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関連審決 異議2003-72759
関連ワード 頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  技術常識 /  先行技術 /  優先権 /  分割出願 /  特許出願日 /  参酌 /  技術的意義 /  置き換え /  置換 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  構成要件 /  設定登録 /  請求の範囲 /  取消決定 /  異議申立 / 
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事件 平成 17年 (行ケ) 10531号 特許取消決定取消請求事件
原告東レ株式会社
訴訟代理人弁理士谷川英次郎
被告特許庁長官中嶋誠
指定代理 人柳和子,唐木以知良,田中敬規
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2006/11/22
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が異議2003−72759号事件について平成17年4月28日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1原告の求めた裁判主文と同旨の判決。
第2事案の概要本件は,後記本件発明の特許権者である原告が,特許異議の申立てを受けた特許庁により本件特許を取り消す旨の決定がされたため,同決定の取消しを求めた事案である。
1特許庁における手続の経緯( )本件特許(甲第2号証)1本件特許に係る出願は,特願平5-9270号の出願の一部を新たな出願としたものである。
特許権者:東レ株式会社(原告)発明の名称: 感光性導電ペースト」 「特許出願日:平成10年6月11日(特願平10-163173)出願したものとみなされる日:平成5年1月22日優先権主張日:平成4年1月24日(日本)設定登録日:平成15年3月7日特許番号:特許第3405199号( )本件手続2特許異議事件番号:異議2003-72759号訂正請求日:平成16年10月19日(甲第3号証)決定日:平成17年4月28日決定の結論: 訂正を認める。特許第3405199号の請求項1ないし2に係 「る特許を取り消す 」。
決定謄本送達日:平成17年5月20日(原告に対し)2本件発明の要旨決定が対象とした発明(平成16年10月19日付け訂正請求後の請求項1,2に記載された発明であり,以下,請求項1に記載された発明を「本件発明1」と,請求項2に記載された発明を「本件発明2」といい,本件発明1と本件発明2を総称して「本件発明」という。なお,請求項の数は2個である )の要旨は,以下の。
とおりである。
「 請求項1】(a)Au,Ag,PdおよびPtの群から選ばれる少なくとも1種 【を含む導電性粉末,(b)側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有し,かつ酸価が40〜200のアクリル系共重合体,(c)光反応性化合物,(d)光重合開始剤および(e)ガラス転移点が300〜500℃のガラスフリットを含有することを特徴とする感光性導電ペースト。
【請求項2】導電性粉末がAg,PdおよびPtの群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の感光性導電ペースト 」。
3決定の理由の要点決定の理由は,以下のとおりであるが,要するに,本件発明1,2は,米国特許第5049480号明細書(甲第4号証,乙第3号証。以下,決定の表記に合わせて「引用刊行物4」という )に記載された発明(以下「刊行物4発明」という ) 。 。
並びに特公昭51-37316号公報(甲第5号証)及び特開昭55-36997号公報(甲第6号証。以下,決定の表記に合わせて「引用刊行物2」という )に。
それぞれ記載された周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明1,2についての特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,平成15年法律第47号による廃止前の特許法113条2号により,取り消されるべきものである,というものである。
「4 特許異議申立てについて(4-1)取消理由の概要当審が平成16年8月10日付けで通知した取消理由(B)の概要は,本件請求項1,2に係る発明は,引用刊行物2(特開昭55-36997号公報 ,引用刊行物3(特開平3-1 )71690号公報 ,引用刊行物4(米国特許第5049480号明細書)及び引用刊行物5 ):新保優,古川和由「耐酸性ホウケイ酸亜鉛鉛系パッシベーションガラスの特性」日本セラミックス協会学術論文誌96[2 (1988)p.201〜205)に記載された発明に基づ ]いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件請求項1,2に係る発明についての特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである,というものである。
(4-2)引用刊行物に記載された事項当審が通知した取消理由(B)において引用された本件の出願日前に頒布された刊行物2,4及び5には,それぞれ以下の事項が記載されている。
(a)引用刊行物2(a1 「下記成分すなわち(A)組成物の重量基準で50〜85重量%の,0.05〜20 )μmの粒子サイズ範囲を有する銀粒子 (B)組成物の重量基準で1〜10重量%の,0.0 ,5〜44μmの粒子サイズ範囲を有しそしてその粒子の少なくとも80重量%が0.1〜5μm範囲にある無機非ガラス形成性耐熱性物質またはそれらの前駆体 (C)組成物の重量基準 ,で5〜20重量%の,325〜600℃の軟化点範囲を有するガラスフリット,および(D)組成物の重量基準で10〜30重量%のUV重合性ベヒクルより本質的に構成される,厚膜伝導体組成物 (請求項3)」(b)引用刊行物4(b1 「 a)20m /g未満の表面積対重量比を有しそして粒子の少なくとも80重量% )(2が0.5〜10μmのサイズを有する銀固体の微細粒子と(b)550〜825℃の範囲のガラス転移温度および10m /g未満の表面積対重量比を有する無機バインダーの微細粒子で2あってその粒子の少なくとも90重量%が1〜10μmのサイズを有しかつ(b)対(a)の重量比が0.0001〜0.25の範囲にあるものとの混合物が (c)有機重合体バインダ ,ー (d)光開始系 (e)光硬化性モノマーおよび(f)有機媒体からなる有機ビヒクル中に ,,分散されている,酸化性雰囲気または実質上非酸化性雰囲気中で焼成できる水性現像可能な感光性銀導電体組成物において,上記有機バインダーが(1)C 〜Cアルキルアクリレート110又はC 〜Cアルキルメタクリレート,スチレン,置換スチレンあるいはそれらの組合せを 110含む非酸性コモノマーおよび(2)エチレン系不飽和カルボン酸を含む酸性コモノマーからなるコポリマーまたはインターポリマーであるが,すべての酸性コモノマーはポリマーの少くとも15重量%を構成し,そして上記有機重合体バインダーは50000未満の分子量を有しさらに活性線放射に像露光した際の組成物は0.8重量%の炭酸ナトリウムを含有する水溶液中で現像可能なことを特徴とする水性現像可能な感光性銀導電体組成物 (請求項1)」(b2 「本発明は解像力が高くかつ水性処理可能な改良された感光性銀導電体組成物に関す )る。さらに,それは焼成された銀導電体パターンへのプレカーサとして作用しそして多層厚膜回路の形成に特に有用な導電体材料として役立つ能力を有する(第1欄第6〜12行) 。」(b3 「本発明に使用したガラスフリットは銀粒子を焼結するのを助け銀の融点以下の融点 )を有するよく知られた任意の組成物であってもよい。それにもかかわらず,デバイスの十分な導電性を得るために,無機バインダーのガラス転移温度(Tg)が550〜825℃であ・・・るのが良い。もし融解が550℃以下で起るならば有機物質はカプセル化されるらしく,ふくれは有機物の分解につれて組成物中に形成される傾向にある。一方,825℃以上のガラス転移温度のものは,900℃以下の焼結温度が使用された時接着性が悪い組成物を生成する傾向がある(第3欄第29〜42行) 。」(b4 「バインダーポリマーは本発明の組成物に対し重要である。それは水性処理可能性を )許容し,同時に高い解像力を与えるものでなければならない。これらの要件は下記のバインダーを選択することによってみたされることがわかった ・・・組成物の酸性コモノマー成分の 。
存在は,本技術に対し重要である。酸官能基は水性塩基,例えば0.8%炭酸ナトリウム水溶液中で現像可能性を生じる。酸性コモノマーが15%以下の濃度で存在する時,組成物は水性塩基で除去されない。酸性コモノマーが30%以上の濃度で存在する時,湿気条件では不安定であり,また像部分において一部現像が起きる(第4欄第1〜21行) 。」(b5 「適当な光開始系は,熱的に不活性であるが185℃またはそれ以下で活性線に露光 )してフリーラジカルを発生するものである。これらは・・・ 中略 ・・・を包含する。また有 ()用である他の光開始剤は・・・を包含する(第5欄第26〜48行) 。」(b6 「本発明の光硬化性モノマー成分は,少くとも1個の重合性エチレン基を有する少く )とも1個の付加重合性エチレン系不飽和化合物で構成されている(第5欄第64〜67行) 。」(b7 「分散物を膜にしようとする場合,その中に銀固体と無機バインダーが分散される有 ), ,, 機媒体は揮発性有機溶媒中に溶解された重合体バインダー モノマーおよび開始剤 選択的にその他の溶解物質例えば可塑剤,離型剤,分散剤,剥離剤,防汚剤および湿潤剤よりなっている(第8欄第38〜54行) 。」(b8 「感光性銀導電性組成物は・・・あるいは例えばスクリーン印刷によってペーストの )形で基体に適用されるのが普通である(第10欄第53〜56行) 。」(b9 「バインダー:75%のメチルメタクリレートおよび25%のメタクリル酸のコポリ )マー,Mw=10,000,Tg=120℃,酸価164 (第11欄第36〜38行) 」(c)引用刊行物5(c1)テーブル1.には,ガラスの代表的な組成と,ガラス転移温度(Tg ,軟化点(T)c)の値が記載されている (第202頁)。
(4-3)当審の判断(i)本件発明1について引用刊行物4の上記(b1)には 「 a)20m /g未満の表面積対重量比を有しそして ,(2粒子の少なくとも80重量%が0.5〜10μmのサイズを有する銀固体の微細粒子と(b)550〜825℃の範囲のガラス転移温度および10m /gの未満の表面積対重量比を有す2る無機バインダーの微細粒子であってその粒子の少なくとも90重量%が1〜10μmのサイズを有しかつ(b)対(a)の重量比が0.0001〜0.25の範囲にあるものとの混合物が (c)有機重合体バインダー (d)光開始系 (e)光硬化性モノマーおよび(f)有機 , ,,媒体からなる有機ビヒクル中に分散されている,酸化性雰囲気または実質上非酸化性雰囲気中で焼成できる水性現像可能な感光性銀導電体組成物において,上記有機バインダーが(1)C〜Cアルキルアクリレート又はC 〜Cアルキルメタクリレート,スチレン,置換スチレ110 110ンあるいはそれらの組合せを含む非酸性コモノマーおよび(2)エチレン系不飽和カルボン酸を含む酸性コモノマーからなるコポリマーまたはインターポリマーであるが,すべての酸性コモノマーはポリマーの少くとも15重量%を構成し,そして上記有機重合体バインダーは50000未満の分子量を有しさらに活性線放射に像露光した際の組成物は0.8重量%の炭酸ナトリウムを含有する水溶液中で現像可能なことを特徴とする水性現像可能な感光性銀導電体組成物」と記載されている。そして,この記載中の上記「有機重合体バインダー」とは 「〜お,いて」以降の記載の「 1)C 〜Cアルキルアクリレート又はC 〜Cアルキルメタクリ (110 110,, () レート スチレン 置換スチレンあるいはそれらの組合せを含む非酸性コモノマーおよび 2エチレン系不飽和カルボン酸を含む酸性コモノマーからなるコポリマーまたはインターポリマーであるが,すべての酸性コモノマーはポリマーの少くとも15重量%を構成し,そして上記有機重合体バインダーは50000未満の分子量を有し」というものであるところ,上記(b9)には,その具体例として 「バインダー:75%のメチルメタクリレートおよび25%の ,メタクリル酸のコポリマー,Mw=10,000,Tg=120℃,酸価164」が記載されているから,上記「有機重合体バインダー」とは 「酸価164の75%のメチルメタクリレ ,ートおよび25%のメタクリル酸のコポリマー」であると云える。また,上記「無機バインダーの微細粒子」とは,上記(b3)によると「ガラスフリット」であり,上記「光開始系」と,()「」。,「 」, は 上記 b5 によると 光開始剤 である さらに 上記 感光性銀導電体組成物 とは()「」,「 」。 上記b8 によると ペーストであるから感光性銀導電体ペースト であると云える以上の記載を整理すると,引用刊行物4には 「 a)20m /g未満の表面積対重量比を ,(2有しそして粒子の少なくとも80重量%が0.5〜10μmのサイズを有する銀固体の微細粒子と(b)550〜825℃の範囲のガラス転移温度および10m /gの未満の表面積対重2量比を有するガラスフリットであってガラスフリットの少なくとも90重量%が1〜10μmのサイズを有しかつ(b)対(a)の重量比が0.0001〜0.25の範囲にあるものとの混合物が (c)酸価164の75%のメチルメタクリレートおよび25%のメタクリル酸の ,コポリマー (d)光開始剤 (e)光硬化性モノマーおよび(f)有機媒体からなる有機ビヒ ,,クル中に分散されている,酸化性雰囲気または実質上非酸化性雰囲気中で焼成できる水性現像可能な感光性銀導電体ペーストにおいて,活性線放射に像露光した際のペーストは0.8重量%の炭酸ナトリウムを含有する水溶液中で現像可能な水性現像可能な感光性銀導電体ペースト」という発明(刊行物4発明)が記載されていると云える。
そこで,本件発明1と刊行物4発明とを対比すると,刊行物4発明の「銀固体の微細粒子」は,刊行物4発明の導電成分であるから,本件発明1の「導電性粉末」に相当し,また,本件発明1における「アクリル系共重合体」とは,本件明細書段落【0013】の記載によると,「不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物を共重合させ」たものであるところ,刊行物4発明の「メチルメタクリレート」は「エチレン性不飽和化合物」であり,そして「メタクリル酸」は「不飽和カルボン酸」であるから,刊行物4発明の「75%のメチルメタクリレートおよび25%のメタクリル酸のコポリマー」は,本件発明1における「アクリル系共重合体」の一種である。さらに,刊行物4発明の「光開始剤」は,本件発明1の「光重合開始剤」に,刊行物4発明の「光硬化性モノマー」は,本件発明1の「光反応性化合物」に,刊行物4発明の「ガラス転移温度」は,本件発明1の「ガラス転移点」に,刊行物4発明の「感光性銀導電体ペースト」は,本件発明1の「感光性導電ペースト」にそれぞれ相当すると云えるから,両者は 「 a)Agを含む導電性粉末 (b)酸価が164の75%のメチルメタクリレートおよ ,( ,,(),()() び25%のメタクリル酸のコポリマーc 光反応性化合物d 光重合開始剤および eガラスフリットを含有する感光性導電ペースト」という点で一致し,次の点で相違していると云える。
相違点:(イ)本件発明1は,側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体であるのに対し,刊行物4発明は,75%のメチルメタクリレートおよび25%のメタクリル酸のコポリマーが側鎖にエチレン性不飽和基を有しない点。
(), , ロ 本件発明1は ガラス転移点が300〜500℃のガラスフリットを含有するのに対し刊行物4発明は,ガラス転移点が550〜825℃のガラスフリットを含有する点(ハ)本件発明1は 「有機媒体」を含有するとまでは特定されていないのに対し,刊行物4 ,発明は 「有機媒体」を含有している点 ,次に,上記各相違点について検討する。
(a)相違点(イ)について感光性の樹脂として,側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系樹脂は,例えば,特公昭51-37316号公報(第7頁左欄第30〜34行,特許請求の範囲)に記載されるように周知であるから,刊行物4発明のアクリル系樹脂の一種である75%のメチルメタクリレートおよび25%のメタクリル酸のコポリマーを,周知の感光性の樹脂である側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系樹脂とすることは当業者が容易に想到することができたと云える。
(b)相違点(ロ)について本件発明1のガラスフリットのガラス転移点の限定意義は,本件明細書の段落【0024】の「Tgが低すぎるとポリマーバインダーやモノマーなどの有機成分が蒸発する前に焼結が始まるので好ましくない。Tgが500℃を超えるガラスフリットでは800℃以下の温度で焼結を行なったときにセラミックス基板との接着性が劣る結果となるので好ましくない 」とい。
う記載によれば,ポリマーバインダー等の有機成分の蒸発を焼結前に行わせると共に,セラミックス基板との良好な接着性を確保するためであるところ 一方 刊行物4発明でも 上記 b ,,,() 「 () 。 3 の 無機バインダーのガラス転移温度 Tg が550〜825℃であ・・・るのが良いもし融解が550℃以下で起るならば有機物質はカプセル化されるらしく,ふくれは有機物の分解につれて組成物中に形成される傾向にある。一方,825℃以上のガラス転移温度のものは,900℃以下の焼結温度が使用された時接着性が悪い組成物を生成する傾向がある 」と。
いう記載に徴すると,そのガラス転移点の上下限の限定意義が有機物質の分解(蒸発)と接着性の確保であるといえるから,両者は,その具体的なガラス転移点が相違するものの,その温度範囲を規定する技術的意義が共通しているものである。そして,感光性の組成物で使用され「」 ,() る 325〜600℃ の軟化点範囲を有するガラスフリットも 引用刊行物2の上記 a1に記載されるように周知のものであるから,刊行物4発明のガラスフリットを,そのガラス転移点がより低い「300〜500℃」の周知のものとすることは,ガラスフリットや有機物質の種類に応じて当業者が容易に想到することができたと云える。
(c)相違点(ハ)について刊行物4発明の「有機媒体」とは,上記(b7)の「その中に銀固体と無機バインダーが分, , 散される有機媒体は揮発性有機溶媒中に溶解された重合体バインダー モノマーおよび開始剤選択的に,その他の溶解物質例えば可塑剤,離型剤,分散剤,剥離剤,防汚剤および湿潤剤よりなっている 」という記載によれば,刊行物4発明の「重合体バインダー「モノマー」お 。 」,よび「開始剤」以外の,具体的には,可塑剤,離型剤,分散剤,剥離剤,防汚剤および湿潤剤等であると云える。一方,本件発明1も,本件明細書の段落【0037】の「さらに必要に応じて増感剤,熱重合禁止剤,可塑剤,酸化防止剤,分散剤,安定化剤,有機あるいは無機の沈殿防止剤を添加し,混合物のスラリーとする 」という記載によれば,例えば,可塑剤,分散 。
剤等の有機媒体を含有することを許容するものであるから,この有機媒体の有無が両者の実質的な差異となるものではないというべきである。
以上のとおり,本件発明1の上記相違点(イ)〜(ハ)は,刊行物4発明及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるから,本件発明1は,上記刊行物4に記載された発明と上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると云える。
(ii)本件発明2について本件発明2は,本件発明1の「Au,Ag,PdおよびPtの群から選ばれる少なくとも1種を含む導電性粉末」という特定事項を 「導電性粉末がAg,PdおよびPtの群から選ば ,れる少なくとも1種を含む」と限定するものであるが,刊行物4発明もその導電性粉末が銀であるから,本件発明2は,選択成分の中からAgを1種含む場合には,刊行物4発明と対比して新たな相違点を生じるものではない。
してみると,本件発明2も (i 「本件発明1について」で記載した同様の理由によって上 ,)記刊行物4に記載された発明と上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると云える。
5むすびしたがって,本件発明1,2についての特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,同法113条第2号に該当し,取り消されるべきものである 」。
第3原告の主張(決定取消事由)の要点決定は,本件発明1と刊行物4発明との相違点(イ),(ロ)についての判断を誤って,本件発明1が刊行物4発明及び周知事項に基づいて,当業者において容易に発明をすることができたものと誤って判断したものである。なお,本件発明2は,本件発明1に従属するものであるから,本件発明1について容易想到性の判断の誤りが認められれば,本件発明2についても認められる関係にある。
したがって,決定は,取り消されるべきである。
1取消事由1(相違点(イ)についての判断の誤り)( )決定は,その認定に係る本件発明1と刊行物4発明との相違点(イ)である,1「本件発明1は,側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体であるのに対し,刊行物4発明は,75%のメチルメタクリレートおよび25%のメタクリル酸のコポリマーが側鎖にエチレン性不飽和基を有しない点」につき 「感光性の樹脂として,側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有す ,るアクリル系樹脂は,例えば,特公昭51-37316号公報(第7頁左欄第30〜34行,特許請求の範囲)に記載されるように周知であるから,刊行物4発明のアクリル系樹脂の一種である75%のメチルメタクリレートおよび25%のメタクリル酸のコポリマーを,周知の感光性の樹脂である側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系樹脂とすることは当業者が容易に想到することができたと云える 」と判断したが,以下のとおり,誤りである。 。
( )側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系樹脂(以下2「エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体」という )は,少なくとも導電 。
ペーストの技術分野において周知ではない。
決定は,特許請求の範囲に,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体が記載された特公昭51-37316号公報(甲第5号証。以下「引用刊行物6」という )を根拠として,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体が周知である 。
とするが,引用刊行物6には,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体が周知である旨の記載はなく,また,特許公報を1例挙げるのみで周知性の立証がなされたということはできない。そもそも,引用刊行物6には,そこに記載された発明の用途ないし使用形態として 「印刷用プレート (2欄8行「フォトレリーフ」 ,」),(12欄34〜35行「フォトレジストすなわち感光性樹脂として使用する感光 ),層を形成させる (14欄29〜31行「転写,印刷,装飾及び製造上の用途」 」),(17欄6〜7行「カラー複写 (17欄12行)が挙げられているが,導電ペ ),」ーストについての記載はない。引用刊行物6に列挙された上記用途は,いずれも有機成分を主成分とする光重合性組成物から成るパターンを形成し,そのような有機成分主体のパターンの機能(形状,色等)をそのまま利用するものである。これに対し,導電ペーストは,金属粉,ガラス成分,有機成分の混合物として塗布された後,焼成することによって有機成分を消滅させ,残った無機成分(金属-ガラス複合体)を利用するものであるから,引用刊行物6記載の発明と導電ペーストとは技術分野が全く異なるものである。したがって,引用刊行物6は,少なくとも,本件発明が属する導電ペーストの技術分野において,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体が周知であることを証するものとはいえない。
( )決定は,本件発明1が奏する顕著な効果を看過している。
3すなわち 刊行物4発明は 光硬化性モノマーを必須の成分として含んでおり 特 ,, (許請求の範囲の請求項1の(e)成分 ,感光性は,この光硬化性モノマーによって )付与されるものである。同様に,本件発明1も,光反応性化合物を必須の成分として含み(請求項1の(c)成分 ,感光性は,この反応性化合物によって付与される )から,感光性を付与する目的のみでは,反応性化合物のほかに,ポリマーバインダー成分として,感光性を有するエチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を含ませる必要はない このことは 刊行物4発明におけるポリマーバインダー成分 特 。, (許請求の範囲の請求項1の(c)成分)に感光性を有したものが開示されていないことに照らしても明らかである。そして,本件発明1は,感光性を付与する目的では必ずしも必要ではないエチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を,ポリマーバインダー成分として用いることにより,当業者が予期し得ない顕著な効果を奏するものである。すなわち,エチレン性不飽和基を側鎖に有するアクリル樹脂を使用することにより,これを持たないアクリル系共重合体を用いた場合と比較し,解像度が大幅に上昇し,かつ,比抵抗が顕著に減少する効果が得られるのである。エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を含有する感光性導電ペーストが,このような効果を奏することは,実験成績証明書(甲第8号証)により明らかである。
感光性導電ペーストにおいて,ポリマーバインダーとして,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を使用することは,本発明において初めて採用された技術であり,上記のような効果は,当業者が予期し得なかったものである。
( )刊行物4発明において,引用刊行物6に記載されたエチレン性不飽和側鎖含4有アクリル系共重合体を採用する動機付けはない。
すなわち,引用刊行物6記載の発明の課題は,酸素に対し感受性が低く,特別の補助結合剤を必要としない新規な光重合組成物を提供することであり,焼成後に低抵抗で高精細な無機パターンを形成することを課題とする感光性導電ペーストとは解決すべき課題が異なる。また,上記のとおり,刊行物4発明は光硬化性モノマーを必須の成分として含むものであるから,感光性を付与する目的で,更に感光性を有するエチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を含ませる必要はない。
したがって,刊行物4発明に引用刊行物6に記載されたエチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を適用すべき動機付けはない。
2取消事由2(相違点(ロ)についての判断の誤り)( )決定は,その認定に係る本件発明1と刊行物4発明との相違点(ロ)である,1「本件発明1は,ガラス転移点が300〜500℃のガラスフリットを含有するのに対し,刊行物4発明は,ガラス転移点が550〜825℃のガラスフリットを含有する点」につき,引用発明1及び刊行物4発明は「その具体的なガラス転移点が, 」 , 相違するものの その温度範囲を規定する技術的意義が共通しているものであ り「感光性の組成物で使用される『325〜600℃』の軟化点範囲を有するガラスフリットも,引用刊行物2・・・に記載されるように周知のものであるから,刊行物4発明のガラスフリットを,そのガラス転移点がより低い『300〜500℃』の周知のものとすることは,ガラスフリットや有機物質の種類に応じて当業者が容。」,,。 易に想到することができたと云えると判断したが 以下のとおり 誤りである( )刊行物4発明は,ガラスフリットのガラス転移点が550〜825℃である2ことを必須の構成要件とするものであり,引用刊行物4には,下限を550℃とする理由につき「もし融解が550℃以下で起るならば有機物質はカプセル化されるらしく,ふくれは有機物の分解につれて組成物中に形成される傾向にある(甲第。」4号証訳文1頁下から5〜3行)と明記している。決定は,引用刊行物2に記載された軟化点325〜600℃のガラスフリットを周知であると認定した上,この周知のガラスフリットを刊行物4発明に適用することが容易であると判断するものであるが,上記のように下限を550℃とする理由を明記している引用刊行物4の教, , 示に反して 引用刊行物2記載のガラスフリットを刊行物4発明に適用することは本発明を知った上での後知恵であることが明らかである。決定は,引用発明1及び刊行物4発明における,ガラスフリットのガラス転移点の温度限定の技術的意義が共通であることを,上記適用の容易性の理由に挙げるが,刊行物4発明は,その技術的意義に従って,ガラス転移点が550〜825℃であるガラスフリットを必須的に採用するものであるから,上記容易性の判断は失当である。
( )本件発明1において,ガラスフリットの転移点温度は,感光性導電ペースト3により剥離のない高解像度のパターンを得る上で重要な要素であり,実験成績証明書(甲第9号証)が示すとおり,本件発明1は,これを300〜500℃に限定することにより,顕著な効果を奏するものである。
第4被告の反論の要点1取消事由1(相違点(イ)についての判断の誤り)に対し( )フォトリソグラフィー法によりパターン等のファイン化を図るものといえる 1感光性導電ペーストは,感光性成分と一次バインダーである樹脂成分を少なくとも含むものであり,刊行物4発明においては,実施例で用いられている「光硬化性モノマー「酸価164の75%のメチルメタクリレートおよび25%のメタクリル 」,酸のコポリマー」がそれぞれ,感光性成分,一次バインダーに相当する。
ところで,引用刊行物4の「バインダーポリマーは本発明の組成物に対し重要である。それは水性処理可能性を許容し,同時に高い解像力を与えるものでなければならない。これらの要件は下記のバインダーを選択することによって満たされることがわかった ・・・組成物の酸性コモノマー成分の存在は,本技術に対し重要で 。
ある。酸官能基は水性塩基,例えば0.8%炭酸ナトリウム水溶液中で現像可能性を生じる。酸性コモノマーが15%以下の濃度で存在する時,組成物は水性塩基で除去されない。酸性コモノマーが30%以上の濃度で存在する時,湿気条件では不安定であり,また像部分において一部現像が起きる(訳文3頁下から6行〜4頁 。」5行)との記載に照らし,引用刊行物4は,導電ペーストにおいて,主として一次バインダー成分を改良することにより 「水性処理可能性を許容し」て「高い解像 ,力を与える」ことを目的としたものであり,したがって,刊行物4発明の一次バインダーである「酸価164の75%のメチルメタクリレートおよび25%のメタクリル酸のコポリマー」は 「水性処理可能性を許容し」て「高い解像力を与える」 ,特性を与えるものとして選択された一次バインダー成分であるといえる。
しかるところ,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体は,引用刊行物6並びに特開平1-266534号公報(乙第1号証。以下「刊行物7」という )。
及び特公昭52-23384号公報(乙第2号証,以下「刊行物8」という )に。
記載されているとおり,フォトリソグラフィー法によりパターン等を形成するために用いられる感光性の樹脂として周知であるが(なお,決定は,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体が導電ペーストとして周知であると認定したものではない,この樹脂が,水性処理可能性を許容して,高い解像力を与えること,さら 。)には,結合性,密着性が高いことも周知である。そうすると,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体は,刊行物4発明の一次バインダーとしての 「水性処,理可能性を許容し」て「高い解像力を与える」という目的に沿うものであり,さらに,結合性,密着性が高いことは,フォトリソグラフィー法によりパターン形成をするための感光性組成物に当然望まれる特性であるから,刊行物4発明の一次バイ, , ンダー成分として エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を用いることは当業者にとって格別困難なことであるということはできない。
原告は,引用刊行物6に用途として記載された「フォトレリーフ」等と,導電ペーストとは技術分野が異なると主張するが,上記のとおり,決定は,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体が,フォトリソグラフィー法によりパターン等を形成するために用いられる感光性の樹脂として周知であることを示すために引用刊行物6を挙示したのであり,このような樹脂も,刊行物4発明も「フォトリソグラフィー法によりパターン等を形成するために感光性組成物を用いる技術分野」に属するものであって,技術分野が相違するものではない。
なお,決定は,刊行物4発明の一次バインダー成分としてエチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を適用することの容易想到性を示したものであるが,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を,刊行物4発明の一次バインダー成分の一部として用いること,又は,感光性成分の一部として用いることも,同様の理由によって容易想到であり,かつ,そのようにしても,本件発明1の構成とすることができる。したがって,いずれにしても,刊行物4発明に上記周知事項を適用することによって,相違点(イ)に係る本件発明1の構成とすることは容易である。
( )原告は 本件発明1が エチレン性不飽和基を側鎖に有するアクリル樹脂 エ2 ,, (チレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体)を使用することにより,これを持たないアクリル系共重合体を用いた場合と比較し,解像度が大幅に上昇し,かつ,比抵抗が顕著に減少する効果が得られるとした上,決定は,本件発明1が奏する顕著な効果を看過していると主張する。
しかしながら,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を用いることによ,,, , り 解像度が大幅に上昇し かつ 比抵抗が顕著に減少する効果が得られることは本件明細書に記載されていない。また,本件明細書に開示されていない効果を立証するための実験成績証明書(甲第8号証)は,そもそも参酌されるべきではなく,仮に参酌したところで,同実験成績証明書に記載された本件発明1の1態様でしかないものを用いた実験1の結果と,側鎖にカルボキシル基を有するが,エチレン性不飽和基を有しないアクリル系共重合体2例を用いたにすぎない実験2,3とを比較して,本件発明1全体の解像度や比抵抗の傾向を断定できるものではない。
( )原告は,刊行物4発明に引用刊行物6に記載されたエチレン性不飽和側鎖含3有アクリル系共重合体を適用すべき動機付けはないと主張する。
,, , しかしながら 上記のとおり エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体は刊行物4発明と同じ「フォトリソグラフィー法によりパターン等を形成するために感光性組成物を用いる技術分野」に属するものであり,かつ,水性処理が可能で,高い解像力を付与するものであって,刊行物4発明の一次バインダーとしての目的に沿うものである上,結合性,密着性が高いという好ましい特質も備えたものであるから,これを刊行物4発明に適用する動機付けは存在する。なお,原告は,特別の補助結合剤を必要としない新規な光重合組成物を提供するという,引用刊行物6記載の発明の課題が,感光性導電ペーストの課題と異なると主張するが,特別の補助結合剤を必要としないということは,結合性が高いということであって,むしろ適用の動機付けになることである。他方,適用を阻害するような格別の事情も存在しない。
したがって,原告の上記主張は誤りである。
2取消事由2(相違点(ロ)についての判断の誤り)に対し原告は,刊行物4発明は,ガラスフリットのガラス転移点が550〜825℃であることを必須の構成要件とするものであり,かつ,下限を550℃とする理由を明記しているから,引用刊行物2に記載された軟化点325〜600℃の周知のガラスフリットを刊行物4発明に適用することが容易ではないと主張する。
,, , しかしながら 引用刊行物4には 導電ペーストに使用されるガラスフリットは焼成時の組成物に含有される有機物と加熱条件に応じた好適なガラス転移点のものを採用すべきことが示唆されているといえる。そして,引用刊行物4において,ガラスフリットの好適なガラス転移点として示されている範囲(550〜825℃)は,引用刊行物4で特定される有機物を用い,かつ,引用刊行物4の特定の焼成条件(900℃・1段階焼成)を採用した場合におけるガラス転移温度の好適な範囲ということである。したがって,引用刊行物4に,特定の有機物組成と焼成条件の下で,ガラスフリットのガラス転移点が550〜825℃と限定され,その理由が記載されているとしても,これと異なる有機物組成と焼成条件のものにおいて,それより低いガラス転移温度のガラスフリットを採用することが困難となるわけではない。ガラスフリットのガラス転移温度の好適な範囲は,焼成時の組成物に含有される有機物と焼成条件に応じ,当業者が,実験等によって適宜決定し得る技術事項であり,決定の判断に誤りはない。
第5当裁判所の判断1取消事由1(相違点(イ)についての判断の誤り)について( )甲第7号証(1984年(昭和59年)6月20日株式会社シーエムシー発1行の「エレクトロニクスケミカルス )には,導電ペースト(厚膜ペースト)につ 」き 「厚膜ペーストでは使用目的の異なる2種類のバインダーを使用する。一次バ ,インダーとしてはセルロース誘導体やアクリル樹脂が使用される,二次バインダーはセラミック基板に印刷膜を固着させるために使用され,主にホウケイ酸鉛系のガラスフリットが選択されている(102頁下から4〜2行)との記載があり,こ 。」の記載によれば,導電ペーストにはアクリル樹脂等の一次バインダー及びガラスフリットの二次バインダーが使用されることが認められる。また,弁論の全趣旨によれば,本件発明1や刊行物4発明のような感光性導電ペーストについては,感光性を付与する成分(感光性成分)を含ませる必要があることが認められる。
そして,甲第2号証(本件明細書)及び弁論の全趣旨によれば,本件発明1については,( )成分(エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体)が一次バインbダーに,( )成分(ガラス転移点が300〜500℃のガラスフリット)が二次バ eインダーに,( )成分(光反応性化合物)が感光性成分に当たり,また,引用刊行物 c4及び弁論の全趣旨によれば,刊行物4発明については,( )成分(酸価164の c75%のメチルメタクリレートおよび25%のメタクリル酸のコポリマー)が一次2バインダーに,( )成分(550〜825℃の範囲のガラス転移温度および10m b/gの未満の表面積対重量比を有するガラスフリット)が二次バインダーに,( ) e成分(光硬化性モノマー)が感光性成分に当たるものと認められる。
( )エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体につき,原告は,少なくとも2導電ペーストの技術分野においては周知ではないと主張するのに対し,被告は,フォトリソグラフィー法によりパターン等を形成するために用いられる感光性の樹脂として周知であると主張する。
しかるところ,引用刊行物6には,以下の記載がある。
ア「式(省略)で表される水性アルカリ可溶性で交さ結合型-光重合性の共重合体を光重合性成分として包含することを特徴とする光重合性組成物(特許請求の範囲) 。」イ「本発明は新規な水性アルカリに可溶性で交さ結合型-光重合性成分を包含する光重合性組成物に関する ・・・多くの場合,感光性材料については,結合剤および担体として作用す 。
る重合体の補助材料を混入することが必要である。これは単量体化合物からなる感光性組成物に対して特にあてはまる。また一般に,単量体-結合剤系は酸素減感や酸素により誘導される相反不規に対して鋭敏である。本発明によれば,このような欠点を克服した酸素に対して感受性が低く,また特別の補助結合剤を必要としない新規な光重合性組成物が提供される(2。」欄2〜18行)ウ「フォトレリーフとして本発明の光重合性重合体組成物を使用する場合,この重合体組成物はあらゆる種類の光化学的複写法のためのレリーフ像を作るのに好適であるといっても過言ではない(15欄42行〜16欄1行) 。」エ「本発明の光重合性重合体状組成物からなるフォトレリーフは先行技術に比して多くの利点を与える。これらは大気圧条件に対してはるかに鋭敏性が低くそして製造中増感することが。, できるので重クロム酸ゼラチンまたはアルブミン層よりはるかにすぐれている あらゆる場合本発明のフォトレリーフは重クロム酸塩プレートより明瞭な像を与える。また本発明の光重合性重合体状組成物は補助結合剤を必要としない(16欄33〜41行) 。」オ「このレジスト画像はそれを塩化第2鉄エッチング法に付してレジストの下に高品質のレリーフ画像を残すことにより印刷回路を作るのに使用できる(18欄26〜29行) 。」これらの記載によれば,引用刊行物6には,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体が記載されており,この共重合体は,水性処理が可能な感光性樹脂(光重合性の共重合体)であること,この共重合体を包含する光重合性組成物は,とりわけ単量体化合物から成る感光性組成物の有する,結合剤及び担体として作用する補助材料を必要とし,酸素に対し鋭敏であるといった欠点を克服し,特別の補助結, , 合剤を必要とせず 酸素に対して感受性が低いという利点を有するものであることこれらの利点により,この光重合性組成物は印刷回路も含めたフォトリソグラフィー法によりパターンを形成する各種の用途に使用可能なものであり,当該組成物のフォトレリーフは重クロム酸塩プレートより明瞭な像を得られることが認められる。
また,刊行物7には,以下の記載がある。
ア「( )側鎖にエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する線状高分子化合物10〜90 a重量%,( )末端にエチレン性不飽和基を少なくとも二個有する光重合性単量体5〜90重 b量%,( )分子中にエポキシ基を少なくとも二個有するエポキシ樹脂1〜90重量%,( )c d光増感剤0.01〜15重量%・・・からなる光及び熱硬化性組成物(特許請求の範囲 」 。」)イ「本発明は,プリント配線板の製造において永久保護皮膜として使用するソルダーレジストとして好適な,光及び熱硬化性組成物に関する(1頁左欄18〜末行) 。」ウ「特に,光硬化性組成物を半田マスク形成用等のソルダーレジストとして用いる場合は,永久保護皮膜として,酸,アルカリ,有機溶剤に耐え,しかも240〜320℃の半田浴へ30〜10秒浸漬した場合に,半田のもぐりやマスクの浮き及びクラックが発生してはならないという厳しい接着性や皮膜強度が要求される(1頁右欄6〜12行) 。」エ「本発明の硬化性組成物は,側鎖にエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する線状高。 ,() 分子化合物( )を必須成分として含有するかかる線状高分子化合物としては ・・・ メタaアクリル酸エステルと メタ アクリル酸との共重合体にメタ アクリル酸グリジジルメ () ,() ,(タ)アクリル酸クロライド (メタ)アクリル酸等を反応させて得られたアクリル系線状高分 ,子化合物が好ましく(2頁右上欄10行〜左下欄4行) ,」オ「本発明の硬化性組成物は,上記のように,保護すべき基板上に塗布され,予備乾燥されると溶剤は速やかに揮散されてしまい皮膜上に形成され,これに陰画を通じて活性光線が照射されると,露光部の硬化性皮膜中の光重合性単量体( )が光増感剤( )により活性化され,光重bd。, , , 合して硬化する また 線状高分子化合物( )は 側鎖にエチレン性不飽和結合を有するので aそれにより線状高分子化合物同志が架橋し,基板との良好な密着性が発現する。次いで,未露光部をアルカリ水溶液を用いて溶出して現像すると,線状高分子化合物( )は,側鎖にカルaボキシル基を有するので,それにより線状高分子化合物がアルカリ水溶液に容易に溶出され,未露光部の皮膜が全体として良好に除去される。また,この良好な未硬化皮膜の溶出性と良好な硬化皮膜の密着性とにより解像度が向上する(4頁右上欄末行〜左下欄17行) 。」これらの記載によれば,刊行物7には,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体が記載されており,この共重合体は,水性処理が可能な感光性樹脂であること,この共重合体を含む光硬化性組成物は,プリント配線板の製造において永久保護皮膜として使用するソルダーレジスト,特に半田マスク形成用等のソルダーレジストとして用いるもので,永久保護皮膜として,酸,アルカリ,有機溶剤に耐え,しかも240〜320℃の半田浴へ30〜10秒浸漬しても,半田のもぐりやマスクの浮き及びクラックが発生してはならないという厳しい条件に適合する接着性や皮膜強度を有するものであることが,認められる。
なお,刊行物8は,引用刊行物6に係る特許出願を原出願とする分割出願につい, , ての公告公報であって エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体に関しては引用刊行物6の記載と同旨である。
そして,上記引用刊行物6や刊行物7の各記載によれば,本件特許出願に係る優先権主張日である平成4年1月24日当時,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体が,フォトリソグラフィー法によりパターン等を形成するために用いられる感光性組成物の成分であって,水性処理が可能な感光性樹脂として,周知であったものと認められる。
( )他方,引用刊行物4には,以下の記載がある。
3ア「 a)20m /g未満の表面積対重量比を有しそして粒子の少くとも80重量%が0. (25〜10μmのサイズを有する銀固体の微細粒子と(b)550〜825℃の範囲のガラス転移温度および10m /g未満の表面積対重量比を有する無機バインダーの微細粒子であって2その粒子の少くとも90重量%が1〜10μmのサイズを有しかつ(b)対(a)の重量比が0.0001〜0.25の範囲にあるものとの混合物が (c)有機重合体バインダー (d) , ,光開始系 (e)光硬化性モノマーおよび(f)有機媒体からなる有機ビヒクル中に分散され ,ている,酸化性雰囲気または実質上非酸化性雰囲気中で焼成できる水性現像可能な感光性銀導電体組成物において,上記有機重合体バインダーが(1)C 〜Cアルキルアクリレート又110はC 〜Cアルキルメタクリレート,スチレン,置換スチレンあるいはそれらの組合せを含 110む非酸性コモノマーおよび(2)エチレン系不飽和カルボン酸を含む酸性コモノマーからなるコポリマーまたはインターポリマーであるが,すべての酸性コモノマーはポリマーの少くとも15重量%を構成し,そして上記有機重合体バインダーは50000未満の分子量を有しさらに活性線放射に像露光した際の組成物は0.8重量%の炭酸ナトリウムを含有する水溶液中で現像可能なことを特徴とする水性現像可能な感光性銀導電体組成物(特許請求の範囲の請求 。」項1項。乙第3号証訳文13頁19〜33行)「 。」 イ 本発明は解像力が高くかつ水性処理可能な改良された感光性銀導電体組成物に関する(同1頁3行)ウ「バインダーポリマーは本発明の組成物に対し重要である。それは水性処理可能性を許容し,同時に高い解像力を与えるものでなければならない。これらの要件は下記のバインダーを選択することによって満たされることがわかった ・・・組成物の酸性コモノマー成分の存在 。
は,本技術に対し重要である。酸官能基は水性塩基,例えば0.8%炭酸ナトリウム水溶液中で現像可能性を生じる。酸性コモノマーが15%以下の濃度で存在する時,組成物は水性塩基で除去されない。酸性コモノマーが30%以上の濃度で存在する時,湿気条件では不安定であり,また像部分において一部現像が起きる(同3頁下から6行〜4頁5行) 。」エ「感光性銀導電性組成物は・・・例えばスクリーン印刷によってペーストの形で基体に適用されるのが普通である(同10頁下から12〜11行) 。」これらの記載によれば,刊行物4発明は,高い解像力を有し,かつ,水性処理が可能な感光性導電ペーストとすることを目的とするものであること,刊行物4発明の一次バインダー成分である「酸価164の75%のメチルメタクリレートおよび25%のメタクリル酸のコポリマー」は,刊行物4発明の高い解像力及び水性処理可能という効果と関わっていること,すなわち,これらの効果を付与するために選択された一次バインダーであることが認められる。
( )エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体が,水性処理が可能な感光性4, ,,, 樹脂として周知であったことは 上記( )のとおりであるところ 被告は さらに 2エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体は,高い解像力を与えること,及び結合性,密着性が高いことも周知であって,刊行物4発明の一次バインダーとしての 「水性処理可能「高い解像力の付与」という目的に沿うものであり,かつ, ,」,結合性,密着性が高いことは,フォトリソグラフィー法によりパターン形成をするための感光性組成物に当然望まれる特性であるから,刊行物4発明の一次バインダー成分として,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を用いることは,当業者にとって格別困難なことであるということはできないと主張する。
しかしながら,まず,解像力の点については,上記( )のとおり,引用刊行物62に,そこに記載された発明である,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を含む光重合性組成物のフォトレリーフが,重クロム酸塩プレートより明瞭な像を得られることが記載されているが,重クロム酸塩プレートではなく,刊行物4発明のように 「酸価が164の75%のメチルメタクリレートおよび25%のメタク ,リル酸のコポリマー」を一次バインダー成分とした組成物との比較においても,明瞭な像を得られることは記載されていない。したがって,仮に,重クロム酸塩プレートより明瞭な像を得られることが周知であったとしても,そのことが,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を刊行物4発明に使用する動機付けとなると直ちに認めることはできない。
なお,刊行物7にも,そこに記載された発明である,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を含む光硬化性組成物について,解像度が向上する旨が記載されていることは,上記( )のとおりであるが,これは,良好な未硬化皮膜の溶出性2と良好な硬化皮膜の密着性とにより向上するとされているのであるから,後記の接着性(密着性)についての判断に従うことになる。
次に,結合性及び密着性に関しては,上記( )のとおり,引用刊行物6に,そこ2に記載された発明である,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を含む光, ,, 重合性組成物が 補助結合剤を必要としないことが記載されているところ 被告は特別の補助結合剤を必要としないということは,結合性が高いということである旨主張する。しかしながら,上記( )で認定した引用刊行物6の各記載によれば,引2用刊行物6記載の発明は,補助結合剤併用の排除を課題とするものであることが認められるところ,補助結合剤併用の排除のために,樹脂の結合性または密着性が高いことが要件の一つとして存在するとしても,技術常識上,そのことのみによって補助結合剤併用の排除という効果が生ずるとは考えられず,そうすると,引用刊行物6記載の発明から,結合性が高いという点だけに着目し,引用刊行物6に記載されたエチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を,補助結合剤の併用が排除されていない(少なくとも課題とはされていない)刊行物4発明に適用することが容易であると直ちに認めることはできない。したがって,仮に,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を含む引用刊行物6記載の光重合性組成物が補助結合剤を必要としないことが周知であったとしても,そのことが,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を刊行物4発明に使用する動機付けとなると認めることはできない。
また,刊行物7に,そこに記載された発明である,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を含む光硬化性組成物について,強度の接着性や皮膜強度を有するものであることが記載されていることも,上記( )のとおりである。しかしなが2ら,刊行物7記載の発明は,プリント配線板の製造において永久保護皮膜として使用するソルダーレジスト,特に半田マスク形成用等のソルダーレジストとして用いるものであって,その接着性や皮膜強度は,これらの用途における過酷な使用環境, , に適合する強度を要求されるのに対し 導電ペーストである刊行物4発明についてそのような程度にまで強度が高い接着性や結合性を要するものと認めるに足りる証拠はなく,刊行物4発明にとって,刊行物7記載の発明の接着性や皮膜強度は,かえって異質なものとして,そこに記載されたエチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を適用することを妨げるものといわざるを得ない。したがって,仮に,刊行物7記載の光硬化性組成物が強度の接着性や皮膜強度を有するものであることが周知であったとしても,そのことが,それに含まれるエチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を刊行物4発明に使用する動機付けとなると認めることはできず,そうであれば,このような密着性を前提とする刊行物7記載の光硬化性組成物の解像度も,同様に上記動機付けとなるものとはいえない。
そうすると,相違点1に係る容易想到性判断において問題となるのは,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体が,水性処理が可能な感光性樹脂として周知であったことから,これを,刊行物4発明の一次バインダー成分である「側鎖にエチレン性不飽和基を有しない」アクリル系共重合体(75%のメチルメタクリレートおよび25%のメタクリル酸のコポリマー)に換えて使用することが,当業者に容易になし得たか否かという点である。
( )引用刊行物4及び弁論の全趣旨によれば,エチレン性不飽和側鎖含有アクリ5ル系共重合体が,側鎖にエチレン性不飽和基を有することにより,それ自体として感光性を有するのに対し,かかる側鎖を有していない刊行物4発明のアクリル系共重合体は,それ自体が感光性を有するものではなく,刊行物4発明である感光性導電ペーストの感光性は,( )成分である光開始剤及び( )成分である光硬化性モノマd eーによって付与されることが認められる。すなわち,刊行物4発明のアクリル系共, , 重合体に換えて エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を使用することはその一次バインダーを,非感光性の樹脂から感光性の樹脂に置換することを意味するものである。
そして,上記( )のとおり,引用刊行物6に記載された発明である光重合性組成1物においては,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体自体が,感光性成分(光重合性成分)とされていることにかんがみれば,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体は,感光性成分としても機能するものと認められるから(このこと自体は被告も争わない,刊行物4発明において,アクリル系共重合体をエチレ 。)ン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体に置換した場合に,刊行物4発明の他の組成成分,とりわけ,既存の感光性成分である光硬化性モノマーとの併用に伴って生ずる影響を検討することなく,直ちに,置換が可能であるとすることはできない。
もっとも,この点につき,刊行物7には,上記( )のとおり,刊行物7記載の発2明である光硬化性組成物において,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体(( )成分)と感光性成分である光重合性単量体(( )成分)とが併用されることがa b記載されているが,刊行物7記載の光硬化性組成物は,上記のとおり,半田マスク形成用等の永久保護皮膜に使用されるソルダーレジスト等として,過酷な使用環境において用いられるものであって,これに併用されているからといって,導電ペーストである刊行物4発明における併用による影響の検討が不要となるものとはいえない。また,乙第4号証(昭和63年12月30日発行の山岡亜夫外1名編「フォトポリマー・テクノロジー )には,反応性又は非反応性高分子バインダーと多官 」(, 能又は単官能モノマーとの併用がなされることが記載されている 27頁5〜8行図1-14)が,仮に,この記載が,感光性組成物の分野において,エチレン性不(), 飽和側鎖含有アクリル系共重合体のような感光性 反応性 ポリマーバインダーと刊行物4発明のアクリル系共重合体のような非感光性(非反応性)ポリマーバインダーとを,それぞれ感光性モノマーと組み合わせることができることを示している, ,() ものとしても 感光性モノマーとの関係を考慮することなく 非感光性 非反応性ポリマーバインダーと感光性(反応性)ポリマーバインダーとを置き換えることが可能であることまで示すものではない。
なお,被告は,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を,刊行物4発明の一次バインダー成分の一部として用いること,又は,感光性成分の一部として用いることも容易想到である旨主張するが,容易想到性に関し,決定における判断とは異なる主張であり,本訴に至って新たに追加した主張であり,そのような主張の経緯からして相当性を欠く主張であり,また,上述したところに照らしても容易想到であるとはいえず,採用することはできない。
( )加えて,引用刊行物4には 「組成物の酸性コモノマー成分(判決注:一次6 ,バインダーである共重合体を組成するコモノマー成分)の存在は,本技術に対して重要である ・・・適当な酸性コモノマーはエチレン系不飽和モノカルボン酸例え 。
ば,アクリル酸,メタアクリル酸・・・それらは低酸素雰囲気中できれいに燃焼するのでメタアクリルポリマーはアクリルポリマーより好ましい(乙第3号証訳文。」4頁1〜9行「好ましいことではないが,ポリマーバインダーの非酸性部分は, ),ポリマーのアルキルアクリレート,アルキルメタアクリレート,スチレンまたは置換スチレン部分の代替物として他の非酸性コモノマーを約50重量%まで含有することができる ・・・然しながら,それらがきれいに燃えつくすことがより難しい 。
がためにこのようなモノマーの全バインダーポリマーの約25重量%未満を用いることが好ましい(同4頁16〜22行)との各記載があり,これらの記載によれ 。」ば,刊行物4発明において,一次バインダーには,低酸素雰囲気中できれいに燃焼することが要求されているものと認められるが,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体が,低酸素雰囲気中できれいに燃焼するものであることを認めるに足りる証拠はない。
( )そうすると,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体は,上記のとお7り,水性処理が可能な感光性樹脂として周知であり,水性処理が可能である点は,刊行物4発明の一次バインダーとしての目的に沿うものであるが,同様に刊行物4発明の一次バインダーに求められる,高解像度の付与,低酸素雰囲気中できれいに燃焼するものである点については,少なくとも,刊行物4発明のアクリル系共重合体との比較において,適用の動機付けとなるかどうかは明らかではなく,さらに,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を刊行物4発明に適用するためには,既存の感光性成分である光硬化性モノマーとの併用に伴って生ずる影響を検討することが不可欠であるから,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を刊行物4発明に適用することが,当業者において容易になし得たものと直ちに認めることはできず,決定の相違点(イ)についての判断は,誤りといわざるを得ない。
2結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,決定には,結論に影響を及ぼす誤りがあるというべきであるから,取り消されるべきである。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 石原直樹
裁判官 高野輝久