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関連ワード 特許を受ける権利 /  遡及 /  共有 /  善意 /  存続期間 /  特許料(維持年金) /  追納 /  実施 /  設定登録 /  合一確定(合一に確定) /  拒絶査定 /  変更 /  異議申立 / 
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事件 平成 11年 (行ウ) 162号 特許料納付書却下処分取消等請求事件
原告A
同 B右両名訴訟代理人弁護士 木村峻郎
同 大橋英樹
被告 特許庁長官C右指定代理人 D
同 E
同 F
同 G
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2000/01/25
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 一 特許番号第一九七一七六二号の特許権に係る第四年分特許料納付書について被告がした平成一一年一月四日付け却下処分の取消しを求める訴えを却下する。
二 平成一一年三月一二日付け行政不服審査法に基づく異議申立てについて被告がした却下決定の取消請求を棄却する。
三 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
原告らの請求
一 特許番号第一九七一七六二号の特許権に係る第四年分特許料納付書について被告がした平成一一年一月四日付け却下処分を取り消す。(以下、この請求を「本件第一請求」という。)二 平成一一年三月一二日付け行政不服審査法に基づく異議申立てについて被告がした却下決定を取り消す。(以下、この請求を「本件第二請求」という。)
事案の概要
本件は、原告らが被告に対し、原告らの共有に係る特許番号第一九七一七六二号の特許権(以下「本件特許権」という。)につき、被告がした特許料納付書についての却下処分、及び、これに対する異議申立てを却下した決定の各取消しを求めている事案である。
一 争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実1 本件特許権については、平成四年一〇月二七日に特許出願(平成四年特許願第三三〇八六三号)が、同六年一二月七日に特許出願公告(平成六年特許出願公告第九九二八七号)がされ、同七年九月二七日に、原告A(以下「原告A」という。)及び同B(以下「原告B」という。)を特許権者として、設定の登録がされた。
(乙一、四)2 本件特許権については、平成九年一二月七日までに第四年分の特許料が納付されなかったことを理由として、同一〇年八月一二日、その登録を抹消する登録がされた。(乙四)3 原告Aは、本件特許権に係る第四年分の特許料につき平成一〇年九月五日付け特許料納付書(以下「本件納付書」という。)を、同日ころ、被告に提出した。これに対し、被告は、同年一〇月二〇日、「権利消滅後の年分に係わる特許料の納付である」ことを理由に、本件納付書に係る手続を却下すべきものと認める旨の、同年一〇月八日付け却下理由通知を原告Aあてに送付した。原告Aは弁明書を二通被告に提出したが、同一一年一月四日、被告は、右却下理由通知書に記載した理由が解消されていないとして、本件納付書について手続却下の処分(以下「本件処分」という。)をした。(甲一、乙二、三、五、六)4 平成一一年三月一二日、原告Aは、本件処分につき、行政不服審査法による異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)をした。これに対し、被告は、同年六月一七日、特許権が共有に係る場合には共有者全員が共同して異議申立てをしなければならないところ、本件異議申立ては原告A単独でされたものであるから不適法であることを理由に、本件異議申立てを却下する旨の決定(以下「本件決定」という。)をした。(甲二)二 争点及びこれに関する当事者の主張1 本件第一請求に係る訴えが適法なものかどうか。
(一) 被告の本案前の主張 被告が行った特許法上の手続却下の処分の取消しの訴えについては、当該処分についての異議申立て又は審査請求に対する決定又は裁決を経た後でなければ提起できないという、いわゆる審査請求前置主義が採られている(特許法184条の2)。そして、この要件を満たすためには、異議申立て又は審査請求が適法でなければならない。
ところが、原告Aによる本件異議申立ては不適法であるとして却下されているから(なお、原告Bは、本件処分に対する異議申立てもしていない。)、本件第一請求に係る訴えについては、審査請求前置の要件が満たされていない。また、本件異議申立てを不適法と判断した本件決定が正当であることは、後述2(二)のとおりである。
したがって、本件第一請求に係る訴えは、訴訟要件を欠く不適法な訴えとして、
却下されるべきである。
(二) 原告らの反論 本件訴訟における主たる争点の一つは、特許料納付書に対して被告が行った手続却下の処分についての異議申立てが適法か否かという点にある。そうすると、このような場合に異議申立てが不適法であることを前提にして審査請求前置の要件が欠けているとみることは、いわば問いをもって答えとするようなものであり、異議申立てに対する却下処分を争う途を著しく狭めることになり、被告の処分に対する取消訴訟を認めた法の制度を形骸化する危険がある。
また、実質的に考えても、仮に審査請求前置の要件を欠くとして本件第一請求を却下すれば、本件第二請求が認容された場合、原告らは被告に対し再度本件処分の取消しを求めなければならなくなり、手続的に迂遠なばかりか、原告らに必要以上の手続的負担を負わせることになり妥当でない。
したがって、被告の本案前の主張は失当である。
2 本件第二請求に理由があるか。
(一) 原告らの主張(1) 特許権が共有に係る場合でも、特許料の納付は、特許権の存続ないしはいったん消滅した権利の回復を図るためのものであって、他の共有者に影響のないものであるから、各共有者が単独で行い得る保存行為である。また、納付行為が却下された場合に、これに対して異議申立てを行うことも、従前の権利の内容を変更することなく、将来にわたってこれを保有し続けるための手続であるから、各共有者が単独で行い得る保存行為に当たる。
したがって、原告Aによる本件異議申立ては適法なものである。
(2) 本件特許権につき第四年分の特許料の納付期限を徒過したことは確かである。
しかし、本件特許権の特許証や第三年分までの特許料の領収証には、第四年分の特許料納付の期限日を特定できるような表示ないし教示はなく、特許権者にとって、
出願公告日が納付期限の基準とすべき日であることは分かりようもない。このような状況の下で、原告Aは、設定登録日を基準として、平成一〇年九月二七日までに第四年分の特許料を納付すべきであると考え、同月五日にその納付をしたのである。原告Aは、代理人を介さずに特許出願を行ったものであり、特許料を納付する意思及び法律を遵守する意思を有することは明らかであって、被告は、このような善意の権利者に混乱を生じさせないよう、納付期限を教示する義務を負っている。
被告が右義務を怠ったことによって長年の研究努力の成果としての重要な特許権を失わせることは、酷でありかつ著しく妥当性に欠けるものといわざるを得ない。
また、特許料追納による特許権の回復を認めても、その間の善意実施者には特許権が及ばないことになっているし、行政上の手続の煩雑さについても割増料金を支払うことによって補償されるはずである。
したがって、本件異議申立てには理由があるから、これを却下した本件決定は取り消されるべきである。
(二) 被告の主張 本件納付書による特許料の納付は、その納付期限である平成九年一二月七日を経過した後、割増納付料を併せ納付することにより追納が認められる六か月の期間の期限である同一〇年六月七日の後にされたものであるから、本件特許権は、同九年一二月七日にさかのぼって消滅したとみなされている。したがって、本件納付書による特許料の納付の法的性質は、特許法112条の2に規定する特許料追納であり、いったん消滅した本件特許権につき、その遡及的な回復を求めるものであるから、これをもって共有について民法の規定する保存行為ということはできない。
また、特許法は、特許を受ける権利又は特許権が共有に係る場合には、特許の出願や審判請求について、共有者全体が一体としてこれに当たらなければならないと規定しており、これは、このような場合には共有者間において当該権利を合一に確定させるという要請を手続的に反映させる趣旨に出たものと考えられる。そして、
本件異議申立ては、本件納付書を却下した本件処分の取消しを求めるものであり、
失効した本件特許権の遡及的な回復を求めるものであるから、本件処分を取り消すか否かについては、共有者全員につき合一に確定する必要性があることは明らかである。
右によれば、共有者の一人である原告Aが単独で申し立てた本件異議申立ては不適法なものであり、これを不適法として却下した本件決定は正当であるから、本件第二請求は理由がなく、棄却されるべきである。
争点に対する判断
一 争点1(本件第一請求に係る訴えが不適法なものであるか)について1 本件第一請求は、原告Aが提出した本件納付書につき、被告が特許法18条の2に基づいて行った不適法な手続を却下する処分(本件処分)の取消しを求めるものであるところ、被告は、本件第一請求に係る訴えは、本件処分につき適法な異議申立て手続を経ていないから、不適法な訴えであり却下されるべきであると主張するので、この点につき検討する。
2 被告が特許法の規定により行った処分の取消しの訴えについては、当該処分についての異議申立て又は審査請求に対する決定又は裁決を経た後でなければ提起できないという、いわゆる審査請求前置主義が採られている(特許法184条の2)。そして、特許法が審査請求前置主義を採用した趣旨が、処分の当否につき被告に再考の機会を与えるとともに裁判所の負担を軽減するにとどまらず、技術的、
専門的な判断を要する特許法上の処分については、技術的、専門的な知識経験を有する特許庁による原処分の是正の機会を設ける必要性が大きいという点にあると解されることに照らすと、審査請求前置主義の要請が満たされているというためには、訴え提起前に行った異議申立て等が適法なものであることを要すると解するのが相当である。そうすると、異議申立て等が不適法として却下された場合には、その却下決定が正当である限り、異議申立て等の手続を経たということはできないから、処分の取消しを求める訴えは不適法になるというべきである。
3 これを本件についてみるに、原告Aが本件処分についてした本件異議申立ては、前記第二、一4のとおり、本件決定により不適法として却下されている。また、本件決定が正当であることは、争点2に対する判断として後述するとおりである。さらに、原告Bは、本件処分に対する異議申立てをしていない。
したがって、本件第一請求に係る訴えは、適法な異議申立てを経由しない不適法なものであるから、これを却下する。
二 争点2(本件第二請求に理由があるか)について1 本件第二請求は、本件処分についての異議申立てを不適法として却下した決定(本件決定)の取消しを求めるものであるところ、被告は、本件異議申立ては共有者の一人にすぎない原告Aが単独でした不適法なものであるから、これを却下した本件決定は正当であると主張するので、この点につき検討する。
2 特許を受ける権利又は特許権が共有に係る場合には、特許権の発生及び消滅に関する判断は、共有者全員の有する一個の権利の成否を決めるものであって、共有者全員につきこれを合一に確定する必要があるから、共有に係る特許権の発生及び消滅に関する手続は、共有者全員によって行われる必要があると解するのが相当である(最高裁平成六年行ツ第八三号同七年三月七日第三小法廷判決・民集四九巻三号九四四頁参照)。特許法が、特許を受ける権利共有に係る場合につき、共有者全員が共同しなければ特許出願をすることができず、これに違反した場合には、審査官により拒絶査定を受け、また、特許された場合でも無効になる旨を(38条
49条2号123条1項2号)、特許権が共有に係る場合につき、共有者が審判請求を行い又は共有者に対して審判請求をするには、共有者全員がその当事者にならなければならない旨を(132条2項、三項)、それぞれ規定しているのは、右と同様の趣旨に出たものということができる。
3 本件特許権は、第四年分の特許料の納付期限(本件特許権の存続期間の始期である出願公告の日(平成六年一二月七日)から三年を経過する以前(同九年一二月七日まで)。平成六年法律第一一六号による改正前の特許法67条1項107条1項108条2項本文)が経過し、さらに、割増特許料とともに特許料追納することができるとされた期間の終期(右納付期限の経過後六か月以内(同一〇年六月七日まで)。同法112条1項)も経過したために、右の納付期限の経過時にさかのぼって消滅したとみなされたものである(特許法112条4項)。したがって、原告Aによる本件納付書の提出は、存在しない特許権について特許料を納付しようという行為であり、法律的に何ら意味のないものであるが、あえてこれを善解するならば、特許法112条の2が規定するところの、特許料の不納付により消滅したとみなされた特許権の回復を求めるための特許料追納に当たると解することができる。
そうすると、本件異議申立ての実質は、消滅した本件特許権の回復を求めるものであって、共有者全員の有していた一個の権利の成否を決めるものであるから、共有者全員につきこれを合一に確定する必要があると解するのが相当である。
4 以上によれば、本件異議申立ては、共有者全員(原告A及び原告Bの両名)によって行われるべきものであったところ、前記第二、一4のとおり、共有者の一人である原告Aのみが行ったというのであるから、これを不適法として却下した本件決定は正当なものというべきである。
三 よって、主文のとおり判決する。
(口頭弁論の終結の日 平成一一年一一月三〇日)
裁判長裁判官 三村量一
裁判官 長谷川浩二
裁判官 大西勝滋
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