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関連ワード 特許を受ける権利 /  発明者 /  改良発明 /  上位概念 /  出願公開 /  パリ条約 /  優先権 /  国内優先権 /  権利の濫用(権利濫用) /  特許出願日 /  拡張 /  追認 / 
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事件 平成 11年 (行ウ) 243号 不作為違法確認請求事件
原告 株式会社タキオテック右代表者代表取締役 A右訴訟代理人弁護士 菰田優
被告 特許庁長官B右指定代理人 C
同 D
同 E
同 F
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2000/04/26
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 一 本件各訴え中、別紙特許出願目録1ないし3記載の各特許出願に係る訴えをいずれも却下する。
二 原告の各請求中、別紙特許出願目録4及び5記載の各特許出願に係る請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
被告が、別紙特許出願目録1ないし5記載の各特許出願について出願公開を行わないことは違法であることを確認する。
事案の概要
原告は、別紙特許出願目録1ないし5記載の各特許出願(以下、順に「本件特許出願1」ないし「本件特許出願5」といい、これらをあわせて「本件各特許出願」という。)を行ったが、その後、当時の代表取締役が原告を代表して各出願を取り下げた(以下「本件各取下げ」という。)。原告は、本件各取下げには無効事由が存在するので、被告が本件各特許出願につき出願公開を行わないことは違法であると主張して、不作為の違法確認を求めた。
一 前提となる事実(証拠を示した事実以外は、当事者間に争いがない。) 1 特許出願 原告は、被告に対し、平成八年八月六日本件特許出願1ないし3について、同年一〇月一八日本件特許出願4について、同年一二月四日本件特許出願5について、それぞれ特許出願した。
2 本件各特許出願の取下げ 原告は、平成九年二月七日、当時の代表取締役であるG(以下「G」という。)が代表して、本件各特許出願に係る出願取下書を提出し、被告は、同月一〇日、右取下書を受け付けた(出願取下書を提出したのが当時の代表取締役であるGであることにつき、甲三、乙三。枝番号は省略する。以下同様とする。)。
3 本件各特許出願の出願公開 被告は、本件各特許出願について、出願公開しない。
二 争点 1 本件特許出願1ないし3に係る訴えの適法性 (被告の主張) 不作為の違法確認の訴え(行政法3条5項)において、事後的な事実の発生等により、申請行為(出願)がなかったとされるような場合、当該申請に対する行政庁の不作為が違法であることの確認を求める訴えの利益は消滅すると解すべきである。
ところで、原告は、本件特許出願1ないし3について、平成八年一〇月二一日、特許法(以下「法」という。)41条1項に規定する特許出願等に基づく優先権を主張する後の出願(特願平成八年第二七七六五三号。以下「本件後出願」という。)をした。法42条1項本文によれば、仮に本件各取下げがなかったとした場合、本件特許出願1ないし3は、いずれも特許出願日である平成八年八月六日から一年三か月が経過した日である平成九年一一月六日の経過をもって取り下げたものとみなされ、当該申請はなかったものとされる。
したがって、本件特許出願1ないし3について、出願公開をしないことの違法の確認を求める訴えは、訴えの利益を欠く。
(原告の反論) 法42条1項本文で取り下げたものとみなされるのは、優先権を主張するために引用した先の出願に係る発明のすべてが後の出願に係る発明に包摂されている場合に限ると解すべきである。ところで、本件後出願に係る発明は、本件特許出願1ないし3に係る発明と一部重なるが、すべてを包摂しているわけではない。したがって、本件特許出願1ないし3は、同条により取り下げたものとはみなされない。
2 出願公開をしないことの違法性の有無 (原告の主張) (一) 本件各取下げは、以下の理由により無効である。
本件各特許出願における発明者は、いずれもG及びH(以下「H」という。)であり、Gらは、右特許出願に係る各発明(以下「本件各発明」という。)についての特許を受ける権利(以下「本件各特許を受ける権利」という。)を原告に譲渡した。本件各特許出願をした当時、Gは原告の代表取締役であり、Hは原告の取締役であった。Gは、平成九年二月七日に原告を代表して、本件各特許出願を取り下げ、Gはその直後である同月一一日に、Hもその直後である同月八日に、いずれも取締役を辞任した。
本件各特許出願の出願取下げにより、本件各特許出願は、初めから出願がなかったものとみなされるため、再出願が可能となる。その場合、Gらは、事実上発明者として出願することが可能となる。他方、Gらは、本件各特許を受ける権利を原告に譲渡しているから、本件各特許出願の出願を取り下げることは、実質的には、本件各特許を受ける権利を、原告からGらに再譲渡するに等しい。
本件各取下げは以下の事由により、無効である。すなわち、@本件各特許を受ける権利をGらに再譲渡することは、取締役と会社間の利益相反取引となるから、取締役会の承認がない限り無効である(商法265条1項本文)が、本件各特許を受ける権利の再譲渡について取締役会の決議を経ていないので、本件各取下げは無効である。A本件各取下げは、Gらが、自らの利益を図り会社の利益を一方的に奪うことを目的としてされたものであって、代表取締役の権限の濫用行為として、無効である。B本件各取下げは、法16条2項の代表権がない者がした手続に該当し、追認のない限り無効である。
(二) 特許庁長官は、出願の日から一年六か月を経過したときは、特許掲載公報の発行をしたものを除き、その特許出願について出願公開をしなければならないと規定されている(法64条1項)。ところで、本件各特許出願は、その出願の日から既に約三年経過しており、手続上考慮し得る通常の遅滞の期間を大幅に徒過している。したがって、被告が本件各特許出願を出願公開しないという不作為は、
違法である。
(被告の反論) (一) 原告は、発明者であるGらが原告に対し、本件各特許出願前に特許を受ける権利を譲渡したにもかかわらず、本件各特許出願を取り下げることは、実質的に、本件各特許を受ける権利を原告からGらに再譲渡するに等しい行為であると主張するが、右主張は、以下のとおり失当である。
特許出願の取下げは、特許出願人が、出願意思を撤回する手続であるが、特許出願人は、改めて特許出願をすることによって、特許を受ける余地が残されている(もっとも、再出願前に先願がある場合には拒絶される。)。本件各取下げは、いずれも出願公開前にされているから、右各取下げが明らかになった時点、
すなわち、特許庁長官たる被告が出願取下書を受領した旨を記載した受領書が原告に配達された時点で、特段の事情のない限り、原告は、本件各発明について直ちに再出願をし、再出願をすれば特許を受けることができる余地があった。すなわち、
原告は、本件各特許出願を取り下げたとしても、本件各発明につき特許を受ける権利を有する地位を喪失するわけではないから、原告が主張するように、本件各取下げが、原告からGらに対する本件各特許を受ける権利の再譲渡に等しい行為と評価することはできない。利益相反取引及び代表権の濫用に当たるとする原告の主張は理由がない。
(二) 法17条3項及び法18条は、特許出願、請求その他特許に関する手続が方式に違反していたり、納付すべき手数料を納付しない場合等に、特許庁長官が相当の期間を指定してその手続の補正を命じ、その期間内に補正をしないときには当該手続を却下することができる旨を規定する。法17条3項に規定する補正を命ずることができる場合とは、手続に形式的不備が存在する場合に限られている。
また、不適法な手続であって、その補正をすることができないものについては、特許庁長官は、右の補正手続を経ることなくその手続を却下するものとされている(法18条の2)。以上によると、形式的審査により手続書類の不備が発見されない限り、その手続書類が特許庁に到達したときに、直ちにその法律上の効果が生ずるものと解される。
これを本件各取下げについてみると、右取下げは、特許法施行規則28条の3・様式四〇により適正にされたものであるから、各出願取下書が平成九年二月一〇日に特許庁に到達したときに、直ちに法律上の効果が生じ、本件各特許出願に係る取下げの効果が発生した。
仮に、特許庁長官に対してした取下手続が無効となる場合がないとはいえないとしても、本件のように、原告の真実の代表取締役が、原告を代表して右各特許出願の出願取下書を提出した本件各取下げに無効事由は存しない。
争点に対する判断
一 本件特許出願1ないし3に係る訴えについて 1 前記第二、一の事実、証拠(甲三、四、乙一ないし三)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められ、これに反する証拠はない。
G及びHは、本件各発明の発明者であるが、本件各特許を受ける権利を原告に譲渡した。
これを受けて、原告は、被告に対し、平成八年八月六日本件特許出願1ないし3について、同年一〇月一八日本件特許出願4について、同年一二月四日本件特許出願5について、それぞれ特許出願した。右各出願当時、Gは原告の代表取締役、Hは原告の取締役であった。
また、原告は、同年一〇月二一日、法41条1項により、本件特許出願1ないし3を先の出願とする優先権を主張して、本件後出願の特許出願をした。
ところが、平成九年二月七日、当時の代表取締役であるGは、原告を代表して、本件各特許出願の出願取下書を提出し、被告は、同月一〇日に右取下書を受け付けた。Gは同月一一日に、Hは同月八日に、取締役を辞任した。
被告は、本件各特許出願について、出願公開しない。
2 右認定した事実に基づき、検討する。
原告は、平成八年一〇月二一日、法41条1項に基づき、本件特許出願1ないし3を先の出願とする優先権の主張をして、本件後出願をした。法42条1項本文により、優先権の主張の基礎とされた先の出願は、その出願から一年三か月を経過したときに取り下げたものとみなされる。仮に、原告の主張するとおり、本件各取下げに無効事由があり、その結果、出願手続が被告に係属していたと解した場合であっても、本件特許出願1ないし3は、出願日である平成八年八月六日から一年三か月を経過した平成九年一一月六日の経過をもって取り下げたものとみなされ、当該申請(出願)は遡ってなかったこととなる。
そうすると、原告の主張を前提としても、本件特許出願1ないし3についての申請行為(出願)はなかったことになるのであるから、本件各取下げの無効を理由として被告が出願公開しないことの違法を確認する訴えは、訴えの利益を欠く。
これに対して、原告は、法42条1項本文により取り下げたものとみなされるのは、優先権を主張する基礎とされた先の出願に係る発明のすべてが後の出願に係る発明に包摂される場合に限ると解すべきである旨主張する。しかし、右原告の主張は、以下のとおり失当である。法41条1項所定の特許出願等に基づくいわゆる国内優先権制度は、先の出願に係る発明(基本的又は原理的な発明)を基礎として、これに、改良発明、追加的発明、新規事項を含む拡張発明、上位概念で表現した包括的発明等の関連発明を取り込んだ新たな出願を可能とするために設けられた制度であり、パリ条約による優先権制度の趣旨を国内出願にも拡大する目的で規定されたものである。さらに、出願人から優先権の主張がされた場合において、競合出願、重複審査及び重複公開による不都合を避けるために、法42条1項本文により、その基礎とされた先の出願については、一定期間の経過により取り下げたものとみなすと規定された。そうすると、国内優先権制度は、そもそも、先の出願に係る発明のすべてが後の出願に係る発明に包摂される場合のみに限定する趣旨で設けられた制度ではないことは明らかであるから、原告の主張は、前提において採用できない。
二 本件特許出願4、5に係る請求ついて 前記認定した事実に基づき検討する。
原告は、概要「本件各特許出願の取下げにより、本件各特許出願は、初めから出願がなかったものとみなされ、これにより、Gらは、発明者として出願することが可能となるから、本件各特許出願を取り下げる行為は、本件各特許を受ける権利を原告から取締役であるGらに再譲渡する行為と評価されるべきであるところ、
右行為について、取締役会の承認を欠いているから、無効事由が存する。」と主張する。
しかし、原告の右主張は、前提において採用できない。すなわち、原告は、
Gらから、本件各特許を受ける権利の譲渡を受けている。そうである以上、本件各特許出願がされた後に、出願が取り下げられても、原告は、右各特許を受ける権利を喪失するわけではないから、右権利に基づいて、当然に、再度特許出願をすることができ、反面、Gらは、特許出願をすることはできない筋合いである。したがって、本件各特許出願を取り下げる行為は、本件各特許を受ける権利を原告から取締役であるGらに再譲渡する行為に等しい行為と評価する余地はない。原告の主張は採用できない。
原告の利益相反及び権利濫用により、本件各取下げには、無効事由があるとする原告の主張は、前提において理由がない。
三 以上のとおりであるから、その余の点について判断するまでもなく、原告の本件特許出願1ないし3に係る訴えは訴えの利益がなく、原告の本件特許出願4及び5に係る請求は理由がないことになる。主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 八木貴美子
裁判官 石村智
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