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関連ワード 冒認出願(冒認) /  特許を受ける権利 /  発明者 /  新規性 /  新規性喪失(新規性の喪失) /  出願公開 /  契約の成否 /  侵害 /  不法行為(民法709条) /  変更 / 
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事件 平成 12年 (ネ) 2905号 損害賠償請求控訴事件
控訴人 A
訴訟代理人弁護士 松本勝
被控訴人 B
訴訟代理人弁護士 久島和夫
同 川口均
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2000/11/28
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 原判決を次のとおりに変更する。
1 被控訴人は、控訴人に対し、金五〇万円及びこれに対する平成一〇年四月五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
2 控訴人のその余の請求を棄却する。
二 訴訟費用は、第一、二審を通じ、これを二〇分し、その一を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。
三 この判決は、第一1項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 控訴人 1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、金一〇〇〇万円及びこれに対する平成一〇年四月五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
4 この判決は、仮に執行することができる。
二 被控訴人 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事案の概要
事案の概要は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決の事実及び理由「第二 事案の概要」のとおりであるから、これを引用する。なお、当裁判所も、「本件出願一」、「本件出願二」、「本件出願」の用語を、原判決に準じて用いる。
一 原判決の訂正 1 原判決三頁一行目ないし五行目(第二 事案の概要の一)に、「本件は、
原告が、その主張に係る発明について特許を受けるため、その出願手続を被告に委任したところ、被告が被告の名前で特許出願をしたため、原告が当該発明について特許を受けることができなくなったと主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として、被告に対し、慰藉料一〇〇〇万円の支払を求めている事案である。」とあるのを、「本件は、控訴人が、その主張に係る発明について特許を受けるため、その出願手続を被控訴人に委任したところ、被控訴人が被控訴人の名前で特許出願をしたため、控訴人が当該発明について、発明者として、自己の名前で特許出願を行い、特許庁の判断を受けることができなくなったと主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として、被控訴人に対し、慰藉料一〇〇〇万円の支払を求めている事案である。」と改める。
2 同九頁五行目ないし九行目に「第二の争点は、原・被告間で被告が原告の名前で本件出願を行う旨の委任契約が成立していた場合に、被告が被告の名前で本件出願を行ったことによって、原告がその主張に係る発明について特許権を侵害されたことになるのか否か、要するに、原告主張の発明が特許を受け得るものであったか否かである」とあるのを、「第二の争点は、控訴人と被控訴人との間で被控訴人が被控訴人の名前で本件出願を行ったことによって、控訴人がその主張に係る発明について発明者として、自己の名前で特許出願を行い、特許庁の判断を受ける権利を侵害されたことによる不法行為が成立するのか否かである」と改める。
3 同九頁一〇行目から一一頁一〇行目まで(第二の争点についての原告及び被告の主張)を、次のとおりに改める。
「(控訴人) 被控訴人は、控訴人との間の委任契約に違反して被控訴人の名前で本件出願を行うことにより、控訴人が、その発明について、発明者として、自己の名前で特許出願を行い、特許庁の判断を受ける権利を侵害した。右は控訴人に対する不法行為となる。
(被控訴人) 控訴人の発明は、新規性がなく特許性を有しない。仮に、被控訴人が行った被控訴人を出願人とする特許申請が、控訴人を出願人として行われるべきものであったとしても、控訴人の発明が特許性を有しない以上、そこには何らの権利侵害もなく、したがって、不法行為の成立する余地はない。
慰藉料とは、一定の権利侵害があった場合に生じる精神的苦痛を賠償するものであるから、権利の侵害を受けない控訴人には、慰藉料の支払を求める根拠がない。仮に、控訴人がその主張の支出をしたとしても、特許性のない発明に対する支出であるから、慰藉料を求める根拠にはならない。」 4 同一一頁一一行目から同一二頁一一行目まで(第三の争点)を、次のとおりに改める。
「3 第三の争点は、控訴人が被控訴人に対して被控訴人の不法行為を理由として支払を求め得る慰藉料の額である。この点に関する控訴人・被控訴人の主張は、要旨、次のとおりである。
(控訴人) (一) 控訴人は、被控訴人の不法行為によって多大の精神的苦痛を被ったが、その苦痛を慰謝するに足りる金員は、一〇〇〇万円を下回るものではない。
控訴人は、その発明の特許出願のため、種々の研究、実験を繰り返し、特許出願書類作成のため弁護士に着手金及び報酬を支払い、その費用に充てるため、銀行から合計四〇〇〇万円の融資を受け、現在もこれを返済中である。また、右発明のため、平成二年から平成八年までの間に、開発、研究、実験及び事務処理のため、一名の従業員を継続して雇用し、その給与等として一九四四万円を支払ったほか、諸費用として合計約四〇〇万円余りを支出した。このような事情は、
慰藉料算定にあたり考慮されるべきである。
(二) よって、控訴人は、不法行為に基づく損害賠償として、被控訴人に対し、慰藉料一〇〇〇万円及びこれに対する不法行為の日以後の日(本件訴状送達の日の翌日)である平成一〇年四月五日から完済に至るまでの民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(被控訴人) 控訴人の主張は、争う。」
当裁判所の判断
一 本件の事実経過並びに本件出願に係る控訴人・被控訴人間の委任契約の成否及びその内容については、原判決の事実及び理由「第三 当裁判所の判断」の一記載のとおりであるから、引用する。
二 右事実によれば、被控訴人は、本件出願の請求項1ないし4、7及び8の発明について、控訴人の名前での特許出願を委任されていたにもかかわらず、右委任契約に違反して被控訴人の名前で特許出願をしたものであると認められる。そこで、右行為が控訴人に対する不法行為となるか否かについて検討する。
被控訴人は、控訴人の発明が特許性を有しない以上、控訴人に対する権利侵害は、あり得ない旨主張する。しかしながら、控訴人は、発明者として、その発明について、その名前で特許出願をし、特許庁の判断を受ける権利としての、特許を受ける権利(特許法33条)を有し、右権利は、当該発明について最終的に特許権の登録が認められるか否かにかかわらず認められる権利であるというべきであるから、発明の特許性の欠如を根拠に右特許を受ける権利侵害があり得ないとする被控訴人の主張は失当である。
前記一の事実によれば、控訴人は、被控訴人が、委任契約に基づき控訴人の名前で特許出願をすべきであったのに、同契約に違反して、被控訴人名で特許出願をしてしまったため、適切な時期に特許出願をして、後の出願等に妨げられることなく、特許庁の判断を受けうる法的利益を侵害されたものということができる。また、被控訴人は、その後も、少なくとも本件出願一を取り下げることなく維持しており、同出願は、その出願日である平成八年七月二三日から四年以上経過していることから、出願公開されたものと推認することができる。そうすると、控訴人の発明のうち本件出願の請求項1ないし4、7及び8に係る発明については、出願公開により新規性を喪失し、控訴人が当該発明につき新たに特許出願をしても特許を受けられなくなったものである。また、新規性喪失の点はさておいても、控訴人が、
その発明につき自らの名前で改めて特許出願をする場合には、被控訴人の出願がいわゆる冒認出願であることに関し、主張、立証する負担を負うことになる。このような結果を招いた被控訴人の本件出願行為が控訴人の特許を受ける権利を実質的に無意味とし、あるいはその行使にあたり無用の負担を負わせることによって、これを侵害する不法行為となることは明らかである。
そして、被控訴人が、控訴人との委任契約に違反して故意に右不法行為を行ったこと等、本件に現われた一切の事情を考慮すると、被控訴人の右不法行為によって控訴人が受けた精神的苦痛に対する慰藉料額は、五〇万円が相当である。
結論
よって、控訴人の本訴請求は、右慰藉料五〇万円及びこれに対する平成一〇年四月五日から支払ずみまでの民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余については理由がないから、右理由のある限度で認容し、その余については棄却すべきである。そこで、これと異なる原判決を、主文一1、2のとおりに変更することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法67条
61条64条を、仮執行の宣言につき同法259条を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 宍戸充
裁判官 阿部正幸
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