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関連審決 異議1998-72661
関連ワード 進歩性(29条2項) /  同一技術分野(同一の技術分野) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  発明の詳細な説明 /  置き換え /  特許発明 /  実施 /  構成要件 /  請求の範囲 /  取消決定 /  異議申立 / 
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事件 平成 11年 (行ケ) 76号 特許取消決定取消請求事件
原告 株式会社石田エンタープライズ代表者代表取締役 【A】
訴訟代理人弁護士 牛島信
同 佐藤直史
同 木下洋平
被告 特許庁長官【B】
指定代理人 【C】
同 【D】
同 【E】
同 【F】
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2000/12/05
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成10年異議第72661号事件について平成11年2月4日付けでした取消決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経過 原告は、発明の名称を「ビデオ画面検索・編集装置」とする特許第2684034号の特許(昭和61年9月24日出願、平成9年8月15日登録。以下「本件特許」といい、その発明を「本件発明」という。)の特許権者である。
特許庁は、本件特許について、松下電器産業株式会社及び【G】から特許異議の申立てを受け、これを平成10年異議第72661号事件として審理した。原告は、審理係属中の平成10年12月8日、上記特許異議申立てに対する意見書を提出するとともに、願書に添付された明細書(願書に添付された図面を含めて、以下「本件明細書」という。)について訂正の請求をした。特許庁は、上記異議事件を審理した結果、平成11年2月4日付けで、「訂正を認める。特許第2684034号の特許を取り消す。」との決定をし、同月17日に、その謄本を原告に送達した。
2 本件発明の特許請求の範囲 「ホストコンピュータと、表示手段と、該表示手段に接続されたアフレコ機能を持つビデオデッキと、前記ホストコンピュータとビデオデッキとの間に接続されるコントローラとを有するビデオ画面検索・編集装置であって、
該コントローラは、
前記ホストコンピュータからの書込指令に基づき、前記ビデオデッキのアフレコ機能を用いて、ビデオテープの音声トラック上にビデオ画面の位置決めページ情報を記録するぺージ情報記録手段と、
前記ホストコンピュータからの読出し指令に基づき、前記ビデオテープの音声トラック上に記録された位置決めページ情報を再生するページ情報再生手段と、
前記ホストコンピュータへ入力された任意希望位置情報と前記ページ情報再生手段が再生した位置決めページ情報とを比較し、一致出力又は不一致出力を出力するページ情報比較手段と、
該ページ情報比較手段からの一致出力又は不一致出力に基づき、前記ビデオデッキの各種動作制御を行う機能制御手段とを具備し、
前記ホストコンピュータへ入力された前記任意希望位置情報に対応したビデオ画面を検索し、前記表示手段に表示し得ることを特徴とする、
ビデオ画面検索・編集装置。」 3 決定の理由 別紙決定書の理由の写しのとおりである。要するに、本件発明は、その出願前に頒布されたNATIONAL TECHNICAL REPORT VOL.19 N0.3(1973年6月号)249〜255頁(甲第3号証。以下「引用刊行物1」という。)に記載された技術(以下「引用発明1」という。)及び特開昭59-151582号公報(甲第4号証。以下「引用刊行物2」という。)に記載された技術(以下「引用発明2」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから、特許法29条2項に該当し、特許を受けることができない、
というものである。
原告主張の決定取消事由の要点
本件決定の理由中、「(1)手続きの経過」、「(2)訂正の適否についての判断」は認める。「(3)特許異議申し立てについて」のうち、「ア.本件発明」、
「イ.29条2項違反に関する取消理由通知の概要」、「ウ.刊行物に記載の発明」は認める。「エ.対比・判断」は、本件発明と引用発明1との対比のうちの「ページ」の意義の認定及びこの認定を前提する事項について争い、その余は認める。相違点についての判断は争う。
本件決定は、本件発明と引用発明1との一致点の認定を誤り(取消事由1)、進歩性について判断を誤った(取消事由2)結果、本件発明は、引用発明1及び同2に基づいて当業者が容易に発明をすることができた、という誤った結論を導き出したものであり、違法であることが明らかであるから、取り消されなければならない。
1 取消事由1(一致点の認定の誤り) 本件決定は、「「ぺージ」とは静止画又は動画を意味しているものと認められるから、刊行物1に記載のビデオテープ上に複数記録されている「プログラム」に相当するものと認められる。」(決定書9頁17行〜末行)と認定し、これを前提として、引用発明1の「テープ番地信号を記録する手段」、「テープ番地再生手段」、「指令番地信号」、「大小一致判別回路」が、本件発明の「位置決めページ情報記録手段」、「ページ情報再生手段」、「任意希望位置情報」、「ページ情報比較手段」に相当するものと認定し、結局、本件発明と引用発明1とは、制御装置を構成する機器の具備の有無を除き一致すると認定した。
しかし、本件発明にいう「ページ」は、静止画又は動画を意味するのではなく、1フレームごとの静止画像及び数秒間の画像を意味しているものであるから、
引用発明1の「プログラム」には相当せず、審決の認定は、前提において既に誤っており、この誤った前提に基づいてなされた本件発明と引用発明1との対比においても、全体的に誤っている。
本件発明にいう「ページ」とは、1フレームごとの静止画像及び数秒間の画像を意味するものであって、1フレームの画像情報を含む概念であり、画面情報をフレーム単位で検索することを可能にするものである。すなわち、本件発明は、30秒程度の長さを有する「プログラム」の頭出し(キュー出し)をその目的とするものではなく、ビデオテープが持つ画面情報をフレーム単位で検索することを可能にする画期的技術なのである。したがって、本件発明にいう「ページ」は、30秒程度の長さの画像情報を意味する引用発明1の「プログラム(画像情報)」とは、
全く異なるものである。
本件発明にいう「ページ」が、1フレームごとの静止画像及び数秒間の画像を意味しているものであり、1フレームの画像情報を含む概念であることは、次のとおり明らかである。
ビデオテープの画像情報の最小単位は、30分の1秒の1フレームであるから、ビデオテープを一時停止(ポーズ)状態にしたときにテレビ画面上に表示されるのが「1フレーム」の画像であり、したがって、「静止画像」は、一時停止状態の「1フレーム」の画像となる。
本件明細書中には、「キー操作入力されたページ数に対応するものかどうか比較され、一致した時点で所望と思われるビデオ画像をテレビ画面上に映し出す。この時テレビ画面上に映し出されるビデオ画像は静止画像であり、」(6欄9行〜13行)との記載があり、この記載は、「テレビ画面上に映し出される」「静止画像」が、まさに「1フレーム」の画像であることを示している。また、本件明細書中の作用効果の欄にも、「キー入力操作されたページ数に」「一致」する「1フレーム」の画像をテレビ画面に表わすことができる、すなわち、1フレームごとの静止画像を検索することができることが記載されている。
より具体的には、30分の1秒の画像情報(1フレーム)を1ページとした場合には、「キー入力操作されたページ数に」「一致」する「フレーム」の画像をテレビ画面に表示することで検索は終了する。これに対し、例えば、2、3秒の画像情報(60〜90フレーム)を1ページとした場合には、「キー入力操作されたページ数に」「一致した時点」の「フレーム」の画像がテレビ画面に表示され、
かかる画像が所望したビデオ画像であることが確認された後、「リターンキーが押されることによりビデオ画面の再生が開始され、テレビ画面にはオペレータが所望したページに対応したビデオ画像が映し出されることになる」のである。このように、本件発明は、所望の「1フレーム」の「静止画像」の検索及び所望の数秒の画像情報(数十フレーム)の検索の双方を予定しているのである。
本件発明が所望の「1フレーム」の「静止画像」の検索及び所望の数秒の画像情報(数十フレーム)の検索の双方を予定していることは、次の事実によっても裏付けられる。すなわち、本件発明のページ情報の付け方についてみると、本件明細書中の「録画された画面に例えば数秒毎に連続するページ情報を順次付加し」(3欄34行〜35行)、「数秒毎(例えば2秒毎)に連続したページ付けが行われ」(4欄31行〜第32行)とは、例えば、ある60フレームの一つ一つのフレームにXページ目を意味するデジタル信号を記録し、次の60フレームの一つ一つのフレームにX+1ページ目を意味するデジタル信号を記録し、以下同様に60フレーム毎にX+2、3・・・を意味するデジタル信号、すなわち「連続するページ情報を」「順次付加」することである。同様に、「5バイトで構成されるページ情報が1ページ分(例えばある静止画(又は動画)の1カット分)に相当する長さの間連続して記録され続ける」(5欄31行〜33行)、「各ページには5バイトからなるページ情報が複数個(少なくとも2個)連続して記録される」(5欄40行〜42行)というのも、ある60フレームの一つ一つのフレームにXページ目を意味するデジタル信号が記録されることを意味する。ここで、一つ一つのフレームにXページ目を意味するデジタル信号を記録することは、上記の検索方法についての明細書の記載にあるように、「キー入力操作されたページ数に」「一致」する1フレームの「静止画像」を「テレビ画面上に映し出」すために必要不可欠なことである。このようにしてページ付けされたビデオ画像のXページの検索は、上記のとおり、Xページを「キー入力操作」し、Xページに「一致した時点」のフレームの「静止画像」を「テレビ画面上」で確認し、「ビデオ画面の再生」を「開始」することにより、Xページに「対応したビデオ画像が映し出されることになる」のである。
以上のとおり、本件発明において、「ページ」とは、1フレームごとの静止画像及び数秒間の画像を意味しているものであり、1フレームの画像情報を含む概念であって、単に撮影対象物が動いているという意味での「動画」という概念を含んでいないのである。本件明細書中には、確かに「静止画又は動画」という記載がある。しかし、この記載は、「静止画」にしろ「動画」にしろ、いずれも時間的な幅のある画像情報という意味で用いられているのであり、「静止画」であること、「動画」であることに格別の意味を持たせているわけではない。
本件決定は、「静止画」と「動画」の区別を、単に撮影対象物が止まっているか動いているかの差としてしかとらえていないため、本件発明の「ページ」、
すなわち、それぞれ格別の意味を持った「静止画」又は「動画」について、「(ある程度の時間的な幅を有する)静止画又は動画」としてしか認定していないのである。
以上によれば、本件発明の(a)「位置決めページ情報記録手段」は、30分の1秒のフレームに記録される「ページ情報」を記録する手段であり、同様に、本件特許情報の(b)「ページ情報再生手段」は、30分の1秒のフレームに記録される「ページ情報」を再生する手段であり、(c)「任意希望位置情報」は、30分の1秒のフレームに記録される「ページ情報」に対応する情報であり、(d)「ページ情報比較手段」は、30分の1秒のフレームに記録される「ページ情報」とそれに対応する「任意希望位置情報」を比較する手段であるから、これらが、引用発明1の(A)「テープ番地信号を記録する手段」、(B)「テープ番地再生手段」、(C)「指令番地信号」、(D)「大小一致判別回路」が、本件特許発明の(a)「位置決めページ情報記録手段」、(b)「ページ情報再生手段」、(c)「任意希望位置情報」、(d)「ページ情報比較手段」にそれぞれ相当するといえないことは明らかである。
2 取消事由2(進歩性判断の誤り) 本件決定は、引用発明1と同2とを組み合わせることによって当業者が容易に本件発明に想到し得たと認定判断したが、誤っている。
引用発明1は、ビデオ技術の分野における、いわゆる「頭出し」(キュー出し)技術を開示したものにすぎず、一方、引用発明2は、単一のディスプレイで、
ビデオ映像とコンピュータ映像を交互又は双方向に表示できるようにする技術を提供するものである。したがって、これらの2つの刊行物に記載された技術同士の間には、相互にほとんど関連性がなく、両発明に接しても、引用発明1に引用発明2を適用しようとする動機付けは生まれない。また、仮に、ビデオ技術の分野における、いわゆる「頭出し」(キュー出し)技術を開示したものにすぎない引用発明1と、単一のディスプレイでビデオ映像とコンピュータ映像を交互又は双方向に表示できるようにするという引用発明2とを組み合わせたとしても、技術的に意義のある発明にはならないことが明らかである。まして、これらを組み合わせたとしても、本件発明に想到し得たといえないことは、明らかとしかいいようがないことである。
(1) まず、本件発明は、ビデオデッキに、ホストコンピュータ(典型的には「パソコン」)を組み合わせたことを本質的特徴としたものであるがゆえに、ホストコンピュータ(典型的には「パソコン」)の機能を最大限に活用して、コントローラには、ビデオテープの音声トラック上に「ビデオ画面の位置決めページ情報」を記録する「ページ情報記録手段」を具備させて、「所望の画面」を表示手段に表示し得るものであることに注目すべきである。この「ページ」の概念の究極が、1/30秒を単位とする、いわゆる「フレーム」である。本件発明は、このように、ビデオテープが持つ膨大な量の画面情報のそれぞれを、ホストコンピュータ(典型的には「パソコン」)を利用して検索することを可能にした、画期的技術なのである。
(2) 一方、引用発明1は、本件発明と違って、ビデオ画面の検索・編集を目的として、ビデオデッキに、文字情報等の入力が可能なホストコンピュータを組み合わせるというような技術思想とは全く無縁であり、ただ、一つの単位となる「プログラム」ごとに「番地信号」を付与しているにすぎないものであるから、ビデオ技術の分野における、いわゆる「頭出し」(キュー出し)技術を開示したものにすぎない。それゆえに、この引用発明1には、引用刊行物1の254頁の「2.4プログラムセレクタの特徴」のDにあるように、「最大00番地(100番地の誤植)の番地付けが可能である。この場合、60分テープで約30秒ごとにプログラムを探索できる。」という効果しかないのである。引用発明1のように、元来、データと関連性のない単なる「頭出し」の技術では、本件特許発明の効果を達成することは、到底、不可能である。
(3) また、引用発明2は、発明の名称のとおり、「コンピュータ映像とビデオ映像を単一のディスプレイブラウン管に表示する方法および装置」という、特殊な用途を対象としたものである。すなわち、引用発明2は、ビデオテープレコーダー機器とコンピューター機器を組み合わせて連動させるソフトウエアを使用する際に、従来はビデオ映像用とコンピューター映像用のそれぞれについてディスプレイを必要としていたため操作や画面の確認が不便であったという点を解決すべき課題と認識し、単一のディスプレイで、ビデオ映像とコンピュータ映像を交互又は双方向に表示できるようにしたという特殊なものである。
ところが、本件発明は、「ビデオテープに収録された画面情報の検索・編集」を目的とするものであって、「ホストコンピュータ」に「任意希望位置情報」を入力しさえすれば、「ホストコンピュータ」に入力された「任意希望位置情報」に対応した「ビデオ画面」を検索して「表示手段」に表示することができるようにしたものであるから、本件発明と引用発明2とでは、発明の課題、目的、作用・効果に顕著な相違がある。
(4) 以上のとおり、引用発明1と引用発明2の両者に接しても、前者に後者を適用しようとする動機付けを見出すことはできず、また、両者を組み合わせたとしても、本件発明に想到し得たとはいえないのである。
被告の反論の要点
本件決定の認定判断は、いずれも正当であって、本件決定を取り消すべき理由はない。
1 取消事由1(一致点の認定の誤り)について 原告の「ページ」について主張は、本件明細書の記載に基づかないものである。
本件発明の「1ページ」が、画面の検索・編集のための所定の時間を有する情報の単位を意味するものであることは、明らかである。ところが、その所定の時間に関して、本件明細書には、「本発明は、前記従来装置の欠点を解消するものであり、自動車販売・・・等あらゆる業種におけるサービス・商品をビデオテープに記録し、録画された画面に例えば数秒毎に連続するページ情報を順次付加し・・・必要な画面を前記ページ情報に基づき即座に検索してテレビ画面に再生し」([発明の課題]の欄)、「このように商品・サービスを撮影したビデオ画面には、後述するように数秒毎(例えば2秒毎)に連続したページ付けが行われ、そのページを利用して画面の検索・編集が行われる。」(4欄29行〜33行)と記載されているのみであるから、本件発明の「1ページ」とは、静止画であろうと動画であろうと、少なくとも検索者もしくは編集者が認識しうる程度の時間幅(例えは数秒)を意味すると解するのが相当である。
一時停止(ポーズ)画面を検索者もしくは編集者が認識し得ることは事実である。一時停止(ポーズ)状態においては、あるフレームの画像がテレビ画面に表示されるものではある。しかし、原告が引用する「キー操作入力されたページ数に対応するものかどうか比較され、一致した時点で所望と思われるビデオ画像をテレビ画面上に映し出す。この時テレビ画面上に映し出されるビデオ画像は静止画像であり、オペレータによって所望しているビデオ画面であることが確認された後、例えばリターンキーが押されることによりビデオ画面の再生が開始され、テレビ画面にはオペレータが所望したページに対応したビデオ画像が映し出されることになる。」(6欄9行〜17行)という記載は、読み出されたページ情報がキー操作入力されたページ数と一致したことによりビデオテープの停止動作が指令され、その後、ビデオテープが完全に停止した時点で再生ヘッドの位置にたまたま居合わせた「フレーム」が再生されることを意味しているにすぎない。
そうである以上、本件明細書の記載から、本件発明が所望の「1フレーム」の「静止画像」の検索を予定しているものとはいえないのである。
原告は、「キー操作入力されたページ数に」「一致」する「1フレーム」の画像をテレビ画面に表すことができる旨主張する。しかし、これによっても、「キー操作入力されたページ数に」「一致」するか否か判断されるのは、「ページ情報」であって、「フレーム」ではない。
原告は、「テレビ画面上に映し出される」「静止画像」こそ「1フレーム」の画像である旨主張する。しかし、検索後に表示されるフレームとは、検索対象とされたページに含まれていた「あるフレーム」という程度のものでしかなく、検索者によってあらかじめ特定されていたフレームではない。
また、本件発明にいう「ページ」は、静止画からなる場合と動画からなる場合のどちらでもよいとされているのであり、少なくとも、動画からなる場合には、
引用発明1の動きのある画像情報からなるプログラムと一致していることが明らかであるから、静止画からなるページにどのような意味付けをしようが、「ページ」についての本件決定の認定判断の正当性は、それにより左右されるものではない。
原告は、ページ情報の付け方について、本件明細書に記載されているのは、
例えば、ある60フレームの一つ一つのフレームにXページ目を意味するデジタル信号を記録し、次の60フレームの一つ一つのフレームにX+1ページ目を意味するデジタル信号を記録し、以下同様に60フレーム毎にX+2、3・・・を意味するデジタル信号を記録すること、すなわち「連続するページ情報を」「順次付加」することである旨主張する。
しかし、本件明細書には、原告の主張の前提である「一つ一つのフレームにページ情報を付与する」ことは何も記載されていない。そもそも、本件発明において、「ページ」もしくは「ページ記録」と「フレーム」とは直接的な関連を有していないのであるから(ちなみに、本件明細書には「フレーム」という用語は一度も登場しない。)、原告指摘の本件明細書の記載は、ページ情報が一つ一つのフレームに記録されるものであることを何ら示すものではない。そのうえ、原告主張のフレームごとの検索手法も、作用効果も、本件明細書に何ら記載されていないのである。
2 取消事由2(進歩性判断の誤り)について 引用発明1と同2は、ともに「ビデオ応用技術」という同一の技術分野に属するだけでなく、さらに「VTR」を用いて画像情報を検索表示する技術として、
技術的な近接性、共通性をも有するものである。また、引用発明1は中央演算処理装置(CPU)やプログラムメモリ等を備えていないものの、簡易かつ正確に制御を行うためなどの目的でコンピュータを利用することは、例えば、引用発明2に「従来一般家庭用ビデオテープレコーダー機器とコンピューター機器とを組み合わせ連動させた双方のソフトウェアを制作しても特に一般家庭用ビデオテープ使用に際してはビデオ映像用又はコンピューター用のそれぞれ別個のディスプレイを見なければならなかった。」(2頁左上欄8行〜13行)と記載されているように社会的に普及しつつあったことであるから、番地記録及び検索表示の実行を「コンピュータ」を利用して行っている引用発明2を、引用発明1に適用し、引用発明1の「ディジタルICにより構成されたプログラムセレクタ」を「コンピュータ」を利用したものに置き換えようとの動機付けは、出願時の技術の自然な流れに沿っておのずと生じ得るものである。そして、上記動機付けに従って両者を組み合わせれば、引用発明1に記載されたプログラムセレクタは、引用発明2に記載されたコンピュータ、インタフェース回路、及びリレー回路に置き換えられる結果、高度化、
多機能化された番地記録、検索表示を簡易かつ正確に行う等、コンピュータを用いることにより当然期待しうる発明となることが予想されるのである。
当裁判所の判断
1 取消事由1(一致点の認定の誤り)について 本件決定が、「「ぺージ」とは静止画又は動画を意味しているものと認められるから、刊行物1に記載のビデオテープ上に複数記録されている「プログラム」に相当するものと認められる。」(決定書9頁17行〜末行)と認定したのに対し、原告は、本件発明にいう「ページ」は、静止画又は動画を意味するものではなく、1フレームごとの静止画像及び数秒間の画像を意味し、したがって、引用発明1の「プログラム」には相当しない旨主張するが、失当である。
(1) まず、そもそも、本件明細書には、特許請求の範囲のみならず、発明の詳細な説明、図面を通じて、どこにも「フレーム」という語自体の記載が全く存在しないという事実(甲第2号証により明らかである。)に着目すべきである。このような場合、特許請求の範囲に、フレームの語自体は用いられていなくとも、フレームに係る技術が記載されていることは、当業者にとって自明である、といい得るような特別の事情のない限り、本件発明が「フレーム」に係る技術を構成要件にしているとはいえないものというべきである。ところが、本件全証拠を検討しても、そのような特別の事情を見出すことはできず、それどころか、本件明細書の記載によれば、本件発明が、特定のフレームの検索に関心を持つものでないことが明らかである。すなわち、次のとおりである。
(イ) 甲第8号証(1996年6月30日株式会社電波新聞社発行「VTRのすべて<増補改訂版>」)によれば、テレビ画面のしくみについて、「飛越走査はインターレースともよばれ、スクリーンの左上から水平方向に、まず粗く半分走査した後、残りの半分は前回の走査の間に点線のようにはめ込んで、全部で525本を書き上げて1こま(1フレーム)を構成します。」(14頁7行〜9行)、
「テレビジョンは30こまですから、1秒間に30フレームを送ることになり、1秒間の走査線数は水平周波数とよばれ、次のように計算します。」(同頁下から2行〜末行)との記載があることが認められ、同記載によれば、テレビ画面における「フレーム」とは、テレビ画面の1こまで、通常、30分の1秒であることが認められる。
一方、甲第2号証によれば、本件明細書中には、実施例につき、「キー操作入力されたページ数に対応するものかどうか比較され、一致した時点で所望と思われるビデオ画像をテレビ画面上に映し出す。この時テレビ画面上に映し出されるビデオ画像は静止画像であり、」(6欄9行〜13行)との記載があり、ここにいうテレビ画面上に映し出される静止画像は、テレビ画面の1こまであるから、1フレームの画像であるということができる。
したがって、原告の、ビデオテープの画像情報の最小単位は、30分の1秒の1フレームであるから、ビデオテープを一時停止(ポーズ)状態にしたときにテレビ画面上に表示されるのが「1フレーム」の画像であり、したがって、「静止画像」は、一時停止状態の「1フレーム」の画像となるとする主張は、実施例についての議論の範囲では、正当ということができる。
(ロ) しかしながら、本件明細書を精査しても、本件発明にいう「ページ」が上記一時停止状態の「1フレーム」の画像である「静止画像」を意味することは、認めることができない。
まず、本件発明の特許請求の範囲が前記第2の2に記載されたとおりのものであることは、当事者間に争いがなく、そこには、「前記ビデオデッキのアフレコ機能を用いて、ビデオテープの音声トラック上にビデオ画面の位置決めページ情報を記録するぺージ情報記録手段」との記載があることが認められる。これによれば、本件発明は、「ビデオ画面の位置決め」のために「ページ情報」を記録するというものであり、「ページ」が「ビデオ画面」の区分を意味しているものであることは記載自体から明らかであるものの、区分される「ビデオ画面」が、1フレームからなる「静止画像」を含んでいるかどうかは、上記特許請求の範囲の文言からは明らかでない。
そこで、次に、発明の詳細な説明の記載をみる。
甲第2号証によれば、発明の詳細な説明の発明の課題欄には、「本発明は、前述従来装置の欠点を解消するものであり、自動車販売、不動産販売、結婚式場、および旅行代理業等あらゆる業種におけるサービス・商品をビデオテープに記録し、録画された画面に例えば数秒毎に連続するページ情報を順次付加し・・・必要な画面を前記ページ情報に基づき即座に検索してテレビ画面に再生し」(3欄31行〜38行)との、実施例の欄には、「このように商品・サービスを撮影したビデオ画面には、後述するように数秒毎(例えば2秒毎)に連続したページ付けが行われ、そのページを利用して画面の検索・編集が行われる。」(4欄29行〜33行)、「ビデオテープの音声トラック上には5バイトで構成されるぺージ情報が1ぺージ分(例えばある静止画(又は動画)の1カット分)に相当する長さの間連続して記録され続ける。」(5欄30行〜33行)、「このようにして、各ページには5バイトからなるぺージ情報が複数個(少なくとも2個)連続して記録される。
各ページに同一構成のぺージ情報が複数個必要な理由は、ぺージ情報の読出し時に、ぺージ数の確認を同一ぺージ情報が少なくとも2個連続して検知されることによって行うためである。」(5欄40行〜45行)との記載があることが認められ、上記記載によれば、本件発明の実施例の「ページ」には、複数個、すなわち、
少なくとも2個以上の同一構成のぺージ情報が連続して記録されるというのであるから、2個以上の同一構成のぺージ情報が連続して記録され得る程度の時間幅を有していることになる。
また、本件明細書の前記「キー操作入力されたページ数に対応するものかどうか比較され、一致した時点で所望と思われるビデオ画像をテレビ画面上に映し出す。この時テレビ画面上に映し出されるビデオ画像は静止画像であり、」との記載の後には、「オペレータによって所望しているビデオ画面であることが確認された後、例えばリターンキーが押されることによりビデオ画面の再生が開始され、
テレビ画面にはオペレータが所望したページに対応したビデオ画像が映し出されることになる。」(6欄9行〜17行)という記載が続いていることが認められ、これらの記載によれば、テレビ画面上に静止画像が映し出された後、ビデオ画面の再生の操作をしなければ、「静止画像」が映し出されたままであり、ビデオ画面の再生が開始されることによって、テレビ画面にはオペレータが所望したページに対応したビデオ画像が映し出されるというのであるから、ここにいう「静止画像」は、
「ページ」の構成要素ではあっても、「ページ」そのものではないことが明らかである。
さらに、「ページ」が「静止画像」と異なることは、本件明細書が、一方で、「1ぺージ分(例えばある静止画(又は動画)の1カット分)」といい、他方で、この時テレビ画面上に映し出されるビデオ画像は静止画像であり、」といって、「静止画」という語句と「動画」という語句とを対置するとともに、「静止画」と「静止画像」とを区別して使用していることからも明らかというべきである。要するに、1フレームからなる「静止画像」は、静止画又は動画の構成要素ではあっても、「静止画」や「動画」ではないのである。
その他本件明細書から、本件発明の「ページ」が1フレームからなる「静止画像」であることを示す記載を見出すことができない。
(2) 原告は、30分の1秒の画像情報(1フレーム)を1ページとした場合には、「キー操作入力されたページ数に」「一致」する「フレーム」の画像をテレビ画面に表示することで検索は終了し、これに対し、2、3秒の画像情報(60〜90フレーム)を1ページとした場合には、「キー操作入力されたページ数に」「一致した時点」の「フレーム」の画像がテレビ画面に表示され、かかる画像が所望したビデオ画像であることが確認された後、「リターンキーが押されることによりビデオ画面の再生が開始され、テレビ画面にはオペレータが所望したページに対応したビデオ画像が映し出されることになる」のであり、このように、本件発明は、所望の「1フレーム」の「静止画像」の検索及び所望の数秒の画像情報(数十フレーム)の検索の双方を予定していると主張している。
しかしながら、原告の主張は、ひっきょう、本件発明の実施例において、
位置決めページ情報が検索され、所望のページの静止画像が表示される場合に、その画像が、結果的に所望のページに属する複数のフレームのうちの一つに一致していることのみを根拠に、本件発明が「フレーム」単位で検索する技術で成り立っているとし、本件明細書に明記されている「静止画」の語を、恣意的に、「1フレーム」の「静止画像」に置き換えているにすぎないものである。
原告の上記主張は、採用できない。
(3) また、原告は、本件発明が「フレーム」単位で検索する技術であるという主張を裏付けるものとして、ページ情報の付け方についての、本件明細書中の「録画された画面に例えば数秒毎に連続するページ情報を順次付加し」(3欄34行〜35行)、「数秒毎に(例えば2秒毎)に連続したページ付けが行われ」(4欄31行〜第32行)という記載を挙げ、これらによれば、本件発明は、例えば、ある60フレームの一つ一つのフレームにXページ目を意味するデジタル信号を記録し、次の60フレームの一つ一つのフレームにX+1ページ目を意味するデジタル信号を記録し、以下同様に60フレーム毎にX+2、3・・・を意味するデジタル信号を記録するもの、すなわち「連続するページ情報を」「順次付加」するものということになる旨主張している。
しかしながら、原告の上記主張は、理解することのできない主張という以外にないものである。仮に、原告の挙げる本件明細書の記載から、本件発明が、例えば、ある60フレームの一つ一つのフレームにXページ目を意味するデジタル信号を記録し、次の60フレームの一つ一つのフレームにX+1ページ目を意味するデジタル信号を記録し、以下同様に60フレーム毎にX+2、3・・・を意味するデジタル信号を記録するものであるということが導き出されるとしても、そのことは、本件発明がフレーム単位で検索する技術であることとは全く結び付かず、逆に、本件発明がフレーム単位で検索する技術ではないことを物語るものになる以外にないからである(同一構成のデジタル信号が例えば60という複数のフレームの一つ一つに記録されている以上、特定の一つのフレームの検索は不可能である。)。
原告の上記主張は、採用できない。
(4) 引用刊行物1についてみる。
同刊行物に、「プログラムセレクタとモニタテレビおよび該プログラムセレクタと該モニタテレビに接続された再生時にオーディオダビング可能な機能を持ちリモコン可能なVTRとからなる画像情報検索装置であって、該プログラムセレクタは、VTR再生モードにおいてVTRのオーディオダビングによって行い、ビデオテープのオーディオトラック上で停止したいプログラム(画像情報)の先頭位置にテープ番地信号を記録する手段と、検索指令操作ボタンの操作により、テープ走行により前記番地信号がVTR音声出力端子よりプログラムセレクタに加えられると、キーコードの到来によりテープ番地ゲート回路が開き、テープ番地信号を再生する手段を備え、該再生されたテープの番地信号と番地設定SWにより設定された指令番地信号とを照合比較し、指令番地信号とテープ番地信号が一致したとき及び大きいときもしくは小さいときで判別信号を出力する大小一致判別回路と、この大小一致判別回路からの出力に基づいて、前記VTRの早送り、巻き戻し、停止、
停止後の再生などの各種動作の制御を行うテープ走行制御回路とを具備し、プログラムセレクタの番地設定SWで設定された前記任意の指令番地信号に対応したプログラムのビデオ画面を検索し、前記モニタテレビに表示するビデオ画面検索装置。」(決定書6頁10行〜7頁18行)との技術(引用発明1)が記載されていることは、原告も認めるところである。
また、甲第3号証によれば、引用刊行物1には、「ビデオ産業の発展に伴い画像として伝達される情報量は増大しており、目的とする画像情報を容易に検索できる画像情報検索システムの開発が要望されている。こうした要求に対しすでにマイクロフィルムを用いた検索装置やVTRを用いた1フレームまたは1フィールドの静止画像を磁気テープに記録し、任意の指令に基づき目的とするフレームまたはフィールドを検索する装置などが発表されているが、いずれも静止画像を検索することを目的とし、動きのある画像情報は得られない。そこでわれわれは、動きのある画面情報を任意の指令に基づき検索する安価な装置をリモコン可能な統一I形VTRを対象として開発した。」(250頁左欄2行〜14行)、「統一I形VTRでは、7号リールを使用し、最大60分の録画時間であることおよび1プログラムの内容がほぼ理解しうる最小時間が30秒以上であることから、100番地の場合、1プログラムの所要時間が36秒となり、」(251頁右欄20行〜24行)との記載があり、第6図には、「各プログラムとテープ番地」との見出しで、始端から終端まで00番地から99番地まで100に区分され、各区分が「プログラムA」、「プログラムB」、「プログラムC」・・・「プログラムX」、「プログラムY」、「プログラムZ」とされた図が示されていることが認められる。
以上によれば、引用発明1にいう「プログラム」とは、録画された「動きのある画像」、すなわち、「動画」に係る画像情報であることが認められる。
そうすると、本件発明にいう「ページ」と引用発明1にいう「プログラム」とは、少なくとも「動画」に係る画像情報である点で共通しているものというべきである。
(5) 原告は、本件決定において、本件発明の「ページ情報」が引用発明1におけるビデオテープの「番地」に相当すると認定した点を争い、本件発明の「ページ情報」は、30分の1秒のフレームに記録される「情報」であるから、刊行物1記載の「プログラム(画像情報)の先頭位置に」「記録」される「テープ番地」とは全く異なる旨主張する。
しかしながら、本件発明の特許請求の範囲の「ビデオテープの音声トラック上にビデオ画面の位置決めページ情報を記録するぺージ情報記録手段」との記載によれば、「ページ情報」とは、ビデオ画面の位置決めのためにビデオテープの音声トラック上に記録されるものであることが明らかであるものの、「ページ情報」をどのように記録するかを規定する記載を、特許請求の範囲中に見出すことはできない。
また、本件明細書の発明の詳細な説明の発明の課題欄に、「本発明は、前述従来装置の欠点を解消するものであり、自動車販売、不動産販売、結婚式場、および旅行代理業等あらゆる業種におけるサービス・商品をビデオテープに記録し、
録画された画面に例えば数秒毎に連続するページ情報を順次付加し・・・必要な画面を前記ページ情報に基づき即座に検索してテレビ画面に再生し」(3欄31行〜38行)との記載があることは、前記(1)(ロ)認定のとおりであり、同記載によれば、「ページ情報」は、必要な画面を検索し、再生するために、ビデオテープに、
例えば数秒毎に連続して記録されるものであることが認められる。しかし、ここには、「ページ情報」をどのように記録するかにつき、上記以上に明らかにする記載が存在しないことは、甲第2号証より明らかである。
以上のとおり、「ページ情報」とは、ビデオ画面の位置決めをするためにビデオテープ上に記録される信号であることを意味することは明らかであるものの、「ページ情報」の記録される位置については、特許請求の範囲及び本件明細書の発明の詳細な説明中の本件発明自体に関する記載を検討しても、「先頭位置」を除外していることを示す記載を見出すことはできない。また、「ページ情報」が30分の1秒のフレームに記録されるなどといった限定的な解釈を導き出し得る余地もない。
一方、引用発明1には、前記(4)に認定したとおりの技術が記載されており、また、引用刊行物1には、「第4図は・・・番地信号をオーディオトラック内に記録した状態を示すもので、」(251頁左欄末行〜右欄2行)、「第5図は、
番地信号の内部構成を示すものであり、番地信号は、直列BCDコード化し、両端に各1ビットの初めマークおよび終わりマークで構成されている。」(同欄13行〜15行)との記載があることが認められる。以上によれば、引用発明1の「番地信号」は、ビデオ画面の位置決めをするためにビデオテープ上に記録される信号であり、かつ、プログラム(画像情報)の先頭位置に記録されるものであることが認められる。
そうすると、本件発明の「ページ情報」が引用発明1におけるビデオテープの「番地」に相当することは明らかである。
本件発明の「ページ情報」が30分の1秒のフレームに記録される「情報」であるとする原告の主張は、実施例の記載を根拠とし、実施例に記載されているにすぎない技術事項を本件発明の構成として論じているものであり、前提において失当である。
以上によれば、本件決定が、「「ぺージ」とは静止画又は動画を意味しているものと認められるから、刊行物1に記載のビデオテープ上に複数記録されている「プログラム」に相当するものと認められる。」と認定したことに誤りはない。
原告の取消事由1に関する主張は、理由がない。
2 取消事由2(進歩性判断の誤り)について (1) 引用刊行物2に、「コンピュータプログラムによって、ビデオテープの音声チャンネルに予めアドレスを順次記録しておき、ビデオテープに録画された映像の中から必要な映像の「始まり」と「終わり」のアドレスを検索して必要な映像を表示するビデオ映像表示装置が記載されており、該装置はコンピュータとテレビ受像機と、このテレビ受像機に接続されたビデオテープレコーダとこのコンピュータとVTRとの間に接続されるインターフェース回路及びリレー回路とで構成される」(決定書8頁7行〜16行)という技術(引用発明2)が記載されていることは、当事者間に争いがない。
上記記載によれば、引用発明2は、ビデオテープに記録された商品カタログ等をビデオテープに記録されたアドレスで検索してディスプレイに表示させるものであり、その構成、すなわち、VTR、及びCPU等の検索制御装置、及びディスプレイ等構成も、引用発明1と共通性を有するとともに、その用途においても共通性を有するものであることが明らかである。
(2) 本件発明と引用発明1とが、前者が「ホストコンピュータ」とそのコンピュータの指令により動作する「ホストコンピュータとビデオデッキとの間に接続されるコントローラ」を備えているのに対し、後者がプログラムセレクタを用いている点で相違すること(決定書11頁14行〜19行参照)は、当事者間に争いがない。
引用発明2は、上記のとおり、コンピュータによるビデオデッキ制御技術である。また、低コスト、省スペース、処理の迅速性等が普遍的な技術課題であることは当裁判所に顕著である。そうすると、引用発明1において、「プログラムセレクタ」によって、ビデオデッキ制御を行っているのに対し、「プログラムセレクタ」に代えて、引用発明2の処理能力、多機能、高速の情報検索等で技術的に優れた「ホストコンピュータとビデオデッキとの間に接続されるコントローラ」によってビデオデッキ制御を行ってみようとすることは、当業者が選択肢として当然に考えることというべきである。
そして、ビデオデッキ制御について、「プログラムセレクタ」に代えて「ホストコンピュータとビデオデッキとの間に接続されるコントローラ」に置き換えれば、コンピュータを用いることにより、高度の処理能力を取得し、多機能、高速の情報検索が可能となることは自明である。
(3) 原告は、本件発明は、ビデオデッキに、ホストコンピュータを組み合わせたことを本質的特徴としたものであるがゆえに、ホストコンピュータの機能を最大限に活用して、コントローラには、ビデオテープの音声トラック上に「ビデオ画面の位置決めページ情報」を記録する「ページ情報記録手段」を具備させて、「所望の画面」を表示手段に表示し得るものであることに注目すべきであり、この「ページ」の概念の究極が、1/30秒を単位とする、いわゆる「フレーム」なのであり、
したがって、本件発明は、ビデオテープが持つ膨大な量の画面情報を、ホストコンピュータ(典型的には「パソコン」)を利用して検索することを可能にした画期的技術である旨主張する。
しかしながら、本件発明における「ページ」の概念の究極が、1/30秒を単位とする、いわゆる「フレーム」なのであるとの原告の主張が、採用できるものでないことは、前記1(取消事由1)で認定判断したとおりである。また、ビデオデッキに、ホストコンピュータを組み合わせれば、ビデオテープが持つ膨大な量の画面情報を検索することが可能になることは、自明である。
その余の原告の主張も、前記認定判断に照らし、採用できない。
3 以上のとおりであるから、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、その他本件決定にはこれを取り消すべき瑕疵は見出せない。
よって、本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 山田知司
裁判官 宍戸充