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関連審決 異議2003-70737
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17行ケ10850審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 物の発明 /  方法の発明 /  進歩性(29条2項) /  同一技術分野(同一の技術分野) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  相違点の認定 /  相違点の判断 /  技術的手段 /  発明の詳細な説明 /  分割出願 /  原出願日 /  参酌 /  置き換え /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  加工 /  構成要件 /  業として /  設定登録 /  混同 /  請求の範囲 /  変更 /  訂正明細書 /  取消決定 / 
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事件 平成 17年 (行ケ) 10849号 特許取消決定取消請求事件
原告株式会社伊予エンジニアリング
訴訟代理人弁護士吉武賢次
同 宮嶋学
同 高田泰彦
訴訟代理人弁理士安形雄三
同 五十 嵐貞喜
被告特許庁長官 中嶋誠
指定 代理人杉山務
同 田中幸雄
同 田口英雄
同 小池正彦
同 内山進
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2006/11/08
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が異議2003-70737号事件について平成17年11月15日にした決定を取り消す。
事案の概要
後記特許に関し 第三者からの特許異議の申立てに基づき 特許庁が平成16年10 , ,月1日付けで特許取消決定(第1次決定)をしたところ,その取消訴訟が提起され,当庁から平成17年10月13日にその認容判決がなされ確定したため,特許庁は再び前記異議事件を審理し,平成17年11月15日付けで再度特許取消決定(第2次決定)をした。本件は,特許権者である原告が,特許庁のなした前記第2次決定の取消しを求めた事案である。
当事者の主張
1 請求の原因(1) 特許庁等における手続の経緯原告は,平成7年1月13日に出願(原出願)した特願平7-19863号からの分割出願として,平成11年11月9日に特許出願(本件出願)をし,平成14年7月12日,発明の名称を「文字情報と地図画像の合成方法及びデータベース機能向上支援システム」とする特許第3327881号として設定登録を受けた(請求項の数は6。甲3-1〔特許公報 。以下「本件特許」という 。 〕 。)その後本件特許について,A及びBから特許異議の申立てがなされ,同事。,, 件は異議2003-70737号事件として特許庁に係属した 同事件の中で 原告は平成16年6月14日,本件特許の特許請求の範囲等について訂正請求(甲3-2)をし,次いで平成16年9月21日付けで訂正の補正(甲3-3)をしたが,特許庁は,平成16年10月1日,訂正請求は認められないとした上で,本件特許は特許法(判決注:平成6年法律第116号による改正前のもの)17条,同36条の規定に違反してなされたものであることを理由に,全請求項につき本件特許を取り消す決定(第1次決定)をした。
そこで原告は,同決定の取消訴訟(東京高裁平成16年(行ケ)第507号,当庁平成17年(行ケ)第10348号)を提起したところ,当庁は,平成17年10月13日,訂正・補正を認めなかったのは誤りであり特許法36条違反もない等として,同決定を取り消す判決をした(甲12-3 。そこで,特許庁において再び審理が )行われ,その結果,平成17年11月15日,前記訂正請求を認めた上,本件特許の全請求項(1〜6)に係る発明についての特許を取り消す旨の決定(以下「本件決定」という )がなされ,その謄本は平成17年12月5日に原告に送達 。
された。
(2) 発明の内容前記訂正後の本件特許の請求の範囲は,下記のとおりである(以下,請求項の番号順に「本件発明1」のようにいうことがある。甲3-3〔全文補正後訂正明細書 。〕)記【請求項1】地図画像が格納された電子地図情報システムと利用者が所有する既存データベースとを利用して,該既存データベースの文字情報と前, 記地図画像とを合成して表示する文字情報と地図画像の合成方法であって下記のステップ(a)〜(d)により,文字情報,数字情報のデータをつかさどる簡易データベースを前記電子地図情報システム内に持たずに,前記文字情報と前記地図画像との合成表示処理をすることを特徴とする文字情報と地図画像の合成方法。
(a)前記既存データベースの文字情報を付加する対象物の領域を前記地図画像上にて指定するステップ。
(b)前記利用者が所有する既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し,各文字情報を各対象物の領域情報と対応付けて文字情報記憶部に登録するステップ。
(c)入力された文字情報を検索キーとして前記文字情報記憶部に登録された文字情報群を検索し,検索された文字情報に対応して登録されている前記対象物の領域情報に基づき前記地図画像上での当該対象物の位置を求めるステップ。
(d)前記(c)のステップにより求めた位置情報に基づき,当該対象物を含む地図画像を読み出して表示すると共に,前記検索された文字情報を前記当該対象物と関連付けて合成して表示するステップ。
【請求項2】前記(b)のステップは,文字情報を登録する際に,前記指定された一つの対象物に対して複数の異なる文字情報を対応付けて登録できる共に,前記指定された複数の対象物に対して同一の文字情報を対応付けて登録できるようになっている請求項1に記載の文字情報と地図画像の合成方法。
【請求項3】前記文字情報と共に利用者のイメージ情報を当該対象物の関連情報として付加できるようになっている請求項1又は2に記載の文字情報と地図画像の合成方法。
【請求項4】前記電子地図情報システムが,受信した移動体の位置情報に基づき当該移動体の位置を地図の画像上に表示するシステムである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の文字情報と地図画像の合成方法。
【請求項5】前記地図画像が,地図,設計図,各種構造物の構造図を含む図形の画像である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の文字情報と地図画像の合成方法。
【請求項6】簡易データベースを持たない電子地図情報システムと利用者が所有する既存データベースとを連結してデータベース機能を強化するデータベース機能向上支援システムであって,請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法の発明を実現したことを特徴とするデータベース機能向上支援システム 」。
(3) 決定の内容ア本件決定の内容は,別添「異議の決定」写しのとおりである。その理由の要点は,本件発明1〜6は,下記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから,本件特許は特許法29条2項の規定に違反してなされたものである,等としたものである。
記刊行物1:特開平5-94129号公報(甲1)(これに記載された発明を以下「刊行物1発明」という )。
刊行物2:特開平5-135152号公報(甲2)イなお本件決定は,本件発明1の進歩性を否定するに当たり,本件発明1と刊行物1発明との一致点及び相違点を,次のとおり認定した。
(ア) 一致点地図画像が格納された電子地図情報システムと,文字情報と前記地図画像とを合成して表示する文字情報と地図画像の合成方法であって,下記のステップ(a)〜(d)により,文字情報,数字情報のデータをつかさどる簡易データベースを前記電子地図情報システム内に持たずに,前記文字情報と前記地図画像との合成表示処理をすることを特徴とする文字情報と地図画像の合成方法。
(a)文字情報を付加する対象物の領域を前記地図画像上にて指定するステップ。
(b)文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し,各文字情報を各対象物の領域情報と対応付けて文字情報記憶部に登録するステップ。
(c)入力された文字情報を検索キーとして前記文字情報記憶部に登録された文字情報群を検索し,検索された文字情報に対応して登録されている前記対象物の領域情報に基づき前記地図画像上での当該対象物の位置を求めるステップ。
(d)前記(c)のステップにより求めた位置情報に基づき,当該対象物を含む地図画像を読み出して表示すると共に,前記検索された文字情報を前記当該対象物と関連付けて合成して表示するステップ。
(イ)相違点本件発明1では,文字情報は,利用者が所有する既存のデータベース, 。 を利用しているのに対し 刊行物1にはかかる点が開示されていない点(4) 決定の取消事由しかしながら,本件決定は,以下の理由により,違法なものとして取消しを免れない。
ア 取消事由1(一致点・相違点の認定の誤り〔その1 )〕(ア)ステップ(a)について「刊行物1には,………,地図上に表された施設は一定の面積を有a本件決定は,しているのが当然であるから 『対象物の領域を地図画像上にて指定する』ステップ ,と認定し,この点を一を有しているといえる (8頁最終段落〜9頁第1段落) 」致点の認定に含めたが これは 刊行物1発明の 施設の位置 を 対 ,,「」 「象物の領域」にすり替えたものである。
本件発明1のステップ(a)では,対象物の領域を地図画像上で指定するのであり,そのため,作画情報と画像上の座標値の両方が,図形情報として登録される。これに対し,刊行物1では,対象物の指定を点(]Y座標)で行っており,面積を有する領域では行っていない。すなわち,刊行物1には,利用者の文字情報を付加する対象物の領域を指定することは,示されていない。
座標(点)による指定と,面積を有する領域による指定とでは,技術構成と作用効果が相違するから,かかる相違を無視して両者が一致するとした本件決定の判断は,誤りである。
b本件発明1の「対象物の領域を指定すること」とは 「対象物を領域,により指定すること」を意味するものであるが,被告は,本件発明1の「対象物の領域を指定すること」を 「領域を持った対象物を指定す ,ること」と曲解し,指定の対象となる地図上に表示される施設が面積を持つことについての主張に終始している。領域を持った対象物を点で指定することと,領域を持った対象物を領域で指定することとは,本質的に相違する。
刊行物1発明では,領域を持った対象物(施設若しくは記号)を,点に基づく座標で指定している。施設が面積を有しており,地図画像上,その施設が,面積(領域)を持って表示されているとしても,刊行物1発明のように,カーソルを施設位置に移動して指定・登録して取得できるのは,施設の位置としての座標値のみであり,この指定・登録によって,施設の領域情報が得られる訳ではない。当業者は,領域を有する対象物を点で指定するステップが記載されていると理解するにすぎない。
これに対し,本件発明1では,ドローツールの機能を用いて,領域を持つ図形で指定するようにしている。その結果,刊行物1発明の施設の複数について,一つの対象物として領域で指定することもでき,刊行物1の施設の一部分を,一つの対象物として領域で指定することもできる。刊行物1記載発明では,このような指定はできないのであるから,両者は,明らかに作用効果でも異なる。
(イ) ステップ(b)について「刊行物1には『各文字情報を各対象物の領域情報と対応付けて文字本件決定は,と認定し,この点情報記憶部に登録するステップ』を備えている (9頁第5段落) 」を一致点の認定に含めたが,誤りである。
刊行物1には,本件発明1の文字情報に相当するメモ情報が,記憶回路4から読み出されてメモリ5に保存されること,及び,地図上の車両の現在位置とメモ情報の登録地点が重ねられた画面が,表示装置6にモニタ表示されることは明示されているが,メモ情報が地図再生回路(CD-ROM)2からの地図情報と合成されて( 対応付け」されて)登録さ 「れることについての記載はないし,地図情報がメモリ5に記憶されるか否かも不明である。
また,本件発明1では,各文字情報を各対象物の領域情報と対応付けて文字情報記憶部に登録するようになっているのに対し,刊行物1発明では,上記(ア)のとおり,対象物の指定は点(]Y座標)で行っており,面積を有する領域では行っていない。
このように,刊行物1には 「各文字情報を各対象物の領域情報と対応 ,付けて文字情報記憶部に登録する」ことは記載されておらず,本件決定のステップ(b)についての一致点の認定は,誤りである。
(ウ) ステップ(c)について「刊行物1では,……… 『リストから表示したメモ情報を選択しa本件決定は,,これを入力する』ことにより『対応するメモ情報の施設位置が地図上に表示される』から,メモ情報は検索キーの役割を果たしている (9頁最終段落〜10頁第1段落) 」と認定し,ステップ(c)の全体について本件発明1と刊行物1発明とは一致しているとするが,誤りである。
, , 本件発明1のステップ(c)は 入力された文字情報を検索キーとして文字情報記憶部に登録された文字情報群を検索し,検索された文字情報に対応して,登録されている対象物の領域情報に基づき,地図画像上での当該対象物の位置を求めるものである。これに対し,刊行物1には,表示したい「メモ情報」をリストから選択して入力し,メモ情報の指定を行うことにより,対応するメモ情報の施設の位置が地図上に表示されることが記載されているにとどまる。
刊行物1発明は 「メモ情報」により検索して対応する施設を地図上 ,に表示するものではなく,その結果,文字情報は,本件発明1の「検索キー」とは,なり得ない。刊行物1の「メモ情報」は,単に記憶回路4に整列して記憶されるだけであり,地図上の位置を表す]Y座標とメモ情報が並んでいるだけであり,選択の対象となるだけである。
しかも,刊行物1発明において「メモ情報」の選択は,自動的に行われるものではなく,利用者がマニュアルで行うものであるから,本件発明1の文字情報が「検索キー」として機能するのとは,全く相違している。すなわち,刊行物1記載の発明では,メモ情報の文字情報を,検索のマッチングには一切使用しておらず,単なる地図表示位置の選択項目の機能しか有していない。
b刊行物1の「メモ情報」が検索キーの役割を果たしているという本,「」 「」。 件決定の認定は 情報の 検索 と 選択 とを混同したものである一般に,検索は,データ処理の手掛かりとなる検索キーや条件式等を入力し,データベースの中から,検索キーや条件式に合致するデータを,自動的に引き出すことをいう。本件発明1では 「文字列指定」,と「ファイル指定」の両方の検索が開示されており,ここで入力された文字情報を検索キーとして,登録されている文字情報群を対象とした自動的な検索が行われていることは,明らかである。これに対し,刊行物1発明では,このような意味での検索を行っておらず,リストから表示したメモ情報を選択し,これを入力することであり,単なる選択(若しくは指定)である。
イ 取消事由2(一致点・相違点の認定の誤り〔その2 )〕「刊行物1には,………地図情報を記憶したCD-ROMを再生して所(ア)本件決定は,望の地図情報を取り出す地図生成回路2とは別に,ユーザによる入力に応答し,所望設備の情報及び地図上におけるその設備の位置を関連づけて記憶する記憶回路4を備え……ていることから,文字情報を有するデータベースは地図情報システムであると認定し,これをCD-ROM内に持たない,ということができる (10頁下第4段落) 」「文字情報,数字情報のデータをつかさどる簡易データベースを前記電子前提に,地図情報システム内に持たずに,前記文字情報と前記地図画像との合成表示処理をすることを特徴とする文字情報と地図画像の合成方法(11頁第3段落,下線付加) 。」であることを一致点の認定に含めたが,誤りである。
,「」, 刊行物1は 発明の名称を 地図情報表示装置 としているとおり刊行物1の図1に示された構成全体が本件発明1の「地図情報システム」に相当するのであり,CD-ROMが地図情報システムに相当するのではない 本件決定の認定は 刊行物1発明のCD-ROMが本件発明1の 地 。, 「図情報システム」に相当するというすり替えを行うことによって,文字情報を有するデータベースが地図情報システム内には存在していないと曲解している点で,根本的に誤っている。
(イ)刊行物1発明では,文字情報は,位置という図形情報に関連付けられる属性情報であるため,文字情報が記憶された記憶回路4が,本件発明の「簡易データベース」に相当する。そして,文字情報が記憶された記憶回路がマイコンに接続されているため,簡易データベースが地図情報システム内に存在することになる。
なお,本件決定は,本件発明1の「簡易データベース」の意義につ「単にデータ項目あるいはデータ量が少ないことを明示するにとどまる (10いて,」と認定しているが,単に言葉の表現だけの議論であり,本頁下第2段落)件明細書及び刊行物1の記載を内容的に吟味したものではない。本件発明1の「簡易データベース」は,単にデータ項目或いはデータ量が,,, 少ないことを明示するものではなく 従来技術の説明や 発明の目的効果等の記載から,外部の既存データベースからの情報を記憶する記憶部と解するのが相当である。本件発明1では,図形情報に関連付ける属性情報として,システム外部の既存データベースと直接連携することによって,その資源を利用・活用できるようにすることを目的としたものであり,そのために,かかる簡易データベースを,地図情報システム内に持たないとするものである。
ウ 取消事由3(相違点の判断の誤り)「本件発明(ア)本件決定は,上記(3)イのとおり認定した相違点について,1において『既存データベース』の用語の意味するところは 『利用者が作成した情 ,報を格納したもの』とみることができ (12頁第2段落「刊行物1をみるに,…… 」),リストに表示されるユーザ独自のデータベースが本件発明1の『既存データベース』に対応するとみることができる(同第3段落)「入力するテキスト形 。」とした上,式のファイルが,既存のデータベースから抽出したもの,言い換えれば文字情報が既存データベースに格納されていた情報であることは,刊行物1記載の発明の文字情報も 「メモ情報」と記載されているように利用者のデータベースとして登録すること ,ができるものであるから 当該相違点は当業者が適宜実施し得るものにすぎない12 , 。」(と判断したが,誤りである。
頁第4段落)本件発明1における「既存データベース」という用語は,そのシステムが持つ地図や文字等のデータベースではなく,他のアプリケーション(外部システム)が持つ既存のデータベースを意味しており,地図情報システムの外部に存在する,利用者自身のシステム内に設置若。,「」 しくは格納されているデータベースと解すべきである ここで既存とは「すでに存在すること」を意味し,以前より存在していたものを指す。したがって 「既存データベース」は,地図情報システムの外部 ,『に存在する「利用者の各種データベース」に対応しているのであり,「既存データベース』の用語の意味するところは『利用者が作成した情報を格納したもるという本件決定の上記判断は 「既存データベーの』とみることができ」,ス」の用語を歪曲しており,本件発明1の目的や作用効果などからも乖離している。
本件明細書及び図面を参酌して総合的に解釈すると分かるように,本件発明1は,その文字情報と地図画像の合成方法及びデータベース機能向上システムにより,地図情報システムと,その外部のアプリケーションシステム(既存の各種データベース)との直接的な連携を図って,既存の各種データベースをそのまま,つまり何らの加工を施すことなく,地図情報システムに利用できるようにしたことに特徴がある。このために,本件発明1では,文字情報,数字情報のデータをつかさどる簡易データベースを,電子地図情報システム内に持つ必要はない。
刊行物1の地図情報システムにおいて,データベースに相当するのは,メモ情報を記憶回路4に記憶させたものであるが,刊行物1発明においては,施設名称などをその都度入力,登録するものであり,地図情報システム外部の既存の各種データベースとの連携を図るものではないし,そのような示唆もなされていない。
本件決定の判断は,本件発明1の「既存データベース」を,利用時にメモ情報を入力,登録することにより作成する刊行物1発明のデー, , タベースと等価と判断しているか 単純に置き換えているものであり誤りである。
(イ)刊行物1発明の「メモ情報」は,刊行物1発明の地図情報システムに限定されて利用されるものであり,刊行物1に係る特許出願の当時(平成3年10月1日 ,地図情報システム間であっても,異なるハード )ウェアやソフトウェア間でデータの互換性がなかったため,この「メモ情報」を他の地図情報システムで利用することはできなかった。これに対し,本件発明1は,利用者が有する「既存データベース」の情報を汎用的に利用することを目的としてなされたものであることからも,刊行物1発明の「メモ情報」から成るデータベースと本件発明1の 既存データベース とは 異なるものである 刊行物1発明の メ 「」,。「」 , , モ情報 は 利用者のデータベースとして登録できるものではあるが本件発明1の「既存データベース」とは,意味が異なっており,出願当時の地図情報システムの状況からしても,本件発明1のような「既存データベース」の利用・活用は,当業者が容易に想到し得るものではない。
エ 取消事由4(本件発明2についての判断の誤り)(ア)本件発明2は,本件発明1の(b)のステップについて 「文字情報を,登録する際に,前記指定された一つの対象物に対して複数の異なる文字情報を対応付けて登録できる共に,前記指定された複数の対象物に対して同一の文字情報を対応付けて登録できるよう」にしたものであるが,本件決定は,前記ア(イ)のとおりステップ(b)についての認定を誤っているから,本件発明2についても同様に認定の誤りがある。
「複数のデータ識別名が一つの図形領域と対応付けて登録するこ(イ)本件決定は,と,及びその逆の態様が刊行物2に開示されていることが認められる (14頁第3段」と認定し,本件発明2において付加された構成は刊行物2の記載に落)基づき容易に想到できるとしたが,刊行物2には,複数のデータ識別名を一つの図形領域に対応付けて登録すること又はその逆の態様は,開示されていないから,上記判断は誤りである。
オ 取消事由5(本件発明3についての判断の誤り)本件発明3は,本件発明1又は2の構成に加え 「前記文字情報と共に ,利用者のイメージ情報を当該対象物の関連情報として付加できるようになっている」点を構成要件としたものであり,本件決定が本件発明1及び2の判断を誤っている以上,本件発明3について進歩性が認められないとする判断も,失当である。
また,刊行物1には,メモ情報と関連付けて記号を付加できることが示されているが,イメージ情報に関しての記述も示唆もない。記号とイメージ情報とは意味も相違し,表示の方法においても相違する。イメージ情報を付加することにより,一目瞭然的な表示が可能であり,システムの一層の活用を図ることができる。
カ 取消事由6(本件発明4についての判断の誤り)本件発明4は,本件発明1〜3のいずれかに加え 「前記電子地図情報,システムが,受信した移動体の位置情報に基づき当該移動体の位置を地図の画像上に表示するシステム」を構成要件とするものであり,本件発明1〜3の判断を誤っている以上,本件発明4に何ら進歩性は認められないとする判断は誤りである。
キ 取消事由7(本件発明5についての判断の誤り)本件発明5は,本件発明1〜4のいずれかに加え 「前記地図画像が,,地図,設計図,各種構造物の構造図を含む図形の画像である」点を構成要件とするものであり,本件発明1〜4の判断を誤っている以上,本件発明5に進歩性は認められないとする本件決定の判断は誤りである。
ク 取消事由8(本件発明6についての判断の誤り)本件決定は,刊行物1発明における「リストに表示されるユーザ独自のデータベース」が本件発明1の「既存データベース」に相当するとし「このデータベースの機能を向上するために,刊行物1記載の発明においても本た上,件発明6と同様に文字情報と対象物を関連付けて表示しているから,本件発明6の構成は単に表現上システムとしたものにすぎず 当業者が容易に想到し得るものである16 , 」(と判断したが,誤りである。
頁第3段落)本件発明1の「既存データベース」とは,本件明細書の「利用者特有の情報を利用者自身が作成して利用者データベースに格納しておく」との記載 「利用者が持っている情報を利用することができなかった」との ,記載などから,地図情報システムの外部に存在する利用者自身のシステム内に,設置若しくは格納されているデータベースと解すべきである。
したがって,本件発明1の「既存のデータベース」と,刊行物1の「ユーザ独自のデータベース」とは,地図情報システムの内部にあるか外部にあるかで,明らかに異なっているので,両者を等価とした本件決定の判断は,誤りである。
また,本件発明6は,その発明の目的や発明の効果からしても,地図情報システムと,地図情報システム外部の既存データベースとの連携を確保し,そのデータを地図情報システムで利用することによって,結果として,既存データベースの機能向上を実現しているものであるのに対し,刊行物1若しくは刊行物2には,かかる既存データベースの機能を向上させるといった記載もなく,その示唆もないのであるから,本件決定の判断は誤りである。
2 請求原因に対する認否請求原因(1)(2)(3)の各事実は認める。同(4)は争う。
3 被告の反論(1)取消事由1に対しア ステップ(a)につきステップ(a)について,本件決定は,地図上に表された施設は一定の面積を有しているのが当然であることを前提に判断している。すなわち,ディスプレイ等の画面上に記号等,形あるものを表示する場合には,1つの点(画素を表すピクセル)のみで表すことは不可能であり,複数のピクセルを用いて表示することが必要である。刊行物1の図4に,地図上に表示される記号が示されているが,これを表示する際にも複数のピクセルを用いることは,画面上に表示される記号が複数のピクセルから成り立っていることから当然のことである。
原告は,刊行物1では対象物の指定を点(XY座標)で行っており,面積を有する領域では行っていないと主張するが,当業者の通常の常識に従えば,同図の座標は記号を配置する位置を示すものと理解するのが普通であり,記号の領域を示すものとは考えないものである。
「該当の場所P1が指定され一方,本件発明1(甲3-3)でも,本件明細書のると,中央処理部3内の図形情報登録手段31は,作画された図形G1の作画情報と共に,画像上の座標値を図形情報として図形情報記憶部41に記憶する。例えば,図6に示すように,表示装置2の表示領域が幅400ドット,高さ200ドットと仮定すると,図形の表示領域の左上隅の座標値(180,110)を表示画像部の画像ファイル上での位置情報と共に,図形の記載にあるようG1の座標情報として記憶する(ステップS13(段落【0017 ) )。」】,, (,) に 領域を有する図形G1を 図形の表示領域の左上隅の座標値 180 110を用いて表現している。
したがって,本件発明1と刊行物1発明とが,ステップ(a)について一致しているとした本件決定の認定に誤りはない。
なお,仮に,刊行物1発明において施設が1つの点で表示されているとしても,対象物を表示するのであるから,複数の画素を使用して表示するように変更することは当業者が普通に考えることである。
イ ステップ(b)につき刊行物1の段落【0011 【0012】の記載によれば,刊行物1発明が本件発 】明1のステップ(b)である「各文字情報を各対象物の領域情報と対応付けて文字情報記憶部に登録するステップ」を備えていることが認められ,本件決定に誤りはない。
原告は,刊行物1発明では,メモ情報が地図情報と合成されて登録されることが開示されていないと主張する。しかし,本件発明1においても,ステップ(d)に「地図画像を読み出して表示すると共に,前記検索された文字情報を前記当該対象物と関連付けて合成して表示する」ことが記載されているが,登録されること又は記憶されることの記載はないから,本件発明1が「地図情報がメモ情報と合成されて登録されること」を要件としていることを前提とする原告の主張は根拠がないものである。
「メモ情報の位置,内容および記号を示す各情報が図1にさらに,刊行物1では,とあるように,記おける記憶回路4に互いに関連づけて記憶される(段落【0012 ) 。」】憶回路に記憶されるのは,本件発明1の各文字情報に対応するメモ情報,並びに各対象物の領域情報に対応するメモ情報の位置及び記号であることは,刊行物1に記載されている事項である。
したがって,原告の上記主張も,本件決定の認定を誤りとする理由にはならない。
ウ ステップ(c)につき原告は,刊行物1発明は,メモ情報により検索して対応する施設を地図メ 上に表示するものではないと主張するが 刊行物1の段落 0013 には ,【】, 「とあ モ情報の指定がなされると,対応するメモ情報の施設の位置が地図上に表示される」ることから,施設をメモ情報により検索していること及び地図上に表示することは明らかであり,原告の主張は根拠がない。
なお,本件発明1の「検索キー」の用語の意味は,一般に,データの中から必要な事項を探し出すためのものであり,検索キーの入力の仕方は,単語や記号をキーボードから入力する場合と,一覧表から選択して入力す, , る場合 あるいは階層化された分類を順にたどっていく場合があることはパソコン等コンピュータの利用者に自明の事項である。これらの場合,入力の仕方が異なっても検索キーと表現することは,普通に行われていることである。
また,原告は,刊行物1発明のメモ情報の選択は自動的に行われるものではなく,利用者がマニュアルで行うものであると主張するが,本件発明1においても,キーボードから単語を入力して確定するまではマニュアルで行うものであり,刊行物1発明の場合にリストから単語を選択して単語を確定することとは,本件発明1の請求項の記載上何ら相違点とはいえない事項である。
さらに原告は,刊行物1発明では,メモ情報の文字情報を検索のマッチングには一切使用しておらず,利用者の単なる地図表示位置の選択項目の機能しか有していない,と主張するが,刊行物1において,タッチパネル上でリストから表示したいメモ情報を選択しこれを入力することは,メモ情報が検索キーの役割を果たしていることを明示したものであり,対応するメモ情報の施設位置が地図上に表示されることは,リストで選択した文字情報と図4のように記憶されたデータの文字情報との一致を検索した結果,施設位置が地図上に表示されるものであり,メモ情報の文字情報を検索のマッチングに利用していることは明らかである。
(2)取消事由2に対し原告は 「簡易データベース」の意義についての本件決定の認定には誤りが ,,「」, あると主張するが 本件明細書の 発明の詳細な説明 の記載を参照しても「簡易データベース」の用語については特許請求の範囲の記載と同じく「文字情報,数字情報のデータをつかさどる簡易データベース (段落【0008】と」の記載があるのみで,特別な意味を有するものではなく,本件決定の認定に誤りはない。
また 原告は地図情報システム の範囲について 刊行物1発明のCD-ROM ,,「」,が本件発明1の地図情報システムに相当するとした本件決定の認定も誤りであると主張するが,刊行物1が発明の名称を「地図情報表示装置」とするものであり,発明全体を装置で表現していることから,地図画像が格納されたCD-ROMを地図情報システムと表現することは,刊行物1発明の理解として普通のことであり 何ら違和感を伴うものではない 本件発明1においても 地 , 。「図画像が格納された電子地図情報システム」と表現されているのみで,特別な意味が「地図情報システム」に与えられているわけではない。
(3)取消事由3に対しア原告は,本件発明1の「既存データベース」は,そのシステムが持つ地図や文字等のデータベースではなく 他のアプリケーション(外部システム) ,が持つ既存のデータベースを意味しており,刊行物1発明にはこのような既存のデータベースを利用することは開示されていないから,本件決定の判断には誤りがあると主張する。
しかし,本件発明1の特許請求の範囲には 「他のアプリケーション(外 ,部システム)」の記載はなく,原告の主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものであって失当である。
,【】「 」 イ 原告は 本件明細書の段落 0006 にいう 独自のユーザデータベースとは,地図情報システムの外部に存在する利用者自身のシステム内に設置若しくは格納されているデータベースと解すべきであり,これが既存データベースに該当すると主張するが,刊行物1には,地図情報システムであるCD-ROMの外部に存在する利用者自身が作成したメモ情報を含むデータベースが示されており,原告の解釈を採用しても結論に影響を及ぼすことはない。
ウ原告は,刊行物1発明においてはデータを利用時に入力するものであるから「既存データベース」を使用するものでないと主張するが,刊行物1発明において登録されたデータは,表示の段階では既に存在するものであり,時間の経過の程度に関係なく以前より存在していたものということが。, , できる 加えて メモ情報の登録と表示は一連の動作である必然性はなくむしろナビゲーション装置の用途からすると,登録と表示は別の動作とみることが素直な理解である。したがって,原告の主張は失当である。
」という用語が,そのシステ エ仮に,原告が主張するように「既存データベースムが持つ地図や文字等のデータベースではなく,他のアプリケーション(外部システム)が持つ既存のデータベースを意味している,と解釈したとしても本件決定のすなわち,本件発明1における文字情報が,入力 結論に影響を及ぼさない。
装置を用いて入力し,記憶部に登録して図形情報との対応付けをとるという点で刊行物1発明と一致する。そして,刊行物1発明の文字情報も,利用者のデータベースとして登録することができるものであるから,刊行物1発明において,画像上において指定された登録したい施設の座標情報を文字情報と対応して登録するときに,既存データベースに記憶されている文字情報を用いて,その文字情報を,対象物の座標情報に対応付けて登録するようにすることは,当業者が容易に考えるものである。
(4)取消事由4に対し本件決定で引用した刊行物2の段落【0024】及び【0025】の記載に接した当業者であれば,「複数のデータ識別名を一つの図形領域に対応付けて登録すること」及びその逆の検索が開示されていることは当然に理解できることである。すなわち 「複数のデータ識別名を一つの図形領域と対応付け」とその逆 ,の「あるデータ識別名に複数の図形領域を対応付け」ることが明示され,登録も検索も明示されている事項である。
したがって,刊行物1発明に刊行物2記載の技術を適用し,本件発明2に想到することは当業者にとって容易であるとした本件決定の判断に誤りはない。
(5)取消事由5に対し「記号としては,コードとしての形態と同様,イメージとしての形態も本件決定では,当業者に自明の事項であるから,記号の形態は,当業者が適宜選択できるものと認められ,付加する情報がイメージであることを特定した点に当業者が格別推考力を要したとは認めらと判断し,記号とイメージ情報とを対応付けて判断しれない(14頁下第3段落) 。」ているのではなく,コードで表した記号とイメージで表した記号が共に自明であることを前提に,本件発明3に進歩性がないことを判断しているものであり,原告の主張は,本件決定を正しく理解しないものであり失当である。
(6)取消事由6に対し上記のとおり,本件発明1ないし3に係る本件決定の判断に誤りがない以上,本件発明4について進歩性を否定したことに誤りはない。
(7)取消事由7に対し上記のとおり,本件発明1ないし4に係る本件決定の判断に誤りがない以上,本件発明5について進歩性を否定したことに誤りはない。
(8)取消事由8に対し原告は,本件発明1における「既存のデータベース」と,刊行物1にいう「ユーザ独自のデータベース」とは地図情報システムの内部にあるか外部にあるかで明らかに異なっているので,両者を等価とした本件決定の判断は誤りであると主張するが,上記(3)で取消事由3に対し反論したとおり,本件決定に誤りはない。
当裁判所の判断
1請求の原因(1)(特許庁等における手続の経緯 ,(2)(発明の内容)及び(3) )(決定の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
そこで,以下,原告の主張する本件決定の取消事由について順次判断する。
2 取消事由1について(1)ステップ(a)につきア原告は,本件発明1が対象物を領域として指定するのに対して,刊行物「,1は対象物を点として指定するものであるから 本件決定が,,刊行物1には………,地図上に表された施設は一定の面積を有しているのが当然であるから 『対象物の,領域を地図画像上にて指定する』ステップを有しているといえる (8頁最終段落〜9頁第 」ことを理由に,ステップ(a)について刊行物1発明は本件発明1と一1段落)致すると認定したのは誤りである旨主張する。しかし,以下のとおり,原告の主張は採用することができない 。。
イ本件発明1の「ステップ(a)」は 「文字情報を付加する対象物の領域を ,前記地図画像上にて指定するステップ」というものである。地図上の対象物(例えば建物)は,面としての広がりを持ち,特定の領域を有するものであり,縮尺及び表示装置の精度の兼ね合いにより,点としてしか表示されない場合があるとしても,建物が領域を有することには変わりがない。
したがって,本件発明1において,地図画像上で,ある建物内の一点をマウスでクリックする等の操作によって当該建物を指定することも 「対象物,の領域を……指定する」ことに含まれる。
一方,刊行物1においても対象物である施設は特定の領域を有するものであるから,刊行物1にも,対象物の領域を地図画像上で指定することが記載されていると認められる。
本件決定の上記認定は,以上の趣旨をいうものとして是認することができ,原告主張の誤りはない。
ウ原告は,本件発明1においては対象物の位置及び形状の両方の情報が登録されるのに対して,刊行物1においては対象物の位置の情報しか登録されないから,両者には相違があると主張する。
しかし,原告主張の点に相違があるとしても,以下に述べるとおり,それは,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が適宜変更できる設計事項にすぎないというべきであるから,本件決定はこれが実質的な相違点ではないとの見解に立って一致点の認定を行ったことが,誤りであるとはいえない。また,仮にこれを相違点であるとしても,当業者が適宜変更できる設計事項にすぎないものである以上,本件発明1の進歩性の判断の当否に影響を及ぼすものではない。
エ本件明細書(平成16年9月21日付け手続補正書〔甲3-3〕添付の全文訂正明細書をいう。以下同じ )には,対象物の領域の指定に関連して,次の記 。
載がある。
「 0008】【【課題を解決するための手段】本発明は,………(a)既存データベースの文字情報を付加する対象物の領域を前記地図画像上にて指定するステップ;(b)前記利用者が所有する既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し,各文字情報を各対象物の領域情報と対応付けて文字情報記憶部に登録するステップ;(c)入力された文字情報を検索キーとして前記文字情報記憶部に登録された文字情報群を検索し,検索された文字情報に対応して登録されている前記対象物の領域情報に基づき前記地図画像上での当該対象物の位置を求めるステップ;………」「 0010】【【作用】本発明にあっては,対象となる画像上の任意の領域に対し,その場所に関連する任意の文字情報を付加させることができ,独自の情報システムを容易に構築することが可能になると共に,付加した文字情報を検索キーとして画像上での当該位置を求めることができるので,利用者の設定情報をキーとして該当の場所を検索する情報検索システムを容易に構築することが可能となる。また,地図データベースと既存データベースとを連結する管理テーブルの登録情報に基づいて合成処理するようにしているので,地図情報システムと利用者の各種データベースとを完全に分離させ,且つ簡易データベー, 。, スを持たずに 文字情報と地図画像との合成表示処理をすることが可能となる さらにテキスト形式で対応するようにしているので,他のアプリケーションシステムの全てのデータベース(利用者の各種データベース)との連携を図ることができる。
「 0016】まず,利用者は,図5(A)に示すように,情報を付加したい場所P1が含まれる 【地図の部分,例えば,図4の画像部F1の部分を背景画像として表示装置2の表示部2aに表示する(ステップS11 。次に,利用者は,図5(B)に示すように,表示された画 ), ()。」 像上の該当の場所P1を その領域を囲む図形G1を作画して指定する ステップS12「 0017】該当の場所P1が指定されると,中央処理部3内の図形情報登録手段31は,作画 【された図形G1の作画情報と共に,画像上の座標値を図形情報として図形情報記憶部41に記憶する 例えば 図6に示すように 表示装置2の表示領域が幅400ドット 高さ200 。,, ,ドットと仮定すると,図形の表示領域の左上隅の座標値(180,110)を表示画像部の画, ()。」 像ファイル上での位置情報と共に 図形G1の座標情報として記憶する ステップS13オ本件明細書の上記段落【0016 【0017】の記載及び【図6】の内容によれ 】ば,情報を付加する場所P1についての「図形情報」は,図形G1の「作画情報」と図形G1の表示領域の左上隅の座標情報とから成り,この図形情報が「図形情報記憶部」に記憶されるものである。
そして 「作画情報」が具体的にどのような方法で記述され記憶されるか ,についての説明は本件明細書には存しないから,当業者にとって周知慣用。, の方法のうちいかなるものでも採用できると解するほかない このように本件明細書にいう「図形情報」は,図形の表示領域の左上隅という1点の座標情報以外に 「作画情報」を有するわけであるが,その作画情報の具体 ,的内容について特段の限定はなく,利用者が必要とする図形情報の詳細度, (,), や 利用するハードウェア資源の能力 処理速度 記憶容量等 に応じて本件発明1を実施する者において適宜定めることができる程度の事柄であると解される。
また,本件明細書の上記引用の各段落には,情報を付加する場所P1についての「図形情報」が,図形の表示領域の左上隅という1点の座標情報に加えて「作画情報」を有することによる特有の効果については,何ら記載がない。もちろん,単なる1点の座標値以外に,対象物の形状を表象する「作画情報」を有することによって,利用者が画面上の表示から建物の形状を把握しやすくなる等の効果は生じるであろうが,本件発明1は,画面上への表示方法を特許請求の範囲中の構成として含むものではないし,当該効果は,図形情報として座標情報以外に作画情報も有することによって当然に生じる効果にすぎない。そうすると,情報を付加する場所P1についての「図形情報」を,1点の座標情報だけでなく「作画情報」を有するものとすること(すなわち,対象物を領域として指定すること)は,当業者にとって単なる設計事項にすぎないというべきであるから,本件決定がこの構成を相違点として取り上げなかったことに誤りがあるとはいえない。
カしたがって,ステップ(a)について一致点の認定の誤り及び相違点の看過をいう原告の主張は,採用することができない。
(2)ステップ(b)につき「刊行物1には『各文字情報を各対象物の領域情報と対応付ア原告は,本件決定が,と認定し,けて文字情報記憶部に登録するステップ』を備えている (9頁第5段落) 」この点を一致点の認定に含めたのは誤りであると主張する。しかし,以下のとおり,原告の主張は採用できない。
なお,ステップ(b)にいう「領域情報」とは,上記(1)ウで引用した本件明細書段落【0017】にいう「図形情報 ,すなわち対象物の「座標情報」と 」「作画情報」から成る情報を意味するものと認められる。
イ 刊行物1(甲1)には,次の記載がある。
「 0010】メモ情報の登録は以下のようにして行う。………ユーザは,……カーソル移 【,, 動キーを操作することによってカーソルを登録したい施設の位置に移動し その後登録キーを操作する。以上の操作によって,登録したい施設の位置が決定される。
尚,かかる施設の位置は,地図上における経度,緯度を示す座標情報に換算されて登録される 」。
「 0011】以上の操作が終了すると,……,ユーザはカーソルキー(矢印キー)を操作 【することによって文字列上における文字を選び “情報”の位置に施設の内容を示 ,す文字を入力する。……」「 0012】このようにして“情報”および“記号”の入力が終了すると,ユーザは設定 【キーを操作する。かかる設定キーの操作に応答してメモ情報の位置,内容および記号を示す各情報が図1における記憶回路4に互いに関連づけて記憶される。かかるメモ情報に関する記憶回路4のメモリマップを図4に示す。同図において,nはメ。,,, モ情報の登録順序を示す また座標情報は 前述したように 地図上における経度緯度を示すものである 」。
, , 刊行物1の上記記載及び図4によれば 刊行物1発明の記憶回路4には施設の座標情報とメモ情報とが「メモリマップ」によって関連付けて記憶されているものと認められる。そして,上記記載【0011】によれば,メモ情報は,文字によるものであることが明らかである。
,(),【】【】 ウ 一方 本件明細書 甲3-3 には 上記(1)ウに引用した段落 00160017の記載に続けて,次の記載があり,これらの記載が 「各文字情報を各対象 ,物の領域情報と対応付けて文字情報記憶部に登録するステップ」であるステップ(b)に対応するものと認められる。
「 0018】続いて,利用者は,該当の場所P1に関連する文字情報の登録指示を行なう。… 【……」「 0019】関連情報が入力され,利用者により登録指示がされると,文字情報登録手段32で 【は,該当の図形情報と文字情報との対応付けを行ない,文字情報を文字情報記憶部42に登録する。………」「 0023】上記の手順により,図形の情報と地図上の位置を表わす文字情報とを関連付ける 【ことができる…… 」。
エそうすると,刊行物1発明の「メモ情報「座標情報「記憶回路4」 」,」,は,それぞれ,本件発明1の「文字情報「領域情報 ( 図形情報「文 」,」「),「刊字情報記憶部」に対応するものということができるから,本件決定が,行物1には『各文字情報を各対象物の領域情報と対応付けて文字情報記憶部に登録するスと認定したことに誤りはない。
テップ』を備えている (9頁第5段落)」なお,この点につき,本件発明1の「領域情報 ( 図形情報 )が,座標 」「」情報に加えて作画情報を有するものであって,そのことを一致点の認定に, おいて考慮しなかったことが進歩性の判断の当否に影響を与えないことは上記(1)で述べたとおりである。
(3)ステップ(c)につき「刊行物1では,……… 『リストから表示したメモ情報を選択ア原告は,本件決定が,しこれを入力する』ことにより『対応するメモ情報の施設位置が地図上に表示される』かと認定ら,メモ情報は検索キーの役割を果たしている (9頁最終段落〜10頁第1段落) 」し,ステップ(c)の全体について本件発明1と刊行物1発明とは一致していると認定したのは,誤りであると主張する。しかし,以下のとおり,原告の主張は採用できない。
イ 刊行物1(甲1)には,次の記載がある。
「 0013】次にメモ情報の表示について説明する。通常の地図表示モードにおいて,モード 【の変更をキー入力部7を介して入力すると,表示画面は,図5の右上に示す画面,即ち表示画面の下部にタッチパネルとして機能するモード変更キーが表示された画面に切り替わる。メモ情報を表示する場合,ユーザはかかるモード変更キーからメモキーを選択して操作する。かかるメモキーの操作に応答して表示画面は,図5の左上の画面,即ちメモ情報のリストを示す画面に切り替わる。かかる表示画面は,上述した如くして図1の記憶回路4に記憶されたメモ情報を読み出すことによって映写される。ここでメモ情報のリストは,記憶回路4に登録された順番に映写される。ユーザは,かかるリストか。 ,, ら表示したいメモ情報を選択しこれを入力する メモ情報の選択の入力は 上記と同様タッチパネルによって行う。このようにしてメモ情報の指定がなされると,対応するメモ情報の施設の位置が地図上に表示される。かかるメモ情報の表示は,図2のフローチャートに従ってマイコン1によって実行される 」。
刊行物1の上記記載によれば,刊行物1発明においては,ユーザが,図5の左上の画面に示されたメモ情報のリストの中から,表示したいメモ情報(例えばAの「ガソリンスタンド )を選択して入力すると,当該メモ情 」報に対応付けられた施設(ガソリンスタンド)の位置が,地図上に表示されるものであると認められる。
そして 「コンピュータソフトウェア事典 (平成2年4月15日丸善株式 , 」「後日での利用を想定して蓄積された情報の中から,ある特会社発行,甲14)には,定の属性をもつ情報を選択する行為を情報検索(information retrieval)という(1029。」と説明されているとおり,一般に 「検索」とは「選択」を含頁左1〜3行),むものであるから,刊行物1発明において上記のとおりメモ情報を選択して施設の位置を地図上に表示することも,メモ情報を検索キーとして特定の施設(ガソリンスタンド)を検索していることにほかならない。
ウ原告は,一般に「検索」とは,データ処理の手掛かりとなる検索キーや条件式等を入力し,データベースの中から,検索キーや条件式に合致するデータを,自動的に引き出すことを意味し,本件発明1でいう「検索」とはこのような意味であるのに対し,刊行物1発明における「選択」は検索には当たらないと主張する。しかし,原告の主張するような意味での「検」 ,「 」(), 索 はコンピュータソフトウェア事典甲14 の上記引用箇所の後に「検索の対象となる情報の形態によって,情報検索システムにはそれぞれ固有の特徴がある。マイクロ資料の検索システムはその一例である。しかし,本章では,コンピュータ技術に基づく狭義の情報検索 情報検索システムに焦点をあてて解説する1029頁左15〜19 , 。」(として言及されている「狭義の情報検索」に相当するものであり,本件行)発明1にいう「検索」が,狭義の情報検索に限られるとすることはできない。
エまた,本件明細書の発明の詳細な説明参酌するとしても,本件決定の上記認定は相当である。
,(), , すなわち 本件明細書 甲3-3 には 文字情報の登録及び検索について次のような実施例が開示されている。
「 0018】続いて,利用者は,該当の場所P1に関連する文字情報の登録指示を行なう。図 【7は,関連情報をキーボード等から直接入力する場合の登録画面の一例を示しており,登録したい関連情報(=検索キー情報:本発明では,当該文字情報が該当の場所P1の検索キーとなる)を,表示部2a内のテキストボックスWaの中に入力する。関連情報としては,例えば,地図の当該部分P1の住所を示す文字列「〜町〜丁目xxx」や顧客情報等,その場所を管理するための情報を表わす任意の文字列を入力する 」。
「 0024】検索の操作には,単一の検索キーを指定する「文字列指定」の操作と,複数の検 【索キーを指定する「ファイル指定」とがある。先ず 「文字列指定」がされた場合の検索 ,手順について説明する。利用者により「文字列指定」の検索コマンドが指定されると,, 。, 表示制御手段34では 図9(A)に示すような案内画面を表示部2aに表示する 利用者は表示部2a内のテキストボックスWaに検索キーを入力し,検索ボタンを指示する。検索ボタンが指示されると,画像位置検索手段33では,文字情報記憶部42に登録されている検索キーを検索し,登録されていれば,管理テーブル43を参照して対応する図形情報を図形情報記憶部41から読み込む 」。
「 0025】そして,図形情報に基づいて画像上での当該位置を求め,画像ファイル5から該 【当の画像情報を読み込む。表示制御手段34では,図9(B)に示すように,当該位置P1が表示画面上の所定の位置……に配置されるように,表示領域を調整して地図の画像を表示する。……」本件明細書の上記段落【0018】によれば,利用者は,特定の場所P1に関連する文字情報( 関連情報 )として,表示部2aのテキストボックス 「」Waに例えば「ガソリンスタンド」と入力することができ,その場合,段落【0024 【0025】で説明される検索及び表示の操作では,表示部2a内の 】テキストボックスWaに「検索キー」として「ガソリンスタンド」と入力することによって,場所P1が地図上に表示されることになる。
本件明細書に開示されるこのような文字情報の登録及び検索の手順は,上記イで検討した刊行物1発明における手順と,大部分の構成において一致している。相違する点は,検索に当たって特定の文字情報( ガソリンス「タンド )を指定するに際し,本件発明1では表示部2aのテキストボック 」スWaに「ガソリンスタンド」と入力し,コンピュータ(中央処理部3と情報記憶部4)の内部で管理テーブル43を参照して場所P1(ガソリンスタンド)が抽出されるのに対して,刊行物1発明では,本件発明1の管理テーブル43に相当するメモ情報の一覧が画面上に表示され(図5の左上の図 ,ユーザが手動でガソリンスタンド(同図のAの行)を抽出する,とい )う点のみである。
そして,上記の相違点は,一連の手順のうちのある部分をコンピュータ内部の自動処理として行うか,画面表示を介した利用者の手作業として行うか,という相違にすぎず,設計事項の域を出ないといわざるを得ない。
3 取消事由2について(1)原告は,本件決定が,本件発明1の構成要件のうち「文字情報,数字情報のデータをつかさどる簡易データベースを前記電子地図情報システム内に持たずに」の点においても,本件発明1と刊行物1発明とが一致するとしたのは,一致点の認定を誤り相違点を看過したものであると主張する。
しかし,以下のとおり,原告の主張は採用することができない。
(2)まず,原告の上記主張の当否を検討するに当たり,本件発明1が「持たずに」としている「簡易データベース」の意義を明らかにする必要がある。
ア本件発明1の「簡易データベース」の意義は,本件明細書の特許請求の範囲の記載からは一義的に明らかであるとはいえないので,発明の詳細な説明の記載を参酌する必要がある。そこで,発明の詳細な説明の記載を見,「」 。 ると簡易データベース の用語は以下の4箇所の記載に表示されている「 0008】【【課題を解決するための手段】本発明は,……に関するものであり,本発明の上記目的は,文字情報と地図画像の合成方法の発明に関しては,下記のステップ(a)〜(d),すなわち,(a)……;(b)……;(c)……;(d)……;により,文字情報,数字情報のデータをつかさどる簡易データベースを前記電子地図情報システム内に持たずに,前記文字情報と前記地図画像との合成表示処理をすることによって達成される。
「 0009】……。また,データベース機能向上支援システムの発明に関しては,簡易データ 【ベースを持たない電子地図情報システムと利用者が所有する既存データベースとを連結してデータベース機能を強化するデータベース機能向上支援システムであって,請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法の発明を実現することによって達成される 」。
「 0010】【【作用】本発明にあっては,……が可能となる。また,地図データベースと既存データベースとを連結する管理テーブルの登録情報に基づいて合成処理するようにしているので,地図情報システムと利用者の各種データベースとを完全に分離させ,且つ簡易データベースを持たずに,文字情報と地図画像との合成表示処理をすることが可能となる。
さらに,テキスト形式で対応するようにしているので,他のアプリケーションシステムの全てのデータベース(利用者の各種データベース)との連携を図ることができる 」。
「 0034】【【発明の効果】以上のように本発明によれば,……することが可能となる。また,地図情報システムと利用者の各種データベースとを完全に分離させ,且つ文字情報や数字情報のデータをつかさどる簡易データベースを持たずに文字情報と地図画像との合成表示処理をすることが可能となる。さらに,…… 」。
上記各記載のうち 【0008 【0009】における「簡易データベース」への ,】言及は,本件発明1において 「電子地図情報システム」が「簡易データベ ,ース」を持たない構成であるということを繰り返しているにすぎず 「簡易,データベース」の意義を明らかにするために参酌できる記載ではない。
「地図データベースと既存データベースとを連結す一方,段落【0010】におけるる管理テーブルの登録情報に基づいて合成処理するようにしているので,地図情報システムと利用者の各種データベースとを完全に分離させ,且つ簡易データベースを持たずに,との記載によれば,文字情報と地図画像との合成表示処理をすることが可能となる 」。
本件発明1においては地図データベース(地図情報システム)と既存データベース(利用者の各種データベース)とを合成処理するに当たり 「簡易,データベース」を持たずに「管理テーブル」の登録情報に基づいて行う,という説明がなされている。
そこで 「管理テーブル」の意義について検討すると,本件明細書の段落 ,【0019】には次の記載がある。
「 0019】関連情報が入力され,利用者により登録指示がされると,文字情報登録手段32で 【は,該当の図形情報と文字情報との対応付けを行ない,文字情報を文字情報記憶部42に登録する。図8は,情報記憶部4の構成例を示しており,管理テーブル43は,図形情報記憶部41に登録されている各図形情報の管理情報と,文字情報記憶部42に登録されている文字情報群のリンク情報とから構成される 」。
上記記載によれば,本件発明1においては,利用者が本件明細書の段落【0016】〜【0018】で説明された手順に従い,地図上の対象物について入力した文字情報と,当該対象物の図形情報(上記2のとおり座標情報と作画情報)とを対応付けた情報が情報記憶部4に記憶されており,その具体的構成が「管理テーブル43」である。そして,この「管理テーブル」が存在することによって 「簡易データベースを持たずに」本件発明1所定の情 ,報処理をすることが可能になるとされている。
イ一方,刊行物1(甲1)には,地図上の情報とユーザが入力する情報との関連付けに関して,次の記載がある。
「 0012】このようにして“情報”および“記号”の入力が終了すると,ユーザは設定キー 【を操作する。かかる設定キーの操作に応答してメモ情報の位置,内容および記号を示す各情報が図1における記憶回路4に互いに関連づけて記憶される。かかるメモ情報に関する記憶回路4のメモリマップを図4に示す。同図において,nはメモ情報の登録順序を示す。また座標情報は,前述したように,地図上における経度,緯度を示すものである 」。
「【】 , 。 0014 かかるメモ情報の表示について 図2のフローチャートに従って以下に説明する上述した操作によりユーザがメモ情報を指定すると,まず指定されたメモ情報が記憶回路4から読み出されメモリ5にストアされる(ステップ1 。同時に車両の現在位置がメ )モリ5にストアされる ステップ2次に 指定されたメモ情報に応じた施設の位置 登 ()。, (録地点)が,メモ情報指定前の表示地図上に存在するか否かが判別され(ステップ3 ,)もし存在していればこの地図上に車両の現在位置とメモ情報の登録地点が重ねられた画面がモニタ上に表示される(ステップ7 。……」)刊行物1の上記記載によれば,刊行物1発明においても,特定の施設についてのメモ情報と,当該施設の座標情報とが互いに関連付けられて記憶回路4に記憶されており,その具体的構成を示したものが図4の「メモリマップ」であると解される。
,, () ウ 上記アのとおり 本件発明1は 対象物の地図上の図形情報 座標情報と利用者が登録する当該対象物の文字情報とを対応付けた「管理テーブル43」を有しているのに対して,上記イのとおり,刊行物1発明は,本件発明1の「管理テーブル43」に相当するものとして「メモリマップ」を有している そして 本件発明1の 管理テーブル43 及び刊行物1発明の メ 。,「」「モリマップ」は,地図上の対象物の位置・形状と当該対象物につき利用者が入力する文字情報が関連付けられたものであり,検索において利用されている。
そして,本件発明1においては,管理テーブル43が存在することによって 「電子地図情報システム内に 「簡易データベースを持たずに」検索及 , 」び合成処理を行える,とされているのであるから,管理テーブル43に相当するメモリマップを有する刊行物1発明も,地図情報システム内に簡易データベースを持たない構成である,ということになる。
(3)上記(2)のとおり,本件発明1における「簡易データベース」の意義から検討すれば,本件発明1と刊行物1発明が「簡易データベースを電子地図情報システム内に持たずに,文字情報と地図画像との合成表示処理をする」との点についても一致するとした本件決定の認定に,誤りはない。
(4)取消事由2における原告の主張は,刊行物1においては刊行物1発明の全体が「地図情報システム」に当たるから,本件決定が,地図情報を記憶したCD-ROMが「地図情報システム」に相当するとしたのは誤りであるというものである。
しかし,上記(2)イにおいて検討したとおり,本件明細書の用語に従って,本件発明1の構成を「地図情報システム」と,それ以外のシステム(対象物の文字情報を登録し,当該対象物の図形情報と関連付け,文字情報を検索キーとして当該対象物を検索し,当該対象物の位置を地図上に表示するという情報処理及び記憶を行うシステム)に分けるならば,刊行物1発明の構成に, , おいても CD-ROMにあらかじめ地図データ及び施設についての情報を登録しこれらの情報の検索,表示等を可能にした「地図情報システム」と,利用者による施設情報の登録,関連付け,検索,表示の情報処理及び記憶を行うシステムとに分けられることになる。そして,前者の地図情報システムが,利用者が既に所有し又は新規に作成する「データベース」を有しないことは明らかであるから,本件決定の上記認定に誤りはない。
4 取消事由3について(1)本件決定は,本件発明1の「既存データベース」は「利用者が作成した情報を格納したもの」を意味するにとどまり,刊行物1発明において画面に表示されるリストも「既存データベース」に対応することを理由に,本件発明1の相違点に係る構成は当業者が容易に想到できると判断した。原告は,本件決定の上記判断は誤りであると主張し その理由として 本件発明1の 既 ,,「存データベース」は他の(地図情報システム以外の)アプリケーションが持つデータベースを意味していること,刊行物1発明におけるリストは利用時に入力するものであって「既存」とはいえないこと,を主張する。
しかし,原告の主張は採用することができない。その理由は,以下のとおりである。
(2)本件明細書(甲3-3)の発明の詳細な説明において 「既存データベース」 ,に言及するのは次の記載である。
「 0001】【【産業上の利用分野】本発明は,地図,設計図,各種構造物の構造図などの図形の画像情報を処理対象として,文字情報と画像とを合成して表示する方法及びそのシステムに関し,特に,地図画像が格納された電子地図情報システムと利用者が所有する既存データベースとを利用して,既存データベースの文字情報と上記地図画像とを合成して表示し得るようにした文字情報と地図画像の合成方法及びデータベース機能向上支援システムに関する 」。
「 0006】【【発明が解決しようとする課題】ところで,最近では情報源が多様化し,所望の情報をネットワークを介して取り込んだり,CD-ROM等の光ディスクから得たりなど,様々な情報を色々な形で入手することができる。また,利用者特有の情報を利用者自身が作成して利用者データベースに格納しておくなど,独自のユーザデータベースを構築していることが多い。しかしながら,上述した従来の地図情報システム,FM,ナビゲーション・システムなどの情報検索システムにおいては,図形・画像に関連する属性情報や検索キーは予め設定されており,利用者が持っている情報を利用することができなかった。例えば,地図,設計図,各種の構造図などの図形・画像に対して利用者の各種デ, 。, ータベースの情報を関連づけて付加したい場合 付加する手段が存在しなかった また地図などの図形・画像に対し,該当の場所に関連する利用者の情報を合成して表示したり,利用者の設定情報をキーとして該当の場所を検索したりすることができなかった。
【0007】本発明は上述した事情から成されたものであり,本発明の目的は,地図画像の任意の位置に対して,利用者が所有する既存の各種データベースの情報を関連づけて付加することができる文字情報と地図画像の合成方法及びデータベース機能向上支援システムを提供することにある。さらに,本発明の他の目的は,付加した文字情報を検索キーとして図形・画像の当該位置を検索して所望の画像を表示できる文字情報と地図画像の合成方法及びデータベース機能向上支援システムを提供することにある 」。
「 0008】【【課題を解決するための手段】本発明は,地図画像が格納された電子地図情報システムと利用者が所有する既存データベースとを利用して,該既存データベースの文字情報と前記地図画像とを合成して表示する文字情報と地図画像の合成方法及びデータベース機能向上支援システムに関するものであり,……」「 0010】【【作用】本発明にあっては,対象となる画像上の任意の領域に対し,その場所に関連する任意の文字情報を付加させることができ,独自の情報システムを容易に構築することが可能になると共に,付加した文字情報を検索キーとして画像上での当該位置を求めることができるので,利用者の設定情報をキーとして該当の場所を検索する情報検索システムを容易に構築することが可能となる。また,地図データベースと既存データベースとを連結する管理テーブルの登録情報に基づいて合成処理するようにしているので,地図情報システムと利用者の各種データベースとを完全に分離させ,且つ簡易データベー, 。, スを持たずに 文字情報と地図画像との合成表示処理をすることが可能となる さらにテキスト形式で対応するようにしているので,他のアプリケーションシステムの全てのデータベース(利用者の各種データベース)との連携を図ることができる 」。
「 0013】利用者は,作画して指定した場所に対し,その場所を管理するための任意の文字 【情報を入力装置1から入力する。入力装置1を介してユーザデータベースDB等から入力された文字情報は,文字情報登録手段32によって情報記憶部4内の文字情報記憶部42に登録される。登録された図形情報と文字情報との対応は,情報記憶部4内の管理テーブル43に登録されて管理される。上記文字情報は,一つの場所に対して複数登録することができ,また,複数の場所に対して同一の文字情報を登録することができる 」。
「 0018】続いて,利用者は,該当の場所P1に関連する文字情報の登録指示を行なう。図 【7は,関連情報をキーボード等から直接入力する場合の登録画面の一例を示しており,登録したい関連情報(=検索キー情報:本発明では,当該文字情報が該当の場所P1の検索キーとなる)を,表示部2a内のテキストボックスWaの中に入力する 」。
「 0027】次に 「ファイル指定」による検索手順,すなわち,複数の文字情報(検索キー 【,情報)を指定して当該位置を順次検索する手順を具体例を示して説明する。例えば,図,() , 10(A)に示すような データ 文字情報群 が格納されたユーザデータベースD1があり同図において,それぞれ“KEYA”〜“KEYE”が,画像位置の関連情報となる文字情報であると仮定する。この場合は,先ず利用者は,データベースで管理しているデータの中から検索キーの部分KEYA,KEYB,……,KEYEだけを抽出し,例えば同図(B)に示すように,改行データを区分情報としてテキストファイルTX1に出力する 」。
「 0034】【【発明の効果】以上のように本発明によれば,画像の任意の位置及び領域について任意の文字情報を関連情報として登録することができると共に,その関連情報を指示することにより,関連情報に対応する画像上での位置を求めることができる。そのため,画像の任意の位置に対して,利用者の情報を登録して管理することが可能となり,利用者が持っている情報を有効利用できるようになる。例えば,顧客管理ソフトなど既存のデータベースの住所データや顧客データを利用して,市街地図の上に当該位置を示す情報として表示することができるようになる。さらに,登録した文字情報を検索キーとして画像上での位置を検索して当該画像を表示することができるので,利用者の設定情報をキーとして該当の場所を検索する情報検索システムを容易に構築することが可能となる。
また,地図情報システムと利用者の各種データベースとを完全に分離させ,且つ文字情報や数字情報のデータをつかさどる簡易データベースを持たずに文字情報と地図画像との合成表示処理をすることが可能となる。さらに,テキスト形式で対応するようにしているので,他のアプリケーションシステムの全てのデータベース(利用者の各種データベース)との連携を図ることができる 」。
「 図面の簡単な説明】 【【図10】本発明における文字情報の登録方法の第2の例を説明するための図である 」。
従来の地図情報システム,F(3)本件明細書の上記記載によれば,本件発明1は 「,M,ナビゲーション・システムなどの情報検索システムにおいては,図形・画像に関連する属性情報や検索キーは予め設定されており,利用者が持っている情報を利用することができことを従来技術の課題として認識し,これを解決するなかった (段落【0006 ) 」】「 電子地図情報システムに格納された)地図画像の任意の位置に対して,利用者が所ため,(有する既存の各種データベースの情報を関連づけて付加することができる文字情報と地図画を提供するものであると認められる。
像の合成方法 (段落【0007 ) 」】「地図データベースと既存データベースとを連結する管理テーブルの登録情報にそして,基づいて合成処理するようにしているので,地図情報システムと利用者の各種データベースとを完全に分離させ,且つ簡易データベースを持たずに,文字情報と地図画像との合成表示処理をすることが可能となる。さらに,テキスト形式で対応するようにしているので,他のアプリケーションシステムの全てのデータベース(利用者の各種データベース)との連携をとの記載によれば,本件明細書にいう「既存デ図ることができる(段落【0010 ) 。」】ータベース」とは,他のアプリケーションシステムのデータベースを含むものではあるが,これに限られるものではなく,他のアプリケーションシステムのデータベースから抽出されて本件発明1の目的のために構成されるデータベースも 「既存データベース」に含まれるということができる。例えば, ,段落【0013 【0018】で開示される文字情報の登録方法は 「ユーザデータベ 】 ,ースDB (他のアプリケーションのデータベースを意味するものと推認され 」る )上の複数の情報を取り込むものであるが,その登録方法として個々の情 。
報をキーボードから入力するものとしていることからすると 「ユーザデータ,ベースDB」上の情報のうち,本件発明1の方法の実行のために取り出され,「」 た複数の情報が一定の秩序のもとに整理・配列され 新たな データベースを構成するということができる。そして,このようにして構成されたデータベースが,後日の検索において利用されることからすれば,これを「既存データベース」と称しても差し支えないものである。
一方,刊行物1発明においても,記憶回路4に記憶された施設のメモ情報のリストは,利用者が保有する情報(コンピュータ上のデータベースとして構成されているものに限らない )から抽出して一定の秩序のもとに配列した 。
ものであるから,利用者が所有するデータベースとみることができる。したがって,刊行物1の記憶回路4に記憶された施設のメモ情報のリストは,本件発明1の既存データベースに相当する機能も有するものと認められる。
本件決定の上記判断は,これと同旨をいうものと解することができ,原告の主張する誤りはない。
(4)また,仮に,原告が主張するように「既存データベース」という用語が,他のアプリケーションシステム上で作成・保存されたデータベースを意味していると解釈したとしても,以下のとおり,本件決定の結論に影響を及ぼすことはない。
ア本件発明1における文字情報の登録は,本件明細書の上記段落【0018】の記載によれば,入力装置(キーボード等)を用いた手作業により個々の情報を入力するというものも含んでいる。この場合,本件発明1は,他のアプリケーションシステム上で作成・保存されている文字情報を利用する場合であっても,実際の文字情報の登録は手作業で行うのであるから,文字情報が他のアプリケーションシステム上のデータベースで作成・保存されていることに対応する技術的手段を有していない。他のアプリケーションで作成・保存されたデータベース上の文字情報を一覧表として紙上に印字して,その紙を見ながら文字情報を入力することも,本件明細書に開示された登録の方法に含まれるからである。
そうすると,本件発明1において 「既存データベース」が他のアプリケ ,ーションシステム上で作成・保存されたデータベースを意味していると限定的に解釈したとしても,本件決定が認定した相違点は実質的な相違であるとはいえない。したがって,本件決定の認定した相違点に係る本件発明1の構成は,当業者が容易に想到し得たものということができる。
イ なお 本件発明1の特許請求の範囲の記載においては ステップ(b)は 既 , ,「存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し」というものであって,本件明細書の上記【0018】に記載された,キーボード等を用いた手作業による入力は含まれていない。しかし,本件原出願日(平成7年1月13日)時点で,情報処理の分野において,データベースから一部の文字情報をテキスト形式のファイルで抽出し,他のファイルに一括して貼り付ける技術が周知慣用のものなっていたことは,「利用者は,データベースで管理しているデータの中から検本件明細書(甲3-3)の索キーの部分KEYA,KEYB,……,KEYEだけを抽出し,例えば同図(B)に示すように,改行データを区分情報としてテキストファイルTX1に出力する(段落【0027「利用 。」】),者は 「ファイル指定」の検索コマンドを指示し,テキストファイルTX1のファイル名を ,入力(或いは既に登録されているファイル名を一覧表の中から選択)して検索指示を行なう。ファイル名が入力されると,画像位置検索手段33では,テキストファイルTX1から文字情報群を読み込み,区分情報で区分された各データを各検索キーと見なし,同図(C)にとの記載において,デ示すように,文字情報記憶部42に展開する(段落【0028 ) 。」】ータベース上のデータの一部をテキストファイルに出力して利用することが,その具体的方法につき特段の説明なくして開示されていることから明らかである。そうすると,個々の情報をキーボード等から入力することに代えて,必要な情報を抽出したテキスト形式のファイルを一括して貼り付けるという構成も,設計事項の域を出ないといわざるを得ない。
したがって,本件明細書の「発明の詳細な説明」の記載のように手作業で個々の文字情報を入力する場合はもとより,特許請求の範囲の記載のようにテキスト形式のファイルで一括して入力する場合においても,本件発明1と刊行物1発明との間に実質的な相違はなく,本件決定の認定した相違点に係る本件発明1の構成は,当業者が容易に想到し得たものということができる。
5 取消事由4(本件発明2についての判断の誤り)について(1)原告は,刊行物2に,複数のデータ識別名を一つの図形領域に対応付けて登録すること,及びその逆に一つのデータ識別名を複数の図形領域に対応付けて登録することが,開示されているとはいえない,と主張する。
そこで,刊行物2(甲2)の内容を検討すると,刊行物2には,次の記載がある。
「 。 , 作成するデータ対応表の構成を図5および図6に示す 図5の1のヘッダー情報部にはデータ対応表名,図形名称,および作成日等の付属情報が格納される。このヘッダー情報部は,一つのデータ対応表の先頭に一つ作成される。2のデータ識別名情報部には,データ識別名についての情報が格納され,図形領域と対応付けたデータ識別名の数だけ作成される。複数のデータ識別名を一つの図形領域と対応付けたときには,データ識別。 名情報部に登録された全データ識別名の何番目と何番目が対応付けられたかを検索する3の図形領域情報部には,図形領域に関する情報が格納され,データ識別名に対応付けた図形領域の数だけ作成される。あるデータ識別名に複数の図形領域を対応付けたときには図形領域情報部に登録された全領域識別名の何番目と何番目が対応付いているかを検索する(段落【0022】〜段落【0025 ) 。」 】「以上,各支店の売上データを近畿地方図(都道府県分割)に表示する場合の実施例を示した。この実施例では,データと図形領域が1:1で対応付いているが,例えば,大阪府に梅田支店と大阪支店の2店がある場合でも対応付けることができる(複数:1の対応 。この場合,売上データは大阪府の位置に2店の売上の合計が表示される(段落 ) 。」【0035】〜段落【0036 )】「(5)データと図形領域を1:1で対応させるばかりでなく,一つのデータと図形上の複数領域とを対応付けることにより,領域のグルーピングが可能となる。また,図形上の一領域に複数のデータを対応付けることにより,一領域上に複数データの合計値を表示させることができる(段落【0043 ) 。」】・図5には,データ対応表の構成図として,データ識別名情報部に複数のデータ識別名が,図形領域情報部に複数の図形領域が登録されていることが図示され,図6には,データ対応表の各情報部のレイアウトとして,データ識別名情報部の一つのデータ識別名に対応して 「複数対応の時のデータ識別名の数「複数対応の時,次のデータ識別名が , 」,情報部内の何番目か ・・・ 対応している図形領域の数「対応している領域識別名が 」「 」,情報部内の何番目か」の各項目が,また,図形領域情報部の一つの領域識別名に対応して 「複数対応の時の領域識別名の数「複数対応の時,次の領域識別名が情報部内の何 , 」,番目か ・・・ 対応しているデータ識別名の数「対応しているデータ識別名が情報部 」「 」,内の何番目か」の各項目が登録されていることが図示されている。
刊行物2の上記各記載によれば,刊行物2には,データ識別名と図形領域を一対一で対応付けるばかりでなく,一つのデータ識別名と図形上の複数領域とを対応付けること,及び,その逆の態様である,図形上の一領域に複数のデータ識別名を対応付けるという技術的事項が開示されている。そして,本件発明1と刊行物2はともに,文字情報と地図情報を対応付けて登録し,表示するという同一の技術分野に属するものであるから,刊行物2に開示された技術的事項を本件発明1に適用し,本件発明2に想到することは,当業者であれば容易であったと認められる。
したがって,これと同旨の本件決定の判断に,誤りはない。
(2)原告は,刊行物2では 「データ識別情報部」や「図形領域情報部」は,デ ,ータ表示システム内の「図形情報処理部」に格納されており,利用者が所有している「既存データベース」と連携して登録することを目的としたものではない,と主張する。
しかし,本件決定において,刊行物2は,本件発明2の進歩性を検討するに当たり,本件発明2に固有の相違点(文字情報と図形情報との対応付けにおいて,一対一以外の(複数対一又は一対複数の)対応付けを行うこと)が公知であることを示すために引用されたものである。文字情報が「既存データベース」から抽出されるものであるか否かは,本件発明1と刊行物1発明との相違点として検討済みなのであるから,刊行物2におけるデータ識別名(本件発明1の「文字情報」に対応)が,既存データベースから抽出されるものかどうかは,本件発明2固有の相違点が想到容易であるか否かの検討には関係しない。
原告の上記主張は,本件決定の趣旨を正しく理解しないものであり,採用することができない。
6 取消事由5(本件発明3についての判断の誤り)について原告は,刊行物1には,メモ情報と関連付けて記号を付加できることが示されているが,単なる記号と本件発明3にいう「イメージ情報」とは表示の方法及び効果の両面において相違するから,対象物のイメージ情報を付加できるという本件発明3の構成は,当業者にとって容易に想到できるとはいえないと主張する。
なしかしイメージ情報 の意義に関する本件明細書 甲3-3 中の記載は ,「」 (),「, , , お 上述した実施例においては 文字情報を関連情報として付加する場合を例として挙げたが任意のマーク等のイメージ情報,或いは色情報などを関連情報として指定することも可能であとの記載のみであり,ここでイメージ情報の具体例としる。…… (段落【0033 ) 」】て挙げられているのは「マーク」すなわち「記号」である。そして,刊行物1には,施設に対してメモ情報のほかに記号を関連付けることが開示されている「前記文字情報と共に利用者のイメ-ジ情報を当該対象物ののであるから,本件発明3のという構成は,刊行物1にも明示されているということ関連情報として付加できる」ができる。したがって,記号等のイメージ情報を付加することに当業者が格別の推考力を要したとは認められず,本件発明3は,刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者であれば容易に想到し得るとした本件決定の判断に誤りはない。
7 取消事由6(本件発明4についての判断の誤り)について本件発明4は,本件発明1〜3の「電子地図情報システム」が,受信した移動体の位置情報に基づき当該移動体の位置を地図の画像上に表示するシステムであることを特定するものである。
「本発明は,地図情報表示装置に関し,例えばナビゲーション装刊行物1(甲1)には,と記載されており,ナビゲーション装置に用いて好適なものである(段落【0001 ) 。」】置が「受信した移動体の位置情報に基づき当該移動体の位置を地図の画像上に表示するシステム」に相当することは自明であるから,本件決定が,上記特定事項は刊行物1が備えている事項であり,本件発明4に進歩性は認められないと判断したことに,誤りはない。
8 取消事由7(本件発明5についての判断の誤り)について本件発明5は,本件発明1〜4の「電子地図情報システム」が,地図以外の設計図・構造図である場合も含むとするものである。
原告は,本件発明1〜4の構成を設計図・構造図に適用することは当業者にとって想到容易ではないと主張するが,本件明細書(甲3-3)には,設計図や構造図に特有の課題や構成は記載されていないから,地図についての本件発明1。 〜4の構成を設計図・構造図に応用することは何ら創意を要するものではないしたがって,本件発明5に進歩性は認められないとした本件決定の判断に,誤りはない。
9 取消事由8(本件発明6についての判断の誤り)について本件発明1〜5が既存データベースから抽出した文字情報と電子地図情報システム上の地図画像との「合成方法」につき特許請求したものであるのに対して,本件発明6は,当該合成方法を実現するシステムを既存データベースの側から見て 「データベース機能向上支援システム」として特許請求したものであ ,る。
このように,本件発明6は,方法の発明である本件発明1〜5を物の発明として特許請求したものであるから,上記2〜8のとおり本件発明1〜5に進歩性がないとの本件決定の判断に誤りがない以上,本件発明6についてもその判断に誤りがないことは当然である。
10 結語以上の次第で,原告が取消事由として主張するところは,いずれも理由がない。よって,原告の本件請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 岡本岳
裁判官 上田卓哉