関連審決 | 審判1997-8264 |
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関連ワード | 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 周知技術 / 課題の共通性 / 参酌 / 実施 / 交換 / 拒絶査定 / 変更 / |
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事件 |
平成
11年
(行ケ)
294号
審決取消請求事件
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原告 株式会社三洋物産代表者代表取締役 【A】 訴訟代理人弁理士 【B】 被告 特許庁長官【C】 指定代理人 【D】 同 【E】 同 【F】 同 【G】 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2000/05/17 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた判決
1 原告 特許庁が、平成9年審判第8264号事件について、平成11年7月28日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告 主文と同旨 |
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当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、昭和60年6月26日にした実用新案登録出願(実願昭60-96828号)の一部を、平成4年4月21日に分割して新たな実用新案登録出願(実願平4-33789号)とするとともに、同日その出願を特許出願に変更し(特願平4-129453号)、さらに、平成8年5月7日、その出願の一部を分割して名称を「パチンコ機」とする新たな特許出願(特願平8-137508号、同出願に係る発明を以下「本願発明」という。)をしたが、平成9年4月8日に拒絶査定を受けたので、同年5月15日、これに対する不服の審判の請求をした。 特許庁は、同請求を平成9年審判第8264号事件として審理し、平成10年3月30日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をしたが、同審決を取り消した東京高等裁判所平成10年(行ケ)第125号審決取消請求事件の判決(同年12月1日判決言渡し)が確定したので、特許庁は、同請求につきさらに審理し、平成11年7月28日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)をし、その謄本は同年8月19日原告に送達された。 2 本願発明の要旨 複数の種類の異なる電装部品から延びる各配線を接続する中継端子盤を備えたパチンコ機において、前記中継端子盤に設けられる各端子の近傍には、各端子に接続される相手先の電装部品の部品名の表示が前記中継端子盤自体に付されていることを特徴とするパチンコ機。 3 審決の理由の要点 審決は、別添審決書写し記載のとおり、本願発明が、特開昭59-105476号公報(以下「引用例」という。)に記載された発明(以下「引用例発明」という。)及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした。 |
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原告主張の審決取消事由の要点
審決の理由中、本願発明の要旨、引用例の記載事項、本願発明と引用例発明との一致点及び相違点の各認定はいずれも認める。 審決は、上記相違点についての判断を誤り、本願発明が引用例発明及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとの誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消されなければならない。 1 課題の共通性について 本願発明と引用例発明は、「誤配線の防止」という限度で技術課題が共通することは認めるが、引用例発明が本願発明をなす動機付けとなり得るような課題の共通性があるとはいえない。 すなわち、引用例発明は、個別の電装部品と電子制御回路やターミナルとの電気接続を予め完了し、電子制御回路と遊技盤3とを一体化した状態で出荷を行うようにして、現場、すなわちパチンコホールでの配線作業の困難さを解消して誤接続といった事態を未然に防止しようとするものである。したがって、引用例における「電気配線が容易」であるという趣旨は、予め電気接続が完了しているから現場、すなわちパチンコホールでの配線作業が不要であるというものであり、本願発明のように各種電装部品を中継端子盤に接続するに際して配線をどの端子に接続するかが容易に判別できるということとは、全く異なる技術的課題である。 引用例発明に「誤配線の防止」との記載はあるにしても、本願発明をなす動機付けとはなり得ない。 2 周知技術の認定について 審決は、実願昭54-62975号(実開昭55-163249号)のマイクロフィルム(甲第7号証)及び実願昭57-125791号(実開昭59-29896号)のマイクロフィルム(甲第8号証)に基づいて、「中継端子盤等に設けられた複数の端子を有する電気接続具において、配線作業が容易であると共に、誤接続が生じることがないように、各端子に接続される相手先名を各端子の近傍、しかも、中継端子盤自体に付して表示すること」は周知技術であると認定する(審決書5頁11行〜6頁1行)が、この認定は以下のとおり誤りである。 (一) 甲第7号証に記載された考案は「自動車用電源端子」に関するものであり、「オプション装置を追加取り付ける際、電気配線接続が容易なる自動車用電源集中端子を提供する」(明細書2頁4〜6行)ことを目的とするものであるが、同号証第2図に示されているように、集中端子11に付されている表示は、各負荷3、4、5、6、10のうちどこから分岐されたかを示すものであり、相手先の電装部品であるオプション装置、例えばカーステレオといった表示が付されているわけではない。しかも、その分岐された電源線は、集中端子11に予め配線されており、使用者が表示に基づいて後で接続し直すようなことを予定した配線ではない。 また、電源集中端子板が中継端子盤といえるかも問題となる。 結局、甲第7号証は、「各端子に接続される相手先名を各端子の近傍、しかも、中継端子盤自体に付して表示すること」との技術が記載されているとは到底いい難いものである。 (二) 甲第8号証に記載された考案において、同号証第3図の表示1、2、7は、アンプの背面6に付されていると考えられるが、どこに中継端子盤が存在するのかは全く記載されていない。被告は、同号証記載の「スピーカターミナル1」が本願発明の中継端子盤に相当すると反論しているが、「ターミナル」なる文言は、 技術用語としてみれば一般に「電極又は端子」を意味するものであるところ、同号証における「スピーカターミナル1」も何ら違和感なく単なる電極又は端子を意味するものと捉えることができる一方、本願発明でいう中継端子盤は、電極又は端子を示すのではなく、それらが実装された「盤」を示すものであり、しかも「中継」を前提としたものであるのであるから、同号証の「スピーカターミナル1」が「中継端子盤」であるとの認定は誤りである。 甲第8号証のように中継端子盤すら示されていない文献をもって中継端子盤に係る周知技術の認定を行うことは許されない。 |
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被告の反論の要点
審決の認定・判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。 1 課題の共通性について 本願発明の明細書には「本発明は・・・その目的とするところは、複数の電装部品から延びる配線の配線作業が容易であると共に、誤配線が生じることのない中継端子盤を備えたパチンコ機を提供することにある。」(明細書1頁27行〜2頁2行)と記載され、他方、引用例には、「本発明は・・・電動入賞装置と電子制御回路との配線作業の簡略化を図ると共に、遊技盤の交換時の誤配線の虞れを解消して新しい遊技盤の交換が容易にできるパチンコ機を提供することを目的とするものである。」(甲第6号証2頁左上欄12行〜同頁右上欄3行)と記載されており、これら記載事項の内容に基づくと、本願発明と引用例発明とは、「誤配線の防止」いう点で技術的課題が共通するものであり、かつ、本願発明と引用例発明とは、中継端子盤を備えたパチンコ機の技術分野で共通し、また、配線作業において「誤配線の防止」は自明の課題であることから、引用例発明は、本願発明をなす動機付けとなるものである。 2 周知技術の認定について (一) 甲第7号証について 甲第7号証の明細書2頁4〜14行、2頁20行、3頁4行〜4頁7行の記載を含む明細書及び図面第2図、第3図の記載を併せて参酌すれば、「集中端子11」、「端子板14」、「自動車用電源集中端子」、「BAT、IG、ACC、 LIGHTの表示」は、それぞれ、「中継端子盤」、「複数の端子また各端子」、「電気接続具」、「各端子に接続される相手先名」に相当する。よって、甲第7号証には「中継端子盤に設けられた複数の端子を有する電気接続具において、配線作業が容易であると共に、誤接続が生じることのないように、各端子に接続される相手先名を各端子の近傍、しかも、中継端子盤自体に付して表示すること」が記載され、しかも、「配線作業が容易であると共に、誤接続が生じることがない」という機能を有する中継端子盤が記載されているといえる。 (二) 甲第8号証について 甲第8号証の明細書2頁14〜17行、7頁4〜5行、9頁8行〜10頁7行、10頁14行〜11頁3行の記載を含む明細書及び第3図、第4図の記載を併せて参酌すれば、「スピーカターミナル1」、「ターミナル1a〜1d」、「オーディオアンプのスピーカ接続端子」、「第1のスピーカシステムおよび第2のスピーカシステムの名称である『1SPEAKER SYSTEM』の表示および『2SPEAKER SYSTEM』の表示」が、それぞれ「中継端子盤」、「複数の端子または各端子」、「電気接続具」、「各端子に接続される相手先名」に相当する。よって、甲第8号証には、「中継端子盤に設けられた複数の端子を有する電気接続具において、配線作業が容易であると共に、誤接続が生じることのないように、各端子に接続される相手先名を各端子の近傍、しかも、中継端子盤自体に付して表示すること」が記載されており、しかも、「配線作業が容易であると共に、 誤接続が生じることがない」という機能を有する中継端子盤が記載されているといえる。 |
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当裁判所の判断
1 課題の共通性について 本願発明と引用例発明において、「誤配線の防止」という限度で技術課題が共通することは当事者間に争いがないところ、原告は、本願発明が各種電装部品を中継端子盤に接続するに際して配線をどの端子に接続するかが容易に判別できるようにするものであるのに対し、引用例発明が予め接続が完了した状態での出荷を行うようにして誤接続を防止するものであるから、引用例発明には本願発明をなす動機付けとなるような技術的課題の共通性はない旨主張する。 確かに、引用例の記載(甲第6号証2頁右下欄7行〜3頁左下欄6行)によれば、引用例発明は、遊技盤3が電動入賞装置2を動作させる電子制御回路を一体に備え、かつ、電動入賞装置12と電子制御回路を電気配線して一体化して完成させたものとして構成されており、それゆえ遊技盤3の交換の際に面倒な配線作業が不要となり、誤配線の虞れもなくなるという作用効果を有するものと認められる。 しかし、遊技盤の電動入賞装置と電子制御基盤とを一体化し、配線作業が熟練者のいる工場で行われるとしても、ターミナルでの電気配線が必要であることに変わりはなく、誤配線を防止すべき課題が残ることは明らかである。また、引用例では、電動入賞装置と電子制御回路の電気配線にはターミナルが用いられているのであるから、接続の取外しと再接続が想定されていると解される上、パチンコホールに設置後に電子制御回路の故障やプログラムの変更が生じることは十分に考えられることであって、そのための修理、変更作業が工場でのみ行われるとは考え難い。したがって、パチンコホールでの電気配線接続作業という場面に関しても、引用例発明のターミナルにおいて誤配線を防止すべき技術課題が全く不要になると認めることはできない。 したがって、引用例発明において本願発明を導く動機付けとなり得る課題の共通性がないとの原告の主張は採用することができない。 2 周知技術の認定 甲第8号証の記載(明細書9頁12行〜10頁7行、第3図)によれば、同号証に記載の考案の実施例は、アンプの背面6にターミナル1a〜1d、1a’〜1d’が設けられ、これらをまとめて「スピーカターミナル1」と称していること、その近傍に、接続される相手先名である「1SPEAKER SYSTEM」、「2SPEAKER SYSTEM」との表示が付されていること、この表示はスピーカの配線接続作業を容易にし、誤配線を防止するためのものであることが認められる。 そして、同号証の「スピーカターミナル1」がスピーカとオーディオアンプ出力の端子を電気的に接続するための中継機能を有していることは明らかであるから、「スピーカターミナル1」は、その機能及び構造からみて、本願発明の明細書にいう「中継端子盤に設けられた複数の端子」と格別の差がないと解される。 また、仮に、甲第8号証の「スピーカターミナル1」を原告の主張するように「電極又は端子」と解釈したとしても、甲第8号証には、電極又は端子の近傍に接続される相手先名を表示しておくとの技術が記載されていることになり、このような手法が、電極又は端子における電気的接続、配線に限られず中継端子盤におけるコネクタ等の電気的接続、配線に適用できることは当業者ならば容易に理解できることである。 したがって、甲第7号証について検討するまでもなく、審決の周知技術の認定に誤りはないので、これを前提に、引用例に記載されたパチンコ機の中継端子盤に従来周知の技術を適用して本願発明に想到することは当業者にとって容易であるとした審決の認定判断にも誤りはない。 3 以上のとおり、原告の審決取消事由の主張は理由がなく、他に審決にこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。 よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 田中康久 |
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裁判官 | 石原直樹 |
裁判官 | 宮坂昌利 |