関連審決 | 不服2003-6284 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成20行ケ10199審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成21行ケ10033審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成21行ケ10068審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18行ケ10509審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成22行ケ10373審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | インターネット / アクセス / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 一致点の認定 / 相違点の認定 / 技術常識 / 発明の詳細な説明 / 要約書 / 翻訳文 / 優先権 / 参酌 / 技術的意義 / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 拒絶査定 / 請求の範囲 / 国際出願 / |
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元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
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事件 |
平成
18年
(行ケ)
10078号
審決取消請求事件
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原告サムスンエレクトロニクス カンパニーリミテッド 訴訟代理人弁理士伊東忠彦 同 湯原忠男 同 大貫進介 同 伊東忠重 被告特 許庁長 官中嶋誠 指定代理人長島孝志 同 山本春樹 同 小池正彦 同 大場義則 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2006/11/30 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1請求特許庁が不服2003-6284号事件について平成17年10月4日にした審決を取り消す。 第2当事者間に争いがない事実1特許庁における手続の経緯原告は,平成10年6月24日,発明の名称を「ホームネットワークのためのプログラミングツール」とする発明について特許出願(特願平11-504059号,優先権主張1997年〔平成9年〕6月25日,同年9月22日・米国)をしたが,平成15年1月14日(送達日)に拒絶査定を受けたので,不服審判の請求をした。 特許庁は,これを不服2003-6284号事件として審理し,平成17年10月4日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同月18日,原告に送達された。 2特許法184条の6第2項の規定により願書に添付した明細書とみなされるその国際出願に係る明細書の翻訳文(甲1,以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)の要旨プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する時,ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する方法において,第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する段階と,第1家電機器と関連された識別されたマルチメディア物によってHTMLページを発生する段階と,第1家電機器の接近可能な領域に前記HTMLページを貯蔵する段階とを含むことを特徴とする方法。 3審決の理由( )審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本願発明が,特開平7-444177号公報(甲2,以下「引用例1」という。)に記載された発明(以下「引用発明1」という。)及び特開平9-146973号公報(甲3,以下「引用例2」という。)に記載された発明(以下「引用発明2」という。)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした。 ( )審決が認定した,本願発明と引用発明1の一致点及び相違点は,それぞれ 2次のとおりである(審決謄本7頁第5段落)。 ア一致点プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する時,ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する方法において,第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する段階と,第1家電機器と関連された識別されたマルチメディア物によってプログラムガイドを発生する段階を含む方法。 イ相違点本願発明においては,発生させる「プログラムガイド」が「HTMLページ」であり,「第1家電機器の接近可能な領域にHTMLページを貯蔵する」ものであるのに対し,引用例1には,そのようなことについて記載されていない点。 第3原告主張の審決取消事由審決は,本願発明と引用発明1の一致点の認定を誤り(取消事由1),相違点を看過し(取消事由2),相違点についての判断を誤り(取消事由3),相違点についての判断の遺漏があり(取消事由4),違法であるから,取り消されるべきである。 1取消事由1(一致点の認定の誤り)(1)審決は,「本願発明と引用例1記載の発明(注,引用発明1)とを対比すると,まず,引用例1記載の発明における『デジタルVTR』は,本願発明における『第1家電機器』に相当する。」(審決謄本6頁第4段落)と認定したが,誤りである。 ア本願発明の特許請求の範囲には,「第1家電機器の接近可能な領域に前記HTMLページを貯蔵する」と記載され,本件明細書における要約書に,「HTML第1 」 ページは家電機器上のアクセス可能な領域に貯蔵される。 と記載されているように,HTMLページは,第1家電機器の接近可能な領域に蓄積される。そして,本件明細書の特許請求の範囲の請求項2には,「ブラウザー基盤の第2家電機器をホームネットワークに連結させる段階と,第1家電機器からホームネットワークを介して第2家電機器で前記HTMLページを受信する段階と,第2家電機器が提供されるHTMLページをディスプレーするための表示ユニットを具備する・・・」と記載されているところ,これは, 第2家電機器が,ブラウザー基盤の家電機器であるホームネットワークに接続して,第1家電機器からHTMLページを受信家電機器によって,生成され,蓄積され するもので,HTMLページが第1ていることを前提としている。 したがって,本願発明の第1家電機器は,HTMLページを生成して,蓄積しているものである。 イ一方,引用発明1のデジタルVTR203は,リモートコントロールされる家電機器であり,単なるディジタルVTRであって,本願発明の「第1家電機器」にように, HTMLページ」を作成「プログラムガイド」である「・蓄積する役割・機能を有していない。 ウしたがって,引用発明1の「デジタルVTR」は,本願発明の「第1家電機器」とは,家電機器である点で一致するものの,「ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する方法」における役割・機能は全く異なるものである。 ( )審決は,「引用例1記載の発明(注,引用発明1)における『LANに接2続された種々のマルチメディア機器を表示する画面』や『デジタルVTRのコントロールパネル表示画面』は,画面上のアイコン表示が,利用者に対する操作上のガイダンス表示となっているので,本願発明における『プログラムガイド』に相当するということができる。」(審決謄本6頁最終段落〜7頁第1段落)と認定したが,誤りである。 ア本願発明において,「プログラムガイド」は,ホームネットワークに連結された家電機器の有するマルチメディア物(いわゆるマルチメディアコンテンツ)を識別するためのプログラムガイドであって,当該ホームネットワークにおける使用者に利用可能なマルチメディア物(いわゆるマルチメディアコンテンツ)のリストを提供するものである。 すなわち,本願発明において,「マルチメディア物」とは,本件明細書の「ホームネットワークプログラムガイド」の項(40頁)に,「使用者に利用可能なマルチメディア物(例えば,オーディオ及びビデオプログラム,TVプログラム及びCD)」と記載されているように,オーディオプログラム,ビデオプログラム,TVプログラム及びCD等の,いわゆる,「マルチメディアコンテンツ」である。 そして,本件明細書の「発明の開示」の項(3頁)に,「本発明の他のホームネットワークに連結された家電機器と関連されたマルチメディア物 目的はを識別するためにホームネットワークに対するプログラムガイドを発生する方法を本発明のさらに具体的な目的は,少なくとも機器のう 提供することである。 ち1つがマルチメディア機器のホームネットワークに連結された多数の機器を制御し,ホームネットワークに連結された第2家電機器上にマルチメディア機器により提供された情報に対するプログラムガイドを発生するための方法を提供することである。」と記載されているとおり,本願発明において,「プログラムガイド」とは,「ホームネットワークプログラムガイド」であって,ホームネットワークと関連付けられて作成されて,当該ホームネットワークにおける使用者に利用可能なマルチメディア物(いわゆるマルチメディアコンテンツ)のリストを提供するものである。 このことは,本件明細書の「ホームネットワークプログラムガイド」の項(40頁)に,「プログラムガイド」について,「使用者に利用可能なマルチメディア物(例えば,オーディオ及びビデオプログラム,TVプログラム及びCD)のリストを提供するために,1つ以上のホームネットワークプログラムガイドがホームネットワークと関連付けられる。」と記載され,また,同項(41頁)に,「ホームネットワークプログラムガイド」は,DBSSから受信されたEPGに加えて,ホームネットワークに接続されている家電機器で現在利用可能な映画,ゲーム,CD等のいわゆるマルチメディアコンテンツアのリストを表示することができる旨の記載があることからも裏付けられる。 イこれに対し,引用発明1における「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面」は,マルチメディア機器を表示するのみであり,マルチメディアコンテンツのリストを提供するものではない。 ウ被告は,本件訴訟において,「マルチメディア物」とは,「マルチメディア機器により提供されるデータ,すなわち,プログラムである」旨主張するが,審決においては,「マルチメディア物」は,「マルチメディア機器に関連するデジタル的なデータ」であるとし,その上で,選択情報を「マルチメディア物」であると判断したものである。すなわち,審決における「マルチメディア物」の解釈と,本件訴訟における被告の「マルチメディア物」解釈は異なるものであり,審決と異なった解釈に基づく被告の主張は,失当である。 また,被告は,審判段階における,審尋に対する平成17年8月17日付け原告の回答書(乙2,以下「本件回答書」という。)の記載を根拠として,「マルチメディア物」について,「オーディオプログラム,ビデオプログラム,TVプログラム及びCD等であって,いわゆる,『マルチメディアコンテンツ』である。」との限定的解釈は何らされておらず,「マルチメディア物」には,そのような「マルチメディアコンテンツ」以外に「制御プログラム」等の制御データをも含むと解すべきである旨主張するが,失当である。 特許出願に係る発明の解釈の基本は,最高裁平成3年3月8日判決・民集45巻3号123頁で判示されるとおり,特許請求の範囲の記載であり,特許請求の範囲の技術的意義が一義的に明確に理解できない場合に,明細書の記載を参酌して,解釈すべきである。本願発明の特許請求の範囲に記載された「マルチメディア物」は,本件明細書の記載を参酌したとしても,「オーディオプログラム,ビデオプログラム,TVプログラム及びCD等」を意味し,いわゆる「マルチメディアコンテンツ」である。 本件回答書において,「マルチメディア物」に関して,本件明細書で示された内容を超えて説明した点で,不適切な点があったことは否定しないが,特許法36条6項1号に「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」と規定されているように,特許出願に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものでなければならないのであるから,特許請求の範囲に記載された「マルチメディア物」について,本件明細書で示された内容を超えて解釈するのは相当でない。 なお,被告は,「マルチメディア物」には,「マルチメディアコンテンツ」以外に「制御プログラム」等の制御データも含むと解すべきである旨主張し,その根拠として,後記第4の1(2)イのとおり,本件明細書の11頁27行目〜12頁14行目及び12頁20行目〜13頁3行目の記載を挙げる。しかし,当該箇所は,本件明細書の図1のシステムにおけるDTV102と家電機器との間の「HTMLツーウェイメカニズム」及び家電機器が具備する「HTMLファイル」が説明されているものであり,「マルチメディア物」が説明されている箇所ではなく,「マルチメディア物」に関する被告の主張を裏付けるものではない。 エ被告は,本件回答書の記載を根拠として,「プログラムガイド」について,「ホームネットワークと関連付けられて作成されて,当該ホームネットワークにおける使用者に利用可能なマルチメディア物 いわゆるマルチ (メディアコンテンツ のリストを提供する」という限定的解釈がされてい )ない旨主張する。 しかし,本願発明の特許請求の範囲に記載された「プログラムガイド」は,それ自体,明確な概念である。原告は,念のために,明細書を参酌して,「『プログラムガイド』は,『ホームネットワークプログラムガイド』であって,この『ホームネットワークプログラムガイド』は,ホームネットワークと関連付けられて作成されて,当該ホームネットワークにおける使用者に利用可能なマルチメディア物 いわゆるマルチメディアコン(テンツ のリストを提供するために用いられる。」と,「プログラムガイ)ド」の用いられ方を明示することによって,「ホームネットワークプログラムガイド」の技術的意義を明らかにしたものであって,「プログラムガイド」を限定解釈したものではない。 本件回答書は,「プログラムガイド」に関して,本件明細書で示された内容を超えて説明した点で,不適切な点があったことは否定しないが,出願に係る発明は,特許請求の範囲の記載に基づいて解釈すべきであり,特許請求の範囲の技術的意義が一義的に明確に理解できない場合は,明細書の記載を参酌して,解釈すべきである。 また,被告は,本件明細書において,「1つの機器のHTMLファイルに含まれた情報が一度DTV202上に図式的にディスプレーされると,使用者はDTVのスクリーン上にディスプレーされた制御プログラムを,開始する関連ハイパーリンクを有するアイコンを選択して またはデータ/をDTV202に入力することによってDTV202からその家電機器204を制御しうる。」(12頁9行目〜14行目)と記載されていることから,「制御プログラム」を示す「アイコン」は,「プログラムを示す図表」であり,このようなものも「プログラムガイド」を構成する旨主張する。 しかし,上記箇所の文は原文(英文)では,「使用者はDTVのスクリーン上にディスプレーされた(制御プログラムを開始する関連ハイパーリンクを有する)アイコンを選択して・・・DTV202からその家電機器204を制御しうる。」という構造の文章であり,表示されるのはアイコンであって,制御プログラムではない。ユーザが表示されたアイコンを選択することによって,アイコンに関連した制御プログラムの処理が開始されるものである。 したがって,「制御プログラム」を示す「アイコン」が「プログラムを示す図表」であるから,このようなものも「プログラムガイド」を構成する旨の主張は,誤りである。 ( )審決は,「引用例1記載の発明(注,引用発明1)において『LANに接3続された種々のマルチメディア機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリック』することは,画面に表示された種々のマルチメディア機器のうち,デジタルVTRを選択したことを識別させる,すなわち,デジタルVTRと関連する選択情報(これはマルチメディア機器に関連するデジタル的なデータ,すなわち『マルチメディア物』である。)を識別させることになるから,本願発明において『プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する』ことに相当する。」(審決謄本7頁第2段落)と認定するが,誤りである。 ア本願発明において,「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する」とは,プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物(いわゆるマルチメディアコンテンツ)を識別することをいう。 イ引用例1の図17の画面においては,LANに接続された種々のマルチメディア機器がアイコン表示されていて,利用者が,デジタルVTRのアイコンをダブルクリックすると,デジタルVTRを制御する画面に遷移してデジタルVTRを操作するためのボタンが表示される画面(図24)となり,TVのアイコンをダブルクリックすれば,TVを制御する画面に遷移するように,引用発明1において,「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリック」することは,ユーザが,表示された複数の家電機器の中から,これから使用するデジタルVTRを選択することであって,デジタルVTRを「選択したことを識別させる」ものではないし,デジタルVTRと関連する選択情報を識別させることではない。 そして,上記認定に当たり,審決は,選択情報は,マルチメディア機器に関連するデジタル的なデータであるので,「マルチメディア物」であるとしているが,「マルチメディア物」は,いわゆる,「マルチメディアコンテンツ」であるのに対し,選択情報は選択のためのデータであるから,審決の認定は誤りである。 ( )審決は,「上記したように,『コントロールパネル表示画面』も本願発明4における『プログラムガイド』に相当するということができることから,引用例1記載の発明において『デジタルVTRのコントロールパネル表示画面を発生する』ことは,本願発明において『ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する』ことに相当する。」(審決謄本第7頁第3段落)とするが,誤りである。 引用発明1における「コントロールパネル表示画面」は,本願発明における「プログラムガイド」に相当するものではなく,審決の上記認定は,「コントロールパネル表示画面」が本願発明における「プログラムガイド」に相当するとの誤った認定を前提としてされたものである。 (5)審決は,「本願発明と引用例1記載の発明(注,引用発明1)とは,ともに,『プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する時,ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する方法において,第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する段階と,第1家電機器と関連された識別されたマルチメディア物によってプログラムガイドを発生する段階を含む方法。』である点で一致」(審決謄本7頁第5段落)すると認定するが,誤りである。 @引用発明1における「デジタルVTR」は,本願発明における「第1家電機器」に相当するものではなく,A引用発明1における「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面」や「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面」は,本願発明における「プログラムガイド」に相当するものではなく,B引用発明1において「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリック」することは,本願発明のように「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する」ものではなく,C引用発明1において「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面を発生する」ことは,本願発明において「ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する」ことに相当するものではないので,本願発明と引用発明1とは,ほとんどの構成において相違している。 (6)被告は,引用例1の段落【0107】に,「各装置に挿入されているテープの内容一覧」が表示されていることを挙げて,これは,「マルチメディアコンテンツ」をリスト表示することと実質的に同様のものであり,引用例1において,「マルチメディアコンテンツ」をリスト表示することも明らかにされているから,原告が,引用例1において,「マルチメディアコンテンツ」の記載がないことを根拠として主張を展開していること自体が失当である旨主張するが,理由がない。 原告は,引用例1において,「マルチメディアコンテンツ」の記載がないことを根拠として準備書面で主張を展開したものではない。なお,ディジタルVTRにおいて,VTRテープの内容を表示することは,周知の事項であって,引用例1の摘示された箇所には,単に,周知の事項が記載されているにすぎない。 2取消事由2(相違点の看過)審決は,「本願発明においては,発生させる『プログラムガイド』が『HTMLページ』であり,『第1家電機器の接近可能な領域にHTMLページを貯蔵する』ものであるのに対し,引用例1には,そのようなことについて記載されていない点。」(審決謄本7頁第5段落)を相違点と認定したが,誤りである。 上記1のとおり,本願発明と引用発明1は,ほとんどの構成において相違しており,相違点として上記相違点のみを認定したのは誤りであり,審決は,その余の相違点を看過している。 3取消事由3(相違点についての判断の誤り)審決は,相違点について,「上記引用例2に見られるように,種々のシステムにおいて,HTMLページを発生,貯蔵し,それを利用することは,従来から行われていることである。してみれば,引用例1記載の発明(注,引用発明1)において,発生される『デジタルVTRのコントロールパネル表示画面』を『HTMLページ』とすることは,当業者が適宜に設計できる事項であるものと認められ,さらにそれをデジタルVTRの接近可能な領域に貯蔵するようにすることも,当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。 そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,引用例1,2に記載の発明(注,引用発明1及び2)から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって,格別のものとはいえない。」(審決謄本7頁第7段落〜8頁第1段落)と判断したが,誤りである。 審決の上記判断は,「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面」が,本願発明における「プログラムガイド」に相当するとするなどの誤った認定を前提としたされたものであり,誤っている。 また,「HTMLページ」は,「プログラムガイド」であるところ,引用例2には,「プログラムガイド」を発生,貯蔵し,それを利用することについて,記載も示唆もされておらず,この点についての審決の判断は,根拠を欠き,理由がない。 4取消事由4(相違点についての判断の遺漏)本願発明と引用発明1は,上記のとおり,ほとんどの構成において相違しているにもかかわらず,審決は,相違点として摘示した,「本願発明においては,発生させる『プログラムガイド』が『HTMLページ』であり,『第1家電機器の接近可能な領域にHTMLページを貯蔵する』ものであるのに対し,引用例1には,そのようなことについて記載されていない点。」について判断をしたにとどまり,その余の相違点についての判断をしなかったものであって,相違点についての判断の遺漏が存在する。 第4被告の反論審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 1取消事由1(一致点の認定の誤り)について( )原告は,引用発明1における「デジタルVTR」は,本願発明における1「第1家電機器」に相当しない旨主張するが,審決においては,引用発明1における「デジタルVTR」が,本願発明における「第1家電機器」に「相当する」構成であると認定しているだけであり,双方が完全に一致していると認定しているわけではなく,両発明の相違点として,「本願発明においては,発生させる『プログラムガイド』が『HTMLページ』であり,『第1家電機器の接近可能な領域にHTMLページを貯蔵する』ものであるのに対し,引用例1には,そのようなことについて記載されていない点」を認定しているのであるから,審決の認定には,誤りはない。 ( )原告は,本願発明の「プログラムガイド」は,ホームネットワークに連2結された家電機器の有するマルチメディア物(いわゆるマルチメディアコンテンツ)を識別するためのプログラムガイドであって,当該ホームネットワークにおける使用者に利用可能なマルチメディア物(いわゆるマルチメディアコンテンツ)のリストを提供するものであるのに対し,引用発明1における「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面」や「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面」は,マルチメディア物(いわゆるマルチメディアコンテンツ)のリストを提供するものではないことを根拠として,引用発明1における「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面」や「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面」は,本願発明における「プログラムガイド」に相当しない旨主張するが,失当である。 ア本願発明においては,特に「マルチメディア物」という用語がどのような意味で用いられているかが明確でなかったところから,「マルチメディア物」及びそれに関連する「プログラムガイド」,「HTMLページ」等について,審判段階において,その内容を明らかにするため,原告(請求人)に対する審尋が行われた。その際,原告は,本件回答書において,「プログラムガイド」とは,マルチメディア機器により提供されるデータ,すなわち,プログラムを示す図表及びそれを生成するための手段であり,「マルチメディア物」とは,マルチメディア機器により提供されるデータ,すなわち,プログラムであり,「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する時,ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する」とは,ホームネットワークに連結された第1の家電機器に含まれるマルチメディアのデータあるいはプログラムを手段であるプログラムガイドが識別したときに,ホームネットワークに対して第1の家電機器に含まれるプログラムを含む図表であるプログラムガイドを生成することであり,「第1家電機器と関連されたマルチメディア物」とは,第1家電機器に含まれるマルチメディアデータ,或いは,プログラムであり,「マルチメディア物によってHTMLページを発生する」とは,マルチメディアデータ,あるいはプログラムに対応するHTMLページを発生することであると回答した。 本件回答書によれば,原告は,「マルチメディア物」について,「マルチメディア機器により提供されるデータ,すなわち,プログラムである」としているのであって,オーディオプログラム,ビデオプログラム,TVプログラム及びCD等のいわゆる「マルチメディアコンテンツ」であるとの限定的解釈は何らしていない。 イまた,本件明細書には,「図3Aはブラウザー基盤のDTV202(クライアント)がホームネットワークを通して家電機器204(サーバ)の特徴を提供する典型的な実施例を示す。家電機器204は家電機器204内の接近可能な領域に貯蔵された1つ以上のHTMLファイルにより表現される。1つ以上のHTMLファイルは特定の家電機器204に属する具体的な情報を,ブラウザーがその情報を図式的に表示可能にするデータと共に含むSCテキストファイルである。・・・1つの機器のHTMAIILファイルに含まれた情報が一度DTV202上に図式的にディスプレーされると,使用者はDTVのスクリーン上にディスプレーされた制御プログラムを,開始する関連ハイパーリンクを有するアイコンを選択して/またはデータをDTV202に入力することによってDTV202からその家電機器204を制御しうる。」(11頁27行目〜12頁14行目)との記載があり,また,「視覚的なディスプレー(即ち,スクリーン)を備えてブラウザー技術を採用するホームネットワークに連結された機器は,ホームネットワークに連結された家電機器と関連したHTMLファイルを受信及び解釈し,GUIを使用して自体のスクリーン上にファイル内に含まれた情報を図式的にディスプレーする。これが図3Aに示され,ここでクライアントとサーバの実行可能なものとの間の相互作用が見られる。しかし,本発明の特徴は2つのサーバまたはクライアントと多数のサーバの実行可能なものとの間の相互作用により制御を提供するということである。 従って,本発明によれば,制御は一般にサービス制御プログラム(遠隔的に作動させようとする実行可能なもの等),通信,命令及び(必要ならば)GUIを通したサーバ制御プログラムとのヒューマンインターフェースにより行われる。」(12頁20行目〜13頁3行目)との記載がある。 「マルチメディア物」を限定的に解釈することは,特許請求の範囲の記載に基づくものではなく,また,本件回答書の内容は,本件明細書の記載および技術常識に照らして,常識的な解釈といえるものであり,さらに,本件明細書の上記記載に照らしても,「マルチメディア機器により提供されるデータ,すなわち,プログラム」である「マルチメディア物」には,「オーディオプログラム,ビデオプログラム,TVプログラム及びCD等」のいわゆる「マルチメディアコンテンツ」以外に,「制御プログラム」等の制御データをも含むと解すべきである。 ウなお,仮に,「マルチメディア物」が「マルチメディアコンテンツ」であると限定的に解釈したとしても,引用例1には,「図30( )において,a302311はテープ挿入表示部であり各装置内にテープが挿入されて,いるか否かを表示している。303,312はカウンターであり各装置に挿入されているテープの走行時間が表示される。304,313は各装置に挿入されているテープの内容一覧を表示するためのボタンオブジェクトでありこのボタンオブジェクトをマウスでクリックすることによりテープの内容一覧が表示される。305,314ボタンオブジェクトであPlayりこのボタンオブジェクトをマウスでクリックすることにより各機器は再生を行う。」(段落【0107】)との記載があり,「各装置に挿入されているテープの内容一覧」が表示されている。 この「テープの内容一覧」は,「マルチメディアコンテンツ」をリスト表示することと実質的に同様のものであり,引用例1には,「マルチメディアコンテンツ」をリスト表示することも明らかに示されているから,原告が,引用例1において,「マルチメディアコンテンツ」をリスト表示することの記載がないことを主張の根拠としていることは,失当である。 エ原告は,本件回答書において,「プログラムガイド」について,「マルチメディア機器により提供されるデータ,すなわち,プログラムを示す図表及びそれを生成するための手段である」と回答し,「ホームネットワークと関連付けられて作成されて,当該ホームネットワークにおける使用者に利用可能なマルチメディア物(いわゆるマルチメディアコンテンツ)のリストを提供する」と限定的に解釈していない。 そして,本件明細書における「1つの機器のHTMLファイルに含まれた情報が一度DTV202上に図式的にディスプレーされると,使用者はDTVのスクリーン上にディスプレーされた制御プログラムを,開始する関連ハイパーリンクを有するアイコンを選択して/またはデータをDTV202に入力することによってDTV202からその家電機器204を制御しうる。」(12頁9行目〜14行目)との記載によれば,「制御プログラム」を示す「アイコン」は,「プログラムを示す図表」であって,このようなものも「プログラムガイド」を構成することが明らかである。 すなわち,本願発明における「プログラムガイド」は,いわゆる「マルチメディアコンテンツ」だけでなく「制御プログラム」のような制御系データをもガイダンス表示するものであり,引用発明1における「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面」や「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面」は,本願発明における「プログラムガイド」に相当するものであり,審決に誤りはない。 ( )原告は,引用発明1における「LANに接続された種々のマルチメディア3機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリック」することが,本願発明における「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する」ことに相当するとの審決の認定を争うところ,この原告の主張は,「マルチメディア物」が,いわゆるマルチメディアコンテンツであることを前提とするものである。 しかし,上記のとおり,「マルチメディア機器により提供されるデータ,すなわち,プログラム」である「マルチメディア物」には,「オーディオプログラム,ビデオプログラム,TVプログラム及びCD等」のいわゆる「マルチメディアコンテンツ」以外に,「制御プログラム」等の制御データをも含む。 そして,「1つの機器のHTMLファイルに含まれた情報が一度DTV202上に図式的にディスプレーされると,使用者はDTVのスクリーン上にディスプレーされた制御プログラムを,開始する関連ハイパーリンクを有するアイコンを選択して/またはデータをDTV202に入力することによってDTV202からその家電機器204を制御しうる。」(本件明細書の12頁9行目〜14行目)との記載に見られる本願発明の動作は,引用発明1において,「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリック」して,表示された複数の家電機器の中からデジタルVTRを選択するという動作と同様の動作であり,この場合,アイコン表示のダブルクリックにより,デジタルVTRと関連する選択情報が識別されるからこそ,デジタルVTRを選択して制御することができるのであって,「デジタルVTRを選択」すれば「デジタルVTRと関連する選択情報が識別される」ということは,当業者にとって明らかなことである。 したがって,引用発明1において,「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリック」することは,画面に表示された種々のマルチメディア機器のうち,デジタルVTRを選択したことを識別させる,すなわち,デジタルVTRと関連する選択情報(これはマルチメディア機器に関連するデジタル的なデータ,すなわち「マルチメディア物」である。)を識別させることになるから,本願発明において「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する」ことに相当し,審決の認定に誤りはない。 ( )原告は,引用発明1における「コントロールパネル表示画面」は本願発明4における「プログラムガイド」に相当するものではないことを根拠として,引用発明1において「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面を発生する」ことは,本願発明において「ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する」ことに相当するとした審決が誤りである旨主張するが,上記のとおり,引用発明1における「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面」は本願発明における「プログラムガイド」に相当するものであり,審決の認定に誤りはない。 ( )原告は,審決における一致点の認定の誤りを主張するが,上記のとおり,5引用発明1における「デジタルVTR」は,本願発明における「第1家電機器」に相当し,引用発明1における「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面」や「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面」は,本願発明における「プログラムガイド」に相当し,引用発明1における「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリック」することは,本願発明における「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する」ことに相当し,引用発明1における「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面を発生する」ことは,本願発明における「ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する」ことに相当するから,審決の一致点の認定に誤りはない。 2取消事由2(相違点の看過)について原告は,審決が,「本願発明においては,発生させる『プログラムガイド』が『HTMLページ』であり,『第1家電機器の接近可能な領域にHTMLページを貯蔵する』ものであるのに対し,引用例1には,そのようなことについて記載されていない点」のみを本願発明と引用発明1との相違点と認定した点に相違点の看過がある旨主張するが,上記1のとおり,審決における本願発明と引用発明1の一致点の認定に何らの誤りもなく,相違点の看過もない。 3取消事由3(相違点についての判断の誤り)について原告は,審決の本願発明と引用発明1との相違点に関する容易想到性判断について,引用発明1における「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面」が本願発明における「プログラムガイド」に相当するとの誤った認定を前提としてなされたものであり,また,「HTMLページ」は「プログラムガイド」であるところ,引用例2には「プログラムガイド」を発生,貯蔵し,それを利用することについて記載も示唆もなされていないから,誤りである旨主張するが,失当である。 上記のとおり,引用発明1における「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面」は,本願発明における「プログラムガイド」に相当するから,この認定を前提とする審決の相違点についての判断に誤りはない。 また,引用例2においては,従来の技術として「HTMLページを発生,貯蔵し,それを利用するシステム」の発明が記載されており,このように,HTMLページを発生,貯蔵し,それを利用することは,従来から行われていることであるから,引用発明1において,発生される「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面」を「HTMLページ」とすることは,当業者が適宜に設計できる事項であるものと認められ,それをデジタルVTRの接近可能な領域に貯蔵するようにすることも,当業者が適宜に設計できる事項にすぎないから,審決の判断に誤りはない。 4取消事由4(相違点についての判断の遺漏)について原告は,審決が,相違点を看過していることを前提として,本願発明と引用発明1の相違点についての判断の遺漏が存在する旨主張するが,上記のとおり,審決において,本願発明と引用発明1との相違点の認定に誤りはなく,相違点の看過もないから,原告主張のような相違点についての判断の遺漏は存在しない。 第5当裁判所の判断1取消事由1(一致点の認定の誤り)について( )審決は,引用発明1の「デジタルVTR」は,本願発明の「第1家電機1器」に相当すると認定したところ,原告はこれを争うので,検討する。 ア本願発明の特許請求の範囲は,前記第2の2のとおり,「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する時,ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する方法において,第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する段階と,第1家電機器と関連された識別されたマルチメディア物によってHTMLページを発生する段階と,第1家電機器の接近可能な領域に前記HTMLページを貯蔵する段階とを含むことを特徴とする方法」であるから,本願発明における第1家電機器は,「家電」といわれる機器であって,それと関連付けられるマルチメディア物があり,その接近可能な領域に,HTMLページを貯蔵するものである。 そして, 本件明細書における,「ブラウザー基盤の第2家電機器をホームネットワークに連結させる段階と,・・・」(請求項2),「普通の家庭では多数個の家電機器を具備している。本明細書において,“家電機器(home device)”とは汎用コンピュータ(即ち,パソコン(PCs),ラップトップコンピュータ等)を除いた家庭で一般的に発見される全ての電子機器を含む。」(1頁)との記載によれば,「家電機器」とは,汎用コンピュータ(パソコン,ラップトップコンピュータ等)を除いた家庭で一般的に発見されるすべての電子機器を意味するものであり,請求項1に係る本願発明については,「第1」に格別の意味はないものと認められる。 さらに,「マルチメディア物」は,後記( )ウのとおり,マルチメディア2機器から提供されるデータと解することができるものであり,本件明細書には,その例としてビデオプログラムが例示されている(40頁)。 イ一方,「VTR」とは,ビデオテープレコーダー()でvideo tape recoderあるから,引用例1における「デジタルVTR」は,上記意味における家電であり,また,マルチメディア物として,ビデオプログラムが例示されていることに照らし,関連付けられるマルチメディア物があることは明らかであって,デジタルVTRに接近可能な領域に,HTMLページを貯蔵することができることも明らかであるから,引用発明1における「デジタルVTR」は,本願発明1の「第1家電機器」に相当する。 ウ原告は,本願発明の「第1家電機器」は,プログラムガイドであるHTMLページを作成,蓄積するものであるとして,引用発明1の「デジタルVTR」が本願発明の「第1家電機器」に相当しない旨主張する。 しかし,特許請求の範囲の記載に照らしても,本願発明1の「第1家電機器」について,上記アの認定を超えて,「第1家電機器」自体が,プログラムガイドであるHTMLページを作成,蓄積するものであるとの限定がされるものでないことは明らかであり,原告の主張は,特許請求の範囲の記載に基づかないものであるから,前提を欠くものである。 ( )審決は,「引用例1記載の発明(注,引用発明1)における『LANに接 2続された種々のマルチメディア機器を表示する画面』や『デジタルVTRのコントロールパネル表示画面』は,画面上のアイコン表示が,利用者に対する操作上のガイダンス表示となっているので,本願発明における『プログラムガイド』に相当するということができる。」(審決謄本6頁最終段落〜7頁第1段落)と認定したのに対して,原告は,引用発明1の上記画面等は,本願発明の「プログラムガイド」に相当しない旨主張する。 ア本願発明の特許請求の範囲の記載によれば,「プログラムガイド」は,「マルチメディア物」を識別するものであり,そこにいう「マルチメディア物」は,「第1家電機器」と関連付けられ,それによりHTMLページを発生することができるものである。 ここで,通常の用語例に従えば,「マルチメディア」(multi media)とは,「情報を伝達するメディアが多様になる状態。また,コンピューターで映像・音声・文字などのメディアを複合し一元的に扱うこと。」(広辞苑第5版),「デジタル化された映像・音声・文字データなどを組み合わせて,総合的なメディアとして利用すること。」(大辞林第2版)などといった意味を有するものとされるが,本願発明において,「第1家電機器」と関連付けられ,「プログラムガイド」が識別するという,「マルチメディア物」の意義は,特許請求の範囲の記載からは,必ずしも明らかではない。 また,「プログラム」には,「@番組。予定。計画。A目録。計画表。 また,演劇・音楽会などの内容を解説した小冊子。Bコンピューターに対して,どのような手順で仕事をすべきかを,機械が解読できるような特別の言語などで指示するもの。」(広辞苑第5版),「@物事の予定。番組。 A映画・演劇・コンサートなど各種の催しの,番組・組み合わせ・順序・筋などを書いたもの。Bコンピューターに,情報処理を行うための動作手順を指定するもの。また,それを作成すること。」(大辞林第2版)などといった意味があるが,本願発明の「プログラムガイド」の用語の意義は,特許請求の範囲の記載からは,必ずしも明らかではない。 そこで,本件明細書の発明の詳細な説明を検討することにする。 イ「マルチメディア物」の意義について,本件明細書には,以下の記載がある。 (ア)「1.プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する時,ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する方法において,第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する段階と,第1家電機器と関連された識別されたマルチメディア物によってHTMLページを発生する段階と,第1家電機器の接近可能な領域に前記HTMLページを貯蔵する段階とを含むことを特徴とする方法。 ・・・6.前記HTMLページを発生する段階は,前記第1家電機器と関連された媒体上に含まれた情報からマルチメディア物を導く段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。 7.前記HTMLページを発生する段階は,CD上に入っている情報からマルチメディア物を導く段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。 8.前記HTMLページを発生する段階は,PCと関連された貯蔵機器に含まれた情報からマルチメディア物を導く段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。 9.前記HTMLページを発生する段階は,DVDに含まれた情報からマルチメディア物を導く段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。 10.前記HTMLページを発生する段階は,DVCRに含まれた情報からマルチメディア物を導く段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。」(【特許請求の範囲】)(イ)「背景技術・・・ホームネットワーク上の家電機器を制御するために遠隔制御ユニットを使用することに関連した他の短所は,外部のネットワークからデータを受信するマルチメディア機器に対する遠隔制御器の用途とは違って,ホームネットワークに連結されたマルチメディア機器から受信されたデータに対するプログラムガイドを発生することが今まではできなかったことである。従って,少なくとも一つのマルチメディア機器がホームネットワークに連結されており,それによって提供されたデータがその機器やホームネットワークに連結されたさらに他の機器から使用者に提供されるホームネットワーク環境に対してプログラムガイドを発生する方法に対する必要性が生じることになる。」(1頁9行目〜2頁26行目)(ウ)「発明の開示従って,従来の技術の問題点を克服し,ホームネットワークに連結された多数の機器を制御するための方法及び装置を提供することが本発明の目的である。本発明の他の目的はホームネットワークに連結された家電機器と関連されたマルチメディア物を識別するためにホームネットワークに対するプログラムガイドを発生する方法を提供することである。本発明のさらに具体的な目的は,少なくとも機器のうち1つがマルチメディア機器のホームネットワークに連結された多数の機器を制御し,ホームネットワークに連結された第2家電機器上にマルチメディア機器により提供された情報に対するプログラムガイドを発生するための方法を提供することである。従って,本発明はホームネットワークに対するプログラムガイドを発生する方法を提供する。本発明の一態様によれば,プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する時,ホームネットワークに対するプログラムガイドを発生する方法は,前記第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する段階と,前記第1家電機器と関連された識別されたマルチメディア物によりHTMLページを発生する段階と,そのHTMLページを前記第1家電機器の接近可能な領域に貯蔵する段階とを含む。」(2頁28行目〜3頁19行目)(エ)「<ホームネットワークプログラムガイド>使用者に利用可能なマルチメディア物(例えば,オーディオ及びビデオプログラム,TVプログラム及びCD)のリストを提供するために,1つ以上のホームネットワークプログラムガイドがホームネットワークと関連付けられる。1つ以上のホームネットワークプログラムガイドは特定の家電機器上で利用可能なマルチメディア物として分類されたり,接近可能なマルチメディア物の特定のグループを示す様々な方法で結合されうる。」(40頁7行目〜14行目)(オ)「通常,テレビプログラミングガイドは特定のチャンネルで見られるプログラムのリスト及びスケジュールを提供する。大部のデジタル衛星サービスは電子プログラミングガイド(Electronic Programming Guide;EPG)を介してプログラム情報を提供する。EPGは利用可能なプログラムのリストとそのプログラムがそのサービスを介して見られる特定の時間をディスプレーする。EPGは利用可能なプログラムに対する現在のウィンドウを反映するために更新し続ける。ホームネットワークはホームネットワークHTMLプログラムガイドを生成するためにEPG情報を用いる。・・・また,使用者はディスプレーされる特定のプログラミング情報を個人の希望に合せられる(customize)。例えば,もし使用者がプログラム内容のために特定のチャンネルに対するスケジュールのディスプレーを希望しない場合,その使用者はHTMLプログラムガイドからそのチャンネルの除去を要求しうる。・・・HTMLプログラムガイドは現在利用可能なプログラムを反映するために周期的に更新される。前述したように,使用者はその利用可能な情報の特定の集合のみを示すためにディスプレーされたHTMLプログラムガイドを個人の希望に合せられる。」(40頁15行目〜41頁11行目)(カ)「DBSSから受信されたEPGに加えて,ホームネットワークはマルチメディア物を含む他の家電機器と関連付けられる。例えば,DVDは如何なる映画を含み,PCは特定のファイル(例えば,ゲーム,画像)を含み,DVCRは特定の映画を含み,CDプレーヤーは特定のCDを含むことができる。他の実施例において,各家電機器は該当家電機器で現在利用可能なマテリアル(material)のリストを含むHTMLプログラムガイドファイルを管理する。ブラウザー基板の家電機器を使用し,使用者は特定の家電機器のHTMLプログラムガイドファイルを提供することによって特定の家電機器上に利用可能なマテリアルをディスプレーしうる。本発明のさらに他の実施例において,マルチメディア識別プロセスは接近可能な家電機器を検索し,如何なるマテリアルが現在それらの各々で利用可能なのかを判断できるように作業される。一実施例において,マルチメディア識別プロセスは特定の家電機器上で利用可能なマテリアルのリストを含むファイルやディレクトリを得るために各家電機器にアクセスする。そうすると,家電機器コンテンツプロセスは現在使用者に利用可能な媒質を示す1つ以上のHTMLプログラムガイドファイルを生成する。使用者は特定のHTMLプログラムガイドファイルを提供することによって利用可能なマテリアルをディスプレーしうる。」(41頁17行目〜42頁7行目)ウ上記イに認定した,「ホームネットワークに連結されたマルチメディア機器から受信されたデータに対するプログラムガイドを発生することが今まではできなかった」(上記(イ))との記載や「本発明のさらに具体的な目的は,少なくとも機器のうち1つがマルチメディア機器のホームネットワークに連結された多数の機器を制御し,ホームネットワークに連結された第2家電機器上にマルチメディア機器により提供された情報に対するプログラムガイドを発生するための方法を提供することである。」(同(ウ))との記載に照らせば,「プログラムガイド」は,「マルチメディア機器から受信されたデータ」,「マルチメディア機器により提供された情報」によって発生するものである。 そして,「プログラムガイド」が発生するための「マルチメディア機器から受信されたデータ」,「マルチメディア機器から提供された情報」にいう「データ」,「情報」につき,本件明細書には,例として,「オーディオプログラム」,「ビデオプログラム」,「TVプログラム」及び「CD」が挙げられ(同(エ))また,映画を含むDVD,CDや,ゲーム及び画像等のファイル(同(カ))も「マルチメディア物」であると理解することができる。 しかし,マルチメディア機器から提供される情報には,機器の存在や制御等に関するデータの情報(以下,これらを「制御データ等」ということがある。)も含まれると解されるところ,本件明細書を精査しても,「マルチメディア機器から受信されたデータ」,「マルチメディア機器により提供された情報」に,マルチメディア機器に関するそれら制御データ等が含まれていないことを示唆する記載は見当たらない。 かえって,本件明細書においては,「本発明の典型的な実施例において,ブラウザー基盤のホームネットワークはホームネットワークに連結された家電機器を制御及び命令するためにインターネット技術を使用する。各家電機器はホームネットワークを介した家電機器の命令及び制御のためのインタフェースを提供するインタフェースデータ(例えば,HTML,XML,JAVA,JAVASCRIPT,GIP,JPEG,グラフィックファイルまたは意図した目的に対して有用な何れか他のフォーマット)を含む。一実施例において,各家電機器は家電機器の命令及び制御のためにHypertext 提供する1つ以上のハイパーテキストマークアップランゲージ(;HTML)ページを含む。」(6頁),「 図3Aはブラウザー基盤のDTV202(クライアント)がホームネットワークを通して家電機器204(サーバ)の特徴を提供する典型的な実施例を示す。家電機器204は家電機器204内の接近可能な領域に貯蔵された1つ以上のHTMLファイルにより表現される。 1つ以上のHTMLファイルは特定の家電機器204に属する具体的な情報を,ブラウザーがその情報を図式的に表示可能にするデータと共に含むASCテキストファイルである。ブラウザー基盤のDTV202上にIIHTMLファイルを提供するに加えて,形態技術()を採用 forms technologyすることによって,ブラウザー基盤のDTV202は情報を家電機器204に再び返し,よってツーウェイ通信を提供しうる。ツーウェイ()通信を提供するための他の一般の技術はまたはコントローtwo-way Javaルゲートインタフェース(CGIs)の使用を含むことができる。1つの機器のHTMLファイルに含まれた情報が一度DTV202上に図式的にディスプレーされると,使用者はDTVのスクリーン上にディスプレーされた制御プログラムを,開始する関連ハイパーリンクを有するアイコンを選択して またはデータをDTV202に入力することによってDTV20/2からその家電機器204を制御しうる。」(11頁〜12頁),「<家電機器のHTMLファイル> 前述したように,ホームネットワークに連結された各家電機器は1つ以上の関連HTMLファイルを具備する。それぞれの家電機器に対するHTMLファイルはその特定の家電機器に対する制御及び命令動作を定義する。また,各HTMLファイルは他の関連HTMLファイルに対する内蔵された参照事項を含む。・・・本発明によれば,制御は一般にサービス制御プログラム(遠隔的に作動させようとする実行可能なもの等),通信,命令及び(必要ならば)GUIを通したサーバ制御プログラムとのヒューマンインタフェースにより行われる。」(12頁〜13頁)などといった記載がある。 上記記載によれば,本件明細書において,「ホームネットワークに連結された各家電機器は1つ以上の関連HTMLファイルを具備」しており,「それぞれの家電機器に対するHTMLファイルはその特定の家電機器に対する制御及び命令動作を定義する」ことが開示されているのであって,ここに制御及び命令動作を定義するとは,制御及び命令動作をデータとして書き込むことを前提とするから,結局,ホームネットワークに連結された家電機器は,制御又は命令動作を受けるために「関連HTMLファイル」を具備しており,この「関連HTMLファイル」には,「その特定の家電機器に対する制御及び命令動作」が制御データとして書き込まれているものというべきである。 このように,本件明細書においては,明らかに,ホームネットワークに連結された家電機器に対する制御又は命令動作について開示しているところ,特許請求の範囲において,このような明細書の記載にもかかわらず,マルチメディア機器から提供されたデータのうち,「マルチメディア物」においては制御データ等を除外するという解釈が成り立つといえるためには,明示的にその旨が記載されていることが必要というべきである。ところが,特許請求の範囲にも本件明細書にも,そのような記載は存在しない。 以上を総合すると,「マルチメディア物」とは,マルチメディア機器から提供されるデータをいうものであり,そのデータには,内容データに限られず,機器に関する制御データ等を含むものというべきである。 エ原告は,本願発明において,「マルチメディア物」とは,本件明細書の「ホームネットワークプログラムガイド」の項(40頁)に,「使用者に利用可能なマルチメディア物(例えば,オーディオ及びビデオプログラム,TVプログラム及びCD)」と記載されているように,オーディオプログラム,ビデオプログラム,TVプログラム及びCD等の,いわゆる「マルチメディアコンテンツ」であると主張する。 しかし,原告主張の「マルチメディアコンテンツ」という用語は,特許請求の範囲のみならず,本件明細書にも全く表れていない語であって,そもそもこの語の意義を直ちに明らかにすることはできないし,また,本件明細書には,原告指摘の上記記載はあるが,それらは,本件明細書において「マルチメディア物」の例示として掲げられたものであることは,その記載から明らかであって,同明細書には「マルチメディア物」がそれらに限定される旨の記載やそれを示唆する記載はない。 そうすると,本件明細書の記載等を参酌すれば,「マルチメディア物」とは,上記ウのとおり,マルチメディア機器に含まれる情報から導かれるもの,すなわち,マルチメディア機器から提供されるデータであると認めることができ,「オーディオプログラム」,「ビデオプログラム」,「TVプログラム」,「CD」,「映画」及び「ゲーム,画像等のファイル」を含むものではあるが,それに限定されるものでないというべきである。 オところで,「プログラムガイド」の意義について,本願発明の特許請求の範囲には,「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する時,ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する方法」との記載があるところ,「プログラムガイド」は,ホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別するものであり,「マルチメディア物」とは,前示のとおり,マルチメディアに関するデータであって,その内容データも制御データも含むものであると解されるから,「プログラムガイド」は,「マルチメディア物」である内容データ又は制御データを識別する「ガイド」すなわち「案内」であるということができ,その「ガイド」(案内)には,格別の限定はない。 原告は,「プログラムガイド」とは,「ホームネットワークプログラムガイド」であって,ホームネットワークと関連付けられて作成され,当該ホームネットワークにおける使用者に利用可能なマルチメディア物(いわゆるマルチメディアコンテンツ)のリストを提供するものである旨主張する。 しかし,本願発明にいう「マルチメディア物」は,マルチメディア機器から提供されるデータをいうものであり,マルチメディアコンテンツに限定されず,マルチメディア機器から提供される内容データも制御データ等も含むことは,上記のとおりであるから,前提において既に誤りである。 しかも,原告は,審判段階において,審判長から,本願発明の特許請求の範囲にいう「プログラムガイド」,「マルチメディア物」,「プログラムガイドが・・・マルチメディア物を識別する時,・・・プログラムガイドを発生する」などの用語の具体的な内容について書面審尋(乙1)を受け,本件回答書(乙2)において,「『プログラムガイド』とは,マルチメディア機器により提供されるデータ,すなわち,プログラムを示す図表及びそれを生成するための手段である。『マルチメディア物』とは,マルチメディア機器により提供されるデータ,すなわち,プログラムである。 『プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する時,ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する』とは,ホームネットワークに連結された第1の家電機器に含まれるマルチメディアのデータあるいはプログラムを手段であるプログラムガイドが識別したときに,ホームネットワークに対して第1の家電機器に含まれるプログラムを含む図表であるプログラムガイドを生成することである。」などと回答している。 本件回答書によると,原告は,「マルチメディア物」をマルチメディアの内容データに限定することなどを全く述べておらず,かえって,マルチメディア機器により提供されるデータと限定を付さずに述べ,それを前提として,「プログラムガイド」等についても説明している。そして,このことは,前記のとおり,本件明細書を精査しても,ホームネットワークに連結された家電機器から,制御データ等を除外したものを「プログラムガイド」とすることを示す記載を見いだすことができないこととも合致するのである。 なお,原告は,本件回答書は,「プログラムガイド」に関して,明細書で示された内容を超えて説明した点で,不適切な点があったことは否定しないが,出願に係る発明は,特許請求の範囲の記載に基づいて解釈すべきであり,特許請求の範囲の技術的意義が一義的に明確に理解できない場合は,明細書の記載を参酌して,解釈すべきであると主張するが,上記のとおり,本件回答書の内容は,本件明細書の記載内容とも合致するものであって,原告の主張はそもそも前提を欠くものである。 カ一方,引用例1には,以下の記載がある。 (ア)「まず,デジタルVTR203がLAN4に接続されたときの動作について説明する。図16はデジタルVTR203をLAN4に接続した際の動作のフローを示した図である。図17はマルチメディアコントローラ1の画面を示した図である。図17において228はマルチメディアコントローラ1のディスプレー,229はデジタルVTR203が接続されたことを示すアイコン表示であり,230はマウスなどのポインティングデバイスが指示する位置を示すカーソルである。ポインティングデバイスは図示しないが,ポインティングデバイスはボタンを備えており,該ボタンを利用者が押して放す動作を一般的にクリックすると称し,所定間隔で2回クリックする動作をダブルクリックすると称する。 尚,他の接続機器としては,カメラ(静止画入力),チユーナ,テレビジヨン,各種データベース,CD等,種々の機器との接続が可能であり,それらの機器の選択,制御も画面228上のアイコン表示にて行うことができる。」(段落【0064】)(イ)「図23と図29にしたがってデジタルVTR203のコントロールパネル表示動作と再生動作の指示方法を説明する。図16で説明した動作においてシステムディレクターオブジェクト205がデジタルVTR代理オブジェクト220を生成した時点でデジタルVTR代理オブジェクト220はアイコン表示229をアイコン画像1426に基づいて表示するが,利用者がデジタルVTRのアイコン229をカーソル230で指示してダブルクリックすると(643),デジタルVTR代理オブジェクト220のコントロールパネルオブジェクト221はコントロールパネルオブジェクト221を構成するすべてのオブジェクトにたいして描画を指示するメッセージを送出する。該メッセージにしたがって図21に示したすべてのオブジェクトが描画手段を実行し,コントロールパネルオブジェクトはその際,第2オブジェクト描画情報に基づいてデジタルVTRのコントロールパネルのフレームを描画する。その結果,デジタルVTR203を操作するためのデジタルVTRコントロールパネル表示231が図24のように表示され(644),利用者の指示を待つ(645)。」(段落【0088】)(ウ)図17には,マルチメディアコントローラ1のディスプレー228に,「」,「」,「TV」,「」,「CD」,「VTCameraTunerDatabaseR」のアイコンが表示された画面が示されており,図24には,「VTR」のアイコン表示から制御を選択した際のマルチメディアコントローラを表示する画面が示されている。 これらによれば,引用例1には,審決の認定するとおり(審決謄本5頁最終段落〜6頁第1段落),「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリックした場合に,デジタルVTRのコントロールパネル表示画面を発生する方法において,デジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリックしたことを検出する段階と,上記デジタルVTRを表すアイコン表示のダブルクリックによってデジタルVTRのコントロールパネル表示画面を発生する段階を含む方法。」である引用発明1が記載されている(当事者間に争いがない。)。 本願発明の「プログラムガイド」は,「マルチメディア物」を識別し,発生するものであって,それがホームネットワークと関連付けられることによって,「マルチメディア物」を表示できるものである。そして,「マルチメディア物」とは,マルチメディア機器から提供されるデータをいうのであるから,マルチメディア機器から提供されるといえる,マルチメディア機器の存在に関するデータやマルチメディア機器であるデジタルVTRから提供された同機器の内容あるいは制御データも「マルチメディア物」に含まれるというべきものである。 そうすると,引用発明1における「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面」や「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面」は,本願発明における「プログラムガイド」に相当すると認めることができる。 ( )審決は,引用発明1における「LANに接続された種々のマルチメディア3機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリック」することは,本願発明における「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する」ことに相当すると認定したところ,原告はこれを争うので,検討する。 ア上記( )カの引用例1の記載及び図17,24によれば,引用発明1に 2おいては,デジタルVTRがLANに接続されること,LANに接続された機器の選択,制御は,画面上のアイコン表示によって行うこと,デジタルVTRを表す上記アイコン表示をダブルクリックすると,デジタルVTRを操作するためのボタンが表示されることが記載されている。 そして,引用発明1の「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する」ことは,LANに接続され,現在利用可能な種々のマルチメディア機器の制御を行うためのアイコン情報を得ていることを意味するから,アイコンが表示された画面は,本願発明の「プログラムガイド」,すなわち,「マルチメディア物」である内容データあるいは制御データを識別するための「ガイド」である。 そうすると,引用発明1は,LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面上において,デジタルVTRを表す表示がされるものであるところ,それは,本願発明における「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別」した結果であるということができるのであるから,引用発明1において,上記表示がされることは,「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する」ことによるものであると認められる。したがって,引用発明1は,「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する」ものであると認められる。 イ原告は,引用例1の図17の図面においては,LANに接続された種々のマルチメディア機器がアイコン表示されていて,利用者が,デジタルVTRのアイコンをダブルクリックすると,デジタルVTRを制御する画面に遷移してデジタルVTRを操作するためのボタンが表示される画面(図24)となるように,引用発明1において,「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリック」することは,ユーザが,表示された複数の家電機器の中から,これから使用するデジタルVTRを選択することであって,デジタルVTRを「選択したことを識別させる」ものではないし,デジタルVTRと関連する選択情報を識別させることではなく,また,選択情報は,選択用の情報であって,「マルチメディア物」ではない旨主張する。 しかし,上記のとおり,引用発明1は,LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面上において,デジタルVTRを表す表示がされるものであり,これは,本願発明における「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する」ことがされた結果であるから,引用発明1は,「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する」ものであり,この点に関する審決の一致点の認定は,結論的には誤りがないというべきである。原告の上記主張は,引用発明1の構成から,「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリック」するという部分のみを取り出して,審決を論難するものである。 ( )審決は,引用発明1における「デジタルVTRのコントロールパネル表示4画面を発生する」ことは,本願発明における「ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する」ことに相当すると認定し,原告はこれを争うが,原告の上記主張は,上記( )に記載の「マルチメディア物」,「プログ2ラムガイド」についての原告による解釈を前提とするものであって,その解釈が採用できないことは,上記のとおりであり,原告の主張は前提を欠くものである。 ( )審決は,「本願発明と引用例1記載の発明(注,引用発明1)とは,とも5に,『プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する時,ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する方法において,第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する段階と,第1家電機器と関連された識別されたマルチメディア物によってプログラムガイドを発生する段階を含む方法。』である点で一致」(審決謄本7頁第5段落)すると認定したところ,原告はその一致点の認定を争うが,原告の上記主張は,上記(2)ないし(4)における主張を前提とするものであり,それらが採用できないことは,上記のとおりである。 (6)したがって,原告の取消事由1の主張は,採用することができない。 2取消事由2(相違点の看過),取消事由3(相違点についての判断の誤り)及び取消事由4(相違点についての判断の遺漏)について(1)原告は,取消事由3に関連し,本願発明の「HTMLページ」は,「プログラムガイド」であるところ,引用例2には,「プログラムガイド」を発生,貯蔵し,それを利用することについて,記載も示唆もされていないことを根拠として,「引用例1記載の発明(注,引用発明1)において,発生される『デジタルVTRのコントロールパネル表示画面』を『HTMLページ』とすることは,当業者が適宜に設計できる事項であるものと認められ,さらにそれをデジタルVTRの接近可能な領域に貯蔵するようにすることも,当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。」(審決謄本7頁最終段落〜8頁第1段落)とした審決の判断は,根拠を欠く旨主張する。 しかし,審決は,引用例2に,「プログラムガイド」の発生等に関する記載がされているとしたのではなく,引用例2に記載されているように,従来からHTMLページを発生,貯蔵,利用することは行われていることを根拠に,引用発明1の「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面」を「HTMLページ」とすることは,当業者が適宜に設計できる事項であるものと認められるとしたものであることが明らかであり,その判断過程において誤りはなく,原告の主張は,審決を正解しないでこれを論難するものである。 (2)原告の取消事由2ないし4におけるその余の主張は,前記1における主張を前提とするものであり,その前提が失当であることは,前記1のとおりである。 (3)したがって,原告の取消事由2ないし4の主張は,いずれも理由がない。 3以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 篠原勝美 |
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裁判官 | 宍戸充 |
裁判官 | 柴田義明 |