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事件 平成 16年 (ワ) 25774号 特許を受ける権利確認請求事件
平成 17年 (ワ) 1835号 特許を受ける権利確認請求事件
川崎市多摩区(以下略)
本訴原告(反訴被告) A(公開特許公報上の住所及び氏名東京都葛飾区(以下略) A)
同訴訟代理人弁護士 中吉章一郎静岡市葵区(以下略)
本訴被告(反訴原告) B
同訴訟代理人弁護士 富田和雄
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2006/10/10
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本訴原告(反訴被告)が別紙特許出願目録記載1ないし3及び5の各発明に係る特許を受ける権利を有することをそれぞれ確認する。
2 本訴原告(反訴被告)のその余の本訴請求を棄却する。
3 本訴被告(反訴原告)の反訴請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は本訴反訴を通じてこれを10分し,その1を本訴原告(反訴被告)の負担とし,その余を本訴被告(反訴原告)の負担とする。
事実及び理由
請求
1本訴本訴原告(反訴被告。以下「原告」という。)が,別紙特許出願目録記載1ないし5の各発明に係る特許を受ける権利を有することを確認する。
2 反訴事件2反訴原告(本訴被告。以下「被告」という。)が,別紙特許出願目録記載1ないし5の各発明に係る特許を受ける権利を有することを確認する。
事案の概要
1 当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実(1) 原告の発明原告は,別紙特許出願目録記載1ないし5の特許出願に係る発明(以下,同目録の番号に従って,各発明を「本件発明1」などといい,これらを総称して「本件各発明」という。)の発明者であり,かつ出願当初の出願人である。
(2) 出願手続原告は,別紙特許出願目録の出願年月日欄記載のとおり,本件各発明につき,それぞれ,特許庁に対し特許出願手続を行った。
(3) 契約書の存在本件各発明に係る特許を受ける権利の帰属に関しては,次の4通の文書(以下,併せて「本件契約書等」という。)が存在する。
ア 特許権専用実施権設定契約証書(以下「第1契約書」という。乙1)原告が被告に対し,本件発明1ないし3等につき,専用実施権を設定する旨記載された平成15年8月27日付けの文書。原告の署名押印がある。
イ 特許権専用実施権設定契約(以下「第2契約書」という。甲17の2)原告が被告に対し,本件発明1ないし5等につき,専用実施権を設定する旨記載された平成15年8月27日付けの文書。原告の記名押印があり,その中に概ね次のとおりの内容の条項が含まれる。
(ア) 10条(解除通知)被告がこの契約に規定する義務を履行しなかったときは,原告は90日間の予告期間を付した事前の通知をもって,契約を解除することができる。
3(イ) 11条1項(停止条件付き特許権の譲渡)原告は,被告に対し,1条の各発明について特許登録がされ,かつ専用実施権設定登録がされるまで,この契約の履行を担保するため,同各発明の特許権を譲渡する。
被告は,出願人名義変更届及び出願審査請求等の手続を行い,特許登録及び専用実施権設定登録が完了した後,原告に対し,速やかに特許権を返還する。
ウ 譲渡証書(以下「第1譲渡証書」という。甲10)原告が被告に対し,本件発明1ないし3に係る特許を受ける権利を被告に譲渡したことに相違ない旨記載された平成15年9月1日付けの文書。
原告の記名押印がある。
エ 譲渡証書(以下「第2譲渡証書」という。乙9)原告が被告に対し,本件発明4及び5に係る特許を受ける権利を被告に譲渡したことに相違ない旨記載された平成15年9月8日付けの文書。原告の記名押印がある。
(4) 出願人名義変更届別紙特許出願目録記載1ないし3の各出願に関しては,平成15年9月1日付で,また同目録記載4及び5の各出願に関しては,同月11日付で,それぞれ出願人を原告から被告に改める旨の出願名義人変更届がされた。
(5) 審査請求被告は,平成16年4月16日に本件発明1につき,同年11月22日に本件発明5につき,同年12月9日に本件発明2及び3につき,それぞれ審査請求をしたが,本件発明4については特許法48条の3に規定された所定の期間内に出願審査の請求がなされなかった。
その結果,本件発明4に係る特許出願は,以後,取り下げられたものとみなされることとなった(甲4,5の1及び2,甲6,26ないし30)。
4(6) 解除の意思表示原告は,平成17年5月9日(本件第3回弁論準備手続期日),被告に対し,被告が上記審査請求を懈怠した事実及び原告に損害が発生した事実を通告したが,これは第2契約書10条にいう「事前の通知」に相当し,その後90日間が経過した(争いがない。)。
そこで,原告は被告に対し,平成18年6月5日(本件第13回弁論準備手続期日),第2契約書10条に基づき,第1及び第2契約書並びに第1及び第2譲渡証書に係る契約全部を解除するとの意思表示をした(当裁判所に顕著な事実)。
2 事案の概要本訴は,本件各発明の発明者である原告が,現在の出願名義人である被告に対し,原告が本件各発明に係る特許を受ける権利を有することの確認を請求する事案であり,反訴は,被告が原告に対し,同一の特許を受ける権利を被告が有することの確認を請求する事案である。
被告は,本件契約書等に基づいて本件各発明に係る特許を受ける権利を譲り受けた旨主張するのに対し,原告は,本件契約書等の成立を争い,又は真意に基づかないものであることを被告が知っていた(心裡留保)若しくは解除されたなどと主張する。
3 本件の争点(1) 原告から被告に対し特許を受ける権利を譲渡する等の合意がされたか否かア 本件契約書等に顕出された印影が原告の印章によるものか否かイ 各印影が原告の意思に基づいて顕出されたか否か(2) 心裡留保の成否(3) 解除事由の有無
争点に関する当事者の主張
51 争点(1)ア(本件契約書等に顕出された印影が原告の印章によるものか否か)について〔被告の主張〕本件契約書等に顕出されている原告名義の印影は,いずれも原告の印章によるものである。
乙第2号証(領収書。以下「対照文書」という。)の原告作成部分(署名及び捺印の部分)の真正については当事者間に争いがないところ,対照文書の原告名義の印影は本件契約書等の原告名義の印影と一致する。
〔原告の主張〕否認する。
本件契約書等に顕出されている原告名義の印影はいずれも原告の印章によるものではない。
原告名義の印影のうち,「道」の字の「首」部分の下部の左端と「生」の字の第3画(縦線部)の左端,「辻」の字の旧字体によるしんにょう「?」の第6画の左端と「浦」の字のさんずいの第2画の下部左端,「辻」の字の旧字体によるしんにょう「?」の第6画の右端と「浦」の字のさんずいの第2画の下部右端,「辻」の字の旧字体によるしんにょう「?」の第4画(縦線部)の左端と「浦」の字のさんずいの第2画の上部左端及び第3画の左端が,第1譲渡証書(甲10)の原告名義の印影ではそれぞれ同一直線上にあるのに対し,対照文書(乙2)の原告名義の印影では同一直線上にない点が異なるから,両者の印影は一致しない。第2譲渡契約書(乙9)の原告名義の印影と対照文書の原告名義の印影も,同様の理由から一致しないものである。
もっとも,第1譲渡証書と第2譲渡証書の原告名義の各印影は一致する。
なお,被告の提出する鑑定書(乙20,22,23,25)は,いずれも不明確で具体的でなく,信用できない。
対照文書は,圧電マイクロ株式会社(以下「圧電マイクロ」という。)が被6告から借り入れた資金から原告が未払給与を受領するために,金額欄及び日付欄が白地の領収証に署名及び押印して,同社の経理担当者であるC(以下「C」という。)に交付したものである。この白地の領収証に何者かが金額欄及び日付欄に補充して被告に交付した不正使用文書であるから,証拠としての適性がない。
2 争点(1)イ(各印影が原告の意思に基づいて顕出されたか否か)について〔被告の主張〕(1) 本件契約書等にされている原告名義の印影は,次のとおり原告の意思に基づいて顕出されたものである。
ア 被告は,平成15年6月ころから,原告との間で,圧電発電機の実現化のために被告において被告が資金調達をするとの話を進めていたが,その後,メディアネットコマース株式会社(以下「メディアネットコマース」という。)代表取締役のD(以下「D」という。)が,圧電発電機の開発,販売等に関する企画書である「圧電マイクロ株式会社プロモート提案書」(乙8)を提案し,原告はこの提案を了承した。
他方,原告は,被告に対し,原告が以前E(以下「E」という。)との間で締結した「圧電マイクロ発電機分野専用実施権供与契約証書」(乙3)を示し,これを契約書のたたき台として協議を重ねた。
イ 原告は,平成15年8月25日,静岡市内にある静岡県総合研修所「もくせい会館」1階のレストラン「アゼリア」において,第1契約書に自ら署名し,自己の印鑑を同席したCに手渡して押印させた。この際,被告は,原告に対し,実施料の一部(一時金)として300万円を支払った。なお,同金額は,原告が実証機を試作するまでの間に必要な資金の概算から割り出したもので,原告において至急必要としたものであった。
なお,被告が原告とともに別室に行った事実はない。
ウ 被告は,原告が圧電マイクロとの間の「圧電マイクロ発電機分野専用実7施権供与契約証書」を解除しないので,原告が提案した本件発明1等について専用実施権設定登録を受けることで,対抗要件を具備し,同時に当時Eが近日中に代表取締役に就任する予定となっていた,圧電マイクロとの間の将来の紛争を回避しようなどと考えていた。しかし,特許登録がされる前においては,専用実施権設定登録ができないことが後日判明したため,被告は原告から,特許を受ける権利の譲渡を受けることにした。
エ 原告は,同月31日,東京都千代田区内にある帝国ホテル1階ラウンジにおいて,自己名義の記名のある第2契約書及び第1譲渡証書につき,自己の印鑑を同席したCに手渡して押印させ,これらを被告に交付した。
オ 原告は,遅くとも同年9月6日ころ,自己名義の記名のある第2譲渡証書に自ら押印し,被告に対し,同日ころにこれを交付した。これにより,従前の合意により譲渡された特許を受ける権利(本件発明1ないし3に係る特許を受ける権利)に加えて,出願中の2件の特許を受ける権利(本件発明4及び5に係る特許を受ける権利)も被告に譲渡された。
カ なお,原告は,対照文書に自ら署名,押印した事実を認めている。
(2) 原告の主張についてア 原告は,圧電発電管理委員会を構想したときから,発明の実用化のために一貫して,実施権の設定と引換えに資金を得る考えを有していた。
また,圧電発電管理委員会に賛同した個人,企業はなく,被告と最終的に契約をすることになった。
イ 圧電マイクロと利害が対立するのは,被告ではなく,原告である。
ウ 本件契約においては,特許を受ける権利に質権を設定したのではなく,特許法33条2項に違反し,無効となることはない。
日進月歩の著しい近代工業社会においては,特許登録までの数年間を座して待っていたら,発明の内容が陳腐化してしまうおそれもあるので,実際の取引社会においては,出願中の特許発明について専用実施権を設定し8たり,設定の予約をすることが広く行われており,少なくとも当事者間では有効なはずである。そうすると,本件契約は特許法77条により無効とならない。
〔原告の主張〕否認する。
仮に,本件契約書等にされている原告名義の印影が原告の印章によるものだとしても,原告は本件契約書等に自ら押印したことも,Cに押印させたこともなく,これらの印影は原告の意思に基づかずに顕出されたものである。その理由は次のとおりである。
(1) 原告は,第2契約書は平成16年3月25日に公証人から写しを入手するまでその存在を知らず,第1譲渡証書も同年9月1日ころに特許庁から写しを入手するまでその存在を知らなかった。
また,第1契約書及び第2譲渡証書は本件訴訟で提出されるまで,その存在すら知らなかった。
このとおり,原告は本件契約書等を作成したことはなく,これらを作成する意思もこれらが作成された認識もなかった。原告は本件契約書等を所持したことも,被告からその原本ないし写しを受け取ったこともない。なお,本件契約書等は各2通を作成し,契約当事者双方においてそれぞれ所持すべき性質の文書であるが,いずれについても被告の手中に1通のみが存在するだけであるから,契約の成立要件を欠き,本件契約書等に係る各契約は不成立であって,特許を受ける権利の譲渡契約は効力を生じない。
(2) これらの各書類の作成に先立つ専用実施権設定,特許を受ける権利の譲渡の協議はなかった。
なお,平成15年6月ころ,圧電マイクロの設立準備事務所において,被告から圧電マイクロへの資金協力の申出があったが,原告はEと相談した上でこの申出を断った。圧電マイクロ又は原告が被告の提案を承認したことは9なかった。
また,原告は,Dと話合いをしたことはない。原告は,圧電マイクロの決定として,Cに指示し,「圧電マイクロ株式会社プロモート提案書」(乙8別紙)に係る提案を断った。なお,念書(乙8)は,原告が圧電マイクロの代表者としての資格で作成した体裁をとっており,圧電マイクロを「基本特許保持者」とする内容のものであって,原告個人とは関係のない文書である。
同念書にされた原告名義の署名及び押印は原告の意思に基づくものではない。
そして,「圧電マイクロ発電機分野専用実施権供与契約証書」(乙3)は原告がEに交付したものであるが,同人は原告とこれを破棄する約束をしていた。原告がこれを被告に交付したことも,これをたたき台にして専用実施権設定契約の協議をしたこともない。
(3) 原告は,平成15年8月25日,「アゼリア」で被告らと会った際,テーブルの上に書類が2枚あったが,同書類を見なかった。原告は,この書類を,圧電マイクロが300万円を借り入れる件についてのものと了解していた。被告やCからこの書類についての説明はなく,原告が印鑑を出すと,Cが私が押すのでと言って原告の印鑑を預かった。
その後,原告は,被告から,「大事な話がある。ここでは何だから。」と言われ,アゼリアを離れて2階の201号室に行ったが,被告から重要な話はなく,20分ないし30分間くらい世間話をしたのみであった。原告は被告とともに201号室を出て,廊下でCらと合流したところ,Cから原告の印鑑の返却を受けたが,押印された書類を見せてもらうことはなかった。
このとおり,原告は自己名義の印鑑で押印された現場に居合わせず,被告も同現場に居合わせなかった。
なお,原告がCに自己の印鑑を預けたのは,金銭借用の書類に押印を代行させるためであって,それ以外の文書に押印させるためではなかった。
(4) 原告は,Cから,静岡から出てくるので顔を出して欲しいと告げられて,10平成15年8月31日に帝国ホテルに出向いたが,自分の印鑑を持参しなかった。原告は,この際,帝国ホテルの1階のオープン・ラウンジで被告らと会い,世間話などをしたが,書類を見せられたことも,書類に押印したこともなかった。
なお,帝国ホテル1階のオープン・ラウンジは,重要な契約を締結するには不適切な場所である。
(5) 原告は,平成15年9月6日に帝国ホテルに行ったことはなく,同日ころに被告と接触していない。
(6) 本件契約書等のいずれについても,原告の住所につき「東京都葛飾区(以下略)」とするのが正しいところ,このうち「F」が「G」と誤って記載されている。原告がかような文書に押印するはずはない。
特許庁がこれらの書類を受理したことは,明白な誤りである。
(7) 平成15年6月16日,本件各発明の実用化等を目的に圧電マイクロが設立されたが,その後の同年8月25日当時,原告は同社の代表取締役であった。原告が自ら代表取締役を務める圧電マイクロと利害が対立する被告との専用実施権設定契約を締結するはずはない。
のみならず,原告は,本件各発明に係る特許権を一企業などに独占させるべきではないと考えて,圧電発電管理委員会による共同管理方式を提案してきたのであって,かかる専用実施権設定契約を締結するはずはない。
(8) 原告が本件各発明の実用化のために必要とする資金の協力と,これが将来特許化されて管理,実施することとは別の問題である。原告には,被告から資金の融通を受ける必要のある事情はなかった。
原告が構想した圧電発電管理委員会は,本件各発明が特許登録された後に発明の実施を共同管理するための委員会であって,特許登録後に原告が特許権者としていかなる実施権を設定し,これを管理するかに関わるものであって,被告が主張するような,出願中の発明の実用化のための資金の確保とは11別次元の問題である。原告には,被告のような個人に,原告の出願に係る特許を受ける権利を独占させる意思も,かかる特許を受ける権利を譲渡する意思もなかった。
(9) 本件契約書等に基づいて,出願中の特許を受ける権利に関して専用実施権を設定することは,登録された特許権について初めて専用実施権を設定することを規定する特許法77条に違反する。また,将来の専用実施権設定登録手続が完了するまでの間,同設定登録手続義務の履行を担保する目的で,特許を受ける権利の譲渡をすることも,同法33条2項に違反する。原告がかように特許法の規定に違反する専用実施権の設定及び特許を受ける権利の譲渡をするはずはない。
3 争点(2)(心裡留保の成否)について〔原告の主張〕本件契約書等に係る各契約については,原告に特許を受ける権利の譲渡,専用実施権設定を行う意思はなく,被告もかかる契約が原告の真意に基づかないことを知っていた。そうすると,かかる契約における原告の意思表示は心裡留保で無効である。
〔被告の主張〕否認する。
4 争点(3)(解除事由の有無)について〔原告の主張〕第2契約書の契約条項によれば,被告は,同契約書において,本件発明1ないし5を含む8件の発明を包括し,一体として,契約の対象物としたものである。
被告は,第2契約書11条1項ただし書に基づいて,原告に対し,本件各発明のいずれについても,同発明について特許登録がされるまでの間,出願人としてなし得る一切の行為,すなわち,手続補正及び意見書の提出などをすべき12義務を負っているものである。
さらに,被告は,本件各発明について特許登録を受けた場合には,専用実施権設定登録をした後に原告にすべての特許権を返還する義務を負っている。
しかるに,被告は上記義務に反して,本件発明4に係る特許出願につき,特許庁に対する審査請求を怠り,同特許出願は失効して,原告が将来同発明に係る特許権を取得することができなくなり,その後の被告の特許権を返還する義務も履行できなくなった。
そして,本件各発明は,もともとそれぞれが独立した発明であって,互いに優劣のないものであるが,前記のとおりこれらを一体として契約の対象物としたものであるところ,本件発明4は,本件各発明の中でも中核をなす重要な発明であり,被告の上記義務違反行為は,原告と被告との間の契約関係全体に係る信頼関係を根本から破壊する重大な違反行為であって,原告と被告との間の上記契約関係全部を解消する事由となり得るものである。また,その余の4件の発明についても,被告には技術知識がなく,意見書の提出等の特許出願手続に必要な行為を行うことが不可能で,将来特許出願を失効させるおそれがある。
出願人(発明者)たる原告のみがかかる必要な行為を行うことができるのであって,被告がこれらの発明につき,特許登録を受けた上,原告に対し特許権返還義務を履行することは不可能である。
原告は,前記第2の1(6)のとおり,被告に対し,第2契約書10条にいう事前の通知をしたが,被告は何ら対応をとらず,同条にいう90日間が経過した。
〔被告の主張〕(1) 本件各発明の中核をなしているのは,本件発明1及び2であり,他の発明はこれらの派生形である。そうすると,派生形の1つたる本件発明4に係る出願が失効したにすぎないから,かかる失効により本件契約書等に係る契約の全部が無意味になったわけではない。
13(2) 本件発明4の審査請求の期限を徒過したのは,むしろ原告が特許専用実施権設定契約公正証書(甲16)の6条に定める協力義務を履行しなかったことが原因である。なお,同公正証書8条の必要書類交付義務には,本件契約書等に関わる手続に必要な書類の交付義務の一切を含めて解することができるから,原告には被告に対する審査請求に必要な申請書類を交付すべき義務があるということができる。被告は,原告に対し,手続費用を負担する旨を申し出て,審査請求の申請書類の提出に協力を求めたが,原告は全く協力しなかった。
(3) 原告は,被告に対し,自ら審査請求手続をする旨明言しており,かつ出願名義人以外の第三者として審査請求ができたにもかかわらず,特許庁に対する審査請求をしなかった。
そうすると,原告は本件契約書等の全部を解除することはできない。
当裁判所の判断
1 本件発明4に係る特許を受ける権利の確認請求について事案にかんがみ,まず本件発明4に係る特許を受ける権利の確認請求について判断する。
前記第2の1(5)のとおり,本件発明4に関しては,特許法所定の期間内に特許出願についての審査請求がなされず,同発明に係る特許出願は取り下げられたものとみなされる(特許法48条の3第4項)。
そして,上記特許出願は平成15年5月23日に公開されていることが認められるから(甲24),以後は同一の発明について特許出願をしても,特許を受けることができないものである(同法29条1項参照)。
そうすると,従前本件発明4の特許を受ける権利が原告又は被告のいずれかに帰属するものであったとしても,上記特許出願の取下げ擬制の効果として,かかる特許を受ける権利は消滅したものというべきである。
したがって,本訴請求及び反訴請求のうち,同発明の特許を受ける権利の確14認請求の部分は,いずれも理由がなく,棄却を免れない。
そこで,以下は,本件発明1ないし3及び5の特許を受ける権利の帰属について判断する。
2 争点(1)(譲渡合意の成否)について(1) 第1契約書(乙1)の成立についてア 第1契約書(特許権専用実施権設定契約証書)は,末尾の契約当事者欄に,「(甲)特許権所有者」として原告の氏名「A」が署名され,かつ,「A」の押印があり,また「(乙)特許権専用実施権者」として被告の署名及び押印があるもので,末尾の契約締結日欄に「平成15年8月27日」と手書きで補充されている。その中に概ね次のとおりの内容の条項が含まれる。
(ア) 1条(特許権の表示)原告は,被告に対し,本件発明1ないし3,出願手続中の「圧電マイクロ発電機」,「圧電マイクロ発電機電気回路」及び「圧電マイクロ発電機用ソフトウェア」の各発明,これらの各発明に関連して将来出願する発明並びにノウハウにつき,専用実施権を設定する。
(イ) 2条(実施権とその範囲)1条にいう被告の専用実施権実施地域は世界全域,実施期間は各特許権の存続期間満了時まで,実施内容は実施品の製造及び販売とする。
(ウ) 3条(対価,実施料,再実施権等)被告は原告に対し,1条専用実施権の設定の対価として,契約締結の日から30日限り,一時金300万円を支払う。発明及びノウハウを実施した場合の実施料の額及びその支払方法並びに実施報告に関する事項は,実施品の製造又は販売が具体化した時点で,原告及び被告が協議して決定する。被告は,事前に原告に対して書面で通知することにより,第三者に対して,1条の各発明及びノウハウにつき,再実施許諾するこ15とができる。
(エ) 5条(改良発明,関連特許)原告が1条の各発明の改良又は拡張に係る新規の発明又は考案をした場合,原告は被告に対し,遅滞なくこれらの発明,考案及びノウハウにつき実施許諾する。(以下略)(オ) 8条(実施権の公示)原告は,被告に対し,登録義務者を原告,登録権利者を被告とする,特許法所定の専用実施権設定登録申請手続を被告において行うことに同意し,同登録申請手続に必要な書類を交付する。ただし,登録申請手続費用は被告の負担とする。
(カ) 9条(特許料等の負担)特許料等の特許出願手続等に要する費用は,契約締結の日の前日までに生じたものは原告の負担とし,契約締結の日以後に生じたものは被告の負担とする。
(キ) 10条(解除通知)被告がこの契約に規定する義務を履行しなかったときは,原告は90日間の予告期間を付した事前の通知をもって,契約を解除することができる。
(ク) 11条(特約条項)a 1項(実施権の信託及び公示)被告は,メディアネットコマースに対し,1条専用実施権を信託の目的で譲渡し,同社に1条の発明及びノウハウの実施を管理及び処分させることができる。(以下略)b 3項(支払金の不返還)理由の如何を問わず,この契約に基づいていったん支払がされた金員は返還を要しない。
16イ 第1契約書の原告作成部分の成立について対照文書(乙2)の原告作成部分(署名及び押印の部分)の真正については当事者間に争いがない。
H作成の印鑑鑑定書(乙22)及び印鑑鑑定書補充書(乙23)によれば,対照文書(乙2)の原告名義の印影と第1契約書(乙1)の原告名義の印影とを,両者を印刷したOHPフィルムを重ね合わせて比較することによって,輪郭線,宿肉状態,刻字画線,線切れ,汚れ癖跡などを261箇所点検すると,これらの箇所で両者が一致することが認められる。とりわけ,これらの証拠によれば,前者の印影と後者の印影とでは,@「生」の字の左側の円周線部分において,前者の印影では超細線となってその一部に線切れを生じている一方,後者の印影では超細線となっている点,A「浦」の字の右下側の円周線部分において,両者の印影で超細線となっている点,B「辻」の字の右上部分,「浦」の字の右下部分,「道」の字の上部分及び「生」の字の下部分において,宿肉状態(文字(刻字)や線に朱肉が多く付着し,この付着状況が印影の癖となっている状態)が一致する点,C左側よりも右側に偏って力をかけるために,両者の印影で右側の円周線部分が左側の円周線部分に比してより明瞭に表れている点(押印圧),D「辻」の字のしんにょうの下部分,「道」の字の「首」部分の右側部分,「生」の字の中央上部における,各刻字画線がそれぞれ一致することが認められる。
そうすると,両者の印影は一致すると認められ,第1契約書の原告名義の印影は,原告の印章によって顕出されたものと認められる。
そして,第1契約書の原告署名部分は,成立に争いのない対照文書(乙2)の原告署名部分と一致するものと認められるから,前者の原告署名部分は原告の署名によるものと認められる。
以上のとおり,第1契約書の原告作成部分のうち,原告署名部分は原告17の署名によるものであり,原告名義の印影は原告の印章によって顕出されたものである。
この点,原告は,原告が金額欄及び日付欄が白地である領収証に署名及び押印していたところ,何者かが金額欄及び日付欄に補充したものであって,この対照文書(乙2)は不正使用文書であるから,証拠としての適性がない旨を主張するが,仮にかかる原告の主張のとおりであったとしても,その証拠能力を否定すべきものとはいえないし,原告の署名及び押印の部分の成立に争いのない以上,その証明力を肯定することができ,他の文書中の原告作成部分の成立の真正の認定に用いるために当該文書の一部を対照資料として用いることに問題はない。
(2) 第2契約書(甲17の2)の成立についてア 第2契約書(特許権専用実施権設定契約)は,末尾の契約当事者欄に,「(甲)特許権所有者」として原告の氏名「A」が記名で記載され,かつ,「A」の押印があり,また「(乙)特許権専用実施権者」として被告の記名及び押印があるもので,末尾の契約締結日欄に「平成15年8月27日」と印刷されている。その中に概ね次のとおりの内容の条項が含まれる。
(ア) 1条(特許権の表示)原告は,被告に対し,本件発明1ないし5,出願手続中の「圧電マイクロ発電機」,「圧電マイクロ発電機電気回路」及び「圧電マイクロ発電機用ソフトウェア」の各発明,これらの各発明に関連して将来出願する発明並びにノウハウにつき,専用実施権を設定する。
(イ) 2条(実施権とその範囲)1条にいう被告の専用実施権実施地域は世界全域,実施期間は各特許権の存続期間満了時まで,実施内容は実施品の製造及び販売とする。
(ウ) 3条(対価,実施料,再実施権等)被告は原告に対し,1条専用実施権の設定の対価として,契約締結18の日から30日限り,一時金300万円を支払う。発明及びノウハウを実施した場合の実施料の額及びその支払方法並びに実施報告に関する事項は,実施品の製造又は販売が具体化した時点で,原告及び被告が協議して決定する。被告は,事前に原告に対して書面で通知することにより,第三者に対して,1条の各発明及びノウハウにつき,再実施許諾することができる。
(エ) 5条(改良発明,関連特許)原告が1条の各発明の改良又は拡張に係る新規の発明又は考案をした場合,原告は被告に対し,遅滞なくこれらの発明,考案及びノウハウにつき実施許諾する。(以下略)(オ) 8条(実施権の公示)原告は,被告に対し,登録義務者を原告,登録権利者を被告とする,特許法所定の専用実施権設定登録申請手続を被告において行うことに同意し,同登録申請手続に必要な書類を交付する。ただし,登録申請手続費用は被告の負担とする。
(カ) 9条(特許料等の負担)特許料等の特許出願手続等に要する費用は,契約締結の日の前日までに生じたものは原告の負担とし,契約締結の日以後に生じたものは被告の負担とする。
(キ) 10条(解除通知)被告がこの契約に規定する義務を履行しなかったときは,原告は90日間の予告期間を付した事前の通知をもって,契約を解除することができる。
(ク) 11条(特約条項)a 1項(停止条件付き特許権の譲渡)原告は,被告に対し,1条の各発明について特許登録がされ,かつ19専用実施権設定登録がされるまで,この契約の履行を担保するため,同各発明の特許権を譲渡する。
被告は,出願人名義変更届及び出願審査請求等の手続を行い,特許登録及び専用実施権設定登録が完了した後,原告に対し,速やかに特許権を返還する。
なお,この条項においては,特許権の譲渡とあるが,これは特許を受ける権利の譲渡と解され,また,特許権の返還とあるが,これは特許権を原告に移転する旨の登録手続をすることと解される。
b 2項(実施権の信託及び公示)被告は,メディアネットコマースに対し,1条専用実施権を信託の目的で譲渡し,同社に1条の発明及びノウハウの実施を管理及び処分させることができる。また,被告は,原告に通知の上,受託者を同社から他の者に変更することができる。
c 4項(支払金の不返還)理由の如何を問わず,この契約に基づいていったん支払がされた金員は返還を要しない。
イ 第2契約書の原告作成部分の成立の真正について以下のとおり,前記(1)と同様に,第2契約書(甲17の2)の原告名義の印影と対照文書(乙2)の原告名義の印影とは一致することが認められるから,第2契約書の原告名義の印影は原告の印章によって顕出されたものであることが認められる。
すなわち,乙第33号証によれば,第2契約書の原告名義の印影と対照文書(乙2)の原告名義の印影とをそれぞれOHPフィルムに印刷して重ね合わせると,両者が一致することが認められる。
ところで,前記(1)のとおり,第1契約書の原告名義の印影と対照文書(乙2)の原告名義の印影とは一致し,第1契約書の原告名義の印影は原20告の印章によって顕出されたものである。そして,第2契約書は,第1契約書に加筆・修正を行って作成された契約書である。
そうすると,第2契約書の原告名義の印影は原告の印章によって顕出されたものであると認められる。
(3) 第2譲渡証書(乙9)の成立についてア 第2譲渡証書は,原告が被告に宛てて作成した,本件発明4及び5に係る特許を受ける権利を被告に譲渡したことに相違ない旨記載された原告名義の譲渡証書である。この譲渡証書中には,原告の氏名が記名で記され,「A」の押印がされている。なお,表題の右下に,「平成15年9月8日」と作成日付が印刷されている。
イ 第2譲渡証書の原告作成部分の成立について前記(1)と同様に,乙第22号証及び乙第23号証によれば,対照文書(乙2)の原告名義の印影と第2譲渡証書(乙9)の原告名義の印影とを,両者を印刷したOHPフィルムを重ね合わせて比較することによって,輪郭線,宿肉状態,刻字画線,線切れ,汚れ癖跡などを257箇所点検すると,これらの箇所で両者が一致することが認められる。とりわけ,これらの証拠によれば,前者の印影と後者の印影とでは,@「浦」の字の右下側の円周線部分において,両者の印影で超細線となっている点,A「辻」の字の右上部分,「浦」の字の右下部分,「道」の字の上部分及び「生」の字の下部分において,宿肉状態が一致する点,B左側よりも右側に偏って力をかけるために,両者の印影で右側の円周線部分が左側の円周線部分に比してより明瞭に表れている点(押印圧),C「辻」の字のしんにょうの下部分,「道」の字の「首」部分の右側部分,「生」の字の中央上部における,各刻字画線がそれぞれ一致することが認められる。
そうすると,両者の印影は一致すると認められる。なお,「生」の字の左側の円周線部分において,対照文書(乙2)の印影では前者の印影では21超細線となってその一部に線切れを生じている一方,第2譲渡証書の印影では明瞭な線となっている点は,朱肉を多く付着させ,かつ圧力を強くして押印したことに基づくものと推認できるから,この結論を左右するものではない。
したがって,第2譲渡証書の原告名義の印影は原告の印章によるものであると認められる。
この点,原告は,「道」の字の「首」部分の下部の左端と「生」の字の第3画(縦線部)の左端,「辻」の字のしんにょうの第6画の左端と「浦」の字のさんずいの第2画の下部左端,「辻」の字のしんにょうの第6画の右端と「浦」の字のさんずいの第2画の下部右端,「辻」の字のしんにょうの第4画(縦線部)の左端と「浦」の字のさんずいの第2画の上部左端及び第3画の左端が,第2譲渡証書の印影ではそれぞれ同一直線上にあるのに対し,対照文書(乙2)の印影では同一直線上にない点が異なるから,両者の印影は一致しない旨を主張し,I作成の追加意見書(甲35)中にはかかる原告の主張に沿った部分がある。しかしながら,これらの部分がそれぞれ同一直線上にあるか否かは,差異が僅かな,相当微妙な問題であって,直線の引き方に主観が混入せざるを得ないから,甲第35号証中の該当部分は信用するに足りないといわざるを得ず,原告の上記主張を採用することはできないというべきである。
なお,対照文書(乙2)に証拠としての適性がない旨の原告の主張が失当であることは,前記(1)のとおりである。
(4) 第1譲渡証書(甲10)の成立についてア 第1譲渡証書は,原告が被告に宛てて,本件発明1ないし3に係る特許を受ける権利を被告に譲渡したことに相違ない旨記載された原告名義の譲渡証書である。この譲渡証書中には,原告の氏名が記名で記され,「A」の押印がされている。なお,表題の右下に,「平成15年9月1日」と作22成日付が手書きで記されている。
イ 第1譲渡証書の原告作成部分の成立の真正について前記第3の1〔原告の主張〕のとおり,原告自身が第1譲渡証書と第2譲渡証書の原告名義の各印影が一致することを自認しており,Iの追加意見書(甲35)でもその旨の記載がある。
前記(3)のとおり,第2譲渡証書と対照文書(乙2)の原告名義の各印影は一致し,第2譲渡証書の原告名義の印影は原告の印章によるものであるということができるから,第1譲渡証書と対照文書の原告名義の各印影も一致し,第1譲渡証書の原告名義の印影も原告の印章によるものであると認められる。
なお,原告は第1譲渡証書の原告名義の印影についても前記(3)と同様の主張をするが,前記(3)と同様に,同印影の各部分がそれぞれ同一直線上にあるか否かは,差異が僅かな,相当微妙な問題であって,直線の引き方に主観が混入せざるを得ないから,甲第35号証中の該当部分は信用するに足りないといわざるを得ず,原告の上記主張を採用することはできない。
なお,対照文書(乙2)に証拠としての適性がない旨の原告の主張が失当であることは,前記(1)のとおりである。
(5) 各印影が原告の意思に基づいて顕出されたか否かについてア 前記(1)ないし(4)のとおり,本件契約書等の原告名義の各印影はいずれも原告の印章によって顕出されたものであると認められるから,本件契約書等に,原告の意思に基づいて,原告名義の各印影が顕出されたものと事実上推定される。
イ 原告は,本件契約書等に顕出された原告名義の印影が原告の意思に基づいて顕出されたものではない旨主張する。
証拠によれば,次のとおりの事実が認められる。
23(ア) 原告は,長年圧電セラミックを応用した発電装置等の研究を行い,本件各発明をするに至った。
原告は,平成13年5月当時,圧電発電装置は,無公害で,燃料補給の必要がなく,経済性が高く,予想される需要が大きく,市場も巨大で,社会性が強いから,早期にこれを具体化して社会貢献しようと考え,圧電発電装置に係る発明の実施及び同発明に係る特許権の管理を複数の関係者等によって構成される共同管理委員会による管理方式を構想していた。この構想では,最初に圧電発電装置管理準備委員会を組織して,任意団体たる圧電発電装置管理委員会の立ち上げを準備し,その後に東京都関係者,政府関係者,原告,原告の知人,経済界関係者及び弁護士から成る圧電発電管理委員会を組織して,広く原告の発明の実施許諾等を行い,ライセンス料の30パーセントを同委員会の管理費に充当するもの等とされていた(甲33(1頁),乙6)。
(イ) 他方,原告は,平成15年初めころ,本件各発明に基づいて,薄膜の圧電セラミックの試作を行うこととしたが,試作のための資金が不足していたところ,Eから,同年4月ころ,資金協力の申出があった。
(甲33(1頁),弁論の全趣旨)協議の結果,Eが設立に必要な資金を拠出して,圧電マイクロを設立することになり,原告とEは,平成15年4月14日,本件各発明等についてEに専用実施権を設定し,Eが原告に対し対価として2000万円を支払うとともに,以後はEを経由して第三者に実施許諾することとし,また圧電マイクロの設立後はEの専用実施権を圧電マイクロに移転する旨の圧電マイクロ発電機分野専用実施権供与契約を締結した(乙3,弁論の全趣旨)。
そして,同年6月16日,Eは圧電マイクロを設立し,設立当初はJ(以下「J」という。)がその代表取締役に,原告が取締役になったほ24か,Eの知人であるCが同社の経理を担当することになった。なお,同年7月7日,Jは同社の代表取締役を退任し,原告が同社の代表取締役に就任した。また,同年10月10日,原告は同社の取締役を退任し,Eが同社の代表取締役に就任した。
Eの原告に対する資金協力の件は,その後,立ち消えになった(甲11,弁論の全趣旨)。
(ウ) 被告は,平成15年春ころ,Cを通じて原告を紹介され,その後,Cから融資の申込みを受けた(乙19)。
その後,被告が,熊本市内に本店が所在するメディアネットコマースの代表取締役である,知り合いのDに,原告に対する融資について相談したところ,Dは,株式会社九電工等を幹事企業として出資を募り,株式会社ウイルスに対する増資を行うこと,同社において原告の特許権の確定及び保護を図ると共に新たな資金の受入れを行うこと,メディアネットコマースはこの幹事企業から委託を受けて圧電発電機の部品を製造し傘下のメーカーに対して販売を行うこと,上記幹事企業となるべき企業にはプロトタイプの圧電発電機を試作してデモを行うこと,これらの作業を今後6か月間で完了させること等を提案した。
原告は,同年7月26日,被告にあてて,Dのこの提案を承諾する旨の念書を作成した(乙8)。
(エ) Cは,平成15年7月末ころ,圧電マイクロの資金繰り表を作成し,同時点の圧電マイクロの資金繰りを明らかにした。この資金繰り表によると,原告から借入金名目で218万円余の入金があったが,電話工事代金,設立登記作業料,未払給与,事務所家賃,Cの立替金に対する返済,湘南工科大学及び株式会社ナカケンへの素材開発の手付金支払等で合計542万円余が必要であり,結局差引き320万円強の追加資金が必要であった(乙7)。
25(オ) 原告とEは,平成15年7月31日,前記(イ)の圧電マイクロ発電機分野専用実施権供与契約を合意解除し(乙17),原告は,同日,圧電マイクロとの間で,圧電マイクロに対し,圧電発電機に関する原告の発明につき専用実施権を設定する旨の合意をした(乙18)。
(カ) 原告は,平成15年8月25日,Cと共に,静岡市内にある静岡県総合研修所「もくせい会館」に出向き,1階のレストラン「アゼリア」で被告と面会した。
原告は,圧電マイクロの代表者として被告から300万円を受け取り,領収証(乙2)に署名及び押印したが,このとき,同領収証の日付欄は補充されていなかった(乙2,19,40)。
原告は,この際,第1契約書に署名し,印鑑ケースごとCに渡して原告の面前でCに押印させた上,Cから直ちに自己の印鑑の返還を受けた(乙19,21,41,58)。
その後,第1契約書につき,K(以下「K」という。)がその日付欄に「平成15年8月27日」と補充し,同月28日,公証人Mの確定日付が経由された(乙1,弁論の全趣旨)。
なお,平成16年3月25日,公正証書(甲16)の作成の際,上記領収証の日付欄に「平成15年8月27日」とそれぞれ補充した(乙40,弁論の全趣旨)。
(キ) 被告は,平成15年8月末ころ,Kを代理人として,特許庁に対し,本件発明1ないし3に係る特許権について,専用実施権設定登録を申請したが,特許庁から,特許が付与されていないとの理由で受理されなかった(乙40,41)。
そこで,その後,第1契約書の11条に,本件発明1ないし3等に係る特許権の設定登録がされ,専用実施権設定登録が完了するまでの間,原告は被告に対し,被告に対する専用実施権設定登録手続の義務の履26行を担保する目的で,上記発明に係る特許を受ける権利を被告に譲渡するとの特約を加えた,「特許権専用実施権設定契約」と題する契約書(第2契約書)の文案が作成された。なお,原告の手の震えがひどいことから,以後の書類は記名押印方式になった(乙40,弁論の全趣旨)。
(ク) 原告は,平成15年8月31日,東京都内の帝国ホテルに出向き,1階のラウンジで被告,K,L(以下「L」という。)及びCと面会した。
原告は,この際,Cから第2契約書等についての説明を聞いた上,印鑑ケースを取り出し,Cから念を押されてうなずき,Cに自己の印章を渡して,第2契約書,第1及び第2譲渡証書並びに委任状にそれぞれ押印を行わせた(乙19,21,24,40,41,58)。
(ケ) 被告は,特許庁に対し,平成15年9月1日に本件発明1ないし3につき,同月10日に本件発明4及び5につき,それぞれ出願人を原告から被告に変更する旨の届出をした(甲6ないし9,26ないし30,乙13の1及び2,弁論の全趣旨)。
(コ) Kは,平成15年11月7日,静岡市を本店所在地とする有限会社圧電発電研究所を設立し,Kのほか,原告及びD等も同社の取締役に就任した(甲12,弁論の全趣旨)。
(サ) 平成15年10月16日,第2契約書をもとに,これと同一の内容。 の公正証書が作成された(甲16)(シ) 原告は,平成16年8月ころ,特許庁に対し,本件発明1につき審査請求をしたところ,同年8月12日ころ,特許庁から,原告は出願人でないとの理由で請求を却下された(甲5の2,甲20)。
ウ 以上認定の事実によれば,原告は,いったんはEとの間で資金援助の件を協議し,Eに専用実施権を設定する等の合意をしたが,Eからの資金援助は立ち消えになり,平成15年8月ころは,新たな資金援助先を求めて27いたものである。そして,Cが作成した資金繰り表からも,同7月末時点で,圧電マイクロの運営や試作の手付金支払等のために少なくとも300万円強の資金が不足していたことが明らかである。また,Dがプロトタイプの試作が必要であると指摘し,原告がDの提案を承諾する旨の念書を作成した事実からすると,同年8月ころの時点で,原告は,試作のためにさらに資金が必要であったものと推認することができる。
一方,同年8月25日に,原告が被告から上記必要資金と符合する300万円を受領しているが,前記2(1)ア(ウ)及び(2)ア(ウ)のとおり,第1及び第2契約書では専用実施権設定の対価たる一時金が300万円と定められており,その金額が一致するものである。さらに,この金額は,原告が当時代表者をしていた圧電マイクロの同年7月末ころ当時の必要資金の額とも概ね符合するものである。
そうすると,原告は,被告から圧電マイクロの運営等に必要な資金を捻出するため,被告から専用実施権の設定の対価の名目で300万円の資金援助を受けたものと認められ,本件契約書等の原告名義の印影は,いずれも原告の意思に基づいて顕出されたものと認められる。
(6) 原告の主張についてア 原告は,平成15年8月25日に被告らと面会した際にテーブルの上の書類を見ず,同書類を圧電マイクロの金員借入れに関するものと了解していたとか,Cが原告の印鑑を預かったとか,Cに印鑑を預けている間,被告と別室に行っていたなどと主張して第1契約書の作成を否認し(前記第3の2〔原告の主張〕(3)),原告の陳述書(甲33(2頁),38ないし40)中には上記主張に沿った部分がある。
しかし,原告が第1契約書に署名する際手が震えていたことや,その場で印鑑ケースごとCに渡して原告の面前でCに押印させた上直ちに印鑑ケースごと原告に返還されたことは,その場に居合わせたC,L及び被告が28一致して述べるところであり(乙19,21,41,58),その陳述は,第1契約書の原告の署名における筆跡から認められる細かな手ぶれの存在という客観的事実と符合する上,具体的かつ詳細なものであって信用するに足りるものであるのに対し,原告の上記陳述は,書類を見ない特段の事情もないのに,領収書には自ら署名及び押印を行っておきながら,他の書類に目を通さないなど極めて不自然であり,もくせい会館の部屋の扉は,利用時以外は施錠されているという事実(弁論の全趣旨)及び同日付けの印鑑登録証明書(乙5)を持参している事実にも合致しないものであって,にわかに措信できない。
イ 原告は,平成15年8月31日に帝国ホテルに出向いた際には,被告と世間話をしただけで書類を見せられたことすらなく,印鑑も持参せず,第1契約書及び第2譲渡証書につき本件訴訟が提起されるまでその存在すら知らなかった旨などと主張して,第2契約書並びに第1及び第2譲渡証書の作成を否認し(前記第3の2〔原告の主張〕(1)(4)),原告作成の陳述書(甲33(2,5頁),38ないし40)中にも,上記主張に沿う部分がある。
しかし,原告の手の震えがひどいことから書類が記名押印方式になり,原告がCから第2契約書等についての説明を聞いた上,印鑑ケースを取り出しCから念を押されてうなずいた原告がCが押印するのを黙って見ていたことは,その場に居合わせた被告,K,L及びCが一致して述べるところであり(乙19,21,40,41,58),その陳述は具体的かつ詳細なものであって信用するに足りるものであるのに対し,原告の上記陳述は,約1週間前に会ったばかりの被告に高齢の原告が世間話をするためだけに帝国ホテルに出向いたというのはいささか奇異な感が免れず,不自然であって信用することができない。
ウ 原告は,契約書を2通作成して契約当事者双方が所持しないと契約は不29成立であるとか,本件契約書等の原告の住所の記載の誤りをもって原告が押印していない裏付けであると主張するが(前記第3の2〔原告の主張〕(1)(6)),「F」を「G」とするのは軽微な誤りであるし,契約書は契約の成立を証するものにすぎないのであって,仮に正副2通作成しなかったからといって契約が成立しないとする根拠はない。
エ 原告は,圧電マイクロと利害が対立する被告との専用実施権設定契約を締結するはずがないとか,共同管理方式を指向していたからかかる契約を締結するはずはない旨を主張する(前記第3の2〔原告の主張〕(7))。
しかし,前記(5)ウのとおり,圧電マイクロの運営資金は逼迫しており,資金援助を受ける必要があったのであるし,当時原告のいう共同管理方式が実現するかは全く不透明であったから,原告の上記主張を採用することはできない。
オ 原告は,発明の実用化のために必要な資金の協力と,特許管理,実施のための協力とは別問題である等と主張する(前記第3の2〔原告の主張〕(8))。
しかし,前記(5)ウのとおり,原告は圧電マイクロの運営及びプロトタイプの試作のために資金を必要としていたのであるし,実用化が全く立ちゆかなければ,発明の実施実施許諾はおぼつかないものと考えられるから,原告の上記主張は失当である。
カ 原告は,特許発明につき特許登録がされる前に専用実施権設定契約を締結するのは特許法77条に反し,また特許登録がされる前に,将来の特許登録後の専用実施権設定登録を確保する趣旨で特許を受ける権利を移転するのは,同法33条2項に反する旨を主張する(前記第3の2〔原告の主張〕(9))。
しかし,特許法77条は,特許登録がされた後に専用実施権を設定することについて規定しているに止まり,特許登録前に専用実施権設定の合意30をすることを禁じているものではない。特許登録前であれば,特許権として成立していないので,専用実施権設定登録ができず,したがって専用実施権の効力が生じないというだけにすぎないものである。また,特許法33条2項は,特許を受ける権利に対する質権の設定のみを禁止するものにすぎない。専用実施権設定登録を確保する目的でする条件付きの特許を受ける権利の移転は,金銭債務を担保するための担保権の設定とは異なり,もともと特許を受ける権利は譲渡することができると定められているのであるから(同条1項),上記のような移転を禁じる根拠はないというべきである。
結局,原告の上記各主張はいずれも失当であり,特許法の規定に反することを理由に原告が本件契約書等に係る契約をしなかったなどということはできない。
(7) 小括以上のとおり,本件契約書等の原告名義の印影は,原告の意思に基づき,原告の印章によって顕出されたものである。また,第1契約書の原告の署名は原告が行ったものである。そうすると,民事訴訟法228条4項により,本件契約書等が真正に成立したものと推定すべきである。他方,この推定を覆すに足りる原告の反証は存しない。
したがって,原告と被告との間には,当初は第1契約書の内容のとおりの契約が成立し,その後に契約の内容が一部修正されて第2契約書の内容のとおりの契約が成立したものということができる。
3 争点(2)(心裡留保の有無)について前記2のとおり,本件契約書等は原告の意思に基づいて真正に成立したものであり,特許を受ける権利を特許登録及び専用実施権設定登録を解除条件として被告に譲渡する点に原告の真意と表示との不一致はない。
そうすると,原告の心裡留保の主張は理由がない。
314 争点(3)(解除事由の有無)について(1) 解除事由について前記第2の1(3)イ(イ)のとおり,第2契約書11条1項では,特許登録及び専用実施権設定登録がいずれも完了するまでの間,特許を受ける権利を被告に譲渡する旨が定められているとともに,被告が出願審査請求等の手続を行う旨が定められているから,被告は原告に対し,本件各発明等に係る特許出願につき,審査請求等の必要な手続を行って,将来特許登録がされるように必要な措置を講ずる義務を負っている。
ところが,前記第2の1(5)のとおり,被告は本件発明4に係る特許出願につき,特許法所定の期間内に審査請求をしなかったから,被告は上記義務の履行を怠ったものというべきである。
また,前記第2の1(3)イ(ア)のとおり,第2契約書10条では,被告が同契約に規定する義務の履行を怠ったときは,原告は90日間の予告期間を付した事前の通知をもって,契約を解除することができる旨が定められているところ,前記第2の1(6)のとおり,原告が被告に対する事前の通知を行った日から90日が経過したものである。なお,同条の体裁から,この90日間は,被告に再考を促し,義務履行の機会を与える趣旨に止まるものと推認できるから,事前の通知自体に90日間の期限が明記されていなくても差し支えないというべきである。
そして,第2契約書10条においては契約解除の原因となる義務違反の内容について,同契約書に規定された義務の懈怠とするのみで,特段の限定を付しているものではなく,また,第2契約書1条に掲げられた各発明及びノウハウの間で,特段主従関係ないし優劣関係があるとの事情は認められないから,本件発明4に係る特許出願の審査請求の懈怠は,本件各発明に係る第2契約書の解除の原因となり得る。
そして,前記第2の1(6)のとおり,事前の通知から90日が経過した後32に契約解除の意思表示がされたから,原告の本件各発明に係る特許を受ける権利の譲渡契約は解除され,原告と被告との間においては,かかる特許を受ける権利は原告に復帰するというべきである。なお,第2契約書はその内容から,第1契約書に一部加筆・修正を加えたものであることが明らかであるから,第1契約書に係る契約も解除されたものと解される。
したがって,原告の本訴請求のうち,本件発明1ないし3及び5に係る特許を受ける権利の確認請求にはいずれも理由がある。他方,被告はこれら各発明に係る特許を受ける権利を喪失するから,被告の反訴請求のうち,これら各発明に係る特許を受ける権利の確認請求にはいずれも理由がない。
(2) 被告の主張についてア 被告は,本件発明4は本件発明1及び2の派生形であるから,本件発明4に係る特許出願につき審査請求義務を怠ったとしても,契約の全部を解除することはできない旨主張する。
しかし,本件発明4が第2契約書1条に掲げられた各発明及びノウハウとの間で,特段他の発明又はノウハウに従属する地位にあるとか,劣後するといった事情は認められないから,被告の上記主張は採用できない。
イ また,被告は,上記審査請求義務の懈怠は原告の協力が得られなかったことに起因するなどと主張する。
しかし,前記(1)のとおり,第2契約書10条で明確に被告の審査請求義務が規定されて,審査請求自体には原告の協力は必ずしも必要でなく,現に被告自身によって本件発明1等に係る特許出願につき審査請求が完了しているから,被告の上記主張は失当である。なお,公正証書(甲16)は第2契約書をもとに作成されたものであるところ(弁論の全趣旨),両者の各8条ではその見出しに「実施権の公示」とあるとおり,専用実施権設定登録手続に関する規定が設けられているにすぎず,原告は登録申請手続に必要な書類を被告に交付する旨の記載があるのみで,原告が被告に33対し審査請求に必要な書類を交付すべき義務があるなどとは解することができない。
ウ さらに,被告は,原告も出願名義人以外の第三者として本件発明4に係る特許出願につき審査請求ができた旨を指摘する。
確かに,特許法48条の3第1項では,審査請求の主体に「何人も」と規定し,特段制限を設けていないが,前記のとおり,被告は契約上明確に規定されている審査請求義務の履行を怠ったものであり,この義務違反は同一の発明につき将来特許を受けることができなくなるとの重大な結果を招来する,決して軽度とはいい難いものであるから,この義務違反を原因とする契約解除を免れることはできないというべきである。
5結論以上の次第で,原告と被告との間には第1及び第2契約書のとおりの契約が成立したものの,本件発明4に係る特許を受ける権利は消滅し,また原告による契約解除が有効にされたから,原告の本訴請求は主文掲記の限度で理由があり,被告の反訴請求はいずれも理由がないから,主文のとおり判決する。
追加
高部眞規子裁判長裁判官中島基至裁判官34田邉実裁判官35(別紙)特許出願目録1特許出願公開番号特開2002-315363公開年月日平成14年10月25日出願番号特願2001-154643出願年月日平成13年4月17日発明の名称圧電発電装置公開時の特許請求の範囲「【請求項1】円形または角形の同一形状の多数個の圧電素子1の各々を,該圧電素子1の平面と同一平面形状の絶縁板2を間に挟んで重ね合わせて圧電素子列4とし,該圧電素子列4の各圧電素子1の出力線3を同一の集電線5に並列に接続し,該集電線5を蓄電器,整流器,変圧器その他電子機器で構成する電気回路6を介して蓄電池7に接続してなる圧電素子を発電の電源とする圧電発電装置の基本機構。
【請求項2】容器外筒上面の4ヶ所に上部がねじ部37となった上蓋ガイドポール36を設け,下部底面に底板9で密閉可能とした配線室10を設けた円筒容器8の内部中央に,下端が配線室10に通じる配線孔12に連なる配線溝13を内壁に縦に設けた円筒状の蓄電池収納室11を設け,下端が配線室10に通じる配線孔16に連なる配線溝15を内壁に縦に設けた複数の円筒状蓄電器収納室14を蓄電池収納室11の外周に沿って配列し,ハニカム状に連なる下端が配線室10に通じる配線孔19に連なる配線溝18を内壁に縦に設けた円筒状圧電素子収納室17を蓄電器収納室14の外周に沿っ均等間隔に配置し,蓄電池収納室11には蓄電池20を,蓄電器収納室14には蓄電器21を,圧電素子収納室17には押ばね22を下に敷いた上に絶縁シート24を間に挟みながら圧電素子23を段重ねした圧電素子列25をそれぞれ収納し,蓄電器3621の入力線28,出力線29は配線溝15,配線孔16を通して配線室10へ導き,圧電素子23の出力線30は配線溝18,配線孔19を通って配線室10へと続く集電線31にそれぞれ接続し,蓄電器21の入力線28,出力線29および集電線31を,配線室10の天井面に備えたプリント基盤32上に圧電素子発電用電気設計aに基づいて組み立てられた抵抗器,整流器その他電子部品で構成する圧電素子発電用電気回路33に接続し,該圧電素子発電用電気回路33の出力端子34に蓄電池20の入力線26を接続,蓄電池20の出力線27を配線室10の側壁に設けたソケット35の電源端子に接続してなる圧電発電蓄電装置容器部A。
【請求項3】円筒容器8の上面と同一の外形を持つ厚板状の円筒容器上蓋37の上面を受圧部38とし,円筒容器8の4本の上蓋ガイドポール36の位置に合わせた4ヶ所に上蓋ガイドポール36用のガイド孔39を設け,円筒容器8の圧電素子収納室17の位置に該当する全箇所に加圧調整押圧子用ねじ穴40を貫通させて,上面にドライバー用の溝穴を設けた長ねじ状の加圧調整押圧子41を挿入してなる圧電発電蓄電装置容器蓋B。
【請求項4】円筒容器上蓋37と同一の外形を持ち,ねじで該円筒容器上蓋37に取りつけ可能とした厚板状の受圧板42。
【請求項5】請求項2の圧電発電蓄電装置容器部Aに請求項3の圧電発電蓄電容器蓋Bをかぶせ,これに受圧板42を取りつけてなる圧電素子利用発電蓄電装置。」2特許出願公開番号特開2003-183073公開年月日平成15年7月3日出願番号特願2001-402666出願年月日平成13年12月14日発明の名称発電用圧電セラミック素子公開時の特許請求の範囲37「【請求項1】チタン酸鉛,ジルコン酸鉛などの圧電素子用セラミック材を混合し焼結する圧電セラミック素子において,素子を構成する各種セラミック材の粒子粉末に加えて,焼結温度より融点が高く,引張強度の高い繊維物質を割れ防止つなぎ役として混合せしめてなる発電用の圧電セラミック素子。
【請求項2】発電用圧電セラミック素子の割れ防止つなぎ役として混入する繊維物質に,炭素繊維その他の電気良導性繊維を用いて,機械的加圧変形時の発電効率を高めた発電用圧電セラミック素子。
【請求項3】請求項1に述べた発電用圧電セラミック素子を発電素材に用いてなる圧電発電機。」3特許出願公開番号特開2003-204091公開年月日平成15年7月18日出願番号特願2002-34661出願年月日平成14年1月8日発明の名称携帯電話発電装置公開時の特許請求の範囲「【請求項1】蝶番式二つ折り携帯電話の開き折りする手の力を活用して,特願2001-154643の請求項3の圧電素子列を振動せしめて発電して得た電気エネルギーを電話駆動用電力源とした携帯電話発電装置。
【請求項2】蝶番式携帯電話の開閉トルクをぜんまいバネに蓄えて,連続振動源として圧電素子列を加振せしめてなる携帯電話発電装置。」4特許出願公開番号特開2003-152238公開年月日平成15年5月23日出願番号特願2001-388475出願年月日平成13年11月16日発明の名称多電極圧電セラミック公開時の特許請求の範囲38「【請求項1】ベルト状に成型した圧電セラミックの外周面の,左右の外縁から5ミリ前後内側に焼き付け又は鍍金法による均一した平面の長方形金属電極を,一定した間隔で形成し,内周面の同一の位置に同一形状の長方形金属電極を同じく焼き付け又は鍍金法によって形成し,外周面の電極2を陽極または陰極,内周面の電極3はその反対極となるように,高圧電気を通電して分極してなる発電用圧電セラミックベルト1。
【請求項2】多数列の電極5を各々均一の間隔で外周内周面の同一の位置に設けてなる発電用圧電セラミックベルト4。
【請求項3】請求項1又は請求項2に述べた発電用圧電セラミックベルトを用いてなる圧電発電機。」5特許出願公開番号特開2003-164169公開年月日平成15年6月6日出願番号特願2001-392820出願年月日平成13年11月20日発明の名称ベルト圧電発電機公開時の特許請求の範囲「【請求項1】走行する発電用圧電セラミックベルト1を,交互の入れ子状に並べた電気絶縁材質を用いた外周押しローラ4と内周押しローラ5の間に波状に挟んで,ローラ間を強制される波状走行によって発電用圧電セラミックベルト1に発生する電気エネルギーを陽電極2,陰電極3の各表面から,ばね性を有した集電子6によって集電するベルト圧電発電機。」