審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成17ワ11007不当利得返還等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成16ワ26092特許権侵害差止請求事件 | 判例 | 特許 |
平成17行ケ10175特許取消決定取消請求参加事件 | 判例 | 特許 |
平成15ワ20874損害賠償請求事件 | 判例 | 特許 |
平成12ワ20029特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 技術的範囲 / 発明の詳細な説明 / 実施料相当額 / 参酌 / 実施 / 権原 / 構成要件 / 差止請求(差止) / 侵害 / 損害額 / 実施料 / 請求の範囲 / |
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事件 |
平成
10年
(ワ)
6517号
特許権侵害差止等請求事件
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原告 松下電送システム株式会社右代表者代表取締役 【A】 右訴訟代理人弁護士 小原望 同 東谷宏幸右訴訟復代理人弁護士 岡澤成彦 同 高橋建嗣右補佐人弁理士 【B】 同 【C】 被告 オリンパス光学工業株式会社右代表者代表取締役 【D】 被告 セイコーインスツルメンツ株式会社 右代表者代表取締役 【E】 右両名訴訟代理人弁護士 古城春実右両名補佐人弁理士 【F】 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2000/10/30 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
一 原告の請求をいずれも棄却する。 二 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
一 被告らは、別紙被告物件目録一、二記載の物件を製造、販売、貸し渡し、販売若しくは貸渡しのために展示、広告してはならない。 二 被告らは、その占有する別紙被告物件目録一、二記載の物件を廃棄せよ。 三 被告オリンパス光学工業株式会社は、原告に対し、金二億円及びこれに対する平成九年一二月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 四 被告セイコーインスツルメンツ株式会社は、原告に対し、金二億円及びこれに対する平成九年一二月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 |
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事案の概要
本件は、別紙被告物件目録一、二記載の物件(以下、同目録一、二記載の物件を順に「被告物件一」、「被告物件二」といい、両者をあわせて「被告各物件」という。)を製造、販売等する被告らの行為が原告の有する特許権を侵害するとして、原告が、被告らに対して、被告各物件の製造等の差止めと損害賠償を求めた事案である。 一 前提となる事実(当事者間に争いがない。) 1 原告の有する特許権 原告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その発明を「本件発明」という。)を有している。 (一) 特許番号 第一八八四七四五号 (二) 発明の名称 カラー画像記録装置 (三) 出願日 昭和五六年一月二八日 (四) 登録日 平成六年一一月一〇日 (五) 特許請求の範囲 手続補正後の明細書(以下「本件明細書」という。)記載のとおりである。 所定の搬送経路に沿って記録媒体を往復又は循環して搬送する搬送手段と、前記記録媒体の搬送路中に設けられ前記記録媒体上の画像記録領域内に記録画像に対応する潜像を形成するとともに前記記録媒体上の画像記録領域外に連続的に略等間隔のレジストマークに対応する潜像を形成する潜像形成手段と、この潜像形成手段により前記記録媒体上に形成された前記記録画像に対応する潜像をそれぞれ異なる色で前記レジストマークに対応する潜像を単一色で各々可視像化する複数の現像手段と、可視像化された前記レジストマークを検出する検知手段と、前記搬送手段を作動し前記記録媒体の同一記録領域に潜像形成と現像とを各色毎に複数回繰り返すことにより合成カラー画像を形成する記録制御手段と、この記録制御手段により各色の潜像形成を行なうに際し、前記検知手段による前記レジストマークの検出に基づいて第2色目以降の最初の潜像形成を開始させるとともに、前記検知手段による隣接した前記レジストマークの検出結果に基づく前記レジストマークの間隔に基づいて前記記録媒体の搬送方向における各色の潜像形成の記録位置合わせを行なうタイミング制御手段とを有し、前記レジストマークに対応する潜像の形成を第1色目に記録する潜像の形成と同時に行うことを特徴とするカラー画像記録装置。 2 本件発明の構成要件 本件発明を構成要件に分説すると、次のとおりである。 (一) 所定の搬送経路に沿って記録媒体を往復又は循環して搬送する搬送手段 (二) 前記記録媒体の搬送路中に設けられ前記記録媒体上の画像記録領域内に記録画像に対応する潜像を形成するとともに前記記録媒体上の画像記録領域外に連続的に略等間隔のレジストマークに対応する潜像を形成する潜像形成手段 (三) この潜像形成手段により前記記録媒体上に形成された前記記録画像に対応する潜像をそれぞれ異なる色で前記レジストマークに対応する潜像を単一色で各々可視像化する複数の現像手段 (四) 可視像化された前記レジストマークを検出する検知手段 (五) 前記搬送手段を作動し前記記録媒体の同一記録領域に潜像形成と現像とを各色毎に複数回繰り返すことにより合成カラー画像を形成する記録制御手段 (六) この記録制御手段により各色の潜像形成を行うに際し、前記検知手段による前記レジストマークの検出に基づいて第二色目以降の最初の潜像形成を開始させるとともに、 (七) 前記検知手段による隣接した前記レジストマークの検出結果に基づく前記レジストマークの間隔に基づいて前記記録媒体の搬送方向における各色の潜像形成の記録位置合わせを行なうタイミング制御手段とを有し、 (八) 前記レジストマークに対応する潜像の形成を第一色目に記録する潜像の形成と同時に行うよう 構成されている。 3 被告らの行為 被告オリンパス光学工業株式会社(以下「被告オリンパス」という。)は、静電記録方式のカラー画像記録装置を製造して、被告セイコーインスツルメンツ株式会社(以下「被告セイコーインスツルメンツ」という。)に販売し、被告セイコーインスツルメンツは、右カラー画像記録装置を組み込んだ被告各物件を製造、販売した。 4 被告各物件の構成及び本件発明の構成要件の充足性 被告各物件の構成は、別紙被告物件目録一、二記載のとおりであり、本件発明の構成要件(七)を除き、その余を充足する。 二 主要な争点 1 構成要件(七)の充足性 (原告の主張) 被告各物件は、以下のとおり、本件発明の構成要件(七)を充足する。 (一) 構成要件(七)の解釈 本件発明は、記録媒体が記録部に対して繰り返し往復又は循環されてカラー画像が得られるカラー画像記録装置において、A1やA0サイズの大きな記録紙を扱う場合に記録紙の伸縮に伴う色ずれを防止し、鮮明にしてかつ色ずれの少ないカラー画像を得ることができるカラー画像記録装置を提供するという技術課題に関し、色合わせの指標となるレジストマークを記録媒体上の画像記録領域外に連続的かつ略等間隔に形成し、このレジストマークの間隔を検出することにより記録媒体の伸縮度合いを知り、これに基づいて、記録媒体の搬送方向における記録位置合わせを行うことを技術課題解決手段とするものである。その際、各レジストマーク間隔に対応する箇所(以下「マーク対応エリア」ということがある。)の一つ一つにおいて生ずる画像ラインの微小な位置ずれの解消を課題としているのではなく、 微小な位置ずれが累積することにより記録紙末端部で実用に耐えない大きな色ずれが生じてしまうのを防止すること(巨視的観点からみた色ずれ防止)を課題としており、本件発明の構成要件(七)のタイミング制御手段による制御の目的も右のような大きな色ずれを防止することにある。 このような本件発明の右課題解決原理に照らせば、本件発明の構成要件(七)の「レジストマークの間隔に基づいて記録位置合わせを行うタイミング制御手段」とは、記録媒体の画像領域全長に対応するように形成された「連続的に略等間隔のレジストマーク」の各間隔を順次検出することにより得られる「マーク対応エリア」の伸縮度合いを示す情報に基づいて各「マーク対応エリア」毎に各色の画像ライン間の記録位置合わせを行うものであると解すべきである。 本件明細書の実施例に記載されたタイミング制御の態様は、タイミング制御手段が個々の「マーク対応エリア」において記録位置合わせを行う際の具体的方法の一例を示すにすぎない。また、本件発明の出願当時の技術水準に照らし、前記課題解決のために、「記録媒体上の画像記録領域外に連続的に略等間隔のレジストマークに対応する潜像を形成する」という構成を採用したことは、きわめて斬新でかつ画期的な技術であったことに照らすならば、それ自体右課題解決のための具体的かつ画期的技術の開示というに十分である。 本件発明の構成要件(七)の「レジストマークの間隔に基づいて記録位置合わせを行うタイミング制御」の意義を、本件明細書の実施例によって、「記録媒体の各レジストマーク間隔の計測値に基づいてライン間の間隔を調整しライン単位での記録位置合わせを行う制御」であると限定すべきではない。 (二) 構成要件(七)と被告各物件との対比 (1) 被告物件一について 被告物件一は、先行するタイミングマーカの検出と、次のタイミングマーカの検出との間隔が、「標準の間隔」と比較して、短いか、同一か、長いか(マーク対応エリアの伸縮度合い)を把握し、右のようなタイミングマーカ間隔に基づく記録紙の伸縮度合いを示す情報に基づいて、画像ライン記録の態様を変えて、記録位置合わせを行っている。 具体的には、被告物件一は、第二色目画像の第一周期の第1ライン位置を有効な最初のタイミングマーカの位置(第一色目画像の第一周期の第1ライン位置。基準点)と合致させ(原点一致)、第二色目画像のライン位置を示すラインナンバに記録紙の搬送方向の座標上でのスケールとしての役割を果たさせ、各タイミングマーカの前記座標上の位置を右ラインナンバによって検出している。 そして、この検出によって、基準点からの各タイミングマーカの位置を逐次知り(各タイミングマーカ間隔を知り)、記録紙の伸縮度合いを記録位置の補正前にあらかじめ認識し、これに基づいて、ライン追加やライン省略の補正を伴う記録位置合わせを行っている。被告物件一は、tnの時点でライン記録信号のナンバーNが認識されると、t0(基準点)に対応する位置とtnに対応する位置との間隔nM(64+64+・・・+N±ラインの増減分)がわかるので、これと基準間隔nS(64+64+・・・)にラインの増減分を加えたものとを比較することにより、記録紙の伸縮度合いを知り、その結果に基づいて、@「nM」と「nS±ラインの増減分」との差が二ライン分以内の場合には標準のライン形成を、A差が二ライン分を超える縮みがあったときには一ラインを省略し、B差が二ライン分を超える伸びがあったときにはダミーラインを一ライン追加する、という記録位置補正を行っている。 以上から、被告物件一は、連続的に等間隔に形成したタイミングマーカ間の空間的隔たりについての情報、すなわち対応する各「マーク対応エリア」の伸縮度合いを示す情報に基づいて、画像ライン記録の態様を変えて記録位置合わせを行うものである、と認められるので、構成要件(七)の「レジストマークの間隔に基づいて記録位置合わせを行うタイミング制御手段」を備えているといえる。 (2) 被告物件二について 被告物件二は、タイミングマーカの検出毎に、ライン記録信号の状態を示す情報(ライン記録信号のナンバ及びその記録期間、マージン期間、カウントアップ期間)によりタイミングマーカの間隔を認識するとともに、これと「標準の間隔」との長短比較によって、記録紙の伸縮度合い(マーク対応エリアの伸縮度合い)を把握し、右のようなタイミングマーカ間隔に基づく記録紙の伸縮度合いを示す情報に基づいて、マージン間隔T2分以上、カウントアップ間隔T3分以上の色ずれが生じないように、第二色目画像の第1ライン位置を第一色目画像の第1ライン位置に合致させるように、記録位置合わせの補正を行っている。 具体的には、被告物件二については、@記録紙が小さく縮んだ場合(通常考えられる程度の縮み)、A記録紙が大きく縮んだ場合、B記録紙が小さく伸びた場合(通常考えられる程度の伸び)及びC記録紙が大きく伸びた場合の記録位置合わせが考えられるが、@では、タイミングマーカ間の間隔M(t0とt1との間隔、t1とt2との間隔・・・)が認識され、これと基準間隔Sとの比較により、その差(S-M)がマージン間隔T2以下の場合には、タイミングマーカ検知信号をトリガー信号として次の記録周期のライン記録を開始し、次の周期の第1ラインを第一色目の第1ラインに一致させるよう補正が行われ、Bでは、マーク間の間隔M(t0とt1との間隔、t1とt2との間隔・・・)が認識され、これと基準間隔Sとの比較により、その差(M-S)がカウントアップ間隔T3以下であれば、タイミングマーカ検出信号をトリガー信号として、次の周期の第1ラインを第一色目の第1ラインに一致させるよう補正が行われる(AとCについては、位置ずれ補正をしても位置ずれ量は時間の経過とともに増大し、適正な位置ずれ補正が行われなくなり、この場合の記録位置制御は、緊急避難的な意味を持つ例外的な処理となるので、考慮する必要はない。)。 以上から、被告物件二は、連続的に等間隔に形成されたタイミングマーカ間の空間的隔たりについての情報、すなわち、対応する各「マーク対応エリア」の伸縮度合いを示す情報に基づいて、記録媒体の伸縮度合いに応じた記録位置合わせ(記録媒体の伸縮情報に基づく各種トリガー信号により画像ラインの記録周期開始位置を変化させ画像ライン間のずれが所定範囲に収まるようにする記録位置合わせ)を行うものである、と認められるので、構成要件(七)の「レジストマークの間隔に基づいて記録位置合わせを行うタイミング制御手段」を備えているといえる。 (被告らの反論) 被告各物件は、以下のとおり、本件発明の構成要件(七)を充足しない。 (一) 構成要件(七)の解釈 構成要件(七)には、「前記検知手段による隣接した前記レジストマークの検出結果に基づく前記レジストマークの間隔に基づいて前記記録媒体の搬送方向における各色の潜像形成の記録位置合わせを行なうタイミング制御手段とを有し、」と記載されている。右記載中の「前記レジストマークの間隔」は、「隣接した前記レジストマークの検出結果」に基づくものであるから、「隣接したレジストマーク同士の間隔」を意味している。したがって、構成要件(七)は、記録位置合わせのためのタイミング制御手段が、「隣接したレジストマークの間隔」に基づいて行われることを要求していると解するのが自然な解釈である。 構成要件(七)を右のように解釈することは、隣接する二個のレジストマーク同士の間隔をPGパルス数Nで測って記録位置合わせを行う制御態様のみを実施例として示している本件明細書の記載にも合致する。すなわち、本件明細書の記載(発明の詳細な説明、実施例[8欄28行、11欄10行ないし15行、同欄18ないし23行、12欄15行、13欄7及び8行])を参酌すると、レジストマークの間隔を検出するとは、レジストマーク検知手段とカウンタによって、隣接するレジストマークの距離を、記録紙の一定搬送距離ごとに発せられるPGパルスを目盛りとして用いて実測することを指していることが明らかである。このように、PGパルス数によるレジストマーク間隔の計測(実測)の手段は、レジストマークの間隔を検出する方法として本件明細書に開示された唯一のものであって、他の方法ないし手段を説明ないし示唆する記載は一切存在しない。同じく、本件明細書の記載(発明の詳細な説明、実施例[8欄8行ないし12行、同欄40行ないし9欄2行、11欄10ないし15行、同欄18ないし25行、同欄28ないし37行、同欄41行ないし12欄3行、同欄4ないし9行])を参酌すると、本件発明における「タイミング制御」は、検出されたレジストマーク間隔の実測値の大小に応じてライン単位の書き込みを行うタイミングパルスの間隔を調整するという制御、換言すればレジストマークの間隔に応じてライン間隔を増減するという制御を意味していることが明らかであり、右のような制御を行う手段が「タイミング制御手段」であると解される。本件明細書には、右以外のタイミング制御の態様、手段については記載も示唆もない以上、明細書に具体的に開示された右の手段に限定されるというべきである。 本件発明の特許請求の範囲の記載は、機能的ないし抽象的な表現をとっている以上、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌し、そこに開示された具体的な構成に示されている技術思想に基づいて発明の構成要件を解釈して、発明の技術的範囲を確定すべきである。 画像記録装置において、記録位置合わせのために記録紙に付けた印(マーク)を利用するという技術は、その出願当時すでに、例えば、米国特許第四〇〇七四八九号が存在したように、格別新規なものではないから、原告主張のように、 本件発明を出願当時、特に斬新なものとして技術的範囲を広く解釈する理由はない。 以上から、本件発明の構成要件(七)の「レジストマークの間隔に基づいてーー記録位置合わせを行うタイミング制御手段」とは、レジストマークの間隔の計測値(実測値)の大小に応じて静電記録ヘッドによる画像ラインの書き込み(記録)のタイミングを調整する(ライン間隔を増減させる)制御を行う手段であると解釈すべきである。 (二) 構成要件(七)と被告各物件の対比 (1) 被告物件一について 被告物件一のカラー画像記録装置は、以下のとおり、本件発明の構成要件(七)を充足しない。 すなわち、被告物件一のカラー画像記録装置は、「被告物件目録一」の二(二)(2)Aに記載されたとおり、ラインの記録を所定の間隔で行い、所定数(64ライン)のラインを記録している間(一記録周期中)に次のタイミングマーカが検出されるか否かに応じて、ラインを省略し又はダミーのラインを追加するといった記録位置合わせを行っている。記録紙が伸びたとき(記録紙が所定距離送られても次のタイミングマーカが検出されないとき)にはラインを追加し、記録紙が縮んだとき(記録紙が所定距離送られる前に次のタイミングマーカが検出されたとき)にはラインを省略することによって記録位置合わせを行っている。タイミングマーカを検出してから、64ラインを記録している間、後続タイミングマーカは未検出であり、装置は当該タイミングマーカと後続のタイミングマーカの間隔を認識していない。このように、被告物件一は、タイミングマーカを検出する毎に、タイミングマーカ検出と第1ラインとの乖離をなくす方向へ補正をする制御を行っている。 このような制御は、本件発明の構成要件(七)にいう「レジストマークの間隔に基づく」タイミング制御ではない。 原告は、被告物件一について、基準点(t0)からのタイミングマーカの間隔(距離)が認識されることにより、各タイミングマーカの間隔に基づく記録位置補正がされている旨主張するが、失当である。 すなわち、被告物件一では、タイミングマーカ検出時点におけるライン記録信号のナンバNは認識しているが、そのNの数値からタイミングマーカ間隔を認知するようなことはしていない。エンコーダパルスをカウントするカウンタは、一記録周期が終わる毎にリセットされるし、検出したタイミングマーカの個数をカウントするカウンタも存在しないので、被告物件一では、何周期目の記録が行われているかは認識され得ない。基準点(t0)からのタイミングマーカの間隔(距離)が認識されるためには、タイミングマーカが検出された時点で「64+64+64・・・+N±ラインの増減数」という計算によって基準点とタイミングマーカとの間隔を認識することが必要となる。そのためには、@タイミングマーカ検出時点が何番目の記録周期であるか、Aそれまでに何ラインの増減が行われたか、を認識し記憶する必要が生ずるが、被告物件一には、右のとおり、@を認識する手段も、Aのラインの増減数を記憶する記憶手段もないし、ライン数の加算・減算を行ったり、書き込まれたライン総数をカウントしたりする手段も存在しない。よって、被告物件一においては、原告の主張するような基準点t0とタイミングマーカtnとの間隔は認識され得ない。 しかも、原告の主張は、被告物件一において、第二色目の第1ライン位置を有効な最初のタイミングマーカの対応位置(第一色目画像の第一周期の第1ライン位置)に合致させる(原点一致)ことが前提となるが、被告物件一では、そのような前提が成立しない。被告物件一では、第二色目の各周期の第1ラインの書き出しは、タイミングマーカ検出に同期するのではなく、タイミングマーカ検出直後のエンコーダパルスに同期するから、第一色目から第二色目の記録にかけて紙に伸縮がなく、かつ、この間にエンコーダパルスと紙の搬送距離とが寸分のずれなく対応しない限り、原点は一致しない。 以上のとおり、被告物件一のカラー画像記録装置は、記録位置補正の制御が「マークの間隔に基づいて」行われているとはいえないため、本件発明の構成要件(七)を充足しない。 (2) 被告物件二について 被告物件二のカラー画像記録装置は、以下のとおり、本件発明の構成要件(七)を充足しない。 すなわち、被告物件二のカラー画像記録装置における記録位置合わせの態様は、「被告物件目録二」の二(二)(2)Aに記載されたとおり、ラインの記録を所定の間隔で行い、所定数(32ライン)のラインを記録している間(一記録周期中)に次のタイミングマーカが検出される否かに応じて、カウントアップ信号、ライン記録終了信号、タイミングマーカ検出信号のいずれかをトリガー信号として、 次の記録周期のライン記録を開始するものである。その際、記録実行時にはその記録が行われる領域の記録紙の伸縮度合いを知るために必要な後続のタイミングマーカは未検出であって、装置は当該タイミングマーカと後続のタイミングマーカの間隔を認識することはない。被告物件二は、タイミングマーカの検出毎に第1ラインとタイミングマーカとの乖離を少なくする方向で第1ラインの記録開始時点を補正する制御を行っている。 このような制御は、本件発明の構成要件(七)にいう「レジストマークの間隔に基づく」タイミング制御でもない。 原告は、被告物件二について、記録紙の伸縮が、@記録紙が小さく縮んだ場合(通常考えられる程度の縮み)、B記録紙が小さく伸びた場合(通常考えられる程度の伸び)、各タイミングマーカの間隔に基づく記録位置補正がされている旨主張するが、以下のとおり、失当である。 被告物件二においては、タイミングマーカの間隔を認識し、その認識結果に基づいて記録位置を補正するという制御は行われておらず、そこで行われているのは、タイミングマーカの検出時点が「記録期間T1」の領域内なのか、「マージン期間T2」の領域内なのか、「カウントアップ期間T3」の領域内なのかという判断だけであり、それ以上のことは把握していないので、タイミングマーカの間隔を知ることはできない。被告物件二には、タイミングマーカの間隔を知るために必要な、経過時間を認識し、計算を行うという手段が存在しない。しかも、原告の主張は、AとCの場合を全く無視しており、妥当でない。また、被告物件二において、タイミングマーカと各記録周期の第1ラインが一致(原点一致)するとの誤った前提による点でも、失当である。被告物件二では、第1ラインを書き込むトリガーがマージン期間T2及びカウントアップ期間T3の中にある場合を除きタイミングマーカ検出と各記録周期の第1ラインは一致しない。 したがって、被告物件二のカラー画像記録装置は、記録位置補正の制御が「レジストマークの間隔に基づいて」行われているとはいえないため、本件発明の構成要件(七)を充足しない。 2 損害額 (原告の主張) 被告オリンパスは、昭和六二年一〇月より被告物件一用のカラー画像記録装置の製造販売を開始し、平成六年二月より、被告物件二用のカラー画像記録装置の製造販売を開始した。 被告セイコーインスツルメンツは、被告オリンパスから、被告物件一については昭和六二年一〇月より、被告物件二については平成六年二月より、カラー画像記録装置の供給を受け、これを被告各物件に組み込んで同物件を製造販売している。 被告セイコーインスツルメンツによるカラー静電プロッタの平成四年ないし同九年までの売上台数は八一〇台である。右期間に販売された総売上額は、七四億五〇〇〇万円であり、一台当たりの平均販売価格は約九一九万円である。 被告オリンパスの被告セイコーインスツルメンツに対するカラー画像記録装置の販売価格は、プロッタ業界での業界標準的な販売かけ率によれば、被告セイコーインスツルメンツの実販売価格の約四割程度と考えられるので、被告オリンパスの被告セイコーインスツルメンツへの販売価格は一台につき少なくとも三六七万円は下らない(9,190,000×0・4)。被告オリンパスは本件発明の出願公告以後の平成四年ないし同九年までの間に少なくとも二九億七二七〇円の売り上げを上げていたといえる(3,760,000×810)。 本件発明の解決課題である記録時の色ずれ防止は、カラー静電プロッタにおいては必要不可欠の技術であり、この技術なしでは、カラー静電プロッタは実用的な製品たり得ない。また、被告各物件における本件発明の使用率はほぼ一〇〇パーセントに近い。そうすると、本件特許権の実施料率は、一〇パーセントを下らない。 したがって、原告は、被告オリンパスの被告各物件用のカラー画像記録装置の製造販売により、同被告の平成四年ないし同九年までの売上額である二九億七二七〇万円の一〇パーセントに相当する二億九七二七万円の実施料相当額の損害を、また、被告セイコーインスツルメンツの被告各物件の製造販売により、同被告の同期間の売上額である七四億五〇〇〇万円の一〇パーセントに相当する七億四五〇〇万円の実施料相当額の損害を被った。 よって、原告は、被告らそれぞれに対し、右各内金の二億円の各支払を請求する。 (被告らの反論) 原告の主張は争う。 被告オリンパスによる被告セイコーインスツルメンツに対する、被告物件一用のカラー画像記録装置の販売開始時期は、昭和六三年四月であり、同セイコーインスツルメンツは、右時期より少し遅れて同年中に被告物件一の販売を開始した(被告物件二の販売時期については争わない。)。 被告セイコーインスツルメンツによる被告各物件の販売台数は、合計五六九台で、その売上総額は概算で三八億円である。被告オリンパスが被告セイコーインスツルメンツに販売した被告各物件用のカラー画像記録装置は、販売台数が五六九台で、その売上総額は約一三億九〇〇〇万円である。 被告各物件における本件発明の使用率が一〇〇パーセントに近いとはいえない。実施料率が、一〇パーセントを下らないとの主張も認められない。 |
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争点に対する判断
一 構成要件(七)の充足性について 1 本件発明の構成要件(七)の解釈 本件発明の特許請求の範囲の構成要件(七)に係る部分は、「前記検知手段による隣接した前記レジストマークの検出結果に基づく前記レジストマークの間隔に基づいて前記記録媒体の搬送方向における各色の潜像形成の記録位置合わせを行なうタイミング制御手段とを有し、」と記載されている。 構成要件(七)の「前記レジストマークの間隔に基づいてーータイミング制御手段」の意義は、「隣接した前記レジストマーク」が検出され、その結果、「前記レジストマークの間隔」に基づいて「タイミング制御」を行うと記載されているのであるから、字義どおり、隣り合った位置関係にあるレジストマーク間の距離を認識し、これを基礎にして行うタイミング制御手段という趣旨であることは明らかである。 これに対して、原告は、構成要件(七)におけるタイミング制御は、記録媒体の画像領域全長に対応するように形成された「連続的に略等間隔のレジストマーク」の各間隔を順次検出することにより得られる「マーク対応エリア」の伸縮度合いを示す情報に基づいて各「マーク対応エリア」毎に各色の画像ライン間の記録位置合わせを行うものと解すべきであると主張する。 しかし、特許請求の範囲の構成要件(七)に係る部分の記載が前記のとおり二義を許さないほど明確であること、及び本件明細書の実施例として、レジストマークの間隔をカウンタにより実測し、この実測した間隔を基に、対応する記録ラインの間隔を制御するもののみが記載され、その他の方法を示唆する記載は全くないこと、当初明細書(原出願)における特許請求の範囲又は発明の詳細な説明のいずれにも、レジストマークの間隔を実測しないものについての示唆がないことに照らすならば、原告の右主張を採用することはできない。 2 本件発明の構成要件(七)と被告物件一との対比 被告物件一は、「被告物件目録一」の二(二)(2)Aに記載されたとおり、記録紙に伸縮が生じた場合、64ラインの記録を一周期とする各周期の何番目のライン記録中にタイミングマーカが検出されるかに応じて、(@及びB)記録位置合わせの補正をしなかったり、(A)各周期の最終ラインを間引いて記録位置合わせの補正をしたり、(C)各周期の最終ラインの次にダミーラインを挿入して記録位置合わせの補正をしたりする(当事者間に争いがない。)。 このように、被告物件一においては、各記録周期の第1ラインから数えて何番目のライン記録中にタイミングマーカが検出されているかによって、ラインを間引いたり、ダミーラインを挿入したりする手段が採用されているが、先行のタイミングマーカと直後のタイミングマーカの間隔が認識されることはない。仮に、被告物件一において、各周期の第1ライン記録がタイミングマーカの検出と同時に行われるのであれば、第1ラインから数えて何番目のライン記録中にタイミングマーカが検出されるかに関する情報は、タイミングマーカ同士の間隔に関する情報であると解する余地もなくはないが、右のとおり、被告物件一において、第1ライン記録は、タイミングマーカの検出と同時に行われるものではないから、この点からも、タイミングマーカの間隔を認識しているとみることはできない。 したがって、被告物件一は、隣り合った位置関係にあるタイミングマーカ同士の間隔を認識し、これを反映させて、タイミング制御を行っていると認める余地はない。 原告は、被告物件一は各タイミングマーカの間隔を認識していると主張するが、以下のとおり採用できない。 まず、被告物件一においては、第二色目画像の第一周期の第1ライン位置を有効な最初のタイミングマーカの対応位置(第一色目画像の第一周期の第1ライン位置)に合致させ(原点一致)、基準点からの各タイミングマーカの位置を逐次知るという構成を採っていない。すなわち、「被告物件目録一」の二(二)(1)@@に記載されたとおり、被告物件一において、各ラインの書き出しは、タイミングマーカ検出に同期するのではなく、タイミングマーカ検出直後のエンコーダパルスに同期しているが、第一色目から第二色目の記録にかけて、記録紙に僅かであっても伸縮が生じている通常の場合を想定すると、そのような場合、タイミングマーカを検出して以降、エンコーダパルスに同期して第二色目画像の第一周期の第1ラインが記録されるまでの間に、伸縮分が加算または減算される結果、第二色目画像の第一周期の第1ライン位置が第一色目画像の第一周期の第1ライン位置に一致しないことになる。したがって、原告は、被告物件一において、原点一致という構成を採っているとの前提で、各タイミングマーカ間隔を認識していると主張するが、原告の右主張は、前提において採用できない。 また、仮に、右の原点一致が認められたとしても、タイミングマーカが検出された時点で「64+64+64・・・+N±ラインの増減数」という計算によって基準点からのタイミングマーカの間隔を知るためには、当該タイミングマーカ検出時点が何番目の記録周期であるか、それまでに合計何ラインの増減が行われたか等の履歴情報を認識し記憶した上で、それらの数値を演算することが必要となるが、被告物件一にそのような機能、手段が備わっていることを認めるに足りる証拠がない。 したがって、この点からも、各タイミングマーカの間隔を認識しているとの原告の主張は、採用できない。 以上のとおり、被告物件一は、記録位置補正のタイミング制御が、隣り合った位置関係にあるレジストマーク同士の間隔を認識し、これを反映させて、行われているとはいえないので、本件発明の構成要件(七)を充足しない。 3 本件発明の構成要件(七)と被告物件二との対比 被告物件二は、「被告物件目録二」の二(二)(2)Aに記載されたとおり、32ラインの記録を一周期とする各周期の「最終ライン記録中」「最終ライン記録後のマージン期間中」「同マージン期間経過後」のいずれのタイミングでタイミングマーカが検出されるかに応じて、最終ライン記録後のマージン期間の長さを変化させることにより、記録位置補正の制御を行っている。すなわち、32ラインの記録の終了後に、(@)マージン期間T2の範囲内で記録紙が小さく縮んだ場合は、後続のタイミングマーカの検知信号をトリガーとして、次の周期の第1ラインの記録を開始し、(A)記録紙が大きく縮んで、記録ラインの記録中にタイミングマーカが検出された場合は、第32ラインまで記録を終了し、ライン記録信号をトリガーとして、マージン期間T2なしで、次の周期の第1ラインの記録を開始し、(B(a))記録紙が伸びて、後続のマージン期間T2内にタイミングマーカが検出されず、かつ、カウントアップ期間T3を越えるような場合にはカウントアップ信号をトリガーとして、次の周期の第1ラインの記録を開始し、(B(b))記録紙が伸びて、T3の範囲内で後続のタイミングマーカが検出された場合には、タイミングマーカの検知信号をトリガーとして、次の周期の第1ラインの記録を開始することとされている。 このように、被告物件二においては、32ラインのラインを記録している間に、次のタイミングマーカが検出される否かに応じて、カウントアップ信号、ライン記録終了信号、タイミングマーカ検出信号のいずれかをトリガー信号として、次の記録周期のライン記録を開始する手段が採用されているが、先行のタイミングマーカと直後のタイミングマーカの間隔が認識されることはない。また、被告物件二では、前記のA及びB(a)の場合に、タイミングマーカ検出と各記録周期の第1ラインは一致しないのであるから、隣り合った位置関係にあるタイミングマーカ同士の間隔を認識し、これを反映させて、タイミング制御を行っているといえないことは明らかである(原告は、右のA及びB(a)の場合については、緊急避難的な記録制御として考慮すべきでないと主張するが、構成要件の充足性について、このような観点で判断することはできず、採用の限りでない。)。したがって、被告物件二が、 右タイミングマーカの間隔を計測して、これに基づいてタイミング制御をしていることを認める余地はない。 以上のとおり、被告物件二は、記録位置補正のタイミング制御が、隣り合った位置関係にあるレジストマーク同士の間隔を認識し、これを反映させて、行われているとはいえないので、本件発明の構成要件(七)を充足しない。 二 よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は、いずれも理由がない。 |
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追加 | |
被告物件目録一(「カラー静電プロッタEP四○一○」)添付図面に示し以下に説明するカラー画像記録装置を内蔵したカラー静電プロッタ一図面の説明第l図は被告物件一の全体外観図第2図は被告物件一に内蔵されたカラー画像記録装置の概略構成図第3図はカラー画像記録装置の概略断面図第4図は静電記録へッド表面の概略図第5図はタイミングマーカを含む作図例第6図は記録動作のタイミングを示すタイミングチャート(平成一一年八月一八日付原告準備書面添付の第6図を用いた。)第l図ないし第5図において、lは静電記録紙、2は用紙ロール、3はDCモータ、4は静電記録ヘッド、5は記録紙を静電記録ヘッドに押し付けるローラ、 6a、6b、6c及び6dは現像器、7はポンプユニット、8は濃調器ユニット、 9a、9b、9c及び9dは現像液タンク、10a、10b、10c及び10dはコンクトナー、11は駆動ローラ、12はピンチローラ、13はモータ、14は記録紙の搬送につれて回転するローラ、15は記録紙の搬送距離を検出するロータリエンコーダ、16は駆動回路、17は制御回路、18は第1ラインの記録位置の上流側約三八oの位置から開始し四oピッチに形成されたタイミングマーカ(縦二o、横八o、マーカ間の間隔二o)、19はマークセンサ、20は吸取ローラ、21は針電極、22は補助電極、23はカラー画像、Cl及びC2は紙搬送方向の画像記録領域端(カット位置)二説明カラー画像記録装置は以下の(一)のaないしfを備え、記録制御手段及びタイミング制御手段により以下の(二)に記載する態様で記録及び記録位置補正がなされるように構成したことを特徴とする。 (一)aモータ13で駆動される駆動ローラ11及び用紙ロール2の軸に連結されたDCモータ3の回転により所定の搬送経路に沿って静電記録紙1(以下「記録紙1」という。)を往復して搬送する搬送手段b前記搬送路中に設けられ、搬送経路の横断方向に一oあたり一六本の密度で千鳥に配列された複数の針電極とこの針電極を挟むように配列された補助電極とから成り、記録紙1上にライン単位で、記録紙1の画像領域内に記録画像に対応する静電潜像を記録すると共に、前記記録紙1の画像領域外に連続的に等間隔に形成されたタイミングマーカに対応する静電潜像を記録する静電記録へッド4(以下「記録へッド4」という。)cポンプユニット7に収納された四台のポンプにより現像液タンク9a、9b、9c及び9dからブラック、シアン、マゼンダ及びイエローの各色の現像液をそれぞれ供給され、独立に上下動されて記録紙1に接触して、記録紙1上に記録された記録画像に対応する静電潜像をブラック、シアン、マゼンダ及びイエローの各色別に可視像化する(現像する)と共に、タイミングマーカに対応する静電潜像をブラックの色に可視像化する四本の現像器6a、6b、6c及び6dd記録ヘッド4の記録紙搬送方向上流側約三八oの位置に設けられ、記録紙1の片端に形成されたタイミングマーカを検知すると検知信号を発生するマークセンサ19e前記搬送手段を作動し記録紙1の同一画像領域に静電潜像の記録と現像とを各色毎に繰り返すことにより合成カラー画像を形成する記録制御手段f静電潜像を記録するタイミングを制御するタイミング制御手段(二)記録及び記録位置補正の態様(1)基本動作@最初のパス@記録画像の形成駆動モータ3を作動し駆動ローラ11を正転させて記録紙1を第3図の右側方向に搬送しながら、記録制御手段のデータ処理部でライン単位のデータに変換されて記憶された画像データを一ラインずつ読みだし、各ラインの静電潜像を記録ヘッド4によって記録紙の画像領域内に所定の記録周期(一六分の一oピッチ)で連続的に記録する。各ラインの静電潜像は、記録紙の搬送により現像器6a内の黒色現像液に接触して黒色画像として可視像化(現像)される。この動作を記録されるべき画像の全ラインの静電潜像形成(以下、記録ヘッドによる静電潜像の形成を「記録」、「記録」と現像とを一括して「画像記録」という。)と現像が終了するまで続けて行う。 各ラインは、記録紙の搬送距離に応じてロータリエンコーダが発するエンコーダパルス(実際には、エンコーダパルスの二分周パルスであるが、以下では、エンコーダパルスの二分周パルスを単に「エンコーダパルス」と呼ぶ。)に同期したライン記録信号にしたがって記録される。第6図に示すとおり、ライン記録信号の一周期(時間T)中には実際に記録を行っている時間T1と次のライン記録までのマージン(待ち時間)T2とがある。 Aタイミングマーカの形成前記@の動作と平行して、記録紙1の画像領域外の側端部(片端)に紙の搬送方向に等間隔(四o、64ライン相当)で縦二o、横八oの矩形マーク(タイミングマーカ)の静電潜像を形成し、現像器6aにより黒色画像として可視像化する。最初のタイミングマーカは、第5図に示すとおり、記録画像の第1ラインが記録されるべき位置より紙搬送方向上流側に約三八o(マークセンサ19と記録ヘッドとの間隔に相当)の位置を起点として記録される。 A第二パスないし第四パス第一パスの最終ラインの記録が終わり、吸取ローラ20を越える位置まで記録紙1を搬送した後、記録紙1を巻き戻し、前記@の@と同様の記録及び現像動作をシアン(第二パス)、マゼンダ(第三パス)、イエロー(第四パス)の順に繰り返し、同一記録領域に四色のカラーが合成されたカラー画像を形成する。 (2)記録位置合わせ第二パスないし第四のパスにおける記録位置合わせは、64ライン(タイミングマーカの一ピッチ四o相当)を一周期として、次のとおり行う。 @基本動作第一周期の第1ラインは、タイミングマーカ検出直後のエンコーダパルスに同期して記録し、第2ライン以降は、第1ラインに続けて所定間隔で印加されるエンコーダパルスに同期して第2ライン、第3ライン・・・第64ラインと順次記録していく。 記録紙に伸縮がなければ第一周期(64ライン)の記録が終わり、第64ライン目のライン記録信号のマージン期間T2の終了とほぼ同時にタイミングマーカが検知されるので、次のエンコーダパルスと同期して第二周期の第1ラインを記録し、以後同様に第2ライン・・・第64ラインと順次記録を続ける。これを第三周期、第四周期・・・と記録画像の全ラインの記録が終了するまで続ける。 A記録紙の伸縮があった場合(記録位置補正)@記録紙の縮みが2ライン分以内のとき(補正なし)先行するタイミングマーカに対応する最終の記録ライン又は第63ライン(第n周期の第64ライン又は第63ライン)の記録中に後続のタイミングマーカが検知されたときは、そのままエンコーダパルスに同期して最終ライン(第64ライン)まで記録を終わらせ、さらに続けて次の周期(第n+l周期)の第1ライン、 第2ライン・・・と記録を続ける。 A記録紙の縮みが2ライン分を超えるとき(1ライン削除)先行するタイミングマーカに対応する第62ライン以前の記録中に後続のタイミングマーカが検知されたとき(第n周期の第62ライン目の記録中に後続のタイミングマーカが検知されたとき)は、最終ライン(第64ライン)の記録のみをキャンセルし、第63ラインの記録終了直後のエンコーダパルスに同期して、後続のタイミングマーカに対応する第1ライン(第n+l周期の第1ライン)を記録し、 以後、第2ライン、第3ライン・・・と記録を続ける。 B記録紙の伸びが2ライン分以内のとき(補正なし)先行するタイミングマーカに対応する最終ライン(第n周期の第64ライン)の記録が終わると無条件で次の周期(第n+l周期)の第1ラインを記録し、以後、第2ライン、第3ライン・・・と記録を続ける。この第2ラインの記録終了より前に後続のタイミングマーカが検知されたときは、ライン補正を行わず、 そのまま第3ライン、第4ライン・・・と記録を続ける。 C記録紙の伸びが2ライン分を超えるとき(ダミーラインを1ライン追加)先行するタイミングマーカに対応する最終ライン(第n周期の第64ライン)の記録が終わると無条件で次の周期(第n+1周期)の第1ラインを記録し、以後、第2ライン、第3ライン・・・と記録を続ける。この第2ライン(第n+1周期)の記録が終わっても後続のタイミングマーカが検知されないときは、その周期の最終ライン(第64ライン)を記録した後、次の周期(第n+2周期)の第1ラインの画像データを一度だけコピーしてダミーラインとして記録し、以後、第1ライン、第2ライン・・・と記録を続ける。 第1図第2図第3図、第4図、第5図第6図被告物件目録二(「カラー静電プロッタEP四○二○」)添付図面に示し以下に説明するカラー画像記録装置を内蔵したカラー静電プロッタ一図面の説明第l図は被告物件二の全体外観図第2図は被告物件二に内蔵されたカラー画像記録装置の概略構成図第3図はカラー画像記録装置の概略断面図第4図は静電記録ヘッド表面の概略図第5図はタイミングマーカを含む作図例第6図は記録動作のタイミングを示すタイミングチャート第l図ないし第5図において、1は静電記録紙、2は用紙ロール、3はDCモータ、4は静電記録ヘッド、5は記録紙を静電記録ヘッドに押し付けるローラ、 6はロータリ現像器、7a、7b、7c及び7dは現像器、8はポンプユニット、 9は濃調器ユニット、10a、10b、10c及び10dは現像液タンク、11a、11b、11c及び11dはコンクトナー、12はロータリ現像器を回転させるモータ、13は駆動ローラ、14はピンチローラ、15はステップモータ、16は駆動回路、17は制御回路、18は第1ラインの記録位置から上流側約三〇oの位置から開始し二oピッチ(32ライン相当)に形成されたタイミングマーカ(縦一o、横四o、マーカ間の間隔一o)、・はタイミングマーカの形成に先立って形成される一四個の先行マーク、19(第3図においては19a、19b)はマークセンサ、20は吸取ローラ、21は針電極、22は補助電極、23はカラー画像、Cl、C2は紙搬送方向の画像記録領域端(カット位置)二説明カラー画像記録装置は以下の(一)aないしfを備え、記録制御手段及びタイミング制御手段により以下の(二)に記載する態様で記録及び記録位置補正がなされるように構成したことを特徴とする。 (一)aステップモータ15で駆動される駆動ローラ13の回転により所定の搬送経路に沿って静電記録紙1(以下「記録紙1」という。)を往復して搬送する搬送手段b前記搬送路中に設けられ、搬送経路の横断方向に一oあたり一六本の密度で千鳥に配列された複数の針電極とこの針電極を挟むように配列された補助電極とから成り、記録紙1上にライン単位で、記録紙1の画像領域内に記録画像に対応する静電潜像を記録すると共に、前記記録紙1の画像領域外に連続的に等間隔に形成されたタイミングマーカに対応する静電潜像を形成する静電記録ヘッド4(以下「記録へッド4」という。)cポンプユニット7に収納された四台のポンプにより現像液タンク10a、10b、10c及び10dからブラック、シアン、マゼンダ及びイエローの各色の現像液をそれぞれ供給され記録紙1に接触して記録紙1上の記録画像に対応する静電潜像をブラック、シアン、マゼンダ及びイエローの各色別に可視像化すると共に、タイミングマーカに対応する静電潜像をブラックの色に可視像化する四本の現像器7a、 7b、7c及び7dを有するロータリ現像器6d記録ヘッド4の記録紙搬送方向上流側約三〇oの位置に設けられ、記録紙1の片端に形成されたタイミングマーカを検知すると検知信号を発生するマークセンサ19e前記搬送手段を作動し記録紙1の同一画像領域に潜像形成と現像とを各色毎に繰り返すことにより合成カラー画像を形成する記録制御手段f潜像形成のタイミングを制御するタイミング制御手段(二)記録及び記録位置補正の態様(1)基本動作@最初のパス@記録画像形成ステップモータ15を作動し駆動ローラ13を正転させて記録紙1を第3図の右側方向に搬送しながら、記録制御手段のデータ処理部でライン単位のデータに変換されて記憶された画像データをライン単位で読み出し、各ラインの静電潜像を記録紙の記録ヘッド4によって記録紙の画像領域内に所定の記録周期(一六分の一oピッチ)で連続的に形成する。各ラインの静電潜像は、記録紙の搬送により現像器7a内の黒色現像液に接触して黒色画像として可視像化(現像)される。この動作を記録画像の全ラインの静電潜像形成と現像が終了するまで続けて行う(以下、記録ヘッド4による静電潜像形成を「記録」、「記録」と現像とを一括して「画像記録」という。)。 ライン記録信号は、所定のトリガー信号によって起動されてパルスジェネレータの発する基準パルス2パルス毎に2ラインを記録するようになっている。第6図に示すとおり、ライン記録信号の一周期Tの中には実際に記録を行っている時間T1と次のラインを記録するまでのマージン(待ち時間)T2がある。 Aタイミングマーカ形成前記@の記録画像形成と平行して、記録紙1の画像領域外の両側端部に紙搬送方向に等間隔(二oピッチ、32ライン相当)で縦一o、横四oの矩形マーク(タイミングマーカ18)の静電潜像を形成し、現像器7aにより黒色画像として可視像化する。第5図に示すとおり、後述するライン補正に使用される最初のタイミングマーカは、第一番目のラインの記録されるべき位置より紙搬送方向上流側に約三〇o(マークセンサ19と記録ヘッドとの間隔に相当する)の位置を起点として記録されるが、このマーカより以前に、記録紙1の反対側に形成される同様のマーカとの同時検出により記録紙の斜行を検出するための先行マーク・が一四個記録される。 A第二パスないし第四パス第一パスの最終ラインの記録が終わり、吸取ローラ20を越える位置まで記録紙1を搬送した後、記録紙1を巻き戻し、前記@@と同様に記録と現像をシアン(第二パス)、マゼンダ(第三パス)、イエロー(第四パス)の順に繰り返し、 同一記録領域に四色のカラーが合成されたカラー画像を形成する。 (2)記録位置合わせ第二パスないし第四パスにおけるライン記録位置含わせは、32ライン(タイミングマーカの一ピッチ二o相当)を一周期として、次のとおり行う。 @基本動作第一周期の第1ラインは、最初のタイミングマーカの検知信号をトリガーとして発せられるライン記録信号で記録し、第2ライン以降は、第1ラインに続いて所定間隔で発せられるライン記録信号で第2ライン、第3ライン・・・と順次記録していく。 記録紙に伸縮がなければ、第一周期(32ライン)の記録が終わり、第32ラインのマージンT2の終了とほぼ同時に後続のタイミングマーカが検知されるので、その検知信号をトリガーとして発せられるライン記録信号で第二周期の第1ラインを記録し、以後、第2ライン、第3ライン・・・第32ラインと順次記録を続ける。これを第三周期、第四周期・・・と記録画像の全ラインの記録が終わるまで続ける。 A記録紙の伸縮があった場合(ライン記録位置補正)@記録紙が小さく縮んだ場合(第32ライン記録後マージン減少)記録紙がわずかに縮むと、先行するタイミングマーカに対応する最終記録ライン(第n周期の第32ライン)の記録が終わり、そのマージン期間T2が終了する前、・2の時点で後続のタイミングマーカが検知されるので、そのタイミングマーカの検知信号をトリガーとして次の周期(第n+1周期)の第1ラインを記録し、以後、一定周期のライン記録信号で第2ライン、第3ライン・・・と記録を続ける。 A記録紙が大きく縮んだ場合(第32ライン記録後マージンなし)記録紙が大きく縮むと、先行するタイミングマーカに対応する記録ライン(例えば第n周期の第32ライン)の記録中(T1期間中)に後続のタイミングマーカが検知されるので、そのラインの記録終了後、ライン記録終了信号をトリガーとしてマージンT2なしで次の周期(第n+1周期)の第1ラインを記録し、以後、一定周期のライン記録信号で第2ライン、第3ライン・・・・と記録を続ける。なお、第31ライン以前のライン記録中に後続のタイミングマーカが検知された場合でも、同様に第32ラインまでは記録を終了し、ライン記録終了信号をトリガーとしてマージンT2なしで次の周期(第n+1周期)の第1ラインを記録し、以後一定周期のライン記録信号で第2ライン、第3ライン・・・と記録を続ける。 B記録紙が伸びた場合(1ライン分の空白が生じる前に次周期の第1ラインの記録開始)記録紙が伸びると、先行するタイミングマーカに対応する最終ライン(第n周期の第32ライン)の記録が終了した後、通常のマージン期間(T2)内にタイミングマーカが検知されないので、第32ラインの記録途中に常に起動されるカウンタのカウントアップ信号(1ライン分の空白ができる前にカウントアップするように設定されている。)をトリガーとして発せられるライン記録信号で次の周期(第n+1周期)の第1ラインを記録し、以後、一定周期で第2ライン、第3ライン・・・と記録を続ける。 なお、通常のマージン期間(T2)経過後で、且つカウンタのカウントアップよりも前の期間(T3)に後続のタイミングマーカが検知された場合には、そのタイミングマーカの検知信号をトリガーとして発せられるライン記録信号で次の周期(第n+l周期)の第1ラインが記録され、以後、一定周期で第2ライン、第3ライン・・・と記録が続けられる。 第1図第2図第3図、第4図、第5図第6図 |
裁判長裁判官 | 飯村敏明 |
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裁判官 | 沖中康人 |
裁判官 | 石村智 |