関連ワード | 技術的思想 / 製造方法 / 技術的範囲 / 発明の詳細な説明 / 実質的に同一 / 均等 / 均等論 / 置き換え / 置換 / 置換可能性 / 同一の作用効果 / 特許発明 / 構成要件 / 侵害 / 請求の範囲 / |
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事件 |
平成
3年
(ネ)
3619号
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 1992/09/03 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
一 控訴人(第一審原告)「原判決を取り消す。被控訴人は、控訴人に対し金二億六二万七九六〇円及びこれに対する昭和六三年一〇月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決及び仮執行の宣言二 被控訴人(第一審被告) 主文同旨の判決 |
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当事者の主張
当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決の「事実及び理由 第二 当事者の主張」に摘示のとおりであるから、これを引用する。 一 控訴人の主張1 原判決三丁表六行目の「乾燥(焼却)」とあるのを「乾燥」と改める。 2 原判決三丁表九行目から一〇行目までの全文を次のとおり改める。 「(一) 後記のとおり、本件特許発明の構成のうち特徴的部分は『強制的に水分約一〇パーセント程度にまで乾燥させて得られる粒状物を肥料として用いる』(強制乾燥工程)ことにあり、その余の構成は公知であるから、し尿処理物について強制乾燥工程を用いる方法は本件特許発明の技術的範囲に含まれるのである。したがって、被控訴人の行為は本件特許権の侵害となる。」3 原判決三丁裏七行目「ただ」から同行末「ところ、」までを削除する。 4 原判決四丁表四行目冒頭から同六行目末尾までを次のとおり改める。 「本件特許発明は右公知であった湿式酸化処理方式そのものを構成要件とするものではなく、同方式によって得られたし尿の処理生成物を『さらに強制的に乾燥させて粒状物とし肥料として利用する』ことを構成要件としかつそれを特徴的部分とするものであるから、し尿の処理生成物を『さらに強制的に乾燥させて粒状物とし肥料として利用する』ものであれば、本件特許発明の技術的範囲に含まれる。」と改める。 5 原判決四丁表一〇行目から五丁表五行目までの全文を次のように改める。 「(1) 仮に、 本件特許発明の特許請求の範囲に記載されたし尿の処理生成物の製造方法(湿式酸化処理方式)が構成要件に含まれるとしても、出願当時公知であった右方法は、本件特許発明の主要部分をなすものではなく、特許請求の範囲記載の「さらに強制的に水分約一〇パーセント程度にまで乾燥させて得られる粒状物を肥料として用いる」との強制乾燥工程に関する部分が本件特許発明の主要部分でありかつそれを特徴的部分とするものであるところ、右強制乾燥工程と被控訴人方法の前記3(四)の工程とは実質的に同一である。すなわち、被控訴人方法はし尿を二段活性処理方式によって処理して得た汚泥を、水分約八〇パーセント程度に脱水した後、さらにロータリーキルン(八〇〇度まで加熱可能な焼却・乾燥炉)によって水分約三〇パーセント程度にまで強制乾燥させて粒状物としていることは明らかであるところ、 この「ロータリーキルンによって強制乾燥させて粒状物とする」ことが、すなわち本件特許発明の特徴的部分である「さらに強制的に水分約一〇パーセント程度にまで乾燥させて粒状物とする」技術にほかならない。 (2) しかして、右各乾燥の対象となる生成物を得る方法(湿式酸化処理方式と二段活性処理方式)については、いずれも技術目的を同じくし、生成物に含まれるリン酸の含有量もほぼ同じであるから、相互に置換が容易かつ可能であって、両者は均等である。すなわち、し尿の処理生成物を、さらに強制的に乾燥させる以前のし尿の処理技術は、本件特許発明の請求範囲記載の方法が湿式酸化処理方式であり、被控訴人方法が二段活性処理方式であって、両方式がし尿の処理技術として相違することは明らかであるが、右各方式によって得られた生成物を、肥料として利用するため(両方式とも肥料の製造技術ではなく、またそのまま肥料として利用できないので)、さらに火力により強制的に乾燥させて粒状物とし肥料として利用する方法は、前記(1)のとおり両者とも乾燥度の相違を除けば実質的に同一であり、かつ本件特許発明において含水率一〇パーセントの場合のリン酸含有率は二〇ないし二五パーセントであり、 甲第一二号証の測定結果によれば被控訴人方法においては含水率三〇パーセントの場合のリン酸の含有率は一〇パーセントであるが、これを含水率一〇パーセント程度にまで乾燥させればその含有率は一九・七三パーセントであり、両者のリン酸成分は殆ど同じである。すなわち、湿式酸化処理方式であれ二段活性処理方式であれ、リン酸は熱分解せずまた水にも溶けないので、処理されたし尿処理生成物中に含まれるリン酸の絶対量は両方式とも同一であるから、処理後の生成物をロータリーキルンによって含水量を同程度にまで強制乾燥させれば、それによって得られる生成物のリン酸の含有量は殆ど同一である。 (3) したがって、し尿の処理生成物を強制乾燥させる以前のし尿の処理技術における本件特許発明と被控訴人方法の相違は、し尿の処理生成物である汚泥が前者の湿式酸化処理方式の場合の含水率が約六〇パーセントであり、後者の二段活性処理方式の場合の含水率が約八〇パーセントである点にあるが、右汚泥をさらに火力により強制乾燥させることによって、汚泥中の有機物・水分を除去してリン酸含有率を高め、かつ悪臭をも除去して肥料として使い易い粒状物とし肥料として利用するとの本件特許発明の技術的思想の観点からすれば、本件特許発明と被控訴人方法は、その技術的目的を同じくし、相違する技術的要素を互いに置き換えても同一の作用効果を持ち、本件特許発明に係る方法を被控訴人方法に置き換えることは、当該技術分野における通常の知識を有する者ないし当業者にとって当然に想到し得る代替手段であるから、両者は均等手段であるというべきであり、被控訴人方法は、 本件特許権を侵害するものである。」二 被控訴人の主張1 原判決六丁表四行目から同裏八行目までを次のように改める。 「(一)(1) 控訴人の主張は、本件特許発明の特徴的部分は、し尿処理生成物を強制的に水分約一〇パーセント程度にまで乾燥させて得られる粒状物を肥料として用いることであるから、し尿処理方法が湿式酸化処理方式とは異なる処理方法であっても、 し尿処理生成物を強制的に乾燥させて得られる粒状物を肥料として用いれば本件特許権を侵害するというものであるが、本件特許発明は、し尿処理方法が湿式酸化処理方式に限定されたものであり、処理方式が異なる場合には、たとえ強制乾燥という点で同じであっても、控訴人の特許権を侵害することはない。湿式酸化処理方式によるし尿処理方法とその生成物を肥料として利用することのいずれもが本件特許発明の本質的要素であり、その構成要件になっているものであるから、控訴人と被控訴人の各処理方法は明らかに異なっているものである。 (2) 控訴人は『強制的に乾燥して粒状物とする』という点を控訴人独自の発明であると主張しているが、し尿処理生成物をロータリーキルンで強制乾燥させ肥料として利用する方法は控訴人が本件特許を出願する以前から知られていた(乙二二・『用水・廃水ハンドブック』六九九、七〇〇頁参照)。したがって、控訴人の本件特許は、し尿処理生成物を強制乾燥してそれを肥料として利用するという点に特徴があるものとして付与されたものではなく、リン酸分の含有率が従来法では数パーセントであったものが湿式酸化処理方式によるものでは二〇〜二五パーセントと高くなることを強調することによって付与されたのである。湿式酸化処理方式によるし尿汚泥のリン酸含有率が他の方式と較べて著しく高くなるのは、湿式酸化処理方式ではその特徴である高温高圧下における湿式燃焼によりし尿中の有機物の大半を燃焼することにより、他の処理方式とは比較にならないほど無機化(灰化)が進み、熱分解しないリン酸分が高い含有率で残留することによるのである。したがって、本件特許発明の構成要件は『湿式酸化処理方式によるし尿処理生成物を強制的に水分約一〇パーセント程度にまで乾燥させて得られる粒状物を肥料として用いる』ことであり、『湿式酸化処理方式』を無視して本件特許発明の構成要件を考えることはできない。」2 原判決七丁表三行目から同裏九行目までを全文削除する。 3 原判決七丁裏一〇行目の「(3)」とあるを「(2)」と改める。 |
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証拠関係(省略)
理 由 当裁判所も、控訴人の請求は理由がなく、これを棄却すべきものと判断する。その理由は次のとおり付加、訂正するほかは、原判決の「事実及び理由 第三 当裁判所の判断」と同一であるから、これを引用する(甲第一二号証以外の各号証は成立に争いがないか、原本の存在及び成立に争いがない。)。 一 原判決八丁裏四行目「から」から同丁裏八行目までを次のとおり改める。 「が、@本件特許発明と被控訴人方法におけるし尿処理技術の相違にかかわらず、 控訴人の湿式酸化処理方式そのものは本件特許発明の構成要件となるものではなく、同方式によって得られたし尿の処理生成物を『さらに強制的に乾燥させて粒状物とし肥料として利用する』ことを構成要件とし、かつそれを特徴的部分とするものであって、し尿の処理生成物を『さらに強制的に乾燥させて粒状物とし肥料として利用する』ものであれば、本件特許発明の技術的範囲に含まれるから、生し尿を酸化処理したうえ乾燥させ、粒状の肥料として利用している被控訴人行為は本件特許権を侵害するA被控訴人方法による二段活性処理方式につき均等論の適用があるから被控訴人の方式は本件特許権を侵害するとの控訴人の主張の当否が争点である。」二 原判決八丁目裏九行目を、「二 控訴人の本件特許発明の技術的範囲の主張について」と改める。 三 原判決一〇丁裏七行目から同一二丁表三行目までを次のとおり改める。 「2 被控訴人方法が本件特許発明の技術的範囲に属するか否かについて判断する。 (一) 本件特許発明の技術的範囲について 本件特許発明は『し尿処理生成物の肥料としての利用方法に関するもの』であって、積極的にし尿を処理して得られる残査を肥料として利用することを目的とし、 『水を加えていない生し尿を粗破砕機にかけさらに微破砕機にかけてから一五〇℃〜三五〇℃にまで熱するとともに、二〇〜二一五kg/cm2の圧力を加えてし尿中の酸化性物質の六〇〜八五パーセントを化学的に酸化処理し、この酸化処理によって得られた灰分を水分約六〇パーセント程度にまで脱水した後、さらに、 強制的に水分約一〇パーセント程度にまで乾燥させて得られる粒状物を肥料として用いることを特徴とするし尿処理生成物の利用方法』からなる構成を採用したものであり、この方法により得られた粒状物は窒素全量〇・七〜二・〇パーセント、く溶性リン酸二〇〜二五パーセント、水溶性加里〇・一〜〇・七パーセント、アルカリ分二〇〜二八パーセントの各成分を含有する肥料であって(甲一、なお、同第四欄第九行の『く溶性くん酸』は『く溶性リン酸』の誤記と解される。)、前項で認定した本件特許の取得経緯に照らせば、控訴人は、かかる肥料が従来技術から予測される肥料成分をはるかに越えるリン酸分を含有する効果を強調していたものであることが認められる。 ところで、前記粒状物の肥料成分組成の百分比(以下『パーセント』と表示する。)が、対乾物パーセントであるかどうかは甲第一号証には明記されていないが、肥料成分については対乾物パーセント(無水状態において換算したパーセント)で組成を表示することが一般的であると認められる(乙六の第一四頁第8表の上欄『成分(対乾物パーセント)』とある記載、証人【A】の証言)から、本件特許発明により得られる前記粒状物の肥料成分組成のパーセントは、対乾物パーセントであると解され、また、本件特許の請求の範囲の記載を含め本件特許明細書である甲第一号証に記載される水分についてのパーセントはあくまでも液体対固体、すなわち、対固体パーセントであると解すべきである。 そして、本件特許発明における『この酸化処理によって得られた灰分を水分約六〇パーセント程度にまで脱水した後、さらに、強制的に水分約一〇パーセント程度にまで乾燥』させる工程による作用は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の右作用に関する記載に照らし、酸化処理によって得られた灰分と呼ばれる固形物の水分の除去が主たるものであると認められるから(甲一)、前記粒状物の肥料成分組成は、本件特許発明における酸化処理によって得られたもの、あるいは、殆どそれに近いものであって、前記脱水及び強制乾燥工程は、その肥料成分組成に殆ど影響を及ぼさないものと認められる。 このことは、本件特許発明と同じ湿式酸化処理方式を採用した静岡市南部処理場におけるし尿汚泥の肥料成分組成(対乾物パーセント)が窒素一・九パーセント、 リン酸二八・二パーセント、加里〇・三パーセント、アルカリ分二二・一パーセントであり(乙六の一三頁第7表番号9、一四頁第8表番号9)、本件特許明細書に記載された強制乾燥により得られた粒状物の成分組成とほぼ一致することからも明らかである。 そうすると、本件特許発明において、湿式酸化処理方式による前記粒状物が窒素全量〇・七〜二・〇パーセント、く溶性リン酸二〇〜二五パーセント、水溶性加里〇・一〜〇・七パーセント、アルカリ分二〇〜二八パーセントの各成分を含有することにより、肥料として優れた効果を発揮するものとされているのである(甲一)から、前記粒状物の肥料成分組成と密接に関連する湿式酸化処理は、本件特許発明の特徴をなす構成要件であるというべきである(控訴人は本件特許発明における湿式酸化処理方式は本件特許発明の構成要件でない旨主張するが、同方式が特許請求の範囲に記載されている以上、これが発明の構成要件であることは明らかであり、 要は技術的範囲を定めるに当たって特徴的なものと認め得るか否かの問題である)。したがって、控訴人主張のように、し尿の処理生成物を『さらに強制的に乾燥させて粒状物とし肥料として利用する』ものであれば、本件特許発明の技術的範囲に含まれるものというべきでなく、本件特許請求の範囲に記載された湿式酸化処理方式によって生し尿を酸化処理して灰化させ、これによって生成されたし尿処理生成物を乾燥させて肥料として利用するもののみが、本件特許発明の技術的範囲に含まれるものと認めるべきである。 控訴人は、本件特許発明が採択した湿式酸化処理方式が公知であることを理由として、右方式に係る部分は本件特許発明の構成の特徴的部分ではない旨主張する。 しかし、前記1に認定したところによれば、その工程における温度・圧力を特許請求の範囲記載のように定めることにより、 従来数パーセントに過ぎなかった酸化処理物のリン酸の含有率を二〇ないし二五パーセント(対乾物パーセント)にまで高めた点に本件特許発明の特徴を見いだすことができるのであるから、右方式自体が公知であるとしても、本件特許発明の右方式に関する部分が特徴的部分であることを否定することはできない。 (二) 本件特許発明と被控訴人の方法との対比 本件特許発明における酸化処理は、『水を加えていない生し尿を粗破砕機にかけさらに微破砕機にかけてから一五〇℃〜三五〇℃にまで熱するとともに、二〇〜二一五kg/cm2の圧力を加えてし尿中の酸化性物質の六〇〜八五パーセントを化学的に酸化処理』するものであって、その内容は、破砕した生し尿(スラッジ)を一五〇〜三五〇℃の温度と二〇〜二一五kg/cm2の圧力で処理して、生し尿中の酸化物質の六〇〜八五パーセントを先に混入した空気中の酸素と反応させて酸化し、それにによって生し尿中のCODを除去して、有機の固形物を除去、消失するものである(甲一)。 これに対して、被控訴人の方法における生し尿処理方法は、生し尿を破砕機にかけて、夾雑物を細断し、夾雑物と液とをドラムスクリーンによって分離し、夾雑物を除いた生し尿を希釈水を加えて混合分解槽で曝気処理して、アンモニア性窒素の硝化とBOD除去等を行ない、次に硝化槽で曝気処理して、アンモニア性窒素の硝化をさらに徹底させ、次に脱窒槽でメタノールの添加と嫌気的条件により硝化された窒素酸化物を窒素ガスに還元し、次に再曝気槽で残留メタノールの酸化分解(メタノールは脱窒槽で脱窒素菌の栄養源として添加したもの)、汚泥の沈降性の向上、さらには微生物の活性化を行ない、次に沈殿槽で上澄水と汚泥を分離するものであって(乙一、証人【A】)、微生物の働きを利用して、常温常圧下で生物化学的に処理する方式であり、本件特許における高温高圧下で化学的に処理する酸化処理とは、原理を全く異にするものである。 そうすると、本件特許発明と被控訴人の方法とは、本件特許発明の本質的要素であるそのし尿処理方式を全く異にするものであるから、 被控訴人方法が本件特許発明の技術範囲に含まれるということはできない。」四 原判決一二丁表五行目から同丁裏七行目までを次のとおり改める。 「(一) 前記二の2の(一)で述べたとおり、本件特許発明においては、湿式酸化処理方式は特徴的部分であって、しかも本件特許発明における湿式酸化処理と被控訴人の方法における二段活性処理によるし尿処理方式とは原理を全く異にするものであるから、本件特許発明と被控訴人の方法とは、発明の特徴的部分において同一であるという均等論の前提を充足していない。 さらに、本件特許発明の湿式酸化処理によって得られるものは、対乾物パーセントで、窒素全量〇・七〜二・〇パーセント、く溶性リン酸二〇〜二五パーセント、 水溶性加里〇・一〜〇・七パーセント、アルカリ分二〇〜二八パーセントの各成分を含有するもの、あるいは殆どそれに近いものであるのに対して、被控訴人の方法における二段活性処理方式によって得られる汚泥は、対乾物パーセントで、窒素四・七パーセント、リン酸一〇・二パーセント、加里〇・六パーセント、アルカリ分五パーセントを含有するものと認められる(乙六の一三頁表7番号18、一四頁表8番号18)のであって、両処理によって得られるものの成分組成は、リン酸及びアルカリ分の含有率において大きく異なるのであるから、本件特許における酸化処理と被控訴人の方法におけるし尿処理方式とは、置換可能性の点からみても、同一の作用効果を奏するものということはできない。 (二) なお、控訴人は、乾燥の対象となる生成物を得る方法(湿式酸化処理方式と二段活性処理方式)については、いずれも技術目的を同じくし、生成物に含まれるリン酸の含有量もほぼ同じであるから、相互に置換が容易かつ可能であって、両者は均等であると主張し、その根拠として、『被控訴人方法においては含水率三〇パーセントの場合のリン酸の含有率は一〇パーセントであるが、これを含水率一〇パーセント程度にまで乾燥させればその含水率は一九・七三パーセントであり、両者のリン酸成分は殆ど同じである。』と主張する。控訴人の右主張は、 原審における控訴人本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一二号証に基づくものであるが、同号証が被控訴人方法により得られた水分三〇パーセント含有の汚泥を水分一〇パーセントに乾燥した粒状物についての分析結果を記載したものであるか否かは、同号証自体からは明らかでなく、他に分析対象物を知るべき証拠もない以上、この点に関する前記控訴人本人尋問の結果も直ちに採用しがたい。のみならず、前記二の2の(一)で述べたとおり、肥料における成分組成は、対乾物パーセントと解すべきであるから、生成物の含水率の変化によっては、 特定の成分の含有率は変化することはないと認められるから、控訴人のかかる主張は合理性を欠きそれ自体失当というほかない。 したがって、控訴人の均等論についての主張は理由がない。」五 よって、控訴人の本件控訴は理由がないから、民事訴訟法384条1項により本件控訴を棄却することとし、訴訟費用の負担につき同法95条、89条を各適用して主文のとおり判決する。 |
裁判官 | 松野嘉貞 |
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裁判官 | 濱崎浩一 |
裁判官 | 押切瞳 |