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事件 平成 5年 (ワ) 21669号 特許権侵害差止等請求事件
原告 大日本インキ化学工業株式会社右代表者代表取締役 【A】 右訴訟代理人弁護士 副島文雄右補佐人弁理士 【B】
被告 ボブストジャパン株式会社右代表者代表取締役 【C】 右訴訟代理人弁護士 中村稔
同 辻居幸一右訴訟復代理人弁護士 折田忠仁右補佐人弁理士 【D】
同 【E】
同 【F】
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2000/03/23
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
請求
被告は、原告に対し、金二億四〇〇〇万円及びこれに対する平成五年一二月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は、原告が、被告に対し、後記一1記載の特許権に基づき、被告による別紙物件目録一、二記載の各製函機(以下、それぞれを「被告製品一」、「被告製品二」といい、併せて「被告各製品」という。)の製造、販売が原告の右特許権を侵害するものであるとして、損害賠償金二億四〇〇〇万円及びこれに対する侵害行為の後である平成五年一二月一四日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
一 争いのない事実1 原告の特許権 原告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、特許請求の範囲第1項記載の発明を「本件発明」という。)を有していた。
(一) 特許番号 第一一八八九九四号(二) 発明の名称 カートンブランクの折装置(三) 登録年月日 昭和五九年二月一三日(四) 出願年月日 昭和五三年六月七日(五) 出願番号 特願昭五三ー六七六二五号(六) 出願公告年月日 昭和五七年八月一〇日(七) 出願公告番号 特公昭五七ー三七四六〇号(八) 特許請求の範囲 本判決添付の特許公報(以下「本件公報」という。)の該当欄第1項記載のとおり2 構成要件の分説 本件発明の構成要件は、次のとおりに分説される。
A フィーダーユニット、各種折ユニット、ノリ付ユニット、スタッカーユニット等からなり、カートンブランクを前記ユニットに連続的に移送する手段としてベルトを用いた多様の型及びサイズのカートンブランクの折を行う新装置であることB(1) カートンブランクの型信号及びカートンブランクの特定の少数の寸法を示す信号が入力されたとき、
(2) 入力された型信号にもとづき各ユニットにおけるアタッチメントの要不要を判断する選択手段と(3) 入力された寸法信号にもとづきカートンブランクの全ての寸法信号を演算するための演算式を内蔵した演算手段を(4) 具えた制御手段を設けたことC 制御手段からの制御信号にもとづき各ユニットにおける折に不要なアタッチメントを折に邪魔とならない位置まで移動させる駆動手段及び位置検出手段からなるアタッチメント逃し装置を設けたことD 同じく制御手段からの制御信号にもとづき折に必要なアタッチメントを所定の位置まで移動させる駆動手段と位置検出手段からなる位置決め装置を設けたことを特徴とするカートンブランクの折装置3 被告の行為(一) 被告は、被告各製品を販売した。
(二) 被告各製品は、サイド貼り、ダブルサイド貼り、底貼り(ロックボトム)、四隅貼り、六隅貼り等の折りを行う装置であり、多種の型及びサイズのカートンブランクの折りを行うことができる。被告各製品の各部は、別紙対比表記載のとおり、構成要件Aの各ユニットに該当する。また、被告各製品は、カートンブランクを右各ユニットに連続的に移送する手段として、ベルトを備えている。
したがって、被告各製品は、いずれも本件発明の構成要件Aを充足するカートンブランクの折装置である。
二 争点及び当事者の主張1 被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか(構成要件B、C、Dの充足性)。
(一) 原告の主張 被告各製品のコンピュータ制御装置8は、操作部80から入力された型信号に基づいて各部のアタッチメントが折りに必要か不要かを判断する選択手段を有し、また、入力されたカートンブランクの特定箇所の寸法信号に基づいてカートンブランクのすべての寸法を演算するための演算式を内蔵した演算手段を有しているから、
構成要件Bの「制御手段」に該当する。また、被告各製品は、コンピュータ制御装置8からの制御信号に基づき、各部における折りに不要なアタッチメントを折りに邪魔とならない位置まで移動させる駆動手段とその位置を検出する手段を有するとともに、右制御信号に基づき、各部における折りに必要なアタッチメントを所定の位置まで移動させる駆動手段とその位置を検出する手段を有しているから、構成要件Cの「アタッチメント逃し装置」及び構成要件Dの「位置決め装置」をいずれも備えている。
被告製品一の各部ごとに、備えられた各アタッチメントについて、右のような選択、演算、駆動、位置検出が行われる状況を具体的に説明すると、次のとおりである(被告製品二については、フィーダー部1に関する部分を除き、被告製品一と同様である。)。
(1) フィーダー部1について@ フィーダー部1におけるアタッチメントは、下部1Bに取り付けられた七本の無端ベルト11と上部1Aに取り付けられた一対のガイド13及びゲート14である。
A 七本の無端ベルト11は、それぞれ移動フレーム16に巻回されて支持されているところ、コンピュータ制御装置8において、入力された型信号に基づいて移動させるべき特定の移動フレーム16が選択されるとともに、入力された特定の寸法信号に基づいてカートンブランクのすべての寸法が演算される。コンピュータ制御装置8からの右選択及び演算による制御信号に基づき、移動装置18が選択された移動フレーム16を幅方向に所定の位置まで移動させる。右移動の量は、スクリュー軸18bの回転量として与えられるところ、スクリュー軸18bの先端に取り付けられたエンコーダ18pにより右移動量が検出されてコンピュータ制御装置8に入力され、コンピュータ制御装置8において、無端ベルト11の位置が確認される。
B 一対のガイド13及びゲート14については、コンピュータ制御装置8において、いずれの型信号が入力されても常に必要であると判断されるとともに、入力された特定の寸法信号に基づいてカートンブランクのすべての寸法が演算される。コンピュータ制御装置8からの右選択及び演算による制御信号に基づき、位置決めブロック19fが、一対のガイド13及びゲート14が設けらている昇降枠19を幅方向に所定の位置まで移動させる。右移動の量は、スクリュー軸19gの回転量として与えられるところ、スクリュー軸19gの先端に取り付けられたエンコーダ19iにより右移動量が検出されてコンピュータ制御装置8に入力され、コンピュータ制御装置8において、一対のガイド13及びゲート14の位置が確認される。
(2) 予備折り部2について@ 予備折り部2は、左手ビーム201、中央ビーム202、右手ビーム203から成るところ、そのアタッチメントは、左手ビームに取り付けられた上部無端ベルト22、下部無端ベルト21、折り曲げガイド206、折り曲げ押さえ207及び押さえローラ208、中央ビーム202に取り付けられた下部無端ベルト21、右手ビーム203に取り付けられた下部無端ベルト21、折り曲げベルト209、ベルト案内210及び折り戻しガイド211である。
A 右各アタッチメントについては、コンピュータ制御装置8において、いずれの型信号が入力されても常に必要であると判断されるとともに、入力された特定の寸法信号に基づいてカートンブランクのすべての寸法が演算される。コンピュータ制御装置8からの右選択及び演算による制御信号に基づき、回転軸204が、右各アタッチメントが設けられている左手ビーム201、中央ビーム202及び右手ビーム203を幅方向に所定の位置まで移動させる。右移動の量は、回転軸204の回転量として与えられるところ、回転軸204の先端に取り付けられたエンコーダ205により右移動量が検出されてコンピュータ制御装置8に入力され、コンピュータ制御装置8において、右各アタッチメントの位置が確認される。
(3) コンビ折り部10について@ コンビ折り部10におけるアタッチメントは、底折りフック113、ロータリーフック115、上部無端ベルト112及び下部無端ベルト111である。
A 底折りフック113は、型信号を入力すると、空気圧シリンダ99によって上昇させられる。この上昇の間、最下定位置を離れたときに下限リミットスイッチからオフ信号が、最上定位置に達したときに上限リミットスイッチから到達信号が、
それぞれコンピュータ制御装置8に送られる。コンピュータ制御装置8にオフ信号と到達信号が入力されると、コンピュータ制御装置8は、底折りフック113が折りに邪魔にならない最上定位置に達したことを確認検出し、底折りフック113を不要と判断して指令を送ることはなく、底折りフックは最上定位置に保持される。
B ロータリーフック115については、後端フラップの折りを必要とする型の信号が入力されると、コンピュータ制御装置8において必要であると判断され、コンピュータ制御装置8からの制御信号に基づき、ロータリーフック115には後端フラップを折るための回転軌道が設定される。他方、後端フラップの折りを必要としない型の信号が入力されると、ロータリーフック115は、コンピュータ制御装置8において、不要であると判断され、コンピュータ制御装置8からの制御信号に基づき、その爪がカートンブランク12に接触しない位置で停止させられる。
C 上部無端ベルト112及び下部無端ベルト111は、左手ビーム121、中央ビーム122、右手ビーム123の各上部ビーム片及び下部ビーム片にそれぞれ巻き付けられている。上部無端ベルト112及び下部無端ベルト111については、
先端又は後端のフラップの折りを必要とする型の信号が入力されると、コンピュータ制御装置8において必要であると判断されるとともに、入力された特定の寸法信号に基づいてカートンブランクのすべての寸法が演算される。コンピュータ制御装置8からの右選択及び演算による制御信号に基づき、上部無端ベルト112及び下部無端ベルト111が巻き付けられている左手ビーム121、中央ビーム122及び右手ビーム123が、幅方向に所定の位置まで移動させられる。右移動の量は、
駆動する回転軸の回転量として与えられるところ、エンコーダにより右移動量が検出されてコンピュータ制御装置8に入力され、コンピュータ制御装置8において、
上部無端ベルト112及び下部無端ベルト111の位置が確認される。
(4) 糊付部3について@ 糊付部3は、上部糊付装置3A、下部糊付装置3Bから成るところ、そのアタッチメントは、上部糊付装置3Aにおける糊付ガン31、下部糊付装置3Bにおける糊付ローラ32、糊ポット33及び上位遊動ローラ39である。
A 糊付ガン31は、ホールディング部4の左手ビーム401及び右手ビーム403の各上部ビーム片の上に取り付けられている。糊付ガン31については、ダブルサイド貼り、四隅貼り、六隅貼りの型信号が入力されると、コンピュータ制御装置8において、必要であると判断されるとともに、入力された特定の寸法信号に基づいてカートンブランクのすべての寸法が演算される。コンピュータ制御装置8からの右選択及び演算による制御信号に基づき、糊付ガン31が取り付けられている左手ビーム401及び右手ビーム403の各上部ビーム片が幅方向に所定の位置まで移動させられ、さらに、糊付ガン31が各上部ビーム片上を幅方向に所定の位置まで移動させられる。他方、サイド貼り、底貼りの型信号が入力されると、糊付ガン31は、コンピュータ制御装置8において、不要であると判断され、コンピュータ制御装置8からの制御信号に基づき、折りに邪魔にならない位置まで、左手ビーム401及び右手ビーム403の各上部ビーム片とともに、又は右各上部ビーム片上を、幅方向に移動させられる。右各移動の量は、駆動する回転軸の回転量として与えられるところ、エンコーダにより右回転量が検出されてコンピュータ制御装置8に入力され、コンピュータ制御装置8において、糊付ガン31の位置が確認される。
B 糊付ローラ32、糊ポット33及び上位遊動ローラ39は、機枠A、Bの間に差し渡された支持棒に取り付けられている。糊付ローラ32、糊ポット33及び上位遊動ローラ39については、サイド貼り、底貼りの型信号が入力されると、コンピュータ制御装置8において、必要であると判断されるとともに、入力された特定の寸法信号に基づいてカートンブランクのすべての寸法が演算される。コンピュータ制御装置8からの右選択及び演算による制御信号に基づき、糊付ローラ32、糊ポット33及び上位遊動ローラ39が機枠A、B間の支持棒上を幅方向に所定の位置まで移動させられる。他方、ダブルサイド貼り、四隅貼り、六隅貼りの型信号が入力されると、糊付ローラ32、糊ポット33及び上位遊動ローラ39は、コンピュータ制御装置8において、不要であると判断され、コンピュータ制御装置8からの制御信号に基づき、折りに邪魔にならない位置まで、機枠A、B間の支持棒上を、幅方向に移動させられる。右移動は、駆動モータによって行われるところ、右駆動モータに対する制御はコンピュータ制御装置8によって行われ、また、コンピュータ制御装置8においては、右駆動モータによる移動量の検出も行われ、糊付ローラ32、糊ポット33及び上位遊動ローラ39の位置が確認される。
(5) ホールディング部4について@ ホールディング部4のアタッチメントは、下部無端ベルト41、上部無端ベルト42、折り曲げベルト、折り曲げローラ、折り曲げガイド、折り曲げベルト案内である。
A 右各アタッチメントは、左手ビーム401及び右手ビーム403に取り付けられている。右各アタッチメントについては、コンピュータ制御装置8において、いずれの型信号が入力されても常に必要であると判断されるとともに、入力された特定の寸法信号に基づいてカートンブランクのすべての寸法が演算される。コンピュータ制御装置8からの右選択及び演算による制御信号に基づき、右各アタッチメントが取り付けられている左手ビーム401及び右手ビーム403が幅方向に所定の位置まで移動させられる。右移動は、駆動モータによって行われるところ、右駆動モータに対する制御はコンピュータ制御装置8によって行われ、また、コンピュータ制御装置8においては、右駆動モータによる移動量の検出も行われ、右各アタッチメントの位置が確認される。
(6) プレッシング部5について@ プレッシング部5のアタッチメントは、ユニット51及び52、各ユニットに設けられた上プレスローラ53及び下プレスローラ54である。
A 右各アタッチメントについては、コンピュータ制御装置8において、いずれの型信号が入力されても常に必要であると判断されるとともに、入力された特定の寸法信号に基づいてカートンブランクのすべての寸法が演算される。コンピュータ制御装置8からの右選択及び演算による制御信号に基づき、ユニット51及び52が幅方向に所定の位置まで移動させられる。右移動は、駆動手段によって行われるところ、右駆動手段に対する制御はコンピュータ制御装置8によって行われ、また、
コンピュータ制御装置8においては、右駆動手段による移動量の検出も行われ、右各アタッチメントの位置が確認される。
(7) トランスファー部6について@ トランスファー部6のアタッチメントは、左手ビーム601に設けられた上部アーム604及び下部アーム603、右手ビーム602に設けられた上部アーム606及び下部アーム605、上部アーム604及び606にそれぞれ巻き付けられた上部無端ベルト61、下部アーム603及び605にそれぞれ巻き付けられた下部無端ベルト62である。
A 右各アタッチメントについては、コンピュータ制御装置8において、いずれの型信号が入力されても常に必要であると判断されるとともに、入力された特定の寸法信号に基づいてカートンブランクのすべての寸法が演算される。コンピュータ制御装置8からの右選択及び演算による制御信号に基づき、左手ビーム601及び右手ビーム602が幅方向に所定の位置まで移動させられ、さらに、上部アーム604及び下部アーム605の長さが伸縮させられる。左手ビーム601及び右手ビーム602の移動並びに上部アーム604及び下部アーム605の長さの伸縮は、駆動手段によって行われるところ、右駆動手段に対する制御はコンピュータ制御装置8によって行われ、また、コンピュータ制御装置8においては、右駆動手段による移動ないし伸縮の量の検出も行われ、右各アタッチメントの位置が確認される。
(8) デリバリー部7について@ デリバリー部7のアタッチメントは、三つの導入ユニット63である。
A 三つの導入ユニット63については、コンピュータ制御装置8において、いずれの型信号が入力されても常に必要であると判断されるとともに、入力された特定の寸法信号に基づいてカートンブランクのすべての寸法が演算される。コンピュータ制御装置8からの右選択及び演算による制御信号に基づき、三つの導入ユニット63がそれぞれ幅方向に所定の位置まで移動させられる。右移動は、駆動モータによって行われるところ、右駆動モータに対する制御はコンピュータ制御装置8によって行われ、また、コンピュータ制御装置8においては、右駆動手段による移動量の検出も行われ、三つの導入ユニット63の位置が確認される。
(二) 被告の主張(1) 本件発明における「アタッチメント」の範囲 本件発明に係る明細書(補正後のもの。以下「本件明細書」という。)の記載、
本件特許出願の際の当初の明細書の記載及び本件発明に最も近いと思われる公知技術(米国特許第四〇七一八九三号)の内容を参酌すれば、本件発明は、カートンブランクの折装置において、数十点にも及ぶ各種アタッチメントのセッティングを手作業で行っていた従来技術に対し、そのすべてを自動的に選択し、かつ、型及びサイズに応じて自動的にセッティングをすることにより、完全に自動化された装置を提供するという点に特徴を有する発明というべきであるから、本件発明における「アタッチメント」とは、あらゆる型のカートンブランクに使用される部品及び型によって必要となったり不要になったりする部品のすべてを指すものと解すべきである。したがって、これらの部品のすべてについて、自動的に要不要の選択をし、
かつ、自動的にセッティングをするものでなければ、本件発明の構成要件B、C及びDを充足するカートンブランクの折装置とはいえない。
(2) 以下のとおり、被告各製品には、自動的に要不要の選択が行われなかったり、自動的にセッティングが行われなかったりするアタッチメントが存在するから、被告各製品は、本件発明の構成要件B、C、Dを充足しない。
@ 被告各製品には、カートンブランクの型にかかわらず常に必要とされるアタッチメントがあるところ、これらのアタッチメントについて、被告各製品のコンピュータ制御装置8は、その要不要を判断し、選択するということをしない。
A 被告各製品には、付属品として、ダブルサイド貼りのカートンブランクを折るときに予備折り部2に設置することが必要なダブルウォール装置、ヴァンビューレン式の箱を折るときにトランスファー部6に設置することが必要なヴァンビューレン装置、サイズの小さな箱を折るときにホールディング部4に設置することが必要なミニマムフォルダー等があるところ(別紙物件目録一及び二の各13「その他の付属品」)、これらの付属品はすべて、これら独特の折りの際に手作業で、取り付け及び位置決めがされ、他の折りを行う際には手作業で取り外されるものである。
したがって、これらのアタッチメントについては、コンピュータ制御装置8により自動的に要不要の選択が行われることも、また、自動的にセッティングが行われることもない。
B 乙第一号証の八頁には、「サイド貼箱用の部品」と「四隅貼箱用の部品」が示されているところ、右「サイド貼箱用の部品」は、被告各製品において、サイド貼りに必要であって、他の型の折りには不要な部品であり、また、右「四隅貼箱用の部品」は、被告各製品において、四隅貼り及び六隅貼りに必要であって、他の型の折りには不要な部品である。そして、右「サイド貼箱用の部品」及び「四隅貼箱用の部品」はいずれも、それが必要とされる型の折りを行う際に、手作業で取り付け及び位置決めがされ、他の折りを行う際には手作業で取り外されるものである。したがって、これらのアタッチメントについては、コンピュータ制御装置8により自動的に要不要の選択が行われることも、また、自動的にセッティングが行われることもない。
C さらに、被告各製品において、取り外されることのない部品の中にも、手動により位置決めされるものがある。例えば、被告各製品のコンビ折り部10における、底折りフック113及び折りガイド120の幅方向及び高さ方向の位置決め、
ロータリーフック115の幅方向の位置決めは、いずれも手動により行われる。したがって、これらのアタッチメントについては、コンピュータ制御装置8により自動的に要不要の選択が行われることも、また、自動的にセッティングが行われることもない。
なお、別紙表一は、被告各製品における種々のアタッチメントが折られる型の種類によって必要となったり、不要となったりすることを具体的に示したものであり、また、別紙表二は、被告各装置において、サイド貼り、底貼り、ダブルサイド貼り、四隅貼り、六隅貼り、サイド貼りの順に折りの型を移行した場合に、どのような手作業の操作を必要とするかを示したものである。
(三) 被告の主張に対する原告の反論(1) 本件発明における「アタッチメント」の範囲について 本件発明における「アタッチメント」は、制御手段により要不要が判断され、不要と判断された場合には折りに邪魔とならない位置まで移動させられ、他方、必要と判断された場合には所定位置まで移動させられて位置決めされるというものであるから、「折装置に取り付けられているものであって、型替えや寸法替えのときに、取り外すことなく取り付けられているままで駆動手段によりセッティングされて位置決めされるもの」を指すと解すべきであり、特定の折りのため、その都度手作業で取り付けられたり、取り外されたりするものは含まれないというべきである。
(2) 被告が主張する前記(二)(2)A及びBの部品は、いずれも、特定の折りのため、その都度手作業で取り付けられたり、取り外されたりするものであり、
本件発明における「アタッチメント」には含まれないから、これらの部品について、自動的に要不要の選択がされたり、自動的にセッティングがされたりすることがないとしても、それによって、被告各製品が本件発明の構成要件B、C、Dを充足しないことにはならない。
(3) 被告が主張する「カートンブランクの型にかかわらず常に必要とされるアタッチメント」(前記(二)(2)@)については、被告各製品のコンピュータ制御装置8において、いずれの型信号が入力されたときも必要であると判断されているものであり、選択手段の対象となっているというべきである。
(4) 被告が主張する被告各製品のコンビ折り部10における、底折りフック113、ロータリーフック115及び折りガイド120については、以下に述べるとおり、コンピュータ制御装置8により、要不要が判断され、かつ、セッティングが制御されているといえる。
@ 底折りフック113について 底折りフック113によるカートンブランクの先端フラップの底折りは、上部無端ベルト112及び下部無端ベルト111が、先端フラップを挾む二つの縦罫線に沿ってカートンブランクを挾んで保持している状態で行われるところ、右上部無端ベルト112及び下部無端ベルト111については、前記(一)(3)C記載のとおり、コンピュータ制御装置8により、要不要の判断がなされるとともに、必要と判断された場合には、入力された特定の寸法信号に基づいてカートンブランクのすべての寸法信号が演算され、右選択及び演算による制御信号に基づいて、駆動手段により幅方向に移動させられて、前記二つの縦罫線に沿って位置決めがされることになる。
他方、底折りフック113は、セッティングに当たっての昇降及び幅移動に手動操作が介在することになる。しかしながら、昇降については、昇降により到達する底折りフック113の上下限位置は、リミットスイッチにより検出され、下限リミットスイッチからのオフ信号及び上限リミットスイッチからの到達信号がコンピュータ制御装置8に送られ、コンピュータ制御装置8によって自動的に上下限位置がセッティングされる。また、幅移動により到達する底折りフック113の位置は、
前記二組のベルト群によって挾まれる区域であり、各ベルト群の位置は、前記のとおりコンピュータ制御装置8によって自動的に決められる。したがって、底折りフック113の昇降や幅移動が手動操作によって行われるといっても、昇降及び幅移動により達する位置はコンピュータ制御装置8によって制御されているから、結局のところ、底折りフック113は、コンピュータ制御装置8により、セッティングが制御されているものといえる。
A ロータリーフック115について ロータリーフック115の幅方向の移動は、手動によって行われるが、ロータリーフック115による後端フラップの折りは回転によって行われ、しかも回転による折りは幅方向に長い後端フラップの一部に接触すれば達成できるのであるから、
回転についての制御ができていれば、自動化の目的が達成できることは当業者の常識である。そして、ロータリーフック115については、前記(一)(3)B記載のとおり、その回転がコンピュータ制御装置8により自動的に制御されているのであるから、コンピュータ制御装置8により、セッティングが制御されているといえる。
B 折りガイド120について 折りガイド120は、底折りフック113やロータリーフック115によるフラップの折りの際に、ダイヤゴナルフラップを形成するために使用されるものであるから、折りガイド120の幅方向及び高さ方向の移動が手動により行われるとしても、その移動は底折りフック113やロータリーフック115の位置を基準として行われるのであり、他方、底折りフック113及びロータリーフック115のセッティング位置決めは前記のとおりコンピュータ制御装置8によって制御されているのであるから、結局のところ、折りガイド120のセッティングも、コンピュータ制御装置8により制御されているものといえる。
2 原告の損害の額(一) 原告の主張 被告は、本件特許権の登録日(昭和五九年二月一三日)以降、少なくとも合計一〇台の被告各製品を製造販売し、八億円を売り上げ、二億四〇〇〇万円の利益を得た。
被告が得た右利益の額は、原告が受けた損害の額と推定される(特許法102条2項)。
(二) 被告の主張 原告の主張は争う。
争点に対する判断
一 争点1(被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について1 本件発明における「アタッチメント」の範囲(一) 本件明細書の「発明の詳細な説明」の記載によれば、従来のカートンブランクの折装置においては、カートンブランクの型又はサイズの異なる作業をする場合、その都度、折りに必要な各アタッチメントをそのカートンブランクに合った所定の位置へ手動によりセットすることを要し、右アタッチメントの調整作業は、作業者にとって長い時間を要する困難な作業であったところ(本件公報第二欄三〇行目ないし第三欄一三行目)、本件発明は、右のような従来装置における作業能率上の問題点を解決することを目的とし、「折りの本作業に先だって行う各種アタッチメントのセッティングが完全に自動化されること」、「カートンブランクの型に従って、必要なアタッチメントと不必要なアタッチメントを区別することが出来、又カートンブランクのサイズに従って、アタッチメントのセッティングに必要な数値を電気的な信号として記憶させておき、必要なとき随時出力させてアタッチメントを所望する位置にセッティング出来ること」及び「各アタッチメントのセッティングに必要な数値を記憶させるに際し、全てのアタッチメントについて必要な数値を夫々個々に測定し記憶させるのではなく、多くの必要な数値の中から特定の数個の数値のみを制御手段に入力させることにより他の必要な全ての数値を自動的に電気的信号として演算させ記憶させ、かつ出力させることが出来ること」に特徴があるものとされ(本件公報第三欄一四行目ないし三四行目)、さらに、そのための構成として、「カートンの折に必要なアタッチメントと不必要なアタッチメントを制御手段により識別し」(構成要件B(2)の「選択手段」)、「不必要なアタッチメントを折作業を行うとき邪魔にならない位置に退避させるか、或いは該位置に留めおく為のアタッチメント逃し機構及び駆動手段を使用し」(構成要件Cの「アタッチメント逃し装置」)、「カートンブランクの進行方向と平行な任意の一つの線、
或いはカートンブランクの進行方向と一つの罫線又は縁を折の全行程を通じて適用される基準線として選び、該基準線から他の特定されたカートンブランクの進行方向と平行な少数の罫線又はカートンの縁までの距離に応じた基準となる電気信号を入力したとき、各工程における前記基準線と折に必要なアタッチメントの所定位置との距離に応じた電気信号を演算し記憶し出力するアタッチメント制御手段、例えばマイクロコンピューターを組込んだ入力回路、選択回路、カウンター回路、演算回路、記憶回路、呼び出し回路、比較回路、出力回路、操作回路等を有する制御手段を使用して、必要に応じて前記記憶回路に必要なデータを記憶しておき、かつ該記憶回路からデータとしての電気信号を出力させ」(構成要件B(3)の「演算手段」)、「該出力電気信号に基づいて制御される前記アタッチメント逃し機構の駆動手段を含めたアタッチメント駆動手段、例えば・・・を駆動して、各種型及びサイズのカートンブランクに応じて折に必要な全てのアタッチメントを所望する位置へ自動的に移動させる」(構成要件Dの「位置決め装置」)という構成を採用するものとされている。
(二) 以上のような本件発明の目的、特徴及び構成に関する本件明細書の「発明の詳細な説明」の記載を総合すれば、本件発明においては、各種の型及びサイズのカートンブランクの折りを行う装置において、従来手動で行われていた、折りに使用されるアタッチメントのセッティングが、構成要件B、C及びDの各手段又は装置の働きによって「完全に自動化」されること、すなわち、折りに使用されるすべての部材について、制御手段によりその要不要が判断され、不要と判断されたすべての部材が、制御手段からの制御信号に基づいて自動的にアタッチメント逃し装置により折りに邪魔とならない位置に移動又は保持され、他方、必要と判断されたすべての部材が、制御手段からの制御信号に基づいて自動的に位置決め装置により所定の位置に移動させられることが必要とされるものであることは、明らかである。
してみると、本件発明の構成要件B、C及びDにおける「アタッチメント」とは、構成要件Aのカートンブランクの折装置において、カートンブランクの折りに使用されるすべての部材を指すものというべきであり、したがって、各種の型及びサイズのカートンブランクの折装置において、折りに使用される部材の中に、制御手段による要不要の判断が行われなかったり、制御手段からの制御信号に基づいて自動的にアタッチメント逃し装置や位置決め装置による位置決めが行われないものが含まれている装置は、本件発明の構成要件B、C及びDを充足するものとはいえないことになる。
2 被告各製品における本件発明の構成要件B、C、Dの充足性(一) 被告各製品において折りに使用される部材の中には、次のとおり、制御手段による要不要の判断が行われなかったり、制御手段からの制御信号に基づいて自動的にアタッチメント逃し装置や位置決め装置による位置決めが行われないものが含まれている。
(1) ロータリーフック115について(当事者間に争いのない別紙物件目録一、二の記載及び弁論の全趣旨) 被告各製品のコンビ折り部10にあるロータリーフック115は、四隅貼り及び六隅貼りの際に、カートンブランクの進行方向後端のフラップを折るために使用される部材であり、本件発明における「アタッチメント」に当たることは明らかである(本件発明における「アタッチメント」の範囲について、原告の主張(前記第二、二1(三)(1))を前提にしても同様である。)。
ロータリーフック115は、コンピュータ制御装置8に後端フラップの折りを必要とする型の信号が入力されると、コンピュータ制御装置8において必要であると判断され、コンピュータ制御装置8からの制御信号に基づいて、ロータリーフック115の駆動手段に折りに必要な一定の回転軌道が設定されることになるが、幅方向の位置決めは、オペレーターの手動操作によって行われる。他方、コンピュータ制御装置8に後端フラップの折りを必要としない型の信号が入力されると、コンピュータ制御装置8において不要であると判断され、コンピュータ制御装置8からの制御信号に基づいて、ロータリーフック115は、カートンブランク12に接触しない位置に保持される。
右によれば、被告各製品のロータリーフック115については、コンピュータ制御装置8において、入力された型信号に基づいてその要不要が判断されていること、不要と判断された場合には、コンピュータ制御装置8からの制御信号に基づいて自動的に、折りに邪魔とならない位置への位置決めがなされていることが認められるが、他方、必要と判断された場合の位置決めについては、回転軌道の設定に関する限りコンピュータ制御装置8からの制御信号に基づいて自動的に行われていることが認められるものの、幅方向の位置決めは、コンピュータ制御装置8からの制御信号とは無関係に、オペレーターの手動操作によって行われるのであるから、結局のところ、最終的な位置決めがコンピュータ制御装置8からの制御信号に基づいて自動的に行われているといえないことは、明らかである。
原告は、ロータリーフック115の作用からみて、回転についての自動制御ができていれば、自動化の目的が達成できるから、幅方向の移動が手動によって行われるとしても、ロータリーフック115は、コンピュータ制御装置8によりセッティングが制御されているといえる旨主張するが、前記のとおり、本件発明の特徴が「アタッチメントのセッティングが完全に自動化されること」にある以上、一部に手動操作を伴う位置決めが行われることが、本件発明の右のような特徴と相容れないことは明らかであるから、原告の右主張は採用できない。
(2) 底折りフック113及び折りガイド120について(当事者間に争いのない別紙物件目録一、二の記載及び弁論の全趣旨) 被告各製品のコンビ折り部10にある、底折りフック113及び折りガイド120は、底貼り、四隅貼り及び六隅貼りの際に、カートンブラの進行方向前端のフラップを折るために使用される部材であり、いずれも本件発明における「アタッチメント」に当たることは明らかである(本件発明における「アタッチメント」の範囲について、原告の主張(前記第二、二1(三)(1))を前提にしても同様である。)。
底折りフック113及び折りガイド120は、コンピュータ制御装置8に型信号が入力されると空気圧シリンダ99によって上昇し、最上定位置に達して停止する。底折りフック113及び折りガイド120が折りに必要な場合には、オペレーターが、操作スイッチ84を手動操作することにより、底折りフック113及び折りガイド120を最下定位置まで下降させ、さらに、手動により、底折りフック113及び折りガイド120の上下方向及び幅方向の位置を調節して、位置決めがなされる。
右によれば、被告各製品の底折りフック113及び折りガイド120については、コンピュータ制御装置8に何らかの型信号が入力されると折りに必要か否かに関わりなく常に最上定位置まで移動させられ、その後、折りに必要な場合には、オペレーターの判断により手動操作で最下定位置まで下降させられた上で、さらに、
オペレーターの手動操作により上下方向及び幅方向の位置が調節され、他方、折りに不要な場合には、オペレーターの判断により右下降操作を行わないことによって折りに邪魔とならない最上定位置に保持されるものであるから、コンピュータ制御装置8において、入力された型信号に基づいてその要不要が判断されるとはいえず、また、コンピュータ制御装置8からの制御信号に基づいて自動的に必要な位置決めが行われるともいえないことは、明らかである。
原告は、底折りフック113に関し、上下方向の位置決めについては、昇降により到達する底折りフック113の上下限位置がリミットスイッチにより検出され、
下限リミットスイッチからのオフ信号及び上限リミットスイッチからの到達信号がコンピュータ制御装置8に送られて、コンピュータ制御装置8によって自動的に上下限位置がセッティングされること、また、幅方向の位置決めについては、幅移動により到達する底折りフック113の位置が、コンピュータ制御装置8によって自動的にセッティングされる二組の上部無端ベルト112及び下部無端ベルト111によって挾まれる区域に限られることからすれば、底折りフック113の位置もコンピュータ制御装置8により制御されているものといえる旨主張する。しかしながら、原告の右主張は、位置決めに当たって、底折りフック113が移動し得る範囲がコンピュータ制御装置8によって制御されることになることを指摘するものにすぎず、右範囲内での具体的な位置決めは、前記のとおりコンピュータ制御装置8からの制御信号とは無関係に、オペレーターの手動操作によって行われるのであるから、被告各装置における底折りフック113の位置決めが、「アタッチメントのセッティングが完全に自動化される」という本件発明の特徴と相容れないことは明らかであり、原告の右主張は採用できない。
なお、原告は、折りガイド120についても、コンピュータ制御装置8によって制御される底折りフック113やロータリーフック115の位置を基準として位置決めが行われるから、これらと同様に、その位置決めがコンピュータ制御装置8により制御されているものといえる旨主張するが、前記のとおり、底折りフック113及びロータリーフック115の位置がコンピュータ制御装置8によって制御されているとの前提において誤りがあるというべきであるから、原告の右主張も採用できない。
(二) 以上を総合すると、被告各製品においては、折りに使用される各部材のうち、少なくとも底折りフック113及び折りガイド120につき、入力された型信号に基づきその要不要を判断することが行われず、また、制御手段からの制御信号に基づき自動的にこれらを折りに邪魔とならない位置まで移動させることも行われないから、被告各製品は、折りに使用されるすべての部材についてその要不要を判断する選択手段を具えた制御手段を有しておらず、また、制御手段からの制御信号に基づき折りに不要なすべての部材を折りに邪魔とならない位置まで移動させる駆動手段及び位置検出手段からなるアタッチメント逃し装置も有しないものであり、
本件発明の構成要件B及びCをいずれも充足しない。
また、被告各製品においては、折りに使用される各部材のうち、少なくともロータリーフック115、底折りフック113及び折りガイド120につき、制御手段からの制御信号に基づき自動的にこれらを折りに必要な所定の位置まで移動させることが行われないから、被告各製品は、制御手段からの制御信号に基づき折りに必要なすべての部材を所定の位置まで移動させる駆動手段及び位置検出手段からなる位置決め装置を有しないものであり、本件発明の構成要件Dを充足しない。
二 結論 よって、原告の本訴請求は、その余の点につき判断するまでもなく理由がないから、主文のとおり判決する。
東京方裁判所民事第四六部 裁判長裁判官 三 村 量 一 裁判官 長 谷 川 浩 二 裁判官 大 西 勝 滋(別紙) 物件目録一(89362-001〜011) 物件目録二(89362-012〜019,087。087は目録二の31頁部分) 対比表(89362-020) 表1(89362-021) 表2(89362-022)