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関連審決 不服2003-307
関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  先行技術 /  優先権 /  置き換え /  置換 /  容易に想到(容易想到性) /  不存在 /  実施 /  構成要件 /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  変更 /  独立特許要件 / 
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事件 平成 17年 (行ケ) 10666号 審決取消請求事件
原告 松下電器産業株式会社
訴訟代理人弁護士 森崎博之,安藤誠悟
訴訟代理人弁理士 稲葉良幸,土屋徹雄,岩橋文雄,中原健吾,藤井兼太郎
被告 特許庁長官中嶋誠
指定代理人 稲積義登,平井良憲,立川功,田中敬規
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2006/07/12
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が不服2003-307号事件について平成17年7月19日にした審決を取り消す 」との判決。。
事案の概要
本件は,原告が,名称を「アクティブマトリックス型液晶表示装置」とする発明につき特許出願をして拒絶査定を受け,これを不服として審判請求をしたところ,発明の容易想到性(特許法29条2項)を理由に,審判請求は成り立たないとの審決がされたため,同審決の取消しを求めた事案である。
明細書(甲2の5)の記載によれば,本願発明は 「AV機器やOA機器等の平 ,面ディスプレイとして用いられる液晶表示素子,特にアクティブマトリックス型液晶表示素子に関する (段落【0001)ものである。従来 「スイッチング素子 」】 ,として薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリックス型方式」の液晶表示モードとして TN Twisted Nematic方式のNW Normally White モー ,「( ) ( )ドが広く用いられている」が 「液晶パネルに入射する光の入射方向によって透過 ,光の偏光状態が変化するので,入射方向に対応して光の透過率が異な」り 「輝度,の逆転現象を引き起こす 。この課題を解決するために 「TN型液晶表示方式のよ 」,うに基板垂直方向に電界を印加するのではなく 「液晶に印加する方向を基板に対 ,」してほぼ平行な方向とする方式(横電界方式)が提案されている」が,この方式は「輝度逆転現象の視野角特性は優れているものの 「櫛形電極に対して斜め方向, ,」45°,135°の方向に傾けて画面を見ると,各々青色,黄色に色付く欠点があり,画像品質上の課題となっている(段落【0002】〜【0006 。本願発 」】 )明は 「上記従来例の課題を解決するためになされたものであり,広い視角で良好 ,な多階調表示を実現し得るとともに,簡易な構成かつ従来と同じ作製工程により,色付きの発生を防止することができ,高品質の画像を表示することができる横電界駆動式のアクティブマトリックス型液晶表示素子を提供することを目的としている (段落【0007 ,とされている。 」】)1 特許庁における手続の経緯(1) 本件出願(甲2の1)発明の名称: アクティブマトリックス型液晶表示装置」 「出願番号:特願2001-56541号出願日:平成8年11月22日(優先権主張平成7年11月30日,平成8年9月20日。特願平8-312336号の一部を平成13年3月1日に新たな特許出願としたもの )。
(2) 本件手続拒絶査定日:平成14年11月29日(甲2の4)審判請求日:平成15年1月6日(不服2003-307号)手続補正日:平成15年2月3日(甲2の5)審決日:平成17年7月19日審決の結論: 本件審判の請求は,成り立たない 」 「。
審決謄本送達日:平成17年8月2日2 本願発明と本件補正発明の要旨(請求項1,2のうち1のみを記載)平成15年2月3日付けの手続補正書による補正 甲2の5 以下 同補正を 本 (。,「件補正」といい,同補正書により補正された明細書を「本願明細書」という )に。
より付加された部分は 下線部分のとおりである以下 本件補正前の請求項1 甲 ,。,(11の1。下記の下線部分を除いたもの )の発明を「本願発明」といい,本件補 。
正後の請求項1(下記の全文)の発明を「本件補正発明」という。
【請求項1】マトリックス状に配置された複数の信号配線及び走査配線と,前記信号配線と前記走査配線の各交差点に対応して設けられた少なくとも一つ以上のスイッチング素子と,前記スイッチング素子に接続された画素電極と,共通電極とを有するアレイ基板と,前記アレイ基板に対向して配置された対向基板と,前記アレイ基板と前記対向基板との間に挟持された液晶層とを具備し,隣接する二つの前記信号配線及び隣接する二つの前記走査配線により規定される画素は,隣接する前記画素電極と前記共通電極とで形成される表示領域を複数有し,前記複数の表示領域には,前記画素電極と前記共通電極との間に前記アレイ基板及び前記対向基板に対して略平行な電界を発生させたとき,液晶分子の配列の変化する方向が異なる表示領域が含まれ,前記画素電極及び前記共通電極は,前記画素内において,略「く」の字状となる屈曲点を有し,かつ,前記屈曲点を通り前記走査配線に平行な直線に対し略対称な形状を有するアクティブマトリックス型液晶表示素子。
3 審決の理由の要点審決の理由は,要するに,本件補正は,特許法(平成15年改正前のもの。以下同じ 17条の2第5項の準用する126条4項にいういわゆる独立特許要件 容 。)(易想到性の不存在)を欠くので,同法159条1項,53条1項により却下すべきものであり,そして,本願発明は,同様に特許法29条2項違反(容易想到性の存在)により特許を受けることができない,というものである。
以下,本件訴訟において争われている本件補正の適否に関する審決の判断を記載,, ,( 。 するが その概要は 本件補正発明は刊行物1 特開平7-134301号公報本訴甲3 )に実施例7として記載された発明(以下「引用発明」という )に基づ 。。
いて当業者が容易に発明できたものであり,特許法29条2項により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである,というものである。
なお,審決は,刊行物1のほか,刊行物2(特公昭63-21907号公報。本訴甲4 )も引用している。。
「刊行物1には,その実施例7として 『図5(a (b)のように一方の基板に電極とT ,),FTを形成し,他方の対向基板にもドレイン電極,ゲート電極を形成し,図1(b)の電極パターンで画素部の電極を形成して一方をソース電極,他をコモン電極とし,ソース電極は基板上のドレイン電極,ゲート電極と共にTFTを形成し,これら基板間に挾持された液晶層を有し,前記電極を介して液晶層に電界を印加する電界印加手段を備えた液晶表示装置であって,前記電極は少なくとも画素部において基板面に平行な方向に電界が印加できるよう構成されている液晶表示装置 』の発明(引用発明)が記載されているとともに,図7(b)には,中央 。
で略「く」の字状となる屈曲点を有し,略左右対称な形状の電極3,4が示されているものと認められる 」。
「対比本件補正発明と引用発明を比較するにあたり,引用発明における『一方の基板』及び『他方の対向基板』をそれぞれ,本件補正発明の『対向基板』及び『アレイ基板』に対応させる。
,, , そして 引用発明において 他方の対向基板に形成されたドレイン電極及びゲート電極も一方の基板に図5(a (b)のように形成されるドレイン電極及びゲート電極と同様にマト ),リックス状に形成されているものと認められ,引用発明の『他方の対向基板に形成されたドレイン電極 『他方の対向基板に形成されたゲート電極 『他方の対向基板に形成されたソース 』,』 ,電極 『他方の対向基板に形成されたコモン電極 『他方の対向基板に形成されたTFT』及 』,』 ,『』 , 『 』 ,『』,『』,『』, び 液晶層 がそれぞれ 本件補正発明の 信号配線 走査配線 画素電極 共通電極スイッチング素子 及び 液晶層 に相当し また 引用発明において ドレイン電極とゲー 『』『』,,,ト電極で規定される画素部に形成される電極は,図1(b)の電極パターンであるから,画素部においてソース電極とコモン電極とで形成される表示領域は複数である。
したがって,両者はともに,『マトリックス状に配置された複数の信号配線及び走査配線と,前記信号配線と前記走査配線の各交差点に対応して設けられた少なくとも一つ以上のスイッチング素子と,前記スイッチング素子に接続された画素電極と,共通電極とを有するアレイ基板と,前記アレイ基板に対向して配置された対向基板と,前記アレイ基板と前記対向基板との間に挟持された液晶層とを具備し,隣接する二つの前記信号配線及び隣接する二つの前記走査配線により規定される画素は,隣接する前記画素電極と前記共通電極とで形成される表示領域を複数有するアクティブマトリックス型液晶表示素子 』である点で一致し,次の点で相違する。 。
a.本件補正発明は 『前記複数の表示領域には,前記画素電極と前記共通電極との間に前記 ,アレイ基板及び前記対向基板に対して略平行な電界を発生させたとき,液晶分子の配列の変化する方向が異なる表示領域が含まれ』るのに対し,引用発明は,電極形状が図1(b)であるから,前記画素電極と前記共通電極との間に前記アレイ基板及び前記対向基板に対して略平行な電界を発生させたとき,液晶分子の配列の変化する方向はどの領域でも同じである点。
b.本件補正発明は 『前記画素電極及び前記共通電極は,前記画素内において,略「く」の ,字状となる屈曲点を有し,かつ,前記屈曲点を通り前記走査配線に平行な直線に対し略対称な』, (), 。 」 形状を有する のに対し 引用発明の電極形状は図1 b であり そうはなっていない点「判断上記相違点について検討する。
引用発明,すなわち刊行物1における実施例7においては 『他方の対向基板』に形成され ,る電極が図1(b)のものであるが,刊行物1には,上下基板に形成される電極形状として図7(a (b)が示されており,刊行物1の実施例7において 『他方の対向基板』に形成さ ),,れる電極として,図1(b)のものに代えて図7(b)のものを採用することは当業者が容易に想到し得るものと認められ,また,その際,刊行物1の図7(b)は対称軸が縦方向となっているが,これを横方向とすることは,例えば,本願明細書の段落【0005】及び上記刊行物1の段落【0002】において引用される刊行物2に,基板面に対し平行に電界が印加される液晶表示装置において,その電界印加方向として,行電極方向に平行なものも,列電極に平行なもの(すなわち,前者を90°回転させたもの)も,ともに適宜採用される旨の記載がなされていることからみて(図7と図10,図9と図11,図12と図13を参照されたい ,。)当業者が適宜なし得ることであると認められる。
そして,刊行物1の実施例7において,その『他方の対向基板』に形成される電極として図7(b)のものを採用し,その方向を90度回転して配置すれば,上記相違点aに係る事項及び上記相違点bに係る事項が充足されることは明らかである。
結局,本件補正発明は,上記刊行物1に実施例7として記載された発明の電極として図7(b)に示される電極を採用し,これを90°回転させて配置することにより,当業者が容易に発明できたものと認められ,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである 」。
原告の主張(審決取消事由)の要点
審決は,本件補正発明と引用発明との一致点の認定を誤り(取消事由1 ,本件)補正発明と引用発明との相違点についての判断を誤り(取消事由2 ,また,違法)な審判手続に基づきなされたものである(取消事由3)から,取り消されるべきである。
1 取消事由1(本件補正発明と引用発明との一致点の認定の誤り)審決は,本件補正発明と引用発明とを対比させるに当たり,引用発明の「一方の」「 」, 「 」「 」 基板 及び 他方の対向基板 を 本件補正発明の 対向基板 及び アレイ基板に対応させている。
しかし,かかる対応関係の認定は,基板に形成された電極対の機能の相違を考慮せずにされたものであって,誤りである。
すなわち,引用発明においては 「一方の基板」に,画像信号に応じた電圧を印 ,加して,ノーマル状態(電圧無印加あるいは所定のしきい値以下の電圧を印加している状態。横電界方式の液晶表示装置においては,通常,ノーマル状態のとき黒表示となる )の液晶分子の配向を崩すための第1の電極対を形成するとともに,従 。
来技術においてノーマル状態の液晶分子の配向を制御するために基板に設けられていた配向膜に代えて 「他方の対向基板」に第2の電極対を形成し,これに電圧を ,印加して電界を生じさせることにより,ノーマル状態の液晶分子の配向を制御している。
これに対して,本件補正発明においては 「アレイ基板」が,画像信号に応じて ,電圧が印加される電極対(画素電極及び共通電極)を有しており,ノーマル状態の液晶分子の配向を崩す機能を有しているのであるから,本件補正発明の「アレイ基板」に対応するのは,引用発明の「一方の基板」である。
したがって,審決が,引用発明の「他方の対向基板」と本件補正発明の「アレイ基板」とを対応するものと認定したことは誤りであり,同認定を前提とした両発明の一致点の認定も誤りである。例えば,審決は,引用発明の「他方の対向基板」に形成された「ソース電極」及び「コモン電極」が,本件補正発明の「アレイ基板」に形成された「画素電極」及び「共通電極」に相当すると認定するが,この認定は誤りである。
2 取消事由2(本件補正発明と引用発明との相違点についての判断の誤り)(1) 審決が,引用発明における「他方の対向基板」に形成される電極として,刊行物1の図1(b)のものに代えて図7(b)のものを採用することは当業者が容易に想到し得るものであると判断したことは,誤りである。
ア 刊行物1の図1(b)の電極3及び4は,ノーマル状態の液晶分子の配向を制御するための電極対であるのに対して,図7(b)の電極3及び4は,ノーマル状態の液晶分子の配向を崩すための電極対である。このように,図1(b)のものと図7(b)のものとでは,電極対の機能が異なるのであり,このような機能の相違を無視して両者を置き換えることは,当業者が容易に想到し得るものではない。
イ また,電極対の機能の相違の点を措くとしても,当業者であれば,引用発明において,図1(b)の電極対に代えて図7(b)の電極対を採用しようとは考えない。すなわち,図7(b)の電極対を採用するとした場合,TFT10の配置から,図7(b)の電極対のうち電極3がソース電極に,電極4がコモン電極に相当することとなるところ,この電極3は,上下に延びる直線状の配線部を画素の左右両側に二つ有しているため,1画素につき2箇所でソース電極の配線部とドレイン電極とが平行に隣接することとなってしまい,図1(b)の電極対の場合と比べて,ソース電極からドレイン電極へのリーク電流が増大し,電荷保持特性が悪化することとなってしまう このように 引用発明において 図1(b)の電極対に代えて図7(b) 。, ,の電極対を採用することには,リーク電流の増加という阻害要因があるのであるから,この置換えを容易想到であるとする審決の判断は,誤りである。
(2) 審決が,引用発明において刊行物1の図7(b)の電極対を採用する際,図7(b)の電極対の対称軸を縦方向から横方向へ90°回転させることは,当業者が適宜なし得ることであると判断したことは,誤りである。
ア 刊行物2の図7,図10等には,電界印加方向が90°異なる構成が記載されているが,ここに開示されている技術思想は,基準電極(コモン電極)と列電極(ドレイン電極)又は行電極(ゲート電極)との間に生じる寄生容量への対策と, , して 基準電極を列電極ではなく行電極に平行に配置するという技術思想であって電界印加方向を90°回転させるという技術思想が開示されているものではない。
そして,引用発明において,刊行物1の図1(b)の電極対に代えて図7(b)の電極対を採用すると,電極3がソース電極に,電極4がコモン電極(基準電極)に相当することとなり,図7(b)から明らかなように,コモン電極(基準電極)の配線部は画素中央に配置されることとなるから,コモン電極(基準電極)はドレイン電極にもゲート電極にも近接せず,コモン電極(基準電極)とドレイン電極又はゲート電極との寄生容量は,もはや無視できる程度に小さくなるので,寄生容量への対策を講ずる必要はなくなる。したがって,引用発明において,刊行物1の図1(b)の電極対に代えて図7(b)の電極対を採用する場合には,刊行物2のように基準電極(コモン電極)を列電極(ドレイン電極)ではなく行電極(ゲート電極)に平行に配置するという技術思想を適用する動機付けが生じない。
イ また,そもそも,引用発明において刊行物1の図7(b)の電極対を採用する際に,当業者が,図7(b)の電極対に対する電界印加方向を90°回転させることは,考え難い。
,, , すなわち 引用発明は 上下の基板にそれぞれ電極対を形成する構成であるため通常の横電界方式(一方の基板にのみ電極対を形成する構成)に比べて画素ごとの要素部品が多く,画素開口率(画素領域における開口部,すなわち,電極等によって遮られず,光の透過率を制御して表示に用いることができる領域の割合)が低い傾向にある。ここで,図7(b)の電極対に対する電界印加方向を90°回転させるとすると,画素開口率は更に低下してしまう。当業者であれば,従来の横電界方式に比べて画素開口率の低い引用発明において,更に画素開口率を低下させるような構成を採用しようと考えるはずがない。このように,引用発明において図7(b)の電極対を採用する際,その電極対に対する電界印加方向を90°回転させることには,画素開口率の低下という阻害要因があるのであるから,これを当業者が適宜なし得ることであるとする審決の判断は,誤りである。
(3) 本件補正発明は,横電界方式の液晶表示装置において,画像に不所望な色付きが生じるという新たな課題の発見に起因してなされたものであり,一つの画素内に,液晶分子の配列の変化する方向が異なるような表示領域を設けるという構成を採用することによって,前記課題を解決したものである。これに対して,刊行物1及び2には,このような本件補正発明の課題自体がそもそも開示されておらず,課題を解決するための構成や,効果についても何ら開示されていない。審決は,本件補正発明の本質,特に,新たな課題の発見や効果の非予測性について一切考慮することなく,画素電極と共通電極の形状のみに着目して容易想到性の判断をしたものであり,このような判断は失当である。
3 取消事由3(審判手続の法令違背)審決の引用する刊行物2は,拒絶査定においてはもちろんのこと,本願の審査段階において一度も引用されていない文献であり,審決が刊行物2を引用して本件補正発明の容易想到性の有無を判断したのは,拒絶査定の理由とは異なる拒絶の理由によるものである。拒絶査定不服審判手続において,拒絶査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合には,審判請求人に対して新たな拒絶理由が通知されなければならない(特許法159条2項,50条本文 。ところが,審決は,審判請求人 )に対して新たな拒絶理由を通知せずになされたものであるから,特許法の前記規定に違反し,取り消されるべきである。
被告の反論の要点
1 取消事由1(本件補正発明と引用発明との一致点の認定の誤り)に対して原告は,審決が,本件補正発明と引用発明との対比に当たり,引用発明の「一方の基板」及び「他方の対向基板」を,本件補正発明の「対向基板」及び「アレイ基板」に対応させたのは誤りである,と主張する。
しかし,引用発明の「他方の対向基板」がノーマル状態の液晶分子の配向を制御するためのものであるなら,この基板にドレイン電極,ゲート電極,TFT,並びに,画素部のソース電極及びコモン電極を形成し,ソース電極をTFTに接続するという構成を採用する必要はない。引用発明においてこのような構成が採用されたのは 「他方の対向基板」に各画素ごとに液晶に印加される電圧を制御する機能を ,持たせたものであり,引用発明の「他方の対向基板」を本件補正発明の「アレイ基板」に対応させるとした審決の認定に誤りはない。
また,引用発明の「一方の基板」は 「他方の対向基板」からみれば,これに対 ,向して配置された基板であるから,本件補正発明の「アレイ基板」に対向して配置された「対向基板」に対応するものであって,この点についても審決の認定に誤りはない。
2 取消事由2(本件補正発明と引用発明との相違点についての判断の誤り)に対して(1) 原告は,審決が,引用発明において刊行物1の図1(b)の電極対に代えて図7(b)の電極対を採用することは容易想到であると判断したことは誤りである,と主張し,その根拠として,電極対の機能の相違(前記3・2(1)ア参照 ,リー。)ク電流の増加という阻害要因の存在(同イ参照 )を主張する。。
ア しかし,まず,電極対の機能の相違の主張に対しては,前記1に主張したとおり,引用発明の「他方の対向基板」に形成される電極は,TFTに接続され,液晶に印加する電圧を画素ごとに制御し得るものであるから,本件補正発明の「アレイ基板」に形成される電極対と同じ機能を有するものであり,電極対の機能の相違をいう原告の主張は,失当である。
イ また,リーク電流の増加の主張に対しては,原告は,引用発明において刊行物1の図1(b)の電極対に代えて図7(b)の電極対を採用する際,図7(b)の電極対のうち電極3がソース電極,電極4がコモン電極となることを前提としているが,当業者であれば,図7(b)の電極対を採用する場合には,電極3をコモン電極とし,電極4をソース電極とするのが当然である。すなわち,刊行物1の図5から明らかなように,ソース電極はTFTに接続されるものであるのに対し,コモン電極は隣接する画素のコモン電極に接続されるものであり,図7(b)において,隣接する画素の電極に接続すべき電極として,電極3が望ましいことは明らかである。
,, , そして このように 図7(b)の電極3をコモン電極とする構成を採用するならば原告が主張するようなリーク電流の増加という阻害要因は生じない。
(2) 原告は,審決が,図7(b)の電極対の対称軸を縦方向から横方向へ90°回転させることは当業者が適宜なし得ることであると判断したことは誤りである,と主張し,その根拠として,動機付けの不存在(前記第3・2(2)ア参照 ,画素。)開口率の低下という阻害要因の存在(同イ参照 )等を主張する。。
ア しかし まず 動機付けの不存在の点については 原告の主張は 図7(b) ,, , ,の電極3をソース電極とし,電極4をコモン電極(基準電極)とする構成を前提と, , して 寄生容量への対策という動機付けが存在しないことを主張するものであるが前記(1)イにおいて主張したとおり,図7(b)の電極3をコモン電極(基準電極)とすることは当業者にとって当然であり,そのような構成を採用するならば,コモン電極(基準電極)がドレイン電極(列電極)に近接することとなり,寄生容量への対策が必要となることは明らかである。
イ また,画素開口率の低下の点については,ドレイン電極とゲート電極とで囲まれる画素領域の形状として,縦長の長方形のみならず,横長の長方形も採用し得ることは明らかであり,図7(b)の電極対の対称軸を縦方向から横方向へ90°回転させる場合に,横長の長方形を採用するなどして,画素領域内で電極が配置される領域を広くすることは当然であるから,画素開口率の低下という阻害要因が存在するとの原告の主張は,失当である。
ウ さらに,原告は,本件補正発明における新たな課題の発見や効果の非予測性についても主張するが,引用発明に刊行物1の図7(b)の電極対を適用し,その対称軸を横方向へ90°回転させれば,本件補正発明の構成要件を満たすこととなるものであり,同構成が,色付き防止という本件補正発明の作用効果をもたらすことは明らかであるから,原告の主張は失当である。
3 取消事由3(審判手続の法令違背)に対して審決における刊行物2の引用は,引用発明において,刊行物1の図1(b)の電極対に代えて図7(b)の電極対を採用する際に,図7(b)の電極対の線対称を,走査線配線に平行な直線に対称にすることに困難はない,という点を補強するものとしてなされているものである。しかも,刊行物2は,本願明細書の段落【0005】に先行技術として引用され,また,刊行物1の段落【0002】でも引用されているように,周知のものである。したがって,審決は,拒絶査定の理由と異なる拒絶の理由によってなされたものではないから,特許法159条2項にいう「査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合」に当たらない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(本件補正発明と引用発明との一致点の認定の誤り)について(1) 本願明細書(甲2の5)の特許請求の範囲の記載によれば,本件補正発明における「アレイ基板」は 「マトリックス状に配置された複数の信号配線及び走 ,査配線」と 「前記信号配線と前記走査配線の各交差点に対応して設けられた少な ,くとも一つ以上のスイッチング素子」と 「前記スイッチング素子に接続された画 ,素電極」と 「共通電極」とを有するものである。 ,他方,引用発明における「他方の対向基板」に関しては,刊行物1に次のとおり記載されている。
「 0056 〔実施例 7〕図5(a (b)のように一方の基板に電極とTFTを形成し 【】 ),た。他方の対向基板にもドレイン電極,ゲート電極を形成し,図1(b)の電極パターンで画素部の電極を形成して一方をソース電極,他をコモン電極とした。ソース電極は基板上のドレイン電極,ゲート電極と共にTFTを形成する。その他は実施例5と同様にして液晶セルを作製した 」。
0042 実施例 5 図5 a b に示すように 表面を研磨した厚さ1.1mm 「【】〔〕(),() ,,, , のガラス基板6上にドレイン電極7 ゲート電極8 ソース電極9をマトリックス状に配置し各画素にTFT10を形成した。
【0043】図5(b)に示すように,TFT10は,ゲート電極8上にゲート絶縁膜13を介してドレイン電極7,ソース電極9が積層されており,それらの電極はアモルファスシリコン12a,及びそのオーミック接合部12bを介して接続されている。
【0044】また,コモン電極11は図5(a)に示すようにゲート電極8との交差部は図5(b)に示すように絶縁層15を介して立体的に配置されている ・・・。
【0045】対向基板には,実施例1の図1(b)に示すようなパターンでソース電極9と45度の角度をなす電極を形成した ・・・」。
以上の記載によれば,引用発明(刊行物1の実施例7)における「他方の対向基板」は,基板上にドレイン電極及びゲート電極を形成し,さらに,画素部の電極としてソース電極及びコモン電極を備えたものであり,ソース電極はドレイン電極及びゲート電極と共にTFTを形成するものであること,そのほかは刊行物1の実施例5と同様であることが認められる(引用発明と実施例5との違いは,実施例5では,一方の基板にのみTFTが形成され,対向基板には電極が形成されているにとどまるのに対し,引用発明では,一方の基板のみならず対向基板にもTFTが形成されている点である 。そして,実施例5における一方の基板には,ドレイン電極 。)及びゲート電極がマトリックス状に配置され,各画素にTFTが形成されており,これは,引用発明の「一方の基板」においても同様であるのみならず,引用発明の「他方の対向基板」の画素部は「一方の基板」の画素部に対応して形成されていることが明らかであることから,引用発明の「他方の対向基板」においても同様であることが認められる。
このように,引用発明における「他方の対向基板」は 「マトリックス状に配置 ,された複数のドレイン電極及びゲート電極」と 「ドレイン電極及びゲート電極と ,の各交差点に対応して設けられた,少なくとも一つ以上のTFT」と 「TFTに,接続されたソース電極」と 「コモン電極」を有するものである。 ,そして 「TFT」は 「スイッチング素子」としての機能を果たすものであり, ,,TFTを構成する「ドレイン電極及びゲート電極」は,本件補正発明の「信号配線及び走査配線」に相当し,また,ドレイン電極及びゲート電極と共にTFTを構成する「ソース電極」は,画素部に設けられるものであるから,本件補正発明の「画素電極」に相当し 「コモン電極」は本件補正発明の「共通電極」に相当する。 ,したがって,引用発明における「他方の対向基板」は 「マトリックス状に配置 ,された複数の信号配線及び走査配線」と 「前記信号配線と前記走査配線の各交差 ,点に対応して設けられた少なくとも一つ以上のスイッチング素子 と 前記スイッ」,「チング素子に接続された画素電極」と 「共通電極」とを有するものであって,本 ,件補正発明における「アレイ基板」と同一の構成をなすものである。
(2) 次に,本件補正発明における「対向基板」は 「アレイ基板に対向して配置 ,された」ものであり(特許請求の範囲 ,引用発明における「一方の基板」も 「他 ),方の対向基板」に対向して配置されたものであることは明らかである。
(3) 以上によれば,引用発明における「一方の基板」及び「他方の対向基板」は,本件補正発明における「対向基板」及び「アレイ基板」にそれぞれ対応するものであるから,この点に関する審決の認定に誤りはなく,この対応関係を前提とした両発明の一致点の認定にも,誤りはない。
(4) これに対して,原告は,審決における上記対応関係の認定は,両発明における電極対の機能の相違を考慮しないものであって誤りであると主張する。
そこで検討するに 本件補正発明のアレイ基板 における電極対の機能は 画 ,「」 , 「素電極と・・・共通電極との間に・・・電界を発生させたとき,液晶分子の配列」を「変化」させるものである(特許請求の範囲 。すなわち,画像信号に応じて電 )圧が印加され,それによって液晶分子の配列を変化させるというものである。
他方,引用発明の「他方の対向基板」における電極対の機能に関しては,刊行物1に次のとおり記載されている。
0057 両基板のコモン電極をグランドレベルに保ち それぞれのドレイン電極 ゲー 「【】 , ,ト電極の電圧をコントロールしてソース電極に0〜10Vの範囲で印加電圧を調整した。その結果,実施例5の場合よりも光透過率の微調整が可能となり,各階調の明状態及び暗状態を形成でき,最大コントラストも90であった 」。
,,「」「 」 上記記載によれば 引用発明においては 一方の基板 及び 他方の対向基板のそれぞれのドレイン電極,ゲート電極の電圧をコントロールしてソース電極に電,, 「」 圧が印加され これにより光透過率が微調整されるものであるから 一方の基板に設けられた電極と 「他方の対向基板」に設けられた電極は,共に画像信号に応 ,じて電圧が印加され,それによって液晶分子の配列を変化させるものである。
したがって,本件補正発明における「アレイ基板」と,引用発明における「他方の対向基板」は,いずれも,画像信号に応じて電圧が印加され,液晶分子の配列を変化させるという点において,電極対の機能として同じ機能を有しているということができる。
この点に関して更に,原告は,引用発明において,液晶分子の配向が「他方の対向基板」に形成される電極対と平行になったときに,液晶表示が黒表示となることから 「他方の対向基板」の電極対はノーマル状態の液晶分子の配向を制御するた ,めのものであり,本件補正発明の「アレイ基板」のようにノーマル状態の液晶分子の配向を崩すためのものとは電極対の機能が異なる,と主張する(なお,原告の定義によれば,ノーマル状態とは「電圧無印加あるいは所定のしきい値以下の電圧を印加している状態」を意味し,横電界方式の液晶表示装置では,通常,ノーマル状態のとき黒表示になるとのことであるが,引用発明においては,液晶分子の配向を電界の印加によって制御するため,電圧無印加の状態において配向膜により液晶分(【 】。),, 子の配向を制御する必要はなく 刊行物1の 段落0013 参照 したがって上記のような意味での「ノーマル状態」は想定されていない。原告の引用発明に関,「」 。 )。 する前記主張は 黒表示の状態をノーマル状態 といっているものと解される確かに 引用発明は 刊行物1の実施例1の発明を基礎としたものであって 液 ,, ,「晶セル基板を2枚の偏光板で挟み,一方の偏光軸が図1(b)の傾斜した電極3,4と平行に,また,他方の偏光軸が上記偏光軸と垂直になるように配置」される(段落【0027 )という実施例1の発明の構成は引用発明でも採用されていること 】から,引用発明においても,液晶分子の配向が 「他方の対向基板」の電極対と平 ,行になったときに,透過光強度比が0,すなわち黒表示となるものである。
しかし,引用発明における上記のような現象(液晶分子の配向が「他方の対向基板」の電極対と平行になったときに黒表示となること )は,偏光板における偏光 。
軸の配置によってもたらされるものであり,電極対の機能によるものではない。実施例1の発明においては 「他方の対向基板」に形成された電極対は,液晶分子の ,配向を一定に揃えるため 常に一定の電圧が印加される 段落 0028 〜 00 ,(【】【30】参照 )のに対して,引用発明においては,前記のとおり 「両基板のコモン 。,電極をグランドレベルに保ち,それぞれのドレイン電極,ゲート電極の電圧をコントロールしてソース電極に0〜10Vの範囲で印加電圧を調整した (段落【00」57 )ものであって 「他方の対向基板」における電極対は,画像信号に応じて液 】,晶分子の配列を変化させる機能を有している。このように,液晶分子の配向が「他方の対向基板」の電極対と平行になったときに黒表示となることと 「他方の対向,基板」に形成された電極対の機能とは,直接関係のないものである。
しかも,本件補正発明の「対向基板」については,その構成や機能に関して何らの限定もない(特許請求の範囲)のであるから 「対向基板」にもスイッチング素 ,子を形成し,画像信号に応じて液晶分子の配列を変化させる機能を担わせることは可能であり,本件補正発明において 「アレイ基板」のみが,画像信号に応じて液 ,晶分子の配列を変化させる機能を有しているということもできない。
したがって,本件補正発明における「アレイ基板」と引用発明における「他方の対向基板」とでは電極対の機能が異なるとする原告の主張は,採用することができない。
2 取消事由2(本件補正発明と引用発明との相違点についての判断の誤り)について(1) 審決が 引用発明において 刊行物1の図1(b)の電極対に代えて図7(b) ,,の電極対を採用することは,当業者が容易に想到し得るものであると判断した点についてア 原告は,刊行物1の図1(b)の電極対と図7(b)の電極対とでは,電極対の機能が異なることを主張する。
しかし,刊行物1の図1及び図7は,いずれも,電極対のパターンを示すものにすぎず,このようなパターンの形状によって直ちに電極対の機能が定まるものではない。引用発明の「他方の対向基板」の電極対の機能は,前記1のとおり,画像信号に応じて液晶分子の配列を変化させるというものであり,このような機能を有する電極対のパターンとして,図7(b)に記載されたパターンを採用できないとする根拠はない。
なお,引用発明においては,液晶分子の配向が図1(b)の電極対と平行になったときに黒表示となるのに対して,刊行物1の実施例8の発明では,図7(a)の電極対と平行になったときに黒表示となるが,これは,実施例8の発明において「2枚の偏光板の一方の偏光軸が図7(a)に示す横に伸びた電極に平行になるように,また,もう一方の偏光軸が垂直になるように配置」されている(段落【0058 )】ためであり,偏光板における偏光軸の配置によるものである。引用発明の「他方の対向基板 に形成される電極対として 刊行物1の図1(b)のものに代えて図7(b) 」,のものを採用する場合には,一方の偏光軸が「一方の基板」の電極対(図1(a)のもの )と平行になるように配置することが可能である。 。
イ 原告は,引用発明において,図1(b)の電極対に代えて図7(b)の電極対を採用すると,リーク電流の増大という阻害要因が生じると主張する。
確かに,引用発明に図7(b)の電極対を採用する際に,図7(b)の電極3をソース電極とし,電極4をコモン電極とすれば,原告の主張するようなリーク電流の増大が生じる しかし 電極3をコモン電極とし 電極4をソース電極として図7(b) 。, ,の電極対を採用すれば,リーク電流の増大を避けることは可能である。
原告は,引用発明が基礎としている刊行物1の実施例5の発明では,図5(a)に示されているように,画素領域の左下隅にTFTが形成され,これにソース電極が接続されているのであるから,引用発明に図7(b)の電極対を採用する場合には,電極3をソース電極とするのが当然である,と主張する。
しかし,画素領域の左下隅にTFTが形成され,これにソース電極が接続されていることを前提としても,引用発明に図7(b)の電極対を採用するに当たって,必ずしも電極3をソース電極としなければならないものではなく,電極4をソース電極として,その配線を引き回すなど適宜の方法で画素領域の左下隅に形成されたTFTに接続することは可能であるから,原告の前記主張は,採用することができない。
(2) 審決が,引用発明において刊行物1の図7(b)の電極対を採用する際,図7(b)の電極対の対称軸を縦方向から横方向へ90°回転させることは,当業者が適宜なし得ることであると判断した点についてア 原告は,審決の引用する刊行物2において,電界印加方向が90°異なる構成が示されているのは,寄生容量への対策によるものであるところ,引用発明においてはそのような動機付けが存在しないと主張する。
そこで検討するに,刊行物2には,次のとおり記載されている(甲4 。)「第7図は本発明の一実施例に於ける一単位要素の素子配置の説明図であり ・・・図の様,にくし歯状にパタン化されている ・・・基準電極Zは,本発明では表示用電極 Aij と同一基 。
板上に形成されしかも本例では Aij と組み合つたくし歯状にパタン化されている。本例の様にくし歯状にパタン化する事により電圧を効果的に液晶表示要素に印加する事が可能である ・。
・・本例の配置では寄生容量 Cxz,Cyz が極めて小さく消費電力,スイツチング速度が大巾に改善される (3頁6欄14〜29行) 。」「第7,9図の実施例では基準電極Zを列電極Xに平行に配置したが,第10,11図の実施例では行電極Yに平行に配置している。第7図の例では列電極Xと基準用電極Zが隣接するから従来例よりは大巾に少ないが,ある程度の Cxz が存在し,Cyz は少ない。一方第10図の例では逆に Cyz が存在し,Cxz は少ない。スイツチング回数は走査信号の方が表示信号よりも大巾に少ないから,Cxz が少ない方が有利である。第10図の配置が優れている (3頁6欄。」33行〜42行)以上の記載によれば 刊行物2においては 基準電極 コモン電極 と列電極 ド ,,()(レイン電極)とを平行に配置する構成(第7図)と,基準電極(コモン電極)と行電極(ゲート電極)とを平行に配置する構成(第10図)が,いずれも実施例として開示された上,後者の配置の方が,基準電極(コモン電極)と列電極(ドレイン電極)が隣接しないため,寄生容量 Cxz が少なく,前者の配置よりも優れているとされている。
ところで,引用発明において刊行物1の図7(b)の電極対を採用する場合,電極3をソース電極とし,電極4をコモン電極とすれば,コモン電極はゲート電極にもドレイン電極にも近接しないため,そもそも寄生容量の問題は生じず,図7(b)の電極対の対称軸を縦方向とする構成,横方向とする構成のいずれも適宜採用することが可能である。
他方,電極3をコモン電極とし,電極4をソース電極とすれば,図7(b)の電極対の対称軸を横方向とした場合には,対称軸を縦方向とした場合と比べて,コモン電極のドレイン電極との近接が少なくなるため,寄生容量の発生が少なくなる。
,, 引用発明において図7(b)の電極対を採用する場合に 電極3をコモン電極とし電極4をソース電極とした方が,ソース電極からドレイン電極へのリーク電流の増大を避けられることは 前記(1)イのとおりであるから 引用発明において図7(b) ,,,, ,, の電極対を採用する際 電極3をコモン電極 電極4をソース電極として さらに電極対の対称軸を縦方向から横方向へ90°回転させれば,ソース電極からドレイン電極へのリーク電流の増大を避け,かつ,コモン電極がドレイン電極と近接することによる寄生容量の発生を少なくすることができるのであるから,当業者がそのような構成を採用することは十分に考え得るものである。
したがって,原告の前記主張は,採用することができない。
イ 原告は,引用発明において刊行物1の図7(b)の電極対を採用する際,図7(b)の電極対の対称軸を縦方向から横方向へ90°回転させることには,画素開口率の低下という阻害要因があると主張する。
しかし,図7(b)の電極対の対称軸を縦方向から横方向へ90°回転させるに当たって,画素開口率ができるだけ低下しないように電極形状を変更することは,当業者が当然考慮すべき設計的事項であり,対称軸を90°回転しても原告の主張するような阻害要因の発生は避けることが可能である。
これに対して,原告は,当業者が電極対を配置するに当たっては,透過率を確保するために電極の屈曲角度がなるべく90°となるように配置するのであり,電極対の屈曲角度を広げようとは考えないから,画素開口率が低下しないように電極形状を変更することは困難であると主張する。
確かに,TN方式の液晶表示装置の視野角特性に関する文献(甲5 「液晶ディ。
スプレイ入門講座第 15 回:液晶の広視野角化技術 液晶第7巻2号2003 187(67) 」,頁)には,電圧印加時に液晶分子の倒れる方向を偏光軸から45°方向とすると透過光強度比が最大となる旨記載されており,また,本件補正発明と同じ横電界方式に関する刊行物1にも 「基板に平行な面内で液晶に印加される二つの電界方向の ,なす角度は,コントラスト向上のため40〜50度,好ましくは45度に設定するのがよい と記載されている 段落 0012 そして 引用発明において 他 。」(【】)。, 「方の対向基板」の電極対として,刊行物1の図1(b)のものに代えて図7(b)のものを採用する場合,電極対の屈曲角度を90°とすれば 「一方の基板」の電極対 ,(図1(a))の電界方向との間でなす角度は45°となる。
しかし,上記にいう二つの電界方向のなす角度としての45°という数値は,透過率を確保するために最も好ましい値を示すにとどまり,当業者が図7(b)の電極対の対称軸を縦方向から横方向とする際には,画素開口率の確保や,透過率の確保などを考慮しながら全体のバランスがとれるように電極対の屈曲角度を定めるのであるから,電極対の屈曲角度を90°よりも広くすることがおよそ採用し得ないというわけではない。
したがって,原告の前記主張は,採用することができない。
(3) 原告は,審決が,本件補正発明における新たな課題の発見や効果の非予測性について考慮することなく容易想到性の有無の判断をしたことは誤りであると主張する。
しかし,不所望な色付きの防止という課題の有無にかかわらず,引用発明を出発点として本件補正発明の構成に至ることが当業者に容易であることは,上記のとおりである。なお,刊行物1の実施例8について 「図7の電極・・・に電圧・・・ ,を印加し,画素部での透過率を調べたところ,透過率が等しくなる角度が上下左右及びそれらの中間の方向でほぼ一致し 視野角も広いものが得られた 段落 00 ,。 」(【59 )と記載されており,図7(b)の電極対を採用することにより,視野角を拡 】大する効果が得られることが示唆されているのであるから,このことからも,引用発明を出発点として本件補正発明の構成に至ることが当業者に容易であることが裏付けられる。
また,効果の予測についても,本件補正発明の構成を採用すれば,液晶分子の配列の変化する方向が異なる複数の表示領域が形成され,黄色の変色方向と青色の変色方向が重なって,視角に対する色変化を互いに補償し合い,色変わりの少ない画像を得ることができることは,容易に予測することができる。
したがって,本件補正発明の構成に想到することが容易であり,上記効果はその構成から予想される程度のものにすぎないのであるから,原告の前記主張は,採用することができない。
3 取消事由3(審判手続の法令違背)について確かに,平成13年10月30日付け拒絶理由通知書(甲2の2 ,平成14年)8月19日付け拒絶理由通知書(甲2の3,及び,拒絶査定(甲2の4)におい )て,刊行物2は引用されていない。
しかし,平成14年8月19日付け拒絶理由通知書では,刊行物1を「引用文献1」として引用した上で 「引用文献1の図7(b)に記載の電極・・・の線対称を ,走査線配線に平行な直線に対称にすることに困難な点はない 」としているのであ。
り,審決における刊行物2の引用は,この点を補強するものとしてなされたものと理解できる。したがって,審決における拒絶の理由は,既に拒絶査定の段階において特許出願人(原告)に示されていたということができるから,特許法159条2項にいう「拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合」には当たらないというべきである。
4結論以上のとおり,原告主張の審決取消事由は理由がないので,原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 石原直樹
裁判官 清水知恵子
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