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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成15ネ3034特許権侵害差止請求控訴事件 判例 特許
平成15ネ1112各特許権侵害差止請求控訴事件 判例 特許
平成15ネ2115特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
平成14ネ3263損害賠償等請求控訴,平成15年(ネ)第179号損害賠償等請求附帯控訴事件 判例 特許
平成14ワ3043特許権侵害差止請求事件 判例 特許
関連ワード 薬事法 /  後発医薬品 /  存続期間 /  製造承認 /  特許発明 /  実施 /  侵害 /  販売利益 / 
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事件 平成 11年 (ネ) 3546号 特許権侵害損害賠償請求控訴事件
控訴人 大鵬薬品工業株式会社 右代表者代表取締役 A右訴訟代理人弁護士 松尾翼
同 奥野久
同 内田公志
同 森島庸介
同 西村光治
同 土井悦生右訴訟復代理人弁護士 北之園 雅章
同 飯田藤雄
被控訴人 シオノケミカル株式会社 右代表者代表取締役 B右訴訟代理人弁護士 脇田輝次
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2000/01/18
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 控訴人 1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、金一八三万八三七七円及びこれに対する平成六年一〇月一日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人 主文と同旨
事案の概要
事案の概要は、次のとおり付加するほか、原判決の事実及び理由「第二 事案の概要」のとおりであるから、これを引用する。なお、当裁判所も、「長生堂」、
「小分け」、「本件試験」、「後発医薬品」の用語を、原判決に準じて用いる。
(当審における控訴人の主張) 原判決は最高裁判所第二小法廷平成一一年四月一六日判決(以下「本件最判」という。)を引用して、本件試験を、特許法69条1項に該当するとした。しかし、本件は、以下のとおり本件最判とは本質的に異なり、その埒外に位置するものである。
一 本件試験は、小分け製造承認申請に係るものである。
本件試験は、製造元(長生堂)が確立した「規格及び試験方法」に従って、製造元から譲り受けた製剤が、製造元が開示した規格に合致しているかどうかを確認するだけの試験であって、その具体的内容は、@カプセルの重量を計測する、カプセルの崩壊時間を計測する、B含有成分量を計測する、C目視してカプセルの性状を確認する等である。そして、これらの過程では試験方法を考案する等独自の創意工夫を施すことは許されず、専ら製造元が確立した「規格及び試験方法」に従わなければならない。このように本件試験は、極めて単純かつ形式的な内容であり、それによって新たな知見が得られる可能性は皆無である。特許法69条1項が予定する試験は、それによって新たな知見が得られる可能性のあるものに限られると解すべきであるから、本件試験は、これには含まれないものというべきである。
本件最判は、後発医薬品製造承認申請のための試験の特許法69条1項の該当性を否定すると、特許権の存続期間が終了した後も、なお相当の期間、第三者が当該発明を自由に利用し得ない結果となり、そのことが特許権の存続期間が終了した後は、何人でも自由にその発明を利用することができ、それによって社会一般が広く益されるようにするという特許制度の根幹に反すると判示している。
しかし、小分け製造承認申請のための試験の適法性が否定されても、後発医薬品メーカーが特許権存続期間中に製造承認申請用試験を行うことが認められる限り、
特許権存続期間終了後、後発医薬品が速やかに広く社会一般に普及される可能性は確保されるから、本件最判が懸念するところの当該発明を自由に利用し得ないような弊害は生じ得ない。
二 本件においては、長生堂から被控訴人に、特許権存続期間中にかかわらず、後発医薬品の譲渡が行われている。
小分け製造承認は、後発医薬品メーカーが専ら販売利益を極大化する手段として利用しているのが実体である。小分け製造承認は、後発医薬品メーカーの特許権存続期間終了後の販路拡大の実質を有するから、小分け製造承認申請の目的で、小分け先に譲渡する製剤を製造すること自体が、将来の販売を目的として事前に特許製品を製造・備蓄することに当たる。したがって、後発医薬品メーカーにとっては、小分け先への製剤の譲渡は、特許権存続期間終了後の販売のための準備行為そのものであるから、特許権侵害行為である。
小分け製造承認申請のための試験は、製造元が製造した製剤を対象とするものであるから、これを行うためには、製造元から製剤を譲り受けなければならない。
したがって、製造元からの製剤の譲り受けは、右試験の前提となる。
後発医薬品メーカーが小分け製造承認申請を目的として特許権存続期間中に製剤を譲渡する行為が特許権侵害行為になる以上、それを前提とする小分け製造承認申請のための試験も、特許権侵害行為になり、許されないものというべきである。
三 本件においては、被控訴人が長生堂から譲り受け、小分け製造承認申請に添付した生物学的同等性試験のデータは、虚偽、ねつ造あるいは薬事法違反の疑いすらあり、申請そのものが薬事法に違反している可能性がある。このような生物学的同等性試験のデータを利用する等して実施された本件試験は、特許法69条1項の試験に該当しない。
当裁判所の判断
当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないと判断する。その理由は、次のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは、原判決の事実及び理由「第三 争点に対する判断」と同じであるから、これを引用する。
(当審における控訴人の主張に対する判断)一 控訴人は、本件試験について、それが極めて単純かつ形式的な内容であり、新たな知見が得られる可能性が皆無であるから、特許法69条1項が予定する試験には含まれないと主張する。
1 しかし、本件試験は、後発医薬品の製造につき薬事法14条所定の承認申請をするため、右申請書に添付すべき資料を得るのに必要な試験である。そうである以上、特許法上、本件試験が特許法69条1項にいう「試験」に当たらないとすると、その結果が、特許制度の根幹に反するものとなること、及び特許権存続期間中に本件試験のために特許発明に係る化学物質を使用することを排除し得るものと解すると、それは特許権者に付与すべき利益として特許法が想定するところを超えるものとなることは、原判決の事実及び理由「第三 争点に対する判断」一2、3のとおりである。
2 この点に関して、控訴人は、小分け製造承認申請のための試験の適法性が否定されても、後発医薬品メーカーが特許権存続期間中に製造承認申請用試験を行うことが認められる限り、特許権存続期間終了後、後発医薬品が速やかに広く社会一般に普及される可能性は確保されるから、本件最判が懸念するところの当該発明を自由に利用し得ないような弊害は生じ得ないと主張する。
しかし、特許権の存続期間が終了した後は、何人でも自由にその発明を利用することができることが特許制度の根幹の一つであることは、原判決の事実及び理由「第三 争点に対する判断」一1で述べられているとおりである。ところが、特許権存続期間中は本件試験を行えないものとすると、特許権の存続期間が終了した後も、なお相当の期間、被控訴人は本件発明を小分け製造という方法により利用することができず、その自由な利用を妨げられることになる。これが前示特許制度の根幹に反することは明らかである。
3 以上のとおり、控訴人の主張は、特許法69条1項が予定する試験は、それによって新たな知見が得られる可能性のあるものに限られるとの独自の見解を根拠に、右特許制度の根幹及び特許権者に付与すべき利益として特許法が想定するところを無視しようとするものであって、採用することができない。
二 控訴人は、小分け製造承認申請の目的で小分け先に譲渡する製剤を製造すること自体が、将来の販売を目的として事前に特許製品を製造・備蓄することに当たり、特許権存続期間終了後の販売のための準備行為そのものであることを前提に、
後発医薬品メーカーが小分け製造承認申請を目的として特許権存続期間中に製剤を譲渡する行為は特許権の侵害となるとして、本件試験についても、右製剤を使用したものであるから許されないと主張する。
1 しかし、弁論の全趣旨によれば、長生堂が被控訴人に対して行った後発医薬品の譲渡は、本件試験の実施を唯一の目的とし、同試験に必要な量に限定して行われ、右後発医薬品は、本件試験によって費消されてしまったことが認められるから、右後発医薬品の製造・譲渡をもって、将来の販売を目的として事前に特許製品を製造・備蓄したものということはできない。
2 本件試験は、小分け製造につき薬事法14条所定の承認申請をするため、右申請書に添付すべき資料を得るのに必要な試験であるから、本件試験に使用する後発医薬品は、長生堂が製造して被控訴人に譲渡した製剤を用いなければならないことは明らかである。そうすると、長生堂の右製剤の製造・譲渡は、薬事法に基づく小分け製造承認申請のための試験に必要な範囲のものというべきである。しかも、右譲渡が、本件特許権の特許権存続期間中における控訴人の独占的実施の利益を害するものでもない。したがって、それが本件特許権を侵害したものということはできない。
3 控訴人は、特許権存続期間終了後の販路拡大の実質を有する行為は、すべて特許権侵害行為となるかのような口吻の主張をするが、もしそうだとすれば、独自の見解というべきである。特許権存続期間終了後は、何人でも自由にその発明を利用できることこそが、特許権制度の根幹の一つであることは前述のとおりであるから、期間終了後の販路拡大のための行為は、特許権の効力の及ぶ特許発明に該当しない限り、特許権存続期間中であっても何ら制約を受けるものではなく、これが特許法によって禁止されることはあり得ないからである。
4 以上のとおり、長生堂が被控訴人に対して行った後発医薬品の譲渡は、本件特許権を侵害するものということはできないから、控訴人の主張は、その前提を欠くものである。
三 控訴人は、被控訴人が長生堂から譲り受け、小分け製造承認申請に添付した生物学的同等性試験のデータが、虚偽、ねつ造あるいは薬事法違反の疑いすらあり、
申請そのものが薬事法に違反している可能性があり、本件試験がそのデータを利用する等して実施されたことを前提として、本件試験について、特許法69条1項の試験に該当しないと主張する。
しかし、本件で問題になるのは、本件試験が特許法69条1項の試験に該当するか否かという純粋に特許法の解釈に関するものであって、被控訴人がした小分け製造承認申請に対する薬事法上の評価に関するものではない。後者の問題は、原則として、薬事法の問題として、本件とは別の手続きでその解決が図られるべきであり、被控訴人がした小分け製造承認申請に、仮に薬事法上問題があるとしても、その問題を根拠に本件試験を特許法69条1項の試験に該当しないものと見ることが許されるのは、右申請が、ねつ造の資料をねつ造と知りつつ提出するなど悪質であり、その悪質さのゆえに、そのために行われた本件試験も、もはや小分け製造承認申請のために必要なものと評価し得ない特別の事情のある場合に限られるものというべきである。
ところが、この点について控訴人の主張するところは、結局のところ、被控訴人が小分け製造承認申請に当たって添付した、長生堂から譲り受けた資料に問題があるというにとどまるものであり、これをもって右特別の事情に該当するものとすることはできない。その他、右事情に該当すべき事実は、本件全証拠によっても認めることができない。
控訴人の右主張は、採用することができない。
結論
以上のとおり、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法67条61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 山田知司
裁判官 宍戸充
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