関連審決 | 不服2002-22969 |
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関連ワード | 技術的思想 / インターネット / アクセス / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 周知技術 / 技術常識 / 容易に想到(容易想到性) / 不存在 / 交換 / 構成要件 / 拒絶査定 / 請求の範囲 / 変更 / 独立特許要件 / |
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事件 |
平成
17年
(行ケ)
10430号
審決取消請求事件
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原告 富士写真フィルム株式会社 訴訟代理人弁理士 柳田征史,佐久間剛 訴訟復代理人弁理士 福尾勲将 被告 特許庁長官中嶋誠 指定代理人 深沢正志,田口英雄,小池正彦,青木博文 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2006/03/29 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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原告の求めた裁判
「特許庁が不服2002-22969号事件について平成17年3月7日にした審決を取り消す 」との判決。。 |
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事案の概要
本件は,原告が 「ネットワークフォトサービスシステム」の特許出願をして拒 ,絶査定を受け,これを不服として審判請求をしたところ,発明の容易想到性(特許法29条2項)を理由に,審判請求は成り立たないとの審決がされたため,同審決の取消しを求めた事案である。 明細書(甲5)の記載によれば 「本発明は,プリントサービスをはじめとする ,デジタル写真サービスを,ネットワーク上で提供するネットワークフォトサービスシステムに関するものである (段落【0001 。すなわち 「現在提供されて 」】),いるネットワークフォトサービスシステムの多くは,画像の登録をフィルム単位で受け付けて」いるため 「見せる相手ごとにフィルムを交換して撮影を行わなけれ ,ばならない 「1回の旅行でフィルム2本分の撮影を行った場合などに,それらの 」,」,「」 写真をまとめて閲覧することができない同じ画像を異なる相手に見せたい場合に 相手ごとに見せる画像を制限することはできない 段落 0006 〜 000 「」 (【 】【8 )という問題があり,これを避けるために「フィルム単位ではなく任意の単位 】で登録を受け付けるという方法」をとると「サービス提供者のシステムに対し, ,同じ画像を二重に登録しなければなら」ず「画像の保管に使用される記憶媒体の ,容量や管理のためのコストが2倍にな」ってしまう(段落【0009】〜【0010 。そこで 「撮影時あるいは撮影後の手間をかけずに,またコストもかけず 】),に,ネットワーク上で見せたい画像のみを見せたい相手にのみ公開 (段落【00」12 )することのできるネットワークフォトサービスシステムを提供するもので 】ある,とされている。 1 特許庁における手続の経緯(1) 本願発明(甲5)発明の名称: ネットワークフォトサービスシステム」 「出願番号:特願平10-5396号出願日:平成10年1月14日(2) 本件手続手続補正日:平成14年9月26日(甲6)拒絶査定日:平成14年10月22日審判請求日:平成14年11月28日(不服2002-22969号)手続補正日:平成14年12月26日(甲7,以下「本件補正」という )。 審決日:平成17年3月7日審決の結論: 本件審判の請求は,成り立たない 」 「。 審決謄本送達日:平成17年3月22日2 本願発明と本願補正発明の要旨(請求項1〜7のうち請求項1のみを記載。本件補正により付加された部分は下線部分のとおりである。以下,本件補正前の請求項1(下記の下線部分を除いたもの)の発明を「本願発明」といい,本件補正後の請求項1(下記の全文)の発明を「本願補正発明」という )。 【請求項1】ネットワーク上で画像を公開することにより,前記画像を使用する各種サービスを提供するネットワークフォトサービスシステムであって,複数の画像を記憶する画像記憶手段と,予め登録された画像グループの名称,及び前記画像記憶手段に記憶された画像をネットワーク上で閲覧可能にすることにより,サービス利用者が前記閲覧可能な画像を所属せしめる1つ又は複数の画像グループを選択できるようにするとともに,選択された画像グループに所属せしめる1つ又は複数の画像を,前記閲覧可能な画像の中から選択できるようにする画像選択手段と,前記画像グループの名称と,該画像グループに所属せしめる画像として選択された画像との対応関係を画像グループ単位で記憶することにより画像グループを管理する画像グループ管理手段と,サービス利用者により画像グループの名称が指定された際に,記憶された対応関係に基づいて,前記画像記憶手段に記憶された画像のうち指定された名称の画像グループに所属する画像のみをネットワーク上で閲覧可能にするグループ画像公開手段とを備えたことを特徴とするネットワークフォトサービスシステム。 3 審決の理由の要点審決の理由は,以下のとおりであるが,要するに,本件補正は,特許法(平成15年改正前のもの。以下同じ )17条の2第5項の準用する126条4項にいう 。 いわゆる独立特許要件(容易想到性の不存在)を欠くので,同法159条1項,53条1項により却下すべきものであり,そして,本願発明は,同様に特許法29条2項違反(容易想到性の存在)により特許を受けることができない,というものである。 審決において引用された文献は,次のとおりである。 刊行物1(本訴甲2 : 新サービススタート!より身近になったパソコンでの )「写真利用」と題する記事( Oh!PC」Vol.16, No.11,pp.217-221,ソフトバン 「,。, 「」 ク株式会社 平成 9 年 11 月 1 日以下 刊行物1に記載された発明を 引用発明という )。 刊行物2(本訴甲3 :特開平8-161214号公報 )刊行物3(本訴甲4 :特開平8-314781号公報 )(本件補正についての審決の判断)(1) 「本願補正発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができ,本件補正が特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項の規定を満たすものであるかについて以下に検討する 」。 (2) 「刊行物1には 『登録IDを取得した利用者が同時プリントなどの際に画像データを ,センターへ登録し,ユーザーは家庭のパソコンからインターネット経由でセンターへアクセスし,その画像を利用し,プリントの注文,ダウンロード等のサービスを受け,登録者本人だけでなく,IDを通知することで知人などを含めて登録画像を見ることができるネットサービスシステム』が記載されていると認められる 」。 「刊行物2には 『ディレクトリの名称と該ディレクトリに所属するファイルとの対応関係 ,をディレクトリ単位で記憶することによりディレクトリを管理し,指定されたディレクトリに所属するファイルのみをネットワークを介して表示する』ことが記載されていると認められる」。 (3) 「そこで,本願補正発明と引用発明を対比すると,両者は,『ネットワーク上で画像を公開することにより,前記画像を使用する各種サービスを提供するネットワークフォトサービスシステムであって,複数の画像を記憶する画像記憶手段と,サービス利用者により画像グループの名称が指定された際に,前記画像記憶手段に記憶された画像のうち指定された名称の画像グループに所属する画像のみをネットワーク上で閲覧可能にするグループ画像公開手段とを備えたことを特徴とするネットワークフォトサービスシステム』。 である点で一致するが,以下の点で相違する。 (相違点1)本願補正発明が,予め登録された画像グループの名称,及び前記画像記憶手段に記憶された画像をネットワーク上で閲覧可能にすることにより,サービス利用者が前記閲覧可能な画像を所属せしめる1つ又は複数の画像グループを選択できるようにするとともに,選択された画像グループに所属せしめる1つ又は複数の画像を,前記閲覧可能な画像の中から選択できるようにする画像選択手段を備えるのに対し,引用発明は該画像選択手段を備えない点。 (相違点2)本願補正発明が,前記画像グループの名称と,該画像グループに所属せしめる画像として選択された画像との対応関係を画像グループ単位で記憶することにより画像グループを管理する画像グループ管理手段を備え,記憶された対応関係に基づいて,指定された名称の画像グループに所属する画像のみをネットワーク上で閲覧可能にするのに対し,引用発明は,該画像グループ管理手段を備えるかどうか明示されておらず,記憶された対応関係に基づいて閲覧可能にすることも明示されていない点。 (4) 「そこで,上記(相違点1)について以下検討する ・・・ファイルをディレクトリに 。 より管理し,相互に関連が深いファイルのみをディレクトリに入れておくことは周知技術であり ・・・前記周知技術を背景とすれば,関連の深い画像ファイルを同一のディレクトリに入 ,れ画像グループとして管理することは当業者が容易に想到し得ることである。してみれば ・,・・画像を画像グループとして管理するために前記画像選択手段を備えることは当業者が容易に設計し得ることである。 」「また,上記(相違点2)について検討すると,上記(相違点1)について検討したようにディレクトリによる管理を前提とすれば,刊行物2に記載されている公知のディレクトリの名称とディレクトリに所属するファイルとの対応関係を記憶した管理手段を用いて,画像グループの名称と所属する画像との対応関係を記憶し,この記憶された対応関係に基づいて指定された名称の画像グループに所属する画像のみをネットワーク上で閲覧可能にするように設計変更することは当業者が容易になし得ることである。 したがって,本願補正発明は,刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである 」。 (5) 「以上のとおり,本件補正は,特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項の規定に違反するので,特許法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである 」。 |
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原告の主張(審決取消事由)の要点
審決は,刊行物2記載の技術内容の認定を誤り,その結果,本願補正発明と引用発明との相違点2についての判断を誤ったものであるから,取り消されるべきである。 1 刊行物2記載の技術内容の認定の誤りについて,(「」 ) 刊行物2の読み出し権限リストには ディレクトリ 項目1 のような大項目とファイル 項目 1.12.2・・・ のような小項目 との対応関係に加えて ディ (「, 」 ) ,レクトリ及びファイルの各項目に対するアクセス権が設定されている。 このように,刊行物2記載の管理手段は,読み出し権限リストの大項目(ディレクトリ)と小項目(ファイル)との対応関係のみを用いて小項目を表示するものではなく,アクセス権の情報をも用いて,小項目を更に絞り込んで表示するものである。すなわち,刊行物2記載の管理手段においては,読み出し権限リストにおけるアクセス権の情報を参照して表示項目を絞り込むことは必須の構成要件であって,大項目が指定された際に,アクセス権の情報を無視して大項目の下位階層の小項目を全て表示することは,あり得ないことである。 したがって,刊行物2の記載から,アクセス権の情報を無視して,読み出し権限リストの大項目と小項目との対応関係のみを用いて小項目を表示するという技術的思想を読みとるなどという,発明の趣旨に反することは,到底想起し得るものではない。 以上のとおり 刊行物2には ディレクトリの名称とディレクトリに所属するファ ,,イルとの対応関係のみを用いたディレクトリ管理については,記載も示唆もされていないのであって 「ディレクトリの名称と該ディレクトリに所属するファイルと ,の対応関係をディレクトリ単位で記憶することによりディレクトリを管理し,指定されたディレクトリに所属するファイルのみをネットワークを介して表示する」ことは記載されていないのであるから,これが刊行物2に記載されているとした審決の認定は,誤りである。 2 相違点2の判断の誤りについて上記のとおり,刊行物2においては,ディレクトリ及びディレクトリに所属するファイルに対するアクセス権の設定が必須のものであるため,ディレクトリの表示が指示されると,アクセス権の情報が参照され,ファイルが絞り込まれて表示される。したがって,刊行物2記載の管理手段を引用発明に用いるとすると,指定された画像グループに所属する画像に対するアクセス権の記述が参照され,画像グループに所属する画像が更に絞り込まれて表示される構成が得られる。 これに対して,本願補正発明は,画像グループに分類された画像に対して更にアクセス権を設定するものではないことから,指定された画像グループに所属する画像は絞り込まれることなく,全て表示される。刊行物2記載のようなアクセス権が設定された対応関係を記憶した管理手段を用いて,本願補正発明のように指定された画像グループに所属する画像を全て閲覧可能にすることは,当業者が容易になし得るものではない。 したがって,審決が「刊行物2に記載されている・・・管理手段を用いて,画像グループの名称と所属する画像との対応関係を記憶し,この記憶された対応関係に基づいて指定された名称の画像グループに所属する画像のみをネットワーク上で閲覧可能にするように設計変更することは当業者が容易になし得ることである」と判断したことは,誤りである。 3 以上のとおり,本願補正発明の容易想到性に関する審決の認定判断は誤りであるから,本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとした審決の判断は誤りである。したがって,本件補正の却下決定は違法である。 |
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被告の反論の要点
審決において,刊行物2記載の技術内容の認定に誤りはなく,本願補正発明と引用発明との相違点2についての判断の誤りもないから,原告主張の審決取消事由は理由がない。 1 刊行物2記載の技術内容の認定について,,「」「」,, 確かに 刊行物2には 読み出し権限リスト に 読み出し権 を含み かつ指定されたディレクトリの下位の項目のうち読み出し権を持っている項目のみを表示することが記載されている。しかし,そもそもファイルをディレクトリで管理することが周知であることにかんがみれば,刊行物2には,審決で認定した管理手段を前提とした上で,上記読み出し権による表示を付加した管理手段が記載されてい,,,, ると 当業者には理解できるのであって刊行物2には 原告主張の技術のほかに審決に認定した技術も記載されている。このことは,刊行物2に「普通,会議資料は,複数のディレクトリやファイルに整理されて格納される場合が多い。また,一つのファイルの内部も,通常は複数の項目からなる。一般には,これらの項目ごとにアクセス権を持つ会議参加者は異なると考えられるが ・・・ディレクトリや ,ファイル単位,またファイル内部での小項目単位でのアクセス権限(制限情報)の設定に関して述べられていないので,会議資料に対するきめの細かいアクセス制限ができない (段落【0004)と記載されていることからも明らかである。 。」】2 相違点2の判断について原告は,刊行物2にはアクセス権の情報を使用しない管理手段が記載されていないことを理由として,審決の相違点2の判断は誤りであると主張するが,刊行物2にアクセス権の情報を使用しない管理手段も記載されていることは前記1のとおりであるから,原告の主張は,その前提において失当である。 また,そもそも 「指定された名称の画像グループに所属する画像のみをネット ,ワーク上で閲覧可能にする」ことは,刊行物1に記載されており,本願補正発明がそのような機能を有する点は引用発明との相違点ではないのであり,刊行物2にアクセス権の情報を使用しない管理手段が記載されているか否かは,相違点2の判断の当否とは関係しないものである。 3 以上のとおり,本願補正発明の容易想到性に関する審決の認定判断に誤りはないから,本件補正の却下決定は違法ではない。 |
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当裁判所の判断
1 刊行物2記載の技術内容の認定について(1) 刊行物2には,次のとおりの記載がある(甲3 。)「 0004】【【発明が解決しようとする課題】(1) 普通,会議資料は,複数のディレクトリやファイルに整理されて格納される場合が多い。 また,一つのファイルの内部も,通常は複数の項目からなる。一般には,これらの項目ごとにアクセス権を持つ会議参加者は異なると考えられるが,前述した特開平4-257045号公報に示された方法によれば,ディレクトリやファイル単位,またファイル内部での小項目単位でのアクセス権限(制限情報)の設定に関して述べられていないので,会議資料に対するきめの細かいアクセス制限ができない 」。 「【】 , ,, 0005 (2) ディレクトリやファイルは 階層構造をなすデータ格納方式であり またファイル内部の項目も通常は階層を持っている ・・・」。 「 段落0037】会議資料は,会議資料格納部11に格納されており,階層化された複数の 【項目からなっている。会議資料に対応する読み出し権限リストは,アクセス制御部12に格納されており,各項目番号の後にその項目の読み出し権をもつ会議参加者の名前が列挙されている。アクセス制御部12は,入出力部14から入力される会議参加者からのアクセス要求に対して,アクセス権限リストを参照し,その要求を出した参加者が権限を持っていれば,会議資料格納部11に対して実行する。読み出し権を持たない会議参加者が存在することにより,表示されない項目があるため,表示されるべき項目の番号が欠落して,その連続性が失われる可能性があるときは,表示制御部13が欠落した番号を埋めて続き番号となるように項目番号を付け替えて表示する 」。 「 0038 ・・・この会議資料は,階層化された複数の項目からなる。この例では,各項目 【】に付された項目番号とインデント位置により階層の上下関係が示されている。ここでは,項目1の下位階層として項目1.1,項目1.2,項目1.3があり,さらに,項目1.1の下位階層として項目1.1.1,項目1.1.2,項目1.1.3がある。具体的には,ディレクトリを大項目,ファイルを中項目,その内部を細分したものを小項目にそれぞれ対応させるというようなことが考えられる ・・・」。 「 0040】一般に,アクセス制御部12は,入出力部14から入力される会議参加者から 【のアクセス要求に対して,そのようなアクセス権限リストを参照し,その要求を出した参加者が権限を持っていれば,その要求を会議資料格納部11に対して実行し,持っていなければ要求を拒絶する。ただし,会議参加者の共通資料として会議資料の読み出し要求が出された場合は,アクセス制御部12は誰がその要求を出したかによらずに,その会議の全ての参加者が読み出し権限を持っている項目のみをアクセス制御部12より自動的に選択して入出力部14のディスプレイに表示する 」。 ,, (2) 以上の記載によれば 刊行物2の電子会議用資料アクセス制御システムは階層化された複数の項目からなる会議資料(ディレクトリが大項目に,ファイルが中項目にそれぞれ対応した例が示されている )を前提として,会議参加者のアク 。 セス権限リストが参照され,参加者がアクセス権限を持つ項目のみが自動的に選択・表示されるものである。 (3) ところで,ファイルをディレクトリで管理することが,コンピュータによるファイル管理の技術分野において,本件出願前に技術常識となっていたことは,刊行物3(甲4)に「ファイルを管理する方法として,ディレクトリを用いて階層的に管理する方法は,MS-DOS,UNIXなどの多くのシステムで実用化されている (段落【0002 )と記載されていることや,乙2(アスキー出版局編 。」】著「標準MS-DOSハンドブック」昭和60年10月5日発行の340〜341頁)の記載から明らかである。 このような技術常識をふまえて刊行物2の上記記載をみると,刊行物2には,「ディレクトリの名称と該ディレクトリに所属するファイルとの対応関係をディレクトリ単位で記憶することによりディレクトリを管理し,指定されたディレクトリに所属するファイルのみをネットワークを介して表示する」ことが記載されているものといえる。 (4) なるほど,刊行物2には,読み出し権限リストにおけるアクセス権の情報を参照して表示項目を絞り込む管理手段も記載されている。しかし,上記の技術常識をふまえれば,同管理手段は 「ディレクトリの名称と該ディレクトリに所属す ,るファイルとの対応関係をディレクトリ単位で記憶することによりディレクトリを管理し,指定されたディレクトリに所属するファイルのみをネットワークを介して表示する」ことを前提とした上で,更にアクセス権の情報を参照して表示項目を絞り込むことを可能にしたものであると理解される。そして,このような前提技術を,, 。 刊行物2の記載から読みとることは 当業者であれば 容易になし得ることである(5) したがって,刊行物2には「ディレクトリの名称と該ディレクトリに所属するファイルとの対応関係をディレクトリ単位で記憶することによりディレクトリを管理し,指定されたディレクトリに所属するファイルのみをネットワークを介して表示する」ことが記載されているとした審決の認定は是認し得るものである。 2 相違点2の判断について原告の主張は,要するに,刊行物2記載の管理手段はアクセス権情報の参照による表示項目の絞り込みを必須のものとしているため,引用発明に刊行物2の管理手段を適用して本願補正発明に至ることは容易ではない,というものである。 ,, , しかし 刊行物2に記載された技術内容は原告の指摘する管理手段のみならずその前提技術である「ディレクトリの名称と該ディレクトリに所属するファイルとの対応関係をディレクトリ単位で記憶することによりディレクトリを管理し,指定されたディレクトリに所属するファイルのみをネットワークを介して表示する」ことを含むことは,前記1に判断したとおりである。 そして 「画像記憶手段に記憶された画像のうち指定された名称の画像グループ ,に所属する画像のみをネットワーク上で閲覧可能にするグループ画像公開手段とを」, 備えたことを特徴とするネットワークフォトサービスシステム である引用発明に刊行物2に記載の前提技術を適用して,画像グループの名称とその所属する画像との対応関係を記憶し,この記憶された対応関係に基づいて指定された名称の画像グループに所属する画像のみをネットワーク上で閲覧可能にするように設計変更することは,当業者が容易になし得ることである。 したがって,これと同様の判断をした審決の判断は,是認することができる。 3 以上のとおり,本願補正発明の容易想到性に関する審決の認定判断に誤りはなく,本願補正発明は,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正を却下した審決の決定に誤りはない。 4結論以上のとおり,原告主張の審決取消事由は理由がないので,原告の請求は棄却されるべきである。 |
裁判長裁判官 | 塚原朋一 |
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裁判官 | 田中昌利 |
裁判官 | 清水知恵子 |