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関連審決 不服2003-5974
関連ワード 発明者 /  インターネット /  一致点の認定 /  29条の2(拡大された先願の地位) /  出願公開 /  発明の詳細な説明 /  実質的に同一 /  参酌 /  技術的意義 /  構成要件 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 17年 (行ケ) 10789号 審決取消請求事件
原告 インフォコム株式会社
原告 帝人株式会社
上記2名訴訟代理人弁理士 林恒徳
同 土井健二
同平山聡
被告 特許庁長官中嶋 誠
同指定代理人 岡本俊威
同杉山務
同立川功
同 大場義則
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2006/09/26
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2003-5974号事件について平成17年9月27日にした審決を取り消す。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯原告らは,発明の名称を「知的所有権の管理サービス提供方法及びそれを用いた管理サービス提供システム」とする発明につき,平成12年8月31日,特許を出願(特願2000-262985号。以下「本願」という。請求項の数は13である。)したが,平成15年3月3日,拒絶査定を受けたため,これに対する不服の審判請求を行い,同年5月12日付け手続補正書により明細書の特許請求の範囲の補正(以下,「本件補正」といい,本件補正後の明細書及び図面を「本願明細書」という。)を行った。
特許庁は,この審判請求を不服2003-5974号事件として審理し,その結果,平成17年9月27日,本件補正を却下した上で,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,同年10月11日,審決の謄本が原告らに送達された。
2 特許請求の範囲本件補正後の特許請求の範囲の請求項9(以下,この発明を「本願補正発明」という。)は,下記のとおりである。
記【請求項9】 少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数のクライアント及び前記各クライアントの代理人が使用するクライアント端末及び代理人端末とインターネットを介して接続され,前記クライアント及び/又は前記代理人に代わって,前記クライアント端末及び/又は前記代理人端末から入力される前記知的所有権に係る各案件の情報管理を行う知的所有権の管理サービス提供システムであって,前記クライアント端末及び/又は代理人端末から入力される,前記知的所有権の各案件に対して行われる各処理の進捗に関する進捗管理情報,前記各案件の属性に関する案件属性情報,及び前記各案件に関係する文書のデータに係る文書情報,のうちの少なくとも一つの情報を,前記管理サービス提供システムに格納し,前記クライアント端末及び/又は代理人端末からの要求に応答して,前記格納した各種情報の中から当該要求に応じた情報を取り出し,当該取り出した情報を含む当該要求に応じた表示画面を生成して,当該表示画面を前記クライアント端末及び/又は代理人端末へ出力する管理手段を有し,前記管理手段が前記管理サービス提供システムに格納する情報と,前記管理手段が前記クライアント端末及び/又は前記代理人端末へ出力する前記表示画面に含まれる情報に,前記知的所有権の各案件に対して行われる処理の続行あるいは当該処理の内容を承認するか否かについての情報が含まれることを特徴とする知的所有権の管理サービス提供システム。
3 審決の理由別紙審決書の写しのとおりである。要するに,@本願補正発明は,本願の出願の日前の出願であって本願の出願後に出願公開された特願2000-185470号(特開2002-32526号公報)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「先願明細書」という。)記載の発明(以下「先願発明」という。)と同一であり,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,本件補正は,平成15年法律47号による改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反するものであり,同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されるべきであり,A本件補正前の特許請求の範囲の請求項9に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その構成要件を更に限定した本願補正発明が先願発明と同一であるから,同様の理由により先願発明と同一であり,本願発明の発明者が先願発明の発明者と同一であるとも,また,本願の出願時にその出願人が先願の出願人と同一であるとも認められないので,特許法29条の2の規定により特許を受けることができない,とするものである。
審決が認定した先願発明の内容は,次のとおりである。
「特許や商標等の出願中の手続,ないし登録後の年金納付の管理等を効率的に行うため,各依頼者端末4と管理者端末2をインターネット等のネットワーク5を介して管理センター1のサーバに接続することで,依頼者自身が,独自の管理システムを導入することなく,自己の出願や権利の状況等を確認できる手続管理システムであって,依頼者端末4又は管理者端末2から,案件のステータスに変更等があった場合にその都度更新が行われる案件管理情報を案件管理情報記憶手段16に登録する案件管理情報登録手段8,依頼者端末4から,案件管理情報の詳細を閲覧したい案件の案件番号等をマウスでクリックする等により指定することで,その案件に関する案件管理情報の詳細を閲覧可能とする案件管理情報公開手段9,手続確認手段11によって,案件番号等の案件特定情報と,次手続の種別,その期限等とが一覧表示すると共に,各案件について手続の実行の有無の確認欄を表示し,依頼者端末4のマウス等で手続の『実行』か『不実行』かいずれかの欄にチェックを入れて手続の指示を受ける手続管理システム」の発明
原告ら主張の取消事由の要点
審決は,本願補正発明の「代理人端末」が先願発明の「管理者端末」に相当するか否かの判断を誤り,その結果,本願補正発明と先願発明とが同一であると誤って判断して,本件補正を却下したものであり,この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法として取り消されるべきである。
1 本願補正発明と先願発明との一致点の認定の誤り(1) 本願補正発明における「代理人端末」の意義本件補正後の特許請求の範囲の請求項9には,「少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数のクライアント及び前記各クライアントの代理人が使用するクライアント端末及び代理人端末」と記載されており,このうち,「少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数の」は,「クライアント」と「代理人」の双方に係るものである。したがって,本願補正発明における「代理人端末」は,「前記各クライアントの,少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数の代理人が使用する代理人端末」を意味すると解釈すべきである。日本語では,比較的長い同一の修飾句が二つの被修飾語を修飾する場合に,長い修飾句を2回重複して記載するのを省くことが一般であり,請求項9の記載は,上記のとおりに解釈するのが自然であるし,また,本願明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌しても同様のことがいえる。
本願補正発明における「代理人端末」の意義を上記のように解すると,本願補正発明における「代理人」は,「クライアント」と同様に,「管理サービス提供システム」を用いたASPによる管理サービスの利用者であり,その「代理人」が使用する本願補正発明における「代理人端末」は,「クライアント端末」と同様に,サービスの利用者側の端末装置である。
(2) 先願発明における「管理者端末2」の意義先願発明における「管理者端末2」は,手続管理システムにおいて手続管理サービスを提供する側の装置であることは明らかであり,その台数が複数になり,また,どのようにネットワークされようとも,手続管理サービスを提供する側の装置であるという点に変わりはない。
先願発明の手続管理システムは,特許庁等の手続先を除き,手続管理の依頼者と,その依頼を受けて管理を行う管理者という立場を異にする二者によって運用されるシステムであり,このシステムにおける依頼者は,管理センター1のサーバが備える機能に基づく管理サービスの提供を受ける側であり,サービスの利用者の立場にある。他方,管理者は,自らの管理センター1に備えられるサーバを用いて上記利用者に管理サービスを提供するサービス提供者である。先願発明の「管理者端末2」は,サービス提供者である管理者によって用いられるもので,サービス提供側の端末装置であることは明らかである。
(3) 前記(1)及び(2)のとおり,本願補正発明における「代理人端末」はサービスの利用者側の端末装置であるのに対し,先願発明における「管理者端末2」はサービス提供側の端末装置であるから,両者は,装置の使用目的及び使用者の立場において異なっており,本願補正発明の「代理人端末」が先願発明の「管理者端末」に相当するとはいえず,これを相当するとした審決の認定は誤りであり,本願補正発明と先願発明とは同一ではない。
(4) 仮に,本願補正発明の「少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数の」が,「代理人」に係らないと理解したとしても,請求項9には,「代理人端末」が管理サービス提供(システム)側の端末装置であることを意味する内容は全く含まれておらず,逆に,請求項9の「前記クライアント及び/又は前記代理人に代わって」との記載や,「クライアント端末」と「代理人端末」を同格に扱っている記載を考えれば,本願補正発明の「代理人端末」は,代理人に代わって情報管理を行う管理サービス提供(システム)側の端末装置ではなく,そのサービス提供を受ける側の端末装置であることを意味していることは明白であり,管理サービス提供側である先願発明の「管理者端末2」と同一視できないことに変わりはない。
(5) なお,上記のとおり,本願補正発明の「代理人端末」を用いる代理人がサービスの利用者であるのに対し,先願発明の「管理者端末2」を用いる管理者がサービスの提供者であるという相違によって,本願補正発明では,先願発明では得られない次のような効果を得ることができるものであり,上記の相違は微差といえるものではなく,両者は実質的に同一であるともいえない。
ア 先願発明では,手続管理サービスの提供者が特許事務所等の代理人であるので,クライアントは,自己の案件について,その代理人が管理センターのサーバを有している場合にのみ,手続管理システムによるサービスを受けることができる。もし,クライアントの他案件についての代理人がこのようなサーバを有していない場合には,同様のサービスを享受することができない。
これに対し,本願補正発明では,代理人もサービスの利用者であるので,管理サービス提供システムによってサービス提供を行う者は,クライアントの代理人からも独立した立場となる。これにより,クライアントは,案件毎にどの代理人であるかということに関係なく,管理サービス提供システムによるサービスを享受することができる。
イ 先願発明では,サービス提供のために,特許事務所等の代理人がサーバ等のシステムを構築しなければならないが,本願補正発明では,代理人はサービスの利用者であるので,システム構築の必要がなく,クライアントだけでなく,代理人も容易に管理サービスの提供を受けることが可能となる。
2 被告の予備的主張に対する反論被告は,本件補正後の特許請求の範囲の請求項9を原告らの主張するとおりの意味に解したとしても,先願発明には,そのような構成も開示されているから,本願補正発明と先願発明とが同一であるとの結論に影響しないと主張する。
先願明細書に,代理人端末を複数設けること,ID等により各代理人端末を認証することが記載されているが,これは,あくまでも,サービスを提供する側のシステムの構成要素として記載されているにとどまり,本願補正発明のように,サービス提供を受ける側の端末として記載されているものではないから,被告の予備的主張は失当である。
被告の反論の骨子
審決の認定判断は正当であって,審決を取り消すべき理由はない。
1 本願補正発明と先願発明との一致点の認定の誤りについて(1) 本願補正発明における「代理人端末」の意義本件補正後の特許請求の範囲の請求項9において,「少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数の」は,「クライアント」のみに係り,「代理人」に係るのは,「前記各クライアントの」という言葉のみであると解するのが文言の解釈として自然である。
また,特許法29条1項及び2項の特許要件を判断するためにする特許出願に係る発明の要旨の認定は,特許請求の範囲の記載が一義的に明確でないなどの特段の事情がない限り,願書に添付された特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであり,同法29条の2の要件を判断する場合においても同じであると解される。本件においては,上記のような特段の事情は認められず,原告らが主張するように,発明の詳細な説明の記載を参酌して要旨を認定することはできず,本件補正後の特許請求の範囲の請求項9の文言は,その記載どおりに解釈して先願発明と対比すべきである。
(2) 先願発明における「管理者端末2」の意義先願明細書の発明の詳細な説明の段落【0049】には「なお,管理者端末2は例えば,特許事務所等に設置されたパーソナルコンピュータである。」と明確に記載されている。
(3) 前記(1)及び(2)のとおり,先願発明の「管理者端末2」が,本願補正発明の「各クライアントの代理人が使用する代理人端末」に相当することは,明らかである。したがって,審決に原告らの主張する一致点認定の誤りはない。
2 予備的主張先願明細書の発明の詳細な説明の段落【0118】,【0119】及び【0121】には,サーバに複数台の管理者端末を接続してもよいこと及び複数台の管理者端末をID等で管理することが開示されているから,仮に,本件補正後の特許請求の範囲の請求項9を原告らの主張するとおりの意味に解したとしても,本願補正発明と先願発明とが同一であるとの結論に影響しない。
当裁判所の判断
1 本願補正発明と先願発明との一致点の認定の誤りについて(1) 本願補正発明における「代理人端末」の意義ア 原告らは,本願補正発明に係る請求項9の「少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数の」という語句は,「クライアント」と「代理人」の双方に係るものであるとして,本願補正発明における「代理人端末」は「前記各クライアントの,少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数の代理人が使用する代理人端末」を意味すると主張する。
しかし,本願補正発明に係る請求項9の記載は前記第2の2のとおりであるところ,その「少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数のクライアント及び前記各クライアントの代理人が使用するクライアント端末及び代理人端末」との記載からすると,「少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数の」という文言は,その直後の「クライアント」を修飾するものであり,また,「前記各クライアントの」という文言は,同じくその直後の「代理人」を修飾し,「少なくとも・・・複数のクライアント」と「前記各クライアントの代理人」とを「及び」で接続しているものと理解するのが自然であって,「少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数の」との文言が,「クライアント」のみならず「代理人」にも係ると解することはできない。
原告らは,日本語では,比較的長い同一の修飾句が二つの被修飾語を修飾する場合に,長い修飾句を2回重複して記載するのを省くことが一般であると主張するが,そのようなことが一般的であるとまでは認められないし,上記請求項9の記載においては,「クライアント」及び「代理人」という対となる用語の前に,それぞれ「少なくとも・・・複数の」と「前記各クライアントの」という別々の修飾句が用いられているのであって,原告らの主張は採用できない(本件で問題となっているのは,特許請求の範囲の記載であるから,「代理人」にも「少なくとも・・・複数の」との修飾句が係る,すなわち,代理人も「互いに独立した複数」であることが構成要件として必要なのであれば,出願人はそのことが明確になるように記載すべきであり,その表現方法(「代理人」にも上記修飾句が係ることが明確になるように,語句を加えたり,かっこ書きで注記したりする)も出願人自身が任意に選択することができたところである。)。
したがって,上記請求項9の記載部分には,「代理人」は,「少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数のクライアント」の代理人であることは規定されているが,代理人が「少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数の代理人」であることまでが規定されているということはできず,請求項9の全体の記載からみても,本願補正発明における「代理人端末」が「前記各クライアントの,少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数の代理人が使用する代理人端末」を意味すると解することはできない。
イ 原告らは,本願明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌しても,本願補正発明における「代理人端末」が「前記各クライアントの,少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数の代理人が使用する代理人端末」を意味するといえる旨主張する。
しかし,特許法29条の2の要件を判断する場合において,特許出願に係る発明の要旨の認定は,同法29条1項及び2項の要件を判断する場合と同様に,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないなどの特段の事情がない限り,願書に添付された明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであると解される。本件においては,上記のような特段の事情は認められないから,本件補正後の特許請求の範囲の請求項9の文言をその記載どおりに解釈して,本願補正発明の要旨を認定し,先願発明と対比すべきであり,発明の詳細な説明等を参酌する余地はないというべきである。
なお,念のため,本願明細書(甲第2号証)の【発明の詳細な説明】欄の記載を検討しても,その記載(段落【0008】,【0013】,【0023】,【0025】,【0028】〜【0030】,【0039】,【0061】,【0078】)からは,「代理人」は「少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数の代理人」であってもかまわないことが確認できるだけで,本願補正発明における「代理人端末」が「前記各クライアントの,少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数の代理人が使用する代理人端末」を一義的に意味するものとはいえない。
ウ 以上のとおり,本願補正発明における「代理人端末」とは,「各クライアントの代理人が使用する代理人端末」のことであって,「少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数の」という限定は「クライアント」のみに係り,そのような「各クライアントの代理人が使用する」端末であれば足りると解される。
(2) 先願発明における「管理者端末2」の意義先願明細書(甲第3号証)の発明の詳細な説明の段落【0049】には「なお,管理者端末2は例えば,特許事務所等に設置されたパーソナルコンピュータである。」と記載されている。
本願補正発明における「代理人端末」における「代理人」とは,「少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数のクライアント」から依頼を受けた代理人であるから,本願補正発明における「代理人」が上記の「特許事務所等」に相当し,本願補正発明における「代理人」が使用する端末である「代理人端末」は,先願発明の「管理者端末2」に相当することになる。
(3) 前記のとおり,本願補正発明における「代理人端末」が「前記各クライアントの,少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数の代理人が使用する代理人端末」を意味することを前提に,本願補正発明の「代理人端末」が先願発明の「管理者端末2」に相当するとはいえないとする原告らの主張は,その前提において誤りであり,採用することができない。
(4) また,原告らは,本願補正発明に係る請求項9には,「代理人端末」が管理サービス提供(システム)側の端末装置であることを意味する内容は全く含まれておらず,逆に,請求項9の「前記クライアント及び/又は前記代理人に代わって」などの記載からすれば,本願補正発明の「代理人端末」は,管理サービス提供(システム)側の端末装置ではなく,そのサービス提供を受ける側の端末装置であることを意味していることは明白であり,管理サービス提供側である先願発明の「管理者端末2」と同一視できないとも主張する。
しかし,本願補正発明に係る請求項9においては,冒頭の「少なくとも特許,実用新案,意匠,商標のいずれかを含む知的所有権に係る情報の管理を希望する互いに独立した複数のクライアント及び前記各クライアントの代理人が使用するクライアント端末及び代理人端末とインターネットを介して接続され,」の記載では,「クライアント」と「代理人」,「クライアント端末」と「代理人端末」がいずれも「及び」で結ばれているが,これより後の記載では,いずれも「及び/又は」で結ばれている。したがって,本願補正発明の上記「及び/又は」で結ばれている部分の構成には,「クライアント」と「代理人」のいずれか一方のとき及び「クライアント端末」と「代理人端末」のいずれか一方のときが含まれることになる。そうすると,上記「及び/又は」で結ばれている部分すべてについて,「クライアント」,「クライアント端末」となっても本願補正発明の構成が充足されることになるのであり,このような構成が含まれていることを考慮すると,本願補正発明の「代理人端末」が管理サービス提供を受ける側の端末装置であると限定して理解することはできないというべきであるから,原告らの上記主張は採用できない。
(5) 以上のとおり,先願発明の「管理者端末2」が,本願補正発明の「各クライアントの代理人が使用する代理人端末」に相当するとした審決の認定に誤りはない。
原告らの本願補正発明の「代理人端末」は先願発明の「管理者端末2」に相当するとはいえないとの主張は理由がなく,被告の予備的主張について判断するまでもなく,審決に原告らの主張する一致点認定の誤りはない。
2結論以上に検討したところによれば,原告らの主張する取消事由には理由がなく,審決を取り消すべきその他の誤りも認められない。
よって,原告らの請求は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 佐藤久夫
裁判官 三村量一
裁判官 古閑裕二