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関連審決 不服2002-14136
関連ワード 発明者 /  製造方法 /  同一技術分野(同一の技術分野) /  周知技術 /  公知技術 /  29条の2(拡大された先願の地位) /  出願公開 /  技術常識 /  技術的意義 /  実施 /  加工 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 17年 (行ケ) 10681号 審決取消請求事件
原告 京セラ株式会社
訴訟代理人弁理士 竹口幸宏,多田一彦
被告 特許庁長官中嶋誠
指定代理人 柴沼雅樹,鈴木久雄,岡田孝博,青木博文
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2006/05/31
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が不服2002-14136号事件について平成17年8月1日にした審決を取り消す 」との判決。。
事案の概要
本件は,拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消しを求める事案である。
1 特許庁における手続の経緯(1) 原告は,平成8年9月26日,発明の名称を「多層配線基板およびその製造方法」とする特許出願をし,平成13年7月23日,発明の名称を「多層配線基板の製造方法」に変更し,特許請求の範囲変更するなどの補正をした(これにより,請求項の数は3から2となった。甲2,3 。)(2) 原告は,平成14年6月25日付けの拒絶査定を受けたので,同年7月25日,拒絶査定に対する審判を請求した(不服2002-14136号事件として係属 。)(3) 特許庁は,平成17年8月1日 「本件審判の請求は,成り立たない 」と ,。
の審決をし,同月11日,その謄本を原告に送達した。
2 請求項1の発明の要旨(平成13年7月23日付けの補正後のもの。なお,請求項2については,省略)「少なくとも熱硬化性有機樹脂を含有する絶縁層と,該絶縁層表面および内部に配設された配線回路層と,前記配線回路層間との電気的に接続するためのビアホール導体を具備する多層配線基板の製造方法において,(a)絶縁層にビアホールを形成し,そのビアホール内に導体ペーストを充填してビアホール導体を形成する工程と,(b)転写シートの表面に,金属箔を接着した後,これを回路パターン状に加工して配線回路層を形成する工程と,(c)ビアホール導体が形成された前記絶縁層に対して,前記配線回路層が形成された転写シートを位置決めして密着させた後,該転写シートを剥がして,配線回路層を転写させて,単一の配線層を形成する工程と,(d)上記と同様にして形成した複数の配線層を積層圧着する工程と,(e)上記積層体全体を加熱して完全に硬化する工程と,を具備することを特徴とする多層配線基板の製造方法 」。
3 審決の理由の要旨審決の理由は,以下のとおりであるが,要するに,請求項1の発明(以下「本願発明 という は 本願発明の出願の日 平成8年9月26日 よりも前の日 同 」。), ( ) (月6日)に出願され,本願発明の出願の後の日(平成10年3月31日)に出願公開された特願平8-236142号(特開平10-84186号(本訴甲4 ,以)下「先願」という )の明細書に記載された発明と同一であるから,特許法29条
の2の規定により特許を受けることができない,というものである。
( ) 引用例とその記載事項 1先願の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「先願明細書」という )には 「配線基板の製 。,造方法」に関して,図面とともに次のア〜カの事項が記載されている。
ア 「 請求項2】 配線層のパターンに対応した位置に設けた孔に導電体を埋め込んだ接着性絶 【縁体の表面に,離型性支持板の表面に形成された導電性配線パターンを転写して前記接着性絶縁体の表面に配線層を形成すると同時に,バイア接続を行なって作った配線基板の上に更に,配線層のパターンに対応した位置に設けた孔に導電体を埋め込んだ他の接着性絶縁体を積層し,積層した接着性絶縁体層の外層の表面に,離型性支持板の表面に形成された他の導電性配線パターンを転写して前記接着性絶縁体層の表面に他の配線層を形成すると同時に,バイア接続を行い,その後,離型性支持板をはがす工程を順次繰り返して多層配線を形成する配線基板の製造方法 (請求の範囲請求項2) 。」イ 「 請求項5】 前記孔に埋め込まれた導電体が流動性の導電ペーストである請求項1から4 【のいずれかに記載の配線基板の製造方法 (請求の範囲請求項5) 。」ウ 「 請求項9】 前記接着性絶縁体が半硬化状態である請求項1から4のいずれかに記載の配 【線基板の製造方法 (請求の範囲請求項9) 。」エ 「前記配線基板の第1から第3の製造方法において,導電性配線パターンが,導電性を備える離型性支持板の表面に形成した配線パターンレジストを介してめっきにより形成された導電性配線パターンであることが好ましい。これにより,従来のエッチングによらず,ファインパターンのレジストが印刷された導電性支持板上にめっきにより配線を形成し,転写する方法であるため,配線ピッチを従来のエッチング法に比較して微細とすることができ,また回路部分にのみ導電体を形成でき,コストの低減に寄与できる (段落[0016 ) 。」]オ 「また接着性絶縁体114として本実施形態ではアラミド不織布にエポキシ樹脂を含浸させた,。 アラミドエポキシプリプレグを例に上げたが ガラスエポキシプリプレグを用いることも可能である当然ポリエステルやポリイミドなどのシートに接着剤や粘着剤などを塗布したものも接着性絶縁体として利用可能である (段落[0031 ) 。」]カ 「 実施の形態2)(図3(a)〜(c)は本発明の配線基板の製造方法における第2の実施形態を示す工程断面図であり,図3(a)において119はあらかじめ別工程で作成されたバイアホール320で層間接続つまりバイア接続されているプリント配線321を備える両面配線基板であり,その一方の側に第1の実施形態において説明した,レーザ加工により形成した孔315に導電体316が埋め込まれた接着性絶縁体314を,また他の一方の側には同じく内部の孔315aに導電体316aが埋め込まれた接着性絶縁体314aをそれぞれ配置する ・・・。
つぎに上記接着性絶縁体314の側に第1の配線パターン322が形成された第1の離型性支持板323を,また接着性絶縁体314aの側に第2の配線パターン324が形成された第2の離型性支持板325をそれぞれ配置し,図2(b)に示すように,第1の実施形態と同じように真空プレス機(図示せず)により両面より所定の温度,圧力で一定時間加圧加熱して,接着性絶縁体314および314aと,孔315および315a内の導電体316および316aを圧縮,完全硬化させて第1の配線パターン322と導電体316を,また第2の配線パターン324と導電体316aとをそれ。, ぞれ接続するとともに両面配線基板319上の配線パターン321との接続も行わせる ここで加圧加熱処理は例えばアラミドエポキシの場合,加圧は30 ,加熱は180℃で,1時間保持す Kg/cm2る (段落[0034]〜[0035 ) 。」]( ) 本願発明と先願明細書記載の発明の対比 2本願発明と先願明細書に記載された発明とを対比すると,先願明細書記載の発明における「接着性絶縁体 「配線層 「孔 「離型性支持板」は,本願発明のそれぞれ「絶縁層「配線回路層 「ビ 」,」,」,」 ,」,アホール 「転写シート」に相当する。そして,上記記載事項ウ,オ,カによれば,先願明細書記載 」,の発明における「接着性絶縁体」はエポキシなどの熱硬化性樹脂を含有し,半硬化状態で積層圧着されるものである。
したがって,本願発明と先願明細書記載の発明とは,以下の一致点において一致するとともに,以下の相違点において一応相違する。
<一致点>「少なくとも熱硬化性有機樹脂を含有する絶縁層と,該絶縁層表面および内部に配設された配線回路層と,前記配線回路層間との電気的に接続するためのビアホール導体を具備する多層配線基板の製造方法において,絶縁層にビアホールを形成し,そのビアホール内に導体ペーストを充填してビアホール導体を形成する工程と,転写シートの表面に,配線回路層を形成する工程と,ビアホール導体が形成された前記絶縁層に対して,前記配線回路層が形成された転写シートを位置決めして密着させ,該転写シートを剥がして,配線回路層を転写させる工程と,前記絶縁層と前記配線回路層とを積層圧着して加熱し,完全に硬化させる工程と,を具備する多層配線基板の製造方法 」。
<相違点>a.本願発明は,転写シートの表面に配線回路層を形成する方法として 「金属箔を接着した後,こ ,れを回路パターン状に加工して」いるのに対して,先願明細書記載の発明は,そのように限定する構成を有しない点。
b.本願発明は,絶縁層に配線回路層が形成された転写シートを密着させた後,該転写シートを剥がして,単一の配線層を形成し,当該配線層を複数積層圧着するとともに,積層体全体を加熱して完全に硬化するのに対して,先願明細書記載の発明は,絶縁層に配線回路層が形成された転写シートを密着させると同時に,積層圧着して加熱し完全に硬化させた後,該転写シートを剥がす工程を繰り返している点( ) 審決の判断3そこで,上記各相違点について,以下に検討する。
ア 相違点aについて上記記載事項エに示されるとおり,先願明細書には「めっきにより形成された導電性配線パターン」,「, , であることが好ましい と記載され 従来のエッチングによらず ・・・めっきにより配線を形成し転写する方法であるため,配線ピッチを従来のエッチング法に比較して微細とすることができ」と記載されているのであるから,先願明細書記載の発明は,エッチングによって導電性配線パターンを形成することを排除しているものではない。そして,エッチングによって導電性配線パターンを形成する場合 「金属箔を接着した後,これを回路パターン状に」エッチングすることは通常行われている ,ことであるから,上記相違点aに係る構成は,先願明細書に明示した記載はないが実質的に記載されている事項というべきである。
イ 相違点bについて多層配線基板の製造方法において,配線回路層と熱硬化性有機樹脂を含有する絶縁層とからなる半硬化状態の単一の配線層を複数積層圧着して,その積層された積層体全体を加熱して完全に硬化する,() ,() ことは 特開昭63-274199号公報 本訴甲5 特開平3-204994号公報 本訴甲6に開示されているとおり,本願出願前に周知の技術である。そして,該周知技術のように,積層した,。 後に一括して加熱すれば工程を簡略化することができることは その構成自体から自明のことであるそうであれば,半硬化状態の絶縁層と配線回路層からなる配線層を,すべて積層してから一括して圧着加熱するか,1回の積層毎に圧着加熱するかは,当業者が適宜選択し得た設計的事項にすぎないから,上記相違点bに係る構成は,上記周知技術を勘案すれば 「回路の超微細化,精密化の要求に ,適用することができる多層配線基板の製造方法を提供する」という本願発明の課題を解決する具体化手段における微差にすぎず,実質的な相違点とはいえない。
( ) 審決のむすび4以上のとおり,本願発明は,先願明細書に記載された発明と同一であると認められ,しかも,本願発明の発明者が,先願明細書記載の発明の発明者と同一であるとも,また,本願の出願時において,本願の出願人が先願の出願人と同一であるとも認められないから,特許法29条の2の規定により特許を受けることができない。
当事者の主張の要旨
1 原告主張の審決取消事由(1) 取消事由1(相違点aについての判断の誤り)審決は 「先願明細書記載の発明は,エッチングによって導電性配線パターンを ,形成することを排除しているものではない」と認定し 「相違点aに係る構成は, 。,先願明細書に明示した記載はないが実質的に記載されている事項というべきである 」と判断した。。
ア 先願明細書の段落【0009 【0041】の記載によれば,先願明細書 】,は,エッチングのパターニング精度を理由として,基板上の金属層をエッチング加工して配線層を形成することを明確に排除している。
これに対し,先願明細書は,離型性支持板の表面に形成される導電性配線パターンをエッチング加工することを明示的には排除していないが,転写シートである離型性支持板上の導電性配線パターンは,最終的に基板上に転写されて配線層として機能するのであって,離型性支持板上の導電性配線パターンと基板上に形成される配線層とは同等のパターニング精度が要求されるはずであるから,導電性配線パターンを形成する際に離型性支持板上に予め形成した金属層をエッチング加工することは,基板上の金属層をエッチング加工して配線層を形成する場合と同様に,当然に避けるべきである。
そうすると,先願明細書は,離型性支持板の表面に形成される導電性配線パターンをエッチング加工することを黙示的に排除しているということができる。
イ したがって 「先願明細書記載の発明は,エッチングによって導電性配線パ ,ターンを形成することを排除しているものではない 」とした審決の認定は誤って 。
いるから,これを前提に 「相違点aに係る構成は,先願明細書に明示した記載は ,ないが実質的に記載されている事項というべきである 」とした審決の判断は,誤 。
りである。
(2) 取消事由2(相違点bについての判断の誤り)ア 周知技術の認定について審決は 「多層配線基板の製造方法において,配線回路層と熱硬化性有機樹脂を ,含有する絶縁層とからなる半硬化状態の単一の配線層を複数積層圧着して,その積層された積層体全体を加熱して完全に硬化することは ・・・本願出願前に周知の ,技術である 」と認定した。。
(ア) 特開昭63-274199号公報(甲5,以下「周知例1」という )及。
び特開平3-204994号公報(甲6,以下「周知例2」という )の多層配線。
, 。 基板は セラミック配線基板上に複数の有機系絶縁層を積層した構成を有しているセラミック配線基板は,未硬化のセラミックグリーンシートを形成し,これを加熱することで硬化(緻密化)させて製作するから,周知例1及び2の多層配線基板がセラミック配線基板を構成要素として含んでいる以上,少なくともセラミック配線基板の形成時と有機系絶縁層の形成時の2回にわたって硬化する工程を経ているのであって,全体を一括して硬化する本願発明とは異なるものである。なお,周知例1及び2の多層配線基板において,セラミック基板上の多層配線フィルム(ポリイ),() ミド積層膜 をセラミック基板と分離して 多層配線フィルム ポリイミド積層膜だけに着目して完全硬化工程の回数を1回と認定することは,誤りである。
(イ) また,基板を含めた積層体全体を最後に完全硬化する技術が周知例1に記載されているとしても,周知例2には記載されていないから,当該技術は公知技術にすぎないのであって,このような単なる公知技術にすぎない周知例1に記載された技術を先願明細書に記載された発明に組み合わせて本願発明と実質同一であると判断することは,誤りである。
(ウ) したがって,審決の上記認定は,誤りである。
イ 先願明細書と周知技術との組合せについて審決は 「上記相違点bに係る構成は,上記周知技術を勘案すれば ・・・実質 ,,的な相違点とはいえない 」と判断した。。
(ア) 周知例1及び2の多層配線基板は,上記ア(ア)のとおり,セラミック配線基板上に複数の有機系絶縁層を積層した構成を有していて,有機系絶縁層を主体とした先願明細書の多層配線基板とは基本構成を異にするのであって,周知例1及び2に係る発明の技術分野と先願明細書に記載された発明の技術分野とは大きく相違するから,当業者が周知例1及び2に係る発明を先願明細書に記載された発明に適用することは非常に困難である。
(イ) 先願明細書の多層配線基板の配線層の厚みは10μm程度であると推測されるところ,周知例1及び2の多層配線基板の配線層の厚みは0.1μm程度である。配線層の厚みが0.1μm程度であると,強度が小さいために,転写シートを用いて配線層を形成すると,転写シートを基板から引き剥がす際に基板に転写した配線パターンが変形,破損する蓋然性が高いから,当業者が,周知例1及び2に係る技術を,転写シートを用いて配線層を形成する先願明細書に記載された発明に適用することは考えられない。
(ウ) 転写シート上の配線層が押圧される絶縁層が未硬化であると,絶縁層と配線層との密着強度が不十分である場合が多く,転写シートの引き剥がしの際に配線層が転写シートと共に未硬化の絶縁層から剥離するおそれがあるという考えから,転写法を用いる場合には,特開平10-79578号公報(甲11)や特開平7-(),, 297522号公報 甲12 に記載されているように 転写ごとに絶縁層を加熱硬化させることが本願発明の出願当時における技術常識であった。周知例1及び2に係る技術は,転写法と何ら関係がないものであるから,周知例1及び2に係る技術における積層体の一括硬化という概念だけを転写法に組み合わせて,本願発明と先願明細書に記載された発明とを実質同一であると判断することは,出願当時における当業者の技術常識に大きく反する。
(エ) 特開平8-250826号公報(甲13)や特開平9-55568号公報(甲14)には,積層体を一括加熱する技術を採用すると,配線の高密度化が不可能となったり,又は,熱によって反りが発生し,複数の配線層間の接続信頼性の低下を招くことが記載されている。先願明細書に記載された発明は,微細な配線ピッチで形成された複数の配線層を高い接続信頼性で電気的に接続することが重要なのであるから,高密度化が不可能であって,かつ,接続信頼性の低下を招く周知例1及び2に係る技術を,先願明細書に記載された発明に転用することは,当業者であれば通常考えない。
(オ) したがって,周知例1及び2に係る周知技術を勘案して,相違点bに係る構成が 「実質的な相違点とはいえない」とした審決の判断は,誤りである。 ,。
ウ 相違点bに係る構成と本願発明の課題との関係について審決は 「相違点bに係る構成は,上記周知技術を勘案すれば 「回路の超微細 ,,化,精密化の要求に適用することができる多層配線基板の製造方法を提供する」という本願発明の課題を解決する具体化手段における微差にすぎず,実質的な相違点とはいえない 」と判断した。。
絶縁層に配線回路層が形成された転写シートを密着させると同時に,積層圧着して加熱し完全硬化させた後に転写シートをはがすという工程を繰り返すと,加熱の回数が層ごとに異なるから,各絶縁層の収縮割合が相違し,各層間の位置関係にずれが生じ 「回路の超微細化,精密化」の達成が困難になるのであって,相違点b ,に係る構成は,本願発明の課題の解決に大きく影響を及ぼす。
したがって,審決の上記判断は,誤りである。
2 被告の反論(1) 取消事由1(相違点aについての判断の誤り)に対してア 先願明細書の段落【0009 【0041】は,基板上に配線層を形成す 】,るに当たり,エッチング加工に代えて転写法を採用する技術的意義,課題について記載したものであって,先願明細書は,離型性支持板の表面に形成される導電性配線パターンをエッチング加工することを必ずしも排除していない。
先願明細書に記載された発明は,ビアホールを有する絶縁層からなる配線基板上の金属層をエッチング加工して配線層を形成することを排除しているが,その理由は,エッチング液等によって絶縁層やビアホール導体の特性が劣化するという本願発明と同様の課題を解決するためである。そうすると,離型性支持板上の導電性配線パターンと基板上に形成される配線層とが同等のパターニング精度が要求され,かつ,一般的に従来のエッチング加工の精度が不十分であるから 「めっきにより,形成された導電性配線パターンであることが好ましい (先願明細書の段落【00 」16 )ものであるとしても,離型性支持板の表面に形成される導電性配線パター 】ンをエッチング加工する場合において,上記課題を解決するためにエッチング加工に代えて転写法を採用する先願明細書に記載された発明の効果,優位性が失われるわけではない。しかも,ビアホール及び絶縁層を有しない離型性支持板上での配線パターン形成においては,上記のような課題がないから,導電性配線パターンを形成する際に離型性支持板上に予め形成した金属層をエッチング加工することを避けなければならないともいえない。
イ 以上のように 「先願明細書記載の発明は,エッチングによって導電性配線 ,パターンを形成することを排除しているものではない 」とした審決の認定に誤り 。
はなく,これを前提に 「相違点aに係る構成は,先願明細書に明示した記載はな ,いが実質的に記載されている事項というべきである 」とした審決の判断に誤りは 。
ない。
(2) 取消事由2(相違点bについての判断の誤り)に対してア 周知技術の認定について(ア) 先願明細書には,段落【0029】に記載されているように,本願発明の配線層と同様のビアホールを形成した熱効果性樹脂絶縁層からなる配線層をこれとは異なる他の基板とともに積層した多層配線基板の製造方法が記載されている上,本願明細書には,配線層からなる多層配線基板が,さらに他の基板に積層又は搭載されることが排除されているとの記載も示唆もないから,本願発明の各工程を具備する多層配線基板の製造方法は,各工程によって製造される多層配線基板が,さらにセラミック基板等の基板に積層又は搭載される工程を含むことを排除していない。
(イ) そして,周知例1及び2には,単一の配線層を複数積層圧着して全体を一括加熱硬化する工程を具備する多層配線基板の製造方法が記載されているから 多,「層配線基板の製造方法において,配線回路層と熱硬化性有機樹脂を含有する絶縁層とからなる半硬化状態の単一の配線層を複数積層圧着して,その積層された積層体全体を加熱して完全に硬化することは ・・・本願出願前に周知の技術である 」 ,。
とした審決の認定に誤りはない。
イ 先願明細書と周知技術との組合せについて(ア) 先願明細書に記載された発明も,周知例1及び2に係る技術も,本願発明と同様に,熱硬化性有機樹脂を含有する絶縁層と配線回路層からなる配線層を複数積層する工程を含む多層配線基板の製造方法に係るものであるから,同一の技術分野に属する。
,,, (イ) 先願明細書に記載された発明は 絶縁層や配線回路層の厚さ したがって配線層の厚さについて何らの限定もない。また,審決は,周知例1及び2により,多層配線基板の製造方法において,複数の配線層を一括して積層加熱することが周知の技術であると認定したのであって,配線層が転写法によって形成されるか否かは,審決が認定した周知技術の内容に直接関係しないことである。
仮に先願明細書の多層配線基板の配線層が周知例1及び2の多層配線基板の配線層よりも厚かったとしても,転写法によって形成することのできるより厚い配線層が,周知例1及び2記載の周知技術,すなわち一括して積層加熱する多層配線基板の製造方法に適していないということはできない。
(ウ) したがって,周知例1及び2に係る技術を,転写シートを用いて配線層を形成する先願明細書に記載された発明に適用することは容易であるから,周知例1及び2に係る周知技術を勘案して,相違点bに係る構成が 「実質的な相違点とは ,いえない 」とした審決の判断に誤りはない。 。
ウ 相違点bに係る構成と本願発明の課題との関係について1回の積層ごとに加熱し完全硬化させる逐次積層方式が,下層の配線層ほど繰り返して加熱されることにより信頼性が低下するという欠点を有することは,周知の技術事項であり,また,本願発明のような一括して積層加熱する方式が,配線層の位置合わせが困難であるという欠点を有することは,特開平6-268381号公報(乙3)に記載されているように,周知の技術事項であったから 「回路の超微,細化,精密化」を達成する上で,熱効果性有機樹脂を含有する絶縁層を一括して積層加熱するか,1回の積層ごとに加熱し完全硬化させるかは,配線層の層数や層構成を勘案して,当業者が適宜決定すべき設計的事項である。
したがって 「相違点bに係る構成は ・・・ 回路の超微細化,精密化の要求に ,,「適用することができる多層配線基板の製造方法を提供する」という本願発明の課題を解決する具体化手段における微差にすぎず 」とした審決の判断に誤りはない。 ,
当裁判所の判断
1 取消事由1(相違点aについての判断の誤り)について(1) 先願明細書(甲4)には,次の記載がある。
「 発明が解決しようとする課題 ・・・またインナーバイアホールを有する配 【】線基板においても,両面配線基板や多層配線基板の内外層銅箔の配線パターン形成は既存のフォトリソグラフ法を利用したエッチングによるパターン形成であり,その配線ピッチや配線幅等の形成密度は従来のものを超えることができず,電子部品の高密度表面実装,特に最近のチップ部品やLSIベアチップ等の超小型電子部品を高密度で搭載するという要求に限界を生じるという課題が発生してきた (段。」落【0009 )】「前記配線基板の第1から第3の製造方法において,導電性配線パターンが,導電性を備える離型性支持板の表面に形成した配線パターンレジストを介してめっきにより形成された導電性配線パターンであることが好ましい。これにより,従来のエッチングによらず,ファインパターンのレジストが印刷された導電性支持板上にめっきにより配線を形成し,転写する方法であるため,配線ピッチを従来のエッチング法に比較して微細とすることができ,また回路部分にのみ導電体を形成でき,コストの低減に寄与できる (段落【0016 ) 。」】「 発明の効果 ・・・また配線ピッチや配線幅等の形成密度に限界がある既存 【】のフォトリソグラフ法によるエッチングを利用しないので,電子部品の高密度表面実装,特に最近の超小型化されたLSIベアチップを高密度で搭載することができる (段落【0041 ) 。」】(2) 上記(1)によれば,段落【0009】には,エッチングにより配線パターンを形成する場合の課題が記載され,段落【0041】には,エッチングを利用しないことによる効果が記載されている。ところで,段落【0016】には,上記課題を解決するための手段が記載されているが,ここで「好ましい」とされた「前記配線基板の第1から第3の製造方法において,導電性配線パターンが,導電性を備える離型性支持板の表面に形成した配線パターンレジストを介してめっきにより形成された導電性配線パターンである」という構成は 「前記導電性配線パターンが, ,導電性を備える離型性支持板の表面に形成した配線パターンレジストを介してめっきにより形成された導電性配線パターンである請求項1から4のいずれかに記載の配線基板の製造方法 」との請求項6の発明に対応するものである。そして,先願 。
明細書によれば,段落【0016】の「前記配線基板の第1から第3の製造方法」は,請求項1ないし3に対応するものであるが,これらには 「離型性支持板の表,面に形成された導電性配線パターン」と記載されているだけであるから,請求項1ないし3に係る発明の導電性配線パターンは,単に 「離型性支持板の表面に形成 ,された」というにとどまり,これを形成する方法については格別特定していない。
(3) そうであれば,段落【0009】のエッチングにより配線パターンを形成する場合の課題や段落【0041】のエッチングを利用しないことによる効果は,請求項6に係る発明の課題及び効果であるということができるから,導電性配線パターンを形成する方法について格別特定されていない請求項1ないし3に係る発明を理解するに当たっては,エッチングにより配線パターンを形成する場合の課題を解決しなければならないものであるとか,エッチングを利用しないことによる効果を奏するものでなければならないものであるという必要はない。
また,審決が相違点aとして認定したように,先願明細書に記載された発明は,転写シートの表面に配線回路層を形成する方法として 「金属箔を接着した後,こ ,れを回路パターン状に加工して」に限定するという構成を有しないものであるところ,これは,請求項1ないし3に係る発明と変わらないから,先願明細書に記載された発明を理解するに当たっても,エッチングにより配線パターンを形成する場合の課題を解決しなければならないものであるとか,エッチングを利用しないことによる効果を奏するものでなければならないものであるという必要はない。
なお,先願明細書の段落【0016】は,上記(1)のとおり,ファインパターンのレジストが印刷された導電性支持板上にめっきにより配線を形成し,転写することが好ましいとしているが,このことは,エッチング法によっても,離型性支持板の表面に導電性配線パターンを形成することができることを前提としていると考えられるのであって,先願明細書には,転写シートの表面に配線回路層を形成する方法として,ファインパターンのレジストが印刷された導電性支持板上にめっきにより配線を形成し,転写するという方法のみならず,エッチング法によることもできることが実質的に記載されているということができる。
(4) したがって,先願明細書に記載された発明は,エッチングによって導電性配線パターンを形成することを排除しているということはできないのであって 先,「願明細書記載の発明は,エッチングによって導電性配線パターンを形成することを排除しているものではない 」とした審決の認定に誤りはなく,原告主張の取消事 。
由1は,理由がない。
2 取消事由2(相違点bについての判断の誤り)について(1) 周知技術の認定についてア 周知例1及び2について( ,),「〔〕 (ア) 周知例1 特開昭63-274199号公報 甲5 には 従来の技術モジュール用の多層配線基板としては,金属とポリイミドを用いた薄膜多層配線,・・・が知られている。ポリイミドを用いた薄膜多層配線では,第一層目の配線を形成した後に,ポリイミドを塗布,キュアした後に第2層配線を形成するというように,下層から順に上層を形成していく,いわゆる逐次積層法である (1頁右。」下欄5ないし12行目 「 問題点を解決するための手段〕本発明を概説すれば, ),〔本発明は多層配線の形成方法に関する発明であって,配線用導体と絶縁性の耐熱性ポリイミド樹脂からなる多層配線の形成方法において,配線形成されたポリイミドフィルムを一括積層する工程,及び積層体を加熱圧着する工程の各工程を包含することを特徴とする (2頁右上欄1ないし7行目)との記載がある。 。」(イ) 周知例2(特開平3-204994号公報,甲6)には 「 従来の技術〕,〔従来,この種のポリイミド多層配線基板の製造方法は,セラミック基板の上にポリイミド前駆体ワニスを塗布して乾燥を行ない,この塗布膜に露光・現像工程を行ない,ビアホールを上記の塗布膜に形成した後に,このポリイミド前駆体ワニス塗布膜をキュアして,ポリイミド樹脂絶縁層とし,かつこの一連の工程を繰り返すことにより多層配線層の形成を行なっていた (1頁右下欄下15行目ないし2頁左 。」上欄3行目 「 課題を解決するための手段〕本発明のポリイミド多層配線基板の ),〔,, 製造方法は セラミック基板上にポリイミド多層配線基板を形成する工程においてプラスチックフィルム上に感光性ポリイミド前駆体ワニスを塗布・乾燥し,このプラスチックフィルム上の塗布膜のままで塗布膜にビアホール及び金配線を形成し,その後にプラスチックフィルムをポリイミドワニス膜から剥離し,この金配線を有するポリイミドワニス膜を積層し,その後にポリイミド積層膜と基板とを重ね加圧状態でキュアすることにより構成される (2頁左上欄16行目ないし右上欄7 。」行目)との記載がある。
,, (), (ウ) なお 周知例1については 特開平8-250826号公報 甲13 に「また,薄膜多層配線基板を形成する別の方法として,予め導体配線が形成されたポリイミドフィルムを一括に積層し,スルーホール部を熱圧着する方法が,特開昭63-274199号公報に開示されている。この方法は工程を短縮する上で効果が大きいが ・・・欠点を有している (段落【0007 )との記載が,特開平 ,。 」】9-55568号公報(甲14)に 「また,特開昭63-274199号公報に ,記載されているように,配線を備えるポリイミドシートをセラミック基板上で位置あわせして積層し,一括して加熱圧着することによりポリイミド・セラミック多層配線基板を得ることもできる。この方法は,スループット時間を短縮する上で効果が大きい。しかし・・・問題が生じる(段落【0009 )との記載がある。 。」】イ 上記アの記載によれば,従来,ポリイミド(本願発明でいう「熱硬化性樹脂を含有する絶縁層」に相当する )を用いた多層配線基板の製造方法として,配線 。
を形成したポリイミド樹脂絶縁層を一層ごとにキュア(硬化)した後に,逐次積層,,, して多層配線を形成する方法が存在していたところ 周知例1及び2は いずれも配線を形成したポリイミド樹脂絶縁層を複数積層した後に,加熱,加圧によりキュア(硬化)して多層配線を形成する方法を開示するものである。
そうであれば,配線回路層と熱硬化性有機樹脂を含有する絶縁層とからなる半硬化状態の単一の配線層を複数積層圧着して,その積層された積層体全体を加熱して完全に硬化することは,本願発明の出願前に既に周知の技術であったということができる。
ウ 原告は,周知例1及び2の多層配線基板は,セラミック配線基板上に複数の有機系絶縁層を積層した構成を有しているから,少なくともセラミック配線基板の形成時と有機系絶縁層の形成時の2回にわたって硬化する工程を経ているのであり,全体を一括して硬化する本願発明とは異なると主張する。
確かに,周知例1には 「更にこの多層配線フイルム9をセラミック基板10に ,搭載し,はんだ11によりLSI12と接続し,多層配線基板を完成させる (3。」頁左上欄17ないし19行目)との記載があり,周知例2にも,上記ア(イ)のとおり 「セラミック基板上にポリイミド多層配線基板を形成する」との記載がある。 ,,,, しかし セラミック基板が予め硬化されたものであるとしても 周知例1及び2がいずれも,配線を形成したポリイミド樹脂絶縁層を複数積層した後に,加熱,加圧によりキュア(硬化)して多層配線を形成する方法を開示するものである以上,配線回路層と熱硬化性有機樹脂を含有する絶縁層とからなる半硬化状態の単一の配線層を複数積層圧着して,その積層された積層体全体を加熱して完全に硬化することが本願発明の出願前に既に周知の技術であったとの上記認定を左右するものではない。
また,本願発明に係る請求項1は「上記積層体全体を加熱して完全に硬化する ,工程」としているのであって,基板を含めた全体を最後に一括して硬化することについては格別規定していないから,周知例1及び2の多層配線基板を形成する方法が,本願発明と異なるということはできない。なお,上記ア(ウ)の記載によれば,周知例1は 「薄膜多層配線基板を形成する 「ポリイミド・セラミック多層配線 ,」 ,基板を得る」と紹介されているから,周知例1は 「基板」全体を一括して熱圧着 ,する方法として当業者に認識されていたということができるのであり,そうであるとすれば,全体を一括して硬化する本願発明と異なるものではない。
エ また,原告は,基板を含めた積層体全体を最後に完全硬化する技術は,周知例1に記載されているとしても,周知例2には記載されていないから,当該技術は公知技術にすぎないと主張する。
しかし,審決は 「多層配線基板の製造方法において,配線回路層と熱硬化性有 ,機樹脂を含有する絶縁層とからなる半硬化状態の単一の配線層を複数積層圧着して,その積層された積層体全体を加熱して完全に硬化すること」が本願出願前に周知の技術であると認定したものであって,その積層された積層体のほかに,基板を含めた全体を加熱して完全に硬化することまでもが周知の技術であると認定したわけではない(なお,上記ウのとおり,本願発明も,基板を含めた全体を最後に一括して硬化することについては格別規定していない 。。)オ したがって 「多層配線基板の製造方法において,配線回路層と熱硬化性有 ,機樹脂を含有する絶縁層とからなる半硬化状態の単一の配線層を複数積層圧着して,その積層された積層体全体を加熱して完全に硬化することは ・・・本願出願,前に周知の技術である 」とした審決の認定に,誤りはない。 。
(2) 先願明細書と周知技術との組合せについてア 原告は,周知例1及び2に係る発明の技術分野と先願明細書に記載された発明の技術分野とは大きく相違するから,当業者が周知例1及び2に係る発明を先願明細書に記載された発明に適用することは非常に困難であると主張する。
しかし,周知例1及び2に係る発明も,先願明細書に記載された発明も,共に,熱硬化性樹脂を含有する絶縁層を用いた多層配線基板の製造方法に係る技術分野に属するものであって,技術分野が相違するわけではない。原告の上記主張は,異なる前提に基づくものであって,採用することができない。
イ また,原告は,周知例1及び2の多層配線基板の配線層の厚みは0.1μm程度であって,強度が小さいために,転写シートを用いて配線層を形成すると,転写シートを基板から引き剥がす際に基板に転写した配線パターンが変形,破損する蓋然性が高いから,周知例1及び2に係る技術を,転写シートを用いて配線層を形成する先願明細書に記載された発明に適用することは考えられないと主張する。
しかし,配線回路層と熱硬化性有機樹脂を含有する絶縁層とからなる半硬化状態の単一の配線層を複数積層圧着して,その積層された積層体全体を加熱して完全に硬化することは,上記(1)イのとおり,本願発明の出願前に既に周知の技術であったということができるのであるから,周知例1及び2の多層配線基板の配線層の厚みがどのようなものであるとしても,上記の周知技術を,転写シートを用いて配線層を形成する先願明細書に記載された発明に適用することに格別の妨げがあるということはできない。原告の主張は,採用することができない。
ウ さらに,原告は,転写法を用いる場合には,転写ごとに絶縁層を加熱,硬化させることが本願発明の出願当時における技術常識であったから,周知例1及び2に係る技術における積層体の一括硬化という概念だけを転写法に組み合わせて,本願発明と先願明細書に記載された発明とを実質同一であると判断することは,出願当時における当業者の技術常識に大きく反すると主張する。
(ア) 特開平10-79578号公報(甲11)には 「 1)まず,図5(a) ,(において,Aはガラスエポキシ等の基材100上に,銅からなる下層配線101と下層ランド102,および下層ランド102上に銅からなるビアポスト103a,103bが形成された基板である。Bは半硬化状態のエポキシ樹脂シート105で。,,, ある CはSUS等の転写板110上に銅からなる上層配線111a 111b111cが形成されたものである (2)次に,図5(b)は,前記A,B,Cの 。
各部材をアライメントした状態で,熱プレス装置(図示せず)を用い加圧および加熱して接着させる ・・・また加熱によりエポキシ樹脂膜105aは完全硬化す 。
る (段落【0005 【0006 )との記載があり,特開平7-297522 。」】,】号公報(甲12)には 「0.3mm厚さのステンレススチール板の上に4フッ化 ,ポリエチレン樹脂12を30μm厚さにコーティングした転写板11を準備し,この上にエポキシ樹脂系の導電ペーストを100μmの線幅,100μmスペースの微細配線を含む所要のパターン状にスクリーン印刷を行って配線パターン12を形成した ・・・乾燥後,100μm厚さのガラスエポキシ樹脂板(絶縁基材14) 。
を置き,その上に前記転写板11で使用したポリ4フッ化エチレン樹脂をコーティングしたステンレス板を当て板15として置き,170℃,1時間加熱加圧プレスしたところ所定の配線パターンが形成された片面配線のガラスエポキシ配線板16(14)が得られた (段落【0023 )との記載がある。 。」】(イ) 上記(ア)の記載からは,転写板の配線層を転写する際に半硬化状態のエポキシ樹脂が加熱,加圧により硬化されるということが理解されるというにとどまるから,転写法を用いる場合において,転写ごとに絶縁層を加熱,硬化させることが本願発明の出願当時における技術常識であったとは認めることができない。なお,原,, 告の主張するように 転写シート上の配線層が押圧される絶縁層が未硬化であると絶縁層と配線層との密着強度が不十分である場合が多く,転写シートの引き剥がしの際に配線層が転写シートと共に未硬化の絶縁層から剥離するおそれがあるという考えがあったとしても,そうであれば,当業者としては,転写シートの引き剥がしの際に支障を来すことがないよう,絶縁層をある程度硬化しておくなど,適宜工夫するものであると考えられるから,転写ごとに絶縁層を加熱,硬化させることが本願発明の出願当時における技術常識であったとまではいうことができない。
そして,本願発明は,転写シートの引き剥がしの際に配線層が転写シートと共に未硬化の絶縁層から剥離することがないようにするために,格別の工程を採用しているわけではなく,単に 「積層体全体を加熱して完全に硬化する工程」を採用し ,ているだけであるから,先願明細書に記載された発明においても,積層体全体を加熱して完全に硬化するという上記の周知技術を採用することに格別の妨げはない。
原告の上記主張は,採用の限りでない。
エ さらにまた,原告は,先願明細書に記載された発明は,微細な配線ピッチで形成された複数の配線層を高い接続信頼性で電気的に接続することが重要なのであるから,高密度化が不可能であって,かつ,接続信頼性の低下を招く周知例1及び2に係る技術を,先願明細書に記載された発明に転用することは,当業者であれば通常考えないと主張する。
(ア) 特開平8-250826号公報(甲13)には 「また,薄膜多層配線基 ,板を形成する別の方法として,予め導体配線が形成されたポリイミドフィルムを一括に積層し,スルーホール部を熱圧着する方法が,特開昭63-274199号公。,, 報に開示されている この方法は工程を短縮する上で効果が大きいが 積層工程で導体配線が形成されたポリイミドフィルム同士を位置精度よく積層することは非常に困難であり,このため上下層間を導体接続するためのスルーホール,またそれを配線に引き出すためのランドが大きくなり,配線の高密度化が不可能という欠点を有している (段落【0007 )との記載があり,特開平9-55568号公報 。」】(甲14)には 「また,特開昭63-274199号公報に記載されているよう ,に,配線を備えるポリイミドシートをセラミック基板上で位置あわせして積層し,一括して加熱圧着することによりポリイミド・セラミック多層配線基板を得ることもできる。この方法は,スループット時間を短縮する上で効果が大きい。しかし,この方法では,積層プロセスで薄いポリイミドシートを取り扱うことになり,精度よく位置あわせを行うことが困難である上に,極めて膨大な数の層間の接続点を一括して接続させなければならず,十分な接続信頼性を得ることができなかった。特に,熱可塑性ポリイミドからなる絶縁膜の表面に導体配線を形成する場合には,熱可塑性ポリイミドの熱膨張が導体のそれに比べてはるかに大きいため,配線のパターン化に際して,シートがカールしてしまうという問題が生じる (段落【00。」09 )との記載がある。】(イ) 上記(ア)の記載は,導体配線が形成されたポリイミドフィルムないしポリイ,。 ミドシートを積層し 一括して加熱圧着する際に生じる問題を説明したものであるところで,先願明細書には 「 発明の実施の形態 ・・・114は接着性絶縁体 ,【 】であり,アラミド不織布にエポキシを含浸したアラミドエポキシプリプレグが好ましい (段落【0025 )と記載されているように,絶縁体として,ポリイミド 。」】フィルムないしポリイミドシートではないものが挙げられているから,ポリイミドフィルムないしポリイミドシートを積層し,一括して加熱圧着する際に問題が生じるとしても,積層体全体を加熱して完全に硬化するという上記の周知技術を,アラミド不織布にエポキシを含浸したアラミドエポキシプリプレグを用いる先願明細書に記載された発明に採用した場合に,同様の問題が生じるということはできない。
しかも,本願発明は,微細な配線ピッチで形成された複数の配線層を高い接続信頼性で電気的に接続するために,格別の工程を採用しているわけではなく,単に,「積層体全体を加熱して完全に硬化する工程」を採用しているだけであるから,先願明細書に記載された発明においても,積層体全体を加熱して完全に硬化するという上記の周知技術を採用することに格別の妨げはない。
原告の上記主張は,採用の限りでない。
オ したがって,相違点bに係る構成について,周知例1及び2に係る周知技術を勘案して判断した審決に誤りはない。
(3) 相違点bに係る構成と本願発明の課題との関係について(,), , , ア 本願明細書 甲2 甲3 には 積層体全体を加熱 硬化することについて「このようにして作製した一単位の配線層を複数形成し,これを積層圧着した後,加熱処理によって全体を完全硬化することにより,図1に示したような多層配線基板を作製することができる (甲3,8頁 「なお,上記の工程において,絶縁 。」),層中に熱硬化性有機樹脂を含む場合には,すべてを積層した後に,全体を加熱等の手段によって完全に硬化すればよい (甲3,11頁6〜8行 「上記と同様に 。」) ,して,厚さ125μmの7枚の配線層を準備し,両面に配線回路層を転写した配線層上に,積層し50kg/cm の圧力で圧着し,200℃で1時間加熱して完全2硬化させて多層配線基板を作製した (甲2,5頁段落【0038 「その後, 。」】 ),この配線回路層の表面に,上記と同様にして,絶縁性スラリーの塗布による絶縁層の形成,およびビアホールの形成,導体ペーストの充填,さらに配線回路層の転写による形成を繰り返し行い,全体を加熱して完全に硬化することによって,合計8層の配線回路層を有し,各層間にビアホール導体が形成された多層配線基板を作製することができた (甲3,12頁)との記載があるところ,上記記載は,単に, 。」積層体全体を加熱,硬化することを説明しているにすぎず,そのようにすることの技術的意義については何ら説明していない。
イ しかも,本願出願当初の明細書(甲2)には 「・・・なお,上記の工程に ,おいて,絶縁層中に熱硬化性樹脂を含む場合には (b)の絶縁層形成後,あるい ,はすべてを積層した後に,全体を加熱等の手段によって完全に硬化すればよい 」。
(段落【0033 )との記載があり,積層体全体を加熱,硬化させる方法のほか 】に,絶縁層を形成するごとに加熱,硬化させる方法を採用することもできることが明記されている。このことに照らしても,先願明細書に記載された発明における硬化工程が複数回であるが故に,回路の超微細化,精密化が困難になるほどの各層間の位置関係のずれが生じるということはできない。
ウ したがって,前記周知技術があることにかんがみれば,先願明細書に記載された発明において,相違点bに係る本願発明の構成のようにすることは,当業者が先願明細書に記載された発明を実施するに当たり,適宜に採用できる具体化手段の微差であるといわなければならないのであって 相違点bに係る構成は ・・・ 回 ,「,「路の超微細化,精密化の要求に適用することができる多層配線基板の製造方法を提供する」という本願発明の課題を解決する具体化手段における微差にすぎず 」と,した審決の判断に誤りはない。
(4) 以上のように 「相違点bに係る構成は ・・・実質的な相違点とはいえな ,,。」,,。 い とした審決の判断に誤りはないから原告主張の取消事由2は 理由がない
結論
,,, 以上のとおりであって 原告の主張する決定取消事由は すべて理由がないから原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 高野輝久
裁判官 佐藤達文