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関連審決 異議1997-75359
関連ワード 技術的思想 /  製造方法 /  頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  相違点の判断 /  発明の詳細な説明 /  優先権 /  国内優先権 /  技術的意義 /  均等 /  同一の作用効果 /  容易に想到(容易想到性) /  設定登録 /  請求の範囲 /  訂正明細書 /  取消決定 / 
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事件 平成 11年 (行ケ) 163号 特許取消決定取消請求事件
原告 ティーディーケイ株式会社代表者代表取締役 【A】
訴訟代理人弁護士 熊倉禎男
同 田中伸一郎
同 折田忠仁
同 渡辺光
同 弁理士 内山英夫
被告 特許庁長官【B】
指定代理人 【C】
同 【D】
同 【E】
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/02/07
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成9年異議第75359号事件について平成11年3月11日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、名称を「磁気記録媒体およびその製造方法」とする発明について、
昭和61年3月10日の国内優先権を主張して、同年12月27日特許出願をし(特願昭61-309894号)、平成9年2月27日、設定登録(特許第2610851号)を受けた特許権者である。
本件特許に対し、平成9年11月27日、特許異議の申立てがされ、原告は、平成10年4月6日、本件特許出願の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)の訂正(以下「本件訂正」という。)を請求した。特許庁は、この申立てを平成9年異議第75359号事件として審理した上、平成11年3月11日、「特許第2610851号の特許請求の範囲第1項に記載された発明についての特許を取り消す。」とする決定(以下「本件決定」という。)をし、その謄本は、同年5月12日、原告に送達された。
2 本件明細書の特許請求の範囲【請求項1】の記載(以下、この発明を「本件発明」という。) (1) 本件訂正前の本件明細書(以下「当初明細書」という。)のもの 可撓性の非磁性支持体上に、針状の磁性粉とバインダーとを含有する磁性層を有するディスク状磁気記録媒体において、
磁性層がランダム配向処理されており、
媒体のトラック周方向の残留磁化φrを測定したとき、
φrの最小値を最大値で除した値が0.98〜1であり、
トラック周方向の角型比φr/φmの平均が0.55〜0.65であることを特徴とする磁気記録媒体。
(2) 本件訂正に係る本件明細書(以下「訂正明細書」という。)のもの(訂正部分には下線を付す。) 可撓性の非磁性支持体上に、針状の磁性粉とバインダーとを含有する磁性層を有するディスク状磁気記録媒体において、
磁性層がランダム配向処理されており、
ディスク状磁気記録媒体に設けられているインデックスホールを基点として、ディスクをほぼ均等に8等分するように描かれたディスク中心を通る4本の直線と、ディスクのゼロトラック(最外周トラック)とその交点によってつくられた8点の位置を測定点とし、これらの位置での磁化曲線を測定して求め、
媒体のトラック周方向の残留磁化φrを測定したとき、
φrの最小値を最大値で除した値が0.98〜1であり、
トラック周方向の角型比φr/φmの平均が0.55〜0.65であることを特徴とする磁気記録媒体。
3 本件決定の理由 本件決定の理由は、別添決定書写し記載のとおり、訂正明細書の本件発明(以下「訂正発明」という。)は、本件出願前に頒布された刊行物である「R&D Report No.47 高密度メモリ技術と材料」(株式会社シーエムシー発行、以下「刊行物1」という。)、特開昭57-198545号公報(以下「刊行物2」という。)、特公昭59-23010号公報(以下「刊行物3」という。)及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件訂正は、同法120条の4第3項において準用する同法126条4項の規定に適合せず、本件訂正は認められないとした上、本件発明の要旨を当初明細書の特許請求の範囲のとおり認定し、本件発明は、刊行物1ないし3及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、本件発明の特許は、同法29条2項の規定に違反してされたものであるから、
同法113条2号に該当し、取り消されるべきであるというものである。
原告主張の決定取消事由
本件決定は、訂正発明と刊行物1記載の発明の一致点の認定を誤り(取消事由1)、また、両発明の相違点の判断を誤った(取消事由2及び3)ものであって、違法として取り消されるべきである。
1 一致点の認定の誤り(取消事由1) 本件決定は、「上記刊行物1には、角形性(訂正明細書の特許請求の範囲第1項に係る発明の角型比に相当する。)については0.55〜0.67間の値が記載されており、訂正明細書の特許請求の範囲第1項に係る発明のトラック周方向の角型比φr/φmの平均が0.55〜0.65である点と重複一致する。」(決定書11頁6行目〜12行目)と認定するが、誤りである。
訂正発明が、複数点において周方向の角形比(φr/φm、φrは残留磁化、φmは最大磁化)を測定し、その平均の数値を問題にするのに対し、刊行物1では、一点の一方向についてのみ角形比(φr/φm)を測定しているのであるから、ある一点のある一方向を測定し、例えば、0.59の角形比(φr/φm)を得て、当該フレキシブルディスクを「角形比(φr/φm)0.59のフレキシブルディスク」としたとしても、
測定点の他の方向又は他の点の角形比(φr/φm)が0.59であるとは限らず、その結果として、当該フレキシブルディスクにおける角形比(φr/φm)の平均が0.59であることを意味するものではない。
2 相違点の判断の誤り1(取消事由2) 本件決定は、「φrの最小値を最大値で除した値を0.98〜1といったできるだけ1に近い値とすることは、当業者が容易に想到できることにすぎない」(決定書14頁6行目〜8行目)と判断するが、誤りである。
すなわち、ランダム配向処理においては、ディスク上のあらゆる点において配向度((φr/φm)0° /(φr/φm) 90° )が1になるが、あらゆる点の最大磁化(φm)が同じ値になるものではない。しかも、磁性層に厚みむら、筋等が存在し、
最大磁化(φm)が当該フレキシブルディスク上において均一でない以上、ランダム配向をしてディスク上のあらゆる点及びすべての方向において角形比(φr/φm)を等しくしても、最大磁化(φm)及び角形比(φr/φm)により決定される残留磁化(φr)は、最大磁化(φm)に応じて変動することになるから、配向度((φr/φm)0° /(φr/φm) 90° )を1にしたところで、当然にトラック周方向の残留磁化(φr)が均一になるわけではない。また、訂正発明は、最大磁化(φm)が均一でないことを前提とするものであるから、トラック周方向の残留磁化(φr)の最小値を最大値で除した値により配向度((φr/φm)0° /(φr/φm) 90° )を求めることはできない。
3 相違点の判断の誤り2(取消事由3) 本件決定は、「打ち抜いたディスクにおいて塗布方向がわからない場合には、適宜の点によりφrを測定し、その最大値と最小値からランダム配向の程度を見るとすることは当業者が適宜なし得ることにすぎない。」(決定書15頁7行目〜11行目)、「ディスクをほぼ均等に8等分するように描かれたディスク中心を通る4本の直線と、ディスクのゼロトラック(最外周トラック)とその交点によってつくられた8点の位置を測定点とし、これらの位置での磁化曲線を測定して求めるとすることは、当業者が適宜なす事にすぎない。」(決定書15頁14行目〜末行)と判断するが、誤りである。
すなわち、本件発明は、完全均一なランダム配向処理が不可能で磁性塗料の塗布に不可避的にむらが生じ、配向処理による筋も生ずることを認識し、これを前提にしており、測定点によって配向度((φr/φm)0° /(φr/φm) 90° )、最大磁化(φm)及び残留磁化(φr)が異なるので、複数点での測定が必要となる。これに対し、刊行物1記載の発明は、均一なランダム配向が難しいこと、そして、他の点でも磁性層は不均一であることは認識していないために、ある一点のみで測定をしているものである。このように、刊行物1には、複数点の測定という技術的思想はもとより、訂正発明において想定された、上記の八つの点(以下「本件測定点」という。)で測定するという技術的思想は示されていない。
被告の反論
1 一致点の認定の誤り(取消事由1)について 引用例1には、角形比(φr/φm)については0.55〜0.67の間の値が記載されているところ、角形比(φr/φm)が0.55〜0.67であるということは、周方向の角形比(φr/φm)の平均も0.55〜0.67であるから、本件決定が、訂正発明と刊行物1記載の発明において、トラック周方向の角型比(φr/φm)の平均が0.55〜0.65である点と重複一致する旨認定したことに誤りはない。
原告は、刊行物1に示された角形比(φr/φm)0.59のディスクが存在したとしても、それは、訂正発明にいう周方向の角形比(φr/φm)の平均が0.59のディスクを意味しない旨主張する。しかしながら、角形比(φr/φm)が0.59の磁気ディスクという場合には、磁気ディスクのどの箇所及びどの方向の角形比(φr/φm)もO.59であることを意味するから、原告の主張は失当である 2 相違点の判断の誤り1(取消事由2)について 訂正発明は、媒体の最大磁化(φm)が一定ないしほぼ一定である場合を排除していないから、媒体の最大磁化(φm)が一定である場合において、配向度((φr/φm)0° /(φr/φm) 90° )が1であるということは、((φr) 0° /(φr) 90°)の値も1であって、磁気記録媒体上の複数の点において残留磁化(φr)が均一であるということに他ならない。そうすると、塗膜が一様であることを前提にランダム配向した結果として、配向度((φr/φm)0° /(φr/φm) 90° )ができるだけ1に近いことが望まれることは当然である。
したがって、本件決定が「φrの最小値を最大値で除した値をO.98〜1といったできるだけ1に近い値とすることは、当業者が容易に想到できることにすぎない。」(決定書14頁6行目〜8行目)とした点に誤りはない。
3 相違点の判断の誤り2(取消事由3)について 本件明細書は、厚みむらが原因で筋が生ずる場合もあることに言及しているが、厚みむらとモジュレーションとの関係については記載されていない。さらに、
角形比(φr/φm)の最小値を最大値で除した値((φr/φm)min/(φr/φm)max)が記載されているからといって、直ちに、磁性層に厚みむらがあることが前提であるということにはならず、訂正発明が厚みむらのあることを前提にしたものということはできない。しかも、記録媒体上の複数の点を測定してランダム配向処理の程度を知ることは、ごく普通に考えられることである。また、本件明細書に記載された、本件測定点において残留磁化(φr)及び角形比(φr/φm)を測定する方法(以下「本件測定方法」という。)は、測定方法の一例にすぎず、訂正明細書において、本件測定方法を採用しなければならない必然性についての記載は見当たらない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(一致点の認定の誤り)について (1) 刊行物1(甲第4号証)には、代表的フレキシブルディスクの特徴として、「角形性(φr/φm)0.55〜0.67」が記載されており(37頁表2.2.6)、同表においてその特徴項目を記載した欄には、記憶容量、外形寸法、ディスク外径、最大線記録密度、トラック密度、トラック数/面、磁性材料、保磁力、残留磁束密度、最大磁束密度、角形性、膜厚等が項目として挙げられている。これらの特徴項目は、構成材料、寸法、機能等、フレキシブルディスクを使用する上での基本的特徴ということができるのであるから、同表に記載された数値は、その値でフレキシブルディスクの全体が構成されている趣旨であると認められる。したがって、刊行物1に、角形性すなわち角形比(φr/φm)については0.55〜0.67の値が記載されており、本件発明のトラック周方向の角型比(φr/φm)の平均が0.55〜0.65である点と重複一致するとした本件決定の認定に誤りはない。
(2) 原告は、角形比(φr/φm)0.59のフレキシブルディスクにおいて、角形比(φr/φm)の平均が0.59であることを意味しない旨主張するが、刊行物1(甲第4号証)の表2.2.6(37頁)に記載された上記の事項に照らすと、(1)認定のとおり、刊行物1記載の発明においては、上記の表に記載された値でフレキシブルディスクの全体が構成されているのであるから、角形比(φr/φm)の平均も0.59となることは明らかである。したがって、原告の主張は採用することができない。
2 取消事由2(相違点の判断の誤り1)について (1) 本件明細書(甲第2号証)には、ディスク状媒体における残留磁化(φr)の最小値を最大値で除した値((φr)min/(φr)max)とモジュレーション特性との間の相互関係は記載されておらず、モジュレーションとディスク状媒体の特性に関しては、発明の詳細な説明の欄に、「発明の背景」として、「例えばディスク状の媒体の磁性層中に含有される磁性粉が一定方向に配向していれば、回転に伴なって、最大出力と最小出力が交互にあらわれる、いわゆるモジュレーションと呼ばれる出力変動が生じる。モジュレーションが大きくなるとディスク状の媒体に記録された情報の正確な読みとりができなくなり、時として信頼性の低下の大きな要因となり、実用上好ましくない。このようなモジュレーションはディスク状の媒体が持つ種々の特性、たとえば磁性粉の配向度等に起因するものと考えられているが、モジュレーションの向上とディスク状の媒体の特性との相互関係については未だ不明瞭であり、安定してモジュレーション値の小さい磁気ディスクを得るのは困難である。そこで、このモジュレーションが良好で、しかも、ディジタル記録における電磁変換特性に優れた磁気記録媒体の開発が要望されている。」(4S欄4行目〜21行目)と記載されており、この記載によれば、モジュレーションとディスク状媒体の特性との相互関係は不明であるとされ、残留磁化(φr)の最小値を最大値で除した値((φr)min/(φr)max)を0.98〜1とすることは、理論的に導き出されたものではないと認められる。
(2) そこで、本件明細書(甲第2号証)において、モジュレーションと上記残留磁化(φr)の最小値を最大値で除した値((φr)min/(φr)max)の関係が記載されている表1(10頁)を検討する。
表1に記載されたモジュレーションの値については、「両端部と中央部とから打ち抜かれたディスク媒体についてモジュレーションを測定し、それらの値を、M1(両端打ち抜き部分について測定)、M 2(中央打ち抜き部分について測定)とし、計10個のサンプルについて平均した。」(20欄3行目〜8行目)との記載があるから、これによれば、10個のサンプルの平均値であることが明らかである。また、サンプルは平均値を中心にその値の上下に分散することが一般的であるから、本件発明のように、モジュレーションとディスク状媒体の特性値との間の相互関係を平均値により比較する場合、例えば、表1のサンプルNo.101は、残留磁化(φr)の最小値を最大値で除した値((φr)min/(φr)max)が0.98、トラック周方向の角形比(φr/φm)の平均が0.63であり、いずれも本件発明の要件を満足し、モジュレーションの値が2%未満とされているが、No.101の値が1個のサンプルの値ではなく10個のサンプルの平均値である以上、モジュレーションの値が2%を超えるサンプルも存在することが十分に予測される。そうすると、モジュレーションの閾値として平均値を用いているために、その値と、残留磁化(φr)の最小値を最大値で除した値((φr)min/(φr)max)が0.98〜1、かつ、トラック周方向の角形比(φr/φm)の平均が0.55〜0.65という本件発明の構成との間に相互関係が存在するのかどうかは、表1からは不明である。
また、本件明細書(甲第2号証)には、「表1」の評価として、「表1に示される結果より本発明の効果が明らかである。すなわち、本発明のサンプルは、
4%以下のきわめて小さいモジュレーションを示す。・・・さらに、分解能はO.7以上の良好な値を示す。」(19欄45行目〜20欄45行目)と記載されているにもかかわらず、例えば、分解能が0.78、モジュレーションが4%であるサンプルNo.102が比較例として記載されていることの理由も不明である。
さらに、上記「表1」に記載されたサンプルNo.102の特徴項目の値と、本件出願当初の本件明細書(乙1号証)の「表1」に記載されたサンプルNo.2の特徴項目の値を比較すると、残留磁化(φr)の最小値を最大値で除した値((φr)min/(φr)max)、角形比(φr/φm)の最小値を最大値で除した値((φr/φm)min/(φr/φm)max)、トラック周方向の角形比の平均、トラック周方向の配向度の平均及び分解能の各項目において、両サンプルの値は、それぞれ0.96、0.98、0.61、0.97及び0.78で一致しており、モジュレーションの値については、前者が4%であるのに対し後者が2%と相違している。このように、モジュレーション以外の各項目の値が一致しているにもかかわらずモジュレーションの値が異なるということは、表1の実験結果の信用性に重大な疑問を呈するものであるが、その原因については、これら明細書の記載によっても不明である。
したがって、上記「表1」に記載された特徴項目の値の相互関係からは、
残留磁化(φr)の最小値を最大値で除した値((φr)min/(φr)max)を0.98〜1と限定したこととモジュレーションの向上との間における格別の関係は認められない。
(3) ディスク状媒体のように、同一の作用効果を奏する単位に区分されたユニットから成る製品においては、当該ユニットの特性値の不均一が作用効果の相違に結びつくから、当該製品においては、この特性値が均一であることが好ましいことは明らかであり、訂正発明におけるディスク状媒体においても、その特性値である残留磁化が均一状態であることが望ましいことは当然である。そうすると、上記のとおり、残留磁化(φr)の最小値を最大値で除した値((φr)min/(φr)max)を0.98〜1の数値に限定することは、モジュレーションの向上という課題にとって格別の技術的意義が認められない以上、ディスク状媒体において、この値をできるだけ1に近い値とすることは、当業者が容易に想到し得るものというべきであり、
これと同旨をいう本件決定の判断に誤りはない。
3 取消事由3(相違点の判断の誤り2)について (1) 本件測定方法における測定箇所及び測定点の数について見ると、本件明細書(甲第2号証)において、本件測定方法について、「インデックスホールを基点として、ディスクをほぼ8等分するように描かれたディスク中心を通る4本の直線と、ディスクのゼロトラックとその交点」に限定したことによる格別の意義も、測定点の数として、当該交点を「8点」としたことの格別の意義も、記載されていない。かえって、その発明の詳細な説明には、「φrおよびφr/φmの測定方法としては、例えば、ディスク媒体に設けられているインデックスホールを起点として・・・その交点によってつくられた8点の位置を測定点とし」(7欄6行目〜11行目)と記載され、上記測定箇所及び測定点の数について、「例えば」として単なる1例示とした記載がされていることが認められる。そうすると、訂正発明における本件測定方法には、格別の技術的意義を見いだすことができない。
(2) 製品の品質検査を行うに際し、その検査内容としてどのような測定点を選択するか、さらに、測定点をいくつ採るか等は、欠陥発生率の高い箇所の欠陥発生状況、製造製品の均一性等に基づいて適宜設定する技術的事項であり、このことは、特性の均一性が要求されるディスク状媒体の製品においても同様である。そうすると、上記のとおり、本件測定方法に格別の技術的意義を見いだすことができない以上、本件発明における測定箇所及び測定点の数の限定は、単なる設計的事項であるというべきであり、これを当業者が適宜選択し得るとした本件決定の判断に誤りはない。
4 以上のとおり、原告主張の本件決定取消事由は理由がなく、他に本件決定を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民訴法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 石原直樹
裁判官 長沢幸男