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関連審決 審判1997-9624
審判2004-80004
審判2004-80023
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審判番号(事件番号) データベース 権利
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関連ワード 技術的思想 /  使用方法 /  新規性 /  公然知られ(29条1項1号) /  公然実施(29条1項2号) /  頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  公知技術 /  技術的範囲 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  権利の濫用(権利濫用) /  出願経過 /  参酌 /  均等 /  均等論 /  均等侵害 /  置き換え /  置換 /  置換可能性 /  置換容易性 /  容易に想到(容易想到性) /  非容易 /  意識的除外(意識的に除外) /  不存在 /  特許発明 /  実施 /  権原 /  加工 /  交換 /  間接侵害 /  構成要件 /  構成要件充足性 /  のみ用いる /  課題解決に不可欠(課題の解決に不可欠) /  業として /  差止請求(差止) /  侵害 /  販売数量(販売数) /  実施権 /  通常実施権 /  独占的通常実施権 /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  変更 /  異議申立 / 
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事件 平成 15年 (ワ) 18472号 特許権侵害差止等請求事件
原告A
原告 エナテックス株式会社
原告ら訴訟代理人弁護士 小林幸夫
同 弓削田 博
同補佐人弁理士 松田忠秋
被告 株式会社ニッシンホームテック
同訴訟代理人弁護士 渡邊敏
同 森利明
同訴訟代理人弁理士 岡本 清一郎
同補佐人弁理士 松尾 憲一郎
同 内野美洋
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2005/03/18
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
原告らの請求
1 被告は,別紙被告製品目録1記載の製品を製造し,使用してはならない。
2 被告は,別紙被告製品目録2記載の製品を製造し,販売し,又は販売のために展示してはならない。
3 被告は,その占有する前2項記載の各製品を廃棄せよ。
4 被告は,原告エナテックス株式会社に対し,3億円及びこれに対する平成15年8月23日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
原告Aは屋根上配管の媒体液充填装置に関する特許権及び屋根上における管材の設置用掛止金具に関する特許権を有する者であり,原告エナテックス株式会社(以下「原告会社」という。)は原告Aからこれらの特許権につき独占的通常実施権の許諾を受けた者である。本件において,原告らは,被告の製造販売に係る媒体液充填装置(別紙被告製品目録1ないし3記載の各製品)及び放熱ホースの掛止金具(別紙被告製品目録4記載の製品)が前記各特許権を文言侵害(別紙被告製品目録3,4記載の製品)又は均等侵害(別紙被告製品目録1ないし3記載の製品,なお同目録2記載の製品は間接侵害)すると主張して,原告Aが被告に対し,特許法100条,101条1号,2号に基づき前記各製品の製造販売の差止め及び廃棄を求めるとともに,原告会社が被告に対し,同法102条2項に基づき3億円の損害賠償を求めている。被告は,これに対し,文言侵害及び均等侵害の成立を否定するとともに,前記各特許権には無効理由があって権利行使は許されないと主張して,原告らの請求を争っている。
1 判断の前提となる事実(当事者間に争いがないか,該当箇所掲記の各証拠によって容易に認められる。) (1) 当事者とその関係(甲6,16,17の1,2) ア 原告Aは,後記特許権1及び同2の特許権者であり,原告会社の代表取締役を務める者である。
原告会社は,管工事業等を目的とする株式会社であって,後記特許権1及び同2について,原告Aから独占的通常実施権の許諾を受けている。
イ 被告は,融雪工事の設計,施工等を目的とする株式会社であり,自動屋根融雪システム「冬将軍」を販売するものである。
ウ 原告会社は,以前,被告代表者が代表者を務める株式会社サンワプランニング(以下「訴外会社」という。)との間で,後記特許権1及び2の実施品について販売代理店契約を締結していた。被告(当時の商号は「株式会社日進住研」)は,訴外会社の販社として指定されており,原告会社は,被告に対し,直接,後記特許権1及び2の実施品を納品していた。
訴外会社は,前記代理店契約の解約を申し入れ,平成10年2月18日,前記代理店契約は終了し,原告会社は,被告に対する実施品の納品を中止した。
(2) 原告Aの特許権 原告Aは,下記の特許権1(以下「本件特許権1」という。)及び同2(以下「本件特許権2」という。)の特許権者である。
ア 本件特許権1(甲1,2) (ア) 発明の名称 屋根上配管の媒体液充填装置 (イ) 特許番号 第1755657号 (ウ) 出願日 昭和63年3月2日 (エ) 出願番号 特願昭63-049012号 (オ) 登録日 平成5年4月23日 イ 本件特許権2(甲3ないし5) (ア) 発明の名称 屋根上における管材の設置用掛止金具 (イ) 特許番号 第2136098号 (ウ) 出願日 昭和61年7月23日 (エ) 出願番号 特願昭61-173429号 (オ) 登録日 平成10年5月1日 (3) 本件特許権1及び同2の特許請求の範囲 ア 本件特許権1に係る明細書(以下「本件明細書1」という。本判決末尾添付の特許公報(甲1。以下「本件公報1」という。)参照)の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(以下,請求項1記載の特許発明を「本件特許発明1」という。)。
「【請求項1】 媒体液を入れる第1のタンクと,媒体液を屋根上配管へ送出するポンプと,屋根上配管から戻った媒体液の気水分離をする第2のタンクとを備え,該第2のタンクから前記ポンプの吸入口に至る管路に断面積拡大管を介装し,該断面積拡大管には,逆止弁を介して,前記第1のタンクからの管路を接続してなる屋根上配管の媒体液充填装置。」 イ 本件特許権2に係る明細書(以下「本件明細書2」という。本判決末尾添付の特許公報(甲3,4。以下「本件公報2」という。)参照)の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(以下,請求項1記載の特許発明を「本件特許発明2」という。)。
「【請求項1】 帯状の薄鋼板を折曲げ加工することにより,桟瓦の上端面に掛止する掛止部を一端に形成し,該掛止部と逆方向に突出する下部開放の円弧部を他端に形成するとともに,屋根上において上下に隣接する桟瓦の重なり部分に対応する帯状部を前記掛止部,円弧部の間に形成してなり,前記円弧部の内側は,円形断面の管材を収納して保持する保持溝とし,前記帯状部には,水切り用の小溝を形成することを特徴とする屋根上における管材の設置用掛止金具。」 (4) 本件特許発明1及び同2の構成要件の分説 ア 本件特許発明1を構成要件に分説すれば,次のとおりである(以下,それぞれを「構成要件1-A」のようにいう。) 1-A 媒体液を入れる第1のタンクと, 1-B 媒体液を屋根上配管へ送出するポンプと, 1-C 屋根上配管から戻った媒体液の気水分離をする第2のタンクとを備え, 1-D 該第2のタンクから前記ポンプの吸入口に至る管路に断面積拡大管を介装し, 1-E 該断面積拡大管には,逆止弁を介して,前記第1のタンクからの管路を接続してなる 1-F 屋根上配管の媒体液充填(以下「充填」と表記する。)装置。
イ 本件特許発明2を構成要件に分説すれば,次のとおりである(以下,それぞれを「構成要件2-A」のようにいう。) 2-A 帯状の薄鋼板を折曲げ加工することにより,桟瓦の上端面に掛止する掛止部を一端に形成し, 2-B 該掛止部と逆方向に突出する下部開放の円弧部を他端に形成するとともに, 2-C 屋根上において上下に隣接する桟瓦の重なり部分に対応する帯状部を前記掛止部,円弧部の間に形成してなり, 2-D 前記円弧部の内側は,円形断面の管材を収納して保持する保持溝とし, 2-E 前記帯状部には,水切り用の小溝を形成することを特徴とする 2-F 屋根上における管材の設置用掛止金具。
なお,後記3の(7)の冒頭に述べるように,本件特許権2の無効理由に関する主張及び判断については,「構成要件2-A」を,「構成要件2-A-1 帯状の薄鋼板を折曲げ加工することにより」,「構成要件2-A-2 桟瓦の上端面に掛止する掛止部を一端に形成し」と更に分説する。
(5) 本件特許権1及び同2に係る無効審判等は,次のとおりである。
ア 本件特許権1(乙9の1) 被告は,平成16年4月21日,無効審判を申し立てた(審判2004-80023号)。
イ 本件特許権2(乙1の2ないし4,6,10ないし13,8の1) 当初出願について,平成6年5月30日,拒絶理由通知がされ,原告Aは,同年7月25日受付で意見書を提出するとともに,当初出願の明細書の全文の補正を申し立てた。
その後,平成7年4月26日受付で特許異議が申し立てられ,平成9年4月4日,異議申立ての理由がある旨の決定がされるとともに,拒絶査定がされた。これに対し,原告Aは,同年6月13日受付で拒絶査定不服審判を請求するとともに(平成9年審判第9624号),明細書の補正を申し立て,平成10年3月12日,原査定を取り消し,特許とする旨の審決がされた。そして,同年5月1日,特許登録された。
被告は,平成16年4月5日,無効審判を申し立てた(審判2004-80004号)。
(6) 別紙被告製品目録3記載の製品とその使用方法(乙2の1の1及び2,2の2,2の3の1ないし3,6の1ないし3) ア 被告は,平成12年11月ころから平成14年5月末まで,自動屋根融雪システム「冬将軍」の名称で,別紙被告製品目録3記載の製品(以下「被告製品3」という。)を業として製造・販売していた。被告製品3の構成は,別紙被告製品目録3記載のとおりであり,その構成を本件特許発明1の構成要件に対応して記載すると,次のとおりである。
a 媒体液の入った膨脹タンク1と, b 媒体液を屋根上放熱部2へ送出する循環ポンプ3と, c 屋根上放熱部2から戻った媒体液の気水分離をする温水ボイラー5と, d-1 温水ボイラー5から循環ポンプ3の吸入口6(口径25ミリメートル)に至る管路は,温水ボイラー5の吐出口7(内径24.8ミリメートル)に連結される連結部8を具えるティーズ9(内径35ミリメートル),ホースニップル10(入口側内径23ミリメートル,出口側内径21ミリメートル),ゴムホース11(内径25.4ミリメートル),ホースニップル12(入口側内径21ミリメートル,出口側内径23ミリメートル)をそれぞれ接続し, -2 さらにティーズ13(内径35ミリメートル,左右長さ76ミリメートル)とニップル14(内径27.6ミリメートル,長さ42ミリメートル)(以下,この部分を「ティーズ13とニップル14の管路」という。)をそれぞれ接続し, e ティーズ13とニップル14の管路の内,ティーズ13(内径35ミリメートル)の直線部15の他端部18には,ニップル19(内径27.6ミリメートル)の一端部20が接続され,該ニップル19の他端部21には,媒体液充填部22にも接続されている異径ティーズ23(左右内径35ミリメートル),ブッシング24(内径23.5ミリメートル),ニップル90(内径16ミリメートル),逆止弁25(内径21.7ミリメートル),ニップル80(内径16ミリメートル),エルボ26(内径21.7ミリメートル),ゴムホース27(内径13.2ミリメートル)を介して,膨脹タンク1に接続されている f 屋根上放熱部2の媒体液補充装置 イ 被告は,被告製品3を顧客の元に設置するに際し,以下の「水中ポンプ69を備えた予備タンク68を用いた工程」を実施していた。この「水中ポンプ69を備えた予備タンク68」は設置時の作業が終了すると,撤去していた。
(ア) 媒体液が貯留された予備タンク68内に水中ポンプ69を設置するとともに,該水中ポンプ69の吐出口70に連結されたゴムホース71の先端72を,プラグ29を取り外して形成された充填口32に接続し,その後,ボールバルブ28を開放する。また,温水ボイラー5の上部に設けられた逃し弁74に,ゴムホース75を連結し,その端部76を前記予備タンク68内に定置する。その後,逃し弁74を開放状態にして,前記水中ポンプ69を運転し,予備タンク68内の媒体液を前記充填口32に送給する。
(イ) これにより媒体液は,充填口32からティーズ13で分岐し,一方は循環ポンプ3に至り,他方は,ゴムホース11等(温水ボイラー5に至る流路)を経由して直接温水ボイラー5に至り,温水ボイラー5も媒体液で満たされる。
この過程で,流路は,ニップル30,異径ティーズ23,ニップル19,ティーズ13,ニップル14,ニップル12,ゴムホース11,ホースニップル10,ティーズ9から構成されている。
(ウ) 前記流路及び温水ボイラーが媒体液で満たされ,逃し弁74を経て予備タンク68に媒体液が戻った後,水中ポンプ69の運転を継続しながら循環ポンプ3を運転すると,予備タンク68内の媒体液が,管路33を経て屋根上放熱部2に送り込まれ,その後,温水ボイラー5内に流出する。この際,屋根上放熱部2内の空気が媒体液に押し出されて,管路34を経て温水ボイラー5に流入し,その後,自動吸排気弁4とゴムホース75の端部75aから排出される。これにより,媒体液の循環路が形成され,この循環路で媒体液の循環を繰り返すと,予備タンク68内で気泡が除去されるとともに,自動吸排気弁4からも空気が排出される。
(エ) 循環路における気泡が一応除去されたと判断できる状態に至ると,逃し弁74を閉じるとともにボールバルブ28を閉じ,水中ポンプ69を停止する。その後,循環ポンプ3を停止して,水中ポンプ69を取り外すとともに,ゴムホース71,75を取り外す。
水中ポンプ69等を取り外した後,膨脹タンク1上部のプラグ31を外して流入口を形成し,この流入口より,必要量の補充用媒体液を膨脹タンク1内に注入する。この注入の後,プラグ31を取り付ける。
(7) 別紙被告製品目録1記載の製品(乙3の1の1及び2,3の2の1ないし3) ア 被告は,平成14年6月ころから現在に至るまで,自動屋根融雪システム「冬将軍」の名称で,別紙被告製品目録1記載の製品(以下「被告製品1」という。)を業として取り扱っている。被告製品1の構成は,別紙被告製品目録1記載のとおりであり,その構成を本件特許発明1の構成要件に対応して記載すると,次のとおりである。
a 媒体液を充填する予備タンク68と, b 媒体液を屋根上放熱部2へ送出する循環ポンプ3と, c 屋根上放熱部2から戻った媒体液の気水分離をする自動排気弁38付きの温水ボイラー5と, d-1 温水ボイラー5から循環ポンプ3(吸入口口径25ミリメートル)に至る管路は,温水ボイラー5の吐出口7に連結されるニップル40(内径27.6ミリメートル),エルボ41(内径35ミリメートル),ホースニップル42(入口側内径23ミリメートル,出口側内径21ミリメートル),ゴムホース43(内径25.4ミリメートル),ホースニップル44(入口側内径21ミリメートル,出口側内径23ミリメートル)をそれぞれ接続し, -2 さらにホースニップル44に対して,ティーズ46(内径35ミリメートルで直線部45の長さ76ミリメートル),ニップル47(内径27.6ミリメートル,長さ42ミリメートル),ティーズ49(内径35ミリメートル,直線部48の長さ76ミリメートル),ニップル50(内径27.6ミリメートル)(以下,この部分を「ティーズ46ないしニップル50の管路」という。)に各接続し, e 前記ティーズ46の直線部45の他端部53には,ニップル54(内径27.6ミリメートル)の端部55が挿入連結されるとともに,該ニップル54に,エルボ56(内径35ミリメートル),ニップル57(内径21.4ミリメートル)を介して,媒体液充填部58が接続し,充填口73からゴムホース71を介して,水中ポンプ69の吐出口70に接続し,水中ポンプ69は媒体液が貯留された媒体液充填のための予備タンク68を設けてある f 屋根上放熱部2の媒体液充填・補充装置 イ 被告製品1は,別紙被告製品目録2記載の製品を顧客の元に設置するに際し,「別紙被告製品目録2記載の製品に水中ポンプ69を備えた予備タンク68」を接続した状態である。この「水中ポンプ69を備えた予備タンク68」は,設置時の作業が終了すると,撤去される。設置時の作業工程は次のとおりである。
(ア) 媒体液が貯留された予備タンク68内に水中ポンプ69を設置するとともに,該水中ポンプ69の吐出口70に連結されたゴムホース71の先端72を,プラグ60を取り外して形成された充填口73に接続し,その後,ボールバルブ59を開放する。このとき,膨脹タンク1下のボールバルブ62は閉じておく。
(イ) 温水ボイラー5の上部に設けられた逃し弁74に,ゴムホース75を連結し,その端部76を前記予備タンク68内に定置する。その後,逃し弁74を開放状態にして,前記水中ポンプ69を運転し,予備タンク68内の媒体液を前記充填口73に送給する。
(ウ) これにより媒体液は,充填口73からティーズ46で分岐し,一方は循環ポンプ3に至り,他方は,温水ボイラー5に至り,温水ボイラー5も媒体液で満たされる。
この過程で,温水ボイラー5に至る管路は,ニップル57,エルボ56,ニップル54,ティーズ46,ニップル47,ティーズ49,ニップル50,ゴムホース43,ホースニップル42,エルボ41,ニップル40から構成されている。
前記管路及び温水ボイラーが媒体液で満たされ,逃し弁74を経て予備タンク68に媒体液が戻った後,水中ポンプ69の運転を継続しながら循環ポンプ3を運転すると,予備タンク68内の媒体液が,管路75を経て屋根上放熱部2に送り込まれ,その後,温水ボイラー5内に流出する。この際,屋根上放熱部2内の空気が媒体液に押し出されて,管路76,ホースニップル77,エルボ78,ニップル79を経て温水ボイラー5に流入し,その後,自動吸排気弁38とゴムホース75の端部75aから排出される。これにより,媒体液の循環路が形成され,この循環路で媒体液の循環を繰り返すと,予備タンク68内で気泡が除去されるとともに,自動吸排気弁38からも空気が排出され,加えて,屋根上放熱部2の最上端に設けられているエア抜き専用弁81からも空気が排出される。
(エ) 逃し弁74を閉じるとともにボールバルブ59を閉じ,水中ポンプ69を停止する。その後,循環ポンプ3を停止して,水中ポンプ69を取り外すとともに,ゴムホース71,75を取り外す。
膨脹タンク1上部の安全吸排気弁63を外して流入口を形成し,この流入口より,補充用媒体液を膨脹タンク1内に注入する。この注入の後,安全吸排気弁63を取り付け,膨脹タンク下のボールバルブ62を開放させる。
(8) 別紙被告製品目録2記載の製品とその使用方法(甲21,乙3の1の1及び2,3の2の1ないし3) ア 被告は,平成14年6月ころから現在に至るまで,自動屋根融雪システム「冬将軍」の名称で,別紙被告製品目録2記載の製品(以下「被告製品2」という。)を業として製造・販売している。被告製品2の構成は,別紙被告製品目録2記載のとおりであり,その構成を本件特許発明1の構成要件に対応して記載すると,次のとおりである。
a (なし) b 媒体液を屋根上放熱部2へ送出する循環ポンプ3と, c 屋根上放熱部2から戻った媒体液の気水分離をする自動排気弁38付きの温水ボイラー5と, d-1 温水ボイラー5から循環ポンプ3(吸入口口径25ミリメートル)に至る管路は,温水ボイラー5の吐出口7に連結されるニップル40(内径27.6ミリメートル),エルボ41(内径35ミリメートル),ホースニップル42(入口側内径23ミリメートル,出口側内径21ミリメートル),ゴムホース43(内径25.4ミリメートル),ホースニップル44(入口側内径21ミリメートル,出口側内径23ミリメートル)をそれぞれ接続し, -2 さらにホースニップル44に対して,ティーズ46(内径35ミリメートルで直線部45の長さ76ミリメートル),ニップル47(内径27.6ミリメートル,長さ42ミリメートル),ティーズ49(内径35ミリメートル,直線部48の長さ76ミリメートル),ニップル50(内径27.6ミリメートル)(以下,この部分を「ティーズ46ないしニップル50の管路」という。)に各接続し, e (なし) f 屋根上放熱部2の媒体液充填補充装置 イ 被告製品2は,顧客の元での設置作業に際し,「水中ポンプ69を備えた予備タンク68」を接続した状態(被告製品1)とされ,この設置時の作業が終了すると,「水中ポンプ69を備えた予備タンク68」が撤去され,以後,被告製品2のみの状態で稼働する。
(9) 別紙被告製品目録4記載の製品(甲8,19,20,25) 被告は,遅くとも平成10年11月には,自動屋根融雪システム「冬将軍」の付属品(掛止金具)である別紙被告製品目録4記載の製品(以下「被告製品4」という。)を業として製造・販売することを開始し,これを平成14年10月末まで継続していた。
被告製品4の構成は,別紙被告製品目録4記載のとおりであり,その構成を本件特許発明2の構成要件に対応して記載すると,次のとおりである。
a 帯状の薄鋼板を折曲げ加工することにより,桟瓦の上端面1に係止する係止部2を一端に形成し, b 係止部2と逆方向に突出する下部開放の円弧部3を他端に形成し, c 係止部2,円弧部3の間の帯状をなす部分4は,屋根上において上下に隣接する桟瓦の重なり部分に対応する長さより長く,円弧部3が上方の桟瓦の下端面5より離隔して形成され, d 円弧部3の内側は,円形断面の放熱ホースを収納して保持する保持溝6であり, e 帯状をなす部分4には,小溝7が形成されている, f 屋根上放熱部の放熱ホースの設置用係止金具 (10) 本件訴訟提起に至る経緯 原告Aは,平成14年10月1日,金沢地方裁判所に対し,被告を債務者として,被告製品3及び4の製造・販売行為の差止めを求める仮処分を申し立てた
追加
被告は,前記仮処分事件において,被告製品3の製造販売は平成14年5月末日までに終了し,同年6月以降は設計変更を行った被告製品1を使用し,また,被告製品2を製造販売している旨主張した。なお,被告製品4の製造販売は,同年10月末日をもって終了した旨主張した。
2本件の争点(1)被告製品3は本件特許発明1の構成要件を文言上充足するか(争点1)(2)被告製品3は本件特許発明1の構成と均等といえるか(争点2)(3)被告製品1は本件特許発明1の構成と均等といえるか(争点3)(4)被告製品2は本件特許発明1の間接侵害品に当たるか(争点4)(5)被告製品4は本件特許発明2の構成要件を文言上充足するか(争点5)(6)本件特許発明1に進歩性欠如による無効理由があることが明らかか(争点6)(7)本件特許発明2に進歩性欠如による無効理由があることが明らかか(争点7)(8)本件特許発明2に公然実施による無効理由があることが明らかか(争点8)(9)差止め・廃棄の必要性(争点9)(10)損害の内容及びその額(争点10)3争点に関する当事者の主張(1)被告製品3は,本件特許発明1の構成要件を文言上充足するか(争点1)(原告らの主張)ア被告製品3の膨張タンク1は,構成要件1-Aの「媒体液を入れる第1のタンク」に該当する。
したがって,被告製品3は,構成要件1-Aを充足する。
イ被告製品3における媒体液は本件特許発明1の媒体液に相当し,また,被告製品3の屋根上放熱部2は本件特許発明1の屋根上配管に相当するから,被告製品3の循環ポンプ3,温水ボイラー5は,それぞれ,本件特許発明1のポンプ,第2のタンクに該当する。
したがって,被告製品3は,構成要件1-B及びCを充足する。
ウ被告製品3において,ニップル14の先端は,循環ポンプ3の吸入口に接続されており,ティーズ13,ニップル14の内径35ミリメートル,27.6ミリメートルは,ゴムホース11,ホースニップル12の内径25.4ミリメートル,21ないし23ミリメートルのいずれよりも大きい。また,ティーズ13には,別のニップル19,ボールバルブ28付きの異径ティーズ23,ブッシング24,逆止弁25,ニップル80,エルボ26,ホースニップル(番号なし)を介して,膨脹タンク1からのゴムホース27が接続されている。それゆえ,被告製品3のホースニップル12を介して温水ボイラー5からのゴムホース11の先端を循環ポンプ3に接続するティーズ13及びニップル14は,構成要件1-D及びEの断面積拡大管に該当する。
したがって,被告製品3は,構成要件1-D及びEを充足する。
エ本件特許発明1は,屋根上配管の媒体液充填装置とされている。ところで,本件明細書1の記載によれば,本件特許発明1において,「充填」の用語は,ポンプを運転して第1のタンクからの媒体液を屋根上配管に送り込み,媒体液の循環経路が完成されるまでの動作を示し,「補充」の用語は,媒体液の循環経路が完成した後,系内の残存空気(媒体液中の空気を含む。)を排出し,同体積の媒体液を系内に補充する動作を示している。ただし,「充填」の用語は,「充填」と「補充」の両者を総称する意味にも使用されている。すなわち,本件特許発明1においては,ポンプを運転して空の屋根上配管に初めて第1のタンクからの媒体液を送り込み,媒体液の循環経路を完成させるまでの動作,いわゆる初充填を狭義の「充填」と表現し,媒体液の循環経路が完成した後,媒体液を循環させながら第2のタンクにより気水分離し,排出された空気と同体積の媒体液を第1のタンクから補充する動作を「補充」と表現し,さらに初充填(狭義の「充填」)と補充とを総称して広義の「充填」と表現しているのである。
したがって,本件特許発明1においては,媒体液の循環経路の完成を境として,系内への媒体液の「充填」と媒体液の「補充」という作用を生ずるから,構成要件1-Fは,正確には,屋根上配管の媒体液充填・補充装置と解釈すべきことになる。
そして,被告製品3は,構成要件1-AないしEに該当する構成をすべて有しており,これにより,問題なく本件明細書1記載の作用,すなわち,屋根上配管の媒体液充填・補充作用を果たすことができる。
したがって,被告製品3は,構成要件1-Fを充足する。
オよって,被告製品3は,構成要件1-AないしFのすべてを充足し,本件特許発明1の技術的範囲に属する。
(被告の主張)ア被告製品3が構成要件1-B,Cを充足することは認め,その余は否認する。
構成要件1-Aの解釈(ア)本件明細書1の「発明が解決しようとする課題」欄(本件公報1の第2欄15行目ないし20行目),「作用」欄(本件公報1の第3欄7行目ないし39行目)及び「実施例」欄(本件公報1の第4欄41行目ないし第5欄の31行目)の記載によれば,構成要件1-A「第1のタンク」は,媒体液を注入した上,ポンプPを運転し,管路10c等を経てポンプPに吸入され,さらに屋根上配管20に送り込まれ,これにより屋根上配管20に媒体液が送り込まれると,管内の空気は,管路10eと第2のタンク12とを経て,空気逃し弁Vaを介して系外に排出されるので,屋根上配管20の内部には,媒体液が満たされ,さらに第2のタンク12が媒体液で満たされると,ついには,ポンプPの吐出口から,屋根上配管20,第2のタンク12を経て,ポンプPの吸入口に至る媒体液の循環経路が完成するというものである。すなわち,「第1のタンク」の作用は媒体液充填作用である。さらに,媒体液の循環経路が完成した後,なおも,ポンプPの運転を続行すると,系内に局部的に残留していた空気は,媒体液とともに第2のタンク12に搬送されるので,第2のタンク12において,媒体液と気水分離されて,空気逃し弁Vaから系外に排出することができる。また,このようにして空気が排出されたときは,その体積に相当する量の媒体液は,第1のタンク11から自動的に補充する。この「第1のタンク」の作用は媒体液補充作用である。
(イ)以上のように,「第1のタンク」の作用には,媒体液充填作用及び媒体液補充作用があるのであって,構成要件1-A「媒体液を入れる第1のタンク」とは,「媒体液を充填及び補充する第1のタンク」と解すべきである。
構成要件1-Dの解釈(ア)断面積拡大管とポンプの位置関係断面積拡大管が第2のタンクとポンプの吸入口との間に介装されているのは,本件公報1の第4欄32行目ないし35行目の記載からも明らかである。
(イ)断面積拡大管の意義「拡大」とは「ひろげて大きくすること」「ひろがること」という意味であるから,「断面積拡大管」とは「管の断面積をひろげて大きくしている管」の意である。そして,断面積拡大管の位置(前記(ア))及び本件明細書1の「実施例」欄の記載(本件公報1の第4欄第32行目ないし35行目)に照らせば,「拡大」であるか否かは管路10aを基準とするものである。
(ウ)「拡大」の臨界的意義について本件明細書1の「実施例」欄に「なお,断面積拡大管10bの断面積は,管路10aと管路10cとの合計断面積よりも大きくとるのがよい。」と記載されていること(本件公報1の第4欄第35行目ないし37行目),管路10aや管路10cとは媒体液を流通させる管であるという意味合いにおいてはほぼ同径管と推測できるため,断面積拡大管10bは少なくとも管路10aと管路10cの2倍よりも大きくとるのがよいと記載されているものと解釈できること,本件明細書1の「第1図」「第2図」には実施例の図面として管路10aと管路10cに対して明らかに数倍の断面積と判断できる断面積拡大管10bが記載されていることに照らせば,「断面積拡大管」の臨界点を少なくとも「第2のタンクからポンプの吸入口に至る管路」の断面積の2倍以上を考慮していたと判断できるのであって,数ミリメートルの微差の「ひろがり」を断面積拡大管と考慮したとは判断できない。
以上の解釈は,断面積拡大管の作用,効果に基づく技術的解釈からも正当である。すなわち,本件明細書1の「作用」欄の記載(本件公報1の第3欄28行目ないし39行目),「実施例」欄の記載(本件公報1の第4欄32行目ないし37行目,第5欄32行目ないし44行目)及び「発明の効果」欄の記載(本件公報1の第6欄43行目ないし第7欄5行目)を総合すれば,断面積拡大管は,循環分の媒体液と充填・補充分の媒体液との合流が極めて円滑に行われるものでなければならない。合流が円滑に行われることにより,ポンプPによる媒体液の吸入・送出機能が損なわれるおそれがなくなるからである。すなわち,断面積拡大管10bにおける媒体液の流速が遅くなるため,媒体液にうずが発生することは少なくなり,したがってポンプPへの気泡の流入を少なくすることができるからである。
このような断面積拡大管について,さらに検討すると,まず,断面積拡大管に直結する第1のタンクの機能に着目すると,第1のタンクには,媒体液の充填(装置を初期化して媒体液を満たして使用できる状態にまでする過程)及び補充(初期化充填を終了し循環経路が完成した以降に,系内の空気と媒体液を気水分離し,媒体液と置換すること)の2つの機能がある。そして,補充時においては,第1のタンクからの媒体液の補充が少ない場合には,断面積拡大管10bの断面積が管路10aよりも大きければ両管路の合流が円滑に行くことはあり得る。一方,充填時においては,断面積拡大管10bの断面積は管路10aと管路10cとの合計断面積よりも大きくとる必要がある。なぜなら,仮に第1のタンクから管路10cに移送された媒体液の流速と,第2のタンク12から管路10aに移送された媒体液の流速が同じ場合に,断面積拡大管10bの断面積が管路10aの断面積より少し大きいくらいだけでは,流速が急激に上昇し,気泡が発生し,本件特許発明1の効果を奏するものではないからである。
したがって,第1のタンクは,媒体液の充填及び補充の2つの機能を同時に実現する必要があるから,断面積拡大管10bは,管路10aよりも大きな断面積では足りず,管路10aと管路10cとの合計断面積よりも大きくとることが必要である。
(エ)「断面積拡大管を介装」について前記(ウ)のとおり,断面積拡大管10bを設けたことにより,媒体液の流速が遅くなり,媒体液にうずが発生することが少なくなるのである。したがって,仮に断面積拡大管10bとポンプPとを直結せずに,断面積拡大管10bより断面積の小さい管路を断面積拡大管10bとポンプPとの間に設けた場合,断面積拡大管を設けることにより媒体液内のうずが消えた場合にも,断面積拡大管10bより断面積の小さい管路で再び流速が増し,うずが再度発生し,ポンプPに気泡が流入することになる。
したがって,断面積拡大管は,ポンプPに直接接続していなければならない。
(オ)結論以上より,構成要件1-Dは「該第2のタンクから前記ポンプの吸入口に至る管路の間に断面積拡大管を設け,その断面積は第2のタンク及び第1のタンクからの各管路の合計断面積よりも大きく設け,また,断面積拡大管は,前記ポンプの吸入口に直結し,しかもその形状は第2のタンク及び第1のタンクからの各管路の円滑な合流を確保する形状であって」と解すべきである。
構成要件1-Eの解釈前記イのとおり,「第1のタンク」とは「媒体液の充填及び補充をする第1のタンク」という意味に解釈されるから,構成要件1-Eは「該断面積拡大管には,逆止弁を介して,前記媒体液の充填及び補充をする第1のタンクからの管路を接続してなる」と解すべきである。
構成要件1-Fの解釈前記イのとおり,「第1のタンク」とは「媒体液の充填及び補充をする第1のタンク」という意味に解釈されるから,構成要件1-Fの「屋根上配管の媒体液充填装置」とは「屋根上配管の媒体液充填及び補充装置」と解すべきである。
カ被告製品3の本件特許発明1の非充足性(ア)構成要件1-A構成要件1-Aの意義は「媒体液を充填及び補充する第1のタンク」であると解される。一方,被告製品3の構成aは「媒体液を補充する膨脹タンク」であって,媒体液の充填機能に欠けている。
したがって,被告製品3は,構成要件1-Aを充足しない。
(イ)構成要件1-D構成要件1-Dは「該第2のタンクから前記ポンプの吸入口に至る管路の間に断面積拡大管を設け,その断面積は第2のタンク及び第1のタンクからの各管路の合計断面積よりも大きく設け,また,断面積拡大管は,前記ポンプの吸入口に直結し,しかもその形状は第2のタンク及び第1のタンクからの各管路の円滑な合流を確保する形状であって」と解される。
原告らの主張を総合すれば,被告製品3の構成d-2「ティーズ13(内径35ミリメートル,左右長さ76ミリメートル)とニップル14(内径27.6ミリメートル,長さ42ミリメートル)(「ティーズ13とニップル14の管路」)」が,構成要件1-Dの「断面積拡大管」に該当すると主張していると解される。
この「ティーズ13とニップル14の管路」においては,循環ポンプ3の吸入口6は口径25ミリメートルであるから,この部分の内径は,35ミリメートルないし25ミリメートルである。一方,被告製品3で本件特許発明1の「第2のタンクからの管路」に相当するのは,「ティーズ9,ホースニップル10,ゴムホース11,ホースニップル12」であるところ,ここでの内径は,35ミリメートルないし21ミリメートルである。さらに,「第1のタンクからの管路」に相当するのは,「ティーズ13に接続されているニップル19(内径27.6ミリメートル),異径ティーズ23(左右内径35ミリメートル),ブッシング24(内径23.5ミリメートル),ニップル90(内径16ミリメートル),逆止弁25(内径21.7ミリメートル),ニップル80(内径16ミリメートル),エルボ26(内径21.7ミリメートル),ゴムホース27(内径13.2ミリメートル)」であり,ここでの内径は35ミリメートルないし13.2ミリメートルである。
したがって,被告製品3では,「第2のタンクからの管路」及び「第1のタンクからの管路」の合計平均断面積より,「ティーズ13とニップル14の管路」の平均断面積の方が小さい(なお,本件特許発明1の構成要件では「断面積拡大管」とだけ定義され,断面積が変動する拡大管について言及していないことから,管路が途中で径を変更する管については平均断面積を基準とするのが合理的である。)。
また,構成要件1-Dにおいては,該第2のタンクから前記ポンプの吸入口に至る管路に断面積拡大管を設けることが記載されているにとどまり,その管路中の特定のどの部分というような限定がされていないのであるから,該第2のタンクから前記ポンプの吸入口に至る管路に断面積拡大管を設けることによって所定の効果が生じるものと解される。したがって,全体的にみて,「断面積拡大管」より前の前記管路に「断面積拡大管」と同等の断面積の管路があれば,本件特許発明1の効果は発生しないというべきである。
さらに,第2のタンクからの管路,第1のタンクからの管路及び中央のティーズ13から循環ポンプ3の吸入口6までの管路は,いずれも最大内径35ミリメートルであることから,大局的にほぼ同一の流速と考えてよく,被告製品3においては,断面積拡大管で媒体液の流速が遅くなるという効果は生じない。
また,ティーズ13,ニップル14及び循環ポンプ3の吸入口6には段差があり,円滑な合流を確保する形状ではない。
したがって,被告製品3は,構成要件1-Dを充足しない。
(ウ)構成要件1-E構成要件1-Eは「該断面積拡大管には,逆止弁を介して,前記媒体液の充填及び補充をする第1のタンクからの管路を接続してなる」と解される。一方,被告製品3の構成は,「ティーズ13とニップル14の管路のうち,ティーズ13(内径35ミリメートル)の直線部15の他端部18には,ニップル19(内径27.6ミリメートル)の一端部20が接続され,該ニップル19の他端部21には,媒体液充填部22にも接続されている異径ティーズ23(左右内径35ミリメートル),ブッシング24(内径23.5ミリメートル),ニップル90(内径16ミリメートル),逆止弁25(内径21.7ミリメートル),ニップル80(内径16ミリメートル),エルボ26(内径21.7ミリメートル),ゴムホース27(内径13.2ミリメートル)を介して,媒体液を補充する膨脹タンク1に接続されている」というものである。
被告製品3には,本件特許発明1における「断面積拡大管」がなく,また,「媒体液の充填及び補充をする第1のタンク」が存在しない。
したがって,被告製品3は,構成要件1-Eを充足しない。
(エ)構成要件1-F被告製品3に接続される「水中ポンプ69を備えた予備タンク68」は,膨脹タンク1のみを用いる本件特許発明1とは異なる技術的思想を採用したものである。すなわち,膨脹タンク1から液入れした場合は,逆止弁25による抵抗が働くために,円滑な液入れができないのであって,系内への媒体液の充填を短時間で効率的に行うために,循環経路が完成するまでの媒体液の充填を,予備タンクと水中ポンプを用いて行うこととしたものである。そして,このような構成のもとでは,膨脹タンク1は「補充のための媒体液を入れる」だけのものであり,本件特許発明1における「充填及び補充のための媒体液を入れる」第1のタンクが存在しない。
(オ)以上のとおり,被告製品3は,構成要件1-A,D,E,Fを充足せず,したがって本件特許発明1の技術的範囲に属しない。
(原告らの再反論)ア構成要件1-Aの解釈(ア)本件特許発明1において,媒体液充填作用及び補充作用を担っているのは「第1のタンク」ではなく,「ポンプ」である。「第1のタンク」はその充填と補充に使用される媒体液を入れるためのものにすぎず,「第1のタンク」それ自体には,媒体液充填作用も補充作用もない。このことは,本件明細書1の記載(本件公報1の第3欄7行目ないし39行目)からも明らかである。
したがって,構成要件1-Aの「媒体液を入れる第1のタンク」とは,その字句どおりに解釈すべきである。
(イ)膨張タンク1について膨張タンク1自体は,単に媒体液を入れておくものにすぎない。したがって,被告製品3の構成aは,単に「媒体液を入れる膨張タンク1」なのであって,膨張タンク1を「媒体液を補充する膨脹タンク1」に限定する被告の主張は理由がない。
構成要件1-D及びEについて(ア)本件明細書1の特許請求の範囲の記載には,「断面積拡大管」について,被告がいうような「第2のタンクからポンプの吸入口に至る管路の断面積の2倍以上である」などという限定を示唆する記載は全くない。本件公報1の第4欄32行目ないし35行目をみれば,「断面積拡大管」とは,その字義のとおり「管路10aよりも大きな断面積を有」する管状の部材であって,管路10aとポンプPの吸入口との間に介装されるものを意味しているのである。
被告は本件明細書1の実施例の記載を強調するが,このような主張は,本件明細書1の記載から実質的な解釈を行うことなく,形式的に,本件明細書1に付加的に記載されている一実施例の具体的な構成のみをもって,本件特許発明1の技術的範囲を限定しようとするものであり,実施例不拘束の原則からして不当である。
「断面積拡大管」の作用効果は,ポンプPの吸入口に至る媒体液の流速を小さくすることにより,媒体液を循環させて系内の残存空気を系外に排出させる際に,第1のタンク11からの媒体液の合流を円滑にするとともに,ポンプPの吸い込み損失を小さくしてポンプPの機能を損なわないようにするという点にある(本件公報1の第3欄22行目ないし27行目,34行目ないし39行目,第5欄32行目ないし45行目)。しかし,断面積拡大管の断面積が「管路10a」の断面積よりも大きいものであれば,その分,媒体液の流速を低下させることになるし,また,断面積拡大管における圧力損失が小さくなり,ポンプPの吸入・送出機能が損なわれたりするおそれがなくなる。このように,「断面積拡大管」の断面積が「管路10a」の断面積よりも大きいものであれば,本件明細書1に記載されている断面積拡大管の作用効果は達成されるものである。
したがって,本件特許発明1における「断面積拡大管」は,第2のタンクからの管路10aより大きな断面積であればよい。
(イ)被告は,内径の変化範囲から算出した平均断面積の比較や管路の最大内径の一致などを根拠に反論するが,かかる反論には,技術的な意味は全くない。なぜなら,本件特許発明1にあっては,断面積拡大管に直接接続される部分の内径によって断面積拡大管に流入する媒体液の流速が決まるのであって,管路10aの断面積として最も重要なのは,断面積拡大管に直接接続される部分の内径だからである。被告製品3においては,ティーズ13に直接接続されるホースニップル12の内径が21ミリメートルないし23ミリメートルであるのに対し,ティーズ13,ニップル14の内径は35ミリメートル,27.6ミリメートルと,一貫してより大きなものとなっており,ティーズ13及びニップル14が断面積拡大管に該当することは明らかである。
また,被告製品3には段差があり,円滑な合流を確保する形状ではないとの主張は,前記のとおり,何ら支障なく媒体液の充填補充動作を行うことができる内径の構造となっているのであるから,理由がない。
構成要件1-Fについて被告製品3にあっては,予備タンク68及び水中ポンプ69という過分な構成を加えて,あえて予備タンク68及び水中ポンプ69という構成に媒体液充填機能を持たせている。つまり,被告製品3は,本件特許発明1の技術的思想をそのまま利用したものであって,本来,予備タンク68及び水中ポンプ69が存在しなくても被告製品3において果たしうる媒体液充填機能を,わざわざ予備タンク68及び水中ポンプ69という構成に肩代わりさせているにすぎないのである。
このように,被告製品3は,本件特許発明1の構成をすべて備え,その技術的思想をそのまま利用していながら,あえて過分な構成が付加されたものにすぎない。被告製品3は,予備タンク68及び水中ポンプ69がなくても,媒体液の充填・補充動作が当然に可能であって,屋根上配管の媒体液充填装置に該当する。
仮に被告製品3が予備タンク68及び水中ポンプ69を追加することで充填作業の能率向上を図っているとしても,被告製品3が本件特許発明1の構成要件のすべてを充足していることには変わりはない。
したがって,被告製品3は,全体として屋根上配管の媒体液充填・補充装置を構成しているというべきであって,被告製品3が構成要件1-Fを充足することは明らかである。
(2)被告製品3は本件特許発明1の構成と均等といえるか(争点2)(原告らの主張)ア被告製品3における,予備タンク68,温水ボイラー5,循環ポンプ3,ティーズ13及びニップル14は,それぞれ,本件特許発明1の第1のタンク,第2のタンク,ポンプ,断面積拡大管に該当する。
したがって,被告製品3は,構成要件1-AないしD及びFを充足する。
イもっとも,被告製品3において,予備タンク68をもって本件特許発明1の第1のタンクと捉えた場合,本件特許発明1の断面積拡大管と第1のタンクとを接続する管路に逆止弁が存在しないこととなり,文言上,被告製品3は構成要件1-Eを充足しない。しかし,被告製品3は,以下に述べるとおり,本件特許発明1と均等であり,本件特許発明1の技術的範囲に属するものである。
ウ本件特許発明1の本質的部分本件特許発明1は,屋根上にシスターンを設置することなく,屋根上配管に媒体液を充填する際の配管内の空気抜きと,それに伴う媒体液の補充とを速やかに行うことのできる新規の屋根上配管の媒体液充填装置を提供することを目的としている。ここにいうシスターン(cistern)とは,一般的には貯水槽を意味するが,本件では媒体液を屋根上に蓄えるタンクを意味する。
そして,本件特許発明1は,上記目的のために,媒体液を入れる第1のタンクと,媒体液を屋根上配管へ送出するポンプと,屋根上配管から戻った媒体液の気水分離をする第2のタンクとを備え,該第2のタンクから前記ポンプの吸入口に至る管路に断面積拡大管を介装し,該断面積拡大管に前記第1のタンクからの管路を接続してなる屋根上配管の媒体液充填装置という構成をとった。同構成をとれば,屋根上にシスターンを設ける必要がないし,また,系内に循環する媒体液と系内に補充される媒体液とが円滑に合流することができる。このことは,本件明細書1(本件公報1の第5欄32行目ないし40行目)でも,「第2のタンク12から,管路10aを経て断面積拡大管10bに流入する循環分の媒体液と,タンク11から管路10cを経て断面積拡大管10bに流入する補充分の媒体液とは,ともに,断面積拡大管10bに流入し,そこで合流することになるが,断面積拡大管10bの断面積が大きいために,両者の合流は円滑に行うことができ,したがって,ポンプPによる媒体液の吸入・送出機能が損なわれるおそれがない。」として明記されている。
このように,本件特許発明1においては,上記構成をとれば,屋根上配下への媒体液の充填を効率よく行うことができ,しかも,屋根上にシスターンを設ける必要がないので,工事が煩雑となったり,住宅の美観を損ねたりするおそれがないという効果を奏し(本件公報1の第7欄2行目ないし8行目参照),発明の目的を果たし得るのである。
これに対し,本件特許発明1における逆止弁は,安全対策上,第1のタンクからいったん流出した媒体液が第1のタンクに逆流することを阻止するという補助的・付加的な役目を果たしているにすぎない。
したがって,本件特許発明1において,逆止弁という構成要素は本質的部分ではない。
置換可能性本件特許発明1において,逆止弁は,第1のタンクからの媒体液を断面積拡大管に向けてのみ流出させ,いったん流出した媒体液の逆流を阻止する役割を果たすものである。
これに対し,被告製品3の水中ポンプ69も,予備タンク68(第1のタンクに対応)からの媒体液をティーズ13及びニップル14(断面積拡大管10bに対応)に向けてのみ送出し,本件特許発明1の逆止弁と同様,いったん流出した媒体液の逆流を阻止する役目を果たしていることが明らかである。
それゆえ,本件特許発明1における逆止弁を,水中ポンプ69に置き換えても,本件特許発明1の目的を十分に達成することができ,置換可能性は肯定される。
置換容易性(置換についての容易想到性)被告が被告製品3の製造を開始した時点(平成12年11月)において,逆止弁がいったん流出した液体の逆流を阻止する役目を果たすことは周知であり,また,水中ポンプが液体を一方向にのみに送出することで,いったん流出した液体の逆流を阻止する役目を果たすことも周知であった。
したがって,被告製品3の製造時において,当業者は,本件特許発明1における逆止弁を被告製品3における水中ポンプ69に置き換えることに,容易に想到することができたといえる。
公知技術からの想到非容易性被告製品3は,本件特許発明1の開示を待って初めて製造できるようになったもので,本件特許発明1の特許出願がなされた当時における公知技術と同一ということもできないし,当業者が上記出願時に公知技術から容易に推考することができたものであるということもできない。
意識的除外等の特段の事情の不存在被告製品3の構成が,本件特許発明1に係る特許出願手続において,特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情はない。
ク以上のとおり,被告製品3は,本件特許発明1と均等であり,本件特許発明1の技術的範囲に属するので,均等侵害を予備的に主張する。
(被告の主張)ア原告らの均等の主張は,争う。
イ原告らは,文言侵害の場面で,膨脹タンクが「第1のタンク」に相当すると主張しながら,均等論では予備タンクが「第1のタンク」に相当すると主張しているが,失当である。
ウ水中ポンプは逆止弁の機能を果たさないのであって,逆止弁と水中ポンプとの間で均等は成立し得ない。
(3)被告製品1は本件特許発明1の構成と均等といえるか(争点3)(原告らの主張)ア被告製品1における,予備タンク68,温水ボイラー5,循環ポンプ3,ティーズ46からニップル50に至る部分は,それぞれ,本件特許発明1の第1のタンク,第2のタンク,ポンプ,断面積拡大管に該当する。したがって,被告製品1は,構成要件1-A,B,C,D及びFを充足する。
イところが,被告製品1には,構成要件1-Eの逆支弁という名称の構成を欠いているため,文言上は,構成要件1-Eを充足しない。しかしながら,被告製品1は,以下に述べるとおり,本件特許発明1と均等であり,本件特許発明1の技術的範囲に属するものである。
ウ本件特許発明1の本質的部分前記(2)の原告らの主張欄のウ記載のとおりである。
置換可能性前記(2)の原告らの主張欄のエ記載のとおりである(なお,「ティーズ13及びニップル14」は,「ティーズ46からニップル50に至る部分」と読み替える。)オ置換容易性(置換についての容易想到性)前記(2)の原告らの主張欄のオ記載のとおりである。
公知技術からの想到非容易性前記(2)の原告らの主張欄のカ記載のとおりである。
意識的除外等の特段の事情の不存在前記(2)の原告らの主張欄のキ記載のとおりである。
ク以上のとおり,被告製品1は,本件特許発明1と均等であり,本件特許発明1の技術的範囲に属するものである。
(被告の主張)ア構成要件を文言上充足すると主張する部分についての反論(ア)構成要件1-A構成要件1-Aの意義は「媒体液を充填及び補充する第1のタンク」であると解される。一方,被告製品1における予備タンク68は,あくまで,媒体液の循環経路を完成するまでの間の充填を行うものである。そして,循環経路完成後の系内への媒体液の補充作業を行うことができない。
したがって,被告製品1の構成aは「媒体液を充填する予備タンク68」であり,媒体液の補充機能に欠けているのであって,構成要件1-Aを充足しない。
(イ)構成要件1-D構成要件1-Dは「該第2のタンクから前記ポンプの吸入口に至る管路の間に断面積拡大管を設け,その断面積は第2のタンク及び第1のタンクからの各管路の合計断面積よりも大きく設け,また,断面積拡大管は,前記ポンプの吸入口に直結し,しかもその形状は第2のタンク及び第1のタンクからの各管路の円滑な合流を確保する形状であって」と解される。
原告らの主張を総合すれば,被告製品1の構成d-2「ティーズ46,ニップル47,ティーズ49,ニップル50(「ティーズ46ないしニップル50の管路」)」が,構成要件1-Dの「断面積拡大管」に該当すると主張しているものと解される。
この「ティーズ46ないしニップル50の管路」においては,循環ポンプ3の吸入口6は口径25ミリメートルであるから,この部分の内径は,35ミリメートルないし25ミリメートルである。一方,被告製品1で本件特許発明1の「第2のタンクからの管路」に相当するのは,「ニップル40,エルボ41,ホースニップル42,ゴムホース43,ホースニップル44」であるところ,ここでの内径は,35ミリメートルないし21ミリメートルである。さらに,「第1のタンクからの管路」に相当するのは,「ティーズ46に接続されているニップル54(内径27.6ミリメートル),エルボ56(内径35ミリメートル),ニップル57(内径21.4ミリメートル)を介して,媒体液充填部58が接続し,充填口73からゴムホース71を介して,水中ポンプ69の吐出口に接続」であり,ここでの内径は35ミリメートルないし21.4ミリメートルである。
したがって,被告製品1では,「第2のタンクからの管路」及び「第1のタンクからの管路」の合計平均断面積より,「ティーズ46ないしニップル50の管路」の平均断面積の方が小さい。
さらに,第2のタンクからの管路,第1のタンクからの管路及び中央のティーズ46から循環ポンプ3の吸入口6までの管路は,いずれも最大内径35ミリメートルであることから,大局的にほぼ同一の流速と考えてよく,被告製品1においては,断面積拡大管で媒体液の流速が遅くなるという効果は生じない。
また,ティーズ46,ニップル47,ティーズ49,ニップル50及び循環ポンプ3の吸入口6には段差があり,円滑な合流を確保する形状ではない。
したがって,被告製品1は,構成要件1-Dを充足しない。
(ウ)構成要件1-E構成要件1-Eは「該断面積拡大管には,逆止弁を介して,前記媒体液の充填及び補充をする第1のタンクからの管路を接続してなる」と解される。一方,被告製品1の構成eは,「前記ティーズ46の直線部45の他端部53には,ニップル54(内径27.6ミリメートル)の端部55が挿入連結されるとともに,該ニップル54に,エルボ56(内径35ミリメートル),ニップル57(内径21.4ミリメートル)を介して,媒体液充填部58が接続し,充填口73からゴムホース71を介して,水中ポンプ69の吐出口70に接続し,水中ポンプ69は媒体液が貯留された媒体液充填のための予備タンク68を設けてある」というものである。
被告製品1には,本件特許発明1における「断面積拡大管」がなく,また,「媒体液の充填及び補充をする第1のタンク」が存在しない。
したがって,被告製品1は,構成要件1-Eを充足しない。
(エ)以上のとおり,被告製品1は,構成要件1-A,D,Eを充足しておらず,均等の主張はその前提を欠き,理由がない。
均等の成立を主張する部分についての反論(ア)本質的部分について従来の屋根上に設置したシスターンに代えて第1のタンクを地上近くに設置した場合,第2のタンクへ屋根上から還流した媒体液が第1のタンクに逆流することを防止することが必須であり,したがって,第1のタンクに逆止弁を用いることは,本件特許発明1の本質的部分である。なお,原告は,断面積拡大管により,第2のタンクと第1のタンクの円滑な合流を行うことができるから,逆止弁は安全対策上の機能しかなく,構成要素の本質的な部分ではないと主張する。しかし,媒体液の循環運転停止中は,屋根上配管が上部に配設されているから媒体液の逆流現象は避けられず,逆止弁は必須要件である。
(イ)置換可能性について水中ポンプ69は,媒体液を屋根上等に充填する役割があり,いったん流出した媒体液の逆流を阻止する役割のために設置されているのではない。つまり,媒体液を予備タンク68から装置内に移送充填するのが役割であり,決して消極的に逆流阻止のために設置されているものではない。
(ウ)置換容易性(置換についての容易想到性)について第1のタンクにポンプを付けて,絶えず断面積拡大管に供給すると,全体の媒体液の量が増加し,必然的にオーバーフローに対処する構成が必要になる。したがって,被告製品1でも,逆止弁と水中ポンプは置換が困難である。
(エ)公知技術からの想到非容易性について仮に原告らの主張するとおり,本件特許発明1の逆止弁が非本質的部分であれば,本件特許発明1は,実開昭56-1027号(乙4の1)に限りなく近い技術となる。
ウ被告製品1の生産行為について予備タンク68,水中ポンプ69,ゴムホース71,ゴムホース75は,被告製品2に接続して媒体液の充填を行い,その作業が終了すれば取り外すものであり,この部品は,汎用的に各所の被告製品2の設置現場で使用するものである。
したがって,被告の設置現場での行為が本件特許発明1の実施であるかはさておき,原告らが主張するような製品の生産行為ではない。
(原告らの再反論)ア構成要件1-Aの解釈(ア)構成要件1-Aの「媒体液を入れる第1のタンク」既に述べたとおり,構成要件1-Aの「媒体液を入れる第1のタンク」とは,その字句どおりに解釈すべきである。
(イ)予備タンク68について被告製品1は,予備タンク68内の媒体液により,水中ポンプ69を使用して,循環ポンプ3を運転させて,本件特許発明1における「初充填」と「補充」とに相当する動作を実現している。したがって,被告製品1の予備タンク68は,本件特許発明1の「第1のタンク」そのものである。
構成要件1-Dの解釈前記(1)の原告らの再反論欄のイで述べたとおり,「断面積拡大管」に関する被告主張の解釈は誤っている。
構成要件1-Eの解釈前記ア,イのとおり,「第1のタンク」及び「断面積拡大管」に関する被告主張の解釈は誤っている。
エ被告製品1の充足性(ア)構成要件1-A予備タンク68には媒体液を充填する機能は備わっておらず,単に媒体液を入れておくものにすぎない。
したがって,被告製品1は,構成要件1-A「媒体液を入れる第1のタンク」を充足する。
被告は,予備タンク68に入れる媒体液は装置への充填にのみ使用され,補充には使用されないと主張する。しかし,被告自身,排出された空気と媒体液とが置換され,予備タンク68内の媒体液が装置に補充されることを認めている。
(イ)構成要件1-D「管路10a」の断面積として最も重要なのは,断面積拡大管に直接接続される部分の内径である。なぜなら,この部分の内径によって,断面積拡大管に流入する媒体液の流速が決まるからである。被告のいうような内径の変化範囲や平均断面積,最大内径などには,技術的な意味は全くない。
これを被告製品1についてみると,断面積拡大管に相当するティーズ46に直接接続されるホースニップル44の内径が21ミリメートルないし23ミリメートルであるところ,ティーズ46からニップル50の内径は,35ミリメートル,27.6ミリメートルと,一貫してより大きなものとなっている。
被告は,段差の存在を指摘して,円滑な合流を確保する形状ではないと主張するが,上記のとおり,断面積拡大管に相当するティーズ側の内径が一貫して大きい上,媒体液の充填補充動作に何ら支障は生じていない。
(ウ)構成要件1-E前記(ア),(イ)のとおりである。
均等侵害について(ア)本質的部分について本件特許発明1において,逆止弁は必須の要件ではない。屋根上配管内の媒体液は,循環ポンプ側の上り管と第2タンク側の下り管とで圧力が均衡するため,屋根上配管に漏れがない限り,循環運転停止中であっても媒体液が逆流することはない。本件特許発明1における逆止弁は,屋根上配管に漏れが発生したときのための安全対策として,第1のタンクからいったん流出した媒体液が第1のタンクに逆流することを阻止するという補助的・付加的な役割を果たしているにすぎない。
(イ)置換可能性について被告製品1において,屋根上に媒体液を充填する役割を果たしているのは循環ポンプ3であり,あたかも水中ポンプ69によって媒体液の充填を行うかのような説明は誤りである。水中ポンプ69は,媒体液を予備タンク68から装置へ向けて,一方向のみに送出することで媒体液が逆流することを阻止する役目を果たしているのである。また,仮に水中ポンプ69にこれ以外の作用効果があるとしても,それは媒体液の逆流防止という逆止弁と同等の作用効果を奏している上でのことであり,置換可能性を否定する根拠にはならない。
(ウ)置換容易性(置換についての容易想到性)について被告の主張は,均等論における置換容易性の要件とは無関係である。
(エ)公知技術からの相当非容易性について本件特許発明1は,実開昭56-1027号とは,全く関係ない。
(4)被告製品2は本件特許発明1の間接侵害品に当たるか(争点4)(原告らの主張)ア被告製品2は,本件特許発明1に係る屋根上配管の媒体液充填装置の生産以外には他に用途がないから,本件特許発明1に係る屋根上配管の媒体液充填装置の「生産にのみ用いる物」に該当する。
なお,被告は,実際には,次のようにして,被告製品2を本件特許発明1に係る屋根上配管の媒体液充填装置の生産に用いている。すなわち,前記(3)のとおり,被告製品1は本件特許発明1の技術的範囲に属するものであるが(均等),被告は,顧客に対して自動屋根融雪システム「冬将軍」を販売するにあたって,被告製品1を全体として販売するのではなく,取引の対象として販売するのはその一部である被告製品2のみである。そして,被告は,被告製品2を販売し,顧客宅に設置した後,自己の保有する予備タンク68と水中ポンプ69を被告製品2に接続して全体として被告製品1を構成させ,媒体液充填装置として作動させている。かかる状態は,被告製品2を部品の1つとして被告製品1を完成させる,すなわち「生産」するものであって,被告は,上記のようにして,被告製品2を本件特許発明1に係る屋根上配管の媒体液充填装置の生産に用いている。
よって,原告らは,被告製品2は,物(本件特許発明1に係る屋根上配管の媒体液充填装置)の「生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)に該当し,被告の行為は,本件特許発明1の間接侵害に該当する。
イ仮に被告製品2に,本件特許発明1に係る屋根上配管の媒体液充填装置の生産以外の用途が想定されるとしても,被告製品2は,「生産に用いる物であってその発明による課題の解決に不可欠なもの」(特許法101条2号)に該当する。
そして,被告は,かつて原告会社との間で販売代理店契約を締結していた訴外会社の販社であったことからしても,本件特許発明1が特許発明であること及び被告製品2が本件特許発明1に係る屋根上配管の媒体液充填装置の実施に用いられることを当然に知っていたものである。
よって,被告製品2は,「生産に用いる物であってその発明による課題の解決に不可欠なもの」(特許法101条2号)に該当するので,特許法101条2号が施行された平成15年1月1日以降の製造販売について,予備的に特許法101条2号による間接侵害の成立を主張する。
ウしたがって,被告の行為は,本件特許発明1の間接侵害に該当する。
(被告の主張)ア被告製品2における「循環経路を完成するまでの媒体液の充填工程」被告は,被告製品2を販売し,顧客のもとで予備タンクと水中ポンプとを被告製品2に接続し,媒体液の充填作業を行うが,これは,装置の一部を使用して,充填作業をするのであって,具体的な作業は下記のとおりである。すなわち,@媒体液が貯留された予備タンク68内に水中ポンプ69を設置するとともに,該水中ポンプ69の吐出口70に連結されたゴムホース71の先端72を,プラグ60を取り外して形成された注入口73に接続し,その後,ボールバルブ59を開放する。このとき,膨張タンク1下のボールバルブ62は閉じておく。
したがって,媒体液を膨脹タンク1から,充填することはない。
Aまた,温水ボイラー5の上部に設けられた逃し弁74に,ゴムホース75を連結し,その端部76を前記予備タンク68内に入れる。その後,逃し弁74を開放状態にして,前記水中ポンプ69を運転し,予備タンク68内の媒体液を前記注入口73に送給する。
Bこれにより媒体液は,注入口73から循環ポンプ3に至り,かつ,また,温水ボイラー5に至る流路に分かれ,温水ボイラー5にも媒体液が満たされる。
Cこのように流路及び温水ボイラーが媒体液で満たされ,一部は逃し弁74を経て予備タンク68に媒体液が戻ってくる。
Dこの後,水中ポンプ69の運転と並行して,循環ポンプ3の運転を開始すると,予備タンク68内の媒体液が,管路75を経て屋根上放熱部2に送り込まれ,その後,温水ボイラー5内に循環してくる。
Eこのような動作により,この循環路で媒体液の循環を繰り返すと,前記予備タンク68内で気泡が除去されるとともに,自動吸排気弁38から空気が排出され,加えて,前記屋根上放熱部2の最上端に設けられているエア抜き専用弁81からも空気が排出される。これらによって,循環する媒体液中の空気の排出が進み,予備タンク68内に戻る媒体液が徐々に透明度を増してくる。予備タンクに戻る媒体液が透明に近くなった状態をもって,循環路における気泡が一応除去されたことを確認できる。
Fその後,前記逃し弁74を閉じるとともに前記ボールバルブ59を閉じ,水中ポンプ69を停止する。その後,循環ポンプ3を停止し,水中ポンプ69を取り外すとともに,ゴムホース71,75を取り外す。
以上から明白なように,予備タンク68,水中ポンプ69,ゴムホース71,ゴムホース75は,被告製品2に接続して媒体液の充填を行い,その作業が終了すれば外すものである。このような作業は,被告製品2の生産行為ではない。
イ被告製品2の充足性(ア)構成要件1-A,E被告製品2が,構成要件1-A,Eに相当する部分を有しないことは明らかである。
(イ)構成要件1-D被告製品1と同様,被告製品2は構成要件1-Dを充足しない。
(ウ)以上のとおり,被告製品2は,構成要件1-A,D,Eを充足せず,したがって本件特許発明1の技術的範囲に属しない。
(5)被告製品4は本件特許発明2の構成要件を文言上充足するか(争点5)(原告らの主張)ア被告製品4における屋根上放熱部の放熱ホースは,本件特許発明2の屋根上における管材に相当する。それゆえ,被告製品4の構成aないしfは構成要件2-AないしFにそのまま該当するものである。
イよって,被告製品4は,構成要件2-AないしFのすべてを充足し,本件特許発明2の技術的範囲に属する。
(被告の主張)ア被告製品4が構成要件2-A,B,D,Fを充足することは認め,その余は否認する。
構成要件2-C本件明細書2の記載,補正の経過及び意見書の記載に照らせば,出願人は,構成要件2-C「屋根上において上下に隣接する桟瓦の重なり部分に対応する帯状部を前記掛止部,円弧部の間に形成してなり」について,帯状部の長さが,上下に隣接する2枚の桟瓦の重なり部分と「ほぼ同一以上の任意の寸法」とする点を,意識的に除外したものである。
したがって,構成要件2-Cは,「屋根上において上下に隣接する桟瓦の重なり部分の長さにほぼ等しく,その重なり部分に対応する帯状部を前記掛止部,円弧部の間に形成してなり」という意義に解すべきである。
ウ被告製品4の本件特許発明2の充足性(ア)構成要件2-C構成要件2-Cの意義は「屋根上において上下に隣接する桟瓦の重なり部分の長さにほぼ等しく,その重なり部分に対応する帯状部を前記掛止部,円弧部の間に形成してなり」であると解されるのに対し,被告製品4の構成cは「帯状をなす部分が,屋根上において上下に隣接する桟瓦の重なり部分に対応する長さより長い」ものである。
したがって,被告製品4は,構成要件2-Cを充足しない。
(イ)以上のとおり,被告製品4は,構成要件2-Cを充足せず,したがって本件特許発明2の技術的範囲に属しない。
(原告らの再反論)ア構成要件2-C「屋根上において上下に隣接する桟瓦の重なり部分に対応する帯状部」とは,本件明細書2を平成9年6月11日付手続補正書によって補正した明細書(以下「本件補正明細書」という。)の2頁右欄9行目ないし13行目の記載に照らせば,帯状部14eの長さLが,上下に隣接する桟瓦Rk,Rkの上下方向の重なり部分にほぼ等しいことを意味しているのであって,帯状部の長さは,上下の桟瓦の重なり部分の長さと厳密に等しいものに加えて,それより長いものも含まれる(なお,帯状部の長さを重なり部分の長さより短くすると,保持溝に保持する管材を下の桟瓦の上面に露出することができなくなるから,そのような形態はありえない。)。
イまた,屋根上において上下に隣接する桟瓦の重なり部分の長さは,桟瓦自体の寸法のばらつきや,桟瓦の尻切込み(上部左側の切込み),小口切込み(下部右側の切込み)の上下方向の深さによっても変動する。現行日本工業規格(JISA5208)も,桟瓦の各部の寸法許容差として,±4ミリメートル(最大8ミリメートルの変動幅)を認め,尻切込み,小口切込みの切込み深さによって定まる「働き長さ」が規格値より20ミリメートル小さい,すなわち,重なり部分の長さが大きい「深切がわら」の存在を認めている。また,桟瓦の寸法は,産地によってもバラつきがあり,製造された時代によってもバラつきがある。このように,屋根上において,上下に隣接する桟瓦の重なり部分の長さは,ある程度の変動幅があることは極めて当然であって,当業者にとって自明の技術常識である。
したがって,構成要件2-C「屋根上において上下に隣接する桟瓦の重なり部分に対応する帯状部」は,桟瓦の重なり部分の長さにある程度の変動幅があっても支障なく工事を進めうるように,重なり部分より余裕,いわゆる「遊び」を見込んだ長さにしておかなければならない。
ウ以上のとおりであるから,構成要件2-Cの「帯状部」は,その長さが,上下の桟瓦の重なり部分の長さと厳密に等しいものに加えて,それより長いものも含むと解釈されるべきである。
そして,被告製品4の帯状部は,上下の桟瓦の重なり部分の長さよりも10ミリメートル前後長いものであるが,これは,桟瓦の重なり部分の変動幅を吸収するための余裕ないし「遊び」として「ほぼ等しい」にちょうど該当する長さである。
出願経過における実施例の記載の削除は,非積雪地帯向けの,帯状部が上下に隣接する桟瓦の重なり部分の長さよりも極端に長いものを除外するために行われたものであり,また,本件特許発明2の特許請求の範囲の補正も,この実施例削除に伴い,これと整合させて文章表現を変更したものにすぎない。このように,出願経過において,桟瓦の重なり部分の長さの変動幅を吸収するための余裕寸法(遊び)まで除外したものではない。本件明細書2においても,「帯状部」の長さは,重なり部分の長さと厳密に一致するものに加えて,それより長いものが含まれるように表現されている。また,本件特許発明2と実開昭60-159967号(乙5の2)とは全く相違しているのであって,その相違点を意見書において説明していることから,出願人が屋根上において上下に隣接する桟瓦の重なり部分の長さにほぼ等しいものに意識的に限定したものと解釈することはできない。
(6)本件特許発明1に進歩性欠如による無効理由があることが明らかか(争点6)(被告の主張)本件特許権1には,以下に述べるとおり,明白な無効理由が存在し,原告らによる特許権行使は権利の濫用に当たるものとして許されない。
ア実開昭56-1027号公報(乙4の1。以下「引用例1-1」という。)について(ア)引用例1-1には,以下の考案が開示されている。
構成a水を入れるシスターンタンクと,b温水を回路管及び放熱機へ送出する循環ポンプと,c放熱した水は放熱機から温水機又は熱交換機(3)に戻り,d温水機又は熱交換機(3)から循環ポンプ(5)口に至る間に温水機又は熱交換機(3)からの温水吐出口と接続する入口(6)より内径を大きくした空気分離室(7)を設けた空気分離付集合継手本体(1)を接続し,e空気分離室(7)には,前記シスターンタンクからの管路を接続したf回路管及び放熱機への水補充装置(以下,引用例1-1における各構成を「引用例1-1構成a」のようにいう。)。
(イ)構成要件1-Aの「媒体」とは,自由空間や種々の流体や固体などを指す。ここでは,熱を媒介するものが媒体であり,水もまた媒体である。そして,構成要件1-Aの「第1のタンク」は,このような媒体液を貯留するものであれば足りるのであり,引用例1-1構成aも同様の機能がある。よって,引用例1-1構成aは,構成要件1-Aに相当する。
構成要件1-Bの「媒体液」には水も含まれ,引用例1-1構成bの「回路管及び放熱機」は,その設置場所に何らの限定もないことから,屋根上にも適用可能である。したがって,引用例1-1構成bの「回路管及び放熱機」は,構成要件1-Bの「屋根上配管」に相当する。そして,構成要件1-Bの「ポンプ」が引用例1-1構成bの「循環ポンプ」を含むことは明白であって,同「循環ポンプ」は「回路管及び放熱機」に媒体液である「水」を送り出している。よって,引用例1-1構成bは,構成要件1-Bに相当する。
構成要件1-Cのうち,本件特許発明1の第2のタンクの実施例の記載によれば,引用例1-1構成cの「温水機又は熱交換機」がこれに相当する。よって,構成要件1-Cのうち,「屋根上配管から戻った媒体液を貯留する第2のタンク」は,引用例1-1構成cに相当するが,構成要件1-Cのうち,「媒体液の気水分離をする第2のタンク」の構成は,引用例1-1には存在しないので,この点で相違する。
構成要件1-Dは,「該第2のタンクから前記ポンプの吸入口に至る管路に断面積拡大管を介装し」であるが,引用例1-1構成cの「温水機又は熱交換機」は構成要件1-Dの「第2のタンク」に相当し,引用例1-1構成dの「循環ポンプ」は構成要件1-Dの「ポンプ」に相当する。そして,本件特許発明1の断面積拡大管の実施例の記載(本件公報1の第4欄32行目ないし37行目)によれば,本件特許発明1の断面積拡大管は,第2タンクからの配管の断面積が小から大に拡大していればよいところ,引用例1-1構成dのうち,「温水機又は熱交換機(3)からの温水吐出口と接続する入口(6)より内径を大きくした空気分離室(7)を設けた空気分離付集合継手本体(1)」の部分は,入口(6)の部分の内径よりも空気分離室(7)の内径を大きくしてあるので,空気分離室(7)は,本件特許発明1の断面積拡大管に相当する。よって,引用例1-1構成dは,構成要件1-Dに相当する。
構成要件1-Eのうち,少なくとも第1のタンクから断面積拡大管への接続のうち,「逆止弁を介する」点は,引用例1-1になく,本件特許発明1と相違する。一方,第1のタンクから断面積拡大管への接続については,引用例1-1の明細書(乙4の1。4頁20行目ないし5頁4行目,5頁11行目ないし6頁8行目)には,温水中に混入する空気は空気分離室(7)の上方に可及的すみやかに浮上し,膨張管(10)を通じてシスターンタンク(11)内の水面の上部に排出除去される一方,補給水室(8)に連通している補給水管(12)から上記圧力差がバランスするまで自重給水されると記載されている。すなわち,膨張管(10)から排出した空気の量と同量が,補給水管(12)から給水されると記載されているが,これは物理学的な法則に反している。なぜなら,補給水管(12)の水位と膨張管(10)の水位が同じであることは,引用例1-1の公報の第5図を見ても明らかである。したがって,空気分離室(7)の膨張管(10)の配設位置から補給水室(8)の領域中の温水が負圧となれば,補給水管(12)の水位が下降することは明白であるが,同時に,膨張管(10)の水位も,同位の位置に下降する。したがって,膨張管(10)の水位の下降は,空気分離室(7)へのシスターンタンク(11)からの給水を意味することになる。よって,引用例1-1のうち,シスターンタンクから空気分離室(7)への接続には,構成要件1-Eの「第1のタンクから断面積拡大管への接続」に相当する部分が存在する。したがって,引用例1-1と本件特許発明1とは,引用例1-1には「逆止弁を介する」構成が存しない点で,相違することになる。
構成要件1-Fの「屋根上配管の媒体液充填装置」のうち,屋根上配管の点に関しては,引用例1-1構成fの「回路管及び放熱機」はその設置場所に何らの限定もないことから,屋根上にも適用可能であり,構成要件1-Fの「屋根上配管」に相当する。また,媒体液には水も含まれ,引用例1-1構成aの「シスターンタンク」は水を補充充填する装置である。よって,引用例1-1構成fは,構成要件1-Fに相当する。
したがって,本件特許発明1と引用例1-1とは,構成要件1-Cの「媒体液の気水分離をする第2のタンク」の構成(相違点1)と,構成要件1-Eの「逆止弁を介する」構成(相違点2)の点で,相違する。
イ特開昭50-2346号公報(乙4の2。以下「引用例1-2」という。)について(ア)引用例1-2の明細書の記載(乙4の2。1頁右下欄4行目ないし2頁左上欄1行目,2頁左上欄8行目ないし18行目)によれば,引用例1-2においては,温水ボイラー1,放熱器2,膨張タンク3,圧力検出部4,双安定流体素子7より,負圧のときにエジエクター12から循環ポンプ16へ循環し,そして,シスタン18内の水は前記負圧作用によって逆止弁19を介してエジエクター12内に流入するものである。
このように,温水ボイラー1は本件特許発明1の「第2のタンク」,放熱器2は本件特許発明1の「屋根上配管」,エジエクター12は本件特許発明1の「断面積拡大管」,シスタン18は本件特許発明1の「第1のタンク」,循環ポンプ16は本件特許発明1の「ポンプ」に相当する。したがって,循環の経路に多少の違いはあるが,シスタン18から温水が供給される場合は,シスタン18→逆止弁19→エジエクター12→循環ポンプ16であり,本件特許発明1の「第1のタンク→逆止弁→断面積拡大管→ポンプ」と,全く経路が同じである。
したがって,引用例1-2は,構成要件1-Eの「該断面積拡大管には,逆止弁を介して,前記第1のタンクからの管路を接続してなる」に該当する「エジエクター12には,逆止弁を介して,シスタン18からの管路を接続してなる」の構成を有することになる。よって,前記アの相違点2は,当業者であれば,引用例1-1に引用例1-2を組み合わせることによって容易に想到できるものである。
(イ)実開昭60-49386号公報(乙4の3。以下「引用例1-3」という。)には,大径の主配管(1)に対して小径の分岐合流管(2)を交叉させて接続した配管構造において,両管(1)(2)の流量が低いときは,各管(1)(2)からの流れが層状となるという技術が開示されている。
引用例1-3の配管構造は,本件特許発明1や引用例1-1及び引用例1-2の技術範疇である「中央暖房方式」に関連する技術であり,「中央暖房方式」のいわゆる当業者は,配管構造においても当業者といえる。したがって,引用例1-2に接した当業者は,引用例1-2のエジェクターのケーシングを単に断面積拡大管とみなして構成要件1-Dの「断面積拡大管」に容易に想到することができる。
ウ実開昭56-152214号公報(乙4の7。以下「引用例1-7」という。)引用例1-7は,従来のシスターンタンク方式では,エア抜きには良いが,コスト高になり,低位置のシスターンタンク方式ではエア抜きが十分ではなかった点の改良に関する考案である。引用例1-7では,主として,ボイラータンク5から温水循環ポンプ8を通り,暖房装置であるファン付コンベクター11を通過し,温水戻り管12から温水戻り分枝管13を通り,温水戻り閉止弁14,温水入管15からボイラータンク5に戻ってくる際に,管内に圧力をかけて,エアー抜き弁16からエアを抜くことが主眼とされているが,エアー抜きパイプ18は上記補給水タンク3と上記ボイラータンク5とに接続されてなるものであり,補給水タンク3からボイラータンク5に補給水管で補給されるが,ボイラータンク5のエア抜きはエアー抜きパイプ18で行っている。
したがって,引用例1-7は,構成要件1-Cとの関係において,「ファン付コンベクター11から戻った温水の気水分離をするボイラータンク5」を備えていて,構成要件1-Cと共通である。
構成要件1-Cのうち,「媒体液の気水分離をする第2のタンク」の構成を引用例1-1は有せず,本件特許発明1と相違する(前記アの相違点1)。そして,引用例1-7は,構成要件1-Cとの関係において,「ファン付コンベクター11から戻った温水の気水分離をするボイラータンク5」を備えていて,構成要件1-Cと共通であるところ,温水を気水分離するボイラータンク5が開示されていて,これは,前記相違点1に相当する構成である。したがって,相違点1は,当業者であれば,引用例1-1に引用例1-7を組み合わせることによって容易に想到できる。
エしたがって,本件特許発明1は,引用例1-1,引用例1-2及び引用例1-7を組み合わせることにより,当業者であれば,容易に想到できるものであるから,特許法29条2項の規定により,進歩性がなく,無効である。
(原告らの主張)ア引用例1-1に開示されている技術について(ア)引用例1-1には屋根上配管に相当する部材は何ら開示されておらず,構成要件1-Bの「屋根上配管へ送出する」部分は開示されていない。
そもそも,引用例1-1の回路管13及び放熱機14は,開放形のシスターンタンク11が低所にある熱交換器3の出口側の空気分離集合継手本体1に接続されていることからして,放熱機14を高所に設置することを全く予定していないものであって,屋根上に配置されることを前提としているものではなく,構成要件1-Bの「屋根上配管」に相当するとはいえない。また,シスターンタンク11は,最も高い位置にある放熱機14よりさらに高い位置に設置しなければならないことは当業者の常識である。設置場所に何らの限定もないという前提でシスターンタンク11を放熱機14より低い位置に設置するとなると,放熱機14に媒体液を充填する際に,放熱機14からの媒体液がシスターンタンク11から溢れてしまう危険があり,設置場所は限定されるはずである。
したがって,引用例1-1構成bによって構成要件1-Bは開示されていない。なお,シスターンタンク11を屋根上に高く設置することは,本件特許発明1の目的に反し,本件特許発明1が積極的に排除していることに他ならない。
(イ)引用例1-1には,「放熱した水は放熱機から温水機又は熱交換機(3)に戻り」という構成が開示されているが,構成要件1-Cは「屋根上配管から戻った媒体液の気水分離をする第2のタンクとを備え」という構成であって,「屋根上配管」がない。
したがって,引用例1-1構成cによって構成要件1-Cは開示されていない。
(ウ)引用例1-1の空気分離集合継手本体1の空気分離室7上に立設する膨張管10の上端は,シスターンタンク11内の補給水の水位イより上方位置に開口している。よって,膨張管10には,シスターンタンク11内の補給水が供給される余地がない。すなわち,膨張管10は,上端から水が溢れることを考慮してシスターンタンク11の上部に接続してあるにすぎず,空気分離室7からエアを抜くという本来の機能からすれば,上端をシスターンタンク11から切り離し,水位イより高く延ばして大気に開放しておけば十分であり,膨張管10には,シスターンタンク11からの水を空気分離室7に給水するという機能はない。
さらに付け加えると,引用例1-1の第5図において,シスターンタンク11の断面積は,膨張管10の断面積より格段に大きい。そこで,仮に被告が主張するように,シスターンタンク11の水が補給水室8に給水され,シスターンタンク11の水位が下降すると同時に膨張管10の水位も同じだけ下降するとしても,このとき,膨張管10から空気分離室7に流入する水の量は,補給水管12を介してシスターンタンク11から補給水室8に流入する水の量に比して,極めて少量に留まることが明らかである。被告は,シスターンタンク11内の水位イをあえて補給水管12の水位と言い換えて,シスターンタンク11の断面積が大きいことを隠ぺいしている。
また,膨張管10は,シスターンタンク11の水位イより上方に接続されているので,膨張管10から空気分離室7に流入する水があったとしても,その水は,シスターンタンク11からの水ではなく,もともと膨張管10内にあった水でしかない。シスターンタンク11からの水が膨張管10を介して空気分離室7に流入することは,絶対にあり得ない。
したがって,引用例1-1から,「空気分離室7には,シスターンタンク11からの管路を接続した」という構成を導くことはできず,引用例1-1には,構成要件1-Eの「断面積拡大管には,第1のタンクからの管路を接続し」の構成が開示されていない。そもそも,引用例1-1の空気分離付集合継手本体1は,大径の空気分離室7の上流側に空気分離片9を内装し,キャビテーションによる攪拌作用を起こし,空気分離室7で速やかな気水分離を生じさせるものである。
また,空気分離付集合継手本体1は,その下流側の小径の補給水室8においてシスターンタンク11からの補給水を合流させるものであって,大径の空気分離室7で補給水を合流させるものではない。
よって,空気分離付集合継手本体1は,気水分離させるものであり,大径の場所で補給水を合流させるものでない点で,本件特許発明1の「断面積拡大管」と本質的に異なり,本件特許発明1の「断面積拡大管」には当たらないのである。
以上により,引用例1-1には,本件特許発明1の「断面積拡大管」の技術的思想が開示されているとはいいがたい。
(エ)引用例1-1構成f「回路管及び放熱機への水補充装置」には屋根上配管の構成がなく,構成要件1-Fの「屋根上配管の媒体液充填装置」が開示されていない。
イ引用例1-7及び引用例1-2を引用例1-1に適用することの阻害要因について(ア)引用例1-7引用例1-7の「温水を気水分離するボイラータンク5」は,引用例1-1とは相容れないものであって適用阻害要因がある。すなわち,引用例1-7のボイラータンク5には,補給水口2を有する補給水タンク3が付設され,エアー抜きパイプ18が付設されている。そして引用例1-7は,ボイラータンク5の補給水口2から補給水を給水するものである。他方,引用例1-1の明細書には,温水器の補給水を温水器の給水口の入口から給水することは,ポンプ圧力により十分な給水ができず,ポンプの選定が非常に狭い範囲でしか行うことができないという致命的な欠点があると記載されている。そうだとすると,引用例1-7の補給水口2から補給水を給水するという技術を引用例1-1において採用ないし適用することは考えられず,両技術は相容れず排除し合う関係にある。したがって,当業者が両方の技術を組み合わせるということは考えられない。
(イ)引用例1-2引用例1-2の「エジェクター12」は,構成要件1-Eの「断面積拡大管」には該当しないのであって,引用例1-2には,「断面積拡大管には,逆止弁を介して,前記第1のタンクからの管路を接続してなる」との構成は開示されていない。
さらに,引用例1-2において,シスタン18は,逆止弁19を介してエジェクター12のケーシング15に接続されている。他方,エジェクター12のケーシング15が引用例1-1の空気分離集合継手本体1の空気分離室7に相当するとして,引用例1-1のシスターンタンク11,膨張管10に代えて,引用例1-2の逆止弁19付きのシスタン18を引用例1-1の空気分離室7に接続すれば,空気分離室7からエアを分離して排出するという引用例1-1の本来の目的が達成できなくなり,引用例1-1の発明が機能しなくなってしまうことになるからである。
引用例1-3には,主配管1に対して小径の分岐合流管2を接続することが開示され,タイノルズ数(レイノルズ数の誤り)が小さいと,各管1,2からの流れが層状になることが示されている。しかし,これは単に大径の主配管1に小径の分岐合流管2を接続することを示すだけであって,引用例1-2のエジェクター12のケーシング15を「断面積拡大管」とみなすことの技術的論拠になり得ない。
(被告の再反論)ア本件明細書1の記載によれば,本件特許発明1は,屋根上配管を配した点と「屋根上配管へ送出するポンプ」「媒体液の気水分離をする第2のタンク」につき,その供給のシステムについては,引用例1-1に比較して特に特徴のある構成はない。特に気水分離の点については,その分離する場所が異なるだけである。
また,本件特許発明1の第1のタンクの管路に使用している逆止弁は,通常の機械要素であり,本件特許発明1のポンプについても,特別のものを使用しているという記載もない。
以上から明白なとおり,本件特許発明1では,屋根上配管に媒体液を供給しているが,屋根上配管に媒体液を供給する点について,媒体液の第1のタンクへの逆流を防止する意味での逆止弁を除き,引用例1-1と比較して構成要件上の特徴はない。
イ(ア)気水分離は,本件特許発明1では,第2のタンクにより行われている。一方,引用例1-1では,本件特許発明1の断面積拡大管に相当する空気分離室により行われている。
しかし,引用例1-1においても,本件特許発明1の断面積拡大管に相当する空気分離室7において,一部ではあるが補給水の供給が行われており,本件特許発明1との相違はない。また,引用例1-1の継手本体1全体を断面積拡大管と解釈することも可能であるから,この場合,補給水管12が補給水する補給水室8も継手本体1に含まれるのであり,このような解釈によれば,引用例1-1と本件特許発明1との相違点は全くないことになる。
(イ)引用例1-1のシスターンタンク11からの空気分離室7への膨脹管10には,本件特許発明1のような逆止弁がない。
しかし,引用例1-1において,熱交換機3が低所にあるとの記載は全く存在しないし,これを示唆する記載もない。シスターンタンク11が熱交換機3の温水吐出口4に近接して配設された空気分離収納継手本体1に接続されていることを根拠として,該シスターンタンクが高所に設置されないと断定することは論理の飛躍である。さらに,本件明細書1の記載によれば,シスターンタンクは屋根上に設置されていたことが明白である。以上のとおり,引用例1-1の回路管及び放熱機は,屋根上に適用されていることが明らかであり,本件特許発明1の屋根上配管に相当するのが明白である。そして,本件特許発明1のポンプは,引用例1-1の循環ポンプと何ら差異はなく,循環ポンプ5は回路管及び放熱機に媒体液である水を送り出している。したがって,循環ポンプ5は,構成要件1-Bに相当する。
ウ引用例1-1では,温水機の給水口より給水するのは普通であると記載されている。また,給水についてポンプ圧の大小の選定が難しいと記載されているが,不可能であるとは記載されていない。被告が引用例1-1に引用例1-7を適用する部分は,空気と液体を分離する気水分離の点であり,引用例1-1が気水分離をする点については何らの制約的な記載はない。その上,むしろ気水分離については,従来は「以上のように配置系内に侵入する空気は大別して,機器の損傷,騒音の発生及び熱交換の不良の三方面に重大な弊害を与える。このため,自動空気抜き弁を配管系の各所に設置して空気を除去することが行われていた」のである。
引用例1-2の逆止弁は,シスタン18内の水は負圧作用より引き出され,正圧作用の場合は流入ができないという逆流を防止する作用しかない。この点を,本件特許発明1の第1のタンクから断面積拡大管への管路に適用するのであり,何ら適用阻害事由はない。
(7)本件特許発明2に進歩性欠如による無効理由があることが明らかか(争点7)以下の本件特許権2の無効理由に関する主張及び判断については,「構成要件2-A」を,「構成要件2-A-1帯状の薄鋼板を折曲げ加工することにより」,「構成要件2-A-2桟瓦の上端面に掛止する掛止部を一端に形成し」と更に分説する。
(被告の主張)本件特許権2には,以下に述べるとおり,明白な無効理由が存在し,原告らによる特許権行使は権利の濫用に当たるものとして許されない。
ア引用例その1(ア)実開昭60-159125号公報(乙5の1。以下「引用例2-1」という。)には,屋根の配置用熱交換器の止め具を用いた屋根の温度調整装置として,本件特許発明2と関連するものとして,以下の考案が開示されている。
構成a-1帯状からなるバネ材のような弾発性の高い金属製品を加工することにより,a-2瓦6の上端部に弾発外嵌される断面コ字状のフック21を一端に形成し,bフック21の一方には,瓦6上に配設された熱交換器7を押圧収容すべく管路状に形成された下方が開口し,しかも突出した凹部22が延設され,c止具の先端部のコの字形状のフックの上部は,上下に隣接する瓦6の重合部分に接合固定されて,d前記凹部22の内側は,円形断面の管路を収容して保持する保持溝としたf屋根上における熱交換器の管路の保持金具(以下,引用例における各構成を「引用例2-1構成a-1」のようにいう。)。
(イ)引用例2-1構成a-1の「帯状からなるバネ材のような弾発性の高い金属製品を加工することにより,」のうち,「帯状からなるバネ材のような弾発性の高い金属製品」は,部分的に構成要件2-A-1の「帯状の薄鋼板」に相当する。相違点は,構成要件2-A-1の「折曲げ加工」であるが,本件特許発明2の当時,バネ材は既に存在し,バネ材について「折曲げ加工」をすることにより,バネとして使用することは周知の事実である。なお「折曲げ加工」はプレス加工の「曲げ加工」と同義である。
引用例2-1構成a-2の「瓦6の上端部に弾発外嵌される断面コ字状のフック21を一端に形成し,」のうち,「瓦6」は構成要件2-A-2の「桟瓦」を含むものであり,「コ字状のフック」は,瓦の上端部に金具を掛止する機能があるから,構成要件2-A-2の「掛止部」に相当する。したがって,引用例2-1構成a-2は,構成要件2-A-2に相当する。
引用例2-1構成bの「凹部22」は,「フック21」と対向して,瓦の上の熱交換器7を収容するように,下方を開放し,突出している。そこで,引用例2-1構成bの「凹部」が構成要件2-Bの「円弧部」に相当するかが問題となるが,引用例2-1構成bの「凹部」は円弧状のもの(引用例2-1の公報の第10図)も凹部として説明されており,円弧状のものも含む概念である。したがって,引用例2-1構成bは,構成要件2-Bに相当する。
引用例2-1構成cについて,構成要件2-Cの「掛止部」はフックの下部のL部分であり,同「円弧部」は凹部22であるから,構成要件2-Cの「帯状部」は,フックの上部から,凹部22の始端部分までの部分で,上下に隣接する瓦6の重なり部分に対応する部分が相当する。したがって,引用例2-1構成cは,構成要件2-Cに相当する。
引用例2-1構成dについて,構成要件2-Dの「円弧部」は,凹部22に相当し,同「円形断面の管材」は,円形断面の管路に相当する。また,同「保持溝」は,円弧部の内側は,円形断面の管材を収納することが,円形断面の管材を保持することであるから,凹部22も円形断面の管路を押圧収容しており,凹部22の内側は構成要件2-Dの「保持溝」に相当する。したがって,引用例2-1構成dは,構成要件2-Dに相当する。
引用例2-1構成fの「保持金具」は,屋根上に管材を保持するためのものであるから,引用例2-1構成fは,構成要件2-Fの「設置用掛止金具」に相当する。したがって,引用例2-1構成fは,構成要件2-Fに相当する。
以上のとおり,本件特許発明2と引用例2-1とは,構成要件2-Eの「前記帯状部には,水切り用の小溝を形成すること」の点でのみ相違し,その余は一致している。
(ウ)なお,実開昭60-159967号公報(乙5の2。以下「引用例2-2」という。)は,引用例2-1と同一の出願人が同一日に出願したものであって,記載されている図面にも共通するものがあり,引用例2-1と同等の内容が開示されている。
イ引用例その2(ア)a実開昭60-113456号公報(乙5の3の1。以下「引用例2-3-1」という。)には,構成要件2-Dに相当する構成が記載されている。
b引用例2-3-1に記載されている「吸熱板2より下方に,下方が開口した円弧状の冠部3が突出して延設され」「下方が開口した円弧状の冠部3の内側に,円形断面のパイプ桟瓦1を押圧保持して」を,構成要件2-Bの「突出する下部開放の円弧部を他端に形成すること」,構成要件2-Dの「前記円弧部の内側は,円形断面の管材を収納して保持する保持溝とし」に適用することは,通常の知識を有する当業者であれば極めて容易である。
cしたがって,引用例2-1と引用例2-3-1を組み合わせると,本件特許発明2との相違点は,構成要件2-Eの「前記帯状部には,水切り用の小溝を形成すること」の点のみである。
(イ)特開昭59-69511号公報(乙5の3の2。以下「引用例2-3-2」という。)の第2図には,構成要件2-A-1,B,Dに相当する構成が記載されている。
(ウ)実開昭58-1882号公報(乙5の3の3。以下「引用例2-3-3」という。)の第2図には,構成要件2-Dに相当する構成が記載されている。
ウ引用例その3(ア)実開昭58-64729号公報(乙5の4の1。以下「引用例2-4-1」という。)には,「屋根瓦の重なり部分において,重なり合う下側の瓦の後尻部突起2の上面に横方向にV溝を形成した」との構成が記載されている。
上記構成の「屋根瓦の重なり部分においてV溝を設ける」のは,上下の屋根の間で,「V溝26は表面張力により遡上しようとする雨水を切る水溜りとして利用する」ものであり,他方,構成要件2-Eの「帯状部の水切り用の小溝」は,「毛細管現象によって桟瓦の間に水が逆流することを阻止し,雨漏りの発生を防止する」ものであり,表面張力(引用例2-4-1)と毛細管現象(本件特許発明2)との差があるが,水が逆流する点では一致している。そして,引用例2-4-1では上の瓦と下の瓦,本件特許発明2の実施例では,水切り用の小溝では,上の瓦と下の瓦の上にある金具の違いがあるが,ともに上下の瓦間の接合する部分という点で一致している。
したがって,帯状部の水切り用の小溝(本件特許発明2)と下の瓦のV溝(引用例2-4-1)との差があるが,ともに小さな溝であることで一致しているので,下の瓦のV溝(引用例2-4-1)の代わりに,帯状部の水切り用の小溝(本件特許発明2)を設けることは,通常の知識を有する当業者であれば容易に転用できることである。
(イ)実公昭36-13138号公報(乙5の4の2。以下「引用例2-4-2」という。)には,「トタン屋根板の重なり部分において,重なり合う上側のトタン板の折曲部2の上方に外側縁6に沿って細長凹溝7を形成して,折り曲げ,該トタン板の上方の重なり合うトタン板の下部に折曲部3を裏側に折曲げて,その折り曲げた部分を前記折曲部2の上方を表側に折り曲げたその間に挿入してトタン板を連結し」との構成が記載されている。
上記構成の「細長凹溝7」は本件特許発明2の実施例と溝の開口している向きが異なるが(本件特許発明2の実施例が上向きに開口しているのに対し,引用例2-4-2は下向きに開口している。),上下のトタン板が重なり合う部分に設けられ,下方からの雨水の浸入を毛細管現象により防止している点で,本件特許発明2と効果が同一である。また,構成要件2-Eは水切り用の小溝の向きを限定していない。そして,引用例2-4-2の「細長凹溝7」を本件特許発明2の帯状部に適用することは,通常の知識を有する当業者であれば,容易に想到できることである。
(ウ)実開昭56-19607号(乙5の4の3。以下「引用例2-4-3」という。)には,「水切り用の小さな凹溝条7を形成すること」,つまり,構成要件2-Eに相当する構成が記載されていて,これを構成要件2-Eの「前記帯状部には,水切り用の小溝を形成すること」の部分に適用することは当業者であれば極めて容易になし得ることである。
進歩性欠如を理由とする無効のまとめ本件特許発明2は,以下の(ア)ないし(ウ)のいずれかの組み合わせにより,通常の知識を有する当業者であれば容易に想到できるものであり,特許法29条2項に該当して進歩性がなく,無効である。
(ア)@引用例2-1(又は引用例2-2),A引用例2-3-1及びB引用例2-4-1,引用例2-4-2又は引用例2-4-3の組み合わせ(イ)@引用例2-1(又は引用例2-2)及びA引用例2-4-1の組み合わせ(ウ)@引用例2-1の第4図と第10図及びA引用例2-4-1の組み合わせ(原告らの主張)引用例2-1(又は引用例2-2)の構成によって,本件特許発明2の構成が開示されているとはいえず,当業者において引用例2-1(又は引用例2-2)の発明に他の引用発明を適用すると引用例2-1の発明が機能しなくなる等の阻害要因がある。したがって,進歩性を欠くとの被告の主張は理由がない。
ア引用例2-1(又は引用例2-2)と構成要件2-Bについて構成要件2-Bは,掛止部が帯状の薄鋼板の一端に形成されて「下部開放の円弧部を他端に形成する」構成となっている。ここにいう「下部開放」とは帯状部の下面に直角の方向に全面開放していることを意味し,他端とは文字通り帯状の薄鋼板の他方の端を指すものである。一方,引用例2-1の止具20は,チャンネル状の凹部22の先端部に押え部を延出しており,引用例2-2の止具1はチャンネル状の凹部1bの先端側に押え部1cを延出している。よって引用例2-1の凹部22,引用例2-2の凹部1bは帯状の薄鋼板の「他端に」形成するものではない。
したがって,引用例2-1及び引用例2-2には,構成要件2-Bの掛止部が「下部開放の円弧部を他端に形成する」構成が開示されていない。
イ引用例2-3-1と構成要件2-Bについて引用例2-3-1においても,円弧状の冠部3は,帯状の薄鋼板の「他端に」形成するものではない。
ウ引用例2-3-2及び引用例2-3-3と構成要件2-Bについて引用例2-3-2及び引用例2-3-3においては,「下部開放」の円弧部になっていない。したがって,構成要件2-Bの「下部開放の円弧部を他端に形成する」点が開示されていない。
エ引用例2-1(又は引用例2-2)と構成要件2-Dについて構成要件2-Dでいう「保持溝」は,内部に収納する円形断面の管材をそれ自体で保持し得るものである。他方,引用例2-1の円弧状の凹部22及び引用例2-2の凹部1bは,熱交換器3を屋根瓦2に押圧するようにして,止め具1により熱交換器3を屋根瓦2に係止するものであり,引用例2-1の凹部22(引用例2-2では凹部1b)は,半円形より極端に小さい円弧部分しか有していない。
したがって,引用例2-1及び引用例2-2には,構成要件2-Dの「前記円弧部の内側は,円形断面の管材を収納して保持する保持溝」が開示されていない。
オ引用例2-3-1と構成要件2-Dについて吸熱板2,2の間の冠部3は,パイプ瓦桟1に合わせて冠着するもので,パイプ瓦桟1を保持するものではなく,パイプ瓦桟1は止め金具6により屋根8に固定されるものである。よって,引用例2-3-1によって構成要件2-Dは開示されていない。
カ引用例2-3-2,引用例2-3-3と構成要件2-Dについて引用例2-3-2,引用例2-3-3においては,円弧状の取付機構はそれ自体で電線または管を保持し得るとしても,電線または管を壁面等に押し付けなければ全体の目的・機能を達成することができないものである。したがって,引用例2-3-2,引用例2-3-3における円弧状の取付機構は,それ自体で保持し得るものではなく,構成要件2-Dの「前記円弧部の内側は,円形断面の管材を収納して保持する保持溝」が開示されていない。
キ引用例2-1及び引用例2-2に対する適用阻害要因引用例2-1及び引用例2-2に,引用例2-3-2,引用例2-3-3を適用することには阻害要因がある。すなわち,引用例2-3-2の円弧状の取付機構4は,円弧の約3/4にわたって閉じており,引用例2-3-3の上端8bの湾曲部は完全に閉じている。よって,引用例2-3-2の取付機構4,引用例2-3-3の湾曲部を,引用例2-1の凹部22,引用例2-2の凹部1bに適用すると,金属パイプを含む可撓性がない長い管材の中途を凹部22や凹部1bに嵌め込んで収納するという引用例2-1及び引用例2-2の目的・機能を達成することが全くできない。すなわち引用例2-3-2,引用例2-3-3を引用例2-1及び引用例2-2に適用すると,引用例2-1及び引用例2-2の各発明の本来の目的に反することとなり,各発明が機能しなくなるものである。
ク引用例2-4-1ないし3と構成要件2-Eについて(ア)構成要件2-Eの帯状部に形成する小溝は,「水切り用」である。
よって,小溝は,桟瓦Rk,Rkの間に挟まれる斜め上向きの帯状部の上端部において,帯状部を横切るように形成され,帯状部の表面側から裏面側に達するように形成されている。これは,帯状部と帯状部の上下の桟瓦Rk,Rkとの間に隙間を形成させ,「水切り用」の機能を達成させるためである。
(イ)他方,引用例2-4-1のV溝26は,下の瓦1aの水切り用突起2の上面に形成され,上の瓦1の横リブ11の前側面が突起2の上面に当接する。
また,V溝26は,表面張力により遡上しようとする雨水を切る「水溜り」として作用する。そこで,V溝26は,そこに水が溜まってしまうと,それ以降の水切りの機能が全く期待できない。また,V溝26は,上下の瓦1,1’の間に隙間を生じさせることもできない。よって,「水切り用の小溝」は開示されていない。
(ウ)引用例2-4-2の細長凹溝7は,下のトタン板1の上端の折曲部2に形成され,折曲部2は,上のトタン板1の下端の斜め上向きの折曲部3内に斜め下向きに収納されている。そこで,折曲部3内に水が溜まり,細長凹溝7が水没すると,細長凹溝7による水切りの作用が完全に失われる。また,細長凹溝7は,下のトタン板1と折曲部3との間を通って斜め上向きに浸入する雨水を止める効果が全くない。凹溝5も,同様である。よって,引用例2-4-2の細長凹溝7によって,「水切り用の小溝」は開示されていない。
(エ)引用例2-4-3の凹溝条7は,帯状の係合突条8の上面に,係合突条8の長手方向に形成するものである。なお,係合突条8の上には,一定の隙間を介して別の金属板3bの端縁12が覆っている。そこで凹溝条7は,帯状部を横切るものではなく,係合突条8,端縁12の間に隙間を形成させるものでもない。
また,引用例2-4-3は,凹溝条7付きの係合突条8によって阻止できなかった雨水を後続の仕切部屋13,13,‥‥‥で阻止する旨を開示しており,したがって,凹溝条7による水切り作用としての機能が不完全であって,「水切り用の小溝」が開示されているとは言い難い。
(オ)よって,引用例2-4-1のV溝26,引用例2-4-2の細長凹溝7,引用例2-4-3の凹溝条7は,いずれも「水切り用」としての機能がないか不完全であり,構成要件2-Eの「水切り用の小溝」が開示されていないものである。
また,引用例2-4-3の凹溝条7は,帯状部を横切るものでなく屋根材の間に隙間を形成させるものでない点で,構成要件2-Eの小溝を示唆させるものではない上,水切り作用が不完全であることが明示されているから,そのような技術を引用例2-1に適用することには適用阻害要因がある。
さらに,引用例2-4-1,引用例2-4-2,引用例2-4-3のいずれも,屋根材自体に小溝を形成することを開示しているだけで,桟瓦Rk,Rkの間に介装する掛止金具に小溝を形成することを示唆するものではない。よって,引用例2-4-1ないし3によって,当業者が構成要件2-Eの構成を容易に想到し得るものではない。
(被告の再反論)ア引用例2-1及び引用例2-2について引用例2-1の凹部22より先の下側の瓦6に密着した板状の部分については,付加的部分であり,単にサポート部材でしかないのであって,該板状部分は非本質的部分である。また,引用例2-2の収納部1bより下側の屋根瓦2に密着した板状の部分は,収納部1bを押さえる機能があるだけであり,付加的な部分であって,非本質的部分である。
本件特許発明2は,掛止部と円弧部との間の帯状部という3要素によって構成されていて,「桟瓦の上端面に掛止する掛止部」と「突出する下部開放の円弧部」との間の「屋根上において上下に隣接する桟瓦の重なり部分に対応する帯状部」というものである。このような構成は,引用例2-1と同様である。そして,円弧部の外側に付加的な部分(引用例2-1における板状部材)が存することを排除するものではない。
イ引用例2-3-1ないし3について構成要件2-Dは収納して保持すればよく,固定する必要はないのであって,冠部3はパイプ瓦桟1を収納しており,持ち続けている点で,本件特許発明2と何ら差異はない。
構成要件2-Dについて本件公報2には,構成要件2-Dの「保持」に関する具体的記載はないことから,国語の意味で解するのが相当であって,管材を収納した状態を保ち続けることが保持溝の機能である。
引用例2-1の円弧状凹部22と引用例2-2の凹部1bは,ともに,管材であるパイプ状の複数本の熱交換器3を収納して,その状態を保つように持ち続けており,「保持」していることは明らかである。
構成要件2-Eについて引用例2-4-1は,構成要件2-Eの「水切り小溝」と何ら差異がない。引用例2-4-2に関する原告らの主張は,異常時に関する説明である。引用例2-4-3において,小溝に限界があるというが,これは本件特許発明2においても同様である。したがって,引用例2-4-1ないし3の公知技術において,構成要件2-Eの構成が開示されていることは明らかである。
(8)本件特許発明2に公然実施による無効理由があることが明らかか(争点8)(被告の主張)本件特許発明2は,出願前に公然実施されていたから,特許法29条1項1号又は2号の規定により特許を受けることができないものであり,新規性に欠け,無効である。公然実施の具体的事実は以下のとおりである。
アダイヤウッド工業株式会社(以下「ダイヤウッド」という。)及び福井プロスパー株式会社の代表者であるBが,本件特許発明2の出願日である昭和61年7月23日よりも前の同年6月29日に作成し,ボイラーの設置施工業者である福井ボイラー工業株式会社及び加越ボイラー株式会社に対し送付した「屋根融雪屋根上工法工事材料及び工事方法」と題する書面(乙11の1,2)イ昭和61年1月ころにダイヤウッドが作成した見積りに基づくC邸における施工(乙13ないし16)ウダイヤウッドによる昭和61年7月ころのD邸における施工(乙17,18)エ昭和61年3月ころのモデルハウスにおける施工(乙26,27の1,2)(原告らの主張)被告の主張は,時機に後れた攻撃防御方法の提出であるから,却下を求める。
(9)差止め・廃棄の必要性(争点9)(原告Aの主張)ア被告は,被告製品1を製造,使用し,被告製品2を製造,販売している。よって,原告Aは,被告に対し,被告製品1の製造,使用の差止め及び被告製品2の製造,販売,販売のための展示の差止めを求める。
イ原告Aは,被告に対し,前記アに係る製品の廃棄を求める。
(被告の主張)差止め・廃棄の必要性は争う。
(10)損害の内容及びその額(争点10)(原告らの主張)ア本件特許権1及び同2の独占的通常実施権者である原告会社は,本件特許発明1及び同2を実施しているのであって,被告が被告製品2ないし4の製造販売行為を行ったことにより得べかりし利益を喪失した。
イ被告製品2及び3の販売数について被告は,被告製品2及び3を含む「冬将軍」と称する自動屋根融雪システムを,これまで2600件設置した実績を有するところ,原告会社と訴外会社の間で販売代理店契約が締結され,被告が訴外会社の販社として指定されていたときの被告の販売実績は575台である。それゆえ,前記代理店契約が解除された後,被告自らが被告製品2及び3を含む「冬将軍」と称する自動屋根融雪システムを製造販売した実績数は,5年6か月間(前記代理店契約が解除された平成10年2月から本訴提起時の平成15年8月まで)で,2025台(2600台-575台=2025台)ということになる。したがって,被告は,「冬将軍」と称する自動屋根融雪システムを1年あたり368台販売していたことになる。
ウ被告製品2の製造販売による損害(ア)販売単価被告は,平成14年6月ころから,被告製品4(金具)の複数個とセットで,被告製品2を製造販売している。原告会社が製造販売している製品も被告製品2も屋根の種類や面積によって本体の大きさや金具の使用量が異なるところ,原告らの調査によれば,販売に際しての被告製品2の1件あたりの面積は平均100平方メートル(30坪)であり,その販売価格は平均250万円である。そして,被告製品2の100平方メートル分に使用する被告製品4の個数は,約1600個であり,その販売価格は1個200円である。
したがって,被告製品2の販売単価は,以下の計算式のとおり,218万円と算出される。
2,500,000円(被告製品2の1セットの価格)-(200円×1,600個)(被告製品4の価格)=2,180,000円(イ)製造販売個数被告製品2の製造販売数は,設計変更したという平成14年6月から本訴提起時(便宜上,平成15年7月末日とする。)の1年2か月間で,少なくとも合計430台を下らないと考えられる。
(ウ)利益率被告における被告製品2の利益率は,原告会社の利益率とほぼ同等か,投下資本がなされていないことから原告会社よりも高率と考えられ,少なくとも販売価格の40パーセントであると考えられる。
(エ)結論原告会社の被った損害は,特許法102条2項によれば,以下の計算式のとおり,3億7496万円と算出される。
2,180,000円×430台(販売数)×40%(利益率)=374,960,000円エ被告製品3の製造販売による損害(ア)販売単価前記ウで述べたのと同様,単価は平均218万円である。
(イ)製造販売個数原告らが侵害品である被告製品3を発見した平成12年11月から被告がその製造販売を中止したと主張する平成14年5月末日までの1年7か月間で,少なくとも合計581台を下らないと考えられる。
(ウ)利益率前記ウで述べたのと同様,被告における利益率は販売価格の40パーセントであると考えられる。
(エ)結論原告会社の被った損害は,特許法102条2項によれば,以下の計算式のとおり,5億0663万2000円と算出される。
2,180,000円×581台(販売数)×40%(利益率)=506,632,000円オ被告製品4の製造販売による損害(ア)販売単価およそ200円である。
(イ)製造販売個数被告が製造販売を中止したと主張する平成14年10月末日までの約4年間で,少なくとも合計117万7600個と考えられる(1年あたり29万4400個)。
(ウ)利益率被告における利益率は,販売価格の85パーセントと考えられる。
(エ)結論原告会社の被った損害は,特許法102条2項によれば,以下の計算式のとおり,2億0019万2000円と算出される。
200円×1,177,600個(販売数)×85%(利益率)=200,192,000円カ結論被告による本件特許権1及び同2の侵害によって原告会社の被った損害は,特許法102条2項により,前記ウないしオの合計額である10億8178万4000円となるところ,原告会社は,その内金として3億円を請求するものである。
(被告の主張)否認する。なお,被告の販売実績2600件は,誇大に宣伝したものであり,損害算定の基礎とすることはできない。
(11)請求のまとめよって,原告らは,被告に対し,次の各請求をする。
原告Aは,被告に対し,ア特許法100条1項に基づき,被告製品1の製造,使用の差止め(前記第1の1「請求の趣旨1」)イ特許法101条1号,2号,100条1項に基づき,被告製品2の製造,販売及び販売のための展示の差止め(同2「請求の趣旨2」)ウ特許法101条1号,2号,100条2項に基づき,被告の占有する被告製品1及び同2の廃棄(同3「請求の趣旨3」)を求め,原告会社は,被告に対し,エ特許法101条1号,2号,102条2項に基づき,損害賠償10億8178万4000円の内3億円及びこれに対する平成15年8月23日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(同4「請求の趣旨4」)を求める。
第3当裁判所の判断1被告製品3は,本件特許発明1の構成要件を文言上充足するか(争点1)(1)甲1によれば,本件明細書1の「発明の詳細な説明」欄には,次の記載がある。
ア産業上の利用分野「この発明は,家屋の屋根上に設置した融雪用等の屋根上配管に媒体液を充填するための,屋根上配管の媒体液充填装置に関する。」(第1欄の20行目ないし22行目)イ従来技術「これらの装置を利用するときは,媒体液を,長く曲がりくねった屋根上配管内に,空気を残すことなく,完全に充填する必要がある。
そこで,屋根上に開放型シスターンを設置し,これを屋根上配管の最高部に接続して,配管内の空気抜きと媒体液充填とを同時に行なう方法がとられている。」(第2欄の2行目ないし8行目)ウ発明が解決しようとする課題「かかる従来技術によるときは,シスターンを屋根上に設置する際に台座を設ける必要があるために,工事が煩雑になったり,また,住宅等の美観を損ねたりするおそれがあるという問題が避けられなかった。」(第2欄の10行目ないし14行目)「この発明の目的は,かかる従来技術の実情に鑑み,屋根上にシスターンを設置することなく,屋根上配管に媒体液を充填する際の配管内の空気抜きと,それに伴なう媒体液の補充とを速やかに行なうことができる。新規の屋根上配管の媒体液充填装置を提供することにある。」(第2欄の15行目ないし20行目)エ作用(ア)「この構成によるときは,ポンプを運転すると,第1のタンク内の媒体液は,ポンプによって屋根上配管に送り込まれるので,屋根上配管には,順次,媒体液が充填されて行き,これによって,屋根上配管内の空気は,第2のタンクに押し出されて系外に排出される。
このようにして,屋根上配管のほぼ全長に亘って媒体液が充填されると,溢れた媒体液は,第2のタンクに戻り,ここに溜って行くから,ついには,第2のタンクも媒体液で満たされる。
第2のタンクが媒体液で満たされると,ここから溢れた媒体液は,断面積拡大管を経てポンプの吸入口に流入するので,最終的には,ポンプから,屋根上配管と第2のタンクとを経てポンプに戻る媒体液の循環経路が完成するに至る。」(第3欄の7行目ないし21行目)(イ)「なおもポンプの運転を続行すると,屋根上配管と第2のタンクとを含む系内に残存していた空気は,媒体液の循環によって第2のタンクに搬送され,ここから,連続的に系外に排出されて行くから,系内の残存空気は,最終的に,そのすべてが排出され,媒体液に置換することができる。」(第3欄の22行目ないし27行目)(ウ)「媒体液の循環系路が完成した後において,系内の空気が,第2のタンクにおいて気水分離されて系外に排出されると,その分に相当する量の媒体液が,第1のタンクから系内に補充される必要がある。このときの補充分の媒体液は,第2のタンクからの循環分の媒体液と合流した上でポンプに吸入されるが,第1のタンクからの管路は,第2のタンクとポンプの吸入口との間に介装した断面積拡大管に接続してあるので,このときの媒体液の合流は極めて円滑に行なわれ,したがって,媒体液の補充,ひいては,系内の残存空気の排出は,速やかに完了することができるものである。」(第3欄の28行目ないし39行目)オ実施例(ア)「屋根上配管の媒体液充填装置10は,第1のタンク11と,第2のタンク12と,ポンプPとを備えてなる。」(第4欄の7行目ないし9行目)(イ)「かかる構成の屋根上配管の媒体液充填装置10の作動は,次のとおりである。
第1のタンク11の注入口11eから媒体液を注入した上,ポンプPを運転すると,媒体液は,管路10c,逆止弁Vc,断面積拡大管10bを経て,ポンプPに吸入されるとともに,逆止弁Vc(「Vb」を誤記したものと解する。),管路10dを経て,屋根上配管20に送り込まれる。このようにして,屋根上配管20に媒体液が送り込まれると,管内の空気は,管路10eと第2のタンク12とを経て,空気逃し弁Vaを介して系外に排出されるので,屋根上配管20の内部には,媒体液が満たされて行くことができる。
屋根上配管20内に媒体液が満たされると,溢れた媒体液は,管路10eを経て,第2のタンク12中に溜まるが,この間も,空気逃し弁Vaからの空気の排出は連続的に行なわれる。
第2のタンク12が媒体液で満たされると,そこから溢れた媒体液は管路10aに流出し,断面積拡大管10bを介して,ポンプPの吸入口に到達することができるので,ついには,ポンプPの吐出口から,屋根上配管20,第2のタンク12を経て,ポンプPの吸入口に至る媒体液の循環経路が完成する。また,この時点に至るまでは,第1のタンク11からの媒体液が,ポンプPによって,連続的に系内に送り込まれるものである。」(第4欄の41行目ないし第5欄の22行目)(ウ)「媒体液の循環経路が完成した後,なおも,ポンプPの運転を続行すると,系内に局部的に残留していた空気は,媒体液とともに第2のタンク12に搬送されるので,第2のタンク12において,媒体液と気水分離されて,空気逃し弁Vaから系外に排出することができる。また,このようにして空気が排出されたときは,その体積に相当する量の媒体液は,第1のタンク11から自動的に補充することができる。」(第5欄の23行目ないし31行目)(エ)「以上のようにして,屋根上配管20に対する空気の排出と媒体液の補充とを連続的に続行することができるので,屋根上配管20を含む系内の空気は,最終的に,媒体液によって完全に置換することができるものである。」(第6欄の5行目ないし9行目)カ発明の効果「この発明によれば,媒体液を入れる第1のタンクと,媒体液を屋根上配管に送るポンプと,屋根上配管から戻った媒体液の気水分離をする第2のタンクとを設け,第2のタンクからポンプの吸入口に至る管路に断面積拡大管を介装し,そこに,逆止弁を介して第1のタンクを接続することによって,系内に循環する媒体液と系内に補充される媒体液とが,断面積拡大管において円滑に合流するので,屋根上配管への媒体液の充填を効率よく行なうことができ,しかも,屋根上にシスターンを設ける必要がないので,工事が煩雑となったり,住宅の美観を損ねたりするおそれがないという優れた効果がある。」(第6欄の40行目ないし第7欄の8行目)。
(2)上記(1)の本件明細書1の記載に照らせば,本件特許発明1は,@第1のタンク→断面積拡大管→ポンプ→屋根上配管→第2のタンク→断面積拡大管という媒体液循環経路を形成するとともに(なお,第1のタンクと断面積拡大管との間には逆止弁が設けられるので,媒体液の逆流が妨げられる。),A媒体液循環経路が完成した後には,その経路内の残存空気が気水分離されて系外に排出されることに伴って必要となる媒体液の補充を,@と流路を変えることなく連続的なポンプ動作で行うというものである。このように,特許請求の範囲,作用及び実施例等の記載は,屋根上配管が空の状態から媒体液を充填・補充するまでの@及びAの過程を,同一の構成(流路)で実現することを前提としているのであって,かかる点に本件特許発明1の発明の本質の1つがあるものというべきである。
したがって,構成要件1-A「第1のタンク」は,@の過程においては充填液としての媒体液を入れるタンクであり,Aの過程においては補充液としての媒体液を入れるタンクである。すなわち,構成要件1-A「媒体液を入れる第1のタンク」は,媒体液充填時及び補充時の双方において屋根上配管に注入される媒体液を入れるタンクと解するのが相当である。
また,構成要件1-F「屋根上配管の媒体液充填装置」における「充填」とは,@の過程における充填及びAの過程における補充の双方を意味し,これを同一の構成(流路)で行う必要があるものというべきである。すなわち,構成要件1-F「屋根上配管の媒体液充填装置」は,屋根上配管への媒体液の充填及び補充の双方を,同一の構成(流路)で行う装置と解するのが相当である。
(3)そこで,前記(2)の解釈を前提として,被告製品3(その構成は,前記第2,1,(6)記載のとおりである。)が本件特許発明1の構成要件を充足するか否かを検討する。
ア被告製品3は,媒体液充填時(前記(2)の@の過程)において,まず「水中ポンプ69を備えた予備タンク68」を接続して「水中ポンプ69を備えた予備タンク68→充填口32→異径ティーズ23→ティーズ13」を経て「循環ポンプ3」に至る経路と,「水中ポンプ69を備えた予備タンク68→充填口32→異径ティーズ23→ティーズ13→ゴムホース11」を経て「温水ボイラー5」に至る経路によって,循環ポンプ3及び温水ボイラー5に媒体液を送出する。次に,水中ポンプ69の運転を継続しながら循環ポンプ3を運転することによって,予備タンク68内の媒体液が充填口32を経て屋根上放熱部2,温水ボイラー5等に送出され,その後,自動吸排気弁4とゴムホース75の端部75aから媒体液が排出されるという媒体液の循環路を形成する。そして,「水中ポンプ69を備えた予備タンク68」を取り外した後の媒体液補充時(前記(2)のAの過程)において,媒体液は「膨脹タンク1→ゴムホース27→逆止弁→異径ティーズ23→ティーズ13」の経路を経て屋根上放熱部2,温水ボイラー5等に送出される。
このように,被告製品3においては,媒体液充填時と媒体液補充時とで,異なった回路によって媒体液が供給されている。
イしたがって,本件特許発明1の発明の本質の1つが,充填と補充とを同一の回路で行うことにあることからすると,これを別回路で行い,さらには充填時にしか使用されない「充填口32から異径ティーズ23に至る構成部分」を備えている被告製品3は,本件特許発明1とは技術的思想を異にするというべきである。
すなわち,屋根上配管が空の状態においては別に接続した水中ポンプ69を使用して媒体液を送出するという被告製品3の構造は,同一のポンプと流路で空状態からの充填・補充を行う本件特許発明1とは異なった技術的思想を採用しているものである。よって,被告製品3における「膨脹タンク1」は,媒体液充填時には屋根上配管に注入される媒体液を入れていない点で構成要件1-Aを充足しない。そして,被告製品3は,媒体液の充填と補充をそれぞれ異なった構成(流路)で行い,そのための構成を備えている点で,構成要件1-F「屋根上配管の媒体液充填装置」を充足しないものである。
ウところで,原告らは,被告製品3は本件特許発明1の技術的思想をそのまま利用したものであって,あえて過分な構成を付加したにすぎず,予備タンク68及び水中ポンプ69がなくても,媒体液の充填・補充動作が当然に可能であることから,本件特許発明1の構成要件を充足していることは明らかである旨主張する。しかし,上記イのとおり,被告製品3は,本件特許発明1の発明の本質とは異なった技術的思想を採用しているのであるから,たとえ被告製品3を用いて媒体液を充填することが可能であるとしても,前記イの結論が左右されるものではない。
エしたがって,被告製品3は,構成要件1-A,Fの文言を充足せず,本件特許発明1の技術的範囲には含まれないというべきである。
(4)以上のとおり,被告製品3は,構成要件1-A,Fを文言上充足しないものであるが,さらに構成要件1-D,Eの「断面積拡大管」についても検討を加えることとする。
ア甲1によれば,本件明細書1の「発明の詳細な説明」欄には,次の記載がある。
(ア)作用「媒体液の循環経路が完成した後において,系内の空気が,第2のタンクにおいて気水分離されて系外に排出されると,その分に相当する量の媒体液が,第1のタンクから系内に補充される必要がある。このときの補充分の媒体液は,第2のタンクからの循環分の媒体液と合流した上でポンプに吸入されるが,第1のタンクからの管路は,第2のタンクとポンプの吸入口との間に介装した断面積拡大管に接続してあるので,このときの媒体液の合流は極めて円滑に行なわれ,したがって,媒体液の補充,ひいては,系内の残存空気の排出は,速やかに完了することができるものである。」(第3欄の28行目ないし39行目)(イ)実施例a「第2のタンク12とポンプPの吸入口との間には,断面積拡大管10bを介装してある。」(第4欄の9行目ないし11行目)b「断面積拡大管10bは,管路10aよりも大きな断面積を有し,その一端は管路10aに接続され,他端は,ポンプPの吸入口に接続されている。
なお,断面積拡大管10bの断面積は,管路10aと管路10cとの合計断面積よりも大きくとるのがよい。」(第4欄の32行目ないし37行目)c「第2のタンク12から,管路10aを経て断面積拡大管10bに流入する循環分の媒体液と,タンク11から,管路10cを経て断面積拡大管10bに流入する補充分の媒体液とは,ともに,断面積拡大管10bに流入し,そこで合流することになるが,断面積拡大管10bの断面積が大きいために,両者の合流は円滑に行なうことができ,したがって,ポンプPによる媒体液の吸入・送出機能が損なわれるおそれがない。すなわち,断面積拡大管10bにおける媒体液の流速が遅くなるため,媒体液にうずが発生することが少なくなり,したがって,ポンプPへの気泡の流入を少なくすることができるからである。」(第5欄の32行目ないし44行目)(ウ)発明の効果「系内に循環する媒体液と系内に補充される媒体液とが,断面積拡大管において円滑に合流するので,屋根上配管への媒体液の充填を効率よく行なうことができ,」(第7欄の2行目ないし5行目)。
イ前記ア認定の記載からすると,断面積拡大管は,媒体液を第1のタンクから補充するに際し,第2のタンクからポンプに至る管路と第1のタンクからの管路とが合流する部位を拡大することによって,合流を極めて円滑に行おうとするものである。しかし,管路の断面積を拡大させることによって媒体液の流速が遅くなることはともかく,それによって第1のタンクから補充される媒体液との合流が円滑に行われる過程は明細書に開示されておらず,流体の速度が小さくなればその圧力は大きくなるという技術常識(ベルヌーイの定理参照)に照らし,疑問のあるところである。そして,被告製品3は,異径ティーズ23において,その右側から補充用の媒体液が,左側から循環している媒体液が流れ込んで合流する構成であるところ(別紙被告製品目録3添付の図参照),原告らの主張するように,前記逆T字形の合流点付近から先の部分を「断面積拡大管」と捉えた場合,果たして,流速を遅くして円滑に合流させるという本件特許発明1の作用効果(前記アの(ア)(ウ))を奏するかどうか,疑問といわざるを得ない。さらに,実施例には,「断面積拡大管10bにおける媒体液の流速が遅くなるため,媒体液にうずが発生することが少なくなり,したがって,ポンプPへの気泡の流入を少なくすることができる。」との記載(前記アの(イ)c)があるが,これが本件特許発明1の奏する効果とすれば,合流する部位が逆T字形である被告製品3について妥当するものとは考え難い。
以上のとおり,第1のタンクから媒体液を補充するに際し,第2のタンクからポンプに至る管路と第1のタンクからの管路とが合流する部位において,前者の管路の断面積を拡大する旨の本件特許発明1の構成要件は,果たして本件明細書1に記載されているような作用効果を奏するものかどうか多大な疑問があり,さらに,被告製品3において原告らが指摘する部位が,本件特許発明1の「断面積拡大管」の作用効果を奏するとは認め難いものである。
(5)結論以上のとおり,被告製品3は,本件特許発明1の構成要件のうち,少なくとも構成要件1-A,Fを文言上充足しない(同1-D,Eについても,充足性に疑問がある。)。
2被告製品3は,本件特許発明1の構成と均等といえるか(争点2)(1)前記1で述べたとおり,本件特許発明1は,充填と補充とを同一の回路で行うことに発明の本質の1つがあるものと解される。そして,これを別回路で行う被告製品3の構成は,発明の本質的部分を異にしているのであるから,均等が成立する余地はない。
(2)なお,原告らは,被告製品3に予備タンクを接続した状態において,予備タンク68が本件特許発明1の「第1のタンク」に相当し,本件特許発明1の「逆止弁」と被告製品3の「予備タンクに設けられた水中ポンプ69」との間で,均等が成立することを主張する。そこで,念のため,両者の間で均等が成立するか否かを判断する。
この点,「逆止弁」と「水中ポンプ」は,その機能において同等の役割を果たすとは考え難いものである。そして,本件においても,本件特許発明1における「逆止弁」は第1のタンクから系内に流出した媒体液が第1のタンク内に逆流することを防止する機能を果たすものであり,一方,被告製品3に接続された「水中ポンプ69」は,予備タンク68内の媒体液を系内に送出する機能を果たすものである。また,本件特許発明1は第1のタンクと断面積拡大管との間に逆止弁を介するものであるところ,本件特許発明1の「第1のタンク」に相当するとされる「予備タンク」の内部に,逆止弁と均等な構成を有する部位が存すると捉えることには無理がある。
したがって,屋根上配管の媒体液充填装置における両者の機能・作用効果は異なっていることから,置換可能性を認めることはできない。
(3)以上のとおり,被告製品3は,本件特許発明1の構成と均等ということはできない。
3被告製品1は,本件特許発明1の構成と均等といえるか(争点3)(1)被告製品1(その構成は,前記第2,1,(7)記載のとおりである。)は,媒体液充填時(前記1,(2)の@の過程)において,まず「水中ポンプ69を備えた予備タンク68→充填口73→ティーズ46」を経て「循環ポンプ3」に至る経路と,「水中ポンプ69を備えた予備タンク68→充填口73→ティーズ46→ゴムホース43」を経て「温水ボイラー5」に至る経路によって,循環ポンプ3及び温水ボイラー5に媒体液を送出する。次に,水中ポンプ69の運転を継続しながら循環ポンプ3を運転することによって,予備タンク68内の媒体液が充填口73を経て屋根上放熱部2,温水ボイラー5等に送出され,その後,自動吸排気弁38とゴムホース75の端部75aから媒体液が排出されるという媒体液の循環路を形成する。
そして,「水中ポンプ69を備えた予備タンク68」を取り外し,膨脹タンク1下のボールバルブ62を開放した後の媒体液補充時(前記1,(2)のAの過程)において,媒体液は「膨脹タンク1→ティーズ49」の経路を経て,屋根上放熱部2,温水ボイラー5等に送出される。
このように,被告製品1は,被告製品2に「水中ポンプ69を備えた予備タンク68」を接続した媒体液充填時の構成であって,「水中ポンプ69を備えた予備タンク68」が取り外されて被告製品2のみとなった後には,被告製品1とは異なった回路によって媒体液が送出されている。
したがって,本件特許発明1の発明の本質の1つが,充填と補充とを同一の回路で行うことにあることからすると,これを別回路で行い(被告製品1は充填時の回路である。),そのために,充填時にしか使用されない「充填口73からティーズ46に至る構成部分」と補充時にしか使用されない「膨脹タンク1からティーズ49に至る構成部分」とを備えている被告製品1は,本件特許発明1とは技術的思想を異にするというべきである。
(2)原告らは,被告製品1における,予備タンク68,温水ボイラー5,循環ポンプ3,ティーズ46からニップル50が,それぞれ,本件特許発明1の第1のタンク,第2のタンク,ポンプ,断面積拡大管に該当すると主張する。
しかし,被告製品1における「予備タンク68」は,媒体液補充時に屋根上配管に注入される媒体液を入れていない点で構成要件1-Aを充足しない。そして,被告製品1は,媒体液の充填と補充をそれぞれ異なった構成(流路)で行い,そのための構成を備えている点で,構成要件1-F「屋根上配管の媒体液充填装置」を充足しないものである。
原告らは,被告製品1について,本件特許発明1の構成要件のうち1-A,B,C,D及びFを充足し,1-Eのみを充足しないことを前提として,本件特許発明1の構成と均等であると主張するが,上記によれば,被告製品1は,構成要件1-Eのみならず,1-A,Fをも充足しないものである。したがって,被告製品1について本件特許発明1との均等をいう原告らの主張は,その前提を欠くものであり,失当である。
(3)なお,原告らは,本件特許発明1の「逆止弁」と被告製品1の「予備タンク68に設けられた水中ポンプ69」との間で,均等が成立すると主張する。そこで,念のため,両者の間で均等が成立するか否かを判断する。
この点,前記2,(2)で述べたのと同様,屋根上配管の媒体液充填装置における両者の機能・作用効果は異なっていることから,置換可能性を認めることはできない。
(4)以上のとおり,被告製品1は,本件特許発明1の構成と均等ということはできない。
4被告製品2は,本件特許発明1の間接侵害品に当たるか(争点4)原告らは,被告製品2に「予備タンク68に設けられた水中ポンプ69」を接続した被告製品1が,本件特許発明1を侵害することを前提として,被告製品2が特許法101条1号,2号により本件特許発明1の間接侵害品に当たると主張する。しかし,前記3のとおり,被告製品1は本件特許発明1を侵害するものではない。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,被告製品2は本件特許発明1の間接侵害品に該当しない。
5被告製品4は,本件特許発明2の構成要件を文言上充足するか(争点5)(1)甲3,4によれば,本件明細書2の「発明の詳細な説明」欄には,次の記載がある。
ア産業上の利用分野「この発明は,瓦屋根に設置してソーラシステム用集放熱装置を構築するときなどに好適な屋根上における管材の設置用掛止金具に関する。」(本件補正明細書1頁の左欄17行目ないし19行目)イ従来技術「出願人は,屋根上のほぼ全面に蛇行管路を配設するとともに,蛇行管路に熱媒体液を循環させることにより,夏期においては,日射によって高温に加熱された熱媒体液を給水加熱用の熱交換器に導き,太陽熱の集熱と,その利用とを図ることができる一方,冬期において積雪があるときは,別置のボイラによって加熱した熱媒体液を蛇行管路に送ることにより,屋根雪の融雪を行なうことができるソーラシステム用集放熱装置を提案した。」(本件補正明細書1頁の右欄10行目ないし18行目)ウ発明が解決しようとする問題点(ア)「蛇行管路を如何にして屋根上に安定に支持するかが問題となる。
‥‥‥何らの支持手段をも講じないとすれば,屋根雪が滑落するに際して簡単に損傷を受け,屋根雪とともに屋根から落下してしまう一方,蛇行管路を支持するための大げさな支承物を屋根上に設けるとすれば,家屋全体の外観を損うばかりでなく,工事費の高騰を招き,実用性に欠けるものとなってしまう。」(本件補正明細書1頁の右欄21行目ないし28行目)(イ)「この発明の目的は,かかる従来技術の実情に鑑み,掛止部と円弧部とを両端に形成し,水切り用の小溝付きの帯状部を中間に形成することによって,屋根雪によって損傷を受けるおそれがなく,管材を安定に支持することができる屋根上における管材の設置用掛止金具を提供することにある。」(本件補正明細書1頁の右欄29行目ないし34行目)エ作用「かかる発明の構成によるときは,掛止部を桟瓦の上端面に掛止するとともに,上下に隣接する2枚の桟瓦の重なり部分によって帯状部を挟むことにより,円弧部を下方の桟瓦の上面に露出するようにして全体を固定することができるので,円弧部の内側の保持溝に管材を収納して保持させることにより,上方の桟瓦の下端面に沿わせるようにして,管材を屋根上に安定に支持することができる。」(本件補正明細書2頁の左欄11行目ないし18行目)オ実施例「舌片14aと円弧部14bの立上りとの距離,すなわち帯状部14eの長さLは,屋根R上において上下に隣接する桟瓦Rk,Rkの上下方向の重なり部分の長さにほぼ等しく,桟瓦Rk,Rkの重なり部分に対応するものとする。」(本件補正明細書2頁の右欄9行目ないし13行目)カ発明の効果「掛止部と円弧部との間に小溝付きの帯状部を形成し,上下に隣接する桟瓦の重なり部分に帯状部を対応させることによって,下方の桟瓦の上端面に掛止部を掛止し,上下2枚の桟瓦によって帯状部を挟み,下方の桟瓦の上面に円弧部を露出させて固定し,円弧部の内側の保持溝を介して管材を上方の桟瓦の下端面に沿って安定に支持することができるから,管材が屋根雪によって損傷を受けたりすることが殆どない。」(本件補正明細書3頁の右欄4行目ないし12行目)(2)被告製品4が構成要件2-A,B,D,Fを充足することには争いがない。
(3)そこで,構成要件2-Cについて検討する。
ア前記(1)認定の本件明細書2の記載に照らせば,構成要件2-C「屋根上において上下に隣接する桟瓦の重なり部分に対応する帯状部」は,上方の桟瓦の下端面に沿わせるように管材を配置するための構成であると考えられる。したがって,「帯状部」の長さは,上下に隣接する桟瓦の重なり部分にほぼ等しい長さを指すものと解され,同部分と厳密に等しいものに加えて,ある程度長いものも含まれると解するのが相当である。
イこの点,被告は,以下に認定する出願経過に照らせば,帯状部の長さが,上下に隣接する2枚の桟瓦の重なり部分を「ほぼ同一以上の任意の寸法」とする点は,意識的に除外されたと主張する。
(ア)甲4によれば,平成6年法律第116号による改正前の特許法17条の3の規定による補正により補正された後の本件明細書2の「発明の詳細な説明」欄における「実施例」の項の記載(本件公報2の本件補正明細書2頁の右欄9行目ないし13行目)及び「発明の効果」の項の記載(本件公報2の本件補正明細書3頁の右欄4行目ないし14行目)には,帯状部14eの長さLは,屋根R上において上下に隣接する桟瓦Rk,Rkの上下方向の重なり部分の長さにほぼ等しく,桟瓦Rk,Rkの重なり部分に対応するものとすること,円弧部の内側の保持溝を介して管材を上方の桟瓦の下端面に沿って安定に支持することが記載されている。
(イ)乙1の1によれば,本件特許権2の出願当初の明細書の特許請求の範囲第2項(本件特許発明2に対応する部分)には「掛止部と保持部との中間部分は,屋根上において上下に隣接する2枚の桟瓦の重なり部分とほぼ同一以上の帯状部とした,屋根上における管材設置用掛止金具」と記載され,同明細書の「発明の詳細な説明」欄の記載(同明細書の11頁14行目ないし17行目及び16頁10行目ないし16行目)には,実施例として,「帯状部14eの長さLは,屋根Rに葺き並べた桟瓦Rk,Rk,‥‥‥の,上下方向の重なり部分の長さに,ほぼ等しく定めてある」態様と,「積雪地帯以外にあっては,掛止金具14の帯状部14eの長さLは,屋根R上において,上下に隣接する桟瓦Rk,Rkの重なり部分の長さ以上にとっても,屋根雪による管材の破損のおそれがないから,結局,帯状部14eの長さLは,前記重なり部分の長さとほぼ同一以上の任意の寸法とする」態様の2種類の掛止金具が記載されていたことが認められる。
乙1の4によれば,その後,平成6年7月25日受付手続補正によって,出願当初明細書の特許請求の範囲第2項が「桟瓦の上端面に掛止する掛止部を一端に形成し,管材を係着する保持部を他端に形成するとともに,屋根上において上下に隣接する桟瓦の重なり部分に対応する帯状部を前記掛止部,保持部の中間に形成してなり,前記帯状部には,水切り用の小溝を形成することを特徴とする屋根上における管材の設置用掛止金具」と変更され,同明細書の「発明の詳細な説明」欄の記載の実施例から前記「重なり部分の長さとほぼ同一以上の任意の寸法とする」場合の説明が削除されたことが認められる。
そこで検討すると,「重なり部分の長さとほぼ同一以上の任意の寸法」を意識的に除外したと解すべきであるとしても,前記出願経過に照らせば,上下に隣接する桟瓦の重なり部分に厳密に等しい長さのみに特許請求の範囲を限定したものと解することはできない(なお,被告も,「ほぼ等しいものに意識的に限定した」と主張するにとどまる。)。したがって,出願経過参酌しても,前記アの解釈が左右されるものではない。
ウそこで,前記アの解釈を前提に,被告製品4の構成要件充足性を検討すると,甲25によれば,被告製品4の帯状部は,上下の桟瓦の重なり部分の長さよりも10ミリメートル前後長いものであることが認められる。そして,甲22,23によれば,瓦の寸法には数ミリメートルの誤差が通常生じ得るものであることが認められるのであって,10ミリメートル程度の長さは,桟瓦の重なり部分の変動幅を吸収するための余裕ないし「遊び」として「ほぼ等しい」の要件を満たすものというべきである。
(4)次に,構成要件2-Eについて検討する。
被告は,構成要件2-E「前記帯状部には,水切り用の小溝を形成することを特徴とする」の充足性を否認するが,被告製品4の構成e「帯状をなす部分4に形成された小溝7」(前記第2,1,(9)参照)がこれに該当することは明らかである。
(5)結論したがって,被告製品4は,本件特許発明2の構成要件を文言上充足するものである。
6本件特許発明2に進歩性欠如による無効理由があることが明らかか(争点7)(1)乙5の1によれば,本件特許発明2の出願前に頒布された刊行物である引用例2-1(実開昭60-159125号公報)には,次の記載がある。
ア考案の名称「屋根の温度調整装置」(明細書1頁2行目)イ実用新案登録請求の範囲「(1)熱交換媒体を通流させるための熱交換器が屋根の上に配設されて固定手段により固定されているとともに該熱交換器には熱交換媒体の供給機が備えられている屋根の温度調整装置」(明細書1頁3行目ないし7行目)ウ「本考案は,冬期の融雪,夏期の給湯などが行なえる屋根の温度調整装置に関する。」(明細書1頁15行目,16行目)エ「熱交換器7としては例えば金属パイプ,合成樹脂パイプ,金属(内側)と合成樹脂(外側)とによる複合パイプなどの単体または集合体であってもよいが,1例として第3図に示すものが用いられる。
第3図の熱交換器7は複数(多数)の管状流路9を有する弾力性のマットからなり,その材質は耐熱性のゴムまたは合成樹脂である。」(明細書4頁12行目ないし19行目)オ「第4図において熱交換器7を屋根1に取りつけるとき,バネ材ような弾発性の高い例えば金属製の止具20が用いられる。
第4図に例示の止具20は帯状からなり,その先端にコ字形のフック21を,その長手方向中間に凹部22を有している。
かかる止具20を介して熱交換器7を屋根の上に取りつけるとき,フック21が瓦6に掛けられ,凹部22内に嵌めこまれた熱交換器7が当該止具20の弾発力により屋根上に保持されるのであり,こうした保持手段は熱交換器7の長手方向に沿い,複数個所講じられる。」(明細書5頁13行目ないし6頁4行目)カ「上述の実施例では各熱交換器7が屋根勾配と直交する方向に配設された例を示したが,これら熱交換器7を屋根勾配に沿う方向へ配設するときは第9図の温度調整装置を用いる。」(明細書8頁10行目ないし13行目)キ「第10図の止具20は瓦6の幅方向に長く,その両端にそれぞれフック21を有し,その幅方向中間に凹部22を備なえている。
この実施態様でもフック21が瓦6に掛けられ,凹部22内に嵌めこまれた熱交換器7が当該止具20により屋根上に保持される。
第10図の止具20はその幅方向の寸法を2枚以上の瓦にわたる大きさ,あるいは1枚の瓦内に収まる大きさなど,任意に設定できる。」(明細書9頁8行目ないし16行目)ク第4図の記載では,止具20は,上下に隣接する瓦6,6の重なり部分に介在するように設けられている。また,当該止具20のフック21は下側の瓦の上端に係合し,かつ,当該止具20の凹部22の上端は上側の瓦の下端に接している。
第10図の記載では,止具20の凹溝22は円弧状である。
前記各記載によれば,引用例2-1には,次の発明が記載されているものと認められる。
a-1帯状からなるバネ材のような弾発性の高い金属製品を加工することにより,a-2瓦6の上端部に弾発外嵌される断面コ字状のフック21を一端に形成し,bフック21の一方には,瓦6上に配設された熱交換器7を押圧収容すべく管路状に形成された下方が開口し,しかも突出した凹部22が延設され,c止具の先端部のコの字形状のフックの上部は,上下に隣接する瓦6の重合部分に接合固定されて,d前記凹部22の内側は,円形断面の管路を収容して保持する保持溝としたf屋根上における熱交換器の管路の保持金具(前記第2の3(7)のとおり,「引用例2-1構成a-1」のようにいう。)(2)乙5の4の1によれば,本件特許発明2の出願前に頒布された刊行物である引用例2-4-1(実開昭58-64729号公報)には,次の記載がある。
ア実用新案登録請求の範囲「(1)屋根瓦の重なり部分において,瓦の裏面に突条を,また瓦の表面に溝をそれぞれ設け,突条が溝に嵌まり込むように配置して構成した屋根瓦。」(明細書1頁4行目ないし8行目)イ「和型焼瓦1の表面Aには,第1図に示すように,その後尻1a及び平側端1bにおいて上方に突出して水切り用突起2,2が形成されており,これら突起2には第3図に示すように,その内側上部が大きく内方に膨出してオーバハング3が形成されている。更に,これら突起2に平行して所定間隔内方にはV字状の溝5,5が形成されており,該溝5には所定間隔毎に放流口6‥‥‥が多数形成されている。また,後尻1a側にはV溝5の僅か内方において浅い凹溝7が形成されている。」(明細書2頁10行目ないし20行目)ウ「瓦1の裏面Bには,第2図に示すように,小口1c及び山側端1dにおいて下方に突出して水切り用垂れ9,9が形成されており,またこれら垂れ9に平行して所定間隔内方には大きく突出しているV字状の突条10,10が形成されており,更に小口1cにおけるV突条10の後方には横リブ11が形成されている。」(明細書2頁20行目ないし3頁6行目)エ「第3図に示すように,下側の瓦1’の後尻部突起2の後側面に上側の瓦1の横リブ11の前側面が当接する状態で順次瓦が葺かれており,この際V字状の溝5にV字状突起10が嵌まり込んでいると共に小口部垂れ9が凹溝7に対応している。なお,凹溝7は瓦1が捻れている場合,小口部垂れ9が下側の瓦1’と干渉し,他に影響を与えることを防止するものである。」(明細書3頁20行目ないし4頁7行目)オ「台風時には,第3図(a)に示すように,垂れ9と凹溝7との隙間から風と共に雨水が浸入する。そして,該浸入した雨水はV字状溝5に流れ込むが,該V字状溝5にはV字状突条3が嵌まり込んでいるため,溝5に流入した雨水及び突条3により空気の流れは完全に遮られ,垂れ9及び突条10との間の室Cにおいて乱流を生じると共に気圧が高められ,これにより後続する大量の雨水の室Cへの浸入を阻止すると共に,溝5から突条3及び突起2により構成される室Dへの溯上を阻止する。」(明細書4頁11行目ないし5頁1行目)カ「一般に,水切り用突起2は成形時における金型からの抜き作業のため,オーバーハング3を形成するのは困難であるが,第4図に示すような方法により容易にオーバーハング3を形成することができる。‥‥‥この際,金型25の突条25aにより,突起2の上面にV溝26が形成されるが,該V溝26は表面張力により溯上しようとする雨水を切る水溜りとして利用することができる。」(明細書5頁16行目ないし6頁11行目)。
(3)本件特許発明2と引用例2-1とを対比すると,引用例2-1構成a-2の「フック21」は構成要件2-A-2の「掛止部」に,引用例2-1構成bの「熱交換器7」は構成要件2-Dの「管材」に相当する。また,引用例2-1構成cの「瓦」は構成要件2-Cの「桟瓦」に,引用例2-1構成bの「凹部」は構成要件2-Bの「円弧部」に対応するものである。そして,引用例2-1構成a-1ないしfによれば,引用例2-1記載の考案は,本件特許発明2の帯状部に相当する部分を有しているものと認められる。
したがって,本件特許発明2と引用例2-1とは,瓦の上端面に掛止する掛止部を一端に形成し,該掛止部と逆方向に突出する下部開放の管材収納部を形成するとともに,屋根上において上下に隣接する桟瓦の重なり部分に対応する帯状部を前記掛止部,管材収納部の間に形成し,前記管材収納部の内側は,管材を収納するものである屋根上における管材の設置用掛止金具である点で一致する。
(4)一方,両者は,以下の点で相違する。
ア掛止金具を,本件特許発明2は,帯状の薄鋼板を折曲げ加工することにより形成するのに対し,引用例2-1の掛止金具はどのように形成するのか不明である(以下「相違点1」という。)。
イ管材収納部を,本件特許発明2は,下部開放の円弧部であって,その内側は円形断面の管材を収納して保持する保持溝としているのに対し,引用例2-1の掛止金具は矩形状の凹部であって,しかもその内側は管材を保持する構造であるかどうか不明である(以下「相違点2」という。)。
ウ本件特許発明2は,管材収納部を掛止金具の他端に設けているのに対し,引用例2-1の掛止金具は,管材収納部を掛止金具の他端側に設けているが,他端に向かってさらに板状部材が設けられている(以下「相違点3」という。)。
エ帯状部について,本件特許発明2は,水切り用の小溝を形成しているのに対し,引用例2-1の掛止金具は小溝を形成していない(以下「相違点4」という。)。
オ掛止金具が掛止めする瓦を,本件特許発明2は桟瓦としているのに対し,引用例2-1の掛止金具は桟瓦かどうか不明である(以下「相違点5」という。)。
(5)相違点の検討ア相違点1前記(1),オにおいて,「熱交換器7を屋根1に取りつけるとき,バネ材ような弾発性の高い例えば金属製の止具20が用いられる。」と記載されていることに照らせば,引用例2-1の掛止金具は,帯状の薄鋼板を折曲げ加工することによって製作されるものと解するのが自然である。また,仮にそうでないとしても,引用例2-1の発明の本質は,材質自体よりもむしろ屋根上において管路を保持するための金具の形態にこそ認められるのであるから,引用例2-1の掛止金具を,帯状の薄鋼板を折曲げ加工することによって製作することは,当業者が適宜なし得る程度の設計事項にすぎないというべきである。
イ相違点2前記(1),クにおいて,管材を収納する部分の形状が円弧状であるものが記載されている。したがって,管材収納部の形状を矩形状の凹部に換えて円弧状の収納部とすることは,当業者が容易になし得る程度の事項にすぎないというべきである。また,その際に,当該円弧状の収納部について管材を保持する保持溝とすることは,当業者が適宜なし得る設計事項にすぎないというべきである。
ウ相違点3引用例2-1に記載された掛止金具において,管材収納部から他端に向かって板状部材を設けることに換え,板状部材を設けることなく管材収納部を他端に設けた構造とすることに困難さはなく,一方,本件明細書2には管材収納部を他端に設ける構成としたことの技術的意味について,何ら記載されていない。
したがって,管材収納部を他端とすることは,当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項にすぎないというべきである。
エ相違点4引用例2-4-1において,瓦の重なり部分における水切りを行うために,V字状突条10とV字状溝5とを形成すること及び当接面の一方にV溝26を形成することが記載されている(前記(2))。また,毛細管現象や表面張力による雨水等の浸入を防止するために溝を設けることは,本件特許発明2の出願当時,既に周知の技術であったというべきである。
したがって,引用例2-1に記載された掛止金具を,瓦の重なり部分に用いるにあたり,雨水等の浸入を阻止するために,当該掛止金具の帯状部に小溝を形成することは,当業者が容易になし得る程度の設計事項にすぎないというべきである。また,引用例2-1に小溝を設けることによって,不可避的に熱交換器の押圧収容が困難となるわけではなく,引用例2-4-1を組み合わせることを阻害する要因があるものということはできない。
オ相違点5引用例2-1に記載された瓦は,桟瓦であるかどうか不明であるが,引用例2-1に記載された掛止金具を桟瓦に適用することを妨げる事項は存しない。
したがって,相違点5は実質的には相違する事項ではないというべきである。
(6)結論したがって,本件特許発明2は,引用例2-1に引用例2-4-1を組み合わせることによって,当業者が容易に想到できたものであって,進歩性に欠け,特許法29条2項に違反して特許されたものであり,無効理由のあることが明らかというべきである。
以上のとおり,本件特許発明2には無効理由のあることが明らかであるので,本件特許権2に基づく権利行使は,権利の濫用として許されないというべきである。
7結論以上によれば,被告製品1ないし3は本件特許権1を侵害するものではなく,被告製品4を対象とする本件特許権2には無効理由のあることが明らかであり,原告らの権利行使は権利の濫用に該当する。したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がない。
なお,原告らから当裁判所に対して,本件特許権1及び2に係る無効審判手続の進行状況を理由として,本件訴訟手続の中止等を求める上申書(平成17年1月31日付け及び同年2月28日付け)が提出されているが,本件についての上記判断及び本件にあらわれた諸事情を勘案しても,訴訟手続の中止又は口頭弁論の再開の必要が存するものとは認められない。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部裁判長裁判官三村量一裁判官鈴木千帆裁判官古河謙一は,海外出張のため署名押印できない。
裁判長裁判官三村量一(別紙)被告製品目録1図面1被告製品目録2図面2被告製品目録3図面3被告製品目録4図面4
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