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関連審決 不服2002-19144
関連ワード 特許を受ける権利 /  確実性 /  技術的思想 /  インターネット /  アクセス /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  相違点の認定 /  周知技術 /  慣用技術 /  技術常識 /  先行技術 /  発明の詳細な説明 /  名義変更 /  着想 /  参酌 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 17年 (行ケ) 10485号 審決取消請求事件
原告 日本情報サービス株式会社
訴訟代理人弁護士 鮫島正洋
同 内田公志
同 吉原政幸
同 中原敏雄
同 後藤正邦
被告 特許庁長官中嶋 誠
指定代理人佐藤伸夫
同 赤穂隆雄
同 篠原功一
同立川功
同 小林和男
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2006/07/19
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2002-19144号事件について平成17年3月16日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,後記特許出願の拒絶査定を不服としてされた審判請求に対し,特許庁が請求不成立の審決をしたことから,原告が,その取消しを求めた事案である。
当事者の主張
1 請求の原因(1) 特許庁における手続の経緯有限会社アーキスケープは,平成11年2月5日,名称を「通信回線を利用する広域購買方法及び装置及びユーザ端末」とする発明について特許出願(特願平11-28224号。以下「本願」という。)をした。
本願に係る特許を受ける権利は,平成12年5月16日,有限会社アーキスケープからAに譲渡され,平成12年5月19日,特許庁に対して出願人名義変更届が出された。
Aは,平成13年5月21日付け手続補正書によって特許請求の範囲の記載を補正した(以下「本件補正」という。)。
本願に係る特許を受ける権利は,平成13年7月23日,Aから株式会社イースタンイーストに譲渡され,平成13年8月1日,特許庁に対して出願人名義変更届が出された。
特許庁は,平成14年9月3日,本願について拒絶査定をし,これに対し,株式会社イースタンイーストは,不服の審判請求をした。
本願に係る特許を受ける権利は,平成15年7月17日,株式会社イースタンイーストから原告に譲渡され,平成15年7月30日,特許庁に対して出願人名義変更届が出された。
特許庁は,上記不服審判請求を不服2002-19144号事件として審理した上,平成17年3月16日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その審決謄本は平成17年4月19日原告に送達された。
(2) 発明の内容本件補正後の特許請求の範囲は,請求項1ないし13から成り,その請求項1(以下これに記載された発明を「本願発明」という。)は,次のとおりである。
「中央サーバと,前記中央サーバ及び決済機関サーバと専用回線で接続されており,ユーザ端末と接続されている複数の地域サーバと,を具備し,前記地域サーバは,前記ユーザ端末から送信される購買者情報のうち,既存のシステムに即時に反映させる必要がない情報については,通信回線の負荷の少ない時間帯にバッチで前記専用回線を通じて前記中央サーバに送信し,前記ユーザ端末から送信される購買者情報に関連する決済情報を前記専用回線を通じて前記決済機関サーバに送信することを特徴とする,広域購買システム。」(3) 審決の内容ア 審決の内容は,別紙審決写しのとおりであり,その理由の要点は,次のとおりである。
本願発明は,特開平10-302150号公報(平成10年11月13日公開。以下「引用例」という。)に記載の発明(以下「引用発明」という。)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたから,特許法29条2項により特許を受けることができない。
イ なお,審決は,引用発明を次のとおり認定した上,本願発明との一致点及び相違点を,以下のとおりとした。
〈引用発明の内容〉「センタサーバと,前記センタサーバと専用線網で接続されており,試聴端末及びレジスタに接続されている複数のローカルサーバと,前記センタサーバ及びクレジットカード照会部と専用線網で接続されている試聴販売端末部と,を具備し,前記ローカルサーバは,前記試聴端末及びレジスタからそれぞれ送信される試聴データの配信要求及び売上情報のうち,売上情報については,設定された時間帯にバッチで専用線網を通じて前記センタサーバに送信し,前記試聴販売端末部は利用者に関連する決済情報を専用線網を通じて前記クレジットカード照会部に送信する,音楽記録媒体試聴販売システム」〈一致点〉「中央サーバと,前記中央サーバと専用回線で接続されており,端末と接続されている複数の地域サーバと,を具備し,前記地域サーバは,前記端末から送信される情報のうち,一部の情報については,バッチで前記専用回線を通じて前記中央サーバに送信する,広域購買システム」〈相違点1〉本願発明では,地域サーバに接続されている端末が,(購買可能な)「ユーザ端末」であり,地域サーバに購買者情報を送信するものであるのに対し,引用発明では,ローカルサーバ(本願発明の「地域サーバ」に相当)に接続されている端末が,試聴端末及びレジスタであり,ローカルサーバにそれぞれ試聴データの配信要求及び売上情報を送信するものであって,(購買可能な)試聴販売端末部は,センタサーバと(ローカルサーバを介さずに)接続されている点。
〈相違点2〉本願発明では,地域サーバが決済機関サーバと専用回線で接続され,地域サーバが,ユーザ端末から送信される購買者情報に関連する決済情報を前記専用回線を通じて前記決済機関サーバに送信する構成であるのに対し,引用発明では,試聴販売端末部がクレジットカード照会部(本願発明の「決済機関サーバ」に相当)と専用線網(本願発明の「専用回線」に相当)で接続され,試聴販売端末部が,利用者に関連する決済情報を前記専用線網を通じて前記クレジットカード照会部に送信する構成である点。
〈相違点3〉地域サーバが,端末から送信される情報で中央サーバに送信する情報の内容と送信時期について,本願発明では,ユーザ端末から送信される購買者情報のうち,既存のシステムに即時に反映させる必要がない情報については,通信回線の負荷の少ない時間帯にバッチで送信するとしているのに対し,引用発明では,端末から送信される情報のうち,売上情報については,設定された時間帯にバッチで送信されるものである点。
(4) 審決の取消事由しかしながら,審決は,相違点2の認定を誤り,相違点2に関する進歩性の判断を誤り,相違点3に関する進歩性の判断を誤ったものであるから,違法として取り消されるべきである。
ア 取消事由1(相違点2の認定の誤り)(ア) 審決は,相違点2において,本願発明の「地域サーバ」を引用発明の「試聴販売端末部」に比肩し得るものとして対比している。
(イ) しかし,本願発明の「地域サーバ」は,「中央サーバ及び決済機関サーバと専用回線で接続されており,ユーザ端末と接続されている」と定義されているところ,引用発明の「試聴販売端末部」は,ユーザ端末と接続されていないから,この定義を具備するものではない。本願発明において「地域サーバ」がユーザ端末からの購買者情報を収集する役割を有するものであることに鑑みれば,ユーザ端末と接続されていない引用発明の「試聴販売端末部」は,本願発明の「地域サーバ」と比肩し得るものではない。
(ウ) 仮に,引用発明の「試聴販売端末部」が,本願発明の「地域サーバ」の役割を果たすと仮定した場合でも,ユーザ端末と接続されていない「試聴販売端末部」は,「前記ユーザ端末から送信される購買者情報に関連する決済情報」にアクセスすることはできないし,ゆえにこれを「専用回線を通じて決済機関サーバに送信する」という構成も採り得ない。
(エ) したがって,審決の相違点2の認定は誤っており,正しくは次のようにされるべきである。
「本願発明では,地域サーバが決済機関サーバと専用回線で接続され,地域サーバが,ユーザ端末から送信される購買者情報に関連する決済情報を前記専用回線を通じて前記決済機関サーバに送信する構成が開示されているが,引用発明においてはかかる開示は存在しない。」イ 取消事由2(相違点2に関する進歩性判断の誤り)(ア) 引用発明においては,本願発明の「地域サーバ」に相当する「ローカルサーバ」は,本願発明の「決済機関サーバ」に相当する「クレジットカード照会部」と個々に接続されていないから,この構成においては,「地域サーバ」に集積される購買者情報のうち,高いセキュリティが要求される決済情報について,本願発明のように「地域サーバ」と「決済機関サーバ」の間で直接専用回線を通じて送受信を行うことによりセキュリティを強化するという趣旨は全く反映されない。したがって,引用発明は本願発明の効果を奏するものではない。
また,引用例(甲5)の段落【0021】には,「回線網100は専用線網やISDN網(サービス総合デジタル網),あるいは無線通信網が使用可能である」との記載がある。しかし,引用例には,本願発明のように,「地域サーバ」と「中央サーバ」,「地域サーバ」と「決済機関サーバ」という特定の要素を専用回線で接続すべきことは開示されていない。引用発明は,セキュリティに注目した発明ではないから,セキュリティの観点から専用線網を選択すべきことについては何の示唆もない。一般に,専用回線は公衆回線やISDNなどと比べてコストが高いから,セキュリティに対する注目がない引用発明において,回線網として専用回線を選択する必然性はなく,その動機付けも出てこない。引用例には,セキュリティ/コストを両立させるという本願発明の着想は開示されていない。
本願発明は,専用線網やISDN網,無線通信網などといった羅列的な接続手段のうち,セキュリティの観点から専用線網を選択した点に特許性を認めるべきであり,この面では選択発明的な要素を具備しているものである。
審決は,相違点2に関する進歩性を判断するに当たって,以上のような点を考慮していない誤りがある。
(イ) 審決は,相違点2に関する進歩性を判断するに当たって,「ローカルサーバに接続されている端末として,購買可能な試聴販売端末部を導入することに,何ら阻害要因は見当たらない」と判断している(7頁21行〜23行)。
しかし,審決は,相違点2として「試聴販売端末部がクレジットカード照会部…と専用線網…で接続され」と認定し,「試聴販売端末部」は,「クレジットカード照会部」と専用線網で接続されていることを前提としているところ,「試聴販売端末部」を「ローカルサーバ」に接続することは,「クレジットカード照会部」と専用線網で接続されていない「試聴販売端末部」を「ローカルサーバ」に接続することになるから,上記前提事項を崩すことになる。したがって,「ローカルサーバ」に接続されている端末として,「購買可能な試聴販売端末部を導入すること」はできないのであって,そこに阻害要因があると考えるべきである。
ウ 取消事由3(相違点3に関する進歩性判断の誤り)相違点3が容易であると認定するためには,少なくとも,「中央サーバ」・「地域サーバ」・「ユーザ端末」から構成されるシステムにおいて,「地域サーバ」において取り扱う情報を既存のシステムに即時反映するかどうかという観点から情報を取捨選択し,「中央サーバ」への送信の可否を検討することが必要であり,そうでなければ,本願発明の相違点3に係る構成を導入する動機付けはない。ところが,審決は,この動機付けの基礎となる引用例の記述を指摘することなく,また他の先行技術文献を引用することもしていない。引用例には,上記の即時性の観点から情報を分類するという技術的思想着想について開示も示唆もない。また,引用例には,即時送信しない情報の例が1例だけ記載され,即時送信すべき情報の例は記載されていないのであるから,即時性という観点から送信情報の分類,選択がなされることを裏付けるだけの事実は開示されていない。
したがって,審決が,引用発明において「実質的には,…即時性の観点から,情報が分類・位置づけがされ,その分類・位置づけに従って,即時送信するか,バッチで送信するか,という送信処理の選択がなされている」(8頁18行〜22行)として,相違点3に関して進歩性がないと判断したことは誤りである。
2 請求原因に対する認否請求原因(1)ないし(3)の各事実は認めるが,(4)は争う。
3 被告の反論(1) 取消事由1に対し審決では,引用発明の「ローカルサーバ」は本願発明の「地域サーバ」に相当すると認定し,これを前提として,本願発明と引用発明とを対比し,相違点2を導いているのであって,相違点2が,原告のいうように「地域サーバ」と「試聴販売端末部」とを比肩・対比するものではないことは明らかである。
本願発明では,「地域サーバ」が「決済機関サーバ」と専用回線で接続された接続構成であるため,ユーザ端末から送信される購買者情報に関連する決済情報は,「地域サーバ」が専用回線を通じて「決済機関サーバ」に送信される構成であるのに対し,引用発明では,「試聴販売端末部」が「ローカルサーバ」を介さずに「クレジットカード照会部」と専用線網で接続された接続構成であるため,利用者に関連する決済情報は,「試聴販売端末部」から「ローカルサーバ」を介することなく直接的に専用線網を通じて「クレジットカード照会部」に送信される構成である。そのため,相違点2は,このような決済情報が発生する端末から決済情報処理部に至る接続構成の相違及び当該接続構成の相違に基づく決済情報の送信構成の相違を整理抽出したものであり,そこに認定の誤りはない。
(2) 取消事由2に対しア システム設計には,通常,種々の業務システムについての知識・経験やシステム技術についての知識を豊富に持ち合わせた技術者,すなわち当業者が当たるわけであるから,本願発明と引用発明を対比して進歩性の判断を行うに当たっては,当業者の視点に立ち,引用例に直接的に記載されている技術的事項だけでなく,引用例技術の背景,引用例技術に関連する社会常識,技術常識,慣用技術周知技術などを参酌しながら,広い視野から総合的に検討し判断する必要がある。
イ 引用例において,「ローカルサーバ」及びその端末である「レジスタと試聴用端末」から構成される「ローカルシステム部」は,音楽ソフト販売店等の販売エリア内に設置され,利用者が試聴できるようにするとともに,利用者が購買する場合には店員がレジスタを操作して決済するようにした有人販売のためのシステム構成である。一方,「試聴販売端末部」は,「販売店の店員がいなくても無人で試聴及び販売を行うことができ」(引用例(甲5)段落【0019】)るもので,無人販売のためのシステム構成である。そして,これら有人販売のためのシステム構成と無人販売のためのシステム構成とは,「センタサーバ1はローカルシステム部…及び試聴販売端末部…各々に対し,回線網100を通して音楽ソフトの試聴データの送信及び売上情報の受信を行えるように構成されている」(引用例(甲5)段落【0022】)との記載からも明らかなように,引用例の販売システムの中で,共にセンタサーバによる試聴データの配信及び売上情報の管理を受けている点で共通し,密接な関連を持つ関係と位置づけられている。
そして,有人販売に換えて,もしくは有人販売に並行して,無人販売のための自動販売機を導入することは,例えば鉄道の乗車券・指定席券や航空券の各販売エリアを考えれば明らかなように,省力化の観点から一般的に行われており,我々が日常的に目にしていることであり,有人販売窓口の端末とカード取引が可能な指定席券等の自動販売機とが,当該販売エリアを統括する地域サーバに接続されたシステム構成は,本願時点では既に慣用技術化していた事項である。
引用例の無人販売のための「試聴販売端末部」は,「販売店の営業時間に関係なく,音楽ソフトを試聴して購入することができる」(引用例段落【0019】)ようにするために,販売店舗外に設置され,このため「ローカルサーバ」に接続されず,独立して「センターサーバ」及び「クレジットカード照会部」と接続されていると解することができるが,省力化というのは,現代社会においてはいずれの販売店頭においても共通する課題であることから,引用例に接した当業者が,店舗内の試聴端末として,クレジットカードでも購買可能な機能を有する「試聴販売端末」を導入し,店舗内の端末を統括する「ローカルサーバ」を介して「センターサーバ」及び「クレジットカード照会部」とデータの送受信を行うように構成することは,格別の考案力を要せず想起することができたものである。この場合,「ローカルサーバ」は,本来的に店舗内の端末が送受信する情報の中継機として統括的な役割を果たすものであるから,クレジットカード取引を可能にするためには必然的に「クレジットカード照会部」と接続されることになり,「クレジットカード照会部」と購買者の決済情報をやり取りすることになる。そして,技術常識からして,当然にセキュリティ対策を講じることになり,「ローカルサーバ」と「クレジットカード照会部」とを回線網で接続するに際して,引用例で提示された「回線網100は専用線網やISDN網(サービス総合デジタル網),あるいは無線通信網が使用可能である。」(段落【0021】)という選択肢の中で,閉路であるが故にセキュリティに優れる専用線網を選択採用することは,当業者が行い得る設計的事項に過ぎない。また,引用例において,「ローカルサーバ」と「センタサーバ」との間で,例えば音楽ソフトのデジタルデータや売上情報など相互にやりとりされる情報の秘匿の必要性や情報量に応じて専用線網を選択採用することも自然な発想ということができる。
ウ 以上検討したように,セキュリティの観点から「ローカルサーバ」と「センタサーバ」,「ローカルサーバ」と「クレジットカード照会部」とを専用回線で接続する構成は,引用例に特段の明記はなくても,引用例に接した当業者が,技術的背景,社会常識,技術常識を踏まえて容易に想起できるものであり,かつ,達成すべき効果であるといえる。また,「ローカルサーバ」に接続されている端末として,「購買可能な試聴販売端末部を導入すること」に阻害要因があるということもできない。
(3) 取消事由3に対し引用発明において,「ローカルサーバ」が受ける情報のうち,試聴データの要求については,要求された「試聴データが試聴データ記憶部になければ,ローカルサーバがその試聴データをセンタサーバに要求」することになるが,この「ローカルサーバ」からの送信は,「ローカルサーバ」と「試聴端末」との間のリアルタイムの送受信のやり取りの中で起こることであり,リアルタイムで送受信がされなければ「試聴端末」の役割が事実上果たせなくなるから,当該「ローカルサーバ」から「センタサーバ」への送信は,技術常識からして即時送信であることは明らかである。そして,このような「ローカルサーバ」から「センタサーバ」への送信は,一般的には1日の中で何回となく機会があると考えられる。
一方,「ローカルサーバ」が受ける情報のうち,売上情報データについては,1日の中で頻繁に受信の機会があると考えられるが,それらデータは一旦「ローカルサーバ」内に保存され,「ローカルサーバ」からの「売上情報データの送信は,設定によって毎日定刻に実施したり毎週何曜日の定刻等に実施したりする」ので,バッチでセンタサーバへ送信されることになる。
したがって,引用例においては,「ローカルサーバ」の仕組みとして,次々に受ける情報を処理するに際して,「センターサーバ」に送るべき情報をその内容に応じた所定の態様での送信が可能な仕組みになっており,売上情報が,「ローカルサーバ」の送信処理の中で,既存のシステム(「センターサーバ」)に即時に反映させる必要がない情報であると位置づけられ処理されていることは明らかである。
このように,引用例に記載された事項に基づき技術常識を勘案しつつ判断すると,相違点3に係る事項については引用発明から容易に想到可能であるといえる。
当裁判所の判断
1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(発明の内容),(3)(審決の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。
2 取消事由1(相違点2の認定の誤り)について(1) 原告は,審決が,相違点2において,本願発明の「地域サーバ」を引用発明の「試聴販売端末部」に比肩し得るものとして対比していることは,誤りであると主張する。
(2) 審決は,次のとおり認定判断した上,それに引き続いて,前記第3の3ア(イ)の本願発明と引用発明との一致点,相違点の認定をしている。
「そこで,本願発明と引用例発明とを比較すると,引用例発明の「センタサーバ」は,本願発明の「中央サーバ」に相当し,以下同様に,「専用線網」は「専用回線」に,「ローカルサーバ」は「地域サーバ」に,それぞれ相当する。
また,引用例発明の「試聴端末及びレジスタ」と,本願発明の「ユーザ端末」とは,サーバに接続される「端末」という概念に包摂され,引用例発明の「試聴データの配信要求及び売上情報」と,本願発明の「購買者情報」とは,「端末から送信される情報」という概念に包摂されるものである。
また,引用例発明の「売上情報」と,本願発明の「既存のシステムに即時に反映させる必要がない情報」とは,「一部の情報」という概念で共通する。
さらに,引用例発明の「販売システム」は,通信回線網を用いて広域における販売(利用者の側からいうと「購買」)を意図したシステムであることは明らかであり,他方,本願発明の「広域購買システム」は,音楽のソフト販売をも対象としていることから,本願発明が音楽のソフト販売を対象とした場合を考えると,引用例発明の「音楽記録媒体試聴販売システム」と,本願発明の「広域購買システム」とは,「広域購買システム」という概念で共通するということができる。」(5頁下9行〜6頁9行)そして,審決は,次のとおり相違点1及び2について判断している。
「引用例発明において,ローカルサーバに接続されている端末である試聴端末とレジスタとは,音楽ソフト販売店店頭にて,音楽ソフトを購買しようとする利用者が試聴できるようにするとともに,利用者が購買する場合には店員がキャッシュレジスタ(金銭登録機)を操作して決済するようにした有人販売のためのシステム構成であることは明らかである。一方,試聴販売端末部は,販売店の店員がいなくてもユーザの操作により試聴及び販売を行うことができる無人販売のためのシステム構成であることは明らかである。
ところで,販売店において,有人販売に換えて,もしくは有人販売に並行して,無人販売のための自動販売機を導入することは一般的に行われていることである。しかも,引用例発明における試聴端末と試聴販売端末部とは,いずれもセンターサーバ由来の試聴データを受けて音楽ソフトの試聴をすることができる機能を有する端末機であることで共通する。してみれば,ローカルサーバに接続されている端末として,購買可能な試聴販売端末部を導入することに,何ら阻害要因は見当たらない。
そして,試聴販売端末部は,クレジットカードによる決済のための情報や音楽ソフト販売の売上情報などの情報,即ち購買者から得られる情報を送信する構成であり,また,ローカルサーバは,本来的に端末が送受信する情報の中継機としての役割を果たすものであって,…端末から送信される情報のうち,売上情報については,バッチでセンターサーバに送信する機能を有している。
してみれば,引用例発明において,ローカルサーバに接続される端末として試聴販売端末部を導入することに伴って,ローカルサーバを専用線網(本願発明の「専用回線」に相当)でクレジットカード照会部(本願発明の「決済機関サーバ」に相当)とも接続するようにし,前記試聴販売端末部から送信される購買者から得られる情報が,まずはローカルサーバに送信されるようにシステムを構成するとともに,前記購買者から得られる情報に関連する決済のための情報を,ローカルサーバがクレジットカード照会部(本願発明の「決済機関サーバ」に相当)に送信するように構成することは,当業者が容易に想到しえたものと判断することができる。
したがって,引用例発明に基づいて,本願発明の相違点1及び相違点2に係る構成を得ることは,当業者が容易になし得た事項である。」(7頁10行〜8頁2行)(3) 以上の審決の認定判断からすると,審決は,引用発明の「ローカルサーバ」が本願発明の「地域サーバ」に相当すると認定した上で,引用発明の「試聴販売端末」に関する構成を併せて考慮することにより,本願発明の相違点1及び相違点2に係る構成は引用発明から容易に想到することができたとの判断をしているものである。相違点2は,その過程において,本願発明と引用発明の「試聴販売端末」に関する構成との間における,決済情報が発生する端末から決済情報処理部に至る接続構成の相違及び当該接続構成の相違に基づく決済情報の送信構成の相違を整理して記載したもので,引用発明の「試聴販売端末」が本願発明の「地域サーバ」に相当するとして,それらを対比しているものではない。
(4) したがって,審決は,本願発明の「地域サーバ」を引用発明の「試聴販売端末部」に比肩し得るものとして対比しているということはないから,原告の上記(1)の主張は,採用できない。
3 取消事由2(相違点2に関する進歩性の判断の誤り)について(1) 原告は,審決は,相違点2に関する進歩性の判断の誤ったものであると主張するので,以下,判断する。
(2) 引用例(甲5)には,次のような記載がある。
ア 全体の構成「…図1は本発明の一実施例による音楽記録媒体試聴販売システムの構成を示すブロック図である。図において,本発明の一実施例による音楽記録媒体試聴販売システムでは,センタサーバ1と,試聴販売端末部2-1〜2-nと,ローカルシステム部3-1〜3-mと,クレジットカード照会部7とが回線網100に夫々通信ケーブル等の通信路で接続されている。回線網100は専用線網やISDN網(サービス総合デジタル網),あるいは無線通信網が使用可能である。」(段落【0021】)イ センタサーバ「センタサーバ1はローカルシステム部3-1〜3-m及び試聴販売端末部2-1〜2-n各々に対し,回線網100を通して音楽ソフトの試聴データの送信及び売上情報の受信を行えるように構成されている。」(段落【0022】)ウ ローカルシステム部(ローカルサーバ,レジスタ,試聴端末部)「ローカルシステム部3-1〜3-mはローカルサーバ4-1〜4-m(ローカルサーバ4-2〜4-mは図示せず)と,レジスタ5-1〜5-m(レジスタ5-2〜5-mは図示せず)と,試聴端末部61-1〜61-m,……,6l-1〜6l-m(試聴端末部61-2〜61-m,……,6l-2〜6l-mは図示せず)とによって構成されている。」(段落【0023】)「ローカルサーバ4-1〜4-mはローカルシステム部3-1〜3-m内の音楽ソフト試聴サービスを一括して管理しており,試聴端末部61-1〜61-m,……,6l-1〜6l-mに試聴データの配信を行うようになっている。」(段落【0024】)「また,試聴サービスをするための試聴データはセンタサーバ1から回線網100を通じて受信することができ,売上情報の送信を行えるようになっている。試聴端末部61-1〜61-m,……,6l-1〜6l-mは音楽ソフトの試聴を行う利用者に対して試聴サービスをするための試聴端末装置である。」(段落【0025】)「レジスタ5-1〜5-mはローカルシステム部3-1〜3-mが設置される音楽ソフト販売店等のキャッシュレジスタ(金銭登録機)で,販売した音楽ソフトの情報をローカルサーバ4-1〜4-mに送信できるようになっている。」(段落【0026】)「図5は図1のローカルサーバ4-1の構成を示すブロック図である。
図において,ローカルサーバ4-1はCPU40-1と,プログラム記憶装置41-1と,作業用メモリ42-1と,試聴データ記憶部43-1と,情報管理部44-1と,操作部45-1と,印刷部46-1と,通信制御部47-1と,端末インタフェース部48-1と,表示部49-1と,レジスタインタフェース部50-1とから構成され,各部はCPUバス130によって互いに接続されている。」(段落【0048】)「…情報管理部44-1は磁気ディスク等の記憶媒体から構成されており,レジスタ5-1から受信した売上情報データ等を格納している。」(段落【0051】)「通信制御部47-1は通信ケーブル103を介して回線網100と接続されている。…」(段落【0053】)「…他のローカルサーバ4-2〜4-mもローカルサーバ4-1と同様の構成となっており,その動作もローカルサーバ4-1と同様となっている。」(段落【0054】)「また,CPU40-1はバーコード情報に該当する試聴データが試聴データ記憶部43-1になければ(図12ステップS63),その試聴データを回線網100を介してセンタサーバ1に要求する(図12ステップS65)。その試聴データが回線網100を介してセンタサーバ1から受信されると(図12ステップS66),CPU40-1はその試聴データを端末インタフェース部48-1と端末接続ケーブル104とを介して試聴端末部61-1に配信する(図12ステップS64)。」(段落【0113】)「続いて,ローカルシステム部3-1〜3-mが売上情報を管理し,センタサーバ1に各ローカルシステム部3-1〜3-m内の売上情報データを送信する動作について説明する。ここでは,ローカルシステム部3-1が売上情報の管理及び売上情報データの送信を行うものとする。」(段落【0118】)「レジスタ5-1でコンパクトディスク等の音楽ソフトが販売されると,販売された音楽ソフトのデータがレジスタ5-1からレジスタ接続ケーブル105を介してレジスタインタフェース部50-1に送信される。
レジスタインタフェース部50-1がこの売上情報データを受信すると(図15ステップS91),CPU40-1は情報管理部44-1に保存する(図15ステップS92)。」(段落【0120】)「ローカルシステム部3-1が情報管理部44-1に保存している音楽ソフト売上情報データは,ローカルシステム部3-1が設置されている音楽ソフト販売店等の営業時間終了後等に実施される。例えば,販売店の営業時間が10:00から20:00までであれば,20:00から次の日の10:00までの間に売上情報データの送信を行うことになる。売上情報データの送信はセンタサーバ1からでも,ローカルシステム部3-1からでも実施することができる。」(段落【0121】)「ローカルシステム部3-1から売上情報データの送信制御を行う場合,自動送信であれば,毎日定刻に実施する設定や毎週何曜日の定刻等に実施する設定ができる。この設定も,操作部45-1から表示部49-1に表示される設定メニューにしたがって行われる。」(段落【0123】)「また,各ローカルシステム部3-1〜3-mで管理している売上情報及び試聴販売端末部2-1〜2-nの売上情報を回線網100を介してセンタサーバ1に送信することによって,各ローカルシステム部3-1〜3-mの売上情報を一括に管理することができる。」(段落【0141】)エ 試聴販売端末部「試聴販売端末部2-1〜2-nは音楽ソフトの試聴をすることができ,その音楽ソフトを無人で販売することができる試聴販売端末装置である。」(段落【0028】)「…試聴販売端末部2-1はセンタサーバ1から試聴する曲の試聴データを回線網100を介して受信し(図8ステップS7),モニタ20-1に選択された音楽ソフトのパッケージを画像表示するとともに,その音楽ソフトの曲リストを表示する(図8ステップS8)。」(段落【0070】)「試聴販売端末部2-1はクレジットカードによる代金の支払いであれば(図10ステップS29),クレジットカードがカード入出力部22-1に挿入されると(図10ステップS30),クレジットカードからクレジットカード番号等のクレジットカード情報を読込む(図10ステップS31)。試聴販売端末部2-1は読込んだクレジットカード情報を基にクレジットカード照会部7に回線網100を介してカードの照会を行う(図10ステップS32)。」(段落【0081】)「試聴販売端末部2-1ではクレジットカード照会部7からの照会結果が使用可能のカードを示していれば(図10ステップS33),モニタ20-1に支払いの確認を表示し,利用者に対して再度購入の意志を確認する(図10ステップS34)。」(段落【0083】)「…この後,試聴販売端末部2-1は上記と同様に,購入された音楽ソフトを取出し口25-1に出力し,購入お礼をモニタ20-1に表示するととともに,この時の音楽ソフト販売の売上データを回線網100を介してセンタサーバ1に送信し(図9ステップS21,S22),試聴画面に戻る。」(段落【0084】)オ クレジットカード照会部「クレジットカード照会部7はクレジットカード情報を管理しており,試聴販売端末部2-1〜2-nから回線網100を通じてクレジットカードの照会がされた時にその情報を受信し,照会した結果を送信するよう構成されている。」(段落【0027】)「図7は図1のクレジットカード照会部7の構成を示すブロック図である。図において,クレジットカード照会部7はCPU70と,プログラム記憶装置71と,作業用メモリ72と,クレジットカード情報記憶部73と,操作部74と,印刷部75と,通信制御部76と,表示部77とから構成され,各部はCPUバス140によって互いに接続されている。」(段落【0057】)「…クレジットカード情報記憶部73は磁気ディスク等の記憶媒体から構成されており,試聴販売端末部2-1〜2-nから照会があった時に参照するデータを格納している。」(段落【0060】)「…通信制御部76は通信ケーブル106を介して回線網100に接続されている。…」(段落【0061】)「…試聴販売端末部2-1は読込んだクレジットカード情報を基にクレジットカード照会部7に回線網100を介してカードの照会を行う(図10ステップS32)。」(段落【0081】)「クレジットカード照会部7では通信制御部76が試聴販売端末部2-1から受信したクレジットカード情報をCPU70の制御によって作業用メモリ72に一時的に格納する。CPU70はこの一時的に格納したデータをクレジットカード情報記憶部73のデータと照合し,照合結果を通信制御部76から通信ケーブル106及び回線網100を介して試聴販売端末部2-1に送信する。」(段落【0082】)(3) 以上の(2)の引用例の各記載からすると,引用発明においては,@「ローカルシステム部」は,「レジスタ」,「試聴端末部」及び「ローカルサーバ」から成っていること,A「レジスタ」は,音楽ソフト販売店等のキャッシュレジスタ(金銭登録機)であり,「試聴端末部」は,音楽ソフトの試聴を行う利用者に対して試聴サービスをするための試聴端末装置であり,「ローカルサーバ」は,試聴データ及び売上情報を管理し,「回線網」を介して,「センタサーバ」に対して,「試聴端末部」から受信した試聴データの配信要求及び「レジスタ」から受信した売上情報データの送信を行うとともに,「センタサーバ」から試聴データの配信を受信するものであること,B「試聴販売端末部」は,無人で音楽ソフトの試聴及び販売を行うもので,「回線網」を介して,「センタサーバ」との間では試聴データの受信及び売上データの送信を行い,「クレジットカード照会部」との間ではクレジットカード情報に関するデータの送受信を行うものであることが認められる。
また,以上の(2)の引用例の各記載からすると,引用例には,コンパクトディスク等の音楽ソフトを販売する二つの方法が開示されている。一つは,音楽ソフト販売店等の「試聴端末部」で音楽を試聴した顧客が,音楽ソフト販売店等の店員から音楽ソフトを購入する方法である(以下「販売店購入」という。)。この方法では,売上情報は,キャッシュレジスタ(金銭登録機)に入力され,「センタサーバ」に対して送信される。また,この方法による場合,引用例に明示はないものの,キャッシュレジスタ(金銭登録機)を介することから,現金によるものと解される。もう一つは,無人の「試聴販売端末部」で音楽を試聴した顧客が,無人の「試聴販売端末部」から音楽ソフトを購入する方法である(以下「端末購入」という。)。この方法では,現金又はクレジットカードのいずれかで代金が支払われ,「試聴販売端末部」から「センタサーバ」に対して売上データが送信され,「試聴販売端末部」と「クレジットカード照会部」との間でクレジットカード情報に関するデータの送受信が行われる。
(4) 上記(3)認定の事実からすると,引用発明の「センタサーバ」が本願発明の「中央サーバ」に,引用発明の「ローカルサーバ」が本願発明の「地域サーバ」に,引用発明の「クレジットカード照会部」が本願発明の「決済機関サーバ」に,それぞれ相当するものと認められ,その旨の審決の判断に誤りはない。また,本願発明の「ユーザ端末」は,その文言及び本願明細書(甲2)の「発明の詳細な説明」中に「購買者が操作するユーザ端末」(段落【0007】,【0008】,【0009】,【0016】,【0019】),「ユーザ端末14は,購買者が商品の購買の際に操作するものである。」(段落【0028】)との記載があることからすると,購買者が購買の際に操作する端末であると認められるところ,上記(3)認定の事実からすると,引用発明の「試聴販売端末部」は,本願発明の「ユーザ端末」に相当するものと認められる。さらに,上記(3)認定の事実からすると,引用発明の「売上情報」は,購買者の購買に関する情報であるから,本願発明の「購買者情報」に相当し,引用発明の「クレジットカード情報」は,本願発明の「決済情報」に相当するものと認められる。
引用例において,無人での試聴及び販売を想定した端末購入を,販売店購入のような有人販売と並行して実施する,すなわち,試聴販売端末部を販売店に設置導入することに関しては,利便性や省力化の面からすればその動機付けは十分にあり得るところであるから,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が容易に想到し得る範囲内のものであるということができる。そして,端末購入は,もともと現金決済及びクレジットカード決済の双方を可能にしているのであるから,販売店購入と並行して端末購入を実施する場合にも,端末購入において,現金決済のみならずクレジットカード決済を可能にすることは,利用者及び販売者の利便性を考慮すれば当然想定される範囲内のものであるということができる。
販売店購入の場合には,「ローカルサーバ」がローカルシステム部内の音楽ソフト試聴サービスを一括して管理しており,「センタサーバ」との試聴データの授受をするほか,試聴データ及び売上情報を管理し,「センタサーバ」に対して売上情報データの送信を行っていることからすると,販売店購入と並行して端末購入を実施する場合には,端末購入についても,販売店購入の場合と同様に,「センタサーバ」への売上情報データの送信を「ローカルサーバ」を介して行うことを,当業者が容易に想到し得るということができ,また,「クレジットカード照会部」とのクレジットカード情報に関するデータの送受信を,上記売上情報データの送信と共に「ローカルサーバ」を介して行うことも,当業者が容易に想到し得るということができる。そうすると,引用発明の端末購入を販売店購入と並行して実施し,「試聴販売端末部」から,クレジットカード情報と売上情報を読み込み,「試聴販売端末部」と「クレジットカード照会部」との間で「ローカルサーバ」と「回線網」を介してクレジットカード情報に関するデータの送受信を行い,「試聴販売端末部」から「センタサーバ」に対して「ローカルサーバ」と「回線網」を介して売上情報データの送信を行うことは,当業者が容易に想到し得るものであるということができる。
引用発明においては,「回線網」について,前記(2)アのとおり,「専用線網やISDN網(サービス総合デジタル網),あるいは無線通信網が使用可能である。」とされていて,専用線を用いることが明示されている。確かに,引用発明においては,セキュリティーの観点は明示されていないが,売上情報やクレジットカード情報を扱うに当たってセキュリティーの観点が重要であることは,特に記載するまでもない自明の事項であるといえる。そして,専用線網を用いると,ISDN網や無線通信網を用いる場合に比べてセキュリティーの観点から優れていることも明らかであるから,売上情報データやクレジットカード情報に関するデータを「回線網」で送受信するに当たって,セキュリティーの観点から「専用線網」を用いることは,当業者が容易に想到し得る事項であるということができる。なお,この「専用線網」が本願発明の「専用回線」に相当することは明らかである。
以上を総合すると,引用発明の端末購入を販売店購入と並行して実施し,セキュリティーの観点から,「ローカルサーバ」と「クレジットカード照会部」との間で専用線網を通じてクレジットカード情報に関するデータの送受信を行い,「ローカルサーバ」と「センタサーバ」との間で専用線網を通じて売上情報データの送信を行うことは,当業者が容易に想到し得るものということができる。
(5) 原告は,引用発明においては,本願発明の「地域サーバ」に相当する「ローカルサーバ」は,本願発明の「決済機関サーバ」に相当する「クレジットカード照会部」と個々に接続されていないから,本願発明のように「地域サーバ」と「決済機関サーバ」の間で直接専用回線を通じて送受信を行うことにより,セキュリティを強化するという趣旨は全く反映されず,引用発明は本願発明の効果を奏するものではない,と主張する。しかし,本願発明は,手続補正書(甲3)の「特許請求の範囲」の「請求項1」によると,地域サーバは,購買者情報に関連する決済情報を前記専用回線を通じて前記決済機関サーバに送信すると記載されているにすぎないから,「地域サーバ」が「決済機関サーバ」と個々に接続されていることや「地域サーバ」が「決済機関サーバ」と直接接続されていることは要件とはなっていない。そして,上記のとおり,引用発明の端末購入を販売店購入と並行して実施し,セキュリティーの観点から,本願発明の「地域サーバ」に相当する「ローカルサーバ」と,本願発明の「決済機関サーバ」に相当する「クレジットカード照会部」とを,本願発明の「専用回線」に相当する「専用線網」で接続し,本願発明の「決済情報」に相当する「クレジットカード情報」に関するデータの送受信を行うことは,当業者が容易に想到し得るものであり,そのような構成をとることにより,セキュリティを強化するという本願発明の効果を奏することは明らかであるから,原告の主張に係る上記の点は失当である。
また,原告は,引用例には,本願発明のように,「地域サーバ」と「中央サーバ」,「地域サーバ」と「決済機関サーバ」という特定の要素を専用回線で接続すべきことは開示されていないし,また,引用発明は,セキュリティに注目した発明ではないから,引用例には,セキュリティ/コストを両立させるという本願発明の着想は開示されていない,と主張する。しかし,上記のとおり,引用発明の端末購入を販売店購入と並行して実施し,セキュリティーの観点から,本願発明の「地域サーバ」に相当する「ローカルサーバ」と本願発明の「決済機関サーバ」に相当する「クレジットカード照会部」との間で,本願発明の「専用回線」に相当する「専用線網」を通じて,本願発明の「決済情報」に相当する「クレジットカード情報」に関するデータの送受信を行い,上記「ローカルサーバ」と本願発明の「中央サーバ」に相当する「センタサーバ」との間で,上記「専用線網」を通じて,本願発明の「購買者情報」に相当する「売上情報」データの送信をすることは,当業者が容易に想到し得るのであって,そのような構成をとることにより,セキュリティを強化するという本願発明の効果を奏することは明らかであるから,原告の主張に係る上記の点は失当である。
なお,本願明細書(甲2)には,「通常は,専用回線や公衆回線に比べ,インターネットに代表されるように,ネットワークを利用する方がコスト面では有利である。しかしながら,通信回線を利用する広域購買方法及び装置においては,クレジットカード情報など,セキュリティ管理を要する情報が存在する。セキュリティ管理の容易性,あるいは確実性という観点では,中央サーバ10,地域サーバ12,及びユーザ端末14に渡ってすべて,専用回線1あるいは公衆回線3のみを用いる方がよい。」(段落【0037】)との記載があり,コストを犠牲にしてセキュリティを強化することが記載されているが,セキュリティとコストを両立させるという趣旨の記載はなく,本願発明にそのような効果があるとは認められない。
さらに,原告は,本願発明は,セキュリティの観点から専用線網を選択した点に特許性を認めるべきであり,この面では選択発明的な要素を具備しているものである,と主張するが,セキュリティの観点から専用線網を選択した点に進歩性を認めることができないことは,すでに判示したとおりであるから,原告のこの主張は採用できない。
(6) 原告は,引用発明の「試聴販売端末部」は,「クレジットカード照会部」と専用線網で接続されていることを前提としているところ,「試聴販売端末部」を「ローカルサーバ」に接続することは,「クレジットカード照会部」と専用線網で接続されていない「試聴販売端末部」を「ローカルサーバ」に接続することになり,上記前提事項を崩すことになるから,「ローカルサーバ」に接続されている端末として,「購買可能な試聴販売端末部を導入すること」には阻害要因がある,と主張する。
原告が主張するとおり,引用発明の端末購入において,「試聴販売端末部」は「クレジットカード照会部」と専用線網で接続されている。しかし,上記(4)のとおり,引用発明の端末購入を販売店購入と並行して実施し,「試聴販売端末部」を「ローカルサーバ」に接続することを当業者は容易に想到することができるのであって,この点に阻害要因があるとはいえないから,原告の主張は採用できない。
(7) したがって,原告が主張する取消事由2は理由がない。
4 取消事由3(相違点3に関する進歩性の判断の誤り)について(1) 原告は,審決は,相違点3に関する進歩性の判断の誤ったものであると主張するので,以下,判断する。
(2) 前記2(2)の引用例の記載によると,引用発明における「ローカルサーバ」と「センタサーバ」との間における売上情報データのやり取りは,次のようなものであると認められる。
「ローカルサーバ」は,「レジスタ」から送信された売上情報データを「ローカルサーバ」内の情報管理部に保存しておく。「センタサーバ」への売上情報データの送信は,音楽ソフト販売店等の営業時間終了後等(例えば,20:00から次の日の10:00までの間)に実施するか,又は,毎日定刻に実施したり,毎週何曜日の定刻等に実施するよう自動送信の設定をすることもできる。
(3) 以上のとおり,引用発明において,「ローカルサーバ」から「センタサーバ」への売上情報データの送信は,売上情報データが発生するたびに送信されるものでなく,音楽ソフト販売店等の営業時間終了後などにまとめて送信されるから,センタサーバに対して即時に反映させる必要がない情報のバッチの処理(「情報処理用語集」[乙5]によれば,バッチ処理 batchprocessingとは,データの処理において,必要なデータをためておき,それをひとまとめに処理する方式,とされている。)であるということができる。なお,引用例においては,「ローカルサーバ」に対する売上情報データの送信は,「レジスタ」からされることしか記載されていないが,前記3(4)のとおり,引用発明の端末購入を販売店購入と並行して実施し,「試聴販売端末部」からも送信されるものとすることは,当業者が容易に想到することができる。
(4) 手続補正書(甲3)の「特許請求の範囲」の「請求項1」には,前記のとおり「前記地域サーバは,前記ユーザ端末から送信される購買者情報のうち,既存のシステムに即時に反映させる必要がない情報については,通信回線の負荷の少ない時間帯にバッチで前記専用回線を通じて前記中央サーバに送信し,」と記載されているのみであるから,本願発明は,購買者情報のうち,既存のシステムに即時に反映させる必要がない情報については,通信回線の負荷の少ない時間帯にバッチで処理するというものであって,それ以上の内容は含まれていない。
そして,引用例には,「即時に反映させる必要がない情報」とか,「バッチの処理」という文言はないものの,上記(3)のとおり,本願発明の「購買者情報」に相当する「売上情報データ」について,センタサーバに対して即時に反映させる必要がない情報のバッチの処理が記載されている。また,引用例には,このような情報の送信時間について,「通信回線の負担の少ない時間帯」という文言はないものの,上記のとおり,「例えば,20:00から次の日の10:00までの間」という記載があるから,通信回線の負荷が小さいことが明らかな夜間の時間帯が例示されているということができる上,センタサーバに対して即時に反映させる必要がない情報であれば,このような通信回線の負荷が小さい時間に送信することが合理的であることも明らかである。
したがって,当業者は,本願発明の相違点3に係る構成について,容易に想到することができたものということができる。
(5) 原告は,相違点3が容易であると認定するためには,少なくとも,「中央サーバ」・「地域サーバ」・「ユーザ端末」から構成されるシステムにおいて,「地域サーバ」において取り扱う情報を既存のシステムに即時反映するかどうかという観点から情報を取捨選択し,中央サーバへの送信の可否を検討することが必要であると主張する。
しかし,本願発明は,上記(4)で判示したようなものである。原告が主張する「情報を取捨選択し,中央サーバへの送信の可否を検討する」ことが,上記(4)で本願発明について認定したものを超える内容を意味する(例えば,既存のシステムに即時反映する必要があるものは即時に送信することなど)のであれば,本願発明には,そのような内容まで含まれているとはいえないし,上記(4)で本願発明について認定した内容については,上記のとおり容易に想到することができたものである。
(6) 審決は,引用発明において「実質的には,…即時性の観点から,情報が分類・位置づけがされ,その分類・位置づけに従って,即時送信するか,バッチで送信するか,という送信処理の選択がなされている」(8頁18行〜22行)と判断している。この判断は,本願発明が上記(4)で認定したようなものであることからすると,引用発明について,本願発明を超える内容を有する旨の判断をしている。しかし,審決は,その後の結論部分においては,「引用例発明に基づいて,既存のシステムに即時に反映させる必要がない情報について,通信回線の負荷が少ない時間帯にバッチで専用線網を通じてセンタサーバに送信するように構成し,本願発明の相違点3に係る構成を得ることは,当業者が容易に想到しえたものである。」(8頁下1行〜9頁3行)と,本願発明が上記(4)で認定したようなものであることを前提とした判断をしており,審決の相違点3についての判断が誤っているということはできない。
(7) よって,原告が主張する取消事由3も理由がない。
5 以上の次第で,原告主張の取消事由は,いずれも認められないから,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 森義之
裁判官 田中孝一
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