関連審決 | 異議1997-72655 |
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関連ワード | 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 一致点の認定 / 上位概念 / 技術常識 / 発明の詳細な説明 / 優先権 / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 構成要件 / 請求の範囲 / 取消決定 / |
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事件 |
平成
11年
(行ケ)
144号
特許取消決定取消請求事件
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原告 サムスンエレクトロニクス カンパニ− リミテッド 代表者 【A】 訴訟代理人弁理士 【B】 同 【C】 被告 特許庁長官【D】 指定代理人 【E】 同 【F】 同 【G】 同 【H】 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2000/09/26 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が平成9年異議第72655号事件について平成10年12月16日にした決定を取り消す。 |
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前提となる事実(争いのない事実)
1 特許庁における手続の経緯 原告は、1986年(昭和61年)8月22日に大韓民国にした特許出願に基づいて優先権を主張した昭和62年8月20日の特許出願である昭和62年特許願第207360号の一部を、平成3年1月31日、特許法44条1項の規定により、 発明の名称を「映像処理システムにおける切換制御装置」とする発明(本件発明)について新たな特許出願(特願平3ー11201号)をし、平成8年9月19日に特許登録(特許第2562521号)を受けた。 訴外【I】は平成9年6月6日に、訴外【J】は同月11日に、それぞれ本件発明について特許異議の申立てをした。 特許庁は、同請求を平成9年異議第72655号事件として審理した結果、平成10年12月16日に「特許第2562521号の特許請求の範囲第1項、第5項、第9項、第13項に記載された発明について特許を取り消す。」との決定をし、その謄本は平成11年1月27日に原告に送達された。 2 本件発明の要旨 (1) 本件第1発明(特許請求の範囲第1項に記載の本件発明) 映像記録再生部とビデオカメラ部と電源部とを具備し、上記映像記録再生部及びビデオカメラ部に上記電源部から電源を供給し、上記ビデオカメラ部からの映像及び音声信号を上記映像記録再生部に印加するように構成された映像処理システムにおいて、 上記映像記録再生部に電源を供給するための第1モードと、上記映像記録再生部及びビデオカメラ部に電源を供給する第2モード中のある1つのモードを選択し、 その選択されたモードにより前記電源部からの電源に基づいて所定の入力信号選択制御信号を発生する第1の選択制御手段と、 上記第1の選択制御手段からの入力信号選択制御信号に応答して、上記第2モード選択時に上記ビデオカメラ部からの映像及び音声信号が前記映像記録再生部に入力されるように選択切換する第1の入力信号選択手段とを具備し、 前記第1の入力信号選択手段は、前記映像処理システムに外部の映像及び音声信号を入力するための補助入力手段を具備し、前記第1モード選択時上記入力信号選択手段が上記外部の映像及び音声信号を前記映像記録再生部に入力するように選択切換することを特徴とする映像処理システムにおける切換制御装置。 (2) 本件第5発明(特許請求の範囲第5項に記載の本件発明) 映像記録再生部とビデオカメラ部と映像表示部と電源部とを具備し、上記映像記録再生部、ビデオカメラ部及び映像表示部に上記電源部から電源を供給し、上記ビデオカメラ部からの映像及び音声信号を上記映像記録再生部に印加するように構成された映像処理システムにおいて、 上記映像記録再生部と映像表示部に電源を供給するための第1モードと、上記映像記録再生部、ビデオカメラ部及び映像表示部に電源を供給する第2モード中のある一つのモードを選択し、その選択されたモードにより前記電源部からの電源に基づいて所定の入力信号選択制御信号を発生する第2の選択制御手段と、 上記第2の選択制御手段からの入力信号選択制御信号に応答して、上記第2モード選択時に上記ビデオカメラ部からの映像及び音声信号が前記映像記録再生部に入力されるように選択切換する第2の入力信号選択手段とを具備し、 前記第2の入力信号選択手段は、前記映像処理システムに外部の映像及び音声信号を入力するための補助入力手段を具備し、前記第1モード選択時上記入力信号選択手段が上記外部の映像及び音声信号を前記映像記録再生部に入力するように選択切換することを特徴とする映像処理システムにおける切換制御装置。 (3) 本件第9発明(特許請求の範囲第9項に記載の本件発明) 映像記録再生部とビデオカメラ部とTVチューナ部と電源部とを具備し、上記映像記録再生部、ビデオカメラ部及びTVチューナ部に上記電源部から電源を供給し、上記ビデオカメラ部又はTVチューナ部からの映像及び音声信号を上記映像記録再生部に印加するように構成された映像処理システムにおいて、 上記映像記録再生部に電源を供給するための第1モードと、上記映像記録再生部及びビデオカメラ部に電源を供給する第2モードと、上記映像記録再生部及びTVチューナ部に電源を供給する第3モード中のある一つのモードを選択し、その選択されたモードにより前記電源部からの電源に基づいて所定の入力信号選択制御信号を発生する第3の選択制御手段と、 上記第3の選択制御手段からの入力信号選択制御信号に応答して、上記第2モード選択時に上記ビデオカメラ部からの映像及び音声信号が前記映像記録再生部に入力されるように選択切換え、上記第3モード選択時には上記TVチューナ部からの映像及び音声信号が前記映像記録再生部に入力されるように選択切換する第3の入力信号選択手段とを具備し、 前記第3の入力信号選択手段は、前記映像処理システムに外部の映像及び音声信号を入力するための補助入力手段を具備し、前記第1モード選択時上記入力信号選択手段が上記外部の映像及び音声信号を前記映像記録再生部に入力するように選択切換することを特徴とする映像処理システムにおける切換制御装置。 (4) 本件第13発明(特許請求の範囲第13項に記載の本件発明) 映像記録再生部とTVチューナ部と映像表示部と電源部とを具備し、上記映像記録再生部、TVチューナ部及び映像表示部に上記電源部から電源を供給し、上記TVチューナ部からの映像及び音声信号を上記映像記録再生部に印加するように構成された映像処理システムにおいて、 上記映像記録再生部と映像表示部とに電源を供給するための第1モードと、上記映像記録再生部、映像表示部及びTVチューナ部に電源を供給する第2モード中のある一つのモードを選択し、その選択されたモードにより前記電源部からの電源に基づいて所定の入力信号選択制御信号を発生する第4の選択制御手段と、 上記第4の選択制御手段からの入力信号選択制御信号に応答して、上記第2モード選択時に上記TVチューナ部からの映像及び音声信号が前記映像記録再生部に入力されるように選択切換する第4の入力信号選択手段とを具備し、 前記第4の入力信号選択手段は、前記映像処理システムに外部の映像及び音声信号を入力するための補助入力手段を具備し、前記第1モード選択時上記入力信号選択手段が上記外部の映像及び音声信号を前記映像記録再生部に入力するように選択切換することを特徴とする映像処理システムにおける切換制御装置。 3 決定の理由 別紙決定書の理由写し(以下「決定書」という。)のとおり、本件第1発明及び本件第5発明は、それぞれ刊行物1(特開昭58-139571号公報、甲第4号証。以下「引用例1」という。)及び刊行物2(実願昭55-86363号、実開昭57-10141号のマイクロフィルム、甲第5号証。以下「引用例2」という。)に記載されたものに基づいて、本件第9発明及び本件第13発明は、それぞれ引用例1、引用例2及び刊行物3(米国特許第3,484,548号明細書、甲第6号証。(以下「引用例3」という。)に記載されたものに基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法29条2項に違反してなされたものであるから、同法113条1項2号に該当し、取り消されるべきであると判断した。 |
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原告主張の決定の取消事由の要点
決定は、引用例1記載の発明の認定を誤り(取消事由1)、引用例2記載の考案の認定を誤り(取消事由2)、本件第1発明と引用例1記載の発明との一致点の認定を誤ると共に相違点を看過し(取消事由3)、また、引用例1記載の発明と引用例2記載の考案とを組み合わせて本件第1発明を構成することについての容易性の判断を誤り(取消事由4)、これらによって、本件第1発明の進歩性の有無の判断を誤ったものである。そして、本件第5、第9、第13発明についても、これと同様の取消事由を有する。さらに、決定は、本件第9発明と引用例1記載の発明との一致点の認定を誤ると共に相違点を看過したものである(取消事由5)。このように、決定は、違法なものとして取り消されるべきである。 1 取消事由1(引用例1記載の発明の認定の誤り) 引用例1記載の発明の認定(決定書8頁17行ないし9頁17行)において、決定が、引用例1における端子(a)、(b)が、映像信号の「選択切換」を行うと認定したこと(決定書9頁2行、3行)は誤りである。 すなわち、広辞苑によると「選択」、「切換」は、それぞれ「えらぶこと。えらびだすこと。」、「きりかえること。」の意であるから、「選択切換」は、選択して切り替えること、すなわち、複数の状態から一の状態を選択して、その状態を切替えることであり、動作で考えれば、「選択」し、「切換」を行う「選択」と「切換」の2段階の動作によってなされると考える。 そして、引用例1記載の発明における端子(a)、(b)は、入力ピンC1により短絡と開放で切換が行われるが、端子(a)、(b)と連動するスイッチSWは、ビデオカメラだけの電源のオン・オフを行うが、複数の機器への選択的な電源供給を行えない。すなわち、引用例1記載の発明は、電子ビューファインダEVF、ビデオレコーダVR及びビデオカメラVCには、常時、バッテリBから電源を供給することを前提とし、端子(a)、(b)と連動するスイッチSWは、ビデオカメラだけの電源のオン・オフを行うのに対し、本件第1発明は、常時は電源を供給しないことを前提とし、選択手段により選択されたモードに関連する機器のみに電源を供給するものであり、このことは、本件発明の特許請求の範囲第1項に、第1モードの選択により「映像記録再生部に電源が供給され」、第2モードを選択することにより「映像記録再生部及びビデオカメラ部に電源が供給されるものである」と記載されているのである。 そうすると、引用例1記載の発明では、外部入力ピンの接続の有無という2つの状態しか識別し得ないので、複数の機器の中から、電源が供給され、出力信号が別の機器に入力される機器を選択し、電源供給切換及び信号切換を同時に行うということができないばかりでなく、映像信号の切換用の端子(a)、(b)と、電源供給のオンオフ用スイッチSWとは、機械的に同時に切り換られる別個の系統のスイッチである。 この点について、被告は、本件第1発明が、常時は電源を供給せず、選択手段により選択されたモードに関連する機器のみに電源を供給するものであるとすることは、特許請求の範囲の記載に基づかない旨主張している。 しかしながら、本件第1発明において、第1モードの選択により「映像記録再生部に電源が供給され」、第2モードを選択することにより「映像記録再生部及びビデオカメラ部に電源が供給されるものである」ことは、特許請求の範囲第1項の「映像記録再生部に電源を供給するための第1モードと、上記映像記録再生部及びビデオカメラ部に電源を供給する第2モード中のある1つのモードを選択し」との記載及び発明の詳細な説明の図6より明らかであるから、被告の主張は当を得ていない。 2 取消事由2(引用例2記載の考案の認定の誤り) (1) 決定が、引用例2記載の考案について、引用例2の図面の記載から、 「入力源の電源供給状態に応じて切換制御回路から入力源切換スイッチに対して制御信号が出力されることは、明らかであ(る)」と認定したこと(決定書10頁8行ないし11行)は、引用例2に記載された技術的内容よりも広い概念として捉えており、誤りである。 すなわち、引用例2記載の考案は、入力源、切換制御回路及び入力源切換えスイッチで一つのグループを構成し、それが入力源の数だけある構成で、いずれかの入力源の電源スイッチがオンすれば、その入力源の電源のオンをその入力源の切換制御回路が検知し、その入力源に対応する入力源切換スイッチをオンとし入力源を出力させるものである。 したがって、入力源の電源スイッチのオン・オフを検知することが不可欠な構成要件であり、「入力源の電源供給状態に応じて切換制御回路から入力源切換スイッチに対して制御信号が出力されることは、明らかであ(る)」とすることはできない。 この点に関して被告は、「入力源の電源供給状態に応じて切換制御回路から入力源切換スイッチに対して制御信号が出力されること」は、「入力源のスイッチのオン・オフを検知して切換制御回路からの入力源切換スイッチに対して制御信号が出力されること」を含む表現であると主張している。 しかしながら、「入力源のスイッチのオン・オフを検知して切換制御回路からの入力源切換スイッチに対して制御信号が出力されること」を含む表現であることが、直ちに「入力源の電源供給状態に応じて切換制御回路から入力源切換スイッチに対して制御信号が出力されること」が記載されているということはできない。 (2) 仮に、引用例2記載の考案についての上記認定に誤りがないとしても、本件第1発明は選択制御手段により電源供給と信号の選択切換とを同時に行わせるものであるのに対し、引用例2記載の考案は、入力源の電源供給状態に応じて(それを検出して)切換スイッチを動作させるものであり、その構成は全く異なるものである。 この点に関して被告は、「電源供給と信号の選択切換を同時に行わせるもの」は特許請求の範囲に記載されておらず、特許請求の範囲に基づかないものである旨主張している。 しかしながら、本件発明の詳細な説明における本件発明の目的、本件発明の作用の記載として、電源供給と映像信号及び音声信号の供給を同時に行うことが記載されているから、被告の主張は当を得ていない。 3 取消事由3(本件第1発明と引用例1、2記載の発明との一致点の認定の誤り及び相違点の看過) (1) 決定が、本件第1発明と引用例1記載の発明との一致点として、「上記映像記録再生部に電源を供給するための第1モードと、上記映像記録再生部及びビデオカメラ部に電源を供給する第2モード中のある1つのモードを選択する第1の選択制御手段」を認定したこと(決定書13頁11行ないし14行)は誤りである。 すなわち、本件第1発明における第1の選択制御手段は、特許請求の範囲の第1項に記載されているように、@2つのモードを選択する機能(第1の機能)とAその選択されたモードにより電源部からの電源に基づいて所定の入力信号選択制御信号を発生する機能(第2の機能)の2つの機能を持つものであるのに対し、引用例1記載の発明は、上記2つの機能を有する第1の選択制御手段を備えていない。 (2) 決定が、本件第1発明と引用例1記載の発明との一致点として、第1の入力信号選択手段に関して、「これらのモードに応答して、上記第2モード選択時に上記ビデオカメラ部からの映像及び音声信号が前記映像記録再生部に入力されるように選択切換する第1の入力信号選択手段とを具備し」と認定したこと(決定書13頁15行ないし18行)は誤りである。 すなわち、決定では、第1の入力信号選択手段は、モードに対応して選択切換を行うものと認定されているが、本件第1発明における第1の入力信号選択手段は、 モードに対応した電気信号である第1の入力信号選択制御信号により選択制御されるものであり、引用例1記載の発明のように、モードに対応して、機械的に直接選択切換を行うものを含まず、電気的信号を介して制御されるものを含むものであり、この点認定を誤ったものである。 この点に関し、被告は、「選択されたモードにより電源部からの電源に基づいて発生された入力信号選択制御信号」については、決定で引用例1記載の発明との相違点として挙げ、判断を行っている旨主張しているが、決定では、入力信号選択手段が、選択制御手段により発生された入力信号選択制御手段により制御される点は相違点として判断されておらず、被告の上記主張は当を得ていない。 (3) 本件第1発明における選択制御手段は、「モードにより電源部からの電源に基づいて所定の入力信号選択制御信号を発生する」ものであるが、その「電源に基づいて」とは、映像記録再生部及びビデオカメラ部に供給する電源部と同じ電源部からの電源により入力信号選択制御信号を発生する構成であり、「入力源の電源供給のオンオフに対応する」ものではないから、引用例1、2には、かかる構成が記載されていないにもかかわらず、決定は相違点として認定していない。 4 取消事由4(容易性判断の誤り) 引用例1記載の発明と引用例2記載の考案とを組み合わせて本件第1発明の構成とすることは、次のとおり、容易に想到し得るものではない。 (1) 引用例1記載の発明における外部入力端子の信号と、ビデオカメラVCの信号の一方のみがビデオレコーダVRに接続する技術と、引用例2記載の考案における複数の入力源切換スイッチの1がオンになり、その結果、1つの入力源のみが増幅器Gに接続する技術とを組み合わせたとしても、それは、入力信号のみの組み合わせに関することであり、電源供給の選択切換に関することは出てこないから、電源供給の選択切替と、入力信号の選択切換を行う本件構成とはならない。また、引用例1、2には、入力信号選択手段を制御する入力信号選択制御信号を発する選択制御手段がモードを選択し、電源供給を切り換える点が記載されていない。 したがって、このような引用例1記載の発明と引用例2記載の考案とを組み合わせて本件第1発明を構成することは容易に想到することはできない。 (2) 被告は、引用例1記載の発明と引用例2記載の考案において、接続機器の接続について排他的であることを同じくすることを両者を組み合わせることについての容易性の理由として主張するが、機械的な発明に電子的な発明を適用するのは、一般的には技術的困難性があるから、 機械的に構成された発明である引用例1記載の発明と、電子的に構成された発明である引用例2記載の考案は、単に接続が排他的であるという程度の理由では、その組合わせが容易であるとすることはできない。 5 取消事由5(本件第9発明と引用例1記載の発明との一致点の認定の誤り及び相違点の看過) 決定は、本件第9発明と引用例1記載の発明とについて、「上記映像記録再生部に電源を供給するための第1モードと、上記映像記録再生部及びビデオカメラ部に電源を供給する第2モード中のある一つのモードを選択する第3の選択制御手段」を一致点と認定している(決定書21頁4行ないし7行)が、誤りである。 すなわち、「第3の選択制御手段」は、二つのモードを切り換えるものではなく、三つのモードを切り換えるものであるから、決定が認定した「二つのモードを選択する第3の選択制御手段」は本件第9発明における「第3の選択制御手段」に相当しない。 被告は、第3のモードについては、決定において相違点として採り上げて判断している旨主張しているが、選択制御手段が第3のモードを選択する点についての判断はされていない。 |
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被告の反論の要点
1 取消事由1(引用例1記載の発明の認定の誤り)に対して 引用例1に記載されている端子(a)、(b)の機能は、「ビデオカメラVCで得られた映像信号の記録時には、・・・ビデオカメラVCからの信号を端子(a)、(b)を介してビデオレコーダVR、電子ビューファインダEVFに供給すると共に、外部入力を用いた記録時には、・・・外部入力端子C2に接続された入力ピンC1からの信号を端子(a)を介してビデオレコーダVR、電子ビューファインダEVFに供給する」(決定書9頁3行ないし17行)ことを実現するものであるから、その機能に着目すれば、ビデオカメラVCからの信号又は入力ピンC1からの信号のいずれかを選択して切り換えるものということができる。 そして、本件第1発明でも、その特許請求の範囲第1項において、「上記第2モード選択時に上記ビデオカメラ部からの映像及び音声信号が前記映像記録再生部に入力されるように選択切換する第1の入力信号手段とを具備し」、「前記第1モード選択時上記入力信号選択手段が上記外部の映像及び音声信号を前記映像記録再生部に入力するように選択切換する」と記載されているから、ビデオカメラ部からの信号と外部からの信号のいずれかを選択して切り換えている機能が読み取れるのであり、この機能は、引用例1の端子(a)、(b)の機能と何ら変わるところはない。 したがって、甲第4号証の端子(a)、(b)が選択切換を行うと認定した点に誤りはない。 なお、原告は、本件第1発明が、常時は電源を供給せず、選択手段により選択されたモードに関連する機器のみに電源を供給するものである旨主張しているが、右主張は、特許請求の範囲の記載に基づかないものであり、失当である。 2 取消事由2(引用例2記載の考案の認定の誤り)に対して (1) 決定が、引用例2記載の考案について認定した「入力源の電源供給状態に応じて切換制御回路から入力源切換スイッチに対して制御信号が出力されること」には、「入力源のスイッチのオン・オフを検知して切換制御回路から入力源切換スイッチに対して出力されること」を含む表現であるから、決定の上記認定に誤りはない。 (2) 原告は、本件第1発明は選択制御手段により電源供給と信号の選択切換とを同時に行わせるものである旨主張しているが、電源供給と信号の選択切換を同時に行わせることは、本件発明の特許請求の範囲に記載されておらず、特許請求の範囲に基づかない主張であって、失当である。 3 取消事由3(本件第1発明と引用例1、2記載の発明との一致点の認定の誤り及び相違点の看過)に対して (1) 原告が主張する本件第1発明における選択制御手段が有する第2の機能に関して、「選択されたモードにより電源部からの電源に基づいて所定の入力信号選択制御信号を発生する」点については、決定においても、引用例1記載の発明との相違点として挙げた上で、その判断を行っている(決定書14頁7行ないし16頁第3行)。 すなわち、本件第1発明における選択制御手段が、入力信号選択制御信号を発生する点に関して、決定は、本件第1発明では、「選択されたモードにより電源部からの電源に基づいて発生された入力信号選択制御信号に応答して、映像及び音声信号の選択切換を行う入力信号選択手段を設けているのに対し」、引用例1記載の発明では、「電源の供給経路に設けられたスイッチSWと機械的に連動して短絡、開放する端子であって、映像信号の選択切換を行う端子(a)、(b)を設けている点」(決定書14頁第7行ないし15行)、すなわち、本件第1発明では、入力信号選択手段が選択制御手段で発生された入力信号選択制御信号に応答するのに対して、 引用例1記載の発明では、上記の端子(a)、(b)がスイッチSWと機械的に連動する点を相違点として記載している。 (2) また、本件第1発明における「入力信号選択手段が、選択制御手段により発生された入力信号選択制御信号により制御される」点に関して、決定は、上記(1)の相違点の記載に続けて、「即ち、入力源の電源供給状態と入力源切換スイッチにおける入力源の選択とを連動させるために」、本件第1発明では、「電源部からの電源に基づいて発生された制御信号を用いているのに対し」、引用例1記載の発明では、「機械的に連動する(電源系統と信号系統との)2系統のスイッチを用いている点、で一応の差異が認められる。」(決定書14頁第15行ないし15頁1行)と記載している。すなわち、決定では、「入力源(ビデオカメラVC)の電源供給状態と入力源切換スイッチにおける入力源(ビデオカメラVC)の選択とを連動させるために、前者(本件第1発明)では、電源部からの電源に基づいて発生された制御信号を用いているのに対し、後者(引用例1記載の発明)では、機械的に連動する(電源系統と信号系統との)2系統のスイッチ(電源系統のスイッチSWと信号系統の端子(a)、(b))を用いている点、で一応の差異が認められる。」と相違点を記載し、続けて、「しかし、この点については、刊行物2(i引用例2)に・・・この技術を上記刊行物1(引用例1)に示されたものに適用して、・・・当業者が容易になし得たことと認められる。」(決定書15頁2行ないし16頁3行)と判断を示している。 したがって、決定が、本件第1発明と引用例1、2記載の発明との一致点の認定を誤り、相違点を看過したとの原告の主張は、その前提を欠き失当である。 (3) 原告は、選択制御手段が入力信号選択制御信号を「前記電源部からの電源に基づ」いて発生する点については、引用例1、2のいずれにも記載されていない旨主張している。 しかしながら、引用例2(甲5号証)には、「Gは増幅器、OUTは増幅器Gから出力信号をとり出す出力端子を夫々示す。これらの構成は、多数の入力源が接続された通常のオーディオ装置と何ら変わる処はない。」(3頁4行ないし8行)と記載され、この記載からみると、通常のオーディオ装置の多数の入力源の電源が増幅器Gの電源と同じものであることは、通常のオーディオ装置として自明のことである。 したがって、引用例2には、入力源の電源供給状態(入力源の電源スイッチのオンオフの状態)に応じて、かつ、電源(増幅器Gと同じ電源)に基づいて発生される制御信号(入力源の電源のオンオフに基づいて発生される電圧の有無を示す信号)を用いて、入力源の電源供給状態と入力源切換スイッチにおける入力源の選択を連動させていることが記載されており、「電源部からの電源に基づいて入力信号選択制御信号を発生する選択制御手段」が記載されているので、原告の上記主張は失当である。 4 取消事由4(進歩性判断の誤り)に対して 引用例1記載の発明は、外部入力端子への接続とビデオカメラVCへの接続が排他的であることが明らかであるから、同じく接続機器の接続について排他的である引用例2記載の考案との組み合わせは困難であるということはできない。そして、 引用例1記載の発明において、この機械的切換手段に代え、引用例2記載の考案に基づいて入力信号を選択する制御信号を発生する切換制御手段を用いることにより本件第1発明が得られることは明らかである。 したがって、決定が本件第1発明について、引用例1記載の発明と引用例2記載の考案に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると判断した点に誤りはない。 5 取消事由5(本件第9発明と引用例1記載の発明との一致点の認定の誤り及び相違点の看過)に対して 原告が主張する本件第9発明における第3モードについては、決定において、相違点として採り上げた上で(決定書22頁13行ないし20行)、判断しており(同23頁4行ないし24頁12行)、原告の主張は失当である。 理 由1 取消事由1(引用例1記載の発明の認定の誤り)について (1) 引用例1記載の発明が、「電源の供給経路に設けられたスイッチSWと機械的に連動して短絡、開放する端子(a)、(b)を有しており、ビデオカメラVCで得られた映像信号の記録時には、ビデオカメラVCにスイッチSWを介して給電すると共に、ビデオレコーダVR、電子ビューファインダEVFに給電し、ビデオカメラVCからの信号を端子(a)、(b)を介してビデオレコーダVR、電子ビューファインダEVFに供給すると共に、外部入力を用いた記録時には、ビデオレコーダVR、電子ビューファインダEVFにのみ給電し、スイッチSWを開放することによりビデオカメラVCには給電を行わず、外部入力端子C2に接続された入力ピンC1からの信号を端子(a)を介してビデオレコーダVR、電子ビューファインダEVFに供給するビデオシステム」であること(決定書8頁17行ないし9頁17行参照)は争いがない。 したがって、引用例1記載の発明は、@端子(a)、(b)が短絡している状態では、 ビデオカメラVCへの電源が供給されて、ビデオカメラVCの出力信号が電子ビューファインダEVF及びビデオレコーダVRに供給される状態と、A端子(a)、(b)が開放された状態では、ビデオカメラVCへの電源供給がオフに切り換えられて入力ピンC1の出力信号が電子ビューファインダEVF及びビデオレコーダVRに供給される状態という、複数の状態を奏するものであると認められる。 これによれば、引用例1記載の発明においても、端子(a)、(b)の短絡状態、開放状態に応じた複数の状態が存在し、かつ、この複数の状態は、端子(a)、(b)を短絡、開放することによって切り換えられることは明らかである。そして、この複数の状態が存在する中から、一の状態とすることは、選択行為であると認めることができる。 原告は、「選択切換」について、「選択して切り換えること、すなわち、複数の状態から一の状態を選択して、その状態を切替えること」と定義した上で、引用例1記載の発明における端子(a)、(b)は、切換は行っているが、選択は行っていない旨主張しているが、上記判示のとおり、引用例1記載の発明における端子(a)、(b)は、選択行為を行っていると認められるのであるから、決定が、引用例1に「映像信号の選択切換を行う端子(a)、(b)を有」することが記載されているとした認定には誤りはなく、原告の主張は採用することができない。 (2) 原告は、引用例1記載の発明は、電子ビューファインダEVF、ビデオレコーダVR及びビデオカメラVCには、常時、バッテリBから電源を供給することを前提にした発明であるのに対し、本件第1発明は、常時は、電源を供給しないものである旨主張している。 しかしながら、本件第1発明について、特許請求の範囲第1項には、第1、第2モードの各モード時に電源が供給される機器がそれぞれ特定されて記載されているだけであり、常時電源を供給しているか否かについては何ら記載されておらず、また、原告指摘の本件発明の詳細な説明における図6の記載も実施例として示されているにすぎないから、原告の上記主張は採用することができない。 また、原告は、引用例1記載の発明は、本件第1発明と異なり、電源切換供給及び信号切換を同時に行えないばかりでなく、端子(a)、(b)とスイッチSWとは機械的に同時に切り換えられる別個の系統のスイッチである旨主張している。 しかしながら、本件第1発明が電源供給と信号の選択切換を同時に行わせるものであることについては、特許請求の範囲には記載されておらず、原告の上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であって失当である。また、決定は、 引用例1記載の発明における端子(a)、(b)とスイッチSWとについて、機械的に連動する2系統のスイッチであることを、本件第1発明との相違点として認定して(決定書14頁11行ないし15頁1行)、検討しているのであるから、決定の引用例1の認定について原告の主張の誤りはない。 (3) 以上のとおり、原告主張の取消事由1は、理由がない。 2 取消事由2(引用例2記載の考案の認定の誤り)について (1) 原告は、引用例2記載の考案においては「入力源の電源スイッチのオン・オフを検知すること」が不可欠の構成要件であり、決定が認定するように「入力源の電源供給状態に応じて切換制御回路から入力源切換スイッチに対して制御信号が出力されることは、明らかであ(る)」と広い概念で捉えるのは誤りである旨主張している。 引用例2に記載された「入力源の電源スイッチのオン・オフを検知する」ことについて、その技術的な意味を検討すると、入力源の電源スイッチがオンの状態であれば、入力源の電源が供給状態であり、他方、入力源の電源スイッチがオフの状態であれば、入力源の電源が供給状態でないことは技術常識であるというべきであるから、結局、「入力源の電源スイッチのオン・オフを検知する」ことは、「入力源の電源が供給状態にあるか否か検知」することにほかならず、しかも、そのための検知手段としては、引用例2記載のような電源スイッチのオン・オフの検知手段以外にも、例えば、電源供給状態か否かで変化するすることが明らかな電圧、電流状態等の変化を検知するような自明とも云える検知手段が存在することは明らかであるから、決定が、「入力源の電源スイッチのオン・オフを検知する」と限定せずに、その上位概念として、「入力源の電源供給状態に応じて切換制御回路から入力源切換スイッチに対し制御信号が出力されることは明らかであ(る)」と認定した点に誤りはない。 (2) また、原告は、引用例2記載の考案の認定に誤りがないとしても、本件第1発明は選択制御手段により電源供給と信号の選択切換とを同時に行わせるものであるのに対し、引用例2記載の考案は、入力源の電源供給状態に応じて(それを検出して)切換スイッチを動作させるものであり、その構成が全く異なる旨主張している。 しかしながら、本件第1発明が電源供給と信号の選択切換を同時に行わせるものであることについて特許請求の範囲には記載されていないことは前判示のとおりであり、原告の上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づかないものであって、失当である。 3 取消事由3(一致点の認定の誤り及び相違点の看過)について (1) 原告は、本件第1発明における選択制御手段は、2つのモードを選択する機能(第1の機能)と、選択されたモードにより電源部からの電源に基づいて所定の入力信号選択制御信号を発生する機能(第2の機能)を持つものであるが、引用例1には、この2つの機能を有する選択制御手段は記載されていない旨主張している。 この点について、決定は、本件第1発明と引用例1記載の発明における「選択制御手段」として、上記第1の機能である「上記映像記録再生部に電源を供給するための第1モードと、上記映像記録再生部及びビデオカメラ部に電源を供給する第2モード中のある1つのモードを選択する」点を一致点と認定してはいるが、第2の機能については一致点としては触れていない。 しかしながら、決定は、引用例1記載の発明との相違点として、「本件請求項1に係わる発明(本件第1発明)では、選択されたモードにより電源部からの電源に基づいて発生された入力信号選択制御信号に応答して、映像及び音声信号の選択切換を行う入力信号選択手段を設けている」点を挙げており(決定書14頁7行ないし11行)、この相違点の中の「選択されたモードにより電源部からの電源に基づいて発生された入力信号選択制御信号」とは原告主張の第2の機能そのものであるから、決定は、第2の機能を相違点として認定し、判断していることとなる。 そうすると、決定が、引用例1記載の発明が第1の機能を有することから直ちに「選択制御手段」と広く呼称して一致点として認定したことは誤りであるが、決定は、本件第1発明の選択制御手段が持つ第2の機能についてはこれを相違点として認定した上で判断しているものであるから、決定における上記の誤りが、決定の判断や結論に影響を与えるものではないことは明らかであり、決定を取り消すべき理由とならない。 (2) 原告は、決定が、本件第1発明と引用例1記載の発明との一致点として、第1の入力信号選択手段に関して、「これらのモードに応答して、上記第2モード選択時に上記ビデオカメラ部からの映像及び音声信号が前記映像記録再生部に入力されるように選択切換する第1の入力信号選択手段とを具備し」と認定したことは誤りである旨主張し、その理由として、原告は、本件第1発明における第1の入力信号選択手段は、モードに対応した電気信号である第1の入力信号選択制御信号により選択制御されるものであり、引用例1記載の発明のように、モードに対応して、機械的に直接選択切換を行うものを含まない旨主張している。 しかしながら、第1の入力信号選択手段に関して、決定は、本件第1発明では、 「選択されたモードにより電源部からの電源に基づいて発生された入力信号選択制御信号に応答して、映像及び音声信号の選択切換を行う入力信号選択手段を設けているのに対し」、引用例1記載の発明では、「電源の供給経路に設けられたスイッチSWと機械的に連動して短絡、開放する端子であって、映像信号の選択切換を行う端子(a)、(b)を設けている点」(決定書14頁第7行ないし15行)、「即ち、 入力源の電源供給状態と入力源切換スイッチにおける入力源の選択とを連動させるために」、本件第1発明では、「電源部からの電源に基づいて発生された制御信号を用いているのに対し」、引用例1記載の発明では、「機械的に連動する(電源系統と信号系統との)2系統のスイッチを用いている点、で一応の差異が認められる。」(決定書14頁第15行ないし15頁1行)と相違点を認定した上、続けて、「しかし、この点については、刊行物2(引用例2)に・・・この技術を上記刊行物1(引用例1)に示されたものに適用して、・・・当業者が容易になし得たことと認められる。」(決定書15頁2行ないし16頁3行)と記載して、相違点について判断を示しているのであるから、原告主張の相違点の看過や一致点の認定の誤りはない。 (3) 原告は、入力信号選択制御信号は、映像記録再生部及びビデオカメラ部に供給する電源部と同じ電源部により発生する点について、引用例1、2には記載されていない旨主張している。 しかしながら、機器において用いられる電気的処理における電源として、共通の電源から分岐・分圧等の処理をして使用することは、例えば、屋内コンセントに接続される家電機器に見られるように周知慣用手段であり、そのことは、引用例2(甲第5号証)に記載されている「通常のオーディオ装置」も家電機器の観点から同様であり、さらに、引用例1(甲第4号証)においても、その図面に、電子ビューファインダ、ビデオレコーダ、ビデオカメラ等の電源は共通化され、しかも、他には電源が記載されていないことからも明らかである。 以上によれば、引用例1、2において、電源に関して他に特段の記載が無いことは、これらの電源としては、上記の慣用手段による共通の電源とするものであると認めるのが相当である。 したがって、原告の上記の主張は理由がない。 (4) 以上のとおり、原告主張の取消事由3は理由がない。 4 取消事由4(容易性判断の誤り)について (1) 原告は、引用例1記載の発明と引用例2記載の考案を組み合わせても、 入力信号のみの組合わせに関することで、電源供給の選択切換に関する点はなく、 また、機械的な発明に電子的発明を適用することは困難である旨の主張をしている。 しかしながら、甲第5号証によると、引用例2には、電源スイッチにより、電源供給状態又は電源非供給状態の二つの状態が存在し、その電源供給状態に応じて入力源切換スイッチを電磁リレー等でオン・オフする点、すなわち、電源供給状態を検知し、当該状態に応じた制御信号を発生させる点が記載されており、また、甲第4号証によると、引用例1には、端子(a)、(b)間が短絡している状態では、ビデオカメラVCにはバッテリからの電源が供給され、出力信号は端子(a)、(b)を介してファインダEVF、レコーダVRにそれぞれ送られ、また、端子(a)、(b)間が開放となる状態では、ビデオカメラVCにはバッテリからの電源が供給されず、入力ピンC1からの映像信号がファインダEVF、レコーダVRにそれぞれ送られる点、 すなわち、端子(a)、(b)の短絡・開放状態により、その状態に応じて電源を切り換え、当該切換に連動して映像信号を切り換える点が記載されていることが認められる。 さらに、機械的な動作を電気信号による動作とすることは、一般的な制御手法の推移にもみられるとおり、周知の技術的事項である。 そうすると、引用例1記載の発明における、機械的に連動する(電源系統と信号系統の)2系統のスイッチを、引用例2記載の考案に示される電気信号による動作、すなわち、電源系統のオン・オフに連動させて他のスイッチを電気的信号にてオン・オフさせる技術を適用する点に格段の困難性は認められない。 また、原告が主張する「選択切換」とは、「複数の状態から一の状態を選択してその状態を切り換えること」であるが、上記のとおり、引用例1、2には、電源供給の選択切換及び当該切換に連動した切換制御が記載されている。 (2) 以上によれば、原告の上記(1)の主張は失当であって、原告主張の取消事由4も理由がない。 5 取消事由5(本件第9発明と引用例1記載の発明との一致点の認定の誤り及び相違点の看過)について (1) 原告は、本件第9発明における「第3の選択制御手段」は、二つのモードを切り換えるものではなく、三つのモードを切り換えるものであるから、決定が本件第9発明と引用例1記載の発明との一致点として認定した「二つのモードを選択する第3の選択制御手段」は、本件第9発明における「第3の選択制御手段」に相当しない旨の主張をしている。 そこで、このモードの選択切換に関する決定の認定、判断をみると、決定は、本件第9発明と引用例1記載の発明との一致点としては、「第3の選択制御手段」を、第1モードと第2モードとの2つのモードを選択するものと認定する(決定書21頁4行ないし7行)と共に、相違点として、本件第9発明では、TVチューナ部を有し、第3モード選択時には、TVチューナ部からの映像及び音声信号が映像記録再生部に入力されるように選択切換しているのに対して、引用例1記載の発明では、TVチューナ部を有していない点を認定している(決定書22頁13行ないし20行)のであるから、決定は、TVチューナ部の有無の他に、当然に、TVチューナ部の存在を前提とする「第3モード及びその選択切換」の有無も、本件第9発明と引用例1記載の発明との相違点として指摘していることが明らかである。 そして、決定は、この相違点の検討として、引用例3には、ビデオカメラ14に加えて、本件第9発明の「TVチューナ部」に相当する機器を設け、放送信号をビデオレコーダ12で録画・再生し、録画されるビデオ信号をTV受像器13でモニタする第4モードにおいて、前記の「TVチューナ部」に相当する機器の出力がビデオレコーダ12に入力されるように選択切換する技術が記載されている旨の認定を行い(決定書23頁4行ないし24頁6行)、この技術を引用例1記載の発明に適用して、第3モード選択時に映像記録再生部及びTVチューナ部に電源を供給すると共に、TVチューナ部からの映像及び音声信号が映像記録再生部に入力されるべく選択切換するようにすることは、当業者が容易になし得たことと認められる旨の判断を行っているのである(決定書24頁6行ないし12行)。 以上のとおり、決定は、引用例1には、第1、第2モード及びその選択切換は存在するが、第3モードであるTVチューナ部及びその選択切換が無いことを相違点とした上で、その判断をしていることが認められるのであり、決定が一致点として認定した上記の「第3の選択制御手段」は、「モードの選択切換手段」を意味するものであることは、容易に理解することができる。 したがって、決定が一致点として認定した「第3の選択制御手段」が、本件第9発明においては三つのモードを切り換えるものである意味として用いられているとしても、決定がその上位概念である「モードの選択切換手段」との意味として一致点を認定したことは明らかであるから、決定が一致点の認定を誤ったとまではいうことはできないし、さらに、相違点として上記のとおり認定した上で、判断を行っているのであるから、決定には、相違点についての看過もないものと認められる。 (2) 以上によれば、原告の上記(1)の主張は失当であって、原告主張の取消事由5も理由がない。 6 結論 以上のとおり、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、その他決定にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。 よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 永井紀昭 |
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裁判官 | 塩月秀平 |
裁判官 | 橋本英史 |