運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 異議1998-75097
関連ワード 新規性 /  29条1項3号 /  頒布された刊行物 /  遡及 /  分割出願 /  設定登録 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  取消決定 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 11年 (行ケ) 385号 特許取消決定取消請求事件
原告 エクセル株式会社代表者代表取締役 A
訴訟代理人弁理士 B、C
被告 特許庁長官D
指定代理人 E、F、G、H、I
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2000/11/30
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が平成10年異議第75097号事件について平成11年10月7日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
主文第1項同旨の判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 原告は、名称を「中空成形品」とする特許第2781376号発明(昭和59年2月13日に出願した特願昭59-22993号の分割出願として平成3年3月30日に出願した特願平3-133790号の分割出願として平成8年6月17日に出願。特願平8-155708号。平成10年5月15日設定登録。本件発明)の特許権者であるが、特許異議の申立てがあり、平成10年異議第75097号事件として審理されたが、平成11年10月7日、本件特許を取り消す旨の決定があり、その謄本は同月27日原告に送達された。
2 本件発明の要旨[請求項1]基本的に単層であり且つ樹脂材料からなる中空成形品であって、実質的に第1樹脂材料からなる第1部分と、前記第1部分に境界面を介して接続しており且つ前記第1樹脂材料とは異なる第2樹脂材料から実質的になる第2部分とを有しており、前記境界面に沿って前記第1樹脂材料から前記第2樹脂材料へ徐々に変化していることを特徴とする中空成形品。
[請求項2]請求項1において、前記境界面が成形品の外側及び内側の少なくとも一方に対して実質的に傾斜していることを特徴とする中空成形品。
3 決定の理由の要点 (1) 本件特許の分割の原の原の出願である特願昭59-22993号は平成6年5月25日に特許第1844244号として登録され、その明細書の特許請求の範囲には次のように記載されている。
「1.第1樹脂物質及び前記第1樹脂物質よりも軟質である第2樹脂物質との間で少なくとも1回物質が切り換えられている基本的に単層の円筒状パリソンから同時的且つ一体的に同一の工程によって所望の形状にブロー成形された中空成形品であって、前記中空成形品の中心軸に沿って第1の長さにわたり延在する第1部分がその円周方向全体にわたり実質的に第1樹脂物質から構成されており、且つ前記中心軸に沿っての第2の長さにわたり延在する第2部分がその円周方向全体にわたり実質的に第2樹脂物質から構成されており、前記第2部分は第1境界面を介して前記第1部分に接続されると共に中空成形品の一端における嵌合部を形成しており、更に前記中心軸に沿っての第3の長さにわたり延在する第3部分がその円周方向全体にわたり実質的に第2樹脂物質から構成されており、前記第3部分は第2境界面を介して前記第1部分に接続されると共に実質的に蛇腹部が形成されていることを特徴とする中空成形品。
2.特許請求の範囲第1項において、前記中心軸に沿って第4の長さにわたり延在する第4部分がその円周方向全体にわたり実質的に第1樹脂物質から構成されており、前記第4部分は前記第1樹脂物質と第2樹脂物質との間の第3境界面を介して前記第3部分に接続されており、更に前記中心軸に沿って第5の長さにわたり延在する第5部分がその円周方向全体にわたり実質的に第2樹脂物質から構成されており、前記第4部分は前記第1樹脂物質と第2樹脂物質との間の第4境界面を介して前記第4部分に接続されると共に中空成形品の他端における嵌合部を形成していることを特徴とする中空成形品。
3.特許請求の範囲第1項又は第2項において、前記各境界面が前記中心軸に対して少なくとも部分的に傾斜していることを特徴とする中空成形品。
4.特許請求の範囲第1項乃至第3項の内のいずれか1項において、断面がほぼ円筒状であることを特徴とする中空成形品。」 そして、その特許請求の範囲第3項に記載されている中空成形品は、基本的に単層であり、第1樹脂材料からなる第1部分と、第2樹脂材料から成る第2部分とを有し、かつ、第1部分と第2部分の境界面が傾斜していることから、本件請求項1及び2に係る発明に含まれるものである。
そうすると、本件請求項1及び2に係る発明は、上記特願昭59-22993号(特許第1844244号)の発明と同一であるから、本件特許は、特許法44条1項の規定を満たしていない。
したがって、本件特許は、昭和59年2月13日に出願した特願昭59-22993号の分割出願である特願平3-133790号の分割出願として出願したものとは認められないから、本件特許においては、出願日の遡及は認められず、本件特許の出願日は平成8年6月17日である。
そして、本件請求項1及び2に係る発明が、本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開昭60-168625号公報(特願昭59-22993号の公開公報)に記載されていることは明らかであるから、本件発明は、特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないものである。
(2) 以上のとおりであるから、本件特許は特許法113条1項2号に該当するから、同法114条2項の規定により取り消すべきものである。
原告主張の決定取消事由
1 特許第1844244号発明(原々出願発明)は、本件発明の原々出願に係るものである。決定は、本件発明の特許請求の範囲第1項及び第2項に係る発明が、原々出願発明の特許請求の範囲第3項に記載されている発明と同一であると認定、判断している。
2 しかしながら、原告は、平成12年7月31日に、原々出願発明に対して訂正審判を請求し、原々出願発明の特許請求の範囲第3項を削除し、訂正前の第1項、第2項、第4項を、それぞれ、第1項、第2項、第3項とすることについて訂正を請求した。
その結果、平成12年10月2日、上記訂正を認める旨の審決があり、その審決は確定した。
これにより、原々出願発明の特許請求の範囲の欄の記載が訂正され、出願時に遡って訂正後の原々出願発明の明細書及び図面により出願、特許査定などがされたものとみなされるから、原々出願発明の訂正前の明細書に基づいて原々出願発明の内容を認定した決定には、結果的に原々出願発明の認定において誤りがあることになる。
当裁判所の判断
甲第7号証及び弁論の全趣旨によれば、原告主張の訂正審決があり確定したことが認められる。これにより、原々出願発明の特許請求の範囲第3項は削除される訂正があったことになるから、そこに記載の中空成形品は、本件請求項1及び2に係る発明に含まれるとの審決の認定は、結果的に誤りであったことになり、この認定に基づき、本件発明の分割要件を否定し、その新規性を否定した審決の判断も誤りである。
結論
以上のとおり、原告主張の決定取消事由は理由があり、主文のとおり判決する。
(平成12年11月21日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 橋本英史