関連審決 | 異議2002-72900 |
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関連ワード | 容易に実施 / 技術常識 / 発明の詳細な説明 / 発明の概要 / パリ条約 / 優先権 / 技術的意義 / 実施 / 構成要件 / 設定登録 / 請求の範囲 / 釈明 / 訂正明細書 / 取消決定 / |
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事件 |
平成
17年
(行ケ)
10327号
特許取消決定取消請求事件
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原告 ピュアテクノロジーズ リミテッド 訴訟代理人弁護士 廣江武典,宇野健一,武川隆宣,高荒新一,中村繁元 被告 特許庁長官小川洋 指定代理人 菊井廣行,渡部利行,立川功,井出英一郎 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2005/07/19 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
特許庁が異議2002−72900号事件について,平成16年4月20日にした決定を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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原告の求めた裁判
主文と同旨の判決。 |
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事案の概要
本件は,特許を取り消した決定の取消しを求める事件である。 1 手続の経緯 (1) 原告は,発明の名称を「構造物における強化材の連続監視」とする特許第3288045号(請求項の数10。平成6年6月16日出願(パリ条約による優先権主張1993年(平成5年)6月25日,米国),平成14年3月15日設定登録。以下「本件特許」という。)の特許権者である。 (2) 本件特許について,特許異議の申立てがされ(異議2002-72900号事件として係属),これに対し,原告は,平成15年8月14日,明細書の訂正(以下「本件訂正」という。)を請求した。 (3) 特許庁は,平成16年4月20日,「訂正を認める。特許第3288045号の請求項1ないし10に係る特許を取り消す。」との決定をし,同年5月17日,その謄本を原告に送達した。 2 本件訂正後の発明の要旨(平成16年4月2日付手続補正書(訂正請求書)によるもの) 1.強化材の損傷に起因する信号と,構造物に配置した複数の測定点に該信号が到着する時刻とを検出及び分析して,該信号の発生場所の特性と位置を測定し,3箇所の測定点の音響信号及び/又は地震信号を検知して予め決められた最低周波数より上の該信号のスペクトルを分析することにより前記構造物を監視する,構造物における強化材の損傷に関して該構造物を監視するための方法において,前記構造物上の前記測定点の相対的な位置を知り,前記予め決められた最低周波数より下の周波数にある実質的に連続した背景スペクトル密度と対照を成して,数キロヘルツにわたるスペクトル密度が,該予め決められた最低周波数より上に,限られた期間存在することを測定することを特徴とする方法。 2.請求の範囲第1項記載の方法において,前記信号をそのフーリエ変換に変換することを特徴とする方法。 3.請求の範囲第2項記載の方法において,前記音響信号及び/又は地震信号が前記測定点に到着した時刻を記録することを特徴とする方法。 4.請求の範囲第3項記載の方法において,前記検知器を定期的に検査して機能が正常であることを確認することを特徴とする方法。 5.請求の範囲第4記載の方法において,一定の期間にわたって,損傷の発生に関係する信号データを分析して,将来の損傷を予測するために役立つ統計的情報を提供することを特徴とする方法。 6.強化材の損傷に起因する信号と,構造物に配置した複数の測定点に該信号が到着する時刻とを検出及び分析して,該信号の発生場所の特性と位置を測定する,構造物における強化材の損傷に関して該構造物を監視するための方法において,3箇所の測定点で信号を検知して該構造物を監視し,強化物の損傷のないときに各位置で信号の基準レベルを測定し,前記信号を分析して,強化物の損傷を示す信号として,その点で受信した基準信号の2倍以上の振幅と勾配を有する信号を選択することを特徴とする方法。 7.請求の範囲第6項記載の方法において,前記測定点において音響信号又は地震信号を検出し,該信号をそのフーリエ変換に変換して該信号を分析することを特徴とする方法。 8.請求の範囲第7項記載の方法において,前記音響信号及び/又は地震信号が前記測定点に到着した時刻を記録することを特徴とする方法。 9.請求の範囲第8項記載の方法において,前記検知器を定期的に検査して機能が正常であることを確認することを特徴とする方法。 10.請求の範囲第9項記載の方法において,一定の期間にわたって,損傷の発生に関係する信号データを分析して,将来の損傷を予測するために役立つ統計的情報を提供することを特徴とする方法。 3 決定の理由の要旨 決定の理由は,以下のとおりであるが,要するに,本件訂正を認めるとした上,請求項1ないし10に係る発明の特許は,特許法36条4項及び6項の規定に違反してされたものであり,特許法113条4号に該当し,取り消されるべきものである,というものである。 (1) 訂正の適否 本件訂正は,特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則6条1項の規定によりなお従前の例によるとされる,特許法120条の4第2項及び第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法126条1項ただし書,2項及び3項の規定に適合するので,当該訂正を認める。 (2) 特許異議の申立てについて(特許法36条適合性の判断) ア 「信号の発生場所の特性」について 本件明細書の請求項1に「信号の発生場所の特性と位置を測定し,」と記載しているが,明細書の発明の詳細な説明の欄に「信号の発生場所の特性」との語句は全くなく,定義も例示もされておらず,「信号の発生場所の特性」の実質的意味が不明である。 これに対し,特許権者は意見書で『「信号の発生場所の特性」とは信号の特性です。本件発明は,周波数及び振幅のパターンを検査することにより,信号を引き起こすものの特性(信号が強化材の損傷に起因するかどうか)を認識します。』と反論乃至釈明をしているが,本件明細書を通読しても「信号の発生場所の特性」が,「信号の特性」のことと解することができないのは勿論のこと,請求項1に記載の「信号の発生場所の特性」の実質的意味は明確でない。 したがって,意見書によっても取消理由は覆らず,本件明細書及び図面は当業者が容易に,請求項1の発明の実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成,効果を記載していないものと認められ,また,請求項1の記載では,特許を受けようとする発明は発明の構成が不明瞭であり,特許法36条4項及び6項の規定を満足しない。 そして,請求項1を引用する請求項2-5ならびに「信号の発生場所の特性」と記載のある請求項6及び請求項6を引用する請求項7-10も特許法36条4項及び6項の規定を満足しない。 イ 「予め決められた最低周波数より下の周波数にある実質的に連続した背景スペクトル密度と対照を成して,数キロヘルツにわたるスペクトル密度が,該予め決められた最低周波数より上に,限られた期間存在することを測定する」について 本件請求項1に,前記「 」書きの記載をしているが,その技術的意味が不明確である。「予め決められた最低周波数より下の周波数にある実質的に連続した背景スペクトル密度と対照を成して,数キロヘルツにわたるスペクトル密度が,該予め決められた最低周波数より上に,限られた期間存在すること」をどのように「測定する」のか,明細書及び図面に実施例の記載がないから,「測定する」ことの技術的裏付けがない。また,測定したとして,測定結果をどのように利用するものを指して請求項1の方法発明であるというのか,請求項1に記載がない。 これに対し特許権者は意見書で,「・・・当業者は,請求項1に規定する最低周波数成分を有する信号を調べて,最低周波数より上の周波数成分が,限られた期間存在するかどうかを(・・・)調べ,さらに,数キロヘルツにわたるスペクトル密度を有することを(・・・)調べます。」と回答しているが,これは,「調べる」ことについての説明に過ぎず,「測定する」の説明ではない。 したがって,意見書によっても「予め定められた最低周波数より下の周波数にある実質的に連続した背景スペクトル密度と対照を成して,数キロヘルツにわたるスペクトル密度が,該予め決められた最低周波数より上に,限られた期間存在することを測定する」の技術的意味が不明確であるとの指摘は覆らず,本件明細書及び図面は当業者が容易に,請求項1の発明の実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成,効果を記載していないものと認められ,また,請求項1の記載では,特許を受けようとする発明の構成が不明瞭であり,特許法36条4項及び6項の規定を満足しない。 そして,請求項1を引用する請求項2-5も特許法36条4項及び6項の規定を満足しない。 ウ 「基準信号の2倍以上の振幅と勾配」について 本件明細書の請求項6に「強化物の損傷を示す信号として,その点で受信した基準信号の2倍以上の振幅と勾配を有する信号を選択する」と記載しているが,どこから「基準信号の2倍以上」との数値がでてきたのか,また何故「振幅と勾配」の両方とも2倍以上でなければならないのかの根拠が不明であり,更には「振幅と勾配が基準信号の2倍以上」であると,何故「強化材の損傷を示す信号」と判断できるのかの根拠が不明であり,このことに関して明細書には「例えば,基本レベルの2倍を越える振幅又は勾配を有する信号・・・を選択することができる。」(全文訂正明細書8頁8-10行,本件特許公報では5頁左欄12-14行)との記載があるのみであり,上記構成要件のサポートがされていない。 これに対して,特許権者は意見書で『「2倍を越える」とした理由は,このときに本件発明は機能するからです。本件発明を説明することは必要ですが,何故本件発明が機能するかということを理論的に説明することは不要と考えています。」と反論乃至釈明しているが,これによっても依然として「基準信号の2倍以上の振幅と勾配」の技術的意味が不明である。 したがって,本件明細書及び図面は当業者が容易に,請求項6の発明の実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成,効果を記載したものと認められず,請求項6の発明は構成も不明瞭であるから,特許法36条4項及び6項の規定を満足しない。 請求項6を引用する請求項7-10も同様に,特許法36条4項及び6項の規定に適合しない。 (3) 決定のむすび 以上のとおりであるから,本件請求項1-10に係る発明の特許は,特許法36条4項及び6項の規定に違反してされたものである。 したがって,請求項1-10に係る特許は,特許法113条4号に該当し,取り消されるべきものである。 |
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当事者の主張の要点
1 原告主張の決定取消事由 (1) 取消事由1(「信号の発生場所の特性」についての判断の誤り) 決定は,「本件明細書の請求項1に「信号の発生場所の特性と位置を測定し,」と記載しているが,明細書の発明の詳細な説明の欄に「信号の発生場所の特性」との語句は全くなく,定義も例示もされておらず,「信号の発生場所の特性」の実質的意味が不明である。」と判断した。 ア 本件明細書(甲8)の請求項1の記載によれば,「信号」は「強化材の損傷に起因する信号」のことであるから,「信号の発生場所」とは,「強化材の損傷に起因する信号を発生した場所」を意味し,また,「特性」とは,その物が有する「特有の性質」を意味する。そうすると,「信号の発生場所の特性」とは,「強化材の損傷に起因する信号を発生した場所が有する特有の性質」であり,「強化材の損傷に起因する信号を発生した」「場所」の特性(特有の性質)とは,「強化材の損傷に起因する信号を発生した」ことである。そして,請求項1には,当該「場所」の他の特性を推測させるような記載はない。 イ したがって,「信号の発生場所の特性」とは,「強化材の損傷に起因する信号を発生した」ことであると解すべきであり,「信号の発生場所の特性」の実質的意味は明らかであるから,決定の判断は誤りである。 (2) 取消事由2(「予め決められた最低周波数より下の周波数にある実質的に連続した背景スペクトル密度と対照を成して,数キロヘルツにわたるスペクトル密度が,該予め決められた最低周波数より上に,限られた期間存在することを測定する」についての判断の誤り) 決定は,「本件請求項1に,前記「 」書きの記載をしているが,その技術的意味が不明確である。「予め決められた最低周波数より下の周波数にある実質的に連続した背景スペクトル密度と対照を成して,数キロヘルツにわたるスペクトル密度が,該予め決められた最低周波数より上に,限られた期間存在すること」をどのように「測定する」のか,明細書及び図面に実施例の記載がないから,「測定する」ことの技術的裏付けがない。また,測定したとして,測定結果をどのように利用するものを指して請求項1の方法発明であるというのか,請求項1に記載がない。」と判断した。 ア 「測定する」ことの技術的裏付けについて (ア) 強化材が設けられている場所から発せられた信号をスペクトルアナライザに入力すると,スペクトルアナライザは,該信号のスペクトル分布(本件図面(甲4)の第1図)を出力するから,このスペクトル分布に基づき,「予め決められた最低周波数より下の周波数にある実質的に連続した背景スペクトル密度と対照を成して,数キロヘルツにわたるスペクトル密度が,該予め決められた最低周波数より上に,限られた期間存在すること」を測定することができる。上記第1図においては,縦座標が時刻を示し,横座標が周波数を示しているから,これに基づき,予め決められた最低周波数より上に,限られた期間存在するスペクトル密度を測定することができるのである。 (イ) なお,「予め決められた最低周波数」とは,測定対象となっている場所の通常のノイズと,強化材が損傷した際に発せられた信号とを区別するための基準となる周波数であり,本件発明の監視装置を測定対象となっている場所に一定期間設置してスペクトル分布を作成し,当該測定場所の通常のノイズの程度を知ることにより,各測定場所に応じて予め決められる(つまり,最低周波数は,自動的に,かつ,一義的に決まるものではなく,測定対象となる場所ごとに,当該測定場所の通常のノイズの程度に応じて決められる。)。 (ウ) したがって,「測定する」ことの技術的裏付けは明らかであるから,決定の判断は誤りである。 イ 測定結果の利用について 測定結果の用途を記載しなくても,本件発明を明確に特定することができるから,特許請求の範囲に測定結果の用途を記載する必要はない。 したがって,決定の判断は誤りである。 (3) 取消事由3(「基準信号の2倍以上の振幅と勾配」についての判断の誤り) 決定は,「本件明細書の請求項6に「強化物の損傷を示す信号として,その点で受信した基準信号の2倍以上の振幅と勾配を有する信号を選択する」と記載しているが,どこから「基準信号の2倍以上」との数値がでてきたのか,また何故「振幅と勾配」の両方とも2倍以上でなければならないのかの根拠が不明であり,更には「振幅と勾配が基準信号の2倍以上」であると,何故「強化材の損傷を示す信号」と判断できるのかの根拠が不明であり,このことに関して明細書には「例えば,基本レベルの2倍を越える振幅又は勾配を有する信号・・・を選択することができる。」(・・・)との記載があるのみであり,上記構成要件のサポートがされていない。」と判断した。 ア 本件明細書には,要旨,信号を測定すべき場所において発せられる基本信号又はバックグラウンド信号をしばらくの間モニターして,当該場所において通常発せられているこれらの基本信号又はバックグラウンド信号を認識すること,損傷事象を示す信号は,通常発せられているこれらの基本信号又はバックグラウンド信号から識別できるように,例えば,基本レベルの2倍を超える振幅又は勾配を有する信号を選択するようにしたことが記載されている。 イ これによれば,「基準信号の2倍以上の振幅と勾配」とした理由は,信号を測定すべき場所において,通常発せられている基本信号又はバックグラウンド信号から,損傷事象を示す信号を明確に識別するためであり,また,振幅のほかに,勾配についても,「基準信号の2倍以上」としたのは,損傷事象が発生した場合には,当該損傷事象を示す信号が急激に立ち上がり,勾配も大きな値を示すからである。 ウ このように,請求項6における「基準信号の2倍以上の振幅と勾配」との記載は,根拠を有するものであるから,決定の判断は誤りである。 2 被告の反論 (1) 取消事由1(「信号の発生場所の特性」についての判断の誤り)に対して 本件明細書の発明の詳細な説明には,「信号の発生場所の特性」との記載はなく,定義も例示もないから,「信号の発生場所の特性」の実質的意味は不明である。 したがって,決定の判断に誤りはない。 (2) 取消事由2(「予め決められた最低周波数より下の周波数にある実質的に連続した背景スペクトル密度と対照を成して,数キロヘルツにわたるスペクトル密度が,該予め決められた最低周波数より上に,限られた期間存在することを測定する」についての判断の誤り)に対して ア 「測定する」ことの技術的裏付けについて (ア) 請求項1は,背景スペクトル密度と数キロヘルツにわたるスペクトルが対照を成して存在することを測定するというのであり,単に「予め決められた最低周波数より上に,限られた期間存在する」周波数密度を測定するというだけではない。 「背景スペクトル密度と対照を成して,数キロヘルツにわたるスペクトル密度が,存在すること」をどのように測定するのか不明であり,本件明細書の発明の詳細な説明にも記載されていない。 (イ) 本件図面の第1図には,6キロヘルツ手前まで背景スペクトルが実質的に連続しているものや,5キロヘルツ手前までだけ背景スペクトルが実質的に連続しているものや,4キロヘルツくらいまでだけ背景スペクトルが実質的に連続しているものが示されているところ,請求項1には「最低周波数」をどのような規則で決めればよいのかが記載されていないから,第1図のようなスペクトル分布において,どれを「最低周波数」として,これより上に,限られた期間存在する周波数密度を測定すればよいのか不明である。 (ウ) 所定の最低周波数を,例えば,3キロヘルツ,5キロヘルツ又は7キロヘルツのいずれに決めるとしても,損傷の有無にかかわらず,最低周波数よりも上に,背景雑音であるスペクトル密度が連続して所定の限られた期間存在するということは,当然にあり得るから,単に,「予め決められた最低周波数より上に,限られた期間存在する」周波数密度を測定しただけでは,それが,構造物の強化材の損傷に係るものであると即断することはできない。そして,そのような場合に,背景スペクトル密度と数キロヘルツにわたる周波数密度が,対照を成して限られた期間存在すること,また,対照を成しては存在しないことをどのように測定すればよいのかについて,発明の詳細な説明には記載がない。 (エ) したがって,「測定する」ことの技術的裏付けはないから,決定の判断に誤りはない。 イ 測定結果の利用について (ア) 「信号の発生場所の特性を測定し」については,上記(1)のとおり,本件発明を特定できない事項であり,また,「所定の最低周波数」がどのような規則に基づいて決められ,「対照を成して限られた期間存在することを測定する」というのがどのような測定であるのかについても,上記アのとおり,特定できない事項であるから,「本件発明を明確に特定することができる」との原告の主張には,根拠がない。 (イ) 「数キロヘルツにわたるスペクトル密度が,該予め決められた最低周波数より上に,限られた期間存在することを測定する」ということで,単にその測定結果を得たというだけでは不十分であり,本件特許出願時における本件発明が属する技術分野の技術常識をもってしても,「該信号の発生場所の特性と位置を測定し・・・構造物を監視する方法」において,前記測定結果をどのように用いるのかについて,請求項1の記載では,これを特定することはできない。 (ウ) したがって,決定の判断に誤りはない。 (3) 取消事由3(「基準信号の2倍以上の振幅と勾配」についての判断の誤り)に対して ア 本件明細書の「例えば,基本レベルの2倍を越える振幅又は勾配を有する信号・・・を選択することができる」(8頁8ないし10行)との記載は,振幅でも勾配でもいずれかが2倍を越えるという条件を満足すれば信号を選択するということであるが,請求項6の「強化物の損傷を示す信号として,・・・基準信号の2倍以上の振幅と勾配を有する信号を選択する」というのは,振幅条件と勾配条件の両者を満足した時に信号を選択するということであるから,明細書の前記記載は,請求項6に記載された事項の根拠を与えるものではない。 イ また,基準レベルの勾配はどのようなものか明細書に記載がないから,基準レベルの勾配を得ることができず,「基準信号の2倍以上の振幅と勾配」を有する信号を選択することを当業者は容易に実施することができない。 ウ したがって,「基準信号の2倍以上の振幅と勾配」の技術的意味は明らかでないから,決定の判断に誤りはない。 |
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当裁判所の判断
1 取消事由1(「信号の発生場所の特性」についての判断の誤り)について (1) 請求項1には,「強化材の損傷に起因する信号と,構造物に配置した複数の測定点に該信号が到着する時刻とを検出及び分析して,該信号の発生場所の特性と位置を測定し」との記載があり,この記載によれば,「信号の発生場所」とは,強化材の損傷に起因する信号が発生した場所,すなわち,強化材の損傷が生じた場所を意味するものであることは明らかであるところ,「強化材の損傷に起因する信号」は,強化材が損傷するときに放出されるものであるから,その信号を検出及び分析して測定するものは,信号の発生原因となる強化材の損傷の有無のほかには考えられない。 そして,本件明細書(甲8)をみても,「発明の分野 本発明は,構造物が無傷であることを監視する装置に関するものであり,特に,コンクリート内部のポストテンショニングケーブル等の構造物強化材の破損を監視する装置に関する。」(1頁3ないし6行),「構造物内の引っ張られている強化材が破損したとき,エネルギーが,特に,音響エネルギーと地震エネルギーの形で,その周囲に放出される。これらの形のエネルギーに応答する適切な検知器をその構造物上に又は構造物の近くに配置して,そのエネルギーの放出を検知することができる。」(1頁20ないし23行),「発明の概要 本発明の概略を述べると,構造物内の引っ張られている強化材の損傷を監視する方法であって,この方法においては,複数の検知器を既知の配置で構造物の周囲に,かつ構造物のすぐ近くに配置し,その検知器は音響エネルギー,又は地震エネルギー,又はそれらを組み合わせたものの到着に応答して信号を生成し,検知器からの信号を収集し,構造物内の引っ張られている強化材の損傷と関係がある信号を識別する。」(2頁3ないし9行)との記載があり,これらの記載によれば,本件発明は,強化材が損傷するときに放出される,強化材の損傷と関係がある信号を検知することによって,構造物の強化材の損傷の有無を監視しようとするものであると理解することができるから,強化材の損傷に起因する信号を検出及び分析して測定するものは,強化材の損傷の有無であるということができる。 (2) 上記(1)に判示したところによれば,「信号の発生場所の特性」とは,強化材の損傷が生じた場所における強化材の損傷の有無に関する特性であるということができる。 そして,本件明細書には,「第1図のグラフに示すように,Bに示されているケーブル破損の周波数と振幅は,バックグラウンドのエネルギーの周波数と振幅の特性とは容易に識別される。」(5頁15ないし17行)との記載があり,この記載及び本件図面(甲4)の第1図(引っ張られている強化材の破損を示すフーリエ変換図)によれば,強化材が損傷したときに放出される音響エネルギーは,バックグラウンドの音響エネルギーと,周波数,振幅の特性を異にしていることが認められるから,「信号の発生場所の特性」とは,強化材の損傷が生じた場所における,強化材の損傷の有無に関する特性であって,例えば,音響エネルギーを検出及び分析する場合において,強化材の損傷に伴って発生する音響エネルギーの周波数と振幅にみられるような特性のことを指していると解するのが相当である。 したがって,「信号の発生場所の特性」の実質的意味が不明であるということはできない。 (3) 被告は,本件明細書の発明の詳細な説明には,「信号の発生場所の特性」との記載はなく,定義も例示もないから,「信号の発生場所の特性」の実質的意味は不明であると主張する。 確かに,本件明細書には,「信号の発生場所の特性」との語句はなく,定義も例示もされていない。しかし,「信号の発生場所の特性」とは,上記(2)に判示したように,例えば,強化材の損傷に伴って発生する音響エネルギーの周波数と振幅にみられるような特性,すなわち,強化材の損傷に伴って損傷が生じた場所から発生する「信号の特性」であると解されるから,発明の詳細な説明に,「信号の発生場所の特性」との語句がなく,定義も例示もされていないとしても,「信号の発生場所の特性」の実質的意味が不明であるということはできない。 (4) そうすると,取消事由1に係る決定の判断は誤りである。 2 取消事由2(「予め決められた最低周波数より下の周波数にある実質的に連続した背景スペクトル密度と対照を成して,数キロヘルツにわたるスペクトル密度が,該予め決められた最低周波数より上に,限られた期間存在することを測定する」についての判断の誤り)について (1) 「測定する」ことの技術的裏付けについて ア 本件明細書には,次の記載がある。 (ア) 「この中央監視手段は,エネルギー放出の周波数パターン及び/又は振幅パターンを検討することによって,構造物内の破損に関係する信号を識別することができる。具体的には,第1図のグラフに示すように,Bに示されているケーブル破損の周波数と振幅は,バックグラウンドのエネルギーの周波数と振幅の特性とは容易に識別される。第1図に示すような信号データを,破損中に放出されるエネルギーを識別するための識別窓を作るために使用することができる。装置の性能を高めるために,その識別窓に基づいたフィルタを用いることができる。この識別窓により,背景エネルギーを除去し,重要な信号を鮮明に識別することができる。」(5頁12ないし20行) (イ) 「この識別手段を機械装置,又は電気装置として上記では説明したが,継続的に,又は記憶されている信号データを調査することによって,破損に関係する信号を操作者の目視検査により識別することもできることは理解されるであろう。」(5頁27行ないし6頁1行) (ウ) 「重要な信号を識別するために用いることができるいくつかの有用なパラメータは,入力される信号の勾配に関する閾値と,入力される信号の振幅に関する閾値と,入力される信号の周波数分布に関する閾値と,入力される信号の持続時間に関する閾値と,入力される信号の音量に関する閾値とである。事象が,これらの判定基準のうちの1個以上に関して,予め定められた数値を越える結果を生じた場合,その事象は,検査のために記録され,他のものと区別するために特別の印が付けられる。その検査は人手による目視検査によって行なうことができ,また,コンピュータによって自動的に行なうこともできる。自動的に検査が行なわれた場合,上述の判定基準のうちのいくつかが,その所定の水準を超えたときは,損傷の疑いがあることを宣言する。」(7頁23行ないし8頁3行) (エ) 「基本信号又はバックグラウンド信号をしばらくの間モニターして,その後,起こる可能性のある損傷事象を示すような,充分に外側にある任意の数値を設定するだけでよい。例えば,基本レベルの2倍を越える振幅又は勾配を有する信号,あるいは高周波数成分が著しく高いレベルにある周波数分布を選択することができる。」(8頁5ないし10行) (オ) 「第1図は,この破損を示すフーリエ変換図である。図の縦座標は,記録開始後の時刻(ミリ秒単位)を示し,横座標は,kHertz単位で,記録された音波を示す。垂直方向は,ミリボルト単位で,記録された各波の振幅を示す。この図は,検知器Aの出力を記録している。88ミリ秒より前において,相対的に小さい振幅の,かつ約7kHz未満の波長の波が記録されていることは明らかであろう。 これらが,道路の通行や,駐車場ビル内の動きなどのバックグラウンドの事象を表わしている。88ミリ秒のときに,発生させたケーブルの破損が検知された。この破損が,13.24kHzの高さの波長のところに示されている音波を発生させた。さらに,この破損は,もっと低い波長において,これ以前に見られた波よりもずっと大きな振幅の波を生じさせた。計測目盛り上で約160ミリ秒まで,通常よりも高い周波数が発生した。構造物内が無傷ではなくなったために,破損後のバックグラウンド事象は,破損前のバックグラウンド事象の振幅よりも高い振幅を示した。」(9頁10ないし22行) イ 上記記載によれば,測定に当たっては,まず,モニターにより,基本信号又はバックグラウンド信号(例えば,第1図における,相対的に小さい振幅の,かつ約7kHz未満の波長の波)を記録すること((ア),(エ)及び(オ)),基本信号又はバックグラウンド信号の十分外側において,起こる可能性のある損傷事象を示し得る,任意の値の判定基準を設けること((ウ)及び(エ)),損傷時には,通常よりも高い周波数の音波が発生し,一定時間継続すること((オ)),予め定められた数値を越える結果が生じた場合,その事象について記録され,事象が生じたことの解析は,機械的に又は人間の目視により行われること((ア),(イ)及び(ウ))が認められる。 そして,基本信号又はバックグラウンド信号についてみると,本件明細書に,「コンクリート構造物内のポストテンショニングケーブルを監視する場合を実施例として用いて,本発明を説明するが,他の引っ張られている構造物用強化材又は緊締部材を監視することにも,本発明を同様に適用できる。」(3頁6ないし8行),「検知器は構造物のすぐ近くに,望ましくはその構造物に接触して配置される」(4頁16行)と記載されているように,検知器は,各種構造物に対して配置されるところ,個々の構造物の置かれている環境がそれぞれ異なることは容易に想定されるから,検知器で検出する基本信号又はバックグラウンド信号が監視対象となる個別の構造物によって異なることは,容易に理解することができるものである。 また,起こる可能性のある損傷事象を示し得る,任意の値の判定基準についてみると,構造物を強化するための強化材が特定されるのであれば,予め実験等を行って,損傷事象に対応した信号を取得しておき,検知器の設置場所に応じた基本信号又はバックグラウンド信号と対比することによって,容易に決定することができるのである。 ウ 被告の主張について (ア) 被告は,「背景スペクトル密度と対照を成して,数キロヘルツにわたるスペクトル密度が,存在すること」をどのように測定するのか不明であり,本件明細書の発明の詳細な説明にも記載されていないと主張する。 しかし,上記イに判示したように,本件明細書の記載によれば,損傷時には,通常よりも高い周波数の音波が発生して,一定時間継続し,また,予め定められた数値を越える結果が生じた場合,その事象について記録され,事象が生じたことの解析は,機械的に又は人間の目視により行われることが認められるのであって,これによれば,予め定められた背景スペクトル密度を越える(すなわち,背景スペクトル密度と対照を成して)数値(すなわち,数キロヘルツ。なお,この数値は,強化材によって変わるものであることは明らかである。)を測定すればよいことが容易に理解されるものである。 (イ) また,被告は,請求項1には「最低周波数」をどのような規則で決めればよいのかが記載されていないから,第1図のようなスペクトル分布において,どれを「最低周波数」として,これより上に,限られた期間存在する周波数密度を測定すればよいのか不明であると主張する。 しかし,上記イに判示したように,「最低周波数」は,規則により定められるものではなく,基本信号又はバックグラウンド信号を記録することによって定められるものである。そして,損傷事象に対応した信号は,通常よりも高い波長として現れるから,本件図面の第1図においては,例えば,6キロヘルツ手前を「最低周波数」と定めることにより,これより上に,限られた期間存在する周波数密度を容易に測定することができる。 (ウ) さらに,被告は,損傷の有無にかかわらず,最低周波数よりも上に,背景雑音であるスペクトル密度が連続して所定の限られた期間存在するということは,当然にあり得るから,単に,「予め決められた最低周波数より上に,限られた期間存在する」周波数密度を測定しただけでは,それが,構造物の強化材の損傷に係るものであると即断することはできず,そのような場合に,背景スペクトル密度と数キロヘルツにわたる周波数密度が,対照を成して限られた期間存在すること,また,対照を成しては存在しないことをどのように測定すればよいのかについて,発明の詳細な説明には記載がないと主張する。 確かに,上記測定においては,構造物の強化材の損傷に係るスペクトル密度分であると即断することができない場合がないとはいえない。しかし,所定の最低周波数よりも上に,背景雑音であるスペクトル密度が連続して所定の限られた期間存在することがあるとしても,強化材の損傷に係るものと同じものであるとは限らないし,誤って損傷が発生したと判断することがあるとしても,強化材の損傷に関して,構造物を監視することができないというわけではない。また,背景雑音であるスペクトル密度や外乱によるスペクトル密度と損傷に係るスペクトル密度とが重畳する可能性があれば,測定されたスペクトル密度から,通常時に測定される背景雑音であるスペクトル密度や外乱によるスペクトル密度を減算して,損傷に係るスペクトル密度分だけを抽出することもできると考えられるから,強化材の損傷に関して,構造物を監視することができないものではない。 (2) 測定結果の利用について ア 上記(1)イに判示したように,予め定められた数値(最低周波数)を越える結果が生じた場合,その事象について記録され,事象が生じたことの解析は,機械的に又は人間の目視により行われるものであるから,測定結果を解析した結果が,強化材の損傷の有無の判定に用いられ,ひいては,構造物の監視に供されることは明らかである。 イ 被告は,単にその測定結果を得たというだけでは不十分であり,本件の特許出願時の本件発明が属する技術分野の技術常識をもってしても,「該信号の発生場所の特性と位置を測定し・・・構造物を監視する方法」において,前記測定結果をどのように用いるのかについて,請求項1の記載では,特定することができないと主張するが,上記アに判示したように,測定結果を解析した結果が,強化材の損傷の有無の判定に用いられ,ひいては,構造物の監視に供されることは明らかである。 (3) そうすると,取消事由2に係る決定の判断は誤りである。 3 取消事由3(「基準信号の2倍以上の振幅と勾配」についての判断の誤り)について ア 本件明細書(甲8)には,「基本信号又はバックグラウンド信号をしばらくの間モニターして,その後,起こる可能性のある損傷事象を示すような,充分に外側にある任意の数値を設定するだけでよい。例えば,基本レベルの2倍を越える振幅又は勾配を有する信号,あるいは高周波数成分が著しく高いレベルにある周波数分布を選択することができる。」(8頁5ないし10行)との記載があり,この記載によれば,「基本レベルの2倍を越える振幅又は勾配を有する信号」の選択は,基本信号又はバックグラウンド信号の十分に外側にある任意の数値の設定例であることが明らかである。 また,上記2(1)イに判示したように,判定に当たっては,基本信号又はバックグラウンド信号の十分外側において,起こる可能性のある損傷事象を示し得る,任意の値の判定基準が設けられるが,その技術的意義が損傷事象の誤った判定の防止にあることは明らかである。そして,基本レベルの2倍以上の信号を選択することの意味も,このような技術的意義に沿ったものであると解されるものであって,損傷事象が生じた場合において,基本レベルの2倍以上の信号を選択すれば,基本信号又はバックグラウンド信号と十分に区別することができるから,「基準信号の2倍以上」との数値を設定したことの技術的意味は明らかである。 イ 被告の主張について (ア) 被告は,本件明細書の「例えば,基本レベルの2倍を越える振幅又は勾配を有する信号・・・を選択することができる」(8頁8ないし10行)との記載は,振幅でも勾配でもいずれかが2倍を越えるという条件を満足すれば信号を選択するということであるが,請求項6の「強化物の損傷を示す信号として,・・・基準信号の2倍以上の振幅と勾配を有する信号を選択する」というのは,振幅条件と勾配条件の両者を満足した時に信号を選択するということであるから,明細書の前記記載は,請求項6に記載された事項の根拠を与えるものではないと主張する。 本件明細書には,「重要な信号を識別するために用いることができるいくつかの有用なパラメータは,入力される信号の勾配に関する閾値と,入力される信号の振幅に関する閾値と,入力される信号の周波数分布に関する閾値と,入力される信号の持続時間に関する閾値と,入力される信号の音量に関する閾値とである。事象が,これらの判定基準のうちの1個以上に関して,予め定められた数値を越える結果を生じた場合,その事象は,検査のために記録され,他のものと区別するために特別の印が付けられる。その検査は人手による目視検査によって行なうことができ,また,コンピュータによって自動的に行なうこともできる。自動的に検査が行なわれた場合,上述の判定基準のうちのいくつかが,その所定の水準を超えたときは,損傷の疑いがあることを宣言する。」(7頁23行ないし8頁3行)との記載があり,この記載によれば,複数のパラメータを用いて損傷の発生を自動的に判定することができると理解されるから,判定基準として「振幅と勾配」の両方を選択することの意味は明らかであるといわなければならない。そして,上記アに判示したように,「基準信号の2倍以上」との数値を設定したことの技術的意味も明らかであるから,「振幅と勾配」のいずれをも「基準信号の2倍以上」との数値を設定したことの技術的意味は,自ずと明らかである。 (イ) また,被告は,基準レベルの勾配はどのようなものか明細書に記載がないから,基準レベルの勾配を得ることができず,「基準信号の2倍以上の振幅と勾配」を有する信号を選択することを当業者は容易に実施することができないと主張する。 確かに,本件明細書には,「勾配」がどのようなものであるかについて記載がない。しかし,本件図面(甲4)の第1図によれば,「勾配」とは,各周波数ごとに算出される,単位時間当たりの振幅の変化量を意味するものであると解されるから,基準レベル(バックグラウンド信号)の勾配が得られないということはできない。 ウ そうすると,取消事由3に係る決定の判断は誤りである。 |
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結論
以上のとおりであって,原告主張の決定取消事由1ないし3は理由があり,かつ,この誤りは決定の結論に影響を及ぼすものと認められるから,決定は取り消されるべきである。 |
裁判長裁判官 | 塩月秀平 |
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裁判官 | 田中昌利 |
裁判官 | 野輝久 |