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関連審決 審判1967-7228
関連ワード 自然法則 /  技術的思想 /  創作性(創作) /  新規性 /  容易に発明 /  着想 /  加工 /  構成要件 /  拒絶査定 /  請求の範囲 / 
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事件 昭和 54年 (行ケ) 81号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1982/06/22
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が昭和四二年審判第七二二八号事件について昭和五四年四月九日にした審決を取消す。
訴訟費用は、被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
原告ら訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、被告指定代理人は、「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は、原告らの負担とする。」との判決を求めた。
請求の原因
一 特許庁における手続の経緯 原告らは、昭和三八年特許願第二一九六三号(昭和三八年四月二七日特許出願)を原出願とし、特許法第44条第1項の規定により、昭和四〇年五月八日右原出願の一部を分割し、発明の名称を「塵埃処理方法」として特許出願をした(以下、この発明を「本願発明」という。)ところ、昭和四二年八月三〇日拒絶査定を受けたので、同年一〇月一八日これに対する審判を請求し、特許庁昭和四二年審判第七二二八号事件として審理され、昭和五一年九月一六日出願公告(特許出願公告昭五一―三二九〇六号)されたが、特許異議の申立があり、原告らは昭和五四年一月一七日手続補正したが、同年四月九日右審判の請求は成り立たない旨の審決があり、その審決の謄本は同月二一日原告らに送達された。
二 本願発明の要旨 炉体内に流動媒体として砂を使用した流動層を形成せしめ、該流動層中に塵埃を給送し、砂の比重が厨芥と雑芥等の可燃物に対して適度に大きく、土砂、ガラス、
金属等の不可燃物に対して適度に小であることを利用して、前記厨芥と媒芥は流動層中に浮動して燃焼せしめ、又前記土砂、ガラス、金属類中砂よりも比重の大なるものと、砂よりも粒径が著しく大なるものを流動層の底部に沈下せしめて炉外に排出可能にしたことを特徴とする塵埃処理方法。
三 本件審決の理由の要点 本願発明の要旨は、前項記載のとおりである。
これに対し、昭和三七年一月二四日国立国会図書館受入れの「POWER」一九六二年一月号第一三六頁右上のコラム(以下、「引用例」という。)には、「熱い砂の流動層中に食品加工の有機廃棄物を投入し、砂から熱量を得て有機廃棄物を焼却せしめること」が記載されている。
本願発明と引用例のものとを対比すると、@本願発明の塵埃は厨芥、雑芥、土砂、ガラス、金属等であるのに対し、引用例の廃棄物は食品加工の有機廃棄物であつて、本願発明の塵埃は土砂、ガラス、金属等の不可燃物を含んでいる点、A本願発明は、砂の比重を利用して厨芥等の可燃物はこれを流動層中に浮動して燃焼させ、土砂、ガラス、金属等の不可燃物はこれを流動層の底部に沈下せしめて炉外に排出可能にするものであるのに対し、引用例には、このような技術は開示されていない点で相違する。
そこで、前記相違点につき検討すると、まず@の点について、引用例は廃棄物である食品加工の有機廃棄物を、流動層としての熱い砂の中に投入して焼却させるのに対し、本願発明は厨芥、雑芥の可燃物のほかに土砂、ガラス、金属等の不可燃物を含む塵埃を、流動層としての熱い砂の中に投入して燃焼処理するもので、流動層としての熱い砂の中に、有機廃棄物を投入するか有機廃棄物及び有機物以外の不可燃物を含む塵埃を投入するかの相違はあるが、ごみ処理において、廃棄物を焼却炉に投入して焼却処理することは周知であるので、廃棄物を焼却処理するのに、流動層としての熱い砂中に有機廃棄物を投入することが公知である以上、流動層としての熱い砂中に前記のような塵埃を投入焼却処理することに格別の発明は認められない。したがつて、砂中に投入する廃棄物が相違する点に格別の発明はない。
次に、前記Aの点について、流動層としての砂の中に前記のような塵埃を投入すると、砂より重い土砂、ガラス、金属等の不可燃物は下方に沈下することは当然のことであり、廃棄物の焼却炉の底部の焼却物等を炉外に排出することは従来周知であるので、流動層の底部に沈下した不可燃物を炉外に排出することに格別の発明は認められない。
しかして、本願発明の構成のうち、「炉体内に流動媒体として砂を使用した流動層を形成せしめる」点と、「厨芥と雑芥は流動層中に浮動して燃焼せしめる」点は、引用例に示されている。
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
四 本件審決の取消事由 引用例に示された技術内容が審決認定のとおりであることは争わないが、本件審決には、次のとおり、これを違法として取消すべき事由がある。
1 審決は、相違点@についての判断を誤つたものである。
本願発明の塵埃処理方法と引用例の廃棄物処理技術とは、処理対象物の組成を著しく異にしているので、技術の範疇を全く異にするものである。
すなわち、本願発明の処理対象物である「塵埃」が厨芥と雑芥等の「可燃物」のほかに土砂、ガラス、金属等の「不可燃物」を含むものであるのに対し、引用例の処理対象物は「食品加工の有機廃棄物」であつて、その組成は常識的にみて、おおむね動物性及び植物性のごみ、すなわち「可燃物」に限定される。審決は、「可燃物」と「不可燃物」との相違を認めながら、「ごみ処理において廃棄物を焼却炉に投入して焼却処理することは周知である」としたうえ、「廃棄物を焼却処理するのに流動層としての熱い砂中に有機廃棄物を投入することが公知である以上、流動層としての熱い砂中に前記のような塵埃を投入焼却処理することに格別の発明は認められない」としたが、これは本願発明と引用例のものが技術の範疇を全く異にすることを看過したものである。けだし、本願発明の特徴の一つは「厨芥、雑芥等の可燃物と土砂、ガラス、金属等の不可燃物」に分けることにあり、このことが発明の重要な構成要件をなしているのに対し、引用例の「有機廃棄物」には、土砂、ガラス、金属等の不可燃物は包含されておらず、したがつて、引用例には可燃物と不可燃物を分ける思想はないからである。
本願発明の原出願当時(昭和三八年四月二七日)、流動層式の焼却炉は存在していたが、それらは、鉱石粒の焙焼、廃水処理によつて生じた活性汚泥の焼却などに用いられ、処理対象物は、いずれも粉粒状のもの、又は不可燃固形物を含まないものに限られていた。これは、昭和三八年当時には、不可燃固形物は流動化を阻害するものであるから、不可燃固形物を含むものを流動層によつて処理することは不可能と考えられていたからである。昭和三八年当時の廃棄物処理技術の通念からみれば、都市塵埃を砂を用いて流動焼却することは、全く意表をついた斬新なアイデイアであつた。
2 審決は、相違点Aについての判断を誤つたものである。
審決は、「流動層としての砂の中に塵埃を投入すると、砂より重い土砂、ガラス、金属等の不可燃物は下方に沈澱することは当然のことであり」とするが、誤りである。
言うまでもなく、発明は、その内容を分析すると、自然法則又は公知の単位操作(例えば、攪拌、加熱、比重による分離など)の組合せから成り立つている。発明を構成する単位が自然法則又は公知のものであつても、新規な発明があり得ることは当然である。審決の判断は一不可燃物の沈下」を自然法則の一つとしてしか評価していない点において誤つている。「不可燃物の沈下」は、本願発明の目的、その目的を達成するための技術的構成、それによる作用効果の全体の体系の中にあるのであり、他の技術的要件との組合せにおいて本願発明の新規性を構成する。
本願発明の新規な工程によつて、従来、一般に火格子式焼却炉を用いて焼却されていた都市塵埃は極めて効率良く焼却されるようになつた。この効果は従来の都市塵埃の処理技術からみて予測しがたいものであり、かつ極めて顕著なものである。
審決は、さらに、「廃棄物の焼却炉の底部の焼却物等を炉外に排出することが従来周知であるので、流動層の底部に沈下した不可燃物を炉外に排出することに格別の発明は認められない」とするが、これも誤りである。けだし、「焼却炉の底部の焼却物等を炉外に排出すること」自体は周知であるとしても、審決は、本願発明の結果的特徴のみを取り上げ、方法発明における他の技術的要件との組合せによる効果を看過しているからである。つまり、本願発明は、明細書の特許請求の範囲に記載された各構成要件の組合せに基づいて、第一に燃焼効率が極めて高く単位面積当りの処理量を従来の塵埃焼却炉の数倍とすることができ、第二に焼却に先立つて塵埃中の不燃性固定物を除去又は粉砕処理を行なうことなく、塵埃を直ちに焼却処理することができ、第三に塵埃のみでなく糞尿も同時に処理でき、第四に製出した灰はふるいを必要とせず、第五に廃ガスを無煙・無臭ならしめることができ、第六に炉内に可動部分がないので故障がなく、第七に操業を完全に自動化することができるという効果を奏するものである(本願発明の特許公報第三頁第六欄参照)。
本願発明は、砂を流動媒体として用いると、都市塵埃を処理した場合、砂によつて不可燃物の分離を効率良く行なうことができるという着想に基づくものであり、
粗大な金属、セトモノ、ガラス、石ころなどが大きな割合で混入している都市塵埃を流動化方式によつて効率良く焼却できるようにしたものである。このことは、本願発明の出願当時、画期的なことであり、それ以前には全くその類をみない。
被告の陳述
一 請求の原因一ないし三の事実は、いずれも認める。
二 同四の審決取消事由の主張は争う。審決に原告主張のような誤りはない。
1 引用例のものは廃棄物である食品加工の有機廃棄物を流動層としての熱い砂の中に投入して焼却させたのに対し、本願発明は厨芥、雑芥の可燃物のほかに土砂、
ガラス、金属等の不可燃物を含む塵埃を流動層としての熱い砂の中に投入して焼却処理するものである。すなわち、両者の相違は、流動層としての熱い砂の中に有機廃棄物を投入するか、有機廃棄物等の可燃物及び有機廃棄物以外の不可燃物を含む塵埃を投入するかであり、廃棄物を焼却処理するのに流動層としての熱い砂の中に有機廃棄物を投入して焼却処理することが公知である以上、流動層としての熱い砂の中に前記のような塵埃を投入焼却処理することに格別の発明は認められない。
引用例の廃棄物は食品加工の有機廃棄物であり、これは都市塵埃における家庭の台所から出る厨芥に近いものであるから、引用例の廃棄物処理は本願発明の都市塵埃の処理とその技術の範疇を全く異にするものということはできない。両者はむしろ共通する技術分野に属するものである。
2 熱い砂からなる流動層に食品加工の有機廃棄物を投入して焼却処理することが公知である以上、この流動層に本願発明のような塵埃を投入すると、砂より比重の大きい土砂、ガラス、金属等の不可燃物が下方に沈下することは自明である。
食品加工の有機廃棄物の処理においても、牛、豚等の骨、魚貝類の骨、殻、大根などの野菜についた土砂、瓶などの容器の破片、食品加工処理に用いる刃物その他の器具の破片などが混入することが考えられる。これら砂より比重の大きい不可燃物は、砂の流動層中において必然的に沈下し除去されることになるので、公知の熱い砂の流動層を有する焼却装置に、可燃物及び不可燃物を含む塵埃を投入し処理する点に格別の発明は認められない。
本願発明の明細書には、本願発明は原告が主張する七点の効果を有する旨記載されているが、これら第一ないし第七の諸効果は公知の熱い砂の流動層を有する焼却装置が適宜の廃棄物を焼却処理する際に奏するものであつて、本願発明の方法だけが有する特有のものではない。
原告は、本願発明の効果は極めて顕著であるとして、普通都市塵埃焼却炉による塵埃処理と本願発明による塵埃処理とを比較しているが、このように引用例と無関係の従来法と比較して効果が極めて顕著であるというのは無意味である。
証拠関係(省略)
理 由一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、審決取消事由の存否について判断する。
成立について争いのない甲第六号証によれば、引用例には、審決(成立について争いのない甲第七号証)のいうように、「熱い砂の流動層中に食品加工の有機廃棄物を投入し、砂から熱量を得て有機廃棄物を焼却せしめること」が記載されていると認められる(この点は原告も争つていない。)。
ところで、審決は、本願発明と引用例との相違点@として、「本願発明の塵埃は厨芥雑芥、土砂、ガラス、金属等であるのに対し、引用例の廃棄物は食品加工の有機廃棄物であつて、本願発明の塵埃は土砂、ガラス、金属等の不可燃物を含んでいる」ことを挙げ、ごみ処理において、廃棄物を焼却炉に投入して焼却処理することは周知であるので、廃棄物を焼却処理するのに、流動層としての熱い砂中に有機廃棄物を投入することが公知である以上、流動層としての熱い砂中に本願発明のように厨芥、雑芥の可燃物のほかに土砂、ガラス、金属等の不(可)燃物を含む塵埃を投入焼却処理することに格別の発明は認められないものとした。
しかしながら、成立について争いのない甲第五号証(本件特許公報)、第一〇号証(環境技術会誌第五号)、第一一号証(環境創造一九七七年八月号)及び甲第一三号証の一(京都大学名誉教授工学博士【A】の「昭和三八年(一九六二)迄の状況並びにその後について」と題する報文及び右報文編綴の「化学工学」第四〇巻第一二号)を綜合すると、本願発明はいわゆる都市ごみ(一般廃棄物)の処理方法に関するものであるところ、都市ごみは植物性あるいは動物性の食品の屑などの厨芥と称されるものと、紙、繊維、木竹、プラスチツク、ゴム、皮革、草、落葉などの雑芥と称されるものとの可燃物及び土砂、瀬戸物、ガラス、金属などの不(可)燃物を含み、昭和三八年頃の都市における混合収集による混合塵埃の可燃物と不(可)燃物との比率は大約八〇対二〇であつたこと、都市ごみの焼却は昭和三〇年代の半ば頃までは火格子上にゴミを堆積し、点火後翌朝灰出しを行ない、また新しいごみを挿入して焼却を行なう固定炉床式という方法で行なわれ、その後この方式が逐次ストーカという機械炉による連続燃焼方式に代えられて行つたが、この方式も火格子上にごみを堆積し、燃焼空気を下部から供給しながらごみを燃焼させるという基本的な点では固定炉床式とは何ら変るところがないものであつたこと、ごみを流動層により焼却することは、世界でも初めて、昭和三〇年代の半ば頃、スイスに水処理、し尿処理により発生する汚泥焼却炉が完成したにすぎないこと、流動層により都市ごみを焼却する焼却炉は昭和四五年頃、相生市で世界で初めて完成したこと、外国文献に都市ごみの流動焼却についての報文が現われたのは、昭和四七年(一九七二年)以降であること、引用例の処理対象物は「食品加工の有機廃棄物」すなわち本願発明でいう厨芥に限られるものであり、したがつて引用例には本願発明のごとくごみ処理において廃棄物を焼却炉に投入して、厨芥、雑芥等の可燃物を焼却し、土砂、金属等の不(可)燃物を流動層の底部に沈下せしめて、両者を分別処理するような思想はないものであることが、いずれも認められるところ、右のような事実関係のもとにおいては、審決のいうように、火格子方式による都市「ごみ処理において廃棄物を焼却炉に投入して焼却処理することは周知である」としても、そしてまた、「廃棄物を焼却処理するのに流動層としての熱い砂中に有機廃棄物を投入することが公知である」としても(ただし審決のいう公知とは、特許法第29条第1項第1号にいうところの公知ではなく、同項第三号のいわゆる文献公知を指すものと解される。)、このことから当業者が本願発明に想到することが容易であるとすることはできないものというべきである。けだし、可燃物、不(可)燃物を含んだ都市ごみのような「形状の解らないものが投げ込まれた流動層の研究は、昭和五〇年頃においてもまだ全くなされていない状態にあつた(前掲甲第一三号証の一添付「化学工学」第四〇巻第一二号第六七七頁参照)から、引用例に「熱い砂の流動層中に食品加工の有機廃棄物を投入し」て焼却することが記載されていても、このことから、有機廃棄物のような厨芥のみならず、雑芥及び不(可)燃物を含んだ都市ごみを砂の流動層により焼却分別する方法である本願発明に想到することが容易であるとすることはできないものといえるからである。
審決は、本願発明と引用例との相違点A――本願発明は、砂の比重を利用して厨芥等の可燃物はこれを流動層中に浮動して燃焼させ、土砂、ガラス、金属等の不(可)燃物はこれを流動層の底部に沈下せしめて炉外に排出可能にするものであるのに対し、引用例にはこのような技術は開示されていない点――につき、流動層としての砂の中に塵埃を投入すると、砂より重い土砂、ガラス、金属等の不(可)燃物は下方に沈下することは当然のことであり、炉の底部の焼却物等を炉外に排出することは周知であるから、流動層の底部に沈下した不(可)燃物を炉外に排出することに格別の発明は認められないとし、被告は、食品加工の有機廃棄物の処理においても、牛、豚等の骨、魚貝類の骨、殻、大根などの野菜についた土砂、瓶などの容器の破片、食品加工処理に用いる刃物その他の器具の破片などが混入することが考えられるところ、これら砂より比重の大きい不(可)燃物は砂の流動層中において必然的に沈下し除去されることになるので、公知の熱い砂の流動層を有する焼却装置に、可燃物及び不(可)燃物を含む塵埃を投入し処理する点に格別の発明は認められないと主張する。
しかしながら、「発明」とは、「自然法則を利用した技術的思想創作のうち高度のものをいう」(特許法第2条第1項)のであつて、砂の流動層中に砂より重いものを投入すれば、そのものは下方に沈下することが自然現象であるとしても、これを都市ごみの焼却分別という技術に利用した本願発明に発明性がないものとすることはできない。そして引用例は、「有機廃棄物」すなわち、通常は砂より軽い廃棄物の焼却に関するものであつて、仮に引用例において被告が主張するような砂よりも重いものが流動層中に混入することがあるとしても、それは偶然というべきものであり、しかもその混入の割合は、二〇パーセントにも及ぶ本願発明に係る都市ごみに比すべくもなく、しかも、引用例は都市ごみの焼却を目的としたものではないから、ある物質の流動層中にそれよりも重いものを投入すれば、投入されたものは下方に沈下するということが、原理としては自明のものであつたとしても、引用例にこの自明の原理を結びつけて本願発明に想到することが当業者にとつて容易であるとすることはできないものといわなければならない。
三 右のとおりであつて、本願発明は引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであると認めた審決の判断は、原告主張の他の点についての判断をするまでもなく、違法であると認められるから、原告の審決取消の請求を認容し、訴訟費用は敗訴の当事者である被告の負担とすることとして主文のとおり判決する。
裁判官 高林克巳
裁判官 杉山伸顕
裁判官 八田秀夫