引用発明1の「透水性の表面シート「不透水性のバックシート「両シート間に介装される吸収 」, 」,体」は,本件特許発明の「透水性トップシート「非透水性バックシー 」,ト ,前記透水性トップシートと非透水性バックシートとの間に介在され 」ている「体液吸収体」に,それぞれ相当する。 したがって,引用文献1には構成要件A@が記載されている。 イ構成要件C引用文献1の特許請求の範囲(1)項には 「上記透水性表面シートの ,吸収体側表面上の,上記吸収性物品の少なくとも幅方向中央領域に,上記表面シートとバックシートとの一体的接合部分から吸収体上に臨む位置に」。 亘って延在するホットメルト不透水性被膜を形成した と記載されている引用発明1と本件特許発明とを対比すると,引用発明1の「上記透水性表面シートの吸収体側表面上「ホットメルト不透水性被膜「吸収体 」, 」,上に臨む位置に亘って延在する(ホットメルト不透水性被膜 」は,本件)「 」,「」, 特許発明の トップシートのバックシートがわ面ホットメルト薄膜「体液吸収体端部上・・・に固着されるホットメルト薄膜」に,それぞれ相当する。 したがって,引用文献1には,構成要件Cの一部である 「トップシー,トのバックシートがわ面において ・・・体液吸収体端部上・・・に固着 ,されるホットメルト薄膜を形成」する構成(被告主張の構成要件C@)が記載されている。 ウ構成要件D被告は,引用文献1には,構成要件Dの一部である「前記ホットメルト薄膜が前記非透水性バックシートに前記腰回り方向に沿って接合され,体液の前後漏れ防止用シール領域を形成したこと (被告主張の構成要件D 」A)が記載されていると主張する。 しかし,構成要件Dは,弾性帯と体液吸収体との離間位置において,構成要件Cのホットメルト薄膜が非透水性バックシートに腰回り方向に沿って接合されることによって形成される領域であるところ,引用文献1には弾性帯がなく,したがって上記離間位置も存しない。そして,構成要件Dの「前後漏れ防止用シール領域」は,吸収体の端縁から紙おむつの長手方向端縁に流出する体液が,発泡シートとバックシートの間から漏れることを防止する作用効果を奏するものであり,弾性帯を有しない引用文献1にはかかる構成及び作用効果は記載も示唆もされていない。 したがって,構成要件Dは,引用文献1に開示も示唆もされていない。 エ構成要件E引用文献1の発明の詳細な説明には,同発明が「使い捨て紙おむつ」に関する発明である旨の記載がある。よって,構成要件Eは引用文献1に記載されている。 ( ) 本件特許発明と引用発明1との相違点3ア本件特許発明と引用発明1とは 「体液吸収体と,透水性トップシート ,と,非透水性バックシートとを有し,前記透水性トップシートと非透水性バックシートとの間に前記体液吸収体が介在されており「前記トップ,」,シートのバックシートがわ面において,体液吸収体端部上に固着されるホットメルト薄膜を形成し 」た「使い捨て紙おむつ」との点で一致する。 ,イ一方,本件特許発明と引用発明1は,次の点で相違する。 本件特許発明は,)体液吸収体の長手方向縁より外方に延びて透水性トップシートと非a1透水性バックシートとで構成されるフラップにおいて腰回り方向に,弾性帯を有していること(構成要件AA))前記弾性帯が,弾性伸縮性の発泡シートからなること(被告主張のa2構成要件B@))前記発泡シートが透水性トップシートと非透水性バックシートとの間bに介在され,前記体液吸収体の長手方向縁と離間していること(被告主張の構成要件BA))前記ホットメルト薄膜が,トップシートのバックシートがわ面においcて,体液吸収体端部上と発泡シート上とに跨ってその両者に固着されていること(被告主張の構成要件CA))前記離間位置において前記ホットメルト薄膜が前記非透水性バックシdートに前記腰回り方向に沿って接合され,体液の前後漏れ防止用シール領域を形成していること(構成要件D)という構成を有するのに対し,引用文献1には,上記各構成が記載されていない点で相違する。 ( ) 引用文献2(乙16)には,次の記載がある。 4ア特許請求の範囲「液透過性のトップシート,液不透過性のバックシート,前記両シートの間に位置する吸収体およびつかいすておむつを装着するための係止具を有する実質的に長方形のつかいすておむつにおいて,バックシートに対し少なくとも1つの短辺側端部に近接する横手方向に通気性かつ伸縮性帯状部材(3)が取り付けられていることを特徴とするつかいすておむつ 」。 (請求項1)「通気性かつ伸縮性帯状部材がバックシートのウエスト部を覆う位置に設けられている特許請求の範囲第1項記載のつかいすておむつ(請求。」項2)イ発明の詳細な説明)「本発明はウエスト部モレ防止及びウエスト部のフィット性を向上さaせた構造を有するつかいすておむつに関する(1頁右欄10行ない 。」し12行)「, ,b)本発明者らは ・・・バックシートに対しその横手方向に柔らかく弾性を有する比較的幅広い,不織布状の通気性をともなった伸縮性部材を取りつけることにより,おむつのウエスト部を柔らかく,しかも比較的広い圧接面積で密着させたテープの着脱に際し,バックシートと一体となって伸縮し,着脱を容易にし,ウエスト部のモレ・・・を有効に防止することができることを見いだし本発明に到達した(2頁左上欄。」20行ないし右上欄10行))「本発明の伸縮性部材がウエスト部に有効に働くためには吸収体と重cならない部分が20o以上の巾であることが好ましい。但し伸縮性部材の一部が吸収体と重なっていてもよい(2頁右上欄20行ないし左 。」下欄3行))「このおむつは第2図,第3図から明らかなように通気性かつ伸縮性d帯状部材(不織布状弾性体)3が,トップシート1とバックシート4との間で吸収体上部係止具(テープ)5側に位置し,バックシート4の横手方向に沿って吸収体2に重ならない部分が20o以上の巾であるか,吸収体2との重なり部分が少なくとも横手方向において不織布状弾性体3の伸張をできるだけ妨げぬ範囲内の巾で固定されている(2頁左。」下欄16行ないし右上欄5行))「・・・又,かかる効果的な構成のためには吸収体を伸縮性部材からeある程度遠ざけることも必要である。吸収体に重ならない部分の巾が20o以上であると吸収体を壊すことなく伸縮性部材が伸縮し,かつおむつウエスト部を着用者の肌に密着させることができ効果的である(3。」頁左欄18行ないし右欄4行)( ) 相違点 )について5b引用文献2においては,伸縮性部材と吸収体とが重なり合っている図が記載されている。そして,上記各記載は,吸収体と伸縮性部材が重なり合っていることを前提として,伸縮性部材のうち,吸収体と重ならない部分が20o以上あることが望ましいことを開示したものであって,吸収体と伸縮性部材が離間した構成は開示ないし示唆されていないと解するのが相当である。 ,「 」, 被告は伸縮性部材の一部が吸収体と重なっていてもよい との記載は伸縮性部材が吸収体と重ならない構成を開示ないし示唆するものであると主張する。しかし,上記箇所の直前の文章は,伸縮性部材と吸収体とが重なり合っていることを前提とする記載であり,他の箇所の記載も重なり合いを前提としているのであるから,上記箇所は,伸縮性部材のうち,吸収体と重ならない部分が20o以上の巾であることが好ましいとの記載を前提として,20oに満たない伸縮性部材のうちの一部分だけが吸収体と重なっている構成でも構わないということを記載したものと解するのが相当である。被告の主張は採用できない。 したがって,相違点)は,引用文献2に開示ないし示唆されていない。 b( ) 相違点 )について6dア引用文献2は,上記のとおり,伸縮性部材と吸収体とが重なり合っていることを前提とするものであるから,弾性帯と体液吸収体とが離間していることを前提としてシール領域を形成するとの相違点)の構成は何ら開d示も示唆もされていない。 イ仮に,引用文献2に,伸縮性部材と吸収体とが離間した構成が黙示的に開示ないし示唆されていると仮定しても,その離間位置において体液の前後漏れ防止用シール領域を形成することは,当然ながら,全く開示も示唆もされていない。被告は,引用発明1に引用発明2を適用して,引用文献1に記載された製造方法によって紙おむつを製造すれば,必然的に相違点)の構成になる旨主張する しかし 引用文献1に記載された製造方法 引d 。, (用文献1の第5図及び第6図)は製造方法の概略図にすぎず,その詳細は不明である上に,伸縮性部材が設けられた場合にも同一の製造方法が採用されるか否かは不明であるから,被告の上記主張は採用し得ない。 ウしたがって,引用発明1に引用発明2を組み合わせた場合に,離間位置においてホットメルト薄膜をバックシートに接合して体液の前後漏れ防止用シール領域を形成することを当業者が容易に想到し得るとはいえない。 ( ) 以上のとおりであるから,引用発明1に引用発明2を組み合わせても,本7件特許発明は容易に想到し得ないものであって,本件特許発明が進歩性に欠け無効である旨の被告主張は理由がない。 5争点4-1(仮に,争点2-1に関する原告の主張を前提とした場合,本件特許発明が,特許法29条の2に違反しているか)について被告は,仮に 「ホットメルト薄膜」がホットメルト接着剤が散点状又はス ,トライプ状に形成されたものであるとすれば,本件特許発明は特許法29条の2に違反すると主張する。しかし,原告はそのような主張をしていないし,当裁判所の採用する「ホットメルト薄膜」の解釈及び被告製品における「ホットメルト接着剤層」は上記構成を備えるものではないので,かかる被告の主張は。,, , 失当である 以下 念のため 本件特許発明が先願考案と実質的に同一であり特許法29条の2に違反するものであるか否かを判断する(なお,原告は,上記主張は時機に後れた防御方法として許されないと主張する。しかし 「訴訟,の完結を遅延させる (民事訴訟法157条1項)とまではいえないので,時 」機に後れた防御方法として却下するのは相当でない。。)( ) 先願考案(乙37)には,次の記載がある。 1「液透過性の表面シートと液不透過性の裏面シートの間に吸収材を有する使い捨ておむつにおいて,該おむつの腰囲り(判決注: 腰回り」の誤記「と認める )方向の両側縁部に沿って,且つ前記両シートの間に ・・・ク 。 ,ッション性シートを介在させたことを特徴とする使いすておむつ」「クッション性シートが発泡性プラスチックシートである実用新案登録請求の範囲第1項記載の使いすておむつ 」。 「吸収材3は・・・裏面シート2と ・・・不織布などから成る表面シー ,ト1との間にホットメルト接着によって固定されている。また弾性材4及び本考案による発泡性プラスチックシート6a,6bもホットメルト接着により固定し一体化されている 」。 第2図には,発泡性プラスチックシートは,吸収材の長手方向端部と離間して配置され,離間位置において表面シートと裏面シートとがホットメルト接着により固着されていることが記載されている。 ( ) 先願考案の上記記載は,各部材がホットメルト接着されることを述べるに2すぎず,ホットメルト接着された部位が本件特許発明の「ホットメルト薄膜 ,すなわち,本件特許発明の作用効果を奏するホットメルト接着剤層 」であることについて,何ら開示も示唆もしていない。 ( ) したがって,本件特許発明は先願考案と実質的に同一ということはできな3い。よって,本件特許発明は,先願考案に基づいて,特許法29条の2の規定により特許を受けることができない旨の被告の主張は理由がない。 6争点4-2(仮に,争点2-1に関する原告の主張を前提とした場合,本件特許発明が,特許法29条2項に違反しているか)について被告は,仮に 「ホットメルト薄膜」がホットメルト接着剤が散点状又はス ,トライプ状に形成されたものであるとすれば,本件特許発明は特許法29条2項に違反すると主張する。しかし,原告はそのような主張をしていないし,当裁判所の採用する「ホットメルト薄膜」の解釈及び被告製品における「ホットメルト接着剤層」は上記構成を備えるものではないので,かかる被告の主張は失当である。以下,念のため,本件特許発明が引用発明5と引用発明1又は周知技術を組み合わせることによって容易に想到でき,特許法29条2項に違反するものであるか否かを判断する(なお,原告は,上記主張は時機に後れた防御方法として許されないと主張する。しかし,被告の上記主張は「訴訟の完結を遅延させる (民事訴訟法157条1項)とまではいえないので,時機に後 」れた防御方法として却下するのは相当でない。。)( ) 本件特許発明と引用発明5とを対比すると,次のとおりである。 1ア構成要件A@引用文献5には 「例えば,使い捨てパンツ10の身体側ライナー20 ,つまり内側パネルは,そこを通って吸収芯18に吸収される流体を通過させる任意のフレキシブルな多孔性シートで形成でき ・・・ (12頁左,」下欄7行ないし10行「またライナーは,所望の水分透過度を得るよ ),うに穿孔されたプラスチック膜,発泡プラスチックの網状材,あるいはスクリム材で形成してもよい(12頁左下欄下から4行ないし末行)と 。」。,「」 いう記載がある これらの記載によれば 引用発明5の 身体側ライナーは,本件特許発明の「透水性トップシート」に相当する。 ,, , また 外側カバーについて パンツ10の外側カバー21の材料として不織繊維材の外側層とプラスチック材の内側層を有する複合布が適しているとしたうえで(12頁右下欄下から2行ないし13頁左上欄7行「多),くの種類の使い捨て衣類において,内側層は水分バリヤーつまり液体不浸透性を与えるものである(13頁右上欄8行ないし10行)と記載し 。」ている。これらの記載によれば,引用発明5の「外側カバー」は,本件特許発明の「非透水性バックシート」に相当する。 引用文献5には,吸収芯について 「使い捨てパンツ10の吸収芯22 ,等,使い捨て衣類に含まれる吸収芯は,身体側ライナーを通過した廃液を吸収及び保持可能な任意の適切な材料で形成し得る(12頁右下欄3。」行ないし6行)と記載され,この文献で用いる「使い捨て衣類」として,使い捨ておむつ,大人の失禁症用衣類が例示されている(5頁左下欄9行),「」「」 ないし20行 ことから 上記の 廃液 は本件特許発明における 体液,,「」 , に相当することは明らかであり したがって 引用文献5の 吸収芯 は本件特許発明の「体液吸収体」に相当する。 引用文献5には 「パンツ・・・は・・・身体側ライナー20と外側カ ,バー21を有する。吸収性の芯22がライナー20とカバー21の間に位置し ・・・当該分野で周知な任意の適切な手段に(判決注: 手段で」 , 「の誤記と認める )ライナーかカバーのいずれかまたはその両方に固定さ 。 れる」と記載されている(6頁右下欄下から6行ないし7頁左上欄2行)ことから,引用文献5の「吸収芯」は,身体側ライナーと外側カバーの間に介在するものと認められる。 引用発明5と本件特許発明とを対比すると,引用発明5の「身体側ライナー「外側カバー「吸収芯」が,本件特許発明の「透水性トップシ 」,」,ート「非透水性バックシート ,前記透水性トップシートと非透水性バ 」,」「」 ,。 ックシートとの間に介在されている 体液吸収体 に それぞれ相当するしたがって,引用文献5には,構成要件A@が記載されている。 イ構成要件AA引用文献5の第24図を見ると 延在した 身体側ライナー72 と 外 ,「」 「側カバー71」とで構成された上端部分において 「弾性要素70」が腰 ,回り方向に配置されている。 そして,引用文献5の図1,2及び4を参照すると,弾性要素が結合する外側カバーの周辺部及び身体側ライナーの周辺部は,ウエストバンド11に対応する部分であって,吸収芯の長手方向縁より外側に延びている部分であるから,本件特許発明の「前記体液吸収体の長手方向縁より外方に延びて前記透水性トップシートと前記非透水性バックシートとで構成されるフラップ」に相当する。また,引用文献5の弾性要素はウエストバンドの全周囲に沿って延びており,実施例における「弾性要素」は一対の対向する面状表面を含んだ矩形断面のフラットな弾性テープであって(16頁右下欄9行ないし11行 ,帯状の形状であるから,引用文献5のパンツ )は前記フラップにおいて腰回り方向に弾性帯を有するということができる。 引用発明5と本件特許発明とを対比すると,引用発明5の「弾性要素が結合する外側カバーの周辺部及び身体側ライナーの周辺部「弾性要素」」,が,本件特許発明の「フラップ「弾性帯」に,それぞれ相当する。 」,したがって,引用文献5には構成要件AAが記載されている。 ウ被告主張の構成要件B@引用文献5には,弾性要素の材質について 「各種市販の材料を使用可 ,能である」と説明されている(14頁左上欄16行 。)本件特許出願日前に 「発泡シート」が「各種市販の材料」であったこ ,とは,引用文献5の12項左下欄において,身体ライナーの材料として,「発泡プラスチックの網状材」が挙げられていることから明らかである。 また,1984年発行のフレグランスジャーナル65(乙85)に「・・・種々の解決策が提案されている。ユニ・チャームがムーニーで採用したウレタンフォームの幅広エラスティックはその典型的な例である 」と。 記載されているとおり(99頁右欄25行ないし27行「発泡」性で),あるウレタンフォームからなる弾性帯が紙おむつのギャザー部に実際に使用されていた(乙88・4頁左上欄2行ないし6行においても,伸縮部材の素材として「発泡性ウレタン」を使用することが記載されている。。)したがって,当業者にとって,引用発明5の「弾性要素」に「弾性伸縮性の発泡シート」が当然に含まれていると理解されるのであるから,引用文献5には「弾性伸縮性の発泡シート (被告主張の構成要件B@)が開 」示されている。 エ構成要件BA引用文献5には,弾性要素の配置について 「第4図に示してあるよう ,に,弾性要素25がその第1つまり外表面26に沿って使い捨てパンツ10の外側カバー21の内側層24の周辺部に結合されると共に,その反対の第2つまり内表面27に沿って衣類の身体側ライナー20の周辺部に結合されている。第1,2図に戻ると,弾性要素25はパンツ10のウエストバンド11の全周囲に沿って延びている;つまり弾性要素25の一部は第4図に示すごとくウエストバンド11の一部にそって延びた前面パネル14の周辺部に結合され,弾性要素25の他部はウエストバンド11の残りに沿って延びたパンツの後面パネル15の周辺部に結合してある 」と。 ( )。, 記載されている 7頁右上欄11行ないし左下欄3行かかる記載から引用文献5の弾性要素は,身体側ライナーと外側カバーとの間に介在しているものと認められる。 また,引用文献5の第24図から「身体側ライナー72」と「外側カバー71 との間に 弾性要素70 が介在し この 弾性要素70 は 吸 」「」,「」 「収性の芯」の長手方向縁と離間していることは明らかである。 したがって,引用文献5には,被告主張の構成要件BAが記載されている。 オ構成要件C)引用文献5には,弾性要素と身体側ライナーとの間の結合について,a「弾性要素の外表面64が接着剤の薄層65に沿って外側カバーに結合され,弾性要素の内表面66が接着剤の薄層67に沿って身体側ライナーに結合されている。接着剤層65,67は,液体接着剤,熱溶融接着剤,感圧接着剤等,弾性要素の材料を衣類の材料へ接合するのに適した任意の接着剤で形成できる。伸縮化開口を形成するその他の構造的特徴は前述した通りで,上記の取り付け用に選ばれる接着剤は,本発明の目的のため弾性要素が収縮されたとき,2つの層の接合点にのみ結合されねばならない 」と記載されている(16頁右上欄下から3行ないし左 。 下欄8行 。上記の「熱溶融接着剤」はホットメルト接着剤のことであ )るから,引用文献5に記載の使い捨てパンツにおいては,身体側ライナーの外側カバーがわ面において,弾性要素上に固着されるホットメルト薄層が形成されているものである。 )引用文献5の第24図を参照すると,弾性要素が吸収芯と離間しておbり,該離間位置において,身体側ライナーと外側カバーとが接着層により接着されている構成が示されている。 そして,弾性要素はウエストバンドの全周囲に沿って延びていることから,弾性要素と吸収芯との間の領域における身体側ライナーと外側カバーとの間の接着もウエストバンドの全周囲に沿って延びている,すなわち,腰回り方向に沿っていると理解することができる。 ここで 接着剤層 はホットメルト接着剤の層であってもよいので 1 「」 (6頁左下欄1行ないし4行 ,引用文献5には,弾性要素と吸収芯との )間の領域においては,ホットメルト接着剤の「薄層 (16頁右上欄下」から2行ないし左下欄1行)が外側カバーに接合されている態様が,記載されていることとなる。 ,,,「」c)したがって 引用文献5には 構成要件Cのうち身体側ライナーの「外側カバー」がわ面において「ホットメルト薄層」が形成されており,この「ホットメルト薄層」が「吸収芯」上と「弾性要素」上とに跨ってその両者に固着されている構成が記載されている。 一方,引用発明5は 「ホットメルト薄層」が「薄膜」であるか否か ,,(「」 が明らかでない点において 本件特許発明と相違する 以下 相違点1という。。)カ構成要件D既に述べたとおり,引用文献5には,第24図の記載に照らし,ウエスト開口において,吸収芯と弾性要素とが離間しているとともに,該離間位置において内側端部と外側端部が接着層により接着されている構成が開示されている。 一方,引用発明5は,該離間位置において内側端部と外側端部が接着層により接着されている領域が「体液の前後漏れ防止用シール領域」であることが明らかでない点で,本件特許発明と相違する(以下「相違点2」という。。)キ構成要件E「」,, 引用文献5に開示されている 使い捨て衣類 として 使い捨てオムツ大人の失禁症用衣類等が挙げられ(5頁左下欄9行ないし20行 ,使い)捨て衣類を形成する材料として熱可塑性フィルム等の軽量フィルムやシート,熱可塑性またはセルロース性繊維,紙,被覆フィルムや被覆紙の不織シート,及びこうした材料の各種複合物が挙げられていること(5頁左下欄最終行ないし右下欄5行 ,また 「第1,2図は,本発明に従って構 ),成された・・・使い捨てパンツ・・・を・・・示している(6頁右下。」欄4行ないし7行)と記載されていることから,引用文献5に記載の使い捨てパンツは使い捨て紙おむつに相当するものである。 したがって,引用文献5には,構成要件Eが記載されている。 ( ) 以上のとおりであるから,本件特許発明と引用発明5とを対比すると,両2者は次の点で相違する。 )相違点1(構成要件C)a本件特許発明においては,トップシートのバックシートがわ面において,体液吸収体端部上と発泡シート上とに跨ってその両者に固着されるホットメルト薄膜が形成されているのに対し,引用発明5では 「身体,側ライナー」の「外側カバー」がわ面において形成され 「吸収芯」上,と「弾性要素」上とに跨ってその両者に固着されている「ホットメルト薄層」が「ホットメルト薄膜」であるか否か不明である点で相違する。 )相違点2(構成要件D)b本件特許発明においては,弾性帯と体液吸収体の長手方向縁との間の離間位置において,ホットメルト薄膜が非透水性バックシートに腰回り方向に沿って接合されて 「体液の前後漏れ防止用シール領域」を形成 ,しているのに対し,引用発明5では,離間位置において,ホットメルト薄層が外側シートに腰回り方向に沿って接合されて形成された領域が,「体液の前後漏れ防止用シール領域」であるか否か不明である点で相違する。 ( )引用発明1との組合せについて3被告は,上記各相違点は,引用発明1との組合せによって容易に想到し得ると主張する。そこで,引用発明5に引用発明1を組み合わせることの論理付けないし阻害要因の有無を検討する。 ア引用文献5には次の記載がある。 「 発明の効果 ・・・弾性要素が伸縮すべき周辺部に沿って使い捨て ()衣類の2層に結合され,弾性要素は周辺部の周囲に沿い全体的または部分的いずれでも延びてもよい。さらに,衣類の各層と弾性要素間における境界面の構造には,複数の密接に離間した小さい接合点が含まれる。伸張されたつまり伸びた状態の弾性要素が接合点に結合され,弾性要素が収縮状態になると,それに伴って生じる力が接合点間で衣類の外側層にミクロうねまたはミクロたわみを生じる。この発明の伸縮化構造を得るのに必要なその他の必要な特徴は,上記において充分に説明した。この発明の実施によって達成される伸縮化構造は,弾性要素の伸張方向を横断する方向に沿った微細なうね状または線紋状の構造を有する使い捨て衣類の外側層を与える。この結果,生地材を縫製した衣類によってのみこれまで達成されていた伸縮化部分と酷似した洋服仕立ての,見ばえのよい外観を有する使い捨て衣類が得られる(17頁右下欄末行ないし18頁左上欄17行) 。」第24図には,延在した身体側ライナー72と外側カバー71とで構成された上端部分において,複数の弾性要素70が腰回り方向に配置され,各弾性要素の間には接合点が設けられている構成が開示されている。 イ上記のとおり,引用発明5において,弾性要素の接合点は,弾性要素の伸縮状態に応じて衣類の外側層にミクロなうね又はたわみを生じさせるために設けられている。したがって,仮に,引用発明5の「ホットメルト薄層」に,引用発明1の「上記透水性表面シートの吸収体側表面上の,上記吸収性物品の少なくとも幅方向中央領域に,上記表面シートとバックシートとの一体的接合部分から吸収体上に臨む位置に亘って延在するホットメルト不透水性被膜」を適用すれば,引用発明5の弾性要素と身体側ライナー72及び吸収性の芯22とが,不透水性被膜といえる程度に接着されることになるので,上記うね又はたわみを形成することができなくなる。 したがって,引用発明5に引用発明1を組み合わせることには阻害要因がある。 ( )周知技術の適用について4被告は 本件特許出願当時の当業者間において 使い捨ておむつの端部 腹 , ,(部・背部)にホットメルト薄膜を形成して「漏れ防止」を図ることは周知技術であったと主張する(乙15,68ないし80,83ないし85 。しか)し,仮に,上記技術が周知技術であったとしても,引用発明5には,トップシートのバックシートがわ面において,体液吸収体端部上と発泡シート上とに跨ってその両者に固着されるホットメルト薄膜を形成し(構成要件C ,)さらに弾性帯と体液吸収体の長手方向縁との間の離間位置において,ホットメルト薄膜が非透水性バックシートに腰回り方向に沿って接合されて,体液の前後漏れ防止用シール領域を形成する(構成要件D)ことについて,上記のとおりの阻害要因があることについて変わりはない。そして,ホットメルト薄膜の形成によって漏れ防止を図ることが周知技術であるからといって,,「」 本件特許発明の作用効果を奏するように 構成要件Cの ホットメルト薄膜及び構成要件Dの「体液の前後漏れ防止用シール領域」を形成することが,単なる設計事項であるということはできない。 ( )結論5したがって,本件特許発明は,引用発明5と引用発明1又は周知技術を組み合わせて容易に想到し得るものではない。よって,本件特許発明は,特許法29条2項違反により特許を受けることができない旨の被告の主張は理由がない。 7争点5(損害の額)について( ) 売上額について1平成14年5月1日から平成18年9月末日までの被告製品の売上額は次のとおりである(当事者間に争いがない。。)ア平成14年5月1日から平成17年2月末日99億0400万円イ平成17年3月1日から平成18年9月末日45億3800万円( ) 実施料率について2ア本件特許発明は,使い捨て紙おむつの基本構造に関する特許発明ではなく,構成要件A及びBの構造を有する紙おむつにおいて前後漏れ防止を確実に達成できるとともに,着用感に優れた使い捨て紙おむつを提供することを目的とするものである。そして,その作用効果は,本件特許発明の技術的範囲に属すると判断される被告製品についてなされた前記の各実験からみても,前後漏れ防止について極めて顕著な効果を奏するものとは言い難いものである。そして,本件特許発明は進歩性を有するものの,既に述べたとおり,これと類似した構造を有する特許発明が出願時に複数存在し,, (, ていたこと 及び 本件特許発明の対象である紙おむつは廉価で 乙9395 ,大量に消費される商品であり,本件特許発明が紙おむつに使用さ )れる複数の技術の一つにすぎないことからしても,本件特許発明の実施料率は比較的低いものと認定されてもやむを得ないものである。なお,証拠(甲57)によれば,被告製品( ドレミ )の業界シェアは4%ないし 「」3%にとどまることが認められる。 イ原告は,発明協会発行の「実施料率(第5版(甲58)において, )」平成4年度から平成10年度における「パルプ・紙・紙加工・印刷 (そ」れには,紙製衛生材料である「使い捨て紙おむつ」も含まれる )の実施。 料率は,イニシャル有りで5%,イニシャル無しでは3%のものが最も多く,本件はイニシャル無しであるから,合理的実施料としては3%とするのが相当であると主張する。 しかし,甲58によれば,上記書籍における「紙加工品」は,段ボール・壁紙等の加工紙,学用紙製品,日用紙製品等の紙製品,セメント袋,シ, ,, ョッピングバック 紙製箱・コップ等の紙容器等及びソロファン 繊維板紙製衛生材料,紙タオル,紙ヒモ等のその他パルプ・紙・紙加工品を含むことが認められる。このように,上記書籍の示す実施料率は,使い捨て紙おむつ以外の製品も広く含むのであって,前記の諸事情に照らせば,この数値を直接の基準として本件特許発明の実施料率を定めることは相当でない。 ウ以上の諸事情を考慮すれば,本件特許発明の実施料率は0.7%をもって相当と認める。 ( )損害の額について3以上によれば,特許法102条3項によって算定される本件特許権の侵害による損害は次のとおりである。 ア平成14年5月1日から平成17年2月末日まで99億0400万円×0.7%=6932万8000円イ平成17年3月1日から平成18年9月末日まで45億3800万円×0.7%=3176万6000円ウ合計6932万8000円+3176万6000円=1億0109万4000円8結論よって,原告の請求は,金1億0109万4000円及び内金6932万8000円に対する不法行為の後の日であることが明らかな平成17年3月1日から,内金3176万6000円に対する不法行為の後の日であることが明らかな平成18年10月1日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないのでこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
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設樂隆一裁判長裁判官古河謙一裁判官吉川泉裁判官別紙物件目録1下記説明並びに図面に示される使い捨て紙おむつ(商品名「ドレミ」Mサイズ及びLサイズ)T図面の説明図1使い捨て紙おむつの平面図(一部破断)図2図1のX-X線矢視図U構成の説明()使い捨て紙おむつは,体液吸収体3と,親水性不織布からなる透水性トッ1プシート1と,ポリエチレンからなる非透水性バックシート2とを有し,透水性トップシート1と非透水性バックシート2との間に体液吸収体3が介在されている。 ()体液吸収体3の長手方向縁より外方に延びて透水性トップシート1と非透2水性バックシート2とでフラップ6が構成されている。 ()フラップ6において腰回り方向に弾性伸縮性の発泡シートからなる弾性帯34を有する。 ()弾性帯4は,弾性伸縮性の発泡シートであり,かつ,この発泡シートが透4水性トップシート1と非透水性バックシート2との間に介在され,体液吸収体3の長手方向縁と離間している。 ()透水性トップシート1の非透水性バックシート2がわ面において,体液吸5収体3端部上と弾性帯(発泡シート)4上とに跨ってその両者に固着されるホットメルト薄膜5を形成してある。 ()前記離間位置において,ホットメルト薄膜5が非透水性バックシート2に6腰回り方向に沿って接合され,体液の前後漏れ防止用シール領域を形成してある。 V符号の説明1透水性トップシート(不織布)2非透水性バックシート(ポリエチレン)3体液吸収体4弾性帯(発泡シート)5ホットメルト薄膜6フラップ以上(図1〈平面図(一部切断〉省略)【】)(図2〈X-X線矢視図〉省略)【】別紙物件目録2下記説明並びに図面に示される紙おむつ(商品名「ドレミ」Mサイズ及びLサイズ)T図面の説明図1使い捨て紙おむつの平面図(一部破断(体液吸収体3と弾性帯4が離間し)ている場合)図2図1のX-X線矢視図(体液吸収体3と弾性帯4が離間している場合)()図3図1のX-X線矢視図体液吸収体3と弾性帯4が接触又は重合している場合U構成の説明()使い捨て紙おむつは,体液吸収体3と,親水性不織布からなる透水性トップ1シート1と,ポリエチレンからなる非透水性バックシート2とを有し,透水性トップシート1と非透水性バックシート2との間に体液吸収体3が介在している。 ()体液吸収体3の長手方向縁より外方に延びて透水性トップシート1と非透水性2バックシート2とでフラップ6が構成されている。 ()フラップ6において腰回り方向に弾性伸縮性の発泡シートからなる弾性帯43を有する。 ,,()弾性帯4は透水性トップシート1と非透水性バックシート2との間に介在し4体液吸収体3の長手方向縁と離間,接触又は重合している。 ()透水性トップシート1の非透水性バックシート2がわ面において,体液吸収体53の端部上と弾性帯4上とに跨ってその両者に固着される散点状又はストライプ状のホットメルト接着剤5が存在している。 V符号の説明1透水性トップシート2非透水性バックシート3体液吸収体4弾性帯5ホットメルト接着剤6フラップ以上(図1】使い捨て紙おむつの平面図(一部破断)省略)【(図2〈図1】のX-X線矢視図〉省略)【】【(特許公報(特公平6-22511)省略) |