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関連審決 無効2004-80007
関連ワード 物の発明 /  使用方法 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  公知技術 /  技術常識 /  遡及 /  均等 /  容易に想到(容易想到性) /  特許発明 /  構成要件 /  設定登録 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 17年 (行ケ) 10224号 審決取消請求事件
原告 西日本搬送機有限会社
訴訟代理人弁理士 三好秀和
同 岩崎幸邦
同 中村友之
同 小西恵
被告 株式会社旭電機製作所
訴訟代理人弁理士 清原義博
同 坂戸敦
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2005/07/20
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 (1) 特許庁が無効2004-80007号事件について平成16年9月14日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告は,発明の名称を「ねぎ類の皮むき装置」とする特許第3430460号の特許(以下「本件特許」という。請求項の数は1である。)の特許権者である。
本件特許に係る出願は,平成12年3月3日に特許出願された特願2000-59551号の一部を平成13年10月11日に新たな特許出願としたものであって,平成15年5月23日に本件特許の設定登録がされた。
原告は,平成16年4月8日,本件特許につき無効審判の請求をした。
特許庁は,この請求を無効2004-80007号事件として審理し,その結果,平成16年9月14日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,審決の謄本は同月27日に原告に送達された。
2 特許請求の範囲(以下,請求項1に係る発明を「本件発明」という。) 「【請求項1】噴射口側端面にその一方の縁部から他方の縁部に至る断面U字状の凹溝が形成され,ノズル口から前方に向けて放射角が鋭角の扇形状に均等圧力液が集中して且つ薄い幅で噴射されるようになっている複数の皮むきノズルを備えてなることを特徴とするねぎ類の皮むき装置。」 3 審決の理由 別紙審決書の写しのとおりである。要するに,本件発明は,実願昭51-58875号(実開昭52-151197号)のマイクロフィルム (甲第1号証。以下「刊行物1」という。)及び実願平2-93933号(実開平4-53474号)のマイクロフィルム(甲第2号証。以下「刊行物2」という。)に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められないから,特許法29条2項の規定に反して特許されたものということはできず,無効とすることはできない,とするものである。
審決が上記結論を導くに当たり,本件発明と刊行物1に記載された発明との一致点・相違点として認定したところは,次のとおりである。
(一致点) 「複数の皮むきノズルを備えてなるねぎ類の皮むき装置」である点。
(相違点) 本件発明では,ノズルが「噴射口側端面にその一方の縁部から他方の縁部に至る断面U字状の凹溝が形成され,ノズル口から前方に向けて放射角が鋭角の扇形状に均等圧力液が集中して且つ薄い幅で噴射されるようになっている」のに対し,刊行物1に記載のノズルはそのような構成を備えているのか否か不明である点。
原告主張の取消事由の要点
審決は,本件発明と刊行物1に記載された発明との相違点についての判断を誤った結果,本件発明は,刊行物1及び2に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないとの誤った結論に至ったものであり,違法なものとして取り消されるべきである。
(1) 本件発明と刊行物1に記載された発明との一致点は,双方とも「複数の皮むきノズルを備えてなるねぎ類の皮むき装置」である点であるところ,刊行物1の第3図には,ねぎの茎部から根部に向けて特定の場所にノズル8により洗浄水を噴射し,その噴射圧によりねぎAの不要な外皮の剥離を行う様子が示されている。すなわち,刊行物1には,ねぎの茎部から根部という特定の場所に圧力水を当てるためのノズルが記載されているのであるから,一致点として認定された皮むきノズルは,このような技術的意味を有するものである。この点に関して,審決は,「本件特許において用いられているノズルはねぎ類の皮をむくことを目的とするものであるから,均一な散布ではなく,ねぎの茎部から根部という特定の場所に圧力水を当てることが必要とされるものである」と述べ(審決書4頁25〜27行),上記の技術思想が刊行物1にも刊行物2にも記載されないものとして認定判断しているが,上記技術思想は刊行物1に記載されており,審決の上記認定判断は誤りである。
(2) 本件発明の特徴は,ねぎ類の皮むき装置の皮むきノズルとして「噴射口側端部にその一方の縁部から他方の縁部に至る断面U字状の凹溝が形成され」たノズルを採用した点にある。
刊行物1には,上記のとおり皮むきノズルが示されているが,その形状は特定されていない。
本件発明の容易推考性の判断は,刊行物1記載の皮むきノズルとして,「噴射口側端部にその一方の縁部から他方の縁部に至る断面U字状の凹溝が形成され」たノズルを採用することが容易に推考できたかという点に尽きるところ,刊行物2には,このようなノズルが,同じ農業の技術分野において公知技術として存在することが示されている。
すなわち,審決は,刊行物2に「噴射口側端面にその一方の縁部から他方の縁部に至る断面U字状の凹溝が形成されたノズル」が記載されていると認定しているが,これは,本件発明の「噴射口側端部にその一方の縁部から他方の縁部に至る断面U字状の凹溝が形成され」たノズルと同一の構成である。
本件発明の特許請求の範囲には,前記のノズルの構成に続いて「ノズル口から前方に向けて放射角が鋭角の扇形状に均等圧力液が集中して且つ薄い幅で噴射されるようになっている」と記載されているが,この記載は,噴射形状を特定する記載であり,使用態様に関するものであって,ノズルの形状を特定するものではない。このことは,本件発明の出願当時の技術常識(甲第4,5号証。後記(3)参照)に照らせば明らかである。本件発明は,物の発明であるから,使用態様に関する記載にすぎない上記の点は,進歩性の判断に当たって考慮すべきものではない。
(3) ノズルは,古くから液体を散布したり,噴射したりする器具として使用されているものであり,その形状には種々のものが存在する。同じ形状のノズルであっても,例えば噴角,噴量を変化させることによって,種々の要請に対応できることは,本件発明の出願時において技術常識であった。
このことは,甲第4,5号証を見れば明らかである。すなわち,甲第4,5号証は,いずれも株式会社いけうちの「扇形ノズル製品カタログ」であるが,そこに掲載された写真及び図(「スプレーパターンと液量分布」)には,本件発明で採用されているノズル(構成及び機能)が実質上示されており,「主用途」の欄をみると,当該ノズルがそれぞれの目的に応じて多くの分野で使用されていることが分かる。
そうすると,甲第4,5号証に表れた本件発明の出願時における技術常識に照らせば,刊行物2に記載されたノズルを使用すれば,「ノズル口から前方に向けて放射角が鋭角の扇形状に均等圧力液が集中して且つ薄い幅で噴射されるようにな」ることは,当業者が容易に推測できることである。
(4) しかるに,審決は,「甲第2号証に記載されているノズルの形状が本件特許発明で用いられているノズルと形状が類似してはいても,噴出される水は楕円状に噴出されるものであって,前方に向けて放射角が鋭角の扇形状に均等圧力液が集中して且つ薄い幅で噴射されることは記載されていない。そして,甲第2号証のノズルは,苗等に散水することを目的とする散水装置で用いられる噴霧ノズルであるから,均一な散布を目的とするものであり,本件特許において用いられているノズルはねぎ類の皮をむくことを目的とするものであるから,均一な散布ではなく,ねぎの茎部から根部という特定の場所に圧力水を当てることが必要とされるものである。したがって,甲第2号証でいう楕円状に噴出される水が,本件特許発明のように,前方に向けて放射角が鋭角の扇形状に均等圧力液が集中して且つ薄い幅で噴射されているものとは認められない。」(審決書4頁19行〜30行)と判断している。
これは,刊行物1及び2に記載された各発明の技術内容の評価を誤った結果,本件発明の容易想到性の判断を誤ったものであり,取消しを免れない。
(5) 甲第4号証には,裏表紙に,株式会社いけうちの東京支店の電話番号・FAX番号が「(03)***-****」・「(03)***-****」と記載されている。東京23区内の局番が平成2年1月1日以降3桁から4桁に変更されたことは公知の事実であるから,甲第4号証のカタログは平成2年1月1日以前に発行されたものである。
甲第5号証の裏表紙には,株式会社いけうちの石川県総代理店である「株式会社井口商店」の所在地が金沢市(以下省略)であり,電話番号の市外局番は「0762」であることが記載されている。甲第6,7号証によれば,1997年(平成9年)6月1日に,金沢地域の市外局番が「0762」から「076」に変更されたことが分かるから,甲第5号証のカタログは1997年(平成9年)6月1日よりも前に頒布されたものである。
甲第4,5号証は本件発明の出願時の技術常識を示すものとして提出するものである。審決取消訴訟において出願時の技術常識を証明するために新たな証拠を提出することが許されるのは,最高裁昭和54年(行ツ)第2号同55年1月24日第一小法廷判決の判示に照らして明らかである。
被告の主張の骨子
審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由には理由がない。
(1) 本件発明において,噴射形状に関する事項は,ノズルの使用方法ではなく,ノズルの作用もしくは機能に関する事項である。作用的もしくは機能的表現を用いて物の発明の構成を特定することは,ごく一般的に行われていることである。
(2) 刊行物2には「ノズルから噴射される水が楕円状であること」が記載されているが,「前方に向けて放射角が鋭角の扇形状に均等圧力液が集中して且つ薄い幅で噴射されていること」は記載されていない。刊行物2に記載された「苗等への散水装置」においては,苗に対して水が到達しさえすればよいから,広い範囲への均一な散水を行うためには放射角は広い方が有利であり,当業者は少ないノズルで広い範囲の散布を行うためにノズルの放射角を広くしようと考えるのが自然であり,わざわざ散水範囲を狭めるようにノズルの放射角を鋭角にする必要性(動機付け)は認められない。
(3) 甲第4,5号証は,審判手続において提出されなかった新たな証拠であり,審決取消訴訟において提出することは許されない(最高裁昭和42年(行ツ)第28号同51年3月10日大法廷判決)。原告の主張は,甲第4号証を「ノズル口から前方に向けて放射角が鋭角の扇形状に均等圧力液が集中して且つ薄い幅で噴射されるようになっている」という構成要件を開示した証拠として使用しており,本件発明の進歩性を否定するための主要証拠としていることが明らかであるから,原告が引用する判例とは全く事案が異なる。
(4) 仮に甲第4,5号証の提出が認められるとしても,甲第4,5号証は発行日が不明であるから,本件発明の出願時の技術常識は立証されない(甲第4号証の原本を見ると,支店および代理店の記載は,裏表紙にシールで貼り付けられており,発行日を遡及させるために後から貼付された可能性を否定できない。)。
また,仮に甲第4,5号証が本件発明の出願前に発行されていたとしても,甲第4,5号証には,「ねぎ類の皮むき」という用途はもちろん,野菜の皮むき,洗浄といった用途についてすら全く記載されていない。同一構成のノズルが多方面の用途に使用されることが技術常識であったとしても,特定の構造のノズルを,その使用が想定されていない用途に用いることは,技術常識ではないし,当業者が容易に想到し得るものということもできない。
本件発明の進歩性は,当該形状のノズルが出願前に公知であったか否かとは関係がなく,特定の噴射形状をもつノズルをねぎ類の皮むき装置に対して適用した点に存するのである。
当裁判所の判断
(1) 本件発明と刊行物1に記載された発明とは,双方とも「複数の皮むきノズルを備えてなるねぎ類の皮むき装置」である点で一致し,本件発明では,ノズルが「噴射口側端面にその一方の縁部から他方の縁部に至る断面U字状の凹溝が形成され,ノズル口から前方に向けて放射角が鋭角の扇形状に均等圧力液が集中して且つ薄い幅で噴射されるようになっている」のに対し,刊行物1に記載のノズルはそのような構成を備えているのか否か不明である点で相違する(当事者間に争いがない)。
なお,原告は,審決が「本件特許において用いられているノズルはねぎ類の皮をむくことを目的とするものであるから,均一な散布ではなく,ねぎの茎部から根部という特定の場所に圧力水を当てることが必要とされるものである」(審決書4頁25〜27行)と述べ,この技術的事項が刊行物1に記載されていないものと認定判断しているのは誤りであると主張する。しかし,審決書の上記記載は,刊行物2でいう楕円状に噴出される水が,本件発明のように,前方に向けて放射角が鋭角の扇形状に均等圧力液が集中して且つ薄い幅で噴射されているものとは認められないことを説示するものであって(審決書4頁23〜30行参照),「ねぎの茎部から根部という特定の場所に圧力水を当てる」という点を本件発明と刊行物1記載の発明との相違点として認定したものでも,その点が刊行物1,2に記載されていないことを理由に本件発明の進歩性を肯定したものでもないことは明らかであり,原告の主張は,審決の説示を正解しないで論難するもので,失当である。
(2) 本件発明の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである。
「噴射口側端面にその一方の縁部から他方の縁部に至る断面U字状の凹溝が形成され,ノズル口から前方に向けて放射角が鋭角の扇形状に均等圧力液が集中して且つ薄い幅で噴射されるようになっている複数の皮むきノズルを備えてなることを特徴とするねぎ類の皮むき装置。」 原告は,上記のうち,「ノズル口から前方に向けて放射角が鋭角の扇形状に均等圧力液が集中して且つ薄い幅で噴射されるようになっている」との文言は,ノズルの構成を特定するものではなく,噴射形状を特定するもので,単にノズルの使用態様を示すにすぎないことが出願時の技術常識(甲第4,5号証)から容易に理解できるから,物の発明である本件発明の進歩性の判断において考慮すべき事項ではないと主張するので,まず,この点について検討する。
本件発明の出願時における技術常識を示すものとして原告の挙げる甲第4号証は,株式会社いけうちの「総合カタログ」であり,甲第5号証は,株式会社いけうちの「扇形ノズル製品カタログ」であるところ,いずれのカタログにも,噴射口側端面にその一方の縁から他方の縁に至る断面U字状の凹溝が形成されたノズルの写真が掲載されているが,当該形状のノズルについては,「VEシリーズ均等扇形ノズル」「VEPシリーズ均等扇形ノズル」との名称で噴角の区分に応じていくつもの異なったノズルがあることが示されている(甲第4号証の18〜20頁,甲第5号証の22〜25頁)。当該均等扇形ノズルは,「標準圧力3kg/cm2」における噴角に基づいて(ノズルは,当該ノズルシリーズにおいて最もよく使用される液圧をノズルの「標準圧力(設計圧力)と定め,その下において所定の噴角等が得られるように設計されている。甲第5号証・4頁),噴角の区分115°,100°,90°,80°,65°,50°,40°,25°,15°に分類され,それぞれの区分においてノズル番号の異なる複数のノズルが示されている。そして,標準圧力の下において噴角が同一のノズルであっても,個別のノズルごとに液圧の変化に応じた噴角の変化は異なるが,その幅は大きなものではない。例えば,甲第4号証のカタログの18頁をみると,標準圧力(3kg/cm2)の下で115°の噴角の区分に属するノズル番号1/4MVEP11519☆Wのノズルは,液圧1.5kg/cm2の下での噴角が104°,液圧7kg/cm2の下での噴角が122°であるのに対して,同じ区分に属するノズル番号1/4MVEP115157☆のノズルは,液圧1.5kg/cm2の下での噴角が106°,液圧7kg/cm2の下での噴角が120°である。
上記のとおり,甲第4,5号証によれば,ノズルは標準圧力における噴霧角度等が所定の値になるように設計されるものであり,噴射口側端面にその一方の縁から他方の縁に至る断面U字状の凹溝が形成された,いわゆる扇形ノズルには,同じ液圧の下において噴角が115°から15°と大きく異なるものが存在すること,同一ノズルにおいては圧力の相違による噴角の違いはせいぜい20°未満と小さいものであることが認められる。
これによれば,噴射口側端面にその一方の縁から他方の縁に至る断面U字状の凹溝が形成されたノズルにおける噴角の大きさは,主として個別のノズルの構造によって規定されるものであって,同一の構造のノズルであれば,液圧などの使用態様によって噴角が変化する幅は小さいものと認められる。
そうすると,甲第4,5号証を根拠として,本件発明における「ノズル口から前方に向けて放射角が鋭角の扇形状に均等圧力液が集中して且つ薄い幅で噴射されるようになっている」との規定が単にノズルの使用態様を示すにすぎないとする原告の主張は,採用することはできず,本件発明における上記文言は,むしろ,ノズルの構成を特定する事項というべきであり,本件発明の進歩性を判断する際に考慮されるべき事項と解するのが相当である。
(3) 原告は,刊行物2に記載されたノズルは,本件発明のノズルと同一の構成であり,刊行物2に記載された構成のノズルを刊行物1に記載されたねぎ類の皮むき装置に使用して,本件発明に到達することは,当業者が容易に推考できることである旨主張する。
刊行物2には,「自走式無人散水装置の噴霧ノズル」について記載されており,「従来のように噴霧杆に多数の噴霧ノズルを配置しても,噴霧ノズルから吐出されるときに円錐状に吐出されるので,一つの噴霧ノズルとその隣の噴霧ノズルから噴出された噴霧がその中間で重なり合い,その重なり部分において噴霧量や噴霧圧が異なると,均一な散布が行われず,ムラ散布となっていたのである。‥‥‥本考案はこのような点に鑑み,次の如く構成したものである。機体前端に噴霧杆17・17を両側水平側方に突出し,該噴霧杆17に多数の噴霧ノズル19・19‥‥‥を装着した散水装置において,各噴霧ノズル19の噴出部先端に斜め方向の切込み19bを設け,該切込み19bの中央に噴出孔19cを設け,各々の噴霧ノズル19・19‥‥‥が互いに重なることなく噴出すべく構成したものである。」(甲第2号証の2頁7行〜3頁4行)と記載され,そのノズルが「噴射口側端面にその一方の縁部から他方の縁部に至る断面U字状の凹溝が形成され」たものであることも,第4図から読みとれる。しかしながら,刊行物2の上記記載によれば,同刊行物の噴霧ノズルは,各噴霧ノズルからの噴霧が互いに重ならないものであればよいと解されるから,刊行物2には,ノズル口から噴射される液体の放射角の大きさを特段規定しないノズルが記載されているにとどまり,「ノズル口から前方に向けて放射角が鋭角の扇形状に均等圧力液が集中して且つ薄い幅で噴射されるようになっている」ノズルが記載されているということはできない。むしろ,一般に,散水装置においては,広い範囲に一度に散水する方が効率がよいことを考慮すれば,刊行物2における散水装置のノズルの噴角は,大きい方が好ましいとすら解される。
上記のとおり,刊行物2に記載されたノズルが本件発明のノズルと同一の構成であるということはできず,刊行物1に記載されたねぎの皮むき装置におけるノズルとして刊行物2に記載されたノズルを適用したとしても,それだけでは,本件発明の「ノズル口から前方に向けて放射角が鋭角の扇形状に均等圧力液が集中して且つ薄い幅で噴射されるようになっている」という構成は充足されないから,本件発明に到達することが容易であるということはできない。本件発明と刊行物1記載の発明との相違点についての審決の判断に誤りはなく,原告の主張は,理由がない。
(4) なお,原告は,甲第4,5号証には,本件発明で採用されているノズル(構成及び機能)が実質上示されており,「主用途」の欄をみると,当該ノズルがそれぞれの目的に応じて多くの分野で使用されていることが分かると主張するが,仮に,原告の主張するところが,刊行物1に記載されたねぎ類の皮むき装置に甲第4,5号証に記載された複数の種類のノズルのうちのいずれかを適用することにより本件発明に想到することができるというものであるならば,審判手続において審理されなかった甲第4,5号証を,審決取消訴訟において新たな引用例として提出するものであるから,採用することができない。
(5) 結論 以上に検討したところによれば,原告の主張する取消事由は理由がなく,その他,審決には,これを取り消すべき誤りは見当たらない。
よって,原告の本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 佐藤久夫
裁判官 三村量一
裁判官 古閑裕二
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