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事件 |
平成
12年
(ヨ)
22138号
仮処分命令申立事件
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債権者 株式会社インターナショナルサイエンティフィック 右代表者代表取締役 【A】 右代理人弁護士 山田正彦 同 平賀睦夫 同 川村篤史 同 寒河江 孝允 同 武藤元右補佐人弁理士 【B】 債務者 ビットキャッシュ株式会社右代表者代表取締役 【C】 右代理人弁護士 田中収 同 宮下正彦右補佐人弁理士 【D】 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2000/12/12 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事仮処分 |
主文 |
一 本件申立てをいずれも却下する。 二 申立費用は債権者の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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事案の概要
債権者は、インターネット接続サービス事業の用に供するシステムを使用する債務者の行為は、債権者の有する特許権を侵害するとして、同システムの使用の差止め及び執行官保管を求めた。 一 前提となる事実(争いない事実及び審尋の全趣旨により認められる事実) 1 債権者の特許権 債権者は、以下の特許権(以下「本件特許権」といい、右特許権に係る発明を「本件発明」という。)を有している。 (一) 発明の名称 インターネットの時限利用課金システム (二) 出願日 平成八年七月一一日 (三) 出願番号 特願平八ー二〇一一六六 (四) 登録日 平成一一年六月一八日 (五) 登録番号 第二九三九七二三号 (六) 特許請求の範囲 別紙特許公報写しの該当欄記載のとおり このうち、請求項一は以下のとおりである。 クライアントにインターネットとの接続サービスを提供するターミナルサーバと、該ターミナルサーバからの指示によりクライアントから入力された個別情報に基づいてインターネットとの接続可否を確認する認証サーバと、該認証サーバに連動し各クライアントの個別情報及び予め設定された利用可能な時間を示す接続度数から構成される認証データを各クライアント毎に一つのレコード単位として管理する拡張認証データベースを各レコード単位毎に有する認証データベースと、該拡張認証データベースに連動し各クライアントの接続利用時間に合わせて接続料金を計算して接続度数を逐次更新する課金サーバとを備え、該拡張認証データベースで管理されるクライアントの接続度数が〇になるまでの間に限りインターネットの接続サービスを提供してなることを特徴とするインターネットの時限利用課金システム 2 本件発明の構成要件 (A)クライアントにインターネットとの接続サービスを提供するターミナルサーバを備えること (B)前記ターミナルサーバからの指示によりクライアントから入力された個別情報に基づいてインターネットとの接続可否を確認する認証サーバを備えること (C)前記認証サーバに連動し各クライアントの個別情報及び予め設定された利用可能な時間を示す接続度数から構成される認証データを各クライアント毎に一つのレコード単位として管理する拡張認証データベースを各レコード単位毎に有する認証データベースを備えること (D)前記拡張認証データベースに連動し各クライアントの接続利用時間に合わせて接続料金を計算して接続度数を逐次更新する課金サーバを備えること (E)該拡張認証データベースで管理されるクライアントの接続度数がゼロになるまでの間に限りインターネットの接続サービスを提供すること 3 債務者の行為 債務者は、「BitCash」(ビットキャッシュ)という名称の、プリペイド型電子マネーを利用するインターネット少額決済システム(以下「債務者システム」という。)を運営している。なお、債務者システムの構成については、後記のとおり争いがある。 二 争点 1 債務者システムの構成 (一) 債権者の主張 債務者システムの構成は、別紙イ号システム目録記載のとおりである。 (二) 債務者の認否 否認する。 2 本件発明の構成要件の充足性 (一) 債権者の主張 債務者システムは、本件発明の構成要件をすべて充足する。 (二) 債務者の認否 否認する。 |
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判断
当裁判所は、@債務者が実施している債務者システムの構成及び内容は、債権者の主張するものであると認められず、A進んで、当裁判所が認定した債務者システムの構成及び内容を前提に、本件発明の構成要件と債務者システムの構成を対比してみても、債務者システムは、本件発明の構成要件を充足しないことから、本件申立ては理由がないと解する。この点を敷衍する。 一 争点1(債務者システムの構成及び内容) 債権者は、債務者システムの構成及び内容は、別紙イ号システム目録記載のとおりであると主張する。しかし、本件記録によるも、債務者が実施している債務者システムの構成及び内容が、右主張のとおりであると認定することはできない。 したがって、争点1(一)についての債権者の立証がないことになるので、本件申立ては、その余の点を判断するまでもなく理由がない。 のみならず、証拠(疎乙二、四)及び審尋の全趣旨によれば、債務者システムの構成及び内容は、以下のとおりであると認められる。 1 債務者システムは、インターネットの利用者が、インターネット上でデジタル情報として提供される画像、音声又はゲーム等を購入し、あるいは検索等のサービスを利用する際に(インターネット等を通じて提供される右のようなマルチメディア情報を、以下「コンテンツ」という。)、プリペイド方式のBitCashカード(以下「債務者カード」という。なお、債務者システムではシート方式、オンライン方式を利用することもできるが、カード方式を例に説明する。)を利用してその代金決済を行うことを内容とするものである。 債務者システムのサーバシステムは、利用者及び加盟店と情報のやり取りを行うWebサーバ(以下「ウェブサーバ」という。)と、商品情報、債務者カードの情報、取引情報等を管理するデータベースサーバとから構成される。 2 利用者が、債務者システムを利用して、インターネット上でコンテンツを購入し、その代金決済を行う手順の概要は、以下のとおりである。 (一) 利用者は、債務者カードをその販売店で購入する。特別のキャラクターを印刷したカード等を除き、利用者には、カードの購入金額と同じクレジット数(債務者システムによる代金決済に供し得る単位)が付与される(一〇〇〇円のカードには一〇〇〇クレジットが与えられる。)。 債務者カードの裏面には、ひらがな一六文字及び英数字二四文字からなるカード情報が記載され、文字を覆う銀色の部分をこすることによってこれを利用できるようにされている。テレフォンカードなどとは異なり、債務者カードに磁気情報や電子情報は書き込まれず、カード情報の入力によって、カード所持者を認証する方式とされている。 (二) 債務者システムは、インターネットとの接続サービスを提供するものではなく、債務者システムを利用してコンテンツを購入しようとする者は、別途、 インターネットとの接続サービスを提供する業者と契約するなどの方法によって、 インターネットに接続しなければならない(パソコンによる接続に限らず、テレビ、ゲーム機による接続も含まれる。)。したがって、利用者のインターネットとの接続に係る認証については、債務者との間ではなく、前記接続サービス業者との間で行われる。 (三) 利用者がインターネットに接続し、債務者システムの加盟店がインターネット上に開設したページにアクセスして、購入を希望するコンテンツを選択すると(複数の代金決済方法がある場合、債務者システムを利用する旨をも選択する。)、債務者システムのウェブサーバは、利用者に対し、決済に利用する債務者カードのカード情報を入力するよう要求する。 利用者がカードの裏面に記載されたカード情報を送信すると、債務者システムのデータベースサーバは、当該カードについて、当該コンテンツの価格に対応するクレジットの残額が存するか否かを確認する。債務者システムが、右の確認が行われた旨を加盟店のサーバーに送信すると、加盟店のサーバは、利用者に対し、当該コンテンツの配信を開始する。 (四) 右の配信が開始されると、債務者システムは、クレジットの残額から、当該コンテンツの価格に対応するクレジット数を差し引き、データベースを更新して、新たなクレジットの残額を記録する。 債務者は、当該コンテンツの価格から、カード販売店のマージンや債務者の決済手数料その他を控除した額を、コンテンツを販売した加盟店に支払い、決済を了する。 (五) なお、音楽や雑誌の閲覧等、一定時間内利用し得ることを特徴とするコンテンツが存在するが、債務者システムでは、これらのコンテンツについても、 利用時間に応じて課金する方式ではなく、利用者が利用を開始する際に所定の料金を一括して課金する方式を採用している。 また、利用者が右コンテンツの利用を開始し、所定の料金についての課金処理が行われると、その後の利用関係は利用者と加盟店の間で処理される。すなわち、右のコンテンツに関する利用状況の確認、及び限度を超過した利用者に対しする配信の停止等は加盟店において決せられるのであって、債務者システムにおいて利用者の利用状況を管理し、コンテンツの配信を停止することはない。 二 争点2(本件発明の構成要件の充足性) 前記のとおり債権者の主張は理由がないが、念のため、進んで、右認定した債務者システムの構成を前提として、本件発明の構成要件と債務者システムの構成とを対比する。 債務者システムは、以下のとおり、本件発明の構成要件AないしEを充足しない。 1 構成要件Aの充足性 (一) 特許請求の範囲の構成要件Aに係る部分の解釈 @本件明細書の「特許請求の範囲」に、「クライアントにインターネットとの接続サービスを提供するターミナルサーバ(略)を備え」と記載されていること、A「発明の詳細な説明」欄に、「本願発明は(略)不特定多数の者にすぐにインターネットを利用させるようにしたサービスの提供方法に係り」と記載されていること(特許公報4欄八行ないし一〇行)、B同欄に、「本願発明は、多数のクライアントにインターネットとの接続を提供することのできるターミナルサーバ(略)を備えてなるものであり」と記載されていること(公報5欄三〇行ないし四五行)、C本件発明がインターネットの時限利用課金システムに関するものであることに照らすならば、同構成要件は、ターミナルサーバを備え、利用者にインターネットとの接続サービスを提供するものであることを必須とする趣旨であることは明らかである。 この点、債権者は、「インターネットとの接続サービス」とは、インターネット接続サービスそれ自体の提供に限られず、インターネットに接続した後に、インターネット上で利用し得る様々なサービスを指すと主張し、その根拠として、実施例の欄に「本願発明においては、インターネットの利用に際して何ら制限されることがないので、(略)インターネットにおける有料情報に対する料金を認証データにおける接続度数から徴収をする情報提供料徴収プログラム(略)を設けたり(略)することも出来る」との記載が存すること(公報9欄四四行ないし10欄五行)を掲げる。しかし、前記「特許請求の範囲」の文言及び他の部分の記載に照らして、前記実施例は、本件発明によるインターネットへの接続と他のサービスとを組み合わせることが可能である旨を付加的に述べたものにすぎないことは明らかであるから、実施例の記載により前記の解釈を左右することはできず、債権者の右主張は失当というべきである。 (二) 対比 債務者システムは、前記認定のとおり、インターネットとの接続サービスを提供するものではなく、利用者がインターネット接続業者と契約するなどして、別途インターネットとの接続を確保していることを前提に、インターネット上で購入したコンテンツの代金決済を行うことを内容とするものである。また、債務者システムには、ウェブサーバ及びデータベースサーバが存在するが、これらは、 利用者に対し代金決済サービス等を提供するためのものであって、利用者にインターネット接続サービスを提供するために設けられたものではない。 この点、債権者は、債務者システムの加盟店のサーバが、「ターミナルサーバ」に当たるとも主張する。しかし、加盟店のサーバは、そもそも債務者システムに属するものではなく、商品の購入情報等を提供するにとどまり、利用者にインターネットとの接続サービスを提供するものではないから、この点についての債権者の主張は採用できない。 したがって、債務者システムは、利用者に「インターネットとの接続サービスを提供するターミナルサーバを備える」ものではなく、構成要件Aを充足しない。 2 構成要件Bの充足性 (一) 構成要件Bの解釈 @本件明細書の「特許請求の範囲」に、「該ターミナルサーバからの指示によりクライアントから入力された個別情報に基づいてインターネットとの接続可否を確認する認証サーバ(略)を備え」と記載されていること、A「発明の詳細な説明」欄に、「インターネットとの接続を依頼するクライアントは指定された個別情報を入力し、(略)入力されたクライアントの個別情報の可否は、ターミナルサーバからの指示により、認証サーバが連動する拡張認証データベースから対応するクライアントの認証データを抽出することが出来たか否かにより確認し、該ターミナルサーバにその結果を報告することによりなされる」と記載されていること(公報7欄四五行ないし8欄五行)に照らすならば、同構成要件は、利用者がターミナルサーバに接続した後、利用者が入力した個別情報(ID、パスワード等)に基づき、登録された利用者として認証し、インターネットとの接続を許すか否かを決する認証サーバを備えるものであることを必須とする趣旨であることは明らかである。 (二) 対比 債務者システムには、前記認定したとおり、ウェブサーバ及びデータベースサーバが備えられているが、これらは利用者が入力したカード情報によって、 債務者システムの利用に係る認証等を行うものであって、インターネットとの接続の可否に係る認証を行うものではない。 したがって、債務者システムは、「ターミナルサーバからの指示によりクライアントから入力された個別情報に基づいてインターネットとの接続可否を確認する認証サーバ」を備えていないので、構成要件Bを充足しない。 3 構成要件Cの充足性 (一) 構成要件Cの解釈 @本件明細書の「特許請求の範囲」に、「各クライアントの個別情報及び予め設定された利用可能な時間を示す接続度数から構成される認証データ」と記載されていること、A「発明の詳細な説明」欄にも同様の記載があること(公報5欄三六行ないし三八行、6欄八行ないし九行)、B同欄に、「接続後は該拡張認証データベースで管理されるクライアントの接続度数が〇になるまでの間に限り、 (略)インターネットの接続サービスが提供される」と記載されていること(公報5欄四七行ないし五〇行)、C本件発明がインターネットの時限利用課金システムに関するものであることに照らすならば、同構成要件は、IDやパスワードといった利用者の個別情報に加え、各利用者ごとにあらかじめ設定された利用可能時間を示す接続度数を、インターネットとの接続の可否の判断にかかわる認証データの内容として管理するものであることを必須とする趣旨であることが明らかである。 さらに、D本件明細書の「特許請求の範囲」に、「認証データを各クライアント毎に一つのレコード単位として管理する拡張認証データベースを各レコード単位毎に有する認証データベース(略)を備え」と記載されていること、E「発明の詳細な説明」の欄に、「拡張認証データベースは、多数のクライアントに対応する多くのログイン名、パスワードといった個別情報や利用可能な接続時間を示す接続度数からなる認証データをログイン名をキーに一つのレコード単位として各クライアント毎に管理してなるものであり、認証サーバにおける認証データベースの一つのレコード単位を、前記多数の認証データを管理する拡張認証データベースから構成されるようにしてなる」と記載されていること(公報8欄六行ないし一三行)に照らすならば、同構成要件は、認証データベースのレコード(記録)単位ごとに拡張認証データベースを設け、拡張認証データベースの各レコード単位ごとに各利用者の認証データを管理するものであることを必須とする趣旨であることが明らかである。 (二) 対比 債務者システムにおいては、前記のとおり、カード情報や残存するクレジット数の管理は行われているが、接続の許否を決する認証データの内容として、 「各利用者ごとにあらかじめ設定された利用可能時間を示す接続度数」が管理されているとは認められず、また、カード情報等の認証データが、認証データベースと拡張認証データベースによって階層的に管理されているとも認められない。 なお、債権者は、一定の料金に対し一定時間利用できる旨定められたコンテンツを利用する場合においては、残存するクレジット数は、同構成要件所定の「予め設定された利用可能な時間を示す接続度数」に該当する旨主張する。しかし、前記認定のとおり、債務者システムにおいては、利用者が利用を開始する際に所定の料金を一括して課金し、その後の利用の管理は加盟店にゆだねるという方式を採用しているところ、債務者システム自身が、利用者の利用状況を管理し、利用時間に応じてクレジット数を逐次減少させる方式を用いているわけではないので、 債務者システムにおける残存するクレジット数は、「予め設定された利用可能な時間を示す接続度数」に当たらない。この点の債権者の主張は失当である。 したがって、債務者システムは、「認証サーバに連動し各クライアントの個別情報及び予め設定された利用可能な時間を示す接続度数から構成される認証データを各クライアント毎に一つのレコード単位として管理する拡張認証データベースを各レコード単位毎に有する認証データベース」を備えていないので、構成要件Cを充足しない。 4 構成要件Dの充足性 (一) 構成要件Dの解釈 @本件明細書の「特許請求の範囲」に、「該拡張認証データベースに連動し各クライアントの接続利用時間に合わせて接続料金を計算して接続度数を逐次更新する課金サーバとを備え」と記載されていること、A「発明の詳細な説明」欄に、「インターネットにおける課金システムは、接続の確立と切断の時にターミナルサーバが結果をホストコンピュータに送り、ホストコンピュータで料金を計算してなるものであるため、接続切断するまでその料金計算が出来ない」ことが従来技術における課金方法の問題点である旨指摘されていること(公報5欄一一行ないし一五行)、B同欄に、「本願発明における課金サーバは、ターミナルサーバに対し一定時間毎に各クライアントの接続状況を問い合わせることにより接続時間を確認し接続料金を計算して接続度数を管理するとともに、利用継続の可否を該ターミナルサーバに知らせてなるもの、もしくは、ターミナルサーバから一定時間毎に送られてくる知らせにより接続時間を確認し接続料金を計算して接続度数を管理するとともに、利用継続の可否を該ターミナルサーバに知らせてなるものでもある」と記載されていること(公報7欄四行ないし一二行)、C同欄に、「課金サーバは、ターミナルサーバに対し一定時間毎に各クライアントの接続状況を問い合わせることにより接続時間を確認し、相応する接続料金を計算して認証データにおける接続度数の更新を逐次行う」と記載されていること(公報9欄五行ないし九行)、D本件発明がインターネットの時限利用課金システムに関するものであることに照らすならば、同構成要件は、利用者がインターネットに接続中、その接続利用時間に応じて接続料金を計算し、これに基づいて拡張認証データベースにある当該利用者の接続度数を逐次更新する課金サーバを備えるものであることを必須とする趣旨であることは明らかである。 (二) 対比 債務者システムにおいては、前記認定のとおり、ウェブサーバ及びデータベースサーバが設けられ、これらによって、コンテンツ購入に対する課金の処理を行っているが、認証サーバと拡張認証サーバによるデータ管理は行われていないのみならず、利用者の利用状況を管理し、利用時間に応じて逐次減少させる接続度数に相当するものも存在しない。 したがって、債務者システムは、「拡張認証データベースに連動し各クライアントの接続利用時間に合わせて接続料金を計算して接続度数を逐次更新する課金サーバ」を具備しないので、構成要件Dを充足しない。 5 構成要件Eの充足性 (一) 構成要件Eの解釈 @本件明細書の「特許請求の範囲」に、「該拡張認証データベースで管理されるクライアントの接続度数が〇になるまでの間に限りインターネットの接続サービスを提供し」と記載されていること、A「発明の詳細な説明」欄に、「接続後は該拡張認証データベースで管理されるクライアントの接続度数が〇になるまでの間に限り、連続使用、断続使用の別あることなくインターネットの接続サービスが提供される」と記載されていること(公報5欄四七行ないし五〇行)、B同欄に、 「クライアントが既にログインしていて、現在の時刻が徴収実施時刻以上の場合は、接続時間に相応する料金を計算し認証データにおける接続度数から該当度数分だけ逐次徴収することとする。もし、該接続度数が〇未満となった場合は、ポートをリセットして接続を切断する」と記載されていること(公報9欄二三行ないし二七行)、C本件発明がインターネットの時限利用課金システムに関するものであることに照らすならば、同構成要件は、拡張認証データベースで管理される利用者の接続度数がゼロとなるまでの間に限り、当該利用者にインターネットとの接続を許し、接続度数がゼロとなった場合には、インターネットとの接続を切断するものであることを必須とする趣旨であることは明らかである。 (二) 対比 債務者システムにおいては、前記認定のとおり、インターネットとの接続は、別途、利用者とインターネット接続業者との間で行われることから、利用者のクレジット数がゼロになったとしても、当該利用者は、債務者システムを利用してコンテンツを購入することができなくなるにとどまり、これによってインターネットとの接続が切断されたり、あるいはインターネットに接続できなくなるものではない。 この点、債権者は、債務者システムは、利用者の利用に伴い残存するクレジット数を逐次更新し、クレジット数がゼロになると、これを加盟店のサーバに送信してコンテンツの配信を停止させるものであり、このことは、「クライアントの接続度数がゼロになるまでの間に限りインターネットの接続サービスを提供」することに当たる旨主張する。しかし、加盟店のサーバは、インターネットとの接続サービスを提供するものではないから、右の主張は採用できない。 そうすると、債務者システムは、「拡張認証データベースで管理されるクライアントの接続度数がゼロになるまでの間に限りインターネットの接続サービスを提供する」ものではないから、構成要件Eを充足しない。 三 以上のとおり、債務者システムが本件特許権を侵害するとの債権者の主張は失当であり、本件申立ては理由がない。 平成一二年一二月一二日 |
裁判長裁判官 | 飯村敏明 |
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裁判官 | 八木貴美子 |
裁判官 | 谷有恒 |