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関連審決 異議1997-73453
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成18ワ29554特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成18ネ10038損害賠償請求控訴事件 判例 特許
平成17ワ 785特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成17ワ8874不当利得返還請求事件 平成17ワ15841不当利得返還請求事件 判例 特許
平成17ワ12207特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
関連ワード 発明者 /  発明行為 /  有用性 /  方法の発明 /  製造方法 /  新規性 /  共同研究 /  29条1項3号 /  頒布された刊行物 /  複写物 /  新規性喪失(新規性の喪失) /  新規性喪失の例外(喪失の例外) /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  周知技術 /  慣用技術 /  公知技術 /  技術的範囲 /  出願公開 /  同一の発明 /  試行錯誤 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  優先権 /  実施料相当額 /  ライセンス /  薬事法 /  存続期間 /  特許出願日 /  製造承認 /  参酌 /  置換 /  容易に想到(容易想到性) /  意識的除外(意識的に除外) /  禁反言 /  業として実施 /  特許発明 /  実施 /  権原 /  先使用権(先使用) /  加工 /  交換 /  構成要件 /  構成要件充足性 /  方法の使用 /  業として /  侵害 /  損害額 /  生産能力 /  実施料 /  不法行為(民法709条) /  同意 /  実施権 /  通常実施権 /  実施の事業 /  知らないで /  事業の準備 /  発明の範囲 /  実施又は準備(実施または準備) /  目的の範囲 /  誤記の訂正 /  請求の範囲 /  拡張 /  変更 /  訂正明細書 /  合理的な理由 / 
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事件 平成 16年 (ワ) 8682号 損害賠償請求事件
原告 味の素株式会社
同訴訟代理人弁護士増井和夫
同 橋口尚幸
被告 中外製薬株式会社
同訴訟代理人弁護士牧野利秋
同 福田親男
同 尾崎英男
同 那須健人
同丸山隆
同訴訟代理人弁理士 江尻ひろ子
同補佐人弁理士 深澤憲広
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2006/03/22
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
被告は,原告に対し,30億円及びこれに対する平成16年5月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,生理活性タンパク質の製造法についての特許権を有する原告が,被告が生理活性タンパク質である遺伝子組換えヒトエリスロポエチン(以下,エリスロポエチンを「 」という )及び遺伝子組換えヒト顆粒球コロニー刺 EPO。
激因子(以下,顆粒球コロニー刺激因子を「 」という )の製造に用い G-CSF。
た方法(以下,遺伝子組換えヒト の製造方法を「被告方法1」と,遺伝 EPO子組換えヒト の製造方法を「被告方法2」という )が,前記特許権に G-CSF 。
係る発明の技術的範囲に属するとして,被告に対し,民法709条に基づき,一部請求として,特許権侵害による損害(遅延損害金を含む )の賠償を求め。
た事案である。
1 前提となる事実(括弧内に証拠を掲示したもの以外は,当事者間に争いがない)。
?当事者原告は,食品,医薬品等を製造・販売する会社である。
被告は,医薬品の製造,売買等を業とする会社である。
? 原告の特許権原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,特許請求の範囲請求項1の特許発明を「本件発明」と,本件特許権に係る特許を「本件特許」という。また,本件特許に係る明細書(甲2。別紙特許公報参照 )を「本件明。
細書」という )を有している。なお,原告は,本件特許についての特許異 。
(,「」。 ) 議の申立手続 平成9年異議第73453号 以下 本件異議手続 というにおいて訂正を請求(以下「本件訂正請求」という )したところ,平成1 。
4年6月18日,上記訂正を認め(以下「本件訂正」という ,本件特許。)を維持する旨の決定(以下「本件異議決定」という )がなされ,同年7月 。
8日,同決定は確定した(甲1ないし3 。)発明の名称 生理活性タンパク質の製造法特許番号 第2576200号出願年月日 昭和63年7月8日(1988年3月9日の日本国における特許出願に基づく優先権主張。以下,優先権主張の基礎となる日本国における特許出願の出願日を「本件優先権主張日」という )。
登録年月日 平成8年11月7日特許請求の範囲請求項1(本件訂正前)「生理活性タンパク質をコードする遺伝子及びジヒドロ葉酸還元酵素(以下 とする )遺伝子を発現可能な状態で有するプラスミドをチ dhfr。
CHO ャイニーズ・ハムスターオバリージヒドロ葉酸還元酵素欠損株()細胞に形質転換して得られた浮遊攪拌培養に適した細胞を浮遊 dhfr-攪拌培養し,培養液中に目的生理活性タンパク質を生産させ,そして目的生理活性タンパク質を取得することを特徴とする生理活性タンパク質の製造法 」。
(。 。 ) 特許請求の範囲請求項1 本件訂正後 訂正部分には下線を付してある「生理活性タンパク質をコードする遺伝子及びジヒドロ葉酸還元酵素(以下 とする )遺伝子を発現可能な状態で有するプラスミドを元 dhfr。
来付着性であるチャイニーズ・ハムスターオバリージヒドロ葉酸還元酵素欠損株( )細胞に予め形質転換して得られた形質転換細胞 CHO dhfr-を培地中に懸濁させ,浮遊攪拌培養を継代して行うことにより浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立し,当該浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を浮遊攪拌培養し,培養液中に目的生理活性タンパク質を生産させ,そして目的生理活性タンパク質を取得することを特徴とする生理活性タンパク質の製造法 」。
なお,本件訂正により,本件明細書の2頁左欄33ないし39行は,次のとおり訂正された(訂正部分には下線を付してある 。。)「即ち,本発明は生理活性タンパク質をコードする遺伝子及び 遺伝dhfr子を発現可能な状態で有するプラスミドを元来付着性である 細胞CHO dhfr-に予め形質転換して得られた形質転換細胞を培地中に懸濁させ,浮遊攪拌培養を継代して行うことにより浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立し,当該浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を浮遊攪拌培養し,培養液中に目的生理活性タンパク質を生産させ,そして目的生理活性タンパク質を取得することを特徴とする生理活性タンパク質の製造法である 」。
? 被告の行為ア 遺伝子組換えヒト 製剤の製造販売EPO被告は,商品名を「エポジン」とする遺伝子組換えヒト 製剤を製EPO造し,平成2年から販売している。
「エポジン」の製剤の形態としては,注射器に封入されたエポジン注シリンジ750,エポジン注シリンジ1500,エポジン注シリンジ3000,エポジン注シリンジ6000,エポジン注シリンジ9000及びエポジン注シリンジ12000の6種類並びにアンプルに封入されたエポジン注アンプル750,エポジン注アンプル1500,エポジン注アンプル3000,エポジン注アンプル6000,エポジン注アンプル9000,エポジン注アンプル12000の6種類,合計12種類がある。
「エポジン」の有効成分である遺伝子組換えヒト は,生理活性タEPOンパク質であり,骨髄中の赤芽球系前駆細胞に働き,赤血球への分化と増殖を促すという生理活性を有するタンパク質である。
「エポジン」については,昭和63年12月に薬事法(平成14年法律第96号による改正前のもの。以下同じ )14条1項の承認の申請がさ 。
れ,平成2年1月に同項の承認がされた。
イ 遺伝子組換えヒト 製剤の製造販売 G-CSF被告は,商品名を「ノイトロジン」とする遺伝子組換えヒト 製G-CSF剤を製造し,平成3年12月から販売している。
「ノイトロジン」の製剤の形態としては,ノイトロジン注 ?,ノイ50トロジン注 ?及びノイトロジン注 ?の3種類がある。 100 250「ノイトロジン」の有効成分である遺伝子組換えヒト は,生理G-CSF活性タンパク質であり,造血幹細胞の末梢血中への動員という生理活性を有するタンパク質である。
「ノイトロジン」については,平成元年12月に薬事法14条1項の承認の申請がされ,平成3年9月に同項の承認がされた。
? 被告方法1及び被告方法2の概要(, 「 」 。) 被告方法1及び被告方法2 以下 これらを併せて 被告方法 というは,いずれもタンパク質を遺伝子組換え技術によって製造する方法である。
ア 遺伝子工学によるタンパク質の製造工程の概要タンパク質は,細胞内で生合成される物質であり,20種類のアミノ酸が固有の配列で鎖状の構造を形成した高分子である。アミノ酸の配列は,がコードしており,細胞は,核の中の遺伝子に含まれている の DNA DNAコードに従って,対応するアミノ酸配列を有するタンパク質を細胞内で生成する。
遺伝子工学によるタンパク質の製造技術は,ヒトにとって有用なタンパク質をコードする を,大腸菌, 細胞等の細胞に外来 とし DNA CHO DNAて組み込むことにより,これらの細胞にヒトにとって有用な所望のタンパク質を生合成させる技術である。タンパク質をコードする を組み込DNAむ大腸菌, 細胞等の細胞を,宿主細胞という。 CHO遺伝子工学によるタンパク質の製造工程は,種細胞株の樹立の工程,培養工程及び精製工程の各工程に区分される。各工程の概要は,次の( )なアいし( )のとおりである。
ウ( ) 種細胞株の樹立の工程ア種細胞株の樹立の工程は,タンパク質を大量に生産するための細胞のもとになる種細胞株を造る工程である。
種細胞株の樹立の工程は, 又は をコードする を取 EPO G-CSF DNA得し,これを 細胞(宿主細胞)に組み込んだ形質転換細胞を作製 CHOし,マスター・セル・バンク( )及びマスター・ワーキング・セ MCBル・バンク( )として樹立し,凍結保存するまでの工程である。 MWCBマスター・セル・バンク( )とは,遺伝子組換え技術によって MCB製造される医薬品の品質を保証するために厚生省(以下,省庁名,官職名は,いずれも当時のものである )の指針によって定義される細胞株 。
であり,すべての製造用細胞( )のもとになる,樹立された遺 MWCB伝子組換え細胞(形質転換細胞)である。あらかじめ一定の継代培養の範囲内で遺伝子が安定であることが確認されており,通常,複数のアンプルに分注して液体窒素中に凍結保存され,必要に応じて を調MWCB製するために解凍される。
マスター・ワーキング・セル・バンク( )とは, を一定 MWCB MCB条件下でさらに増殖させ,複数のアンプルに分注して保存された細胞であり,遺伝子組換えタンパク質の製造に直接使用される。通常,複数のアンプルに分注して液体窒素中に凍結保存され,製造時には,解凍して増殖させ,タンク型バイオリアクターで培養して目的とするタンパク質を回収する。
( ) 培養工程イ培養工程は,タンパク質の大量生産のために,種細胞株を増殖・培養する工程である。タンパク質を大量生産する必要に応じて, からMCB作製された (1本のバイアルには の培養液に約 × 個 MWCB 1ml 1 107の種細胞が含まれ,凍結保存されている )を解凍し,細胞が所定の量 。
になるまで増殖させる。実際の製造工程では, のスピナーフラス 100mlコでの培養から始めて徐々にスケールアップし,最終的には の培2500l養タンクで細胞を培養する。これによって大量のタンパク質を製造することができる所望の量の細胞が得られる。
細胞は,培養中に,目的のタンパク質を細胞内で生合成し,培養液中に分泌する。目的タンパク質を回収するためには,目的のタンパク質を含有した培養液から細胞を除き,培養液から目的のタンパク質を精製する。
( ) 精製工程ウ精製工程は,回収した培養液に含まれる不純物を除去して,純度の高い目的タンパク質を得る工程である。
イ 種細胞株の樹立の工程の概要タンパク質の大量生産のために増殖される細胞のもとになる種細胞株は,宿主細胞である 細胞に,宿主細胞自体がもともと有していない CHO外来の を組み込んで作製される。このように,宿主細胞を,外来の DNAによりタンパク質を産生できる形質を有する細胞に転換することを DNA形質転換という。形質転換細胞(種細胞株)の取得に至るプロセスは,次のとおりである。
( ) 目的のタンパク質をコードする の入手アDNA形質転換細胞(種細胞株)を得るためには,まず,目的のタンパク質のアミノ酸配列をコードする を入手することが必要である。 DNA( ) 発現ベクターの作製イ目的のタンパク質をコードする を宿主細胞に組み込むための手 DNADNA 段として用いられるのがプラスミドである プラスミドは 環状の 。,であり,細胞内において自己増殖し,遺伝により子孫に伝達される,すなわち,細胞分裂の際に分裂後の各細胞にプラスミドのコピーが作られるという特性を有する。目的のタンパク質の をプラスミドに組み DNA込んで宿主細胞に挿入すると,その外来 を含むプラスミドが宿主 DNA細胞内で増殖し,又は宿主細胞の染色体に組み込まれ,遺伝することが可能となる。このような外来 を組み込み,タンパク質を産生でき DNAるようにしたプラスミドを一般に発現ベクターという。
( ) 細胞の形質転換ウCHO dhfr-被告方法で用いられる宿主細胞は, (チャイニーズハムスター CHO卵巣)細胞である。被告が使用した細胞は,昭和43年に と CHO Kaoによって樹立された 細胞株をγ線照射等により処理して Puck CHO-K1得られた突然変異株で,ジヒドロ葉酸還元酵素( )を作る遺伝子がdhfr()。 , 欠失した 細胞株 細胞株 である 細胞株は CHO CHO dhfr CHO dhfr--。, 昭和55年に と によって樹立された 細胞は Urlaub Chasin CHO dhfr-を作る遺伝子が欠失しているために,核酸を含まない培地(非核酸 dhfr培地)では生育できないという特性がある。そこで, 細胞株CHO dhfr-を宿主細胞とし,目的のタンパク質をコードする 及び をコー DNA dhfrDNA CHO ドする をプラスミドに組み込んだ発現ベクターを用いて細胞の形質転換を行うと,形質転換に成功した細胞は, を自 dhfr dhfr-ら産生するようになるので,非核酸培地でも生育することができる。
形質転換の処理を行った細胞を非核酸培地で培養すると,形質転換に成功した 細胞だけが非核酸培地中で増殖できるから,形質転 CHO dhfr-換された細胞のみを選択的に取得することができる。
このような利点があるので, 細胞は,昭和55年の樹立当 CHO dhfr-初から,遺伝子組換え技術において宿主細胞としての利用が検討されてきた。
( ) メトトレキセートによる遺伝子増幅と種細胞株の選択エメトトレキセート( )は,の酵素活性を妨げる作用をする MTX dhfr。,, 物質である 形質転換された 細胞は を産生しているが CHO dhfr dhfr-を含む培地で培養すると, の活性が阻害されるので,増殖が MTX dhfr困難になる。
しかし,形質転換された 細胞を濃度の低い を含む培 CHO dhfr MTX-地で培養すると,そのうちのある細胞では,染色体に組み込まれた発現ベクターがコピーを作って増幅し,より多くの を産生する能力を dhfr-取得するようになる この性質を利用すると 形質転換された 。,CHO dhfr細胞を順次 濃度を上昇させた培地で培養することにより,より MTX耐性の強い形質転換細胞を選択的に取得することが可能になる。 MTX培地の 濃度を徐々に上げて細胞を培養することにより,各段階で MTX発現ベクターが増幅して必要な 耐性を備えた細胞だけが生き残 MTXり,そうでない細胞は死滅するからである。
そして, 耐性を取得した形質転換細胞は,細胞内に組み込んだ MTXDNA 発現ベクターの数が増えたことによって 目的とするタンパク質の ,も増えるので,目的とするタンパク質の産生能が向上する。すなわち,形質転換された 細胞を順次 濃度を上昇させた培地で培 CHO dhfr MTX-養することにより, 耐性がより強く,かつ,目的タンパク質の産 MTX生能がより高い形質転換細胞を選択的に取得することが可能になる。
この方法により目的とするタンパク質の産生能が高い細胞を選択する場合の実験方法は,次のとおりである。
まず,所定濃度の を含む培地に形質転換細胞を極めて薄い濃度 MTXで含有させた培養液をシャーレに入れて ℃で培養する。この状態で 37は,シャーレの培地の中に1つずつの細胞が分離して点在している。
時間の経過とともに,シャーレの中の一部の細胞は 耐性を獲得MTXMTX し,細胞分裂を繰り返して増殖し,コロニーを形成する。他方,耐性を獲得できない細胞は増殖できず,死滅する。
コロニーを形成した細胞をシャーレから取り出し,1段階上の濃度のを含む培地に,極めて薄い濃度で培養し,再び1つの細胞から増 MTX殖してコロニーを形成する細胞を選択する。この方法による培養及び選択を繰り返すことにより,目的タンパク質の産生能の高い細胞を選択的に得ることができる。
( ) 単一の遺伝子構造を有する種細胞株の取得オ細胞をプラスミドで形質転換する処理においては,プラス CHO dhfr-ミドが 細胞の遺伝子のどの位置に組み込まれるかはコントロ CHO dhfr-ールできないため,形質転換した細胞によって遺伝子の構造が異なって。, , いる可能性がある そこで 医薬品となるタンパク質を産生する細胞は同じ遺伝子構造の細胞となるようにするため,形質転換細胞を取得する,, , 工程で 最終的に1つの 目的タンパク質の産生能の高い細胞を選択しこれを種細胞とする。そして,これを増殖し,種細胞株を樹立して,マスター・セル・バンク()を確立し,後のタンパク質の大量生産 MCBのための細胞培養に使用する。
2争点? 被告方法は,本件発明の構成要件を充足するか。
? 被告は,先使用による通常実施権(特許法79条)を有するか。
? 本件特許(請求項1に係る部分に限る )は,特許無効審判により無効に 。
されるべきものか。
ア 本件発明は,新規性を欠くか。
イ 本件発明は,進歩性を欠くか。
ウ 本件特許(請求項1に係る部分に限る )は,特許を受けようとする発 。
明の構成に欠くことができない事項が記載されていないとして,平成2年法律第30号による改正前の特許法(以下「平成2年改正前特許法」という )36条4項2号に違反するか。 。
? 損害の発生の有無及びその額3 争点に関する当事者の主張? 争点?(構成要件充足性)について(原告の主張)ア 構成要件の分説本件発明は,次の構成要件に分説することができる(以下,分説した各構成要件をその符号に従い「構成要件a」のように表記する 。。)a 生理活性タンパク質をコードする遺伝子及びジヒドロ葉酸還元酵素(以下 とする )遺伝子を発現可能な状態で有するプラスミドを dhfr。
b 元来付着性であるチャイニーズ・ハムスターオバリージヒドロ葉酸還元酵素欠損株( )細胞に予め形質転換して得られた CHO dhfr-c 形質転換細胞を培地中に懸濁させ,浮遊攪拌培養を継代して行うことにより浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立し,d 当該浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を浮遊攪拌培養し,培養液中に目的生理活性タンパク質を生産させ,そして目的生理活性タンパク質を取得することを特徴とするe 生理活性タンパク質の製造法。
イ 被告方法1( ) 被告方法1についての被告の主張(後記「 被告の主張 」イ)は,ア()次のa及びbの点を除き,争わない。
,。 a 各工程の確立された時期に関する記載については 認否を留保する先使用権の成否を除き,方法確立時期は構成要件充足性の判断に影響しない。
b 別紙被告方法1説明書2?エの「種細胞株 α をまず CHO DN2-3 3馴化用培地で29日間浮遊培養し」との記載は,この29日間の浮遊攪拌培養と同別紙2?ウの付着培養との間に,浮遊攪拌培養に関する何らの処理もされなかったという趣旨であれば,争う。別紙被告方法2説明書の記載も参照すると,同別紙2?エ記載の浮遊攪拌培養の前に,浮遊攪拌培養のための前処理があったと推定され,その前処理期間も,浮遊攪拌培養に適合させるための期間に算入すべきである。
なお, は,被告と被告の提携先であるアメリカ合衆国マサチ DN2-3Genetics ューセッツ州のジェネティクス・インスティテュート社(「Institute, Inc. GI EPO cDNA 」。「 」 。), 以下 社 という が 自ら開発したヒト( をコードする遺伝子)と遺伝子を有するプラスミド(発現 EPO dhfrベクター)に付した名称である。
また,形質転換して得られた 細胞が元来付着性であること CHO dhfr-は,この細胞本来の性質である。
( ) 上記( )の被告方法1を,請求項1との対比に便利なように記載すイアれば,次のようになる。
a’ をコードする遺伝子及びジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子を発 EPO現可能な状態で有するプラスミド をDN2-3b’ 元来付着性であるチャイニーズ・ハムスターオバリージヒドロ葉酸還元酵素欠損株( )細胞に予め形質転換して得られた CHO dhfr-c’ 形質転換細胞 αを培地中に懸濁させ,スピナーフラス DN2-3 3コを用いて浮遊攪拌培養を継代して行うことによりタンクにおける浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立し,d’ 当該浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞をタンクにおいて浮遊攪EPO 拌培養し,血清,インスリン,抗生物質を含有する培養液中にを分泌させ, をカラムクロマトグラフィーにより取得する EPOe’ の製造法。EPOしたがって,被告方法1は,本件発明の構成要件を充足し,本件発明の技術的範囲に属する。
ウ 被告方法2( ) 被告方法2についての被告の主張(後記「 被告の主張 」ウ)につア()いては,次のa及びbの点を除き,争わない。
,。 a 各工程の確立された時期に関する記載については 認否を留保する先使用権の成否を除き,方法確立時期は構成要件充足性の判断に影響しない。
b 被告の 製造確認申請書(乙21)に記載された発現ベクタ G-CSFーは, であり,これは,被告の出願に係る特公平6-571 pV2DR156号公報(甲9。以下「被告公報」という )にも記載されている 。
ベクターである。被告公報に開示された の構築経路と公表 pV2DR1資料によれば, というベクターが のもとになってい pBRV-2 pV2DR1ることがわかるが, は,被告と東京大学医科学研究所との共 pBRV-2同研究の成果として 「ヒト顆粒球コロニー活性化因子の染色体遺伝 ,子構造と2つの (甲25。以下「甲25文献」という )に mRNA」。
発表されている。他方, の医薬品製造承認申請書別紙?(乙 G-CSF10の3)には,発現ベクターとして が記載されており, pV3DR1同申請書別紙?3頁の図3によれば, に含まれる の pV3DR1 G-CSFは, というベクターに由来する。しかし, と cDNA pBRV-3 pV3DR1,, pBRV-3 G-CSF とのいずれについても 被告による の開発開始前後にこれを公表した文献は全く見出されない。甲25文献の576頁の図2の の配列から, における の は 塩 pBRV-2 pV2DR1 G-CSF cDNA 712基からなると認められ,他方,上記申請書別紙?の4頁「断片2」の記載から, における の は 塩基からなると pV3DR1 G-CSF cDNA 705認められるから,2つのベクター間では, の が少なく G-CSF cDNAとも 塩基分異なることがわかる。 7これらの事情からみて,上記製造確認申請書(乙21)の日付(昭和62年3月9日)から製造承認の申請日である平成元年12月27日までの間に,発現ベクターを とする開発がされたことに pV3DR1なり,別紙被告方法2説明書3?に記載された,昭和61年から昭和62年2月までの間に大量生産用の細胞を確立したとの時期の記載は,事実に反することになる。
( ) 上記( )の被告方法2を,請求項1との対比に便利なように記載すイアれば,次のようになる。
a” ヒト をコードする遺伝子及びジヒドロ葉酸還元酵素遺伝 G-CSF子を発現可能な状態で有するプラスミド をpV3DR1b” 元来付着性であるチャイニーズ・ハムスターオバリージヒドロ葉酸還元酵素欠損株( )細胞 に予め形質転換して得 CHO dhfr DXB11-られたc” 形質転換細胞を培地中に懸濁させ,スピナーフラスコを用いて浮遊攪拌培養を継代して行うことによりタンクにおける浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立し,d” 当該浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞をタンクにおいて浮遊攪G-CSF 拌培養し 血清 インスリン抗生剤を含有する培養液中にヒト ,, ,を分泌させ,そしてヒト をカラムクロマトグラフィーにより G-CSF取得するe” ヒト の製造法。G-CSFしたがって,被告方法2は,本件発明の技術的範囲に属する。
構成要件b充足性被告は,構成要件bの「元来付着性である」の意義を争い,被告方法が本件発明の技術的範囲に属しない旨主張するので,以下 「元来付着性」,の意義,被告方法との対比について,敷衍して主張する。
( ) 「元来付着性である」の意義アa 細胞の浮遊化困難性 CHO dhfr-「元来付着性である」とは,以下のとおり, 細胞が容器 CHO dhfr-の壁面などに付着して増殖する性質が強く,培養液に浮遊化させると増殖しないという一般的性質を有することを意味する。
細胞の浮遊化が困難であることは,次の各文献に記載さ CHO dhfr-れているとおりである。
? 「構造解析のための蛋白質作成技術?-動物細胞を用いた蛋白質の大量生産系- (甲7。以下「甲7文献」という )は,製品の 」。
,, 製造工程の説明ではないが 細胞を用いた大量発現について CHOCHO 「」, 筆者らの経験を踏まえて 説明した報告であり 被告における細胞の取扱経験に基づく認識を示している。
甲7文献の著者であるP1は,当時,被告の探索研究所に所属していた。
甲7文献には,次のとおりの記載がある。
「 細胞で樹立した安定高発現細胞株は,ローラーボトルで CHO容易に培養が可能である。回転数は, 程度が適当であまり 0.5rpm回転数を高くすると播き込み時に細胞がローラーボトルに上手く接着できないことがある。細胞がローラーボトル一面に増えたところで,培養液を無血清培地に交換する。 細胞は,無血清化馴化 CHOASF104 CHO-SFM の作業をしなくても無血清培地 (味の素)やGIBCO CHO ( )などの培地で培養可能である。無血清培地中でも細胞は増殖し,長く培養すると浮遊細胞も出現する 」。
ローラーボトルとは,付着培養(単層培養)に使用される装置の-一つである。甲7文献には,形質転換した 細胞(これがCHO dhfr型であることは甲7文献の最初に記載されている )を長く培養す。
-ると 初めて浮遊細胞も出現することが記載されており ,, CHO dhfr細胞が本来的に付着性であり,浮遊性に変えることが容易にはできないという細胞の性質をよく示している。
? 「 が生まれるまで (甲6。以下「甲6文献」という ) G-CSF」。
は,被告における 開発の経験を解説した報告である。 G-CSF甲6文献の著者であるP2は,当時,被告の中央研究所研開推進部に所属していた。同人は,昭和37年,被告に入社し,昭和55年新薬研第2研究室長としてP3らとともにヒト の純化にG-CSF成功し,昭和61年から 開発プロジェクトチームリーダ rhG-CSFーとなった。
甲6文献には,次のとおりの記載がある。
「ヒト を導入した 細胞は本来は培養器壁に G-CSF cDNA rCHO接着しモノレイヤーで増殖するので,表面積の大小がスケールアップしていく上での の1つとなっていた。そこでこの limiting factor細胞を用いたサスペンジョンカルチャー方式による大容量のタンクを用いる生産が望ましかった。しかしこの方式による大量培養にはいくつかの技術的に解決または乗り越えなければならない壁があった。1つは先に述べた壁への接着細胞をどうサスペンジョンカルチャーでも十分生育できるように適応させられるかという点であり,もう1つは実験室レベルの培養スケールでの細胞が果たして大容量タンク培養でスケールアップに伴う種々の問題をクリアして行けるかどうかという点であった。当時,エリスロポエチンの生産はすでにサスペンジョン化した 細胞により実施されていたが,ノウ rCHOハウも含め一般的には高度の技術の部類に属していた。サスペンジョン方式による大量培養を確立するためには,サスペンジョン化に伴う細胞の変化やダメージを回避し,一定の を産生するrhG-CSF安全な生産株を樹立し,さらに大量培養に予想されるいくつかの問題を乗り越える必要があった (18頁)。」上記記載から,甲6文献の筆者であるP2が,浮遊攪拌培養に適応した細胞の樹立が容易ではないことを述べているのは明らかであり,いかに苦労を伴ったかについては 「接着 細胞について ,CHOも壁から細胞をはがした後,根気よくサスペンジョンカルチャーを繰り返し,最終的によく適合し増殖する細胞をクローニングし 」,(19頁)という記述ににじみ出ている。
甲6文献が大量生産の困難性について論じている部分を含むとしても,基本的な浮遊化工程の困難性を説明していることは明白である。
? 「日経バイオテク」1986年5月5日号(甲17。以下「甲17文献」という )には,次のとおりの記載がある。 。
「, () キリンビールは チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞CHOを宿主とした遺伝子操作によって,糖鎖の結合した を生産しEPOている。大腸菌と比べ,動物細胞の遺伝子操作技術はまだ確立しておらず,特に組換え動物細胞の大量培養技術が実用化の鍵を握っている。キリンビールがどこまで,この技術をものにしているかが,臨床試験の進展の決め手となるだろう 」。
上記記載は,被告と の開発の先陣争いをしていたキリンビ EPOールの動向に関する報道である。上記記載のとおり,本件優先権主張日のわずか2年前の時点で,組換え動物細胞の大量培養技術は,未だ確立していないというのが常識であった。
? 「日経バイオビジネス」2001年9月号(甲18。以下「甲18文献」という )には,次のとおりの記載がある。 。
「容量の大きいタンク培養は効率がよいが,スケールアップに伴い,製造条件の再検討が必要となる。微量で効果を発揮する一方,生産スピードが求められる医薬品の製造(治験でも相当量の供給が必要になった)では,培地,攪拌,精製などで実験室レベルの条件をそのまま移行できるローラーボトルをシステムとして高度に自動化する方が得策と,キリンは判断した。アムジェン社もこの製造方法を採用したので,全世界 %以上のエリスロポエチン製剤がキ 70リンのローラーボトルシステムで製造されていることになる 」。
浮遊攪拌培養法が可能なら,効率に優れていることは明らかであるのに,キリンとアムジェンが採用しなかったことは,当時,キリン-アムジェン社が組換え 細胞を浮遊攪拌培養する可能 CHO dhfr-性を見出していなかったことを意味する。
? 「動物細胞大量培養による有用物質生産の現状 (甲19。以下」「甲19文献」という )には,次のとおりの記載がある。 。
「元来,単層培養に適している細胞を,浮遊培養に させるadaptことはかなり困難なことであり,細胞の増殖度もあまり良くない。
近年,単層培養法に している細胞を大量に培養する方法と adaptして,多段式の培養装置を用いたり,円筒式の培養瓶を回転させて表面積の増加を図るか,あるいはマイクロキャリヤー・ビーズの表面に細胞を単層に増殖させ,このビーズを浮遊培養系で培養する方法などがとられている。マイクロキャリヤー・ビーズ用の培養装置も市販されている (159頁7ないし13行) 。」すなわち,本件優先権主張日当時,付着性の細胞の培養については,単層培養のままでその効率を高める方向が主流であり,浮遊培養化することは困難であるとの技術常識が存在したことがわかる。
「」 (。「 」 ? 遺伝子導入を利用した物質生産 甲20 以下 甲20文献という )には,次のとおりの記載がある。 。
「組換え 細胞および 細胞は,いずれも接着依存性の C127 CHO細胞で浮遊化はできない。これらの細胞は,構成的にヒト あIFN-rるいはヒト を産生しているので,これらの組換え細胞から, IL-2有用タンパク質を効率良く大量に得るには,細胞の産生能を損なわずにできるだけ長期間維持できる条件を見つけることが必要である。細胞に導入された外来遺伝子は,染色体に組込まれた場合でもその安定性を欠く傾向にあることが知られており,それは,継代をくり返すことにより明らかになるので,細胞を増殖させずに長期間維持( )させることは,構成的にタンパク質を産生する組換 Agingえ細胞を用いた物質産生の重要なポイントとなろう 」。
甲20文献は,本件優先権主張日の1年前の文献であるが,組換え 細胞は浮遊化できないと考えられていたことがわか CHO dhfr-る。
? 次世代プロジェクトにおける動物細胞研究 甲22 以下 甲 「」 (。「22文献」という )は,通商産業省の指導により昭和56年から 。
平成元年まで9年間続いた「次世代プロジェクト」における動物細胞の研究に関する平成3年の時点での評価と報告である。
甲22文献には 「次世代プロジェクト」に採り上げられた6つ ,のテーマ(@細胞の増殖制御要因に関する基礎的研究,A無血清培地,培養工学等を活用した最適培養法による工業的物質生産法,B高密度培養法,無血清培地開発等を主体とする工業的物質生産法,C浮遊細胞系,準浮遊細胞系を用いた工業的物質生産法,D骨髄由来細胞を用いた工業的物質生産法,E上皮細胞由来細胞を用いた工業的物質生産法)が記載されている。これらのうち,@は基礎研究である。AないしEは工業的物質生産法のテーマであるが,原告が担当したBを含め,AないしDの4件は,本来浮遊性の細胞についての研究であった。Eのみが上皮細胞由来細胞,すなわち,付着性の細胞を用いた工業的物質生産法の研究であったが 「マイクロキ,ャリア粒子への効率良い付着法の開発」を行っている。
このように,産官学の英知を集めたプロジェクトにおいても,1980年代にあっては,付着性動物細胞を浮遊化する工業的生産法は,テーマに採り上げられることすらなかったのである。
? 「動物細胞培養の実際 (甲28の1。以下「甲28の1文献」 」という )には 「浮遊培養法への順化」として 「浮遊培養法で細 。, ,胞が増殖できるようになるかは細胞株( )によって大きく cell lines。」, () 異なる と明記されており継代培養の確立された株細胞cell lineであっても,浮遊攪拌培養法に適合するか否かの予測は困難であることが示されている。
また 「大規模装置を用いての動物細胞培養の実際 (甲28の ,」adapt 2 以下 甲28の2文献 という には 単層培養の系に 。「 」 。),「している細胞を浮遊培養の系に移し,長期間維持することは通常とても困難なことであり,まれに成功しても細胞の増殖度は余り良くない 」と記載されており,付着培養から浮遊攪拌培養への移行が 。
本質的に困難であることが示されている。
b 本件発明の発明者らが特殊な 細胞を対象としたとの被告 CHO dhfr-主張(後記「 被告の主張 」エ( )c)について ()ア被告は,本件発明における培養条件を根拠に,本件発明の発明者らが特殊な 細胞,すなわち,浮遊攪拌培養が困難な特殊な細 CHO dhfr-胞を対象としたと主張する。
しかし,被告が指摘する点は,通常の細胞培養技術における条件の幅の中で,原告が最初に選択した条件と,被告及び 社が適用したGI条件が異なることを意味するにすぎない。本件発明における培養条件が,被告から見ると, 細胞の浮遊化につき最適の条件では CHO dhfr-なかったかもしれないが,そのような事実は,本件発明の価値を損なうものではなく,また,その技術的範囲を限定するものでもない。
さらに,本件異議手続において「元来付着性である」という要件を付加した趣旨は,浮遊化された形質転換 細胞を得る方法と CHO dhfr-して,形質転換前の細胞を浮遊化させて形質転換する場合と,形質転換後に浮遊化させる場合とがあるところ,後者の場合に限定するというものであり,付着性の程度を限定する意味はない。
( ) 被告方法1イ被告方法1では,種細胞株 α は,当初,培養皿/フラ CHO DN2-3 3CHO DN2-3 3 スコで付着培養されたというのであるから,種細胞株 αは,付着性であり,このことから,種細胞株 α が元来付 CHO DN2-3 3,。 着性の 細胞を形質転換したものであることは 明らかである CHO dhfr-被告は,培養開始後2ないし4日目に倍加時間48時間を記録していると主張するが,4ないし9日目にかけては,倍加時間が100時間以上と逆に悪化しており,この細胞が浮遊攪拌培養で安定に増殖できるようになったとはいい難い。この細胞が浮遊攪拌培養でも十分に増殖可能と客観的に判断できるのは,早くとも20日目以降,あるいは,被告が記述するように,倍加時間が24時間になった時期に当たる29日目以降となる。
種細胞株 α の培養の状況を示した別紙培養経過図1に CHO DN2-3 3は示されていないが,増殖の安定性とともに生産の安定性が確認された時点で を作製することとなるから,実際に浮遊適応が完了したの MCBは の作製時である48日目と考えられる。より以前の段階で増殖 MCB及び生産の安定性が確認されていたのであれば,48日目まで のMCB作製を待つ必要はない。
後記( )のとおり,被告方法2では,別紙培養経過図2に示された浮ウ遊攪拌培養の前に,24日間の浮遊攪拌培養が行われていた。このような予備的な浮遊化工程を行った後での 細胞 の培養経過を示す CHO 657別紙培養経過図2は, を生産する種細胞株 α の培養 EPO CHO DN2-3 3経過を示す別紙培養経過図1と極めてよく似ている。
この事実を考慮すると,被告方法1においても,別紙培養経過図1に記載されていない前段階の浮遊攪拌培養工程が存在する可能性が高い。
しかも, と とで,使用した形質転換細胞の浮遊化の困難性 G-CSF EPOに特に差があると考える理由もなく, の開発経緯を参考にして EPOの開発が行われた以上, においても,付着培養から本格的 G-CSF EPOな浮遊攪拌培養工程に入る前に,予備的な浮遊化工程があったと考えるのが自然である。
被告の主張によれば, の を作製する工程は, 社で開発 EPO MCB GIされたものである。 社は,被告に提供した の を作製する GI EPO MCB前に, 細胞の一般的な取扱い及び を生成するように形 CHO dhfr EPO-質転換した 細胞の取扱いにつき,相当の経験を集積していた CHO dhfr-ものと推測される。そのような経験を踏まえてなされた特に好ましい結果が 社の作製報告書(乙9,以下「社報告書」という )に記載 GI GI。
されていると理解するのが自然である。
そして,そのような経験を踏まえた作業であったとしても, 作MCB製,すなわち,増殖性と生産性の安定を確認するには,開示されている範囲でも48日間を要しているのである。本件発明では,70日間で浮遊攪拌培養に適した細胞を樹立しており,48日間と70日間の間に実質的な相違はないというべきである。おそらく存在するであろう予備的な浮遊攪拌培養の期間を加えれば,差は全くないといってよい。
( ) 被告方法2ウa 上記( )a?のとおり,甲6文献には 「ヒト を導入ア,G-CSF cDNAした 細胞は本来は培養器壁に接着しモノレイヤーで増殖する」 rCHOとの記載があることからすれば,被告方法1で使用した 細CHO dhfr-胞は,付着性のものであった。
b 被告方法2では, 細胞株と呼ばれる種細胞(形質転換さ CHO 657れた 細胞)を34日間付着培養した後,3日ごとに継代し CHO dhfr-て18日間浮遊攪拌培養を行っている。
このように,形質転換後も,34日間の付着培養を経た後に,浮遊攪拌培養が適用されていることから, 生産の種細胞が,元来 G-CSF付着性の 細胞を形質転換したものであることは明らかであ CHO dhfr-る。
また,被告方法2では,18日間の浮遊攪拌培養を経た細胞をいったん凍結保存し,解凍後5日間付着培養した上で,6日間浮遊攪拌培l 養している。その後,47日間の浮遊攪拌培養を行い,さらに,40の培養タンクでの9日間の培養を経て,増殖が順調であることを確かめて を作製している。 MCBMCB そうすると,浮遊攪拌培養を通算80日間行って,ようやくを作製し得る増殖性と生産性の安定した細胞を樹立することができたのである。
このように,通算80日間の浮遊攪拌培養の継代により の作MCB製に到達したというのは,本件発明における浮遊攪拌培養に適した細胞樹立の期間と同等である。
また,上記18日間の浮遊攪拌培養及び6日間の浮遊攪拌培養については,どの程度の増殖性が見られたのかのデータは開示されておらず,その内容が確認できない。さらに,上記47日間の浮遊攪拌培養についてのデータ(別紙培養経過図2)も,少なくとも前半部は増殖性のデータが不揃いであり,特に18日目から21日目までの培養では,倍加時間が100時間以上になっているから,到底安定した浮遊攪拌培養が実現されているとは認められない。
( ) 上記( )及び( )のとおり,被告方法1においても,被告方法2にエイウおいても,本件発明と実質的に異ならない手数を経て,浮遊攪拌培養に適した細胞を樹立しているのであるから,被告方法1及び被告方法2に使用されている 細胞が,通常の 細胞と異なり,浮 CHO dhfr CHO dhfr--遊攪拌培養に適合しているということはできない。
そして,本件発明の構成要件bの「元来付着性」が 細胞のCHO dhfr-,, 一般的性質をいうものであることは 前記( )記載のとおりであるからア被告方法に使用されている 細胞はいずれも構成要件bの 元 CHO dhfr-,「来付着性である」を充足する。
構成要件c充足性被告は,構成要件cの「浮遊攪拌培養を継代して行う」との記載は,単に培養を続けることを意味するだけで,発明の手段にならず,本件特許の実施例に記載された初期細胞濃度と培地への核酸の添加が本件発明の必須要件となるから,これらの要件において継代することに限定解釈されるべきであると主張する。
しかし,被告方法1及び被告方法2も,浮遊攪拌培養を継代して行うことにより,最終的に大量生産のための浮遊攪拌培養に適した細胞を樹立している 「継代」して培養することは,まさに,浮遊化のための手段とな 。
ることが明らかである。また,本件特許の実施例に記載された初期細胞濃度と培地への核酸の添加は,請求項1に記載されていないのであって,単なる実施例の条件にすぎないことが明らかであるから,上記限定解釈がされるべきであるとの主張は誤りである。
カ 「被告方法1及び被告方法2のが本件優先権主張日前に樹立され MCBていること (後記「 被告の主張 」カ)について 」( ),,「」「 」 ( ) 本件発明は 方法の発明であり エポジン 及び ノイトロジンアの製造販売は,本件優先権主張日より後に開始され,これらの製造に際し,本件特許の存続期間中,日々特許方法が実施されてきたのである。
特許出願前(本件優先権主張日前)に本件発明の特徴的構成の工程が完了していたとの被告主張は,先使用権が成立しない限り,抗弁とならない。
( ) 被告は,被告方法において,大量生産に使用する種細胞株が,本件イ優先権主張日より前に 及び として作製されており,本件 MCB MWCB優先権主張日後に も も新たに作製したことはないと主張 MCB MWCBする。
この点について検討すると, 用のは昭和60年12月4日 EPO MCBに, 用の は同月18日に,それぞれ 社において各20 EPO MWCB GI0本作製され,その中から各60本が,昭和61年2月ころ,被告に移転された。すなわち,被告が所有した 及び は,各60本 MCB MWCBである。
被告の 規模の培養タンク運転では,1回ごとに の凍結 1600 MWCB lバイアルを溶解し, の培地に懸濁してスピナーフラスコを用いた 100ml浮遊攪拌培養を行う。 を解凍して浮遊攪拌培養を開始する際の MWCB2.4 10 /ml 100ml 細胞密度は,約 × 個 である。この細胞密度の培養液5を用意するには, × 個の細胞が必要となる。この量の細胞は, 2.4 107として供給されるから, に含まれる細胞が, 社報告書 MWCB MWCB GI記載のとおり, × 個 バイアルであれば,46本の が必要 510/ MWCB5となる。
もっとも, 作製のために培養された細胞の全個数を計算し, MWCB6それを一切の無駄なく200本のバイアルに分けたとすると, ×6.4 106個になるから, の のバイアル当たりの細胞量は, × EPO MWCB 6.4 10個と推測される。 に含まれる細胞が × 個とする 社報告 MWCB 5 10 GI5書の記載は誤りであり,誤記が桁数の数値だけと推測すると × 個5106となるが,最も細胞数が大きくなる場合について検討すると, の100ml培養を1回開始するごとに,4本のを消費することになる。 MWCBそして,被告は,昭和61年6月から平成3年3月までの間に,少な, くとも 用に14回の 培養タンクの運転を実施しているから EPO 1600l同年2月に14回目の 培養タンクの運転を実施した時点で, 1600lは底をつくことになる。 MWCBしたがって,これ以降に実施されている 運転は,第2回目の 1600l,, , MWCB EPO の製造が実施されていたと考えざるを得ないし また はMWCB 発売後,売上げを伸ばしているから,第3回目又はそれ以上のl の製造が実施されていることが推測される 実際には は 。, , MWCB 1600培養以外にも,培養条件の検討,定期的な細胞のバリデーションなどの使用目的でも必要であり,上記試算以上の が消費されているも MWCBのと推測される。
そうすると, 及び について,昭和60年12月の1回だ MCB MWCBけしか製造しなかったとの被告の主張は,事実に反するものであると強く疑われる。 についても, と同様,1回だけの作製という MCB MWCBのは,疑わしい。
(被告の主張)ア 構成要件の分説本件発明は,次の構成要件に分説することができる(以下,分説した各構成要件をその符号に従い「構成要件A」のように表記する 。。)A 生理活性タンパク質をコードする遺伝子及びジヒドロ葉酸還元酵素(以下 とする )遺伝子を発現可能な状態で有するプラスミドを元 dhfr。
来付着性であるチャイニーズ・ハムスターオバリージヒドロ葉酸還元酵素欠損株( )細胞に予め形質転換して得られた形質転換細胞 CHO dhfr-を培地中に懸濁させ,B 浮遊攪拌培養を継代して行うことにより浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立し,C 当該浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を浮遊攪拌培養し,培養液中に目的生理活性タンパク質を生産させ,そして目的生理活性タンパク質を取得することを特徴とするD 生理活性タンパク質の製造法。
イ 被告による の製造方法EPO被告方法1は,別紙被告方法1説明書記載のとおりである。
ウ 被告による の製造方法G-CSF被告方法2は,別紙被告方法2説明書記載のとおりである。
構成要件A充足性CHO 構成要件Aの「元来付着性である」とは,原告が主張するような細胞の一般的性質ではなく,特殊な浮遊攪拌培養困難性を意味する dhfr-のであり,その点で,被告方法は,本件発明の技術的範囲に属しない。
( ) 「元来付着性である」の意義アa 本件発明の技術的課題(本件特許の前提となる浮遊化困難性)本件異議手続においては,動物細胞を浮遊培養に適した細胞に馴化させることについての周知慣用技術が引用されていた。原告は,これに対し 「元来付着性である」の文言を付加する本件訂正請求を行っ ,た。
原告は,本件訂正請求に先立ち,平成14年6月5日付回答書(乙3の23)において,次のように主張した。
「訂正した後の本件発明は,付着性の形質転換細胞から安定な浮遊攪拌培養に適した細胞を樹立することは容易ではない,という本件出願時の常識があった中で,付着性の遺伝子組換え細胞に該当する『生理活性タンパク質をコードする遺伝子及び遺伝子を発現可能な dhfr状態で有しているプラスミドを細胞に形質転換して得られ CHO dhfr-た細胞』について,70日間(10週間)という極めて長期間にわたる継代培養を試みることによって,初めて浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立することに成功し,該形質転換細胞を浮遊攪拌培養して生理活性タンパク質を多量に製造することができる方法を確立した発明であります 」。
原告は,上記のような「本件出願時の常識」を前提とし,本件発明の 形質転換細胞は浮遊攪拌培養に適するように馴化するこ CHO dhfr-とが極めて困難な細胞であることを前提として,本件訂正請求を行ったのである。
b 本件発明の技術的課題は実際には存在しなかったこと実際には, 細胞の浮遊化には,本件発明に特許性を認め CHO dhfr-る前提となるような困難性は存在しない。
すなわち, 社は,本件優先権主張日の2年以上前である昭和6 GI-0年12月 の大量生産のために浮遊培養に馴化した ,EPO CHO dhfrMCB G-CSF 細胞を として樹立した また 被告は 昭和62年1月 。, , ,の大量生産のために浮遊培養に馴化した 細胞を とし CHO dhfr MCB-て樹立した。被告方法においては, 細胞が特別の困難なく CHO dhfr-浮遊培養に馴化され, 及び が作製された。 MCB MWCBまた,スイスのチューリッヒ大学のインターフェロン,フランスのサノフィ社のインターロイキン2なども,本件優先権主張日より前に細胞の浮遊培養によって,それぞれの目的とするタンパク CHO dhfr-質が安定的に生産されていた。さらに,アメリカ合衆国のジェネンテック社は, 細胞の浮遊培養により を大量生産し,本件 CHO dhfr tPA-優先権主張日より前に実際に医薬品として製造承認を受けていた。
c 本件発明の発明者らは特殊な 細胞を対象としたこと CHO dhfr-本件発明の発明者らが実際に使用した 細胞は,理由は不 CHO dhfr-明であるが,被告の細胞とは異なり,実際に浮遊培養が困難な細胞であったようである。本件発明の発明者らが本件明細書の実施例1と同CHO じ内容の実験結果を報告した「浮遊培養における遺伝子組換え細胞による赤芽球分化誘導因子( )の大規模産生 (乙14。以 EDF」下「乙14文献」という)には,実施例1に対応する実験データだ 。
けでなく,浮遊培養できなかった実験のデータも示されている。同文献の図1は,3種類の培地で 細胞の培養を開始した直後の培養 CHO状態を示しており,同図の黒丸のデータは,本件明細書の実施例1に対応し,浮遊培養開始後8日で細胞密度が × 個 になって 8.8 10 /ml4いて,当初の世代時間が192時間以上であったことを示している。
これに対し,白丸と白角のデータは,浮遊培養開始後1日で細胞が死滅してしまったことを示している。
このデータによると,本件発明の発明者らの 細胞は,従CHO dhfr-来技術の培養法による通常の培地や条件では浮遊化が困難な特殊な細胞であるが,実施例1に相当する実験によって浮遊培養 CHO dhfr-化に成功し,本件特許の出願を行うに至ったと推測される。
乙14文献によると,本件発明の発明者らの 細胞を浮遊CHO dhfr-化できた要因は,培地への核酸の添加であった。上記図1の実験で,黒丸のデータは,実施例1で使用された,核酸を ? 添加した培10 /ml地で培養したデータであり,白丸のデータは,核酸を添加していない点でのみこれと異なるデータである。乙14文献には,浮遊化した細胞が成長するためには核酸が必要である旨が明確に述べられている。
本件発明は,このような特殊な細胞を対象とし,培地に CHO dhfr-核酸を添加することによって浮遊化がされたにもかかわらず,本件特許では,あたかも 細胞一般が本件発明の発明者らの細胞と CHO dhfr-同様に浮遊化困難で,本件発明の発明者らが 細胞の浮遊化 CHO dhfr-を初めて発見し,それによって発明の特許性が認められているかのように扱われている。
本件発明の発明者らが特殊な細胞を対象としたことは, CHO dhfr-核酸の添加以外の培養条件の設定からもうかがえる。
すなわち,本件明細書の実施例では,細胞を浮遊攪拌培養に馴化させるために浮遊培養をするときの初期細胞密度を × 個 とし 410/ml4ており 「発明の詳細な説明」の一般的な記述でも 「出来るだけ低 ,,密度( × 個 )になるように細胞を懸濁し (2頁右欄1な 1-4 10 /ml4」いし2行 「初期細胞濃度は × 個を出来るだけ越えない方 ),410/ml4が望ましい (2頁右欄4ないし5行)との記載がある。これは,細 」胞の浮遊培養化を行う際の常識に反した低い細胞密度である。
一般的には,浮遊培養の際に細胞の密度が低いことは,細胞の生存力を低めるのであり,教科書「組織培養 (乙2)にも 「細胞相互 」,の支持能力を利用するため,細胞濃度をできるだけ高くして培養を始510/ml めるのが 浮遊培養に成功するコツである 少なくとも × 個 ,。
4の濃度から開始することが望ましい 」と記載されている。 。
このような技術常識が存在するにもかかわらず,本件発明の発明者らは,あえて低細胞濃度で培養することを推奨しているのであり,本件発明の発明者らが用いた 細胞は,特殊な性質を有する細 CHO dhfr-胞であったと考えざるを得ない。
d 本件発明は,特殊な浮遊化困難性に基づいて特許性が認められたこと原告は,特許庁に提出した平成14年6月17日付特許異議意見書(乙3の25)において「元来付着性である」の訂正の根拠につい ,て次のように述べている。
「上記訂正後の特許請求の範囲請求項?における 『元来付着性で,ある』という事項は,本件明細書の第3頁第3行〜第7行(特許第2576200号公報の第2頁左欄第8行〜第12行)や本件明細書第16頁第18行〜第17頁第1行(特許第2576200号公報の第4頁右欄第8行〜第11行)に記載されているように,本件発明は,元来付着性であるために,本件出願時の技術レベルでは大量培養が困難であった 細胞から浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を CHO dhfr-樹立することを課題とする発明であること,及び各実施例の方法が全て元来付着性である 細胞から浮遊攪拌培養に適した形質転 CHO dhfr-換細胞を樹立し,培養して生理活性タンパク質を製造している方法であることを根拠としています。それ故,上記事項は,本件明細書に記載した事項の範囲内において請求項?における『 細胞』をCHO dhfr-技術的に限定する事項であって新規事項には該当しませんし,また,請求項?を拡張し,又は変更する事項でもありません 」。
このように,構成要件Aの「元来付着性である」の文言は,本件優先権主張日当時の技術レベルでは浮遊培養に適した細胞に馴化できない 細胞を表現することを意図したものである。 CHO dhfr-また,原告は,上記aのとおり,平成14年6月5日付回答書(乙3の23)において,本件発明について 「70日間(10週間)と ,いう極めて長期間にわたる継代培養を試みることによって,初めて浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立することに成功し」と述べて。「() 」 いる 70日間 10週間 という極めて長期間にわたる継代培養とは,本件明細書の実施例1で,浮遊培養開始直後は世代時間が192時間以上であったものが,10週間をかけて世代時間が48時間になったことを指しており,このように浮遊培養の期間が10週間を要したことは,本件異議決定でも,本件発明の特許性を認める上での重要な理由となっている。
したがって,本件明細書の実施例1のように,従来技術で浮遊化できず,浮遊攪拌培養開始当初の細胞の世代時間が192時間以上で,浮遊培養開始後10週間をかけてようやく世代時間が48時間となって安定化するような細胞が,本件発明にいうところの「元来付着性である」細胞である。
原告は 「元来付着性である」とは, 細胞の一般的性質 , CHO dhfr-であると主張するが,明らかに禁反言に当たるものであり,許されない。
e 原告が 細胞の浮遊化が困難であったことを示すと主張す CHO dhfr-る文献について? 甲6文献について,, , 甲6文献は 被告の研究者が 被告の の開発経緯のうち G-CSF特に「 細胞による工場レベルでの大量培養と精製」と,組換 CHOえ 製品の「安全性と品質保証」について,主に 製品 G-CSF G-CSFのユーザである医師や医学研究者向けに書いた著述で, (ノG-CSFイトロジン)の製造承認がされた平成3年10月に刊行されたものである。
原告は,甲6文献の中の記述を抜粋して,その記述が本件と関係。, , があるかのように主張している しかし 甲6文献の主要な関心はタンクにおける細胞の大量培養の工程である。すなわち,細 1600l胞の大量培養を行うためには,例えば,大型タンクの中で細胞に対し一定かつ適切な濃度の酸素を供給しなければならないという問題があった。つまり,培養タンクをスケールアップして行う大量培養には,実験室レベルでの培養とは全く異なる,クリアすべき問題があったのである。
原告が指摘する甲6文献の19頁の記述は,大型タンクによる培養工程に関する記述である。また,原告が指摘する甲6文献の18頁の記述は,この文献の中で筆者が問題として取り上げている大型タンクによる培養工程に至るための前段階として取り上げられているにすぎない 「組織培養 (乙2)に記載されているように,浮 。」,, 遊化はある程度のコツを必要とすることでもあることから 筆者は動物細胞の培養に関する知識や経験が乏しい医師や研究者に対し,第1段階としては,付着培養した細胞の浮遊化を検討しなければならないことを記載したものと考えられる。しかし,甲6文献の全体を見れば,筆者の関心は細胞の大量培養の工程にあることが明らかである。
さらに,甲6文献において引用文献5)として引用される「遺伝子工学によるリコンビナント造血因子の精製 (乙44)には,被」告が組換え 細胞の浮遊培養による大量培養,大量精製に成功 CHOしたことが記載されているのであり,遅くとも本件優先権主張日前の昭和62年には,細胞の浮遊化のみならず,大量培養に関する課題も既に解決されていたことが報告されているのであるから,原告が甲6文献の記載をもって本件優先権主張日時点の本件発明の困難性を主張するのは,失当である。
原告は 「根気よくサスペンジョンカルチャーを繰り返し」とい ,う甲6文献の表現が甲6文献の筆者らの苦労を表していると主張する。
しかし,甲6文献は,被告方法2に関わった筆者による文献であるから,その記載内容や表現は,実際の細胞の浮遊培養の内容と矛盾して解釈されるものではない。実際の細胞の浮遊培養の内容に照らせば 「根気よく」は,動物細胞の浮遊化について知見の乏しい ,読者を対象にした文献で筆者が用いた一種の修辞であると解するのが相当であり,時間を要する作業であったことを述べるにとどまるものである。
? 甲7文献について甲7文献は,被告方法について記述したものではなく,付着培養であるローラーボトルで無血清培養の実験を行ったことについて述べているものである。原告は,甲7文献中の「長く培養すると,初めて浮遊細胞も出現する」という記述をとらえて, 細胞CHO dhfr-が本来付着性であり,浮遊性に変えることが容易にできないというこの細胞の特質をよく示していると主張する。しかし,甲7文献の当該記載は,ローラーボトルを用いて付着培養をしている場合でも,, 一部に浮遊化した細胞が現れることを述べているにすぎず むしろ細胞には付着しようとする性質とともに,浮遊化しよう CHO dhfr-とする性質も内在していることを示している。
? 甲17文献について昭和61年当時 「大量培養技術」が実用化の鍵であり,工業的 ,レベルの生産規模にスケールアップするために種々の問題をクリアする必要があったのは事実である。大型タンクによる浮遊培養に関しては,上記?のとおり,実験室レベルのスケールでの浮遊培養とは異なる問題があった。しかし,それは細胞の浮遊化の問題ではない。
? 甲18文献について組換え動物細胞の大量培養技術は,浮遊培養に限られるものではない。大型タンクで浮遊培養する方法もあれば,キリンのように小型のローラーボトルを多数用いた生産システムを自動化して効率よく行う方法もある。甲18文献には,大容量のタンク培養は生産効率には優れるがスケールアップに伴い製造条件の再検討が必要になること,他方,ローラーボトル法では生産効率は劣るが実験室レベルの条件をそのまま移行できるので大量化が容易に行え,キリンは生産スピードを考慮してローラーボトル法を採用したことが記載されている。すなわち,どのような方式を開発するかは,各社の開発方針の問題であり,いずれの方式を採用するにしても,スケールアップに伴う困難は,本件発明とは関係がない。
原告は,キリン-アムジェン社が組換え 細胞を浮遊攪 CHO dhfr-拌培養する可能性を見出していなかったと主張する。
しかし,化学工業会第63年会研究発表講演要旨集に掲載された「」 (), 組換え体によるタンパク質医薬品の製造について 乙57 はキリンビールの研究者が の開発経緯を紹介した論文であると EPO,, , ころ 同論文には 遺伝子組換え体動物細胞の培養を行うに当たりローラーボトル方式及びファーメンター(培養タンク)方式を検討した結果,ローラーボトル方式を採用したことが記載されている。
すなわち キリン-アムジェン社にとって ファーメンター方式 大 ,,(規模の浮遊培養)も可能であったのである。
実際,本件優先権主張日前に発行されたキリン-アムジェン社の(), 特許明細書である特表昭61-501627号公報 乙58 には遺伝子と 遺伝子で形質転換された 細胞が浮遊 EPO dhfr CHO dhfr-培養で容易に増殖すること,そして,ローラーボトルで培養する前には,浮遊培養で大量の細胞を取得することが記載されている。さらに,実際の生産においても 「 を解凍後, フラスコによ ,MWCB Tる静置培養,スピナーフラスコ,ファーメンターによる浮遊培養を,,」。 介して 大量のローラーボトルに接種本培養を行った のであるこのように,キリン-アムジェン社が浮遊培養を選択肢の1つとして考慮していたことは明らかであり,ローラーボトル方式を採用したのは, 細胞が浮遊培養できないことによるものではな CHO dhfr-い。
? 甲19文献について甲19文献の筆者は,マイクロキャリヤービーズを用いてヒト腎細胞を培養してウロキナーゼというタンパク質を得ており,ヒト腎細胞の培養に関する説明で「浮遊培養に させることはかなり adapt困難」と述べている。
しかし,ヒト腎細胞は, 細胞のような「すでに継代培 CHO dhfr-養の確立された株細胞」ではなく,ヒトの正常細胞である 「組織。
培養 (乙2)でも 「本法は組織からの初代培養細胞には・・・ 」,適用困難であるが,すでに継代培養の確立された株細胞では ・・,・単層培養から浮遊培養に移してその増殖を継続維持することが可能である (69頁11ないし13行 「本法」は浮遊培養法を指 」。
す )と記載されている。 。
CHO 甲19文献の記述は,継代培養の確立された株細胞である細胞株には当てはまらない。 dhfr-? 甲20文献について甲20文献は,マイクロキャリアー培養によって 細胞やC127細胞を培養したもので,マイクロキャリアー培養を採用した CHO理由の説明として 「接着依存性の細胞で浮遊できない」といった ,記述がある。
しかし,これは,浮遊培養を実際に行った上での結果に基づいてなされた記述ではない。
したがって,この文献の記述をもって実際に 細胞の浮CHO dhfr-遊化が困難であることが示されているとはいえない。しかも,甲2,, 0文献の執筆者であるP4研究員は 本件優先権主張日の時点では公知文献の記載から 「組換え 細胞は浮遊化できる」と ,CHO dhfr-認識したであろうと述べている(乙48 。)? 甲22文献について「」, , 次世代プロジェクト は 困難な問題に取り組むものであってテーマに採り上げられていないことが困難であることを示すものではない。既に実用化されていた技術であれば,テーマに採り上げられなくて当然である。
? 甲28の1文献及び甲28の2文献について原告は,甲28の1文献及び甲28の2文献には,浮遊攪拌培養に適合するか否かの予測は困難であることが示されていると主張する。
しかし,これらの文献は, 細胞以外の別の細胞を念頭 CHO dhfr-に置いて,浮遊攪拌培養の困難な細胞があることを述べているにすぎない。甲28の1文献には,原告が指摘する記述の直前に 「ヒ,ト二倍体細胞株( , )は,浮遊させた状態では全く培 WI-38 MRC-5養できない」と記載されている。甲28の2文献にも,冒頭に,ヒト由来細胞についての論文であることが記載されている。このように,甲28の1文献及び甲28の2文献は,ヒト由来の付着性細胞の場合には浮遊化しにくい細胞があることを示している点で,甲19文献と同じである。いずれにしても,これらの文献は, 細CHO胞や 細胞については何も述べていない。 CHO dhfr-( ) 被告方法1イa 被告方法1の 細胞 α は,付着培養から浮遊培養に移 CHO DN2-3 3行した後2ないし4日目に倍加時間(世代時間)が48時間以下となり,4ないし9日目に生長が鈍化することがあったが,培地を全部取り換えて培養を続けることによりすぐに生長を回復し,29日で世代時間が24時間にまで短くなっている。本件明細書の実施例1では,浮遊培養開始後8日間の世代時間が192時間以上であり,世代時間が48時間になるまでに10週間を要したことと比べれば,被告方法1の細胞株が浮遊培養困難な細胞でなかったことは明らかである。
b 原告は, の作製が48日目であったことを根拠に,被告方法 MCB1において浮遊攪拌培養に適した細胞の樹立には48日間を要したと主張する。
しかし,被告方法1の培養の目的は,医薬品の生産に使用するための 及び を作製することにあったのであり,本件発明の MCB MWCB実施例とは目的が異なる。 及びの作製には,高いレベル MCB MWCBでの品質の保証が要求されているのであり,実験室レベルで浮遊攪拌培養に適する細胞を作製するのとは次元が異なるのであるから,本件発明に要した日数と被告方法1のの作製に要した期間を単純に MCB比較する原告の主張は暴論である。特に,被告方法1においては,まず血清を %含有する馴化用培地で種細胞を浮遊攪拌培養に馴化さ 10せ,次いで血清を %しか含まない生産用培地に馴化させ,その上で 1を作製しているのであるから,この点でも, の作製に要し MCB MCBた日数を,本件発明の細胞の樹立に要した日数と単純に比較することはできない。
原告も認めるように,別紙培養経過図1によれば,20日目ころには,浮遊攪拌培養でも十分に増殖可能と客観的に判断できるが,被告,(, 方法1では 細胞があらかじめ定められた基準 細胞の生存率 %99倍加時間24時間,細胞密度 × 細胞 )に到達したことを確 510 /ml5認して,次の生産用培地での浮遊培養に移行したのである。なお,倍加時間が24時間であれば浮遊攪拌培養に十分に馴化した細胞であると判断できることは,原告の研究者らが,浮遊培養細胞株の普通の倍加時間は通常20ないし40時間であると述べていることからも,明らかである。
の作製は,種細胞株が生産用培地での浮遊培養に馴化した後 MCBMCB MCB であればいつでもよく, の作製を48日目に行ったのは,を作製するために十分な数量の細胞数になるまで順次容量を増しながら増殖を行ったためであり,本件発明の樹立の時期とは異なる。
このように,被告方法1の種細胞株 α 細胞は,遅く CHO DN2-3 3とも浮遊培養開始から29日目には,浮遊攪拌培養に適した細胞として樹立されており,本件発明の実施例1の70日目よりもはるかに短い期間で樹立されている。
c 本件発明の実施例1と被告方法1との更に明確な相違は,細胞を付着培養から浮遊培養に移行した直後の細胞の増殖性(倍加時間)にある。
被告方法1の種細胞株 α は,浮遊培養に移行した直 CHO DN2-3 3後から倍加時間が48時間程度であり,これは,本件特許の実施例1の細胞が70日間の継代培養の後ようやく到達した倍加時間のレベル。, , , である すなわち 被告の細胞の倍加時間は 浮遊培養開始当初から本件特許で浮遊攪拌培養に適した細胞として樹立された細胞の倍加時間と同等であった。 細胞の浮遊攪拌培養を開始してすぐに CHO dhfr-細胞が48時間程度で2倍に増殖したという事実は,この細胞がその後浮遊培養に適した細胞に馴化し,樹立されることを十分に予測させるものである。
原告は,被告方法1において,別紙培養経過図1に記載されていない前段階の浮遊攪拌培養工程が存在する可能性が高いと主張する。
しかし,被告方法1には,原告の推測するような「予備的な浮遊化工程」は存在しない。被告方法1における細胞の馴化用培地での樹立に要した期間が長くても29日であったのは,被告方法2における樹立に要した期間が24日であるのと概ね一致する。
また, 社報告書(乙9)の「哺乳動物細胞遺伝子発現研究室で GIは, 細胞をプラスチックの培養皿/フラスコに付着させ, % CHO 10ウシ胎仔血清を含む高栄養培養液で培養している (61頁6ないし」7行 「第二のステップでは,クローン化した 高産生 細 ), EPO CHO胞株を哺乳動物細胞培養グループに移し %ウシ胎仔牛血清培地中浮 1遊培養し馴化させ, を樹立することになる (61頁9ないし1 MCB」1行)との記載は,原告の推測するような「予備的な浮遊化工程」が存在しないことを示している。
なお,当時 社で 細胞の 遺伝子による形質転換を GI CHO dhfr EPO-行い, 社報告書の原文の作成者の1人であるP5博士は,供述書 GI(乙55)において,同報告書に記載されている以外の浮遊化の工程は存在しなかったことを述べている。
( ) 被告方法2ウa 被告方法2の 細胞である「 株」も,3日ごとの継代 CHO dhfr 657-。, を繰り返して18日間浮遊培養することで浮遊培養に馴化した また生産用培地への移行後の浮遊培養状況のデータも,特に困難なく浮遊培養が行われたことを示している。すなわち, 細胞 株の場 CHO 657合は,いったん凍結保存されたので,解凍後まず5日間付着培養を行い,その後 %血清を含む馴化用培地で6日間浮遊培養を行い,細 10胞が安定的に浮遊培養できることを確認した。そこで,その後, %1血清を含む生産用培地での浮遊培養に移行した。培養状態のデータがグラフで示されているのは,生産用培地での浮遊培養の開始から後であるが,最初の3日間のサイクルでは生長が見られなかったものの,培養液の約半分を新培地で置換した2サイクル目では,倍加時間が48時間の生長を示し,生産用培地での培養開始後21日目以降は,倍加時間が24時間となっている。
b 被告方法2では,前記aのとおり, 細胞「 」株をまず18 CHO 657日間浮遊培養し,いったん凍結保存して,解凍後5日間付着培養した上で,6日間馴化用培地で浮遊培養した。その後,血清を %しか含1まない生産用培地で47日間浮遊培養し,さらに, の培養タンク40lで9日間浮遊培養をした上で, を作製した。原告は,この事実 MCBから 「浮遊攪拌培養を通算80日間行って,ようやく を作製 , MCBし得る増殖性と生産性の安定した細胞を樹立することができた 「通」,算80日間の浮遊攪拌培養の継代により の作製に到達したとい MCBうのは,本件発明における浮遊攪拌培養に適した細胞樹立の期間と同等である」と主張する。
しかし, をいつ作製するかなどの日程は,培養をスケールア MCBップして行い, の作製に必要な十分な数量の細胞を得るなどの MCB理由によって決められたことであり,馴化・樹立のために80日を要10 したのではない 本件特許の実施例1における馴化・樹立が血清を 。
%含む培地で70日間を要したこととの対比では,被告方法2では,血清を %含む馴化用培地での24日間の浮遊培養によって,馴化 10・樹立がされている。
被告は 「 株」が馴化用培地で浮遊攪拌培養に馴化し,浮遊攪 ,657拌培養に適した細胞として樹立されたと判断し,次の生産用培地での浮遊培養に移行したのである。原告は18日間及び6日間の合計24日間の浮遊攪拌培養についてデータが開示されていないと主張するが,被告方法1と同様,生産用培地での培養に順調に移行することができたという事実から,その時点で既に「 株」が,馴化用培地に 657おいて浮遊攪拌培養に適した細胞として馴化・樹立がされていたことは,明らかである。
また,原告は,生産用培地における浮遊培養の状況を示した別紙培養経過図2について,少なくとも前半部は増殖性のデータが不揃いであり,特に18日目から21日目までの培養では,倍加時間が100時間以上になっているから,到底安定した浮遊攪拌培養が実現されているとは認められないと主張する。しかし,別紙培養経過図2のデータは,浮遊攪拌培養への馴化ではなく,培地に血清が %しか含まれ1ない生産用培地への馴化を示すデータであるから,この点の原告の主張は,失当である。
( ) したがって,被告方法1及び被告方法2の 細胞は,いずエCHO dhfr-れも,構成要件Aの「元来付着性である」を充足しない。
構成要件B充足性( ) 構成要件Bの解釈ア「」,, 構成要件Bの 浮遊攪拌培養を継代して行うこと は 以下のとおり限定解釈されるべきである。
a 本件発明の構成要件Bは,課題を解決するための手段を何ら規定していないこと本件発明の技術的課題は 「 細胞は浮遊培養では増殖で ,CHO dhfr-きない,あるいは増殖困難である」ことにあり,細胞を浮遊培養条件下で増殖できるようにすることが課題の解決手段に含まれる。
ところが,構成要件Bは 「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を ,樹立する」ことの手段が「浮遊攪拌培養を継代して行うこと」であることを規定している 「継代」とは,細胞を浮遊培養する場合,容器 。
() , から細胞を培地 培養液 と共にその一部を新しい容器に取り出して新しい培地を加えて浮遊培養を続けることであり,培地を変えなければ細胞はいずれ死滅するから,凍結保存せずに細胞を維持するために当然行われるものであって,要するに,培養を続けることにほかならない。
そして,浮遊培養で増殖できない細胞を,単に浮遊培養条件下に置いたとしても,増殖できずに死滅してしまうから 「継代」は 「樹,,立」のための手段となるとしても,浮遊化に必要な「増殖」のための手段とはなり得ない。
そうすると,本件発明は,安定な細胞の樹立のための手段として,「」 , 当業者の技術常識である 継代 のみを請求項に記載するにとどまりその前提となる「浮遊培養で細胞を増殖させる」ことについては,何ら解決の手段を記載していない。
b 初期細胞濃度及び核酸を含む培地の使用が課題を解決するための手段であること上記aのとおり,本件発明は,課題を解決するための手段を規定していないから,本件特許は,本来,この点において無効理由(平成2年改正前特許法36条4項)を有するが,本件発明を何らかの意味のある内容として解釈しようとするならば,本件発明の構成要件Bの樹立のための手段を明細書の記載に照らして解釈すべきである。
すなわち,本件明細書には 「初期細胞濃度は × 個 を出来 ,410/ml4るだけ越えない方が望ましい (2頁右欄4ないし5行 「培地は, 」) ,上述のα- 培地と同程度,もしくはそれ以上の濃度の核酸を含 MEMむ培地ならいずれでもよい(2頁右欄11ないし13行)と記載さ 」れており,培地への核酸の含有が,本件発明の培養において必須の条件であり,核酸を添加しなければ浮遊化はできないことが,上記記載によって明確に述べられている。
このような本件明細書の記載に照らせば,本件発明の構成要件Bの樹立のための手段は,@初期細胞濃度が × 個 を越えず,か 410/ml4つ,A核酸を含む培地を用いた浮遊攪拌培養を行うこと,に限定して解釈される。
c 本件発明は実施不可能な部分を含むこと本件発明の発明者らは,上記エ( )cのとおり,核酸を添加した培ア地で浮遊化したのであり,本件明細書にも,核酸の添加が必要であることが記載されている。したがって,本件発明は,核酸を添加していない培地で浮遊化することについては,課題を達成できておらず,発明未完成である。このように,発明者が発明を完成していない範囲の方法にまで特許の権利範囲を拡大することは,特許法の精神に反するものであるから,本件発明の技術的範囲は,核酸を添加した培地で浮遊化した場合にのみ限定されるべきである。
d 本件発明は発明の詳細な説明に記載されていない発明を含むこと仮に,本件発明の技術的範囲が,核酸を含む培地を使用する場合に限定されないとすれば,特許請求の範囲に記載した発明の範囲が,発明の詳細な説明に記載した発明の範囲を超えることになるから,本件発明は,限定して解釈されるべきである。
本件発明の詳細な説明の項の「培地は,上述のα- 培地と同MEM,」 程度 もしくはそれ以上の濃度の核酸を含む培地ならいずれでもよい(2頁右欄11ないし13行)との記載は,核酸を含まない培地を用いて浮遊化することについて,特許権者自らが意識的に除外していることにほかならない。
本件発明の特許請求の範囲は,核酸を含まない培地をも権利範囲に含み,発明の詳細な説明に記載した発明の範囲を超えるものであるから,核酸を含む培地を用いて浮遊化したものに限定して解釈されるべきである。
( ) 被告方法1及び被告方法2イ被告方法1及び被告方法2の浮遊培養では, × 個 以上の初 110/ml5期細胞密度が採用され,浮遊攪拌培養に用いられた培地には,核酸は全く含まれていない。
したがって,被告方法1及び被告方法2は,いずれも構成要件Bを充足しない。
カ 被告方法1及び被告方法2のが本件優先権主張日前に樹立されて MCBいること( ) 被告方法1において の大量生産に使用する種細胞株は,本件アEPO優先権主張日より前に 及び として樹立されていた。すな MCB MWCBCHO DN2-3 3 MCB MWCB わち,被告方法1の種細胞株 細胞 α の 及びは,昭和60年に,アメリカ合衆国で, 社により樹立され,昭和6 GI1年2月に被告に移された。
( ) 被告方法2において の大量生産に使用する種細胞株は,本イG-CSF件優先権主張日より前に 及び として樹立されていた。す MCB MWCB,, なわち 被告方法2の種細胞株 細胞 株の 及び は CHO 657 MCB MWCB昭和61年1月ないし2月に被告によって樹立された。
( ) 原告が本件特許を侵害すると主張する被告の行為は,上記各細胞株ウの を上記各時期に樹立し,その後,その種細胞を増殖し,最終的 MCBに の培養タンクで培養し,所望の 及び を製造する行 2500 EPO G-CSF l為である。
本件特許の構成要件A及びBに対応する行為は,上記( )及び( )のアイとおり,本件優先権主張日より前にすべて行われており,その後は,構成要件A及びBに対応する行為は一切行われていない。そうすると,構成要件A及びBに相当すると原告が主張する工程によって作成された及び の 及び は, 及び を製造する EPO G-CSF MCB MWCB EPO G-CSF目的で本件優先権主張日より前に既に日本国内に存在していたのであ,, , り それらは 生産行為の全体が特許出願前に既に行われていた場合に当該生産行為によって生産された物が特許出願前から日本国内に存在したことになり,特許法69条2項2号により特許権の効力が及ばないと解すべきであるのと同様,本件特許の効力の及ばない物(特許法69条2項2号)と解すべきである。
すなわち,本件優先権主張日後に被告が行った行為は,本件発明の特徴的構成の工程ではなく,慣用的な工程にすぎないのであって,この場合も,発明の全構成要件に該当する行為が特許出願前(本件優先権主張日前)に完了している場合と比較して,権利者を特許権で保護すべき理由が存在しないことにおいて同じだからである。
MCB MWCB ( ) 原告は,被告があたかも本件優先権主張日以降に 及びエを作製したことがないと主張しているかのように解釈し,疑義があると主張する。
は, を解凍して細胞を増殖し,多くのバイアルに分注し MWCB MCBて再び凍結保存するのであるから,当然, は,本件優先権主張 MWCB日以後にも作製されている。また,既存の から新たな を作 MCB MCB製(更新)することもある。しかし,この工程の中には,本件発明の構成要件A及びBに相当する行為は含まれていない。 及び のMCB MWCB,, 細胞は 既に浮遊培養に適する細胞として樹立されているのであるから, これらの細胞を増殖して新たに 及び を作製する場合には MCB MWCB構成要件Bに相当する行為は不要である。
ちなみに,被告が構成要件A及びBに相当する行為を新たに作製して医薬品を製造販売しようとすれば,その細胞の遺伝子は,被告が製造承認を受けた医薬品を産生する細胞の遺伝子と異なるものとなるため,新たに臨床試験を行い,製造承認を受けなければならない。したがって,被告が,本件優先権主張日以後に 及び を製造するための EPO G-CSFを新しく作製していないことは,明らかである。 MCB? 争点?(先使用)について(被告の主張)仮に,被告方法が本件発明の技術的範囲に属するものであるとしても,被告は,次のとおり,本件発明と同一の発明を, については 社との共 EPO GI同研究開発により, については自社開発により,それぞれ完成させ G-CSFた上,被告方法を実施して医薬品製造販売の事業を行うに十分な製造設備を完成させ,更に大規模な設備計画を実行に移すとともに,被告方法に基づく医薬品製造販売を事業として行うために必須である臨床試験を既に開始していたから,被告は,特許法79条に基づき,本件特許権について法定の通常実施権を有する。
ア 本件優先権主張日前の被告方法1の完成被告は,昭和58年10月,アメリカ合衆国で 遺伝子組換えの研 EPO究を始めていたベンチャー企業である 社に資本参加し,昭和59年6 GI月29日には, 社と研究開発に関する基本契約を締結し, の研究 GI EPO開発に着手した。
社の研究開発グループは, 細胞を含む動物細胞の遺伝子組換え GI CHOにより, の製造方法を発明し,昭和60年12月には,形質転換し EPOた 細胞を浮遊攪拌培養することにより, 及び を作 CHO dhfr MCB MWCB-製した。被告は,昭和61年2月, 社から 及び を受領し GI MCB MWCBた。
被告は,本件優先権主張日前の昭和61年10月27日から同年11月6日にかけて, 社から受領した 及び を用いて, 培養 GI MCB MWCB 1600lタンクにより浮遊攪拌培養を行った後, を精製した。EPOしたがって,被告が,本件優先権主張日より約2年前である昭和61年11月に, の製造における被告方法1を完成したことは,明らかで EPOある。
イ 本件優先権主張日前の被告方法2の完成被告は,昭和59年ころから,骨髄中の顆粒球系前駆細胞に作用し,顆粒球系への分化・増殖を促進する造血因子である について研究を G-CSF開始し,ヒト の純化を経て,同年8月には, 細胞を含む動物 G-CSF CHO細胞の遺伝子組換えにより, の製造方法を発明し,昭和61年7 G-CSF月に特許出願を行った。同年11月には, 細胞を宿主細胞とし CHO dhfr-て, をコードする遺伝子及び 遺伝子を発現可能な状態で有す G-CSF dhfrるプラスミドで形質転換して得た細胞株を継代して浮遊攪拌培養を行い,昭和62年2月には, 及び を作成した。 MCB MWCB被告は,本件優先権主張日前の昭和62年10月21日から同年11月8日にかけて, の を用いて, 培養タンクにより浮遊 G-CSF MWCB 1600l攪拌培養を行った後, を精製した。G-CSFしたがって,被告が,本件優先権主張日より約2年前である昭和62年11月ころ, の製造における被告方法2を完成したことは,明ら G-CSFかである。
なお, 製造確認申請書(乙21)の様式2の別添「組換え体に G-CSF係る製造計画」2頁「ベクターの名称」欄には「 」と記載されて pV2DR1いるが,被告方法2で実際に使用したベクターは, のみであり, pV3DR1上記記載は誤記である。
被告は,医薬品製造承認申請書の作成のためにすべての遺伝子配列を確認したところ,この誤りに気付き, の医薬品製造承認申請書(乙 G-CSF10,枝番を含む。以下「 製造承認申請書」という )には,同申 G-CSF 。
請書別紙?2頁?のとおり,正しい名称である「 」を発現ベクタ pV3DR1ーとして記載した。
原告は,昭和62年10月21日から同年11月8日にかけて行われた浮遊攪拌培養で製造された から治験薬が製造され,使用されたの G-CSFは,本件優先権主張日後であると主張する。
しかし,臨床試験(第T相試験)は,本件優先権主張日前に行われているのであり,当然のことながら,治験薬は,本件優先権主張日前にも製造されている。
ウ 即時実施の意図の表明( ) 製造施設等の準備アa 培養施設棟の改修及び 培養タンクの導入 1600lEPO 被告は,本件優先権主張日の4年前に当たる昭和59年6月,の大量生産技術の確立に向けて, 社と共同研究を開始したが,被 GI告の工場内で倉庫として使用していた通称「B棟」を改修して,医薬品としての を製造し得る浮遊攪拌培養施設及びその関連設備 以 EPO (下「B棟製造設備」という)の建設の準備を開始した。この培養施 。
設計画は,総工費予算9億円で,培養施設の建物改築(被告浮間工場ll B棟)及び同B棟内に設置される培養タンク( タンク2基,40 160タンク2基及び タンク1基)を含む培養設備の導入を行うもの 1600lであり,最終的な投資額は9億円を超える規模で,昭和60年9月に完成し,稼働を開始した。これは,実に本件優先権主張日から2年半も前のことである。
1600 EPO この 培養タンクを含む製造設備は 昭和61年6月から l ,,及び の治験薬及び製品の原体生産のために使用されている。 G-CSF被告は, の製品であるエポジンの製品原体の製造をこの施 EPO 3000設で行い, についても,この設備を用いて,製品であるグラ G-CSFノサイト(欧州向け )の原体を製造している。 G-CSFしたがって,上記 培養タンクの完成及び供用開始により,本 1600l件優先権主張日前に, 及びの商業的な大量生産設備は既 EPO G-CSFに整っていた。
b 培養施設の新規建設及び 培養タンクの導入 2500l被告は,治験薬供給のリスク分散と発売時の原体生産に対応するため,昭和62年4月,既に稼働していた 培養タンクによる生産 1600l計画を見直し,新たに 及び の量産のための クラス EPO G-CSF 2000l(「 」 。) の培養タンクを備えたバイオ原体用生産棟 以下 生産棟 というを被告の浮間工場内に新築する計画を開始し,同年7月27日の取締役会において,次の内容による生産棟建設計画を決定した。
@ 生産棟 RC造4階建て,延べ床面積5300uA 培養タンク を基準として培養・精製各4工程を設置 2000lB 生産能力( 及び の合計) EPO G-CSF第T期 培養2系列,精製1系列で, 〜 年60g 75g/発売時 培養2系列,精製2系列で, 〜 年 EPO 120g 150g/第U期 培養4系列,精製4系列で, 〜 年240g 300g/EPO 1500U 20 (, 1回分の投薬に使用される の量は の製剤で約1g 300g EPO ?とされており で製剤5万本に該当する 年産 の ,。
であれば,製剤1500万本分の量に該当し,患者10万人分の年間使用量をまかなうことができる )。
C 概算費用第T期 28億8000万円発売時 5億7000万円 EPO合計 34億5000万円D工期着工 昭和62年12月設備据付 昭和63年11月試運転 昭和64年1月稼働 昭和64年5月上記計画の決定は,本件優先権主張日である昭和63年3月9日の8か月前のことである。被告は,昭和62年5月,上記生産棟建設計画に基づき,生産棟の建築設計・監理を株式会社日建設計(以下「日建設計」という )に依頼した。同社は,同年7月1日,設計を開始 。
し,本件優先権主張日前の昭和63年1月30日には,既に4階建ての生産棟の設計を完了した。その後,生産棟の建物建設は鹿島建設株式会社(以下「鹿島建設」という )が施工し,同年5月18日に着 。
工し,平成元年8月30日に竣工した。なお,生産棟の培養タンクの容量は,最終的に に決定され,昭和63年7月,正式に 社 2500 GI lから培養タンクを購入する契約が締結された。
また,建物設計と並行して,本件優先権主張日前に,@各種タンク類及びピュアスチーム発生機等の培養付帯設備については岩井機械工業株式会社(以下「岩井機械」という )を,A蒸留水製造装置につ 。
いては岩谷産業株式会社(以下「岩谷産業」という )を,Bタンパ。
ク質精製設備及び純水装置等については栗田工業株式会社(以下「栗田工業」という )を,それぞれ発注予定先とし,各社との設計・設 。
備計画の打合せを行い,見積書等を受領している。
l c 被告は,上記a及びbのとおり, 及び に向けて, EPO G-CSF 1600の培養タンクを備えた製造設備を完成させていた。このことだけを見ても,即時実施の意図が客観的に認識される態様及び程度において表明されていることは明らかである。加えて,本件優先権主張日前に,発売時に限っても クラスの培養タンク2基を備えた総額三 EPO 2000l十数億円の生産棟の建築を被告の取締役会で決定し,既に生産棟の設計を終え,発注先各社から大量生産に耐える生産設備の見積書及び図面等を受領していたのであるから,被告は,本件優先権主張日前に,商業的な製造販売について即時実施の意図を客観的に有していたことが明らかであり,事業の準備をしていたものである。
( ) 臨床試験の開始イa 臨床試験の必要性医薬品を製造販売するためには,目的物について,品目ごとに,薬事法14条1項の厚生大臣の承認を受けることが必要である。また,同条3項には,同条1項の承認を受けようとする者は,申請書に臨床試験の試験成績に関する資料等を添付して申請しなければならないことが規定されている。被告が, 及び を用いた医薬品の製 EPO G-CSF造販売に向けた準備の一環として,製造承認の取得のために行った臨床試験は,次のb及びcのとおりである。
b についての臨床試験 EPO? 第T相試験l 被告は, 社から受領した を用いて,浮間工場の GI MWCB 1600培養タンクにより治験薬原体を製造し,昭和61年11月21日,厚生大臣に対し,第1回目の治験計画届書を提出し,健常人による安全性及び生体内の動態の確認を行うための第T相試験を精神医学研究所付属武蔵野病院において開始した。
第1回治験(第T相試験)の実施は,健常成人男子志願者24名(うち6名はプラセボ投与)を対象とし,初回投与量 ?を静脈0.2内に単回投与する第一ステップから開始し,薬量を漸増しながら投与するものである。
その後,昭和62年2月16日,厚生大臣に対し,製造確認申請書を提出し,同月25日,2回目の第T相治験計画届書を提出し,第T相試験を実施し,終了した。
? 第U相試験被告は,昭和62年3月6日,厚生大臣に対し,腎性貧血患者に対する有効性及び安全性について評価検討するための第4回目治験計画届書を提出し,第U相試験を開始した。第4回治験(第U相試験)の実施は,腎性貧血患者100人に対し,効果が不十分な場合には薬量を , に増量して行うものである。同年4月9 3000U 6000U日には,厚生省薬務局長から製造確認通知を受領し,その後,同月から同年10月にかけて,第5回から第11回までの治験計画届書を提出し,第U相試験を実施し,終了した。
? 第V相試験被告は,昭和63年2月,厚生大臣に対し,腎性貧血に対する有効性及び安全性をメビチオスタンを対照薬として二重盲検比較試験により検討するための第12回治験計画届書を提出し,第V相試験を開始した。第12回治験(第V相試験)の実施は,腎性貧血患者50人を対象に を週3回,14週間静脈に投与して行うも 3000Uのである。
?製造承認被告は,昭和63年12月27日,厚生大臣に対し,上記?ないし?の臨床試験の結果をもとに製造承認の申請を行い,平成2年1月23日,厚生大臣の承認を受け,同年4月の薬価収載を経て,同月,上市した。
c についての臨床試験 G-CSF? 第T相試験被告は,その作成した を用いて,浮間工場の 培養 MWCB 1600lタンクにより治験薬原体を製造し,昭和62年3月,厚生大臣に対,,,。 し 製造確認申請書を提出し同年6月 製造確認通知を受領した被告は,昭和62年9月24日,厚生大臣に対し,第1回目の治験計画届書を提出し,健常人による安全性,耐容性及び薬物動態の検討を行うための第T相試験を関野病院において行った。
1 第1回治験 第T相試験 の実施は 健常成人男子14名に対し (), ,〜 ?の を,単回,5日間(休薬後さらに1回)皮下に投 20 G-CSF与するものである。
? 第U相試験及び第V相試験被告は 昭和63年2月2日 厚生大臣に対し 非骨髄性腫瘍 悪 ,,,(性リンパ腫)患者での臨床的有効性及び安全性の検討のための第2回の治験計画届書を提出し 第U相試験を開始した 第2回治験 第 ,。(U相試験)の実施は,非骨髄性腫瘍(悪性リンパ腫)の患者40人に対し, 〜 ?の を皮下投与して行うものである。 0.4 10 G-CSF被告は,昭和63年3月から平成元年4月にかけて,厚生大臣に対し,第3回から第23回までの治験計画届書を提出し,第U相試験及び第V相試験を実施し,臨床試験を終了した。
?製造承認被告は,平成元年12月,厚生大臣に対し,製造承認の申請を行い,平成3年10月,厚生大臣の承認を受け,同年11月の薬価収載を経て,同年12月,上市した。
先使用権の成立上記のとおり,本件優先権主張日前に,最終目的物である 及びEPOについて,大量生産方法が確立し,その直接の生産細胞のもとに G-CSFなる 及び が樹立され,保存されていた。また,本件優先権 MCB MWCB主張日以前から現在に至るまで,及び の製造は,本件優先権 EPO G-CSF主張日前に作られた 及びを解凍し,増殖することにより行 MCB MWCBわれている。
そして,本件優先権主張日前に, 及び を産生する細胞の大 EPO G-CSF量浮遊培養を可能にする製造装置が被告の社内に設置され, 及びEPO製造専用の工場の設計も完了しており,同時に,上記確立した大 G-CSF量生産方法を用いた臨床試験が開始されていたことを総合的に検討すれば,被告のこれらの行為は,被告が先使用権にいう即時実施の意図をもって,それが客観的に認識される態様,程度において表明されていたものである。そして,被告は,臨床試験の後,製造承認の申請を行い,厚生大臣の製造承認を受け, 及びを主成分とする医薬品を上市したも EPO G-CSFのであるから,被告の上記各行為は,被告による被告方法の実施の準備行為というべきである。
したがって,被告は,被告方法について,本件特許権についての先使用による通常実施権を有するものである。
オ 被告方法と先使用による通常実施権( ) 被告は, についても, についても,本件優先権主張日アEPO G-CSF前に製造された 及び を増殖させて浮遊攪拌培養を行い, MCB MWCB最終製品を得ているのであり,本件優先権主張日後は,新たな 及MCBび を作製していない。この手法は,本件優先権主張日前から今 MWCB日に至るまで不変である。
また, を用いて実施される浮遊攪拌培養及びその後の精製工 MWCB程は,本件優先権主張日前に当業者に周知の培養方法を用いて行っているにすぎず,被告方法の完成時と現在とで,浮遊培養及びその後の精製工程に変わりはない。
したがって,被告が先使用を確立した方法と,現在被告が行っている被告方法とは同一であるから,被告による被告方法の使用は,先使用による通常実施権に基づくものである。
( ) 原告は,仮に の糖鎖構造を均一にする製法変更があったのでイEPO,。 あれば 臨床試験当時の製法と現在の被告方法1とは異なると主張するしかし,糖鎖構造を均一にする必要はなく,そのような技術は未だ開発されていないから,原告が主張するような製法変更は行っていない。
また,仮にそのような変更が行われているとすれば,改めて製造承認の申請を行う必要がある。
( ) 被告は,本件優先権主張日前の昭和62年3月9日付けで,ベクタウーの名称を「 」と表示した 製造確認申請書(乙21)を pV2DR1 G-CSF提出し,同年6月5日,組換え 技術応用医薬品の製造のための指 DNA針に適合していることの確認の通知を受けた。その後,医薬品製造承認申請書作成のためにすべての遺伝子配列を確認したところ,ベクターの名称の誤りに気付き,平成元年12月26日付けで,ベクターの名称を「 」から「 」に変更する旨の変更届(乙62の1)を pV2DR1 pV3DR1厚生大臣に提出した。その後,中央薬事審議会バイオテクノロジー特別部会への報告を経て,最終的に同指針第4章第7に基づく報告(乙62の2)として,厚生大臣に提出した。
このように, 製造確認申請書(乙21)に記載されたベクタ G-CSF「」,「」 , ーの名称 は の誤りであることが明らかであり pV2DR1 pV3DR1現在の被告方法2で使用している は,本件優先権主張日前に作製 MCBされた と異なるところはない。 MCB( ) 原告は,ベクターの名称の変更から2年後の被告の特許出願に係るエ公開特許公報(甲75)に が記載されていることを指摘し, pV2DR1被告が 及び の2種類のベクターを有していたと主張 pV2DR1 pV3DR1する。
しかし,原告が指摘する上記公開特許公報には 「ヒト 遺伝子 ,G-CSFを含むプラスミド (特公平1-5395に記載されるもの。 pV2DR1とほぼ同じ構造 ( 0023 )と記載されている。上記公開 prIL-6)」【 】特許公報に係る特許出願は,被告がベクターの名称を変更する前の被告の特許出願に係る特許公報(特公平2-5395。乙78)の記載をそのまま引用してしまったことによる結果であって,2つのベクターが存在していたものではない。
なお,上記公開特許公報(甲75)で引用された「特公平1-5395」は 「特公平2-5395」の誤りであることが明らかである。 ,カ 「先使用権による保護の要件 (後記「 原告の主張 」ア)について 」( )( ) 原告の主張は,医薬品の場合は,製造承認が受けられない限り,たアとえ製造設備等においていかなる準備をしていても,即時実施の意図の表明と認める余地はないというものである。原告の主張によれば,医薬品業界では,製造承認の取得という行政上の制約により,他の業界に比べ発明の完成から事業化までに長い年月と多額の費用を要するにもかかわらず,製造承認を受けるまでの準備行為は,特許法79条にいう「事業の準備」には一切該当しないこととなり,結果として,それまでの長期間にわたる企業努力,物的,人的な投資が無に帰してしまうことになる。
特に,本件のように,事業化のために新しい製造設備を必要とし,多額の費用と時間を要する場合には,製造承認の取得を待って,製造設備の検討に着手するような悠長な仕事の進め方をすることはできない。また,医薬品の製造承認については,該当製品の製造設備を含む製造方法も審査の対象事項であり,かつ,製造承認を受け,さらに,薬価収載された後は3か月以内に安定的に供給を開始しなければならない。
そのため,当然に,臨床試験期間中に事業の準備のために多額の投資を行うことになるが,原告の主張によれば,このような投資を行う者は保護に値せず,実験室レベルの成果を出願した特許権者が常に優先するというのである。この原告の主張は,医薬品の事業における「事業の準備」による先使用権の成立をまさに否定するものであり,法が先使用権,。 を認めた趣旨から見て 著しく不合理な主張であることは明らかである( ) 原告は,医薬品について,臨床試験段階では,未だヒトに対する安イ全性や有効性は確認されておらず,即時実施は不可能であり,医薬品としての事業化は単なる希望にすぎないと主張し,その理由として,臨床試験の各段階における製造承認を受ける確率が低く,臨床試験段階での医薬品の開発成功の見通しが不明確であることを挙げている。
しかし,現実に製造承認を受け,事業化されている医薬品について,臨床試験段階での製造承認を受ける確率を持ち出して,即時実施の意図の有無を論じても無意味である。すなわち,医薬品の場合は,臨床試験を行う段階において,試験の対象となる医薬品の有効成分は既に決定されており,臨床試験の結果に応じて有効成分自体を適宜改良,変更することは許されていない。つまり,臨床試験に入る段階で,医薬品としての有効性の有無や安全性の有無は,客観的には既に定まっているのであるから,臨床試験は,それらを確認するために行われるのであり,有効(), 成分を変更・改良するため いわゆる試験研究目的 に行うのではなく上市の前提である製造承認を受けるために行うのである。臨床試験において,結果的に製品化できないものがあるのは事実であるが,そのことは 「即時実施の意図」の有無に影響しない。そもそも,即時実施,す ,なわち,即時販売の意思があることは,臨床試験を行う前提であり,臨床試験を行うことは,その意図が外部から客観的に認識できる行為にほかならない。一般の商品を製品化する改良過程で行われる試験研究と,有効成分の改良は一切許されず,医薬品の安全性及び有効性を行政上の理由から確認する臨床試験は,全く異なるものである。
( ) 原告は, について異なる糖鎖構造を持つものが含まれることをウEPO指摘し,製造承認を受けた段階でさえ,事業化のための技術が完成していないと主張する。
しかし, は,バイオテクノロジーを利用し,有機的にタンパク EPO質を合成するものであるから,通常の化学物質と異なり,常に単一の糖鎖構造を持つタンパク質を製造することが困難であることは当然である。そうであるからこそ,厚生省も 「バイオ技術で生産された医薬品 ,における糖鎖構造などの違いによる生産物の不均一性については,製造承認の申請の段階で提出された医薬品の“規格”に見合っているものであれば,問題なしとしている」のである。被告の現在の製品にも異なる糖鎖構造を持つものが含まれているのであるから,技術的に完成していなかったとする原告の主張は,誤りである。
( ) 原告は,被告が製造承認の申請後に 培養タンクを使用してエ1600lの原体を製造していたことを指摘し,これが糖鎖構造等の検証を EPO行ったものであり,仮に商業用の原体製造であれば薬事法違反である,とあたかも事業化のための技術が完成していなかったかのような主張をする。
しかし,これは,適応症の拡大や容量・剤型変更を目的として治験薬の原体を製造したものであり,初回の製造承認の申請を終了しても,製品価値を上げるために継続して適応拡大を行っていくことは,一般的に行われることである。
(原告の主張)ア 先使用権による保護の要件( ) 被告が先使用権を主張し得るためには,特許出願日(本件優先権主ア張日)において,被告において特許発明に該当する発明行為が完成し,かつ,発明が事業として実施されているか,又は事業の準備がなされていることが必要である。そして,先使用権は,本件優先権主張日において「実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内」につき成立する。
特許法における発明の完成と事業として実施行為の間には,試験研究(あるいは開発)の段階が必要とされるのが一般的であり,その後に事業の段階に至る。厳密にいえば,@発明の完成,A事業化のための試験研究,B事業化のための技術開発,C事業化技術の完成と製造設備の用意,D事業の実施,という順序になるのが普通である。
試験研究と技術開発の段階は,未だ事業の実施に至るか否かが不明であるから,先使用権による保護は与えられない。
製造設備については,新規な設備を用意する必要がある場合と,既存の設備を使用すれば足りる場合がある。完成した事業化のための技術が存在するときは,製造設備を用意する行為が事業実施の準備と認められる。これに対し,既存の設備を使用する事業については,設備を設けた時期は先使用権の基準とはならず,事業化のための技術を完成したことと,これを実施する意図が表明されたこと(サンプルの配布など)が先使用権を認定するために必要となる。
事業の準備」とは 「即時実施の意図を有しており,かつ,その即 ,時実施の意図が客観的に認識される態様,程度において表明されていることを意味する (最高裁昭和61年( )第454号同年10月3日第 」オ二小法廷判決・民集40巻6号1068頁参照 。同判決は,大型プラ )ント受注のための見積仕様書などの作成提出をもって,事業の準備を認めたが,プラントのような製品は,完全な設計ができていれば,後は設計どおりに材料を組み立てていくだけでよいから,同判決は,事業としての技術は既に完成している場合であって,特段の製造設備の新設を要しない場合について先使用権を認めた事例である。これに対し,通常の製品であれば,販売可能な商品のサンプルが既に存在すること及びその製造設備が用意されている(完成することが確定している)ことが必要である。すなわち,事業の準備が認められるためには,発明の完成から更に進んで,事業に必要な具体的技術が存在していること(装置の発明では,詳細な具体的設計など)が必要である。
( ) 医薬品の事業の場合は,医薬品としての安全性及び有効性を備えてイいることが臨床試験により証明され,製造承認を経て,初めて商品としての医薬品が存在することになり,その事業開始が可能になるのであるから,単に物質が製造可能であるだけでは足りない。
臨床試験が必要であるのは,薬事法が本来不要な試験を行う義務を製薬企業に課しているからではなく,医薬品として販売されるためには欠くことのできない性質を判定する試験だからであり,薬事法はただその基準を明確にしているにすぎない。
ヒトに対する安全性と有効性が確認されるまでは,当該物質を医薬品として事業化したいという希望は,単なる希望にすぎず,事業を即時実施することは不可能である。一般的に,医薬品の開発において,臨床試験の第T相試験にある新薬候補が商品化される確率は %前後にすぎ10ない。すなわち,未だヒトに対する医薬品としてはスクリーニングの段階にすぎないのである。そして,第U相試験の段階にあるものでも成功の確率は 〜 %であり,第V相試験の終了段階に至って,初めてヒ 20 30トに対する医薬としての商品化の見通しが立つといってよい。しかし,この時点での判断は,開発者の主観にすぎず,承認申請により国の評価を受けなければならないが,この段階でも %は承認されない。 30( ) また,安全性と有効性の面からは即時実施が可能な状態になっていウ,。, ても 製造設備が存在しなければ事業は即時実施できない したがって製造設備について即時実施の意図が表明されることも,必要な条件である。
先使用権の成立を認めるためには,これらの2つの面について,即時実施の意図が客観的に確認されなければならない。
本件における「エポジン」及び「ノイトロジン」のように,バイオテ,, クノロジーにより製造される医薬品の場合には 事業の実施に先立って大量生産技術の確立が必要となる。バイオテクノロジーによる製造においては,スケールアップによって,細胞が増殖しなくなったり,得られるタンパク質の構造(特に糖鎖構造がその活性発現に必須の の場EPO合)が変化するなど,通常の化学物質の製造とは異なる問題がある。医薬品は,一定の品質を維持しなければならないから,事業としてバイオテクノロジーを適用するに際しては,スケールアップにおける製造技術を確立する必要があり,この段階も,試験研究(開発研究)の一部を構成する。この段階を通過しなければ,医薬品の事業を即時実施し得る段階には達しない。
実際,被告による の製造においては, の大量合成に際し, EPO EPO糖鎖の結合状態が異なる が生成していることが認められた。これ EPOEPO EPO は, の大量培養条件の違いによって異なる糖鎖構造を持ったが生産されたことを意味する。被告は,いわば,大量生産技術を十分に確立することなく,すなわち,事業の準備が十分に整わないうちに,商EPO 品化に踏み切ったことになる。事実,被告は,昭和63年7月にの臨床試験が終了しているにもかかわらず, の培養タンクによる 1600lの培養を,同年11月から同年12月にかけて6ロット,平成元 EPO年6月から同年7月にかけて15ロット,それぞれ実施している。被告の の製造承認の申請は昭和63年12月27日であり,製造承認 EPOの取得は平成2年1月23日であるから,上記2回の培養(合計21ロット)は,明らかに製造方法の条件検討(糖鎖構造の検証など)を実施したと考えられる。
この事情は,製造承認を受けた段階においてさえ,事業化のための技術が完成していないこともあり得ることを示しており,いわんや臨床試験の段階では,到底事業の準備の段階に達したとは認められないことを意味している。
被告は,上記2回の培養(合計21ロット)は,適応症の拡大や容量・剤型変更を目的として治験薬の原体を製造したものであると主張す。, , 。, る しかし 治験薬原体にしては 21ロットの製造は多すぎる 事実日経バイオテク平成2年9月24日号(甲64)には,被告の 製EPO剤の30ロット以上の糖鎖のチェックを実施したことが述べられており,このことは,昭和63年から平成元年にかけて製造された がEPO合計33ロットであることと符合する。
「」 (「()」) イ 本件優先権主張日前の被告方法1の完成 上記 被告の主張 アについて被告の について,本件優先権主張日前に,本件発明に対応する発 EPO明が 及び 作製の段階で完成しており,被告が 社から当該 MCB MWCB GI発明を知得したことは争わない。被告の主張は 「発明の完成」の主張と ,しては特に争う必要はないが 「事業の準備」に該当する行為ではない。 ,「」 (「()」) ウ 本件優先権主張日前の被告方法2の完成 上記 被告の主張 イについて( ) 昭和62年2月16日付けの 製造確認申請書(乙21)にアG-CSF,, は 細胞を形質転換するベクターとして が記載され CHO dhfr pV2DR1-平成元年12月27日付けの 製造承認申請書別紙?(乙10の G-CSF3)には,当該ベクターとして が記載されている。ベクター pV3DR1,,, は 細胞に取り込まれて一体化するのであるから ベクターが異なれば形質転換された細胞も異なる。
そうすると,昭和62年2月ころに作製された は,現在の被告MCB方法2に使用されている細胞株とは異なる細胞株であると考えざるを得ない。
特許法上の発明の完成を論ずる限度では,ベクターが相違しても,本件特許の要件を充足する限り,本件優先権主張日前に の製法にG-CSFついても発明の完成があったと認めてよい。
しかし,昭和62年2月に製造したと被告が主張する 及びMCBは, で形質転換した細胞株のはずであるから,現在の MWCB pV2DR1被告方法2に使用されている がこの時点で作製されていたとの主 MCB張は,否認する。製造承認に基づく被告方法2は, を使用してpV3DR1形質転換した細胞を使用しているはずであり,その が本件優先権MCB主張日前に作製されたとの証明はない。
( ) 被告は,上記ベクターの相違は誤記にすぎなかったと主張し,訂正イの届出書類(乙62の1ないし3)を証拠として提出している。
しかし,これらの証拠は,被告が誤記の訂正の名目により名称の変更を行ったという経過を示すにすぎず,その変更誤記の訂正であったのかどうか,すなわち,本件優先権主張日前に作製した に使用されMCBたプラスミドが,事実として であったことを証明する資料は pV3DR1提出されていない。
本件においては,単一のプラスミド( )しか存在しなかった pV3DR1場合において,そのプラスミドの名称の記載を誤った,という事案ではない。現実に, も も共に存在し,いずれについても研 pV2DR1 pV3DR1究を行った可能性が高い。特に,被告公報(甲9)には,実施例としてが記載されている。いずれのプラスミドも の生産に使 pV2DR1 G-CSF用できたのであるから,客観的に判断して,被告は,その両方について実験を行い,当初は を採用するつもりでいたが,開発の途中 pV2DR1で の方が好ましいと判断し,切り替えたと考えるのが自然で pV3DR1ある。
( ) 組換えヒトインターロイキンに関する被告の特許出願に係る公開特ウ許公報(特開平5-301899。甲75)においては, の発現IL-6ベクターの作製に が使用されたことが記載されており,当該 pV2DR1特許出願の優先権主張日は,平成3年7月8日である。被告が主張するように, がそもそも存在しなかったというのであれば,被告が pV2DR1誤りが発見されたと主張する平成元年の2年後である上記優先権主張日において, を使用した発明の出願がされるはずがない。 の pV2DR1 IL-6生産の実験のために を作製する理由は,全く見当たらず,被 pV2DR1IL-6 pV2DR1 IL-6 告が の研究よりも前から を有していたから,これをの研究に使用したと考えるのが合理的である。
( ) 被告は,昭和62年後半に, の培養タンクで を製造しエ1600 G-CSF lたと主張するが,この際の培養も, で形質転換した細胞が使用 pV2DR1されたのであれば,現在の被告方法2とは相違する。
なお,被告が主張する の製造工程で製造された から治 G-CSF G-CSF験薬が製造され,使用されたのは,本件優先権主張日後の昭和63年3月ないし5月のことである。
事業の準備( ) 「製造施設等の準備 (上記「被告の主張 」ウ( ))についてア ア」( )a 「培養施設棟の改修及び 培養タンクの導入 (上記「 被告の 1600l」(主張 」ウ( )a)について )ア? 被告が昭和60年9月に導入した 培養タンクは, 社か 1600 GIlら導入予定の の開発試験用設備であり, 社の設備をそのま EPO GIま転用したものであった。同培養タンクが,浮間工場の製造部門ではなく,昭和59年に完成したばかりの生産技術研究所に設置されたことからわかるように,バイオ技術の経験のない被告が, 社GIで開発された の製造方法をそのまま設備ごと導入し,自ら製 EPO造できるように試験研究を繰り返したのは明白である。
また,上記 培養タンクにおいて, の治験薬が生産さ 1600 G-CSF lれていたことからわかるように,汎用の培養設備としても利用され。, ていた の治験薬の専用ラインが浮間工場内にできたのは G-CSF本件優先権主張日よりも後である平成元年になってからである。
被告は,上記培養タンクの建設は,9億円を超える投資であったことを強調するが,被告にとって,バイオ医薬品の生産は,当時,未知の領域であったから, 社から導入した程度の規模の設備が GI最初から必須であったと考えられる。
要するに,被告が 培養タンクを導入したのは,バイオテク 1600lノロジーによるタンパク質製造の技術そのものに習熟するためであり, について,本件優先権主張日前に,同培養タンクによる EPOスケールアップの試験研究を行ったことが認められるが,それだけで即時実施の意図が表明されたことにはならない。
? 培養タンクと 培養タンクとの大きな違いは,医薬品 1600 2500llの製造設備として国際的基準( 基準)に通用する施設である GMPかどうかである。被告は, 培養タンクを導入するに当たって 2500lは,アメリカ合衆国食品医薬品局( )との間でも,会議を実施 FDA。, , している すなわち 培養タンクと 培養タンクとでは 1600 2500lll 商業生産のための施設としての重み付けが異なる。そして,2500培養タンクは,平成2年6月に試運転を終えて の本生産に移EPO行しているが,これは,本件優先権主張日よりもはるか後のことである。
b 「培養施設の新規建設及び 培養タンクの導入 (上記「 被告 2500l」(の主張 」ウ( )b)について )アl ? 被告の昭和62年7月27日の取締役会決議においては 「,2000クラスの培養タンクを備えたバイオ原体用生産棟」というイメージが決定されたのみであり 「 タンク」という具体的なサイズ ,2500lは決定されていない。また,同決議においては,着工が同年12月と決定されたのに対し,現実に着工がされたのは昭和63年5月であり,工期が遅れている。このことは,同決議が基本プランであっ,。 て 具体的な計画を定めたものではないことを示唆するものであるまた,バイオ原体生産棟の建設は,被告における将来のバイオ事業のための先行投資とは認められるが, 及び の具体的な EPO G-CSF事業の開始と直接に結び付くものではない。
l EPO 2500 の事業を開始するという積極的な決定に関係するのは,培養タンクの購入を具体的に決定したことが最初の行為であり,これは,本件優先権主張日より後の昭和63年7月31日に締結された契約によるものである。即時実施の意図の表明が,この 培2500l養タンクの購入に先行することはあり得ない。
,, ? 上記取締役会決議があった昭和62年7月は についてはEPO第U相試験が行われている時期であり,医薬品としての評価が確立していなかった。これに対し, 培養タンクの購入が具体的に 2500l決定された昭和63年7月は,被告の「エポジン」の第V相試験のGI 結果が判明したころであり その1か月前である同年6月には ,,社の欧州でのライセンス先のベーリンガーマンハイム社が,欧州での臨床試験を終了させ,欧州での新薬申請を行ったことなどから,が医薬品として製造承認される可能性が急激に上昇したと判 EPO断できた時期である。つまり,上記取締役会決議は, の医薬EPO品としての可能性の定まらない時期に,計画だけを策定したものであり,投資の判断は, の臨床試験の結果が終わるまで待たれ EPOたのである。
被告は,建物及びタンクの導入と並行して,本件優先権主張日前に,各種付属設備の発注予定先の選定及び打合せを行い,見積書を受領したと主張する。しかし,これらは,具体的客観的に注文がされたとか,債務負担が確定したということではないから,事業の準備の解釈に影響を及ぼすものではない。
c 上記a及びbのとおり,被告が主張する設備投資によっては,事業の準備について即時実施の意図を客観的に有していたと判断できない。
( ) 「臨床試験の開始 (上記「 被告の主張 」ウ( ))についてイイ」( ),, , 上記アのとおり 臨床試験は 事業化を希望して行う作業ではあるが即時実施が可能であることを前提とする先使用権の成立要件である「事業の準備」段階とはほど遠い。
「新薬臨床評価ガイドライン2001 (甲42)に沿って,医薬品 」の開発の各相の試験目的をまとめると,次のとおりとなる。
第T相試験 )初期の安全性及び忍容性の推測, )薬物動態, )薬力 abc学的な評価, )初期の薬効評価。d第U相試験 治療効果の探索を行う試験で,本試験の重要な目的は第V相試験へ向けての用法及び用量を決定。
第V相試験 治療上の利益(有効性,安全性)を証明又は確認すること(いわば製品になるかどうかが判断される段階)を主要な目的とする試験。
第W相試験 市販後の上市薬の治療上の利益(有効性,安全性)を再評価この説明から明らかなように,第T相試験では,ヒトに対する医薬品としての安全性及び有用性の初歩的な試験が行われるだけである。第U相試験では,第V相試験のための用法及び用量を決定する。第V相試験に至って,ようやく医薬品としての価値が評価される。すなわち,第V相試験において有効性と安全性が確認されるまで,商品としての医薬品になり得るかどうかは,判明しないのである。
及び においては,相当量の臨床試験が行われているとこ EPO G-CSFろ,これは, 及び が日本でも最初のころのバイオ医薬であ EPO G-CSFり,また,被告は,それ以前にバイオ医薬品の開発の経験もなかったので,臨床試験の項目である,ヒトでの安全性,忍容性(第T相試験 ,)患者への用法用量の設定(第U相試験 ,治療上の有効性,安全性(第 )V相試験)を,最初は手探りで,途中から多くの試験を同時に組み込むという手法により進めたのである。及び の第U相試験に, EPO G-CSFそれぞれ8回,9回以上もの治験計画届書を提出している点は特筆すべきであり, 及び については,多くの臨床試験を実施するこ EPO G-CSFとによって初めて有効性と安全性の確認が行われているという事情が特に顕著である。
の場合は,本件優先権主張日において,第U相試験終了段階で EPOあり,患者への用法及び用量が決定されたが,未だ治療上の利益を証明又は確認できていない状況であった。また, に至っては,その G-CSFヒトでの用法及び用量さえも決定されていない第T相試験終了段階であった。
したがって, についても, についても,本件優先権主張 EPO G-CSF日の時点では,医薬品としての製造承認が受けられるという判断ができたとはいえない。
先使用権の成否上記アないしエのとおり,本件優先権主張日の段階では,臨床試験中の及び は,特許法79条にいう「事業の準備」に到達していた EPO G-CSFとはいえない。
先使用権と現在の被告方法との関係( ) についてアEPOについては,被告が本件優先権主張日前後の臨床試験用治験薬 EPO,, 製造当時に使用していた方法と 現在の被告方法1とが異ならない点は争わない。ただし,仮に の糖鎖構造を均一にする製法変更があっ EPOたのであれば,臨床試験当時の製法と現在の被告方法1とは異なることになる。
( ) についてイG-CSF上記ウのとおり, については, 細胞の形質転換に用 G-CSF CHO dhfr-,()() いられるプラスミドが 本件優先権主張日前 と現在pV2DR1 pV3DR1とで異なるという問題点がある。プラスミドが異なれば,生産細胞も相違する。生産細胞が相違すれば,臨床試験及び医薬品の製造承認の申請,, 。 , を 再度 最初から行わなければならない このような別途の臨床試験製造承認手続を要する医薬品の事業は,同一の事業とは認められない。
キ 上記アないしカのとおり, についても, についても,先使 EPO G-CSF用権が成立しないことは,明らかである。
? 争点?ア(新規性の有無)について(被告の主張)仮に,原告が主張するように,本件発明の「元来付着性である」との文言が 「 細胞の一般的性質」であり,およそ 細胞であれ ,CHO dhfr CHO dhfr- -ば,従来技術で浮遊化が可能であったか否かを問わず広く特許請求の範囲に,, , 「()」 含まれると解し かつ その培養条件についても 上記?の 被告の主張オ( )のような限定解釈がされないとすれば,本件発明は,次のとおり,昭アStructural Characterization of Natural Human Urinary and 和62年刊行の「Recombinant DNA-derived Erythropoietin DNA 」(「天然ヒト尿由来及び組換え由来のエリスロポエチンの構造的特性 。乙4。以下「引用例1」という ) 」。
に記載された発明(以下「引用例1発明」という ,昭和58年刊行の 。)Constitutive, long-term production of human interferons by hamster cells 「( インターフェロン containing multiple copies of a cloned interferon gene」「遺伝子の多数複製を含むハムスター細胞によるヒトインターフェロンの構成的,長期生産 。乙5。以下「引用例2」という )に記載された発明(以 」。
Characterization of 下「引用例2発明」という ,昭和62年刊行の「 。)recombinant glycosylated human interleukin 2 produced by a recombinant( 組換えプラスミドで形質転換された plasmid transformed CHO cell line」「細胞株により産生された糖鎖を有する組換えヒトインターロイキン2 CHOの特性 。乙6。以下「引用例3」という )に記載された発明(以下「引 」。
用例3発明」という )及び昭和62年刊行の「遺伝子工学によるリコンビ 。
ナント造血因子の精製: (乙44。以下「引用例4」という )に hG-CSF」。
記載された発明(以下「引用例4発明」という )と同一であり,本件特許 。
(請求項1に係る部分に限る )は,特許法29条1項3号の規定に違反し 。
て特許されたものであるから,同法123条1項2号の規定に基づき,特許無効審判により無効にされるべきものである。
ア 引用例1について( ) 構成要件Aについてア引用例1には,本件発明の構成要件Aのうち 「生理活性タンパク質 ,をコードする遺伝子及びジヒドロ葉酸還元酵素(以下 とする )遺dhfr。
伝子を発現可能な状態で有するプラスミドを元来付着性であるチャイニーズ・ハムスターオバリージヒドロ葉酸還元酵素欠損株( )CHO dhfr-細胞に予め形質転換して得られた形質転換細胞」の部分が記載されている。
また,引用例1には 「安定な形質転換体が・・・浮遊培養として, ,維持された」こと,つまり,培地中に懸濁したことが記載されている。
したがって,これらの記載は,本件発明の構成要件Aを充たす。
( ) 構成要件Bについてイ引用例1には 「安定な形質転換体が,半合成培地と完全合成培地の ,両方で,ローラーボトル中でコンフルエントな単層培養として,そして深いタンク型バイオリアクターで浮遊培養として,維持された 」と記。
載されている。
「安定な形質転換体が ・・・深いタンク型バイオリアクターで浮遊 ,培養として,維持された 」とは,その前提として,既に浮遊攪拌培養 。
を継代して行うことにより浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞が樹立されたことを意味する。
「深いタンク型バイオリアクター」のような大量培養装置で浮遊攪拌培養するには,初めにスピナーフラスコのような小スケールで形質転換体を浮遊攪拌培養し,形質転換細胞が浮遊攪拌培養で良好に,かつ,安定して増殖することを確認した後,順次培養スケールを拡大していかなければならない。そして,細胞培養において適当な時期に培地を交換しなければ,細胞は栄養不足となりいずれ死滅してしまうから,これらの形質転換体を浮遊攪拌培養に適応させる過程で培養液を交換する,換言すれば「浮遊攪拌培養を継代して行う」ことは自明である。
すなわち,小スケールで,浮遊攪拌培養を継代して行うことにより浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を作製し,次いで,順次培養スケールを拡大して,初めて「深いタンク型バイオリアクター」のような大量培養装置での培養に至るのである。
よって,継代培養の過程において「安定な形質転換体が・・・維持された」との記載は,その前提として,継代が繰り返し行われ,そして性質が安定した形質転換体細胞が樹立されていたことを意味する。
したがって,上記記載が本件発明の構成要件Bを充たすことは当業者に明らかである。
( ) 構成要件Cについてウ引用例1には 「安定な形質転換体が・・・深いタンク型バイオリア ,クターで浮遊培養として,維持された 」と記載され,続けて,遺伝子 。
組換えヒト である が精製されたことが記載されている。こ EPO rhEPOの記載は,本件発明の構成要件Cの「当該浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を浮遊攪拌培養し,培養液中に目的生理活性タンパク質を生産させ,そして目的生理活性タンパク質を取得する」ことにほかならない。
したがって,これらの記載は,本件発明の構成要件Cを充たす。
( ) 構成要件Dについてエ引用例1には 「この報告で,私たちは,ヒト遺伝子の クロー , cDNAンを発現するチャイニーズハムスター卵巣( )細胞株から精製さ CHOれた組換えヒト ( )の初めての特性付けを記載する 」と記 EPO rhEPO 。
載され,また 「私たちは,ここに,ヒト遺伝子の クローンを発 , cDNA現する哺乳動物の培養液から精製されたヒト の初めての特性付け EPOを報告する 」と記載されている。ヒト は生理活性タンパク質であ 。 EPOるから,この記載は,いずれもその製造法を表したものといえる。
したがって,これらの記載は,本件発明の構成要件Dを充たす。
( ) このように,引用例1には,本件発明の構成要件AないしDをすべオて充足する発明が記載されている。
イ 引用例2について( ) 構成要件Aについてア引用例2には 「マウスジヒドロ葉酸還元酵素( )とヒトインタ , dhfrーフェロン( α または γ)をコードする配列を・・・有す IFN- 5 IFN-るプラスミドは, チャイニーズハムスター卵巣( )細胞に形 dhfr CHO-質転換された 」と記載され,また, α 遺伝子で形質転換された 。IFN- 5細胞クローン及び γ遺伝子で形質転換された 細胞クロ CHO IFN- CHOーンを浮遊培養し, 生産が確認されたこと,つまり,得られた形質 IFN転換細胞が培地中に懸濁されたことが記載されている。
ヒトインターフェロン( α 又はγ)は,生理活性タンパ IFN- 5 IFN-ク質であるから,これらの記載は,構成要件Aを充たす。
( ) 構成要件Bについてイa 引用例2には, α 遺伝子で形質転換された 細胞クロー IFN- 5 CHOン及び γ遺伝子で形質転換された 細胞クローンを浮遊培養 IFN- CHOし, 生産が確認されたこと(695頁19ないし23行,699 IFN),,, 頁22ないし24行 得られた形質転換細胞は 浮遊培養で増殖し繰り返し回収できること(702頁21ないし28行 ,これらの細)胞株について,少なくとも数か月の期間は安定して 産生が確認IFNされたこと(688頁25ないし29行 ,が記載されている。 )引用例2に記載された細胞は,浮遊培養で増殖し,繰り返し回収でき,少なくとも数か月の期間は安定して 産生を行うものである IFNから,浮遊培養に適した樹立された細胞であることは明らかである。
,, また この少なくとも数か月の期間は安定して 産生を行うことIFNすなわち,引用例2の「 合成は・・・少なくとも数ヶ月にわたっ IFNて維持された (688頁27ないし29行)との記載は,本件明細 」書の実施例1の第3図にあるような,タンパク質を安定して生産する状態であることを意味する。そして,引用例2に記載された細胞は,本件明細書の実施例1の第3図に記載された20サイクルの継代培養と比較しても,十分に長期にわたる期間,安定した性質を維持したのであり,その後継代培養を繰り返しても,性質が実質的に変化しない,「」 状態になったものといえるから浮遊攪拌培養に適した細胞が 樹立されたものである。
b 原告は,引用例2の記載は,安定性の確認を伴わない一過性の浮遊培養可能性を意味する以上のものではないと主張する。
しかし,引用例2には 「このプラスミドの 細胞への形 ,dhfr CHO-質転換と引き続く での選択により, × ・ の MTX 2-10 10 I.U. ml day4-1-1α 又は γを産生する細胞株が得られた (688頁 HuIFN- 5 HuIFN- 。」),,「」,「」 25ないし27行 との記載があり 原文では 細胞株 はstrainと表現されている。細胞株( )とは,最も一般的には 「初 cell strain,代培養からでもまたは細胞系からでも,選択あるいはクローニングによって特異な性質あるいは(遺伝的)標識をもつようになった培養系統を指す。特殊な性質あるいは標識は,その後の継代培養中維持されるものでなくてはならない 」との意味で用いられている。 。
引用例2を読んだ当業者であれば,引用例2の筆者が,当該細胞株を と表現したのは,組換えタンパク質を産出するという特殊な strain性質又は遺伝的標識を持つようになった当該細胞株が,付着培養と浮,, 遊培養のいずれの場合でも増殖しその特殊な性質又は遺伝的標識がその後の継代培養中も維持されたからにほかならないと理解する。このことは,引用例2の「細胞が浮遊状態で増殖し,繰り返し収穫できる (702頁25ないし26行)との記載にも表れている。 」したがって,引用例2の記載は,当該細胞株が安定的に培養可能であったことを明確に示している。
c 原告は,引用例2の「 合成は・・・少なくとも数ヶ月にわたっ IFNて維持された (688頁25ないし29行)との記載に対応する具 」体的記載は 「連続的に継代された細胞は少なくとも3ヶ月の間構成 ,的に を産生した(テーブル1 (693頁下から2行ないし最 IFN )」下行)との記載であると主張する。
しかし,原告が指摘する上記記載は 「発現プラスミドで形質転換 ,MTX されたメトトレキセート耐性細胞株の選別」の項で記された,耐性細胞株の選別に関する中間段階の描写であって,冒頭の「要約」の項にある「 合成は・・・少なくとも数ヶ月にわたって維持され IFNた」との記載を具体的に言い換えたものではない。冒頭の「要約」の項にある上記記載に対応する具体的記載は 「発現プラスミドで形質 ,転換されたメトトレキセート耐性細胞株の選別」の最終段落,すなわち 「α クローンを継続した 存在下で更に増殖さ ,5-2N.05Cl.0I MTXせた。 産生は,単層培養では約 ・ ・ ,そして, IFN 30,000units ml day-1 -1約 細胞 の浮遊培養では ・ で安定に推移した 」 10 /ml 100,000units ml6 -1。
(695頁19ないし23行)との記載である。この記載からも,浮遊培養で を安定的に産出したことは明らかである。 IFN( ) 構成要件C及びDについてウ引用例2には, α 遺伝子で形質転換された 細胞クローン IFN- 5 CHO及び γ遺伝子で形質転換された細胞クローンを浮遊培養し, IFN- CHO生産が確認されたことが記載されている。目的の生理活性タンパク IFN質である が培養液中に産生され,精製取得されているのであるか IFNら,これらの記載は,構成要件C及びDを充たす。
( ) このように,引用例2には,本件発明の構成要件AないしDをすべエて充足する発明が記載されている。
ウ 引用例3について( ) 構成要件AについてアIL-2 pSV703 DHFR 引用例3には ヒト から と選択マーカーマウス ,「( )( から[ ])の発現単位の両方を含む第3のプラスミドが pSV2-DHFR 15構築され と名付けられた」と記載され 「 細胞はプラ pSV720 CHO dhfr,-スミド (図1)で形質転換され,引き続いて選択培地で培養さ pSV720れた」と記載されている。また 「組換えは・・・浮遊培地(ギブ ,IL-2コ社)を用いて攪拌フラスコでの浮遊培養により取得された」こと,つまり,得られた形質転換細胞が培地中に懸濁されたことが記載されている。
これらの記載は,構成要件 を充たす。A( ) 構成要件Bについてイ引用例3には 「組換え は・・・攪拌フラスコでの浮遊培養によ ,IL-2り取得された」こと,つまり,本件発明の実施例と同様に,スピナーフラスコを用いて浮遊攪拌培養を行ったことが記載されている また 組。,「換え は,通常,組換え クローン の リットルの浮遊培養 IL-2 CHO 32 1」,「, から精製された こと ヒト を大量に生産する 株の単離は IL-2 CHOこの,ヒト天然 に近いあるいは同一の構造を有するリンフォカイ IL-2ンの,ほぼ無限の供給を可能とする」こと,及び「この研究で得られたIL-2 CHO ・・・ 産生のレベルは,これまでに報告されている形質転換細胞・・・に比較して好ましいものである」ことが記載されている。
引用例3には,本件明細書の実施例よりも大量の培養スケールで,大量,持続的かつ無限の 産生を可能とする安定した形質転換細胞が IL-2取得されているのであるから,その前提として,浮遊攪拌培養に適した形質転換 細胞が樹立されていたことは明らかである。また,浮遊 CHO攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立するために,浮遊攪拌培養を継代して行うことも当然のことである。
したがって,引用例3の上記記載は,構成要件Bを充たす。
( ) 構成要件C及びDについてウIL-2 CHO 32 1 引用例3には 「組換え は,通常,組換え クローン の ,リットルの浮遊培養から精製された 」と記載されている。目的の生理 。
活性タンパク質である が産生され,精製取得されているから,こ IL-2の記載は,構成要件C及びDを充たす。
( ) このように,引用例3には,本件発明の構成要件AないしDをすべエて充足する発明が記載されている。
エ 引用例4について( ) 構成要件Aについてア引用例4には 「チャイニーズハムスター卵巣細胞( )を用いた , CHO場合でも,たとえ,さきに述べた天然型 とまったく同様の精製 hG-CSF工程を用いたとしても, 細胞が 以上 という高発現株である CHO 10mg /lため,精製回収量は 倍以上も向上した」と記載されている。ここで 10。
引用されている「第9回日本分子生物学会要旨集 3A-39 (乙4」G-CSF CHO G-CSF 5)には,ヒト の生産系を確立するため, 細胞でのの発現を検討したこと,そのために, 初期プロモーター下流にシ SV40グナルペプチド領域を含む を接続し,さらに,マウス 遺伝 cDNA dhfr() 子を連結した発現プラスミドをリン酸カルシウム法で 細胞CHO dhfr-に形質転換したことが記載されている。上記 は,公知の生理活 G-CSF性タンパク質である。よって,これらの記載は構成要件Aを充たす。
( ) 構成要件Bについてイ引用例4には 「 細胞株をサスペンジョン化し,低血清培地から ,CHOきわめて高い回収率で を得ている と記載され 続けて 以 r-hG-CSF」,,「,, 上述べてきたように 遺伝子工学を用いて の高発現株が得られ hG-CSF大腸菌,動物細胞のいずれにおいても,大量培養,大量精製に成功しており」と記載されている。
形質転換細胞である 細胞株をサスペンジョン化し,大量培養に CHO成功しているのであるから,その前提として,浮遊攪拌培養を継代して行うことで安定した 細胞株の培養に成功し,その結果として,浮 CHO遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立したことは明らかである。
よって,引用例4の上記記載は,構成要件Bを充たす。
( ) 構成要件Cについてウ引用例4の記載から,形質転換細胞である 細胞株を浮遊攪拌培 CHO養することにより,目的生理活性タンパク質である を高い回r-hG-CSF収率で生産し,大量精製に成功していることがわかる。よって,引用例4の記載は,構成要件Cを充たす。
( ) 構成要件Dについてエ引用例4の記載は,生理活性タンパク質である の製造法を開G-CSF示したものにほかならず,構成要件Dも充たす。
( ) このように,引用例4には,本件発明の構成要件AないしDをすべオて充足する発明が記載されている。
(原告の主張)ア 引用例1に基づく新規性の欠如の主張について引用例1には,順次培養スケールを拡大したとの記載はなく,培養のスケールが不明であり,大量培養装置での培養に至ったことは記載されていない。
引用例1の「安定な形質転換体が・・・深いタンク型バイオリアクターで浮遊培養として,維持された」との記載の前には 「更なる増幅のため,にクローン が選択され,適切なレベルの の発現が観察される DN2-3 EPO。」 までメトトレキセート濃度を増大させて生育する形質転換体を選択したとあるのみである。この記載における「 の発現」は,メトトレキセ EPOート濃度との関係で記載されているから,通常の付着培養により観察したのであろうし,そうすると,その直後の文章にある「安定な形質転換体」とは,得られた形質転換体を付着培養により培養し,その性質( のEPO生産能を含む )が安定かどうかを確認したものと解釈するのが自然であ 。
る。すなわち,死滅せずに細胞が維持されたという以上の積極的な意味を有するものではない。したがって 「安定な形質転換体」が浮遊状態で増 ,殖し,かつ,増殖速度が大量生産用に適するレベルであるとは限らない。
むしろ,付着培養により得られた細胞を回収して,深いタンク型バイオリアクターに浮遊させ,単にタンパク質が生産されたことを認めたと解するのが妥当であり,この段階においては,浮遊化状態で細胞を安定に増殖させ,攪拌培養に適した細胞が樹立されている必要はない。
特許法29条1項3号新規性の判断において 「刊行物に記載された ,発明」は,刊行物に記載されている事項及び記載されているに等しい事項から当業者が把握できる発明をいうが,引用例1の頒布時における技術常識参酌しても,当業者が引用例1から本件発明を把握することができるとはいえない。
イ 引用例2に基づく新規性の欠如の主張について( ) 引用例2には,浮遊培養についての言及があるが,引用例2の全体アを通じ,浮遊培養に関する具体的な開示は存在せず,継代を繰り返すことによって,大量生産に適する安定性を有した細胞が樹立され得る点については,何の記載もない。
したがって,引用例2に記載された浮遊培養は,本件発明の実施における初期の浮遊攪拌培養の状態のように,安定性の確認を伴わない一過性の浮遊培養可能性を意味する以上のものではない。
( ) 被告の主張は 「 合成は・・・少なくとも数ヶ月にわたって維イ,IFN持された (688頁25ないし29行)との記載を最大の根拠として 」いるが,この部分には, の合成が浮遊培養法によるものであるとの IFN記載はない。この記載に対応する具体的記載は 「連続的に継代された ,細胞は少なくとも3ヶ月の間構成的に を産生した(テーブル1 」 IFN )(693頁下から2行ないし最下行)との記載であり,テーブル1(6samples were taken from confluent 94頁)の下部の説明には 「,(サンプルはコンフルエント(支持体表面に細胞が monolayer cultures一面に増殖している状態を指す )な単層培養体から採取した 」との 。)記載がある。すなわち,被告が指摘する上記記述は,付着培養した細胞についての 産生能を試験した結果であり,浮遊培養を数か月連続 IFNした実験ではない。
したがって,本件発明が引用例2発明と同一であるとはいえない。
ウ 引用例3に基づく新規性の欠如の主張について引用例3には,浮遊攪拌培養の具体的方法について何の記載もなく,浮遊攪拌培養を継代して繰り返すことにより,増殖性及び生産性の安定した細胞を樹立することを示唆する開示は存在しない。被告が引用する「組換え は・・・攪拌フラスコでの浮遊培養により取得された」との記載 IL-2は,たまたま適用した培養条件で一過性の浮遊培養が可能であったことを示すだけである。引用例3のような研究の目的において,継代を繰り返して細胞の性質が安定するかどうかを検討することは考えられず,浮遊培養を行ったとしても,数日程度のことであろう。
,「 ,, また 引用例3の ヒト を大量に生産する 株の単離は この IL-2 CHOヒト天然 に近いあるいは同一の構造を有するリンフォカインの,ほ IL-2ぼ無限の供給を可能とする」との記載も,浮遊攪拌培養における増殖性と生産性が安定した細胞の樹立を意味するものではなく,バイオテクノロジーの一般論を述べたものにすぎない。
したがって,本件発明が引用例3発明と同一であるとはいえない。
エ 引用例4に基づく新規性の欠如の主張について引用例4には 「 細胞株をサスペンジョン化し,低血清培地からき ,CHOわめて高い回収率で を得ている」との記載があるが,この簡単 r-hG-CSFな記載のみであり 「サスペンジョン化」の具体的意味は不明である。 ,被告は,サスペンジョン化して大量培養に成功しているのであるから,その前提として浮遊攪拌培養を継代して行うことで安定した 細胞株CHOの培養に成功したことは明らかであると主張するが,そのような記載は,引用例4のどこにも存在しない。引用例4において,培養又は精製の量については 「 の培養上清」という記載があるのみであり,工業的な意 ,1.2l味での大量ではない。
当業者が引用例4を読んだ場合,引用例1ないし3と同じく,浮遊攪拌培養を行った実験例が存在することは理解するとしても,本件特許の意味で安定した増殖性と生産性を獲得した浮遊攪拌培養に適合した細胞が得られること,特に培養を継代して繰り返し行うことにより,そのような細胞が得られることまでは到底理解し得ない。
? 争点?イ(進歩性の有無)について(被告の主張)仮に,原告が主張するように,本件発明の「元来付着性である」との文言が 「 細胞の一般的性質」であり,およそ 細胞であれ ,CHO dhfr CHO dhfr- -ば,従来技術で浮遊化が可能であったか否かを問わず広く特許請求の範囲に,, , 「()」 含まれると解し かつ その培養条件についても 上記?の 被告の主張オ( )のような限定解釈がされないとすれば,本件発明は,次のとおり,本ア件優先権主張日前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許(請求項1に係る部分に限る )は,特許法29条2項の規定に違反して特許されたものである 。
から,同法123条1項2号の規定に基づき,特許無効審判により無効にされるべきものである。
進歩性の欠如@本件発明は,次のとおり,引用例1発明ないし引用例3発明及び昭和51年刊行の「組織培養 (乙2。以下「引用例5」という )に記載され 」。
た発明(以下「引用例5発明」という )に基づいて,当業者が容易に発 。
明をすることができたものである。
( ) 引用例5についてアa 引用例5は,浮遊培養に関する当業者の技術常識が解説されているという意味で,当分野における教科書ともいえる文献である。
引用例5には,次のとおりの記載がある。
「本法を実施するにあたっては ・・・従来考えられているほど ,その培養は困難なものではなく,またそれに必要な手技も繁雑ではない。本法は・・・すでに継代培養の確立された株細胞では,その種類により多少の難易はあっても,単層培養から浮遊培養に移してその増殖を継続維持することが可能である (69頁9ないし1 。」3行)「われわれの研究室でも1959年以来・・・浮遊培養を実施,培養の保存と維持ばかりでなく各種の生化学的あるいは分子生物学BHK Chinese 的実験に使用して多大の効果をあげている・・・ ,・・・の諸細胞も単層培養と同様な増殖能を示すこ Hamster Ovaryとを認めている (69頁23ないし29行) 。」「多くの場合,継代培養の確立された株細胞では・・・安定した培養に発展して増殖を維持できるようになる (69頁末行ない。」し70頁2行)「もし細胞が浮遊培養に適応しにくく,細胞の死亡率が増加するか,細胞の凝集がひどく大きな細胞塊( )を作る傾向にある clump時には,健全な細胞あるいは細胞塊を作りにくい細胞だけを選択して培養を更新すべきである・・・この方法をくり返せば最終的には浮遊培養に適応した細胞だけが残り,その目的を達成することができる (70頁7ないし13行) 。」「細胞数の増加にしたがい必要に応じて新しい培養液を加えて細胞濃度を希釈し培養を継続できるが, のように容量を stock culture一定に保つときは培養の一部を除去してから新しい培養液を加えればよい。もし細胞の細胞塊が強く培養瓶壁への細胞付着が著しくなれば,培養の一部をトリプシン処理で単細胞懸濁液にしたものを新しい培養瓶に移して培養を継続する (74頁8ないし11行) 。」これらの記載から明らかなように, 細胞等の動物細胞が継代 CHO培養の確立された株細胞であること,継代を繰り返し行うことで浮遊培養に適した細胞を樹立できること,浮遊培養で安定してその増殖を維持できることは,当業者間の技術常識である。
b 原告は,引用例5について,昭和55年に 細胞が樹立さ CHO dhfr-れる以前に刊行されたものであって, 欠損でない 細胞に関 dhfr CHOする文献であるから, 細胞を形質転換した細胞に関する本 CHO dhfr-件発明と同列に扱うことはできないと主張する。
しかし,引用例5は,継代培養の確立された細胞株は浮遊化できるという浮遊化に関する一般原則を教示するものである。そして,引用例5は,その書名からも明らかなように,動物細胞などの組織培養の教科書的な書籍であり,本件優先権主張日当時に当業者が容易に利用可能であった文献である。引用例5の刊行後に樹立された細胞が,この原則には当てはまらないと考える理由はない。
c したがって,生理活性タンパク質を大量に得ることを目的として,そのタンパク質をコードする遺伝子を導入された 細胞を浮CHO dhfr-遊培養に馴化させようとする当業者にとっては,引用例1ないし3の開示を引用例5の開示と結び付けて本件発明に到達する大きな動機付けが存在する。
( ) 細胞の浮遊培養の困難性の有無イCHO dhfr-原告は, 細胞については,浮遊攪拌培養に適した細胞が樹 CHO dhfr-立できないと考える格別の事情があったと主張する。しかし,次のとおり,原告の上記主張は,誤りである。
a 浮遊化に際しての導入遺伝子の安定性について原告は,平成13年8月21日付特許異議意見書(乙3の16)において 「刊行物18の記載・・・内容は,付着性の 細胞が浮 , BHK遊培養に適応することを示す内容であるというよりは,そのタイトルにもあるように,浮遊培養適応の過程で細胞には機能及び形態,特に染色体数に大きな変化が起こることを示している内容でありますから・・・刊行物17の内容と同様に,付着性の遺伝子組換え細胞を浮遊攪拌培養に適した細胞に適応させる過程で,組換えタンパク質の生産性を安定に保持できる保証が何らないことを示しているものと解すべきであります ( 刊行物18」は本件の乙46 「刊行物17」は 。」「 ,本件の乙47。8頁6ないし13行)と主張し,これを根拠として,同年9月28日付審問事項回答書(乙3の18)において,付着細胞の浮遊化を図る過程で「外来性に導入した目的遺伝子の安定性,すなわち組換え蛋白の生産性が安定して保持されることについては,大きな危惧が予想された (3頁13ないし14行 「形質転換された 」) ,細胞について特に浮遊化が困難と考えられていた (3頁 CHO dhfr-」9行)と主張している。
これを受けた本件異議決定は,上記「刊行物18」につき 「浮遊,培養適応の過程で細胞には機能及び形態,特に染色体数に大きな変化が起こることが示されている」と,上記「刊行物17」につき 「浮,遊適応細胞はウイルス感染性が変化したことが記載されている」と,それぞれ判断している。
SOME しかし 上記 刊行物18 すなわち 昭和41年刊行の ,「 」,, 「FUNCTIONAL AND MORPHOLOGICAL ALTERATIONSOCCURRING DURING AND AFTER THE ADAPTATION OF BHK 21( クローン CLONE 13 CELLS TO SUSPENSION CULTURE BHK21」「細胞を浮遊培養に馴化中及び馴化後に生じた機能的及び形態的変 13化 。乙46。以下「乙46文献」という )には 「両方の親株はど 」。,ちらも発ガン性であったから,浮遊培養への馴化の直接的結果としての発ガン性の変化に関しては,残念ながら,明確な結論はまったく得られなかった (127頁下から14ないし12行)と記載されてい 」るにすぎない。原告が主張する浮遊培養への馴化による細胞機能の変化については,乙46文献では何の結論も示されていない。
GROWTH また 上記 刊行物17 すなわち 昭和37年刊行の ,「 」,, 「OF A CLONED STRAIN OF HAMSTER KIDNEY CELLS INSUSPENDED CULTURES AND THEIR SUSCEPTIBILITY TO THE( 浮遊培養中のハムスタ VIRUS OF FOOT-AND-MOUTH DISEASE」「ー腎細胞クローン種の成育と口蹄病ウイルスへの感染性 。乙47。」以下「乙47文献」という )には 「口蹄病ウイルス力価を,マウ 。,スにおいて,浮遊培養された細胞の単層培養において,および単層培養で継代した細胞の単層培養において,評価分析した比較を表2に示すが,どちらのタイプの単層培養についても同サイズのプラークの生成が認められたにもかかわらず,いくつかの口蹄病ウイルス株に関して細胞の感受性が変わっていることが分かる。この変化は,浮遊細胞を評価分析システムに使用するための最良の方法がまだ決定していないという事実によるものであろう (1164頁左欄5ないし13 。」行)と記載されている。浮遊状態の細胞でなく,浮遊培養された細胞をいったん単層細胞に戻してから測定している点及び細胞の感受性が変化した理由を当時の測定方法の不備に求め,細胞を浮遊培養したこと自体を理由として掲げていない点に留意すべきである。
実際にも,本件優先権主張日前に,既に形質転換 細胞をCHO dhfr-含む様々な形質転換細胞の浮遊化が行われ,遺伝子が脱落することな,, く 安定した組換えタンパク質の生産が確認されていたのであるから本件優先権主張日当時には,構成要件Bの「浮遊攪拌培養を継代して行うことにより浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立」するまでの過程において,導入遺伝子の安定性については技術的に解決済みだったのである。
したがって,乙46文献及び乙47文献の記載は,いずれも浮遊培養への馴化により細胞の機能が変化することを意味するものではない。まして, 細胞の浮遊化への馴化過程で遺伝子の安定性 CHO dhfr-に大きな危惧が予想されたとの原告の主張の根拠にはなり得ない。
b 細胞の浮遊化困難性について CHO dhfr-原告は,平成13年8月21日付特許異議意見書(乙3の16)及び同年9月28日付審問事項回答書(乙3の18)において,甲20文献の「組換え 細胞および 細胞は,いずれも接着依存性 C127 CHOの細胞で浮遊化はできない(20頁左欄16ないし17行)との記 」載を, 細胞から浮遊攪拌培養に適した細胞を得ようとする CHO dhfr-動機付けを否定する根拠として挙げている。
-しかし 現実には 本件優先権主張日前に 既に形質転換 ,, ,CHO dhfr細胞の浮遊化が行われ,浮遊状態で増殖し,安定に目的タンパク質を生産する株,すなわち,浮遊培養に適応した細胞株が,樹立されていたのであるから,原告の主張は,失当である。
さらに,甲20文献の共同執筆者であるP4研究員の意見書(乙4,「 」 。), , 8 以下 乙48意見書 という によれば 甲20文献の記載は実際には 「組換え 細胞は接着依存性であるが浮遊化も可能で ,CHOある」と記載すべきであったのであり,P4研究員自身が,仮に甲20文献の記載から 「組換え細胞は浮遊化できない」と考 ,CHO dhfr-えた研究者がいたとしても,引用例1ないし3の記載を見れば 「組,換え 細胞は浮遊化できる」と認識したであろう,と述べて CHO dhfr-いる。
このように,甲20文献は,少なくとも本件優先権主張日時点において,当業者が 細胞から浮遊攪拌培養に適した細胞を得よ CHO dhfr-うとする動機付けを否定する理由とはなり得ない。
c P6岩手大学農学部教授 以下 P6教授 という の鑑定書 乙 (「 」 。)(49。以下「乙49鑑定書」という )の記載。
乙49鑑定書には,次のとおりの説明が記載されている。
すなわち 「一般に,長期に継代培養された樹立された細胞株の場 ,合には,付着性の細胞であっても,浮遊培養に移行して,継代して維持できることは広く知られていた」のであり 「 細胞がそのよう ,CHOな浮遊培養可能な細胞株のひとつであることも,成書にも記載されているとおり」である。なお,上記「成書」とは,引用例5を指している。そして 「 細胞も長期に継代培養された樹立された細 ,CHO dhfr-胞株でありますから,浮遊培養に移行して,継代して維持できることは当然のこと」と断言している。
ちなみに,P6教授は,バイオテクノロジーによる組換えタンパクCHO 質の発現や機能解析等の権威であり,本件優先権主張日当時の細胞を用いる形質転換細胞の作製や培養方法に関する技術分野 dhfr-における第一人者である。また,細胞の開発や,日本の研 CHO dhfr-究者,企業への分譲に直接関わった関係者でもある。
( ) 上記( )及び( )のとおり,本件発明は,引用例1発明ないし引用ウアイ例3発明と引用例5発明との組合せにより,当業者が容易に想到でき,細胞が引用例5に開示された動物細胞一般と比べ,特別に浮 CHO dhfr-遊培養の困難な細胞であることを示す証拠も存在しないから,進歩性を欠く。
進歩性の欠如A本件発明は,次のとおり,昭和63年3月7日に国立国会図書館に受け入れられた日本農芸化学会誌1988年3月号所収の「遺伝子増幅系を用いた赤芽球分化誘導因子 の生産-浮遊培養株の育種- (乙7 EDF CHO」の1。以下「引用例6」という )に記載された発明(以下「引用例6発 。
EXPRESSION OF 明」という )及び昭和63年2月29日刊行の「 。
ERYTHROID DIFFERENTIATION FACTOR EDF IN CHINESE ()( チャイニーズ・ハムスター・オバリー細胞 HAMSTER OVARY CELLS」「中の赤芽球分化誘導因子( )の発現 。乙51。以下「引用例7」と EDF」いう )に記載された発明(以下「引用例7発明」という )に基づいて, 。。
当業者が容易に発明をすることができたものである。
( ) 引用例6についてアa 構成要件Aについて引用例6には,遺伝子増幅系を用いて 細胞で を発現さ CHO EDFせたこと,また,得られた形質転換 細胞を浮遊攪拌培養したこ CHOとが記載されている。は,公知の生理活性タンパク質である。 EDFよって,これらの記載は, 細胞が株であることの明記が CHO dhfr-ないほかは,構成要件Aを充足する。
b 構成要件Bについて引用例6には,形質転換 細胞を浮遊攪拌培養し,この操作を CHO繰り返すことで,浮遊攪拌培養に適応した細胞が育種できたことが記載されている。
この記載は,構成要件Bを充足する。
c 構成要件C及びDについて引用例6には,浮遊攪拌培養でを生産することができること EDFが記載されている。
この記載は,構成要件C及びDを充足する。
( ) 容易推考性イdhfr CHO 引用例7には, 遺伝子を含有する発現プラスミドを用いて細胞を形質転換したことが開示されている。 dhfr-引用例6と引用例7は,いずれも同じ筆者らが,同じ組換え をEDF産出する 細胞の製造について記述したものである。しかも,両文 CHO献に記載された 細胞は,ともに ? 日という同じ 産出 CHO 1 /ml/3 EDF量である旨が記載されている。このことから,両文献は,同じ 細CHO,。, 胞を開示したと読むのが自然であり容易に結び付くものである また引用例6には, 細胞が 株であるとの明示がないほかは,本件 CHO dhfr-発明の構成要件がすべて開示されている。
したがって,本件発明は,引用例6及び引用例7の開示から当業者が容易に想到できる程度のものである。
( ) 引用例6の公知文献該当性ウa 引用例6は,本件優先権主張日より前の昭和63年3月7日に国立。, , 国会図書館に受け入れられている 加えて 引用例6と同一の文献が同月5日に特許庁資料館に受け入れられている。
したがって,引用例6は,本件優先権主張日前に頒布された刊行物に当たる。
b これに対し,原告は,引用例6が国立国会図書館で公衆に閲覧可能となったのは,本件優先権主張日後である昭和63年3月12日であるから,公知文献に該当しないと主張する。
しかし,次のとおり,原告の上記主張は失当である。
? 最高裁昭和36年( )第1180号同38年1月29日第三小法オ(。「」 廷判決 裁判集民事64号251頁 以下 昭和38年最高裁判決という )は,旧特許法(昭和34年法律第122号による廃止前 。
のもの)4条2号の「出願前国内ニ頒布セラレタル刊行物」の解釈に関する事案ではあるが,国内特許出願日の3日前に特許庁資料館に受け入れられていたフランス国特許明細書について 「出願前に,わが国の特許庁資料館に到達していても,出願当時には,未だ一般公衆の閲覧可能な状況にはなかったのであるから,本件発明は,旧特許法4条2号に該当しない旨」の上告人の主張を排斥し 「わが,国の特許庁に到達し同庁資料館に受け入れられた以上は,右刊行物は旧特許法4条2号にいう『国内ニ頒布セラレタル刊行物』と解するのが相当である」とし,続けて「右明細書が出願当時一般公衆 ,の閲覧が可能であったか否かを問わず,本件発明は,旧特許法4条2号に該当するものといわなければならない」と判断した。
よって,国立国会図書館や特許庁資料館といった公衆の閲覧に供,「」 する場所に受け入れられた日をもって 当該刊行物が 頒布されたと解するのが相当である。
? 最高裁昭和53年( )第69号同55年7月4日第二小法廷判行ツ決(民集34巻4号570頁。以下「昭和55年最高裁判決」という )は,いつの時点をもって「頒布された」とするかにつき,何 。
ら判示していない。これは,昭和38年最高裁判決を踏襲する趣旨であるからにほかならない。
昭和55年最高裁判決は 「頒布された刊行物」を「公衆に対し ,頒布により公開することを目的として複製された文書,図画その他これに類する情報伝達媒体であって,頒布されたもの」と定義した上で 「必ずしも公衆の閲覧を期待してあらかじめ公衆の要求を満 ,たすことができるとみられる相当程度の部数が原本から複製されて広く公衆に提供されているようなものに限られるとしなければならないものではなく」と判示している。
引用例6が所収された会誌は,第3種郵便物の認可を得ている雑誌であるから,相当程度の部数を発行に当たりあらかじめ複製して広く公衆に提供されることを予定したものであり,前記「公衆の閲覧を期待してあらかじめ公衆の要求を満たすことができるとみられる相当程度の部数が原本から複製されて広く公衆に提供されているようなもの」であることが明らかである。
したがって,引用例6が「頒布された刊行物」として本件特許に対する公知文献に該当することは論を待たない。
? 最高裁昭和61年( )第18号同年7月17日第一小法廷判決行ツ(。「」。 ) 民集40巻5号961頁 以下 昭和61年最高裁判決 というは 外国特許明細書の原本を複製したマイクロフィルムが 前記 公 ,,「衆の閲覧を期待してあらかじめ公衆の要求を満たすことができるとみられる相当程度の部数が原本から複製されて広く公衆に提供されているようなもの」に該当しなくても 「頒布された刊行物」に当 ,たるとする理由を説示した事案であり,引用例6のような,あらかじめ相当程度の部数が複製されて広く公衆に提供される文献について,いつの時点をもって「頒布された」とするのかの認定基準を示すものではない。
すなわち,昭和61年最高裁判決でも,昭和38年最高裁判決を変更するような判示は一切なされておらず,昭和38年最高裁判決を踏襲するものと解するのが自然である。
進歩性の欠如B本件発明は,次のとおり,昭和62年5月25日刊行の日経バイオテクノロジー最新用語辞典87所収の「チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞」[ : ]に関する記述(乙53。以下「引用 Chinese hamster ovary cell CHO例8」という )による発明に基づいて,当業者が容易に発明をすること 。
ができたものである。
( ) 構成要件Aについてア引用例8には 「米国 社は, 細胞を宿主として,ヒト ,Genentech CHO血栓溶解剤ティッシュ・プラスミノーゲン・アクチベータ( )を生TPA産している 」との記載がある。上記は,公知の生理活性タンパク 。 TPA質である。なお, を生産するに当たり,上記 社は,昭 TPA Genentech和61年4月にアメリカ合衆国で医薬品の製造承認の申請をし,製造承認を受けている。
また,遺伝子操作の方法について,引用例8には 「実際にはガン・,ウイルス の複製開始部位の下流に目的の遺伝子を結合。その下流 SV40にジヒドロ葉酸リダクターゼ( )遺伝子を組み込み, を欠 DHFR DHFR損させた 細胞に形質導入する 」と記載され, 細胞を形 CHO CHO dhfr 。
-質転換することについて述べている。
さらに 「 は培養器の壁に付着し増殖するが,条件を調節すると ,CHO浮遊培養も可能だ 」として,培地中に懸濁させることを念頭に置いた 。
記載がされている。
したがって,これらの記載は構成要件Aを充たす。
( ) 構成要件Bについてイ引用例8には, 細胞が「条件を調節すると浮遊培養も可能だ 」 CHO 。
との記載に続き 「世代時間は12時間と短く増殖能力も高い 」との ,。
記載があり,さらに 「抗ガン剤の1つメソトキセレートを培地に加え ,ると,遺伝子増幅により,遺伝子のコピーは増加,目的の遺伝子産物を大量生産できる 」との記載がある。そして,上記の過程を経て作製さ 。
れる について,アメリカ合衆国で医薬品製造承認済みであること TPAをも加味すると,血栓溶解剤を生産する 細胞が,浮遊培養によっ CHOて商業的規模で目的の生理活性タンパク質を安定に生産し得る株であったこと,すなわち,浮遊培養に適した樹立された細胞株であったことが容易に想到できる。
また,浮遊培養に適した細胞株を樹立するために,浮遊培養を継代して行うことは,当然の過程として周知である。
したがって,これらの記載から,当業者は,構成要件Bを容易に想到できる。
( ) 構成要件C及びDについてウ引用例8には 「 は培養器の壁に付着し増殖するが,条件を調節 ,CHOすると浮遊培養も可能だ 「世代時間は12時間と短く増殖能力も高 。」,い 「米国 社は, 細胞を宿主として,ヒト血栓溶解剤 。」,Genentech CHO() 。」 ティッシュ・プラスミノーゲン・アクチベータ を生産しているTPAとの記載がある。
これらの記載と,アメリカ合衆国 社が 生産に当たり Genentech TPACHO 同国で医薬品の製造承認を受けていることから 同社が 樹立した,,細胞を浮遊攪拌培養することで,目的とする生理活性タンパク質であるを産生させ精製取得していることが明らかである。 TPAしたがって,これらの記載は,構成要件C及びDを充たす。
(原告の主張)ア 「進歩性の欠如@ (上記「 被告の主張 」ア)について 」( )( ) 引用例5についてアa 引用例5には, 細胞が浮遊培養法で増殖能を示したかのよう CHOな記載がある。しかし,引用例5が刊行された昭和51年当時は,遺伝子工学の技術は未発達であり,遺伝子の塩基配列の決定法が確立されたころである。当時,一番進んでいた大腸菌を用いた研究でさえ,昭和52年にP7によるソマトスタチンの発現が成功した時期であって,タンパク質の大量生産のために動物細胞を形質転換して培養する技術は,引用例5の範囲外である。
すなわち,引用例5は,遺伝子工学適用以前の通常の動物細胞であり,たまたま浮遊培養の可能性が認められたケースを挙げたものである。当時,動物細胞に遺伝子工学を適用してタンパク質の大量生産を行う研究はまだ存在しなかったから,浮遊培養適合性の細胞として樹立する観点での研究がなかったことは当然である。また,限られた実験において浮遊培養が可能であったことと,浮遊攪拌培養に適合した細胞が樹立されることは,同一ではない。引用例5の記載は一般的すぎて,樹立の有無を確かめることはできない。
また, 細胞は,昭和55年に新たに樹立された細胞であ CHO dhfr-って,引用例5が刊行された昭和51年には,まだ 細胞はCHO dhfr-存在しなかった。それまでに存在した 細胞に比べ,タンパク質 CHOの大量生産に好適な資質を有するため,動物細胞に関する遺伝子工学の進展とともに利用が広がった。
したがって, 細胞が樹立される昭和55年より前に刊行 CHO dhfr-された引用例5は, 欠損でない細胞に関する文献であり, dhfr CHO細胞を形質転換した細胞に関する本件発明と同列に扱うこ CHO dhfr-とはできない。ある遺伝子を失い,又は本来有しない遺伝子を強制的に導入された細胞は,最初の細胞とは性質が異なって当然である。
,(「」。) b 引用例5の記載は P8工学院大学教授 以下 P8教授 というの鑑定書(甲43。以下「甲43鑑定書」という )のとおり,当時。
。, の少数の成功例として理解すべきものである 当時の研究者にとって無数に存在する付着性細胞の大半が簡単に浮遊化に適応できるなどと判断できる根拠はなかった。成功例は報告されても,失敗例は報告されないから,成功例だけから研究の状況を判断することは不適切であり,これは研究全般についていえることである。
c また,引用例5が「浮遊培養」という際に,どの程度の浮遊化を意味していたのか明らかではない。引用例5の刊行当時,形質転換した動物細胞の浮遊培養によって工業的にタンパク質を製造するなど,夢のようなことであった。工業的生産において必要とされるような,浮遊攪拌培養における増殖性等の性質の安定性まで考慮して,引用例5が記載されているとは理解されない。
さらに,本件発明の「浮遊攪拌培養に適した細胞」は,浮遊培養で安定してその増殖を維持できるだけでなく,目的とする生理活性タンパク質を安定して生産できるものでなければならない。引用例5においては,付着性の組換え 細胞を浮遊化させても,導入され CHO dhfr-た遺伝子が安定に細胞中に保持,再現され,目的タンパク質が安定に生産されることは示唆されておらず,これを引用例1ないし3の開示と組み合わせても,本件発明の方法によって達成される目的タンパク質を大量かつ安定に生産できるという効果は予想できなかったのである。形質転換された細胞は,引用例5の刊行当時に存在した 細CHO胞とも,また,その後現れた 細胞とも異なる。形質転換さ CHO dhfr-れた細胞を得るためには,プラスミドにより目的タンパク質をコードする遺伝子が導入されており,この導入遺伝子が有効に発現するかどうかが問題である。
d 甲28の1文献も,やはり組織培養の教科書であるところ,細胞を浮遊化させる方法についての記載の冒頭に 「浮遊培養法への馴化」 ,cell として 「浮遊培養法で細胞が増殖できるようになるかは細胞株( ,)。」。「( )」 lines cell lines によって大きく異なる と記載されている 細胞株とは,引用例5にいう「継代培養の確立した株細胞」と同じ意味である。したがって,たとえ継代培養の確立された株細胞であっても,浮遊化できるか否かについては,専門家の意見も分かれるところであったといえる。
甲28の2文献には 「単層培養の系に している細胞を浮遊 ,adapt,, 培養の系に移し 長期間維持することは通常とても困難なことであり。」, まれに成功しても細胞の増殖度は余り良くない と明記されており上記「単層培養の系に している細胞」も 「継代培養の確立し adapt,た株細胞」を意味する。
このように,動物細胞の培養に関する研究の蓄積が更に進んだ1980年代の専門家の見解は,引用例5とは異なり,付着性細胞を浮遊化することは一般に困難である,というものであった。
( ) 細胞の浮遊培養の困難性の有無イCHO dhfr-a 浮遊化に際しての導入遺伝子の安定性について? 付着性の細胞(動物の身体組織の一部として組織に付着することによって生存していた細胞)が,組織(支持体)依存を離れ,液体中に浮遊した状態で増殖し,タンパク質を生産することができるよ,, 。 うになることは その細胞にとって大きな性質の変化を意味するその変化は,遺伝子に関する何らかの変化(塩基配列そのものの変化, 鎖の後成的修飾(エピジェネティクス)を伴う遺伝子発 DNA現レベルの変化など)によってもたらされるものであると理解せざるを得ないが,どのような遺伝子の変化によるものかを特定することまではできない。
また,浮遊化のための変化が起きても,同時に他の変化も起きて有用性がなくなったり,あるいは,浮遊化した後も更なる変化によって浮遊性を失うことも考えられる。
浮遊化した後も生き残った細胞は,遺伝子に何らかの変化を生じているものであると考えられる。一応浮遊状態で生存可能になった細胞を続けて浮遊攪拌状態で培養すると,更に遺伝子に様々な変化が生じ,遺伝子の機能がわずかに異なる多様な細胞が生成すると考えられる(どのような変化が生じ,どのような性質変化が起きるかは予測できない 。そのため,継代して培養を続けていると,一 。)度獲得した浮遊培養性が低下し,あるいは,失われ,また,タンパク質の生産性も変化することがある。
工業的な大量生産のためには,細胞が一時的に好適な性質を示すだけでは足りず,実用的に十分な長期間にわたり,増殖性,タンパク質の生産性等の性質が一定化する必要がある。
換言すれば,本件発明が成功するためには,浮遊攪拌培養の条件にさらすことによって,浮遊化するような遺伝子の機能の変化を起こし得る細胞でなければならないが,浮遊攪拌培養に適合する遺伝子の状態に到達した後は,この性質を変化させるような遺伝子の変化が起きにくいという相矛盾する傾向を有することが必要であった。さらに,得られる細胞は,タンパク質の生産性が高く安定していることが要求され,タンパク質を発現する遺伝子については,その機能を害するような変化が起きないことが必要である。いかなる細胞がこのような望ましい性質を有するかを,あらかじめ予測することは困難である。
しかも,浮遊攪拌培養に成功するには,甲6文献に記載されているように 「 を導入した接着 細胞についても,壁から細 ,cDNA CHO胞をはがした後,根気よくサスペンジョンカルチャーを繰り返し,最終的によく適合し増殖する細胞をクローニングし」という過程を経る必要がある。このような努力をしても,本来浮遊培養適合性のない細胞であれば,徒労に終わる。
形質転換した 細胞が,上記の好適な性質を有していた CHO dhfr-ことは,まさに偶然であり,公知技術から予測できることではなかった。
-被告が引用する公知技術は,いずれも,形質転換したCHO dhfr細胞を浮遊攪拌培養の環境にさらすと,一過性の浮遊培養の可能性を教示するものの,細胞の増殖性及び組換えタンパク質生産の安定性を獲得し得ることを教示するものは一切存在しない。本件発明における「浮遊攪拌培養に適合した細胞を樹立」とは,これらの安定性の獲得がなされることを意味している。
? 被告は,乙46文献について,浮遊培養への馴化による細胞機能の変化については何の結論も示されていないと主張する。
しかし,乙46文献は,発ガン性を有する2つの付着性細胞(2Pと3P)を浮遊培養した場合に,発ガン性,染色体,形状などに変化を生ずるか否かを調べた文献である。そして,例えば,3P株が浮遊化への馴化によりガン増殖速度が著しく増加したと記載され,染色体数に関しても,浮遊化への馴化により変化することが記載されている。すなわち,2P株に関しては,浮遊化により染色体数が45本から44本,43本へと変化し,3P株に関しても染色体数の変化が記載されている。このように,乙46文献は,浮遊培養に適合する過程で染色体数の変化が起こることを示しており,染色体数の変化は遺伝情報の欠落,重複を意味することから,付着性の細胞から浮遊攪拌培養に適した細胞を樹立する過程においては,染色体に組み込まれた組換え遺伝子の安定性が大きな影響を受け得ることが容易に考えられる。
被告が乙46文献について訳出した部分は,浮遊化する前の2P株,3P株とも発ガン性を有していたから,発ガン性のない細胞が発ガン性を有するようになったというような明確な変化ではないため,浮遊培養への馴化からどのような結論が導かれるかは明確でないことを指摘したものである。本件との関係においては,事実として発ガン性の程度が変化したこと,及び浮遊化のための工程が染色体の変化(遺伝子の変異)をもたらすとの事実が重要である。
被告は,ウイルスの感受性の変化に関する乙47文献について,「この変化は,浮遊細胞を評価分析システムに使用するための最良の方法がまだ決定していないという事実によるものであろう」との訳文を示し,細胞の感受性が変化した理由を,当時の測定方法の不備に求め,細胞を浮遊培養したこと自体を理由として掲げていない点に留意すべきであると主張する。
This change may be due to the しかし,乙47文献の原文は 「,」であって 「・・・事実によるものであろう」との訳 fact that ...,は適切ではなく 「・・・事実によるのかもしれない 」という, ,。
可能性を否定しない程度の表現である。また,内容的にも,浮遊細胞と単層培養細胞を用いたウイルス力価の評価方法は,両者とも単層培養にした後に行っており,実験手技的に同一と考えられ,乙47文献の表2の結果は,細胞の感受性の違いを意味すると理解してよい。
したがって,乙47文献の記載が浮遊培養への馴化により細胞の機能が変化することを意味するものではないとする被告の主張は,失当である。
b 細胞の浮遊化困難性について CHO dhfr-乙48意見書においても 「研究開始当時,私たちは接着依存性細 ,胞による物質生産は,浮遊化することにより細胞の生産能が低下することを多く経験していたことから,接着状態での大量培養システムの開発に着手し,マイクロキャリア法によるシステムを完成させたものです 」と当時の技術状況が述べられているように,浮遊化に伴う細 。
胞の諸性質の変化,導入遺伝子の安定性は,大きな問題としてとらえられていた。また,同意見書には 「正常ヒト細胞株は浮遊培養がま ,ったくできない細胞であった」との記載もある。
P4研究員は,当時バイオテクノロジーにつき最先端にあった企業の一つである東レ株式会社(以下「東レ」という )のインターフェ。
ロン開発に取り組んでいた研究員であり,東レ技術陣の認識が,当時の技術水準以下であるはずがない。当時,東レが浮遊培養が難しいと判断し,マイクロキャリア法を採用したという事実が重要である。
乙48意見書においては,甲20文献の作成当時,被告が引用するような文献を知っていれば 「組換え 細胞は浮遊化できな ,CHO dhfr-い」とは言わなかったであろうと述べられている。しかし,本件の問題は 「浮遊化できない」と断定できるかどうかではなく,大量生産 ,に使用できるだけの安定した増殖性と生産性を有する浮遊攪拌培養に適合した細胞が得られることを,容易に推考できたかどうかである。
その判断は,当該公知文献に基づいて本件訴訟の中で直接行うべきものである。
P4研究員の博士論文である平成元年の「ヒト正常細胞および遺伝子組換え動物細胞を用いたヒトインターフェロン産生に関する研究」(甲44。以下「甲44文献」という )には,甲20文献に対応す 。
る内容が詳しく述べられているところ,甲44文献には,参考文献として,引用例2が3回掲げられているから,P4研究員は,甲20文献の作成当時,引用例2の内容を熟知しており,その上で「組換え細胞は浮遊化できない」と述べたことになる。乙48意見 CHO dhfr-書の記載は,この事実と矛盾する。
Chasin また 甲44文献によれば P4研究員は P6教授を通じて ,,,,博士から 細胞の供与を受けている。もし,当時, 博 CHO dhfr Chasin-士やP6教授が,乙49鑑定書の記載のとおり, 細胞が浮CHO dhfr-遊化できるとの認識を有していたとすれば,その情報は,P4研究員にも伝えられていた可能性は十分考えられる。しかし,同研究員が,上記意見書を作成するに至るまで 「組換え 細胞は浮遊化 ,CHO dhfr-できない」と認識していたことは,明らかである。
なお,甲20文献は,P4研究員単独の論文ではなく,当時の動物細胞培養の第一人者であるP9博士との共著であり,P9博士の認識を示していることに留意すべきである。P8教授は,甲43鑑定書において,当時のこの領域の第一人者であるP9博士の見解の重要性を指摘している。また,甲20文献の見解は,P9博士の研究室における多くの経験に基づいていると理解される。
乙48意見書の評価については,甲6文献を参照していない事実に,, 留意すべきであり 甲6文献に記載されたような苦労の過程を知れば細胞の浮遊化は困難であるとの甲20文献作成当時の認識 CHO dhfr-が間違っていなかったことを確認するものと考えられる。
c 乙49鑑定書の記載本件発明は,工業的実施を前提とした大量生産技術に関するものである。この場合に,最も重要な点は,使用する細胞の増殖性及び目的タンパク質の生産性が安定して再現されることである。
これに対し,乙49鑑定書の関心,また,乙49鑑定書が依拠する文献の関心は,当該細胞が浮遊状態で培養可能かどうかという点にとどまっている。
乙49鑑定書が, 細胞につき長期の浮遊培養が可能であ CHO dhfr-ることが公知であった根拠として引用しているのは,引用例2であるところ,引用例2において,数か月浮遊培養により安定に維持されたことが記載されているというのは,上記?の「 原告の主張 」イの ()とおり,誤解である。引用例2は,付着培養中の細胞を時間をおいてサンプリングし,生産能を調べたものであり,継続して浮遊攪拌培養を行った旨は記載されていない。
なお,乙49鑑定書には,細胞の樹立者である 博 CHO dhfr Chasin-士が昭和63年6月付けで 細胞を分譲許諾した際の書簡 CHO dhfr-(甲45)に添付された同年2月25日付けの説明書に,浮遊培養方Chasin CHO 法についての記載があり,同日以前においても, 博士は。 dhfr-細胞の浮遊培養が可能であることを述べていた旨の記載があるしかし,上記書簡には,単にサスペンジョン化で生育させるというだけで,形質転換された 細胞に関する記載はなく,サスペ CHO dhfr-ンジョン化の方法や,サスペンジョン化された後の状況に関する記載もない。
d P10博士の意見書(甲46。以下「甲46意見書」という )の。
記載1980年代後半から1990年代初めにかけて,被告やキリン-アムジェン社と競争しながら の開発に携わっていた研究者P1 EPO0博士は,腎臓由来の 細胞の方が, の生理活性発現に好ま BHK EPOBHK CHO しいであろうとの判断から, 細胞による開発を行ったが,。, , dhfr L929-細胞及び 細胞の検討も行ったそして 甲46意見書には本人の経験として, 細胞は付着性が強く,大量生産には向 CHO dhfr-かないと判断したことが記載されている。
P10博士らのグループは, 細胞に関して,浮遊培養ではな BHKく,マイクロキャリア法の開発に進んでいる。当時,元来浮遊性細胞であるナマルバ細胞(非組換え細胞)については浮遊培養が行われていたが,付着性の細胞に浮遊培養を試みることは,困難が予想されたからである。
被告と 社のグループを除き,1980年代に動物細胞による生 GI,, 理活性タンパク質の生産に取り組んだ企業は キリン-アムジェン社東レ及びP10博士らの所属する雪印乳業株式会社のいずれも,付着性細胞を付着性のまま培養する方向を選んでいる。これが当時の技術水準であったことが明らかに認められる。
イ 「進歩性の欠如A (上記「 被告の主張 」イ)について 」( )( ) 引用例6の公知文献該当性アa 昭和55年最高裁判決は,出願公開が刊行物に該当するか否かの判断において 「複写物が公衆からの要求に即応して遅滞なく交付され ,る態勢が整っている」ことを要件とし,また,昭和61年最高裁判決も,オーストリア国出願のマイクロフィルムについて 「公衆がディ,スプレースクリーンを使用してその内容を閲覧し,普通紙に複写して」, その複写物の交付を受けることができる状態になった ことをもって刊行物該当性を認めた。
すなわち,刊行物が「頒布された」時とは,公衆に閲覧可能となった時又は複写物の入手が可能になった時である。
例えば,ただ1部しか存在しない論文が国立国会図書館に備え付けられ,閲覧と複製が許される場合を想定すれば,受入日をもって刊行日とすることは不合理であり,やはり公衆に閲覧可能とされた日を基準とするのが自然である。
b 本件については,国立国会図書館に受け入れられた日ではなく,閲覧可能になった日付に基づいて新規性の判断がなされなければならない。そして,本件において,引用例6が国立国会図書館において閲覧可能になったのは,昭和63年3月12日以降であった。
c 被告は,引用例6が昭和63年3月5日に特許庁資料館に受け入れられたと主張する。
しかし,当時,特許庁では,受け入れた雑誌を職員閲覧室へ保管するものと,各審査室へ配布するものとに仕分けして配布しており,引用例6は,審査第4部食品加工の審査室に配布される雑誌であった。
この配布に要する時間,当時は特許庁の新庁舎の建設中で各部署が複数のビルに分散していたこと,昭和63年3月5日が土曜日であったことを考慮すると,同日に受け入れられた引用例6が担当審査部に届くには少なくとも1週間を要したと考えられる。すなわち,審査官の利用は同月12日以降となる。
このように,引用例6は,本件優先権主張日前において,審査官すら閲覧できる状態になっていなかったのであるから 「その複写物が,公衆からの要求に即応して遅滞なく交付される態勢が整って」いなかったことになる。
また,当時,職員保管室で保管される雑誌と異なり,審査室に保管されている雑誌について公衆が閲覧することができるシステムは存在しなかったのであるから,その点においても 「その複写物が公衆か ,らの要求に即応して遅滞なく交付される態勢が整って」いなかったものである。
d 引用例6は,昭和63年3月10日に日本農芸化学会により刊行されることが予告されていた文献であり,同会においては,引用例6の各会員への到着が同日からあまり遅れないように,同月8日から郵便局に持ち込み,第3種郵便による発送を委託した。郵便局の取扱いでは,同月9日から発送されたと考えられるので,会員への到着は,同月10日以降であった。これに対し,国立国会図書館と特許庁資料館に限っては,会員への発送とは別に,同月8日より前に発送の手続をした。
その結果,引用例6は,国立国会図書館及び特許庁資料館という特定の国家機関には,同日以前に受け入れられていたが,これは,不特定多数の者への交付を前提とする刊行物の頒布とは異なる事実関係であり,この特定の国家機関が受領しただけで,公知文献に該当するものではない。
また,刊行元において公衆に頒布した刊行物の1部が特許庁に受け入れられた場合であれば,その受入日をもって刊行日の立証に用いることは合理的であるかもしれないが,本件のように,一般向けの刊行日に先行してただ1部だけ(あるいは2部だけ)が特定の機関に納入され,当該機関では,これを公衆に対し遅滞なく公開する態勢が整っていなかったという特別な事情の下では,刊行日の認定は,公衆へ公開する態勢が整った時点を基準とすべきであり,それが昭和55年最高裁判決及び昭和61年最高裁判決に沿う解釈である。
したがって,引用例6が頒布された日は,昭和63年3月10日以後であると見るのが正しい。
,, e 昭和38年最高裁判決の事案はフランス特許が対象であるところフランス特許は,少なくとも外国では既に広く頒布された刊行物であり,特許庁資料館への受入れより先に日本国内の誰かが入手していても不自然ではない性質の刊行物であった。すなわち,外国で既に流通している刊行物の日本国内における流通日を確定することが,昭和38年最高裁判決の意味であった。しかも,昭和38年最高裁判決は,当該事案に関しても不合理であるとの印象は拭い難く,後の外国出願公開に関する昭和55年最高裁判決及び昭和61年最高裁判決により実質的に変更されていると解するのが妥当であり,少なくとも外国頒布済み文献の場合に限っての先例と見るべきである。
( ) 引用例6についてイ-引用例6には 「 細胞」と記載されているだけで 「 ,, CHO CHO dhfr株」という記載はない。そして 「 細胞」と記載されているだけで ,CHOは, 遺伝子を有する 細胞であるか 「 細胞」である dhfr CHO CHO dhfr,-かは特定できない。また,引用例6と引用例7の作成者が共通であるということだけで,引用例6の「 細胞」が「 細胞」である CHO CHO dhfr-ことを本件優先権主張日前に特定することはできない。
また,引用例6には, 細胞をどのような条件で浮遊培養したの CHOかの記載も,浮遊攪拌培養に適合した細胞株が樹立された旨の記載もない。そして,本件優先権主張日前において, 株を浮遊攪拌培 CHO dhfr-養に適合させることが困難であると当業者に認識されていたのであるから,当業者が引用例6を読んだとしても,それだけで本件発明における浮遊攪拌培養に適合した 株が樹立されたと認識することは困 CHO dhfr-難であった。せいぜい別の細胞株に関する報告であり,又は細胞株の樹立には至らない一時的な活性発現の報告にすぎないと認識したにとどまったであろう。
( ) 意に反する公知ウa 仮に,被告が主張するように,引用例6に記載された細胞が実質的に「 細胞」を意味すると解釈されるとしても 「意に反す CHO dhfr-,る公知」の規定が適用されるべきである。
日本農芸化学会が引用例6の刊行日を予告している場合,刊行日と特許発明新規性の関係は当然に考慮されていると理解し,刊行日より前に要旨集が刊行されることはないと予測することは,合理的であり,この期待は,保護に値する。
したがって,予定された刊行日より前に引用例6が刊行され,そのために出願が刊行日後になった場合,意に反する公知の規定が適用されるべきである。
b 被告は,引用例6の日本農芸化学会誌への投稿は,公開目的でなされたのであるから,意に反する公知に該当しないと主張する。
しかし,公開目的での投稿であるとしても,公開日が明確に指定されており,それ以前に公開されることがないと信頼する合理的な理由がある場合には,当該日付前の公開が意に反することは当然である。
c 被告は,引用例6には 細胞が 型であることが明記され CHO dhfr-ていないから,新規性を否定する公知文献にはならず,したがって,意に反する公知に該当しないと主張する。
平成11年法律第41号による改正前の特許法では,意に反して公知となった発明と同一発明のみが救済されるかのような条文の体裁となっていたところ,平成11年法律第41号による改正後の特許法においては,進歩性に関する公知資料にも,意に反する公知の規定が適用されるようになった。しかし,これは,平成11年法律第41号による改正前の特許法が不適切であったのであり,新規性まで否定されるような発明が救済されるのに,意に反して開示された発明と形式的な相違があるだけの特許発明進歩性を欠いて無効にされるというのは,いかにも不合理である。その不合理を手直ししたのが平成11年法律第41号による改正である。同改正の趣旨は,改正前の出願による特許発明についても実質的に活かされるべきであり,これは,意に反する公知の規定の適用に際し,発明の同一性の範囲を実質的に妥当な解決が得られるように解釈することで実現できる。
仮に,引用例6発明に基づいて,被告が主張するとおり,引用例7発明を参照して本件特許は無効である,との判断がされるとすれば,引用例6記載の は,引用例7と同じく, 細胞を意味 CHO CHO dhfr-すると認定することが前提となる。その認定を前提とするなら,引用,,, 例6は 実質的に見て新規性を否定する公知文献であり したがって意に反する公知の規定を適用するのが公平の見地から妥当である。
d なお,新規性喪失の例外規定中でも,学会発表や博覧会への出品などが,発明者の完全なコントロールの下になされる行為であり,技術の早期公開を促進する意義を有するのに対し,意に反する公知の場合には,発明者の予期しない事情の発生による権利喪失から発明者を救済することが法の目的である。意に反する公知の場合,公知となる内容や時期につきコントロールできないことにかんがみ,発明の同一性の判断を厳密に行うことは妥当でない。
ウ 「進歩性の欠如B (上記「 被告の主張 」ウ)について 」( )引用例8は,用語辞典であって, について概括的な説明をしてい CHOるだけである。引用例8の浮遊培養に関する記載は 「 は培養器の壁 ,CHOに付着し増殖するが,条件を調節すると浮遊培養も可能だ 」との記載の。
みであり,この記載だけでは 「条件」がいかなるものか不明であるし, ,浮遊攪拌培養に適した細胞を樹立することを示唆するものでもない。この,。, 記載は 細胞の一般的な性質について述べたものにすぎない また CHOを宿主として を生産する方法についての記載もあるが,具体的 CHO tPAな細胞及び培養方法は明らかではない。引用例8は,ジェネンテック社に言及しているが,ジェネンテック社の特許及び論文を検討すると,サスペンジョン化に至った 細胞は,元来 遺伝子を有する 細 CHO dhfr CHO K-1胞であると考えられ,本件発明に関係するものではない。また,引用例8CHO は キリンや東レの開発にも言及しているところ これらの企業は ,,,細胞を付着培養により培養していた。
? 争点?ウ(本件特許(請求項1に係る部分に限る )は,特許を受けよう 。
とする発明の構成に欠くことができない事項が記載されていないとして,平成2年改正前特許法36条4項2号に違反するか )について。
(被告の主張)ア 周知技術でない「浮遊攪拌培養を継代して行う」ための解決手段の不記載本件発明は, 細胞の形質転換細胞を,浮遊攪拌培養に適した CHO dhfr-細胞として樹立することを目的としているが,それを実現する手段として請求項1に記載されているのは 「浮遊攪拌培養を継代して行うことによ ,り」ということのみである。
しかし,上記?の「 被告の主張 」ア( )aのとおり,浮遊培養に適し ()アた細胞株を樹立するために「浮遊攪拌培養を継代して行う」ことは,本件優先権主張日前には既に周知技術であった。
よって,本件発明を実施するためには,周知技術にはない,浮遊攪拌培養を継代して行うための解決手段が,実施可能な表現で特許請求の範囲に記載されていなければならない。しかし,本件発明の構成要件Bには,そのような記載がなく,当業者は実施不可能である。また,単に周知技術を明示するにすぎない点で,構成要件Bの記載は無意味である。
したがって,本件発明の構成要件Bには,周知技術ではない解決手段が含まれていないから 「特許を受けようとする発明の構成に欠くことがで ,きない事項」が記載されていない。
イ 所定濃度の核酸を培地中に含有することの不記載本件訂正請求の際の平成14年6月17日付訂正請求書(乙3の26)添付の全文訂正明細書(乙3の27)には 「支持体表面で細胞を生育さ ,せた後,核酸を含むα- 培地( 社,カタログ ) MEM GIBCO No.410-1900%牛血清を含む ・・・に細胞を懸濁し浮遊攪拌培養を行う ま () , 。 」,「 10た,培地は,上述のα- 培地と同程度,もしくはそれ以上の濃度の MEM核酸を含む培地ならいづれでもよい 」と記載されている。すなわち,所 。
定濃度の核酸を培地中に含有することは,本件発明の必須の構成要件である。
それにもかかわらず,本件発明の構成要件AないしCには,いかなる濃度の核酸を培地中に含有しなければならないかの記載がない。
したがって,本件発明には 「特許を受けようとする発明の構成に欠く ,ことができない事項」が記載されていない。
ウ 上記ア及びイのとおり,本件特許(請求項1に係る部分に限る )は,。
平成2年改正前特許法36条4項2号に規定する特許請求の範囲の記載要件を満たしていないから,平成2年改正前特許法123条1項3号の規定に基づき,特許無効審判により無効にされるべきものである。
(原告の主張)ア 「周知技術でない『浮遊攪拌培養を継代して行う』ための解決手段の不記載 (上記「 被告の主張 」ア)について 」( )本件優先権主張日前において,付着性の形質転換細胞から浮遊培養に適した細胞株を樹立した例は,原告の知る限り,存在しなかった。形質転換細胞でない付着性の細胞について,浮遊攪拌培養を継代して行うことにより,浮遊培養に適した細胞株を樹立した例があったとしても,同じ方法を用いて付着性の形質転換細胞から浮遊培養に適した細胞株を樹立することは予測できなかった。したがって 「浮遊攪拌培養を継代して行うことに ,より浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立し」との記載は 「特許を,」。 受けようとする発明の構成に欠くことができない事項 として不備はないイ 「所定濃度の核酸を培地中に含有することの不記載 (上記「 被告の」(主張 」イ)について)核酸の添加は好ましいが,必須ではない。形質転換された細胞は,核酸を添加することにより増殖が促進されることはあっても,自ら核酸を形成することができる以上,増殖のために核酸を要求するものではない。本件,, 特許の実施例では 増殖を容易にするために少量の核酸を添加しているがこれも,当業者が,技術常識に従い,適宜採用し得る培養条件の一態様であって,核酸を添加しない培養条件も周知だったのであるから,いずれを適用するかは当業者が適宜選択する事項にすぎない。核酸の添加を本件発明の必須要件とする科学的根拠は示されていないのであるから,記載要件違反には当たらない。
? 争点?(損害の発生の有無及びその額)について(原告の主張),, ア 被告は 製剤であるエポジンとノイトロジンを国内で販売するとともに原薬である 又は 製剤を海外の医薬品メーカー(被告の関係 G-CSF G-CSF会社)に販売している。
「エポジン」及び「ノイトロジン」について,本件特許の登録日(平成8年11月7日)以降の販売高は,次のとおりである。
( ) エポジンの販売による損害額ア,。 本件特許の期間中の各年度のエポジンの売上高は 次のとおりである平成8年度 168億円平成9年度 446億円平成10年度 487億円平成11年度 535億円平成12年度 553億円平成13年度 627億円平成14年度 661億円平成15年度 557億円(平成14年12月までの9か月分)合計 4034億円( ) ノイトロジンの販売による損害額イ本件特許の期間中の各年度のノイトロジンの売上高は,次のとおりである。
平成8年度 52億円平成9年度 126億円平成10年度 188億円平成11年度 193億円平成12年度 182億円平成13年度 191億円平成14年度 251億円平成15年度 247億円(平成14年12月までの9か月分)合計 1430億円イ 発明協会発行の「実施料率」第5版によれば,医薬品分野における最近のイニシャル・ペイメントなしの実施料率平均値は7.1%とされているので,本件では,実施料率7%を適用する。
上記ア( )のとおり,エポジンの合計売上高は,4034億円であるかアら,実施料相当額は,282億円である。また,上記ア( )のとおり,ノイイトロジンの合計売上高は,1430億円であるから,実施料相当額は,100億円である。
,, したがって 被告の特許権侵害行為により原告が受けた損害の合計額は特許法102条3項により,合計382億円を下回らないと算定される。
(被告の主張)エポジン及びノイトロジンの販売先及び販売額は,概要においては,原告が主張するとおりである。また,発明協会発行の「実施料率」第5版に原告が主張するとおりの記載があることは認める。その余の事実は,否認する。
争点に対する判断
1 争点?(先使用)について本件については,事案の内容にかんがみ,まず争点?から判断する。
? 事実認定証拠(甲1,4,5,11,乙1,8の1ないし8の3,9,10の1ないし10の3,11,12,15ないし27,32,35の1ないし35の3,36の1ないし36の3,37ないし39,40の1ないし40の3,41,42,63,64)及び上記前提となる事実並びに弁論の全趣旨によれば,被告による 及び の製造,臨床試験の実施,製造設備の建 EPO G-CSF,。 設並びに薬事法14条1項の承認の取得について 次の各事実が認められるア の製造EPO( ) 社との契約の締結アGI被告は,昭和58年10月, 社に資本参加し,昭和59年6月2 GI9日, 社との間で,ヒト の製造技術の開発についての契約を締 GI EPO結した。同契約においては, 社が遺伝子組換え技術を利用したヒト GI生産技術の開発を,被告はその製品の開発研究並びにアジア諸国 EPO及び北米における製造・販売を,それぞれ担当することとされていた。
社は,遺伝子組換え及び関連技術に基づく医薬品等の開発を目的 GIとして設立されたベンチャー企業である(乙15,弁論の全趣旨 。)( ) 種細胞株 α の樹立イCHO DN2-3 3社において行われた種細胞株 α の樹立に至る工程 GI CHO DN2-3 3は,次のとおりである(乙8の1,8の3 。)a挿入 の調製 EPO-cDNA再生不良性貧血患者の尿からヒト を単離精製し,そのアミノ EPO酸配列を決定した。次いで,その情報をもとに,ヒトゲノム ラDNAイブラリーから を,続いてヒト胎児肝細胞 ライブ EPO-gDNA cDNAEPO-cDNA cDNA ラリーから を,それぞれクローニングした。このから,発現ベクターに組み込む挿入 を作製した。 EPO-cDNAb 発現ベクター の作製DN2-3pRK1-4 哺乳動物細胞用発現ベクターとして設計されたプラスミドに,上記aの挿入 を組み込むことにより,発現ベクター EPO-cDNAを作製した。DN2-3c 種細胞株 α の樹立 CHO DN2-3 3,() 上記発現ベクター を チャイニーズハムスター卵巣 DN2-3 CHO細胞のジヒドロ葉酸還元酵素( )欠損 株に導入して, dhfr DUK XB11同細胞株を形質転換した。次いで,メトトレキセート( )濃度MTXを段階的に上げて, 及び を遺伝子増幅させ, EPO-cDNA dhfr-cDNAその中から高い 生産能を有する細胞を1つ選択分離し,これを EPO増殖して種細胞株 α を得た(同細胞株は,1個の細胞 CHO DN2-3 3から増殖した同じ遺伝子構造を持つ細胞からなることが確認された。。)( ) 及び の確立ウMCB MWCB社において行われた種細胞株 α の樹立後, 及 GI CHO DN2-3 3 MCBび の確立に至る工程は,次のとおりである(乙8の3,9,1 MWCB6。)a 付着培養された細胞のトリプシン処理種細胞株 α は,昭和60年10月10日, 社の哺 CHO DN2-3 3 GI乳動物細胞遺伝子発現グループから哺乳動物細胞培養グループに渡された。同種細胞株を,付着培養のままで増殖させた後,同月17日,トリプシン処理し,同月18日, %ウシ胎仔血清を含む馴化用培 10地で浮遊培養を開始した。
b 細胞の浮遊培養への馴化細胞の浮遊培養では,2ないし4日ごとに細胞浮遊液の一部を除去し,等量の新鮮な培地と置換する操作を行った。
その後の培養の過程における細胞密度,細胞の生存率及び倍加時間(世代時間)は,別紙培養経過図1のとおりである。細胞の生長が鈍化したときには,遠心分離によって細胞を培地から回収し,新鮮な培地に再懸濁した(別紙培養経過図1の 。
*)c 生産用培地への移行浮遊培養開始から29日目である昭和60年11月15日には,細5胞の生存率が約 % 倍加時間が約24時間 最終細胞密度が × 99 5 10 ,,/ml 1 細胞 となり 細胞が安定的に増殖できるように馴化されたため ,,。,, %ウシ胎仔血清を含む生産用培地での培養に移行した 細胞は 当初ほとんど生長が見られなかったが,やがて回復して生長を開始し,倍加時間は,浮遊培養開始から36日目には50時間,浮遊培養開始から46日目には24時間と,徐々に減少していった。
d マスター・セル・バンク( )の作製及び保存 MCB浮遊培養開始から36日目ないし46日目の間に,徐々に培地容量498 を増加させながら培養し,培地容量が スケール,細胞の生存率 l%,細胞密度が × 細胞 となった段階で,細胞を遠心分離し 510 /ml51ml て集め,凍結保存用培地に再懸濁した。これを凍結用バイアルにずつ200本に分け,緩やかに ℃で凍結した。この凍結バイアル -70,,。 を液体窒素中に移し 昭和60年12月4日 として保存したMCBe マスター・ワーキング・セル・バンク( )の調製及び保存 MWCB凍結 の1バイアルを解凍し,新鮮な生産用培地に懸濁した。 MCB当初の浮遊培養開始(昭和60年10月18日)から50日目ないしl 60日目に,徐々に培地容量を増加させながら培養し,培地容量が4スケール,細胞の生存率 %,細胞密度が × 細胞 となった 98 5 10 /ml5段階で,細胞を遠心分離して集め,凍結保存用培地に再懸濁した。これを凍結用バイアルに ずつ200本に分け,緩やかに ℃で凍 1ml -70結した。この凍結バイアルを液体窒素中に移し, として保存MWCBした(昭和60年12月18日に調製を終えて保存した 。。)( ) 社から被告への 及び の移転エGI MCB MWCBGI CHO 社は,昭和61年2月ころ,上記( )d及びeで作製したウα の 及び のうち各60バイアルを,被告に送付 DN2-3 3 MCB MWCBした(乙16 。)( ) 培養工程オのバイアル中の細胞を解凍し,これを培養して を製造す MWCB EPOる工程(培養工程)においては,生産用培地を用い,バッチ・リフィード法により,細胞をまずスピナーフラスコ中で順次スケールアップしながら培養し,最終的に所定の大きさの培養タンクで連続培養を行う。なお, 生産のための細胞の連続培養期間は,120日までとなって EPOおり, 及び の細胞は,120日の連続培養期間中,その特 MCB MWCB性が安定していることが確認されている(乙8の3 。)( ) 精製工程カ4段階のカラムクロマトグラフィーによって,細胞由来,培養工程由来及び精製工程由来の不純物を分離除去し, を精製する(乙8の EPO3。)( ) 培養タンクを用いた の精製キ1600 EPO lGI 被告は,昭和61年10月27日から同年11月6日にかけて,l 社から受領した上記( )d及びeの 及び を用いて,ウMCB MWCB 1600培養タンクにより浮遊攪拌培養を行った後, を精製した。精製さ EPOれた の精製ロット番号は 及び であった 乙 EPO R6J03 R6K01 R6K02 ,, (18 。)( ) 組換え 技術応用医薬品の製造のための指針第5章1に基づくクDNA適合確認被告は,厚生大臣に対し,昭和62年2月16日,組換え 技術DNA応用医薬品の製造のための指針第5章1に基づき,遺伝子組換えヒト製剤の製造に利用される設備,装置及びその運営管理等が同指針 EPOに適合していることの確認を求め,厚生省薬務局長は,被告に対し,同年4月9日,同指針に適合していることを確認した旨を通知した(乙17,37 。)( ) 治験薬の製造ケ被告は,昭和62年5月20日から同月25日にかけて,上記( )でキ精製されたロット番号 の を原体として,遺伝子組換えヒト R6J03 EPOEPO W7E01 製剤の治験薬を製造した 製造した治験薬のロット番号は 。,であった(乙19 。)イの製造G-CSF( ) 種細胞株 細胞 株の樹立アCHO 657被告において行われた種細胞株 細胞 株の樹立に至る工程 CHO 657は,次のとおりである(乙10の3,11,弁論の全趣旨 。)a 挿入 の調製G-CSF cDNA産生細胞株 の培養ろ液によりヒト を精製し, G-CSF CHU-2 G-CSFCHU-2 その部分アミノ酸配列を決定した次いで その情報をもとに 。, ,細胞から調製した ライブラリーから をクローニ cDNA G-CSF cDNAcDNA G-CSF cDNA ングした この から 発現ベクターに組み込む挿入 。,を作製した。
b 発現ベクター の作製pV3DR1プラスミド に上記 断片を組み込み,さらに, pDKCR G-CSF cDNAの を含む 断片を組み込むことにより,発現ベクター dhfr cDNA DNAを作製した。pV3DR1c 種細胞株 細胞 株の樹立 CHO 657,() 上記発現ベクター を チャイニーズハムスター卵巣 pV3DR1 CHO細胞のジヒドロ葉酸還元酵素( )欠損 株に導入して,同 dhfr DXB11細胞株を形質転換した。次いで,メトトレキセート( )濃度をMTX段階的に上げて, 及び を遺伝子増幅させ, G-CSF cDNA dhfr-cDNAその中から高い 生産能を有する細胞を つ選択分離し,これ G-CSF 1を増殖して種細胞株 細胞 株を得た( 」はこの時選択分 CHO 657 657「離された つの細胞に付した名称である 。 1 。)( ) 及び の確立イMCB MWCB被告において行われた種細胞株 細胞 株の樹立後, 及び CHO 657 MCBの確立に至る工程は,次のとおりである(乙11,12 。 MWCB )a 細胞の浮遊培養への馴化前記 細胞 株を,34日間付着培養した後, %ウシ胎仔 CHO 657 10血清を含む馴化用培地を用いて,3日ごとに当該培地の置換操作を行-80 い,通算18日間の浮遊培養の後に,昭和61年11月10日,℃で凍結保存した。
b 凍結保存された 細胞株の解凍及び培養 657凍結保存した上記aの 細胞株を,昭和61年11月17 CHO 657日,解凍し, 径プレートで5日間付着培養した。 9cmc 細胞の浮遊培養への馴化昭和61年11月22日から6日間, %ウシ胎仔血清を含む馴 10化用培地を用いて, スピナーフラスコで浮遊培養し,細胞が安 100ml定的に浮遊培養できるように馴化した。
d 生産用培地への移行昭和61年11月28日, %ウシ胎仔血清を含む生産用培地を用 1いた細胞の浮遊培養を開始し,同日から47日間,培養液量を徐々に,。, 上げながら 最終的に スピナーフラスコで培養を行った そして 8l昭和62年1月14日, 培養タンクに細胞を移植し,9日間の培 40l養を行った。
細胞 株の47日間のスピナーフラスコでの培養経過は, CHO 657別紙培養経過図2のとおりであり,同細胞 株の9日間の 培養 657 40lタンクでの培養経過は,別紙培養経過図3のとおりである。
e マスター・セル・バンク( )の作製及び保存 MCB培養タンクでの9日間の培養の後,増殖が順調であることを確 40lかめて,培養液 ( × 細胞 ,生存率 %)を培養タンク 3 5.3 10 /ml 92.3 l5から回収した。細胞を遠心分離して集め,凍結保存用培地に再懸濁し1ml 1.7 10 / た。これを凍結用バイアルに ずつ87本に分け( × 細胞7本,生存率 % , ℃で凍結した。この凍結バイアルを液体窒 95.5 -80)素中に移し, として保存した(の作製は,昭和62年1月 MCB MCB23日 。)f マスター・ワーキング・セル・バンク( )の調製及び保存 MWCB上記凍結 の3バイアルを作製の4日後(昭和62年1月27 MCB), 。, 日 に解凍し スピナーフラスコで培養を開始した 生存率は 100ml解凍直後は %まで低下したが,継代を経て %以上が確保され, 65 90培養開始から16日目に スピナーフラスコ2本から の細胞培養 87 ll液を得た。細胞を細胞培養液から遠心分離して集め,凍結保存用培地1ml -80 に再懸濁した これを凍結用バイアルに ずつ100本に分け 。,℃で凍結した。この凍結バイアルを液体窒素中に移し, としMWCBて保存した( 作製は,昭和62年2月12日 。 MWCB )( ) 培養工程ウのバイアル中の細胞を解凍し,これを培養して を製造 MWCB G-CSFする工程(培養工程)においては,生産用培地を用い,バッチ・リフィード法により,細胞をまずスピナーフラスコ中で順次スケールアップしながら培養し,最終的に所定の大きさの培養タンクで連続培養を行う。
なお, 原液生産のための細胞の連続培養期間は120日までと G-CSFなっており, 及び の細胞は,120日の連続培養期間中, MCB MWCBその特性が安定していることが確認されている(乙10の3 。)( ) 精製工程エ段階のカラムクロマトグラフィーによって,細胞由来,培養工程由来及び精製工程由来の不純物を分離除去し, を精製する(乙10 G-CSFの3 。)( ) 培養タンクを用いた の精製オ1600 G-CSF la 被告は,昭和62年4月10日から同月28日にかけて,上記( )イfの を用いて, 培養タンクにより浮遊攪拌培養を行っ MWCB 1600lた後, を精製した。精製されたの精製ロット番号は, G-CSF G-CSF, , , , 及び であった(乙 R7D02 R7D03 R7D04 R7D05 R7D06 R7D0763 。)b 被告は,昭和62年10月21日から同年11月8日にかけて,上記( )fの を用いて, 培養タンクにより浮遊攪拌培養をイMWCB 1600l行った後, を精製した。精製された の精製ロット番号 G-CSF G-CSFは, , , , , 及び であった(乙 R7J01 R7J02 R7J03 R7K01 R7K02 R7K0322 。)( ) 組換え 技術応用医薬品の製造のための指針第5章1に基づくカDNA適合確認被告は,厚生大臣に対し,昭和62年3月9日,組換え 技術応DNA用医薬品の製造のための指針第5章1に基づき,遺伝子組換えヒト製剤の製造に利用される設備,装置及びその運営管理等が同指 G-CSF針に適合していることの確認を求め,厚生省薬務局長は,被告に対し,同年6月5日,同指針に適合していることを確認した旨を通知した(乙21,39 。)( ) 治験薬の製造キa 被告は,昭和62年9月8日から同月9日にかけて,上記( )aでオ精製されたロット番号 のを原体として,遺伝子組換え R7D05 G-CSFヒト 製剤の治験薬(第T相試験用)を製造した。製造した治 G-CSF験薬のロット番号は, であった(乙64 。 T758I09)b 被告は,昭和63年3月22日から同月24日にかけて,上記( )オbで精製されたロット番号 の を原体として,遺伝子組 R7J01 G-CSF換えヒト 製剤の治験薬(第U相試験用)を製造した。製造し G-CSFた治験薬のロット番号は, であった(乙23,24 。 T874C24 )ウ 臨床試験( ) 薬事法の規制ア医薬品を製造するためには,目的物について,品目ごとに,薬事法14条1項の厚生大臣の承認を受けなければならないものとされている。
そして,同項の承認を受けようとする者は,申請書に臨床試験の試験成績に関する資料等を添付して申請しなければならないものとされている(同条3項 。)( ) 遺伝子組換えヒト 製剤の臨床試験イEPOa 被告は,厚生大臣に対し,昭和61年11月21日,健常人による安全性及び生体内動態の確認を目的とする遺伝子組換えヒト 製EPO剤の臨床試験(第T相試験)についての第1回治験計画届書を提出した。同治験計画届書において,治験の実施期間は,同年12月から昭和62年2月までとされていた(乙36の1 。)b 被告は,厚生大臣に対し,昭和62年4月22日,腎性貧血患者に対する有効性及び安全性について評価・検討することを目的とする遺伝子組換えヒト 製剤の臨床試験(第U相試験)についての第4 EPO回治験計画届書を提出した。同治験計画届書において,治験の実施期間は,同年5月から昭和63年10月までとされていた(乙36の2。)c 被告は,昭和62年10月20日,恩賜財団済生会川内病院のP11に対し,遺伝子組換えヒト 製剤のロット番号 の治験薬 EPO W7E01を交付した(乙20 。)d 被告は,厚生大臣に対し,昭和63年2月29日,腎性貧血に対する有効性,安全性及び有用性についてメピチオスタンを対照薬として二重盲検比較試験法により検討することを目的とする遺伝子組換えヒト 製剤の臨床試験(第V相試験)についての第12回治験計画 EPO届書を提出した。同治験計画届書において,治験の実施期間は,同年3月から同年10月までとされていた(乙36の3 。)( ) 遺伝子組換えヒト 製剤の臨床試験ウG-CSFa 被告は,厚生大臣に対し,昭和62年9月24日,健常人での安全G-CSF 性 耐容性及び薬物動態の検討を目的とする遺伝子組換えヒト ,製剤の臨床試験(第T相試験)についての第1回治験計画届書を提出した。同治験計画届書において,治験の実施期間は,同年10月から同年12月までとされていた(乙40の1 。)b 被告は,厚生大臣に対し,昭和63年2月2日,非骨髄性腫瘍(悪性リンパ腫)患者での臨床的有効性,安全性及び有用性の検討を目的とする遺伝子組換えヒト 製剤の臨床試験(第U相試験)につ G-CSFいての第2回治験計画届書を提出した。同治験計画届書において,治験の実施期間は,同月から昭和64年3月までとされていた(乙40の2 。)c 被告は,昭和63年5月27日,大阪府立羽曳野病院のP12に対し,遺伝子組換えヒト 製剤のロット番号 の治験薬を G-CSF T874C24交付した(乙24 。)d 被告は,厚生大臣に対し,昭和63年10月31日,二重盲検比較試験による臨床的有効性,安全性及び有用性を客観的に評価,検討することを目的とする遺伝子組換えヒト 製剤の臨床試験(第V G-CSF相試験)についての第12回治験計画届書を提出した。同治験計画届書において,治験の実施期間は,同年11月から昭和64年12月までとされていた(乙40の3 。)エ 製造設備( ) 培養施設棟の改修及び 培養タンクの導入ア1600l被告は,昭和60年2月ころ,浮間工場の東流B製品倉庫跡を改修することにより,組換え 細胞の培養施設を収容する計画の具体化を DNA進めていた。同計画は,総工費予算約9億円で,培養設備は,技術移管を円滑に行うため,培養タンクの規模・仕様を, 社の設備と同一のGIもの( タンク2基, タンク2基及び タンク1基)とされ 40 160 1600 ll lた。同計画に基づく工事(生産技術研究所生物棟工事)は,同年4月22日から同年9月30日にかけて行われた(乙25,26 。)及び の製造のためのB棟製造設備の 培養タンクの EPO G-CSF 1600l使用は, については昭和61年6月に, については昭和6 EPO G-CSF2年4月に,それぞれ開始された(甲11,乙27 。)上記ア( )の の精製及び上記イ( )の の精製は,上記キオEPO G-CSF培養タンクを用いて行われたものである(乙27 。 1600l )( ) 培養施設の新規建設及び 培養タンクの導入イ2500la 被告は,治験薬供給のリスク分散と,発売時の原体生産への対応のため,浮間西工場内に新たな生産棟を建設する計画を立案し,昭和62年7月27日の取締役会において,同計画は承認された。同計画の概要は,次のとおりであった(乙32 。)5300 ? 生産棟として 浮間工場内にRC造4階建て 延べ床面積約 ,, ,uの建物を建設する。
? 培養タンクは, を基準とし,培養・精製各4系列を設置す 2000lる。
? 建設は 「第T期 「 発売時」及び「第U期」の3段階に分 ,」,EPOける。
? 各建設段階における生産能力は,次のとおりとする。
@ 第T期 培養2系列,精製1系列とし,生産量は, 及びEPOの合計で年間 〜 とする。 G-CSF 60g 75gEPO EPO A 発売時 培養2系列,精製2系列とし,生産量は,及び の合計で年間 〜 とする。 G-CSF 120g 150gB 第U期 培養4系列,精製4系列とし,生産量は, 及びEPOの合計で年間 〜 とする。 G-CSF 240g 300g? 着工は,昭和62年12月,設備の据え付け開始は昭和63年1,,。 1月 試運転の開始は昭和64年1月 稼働開始は同年5月とする? 第U期工事は,建物の内装,設備工事を含めて遺伝子組換えヒト製剤の発売から1ないし2年後に実施する。 EPO? 概算費用は,第T期が28億8000万円, 発売時に5億EPO7000万円とする。
b 被告は,日建設計に対し,昭和62年5月,上記aの計画に基づく生産棟新築工事の設計及び設計監理を依頼した。日建設計は,昭和62年7月1日,同工事の設計を開始し,昭和63年1月30日,同設計を完了した(乙33 。)c 被告は,上記aの計画のためのタンパク質精製設備及び純水装置等について,栗田工業に見積りを依頼し,同社は,被告に対し,昭和62年11月5日付けで作成した見積書を交付した(乙35の3 。)d 被告は,上記aの計画のための蒸留水製造装置について,岩谷産業に見積りを依頼し,同社は,被告に対し,昭和62年11月25日付けで作成した見積書を交付した(乙35の2 。)e 被告は,上記aの計画のための各種タンク類及びピュアスチーム発,,, 生機等の培養付帯設備について 岩井機械に見積りを依頼し 同社は被告に対し,昭和62年11月30日付けで作成した見積書を交付した(乙35の1 。)f 上記aの計画における培養タンクの容量は,最終的に と決定2500lされ,被告は, 社との間で,昭和63年7月31日, 培養タ GI 2500lンクを購入する契約を締結した(乙34 。)g 生産棟の建物の建築は,鹿島建設が請け負い,昭和63年5月1日に着工し,平成元年8月30日に竣工・完成した(乙33 。)オ 薬事法14条1項の承認( ) 被告は,厚生大臣に対し,昭和63年12月27日,被告方法1をア使用して得た遺伝子組換えヒト 製剤の製造についての薬事法14 EPO条1項の承認の申請をし,厚生大臣は,被告に対し,平成2年1月23日,上記遺伝子組換えヒト 製剤の製造についての同項の承認をし EPOた(甲4,乙8の1,38 。)( ) 被告は,厚生大臣に対し,平成元年12月27日,被告方法2を使イ用して得た遺伝子組換えヒト 製剤の製造についての薬事法14 G-CSF条1項の承認の申請をし,厚生大臣は,被告に対し,平成3年10月4日,上記遺伝子組換えヒト 製剤の製造についての同項の承認を G-CSFした(甲5,乙10の1,42 。)カ 現在までの,被告による遺伝子組換えヒト 製剤及び遺伝子組換え EPOヒト 製剤の製造G-CSF被告は,現在まで,遺伝子組換えヒト 製剤及び遺伝子組換えヒト EPO,, G-CSF製剤の製造を 前記ア( )及び( )並びにイ( )及び( )のとおりオカ ウエ及び のバイアル中の細胞を解凍して培養し,精製した上で行 EPO G-CSFっている(乙1 。)? 上記認定事実に対する原告の反論ア 原告は,上記?イ( )b及びcにおいて認定した, の製造のためアG-CSFの種細胞株 細胞 株の樹立に用いた発現ベクターについて,昭和 CHO 657-62年2月16日付けの 製造確認申請書 乙21 には G-CSF CHO dhfr (),細胞を形質転換するベクターとして が記載されているから,昭 pV2DR1和62年2月ころに作製されたは,ベクター を用いて形質 MCB pV2DR1転換された細胞に基づくものであり,その後被告の製品の製造に用いられた発現ベクターである「 」とは異なる旨主張する。 pV3DR1そこで検討するに,証拠(乙62の1ないし3)によれば,次の事実が認められる。
( ) ベクターの作製は,東京大学医科学研究所と被告との共同研究によアり行われた。
() の由来イG-CSF cDNA産生 細胞のメッセンジャー ( )から,相補 G-CSF CHU-2 RNA mRNA的 ( )ライブラリーを作製し,いくつかの プローブを DNA cDNA DNA用いてハイブリダイゼーション法によりスクリーニングした結果,6個の陽性のプラーク(λ 〜λ )が得られた。得られた6個のプラ V-1 V-6ークの中で 天然型 を充分にコードする長さを有する λ ,( G-CSF cDNA及びλ )が選択された。λ 及びλ は,@各プラークの V-2 V-3 V-2 V-3が用いた プローブと強くハイブリダイズすること,A各 cDNA DNAのサイズの比較,B制限酵素地図による検討等により, を cDNA G-CSFコードする同一の であると判断された。 cDNA( ) 種細胞株 細胞 株の作製ウCHO 657λ 及びλ のプラーク由来の から,それぞれベクター V-2 V-3 cDNA( )及び ( )が作製された。これらのベクターは,同一の pHGV2 H pHGV3 H断片が組み込まれていると判断されてきたことから,全く同一の cDNAプラスミドと考えられていた。
( ) ベクターの移管エ昭和61年1月, ( )と称するベクターが,東京大学医科学研 pHGV2 H究所の長田重一助手から被告に移管された。
( ) 被告は,上記( )で移管された ( )と称するベクターを用いオエpHGV2 Hて, 細胞用発現ベクター「」を作製し,このベクターを用 CHO pV2DR1いて, 生産細胞株 細胞 株を樹立した。 rG-CSF CHO 657( ) 被告が,平成元年, 及び の各ロットの 及び発現カMCB MWCB DNAベクターについて塩基配列分析を行ったところ,組み込まれていた断片は,すべて,当初推定していたものとはわずかな違い G-CSF cDNAがあることが判明した。
すなわち,上記( )で移管されたベクターは, ( )であり,しエpHGV3 Hたがって,調製した発現ベクター は, と称することが pV2DR1 pV3DR1妥当であると判断された。
( ) 被告は,厚生大臣に対し,平成元年12月26日,組換え 技キDNA術応用医薬品等の製造のための指針第4章7に基づき,上記( )の事情カを報告し,平成2年2月16日,その旨を中央薬事審議会バイオテクノロジー特別部会に報告した。
上記( )ないし( )認定の各事実によれば,昭和62年2月16日付けアキ() 「 」 の 製造確認申請書 乙21 に記載されたベクターの名称 G-CSF pV2DR1pV3DR1 MCB は 「 」の誤記であり,上記?イ( )e及びfで作製された ,イ及び は,ベクター を用いて形質転換された細胞に基づく MWCB pV3DR1ものであることが認められるから,原告の上記主張は,採用することができない。
イ 原告は,ベクターの名称の変更に係る書類は,誤記の訂正の名目により名称の変更を行ったことを示すにすぎず,その変更誤記の訂正であったのかどうかは,これらの書類からは不明であると主張する。
しかし,ベクターの名称の変更に係る書類(乙62の1及び2)は,本件訴訟とは無関係に作成され,厚生大臣に提出された書類であり,原告が主張するように,現実には 及び の2種類のベクターが pV2DR1 pV3DR1存在したにもかかわらず,あえてその旨を秘匿し,当初からベクターの名称が不適切であったとの虚偽の報告をしたと解すべき合理的理由はない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
ウ また,原告は,被告公報(特公平6-57156。甲9)及び被告による公開特許公報(特開平5-301899。甲75)に, が使用pV2DR1された旨の記載があることを指摘する。
しかし,上記被告公報は,上記ア( )の事情が判明する前である昭和6カ3年の特許出願(原出願は,昭和61年)に係る特許公報である。
また,上記公開特許公報は,上記ア( )の事情が判明した後の特許出願カに係る公開特許公報であるが,同公報には 「ヒト 遺伝子を含むプ ,G-CSFラスミド (特公平1-5395に記載されるもの。 とほぼ pV2DR1 prIL-6同じ構造 ( 0023 )との記載があり,証拠(乙77,78)によ )」【 】れば,上記「特公平1-5395」は 「特公平2-5395」の誤りで ,あることが認められるから,上記公開特許公報に「 」との記載がpV2DR1されたのは,上記ア( )の事情が判明する前である昭和61年の特許出願カに係る特許公報(特公平2-5395。乙78)を引用したことによって生じた誤記であると認められる。
したがって,上記被告公報及び公開特許公報の記載は,昭和62年2月16日付けの 製造確認申請書(乙21)に記載されたベクターの G-CSF名称が誤りであった旨の上記認定を左右するものではない。
? 先使用による通常実施権の成否以上の認定事実に基づいて,被告が,被告方法について先使用による通常実施権を有するといえるか否かについて検討する。
ア 発明の完成上記?認定の各事実によれば,被告は,遅くとも昭和61年11月6日,, には 被告方法1を使用して を精製していたことが認められるから EPO遅くとも同日には,既に被告方法1に係る発明を完成していたものと認められる。また,被告は,遅くとも昭和62年4月28日には,被告方法2を使用して を精製していたことが認められるから,遅くとも同日 G-CSFには,既に被告方法2に係る発明を完成していたものと認められる。
事業の準備( ) 特許法79条にいう発明の実施である「事業の準備」とは,特許出ア願に係る発明の内容を知らないでこれと同じ内容の発明をした者又はこの者から知得した者が,その発明につき,未だ事業の実施の段階には至らないものの,即時実施の意図を有しており,かつ,その即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度において表明されていることを意味すると解するのが相当である(最高裁昭和61年( )第454号同年1オ0月3日第二小法廷判決・民集40巻6号1068頁参照 。)上記?認定の各事実によれば,被告は,遅くとも昭和61年11月6EPO 日には,被告方法1に係る発明を完成させ,当該発明を実施してを精製した上,同月21日には,厚生大臣に対し,被告方法1に係る発明を使用して得られた から製造した治験薬を使用して臨床試験 第 EPO (T相試験)を行う旨の治験計画届書を提出し,昭和62年2月16日には,厚生大臣に対し,組換え 技術応用医薬品の製造のための指針 DNA第5章1に基づき,被告方法1の使用のための設備等が同指針に適合していることの確認を求めたものである。また,被告は,同年3月9日には,同指針第5章1に基づき,被告方法2の使用のための設備等が同指針に適合していることの確認を求め,遅くとも同年4月28日には,被告方法2に係る発明を完成させ,当該発明を実施して を精製しG-CSFた上,同年9月24日には,厚生大臣に対し,被告方法2に係る発明を使用して得られた から製造した治験薬を使用して臨床試験(第 G-CSFT相試験)を行う旨の治験計画届書を提出したものである。さらに,被告は,昭和60年9月30日には, 培養タンクを備えた培養設備 1600lを完成させ,昭和61年6月には,その培養設備を稼働させて被告方法1に係る発明を実施し,昭和62年4月には,その培養設備を稼働させて被告方法2に係る発明を実施し,同年5月には, を基準とした2000l規模の培養タンクを備えた製造設備を建設する計画に基づく工事の設計及び設計監理を日建設計に依頼し,同年7月27日には,同計画を取締役会で承認し,遅くとも同年11月には,同計画のための各種設備について,岩井機械等に見積りを依頼したものである。
,, , これらの事実関係を前提とすれば 被告は 本件優先権主張日までに被告方法により製造する製品の販売に向けた活動を行っており,このような被告による行動は,まさに,被告の当該事業の実施に向けた経済活動の一環であるから,被告は,被告方法に係る発明につき,事業の即時実施の意図を有していたというべきである。そして,その即時実施の意図は,厚生大臣に対して上記指針に適合していることの確認を求めた各行為,上記各治験計画届書の提出という行為並びに 培養タンクを1600l備えた上記培養設備の完成及び稼働並びに を基準とした規模の培 2000l養タンクを備えた製造設備を建設する上記計画の取締役会での承認及びその遂行のための上記設計及び見積りの依頼という行為により,客観的に認識され得る態様,程度において表明されていたものというべきである。
したがって,被告は,本件優先権主張日において,被告方法に係る発明につき,現に実施の事業の準備をしていたものと認められる。
( ) 原告は,医薬品の事業は,医薬品としての安全性及び有効性を備えイていることが臨床試験により証明され,製造承認を経て,初めて商品としての医薬品が存在することになるのであり,臨床試験の段階では,事業の即時実施は不可能なのであるから,臨床試験を行っていたことは,試験研究を行っていたというにすぎず 「事業の準備」には当たらない ,と主張する。
しかし,本件発明及び被告方法に係る発明は,いずれも, 又はEPOなどの生理活性タンパク質の一般的な製造法に関する発明であ G-CSFって,その発明に係る方法を使用して医薬品を製造することを発明の内容とするものではないから,当該発明の実施としての事業又は事業の準備に該当するか否かは,基本的には, 又は などの生理活性 EPO G-CSFタンパク質の製造自体が事業又は事業の準備として行われたか否かにより判断されるべきものである。しかも,本件において被告は, 及EPOび を製造した後,医薬品としての臨床試験を行う段階に至って G-CSFおり,既に被告方法に係る発明の実施を経て,開発が完了し,完成した医薬品について,その安全性及び有効性を確認する段階にあるのであるから,臨床試験を行っている医薬品につき,薬事法14条1項の承認を受けて医薬品として製造販売する意図を有し,かつ,その意図が客観的に認識され得る態様,程度において表明されているというべきである。
このことは,臨床試験が試験研究の性質を有することを考慮しても,変わるものではないし,仮に,臨床試験の段階に至ってから,医薬品としての安全性及び有効性が確認できず,製造中止を余儀なくされる医薬品が多数あるとしても,そのような事後的な事情によって影響を受けるものでもない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
( ) 原告は,被告による の製造においては,糖鎖の結合状態が異ウEPO,, なる が生成していたこと等を指摘し 本件優先権主張日において EPO事業化のための技術は完成していなかったと主張する。
しかし,本件発明自体, の糖鎖の結合状態を規定するものでは EPOなく,しかも,弁論の全趣旨によれば,現在においても,被告が製造販売する遺伝子組換えヒト 製剤には,異なる糖鎖構造を持つものが EPO含まれていることが認められるから,糖鎖構造の均一化が医薬品としての事業を行うために必要不可欠な技術であるとは認められず,したがって,本件優先権主張日において,事業化のための技術が完成していなかった旨の原告の上記主張は,採用することができない。
( ) 原告は,被告が導入した 培養タンクは,バイオテクノロジーエ1600lによるタンパク質製造の技術そのものに習熟するための試験研究施設にすぎず,医薬品の製造設備として国際的基準( 基準)に通用する GMP施設ではないと主張する。
l しかし 被告は 上記?認定のとおり 本件優先権主張日前に ,, , ,1600培養タンクを用いて 及び を製造し,それらを原体として治 EPO G-CSF験薬を製造していたものであり,また,証拠(乙27ないし31)によれば, 培養タンクを用いて,遺伝子組換えヒト 製剤及び遺伝 1600 EPO l子組換えヒト 製剤の製品原体を製造していたことが認められる G-CSFから, 培養タンクが試験研究施設にすぎない旨の原告の上記主張 1600lは,到底採用することができず,また, 培養タンクが国際的基準 1600l( 基準)に通用する施設ではないとしても,上記認定を左右する GMPものではない。
先使用権の範囲( ) 被告方法1ア上記?認定の各事実及び弁論の全趣旨によれば,被告が本件優先権主張日に使用していた被告方法1と,被告が現在使用している被告方法1とは,同一であることが認められる。
,, 原告は の糖鎖構造を均一にする製法変更があったのであれば EPO被告が本件優先権主張日に使用していた被告方法1と,被告が現在使用している被告方法1とは異なると主張するが, の糖鎖構造を均一 EPOにする製法変更があったことを認めるに足りる証拠はないから,原告の上記主張は,採用することができない。
( ) 被告方法2イ上記?認定の各事実及び弁論の全趣旨によれば,被告が本件優先権主張日に使用していた被告方法2と,被告が現在使用している被告方法2とは,同一であることが認められる。
原告は,被告が本件優先権主張日に使用していた被告方法2と,被告が現在使用している被告方法2とでは, 細胞の形質転換に用 CHO dhfr-いられるプラスミドが異なると主張するが,この主張を採用することができないことは,上記?のとおりである。
?小括上記?ないし?のとおり,被告は,被告方法1及び被告方法2について,特許法79条所定の先使用による通常実施権を有する。
2 争点?ア(新規性の有無)について被告は,本件発明が引用例1発明ないし引用例4発明と同一であり,請求項1に係る本件特許は,特許法29条1項3号の規定に違反して特許されたものであるから,同法123条1項2号の規定に基づき,特許無効審判により無効にされるべきものであって,原告は,本件特許権に基づく権利行使をすることができない旨主張する。
そこで,まず,引用例1発明ないし引用例4発明と本件発明とを対比して検討する。
? 引用例1についてア 引用例1(乙4,昭和62年(1987年)発行)には,次の記載がある。
( ) 「この報告で,私たちは,ヒト遺伝子の クローンを発現するアcDNAチャイニーズハムスター卵巣( )細胞株から精製された組換えヒ CHOト ( )の初めての特性付けを記載する (17156頁右 EPO rhEPO 。」欄12ないし15行)( ) 「精製と 生物学的活性の分析イEPOは,ヒト遺伝子の クローン( ら,1985)を発 rhEPO cDNA JacobCHO EPO 現する 細胞株の培養液から見かけ上均一にまで精製された。
の とジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子とを含むプラスミド 発現 cDNA DNAベクターを,ジヒドロ葉酸還元酵素欠損 細胞に同時形質導入し, CHOメソトレキセート存在下の増殖性で耐性群が選択された( ら,Kaufman1985 。クローン が更なる増幅に選ばれ,適切な 発現 )DN2-3 EPOレベルが観察されるまで,メソトレキセートの濃度を上げて増殖させることで形質転換体が選択された。安定な形質転換体が,半合成培地と,完全合成培地の両方で,ローラーボトル中でコンフルエントな単層培養として,そして深いタンク型バイオリアクターで浮遊培養として維持された。 は, の精製で以前に記載された方法( ら, rhEPO uEPO Miyake1977; ら,1986;ら,1985)を組み合わせた Krystal Jacob連続的クロマトグラフィーによって精製された (17156頁右欄 。」( 材料と方法 )の1ないし16行) "MATERIALS AND METHODS"「」( ) 「私たちは,ここに,ヒト遺伝子の クローンを発現する哺乳ウcDNA動物の培養液から精製された組換えヒト の初めての特性付けを報 EPO。」(( 「」)) 告する 17161頁左欄 考察 の1ないし4行 "DISCUSSION"イ 上記アの記載からすると,引用例1には,生理活性タンパク質であるをコードする遺伝子とジヒドロ葉酸還元酵素( )をコードする遺 EPO dhfr伝子を発現可能な状態で有するプラスミドを,元来付着性であるチャイニーズ・ハムスターオバリージヒドロ葉酸還元酵素欠損株( )細CHO dhfr-胞にあらかじめ形質転換して安定な形質転換細胞が選択され,当該安定な形質転換細胞から「深いタンク型バイオリアクター」を用いた浮遊培養によって,目的とする組換えヒトが生産され,取得されたことが記載 EPOされているものと認められる。そして,組織培養の基本的な文献である引in vitro 用例5 乙2 昭和51年発行 に 動物細胞の大きさと すでに (, ),「,の培養に成功した細胞でも,末梢血液細胞を除けばすべての細胞が相互に接触支持しあって集団を作る傾向があることから,これらの細胞を液体培養液中に単細胞の形で浮遊させながら増殖させるためには,なんらかの方,。 」 法で培養液を攪拌し その沈下と凝集付着とを防止しなければならない(69頁31ないし34行)との記載があるとおり,浮遊培養は,通常攪拌されて行われるものと認められるから,引用例1に記載された「深いタンク型バイオリアクター」を用いた浮遊培養と,本件発明における浮遊攪拌培養とは同義であり,この点において,本件発明と引用例1発明との間に相違はないものと認められる。なお,引用例5の上記記載の「末梢血液細胞を除けばすべての細胞が相互に接触支持しあって集団を作る傾向にある」との部分は,通常の動物細胞が「元来付着性である」ことを述べたものであり, 細胞も例外ではない。 CHO dhfr-ウ そうすると,本件発明と引用例1発明とは,本件発明には,生理活性タンパク質を浮遊攪拌培養で生産する際に用いる形質転換細胞が 「浮遊攪,拌培養を継代して行うことにより樹立された浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」であることが規定されているのに対し,引用例1発明には 「浮,遊攪拌培養を継代して行う」という「樹立」工程についての開示及び用いた形質転換細胞が「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」として樹立された細胞であることについての具体的開示がない点で相違し,その余の点で一致するものと認められる。
エ 被告は,上記認定に反し 「深いタンク型バイオリアクター」のような ,大量培養装置で浮遊攪拌培養するには,初めにスピナーフラスコのような小スケールで形質転換体を浮遊攪拌培養し,形質転換細胞が浮遊攪拌培養で良好に,かつ,安定して増殖することを確認した後,順次培養スケールを拡大しなければならず,また,細胞培養において適当な時期に培地を交換しなければ,細胞は栄養不足となり,いずれ死滅してしまうため,形質転換体を浮遊攪拌培養に適応させる過程で培養液を交換する,すなわち,「浮遊攪拌培養を継代して行う」ことは自明のことである,として,上記ア( )の「安定な形質転換体が,半合成培地と,完全合成培地の両方で,イローラーボトル中でコンフルエントな単層培養として,そして深いタンク型バイオリアクターで浮遊培養として維持された 」との記載は,その前 。
提として,既に浮遊攪拌培養を継代して行うことにより,浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞が樹立されていることを意味すると主張する。
しかし,本件明細書の実施例には,浮遊攪拌培養に適した細胞を樹立するには10週間を要した旨の記載(4頁)があり,甲28の1文献(平成2年2月28日発行)には 「大量培養化に伴い,細胞の必要とする物理 ,的化学的要求が満たされなければならない。化学的には,細胞環境のモニターと細胞を適切な生理的状態に保つためのコントロールが必要である。
・・・物理的な因子としてはバイオリアクター( )の形状,そ bioreactorれに与えるエネルギーなどを含んでいる ・・・ (76ないし77頁) 。」10 との記載があり 甲28の2文献昭和58年 1983年 には ,(()),「〜 程度の少量培養を行なっている細胞を, 〜 程度の培養へ 100ml 1 500l,。 移そうとする場合 培養量が多くなればなるほど細胞の増殖度は悪くなる各培養量に応じて至適な培養条件を求めることが必要である (25頁)」との記載がある。これらの記載によれば,本件優先権主張日である昭和63年3月9日において,当業者には,動物細胞を用いて大型の培養タンク内で浮遊培養による大量培養を試みるとすれば,細かな実験的試行錯誤が必要であり,浮遊培養に適した細胞株を樹立するには相当の時間と労力を要することが認識されていたものと認められる。また,本件明細書及び弁論の全趣旨によれば,形質転換細胞は,浮遊攪拌培養に適した細胞を樹立した段階に至る前であっても,一定の増殖性を示すことが認められる。
そして,上記アのとおり,引用例1は,ヒト遺伝子の クローンcDNAを発現するチャイニーズハムスター卵巣( )細胞株から精製された CHO組換えヒト の初めての特性付けを報告することを目的とした文献で EPOあり,組換えヒト を大量に生産することを念頭に置いたものと理解 EPOすることはできない。また,上記のとおり,形質転換細胞は,浮遊攪拌培養に適した細胞を樹立した段階に至る前であっても,一定の増殖性を示すことからすれば,単に浮遊培養における増殖性及び組換えヒト の生EPO産性を確認する程度であれば,当該 の大量生産を念頭に置く場合と EPO異なり,必ずしも浮遊攪拌培養に適した細胞として樹立された細胞を用いる必要はない。そうすると,引用例1における上記ア( )の「安定な形質イ転換体が,半合成培地と,完全合成培地の両方で,ローラーボトル中でコンフルエントな単層培養として,そして深いタンク型バイオリアクターで浮遊培養として維持された 」との記載をもって,上記のように,細かな 。
実験的試行錯誤が必要で,相当の時間と労力を要する「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞の樹立」工程を行った旨が記載されていると理解することは困難である。また,引用例1の「深いタンク型バイオリアクター」が必ずしも大型の培養タンクを意味しているとはいえないし,上記ア( )にイおいては,単に,ローラーボトル中での単層培養が維持されたことと深いタンク型バイオリアクターにおける浮遊培養が維持されたこととが並列的に記載されているにすぎないことからすれば 「深いタンク型バイオリア ,クター」が,培養スケールの拡大が前提となるような大型の培養タンクを意味しているとまでは認められない。
したがって,引用例1に記載された「深いタンク型バイオリアクター」における浮遊培養に関する記載が,その前提として,浮遊攪拌培養を継代することにより,浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞が樹立されていることを意味する旨の被告の主張は,採用することができない。
? 引用例2についてア 引用例2(乙5,昭和58年(1983年)発行)には,次の記載がある。
dhfr IFN- ( ) マウスジヒドロ葉酸還元酵素 とヒトインターフェロンア「()(α 又は γ)をコードする配列をウイルスプロモーターの制御下 5IFN-で有する複合プラスミドは, チャイニーズハムスター卵巣細胞に dhfr-形質転換された (687頁 ( 要約 )の1ないし4行) 。」「」 "ABSTRACT"dhfr CHO MTX ( ) 「このプラスミドの 細胞への形質転換と引き続くイ-での選択により, × ・ の α 又は γ 2-10 10 I.U. ml day HuIFN- 5 HuIFN-4-1-1を産生する細胞株が得られた。 合成は構成的であり少なくとも数か IFN月にわたって維持された (688頁25ないし29行) 。」( ) 「α クローンを継続した 存在下で更に増殖させウ5-2N.05Cl.0I MTX-1 -1 6た。 産生は,単層培養では約 ・ ・ ,そして,約 IFN 30,000units ml day 10細胞 の浮遊培養では ・ で安定に推移した (695 /ml 100,000units ml-1。」頁19ないし23行)( ) 「 又は μ の による2回目の選別により,単層培養エ0.2 1.0 M MTXと浮遊培養の両方で 〜 ・ ・ でヒト γを産 20,000 100,000units ml day IFN--1 -1生する幾つかのクローンが得られた(699頁22ないし24行) 。」( ) 「形質転換 細胞で達成された のレベルは,最も効率のよオCHO IFNい未修飾のヒト細胞のそれに比べて著しく高いというわけではないが,,,, 産生が構成的であり 細胞が浮遊状態で増殖し 繰り返し収穫できる点生産物は単一の遺伝子に由来し,適当な付加部位があればおそらく糖鎖が付加されるので,遺伝子的に修飾した真核細胞を使用する利点が今なおある (702頁21ないし28行) 。」イ 上記アの記載からすると,引用例2には,生理活性タンパク質であるヒトインターフェロン( α 又は γ)をコードする遺伝子とジヒ IFN- 5 IFN-ドロ葉酸還元酵素( )をコードする遺伝子を発現可能な状態で有する dhfrプラスミドを,元来付着性であるチャイニーズ・ハムスターオバリージヒドロ葉酸還元酵素欠損株( )細胞にあらかじめ形質転換して得 CHO dhfr-,,, られた形質転換細胞を用いて 当該形質転換細胞から 浮遊培養によって目的とする組換えヒト α を ・ ,組換えヒト γ IFN- 5 100,000units ml IFN--1を 〜 ・ ・ で産生させ,取得したことが記載され 20,000 100,000units ml day-1 -1ているものと認められる。そして,上記?イのとおり,浮遊培養は,通常攪拌されて行われるものと認められるから,この点において,本件発明と引用例2発明との間に相違はないものと認められる。
ウ そうすると,本件発明と引用例2発明とは,本件発明には,生理活性タンパク質を浮遊攪拌培養で生産する際に用いる形質転換細胞が 「浮遊攪,拌培養を継代して行うことにより樹立された浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」であることが規定されているのに対し,引用例2発明には 「浮,遊攪拌培養を継代して行う」という「樹立」工程についての開示及び用いた形質転換細胞が「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」として樹立された細胞であることについての具体的開示がない点で相違し,その余の点で一致するものと認められる。
エ 被告は,上記認定に反し,引用例2の上記ア( )ないし( )の記載によイオれば,引用例2に記載された細胞は,浮遊培養に適した樹立された細胞であることが明らかであると主張するので,以下,検討する。
( ) 被告は,引用例2の上記ア( )の記載の第2文を根拠として,引用アイ例2に記載された細胞は,浮遊培養に適した樹立された細胞であると主張する。
しかし,引用例2の上記ア( )の記載の第2文に対応する具体的記載イは 「連続的に継代された細胞は少なくとも3ヶ月の間構成的に を , IFN産生した(テーブル1 (693頁下から2行ないし最下行)との記 )」載であり,テーブル1(694頁)の下部の説明には 「サンプルはコ,ンフルエントな単層培養体から採取した」との記載があることからすれば,引用例2の上記ア( )の記載の第2文は,付着培養を行った細胞のイ産生能について述べたにすぎないものと認められる。 IFN被告は,上記認定に反し,引用例2の上記ア( )の記載の第2文に対イ応する具体的記載は 「α クローンを継続した 存在 ,5-2N.05Cl.0I MTX。, , 下で更に増殖させた 産生は 単層培養では約 ・ ・ IFN 30,000units ml day-1 -1そして,約 細胞 の浮遊培養では ・ で安定に推移 10 /ml 100,000units ml6 -1した (695頁19ないし23行)との記載であると主張する。 。」しかし,被告が指摘する上記記載が,引用例2の上記ア( )の記載のイ第2文に対応する具体的記載であるとすれば,引用例2の上記ア( )のイ記載の第2文の「数か月にわたって」に対応する具体的記載があるはずであるところ,被告が指摘する上記記載には, 合成が維持された期 IFN間に関する記載が全くないから,被告が指摘する上記記載は,引用例2の上記ア( )の記載の第2文に対応する具体的記載とは認められない。
イ( ) また,被告は,引用例2の上記ア( )の記載の第1文について,原イイ,「」,「」 , ( ) 文では 細胞株 は と表現されており 細胞株 strain cell strainとは,最も一般的には 「初代培養からでもまたは細胞系からでも,選 ,択あるいはクローニングによって特異な性質あるいは(遺伝的)標識をもつようになった培養系統を指す。特殊な性質あるいは標識は,その後の継代培養中維持されるものでなくてはならない 」との意味で用いら。
れているから,引用例2を読んだ当業者であれば,引用例2の筆者が,当該細胞株を と表現したのは,組換えタンパク質を産出するとい strainう特殊な性質又は遺伝的標識を持つようになった当該細胞株が,付着培養と浮遊培養のいずれの場合でも増殖し,その特殊な性質又は遺伝的標識が,その後の継代培養中も維持されたからにほかならない,と理解すると主張する。
たしかに,細胞株( )とは,一般的に,初代培養から,又 cell strain,() は細胞系から 選択又はクローニングによって特異な性質又は 遺伝的標識を持つようになった培養系統を指し,特異な性質又は標識は,その後の継代培養においても維持されるものでなければならないものと認められる(乙67)が,引用例2の上記ア( )の記載の第1文は 「このイ,プラスミドの 細胞への形質転換と引き続く での選択に dhfr CHO MTX-より ・・・を産生する細胞株が得られた 」と記載しているのであり, ,。
当該記載によれば,細胞株が「特異な性質又は標識」を備えるに至った契機は,形質転換及び での選択の2点であるから,上記記載にお MTX「」「 」, , ける 細胞株 の 特異な性質又は標識 とは 強い 耐性を持ち MTX目的とする生理活性タンパク質の産生能が高い,という性質を意味しているものと理解される。したがって,引用例2の上記ア( )の記載の第イ1文は,上記性質がその後の継代培養においても維持されるものであることを意味するが,当該細胞株が,付着培養と浮遊培養のいずれの場合でも増殖することを意味するものとまで理解することは困難である。
( ) さらに,被告は,引用例2の上記ア( )の「細胞が浮遊状態で増殖ウオし,繰り返し収穫できる」との記載が,組換えタンパク質を産出するという特殊な性質又は遺伝的標識を持つようになった当該細胞株が,付着培養と浮遊培養のいずれの場合でも増殖し,その特殊な性質又は遺伝的標識が,その後の継代培養中も維持されたことを意味すると主張する。
しかし,引用例2の上記ア( )の上記記載は,上記ア( )及び( )のオウエ記載を前提とした記載であると考えられるところ,上記ア( )及び( )ウエの記載には,浮遊培養において 産生が維持された期間や,培養施 IFNMTX 設の規模といった具体的な記載はなく,むしろ,上記ア( )は,エ。, , による2回目の選別に関する記載にすぎない また 上記?エのとおり形質転換細胞は,浮遊攪拌培養に適した細胞を樹立した段階に至る前であっても,一定の増殖性を示すことからすれば,単に浮遊培養におけるIFN IFN 増殖性及び組換えヒト の生産性を確認する程度であれば,当該の大量生産を念頭に置く場合と異なり,必ずしも浮遊攪拌培養に適した細胞として樹立された細胞を用いる必要はない。そうすると,引用例2の上記ア( )の上記記載をもって,上記?エのように,細かな実験的試オ行錯誤が必要で,相当の時間と労力を要する「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞の樹立」工程を行った旨が記載されていると理解することは困難である。
( ) したがって,引用例2に記載された細胞が 「浮遊攪拌培養に適しエ,た形質転換細胞」として樹立された細胞であることが明らかであるという被告の主張は,採用することができない。
? 引用例3についてア 引用例3(乙6,昭和62年(1987年)発行)には,次の記載がある。
IL-2 pSV703 DHFR pSV2-DHFR ( ) ヒト から と選択マーカーマウスア「( ) (15 pSV720 から[ ] の発現単位の両方を含む第3のプラスミドが構築され )と名付けられた (48頁左欄16ないし20行) 。」( ) 「組換え は, %の , μ の と ? のプロイIL-2 5 FCS 0.2 M MTX 150 /mlリンを含む浮遊培地(ギブコ社)を用いて攪拌フラスコでの浮遊培養により取得された (48頁右欄5ないし8行) 。」( ) 「 細胞はプラスミド(図1)で形質転換され,引ウCHO dhfr pSV720-き続いて選択培地で培養された (49頁左欄27ないし29行) 。」( ) 「組換え は,通常,組換え クローン の リットルのエIL-2 CHO 32 1浮遊培養から精製された (49頁左欄43ないし44行) 。」IL-2 CHO IL-2 ( ) ヒト を大量に生産する 株の単離は この ヒト天然オ「,,に近いあるいは同一の構造を有するリンフォカインの,ほぼ無限の供給を可能とする。産生レベルは,ヒト末梢リンパ球の刺激後に観察されるよりも少なくとも2桁高く, [ ]由来の高産生細胞株よりも1桁 Jurkat 28高い。ここに記載された 細胞株の利点は の産生が持続的であ CHO IL-2510U/ml り,刺激を必要としないことである。この研究で得られた ×4IL-2 CHO までの 産生のレベルは,これまでに報告されている形質転換2 10U/ml L 1.5 10U/ml 細胞における × や,形質転換 細胞における ×2 3[ ]に比較して好ましいものである (50頁右欄10行ないし51 12 。」頁左欄2行)イ 上記アの記載からすると,引用例3には,生理活性タンパク質であるヒト をコードする遺伝子とジヒドロ葉酸還元酵素( )をコードする IL-2 dhfr遺伝子を発現可能な状態で有するプラスミドを,元来付着性であるチャイニーズ・ハムスターオバリージヒドロ葉酸還元酵素欠損株( )CHO dhfr-細胞にあらかじめ形質転換して得られた形質転換細胞を用いて,当該形質転換細胞から,浮遊培養によって,目的とする組換えヒト を産生さIL-2せ,取得したことが記載されているものと認められる。そして,上記?イのとおり,浮遊培養は,通常攪拌されて行われるものと認められるから,この点において,本件発明と引用例3発明との間に相違はないものと認められる。
ウ そうすると,本件発明と引用例3発明とは,本件発明には,生理活性タンパク質を浮遊攪拌培養で生産する際に用いる形質転換細胞が 「浮遊攪,拌培養を継代して行うことにより樹立された浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」であることが規定されているのに対し,引用例3発明には 「浮,遊攪拌培養を継代して行う」という「樹立」工程についての開示及び用いた形質転換細胞が「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」として樹立された細胞であることについての具体的開示がない点で相違し,その余の点で一致するものと認められる。
エ 被告は,上記認定に反し,引用例3においては,本件明細書の実施例より大量の培養スケールで,大量,持続的かつ無限の 産生を可能とすIL-2る安定した形質転換細胞が取得されているのであるから,その前提として浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞が樹立されていたことが明らか CHOであり,また,浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立するために,浮遊攪拌培養を継代して行うことも当然のことであると主張する。
しかし,引用例3は,組換えプラスミドで形質転換された 細胞株CHOにより産生された組換えヒトインターロイキン2の特性を報告することを目的とする文献であることが認められ(乙6 ,また,引用例3には,上 )記ア( )の「無限の供給 「産生が持続的」との記載に対応する具体的なオ」,記載はないのであるから,これらの記載は,実際に浮遊培養を行った結果に基づく記述ではないものと認められ,引用例3には,組換えプラスミドで形質転換された 細胞株が浮遊培養でも一定の増殖性を示すことが CHO記載されているにとどまるというべきである。また,上記?エのとおり,形質転換細胞は,浮遊攪拌培養に適した細胞を樹立した段階に至る前であっても,一定の増殖性を示すことからすれば,単に浮遊培養における増殖性及び組換えヒトインターロイキン2の生産性を確認する程度であれば,当該ヒトインターロイキン2の大量生産を念頭に置く場合と異なり,必ずしも浮遊攪拌培養に適した細胞として樹立された細胞を用いる必要はない。そうすると,引用例3の記載をもって,上記?エのように,細かな実験的試行錯誤が必要で,相当の時間と労力を要する「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞の樹立」工程を行った旨が記載されていると理解することは困難である。
したがって,被告の上記主張は,採用することができない。
? 引用例4についてア 引用例4(乙44,昭和62年(1987年)発行)には,次の記載がある。
「チャイニーズハムスター卵巣細胞( )を用いた場合でも,たと CHOえ,さきに述べた天然型 とまったく同様の精製工程を用いたとし hG-CSFても, 細胞が 以上 という高発現株であるため,精製回収量は CHO 10mg /l倍以上も向上した 。現在著者らはこの細胞株をサスペンジョン 10 CHO8)化し,低血清培地からきわめて高い回収率で を得ている。以上 r-hG-CSF述べてきたように,遺伝子工学を用いて の高発現株が得られ,大 hG-CSF腸菌,動物細胞のいずれにおいても大量培養,大量精製に成功しており,純化 の入手が可能となった (504頁右欄27行ないし50 r-hG-CSF。」5頁左欄4行)イ 引用例4に参照文献8として引用された「第9回日本分子生物学会要旨集 3A-39 (乙45,昭和61年発行)には,次の記載がある。 」「 初期プロモーター下流にシグナルペプチド領域を含む を SV40 cDNA接続し,更にマウス 遺伝子を連結した発現プラスミドをリン酸カ DHFR+ルシウム法にて 細胞( )に形質転換した。表現型が CHO DHFR DHFR-10nM MTX MTX となったクローンを選別し の含有選択培地で培養 更に ,,の濃度を , と順次上昇させて 耐性細胞を得た (4な 50nM 100nM MTX。」いし11行)CHO CHO ウ 上記ア及びイの記載からすると 引用例4にいう 細胞 は ,「」,細胞を指すものと認められる。また,弁論の全趣旨によれば,引用 dhfr-例4にいう「サスペンジョン化」とは,浮遊攪拌培養に供したことを指すものと認められる。そうすると,引用例4には,生理活性タンパク質であるヒト をコードする遺伝子とジヒドロ葉酸還元酵素( )をコ G-CSF dhfrードする遺伝子を発現可能な状態で有するプラスミドを,元来付着性であCHO るチャイニーズ・ハムスターオバリージヒドロ葉酸還元酵素欠損株()細胞にあらかじめ形質転換して得られた形質転換細胞を用いて, dhfr-浮遊攪拌培養により,低血清培地から,極めて高い回収率で,目的とする組換えヒト を取得したことが記載されているものと認められる。 G-CSFエ そうすると,本件発明と引用例4発明とは,本件発明には,生理活性タンパク質を浮遊攪拌培養で生産する際に用いる形質転換細胞が 「浮遊攪,拌培養を継代して行うことにより樹立された浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」であることが規定されているのに対し,引用例4発明には 「浮,遊攪拌培養を継代して行う」という「樹立」工程についての開示及び用いた形質転換細胞が「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」として樹立された細胞であることについての具体的開示がない点で相違し,その余の点で一致するものと認められる。
オ 被告は,上記認定に反し,引用例4の「 細胞株をサスペンジョン CHO化し,低血清培地からきわめて高い回収率で を得ている 」と r-hG-CSF。
の記載及び「以上述べてきたように,遺伝子工学を用いて の高発hG-CSF現株が得られ,大腸菌,動物細胞のいずれにおいても大量培養,大量精製に成功しており」との記載によれば,形質転換細胞である 細胞株をCHOサスペンジョン化し,大量培養に成功しているのであるから,その前提として浮遊攪拌培養を継代して行うことにより,安定した 細胞株の培CHO養に成功し,その結果として浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立したことは明らかであると主張する。
,「 , しかし 引用例4の上記 ・・・動物細胞のいずれにおいても大量培養大量精製に成功しており」との記載は,引用例4の「マウス 細胞を用C127,,() いた場合 図 に示したようにの培養上清 蛋白量として 1-d 1.2 600mg lから,二段階という簡単な精製法で の純化 が得られてい 7.9mg rhG-CSFる 」との記載を指すものと認められ,浮遊攪拌培養に供された形質転換 。
細胞から回収された についての記載であるとは認められな CHO r-hG-CSFい。また,上記?エのとおり,形質転換細胞は,浮遊攪拌培養に適した細胞を樹立した段階に至る前であっても,一定の増殖性を示すことからすれば,単に浮遊培養における増殖性及び組換えヒト の生産性を確認 G-CSFする程度であれば,当該 の大量生産を念頭に置く場合と異なり, G-CSF必ずしも浮遊攪拌培養に適した細胞として樹立された細胞を用いる必要はない。そうすると,引用例4の記載をもって,上記?エのように,細かな実験的試行錯誤が必要で,相当の時間と労力を要する「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞の樹立」工程を行った旨が記載されていると理解することは困難である。
したがって,被告の上記主張は,採用することができない。
?小括上記?ないし?によれば,本件発明と引用例1発明ないし引用例4発明とは,本件発明には,生理活性タンパク質を浮遊攪拌培養で生産する際に用いる形質転換細胞が 「浮遊攪拌培養を継代して行うことにより樹立された浮 ,遊攪拌培養に適した形質転換細胞」であることが規定されているのに対し,引用例1発明ないし引用例4発明には 「浮遊攪拌培養を継代して行う」と ,いう「樹立」工程についての開示及び用いた形質転換細胞が「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」として樹立された細胞であることについての具体的開示がない点で相違し,両者が同一であるとはいえないから,本件発明が新規性を欠くとはいえない。
3 争点?イ(進歩性の有無)について次に,被告が主張する,本件発明についての進歩性欠如の有無について検討する。
? 引用例5についてア 引用例5(乙2,昭和51年発行)には,次の記載がある。
( ) 動物の浮遊培養はマウスのリンパ芽球腫細胞を用いた ら 1ア「( Owen953)の成功に始まる。続いて およびその協同研究者(195 Earle4)は振とう培養器を開いて 細胞が浮遊培養に適していることを見 L出し,その後本法は各種の継代培養された株細胞にも応用できることを明らかにした。また 法によりサルの腎細胞の浮遊培養が証明 roller tubeGraham McLimans a spinner され( ら,1955 , ら(1957 )は )法による動物細胞の浮遊培養を確立した。同時に必要に応じては抗生物質生産に使用するような発酵器( )による大きなスケールの fermentorMcLimans b Ziegler Rightsel タンク培養 ら 1957 ; ら 1958; (, ,ら,1960 ,あるいは特別な装置を用いた培養液の自動交換による )一定条件下の長期間培養が可能であることが証明された( とGraff,1957; ら,1959; と ,1961 McCarty Cooper Cohen Eagle; ら,1962; ら,1970 。 McCoy Peraino)われわれの研究室でも,1959年以来 細胞を主体とした HeLa S-3浮遊培養を実施,培養の保存と維持ばかりでなく各種の生化学的あるいMueller は分子生物学的実験に使用して多大の効果をあげているので(ら,1962;梶原,1965;梶原,1970 ,われわれの培養方)法や条件あるいは注意事項を中心として,動物細胞の浮遊培養法についL H.Ep.-2 BHK Chinese Hamster て述べる なおわれわれは本法で 。,,,,, , ,われわれの研究室で胎児ラ Ovary Chinese Hamster Lung L-5178Yット肺から分離した (上皮細胞 , (線維芽細胞)の諸細胞 ML-2 ML-3)も単層培養と同様な増殖能を示すことを認めている (69頁14な。」いし29行)「, , ( ) 動物細胞の大きさと すでに の培養に成功した細胞でもイin vitro末梢血液細胞を除けばすべての細胞が相互に接触支持しあって集団を作る傾向があることから,これらの細胞を液体培養液中に単細胞の形で浮遊させながら増殖させるためには,なんらかの方法で培養液を攪拌し,その沈下と凝集付着とを防止しなければならない。もし細胞がこの新条。, 件に適応できなければその浮遊培養は不可能である しかし多くの場合継代培養の確立された株細胞では,このような環境の変化に耐えて比較的速かに新しい条件に適応するか,あるいは適応しうる細胞だけが選択的に生き残り,安定した培養に発展して増殖を継続できるようになる。
したがって対数期にある発育旺盛な単層培養細胞を用い,トリプシンやなどの処理をなるべく短くし,かつ細胞相互の支持能力を利用す EDTAるため,細胞濃度をできるだけ高くして培養を始めるのが,浮遊培養に成功するコツである。少なくとも ×個 の濃度から開始するこ 510/ml4とが望ましい。また浮遊培養開始後の数日は細胞数の増加よりその生死に注目すべきである。
もし細胞が浮遊培養に適応しにくく,細胞の死亡率が増加するか,細胞の凝集がひどく大きな細胞塊( )を作る傾向にある時には,健 clump全な細胞あるいは細胞塊を作りにくい細胞だけを選択して培養を更新すべきである。そのためには細胞浮遊液を短時間単層培養に移し,細胞塊の少ない生細胞だけが早期に培養瓶に付着するのを待って不用となった培養液とともに好ましくない細胞を除去,残った細胞を機械的あるいは酵素的に集め,新しい浮遊培養を始めればよい。 では3〜4時間HeLaの単層培養でこの目的を達することができる。この方法をくり返せば最終的には浮遊培養に適応した細胞だけが残り,その目的を達成することができる。この状態に達した細胞は,長い単層培養の後でもその性質を変えず,浮遊培養にただちに移行できるのが普通である (69頁3。」1行ないし70頁14行)イ 上記ア( )において,何らかの方法で培養液を攪拌し,その沈下と凝集イ付着を防止しながら,動物細胞を「液体培養液中に単細胞の形で浮遊させ」, ,, ながら増殖させる 培養とは 浮遊攪拌培養を指すものと認められ また細胞を浮遊培養し,その環境の変化に耐えて新しい条件に適応して生き残った細胞を選択する方法を繰り返すこととは,浮遊攪拌培養を継代して行うことを指すものと認められる。そして,上記ア( )において,最終的にイは浮遊培養に適応した細胞だけが選択的に生き残り,安定した培養に発展して増殖を継続できるようになることとは,浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞の樹立を指すものと認められる。
ウ したがって,引用例5は,上記2において認定した,本件発明と引用例1発明ないし引用例4発明との相違点である,生理活性タンパク質を浮遊攪拌培養で生産する際に用いる形質転換細胞が 「浮遊攪拌培養を継代し ,て行うことにより樹立された浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」であることを開示しているものと認められる。
? 容易想到性についてそこで,次に,当業者が,本件発明を,上記2で認定した引用例1発明ないし引用例3発明及び上記?で認定した引用例5発明に基づいて,容易に発明をすることができたといえるか否かについて検討する。
ア 引用例2(乙5)には 「 産生は ・・・約 細胞 の浮遊培養 ,, IFN 10 /ml6では ・ で安定に推移した (上記2?ア( ))との記載及 100,000units ml-1。」ウび「単層培養と浮遊培養の両方で 〜 ・ ・ でヒト 20,000 100,000units ml day-1 -1γを産生する幾つかのクローンが得られた (上記2?ア( ))との IFN- 。」エ記載のとおり,浮遊培養下において,安定な増殖性と,単層培養での生産性に匹敵する高いタンパク質産生能を示すいくつかのクローンが得られたことが記載されている。この記載は,上記2?エ( )のとおり,浮遊攪拌ア培養に適した形質転換細胞の樹立を直接示す記載であるとはいえないが,形質転換 細胞を用いた浮遊培養における組換えヒト の大 CHO dhfr IFN-量生産の可能性を強く示唆する記載である。
イ 引用例3(乙6)には 「組換え は ・・・攪拌フラスコでの浮遊 ,, IL-2培養により取得された (上記2?ア( ))との記載 「組換え は, 。」,イIL-2,。 」 通常 組換え クローン の リットルの浮遊培養から精製された CHO 32 1(上記2?ア( ))との記載及び「産生レベルは,ヒト末梢リンパ球の刺エ激後に観察されるよりも少なくとも2桁高く, [ ]由来の高産生細 Jurkat 28510U/ml IL-2 胞株よりも1桁高い ・・・この研究で得られた × までの 。
4CHO 2 産生のレベルは これまでに報告されている形質転換 細胞における ,× や,形質転換 細胞における × [ ]に比較して好 10 U/ml L 1.5 10 U/ml 122 3ましいものである (上記2?ア( ))との記載のとおり,当該形質転換 。」オ細胞が,少なくとも 程度の浮遊攪拌培養には十分耐えられ,他の形質 1l転換細胞での 産生量に匹敵する生産性を示したことが記載されてい IL-2る。この記載は,上記2?エのとおり,浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞の樹立を直接示す記載であるとはいえないが 「ヒト を大量に生産 ,IL-2する 株の単離は,この,ヒト天然 に近いあるいは同一の構造を CHO IL-2有するリンフォカインの,ほぼ無限の供給を可能とする ・・・ここに記。
載された 細胞株の利点は の産生が持続的であり,刺激を必要と CHO IL-2しないことである (上記2?ア( ))との記載とも相まって,形質転換 。」オ細胞を用いた浮遊培養における組換えヒト の大量生産の可 CHO dhfr IL-2-能性を強く示唆する記載である。
ウ 引用例1(乙4)には 「安定な形質転換体が ・・・深いタンク型バ ,,イオリアクターで浮遊培養として維持された (上記2?ア( ))との記 。」イ載のとおり,十分に浮遊攪拌培養に耐えられる形質転換細胞が得られたことが記載されている。この記載は,上記2?エのとおり,浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞の樹立を直接示す記載であるとはいえないが,形質転換 細胞を用いた浮遊培養における組換えヒト の大量生産 CHO dhfr EPO-の可能性を強く示唆する記載である。
エ 証拠(甲3,乙2)及び弁論の全趣旨によれば,引用例5は,昭和51年に発行され,昭和59年までに第8版まで版を重ねた組織培養の分野で広く読まれた基本的な文献であることが認められるから,引用例5の記載は,本件優先権主張日前の動物細胞の組織培養技術についての技術常識を示すものというべきである。
オ そして,引用例1ないし3に記載された前記示唆に基づいて,引用例2に記載された「浮遊培養下において,安定な増殖性と,単層培養での生産性に匹敵する高いタンパク質産生能を示すいくつかのクローン (上記」ア ,引用例3に記載された「少なくとも 程度の浮遊攪拌培養には十分 ) 1l,」 耐えられ 他の形質転換細胞での産生量に匹敵する生産性を示した IL-2細胞(上記イ)及び引用例1に記載された「十分に浮遊攪拌培養に耐えられる形質転換細胞 (上記ウ)を,それぞれ,大量培養に耐えられる程度 」の高い安定性を有する「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」として樹立された細胞としようとすることは,当業者にとって自然に想起し得ることであり,また,その手法として,上記エのとおり従前から技術常識として確立した一般的手法を用いることは,当業者が容易に想到し得るものである。
カ したがって,本件発明は,引用例1発明ないし引用例3発明のいずれかに対して,引用例5発明を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。
? 原告の主張についてア 引用例5について( ) 原告は,引用例5が発行された昭和51年当時には,動物細胞に遺ア伝子工学を適用してタンパク質の大量生産を行う研究はまだ存在しておCHO dhfr CHO らず, 細胞もまだ存在していなかったことを指摘し,-細胞を用いたタンパク質の生産に引用例5発明を組み合わせるこ dhfr-とは困難である旨主張する。
しかし,引用例5の上記?ア( )の記載は 「末梢血液細胞を除けばイ,すべての細胞が相互に接触支持しあって集団を作る傾向があることから,これらの細胞を液体培養液中に単細胞の形で浮遊させながら増殖させるには,なんらかの方法で培養液を攪拌し,その沈下と凝集付着とを防止しなければならない 」として,末梢血液細胞を除く通常の動物細 。
胞一般を念頭に置いた上で 「もし細胞がこの新条件に適応できなけれ ,ばその浮遊培養が不可能である」として,浮遊培養が不可能な細胞も存在することを指摘しながら 「しかし多くの場合,継代培養の確立され ,た株細胞では,このような環境の変化に耐えて比較的速かに新しい条件に適応するか,あるいは適応しうる細胞だけが選択的に生き残り,安定した培養に発展して増殖を継続できるようになる」として,継代培養の確立された株細胞では,多くの場合,浮遊攪拌培養に適した細胞を樹立することができる旨を指摘しているものである。
このように,引用例5においては,末梢血液細胞を除く通常の動物細胞一般を念頭に置いた記載がされていることからすれば,引用例5自体,, が 遺伝子組換えを行った動物細胞を念頭に置いていなかったとしても,, 形質転換された 細胞も 動物細胞に由来する細胞である以上 CHO dhfr-引用例1ないし3に記載された細胞を,前記の示唆に基づき,浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞として樹立された細胞としようとする当業者が,基本的文献である引用例5に記載された従前からの一般的手法を用いることは,容易であるというべきであり,原告の上記主張は,採用することができない。
( ) また,原告は,甲43鑑定書を挙げて,引用例5は少数の成功例をイ記載したにすぎないと主張する。そして,甲43鑑定書には,引用例5の理解について 「付着細胞を浮遊細胞に変換する方法が記述されてい ,るが,ごく一部の成功例の話と捉えることが妥当であろう 」との記載。
,,「, があり その根拠としては 浮遊化が成功した研究例は報告されるが失敗した例は報告されない。成功例からだけ研究の状況を推し量るのは事実と隔たるということは研究全般でいえることである 」との記載が。
ある。
しかし,引用例5には,上記?ア( )のとおり,既に,15年以上にアわたり,動物細胞の浮遊培養に関する多数の成功例が,種々の細胞及び条件で報告されていることが記載されており,引用例5の筆者自身も,10年以上にわたり,動物細胞の浮遊培養を,現実に種々の細胞で行っていることが記載されているのであり,ごく一部の成功例を紹介したものにすぎないと理解することが合理的であるとはいい難い。また,上記のように 「浮遊化が成功した研究例は報告されるが,失敗した例は報 ,告されない」ことを前提としたとしても,引用例5が,上記?エのとおり,組織培養の分野で広く読まれた基本的な文献であることにかんがみれば,引用例5の上記?ア( )の記載を読んだ当業者が,ごく一部の成イ功例について,あたかも一般的な手法であるかのように紹介したものにすぎないと理解するとは考えられない。仮に,引用例5がごく一部の成功例を紹介したものにすぎないと理解されるとしても,引用例5には,動物細胞の浮遊培養に関する成功例として,ジヒドロ葉酸還元酵素( )を有する通常の 細胞が示されているのであるから,当業 dhfr CHO-者は 当該成功例に基づく積極的示唆により 形質転換された ,,CHO dhfr細胞に引用例5に記載された手法を用いようと容易に想起し得るものというべきである。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
( ) さらに,原告は,引用例5の記載について,工業的生産において必ウ要とされるような,浮遊攪拌培養における増殖性等の性質の安定性まで考慮して記載されたものではないと主張し,また,引用例5には,付着性の組換え 細胞を浮遊化させても,導入された遺伝子が安定 CHO dhfr-に細胞中に保持,再現され,目的タンパク質が安定に生産されることは示唆されていないから,引用例5発明と引用例1発明ないし引用例3発明を組み合わせても,目的タンパク質の大量かつ安定的な生産という効果は予想できなかったと主張する。
しかし,引用例5には,上記?のとおり,浮遊攪拌培養に適応した細胞が選択的に生き残り,安定した培養に発展して増殖を継続できる旨の記載があるから,浮遊攪拌培養における増殖性等の性質の安定性についての記載があるというべきである。また,引用例5には,付着性の組換え 細胞を浮遊化させた場合に,目的タンパク質が安定に生産 CHO dhfr-,,, されることは記載されていないが 引用例2及び3には 浮遊培養下で組換え 細胞が高いタンパク質産生能を示したことが記載され CHO dhfr-ており,引用例1にも,浮遊培養下で,安定な形質転換体が維持されたことが記載されているから,これらの引用例と組み合わせるべき引用例5に原告が指摘するような記載がなくとも,上記?の判断を左右するも。, , 。 のではない したがって 原告の上記主張は 採用することができないイ 甲28の1文献について原告は,甲28の1文献の「浮遊培養法で細胞が増殖できるようになるかは細胞株( )によって大きく異なる (73頁6ないし7行) cell lines。」との記載を根拠に,たとえ継代培養の確立された株細胞であっても,浮遊化できるか否かについては,専門家の意見も分かれるところであったと主張する。
しかし,甲28の1文献の上記記載は,引用例5の記載と矛盾するものではないし,甲28の1文献は,いかなる細胞が浮遊培養で増殖できるかに関し 「いくつかの細胞,とくに血球系由来の細胞は浮遊培養でよく増 ,殖する。その他にも順化や選択により浮遊培養が可能になる例がある。しかし,一方ヒト二倍体細胞株( , )は,浮遊させた状態では WI-38 MRC-5全く培養できない (72頁7行ないし73頁1行)と記載しており, 。」浮遊化ができない細胞としては,ヒト二倍体細胞株を挙げるのみである。
そもそも,継代培養により浮遊化することが困難な細胞株が一部にあるとしても,そのことにより,当業者が,引用例5に記載された従前からの一般的手法を用いることを断念するものでないことは明らかである。
したがって,原告が指摘する甲28の1文献の上記記載は,上記?の判断を左右するものではなく,上記主張は採用できない。
ウ 甲28の2文献について原告は,甲28の2文献の「単層培養の系に している細胞を浮遊 adapt培養の系に移し,長期間維持することは通常とても困難なことであり,まれに成功しても細胞の増殖度は余り良くない (291頁左欄27行な 。」いし右欄1行)との記載を根拠に,1980年代の専門家の見解は,付着性細胞を浮遊化することは一般に困難である,というものであったと主張する。
しかし,甲28の2文献は,導入部分において 「細胞の大量培養につ ,いては,近年いくつかの報告がなされているが,大量培養法には大きく分けて単層培養法と浮遊培養法とがある。ここでは主として現在筆者らが実際に試みているところの,ヒト由来細胞を用いての大量浮遊培養法について述べることにする (291頁左欄10ないし15行)と記載されて 。」いるとおり,主としてヒト由来細胞に関する記述であるから,これに接した当業者が,動物由来細胞全般について,引用例5に記載された従前からの一般的手法を用いることができないと認識するものとは認められない。
したがって,原告が指摘する甲28の2文献の上記記載は,上記?の判断を左右するものではなく,上記主張は採用できない。
エ 浮遊化に際しての導入遺伝子の安定性について原告は,浮遊化に際して,導入遺伝子に変化が生じ,目的とする生理活性タンパク質の生産性が変化する可能性を指摘し,浮遊攪拌培養に適合する遺伝子の状態に到達した細胞においても組換えタンパク質生産の安定性を獲得し得ることは,公知技術からは予測不可能であると主張する。
しかし,上記ア( )のとおり,引用例2及び3には,浮遊培養下で,組ウ換え 細胞が高いタンパク質産生能を示したことが記載されてお CHO dhfr-り,引用例1にも,浮遊培養下で,安定な形質転換体が維持されたことが-記載されているから 当業者は 引用例1ないし3に基づいて ,, ,CHO dhfr細胞に導入した遺伝子(のタンパク質生産の安定性)が浮遊化に際しても維持されていることを理解することができる。そうすると,これを更に進めて 「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」として樹立された細胞とし ,た場合においても, 細胞に導入した遺伝子のタンパク質生産の CHO dhfr-安定性が維持されているのではないかと推測することは,当業者にとって容易であるというべきである。
なお,当業者において,浮遊化に際しての導入遺伝子の変化を危惧し,目的とする生理活性タンパク質の生産の安定性が獲得されるかどうかに疑問を持つことがあったとしても,そのことは,上記結論を左右するものではない。なぜなら,仮に,導入遺伝子の変化が危惧され,目的とする生理活性タンパク質が安定的に生産されるかどうかに疑問があったとしても,引用例1ないし3に記載された細胞を,前記示唆に基づき,更に発展させて 「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」として樹立された細胞としよ ,うと考えること自体は,当業者にとって自然なことであり,その手段としても,まず,引用例5に記載された従前から確立した一般的手法を用い,導入遺伝子の変化の問題がどの程度影響を及ぼすかを検討することも,当業者にとって自然なことであると考えられるからである。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
オ 甲20文献について原告は,甲20文献の「組換え 細胞および 細胞は,いずれ C127 CHOも接着依存性の細胞で浮遊化はできない (20頁左欄16ないし17 。」行)との記載を指摘し,本件優先権主張日において,組換え 細CHO dhfr-胞は浮遊化できないと考えられていたと主張する。
しかし,甲20文献は,マイクロキャリア法を用いた組換え 細胞C127及び 細胞によるタンパク質の生産に関する文献であり,浮遊化に関 CHOしては,上記のとおり 「浮遊化はできない 」との記載があるのみであ ,。
って,その根拠は全く記載されていない。
そうすると,甲20文献の上記記載は,引用例1ないし3及び5の前記記載など多数の公知文献の見解と反するものであり,その根拠も示されていないから,引用例1発明ないし引用例3発明と引用例5発明とを組み合わせて本件発明に想到することを阻害するに足るものではなく,原告の上記主張は,採用することができない。
カ 甲46意見書について原告は,甲46意見書に,P10博士の経験として, 細胞はCHO dhfr-付着性が強く,大量生産には向かないと判断したとの記載があることを指摘する。
原告が指摘するように,甲46意見書には 「小型のスピナーフラスコ ,を使用して 株が浮遊培養できるかどうかを試したことがありま CHO dhfr-すが,培養時間の経過とともに細胞凝集塊を生じて浮遊し,また,フラスコ壁面にも付着して増殖するために,均質な培養は難しく,バイオ医薬品の製造に必要なマスターセルバンクやワーキングセルバンクの作成にあたり,細胞のクローン化操作を経て均質なセルバンクを作成するにも不利であると判断して,その先の検討は行いませんでした。このような細胞にエリスロポエチン遺伝子を導入し,浮遊攪拌培養で高密度に細胞を培養して。」 エリスロポエチンを安定して大量生産することは考えにくいことでしたとの記載がある。
しかし,引用例5は,上記?ア( )のとおり,動物細胞の浮遊培養に際イし,細胞の凝集がひどく細胞塊を作る傾向がある場合があることを指摘した上で,その場合の解決策も開示しているのであるから,甲46意見書のように付着性の細胞である旨の記載は,引用例1発明ないし引用例3発明と引用例5発明とを組み合わせて本件発明に想到することの阻害要因となるものではなく,原告の上記主張は採用できない(なお,P10博士が,医薬品の製造のために必要なセル・バンクのための均質性の確保が困難であると判断して,浮遊攪拌培養を用いることを検討しなかったとしても,医薬品の製造のために必要なセル・バンクのための均質性の確保は,本件発明の技術的課題ではないから,本件発明の進歩性の判断には影響しない。。)キ 甲17文献及び甲18文献について原告は,キリン-アムジェン社が浮遊攪拌培養法を採用せず,ローラーボトル法を採用して の大量生産を行った旨の甲17文献及び甲18 EPO文献の記載を指摘し,キリン-アムジェン社は,組換え 細胞をCHO dhfr-浮遊攪拌培養する可能性を見出していなかったと主張する。
,,「, たしかに 甲18文献には 容量の大きいタンク培養は効率がよいがスケールアップに伴い,製造条件の再検討が必要となる。微量で効果を発揮する一方,生産スピードが求められる医薬品の製造(治験でも相当量の供給が必要になった)では,培地,攪拌,精製などで実験室レベルの条件をそのまま移行できるローラーボトルをシステムとして高度に自動化する方が得策と,キリンは判断した 」との記載があり,医薬品の製造を念頭 。
に置く場合,キリン-アムジェン社が,このように製造条件の再検討が必要となる浮遊攪拌培養法を回避し,実験室レベルの条件をそのまま移行できるローラーボトル法を採用したことは,当業者の選択し得る対応の一つであるといえる。他方,引用例5に接した当業者が,動物細胞を安定して継続的に増殖させるために,そこに記載された浮遊攪拌培養を継代して行,, うという一般的手法を用いることも容易に選択し得る対応の一つであり本件発明のように,医薬品の製造をその直接の目的としない場合には,より一層容易に試みるものであるといわなければならない。
したがって,甲17文献及び甲18文献の記載が上記?の判断を左右するものではなく,原告の上記主張は,採用できない。
? 上記?ないし?のとおり,本件発明は,引用例1発明ないし引用例3発明のいずれかに対して,引用例5を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定に違反して特許されたものであるから,同法123条1項2号の規定に基づき,特許無効審判により無効にされるべきものである。
4まとめ上記1のとおり,被告は,被告方法について,特許法79条所定の先使用による通常実施権を有するから,被告による被告方法の使用が本件特許権の侵害に当たることを理由とする本件損害賠償請求は,理由がない。また,上記3のとおり,本件特許(請求項1に係る部分に限る )は,同法123条1項2号
の規定に基づき,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,同法104条の3第1項の規定により,被告に対し,本件特許権を行使することができない。
結論
以上によれば,原告の本訴請求は,その余の点を判断するまでもなく,理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
追加
清水節裁判長裁判官山田真紀裁判官東崎賢治裁判官被告方法1説明書1被告方法1EPO被告方法1は,平成2年1月23日付けで厚生大臣の製造承認を受けたMCBの製造方法であるなお後記2の被告方法1の概要のうち後記2?エの。,,及びの確立の工程までは,昭和59年5月から昭和60年12月までのMWCB間に社によって行われ,昭和61年2月に当該及びが被告に移GIMCBMWCB転され,それ以後の工程は被告が行った。
2被告方法1の概要?種細胞株αの樹立CHODN2-33ア挿入の調製EPO-cDNA再生不良性貧血患者の尿からヒトを単離精製し,そのアミノ酸配列EPOを決定した。次いで,その情報をもとにヒトゲノムライブラリーからDNAEPO-gDNAcDNAEPO-cDNAを,続いてヒト胎児肝細胞ライブラリーからをクローニングした。このから,発現ベクターに組み込む挿入cDNAを作製した。EPO-cDNAイ発現ベクターの作製DN2-3哺乳動物細胞用発現ベクターとして設計されたプラスミドに,前pRK1-4述の挿入を組み込んで,発現ベクターを作製した。EPO-cDNADN2-3ウ種細胞株αの樹立CHODN2-33発現ベクターを,チャイニーズハムスター卵巣()細胞のジDN2-3CHOヒドロ葉酸還元酵素()欠損株に導入して,同細胞株を形質dhfrDUKXB11転換した。次いで,メトトレキセート()濃度を段階的に上げて,MTXとを遺伝子増幅させ,その中から高い生産能をEPO-cDNAdhfr-cDNAEPO有する細胞を1つ選択分離し,これを増殖して種細胞株αをCHODN2-33得た(同細胞株は1個の細胞から増殖した同じ遺伝子構造を持つ細胞からなることを確認している。。)エ及びの確立MCBMWCB種細胞株αをまず馴化用培地で29日間浮遊培養し,そのCHODN2-33後生産用培地で順次スケールを上げて浮遊培養し,のスケールで培養して4l得られた細胞を遠心分離により集めた。次いで,この細胞を,凍結保存用培地に再懸濁させ,これを凍結用バイアルにずつ分注して200本のバ1mlイアルに入ったマスター・セル・バンク()を作成した(の作成MCBMCBは,昭和60年12月4日である。。)の細胞については,形態学的特性,増殖特性,細胞遺伝学的特性,MCB核型,アイソザイム,造腫瘍性及び生産能の特性を調べるとともに,EPO無菌性試験など多くの試験を行って安全性を確認した。
続いて,作製されたのうち,1本のバイアルの細胞を解凍して,上MCB記生産用培地で順次スケールを上げながら浮遊培養し,のスケールで培養4lして得られた細胞を遠心分離により集めた。次いで,この細胞を,凍結保存用培地に再懸濁させ,これを凍結用バイアルにずつ分注して200本1mlのマスター・ワーキング・セル・バンク()を得た。の細胞MWCBMWCBについても,と同じ特性及び安全性の確認を行った。MCBオ及びの保管及び管理MCBMWCB及びは,液体窒素中に保管・管理された。保管中のにMCBMWCBMCBついては5年を期限として,また,については2年を期限として,MWCB定期的に,増殖特性,細胞遺伝学的特性,の安定性及び生EPO-cDNAEPO産能の生物学的特性を調べ,安定性を確認している。
?培養工程を生産する必要に応じて,のバイアル中の細胞を解凍し,これEPOMWCBを培養してが製造される。この培養においては,生産用培地を用い,バEPOッチ・リフィード法により,細胞をまずスピナーフラスコ中で順次スケールアップしながら培養し,最終的に所定の大きさの培養タンクで連続培養を行う。
,,,なお生産のための細胞の連続培養期間は120日までとなっておりEPO及びの細胞は,120日の連続培養期間中は,上記特性が安定しMCBMWCBていることが確認されている。
?精製工程4段階のカラムクロマトグラフィーによって,細胞由来,培養工程由来及び精製工程由来の不純物を分離除去し,を精製する。EPO3及びの確立の工程の詳細MCBMWCB?高い産生能を有する細胞を選択して細胞株αを得るまEPOCHODN2-33での工程(上記2?ウ)は,プラスチックの培養皿/フラスコで行われ,得られた細胞株は,ウシ胎仔血清を%含む培地で付着培養された。その後,種10細胞株αを,馴化用培地で安定的に浮遊培養できるように馴化CHODN2-33させ,次いで,生産用培地で安定的に増殖できるように馴化させ,を作MCB製した。
この工程において用いられた3種類の培地は,次のとおりである。なお,いずれの培地にも核酸は含有されていない。
@馴化用培地(%ウシ胎仔血清を含む)10。
A生産用培地(%ウシ胎仔血清を含む)1。
B凍結保存用培地?及びの確立までのプロセスMCBMWCBア付着培養された細胞のトリプシン処理,,付着培養されていたαの細胞に昭和60年10月17日CHODN2-33トリプシン処理を行い,細胞を容器の器壁からはがして,馴化用培地で浮遊培養を開始した。
イ細胞の浮遊培養への馴化細胞の浮遊培養では,2ないし4日ごとに細胞浮遊液の一部を除去し,等量の新鮮な培地と置換する操作を行った。
その後の培養の過程における細胞密度,細胞の生存率,倍加時間(世代時間)は,別紙培養経過図1のとおりである。細胞が生長しにくくなったときには遠心分離によって細胞を培地から回収し新鮮な培地に再懸濁した別,,(紙培養経過図1の。
*)ウ生産用培地への移行9924浮遊培養開始から29日目には細胞の生存率が約%倍加時間が約,,時間,最終細胞密度が×細胞となり,細胞が安定的に増殖できる510/ml5ように馴化した。
そこで,生産用培地での培養に移行した。細胞は,当初,ほとんど生長しないが,やがて回復し,生長を開始し,浮遊培養開始から36日目には倍加時間が時間に,浮遊培養開始から46日目には倍加時間が時間になっ5024た。
エマスター・セル・バンク()の作製及び保存MCB浮遊培養開始から36日目ないし46日目に徐々に培地容量を増しながら5培養し,培地容量がスケール,細胞の生存率%,細胞密度が×498510l細胞となった段階で,細胞を遠心分離して集め,凍結保存用培地に再懸/ml濁した。これを凍結用バイアルにずつ200本に分け,緩やかに℃1ml-70で凍結した。凍結バイアルを液体窒素中に移し,として保存した。MCBオマスター・ワーキング・セル・バンク()の調製及び保存MWCB凍結の1バイアルを解凍し,新鮮な生産用培地に懸濁した。当初のMCB浮遊培養開始から50日目ないし60日目に徐々に培地容量を増しながら培養し,培地容量がスケール,細胞の生存率%,細胞密度が×細498510l5胞となった段階で,細胞を遠心分離して集め,凍結保存用培地に再懸濁/mlした。これを凍結用バイアルにずつ200本に分け,緩やかに℃で1ml-70凍結した。凍結バイアルを液体窒素中に移し,として保存した(昭MWCB和60年12月18日に調製を終えて保存した。。)被告方法2説明書1被告方法2G-CSF被告方法2は平成3年10月4日付けで厚生大臣の製造承認を受けた,MCBの製造方法であるなお後記2の被告方法2の概要のうち後記2?エの。,,及びの確立の工程までは昭和58年2月から昭和62年2月までの間にMWCBMCBMWCB被告によって行われ,その後の工程も,被告が保管している及びを用いて必要に応じて行い,を製造している。G-CSF2被告方法2の概要?種細胞株細胞株の樹立CHO657ア挿入の調製G-CSFcDNA産生細胞株の培養ろ液によりヒトを精製し,その部G-CSFCHU-2G-CSF分アミノ酸配列を決定した。次いで,その情報をもとに,細胞からCHU-2調製したライブラリーからをクローニングした。このcDNAG-CSFcDNAから,発現ベクターに組み込む挿入を作製した。cDNAG-CSFcDNAイ発現ベクターの作製pV3DR1pDKCRG-CSFcDNAdhfrcDNAプラスミドに断片を組み込みさらにの,,を含む断片を組み込んで,発現ベクターを作製した。DNApV3DR1ウ種細胞株細胞株の樹立CHO657発現ベクターを,チャイニーズハムスター卵巣()細胞のpV3DR1CHOジヒドロ葉酸還元酵素()欠損株に導入して,同細胞株を形質dhfrDXB11MTXG-CSF転換した次いでメトトレキセート濃度を段階的に上げて。,(),及びを遺伝子増幅させ,その中から高い生産能をcDNAdhfr-cDNAG-CSF有する細胞をつ選択分離し,これを増殖して種細胞株細胞株を1CHO657得た(」はこの時選択分離されたつの細胞に付した名称である。「。)6571エ及びの確立MCBMWCB種細胞株細胞株を,まず馴化用培地で3日ごとに18日間浮遊CHO657培養し,いったん凍結した。解凍後,5日間の付着培養の後,6日間浮遊培l養し,その後,生産用培地で順次スケールを上げて浮遊培養し,最終的に8のスピナーフラスコで培養を行った。その後,の培養タンクに移転し,40l。,生産用培地で培養して得られた細胞を培地から遠心分離して集めた次いで1mlこの細胞を,凍結保存用培地に再懸濁させ,これを凍結用バイアルにずつ分注し,87本のバイアルに入ったマスター・セル・バンク()MCBを作成した(の作成日は,昭和62年1月23日である。MCB。)の細胞については,形態学的特性,増殖特性,細胞遺伝学的特性,MCB,,,核型アイソザイム造腫瘍性及び生産能の特性を調べるとともにG-CSF無菌性試験など多くの試験を行って安全性を確認した。
続いて,作製された3本のバイアルの細胞を解凍して,上記生産用培地で順次スケールを上げながら浮遊培養し,のスピナーフラスコで培養して得8lられた細胞を遠心分離により集めた。次いで,この細胞を,凍結保存用培地に再懸濁させ,これを凍結用バイアルにずつ分注して100本のマス1mlター・ワーキング・セル・バンク()を得た。の細胞についMWCBMWCBても,と同じ特性及び安全性の確認を行った。MCBオ及びの保管及び管理MCBMWCB及びは,液体窒素中に保管・管理された。保管中のにMCBMWCBMCBついては5年を期限として,については3年を期限として,定期的MWCBに,形態的特徴,増殖特性,細胞遺伝学的特性,の安定性及びG-CSFcDNA生産能の生物学的特性を調べ,安定性を確認している。G-CSF?培養工程を生産する必要に応じて,のバイアル中の細胞を解凍し,こG-CSFMWCB。,,れを培養してが製造されるこの培養においては生産用培地を用いG-CSFバッチ・リフィード法により,細胞をまずスピナーフラスコ中で順次スケール,。アップしながら培養し最終的に所定の大きさの培養タンクで連続培養を行うなお,原液生産のための細胞の連続培養期間は120日までとなってG-CSFおり,及びの細胞は,120日の連続培養期間中は,上記特性がMCBMWCB安定していることが確認されている。
?精製工程4段階のカラムクロマトグラフィーによって,細胞由来,培養工程由来及び精製工程由来の不純物を分離除去し,を精製する。G-CSF3及びの確立の工程の詳細MCBMWCB?高い産生能を有する1個の細胞を選択し,これを増殖して細胞株G-CSF細胞株を得る工程(上記2?ウ)では,選択された細胞を34日間CHO657付着培養した後,18日間浮遊培養し,得られた細胞株をいったん凍結保存した。その後,凍結保存していた細胞株を解凍し,馴化用培地で安定CHO657的に浮遊培養できるように馴化させ,次いで,生産用培地で安定的に増殖できるように馴化させ,を作製した。MCBこの工程において用いられた5種類の培地は,次のとおりである。なお,いずれの培地にも核酸は含有されていない。
@馴化用培地?(%ウシ胎仔血清を含む)10。
A付着培養用培地B馴化用培地?(%ウシ胎仔血清を含む)10。
C生産用培地(%ウシ胎仔血清を含む)1。
D凍結保存用培地?及びの確立までのプロセスMCBMWCBア細胞の浮遊培養への馴化細胞株を,34日間付着培養した後,上記?@の馴化用培地?CHO657を用いて3日ごとに18日間の浮遊培養を行い,昭和61年11月10日に℃で凍結保存した。-80イ凍結保存された細胞株の解凍・培養657昭和61年11月17日,細胞株を解凍し,径プレートでCHO6579cm5日間付着培養した。
ウ細胞の浮遊培養への馴化100ml昭和61年11月22日から6日間上記?Bの馴化用培地を用い,,スピナーフラスコで浮遊培養し,細胞が安定的に浮遊培養できるように馴化した。
エ生産用培地への移行昭和61年11月28日,生産用培地を用いた浮遊培養を開始し,同日から47日間,培養液量を徐々に上げながら,最終的にスピナーフラスコ8lで培養を行った。昭和62年1月14日,培養タンクに移植し,9日間40l培養を行った。
「」株の47日間のスピナーフラスコでの培養経過は,別紙培養経過657図2のとおりであり「」株の9日間の培養タンクでの培養経過は,,65740l別紙培養経過図3のとおりである。
オマスター・セル・バンク()の作製及び保存MCB,,40l培養タンクでの9日間の培養の後増殖が順調であることを確かめて培養液(×細胞,生存率%)を培養タンクから回収した。35.310/ml92.3l5細胞を遠心分離して集め,凍結保存用培地に再懸濁した。これを凍結用バイアルにずつ87本に分け(×細胞本,生存率%,℃で1ml1.710/95.5-807)MCBMCB凍結した。凍結バイアルを液体窒素中に移し,として保存した(の作製は,昭和62年1月23日。)カマスター・ワーキング・セル・バンク()の調製及び保存MWCB3本の凍結を作製の4日後に解凍し,スピナーフラスコで培MCB100ml6590養を開始した。生存率は,解凍直後は%まで低下したが,継代を経てll%以上が確保され培養開始から16日目にスピナーフラスコ2本から,87の細胞培養液を得た。細胞を細胞培養液から遠心分離して集め,凍結保存用1ml-80培地に再懸濁した。これを凍結用バイアルにずつ100本に分け,℃で凍結した。凍結バイアルを液体窒素中に移し,として保存したMWCB(作製は,昭和62年2月12日。MWCB)
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