関連審決 | 審判1995-18729 |
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関連ワード | 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 相違点の認定 / 発明の詳細な説明 / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 拒絶査定 / 請求の範囲 / |
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事件 |
平成
11年
(行ケ)
314号
審決取消請求事件
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原告 株式会社三洋物産代表者代表取締役 A 訴訟代理人弁理士 B 被告 特許庁長官C 指定代理人 D 同 E 同 F 同 G |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2000/03/30 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が平成7年審判第18729号事件について平成11年7月28日にした審決を取り消す。 |
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前提となる事実(当事者間に争いのない事実)
1 特許庁における手続の経緯 原告は、昭和63年9月12日、発明の名称を「入賞玉の誘導部材」とする発明につき特許出願(昭和63年特許願第228123号)をしたが、平成7年7月5日付けの拒絶査定を受けたので、平成7年8月31日拒絶査定不服の審判を請求した。 特許庁は、この請求を平成7年審判第18729号事件として審理した結果、平成11年7月28日、本件審判の請求は成り立たない旨の審決をし、その謄本は、 平成11年9月2日原告に送達された。 2 本願発明の要旨 遊技盤の裏面に取り付けられ、且つ入賞した入賞玉を誘導する誘導経路が形成された入賞玉の誘導部材において、 該誘導部材の前記遊技盤の裏面と接触する板面に、前記遊技盤の裏面に刻設される大径の浅底円形位置決め孔に貫入され且つその先端面が平滑な大径の薄巾突出円形位置決めボスを突設したことを特徴とする入賞玉の誘導部材。 3 審決の理由 審決の理由は、別紙1審決書の理由写し(以下「審決書」という。)に記載のとおりであり、審決は、本願発明は、引用例1(実願昭61-22945号(実開昭62-137080号)のマイクロフィルム)及び引用例2(実願昭60-183939号(実開昭62-90678号)のマイクロフィルム)に記載された考案に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない旨判断した。 |
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審決の取消事由
1 審決の認否 (1) 審決の理由のうち、(手続きの経緯、本願発明)及び(引用例)は認める。 (2) (対比・判断)のうち、本願発明と引用例1に記載される考案との一致点、相違点の認定(審決書6頁10行ないし7頁16行)は認め、その余は争う。 (3) (むすび)は争う。 2 取消事由 審決は、相違点についての判断を誤ったため、本願発明の進歩性の判断を誤ったものであるから、違法なものとして取り消されるべきである。 (1) 取消事由1(相違点(2)についての判断の誤り) 審決の相違点(2)についての判断(審決書7頁17行ないし8頁18行)は、誤りである。 ア 本願発明について 審決は、「本願発明において、位置決めボスの形状は、「大径」「薄巾」としているが、「大径」、「薄巾」の定義はなく実質的には位置決めボスの径を高さに比べて大きくしたにすぎないものと認められる。してみれば、本願発明の位置決めボスの形状は、その先端面を平滑とし、その高さに比べてその径を大きくしたものと認められる。」(審決書7頁18行ないし8頁4行)と認定するが誤りである。 本願発明の「位置決めボス」は、入賞球の誘導部材を遊技盤の裏面に、単に位置決めするだけのものであり、該誘導部材を遊技盤の裏面に連結したり固定したりするものではないため、薄巾に形成されるものである。 すなわち、本願明細書(甲第3号証)には、「入賞玉を所定の経路に従って流下させるための誘導部材10がビス等で遊技盤1の裏面に固定される。」(2頁22行、23行)と記載されており、この記載によれば、誘導部材は位置決めボス以外のビス等によって遊技盤に固定されるものである。このように、本願発明の「位置決めボス」は、誘導部材を遊技盤に連結したり固定したりする機能を全く有さず、 単に誘導部材を仮止めするための位置決め機能のみを有するため、薄巾に形成することができるものである。 イ 引用例2について 審決は、「引用例2には、パチンコ遊技機の打球供給装置に係る発明が開示されており、その第4〜6図には、前記打球供給装置の前面板への組立において、先端面が平滑で高さに比べ径を大きくした位置決めボスと、その位置決めボスが係合する凹部とで構成される位置決め構造が開示されている。」(審決書8頁5行ないし10行)と認定するが、誤りである。引用例2の「位置決めボス」は、打球供給装置24の本体30を前面板14に位置決めし、かつ両部材30,14を連結及び固定するためのものであり、このような連結及び固定するという機能上の制約から、 位置決めボスは、相当程度の厚さを有するものである。 (ア) すなわち、引用例2(甲第6号証)には、位置決めボスについて、 「打球供給装置24を前面板14に取付ける場合、まず、前面板14から突出する位置決めボス66に突出片54の凹部67を係合させる。これによって、前面板14への打球供給装置24の取付位置が1カ所定まる。その後、突出片52に形成された固定ピン挿通孔60に、前面板14から突出する固定ピン64を通す。・・・固定ピン64の位置決めボス69と突出片52の凹部71とが係合され、第2の位置決めがなされる。・・・打球供給装置24の位置決めが上述のようにしてなされた後、突出片52の固定ピン挿通孔60から後方に突出する固定ピン64と固定部材58の固定フック部68とが、第4図の状態から第5図の状態になるように係合される。これによって、前面板14に打球供給装置24がしっかりとかつ確実に取付けられる。」(8頁3行ないし9頁8行)と記載されている。 この記載によれば、この前面板14に対する打球供給装置24の取り付けは、位置決めボス66,69によって、打球供給装置24を2カ所できっちりと位置決めした後に、片方の位置決めボス69に突設された固定ピン64に、固定部材58の固定フック部68を係合させることによって行われる。すなわち、打球供給装置24は、前面板14に対し、2つの位置決めボス66,69によって、2カ所で位置決めされた後に、その2カ所で連結及び固定されるのである。 (イ) このため、固定ピン64と固定フック部68とが係合されない方である位置決めボス66が薄巾に形成されていると、その位置決めボス66と凹部67との係合が外れたりガタ付き易くなって、打球供給装置24による球の供給に支障を来してしまう。 よって、一方の位置決めボス66は、突出量が大きく形成されていることは明らかである。 (ウ) また、他方の位置決めボス69には、その上面中央部に固定フック部68と係合する固定ピン64が突設されているので、これを薄巾に形成することはできない。 ウ 組合せの点 以上のとおり、本願発明の「位置決めボス」は、位置決め機能のみを有するものであるのに対し、引用例2の「位置決めボス66,69」は、連結及び固定機能を有するものであり、機能が相違するため、両発明のボスは、形状を異にせざるを得ない。すなわち、本願発明の「位置決めボス」は薄巾に形成されるのに対し、引用例2の位置決めボス66,69は突出量を大きくせざるを得ず、薄巾に形成することはできない。 よって、引用例2の「位置決めボス」を引用例1の突起に代えて採用しても、本願発明とは異なるものにしかならないものである。 (2) 取消事由2(相違点(1)についての判断の誤り) 上記(1)に述べたことからすると、審決の相違点(1)についての判断も誤りである。 |
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審決の取消事由に対する認否及び反論
1 認否 原告主張の審決の取消事由は争う。 2 反論 (1) 取消事由1(相違点(2)についての判断の誤り)について ア 引用例2について 引用例2(甲第6号証)には、引用例2の「位置決めボス」について、「打球供給装置24を前面板14に取付ける場合、まず、前面板14から突出する位置決めボス66に突出片54の凹部67を係合させる。これによって、前面板14への打球供給装置24の取付位置が1カ所定まる。その後、・・・固定ピン64の位置決めボス69と突出片52の凹部71とが係合され、第2の位置決めがなされる。このように、打球供給装置24は、2カ所できっちりと位置決めがされる。よって、 玉出口34と打球供給装置24とがずれたり、玉送り部材32の当接面48と後述する長手部材との当接箇所がずれたりする心配は全くない。打球供給装置24の位置決めが上述のようにしてなされた後、・・・固定ピン64と固定部材58の固定フック部68とが、第4図の状態から第5図の状態になるように係合される。これによって、前面板14に打球供給装置24がしっかりとかつ確実に取付けられる。」(8頁3行ないし9頁8行)と記載されており、位置決めボス66及び位置決めボス69が位置決め用であることは明らかである。したがって、引用例2の位置決めボスも、ずれが起こらない程度の厚さを有すればよいものである。 イ 本願発明について 本願発明の位置決めボスも、少なくとも引用例2の位置決めボスと同じように、 ずれない程度の厚さを有していると考えられ、本願発明の位置決めボスと引用例2の位置決めボスとは、格別相違するものではない。 (2) 取消事由2(相違点(1)についての判断の誤り)について 上記(1)に述べたことからすると、審決の相違点(1)についての判断にも誤りはない。 理 由1 争点 本願発明と引用例1に記載される考案との一致点、相違点の認定は、当事者間に争いがない。 2 取消事由1(相違点(2)についての判断の誤り)について (1) 本願発明について ア 本願発明の「位置決めボス」は、「その先端面が平滑な大径の薄巾突出円形」の形状を有するものであるところ、特許請求の範囲や発明の詳細な説明には、 位置決めボスが貫入する孔についても「大径の浅底円形位置決め孔」と記載されているにとどまり、それ以上に位置決めボスの「大径」や「薄巾」を定義したり、その径の大きさや巾(高さ)の程度を数量ないし比率で限定する記載は見いだせないから、本願発明の位置決めボスの形状は、その先端面を平滑とし、その高さに比べてその径を大きくしたものを意味するものと認められる。 イ 原告は、本願発明の「位置決めボス」は、入賞球の誘導部材を遊技盤の裏面に単に位置決めするだけのものであるから、薄巾に形成されたものである旨主張する。 確かに、甲第3号証によれば、本願明細書には、発明の詳細な説明中の実施例の項に、「入賞玉を所定の経路に従って流下させるための誘導部材10がビス等で遊技盤1の裏面に固定される。」(2頁22行、23行)と記載されていることが認められるが、この記載のみから本願発明の位置決めボスが、その高さに比べてその径を大きくしたものというにとどまらず、更に一定の比率以下の「薄巾」に形成されたものと限定して解することはできず、原告の上記主張は採用することができない。 ウ したがって、「本願発明の位置決めボスの形状は、その先端面を平滑とし、その高さに比べてその径を大きくしたものと認められる。」(審決8頁2行ないし4行)との審決の認定に誤りはない。 (2) 引用例2について ア 引用例2に、「第4図、第5図および第6図を参照してより詳しく述べる。打球供給装置24を前面板14に取付ける場合、まず、前面板14から突出する位置決めボス66に突出片54の凹部67を係合させる。これによって、前面板14への打球供給装置24の取付位置が1カ所定まる。その後、突出片52に形成された固定ピン挿通孔60に、前面板14から突出する固定ピン64を通す。 固定ピン64は、より好ましくは、その基底部が位置決めボス66と同様の位置決めボス69を備えている。また、突出片52には、その位置決めボス69と係合可能な凹部71が形成されている。 固定ピン64の位置決めボス69と突出片52の凹部71とが係合され、第2の位置決めがなされる。このように、打球供給装置24は、2カ所できっちりと位置決めがされる。」(審決書5頁2行ないし18行)と記載されていることは、当事者間に争いがなく、この記載によれば、引用例2の位置決めボス66及び位置決めボス69は、位置決めのためのものであることが認められる。 さらに、引用例2(甲第6号証)の第4図ないし第6図(別紙2参照)によれば、それらの図面には、位置決めボス66及び位置決めボス69が、先端面が平滑で、高さに比し径を大きくした形状のものとして図示されていることが認められる。 したがって、引用例2に記載された位置決めボス66及び位置決めボス69は、 先端面が平滑で、高さに比し径を大きくした形状の位置決めボスを開示しているものである。 イ(ア) 原告は、固定ピン64と固定フック部68とが係合されない方の位置決めボス66が薄巾に形成されていると、その位置決めボス66と凹部67との係合が外れたりガタ付き易くなってしまうから、位置決めボス66は、突出量が大きく形成されているはずである旨主張する。 しかしながら、そのことが引用例2に接する当業者にとって自明なことであると認めるに足りる証拠はなく、この点の原告の主張は採用することができない。 (イ) 原告は、位置決めボス69には、その上面中央部に固定フック部68と係合する固定ピン64が突設されているので、これを薄巾に形成することはできない旨主張する。 甲第6号証によれば、引用例2には「打球供給装置24の位置決めが・・・なされた後、突出片52の固定ピン挿通孔60から後方に突出する固定ピン64と固定部材58の固定フック部68とが、第4図の状態から第5図の状態になるように係合される。」と記載されていることが認められる(9頁2行ないし6行)。しかしながら、上記摘示の引用例2の各記載及び第4図ないし第6図によれば、位置決めボス69は、「より好ましくは」(審決書5頁10行)というものとして設けられるものであり、しかも、固定ピン64は、前面板14から突出し、さらに位置決めボス69を貫通して突出し、その突出した頂部に固定フック部58を係合させるものであるから、位置決めボス69については、固定フック部68と係合される固定ピン64を保持する等のために厚く形成する必要はないものと認められる。したがって、原告の上記主張は採用することができない。 (3) 組合せの点について 以上のとおり、本願発明の位置決めボスが、その高さに比べてその径を大きくしたものにとどまらず、更に一定の比率以下の「薄巾」に形成されたものと限定して解することはできないものであり、一方、引用例2には、その高さに比べてその径を大きくした位置決めボスが開示されているものであるから、「この位置決めボスを、引用発明(引用例1に記載される考案)の突起に代えて採用し、本願発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到し得るものと認められる。また、 上下方向のかさばりを小さくし、破損もしにくくなるという作用効果についても、 引用例2に開示される発明を採用することにより、当業者であれば当然に予測し得る程度のものであって、格別のものとは認められない。」(審決書8頁11行ないし18行)との審決の判断に誤りはない。 (4) まとめ よって、原告主張の取消事由1は理由がない。 3 取消事由2(相違点(1)についての判断の誤り)について 引用例2に記載された位置決めボスを採用すれば、それを受ける孔の形状も自ずと決まるものであるから、審決の相違点(1)についての判断にも誤りはなく、原告主張の取消事由2も理由がない。 4 結論 以上によれば、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結の日 平成12年3月28日) |
裁判長裁判官 | 永井紀昭 |
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裁判官 | 塩月秀平 |
裁判官 | 市川正巳 |