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関連審決 不服2003-3247
関連ワード 特許を受ける権利 /  発明者 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  周知技術 /  慣用技術 /  発明の詳細な説明 /  共同出願 /  名義変更 /  援用権(援用) /  技術的意義 /  容易に想到(容易想到性) /  加工 /  共同出願人 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 17年 (行ケ) 10809号 審決取消請求事件
原告 石川株式会社
原告 大昭和紙工産業株式会社
原告 日本製袋株式会社
原告 名糖株式会社
原告 日清製粉株式会社
上記5名訴訟代理人弁理士 鎌田久男
同鈴木喜三郎
被告 特許庁長官中嶋 誠
指定代理人 宮崎敏長
同 粟津憲一
同高木彰
同 小林和男
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2006/07/19
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2003-3247号事件について平成17年10月12日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,後記特許の共同出願人である原告ら(ただし,原告日清製粉株式会社は,出願後拒絶査定前に,特許を受ける権利の一部譲渡を受けて,共同出願人の一員となった。)が,特許庁から拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をしたところ,特許庁から請求不成立の審決を受けたため,その取消しを求めた事案である。
当事者の主張
1 請求原因(1) 特許庁における手続の経緯原告石川株式会社,同大昭和紙工産業株式会社,同日本製袋株式会社及び同名糖株式会社は,名称を「粉体包装袋」とする発明につき,平成11年7月19日に共同して特許出願(特願平11-234460号。以下「本願」という。甲11)をした。その後原告日清製粉株式会社は,本願に係る特許を受ける権利の一部を譲り受け,平成13年10月19日付けで名義変更届(甲15)を特許庁に提出し,これら原告ら5名は,平成14年10月4日に本願につき手続補正をしたが(甲14),特許庁は,平成15年1月23日,拒絶査定をした。
そこで原告らは,これに対する不服の審判請求をし,同請求は不服2003-3247号事件として特許庁に係属した。同事件の中で原告らは,平成15年3月25日付けで手続補正をした(以下「本件補正」という。甲12)が,特許庁は,平成17年10月12日,本件補正を却下した上「本件審判の請求は,成り立たない。」とする旨の審決をし,その審決謄本は,平成17年10月25日原告らに送達された。
(2) 発明の内容ア 本件補正前平成11年7月19日に出願され平成14年10月4日に補正(甲14)された本願は,請求項1ないし4から成るが,その請求項1に係る発明の内容(以下「本願発明」という。)は,下記のとおりである。
記「斜め筋折り込み部3a,第1筋折り込み部1a,第2筋折り込み部2aより,吹込側底貼部Aを形成した粉体包装袋において,第2筋折り込み部2aと,第1筋,斜め筋折り込み部1a,3aとの間に弁紙5を貼着し,該弁紙5は少なくとも第2筋折り込み部2aと斜め筋折り込み部3aとの交点xを結ぶ線x-xより突出して延びており,かつ,第2筋折り込み部2a,斜め筋折り込み部3aの交点x-x間の間隔w1より小さい幅w2であり,かつ,内面にホットメルトhmを塗布してある,ことを特徴とする粉体包装袋。」イ 本件補正後特許庁の拒絶査定に対し不服の審判請求をした後の平成15年3月25日付け補正後の本願は,請求項1ないし3から成るが,その請求項1に係る発明の内容(以下「本願補正発明」という。)は,下記のとおりである。
記「斜め筋折り込み部,第1筋折り込み部,第2筋折り込み部より,吹込側底貼部を形成した粉体包装袋において,タテメスを有する第2筋折り込み部と,第1筋,斜め筋折り込み部との間に弁紙を貼着し,該弁紙は少なくとも第2筋折り込み部と斜め筋折り込み部との交点xを結ぶ線x-xより突出して延びており,かつ,第2筋折り込み部,斜め筋折り込み部の交点x-x間の間隙w1より小さい幅w2であり,かつ,内面にホットメルトを塗布してある,ことを特徴とする粉体包装袋。」(3) 審決の内容ア 審決の内容は,別添審決写しのとおりである。
その理由の要点は,まず,本願補正発明は,その出願前に頒布された実公昭50-18808号公報(甲3。以下「引用文献1」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから,特許法29条2項により特許出願の際独立して特許を受けることができず,本件補正は却下されるべきものであり,本願発明も,引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから,特許法29条2項により特許を受けることができない,としたものである。
イ なお,審決は,上記判断をするに当たり,本願補正発明と引用文献1に記載された発明(以下「引用発明」という。)との一致点及び相違点を次のとおり認定している(本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,別添審決写しのとおり)。
[一致点]「斜め筋折り込み部,第1筋折り込み部,第2筋折り込み部より,吹込側底貼部を形成した包装袋において,第2筋折り込み部と,第1筋,斜め筋折り込み部との間に弁紙を貼着し,該弁紙は少なくとも第2筋折り込み部と斜め筋折り込み部との交点xを結ぶ線x-xより突出して延びており,かつ,第2筋折り込み部,斜め筋折り込み部の交点x-x間の間隙w1より小さい幅w2であり,かつ,内面に加熱溶着手段が設けられている」点[相違点1]本願補正発明が「粉体包装袋」であるのに対し,引用文献1には吹込口付底貼紙袋に充填する内容物について「粉体」とは明記していない点。
[相違点2]本願補正発明の第2筋折り込み部が「タテメスを有する」とされるのに対し,引用文献1には底部形成用折畳線6によって形成される折返部7が本願補正発明でいう「タテメス」を有するとは明記されていない点。
[相違点3]本願補正発明が加熱溶着手段として弁紙の内面に「ホットメルトを塗布」としているのに対し,引用文献に記載された「吹込口筒4」は加熱溶着手段として内面にポリエチレンラミネート層を備えている点。
(4) 審決の取消事由本願補正発明と引用発明を対比した場合,前記(3)イのとおりの一致点・相違点があることは認める。
しかしながら,審決は,前記相違点1〜3に係る判断を誤った結果,本願補正発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと誤って認定判断したものであるから,違法として取消しを免れない。
ア 取消事由1(相違点1に係る判断の誤り)(ア) 審決では,「粉体包装袋」と特定することは,格別の事項と認められないとしている。
しかし,「粉体」は熱や圧力によって変質しやすく,高温の加熱により品質等が変わる危険性があるものが多いので,「粉体包装袋」と特定することは,後述する加熱温度との関連で,格別な事項である。
(イ) 被告は,吹込口付底貼紙袋を粉体の包装に用いることは本願前周知慣用の技術的事項であり,引用文献1に記載された紙袋も,ノズルによって吹込口筒4から内容物を充填する旨の記載からみて,粉体の包装に用いられ得ることは当業者が容易に推察できるので,「粉体包装袋」と特定することは格別の事項と認められないとした審決に誤りはない旨主張する。
しかし,本願補正発明は,吹込口の密封が完全にできないという問題を解決して,吹込口からの「粉体の漏れ」を防止することを目的としたものである(本願明細書〔甲11〕の段落【0002】)。例えば,配合飼料などは,粒体又は顆粒と呼ばれ,粉体と区別される。粒体は,粒径が比較的大きいものであるから,「漏れ」が問題とされることはない。この「粉体の漏れ」が問題になったのは,歴史的にみて最近(ここ数年)のことである。粉体であるからこそ漏れが発生するのであって,本願補正発明は,この漏れがないように,吹込口筒側の底部成形折返部を完全にシールしようとしている。したがって,本願補正発明を「粉体包装袋」と特定することは,本願補正発明の課題である「粉体の漏れ」の問題との関連で,格別な事項である。
イ 取消事由2(相違点2に係る判断の誤り)(ア) 審決は,底貼紙袋の底部を形成する際に折り込み部に切り込みを入れることは周知慣用の技術的事項であり,吹込口付底貼紙袋においても,本願補正発明でいう「タテメス」に相当する切り込みを設けて,貼着部の接着を十分なものとすることは周知技術であることを理由に,本願補正発明の相違点2に係る構成は格別のものではないと判断した。
しかし,周知技術の例として審決が挙げた甲5公報(実願昭57-122839号(実開昭59-28042号)のマイクロフィルム)はもとより,被告が援用する乙1公報(特開昭63-191755号公報)及び乙2公報(実公昭41-2788号公報)並びに引用文献1にそれぞれ記載された切込ないし縦メスも,以下に述べるとおり,いずれも,本願補正発明のタテメスとは機能・作用を異にするものである。
(イ) 本願補正発明の「タテメス」の機能・作用本願補正発明の「タテメス」は,吹込側の折り込み部を,弁紙(5,15)上で重ね合わせた際に,第2筋折り込み部(2a,12a)が2重構造となるようにしたものである。すなわち,タテメスがない場合は吹込口が4重構造となるのに対し,タテメスを設けることによって,吹込口筒側の底部成形折り返し部は2重構造となる。
そして,折り返し部が2重構造となることによって,弁紙の内面に塗布されたホットメルトに熱が良く伝達され,十分な貼着力が得られるという機能・作用がもたらされることになる。
(ウ) 各周知例についてa 甲5公報(実願昭57-122839号(実開昭59-28042号))「切目甲5公報の密封型糊貼り紙袋の「切目(11)」は,甲5公報の(11)の存在により側部折線(4),(5)及び第2折線(9),(10)を挟む狭い原紙部分は他の部分とは分離した状態で夫々1枚の原紙の如く折曲げられることになるので十分な接着がなされ折曲げ部分に沿って外部に通ずる接着不良箇所に沿って粉体が外にとの記載及び第2図の内容から理洩れ出ることはない。」 5頁第1段落)(解されるように,折り曲げた各層の原紙の復元性により,その外層及び内層に原紙の折線に直角方向に受ける力で,折線の周辺が浮き上がるのを防止する,という機能・作用を有するものである。
したがって,甲5公報の「切目(11)」は,本願補正発明のタテメスとは機能・作用を異にする。
b 乙1公報(特開昭63-191755号)一般に吹込口付両端部閉塞袋においては,その吹込口に自動充填機のノズルが挿入されて,セメントなどの粉体が気送方式(粉体を空気と一緒に吹き込む方式)で充填されるが,乙1公報の吹込口付両底貼多層袋は,防湿外層2と脱気内層3とからなる筒状袋1を有するものであって,防湿外層を備えるため,内容物充填時に袋本体内から空気が抜けず充填が困難なものである。このため,乙1公報の吹込口付両「縦メス25を境として斜め筋折込部xの外側に形成されるヒラヒ底貼多層袋は,ラ片26をチューブ外表面側を起立した状態としておくものである。・・・ヒラヒラ片26,26相互を接着することなく添設重合し,さらに下側のヒラヒラ片26と斜め筋折込部xの防湿外層2とをも接着しないで重合するだけである。・・・脱気内層3はヒラヒラ片26,26の間,および下方のヒラヒラ片26と斜め筋折込部xの防湿外層という2との間を通って脱気することができる」(2頁左上欄13行〜右上欄11行)解決手段を開示し,脱気作用を奏するものとなっている。
このように,乙1公報で「縦メス25」を入れた理由は,筒状袋1内の空気を抜くためである。被告は,乙1公報の「縦メス25」は,本願補正発明と同様に貼着部の接着を十分にするためのものである旨主張するが,誤りである。
c 乙2公報(実公昭41-2788号)「切込10,10を施して生乙2公報の「切込10」について,乙2公報にはじた遊離片11,11を外方に開いたものを折重ねて貼著しその外面に帯紙12を貼着補との記載があるが,これは単に底貼りを強した」(1頁右欄9行〜11行)補強したものである。被告は,乙2公報の「切込10」も,本願補正発明と同様に貼着部の接着を十分にするためのものである旨主張するが,誤りである。
d 引用文献1引用文献1(甲3)の第2図に,タテメスを入れて底貼りをしたと見られる形態が示されているが,考案の詳細な説明には,何の目的でタテメスを入れたかの記載は全くない。むしろ,当該タテメスは,底貼り形成のための化粧紙(補強紙)をなくし,経済効果を上げるために形成されたものと思われる。
(エ) 以上のとおり,一口に切込ないし縦メスといっても,乙1公報では「脱気するため」,乙2公報では「補強のため」,引用文献1では「化粧紙(補強紙)をなくし,経済効果を上げるため」に形成されたものであるのに対し,本願補正発明のタテメスは,それらのどれとも異なり,吹込側の折り込み部を弁紙(5,15)上で重ね合わせた際に,第2筋折り込み部(2a,12a)が2重構造となるようにしたものである。
このように,各周知例に示されたタテメスは,本願補正発明のタテメスと同様の機能・作用を奏するものではないから,タテメスを設けることは周知慣用技術であることを理由に本願補正発明の相違点2に係る構成は格別のものではないとした審決の判断は,誤りである。
ウ 取消事由3(相違点3に係る判断の誤り)審決は,引用文献1(甲3)に記載されたポリエチレンラミネート層に代えて本願補正発明のホットメルトを用いることは,当業者が適宜なし得る事項であり格別の事項とは認められないとしたが,誤りである。
引用文献1の吹込口付底貼紙袋に用いられたポリエチレンラミネート層は,約120℃という比較的高温で溶着する性質を有しているのに対して,本願補正発明に用いられたホットメルトは,約80℃という比較的低温で溶着することができる。これらポリエチレンラミネート層やホットメルト等のヒートシール材は,シール開始温度などのシール条件で選択される。このシール開始温度は,ヒートシール材の軟化点や融点と直接関係している。このため,ポリエチレンラミネート層を採用するか,ホットメルトを採用するかは,シール開始温度,つまり,軟化点や融点を重要な選択条件として決定されるものであって,格別の事項である。
エ 取消事由4(各相違点に係る技術的事項の組合せによる格別の効果)審決は,相違点1〜3に係る本願補正発明の構成が,いずれも周知技術に照らして格別の技術的事項とは認められないことを理由に,本願補正発明の進歩性を否定したが,かかる判断の手法には誤りがある。
そもそも,製袋分野の技術は,袋の材料や接着剤を選び,折ったり,切ったりして,貼り合わせるものであり,各相違点に係る発明の要素技術が周知であるというだけで進歩性を認めなければ,この技術分野の発明など存在しないのである。
本願補正発明の目的とするところは,吹込側底部(特に弁紙)を加熱する際の温度をできるだけ低く(例えば100℃以下に)することによって,熱に弱い内容物(粉体)や包材(紙)にダメージを与えるのを避けることである。そのため,ヒートシール材として,引用文献1(甲3)のポリエチレンラミネート層は,溶着する温度が約120℃と比較的高温であるため採用せず,約80℃という比較的低温で溶着することができるホットメルトを採用した。さらに,従来の重包装袋では接着工程での熱が伝わりにくく,ホットメルトを採用した場合でも加熱温度は約100℃以上に設定せざるを得なかったので,本願補正発明においては,相違点2に係る技術的事項である「タテメス」を第2筋折り込み部に設けることにより,吹込側の折り込み部の構造は,弁紙上を重ね合わせた場合に,第2筋折り込み部が2重構造となるようにした。
このように,本願補正発明の粉体包装袋は,「タテメス」のない4重構造のものと比較すると,相違点3の技術的事項である「ホットメルト」を用いても,熱がホットメルトに良く伝達され,100℃以下の比較的低い加熱温度であっても,吹込側底部(特に弁紙)を完全に封緘することができる。そして,比較的低い加熱温度で封緘できることにより,包装袋の材質自体を劣化させることがなく,包装袋に収納される「粉体」に熱的なダメージを与えることがない。また,加熱時間も短くて済むので,加熱装置が小型でも封緘作業が速く,生産性が向上する,等々の効果も有する。
これらの効果は,相違点1から3に示す技術的事項の組合せによって生ずる格別なものであるから,本願補正発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
2 請求原因に対する認否請求原因(1)(2)(3)の各事実は認める。同(4)は争う。
3 被告の反論原告らが,審決の認定判断が誤りであるとして主張するところは,次のとおりいずれも失当である。
(1) 取消事由1に対し「粉体」とは,固体が極めて細かい粒の集まりとなっている状態を意味する用語であり,粉体のうちにも,熱や圧力によって変質を受けないものは当然存在する。また,粉体以外の内容物であっても熱や圧力の影響を受けやすいものは多く存在し,そのようなものであれば,熱や圧力の影響を考慮して設計を行うことが通常である。また,包装袋の用途を粉体用と特定したことのみによって,包装袋自体の特有の形状が特定されるものでもない。
仮に「粉体」なる用語の記載により,内容物が熱や圧力によって変質しやすいものであることを限定することがあり得たとしても,本件各構成の採用は,後述のように当業者であれば容易に想到し得るものである。
よって,「粉体包装袋」と特定することは格別の事項と認められない,とした審決の判断に誤りはない。
(2) 取消事由2に対しア 審決が述べるとおり,底貼紙袋の底部を形成する際に折込部に切り込みを入れることは,本願出願前周知慣用の技術的事項であり,審決の認定に誤りはない。
イ まず,審決が周知例として挙げた甲5公報の第2図において,三角形部(7,8)の図面上側の斜辺は,第2折線(9)よりも上部において中途で垂直線と水平線に交差しているが,この垂直線と水平線が,三角形部の一部が切り込みによって離間させられていることを示していることは,当業者であれば当然理解できる。そして,本願の出願時の図面(甲11)をみても,【図11】において,タテメス(18)が設けられる右下部分において,斜め筋折り込み部の斜辺が垂直線と水平線とに交差するようなものとして示されているから,本願補正発明のタテメスが甲5公報の切り込みと同様のものであることは明らかである。
また,甲5公報において,本願補正発明の「斜め筋折り込み部」に相当する部位を折り込んだ図面である第3図と,本願の出願時の図面(甲11)の【図8】の右下部位の形態とを比較しても,両者はいずれも同じ「タテメス」に相当する構成を有するということが明確に記載されているとみることができる。
さらにいえば,引用文献1(甲3)の第2図においても,同様の図が示されていることからして,引用文献1も,本願補正発明でいう「タテメス」を有することによって得られる形を示しているということができる。
ウ また,本願補正発明の「タテメス」に相当する切り込みを設けて,貼着部の接着を十分なものとすることは,乙1公報,乙2公報にも記載されており,本願出願前周知慣用の技術事項である。
エ 以上のことからして,斜め筋折り込み部に「タテメス」を設けた構成を選択することは,当業者であれば当然の範囲であることは明白である。
(3) 取消事由3に対し引用発明の「ポリエチレンラミネート層」と本願補正発明の「ホットメルト」とは,溶着温度及びシール開始温度が異なるものであるとしても,内容物の熱に対する性質を特定するものではない本願補正発明において,溶着温度及びシール開始温度をどの程度とするかは,当業者が適宜なし得る事項といわざるを得ない。
さらにいえば,仮に,本願補正発明の袋が「粉体包装袋」に特定されることによって,内容物が熱や圧力によって変質しやすいものに限定されたとしても,ポリエチレンラミネート層とホットメルトとは,溶着によって複数の部材を固定するための構成として,いずれも本願出願前周知のものであって,内容物の熱に対する性質や包装体の材質自体への影響を考慮して,溶着温度が比較的高いものを採用するか,比較的低いものを採用するかは,当業者が適宜採用し得る設計的事項にすぎない。
(4) 取消事由4に対して審決の判断は,公知文献及び周知技術に基づいて,発明の構成,目的,効果等を検討して進歩性の判断を行ったものであり,審決の判断に何ら誤りはない。
当裁判所の判断
1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(発明の内容)及び(3)(審決の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
そこで,以下においては,原告ら主張の取消事由ごとに審決の適否について判断する。
2 取消事由1について(1) 原告らは,本願補正発明の相違点1に係る構成として内容物を「粉体」に限定したことには,格別の技術的意義があると主張する。
しかし,以下に述べるとおり,引用文献1(甲3)の記載に照らせば,引用発明も内容物として粉体を想定しているということができ(下記(2)),また,内容物を粉体に限定したことが折り込み部の構成や接着剤の選択に関する相違点2,3の構成との関連で格別の事項であるともいえないから(下記(3)),原告らの主張は採用できない。
(2)ア 引用文献1(甲3)には,下記の記載がある(下線部はいずれも本判決で付した。)。
記a「本案は多層重包装紙筒1の切断端縁2部に形成した隅角折畳部3の中央部に予め必要なサイズに形成した吹込口筒4を貼着し,吹込口筒4の折畳側縁5と切断端縁2に平行な底部形成用折畳線6との間に底部形成用折返部7を重合する充分な余裕8を設け,同余裕8に底部形成用折返部7を重合貼着して底部9を形成したことを特徴とする吹込口付底貼紙袋に関するものである。」(1欄19〜26行)b「尚図中27で示すものは吹込口筒4の入口部に形成したサムホールで同サムホール27に指を入れて吹込口筒4の内面を押すとその入口部が簡単に開くからノズルを迅速容易に挿入することができる。そしてそのノズルによつて同吹込口筒4から内容物を充填した後同筒4の内面のポリエチレンラミネート層を加熱溶着して密封するものである。」(2欄7〜14行)c「本案は上述のように予め必要なサイズに吹込口筒4を製造し,これを隅角折畳部3の中央部に貼着24し,かつ吹込口筒4の折畳側縁5と折畳線6との間に余裕8を設け,同余裕8を覆つて折返部7を重合貼着して底部9を形成したので折畳線6に沿うトンネル状間隙を生じるおそれがなくかつ吹込口筒4の内面ラミネート層を加熱溶着密封し充填物の漏洩を充分防止し得て安全堅牢な吹込口付底貼紙袋が容易に得られる実益を有する」(第2欄28〜36行)イ 引用文献1の上記記載bによれば,引用発明の吹込口付底貼紙袋は,内「一般に容物がノズルによって充填されるものである。そして,乙1公報の吹込口付両端部閉塞袋は,セメントなどの粉粒物を吹込口に自動充填機のノズルを挿入との記して気送方式で充填している」(1頁右欄6〜8行,下線で本判決が付した。)載に照らすと,本願出願時において,ノズルから内容物を充填するための吹込口付の袋には,セメント等の「粉粒物」すなわち粉体又は粒体が充填物とされることが周知であったものと認められる。
また,引用文献1の上記記載cによれば,充填物の漏洩防止が引用発明1の技術的課題の1つとされており,充填される内容物はわずかな間隙から漏洩することが前提とされていると認められから,引用文献1の記載自体から,引用発明はその内容物として粉体も想定しているということができる。
ウ そうすると,引用発明の吹込口付底貼紙袋が粉体の包装に用いられ得ることは当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が容易に推察できることであり,「粉体包装袋」と特定することは格別の事項と認められないとした審決の認定判断に誤りはない。
エ この点につき,原告らは,粉体の漏れが問題となったのは最近(ここ数年)のことであると主張するが,当該事実を示す証拠等は何ら提出されて「のり付を部分的いない。かえって,乙1公報(昭和63年8月9日公開)のに空隙部に設けるものは………内容物が漏洩し易い欠点を有している」(2頁左上欄第(実願昭53-106635号(実開昭55-242301段落)との記載や,甲4公報「本案は斯る欠陥を一号)のマイクロフィルム。昭和55年2月16日公開)の切排除した内弁式重包装袋に係るものであって………完全に物品の漏れを防止させようとの記載に照らせば,とする角底袋である」(明細書1頁最終段落〜2頁第1段落)内容物の漏れは本願の出願当時周知の技術的課題であったということができ,原告らの主張は採用できない。
(3) 原告らは,粉体は熱や圧力によって変質しやすいから,内容物を粉体に限定したことは,本願補正発明が相違点2,3に係る構成の採用によって貼着時の加熱温度を低くしようとしたことの関係で,格別な事項であると主張する。
しかし,本願補正発明の特許請求の範囲の記載においては,前記のとおり「粉体」の種類は何ら特定されておらず,熱や圧力に対して変質しやすいものに限定されるとは認められない。また,本願明細書における発明の詳細な説明(甲11,12)の中に,粉体が熱や圧力に対して変質しやすいことを明らかにする記載は見受けられない。さらに,本願補正発明の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明には,加熱温度に関する記載も何ら存在しない。
よって,粉体が熱や圧力によって変質しやすいことを前提に加熱温度との関係をいう原告らの主張は,明細書の記載に基づくものとはいえず,採用することができない。
3 取消事由2につき(1) 原告らは,本願補正発明の「タテメス」と,各周知例の「切込」等とは,その機能・作用が異なるから,底貼紙袋の斜め筋折り込み部の斜辺に切込等を設けることが周知であるとしても,本願補正発明が相違点2に係る構成としてタテメスを設けたことは当業者が容易に想到できるものではない旨主張する。
しかし,以下に述べるとおり,原告らの主張は採用できない。
(2) 本願補正発明の「タテメス」についてア 原告らは,タテメスがない場合は吹込口が4重構造となるのに対し,タテメスを設けることによって吹込口筒側の底部成形折返部は2重構造となり,弁紙の内面に塗布されたホットメルトに熱が良く伝達され,十分な吹込口の密封効果が得られるという機能・作用がもたらされると主張する。
イ そこで,本願補正発明の構成と吹込口の密封との関係について,本願明細書における発明の詳細な説明(甲11,12)をみると,下記の記載がある。
記「【0001】【発明の属する技術分野】粉体包装袋を包装する重包装袋の吹込側底貼部に関する。
【0002】【従来技術】従来,この種重包装袋の吹込側底貼部に設ける弁紙は内面にホットメルトを塗布して,熱圧して溶融し,吹込口からの粉体の漏れを防止することは試みられていた。しかしながら,弁紙の内面に塗布したホットメルトを熱圧して,吹込口を密封しようとしても,熱が充分にホットメルトに伝わらず,密封が完全にできないという問題点を残していた。
【0003】【解決しようとする課題】吹込口を形成する弁紙の内面に塗布したホットメルトに充分に加熱装置の熱を伝え,吹込口の密封を完全にしようとする。」「【0007】【第1発明の効果】(a)弁紙5が斜め筋折り込み部3a,第2筋折り込み部2aの交点Xの間隔w1よりも小さい幅w2であるので,加熱装置の熱が良くホットメルトhmに伝わる。
【0008】化粧紙6aの端部にホットメルトhmを塗布しておくと,吹込口の入口部が二重シールされ,密封が完全になる。
【0009】【第2発明の効果】(a)弁紙15が斜め筋折り込み部13aと第2筋折り込み部12aの交点xより突出して延びているため,加熱装置の熱が良く伝わる。
【0010】(b)化粧紙16aの端部裏面にホットメルトhmを塗布しておくと,吹込口の入口部を二重シールできる。」「【0015】A,B:吹込側,開封側底貼部。第1発明の袋は,斜め筋折り込み部3a,第1筋折り込み部1a,第2筋折り込み部2aより,吹込側底貼部Aを形成した粉体包装袋において,【0016】吹込側底貼部Aの第1筋折り込み部1a,タテメス8を有する第2筋折り込み部2aの交点x-xから,斜め筋折り込み部3aにわたって,インナーパッチ4aを貼着し,該インナーパッチ4aと,第1筋折り込み部1aと,斜め筋折り込み部3aとの間に弁紙5を貼着し,該弁紙5は少なくとも,第2筋折り込み部2aと,斜め筋折り込み部3aとの交点xを結ぶ線x-xより突出して延びており,【0017】かつ,第2筋折り込み部2a,斜め筋折り込み部3aの交点x-x間の間隔w1より小さい幅w2であり,内面にホットメルトhmを塗布してつけるものである。また,図3,図4のように吹込側化粧紙6aの弁紙5に沿った部分にホットメルトhmを塗布しておく。
【0018】一方,開封側底貼部Bには分断されてインナーパッチ4b,4bを第1筋,第2筋折り込み部1b,1aと,斜め筋折り込み部3aとにわたって貼着されている。また,化粧紙6bには開封テープ9を有する。」「【0022】第2発明が第1発明と異なる点は,弁紙15の幅,w12が,斜め筋,第2筋折り込み部13a,12aの交点x-xの間隔に等しい点である。」ウ 本願明細書の上記記載によれば,「タテメス」については段落【0016】に との記載があるにとどまり,タ「タテメス8を有する第2筋折り込み部2a」テメスを設ける目的や,タテメスが奏する作用効果については何ら記載がない。
「吹込口を形成する弁紙のそして,本願補正発明の解決しようとする課題は内面に塗布したホットメルトに充分に加熱装置の熱を伝え,吹込口の密封を完全にしよことにあるところ,上記記載によれば,かかる課うとする」(段落【0003】)「弁紙5が斜め筋折り込み部3a,第2筋題の解決は,「第1発明」においては折り込み部2aの交点Xの間隔w1よりも小さい幅w2であるので,加熱装置の熱が良ことによって達成されており,くホットメルトhmに伝わる」(段落【0007】)「弁紙15が斜め筋折り込み部13aと第2筋折り込み部12a「第2発明」においてはの交点xより突出して延びているため,加熱装置の熱が良く伝わる」(段落【0009】)ことによって図られているのである。
すなわち,本願補正発明においては,弁紙を密封するに当たって,弁紙の吹込口端部が直接加熱できれば充分な密封が可能であることを前提に,弁紙の吹込口端部を直接加熱するために,弁紙の幅w2をw1よりも小さな幅とし,さらに,x-x線よりも突出させているものと認められる。このように,本願補正発明は,弁紙の吹込口端部を,底貼部の折り返しを介することなく直接加熱することを可能とすることにより,十分な密封を可能にしたものと解することが相当である。
そして,タテメスを設けずに底貼部の折り返しを4重とした場合であっても,タテメスを設けることにより底貼部の折り返しを2重とした場合であっても,弁紙の吹込口側端部は,底貼部の折り返しを介さずに直接加熱できる点においては何ら相違はないのであるから,タテメスの有無によって本願補正発明における吹込口の密封の効果が異なるともいえない。
エ したがって,本願補正発明のタテメスが,吹込口の密封を完全にするという機能・作用を有するとする原告らの主張は,明細書の記載に基づくものではなく,採用することができない。
(3) 各周知例につきア甲5公報原告らは,甲5公報において本願補正発明の「タテメス」に相当するものは,甲5公報にいう「切目(11)」であることを前提に,両者は機能・作用が異なると主張する。
しかし,審決が,斜め筋折り込み部にタテメスを入れることが周知であることを示す例として甲5公報を挙げたのは,「切目(11)」のことを指しているものではないと解される。すなわち,甲5公報の第2図において,三角形部(7,8)の図面上側の斜辺が,第2折線(9)よりも上部で垂直線と水平線に分かれており,この垂直線と水平線が,三角形部の一部が切り込みによって離間させられていることを示していることから,審決は,当該切り込みが本願補正発明のタテメスに相当すると指摘したものであると解されるのである。
よって,原告らの主張は,その前提において理由がない。
イ 乙1公報,乙2公報,引用文献1乙1公報の「縦メス25」,乙2公報の「切込10」が,その機能・作用の点は別として,構成上,斜め筋折り込み部にタテメスを設けたものに相当することは,原告も明らかに争わないところである。また,引用文献1(甲3)の第2図にタテメスを入れて底貼りをしたと見られる形態が示されていることも,原告が自認するところであって,原告らは,タテメスを入れる目的が本願補正発明と異なることを主張しているにとどまる。
ウ 上記ア,イのとおり,各周知例からは,斜め筋折り込み部の斜辺に切込ないし縦メスを入れるという客観的な構成自体は,周知慣用の技術であったと認められる。
(4) 上記(3)のとおり,本願の当時,底貼紙袋において斜め筋折り込み部の斜辺にタテメスを設けることは周知慣用の技術であったと認められる。そして,上記(2)のとおり,本願明細書には,タテメスを設けることの目的や,その機能・作用について何ら記載がないのであるから,本願補正発明の相違点2に係る構成としてタテメスを設けたことも,単に上記の周知慣用の技術を適用した結果にすぎず,当業者が容易に想到し得る範囲のことであるといわざるを得ない。
また,本願補正発明がタテメスを設けることによって,底貼部の折り返しが4重ではなく2重になり,弁紙のうち底貼部の折り返しの下側に位置する部分に加熱装置の熱が良く伝達されるという機能・作用を奏するとしても,そのことは,タテメスを設けるという構成から当然にもたらされる効果にすぎず,各周知例に記載されたものにおいても,各発明者の主観的目的はともかく,同様の効果は生じるものである。したがって,本願補正発明が相違点2に係る構成としてタテメスを設けたことによる作用効果も,格別のものであるということはできない。
4 取消事由3について(1) 原告らは,審決が,引用発明のポリエチレンラミネート層に代えてホットメルトを塗布することは当業者が適宜なし得る事項であると判断したことは,誤りであると主張する。
「注入口用筒状体15の内面及び化粧紙21に設しかし,審決の引用する甲4公報にけた接着剤層20はポリオレフイン樹脂,ホットメルト接着剤の如き熱溶融可能な樹脂,接着剤などであればよい」(明細書3頁最終段落〜4頁第1段落),「本案は斯くの如くであり注入口筒状体の内面には接着剤層があり,……注入口より物品を袋内に収納後,その注入口用筒状体と化粧紙とを同時に150〜200℃で加熱圧着することにより注入口が封緘されると共と記載されているように,本願の出願時においに,……」(同4頁第2段落)て,吹込口筒を加熱圧着して密封するための吹込口筒の内面の接着剤層として,ポリオレフィン樹脂及びホットメルト接着剤のいずれも選択可能であることは,周知の事項であったと認められる。
そして,引用発明(甲3)の「ポリエチレンラミネート層」は,甲4公報「吹込口筒4……の内面ラミネートにおける吹込口筒の内面の接着剤層と同様に,である。また,ポ層を加熱溶着密封するもの」(引用文献1〔甲3〕の2欄11〜14行)リエチレンはポリオレフィン樹脂の一種であるところ,加熱溶着密封するための接着剤として,引用発明のポリエチレンに代えて本願補正発明のホットメルト接着剤を用いることは,当業者であれば容易に想到し得る程度のことであるというべきである。
(2) 原告らは,本願補正発明が,ヒートシール材として,引用発明のポリエチレンラミネート層に代えてホットメルトを採用したことは,シール開始温度を重要な選択条件として決定したものであって,格別の事項であると主張する。
しかし,加熱溶融する接着剤を用いて包装袋の接着加工を行う際に,内容物の熱に対する性質や包装体の材質自体への影響を考慮して,どの程度の加熱温度を要するものを採用するかは,一般的に考慮すべき設計的事項というべきものであるから,原告らのいうように,引用発明のポリエチレンラミネート層の融点と本願補正発明のホットメルトの融点等が異なるものであるとしても,ポリエチレンラミネート層をホットメルトに代える程度のことは,当業者が適宜なし得ることであるというべきである。
(3) 以上のとおり,本願補正発明の相違点3に係る構成は当業者が適宜なし得る事項であると判断した点に誤りはなく,原告らの取消事由3の主張は理由がない。
5 取消事由4について(1) 原告らは,本願補正発明の目的は,できるだけ低い温度で吹込口底部を加熱することによって,内容物や包材に熱的なダメージを与えずに吹込口の密封を完全にすることにあり,本願補正発明が相違点1〜3に係る構成の採用によってかかる目的を達成するという作用効果を奏するものであって,進歩性を有すると主張する。
しかし,上記3(2)ウのとおり,本願補正発明においては,吹込口の密封を完全にするという目的は,弁紙の幅w2をw1よりも小さな幅とするとともにx-x線よりも突出させ,弁紙の吹込口端部を直接加熱できるようにすることによって達成されているものと認められる。原告らは,当該目的が,斜め筋折り込み部にタテメスを設けて底貼部の折り返しを4重ではなく2重にしたこと(相違点2の構成)及び接着剤としてホットメルトを採用したこと(相違点3の構成)によって達成されていると主張するが,明細書の記載に基づかない主張であって,採用することができない。
(2) また,相違点2及び3に係る構成を採用することによって,吹込口端部以外の部分を含めて弁紙の内面全体について,熱溶着のための加熱時間が少なくて済むという効果が生ずるとしても,かかる効果は,相違点2及び3に係る構成(かかる構成自体が周知のものであることは上記3,4のとおりである。)の組合せから当然に予測されるものにすぎない。
(3) よって,原告らの取消事由4の主張も採用することができない。
6結語以上の次第で,原告らが取消事由として主張するところは,いずれも理由がない。よって,原告らの本訴請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 岡本岳
裁判官 上田卓哉