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関連ワード 新規性 /  進歩性(29条2項) /  出願公開 /  手続違反 /  遡及 /  優先権 /  出願審査請求 /  分割出願 /  出願変更 /  優先日 /  侵害 /  変更 /  異議申立 /  特許協力条約 /  国際出願 /  国際公開 /  国内公表 /  特許管理人 / 
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事件 平成 17年 (行ウ) 609号 裁決取消等請求事件
原告 ガンブロホスパル(シュバイツ) アクチエンゲゼルシャフト 特許管理人 小池恒明
同 後藤晴男
同浅村皓
同浅村肇
同 歌門章二
同 小堀貞文
被告 国
訴訟代理人特許庁長官 中嶋誠
指定代理人 立野みすず
同 海老原明
同 山内孝夫
同 駒崎利徳
同 荻野香理
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2006/08/04
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 特許庁長官が,16行服特許第23号事件について,平成17年6月20日付けでした棄却決定を取り消す。
2 特許庁長官が,平成9年特許願第514879号に関し,平成16年4月28日付けでした,平成15年10月14日付け提出の出願審査請求書に係る手続を却下する旨の処分は無効であることを確認する。
事案の概要
本件は,原告が,原告がした国際特許出願の審査請求をしたところ,特許庁長官が,期間経過後にされた不適法な請求であるとの理由により,特許法18条の2第1項に基づき手続を却下する処分をし,行政不服審査法に基づく異議申立ても棄却したため,出願審査請求期間の末日に関する特許法の解釈を誤ったものである等の実体的違法,理由付記の違法等の手続的違法を主張して,異議決定の取消し及び却下処分の無効確認を求めた事案である。
1前提事実(1) 本件国際特許出願原告は,世界知的所有権機関の国際事務局に対し,特許協力条約に基づく次の国際出願をした(以下「本件国際特許出願」という。)。
発明の名称 透析における廃液サンプル収集装置出願番号 平成9年特許願第514879号国際出願番号 PCT/IB96/01071出願日 1996年10月10日指定国 日本国ほか優先権主張番号 95/12187優先日 1995年10月12日優先権主張国 フランス(争いのない事実)(2) 出願公開本件国際特許出願は,1997年4月17日,国際公開され,平成10年10月20日,国内公表された。
(争いのない事実)(3) 出願後の法改正の経緯ア 本件国際特許出願がされた平成8年10月10日(以下「本件出願時」という。)において,出願審査請求の期間は,出願の日から7年以内とされていた(特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)(以下「平成11年特許法改正法」という。)による改正前の特許法48条の3第1項)。
また,本件出願時,10月10日は祝日である体育の日とされていた(国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律(平成10年法律第141号)(「以下「平成10年祝日法改正法」という。)による改正前の国民の祝日に関する法律(以下「祝日法」という。)2条)。
したがって,本件出願時の法律によれば,本件国際特許出願の審査請求の期間の7年の応当日である平成15年10月10日が祝日に当たり,翌11日が土曜日,翌々日12日が日曜日であるため,特許法3条2項により,審査請求期間の末日は同月13日であった。
イ 平成10年祝日法改正法は,体育の日を10月の第2月曜日と変更し,平成10年10月21日に公布され,平成12年1月1日から施行された。
ウ 平成11年特許法改正法は,出願審査請求期間を出願から3年以内と改正したが(48条の3第1項),同法附則1条4号は,上記改正規定の施行日を平成13年10月1日と規定し,同法附則2条4項は 「前条第4号に掲げる規定の施行 ,の際現に特許庁に係属している特許出願に係る出願審査の請求については,新特許法第48条の3第1項の規定にかかわらず,なお従前の例による 」との経過措置。
を規定した。
(4) 本件出願審査請求ア 原告の担当者は,フランスのリヨンにおいて,平成15年(2003年)10月10日金曜日の現地時間午前11時40分ころ,本件国際特許出願の特許管理人に対し,本件国際特許出願につき出願審査請求をしてほしい旨のファクシミリ(甲4)を送信した。
このファクシミリは,日本時間同日午後6時40分ころ,原告の特許管理人の事務所に到達した。
(甲4,36)イ 原告の特許管理人の事務所は,上記時刻には勤務を終了しており,同月11日は土曜日,同月12日は日曜日,同月13日は10月の第2月曜日で体育の日であったため,同月14日に上記依頼を知った。
(甲4,36,37)ウ 原告の特許管理人は,特許庁長官に対し,同月14日,本件国際特許出願につき,出願審査請求書(甲5)を提出した(以下「本件出願審査請求」という。)。
(争いのない事実)(5) 本件出願審査請求後の経緯ア 特許庁長官は,原告に対し,同年12月2日ころ,本件出願審査請求は「期間経過後の提出です 」との却下理由通知(甲6)をし,原告は,同月26日, 。
弁明書(甲7)を提出したが,特許庁長官は,平成16年4月28日,却下理由通知に記載した理由により却下する,弁明の内容をもってしても却下の理由を解消することはできない旨の理由を付記して,本件出願審査請求を却下する旨の処分をし(甲8。以下「本件処分」という。),本件処分は,同年5月19日,原告の特許管理人に送達された。
(争いのない事実)イ 原告の特許管理人は,特許庁長官に対し,同年7月15日,本件処分につき,行政不服審査法による異議申立てをした。
(争いのない事実)ウ(ア) 特許庁長官は,平成17年6月20日,上記イの異議申立てを棄却する決定をし(以下「本件異議決定」という。),本件異議決定は,同月21日,原告の特許管理人に送達された。
(イ) 本件異議決定の理由の要旨は,以下のとおりである。
a 平成11年特許法改正法附則2条4項は,施行の際係属している特許出願の審査請求期間を従来どおり7年とすることを定めているにすぎず,7年目の該当日を休日として扱うか否か等を定めるものではない。
b 平成10年祝日法改正法は,経過措置や関係法令の整備規定を定めていないから,同法施行後は,特許法3条2項の期間計算も含め,一律に改正後の祝日法が適用される。
c したがって,本件国際特許出願の出願審査期間の末日は,平成15年10月10日である。
d 特許法は,出願審査の請求期間を経過した場合における救済措置は何ら規定していない。
(争いのない事実)2争点(1) 本件異議決定の取消事由(2) 本件処分の無効事由ア 実体的無効事由イ 適正手続違反等による違法性3 争点に関する当事者の主張(1) 本件異議決定の取消事由ア 原告の主張, (ア) 本件異議決定に付された理由(前提事実(5)ウ(イ))は,後記(2)イのとおりその法律解釈,適用等に違法がある。
(イ) 本件には,以下の理由から,行政事件訴訟法10条2項は適用されない。
a 本件は,審決に対する訴えにつき裁決主義を規定する特許法178条6項と同様に扱うべきである。
b 行政事件訴訟法10条2項は,訴願前置主義を廃止したことに伴い,原処分の取消しの訴えと裁決の取消しの訴えが同時に又は並行して提起できる場合の措置であり,両者を同時にも並行しても提起できない本件には適用されない。
c 原告は,明白かつ重大な瑕疵の存する本件処分の当然無効を主張しており,原処分の取消しの訴えではないので,同条項の要件を充足しない。(ウ) 本件に行政事件訴訟法10条2項が適用されるとしても,本件異議決定に付された理由は本件異議決定で初めて示されたものであるから,本件異議決定には固有の違法がある。
イ 被告の主張(ア) 行政事件訴訟法10条2項は,処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には,裁決の取消しの訴えにおいては,処分の違法を理由としてその取消しを求めることができないとし,裁決固有の違法についてのみ審理,判断させることを明らかにしている(原処分主義)。なお,ここでの裁決は,異議決定を含む(同法3条2項)。
(イ) 特許法184条の2は,審査請求前置主義を採用するものの,裁決主義は採用していないから,本件処分の取消しの訴えと本件異議決定の取消しの訴えの両方を提起することができ,行政事件訴訟法10条2項が適用される。このことは,本件処分につき無効確認の訴えを提起した場合でも同様である。
原告は,特許法178条6項と同様に扱うべき旨主張するが,その規定上裁決主義を採ることが明らかである同条項と本件とを同様に解することはできない。
(ウ) 原告は,本件異議決定で初めて示された理由に誤りがあるから,裁決固有の違法がある旨主張するが,それらの理由の誤りは,本件処分の違法事由にすぎない。
(2) 本件処分の無効事由ア 被告の主張(ア) 実体的無効事由a 本件出願審査請求は,期間経過後にされた不適法なものであり,補正の余地もない。
b すなわち,本件国際特許出願に係る審査請求期間は,平成11年特許法改正法附則2条4項により,出願日である平成8年10月10日から7年以内となるから,その末日は,平成15年10月10日である。
c 特許法3条2項の適用に際し,審査請求期間の末日が行政機関の休日に当たるか否かは,その時点において施行されている法令に基づいて判断すべきところ,同日は行政機関の休日ではないから(平成10年祝日法改正法による改正後の祝日法2条),同日が請求期間の末日となる。
平成11年特許法改正法附則2条4項は,特許法48条の3の改正規定の施行の日(平成13年10月1日)までに特許庁に係属する特許出願の出願審査の請求期間を7年のままとしたものであり,この期間の改正に関わらない期間の計算の規定などについては適用されない。
(イ) 適正手続違反等による違法性a 後記原告の主張(イ)a(理由付記の違法)は争う。
b 同(イ)b(行政手続法1条の趣旨違反)は争う。
c 同(イ)c(国際協調の観点からの違法)は争う。
平成10年祝日法改正法は,平成10年10月21日に公布され,平成12年1月1日から施行されたから,原告には,祝日の変更に対応するために十分な準備期間があった。
また,その提出が法令により定まっている手続について,その期間の末日を個別の申請人(特許出願人等)に通知することを特許庁長官に義務付けた法令の規定はない。
イ 原告の主張(ア)a 被告の主張(ア)(実体的無効事由)aは争う。
b 同bは認める。
c 同cのうち,平成15年10月10日が行政機関の休日ではないことは認め,その余は争う。
d(a) 平成11年特許法改正法附則2条4項の「従前の例による」との規定は,7年の期間のみならず,期間の計算方法を含めて一切が従来どおりするものと解すべきである。
したがって,平成10年祝日法改正法による改正前の祝日法を前提として,平成11年特許法改正法による改正前の特許法48条の3第1項及び3条2項の規定を適用すべきである。
そうすると,審査請求期間の末日は平成15年10月13日であるところ,平成10年祝日法改正法により同月13日が新たに休日となって書面の提出ができなくなったことから,同月14日が審査請求期間の末日となる。
(b) すなわち,出願審査請求期間は,特許手続を明確にし,特許法律関係の安定化を図るため,また特許出願人の予測可能性を確保するため,特段の規定がない限り,出願時において有効な法律を適用し,出願時点において確定されるべきものである。平成11年特許法改正法附則2条4項の「なお従前の例による」の趣旨は,かかる考慮にもよるものであって,特別の規定がない限り,本件国際特許出願の出願審査請求期間は,出願日に有効であった法律に従って計算しなければならない。
(c) 平成10年祝日法改正法には経過措置等が設けられていないが,その施行後に一律新法が適用されると解すべきではない。およそ法律の規定は,その効力を生じた時より後に発生した事項についてだけ適用されるのを原則とし,遡及して適用するには,特段の規定を必要とする。新法や改正法の制定に当たっては,従前の法律の規定により生じた効力を妨げない旨の経過措置が置かれるべきであり,かかる規定がない場合でも,同様に解釈すべきである。祝日を月曜日とし,連休化することにより,国民の多種多様なニーズにこたえる等の平成10年祝日法改正法の趣旨からみても,特許出願について祝日法の改正後の規定を適用する理由はない。
(d) 特許法施行法20条1項は 「新法施行の際(昭和35年4月1日)現に ,。, 係属している特許出願については…なお従前の例による 」と規定しているところ@この規定は,施行の際に係属していた特許出願からその日以後にされた分割・変更に係る特許出願について適用されるのか,A同日に旧実用新案法5条が廃止された結果,特許出願を実用新案登録出願に変更できる根拠規定は失われたが,その変更の可否をどう解するか,B施行日以後に特許出願を分割し,さらにその分割に係る特許出願を実用新案登録出願に変更することが可能かの問題があったが,特許庁も裁判所も,分割出願への旧特許法の適用や出願変更を許容するなど,経過措置の適用に柔軟な態度を採ってきた。
このことからも,平成11年特許法改正法附則2条4項や,平成10年祝日法改正法には経過措置等が設けられていないことを,硬直的に解すべきではない。
(e) 特許庁の編集による工業所有権法逐条解説第15版(甲13。平成11年8月30日発行),同第16版(甲14。平成13年8月20日発行)の記載を見ても,特許法3条2項の期間計算と平成10年祝日法改正法との関係に言及した箇所はなく,特許庁は,当時,祝日法の改正後の規定を係属中の特許出願について適用する考えはなかったと推測される。
(f) 本件において審査請求期間を徒過したと解した場合,本件国際特許出願は取下げが擬制され,再度の出願は,既に国際公開及び国内公表されているので新規性進歩性の欠如を理由として拒絶されるため,出願人にとって極めて苛酷な結果となる。そのような解釈は,財産権の侵害を禁じた憲法29条1項に違反する。
(イ) 適正手続違反等による違法性本件出願審査請求の請求期間の末日を平成15年10月10日と解するとしても,特許庁長官は,以下のとおり,適正な手続を怠ったにもかかわらず本件処分を行っており,原告に重大な不利益を被らせているから,本件処分は違法であり,重大かつ明白な暇疵のある処分として無効である。
a 理由付記の違法本件処分は,原告の弁明書(甲7)における主張にどのような検討を加えたのか何ら説明しておらず,理由不備の違法がある。
b 行政手続法1条の趣旨違反特許庁長官は,本件国際特許出願の期間計算に改正後の祝日法を適用することにつき,そのような解釈・運用の基準の公表又は個別の通知をしておらず,また,平成15年10月13日までは出願審査の請求をすることができた地位を有していた原告に対し,意見陳述のための手続も執ることなく,その地位を剥奪した。
これは,行政運用における公正の確保と透明性の向上を図る行政手続法1条の趣旨に反している。
c 国際協調の観点からの違法当時は休日であった平成8年(1996年)10月10日を出願日とする特許出願は,外国の国内官庁又は政府間機関が受理官庁として受理した国際特許出願だけである。特許出願の出願審査請求期間の計算方法につき,祝日を「10月の第二月曜日」に変更することにより重大な不利益を受けるのは,そのような国外に居住する特許出願人であるところ,特許協力条約に基づく国際特許出願の利用の促進及び国際協力の一層の推進の点からも,国際協調の観点からも,そのような不利益を被らせるべきではなく,少なくとも不利益を被る出願人にその旨の通知をすべきである。
したがって,そのような措置を執らずに行った本件却下処分は違法である。
当裁判所の判断
1 本件異議決定の違法について(1) 行政事件訴訟法10条2項は,処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には,裁決の取消しの訴えにおいては,処分の違法を理由としてその取消しを求めることができないと規定しているから,裁決の取消しの訴えで主張できる違法事由は,裁決固有の違法に限られる。
本件処分については,特許法18条の2第1項に基づくものであり,本件処分についての異議申立てに対する決定を経た後でなければ取消しの訴えを提起できないとの審査請求主義が採用されているが(同法184条の2),いわゆる裁決主義は採用されていないから,行政事件訴訟法10条2項が適用され,本件異議決定の取消しを求める訴えでは異議決定固有の違法の主張のみが許される。
原告が主張する本件異議決定に付された理由には法律解釈,適用等に誤りがあるとの違法事由は,本件処分の実体的判断の誤りをいうものであり,裁決固有の違法の主張ではない。
これらに反する原告の主張は,到底採用することができない。
(2) したがって,本件異議決定の取消しを求める原告の請求は,裁決固有の違法の主張がなく主張自体失当なものであり,その余の点について判断をするまでもなく,理由がない。
2 本件処分の無効事由(1) 実体的無効事由についてア 前提事実(3)のとおり,平成11年特許法改正法は,出願審査請求期間を出願から3年以内と改正し,同法附則1条4号においてその改正規定の施行期日を平成13年10月1日とするとともに,同法附則2条4項において 「前条第4号に,掲げる規定の施行の際現に特許庁に係属している特許出願に係る出願審査の請求については,新特許法48条の3第1項の規定にかかわらず,なお従前の例による 」と規定しているが,同法附則2条4項は,同規定の施行の際現に係属中の出 。
願の審査請求期間を7年としたに止まるものであり,それ以外の法律の適用関係を定めたものではないと解される。
イ そして,特許法3条2項は,手続についての期間の末日が行政機関の休日に当たるときは,その日の翌日をもってその期間の末日とする旨規定している。同条項は,期間の末日が行政機関が執務を行わない日である場合,期間が満了する日をその日ではなくその翌日としたものであり,当該期間の末日が行政機関の休日であるか否かは,当該日における法律によって判断すべきものと解される。
ウ 平成10年祝日法改正法は,改正に当たっての経過措置を何ら定めていない。
, エ 平成15年10月10日当時,同日が行政機関の休日ではなかったことは当事者間に争いがない。
オ したがって,本件国際特許出願の審査請求期間は,平成15年10月10, 日がその末日であり,前提事実(4)ウのとおり同月14日にされた本件審査請求は出願審査請求期間の経過後にされたものである。よって,本件処分には,出願審査請求期間を徒過したとの判断につき,取消事由たる違法はない。
カ(ア) 原告は,平成11年特許法改正法附則2条4項の「従前の例による」との規定は,期間の計算方法を含めて一切が従来どおりとするものと解すべきである旨主張するが,同附則2条4項の文言からも趣旨からも,そのように解することは到底できないから,原告の上記主張は,採用することができない。
(イ) 原告は,審査請求期間を徒過したと解すると,原告にとって極めて苛酷な結果となり,そのような解釈は財産権の侵害を禁じた憲法29条1項に違反する旨主張するが,原告主張の結果は,特許法に規定された期間を遵守しなかったことにより当然発生する結果にすぎず,上記解釈を何ら左右するものではない。
(ウ) 原告のその余の主張は,いずれも理由がない。
(2) 争点(2)(適正手続違反等による違法性)についてア理由付記原告は,本件処分は,原告の弁明書(甲7)における主張にどのような検討を加えたのか何ら説明しておらず,理由不備の違法がある旨主張する。
しかしながら,本件処分に付された却下理由通知に記載した理由により却下する,弁明の内容をもってしても却下の理由を解消することはできない旨の理由(前提事実(5)ア)は,本件の事案にかんがみると,特許法18条の2により求められている理由の程度を満たしていると認められるから,原告の上記主張は,理由がない。
イ 行政手続法1条の趣旨違反原告は,特許庁長官が,本件国際特許出願の期間計算に改正後の祝日法を適用することにつき,そのような解釈・運用の基準の公表又は個別の通知をせず,また,平成15年10月13日までは出願審査の請求をすることができた地位を有していた原告に対し,意見陳述のための手続も執ることなく,その地位を剥奪したものであり違法である旨主張する。
しかし,@特許法3条2項の適用上,末日が休日であるか否かはその時点の法律によって判断されるものと解されること(上記(1)イ),A平成10年祝日法改正法は,平成10年10月21日に公布され,平成12年1月1日から施行されたものであって(前提事実(3)イ),施行までに十分な準備期間があり,本件出願審査請求期間の末日までには更に3年近くあったこと,B原告主張の個別の通知等を義務付ける法令の根拠はないことに照らすと,原告主張の措置を執らなかったことが行政手続法1条の趣旨に違反するものとは到底認められない。
ウ 国際協調の観点からの違法原告は,平成15年10月10日が休日でなくなることにより重大な不利益を受けるのは,外国の国内官庁等が受理官庁として受理した国際出願だけであるから,国際協調等の観点から,不利益を被る出願人にその旨の通知をするなどの措置を執らずに行った本件却下処分は違法であると主張する。
しかし,国際特許出願であっても,出願後の手続が我が国の法令に従って行われる以上,出願人自らが我が国の法令に精通するか,適切な特許管理人に委任するなどの方法で対応すべきでことは当然であるし,原告主張の通知等をすることを義務付ける法令はもちろん,条理上そのような通知等すべきことを基礎付ける事情も認められないから,原告の上記主張は採用できない。
(3) まとめ以上のとおり,本件処分には取消事由はないから,無効事由も存在しない。
3結論よって,原告の請求は,いずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 頼晋一