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関連審決 審判1964-5061
関連ワード 慣用技術 /  発明の詳細な説明 /  参酌 /  構成要件 /  拒絶査定 /  請求の範囲 / 
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事件 昭和 43年 (行ケ) 19号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1970/12/17
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が、昭和四二年九月二〇日、同庁昭和三九年審判第五〇六一号事件についてした審決を取り消す。
訴訟費用は、被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、被告指定代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。
請求の原因
原告訴訟代理人は、請求の原因として、次のとおり、述べた。
一 特許庁における手続の経緯原告は、昭和三七年四月九日、名称を「重畳高周波数励磁電流での錐状体記録」とする発明につき、特許出願をしたところ(昭和三七年特許願第一三、六〇三号)、
昭和三九年五月二一日拒絶査定があつたので、同年一〇月一二日これを不服として審判を請求し、昭和三九年審判第五、〇六一号事件として審理された結果、昭和四二年九月二〇日、「本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決があり、その謄本は、同年一〇月二八日原告に送達された(出訴附加期間三カ月)。
二 本願発明の要旨 本願発明の要旨は、本願明細書および図面の記載から、次のとおり、理解すべきである。
「変調溝を作ることによつて記録することのできる記録媒体を動かす装置を有する表音器械にあつて、異常に少ない針圧で記録媒体に作用し、かつ、記録媒体に係合して、このレコード盤が動く時には変調溝を作る小尖頭錐状体を有する記録頭と、
該頭に電気信号を、記録される筈の所定周波数範囲内で給送する装置と、記録媒体に対抗して異常に少ない針圧を受けて、該錐状体を記録媒体に貫入させる装置とが組合わされていて、そしてこの装置には別個に又同時にこの錐状体を該信号の記録中の該周波数範囲以上の選定周波数で、連続的に震動させる装置が含まれているので、よつて該記録媒体内の溝は拡大されて、該錐状体尖頭の巾より実質的に大きい巾を持つている表音器械。」三 本件審決理由の要点 本願発明の要旨は、「変調溝を作ることによつて記録することのできる記録媒体を動かす装置を有する表音器械にあつて、異常偏動にある記録媒体に対抗して偏動する、又記録媒体に係合してこのレコード盤が動く時には変調溝を作る小尖頭錐状体を有する記録頭と、該頭に電気信号を、記録される筈の所定周波数範囲内で給送する装置と、記録媒体に対抗しての該頭の該異常偏動の影響のもとに、該錐状体を記録媒体中に貫入させる装置とが組合されていて、そしてこの装置には別個に又同時にこの錐状体を、該信号の記録中の該周波数範囲以上の選定周波数で、連続的に震動させる装置が含まれているので、よつて該記録媒体内の溝は拡大されて、該錐状体尖頭の巾より実質的に大きい巾を持つている表音器械」である。右のうち、
「異常偏動にある記録媒体に対抗して偏動する記録頭」「該頭の該異常偏動の影響のもとに、該錐状体を記録媒体中に貫入させる装置」という記載の部分については、明細書および図面によつても、この異常偏動とはどのようなことを意味しているのか不明であり(録音頭に加える針圧とも推測できるが、もしそうであるなら慣用技術である。)。したがつて、その点は本願発明の要旨外のことであると認める。そして、特公昭三七-第一〇二六四号公報(後に特許第三〇四四三二号として特許された。以下「引用例」という。)には、「音響信号と該音響信号の周波数より高い周波数の切削補助用信号を重畳して記録用カツターに印加したことを特徴とする音響記録盤録音方式」が記載されているから、本願発明は、これと同一発明に帰し、特許法(昭和三四年法律第一二一号)第39条第1項の規定により特許を受けることができない。
四 本件審決を取り消すべき事由 引用例には、本件審決説示のとおり記載されていることは争わないが、本件審決は、次の点について、違法であり、取消しを免れない。
(一) 本件審決が、本願発明の要旨の一部を不明とし、残余の部分をもつて、引用例と比較検討したうえ本件特許出願を拒絶したことは違法である。
1 本願発明は、次の五要件より構成されている。
(1) 変調溝を作ることによつて記録することのできる記録媒体を動かす装置を有する表音器械にあつて、
(2) 異常偏動にある記録媒体に対抗して偏動する、又記録媒体に係合して、このレコード盤が動く時には変調溝を作る小尖頭錐状体を有する記録頭と、
(3) 該頭に電気信号を、記録される筈の所定周波数範囲内で給送する装置と、
記録媒体に対抗しての該頭の該異常偏動の影響のもとに、該錐状体を記録媒体中に貫入させる装置とが組合されていて、
(4) そしてこの装置には別個に又、同時にこの錐状体を、該信号の記録中の該周波数範囲以上の選定周波数で、連続的に震動させる装置が含まれているので、
(5) よつて該記録媒体内の溝は拡大されて、該錐状体尖頭の巾より実質的に大きい巾を持つている表音器械。
2 ところで、本願明細書の「発明の詳細な説明」の項を参酌すると、叙上のうち、「異常偏動にある記録媒体に対抗して偏動する、又」とは、「異常に少ない針圧で記録媒体に作用し、かつ」と、また「記録媒体に対抗しての該頭の該異常偏動の影響のもとに」とは「記録媒体に対抗して、異常に少ない針圧を受けて」と解しうべきものである。ところが、本件審決は、上記(2)の「異常偏動にある記録媒体に対抗して偏動する記録頭」および上記(3)の「該頭の該異常偏動の影響のもとに該錐状体を記録媒体中に貫入させる装置」との記載部分について、明細書および図面によつても、異常偏動がどのようなことを意味しているかは不明であり、右部分は本願発明の要旨外のものであると認定し、これを除外した残部のみを引用例と比較検討したうえ、両者を同一発明と説示した。
しかしながら、特許請求の範囲に記載された事項はその発明の構成に欠くことのできない事項であつて、そのうちの一部を除外して、その発明の技術内容を判断することは許されず、したがつて、本件審決の叙上のような認定および判断は違法である。
(二) かりに本件審決の認定の趣旨が、「異動偏動」とは「録音頭に加える針圧」の趣旨と解しても、本願発明の要件中、「異動偏動にある記録媒体に対抗して偏動する記録頭」、「該頭の該異常偏動の影響のもとに、該錐状体を記録媒体中に貫入させる装置」は慣用技術であり、その他の点は引用例と同一発明であるとしたものであるとしても、本件審決は、本願発明の要旨の把握を誤つたもので、違法である。
1 本願発明は、前述したとおりの五要件よりなるところ、本願明細書の「発明の詳細な説明」の項を熟読参酌するときは、右要件中、「異常偏動にある記録媒体に対抗して偏動する記録頭」および「該頭の該異常偏動の影響のもとに該錐状体を記録媒体中に貫入させる装置」とは、それぞれ「異常に少ない針圧で記録媒体に作用する記録頭」および「この記録頭を異常に少ない針圧で記録媒体に作用させる機構」を意味することを理解することができる。
2 ところで、音声を忠実に録音するためには、録音針を自由に振動させることが要件であり、そのためには、本願発明では、録音針を小尖頭の錐状体とし、これに加える圧力を異常に少なくした。その結果録音針は原音に忠実に振動するが、この振動は微力で、記録媒体(レコード盤)をひつかく程度に終る。そこで、本願発明においてはさらに音声振動に高周波振動を重畳して強力な変調音とし、この変調音を記録媒体に対し、変調溝として記録することによつて、原音に忠実な録音をすることができるようにした。
そして、本願発明の構成は、前記目的および効果を達成するために必要な、異常に少ない針圧で作動する小尖頭錐状体を動作させる機構および変調音を発生させてこれを記録する装置を備えている。
3 他方、引用例の発明は、音響信号に高周波を重畳するという広義の技術思想に止まり、記録用カツターの切削能力を高めることを目的とした方式で、表現された発明であり、本願発明とは、本質的に異なる。
4 しかるに、本件審決は、本願発明の要旨を正解せず、前記「異常偏動にある記録媒体に対抗して偏動する記録頭」および「該頭の該異常偏動の影響のもとに、該錐状体を記録媒体中に貫入させる装置」の「異常偏動」を単に、録音頭に加える針圧に過ぎず、慣用技術に属すると解し、引用例の発明と本願発明とを同一発明と判断したのは、結局、本願発明の要旨の把握を誤つた違法があるというべきである。
(三) 引用例の発明により、高周波信号を重畳しない従来の録音手段と比べて、
切削能率がよくなり、切削能率がよくなることは切れ味がよくなり、したがつて、
高周波を重畳しないで録音していたときの針圧よりも軽くてよく、針先半径も小さくてすむことは当然であることは争わない。
被告の答弁
被告指定代理人は、答弁として、次のとおり述べた。
本件に関する特許庁における手続の経緯および本件審決理由の要点が、原告主張のとおりであることは認めるが、その余を否認する。本件審決は正当であつて、原告主張のような違法はない。すなわち(一) 本願発明の要件中、原告主張にかかる(2)および(3)の部分は、本願明細書の特許請求の範囲および発明の詳細な説明の項の記載をもつてしても、「異常偏動にある記録媒体に対抗して偏動する記録頭」「該頭の該異常偏動の影響のもとに、該錐状体を記録媒体中に貫入させる装置」なる記載がいかなる技術内容を意味するかは、理解しがたく、到底原告主張のように理解することはできない。この「異常偏動」を善解したとしても、ただ単に録音頭に加える針圧を意味するものとしか理解することができず、これを本願発明の要旨外として、その点に発明が認められないとした審決には違法はない。
(二) かりに、本願発明の要旨を原告主張のように理解すべきであるとしても、
引用例の発明も、本願発明も、いずれも、音声信号に高周波信号を重畳してカツタ針に印加して切削能率をよくするという技術手段に発明が存し、両者とも、その結果として必然的に通常の針圧よりも遥かに少ない針圧と小さい針先半径を有するカツタ針を使用することができるのであつて、同一発明にほかならない。
そもそも、録音盤の種類および録音溝のピツチを特定すれば、その条件で正しい音溝を切り込むためのカツタ針の針先半径および針圧は必然的に特定されるものであるところ、引用例の発明は、音声信号に、それより、周波数の高い高周波信号を重畳してカツタ針に印加するもので、それにより、高周波信号を重畳しない従来の録音手段と比較して、切削能率がよくなるという効果を奏する。切削能率がよくなるということは切れ味がよくなることであり、したがつて、高周波を重畳しないで録音していた時の針圧よりも軽くてよく、また、針先半径も少なくてすむことは当然のことであるといわなければならない。そして、引用例の発明においても、切削能率がよくなつた結果、「通常の針圧よりもはるかに少ない針圧と小さい針先半径を有するカツタ針」を使用することができるのであるから、結局、本願発明は、引用例の発明と同一に帰する。
したがつて、本件審決には原告主張のような違法はない。
証拠関係(省略)
理 由(争いのない事実) 本件に関する特許庁における手続の経緯および本件審決理由の要点が、いずれも、原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。
(本件審決を取り消すべき事由の有無) 前記のとおり、本件審決が、本願発明の要旨を、特許請求範囲の記載に基づき、
「変調溝を作ることによつて記録することのできる記録媒体を動かす装置を有する表音器械にあつて、異常偏動にある記録媒体に対抗して偏動する、又記録媒体に係合して、このレコード盤が動く時には変調溝を作る小尖頭錐状体を有する記録頭と、該頭に電気信号を、記録される筈の所定周波数範囲内で給送する装置と、記録媒体に対抗しての該頭の該異常偏動の影響のもとに、該錐状体を記録媒体中に貫入させる装置とが組合されていて、そしてこの装置には別個に又同時にこの錐状体を、該信号の記録中の該周波数範囲以上の選定周波数で連続的に震動させる装置が含まれているので、よつて該記録媒体内の溝は拡大されて、該錐状体尖頭の巾より実質的に大きい巾を持つている表音器械」と認定し、続いて右のうち、「異常偏動にある記録媒体に対抗して偏動する記録頭」、「該頭の該異常偏動の影響のもとに、該錐状体を記録媒体中に貫入させる装置」という記載部分について、明細書および図面をみてもこの異常偏動とはどのようなことを意味するのか不明であり(録音頭に加える針圧とも推測できるが、もしそうであるなら慣用技術である。)したがつてその点は本願の要旨外のことであると認めるとし、本願の発明は引用例と同一発明であると認定したことは、当事者間に争いがない。
叙上によれば、本願の明細書における特許請求の範囲の記載がきわめて、拙劣かつ晦渋難解であるとのそしりを免れないことは、否みえないところであろう。しかしながら、本件審決が「どのようなことを意味するのか不明である」とする「異常偏動」なる表現は、成立につき争いのない甲第一号証のうちの明細書の「発明の詳細な説明」の項および図面の記載、とくに、「この問題を克服するための方途は錐状体の尖頭を例えば1/4ミル程度の半径にまで減少させて、この錐状体を単に数グラムの力だけで、レコード盤に対抗して偏動させ、よつてこのレコード盤材料が錐状体上に相当の荷重を課することのないようにして、この錐状体の周波数応答力に影響をなくすることにある。しかしながらこの方途にあつては、再生器錐状体のために充分なあとつけ案内ができないような細い浅い溝が作られるだけである。若しも偏動力が増加されて、より深い溝が作られたとしても、このような小錐状体ではレコード盤の表面を引裂き或は引掻くだけであろう。(明細書三ページ八行目以下参照)。「更に本発明の目的はより小さい尖頭錐状体で、従前に可能としたより少ない圧力によつて信号表現変調溝を記録媒体内に作ることと、記録盤材料を引裂かないような仕方で、可聴範囲に亘る総ての変調周波数にあつて忠実にあとつけできる程の深さを持つ溝を作ることと、従前に可能としたよりも遥かに低い穿溝速度で、所定品質の記録を達成することのできる改良様式の記録を得ることと、記録される筈の周波数にあつて、錐状体上に、記録媒体によつて課せられる荷重を減少するような記録様式を得ること(中略)にある。」(明細書六ページ一八行目以下参照)、「枢着点から後方に延びる管(53)の部分上には平衡重錘(66)が取りつけられており、この重錘は3乃至5グラム程度のレコード盤に対抗する錐状体の軽い偏重り(かたおもり)が残されるように腕(57)上の第2平衡重錘(67)に関して選択されている。"」(明細書一四ページ六行目以下参照)「第6図及び第8図には約1/4ミルの尖端半径を有してレコード盤上に3乃至5グラムの低偏動力を与えるような小錐状体を何等高周波数の励磁電流を記録器(64)中に送ることなく使用した時の浮上り工作によつて得られた溝型が(108)で示されている。例えばこのような溝は非常に浅くて、再生時の錐状体のためのあとつけ案内溝としては全然不適当である。
レコード盤上の記録器(64)の重量が有効なあとつけ案内溝として適当な充分深い溝を得るために、増加されたとすれば、その結果はレコード盤の引裂きを起し、
しかも印加される可聴信号に応答する溝の横変調は重荷重が記録器錐状体上に課せられているので、比較的少ない。高水準の重量高周波数電流が本発明に従つて記録器中に給送される時には、錐状体は第6図及び第9図に(109)で示すようなやや急な側壁を持つ巾広いより深い溝を作ることができる。これを換言すれば、同じ錐状体で、しかも低錐状体圧力で、深い巾広い溝は錐状体圧力を増加させることだけによつて巾広い深い溝を得ようとする努力の結果から生ずるようなレコード盤の引掻き或は引裂きを招来することなく、得ることができる。」(明細書二一ページ三行目以下参照)との記載および本件審決が仮定的にではあるが「録音頭に加える針圧とも推測できる」としてのべている事実(このことは、当事者間に争いがない。)を参酌して考えると、「従前に一般に行われ、かつ、可能としたよりも小さい針圧(で記録媒体、すなわちレコード盤に作用する)」との趣旨であると解されないわけではなく、これに反する証拠はない。したがつて、「異常偏動にある記録媒体に対して偏動する記録頭」とは、「従前に一般に行われ、かつ、可能としたところよりも小さい針圧で記録媒体に作用する記録頭」と、また、「該頭の該異常偏動の影響のもとに、該錐状体を記録媒体中に貫入させる装置」とは、「該錐状体を記録媒体に対し従前一般に行われ、かつ、可能とされていたところよりも小さい針圧で記録媒体に貫入させる装置」と理解することも可能である。そうすると、本件審決が「異常偏動」なる表現が不明であるとしてこの点を本願発明の要旨外と認定したことは、本願発明の要旨の認定を誤つたことに帰し、違法であるといわなければならない。
次に、本件審決は、「異常偏動」とは「録音頭に加える針圧」とも推測できるが、そうであるならば慣用技術であるから、その点は本願の要旨外のことであり、
本願発明は引用例と同一発明と認めると認定している。しかしながら、前記説示のとおり、「異常偏動」なる文言が「従来一般に行なわれ、かつ、可能とされていたところより小さな針圧」であると解されないわけではないとする以上、それをもつて直ちに慣用技術であると一蹴し、これを要旨外と断定して本願発明を引用例と同一発明と認定したことは、本願発明の要旨の認定を誤つたもので違法であるというほかはない。けだし、本願発明の出願人である原告が「従来一般に行なわれ、かつ、可能とされていたところより小さい針圧」と主張するものを「慣用技術」、すなわち「従来一般に慣用されている技術」とすることはそれ自体誤りであるとせざるをえないのみならず、慣用技術であることを理由として出願人が「特許請求の範囲」と主張するところを、要旨、換言すれば発明の構成要件にあらずとすることは、発明の要旨の誤つた認定を前提としてその特許性の有無を判断したものといわなければならないからである。この点につき、被告は、「要旨外のことであると認める」とは、「慣用技術であるから、その点に発明は認められない」との趣旨であると陳弁するが、被告主張のごとく理解すべき合理的根拠および証拠の存しない本件において、本件審決のいわゆる「要旨外」の趣旨を被告主張のように理解することは、到底できないところである。また、被告は、引用例記載の発明は、音声信号にそれより周波数の高い高周波信号を重畳してカツタ針に印加するようになつており、そのため高周波信号を重畳しない従来の録音手段と比較して切削能率がよくなるという効果を生ずるのであり、切削能率がよくなるということは切れ味がよくなることであり、したがつて高周波を重畳しないで録音していたときの針圧よりも軽くてよく、また針先半径も小さくてすむことは当然のことであると主張し、原告もこれを認めているが、被告が本件審決において異常偏動という点をとらえて慣用技術であるとのみ判断して一蹴し、この点を要旨外と認定し、これを前提として本願発明の特許性の有無を判断した。認定のとおりである以上、叙上争いのない事実に本件審決の認定の違法性を消除するものということはできない。
(むすび) 以上説示したように、本件審決には、原告主張のような違法があるから、その余について判断を加えるまでもなくこれを取り消すこととし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第89条を適用し、主文のとおり判決する。
裁判官 服部高顕
裁判官 石沢健
裁判官 奈良次郎