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関連ワード 化学構造 /  実質的に同一 /  薬事法 /  製造承認 /  均等 /  均等論 /  実施 /  侵害 /  侵害するおそれ /  疎明 / 
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事件 平成 4年 (ネ) 10号
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裁判所 名古屋高等裁判所 金沢支部
判決言渡日 1992/09/02
権利種別 特許権
訴訟類型 民事仮処分
主文 一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
全容
一 控訴人の求めた裁判1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人の申請をいずれも却下する。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 当事者の主張 当事者双方の事実上の主張は、原判決三枚目裏初・二行目、同行の各「許可」をいずれも「承認」、五枚目裏九・一〇行目を「なお、マリンバイオ株式会社は、控訴人製法につき薬事法所定の製造承認を受けた。」、六枚目表一〇行目「BMAA」を「EM」と各改め、八枚目表一〇行目「3-アミノクロトン酸」から一一行目「である。)」までを削り、一二行目「BMAA」の次に「(アセト酢酸(N-メチル-N-ベンジルアミノ)エチルエステルの略称である。)」を加え、次のとおり付加する他は、原判決事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。
1 控訴人の主張(一) 特定の方法で医薬品を製造することが経済的に成り立つかどうかは、単に一回限りの反応における原料収率の多寡という技術的条件だけで決せられるべきものではない。
控訴人の製法(m-NBAとEMとMACとを反応させて塩酸ニカルジピンを得る方法)は、塩酸ニカルジピン生成の収率こそ被控訴人の製法に劣るものの、数十分、遅くとも二時間という短時間で反応を完了させることができるので、一日数回製造工程を繰り返すことによって、経費を軽減させることができる。さらに、EMは、本件特許で用いられるBMAAよりも、目的物の単離が容易である。
すなわち、控訴人製法は全体的にみれば、被控訴人製法に劣るものではなく、十分採算が取れるものである。控訴人が工業的に控訴人製法を用いて塩酸ニカルジピン製剤を製造することには、何ら問題はない。
(二) 控訴人が塩酸ニカルジピン原末を供給してもらう予定であるマリンバイオ株式会社は、控訴人製法による塩酸ニカルジピンの製造承認を得ているから、控訴人は同社から同原末を合法的に入手することが可能であり、またこうすることによっても十分採算が取れるから、
控訴人があえて本件特許を侵害して製造された塩酸ニカルジピン原末を用いて同製剤を製造・販売する必要はない。
(三) 控訴人製法では、反応中の水の発生を抑え、被控訴人の疑念を払拭するためにモレキュラーシーブを添加したことに特徴があるから、被控訴人製法とは明らかに異なるものである。しかもモレキュラーシーブは、安価な固体で、再利用が可能である。もしモレキュラーシーブを金網の付いた籠の中に入れて反応液内に沈めるという方法を取れば、反応終了後これを除去することも容易である。
2 被控訴人の認否及び反論(一) 控訴人の主張は争う。
(二) 控訴人提出の疎明をもってしては、いまだ控訴人主張の製法が工業的に採算が取れるかどうかは明らかではない。また控訴人製法よりも塩酸ニカルジピン生成の効率のよい被控訴人製法があり、これが判明しているのに、控訴人ないしマリンバイオがことさら収率の低い控訴人製法によって塩酸ニカルジピン原末を製造し、またこれから同製剤を製造するはずがない。
(三) モレキュラーシーブは、控訴人製法にとって、無意味な添加物であり、むしろ固体であるこれを液体内反応に使用することによって、控訴人製法では、塩酸ニカルジピンの収率が低下している。また、反応液中に固体のモレキュラーシーブを添加するという方法は、同粉末を取り除くのに多大の困難を要するから、一般的には、使用できない。
(四) アミノクロトン酸エステルがアセト酢酸エステルから生成されることは明白な事実であるから、控訴人製法は、本件発明と実質的に同一である均等なものであるとともに、本件発明の迂回方法に該当する。控訴人製法が本件特許を侵害することは明らかである。
疎明(省略) 理 由一 当裁判所も被控訴人の本件仮処分申請は、原判決認容の限度で理由があると考えるところ、その理由は原判決一〇枚目表一二行目「範囲の」を「範囲を」と改める他は、原判決理由説示のとおりであるから、これをここに引用する。
二 控訴人は、控訴人製法は、なるほど被控訴人製法よりも塩酸ニカルジピン生成の収率が劣るものの、
短時間の内に何度も製造工程を繰り返すことができ、またEMは、被控訴人が用いるBMAAよりも目的物の単離が容易であるという利点を有するから、全体的に見れば、これを採用しても決して採算面において問題がない旨主張する。そして、疎明(疎乙四、二八、四四、四六)によれば、控訴人製法は、二時間の反応で約三〇パーセントの塩酸ニカルジピン収率が得られること、控訴人が控訴人製法を採用して塩酸ニカルジピン錠剤を製造しても、一応採算が取れ、経済的にも成り立つとの記載があることが一応認められる。
しかしながら、右疎乙四四号証によっても、工場的規模で実施する際の反応条件、被控訴人製法よりも多く発生する副生物の除去、後述するモレキュラーシーブの使用量等の製法の全貌は明らかにされておらず、果たして控訴人製法がその主張するように、同一の製造現場において一日六回も繰り返し実施可能であるかどうかについては、これを認めるに足る疎明はない。結局前記疎明ないし記載だけでは、
控訴人製法につき、前記認定(原判決引用)の被控訴人製法との顕著な収率の違いに見合うだけの効率、採算が得られることの疎明とはなりえず、他に控訴人の右主張を認めるに足る疎明はない。
控訴人は、控訴人製法で使用するEMは、本件特許で用いられるBMAAよりも目的物の単離が容易である旨主張するが、右を認めるに足る疎明はない。仮にそうであるとしても、原料生成の容易さのみによって塩酸ニカルジピン原末生成の効率、採算性が直ちに左右されるべきものでないことは明らかである。
控訴人の主張は採用できない。
三 また控訴人は、控訴人製法は、水の発生を防止するモレキュラーシーブを用いることにおいて独自性がある旨主張し、疎明(疎乙二八、二九の1・2、三五、三六)によれば、モレキュラーシーブには脱水効果があること、モレキュラーシーブを添加して控訴人製法による反応を行わせても、塩酸ニカルジピンを合成できることが一応認められる。
しかしながら、モレキュラーシーブがもっぱら被控訴人の疑念を払拭するために添加されたものであることは、控訴人自身が認めるところであるうえ、
疎明(疎甲三〇、三八、四四、疎乙二九の1・2)によれば、モレキュラーシーブは固体であるから、塩酸ニカルジピン生成の液体反応発生後は、液体からこれを除去する必要があること並びに、控訴人製法でモレギュラーシーブ添加量を増加させれば、かえって塩酸ニカルジピンの収率が低下することが一応認められる。それにもかかわらず、反応に使用すべきモレキュラーシーブの適量に関する控訴人の主張、疎明はなく、結局モレキュラーシーブの使用によって、こうした控訴人製法に内在する問題点を工業的に克服できるかどうかについては、これを認めるに足る的確な疎明はない。
控訴人は、モレキュラーシーブを金網の付いた籠に入れて反応液中に沈めることによつて、容易に脱水、モレキュラーシーブ除去の効果が得られる旨主張するが、
本件全疎明によっても、反応液中にそのような籠を投入して塩酸ニカルジピンを生成することが工業的に可能かつ効果的であるとは認められない。
控訴人の主張は採用できない。
四 さらに、控訴人は、控訴人製法について薬事法所定の製造承認を得たマリンバイオから塩酸ニカルジピン原末を入手することができるから、わざわざ本件特許を侵害する危険を侵して同原末やこれを原料とする同製剤を製造・販売する可能性はない旨主張する。
しかしながら、前記のように本件において、控訴人製法が採算性を有するとの疎明が得られず、かつ本件特許と控訴人製法との間で収率に顕著な有意差が認められる以上、仮に控訴人提出にかかる疎乙四五、四八号証が、マリンバイオにおいて控訴人製法による塩酸ニカルジピンの製造承認を受けた事実を疎明するものであるとしても、右のとおり控訴人製法の詳細がいまだ明確となっていない以上、控訴人ないしマリンバイオが、現に確立され、控訴人製法よりも明らかに収率が優れていることが判明している被控訴人製法を用いて塩酸ニカルジピン原末を製造、販売すること、すなわち本件特許を侵害するおそれがいまだにあるものと一応認められる。
控訴人の主張は採用できない。
五 なお、被控訴人は、控訴人製法は、
本件発明と実質的に同一である均等なものであるばかりか、ことさら別のものを加えてした、迂回発明であるから、本件特許を侵害することは明白である旨主張する。
しかしながら、右主張がいずれも採用できないことは、前記認定(原判決引用)のとおりである。疎甲三二、三三号証によれば、控訴人製法の原料であるアミノクロトン酸エステルが本件発明の原料に用いられるアセト酢酸エステルから生成されるものであることが一応認められるが、前記認定の化学構造、化学的性質の違い(原判決引用)等に照らせば、右の関係があるからといって、この両物質が密接なもの、あるいは均等論における換置可能なものに該当するとは認められない。
また、被控訴人は、控訴人製法では実は被控訴人製法と同じ反応が生ずる旨主張し、疎甲四三、四四号証中には右に沿う記載もある。しかしながら、右は前記のとおり、控訴人製法における現実の塩酸ニカルジピンの製造にあたって控訴人が添加すべきモレキュラーシーブの適量や反応時間を明らかにしないことによって、被控訴人が控訴人製法によるものと主張する実験が果たして被控訴人製法を忠実に再現したといえるかどうか明らかでないことに起因するものと考えられるのであって、
右記載をもって、控訴人製法と被控訴人製法とが同じ反応を内容とするものであるとは即断できない。
被控訴人の主張は採用できない。
六 よって、控訴人の本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判官 井上孝一
裁判官 横田勝年
裁判官 田中敦
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