る権利の譲渡に伴って譲渡人が譲受人に対しその対価を請求できるかどうか,その対価の額はいくらであるかなどの特許を受ける権利の譲渡の対価に関する問題は,譲渡の当事者がどのような債権債務を有するのかという問題にほかならず,譲渡当事者間における譲渡の原因関係である契約その他の債権的法律行為の効力の問題であると解されるから,その準拠法は,法例7条1項の規定により,第1次的には当事者の意思に従って定められると解するのが相当 | 該当部分へ |
なお,譲渡の対象となる特許を受ける権利が諸外国においてどのように取り扱われ,どのような効力を有するのかという問題については,譲渡当事者間における譲渡の原因関係の問題と区別して考えるべきであり,その準拠法は,特許権についての属地主義の原則に照らし,当該特許を受ける権利に基づいて特許権が登録される国の法律であると解するのが相当 |
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ことが困難であることにかんがみ,その処分時において,当該権利を取得した使用者等が当該発明の実施を独占することによって得られると客観的に見込まれる利益のうち,同条4項所定の基準に従って定められる一定範囲の金額について,これを当該発明をした従業者等において確保できるようにして当該発明をした従業者等を保護し,もって発明を奨励し,産業の発展に寄与するという特許法の目的を実現することを趣旨とするものであると解するのが相当 | 該当部分へ |
したがって,従業者等が特許法35条1項所定の職務発明に係る外国の特許を受ける権利を使用者等に譲渡した場合において,当該外国の特許を受ける権利の譲渡に伴う対価請求については,同条3項及び4項の規定が類推適用されると解するのが相当 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成13受1256補償金請求事件 | 判例 | 特許 |
平成10オ364債務不存在確認請求事件 | 判例 | 特許 |
平成9オ1918特許出願人名義変更届手続請求事件 | 判例 | 特許 |
平成12受580損害賠償等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18受826特許権侵害差止請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 特許を受ける権利 / 承継 / 職務発明 / 業務範囲 / 相当の対価(相当な対価) / 外国の特許 / 準拠法 / 黙示の合意 / 創作性(創作) / 同一の発明 / パリ条約 / 実施 / 属地主義 / 実施料 / 実施権 / 設定登録 / 対価 / |
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元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
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事件 |
平成
16年
(受)
781号
補償金請求事件
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裁判所のデータが存在しません。 | |
裁判所 | 最高裁判所第三小法廷 |
判決言渡日 | 2006/10/17 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1事案の概要1 本件は,被上告人が,職務発明について,我が国の特許を受ける権利と共に外国の特許を受ける権利を上告人に譲渡したことにつき,上告人に対し,特許法35条(平成16年法律第79号による改正前のもの。以下同じ。)3項所定の相当の対価の支払を求める事案である。 2 原審が適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。 (1) 上告人は,電気関連製品の開発,製造,販売等を行う総合電器メーカーである。被上告人は,昭和44年11月から平成8年11月までの間,上告人に雇用され,上告人の中央研究所の主管研究員等として勤務していた。 (2) 被上告人は,上告人の従業員であった当時,他の従業員と共同して,第1審判決別紙特許目録記載1〜3の各特許に係る発明をした(以下,これらの発明をそれぞれ同目録の番号に従い「本件発明1」,「本件発明2」,「本件発明3」といい,「本件各発明」と総称する。)。本件各発明は,いずれも,レーザー光を利用して情報を記憶媒体(光ディスク)に記録再生する装置や方法に関するもので,その性質上,上告人の業務範囲に属し,かつ,発明をするに至った行為が上告人における被上告人の職務に属するものであって,特許法35条1項所定の職務発明に当たる。 (3) 被上告人は,本件発明1につき昭和52年9月13日,同2につき昭和48年1月20日,同3につき昭和49年12月26日,上告人との間で,それぞれ特許を受ける権利(外国の特許を受ける権利を含む。)を上告人に譲渡する旨の契約を締結した(以下,これらの契約を「本件譲渡契約」と総称する。)。 (4) 上告人は,本件各発明について,我が国において特許出願をし,その設定登録を受けて,特許権を取得するとともに,本件発明1につきアメリカ合衆国,カナダ,イギリス,フランス及びオランダの各国において,本件発明2及び3につきアメリカ合衆国,ドイツ,イギリス,フランス及びオランダの各国において,それぞれ特許権を取得した。 (5) 上告人は,本件譲渡契約を締結した当時,発明をした従業員に対し,特許出願時及び設定登録時において一定額の賞金を授与するとともに,実施効果の顕著なものについてその功績の区分に応じた賞金を授与するという内容の「発明,考案等に関する表彰規程」を定めていたが,さらに,平成3年6月までに,発明をした従業員に対し,我が国及び外国における特許出願時,我が国及び外国における特許権設定登録時,社内における実績成績が顕著であって業績に貢献したと認められたとき,第三者に実施権を許諾し実施料収入を得たときなどに所定の基準に従って算定された補償金を支払うという内容の「発明考案等取扱規則」,「発明考案等に関する補償規程」及び「発明考案等に関する補償基準」を定めた(以下,上告人において定められたこれらの表彰規程等を「本件規定」と総称する。)。 (6) 上告人は,我が国及び外国において特許出願をし又は設定登録を得た本件各発明について,複数の企業との間で本件各発明の実施を許諾する契約を締結し,その実施料を収受するなどして利益を得た。 (7) 上告人は,被上告人に対し,本件各発明に係る特許を受ける権利の譲渡の対価として,本件規定に基づき,本件発明1につき合計231万8000円,本件発明2につき合計5万1400円,本件発明3につき合計1万0700円の賞金又は補償金を支払った。 3 原審は,次のとおり判断して,被上告人が本件各発明の特許を受ける権利の譲渡に伴い上告人に対して請求し得る相当の対価の額(本件規定に基づいて支払を受けた分を差し引いた額)を,本件発明1につき1億6284万6300円,本件発明2につき13万1750円,本件発明3につき2万5666円であると認定し,合計1億6300万3716円の支払を求める限度で被上告人の請求を認容した。 (1) 本件譲渡契約に基づく特許を受ける権利の譲渡の対価に関する問題については,その対象となる権利が我が国及び外国の特許を受ける権利である点において渉外的要素を含むため,その準拠法を決定する必要があるところ,本件譲渡契約は,日本法人である上告人と,我が国に在住して上告人の従業員として勤務していた日本人である被上告人とが,被上告人がした職務発明について我が国で締結したものであり,上告人と被上告人との間には,本件譲渡契約の成立及び効力の準拠法を我が国の法律とする旨の黙示の合意が存在すると認められるから,法例7条1項の規定により,その準拠法は,外国の特許を受ける権利の譲渡の対価に関する問題を含めて,我が国の法律である。 (2) 特許法35条3項にいう「特許を受ける権利」には,我が国の特許を受ける権利のみならず,外国の特許を受ける権利が含まれるから,被上告人は,上告人に対し,外国の特許を受ける権利の譲渡についても,同条3項に基づく同条4項所定の基準に従って定められる相当の対価の支払を請求することができる。 第2上告代理人末吉亙ほかの上告受理申立て理由第3について1 外国の特許を受ける権利の譲渡に伴って譲渡人が譲受人に対しその対価を請求できるかどうか,その対価の額はいくらであるかなどの特許を受ける権利の譲渡の対価に関する問題は,譲渡の当事者がどのような債権債務を有するのかという問題にほかならず,譲渡当事者間における譲渡の原因関係である契約その他の債権的法律行為の効力の問題であると解されるから,その準拠法は,法例7条1項の規定により,第1次的には当事者の意思に従って定められると解するのが相当である。 なお,譲渡の対象となる特許を受ける権利が諸外国においてどのように取り扱われ,どのような効力を有するのかという問題については,譲渡当事者間における譲渡の原因関係の問題と区別して考えるべきであり,その準拠法は,特許権についての属地主義の原則に照らし,当該特許を受ける権利に基づいて特許権が登録される国の法律であると解するのが相当である。 2 本件において,上告人と被上告人との間には,本件譲渡契約の成立及び効力につきその準拠法を我が国の法律とする旨の黙示の合意が存在するというのであるから,被上告人が上告人に対して外国の特許を受ける権利を含めてその譲渡の対価を請求できるかどうかなど,本件譲渡契約に基づく特許を受ける権利の譲渡の対価に関する問題については,我が国の法律が準拠法となるというべきである。 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。 第3上告代理人末吉亙ほかの上告受理申立て理由第4について1 我が国の特許法が外国の特許又は特許を受ける権利について直接規律するものではないことは明らかであり(1900年12月14日にブラッセルで,1911年6月2日にワシントンで,1925年11月6日にヘーグで,1934年6月2日にロンドンで,1958年10月31日にリスボンで及び1967年7月14日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する1883年3月20日のパリ条約4条の2参照),特許法35条1項及び2項にいう「特許を受ける権利」が我が国の特許を受ける権利を指すものと解さざるを得ないことなどに照らし,同条3項にいう「特許を受ける権利」についてのみ外国の特許を受ける権利が含まれると解することは,文理上困難であって,外国の特許を受ける権利の譲渡に伴う対価の請求について同項及び同条4項の規定を直接適用することはできないといわざるを得ない。 しかしながら,同条3項及び4項の規定は,職務発明の独占的な実施に係る権利が処分される場合において,職務発明が雇用関係や使用関係に基づいてされたものであるために,当該発明をした従業者等と使用者等とが対等の立場で取引をすることが困難であることにかんがみ,その処分時において,当該権利を取得した使用者等が当該発明の実施を独占することによって得られると客観的に見込まれる利益のうち,同条4項所定の基準に従って定められる一定範囲の金額について,これを当該発明をした従業者等において確保できるようにして当該発明をした従業者等を保護し,もって発明を奨励し,産業の発展に寄与するという特許法の目的を実現することを趣旨とするものであると解するのが相当であるところ,当該発明をした従業者等から使用者等への特許を受ける権利の承継について両当事者が対等の立場で取引をすることが困難であるという点は,その対象が我が国の特許を受ける権利である場合と外国の特許を受ける権利である場合とで何ら異なるものではない。そして,特許を受ける権利は,各国ごとに別個の権利として観念し得るものであるが,その基となる発明は,共通する一つの技術的創作活動の成果であり,さらに,職務発明とされる発明については,その基となる雇用関係等も同一であって,これに係る各国の特許を受ける権利は,社会的事実としては,実質的に1個と評価される同一の発明から生じるものであるということができる。また,当該発明をした従業者等から使用者等への特許を受ける権利の承継については,実際上,その承継の時点において,どの国に特許出願をするのか,あるいは,そもそも特許出願をすることなく,いわゆるノウハウとして秘匿するのか,特許出願をした場合に特許が付与されるかどうかなどの点がいまだ確定していないことが多く,我が国の特許を受ける権利と共に外国の特許を受ける権利が包括的に承継されるということも少なくない。ここでいう外国の特許を受ける権利には,我が国の特許を受ける権利と必ずしも同一の概念とはいえないものもあり得るが,このようなものも含めて,当該発明については,使用者等にその権利があることを認めることによって当該発明をした従業者等と使用者等との間の当該発明に関する法律関係を一元的に処理しようというのが,当事者の通常の意思であると解される。そうすると,同条3項及び4項の規定については,その趣旨を外国の特許を受ける権利にも及ぼすべき状況が存在するというべきである。 したがって,従業者等が特許法35条1項所定の職務発明に係る外国の特許を受ける権利を使用者等に譲渡した場合において,当該外国の特許を受ける権利の譲渡に伴う対価請求については,同条3項及び4項の規定が類推適用されると解するのが相当である。 2 本件において,被上告人は,上告人との間の雇用関係に基づいて特許法35条1項所定の職務発明に該当する本件各発明をし,それによって生じたアメリカ合衆国,イギリス,フランス,オランダ等の各外国の特許を受ける権利を,我が国の特許を受ける権利と共に上告人に譲渡したというのである。したがって,上記各外国の特許を受ける権利の譲渡に伴う対価請求については,同条3項及び4項の規定が類推適用され,被上告人は,上告人に対し,上記各外国の特許を受ける権利の譲渡についても,同条3項に基づく同条4項所定の基準に従って定められる相当の対価の支払を請求することができるというべきである。 所論の点に関する原審の判断は,結論において正当であり,論旨は採用することができない。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 那須弘平 |
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裁判官 | 上田豊三 |
裁判官 | 藤田宙靖 |
裁判官 | 堀籠幸男 |