審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成18ワ19307特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18ワ11880特許権侵害差止等請求事件 平成18ワ11881特許権侵害差止等請求事件 平成18ワ11882特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成16ワ24626特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18ワ6108特許権侵害差止請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18ワ29554特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 確実性 / 公然実施(29条1項2号) / インターネット / アクセス / 技術的範囲 / 発明の詳細な説明 / 参酌 / 特許発明 / 実施 / 交換 / 構成要件 / 混同 / 拒絶査定 / 請求の範囲 / 拡張 / 変更 / |
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事件 |
平成
18年
(ワ)
10425号
損害賠償請求事件
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東京都豊島区北大塚一丁目24番17号 原告テイ ー オーデイ 株 式会社 訴訟代理人弁護 士駒場豊 同 榎本哲也 川崎市中原区上小田中四丁目1番1号 被告富士通株式会社 訴訟代理人弁護 士田中成志 同 平出貴和 同 板井典子 同 山田徹 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2006/11/30 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1原告の請求をいずれも棄却する。 2訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1原告の請求被告は,原告に対し,10億円及びこれに対する平成18年6月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要1本件は,無線通信機制御用簡易コンピュータに関する特許権(平成18年5月21日で期間満了)を有していた原告が,被告が平成8年4月9日ころから平成18年4月までの間に別紙物件目録記載の多数機種のノート型パソコン(以下「被告製品」という )を製造販売した行為が,原告の上記特許権を侵 。 害し,これにより被告が得た利益959億2000万円(1台10万円,利益率20%,製造販売台数合計479万6000台)の損害を被ったとして,そのうち金10億円の損害賠償を求めた事案である。 2前提となる事実(争いのない事実及び併記した証拠により容易に認められる事実)( ) 原告は,家庭用,通信用電気機器部品の購入,販売及び輸出入を主な目的1とする株式会社である。 被告は,電気製品の製造及び販売を業とする株式会社である。 ( ) 原告は,次の特許(以下「本件特許」という )につき特許権(以下「本2 。 件特許権」という。本件特許出願の願書に添付した明細書(平成7年1月30日付け手続補正書による補正後のもの)を「本件明細書」という。本判決添付の特許公報参照 )を有していた(甲1,2,乙1の17 。 。 )ア特許登録番号第2042484号イ発明の名称無線通信機制御用簡易コンピュータウ出願日昭和61年5月21日エ登録日平成8年4月9日オ本件明細書の特許請求の記載は次のとおりである(以下,同特許請求の範囲(請求項1)記載の発明を「本件特許発明」という。。)「簡易コンピュータにより無線通信機を送受信制御する通信システムにおいて,簡易コンピュータと前記無線通信機とを該無線通信機のマイク端子,スピーカ端子及び送受信スイッチ端子を介して接続することにより前記簡易コンピュータによって無線通信機を制御することにより,タイマにより所定時刻に自動発信し,全ての交信データを時刻及びメリット情報と共に簡易コンピュータ内の記憶素子に記録し,記録した情報をディスプレイまたはプリンタに出力し,局番にニックネームを登録することにより,前記交信データの局番(番号)の表示の代わりにニックネームを表ROM示させ,且つ特定群番号待ち受け,特定チャンネル待ち受け及び指定局番号待ち受けを記録表示することができるようにしたことを特徴とする無線通信機制御用簡易コンピュータ 」。 ( ) 本件特許発明を構成要件に分説すると次のとおりである(以下「構成要件3A」などという。。)A簡易コンピュータにより無線通信機を送受信制御する通信システムにおいて,B簡易コンピュータと前記無線通信機とを該無線通信機のマイク端子,スピーカ端子及び送受信スイッチ端子を介して接続することにより前記簡易コンピュータによって無線通信機を制御することにより,Cタイマにより所定時刻に自動発信し,D全ての交信データを時刻及びメリット情報と共に簡易コンピュータ内の記憶素子に記録し,E記録した情報をディスプレイまたはプリンタに出力し,F局番にニックネームを登録することにより,前記交信データの局番(番号)の表示の代わりにニックネームを表示させ,ROMG且つ特定群番号待ち受け,特定チャンネル待ち受け及び指定局番号待ち受けを記録表示することができるようにしたHことを特徴とする無線通信機制御用簡易コンピュータ。 ( ) 被告は,平成8年4月9日ころから同18年4月までの間に,被告製品を4製造販売した(弁論の全趣旨 。)( ) 被告製品は,次のような構成を有する(弁論の全趣旨 。 5 )aフルスペックのノート型パソコンであり,USB端子を介して接続された携帯電話機又はPHS電話機等(以下「携帯電話機等」という )を操。 作して電子メールを送受信することが可能である。 b被告製品と携帯電話機等とは,該携帯電話機等のUSB端子を介して接続することにより 無線で電子メールの送受信を行うことが可能である な , (お,海外等の通信事情の悪い地域においては,被告製品と携帯電話機等のマイク・スピーカ端子を介して接続することも可能である。。)c被告製品の多くにインストールされるソフトウエアであるアウトルックにおいては指定時刻以降に電子メールを送受信する機能がある。 d被告製品の多くにインストールされるソフトウエアであるアウトルックにおいては電子メールの送受信データを時刻と共に被告製品内の記憶素子に記録する機能を有し,電子メール通信の成功・不成功及びその原因に関する情報を報知する機能を有する。 e電子メールの送受信データを時刻,電子メール通信の成功・不成功及びその原因に関する情報をディスプレイ又はプリンタに出力することができる。 fIPアドレスに名前を登録することにより電子メールの送受信を表示する際に,IPアドレスの代わりに名前を表示させることができる。 g無用な電子メールを棄却し,必要な電子メールを選択受信することができる。 h上記のような特徴を有するフルスペックのノート型パソコンである。 3争点( ) 被告製品が本件特許発明の構成要件Aを充足するか(争点1 。 1 )( ) 被告製品が本件特許発明の構成要件Bを充足するか(争点2 。 2 )( ) 被告製品が本件特許発明の構成要件Cを充足するか(争点3 。 3 )( ) 被告製品が本件特許発明の構成要件Dを充足するか(争点4 。 4 )( ) 被告製品が本件特許発明の構成要件Eを充足するか(争点5 。 5 )( ) 被告製品が本件特許発明の構成要件Fを充足するか(争点6 。 6 )( ) 被告製品が本件特許発明の構成要件Gを充足するか(争点7 。 7 )( ) 被告製品が本件特許発明の構成要件Hを充足するか(争点8 。 8 )( ) 本件特許発明が特許無効審判により無効にされるべきものといえるか(争 9点9 。)() 損害の額(争点10)10第3当事者の主張1争点1(被告製品が本件特許発明の構成要件Aを充足するか)について( ) 原告1アフルスペックのコンピュータが構成要件Aの「簡易コンピュータ」に当たるか。 本件特許発明の構成要件Aは 「簡易コンピュータにより無線通信機を ,」。「」 送受信制御する通信システムにおいて である この 簡易コンピュータとはデスクトップ型パソコンに比べて小型・軽量の携帯型コンピュータを意味する。被告製品は,デスクトップ型パソコンに比べて小型・軽量の携帯型コンピュータであるノート型パソコンであるから,構成要件Aの「簡易コンピュータ」に当たる。 被告は,被告製品はフルスペックを有するコンピュータであるから「簡易コンピュータ」に当たらない旨主張する。しかし,本件明細書においてコンピュータのスペックについては言及がない。本件特許発明は,パーソナルコンピュータが未だ商品として未成熟な時期になされたものであり,通常の机上据え置きデスクトップ型コンピュータに対して「携帯型コンピュータ」を「簡易コンピュータ」と表現したものである。 イ構成要件Aの「簡易コンピュータ」が無線通信のための特定のモROMジュールを組み込んでいる必要があるか。 被告は,本件明細書の発明の詳細な説明欄の記載を指摘して本件特許発明の簡易コンピュータは,無線通信のための特定のモジュールを組ROMみ込んでいる必要があるところ,被告製品はそのようなモジュール ROMを組み込んでいない旨主張する。 しかし,本件明細書の記載は,本件特許発明の技術的範囲を被告主張のように限定するものではない。また,仮に,被告主張のように解釈したとしても,ここでいうモジュールとは,被告製品におけるHDD(ハROMードディスク装置 ,メモリカード装置,他外部記憶装置等の「通信ソフ )トウエアを提供する記憶媒体」に相当するものである。被告は,これらの記憶媒体に通信ソフトウエア(アプリケーション)を初期搭載し,あるいは購入後にインストールして利用者に提供しているのであるから,結局,被告製品が本件特許発明の構成要件Aの「簡易コンピュータ」に当たることに変わりはない。 ウ被告製品が「無線通信機を送受信制御」するものといえるか。 被告製品は,携帯電話機等を接続させてデータを送受信することができる。携帯電話機等は,構成要件Aの「無線通信機」に当たる。また,被告製品は,携帯電話機等のデータ送受信(受信開始,状態監視等)を制御するものであるから,被告製品は構成要件Aの「無線通信機を送受信制御する通信システム」に当たる。 被告は,本件特許発明の想定する無線通信は,不特定多数の受信者に向けて発信し,周波数を合わせれば誰もが受信できるものであって,電子メールとは異なる旨主張する。しかし,本件特許発明においては「無線通信」, 「」 機 を特に限定しておらず 携帯電話機等も本件特許発明の 無線通信機に当たる。被告の上記主張は,本件特許発明の対象となる無線通信機がMCA機能を有さない一般受信機に限定されているものとの誤解に基づく主張である。本件特許発明は,本件明細書に記載されているとおり,パーソナル無線,MCA無線等の多チャンネルアクセス制御の無線通信をも前提としており,制御チャンネルを介して全通信・通話チャンネルにアクセス可能である。本件特許発明はメール等の電文を発着・交換することが主目的であることは明白であり,不特定多数に向けた放送等の受動受信システムではない。被告の主張は不当である。 被告は,携帯電話機等を被告製品に接続して行う電子メールの送受信は本件特許発明とは関わりがない旨主張する。しかし,本件特許発明は,I() 。, P等の通信技術 プロトコル についても言及・制限していない 被告は被告製品が携帯電話機等を制御することがあるとしても回線の確立又は切断のみであって,このような制御は構成要件Aの「送受信制御」に当たらない旨主張する しかし 回線の確立又は切断も本件特許発明における 送 。, 「受信制御」に当たる。また,そもそも,被告製品においては,回線確立の制御の後に,必ず電文の送出・受入れというプロトコル制御を行なっているはずであるから,被告製品においては携帯電話機等の回線の確立又は切断のみを制御している旨の被告の主張は誤っている。確かに,イヤホン・マイク端子を介して携帯電話機等と被告製品を接続したような場合には,被告が主張するとおり携帯電話機等を直接操作して回線の確立又は切断を行うことが多いが,このような場合であっても,被告製品と携帯電話機等の制御・交信において本質的な差異はない。電子メールのように,送信してから相手方が受信するまでの間にインターネット等の中間媒体を介するものであっても,その経路の一部が無線によるものであれば,技術的範囲に含まれるものである。本件特許発明の簡易コンピュータからみれば,中間媒体が何であれ,その経路の一部が無線によるものであれば直接交信による無線通信と何ら変わりはない(なお,PHS端末の「直接通信(トランシーバ)モード」を使用すれば,いわゆる無線機と同様に直接交信も可能であり,かかる直接通信モードは被告製品において実施可能である。。)( ) 被告2アフルスペックのコンピュータが構成要件Aの「簡易コンピュータ」に当たるか。 被告製品は,ノート型パソコンであるが,デスクトップ型パソコンと全く同等の機能(フルスペック)を有するものであり,構成要件Aの「簡易コンピュータ」には当たらない。 イ構成要件Aの「簡易コンピュータ」が無線通信のための特定のモROMジュールを組み込んでいる必要があるか。 本件明細書には,簡易コンピュータについて 「簡易無線通信機を含む ,各種無線通信機を,殊にポケットコンピュータと称されるような特定のモジールを組み込んだ簡易コンピュータ (本件特許公報3欄6行)ROM 」と説明していることから,構成要件Aの「簡易コンピュータ」とは,無線通信のための特定のモジュールを組み込んだものをいうと解されROMる。被告製品は,無線通信のための特定のモジュールを組み込んで ROMいないから,構成要件Aの「簡易コンピュータ」とはいえない。 ウ構成要件Aの「無線通信機」は,送信者において周波数にデータを乗せて不特定多数に電波を送信し,受信者において当該周波数にチャンネルを合わせると当該データを受信することができるという機械である。これに対し,携帯電話機等は,電話機であり,電子メールの送受信においては,送信者において,特定の相手方にインターネット網を通じてデータを送信し,受信者においてインターネット網を通じてデータを受信するものである。したがって,被告製品が,他人に電子メールを直接に送信することもないし,また,相手方コンピュータが他人の電子メールを直接に受信することもない。携帯電話機等は,構成要件Aの「無線通信機」ではない。 原告は,被告製品が携帯電話機等を接続して電子メールの送受信をすることができることをもって構成要件Aを充足する旨主張する。しかし,インターネットを介して電子メールのやりとりを行うための設定は,構成要件Aの「無線通信機を受信制御する」ための設定ではない。インターネットを介しての電子メールのやりとりは,コンピュータ自体がデータの送受信を制御するものであって,無線通信機のデータ送信機能や信号授受機能を制御することによってデータを送受信するものではない。インターネットを介した電子メールのやりとりにおいて携帯電話機等を使用したとした場合に,コンピュータが携帯電話機等を制御することがあるとすれば,回線の確立又は切断の程度であって,このような制御を「送受信制御」ということはできない(なお,原告は,携帯電話機等のイヤホン・マイク端子を介してコンピュータと接続する構成についても主張するが,かかる方法で接続した場合は,回線の確立及び切断の制御さえコンピュータを通じて行うことはできず,携帯電話機等を直接操作して行う必要がある。上。)記設定は,携帯電話機等の無線電話回線,固定電話の有線電話回線,LAN回線,光ケーブル回線を含む通信手段を使用して電子メールを送受信するための設定であって,無線通信機を受信制御するための設定ではない。 インターネットを介しての電子メールのやりとりは相手方のメールサーバと自己のメールサーバを何らかの通信手段で接続して行うものであり,その通信手段として携帯電話機等の無線電話回線を選択することも可能であるというにすぎない。 2争点2(被告製品が本件特許発明の構成要件Bを充足するか)について( ) 原告1ア被告製品と携帯電話機等が構成要件Bの「マイク端子,スピーカ端子…を介して接続する」構成を有するか。 構成要件Bの「マイク端子「スピーカ端子」とは,本件明細書に記 」,載されているとおり,デジタル信号授受を容易に行うための外部接続機構としての端子を指している。 携帯電話機等の「USB端子」は,もとより「イヤホン・マイク端子」もこれに当たる。このうち「USB端子」を介して携帯電話機等を被告製品に接続し,デジタル信号の授受が可能であることは当然である。なお,「USB端子」は,マイク端子やスピーカ端子として使用できるものであるから,本件特許発明の「マイク端子「スピーカ端子」に当たること 」,は明白である。 携帯電話機等の「イヤホン・マイク端子」を介して携帯電話機等を被告製品に接続し,デジタル信号を授受することも可能である 「イヤホン・。 マイク端子」を介してのデジタル信号の授受は 「見なし音声通信」とし ,て外部音声モデムを利用する手段として確立した技術であり,現在においても一部の海外等の通常電話以外の通信事情の悪い地域において広く利用されている技術である。 被告は,本件明細書の記載を指摘して本件特許発明について「元来装備されているマイク端子,スピーカ端子等をそのままの状態で使用できるもの」であると主張する。被告の主張する「そのままの状態で」の意味は必ずしも明確でないが,これは「何ら改造を加えることなく」という意味に解釈できる。そうすると,被告製品は,携帯電話機等のUSB端子及びイヤホンマイク端子に何ら改造を加えることなくデジタル通信に用いることができるのであるから,本件特許発明の技術的範囲に属することは明らかである。 イ被告製品と携帯電話機等が構成要件Bの「送受信スイッチ端子を介して接続する」構成を有するか。 被告は,構成要件Bの「送受信スイッチ端子」を送話,受話の切り替えスイッチであると解釈した上 被告製品に接続される携帯電話機等には 送 , 「受信スイッチ端子」が存在しない旨主張する。 しかし,構成要件Bの「送受信スイッチ端子」は,単なる送受信切り替えスイッチではなく 送信許可制御 受信確認 状態監視など 多種の 通 ,,,,「信制御」を行うスイッチ端子を意味する。確かに,通常の単信方式無線機であれば,送話,受話の切り替えスイッチしか存在しないが,本件特許発明における「無線通信機」にはパーソナル無線機のみならずMCA無線機も含まれることは本件明細書の記載から明らかであり,MCA無線機の送受信スイッチは,上記のような各機能を有する。したがって,本件特許発明の構成要件Bにおける「送受信スイッチ端子」は通常の単信無線機における切り替えスイッチとは異なる。 被告製品を用いたデジタル通信においても,送信,受信の動作のみならず,通信開始,終了,状態監視等の通信制御が必須であることから,構成要件Bの「送受信スイッチ端子」と同一の機能を有する手段としての端子が設置・使用されていることは明白である。 ( ) 被告2ア被告製品と携帯電話機等が構成要件Bの「マイク端子,スピーカ端子…を介して接続する」構成を有するか。 構成要件Bの「マイク端子「スピーカ端子」とは,音声信号を送受 」,信する目的で設けられている端子をいうと解される。本件明細書には「一般に市販されている無線通信機にはコンピュータによるデジタル通信を行,。」 うための専用の信号授受端子が設けられておらず 改造が困難であった(本件特許公報3欄2行ないし5行)と記載されている。また,原告が作成した平成4年10月6日付け審判請求書(乙1の11)にもその旨記載されている。本件特許発明は,本来,マイク用端子,スピーカ端子及び送受信スイッチ端子として無線通信機に存在する端子を,そのままの状態で利用して,無線通信機を無線通信機制御用簡易コンピュータに接続するというものである。 原告は,被告製品に接続可能な携帯電話機等の通信用端子である「USB端子」が構成要件Bの「マイク端子「スピーカ端子」に当たると主 」,張する。しかし,携帯電話機等の「USB端子」はもともとデジタル通信を行うための専用信号受信端子であって,構成要件Bの「マイク端子 ,」「スピーカ端子」に当たらない。 携帯電話機等において,構成要件Bの「マイク端子「スピーカ端子」」,に当たるものが存在するとすれば 「イヤホン・マイク端子」であるが, ,被告製品は,通常,イヤホン・マイク端子と接続されるものではない。なお,携帯電話機等の「USB端子」には,音声信号を送受信するものも存在するが,これらの端子はパソコンと接続する場合には音声信号を送受信するものとしては用いられておらず,デジタルデータ通信専用に用いられているのであって,本件明細書で構成要件Bの「マイク端子」及び「スピーカ端子」から除外されている「コンピュータによるデジタル通信を行うための専用の信号授受端子 (本件明細書第3欄3行ないし4行)に当た 」るのであって,構成要件Bの「マイク端子「スピーカ端子」には当た 」,らない。 イ被告製品と携帯電話機等が構成要件Bの「送受信スイッチ端子を介して接続する」構成を有するか。 構成要件Bの「送受信スイッチ端子」とは,無線通信機による送信及び受信を切り替えるスイッチの端子である。無線通信機は,一方向の通話のみが可能であるため,このようなスイッチが必要になる。ところが,被告製品に接続される携帯電話機等は送信と受信を同時に行ない得るため送受信を切り替えるスイッチは存在しない。 したがって,被告製品と携帯電話機等は構成要件Bの「送受信スイッチ端子を介して接続する」構成を有しない。 3争点3(被告製品が本件特許発明の構成要件Cを充足するか)について( ) 原告(訴状,X9/12準p9,X10/19準p4)1被告製品にインストールされているソフトウエアであるアウトルック及び被告製品のOS(基本制御ソフト)の一部として搭載されている等をTelnet組み合わせ利用することによって,被告製品内蔵タイマによる所定時刻自動発信機能等が実現されている。したがって,被告製品は構成要件Cを充足する。 , , 被告は アウトルックは携帯電話機等の通信手段に依存するものではなく「無線通信機を制御することにより」タイマにより所定時刻に自動発信するものではないと主張する。しかし,現実に送受信は携帯電話等の無線通信機を接続して行なわれるのであるから(待機状態であった携帯電話等がコンピュータにより起動され所定通信先に接続されるのであるから ,そこに何ら)かの制御が存在することは明白である。アウトルックが直接,間接を問わず無線通信機の制御を行なっていることは明らかである。 また,被告は,アウトルックが被告製品だけでなく世界中のパソコンに搭載されていること,ノート型パーソナルコンピュータのみならずデスクトップ型パーソナルコンピュータにも搭載されていることを指摘するが,これらの事情は充足性の判断とは無関係である。 さらに,被告は,アウトルックにおける指定時刻以降の送受信機能は,指定時刻以降で最初に送信者のコンピュータをメールサーバに接続した時に自己の送信メールサーバにメールを送る機能であって,指定時刻にメールが配信されるものではない旨主張する。しかし,送信が利用者指定の時刻に行なわれれば本件特許発明の目的を達するものであり,その後のメールサーバや着信確認の動作は本件特許発明とは直接的に関わらない。 ( ) 被告2原告は,被告製品にインストールされているソフトウエアであるアウトルックにおいて指定時刻以降に送信する機能があることをもって,被告製品が構成要件Cを充足する旨主張する。 , , しかし アウトルックは携帯電話機等の通信手段に依存するものではなく「無線通信機を制御することにより」タイマにより所定時刻に自動発信するものではない。既に接続が確立された無線通信機を回線の一部として利用するにすぎない。 また,アウトルックは,被告製品だけでなく世界中の多くのパソコンに搭載されている。原告が本件特許発明の技術的範囲に属しないとするデスクトップ型パソコンにも多くの場合インストールされているものである。 さらに,アウトルックにおける指定時刻以降の送受信機能は,指定時刻以降で最初に送信者のコンピュータをメールサーバに接続した時に自己の送信メールサーバにメールを送る機能であって,指定時刻にメールが配信されるものではない。 4争点4(被告製品が本件特許発明の構成要件Dを充足するか)について( ) 原告1ア被告製品が「メリット情報」をコンピュータ内の記憶素子に記録する構成を有するか。 本件特許発明の構成要件Dは 「全ての交信データを時刻及びメリット ,情報と共に簡易コンピュータ内の記憶素子に記録し」というものである。 被告製品にインストールされるソフトウエアのアウトルックにおいては,確実に受信されたか否かの評価及び通信成功・不成功の記録がなされている。したがって,被告製品は構成要件Dを充足する。 被告は,構成要件Dにおける「メリット情報」とは,無線通信において使用される「明瞭度「了解度」を表す情報であって,アウトルックに 」,おいてなされる通信の成功・不成功の評価は本件特許発明における「メリット情報」ではないと主張する。確かに 「メリット情報」の用語は無線 ,, 。 通信に主に使用される用語であり 明瞭度を示す指標であることは認めるしかし,本件特許発明は,無線通信の種別・方式を特定しておらず,広く流通する無線用語を用いて通信の明瞭度,信頼度を示したものにすぎず,本件特許発明における「メリット情報」は,通信の信頼度を評価する尺度及び表示名を意味している。 そして,被告製品においては,通信の信頼度・確実性を利用者に通知,記録する機能を具備しており,通信の成功・不成功の評価のみならず,その原因(ハードウエア異常,基本システム異常,通信ソフトのエラー,添付ファイル等付帯通信情報の異常等々)を詳細に監視し定量的に報告する。 「」 機能を有している このような通信品質指標となる情報が メリット情報に当たる。 イ被告製品が「交信データ」を簡易コンピュータ内の記憶素子に記録する構成を有するか。 被告製品を携帯電話機等に接続して電子メールを送受信する場合において,無線通信自体にかかわる交信データを有さず,これらを全く記録することもなく,通信を運用することは一般的に無理である。 したがって,被告製品が「交信データ」を簡易コンピュータ内の記憶素子に記録する構成を有することは明らかである。 ( ) 被告2ア被告製品が「メリット情報」をコンピュータ内の記憶素子に記録する構成を有するか。 構成要件Dの「メリット情報」とは 「明瞭度「了解度」を意味する ,」,無線用語である。いずれも,無線通信の受領者から見た明瞭度を示すものである。携帯電話機等を接続した被告製品による電子メール等のデジタル通信の分野で受信者が(送信者も)明瞭度などを判断することはない。 原告は,被告製品にインストールされるアウトルックにおいて,確実に受信されたか否かの評価及び通信成功・不成功の記録が構成要件Dの「メリット情報」に当たる旨主張する。しかし,メリット情報とは無線機における受信者からみた信号の明瞭度等を多段階で示すものであって,単に成。,, 功・不成功の2値で表されるようなものではない また メリット情報は受信者からみた信号の明瞭度であるところ,アウトルックにおいては受信者が当該メールを正常に受信したか否かの情報は記憶されない。 イ被告製品が「交信データ」を簡易コンピュータ内の記憶素子に記録する構成を有するか。 本件特許発明における「交信データ」とは,特許請求の範囲の記載上,「無線通信機を送受信制御する通信システム」における「交信データ」である。本件明細書には「交信時にパーソナル無線信号に含まれる全ATISROMての信号を解説記録する (本件特許公報3欄9行以下「特定の 」 ),モジュールを組み込んだ簡易コンピュータにより,無線通信機を制御駆動し,交信時にパーソナル無線信号に含まれる全ての信号を解読記録ATISする (同5欄23行以下)として,無線通信自体にかかるデータである 」「交信データ (例えば無線通信機の番号や無線通信のチャンネル 」ROM番号等)を記録することが明示されている。これに対し,被告製品においては,本件特許発明における「交信データ」を有しないし,これを記録することもない。 5争点5(被告製品が本件特許発明の構成要件Eを充足するか)について( ) 原告1被告は,被告製品には「メリット情報」及び「交信データ」が存在しないからメリット情報を表示したり印字することもない旨主張する。しかし,前記4( )のとおり,被告製品には「メリット情報」及び「交信データ」が存1在する。 ( ) 被告2構成要件Eにおける「情報」とは構成要件Dの「交信データ「時刻 ,」,」「メリット情報」のことである。そして,前記4( )のとおり,被告製品は2「メリット情報「交信データ」を記録しないからそれをディスプレイま 」,たはプリンタに出力することもない。 6争点6(被告製品が本件特許発明の構成要件Fを充足するか)について( ) 原告1本件特許発明の「局番(番号 」とは,局(発信者や送信者)の識別 ROM )。「()」, の一方法である 構成要件Fにおいて 局番番号としているのはROM「局」すなわち発信者の固有情報を主として意味しており,パーソナル無線機,MCA無線機等における「番号」を従としたものである。被告製ROM品においては,ローカルIPアドレス,ドメイン名等何らかの識別符を用いて発信者がメールサーバ及び相手方に通知され,上記識別符が本件特許発明の「局番(番号 」に当たる。 ROM )なお,本件特許発明において 「局番(番号 」が無線機に存在する ,)ROMか,簡易コンピュータに存在するかは限定されていない。 被告は,電子メールにおけるアドレスは被告製品を特定するものではない旨主張する。しかし,被告は,局である発信者と,その局を構築するパソコン(被告製品)と,送受信局関係とを混同している。受信者側で認識すべき対象はパソコン固有の製造番号などではなく,あくまで局としての識別記号・番号である。被告製品とは限らないパソコンに特定の局を構築し,この局から電子メールを被告製品が受信して局番(発信者)を認識できるので,被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属する。 本件特許発明が出願された昭和61年ころは,米国の一部でDNS(ドメイン名システム)等が試験運用されていたにすぎない。IPアドレス,ドメイン名等のユーザ及び端末認識手段は一般に認知される段階ではなかった。 被告は,今日一般的となったインターネット及びその最新技術をもって本件特許発明と被告製品の相違を主張する。技術の進歩と共に用語も変化しているが,技術的本質としてのメール受発信機能については本件特許発明と被告製品との比較において機能的に変わりはないものである。IPアドレスはその絶対数が43億通りに限定されていたこともあるが,今日ではIPv6と称される拡張方式が実現し事実上制限なく端末特定が可能となっている。他方,本件特許発明の「局番(番号 」はMCA方式無線通信においてはROM )限られた数のアドレスしか準備されていない。この点でもIPアドレスと番号は共通する。 ROM( ) 被告2構成要件Fの「局番(番号 」とは,無線通信機1台1台に付されて ROM )いる識別番号であり,()に付された番号であるからROMRead only memory当該無線機において変更不可能な固有の番号である。 携帯電話機等にも各装置固有の番号が付されている。しかし,携帯電話機等を使用してインターネットによる電子メールの送受信を行なっても,これ。,, らの携帯やPHSの固有の番号が表示されることはない したがって 仮に上記のような携帯電話機等に付された固有番号が「局番」に当たるとしても被告製品において当該「局番」の代わりにニックネームが付されることはない。 原告は,電子メールアドレスを構成要件Fの「局番」に当たると主張するようである。しかし,電子メールアドレスは,パソコン1台1台に固有のものではないし,変更不可能なものでもない。 また,原告は,グローバルIPアドレスが構成要件Fの「局番」に相当するとの主張もしているようである。しかし,グローバルIPアドレスは,インターネットの世界において通信しているインターネットと直接接続されるノード(発信元のサーバなど)を特定するために付与されるユニークな番号であって,電子メールをやりとりする被告製品に付与されるものではない。 また,当該携帯電話機等において変更不可能な番号でもない。したがって,ROM グローバルIPアドレスは 無線通信機固有の識別番号である 局番 , 「(番号 」には当たらない。), (), また 被告製品にはローカルIPアドレス ドメイン等 が設定されるが電子メールシステムにおけるローカルIPアドレスは,自己のメールのメールサーバとの間のやり取りに使用されるだけであり,このローカルIPアドレスは相手方のメールサーバに送られることはないから,無線通信機固有の識別番号である「局番(番号 」には当たらない。 ROM )7争点7(被告製品が本件特許発明の構成要件Gを充足するか)について( ) 原告1被告は,本件特許発明の「無線通信機」を「パーソナル無線機」に限定して解釈した上で 「群番号「局番「特定チャンネル」はいずれもパーソ ,」,」,ナル無線通信におけるものであるから,被告製品はこれらの待ち受け記録を表示することはない旨主張する。 しかし,本件明細書には「…パーソナル無線バージョン,アマチュア無線バージョン,業務用無線バージョンにおけるデジタル通信を可能にすることを目的とするものである「…無線通信機の種別を問わず全ての無線通信 。」,機によってデジタル通信システムを可能にすることができるものである 」。 との記載があるとおり,本件特許発明における「無線通信機」はパーソナル無線機に限定されない。 被告製品においては,チャンネルを指定することはできない。しかし,本件特許発明の「特定チャンネル待ち受け」とは,無線通信機により簡易コンピュータに流入するすべての情報のうち無用な情報は棄却し 必要な情報 こ,(こでは特定チャンネル経由のメール)を選択受信することにより有用な情報のみを残すことを意味している。無線通信機固有のチャンネル制御を意味するものではない。 被告は 「待ち受け」とは受動的な動作状態を意味しており,被告製品に ,おいてはメールサーバにアクセスするという能動的動作をしなければ電子メールを受信することはできないから 「待ち受け」状態は存在しない旨主張 ,する。しかし,本件特許発明における「待ち受け」とは,無線通信機及びその先の通信システムを監視し受信可能かつ着信メールが存在する場合に当該電文の取り込み(ダウンロード)を行うことをいうのであって,被告製品は。, 。 当該動作を行うものである したがって 被告製品は構成要件Gを充足する( ) 被告2前記のとおり,被告製品には「局番(番号 」が存在しないから,構 ROM )成要件Gの「指定局番待ち受け」が記録,表示されることはない。 また,本件特許発明における「群番号」とは無線通信の制御にかかわる,。「」 パーソナル無線において用いられる5桁の番号のことである この 群番号は,パーソナル無線機に任意に設定できる番号であり,同一の「群番号」を設定したパーソナル無線機(仲間)同士が互いに通信することができるようにするために設けられたものである。原告は,電子メールにおけるローカルIPアドレスやグローバルIPアドレスが「群番号」に当たると主張するようであるが,上記各アドレスは 「群番号」のように電子メールをやりとり ,する相手(仲間)を特定したり共通に同じ番号を設定できるようなものではなく,ノード,ドメインまたはイントラネット内でパーソナルコンピュータをユニークに識別するための番号であるから 「群番号」とは全く異なる。 ,したがって,被告製品は「特定群番号待ち受け」の構成を有しない。 本件特許発明における「チャンネル」とは,無線通信における電波の周波, 。 数に対応する番号のことであり 本件明細書の第2図もこれを明示しているこれに対し,携帯電話機等を被告製品と接続しても,被告製品により「チャンネル」を特定することはできない。したがって,被告製品は「特定チャンネル待ち受け」の構成を有しない。原告は,被告製品で実現している電子メールシステムを構築するサーバ等に到着するメールを監視し取捨選別する状態が本件特許発明の「特定群番号待ち受け「特定チャンネル待ち受け」 」,及び「指定局番待ち受け」に当たる旨主張するが,本件特許発明は「無線通信機を送受信制御する通信システム」における発明であって,前述のように無線通信とは根本的に異なる電子メールシステムを構築するサーバ等に到着するメールの監視とかかわりはない。また 「待ち受け」とはあくまで受動 ,的に来たものを選別することを意味するはずであるが,電子メールにおいては,サーバに対して能動的に働き掛けなければデータを受信することができないから被告製品は特定群番号特定チャンネル指定局番待 ,「」,「」,「」,「ち受け」のいずれともかかわりがない。したがって,被告製品は構成要件Gを充足しない。 8争点8(被告製品が本件特許発明の構成要件Hを充足するか)について( ) 原告1被告は,被告製品はフルスペックパーソナルコンピュータであって「簡易コンピュータ」ではない旨主張する。しかし,前述のとおり,本件特許発明の「簡易コンピュータ」とは「携帯型コンピュータ」のことをいうから,被告製品のノート型パーソナルコンピュータもこれに当たる。 被告は,被告製品に電話回線用のモデムが搭載されていることは一般的にいえることであっても,携帯電話機等,原告が本件において「無線通信機」と呼ぶものを通じて電子メールを送信する機能が搭載されていることは原告が立証しない限り認められない旨主張する。しかし,簡易コンピュータに接続される無線通信機すなわち携帯電話機等は,すべて,@電話機底面の汎用インターフェイス(充電,信号制御,スピーカマイク,USB等)及びA電話機側面の外部イヤホン・マイク端子を有している。被告製品の宣伝広告や取扱い説明書及び原告の実証によれば,これらのいずれの端子を利用しても電子メール等の送受信等が可能であった。また,この際に使用するケーブルは特別に設計したものではなく,容易に入手可能な一般市販品であった(被告製品に搭載されている外部インターフェイス(USB端子)を何ら改造することなく被告以外の多数のメーカーが製作提供している携帯電話機等をケーブルで接続するだけで通信が可能なものも存在している。さらに,こ。)の際使用するソフトウエアは被告製品のすべてに標準装備されているWindowsオペレーティングシステムの包含機能であった。したがって,被告製品は,無線通信機制御用簡易コンピュータとして構成要件Hを充足する。 内蔵モデムとはコンピュータ内のデジタル信号と外部通信機の回線レベル変換機構であって外部通信機器を使用する際には必須となるべきものである。また,簡易コンピュータではなく無線通信機側に特殊なモデムが内蔵されているような場合であっても,被告製品又は被告製品と当該無線通信機をつなぐLSIチップ内蔵の特別ケーブルもまたモデム機能を果たしているので本件特許発明の技術的範囲に含まれることは明確である。 なお,本件明細書には「モデム」なる文言は存在しない。 ( ) 被告2被告製品は,一般的なノートブックタイプのフルスペックのパーソナルコンピュータであって,無線通信機を制御するための簡易コンピュータではない。 原告は,一般的なパーソナルコンピュータにはソフトウエアモデムやパソコン内蔵回路によって,無線機を通じて電子メールを送信する機能が搭載されているから被告製品にも搭載されているはずであると主張するのみで,この点について具体的な主張・立証をしない。しかし,一般的なパーソナルコンピュータに搭載されているのは電話回線用のモデムであって,携帯電話機等,原告が本件において「無線通信機」と呼ぶものを通じて電子メールを送信する機能が搭載されているのが一般的とはいえない。 本件特許発明の「無線通信機制御用」簡易コンピュータというためには,無線通信機を制御するために不可欠な回路を内蔵している必要がある。ところが,被告製品において携帯電話機等を通じて電子メールを送受信する際には,コンピュータの外側において携帯電話機等による通信のために信号を変換する特別の回路をもつLSIチップが内蔵された当該製品に対応する規格の信号変換回路を内蔵した特別のケーブルを用いなければならず,さらに,ケーブルの組み合わせに応じて異なるソフトウエアを被告製品にインストールしなければならないのであって,上記のような無線通信機制御のための回路が内蔵されていないから,被告製品は構成要件Hを充足しない。 原告は,携帯電話機等の外部イヤホン・マイク端子を被告製品に接続して通信することが可能である旨主張する。しかし,被告製品は外部イヤホン・マイク端子による携帯電話機等を制御するための構成を備えていないため,そのような接続がなされた場合には操作者が手作業で携帯電話機等を操作する必要がある。また,本件特許発明における無線通信機制御用簡易コンピュータとは,無線通信機を制御するために構成要件BないしGの構成を備える, 。 ものであるが 被告製品はそのような無線通信機の制御を行うものではないしたがって,被告製品は構成要件Hを充足しない。 9争点9(本件特許発明が特許無効審判により無効にされるべきものといえるか)について( ) 被告1昭和61年4月25日に株式会社三才ブックス発行のラジオライフ6月号(甲5。以下「ラジオライフ6月号」という )に掲載された原告製品(パ 。 ソ無線用多目的パソコンTX-900SP)が,本件特許発明の実施品であることは当事者間に争いがない。そして,ラジオライフ6月号には「本誌広告でおなじみの,TODから,パソ無線用多目的パソコンTX-900SPが発売になりました「なお,本機に対する詳細は,下記までどうぞ 」 。」, 。 と記載されているのであるから,ラジオライフ6月号が発売開始になった昭和61年4月25日においては,既に本件特許発明の実施品が発売されていたことになる。本件特許出願は,その後3週間以上経過した昭和61年5月21日に出願されたのであるから,本件特許は,特許法29条1項2号に違反してなされたものとして無効にされるべきであり,特許法104条の3第1項により被告に対して権利を行使することはできない。 原告は,シャープ株式会社(以下「シャープ」という )から実施品に関。 するファックス文書が昭和61年5月9日に届いていることをもって,同日までは実施品が販売されていなかった旨主張する。しかし,上記シャープのファックス文書は,極めて容易な改造に関するものであり,製品販売後の改造事項についての連絡ともとれる内容である。 ( ) 原告2被告は,本件特許出願前に発行されたラジオライフ6月号に,本件特許発明の実施品について「本誌広告でおなじみの,TODから,パソ無線用多目的パソコンTX-900SPが発売になりました「なお,本機に対する 。」,詳細は,下記までどうぞ 」と記載されているから,本件特許発明は,特許 。 法29条1項2号に違反してなされたものとして無効にされるべきであり,特許法104条の3第1項により被告に対して権利を行使することはできないと主張する。 しかし,製品の生産リードタイムないし市場浸透性を考慮して,実際の販売に先行して「発売中」と表示することは通常商慣習の範囲内である。上記本件特許発明の実施品は出荷前の最終段階においてプログラムの保護のための改造方法をメーカーであるシャープとの間で打ち合わせしており,当該打合せのための連絡が昭和61年5月9日にシャープからファックスによってなされている(甲10 。したがって,上記実施品の製造販売は同日より後 )であったことは明らかであり,被告が主張する上記雑誌の記載をもって,本件特許発明の実施品が本件特許出願前に販売されていたと認めることはできない。 10争点10(損害の額)について( ) 原告1被告は,遅くとも平成8年4月9日から平成18年4月までの間に被告製品を1年間当たり,少なくとも別紙物件目録各項目記載の製品につき1万2000台,合計479万6000台を製造,販売した。 被告製品の販売価格は1台当たり低くとも10万円であるから,被告製品の販売による売上合計額は最低でも4796億円であり,被告は少なくとも販売価格の20%である959億2000万円の利益を得た。 そうすると,被告が上記期間に得た利益は959億2000万円であり,これが原告の被った損害である。原告は,同損害金のうち金10億円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。 ( ) 被告2争う。 第4当裁判所の判断1争点1,4ないし8(被告製品が本件特許発明の構成要件A,DないしHを充足するか)について( ) 証拠(甲2,乙1の11)によれば,本件明細書には次のアないしキのよ1うな記載があり,本件特許発明の出願過程において,原告は,特許庁が平成4年8月6日付けで行なった拒絶査定に対する同年10月6日付け審判請求書において,次のクのような記載をした事実が認められる。 ア〔従来の技術 (本件公報2欄)〕「従来より,コンピュータに依り無線通信機を駆動して交信信号を送受信し,交信信号及び受信信号を記録するような各種データ通信システムが使用されており,これらのデータ通信システムは,無線通信機とコンピュータ間を特別に設計した制御信号授受ケーブルで接続している 」。 イ〔発明が解決しようとする問題点 (同2欄)〕「近年,パーソナル無線機或いはCBと称されるような簡易無線通信機が多用されるようになり,これらの簡易無線通信機においてもコンピュータに依るデータ通信及び通信管理の要望が高まっているが,一般に市販されている無線通信機にはコンピュータによるデジタル通信を行うための専用の信号授受端子が設けられておらず,改造が困難であった 」。 「本発明は上記要望に鑑みて成されたもので,簡易無線通信機を含む各種無線通信機を,…特定のモジュールを組み込んだ簡易コンピューROMタにより,制御駆動し,交信時にパーソナル無線信号に含まれる全 ATISての信号を解読記録すると同時に自動的に簡単なメッセージを自動送信するデジタル通信機能を持たせるためのコンピュータに依る交信記録のための無線通信機と簡易コンピュータの接続方法を提唱することを目的とするものであり,…パーソナル無線受信バージョン,アマチュア無線バージョン,業務用無線受信バージョン又は電話回線通信バージョンにおけるデジタル通信を可能にすることを目的とするものである 」。 ウ〔作用 (同3欄)〕「即ち上記コンピュータに依る交信記録のための無線通信機と簡易コンピュータの接続方法は,一般の無線通信機及び携帯用パーソナルトランシーバを含む簡易無線通信機に装備されている,マイク端子,スピーカ端子及び送受信スイッチ端子…の外部出力端子を介して接続することにより,両者間の信号をデジタル化して授受するものであるため,無線通信機の機種を問わず全ての無線通信機によってデジタル通信システムを可能にすることができるものである 」。 エ〔実施例 (同4欄1行,2行) 〕「符号1は,携帯用パーソナルトランシーバ等の簡易無線通信機を含む無線通信機…である 」。 オ〔実施例 (同4欄5行ないし15行,19行ないし47行) 〕「上記無線通信機1と簡易コンピュータ2は,簡易コンピュータ2の入出力端子4をケーブル6を介して無線通信機1のマイク端子,スピーカ端子及び送受信スイッチ端子或はマイク,スピーカ・コネクタ端子等の外部入出力端子5と接続し,両者間の信号をデジタル化して授受するものである。又上記簡易コンピュータ2には…無線通信機1によりデジタル通信を行うための専用プログラムを書込んだモジュール7を取付けてお ROMき,簡易コンピュータ2のキー操作だけで駆動するようになる…」「第2図は上記プリンタ3により印刷出力されたログリストの一例を示104105106,107ROM す…は群番号,はチャンネル,はビットエラーは番号,はログ番号である。上記モジュール7は簡易コンピュー108 ROMタ2が無線通信機1を検出器として,…次のような作動をするようにプログラムされている。 .,,(,), a 群番号 チャンネル番号 コールサイン 局番 免許番号 を解読し…印刷記録する。 b.交信中に…予め記憶しておいた簡易メッセージの送信又は受信が,MCA無線と同様にデジタル信号化として通信することができる。又,タイマをセットしておき,所定時刻に無人で自動発信することができる。 c.全ての交信データを時刻及びメリット情報と共に簡易コンピュータ2内の記憶素子に記憶し,…記憶した情報をディスプレイ9又はプリンタ3に出力する受信ログ機能を持つ。 d.…局番(番号)の表示の代わりにニックネーム…を表示させるROMことができる。 e.特定群番号待ち受け,特定チャンネル待ち受け及び指定局番待ち受けを記録表示する。 f.受信した制御信号の信頼性(了解度)を受信ログごとに表示する 」。 カ〔実施例〕第5欄10行ないし14行「メッセージ通信を必要としない場合は,無線通信機1のスピーカジャックに接続したコネクター12と簡易コンピュータ2の『EAR』ジャック15を接続するだけでデジタル通信の目的を達成することができる 」。 キ〔発明の効果〕第5欄15行ないし第6欄5行「本発明の無線通信機制御用簡易コンピュータによれば,…無線通信機の機種を問わず全ての無線通信機によってデジタル通信システムを可能にすることができ,特定のモジュールを組み込んだ簡易コンピュータROMにより,無線通信機を制御駆動し,交信時にパーソナル無線信号に ATIS含まれる全ての信号を解読記録すると同時に自動的に簡単なメッセージを自動送信するデジタル通信機能を持たせることが可能と成る」ク平成4年10月6日付け審判請求書7頁ないし8頁「本願発明の無線通信機1のマイク端子,スピーカ端子及び送受信スイッチ端子或はマイク,スピーカ・コネクタ端子の外部出入力端子5は,一般の無線通信機及び携帯用パーソナルトランシーバを含む簡易無線通信機に元来装備されている端子であって,該端子をそのままの状態で使用できるところに本願発明の主構成の一つを有するものである。ところが,引用発明のパーソナルコンピュータ5のコネクタ54とトランシーバユニット100のコネクタ109は,パーソナルコンピュータ5とトランシーバユニット100の接続のための専用コネクタを設けてなるものであり,一般のトランシーバユニットに元来装備したマイク端子,スピーカ端子等を使用し得るものではない 」。 ( ) 以上の本件明細書の記載によれば,コンピュータにより無線通信機を駆動2して交信信号を送受信し,交信信号及び受信信号を記録するような従来のデータ通信システムにおいては,従来,無線通信機とコンピュータ間を特別に設計した制御信号授受ケーブルで接続し,また,パーソナル無線機又はCBと称されるような簡易無線通信機においてはデジタル通信を行うための専用の信号授受端子が設けられていなかったのに対し,本件特許発明は,簡易コンピュータと無線通信機とを,無線通信機に装備されている,マイク端子,スピーカ端子及び送受信スイッチ端子の外部出力端子を介して接続することにより,両者間の信号をデジタル化して授受するものであるため,これにより無線通信機の機種を問わずすべての無線通信機によってデジタル通信システムを可能にすることができるとの効果を奏するものである。そして,このことは,上記審判請求書においても 「本願発明の無線通信機1のマイク端 ,子,スピーカ端子及び送受信スイッチ端子…は,一般の無線通信機及び携帯用パーソナルトランシーバを含む簡易無線通信機に元来装備されている端子であって,該端子をそのままの状態で使用できるところに本願発明の主構成の一つを有するものである 」として強調されているところである。 。 そして,本件特許発明において簡易コンピュータと接続される「無線通信機 (構成要件A,H)は,その特許請求の範囲における「全ての交信デー 」タを…メリット情報と共に簡易コンピュータ内…に記憶し (構成要件D ,」)「局番にニックネームを登録することにより,局番(番号)の… (構ROM 」成要件F)及び「特定群番号待ち受け,特定チャンネル待ち受け及び指定局番号待ち受け (構成要件G)との記載からすれば 「メリット情報「局 」 ,」,番(番号「群番号「チャンネル」を用いて通信を行うものであROM )」,」,ることは明らかである。 現に,本件明細書には,上記のとおり「本発明は…簡易無線通信機を含む各種無線通信機を,…特定のモジュールを組み込んだ簡易コンピューROMタにより,制御駆動し,交信時にパーソナル無線信号に含まれる全て ATISの信号を解読記録する (( )イ)との記載があることや,また,本件明細 」 1書の実施例における簡易無線通信機については 「第2図は上記プリンタ3 ,により印刷出力されたログリストの一例を示す…は群番号,はチャ104105ンネル,はビットエラーは番号,はログ番号である。 106,107ROM108上記モジュール7は簡易コンピュータ2が無線通信機1を検出器としROMて,…次のような作動をするようにプログラムされている。a.群番号,チ,(,),。 ャンネル番号 コールサイン 局番 免許番号 を解読し …印刷記録する…c.全ての交信データを時刻及びメリット情報と共に簡易コンピュータ2内の記憶素子に記憶し (( )オ)との記載もあり,これらの記載を参酌し 」1ても,本件特許発明の「無線通信機」は,特許請求の範囲の記載のとおり,「メリット情報「局番(番号「群番号」及び「チャンネル」を 」,)」,ROM用いて通信を行うものであると解される。 ( ) 被告製品に接続される携帯電話機等が本件特許発明の「無線通信機」に当3たるか。 被告製品に接続される携帯電話機等は,本件特許発明の「メリット情報」(構成要件D「局番(番号(構成要件F「群番号 (構成要件 ),)」),」ROMG「チャンネル (構成要件G)を用いて無線通信を行うものでなく,本 ),」件特許発明の「無線通信機 (構成要件A,H)には当たらず,携帯電話機 」等を接続した被告製品は,本件特許発明の構成要件A及びHにおける「無線通信機制御用簡易コンピュータ」には該当しない。その理由は次のとおりである。 ア構成要件Dについて本件特許発明の構成要件Dにおける「メリット情報」とは,無線通信において,受信者からみた信号の明瞭度を多段階で表す情報を意味する(争いがない。本件明細書の実施例における「ビットエラー」がこれに 。)106相当し,本件明細書の第2図にも記載されているものである(甲2 。)原告は,被告製品に携帯電話機等を接続して行う通信においては,被告製品にインストールされているソフトウエアであるアウトルックにおける通信の成功,不成功及びその原因等の情報を用いており,これが本件特許発明の「メリット情報」に当たる旨主張する。 しかし,本件特許発明の「メリット情報」とは,前記のとおり,無線通信において,受信者からみた信号の明瞭度を多段階で表す情報を意味するから,被告製品のアウトルックにおける通信の成功,不成功及びその原因に関する情報のように,送信者が受け取る信号の明瞭度に関わらない情報はこれに当たらないことは明らかである。したがって,携帯電話機等と接続した被告製品は 「メリット情報」を「簡易コンピュータ内の記憶素子 ,に記録」するとの構成要件Dを充足しない。 イ構成要件Eについて構成要件Eは,構成要件Dにおいて「記録した情報をディスプレイ又はプリンタに出力」するものである。そして,携帯電話機等と接続した被告製品には 「メリット情報」が存在しないのであるから,メリット情報を ,ディスプレイ等に出力するものではないことは明らかであるから,被告製品は,この点で構成要件Eを充足しない。 ウ構成要件Fについて本件特許発明の構成要件Fにおける「局番(番号 」とは,無線通ROM )信の分野においては,無線通信機1台1台に付された機械固有の識別番号であり,どの無線通信機から発信された電波かを区別するために,発信電107ROM 波に付加される番号を意味する。本件明細書の実施例における「番号」がこれに相当し,本件明細書の第2図にも記載されているものである。本件特許発明においては,この局番にニックネームを登録することにより,局番表示の代わりにニックネームを表示させるものである(同第2図参照(甲2,弁論の全趣旨) )。 原告は,被告製品に携帯電話機等を接続して行う通信においては,IPアドレス,ドメイン名等発信者や送信者を識別するための何らかの識別符号を用いており,これが本件特許発明の「局番(番号 」に当たる旨ROM )主張する。 しかし,携帯電話機等を接続した被告製品の通信システムにおいては,電子メールにおいて用いられるIPアドレス,ドメイン名等は,コンピュータにおいて設定され使用されるものであり,被告製品に接続された携帯。, 電話機等に付された固有の番号ではないことは明らかである したがって被告製品に携帯電話機等を接続して行う通信においては,本件特許発明の「局番(番号 」は存在しない。 ROM )原告は,本件特許発明において 「局番(番号 」が無線機に存在 ,)ROMするか,簡易コンピュータに存在するかは限定されていないと主張する。 しかし,本件特許発明における「局番(番号 」が無線通信機1台1ROM )台に付された機械固有の識別番号であることは前記認定のとおりであるから,本件特許発明においては 「局番(番号 」は,コンピュータで ,)ROMはなく,携帯電話機等に設定されるべきものであって,原告の上記主張は採用し得ない。 なお,ローカルIPアドレスは,一台のコンピュータにおいて複数設定される場合もあり,また,複数のコンピュータにおいて一つのローカルIPアドレスを使用する場合もあり,被告製品等のコンピュータに付された固有の番号でもない。また,相手方のメールサーバ又は電子メールの受信者に,被告製品に付されたローカルIPアドレスが送られることもない。 また,グローバルIPアドレスは,インターネットの世界において通信しているインターネットと直接接続されるノード(発信元のサーバなど)を特定するために付与される番号であって,電子メールをやりとりする被告製品に付与されるものではない。 以上によれば,携帯電話機等を接続した被告製品の通信システムにおいては,本件特許発明の「局番(番号 」は存在せず,構成要件Fを充ROM )足しない。 エ構成要件Gについて)本件特許発明の構成要件Gにおける「群番号」とは,無線通信の制御aにかかわる,パーソナル無線等において用いられる5桁の番号のことであり,本件特許発明の実施例における「群番号」がこれに相当し,104。「」 , 本件明細書の第2図にも記載されているものである この 群番号 はパーソナル無線機に任意に設定できる番号であり,同一の「群番号」を設定したパーソナル無線機(仲間)同士が互いに通信することができるようにするために設けられたものである (甲2,弁論の全趣旨) 。 原告は,被告製品に携帯電話機等を接続して行う通信において用いられるIPアドレスによりメールを受信する機能が本件特許発明の「特定群番号待ち受け」に当たる旨主張する。 しかし,前記のとおり,本件特許発明における「群番号」とはいわゆるパーソナル無線の分野で用いられている,パーソナル無線機等に任意に設定できる,通信の相手方と同一の5桁の番号のことであり,IPアドレスが,通信の相手方と同じ番号を設定する群番号に当たらないことは明らかである。 )本件特許発明の構成要件Gにおける「チャンネル」とは,無線通信にbおける電波の周波数に対応する番号のことであり,本件特許発明の実施例における「チャンネル」がこれに相当し,本件明細書の第2図に105も記載されているものである(甲2,弁論の全趣旨 。)原告は,被告製品に携帯電話機等を接続して行う通信においては,コンピュータである被告製品に流入する情報のうち無用な情報を棄却し,必要な情報を選択受信して有用な情報のみを残す機能を有しており,これが本件特許発明の「特定チャンネル待ち受け」に当たる旨主張する。 しかし,前記のとおり,本件特許発明の「チャンネル」とは,無線通信の分野で用いられている電波の周波数に対応する番号であると解されるから,コンピュータである被告製品に流入する情報のうち無用な情報を棄却し,必要な情報を選択受信して有用な情報のみを残す機能はこれに当たらない。 )以上によれば,携帯電話機等を接続した被告製品には 「特定群番号c ,待ち受け」も 「特定チャンネル待ち受け」も存在せず,構成要件Gを ,充足しない。 ,,「」, オ原告は 本件明細書には 本件特許発明における 無線通信機 としてパーソナル無線機のほかに,CBと称される簡易無線通信機,アマチュア無線,業務用無線(本件公報3欄16行ないし19行)が記載されている,, , ことから 本件特許発明は パーソナル無線機に限定されるものではなく「局番「群番号」及び「チャンネル」を用いて通信を行うものではな 」,。,「」 , いものも含まれると主張する 確かに 本件特許発明の 無線通信機 はパーソナル無線機に限定されるものではない。しかし,仮に,上記の無線通信機の中には必ずしも「局番(番号「群番号」及び「チャンROM )」,ネル」のすべてを用いて通信を行うものではないものも含まれているとしても,本件明細書の特許請求の範囲の記載においては 「無線通信機」に,ついて 「メリット情報「交信データの局番(番号 」並びに「群 ,」, )ROM番号」及び「チャンネル」を用いて通信を行うものであることが明記され,「」 ,「」, ているのであるから 本件特許発明の 無線通信機 はメリット情報「交信データの局番(番号 」並びに「群番号」及び「チャンネル」ROM )を用いて通信を行う「無線通信機」であると解釈すべきことは,特許法70条1項の規定から明らかである。原告の上記主張は採用し得ない。 カ構成要件A及びHについて以上によれば,被告製品に接続される携帯電話機等は,少なくとも本件特許発明の構成要件A及びHが意味する「無線通信機」には当たらないことは明らかであるから,携帯電話機等と接続した被告製品は,構成要件Aの「無線通信機を送受信制御する 「簡易コンピュータ」にも,構成要件 」Hの「無線通信機制御用簡易コンピュータ」にも当たらず,構成要件AもHも充足しない。 2小括被告製品は,少なくとも本件特許発明の構成要件A,DないしHの構成を備えないものであるから,本件特許発明の技術的範囲に属しない。 第5結論以上によれば,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がないからこれを棄却し,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 設樂隆一 |
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裁判官 | 古河謙一 |