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事件 平成 6年 (ワ) 5894号 製造販売禁止等請求事件
原告 アース製薬株式会社代表者代表取締役 【A】
訴訟代理人弁護士 村林隆一
同 松本司
補佐人弁理士 亀井弘勝
同 深井敏和
被告 大日本除蟲菊株式会社代表者代表取締役 【B】
訴訟代理人弁護士 赤尾直人
補佐人弁理士 萼経夫
同 中村壽夫
同 加藤勉
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2001/02/15
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は、別紙「ヘ号物件説明書(60日用)」、同「ヘ号物件説明書(30日用)、同「リ号物件説明書」及び同「ヌ号物件説明書」記載の各物件を製造、販売してはならない。
2 被告は、前項の物件を廃棄せよ。
3 被告は、原告に対し、金1億3440万円及びこれに対する平成6年6月21日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 基礎となる事実(いずれも争いがないか弁論の全趣旨により認められる。なお、以下、書証の掲記は「甲1」などと略称し、枝番号のすべてを含む場合はその記載を省略する。) (1) 原告の特許権 原告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、この特許を「本件特許」という。)を有している。
ア 発明の名称 加熱蒸散装置 イ 出願日 昭和57年10月20日(特願昭62-200619号) ウ 出願公告日 平成4年2月27日(特公平4-11172号) エ 登録日 平成6年6月7日 エ 特許番号 第1849510号 オ 訂正審決日 平成11年9月13日 カ 特許請求の範囲 本件特許出願に係る明細書(前記訂正後のもの。以下「本件明細書」といい、出願公告時の特許公報を「本件公報」という。本件特許は、出願公告後の平成5年10月26日付け手続補正書により補正がされ、さらに、設定登録後の前記訂正審決により訂正が認められたものである。)の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「吸液芯を具備する薬液容器、該薬液容器を収納するための器体、器体に収納された薬液容器の吸液芯の上部の周囲を周隙を存して取り囲むように、器体に備えられた電気加熱式の筒状ヒーター、該ヒーターの上方を覆うように器体の上部に備えられた天面及び上記周隙の上方で開口するように上記天面に設けられた蒸散口とを具備する加熱蒸散装置において、
イ 器体に器体内空間から上記周隙を経て蒸散口に通ずる上昇気流を発生させる為の外気取り入れ口が設けられ、
ロ 蒸散口と上記ヒーターとの間に0.5〜2.5pの距離が設けられ、
ハ 蒸散口は、周隙と略々等しいかこれより大きい口径で開口している、
ニ 蒸散口には手指の進入防止のための保護バーが備えられている、
ことを特徴とする加熱蒸散装置。」 (2) 本件発明の構成要件の分説 本件発明の構成要件は、次のとおり分説するのが相当である。
A 以下を具備する加熱蒸散装置である。
@ 吸液芯を具備する薬液容器 A 該薬液容器を収納するための器体 B 器体に収納された薬液容器の吸液芯の上部の周囲を周隙を存して取り囲むように、器体に備えられた電気加熱式の筒状ヒーター C 該ヒーターの上方を覆うように器体の上部に備えられた天面 D 上記周隙の上方で開口するように上記天面に設けられた蒸散口 Bイ 器体に器体内空間から上記周隙を経て蒸散口に通ずる上昇気流を発生させる為の外気取り入れ口が設けられ、
ロ 蒸散口と上記ヒーターとの間に0.5〜2.5pの距離が設けられ、
ハ 蒸散口は、周隙と略々等しいかこれより大きい口径で開口している、
ニ 蒸散口には手指の進入防止のための保護バーが備えられている。
(3) 被告の行為 ア 被告は、過去において、別紙「イ号物件説明書」、同「ロ号物件説明書」、同「ハ号物件説明書」、同「ホ号物件説明書」、同「ト号物件説明書」、同「チ号物件説明書」記載の各物件を製造、販売した。
イ 被告は、別紙「ヘ号物件説明書(60日用)」、同「ヘ号物件説明書(30日用)」、同「リ号物件説明書」及び同「ヌ号物件説明書」記載の物件を製造、販売している。
(以下、これら各物件を「イ号物件」等といい、全体を併せて「被告物件」という。) 2 原告の請求 本件は、原告が、@イ号、ハ号、ホ号、ト号、チ号、リ号及びヌ号物件は、
本件発明の技術的範囲に属する(直接侵害)、Aロ号及びヘ号物件は、本件発明に係る物の生産にのみ使用される物である(間接侵害)として、被告に対し、@現在製造、販売されているヘ号、リ号及びヌ号物件の製造、販売の差止め及び廃棄、並びにA特許権侵害(仮保護の権利の侵害を含む。)に基づく損害賠償を請求した事案である。
3 争点 (1) 被告物件の製造、販売は、本件特許権を侵害するか(別紙争点整理表参照)。
ア ハ号及びホ号物件は、構成要件AABの「収納」の構成を具備するか。
イ イ号、ハ号、ホ号(ただし蒸散筒が設けられているものに限る。)、ト号、チ号、リ号及びヌ号物件は、構成要件AD及びBロの「蒸散口」の構成を具備するか。
ウ イ号、ロ号、ホ号、チ号、リ号及びヌ号物件は、構成要件Bイの「外気取り入れ口」の構成を具備するか。
エ 被告物件(ヘ号物件以外)は、構成要件Bニの「保護バー」の構成を具備するか。
オ ヘ号物件は、本件発明に係る物の生産にのみ使用する物か。
(2) 権利濫用の抗弁(本件特許には無効理由が存することが明らかであるか。) (3) 損害額
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)ア(「収納」の構成の具備)について 【原告の主張】 (1) ハ号物件及びホ号物件においては、薬液容器1は、器体1に「収納」される。
(2) 被告の主張に対する反論 本件発明の技術課題、目的からして薬液容器の全体を必ず器体内に納める必要性はどこにもない。薬液容器全体が器体内部に納められようが、薬液容器の一部のみが器体内部に納められようが、本件発明の作用効果には何らの影響も与えないから、いずれも「収納」に当たると解すべきである。被告の主張は、技術的意味を無視した文言のみに拘泥する解釈であり、当を得ないものであることは明白である。
また、仮に文言侵害が成立しないとしても、均等が成立する。
【被告の主張】 「収納」とは、「完全に中に入る」趣旨であるから、構成要件AABにおいては、薬液容器は完全に器体内に挿入され、かつ、納められていなければならない。
しかし、ハ号物件においては、薬液容器1が器体2のベース部2dと嵌合可能とすることによって、器体2を下方から支えており、「収納」の要件を充足していない。
また、ホ物件においては、薬液容器1は器体2の円柱孔2cとの螺着によって釣り下げられ、かつ、下半部が露出した状態となっており、「収納」の要件を充足していない。
また、均等も成立しない。
2 争点(1)イ(「蒸散口」の構成の具備)について 【原告の主張】 (1) イ号、ハ号、ト号、チ号、リ号及びヌ号物件の「蒸散筒上端部開口12-1」及びホ号物件の「天面開口12-1」は、本件発明の構成要件AD及びBロの「蒸散口」の要件を充足する。
(2) 被告の主張に対する反論 ア 構成要件ADに関する主張について 本件発明の「蒸散口」は、「器体内空間」から「外部」への、薬液の「出口」であって、「入口」という意味はない。蒸散筒下端部開口12-2等が蒸散薬液の「入口」であると被告が主張するのは、器体内空間から蒸散筒15への「入口」ということであって、意味のない議論である。
前記物件では、周隙の上方で天面において開口している天面開口あるいは蒸散筒上部開口12-1等が存在し、薬液を器体内空間から外部へ蒸散させる「出口」として機能しているのであり、蒸散筒15は特許法的意味での付加であるにすぎない。
構成要件Bロに関する主張について 実験結果(甲5、12)よりすれば、前記物件における蒸散筒の有無は、有効成分が天面に付着することとは何ら関係しないし、また、蒸散筒下端部の熱変化も関係しないことが明白であるから、被告の蒸散筒の有無に基づく相違の主張は、何ら意味をなさない主張である。
【被告の主張】 (1) 構成要件ADについて 構成要件ADの「蒸散口」が「天面」において「開口する」とは、蒸散薬液が通過するための「入口」と、外部に放散する「出口」とが、天面自体において存在しなければならないということである。
このうち「蒸散口」の「入口」は、外部に放散する薬液と天面に付着する薬液とを峻別する機能を発揮しているが、イ号、ハ号、ホ号(ただし蒸散筒が設けられているものに限る。)、ト号、チ号、リ号及びヌ号物件のように蒸散筒を設けた場合には、その下端部開口において、外部に放散される薬液と天面に付着する薬液とが分離される。このように、前記物件においては、蒸散筒下端部開口12-2等が「蒸散口」の入口と同一の機能を発揮しているが、蒸散筒下端部開口12-2等は天面には存在しない。他方、蒸散薬液の「出口」は「天面」に形成されている。
したがって、前記被告物件においては、「入口」と「出口」が共に「天面」に形成されている「蒸散口」は、存在しない。
(2) 構成要件Bロについて ア 構成要件Bロにおいて、蒸散口とヒーターとの間の距離の上限値として2.5pと設定したのは、蒸散薬液の一部が天面に付着することによる蒸散効率の低下を防止するためであるが、本件明細書記載の図面のように天面の両面が平板形状である場合には、蒸散口から上方の器体外部に放散することのない薬液は、側方の蒸散口以外の部位に拡散することになる。これに対し、前記被告物件のように、
蒸散筒を設けた構成においては、蒸散筒が吸液芯の全周囲側方への薬液の拡散を防止する役割を果たしている以上、先の場合と蒸散効率において明らかに相違する。
したがって、所定の蒸散効率を発揮するための前記距離の上限値は、蒸散筒が存在する場合と存在しない場合とでは、具体的な数値において相違していなければならない。
構成要件Bロにおいて、蒸散口とヒーターとの距離の下限値として、
0.5pと設定したのは、安全カバーの加熱(オーバーヒート)を考慮したからに他ならない。
しかし、前記被告物件のように蒸散筒を設けた場合に器具の加熱劣化を考慮するならば、蒸散筒の下端とヒーターとの距離の下限値を規定した上で、蒸散筒の長さを上積みして蒸散口とヒーターとの距離の下限値が規定されねばならない。
ウ このように、仮に本件発明が蒸散筒を具備した構成を包摂しているのであれば、構成要件Bロの数値範囲は、二義的に設定されねばならない。ところが、
構成要件Bロの数値範囲は一義的であり、しかも、蒸散筒が存在しない構成について設定されているにすぎないから、構成要件Bロの「蒸散口」は、蒸散筒を具備している構成を含まないと解すべきである。
エ したがって、前記被告物件は構成要件Bロの「蒸散口」を充足しない。
3 争点(1)ウ(「外気取り入れ口」の構成の具備)について 【原告の主張】 (1) イ号、ロ号、リ号及びヌ号物件における隙間14及び14b、ホ号物件における開口14、ト号、チ号及びヌ号物件におけるスリット14及び14aは、構成要件Bイの「外気取り入れ口」に該当する。
(2) 被告の主張に対する反論 ア イ号、ロ号、リ号及びヌ号物件における隙間14及び14bについて 被告は、「外気取り入れ口」は「器体」内に独立してかつ特定した状態で存在しなければならないと主張するが、同要件を、「外気取り入れ『口』」との記載から器体の構造部分でなければならないと解釈することはできない。通常の用語でも、隙間(切り欠き)から外気を取り入れているなら、それは外気取り入れ「口」である。
仮にこの意味において文言侵害が成立しないとしても、均等が成立することは明白である。
イ ホ号物件における開口14ついて 被告は、開口14は上昇気流の通過点にすぎないと主張するが、本件発明の「外気取り入れ口」は「周隙」において「上昇気流」を発生させればよいのであり、器体内空間、外気取り入れ口では、どのような流れの状態でもよい。
ウ ト号、チ号及びヌ号物件におけるスリット14及び14aついて 本件発明では、大部分の薬液が蒸散口より放散されればよいのであって、わずかでもスリットより蒸散すれば、上記被告物件が本件発明の技術的範囲に属さないというものではない。本件発明の器体が完全密封でなければならないという限定はないからである。
【被告の主張】 (1) 構成要件Bイは、「器体に…外気取り入れ口が設けられ」ていることを要件としている。これによれば、「外気取り入れ口」は、「器体」内に独立、かつ、
特定した状態で存在することを不可欠としているものと解すべきである。
イ号、ロ号、リ号及びヌ号物件の隙間14及び14bは、脚と接する床の存在によって始めて形成されており、決して「器体」内において独立・特定した存在を示しているわけではなく、本件発明の「外気取り入れ口」には該当しないし、
均等でもない。。
(2) また、構成要件Bイは、その文言からして、「外気取り入れ口」から取り入れられた空気が、器体内において、「上昇気流を発生させる」ことを要件としている。
ところが、ホ号物件においては、脚19間の隙間から「外気」が取り入れ られた後、これは上昇気流として、器体2内を上昇しており、前記開口14は、
既に発生している上昇気流の通過点にすぎないから、ホ号物件の各開口14は、構成要件Bイの「外気取入れ口」に該当しない。
(3) さらに、構成要件Bイの「外気取り入れ口」は、「蒸散口に通ずる上昇気流を発生させる」ことを要件としている。これによれば、蒸散口内の上昇気流は、
外気取り入れ口から吸入された上で、蒸散口内を上昇し、蒸散口を介して徐々に外気に上昇していくものと解される。したがって、本件発明は、蒸散口と外気取り入れ口とが明瞭に別異の存在であることを大前提としているのである。
ところが、ト号、チ号及びヌ号物件におけるスリット14及び14aは、
器体の上部に位置しており、蒸散口に極めて近い位置にあるため、薬液は、スリットからも上昇している可能性を否定することはできないから、スリット14ないし14aは、「蒸散口」としての機能を有している。
したがって、ト号、チ号及びヌ号物件におけるスリット14ないし14aは、構成要件Bロの「外気取り入れ口」に該当しない。
4 争点(1)エ(「保護バー」の構成の具備)について 【原告の主張】 (1) ヘ号物件以外の「保護片13」は、構成要件Bニの「保護バー」に該当する。
(2) 被告の主張に対する反論 蒸散口、周隙、そして筒状ヒーターの内径は、その径の大きさにおいて関係するとしても、そのことと、保護バーと蒸散口の構造がどのように構成されているかとは、何ら関係がない。
また、「保護バー」の技術的範囲実施例の構成に限定される理由もない。
よって、本件発明の「保護バー」は「蒸散口には手指の進入防止のため」設けられておればよいのであり、被告物件(ヘ号物件を除く。)の花弁状の保護片13が本構成要件を充足することは明白である。
【被告の主張】 (1) 本来「バー」の用語は、「棒状ないし棒片の形状」を意味している。
しかし、被告物件(ヘ号物件を除く。)の保護片13は、丸みを帯びた頂部から両側に広がり、かつ、なだらかな裾野形状を呈して、蒸散口の周囲と一体になって連続し、三枚の花弁を集合したような異形の蒸散口を形成しており、到底細長い素材である「棒」の状態には該当しない。
(2) 構成要件Bハでは、蒸散口が「周隙と略々等しいかこれより大きい口径で開口している」ことを要件としている。この「周隙」は、吸液芯の上部の周囲を取り囲んでいる「筒状ヒーター」によって形成されているが、「筒状ヒーター」は要するに「筒状」であって、内側に格別の突出状態が存在するわけではない。したがって、構成要件ハの「周隙」の「口径」とは、内側に何らの突出状態を伴っていない一様な周囲による「口径」であることを意味している。このように「蒸散口」の「口径」が、内側に突出物を伴っていない以上、構成要件Bニの「保護バー」は、「蒸散口」自体において内側に突出するのではなく、「蒸散口」の上部において蒸散口を覆うように蒸散口の内側に突出していなければならない。そして、このことは、本件明細書の図面のすべてにおいて、「保護バー13」は「蒸散口12」の上部に設けられており、前記の点を明瞭に証明している。
他方、被告物件(ヘ号物件を除く。)の「保護片13」は、いずれも蒸散筒の上端部開口又は器体の天面開口(蒸散口)自体から内側に突出されており、決してこれらの上部に設けられているわけではなく、花弁形状の蒸散口の一部を構成しているものである。
したがって、それらの物件の「保護片」は、客観的趣旨による「蒸散口には」の要件を充足していない。
5 争点(1)オ(ヘ号物件の間接侵害性)について 【原告の主張】 ヘ号物件は、医薬部外品として、イ号ないしホ号、ト号ないしヌ号物件にのみ使用することを条件として、厚生省から許可を受けた製品である上、ヘ号物件の薬剤容器のネジ山径は、被告の直接加熱方式の薬剤容器のネジ山径より大きいから、直接加熱方式の器体には収納することができない。
そして、イ号ないしホ号、ト号ないしヌ号物件は、本件発明の技術的範囲に属する物である(ただし、ロ号物件は、構成要件A@の薬液容器を有しないが、薬液容器を装着すれば本件発明の構成要件を充足する間接侵害品である。)から、ヘ号物件は、本件発明に係る物の生産にのみ使用される物である。
【被告の主張】 ヘ号物件は、本件発明の構成要件を充足しないイ号ないしヌ号物件による加熱蒸散装置において使用するものであるから、本件発明に係る加熱蒸散装置の生産にのみ使用する物ではない。
また、ヘ号物件は、本件発明のような間接加熱方式を採用しただけでなく、
直接加熱装置を採用した従来技術に属する加熱蒸散装置、及び容器に外気の取り入れ口が設けられていないものや、外気取り入れ口が設けられていてもそのヒータと容器蓋との距離や蓋に付設された蒸散口のヒータとの位置関係及び大きさ等には全く考慮が払われていない、従来技術に属する加熱蒸散装置の使用に供することもまた可能である。
したがって、ヘ号物件の製造、販売について、間接侵害は成立しない。
6 争点(2)(権利濫用の抗弁)について 【被告の主張】 (1) 乙20(実公昭45-14913号実用新案公報)及び乙21(実公昭45-29244号実用新案公報)に示された殺虫器たる加熱蒸散装置においては、
蒸発芯の間接加熱方式によって薬剤を蒸散することが記載されており、ここに示された構成では、周隙における空気は、加熱によって比重が低下して周隙中を上昇する際、必然的に周隙下端から上昇気流が生ずることになる。また、これら文献に示された構成においても、薬剤を蒸散する以上、他の加熱蒸散器と同様、蒸散を行う為の通気孔は、必ず存在し、かつその位置は、技術常識に即しても、 加熱が行われている上側部分、すなわち天面の上側に存在することは間違いない。
したがって、乙20及び21には、本件発明のうち、構成要件A@ないしDに対応する構成が開示されている。
(2) 乙20及び21に示される加熱蒸散装置では、天面の通気孔を介して薬剤の蒸散及び周隙の上昇気流が放出されている以上、加熱蒸散装置に対する外気の補給、すなわち取り入れが行われていなければならない。したがって、乙20及び21においては、特に「外気取り入れ口」は明示されていないが、それらの加熱蒸散装置(殺虫器)においては、独立した「外気取り入れ口」が存在するか、又は天面に存在するはずの通気孔が、単に薬剤の蒸散だけでなく、外気の取り入れをも行っているかのいずれかである。そして、前者の場合はもちろん、後者の場合でも、独立した「外気取り入れ口」を設けること自体は、当業者における常套手段である(例えば乙25の意匠公報参照)以上、構成要件Bイは、新規性又は進歩性を有していない。
(3) 構成要件Bロによる蒸散口とヒーターとの距離の設定は、蒸散薬液の付着防止と、安全カバーの加熱劣化等を考慮したことに基づいているが、本来、蒸散口をヒーターとの距離が大き過ぎる場合には、蒸散した薬剤が、天面内側に付着しやすく、逆に、両者の距離が近過ぎる場合には、蒸散口が設けられている天面の加熱劣化が生じやすいことは、自明の技術的事項であって、前記距離の上限及び下限を設定すること自体には何ら進歩性は存在しない。
ところで、薬液の蒸散から安全カバー内面の付着の程度及びヒーターによる安全カバーの劣化の程度は、周隙の外側口径(ヒーターの内側口径)と蒸散口の口径によっても大きく左右されるはずである。したがって、実験に基づく考察が行われたことを尊重し、その限度において技術的価値を認めたとしても、実験に基づく上限値及び下限値は、「蒸散口」及び「ヒーター」の形状及び規格等の具体的状況によって左右されるから、構成要件Bロの数値限定は、本件明細書第4図等の実施例による構成には妥当し得るとしても、これ以外の構成に妥当し得る客観的保証は何ら存在しないのである。
したがって、前記0.5〜2.5pの数字の設定は、おおよその目安という程度にすぎず、このような設定は、適宜選択することができる事項であって、進歩性を裏付ける創作性を見出すことはできない。
(4) 構成要件Bハは、「蒸散口が周隙と略々等しいかこれより大きい口径にて開口している」ことを規定しているが、本件明細書は、前記構成要件Bハを設定した根拠を明らかにしていない。
もとより、蒸散口の口径が周隙よりも小さい場合には、蒸散した薬剤が安 全カバーの内側に付着しやすく、ひいては殺虫効果が低下するが故に、構成要 件Bハを採用することは、いかなる当業者といえども、当然に採用する技術 的事項にすぎない(現に乙19〔実公昭44-8361号実用新案公報〕においても、蒸散口は、周隙よりもはるかに大きく設計されている。)。
したがって、構成要件Bハについても、何ら進歩性は存在しない。
(5) 加熱蒸散方式の電気蚊取り器において、薬液の蒸散部分から手指が発熱部分に接触し、火傷を生ずることがないようにすることは、不可欠かつ当然の技術的配慮に該当する(乙36ないし41)。そして、この点は、吸液芯方式の加熱蒸散装置の場合においても、必然的に妥当する。このような周知技術による技術的背景を考慮するならば、構成要件Bニのように、手指の進入を防止するという発想自体は、何ら評価に値しない。
そして、少なくとも乙41(昭和43年3月20日付石鹸日用品新報)に示された加熱蒸散装置及び検乙10の加熱蒸散装置の蒸散口においては、明らかに放射状の「保護バー」が形成されているが、これは、手指の進入防止のためにある。
また、電気蚊取器の意匠に関する意匠公報である乙42は、蒸散口が天面の一部の領域に設けられている構成を開示するとともに、当該蒸散口において保護バーが設けられている。このような保護バーを設けたのは、乙42の電気蚊取器においても、当然のこととしてヒーターが存在し、当該ヒーターへの手指の進入による接触を防止することを目的としているからである。
さらに、加熱蒸散装置には、本件発明のような吸液芯タイプとは別に、マットに薬液を含浸させ、加熱によって蒸散させるいわゆるマット方式も存在するところ、マット方式においては、内側において天面を構成する安全カバー及び当該安全カバーの一部の領域に蒸散口を設け、かつ蒸散口において、構成要件Bニのように、手指の進入を防止するための保護バーを採用することが周知である(乙43〜47)。そして、加熱蒸散装置において、マット方式と吸液芯方式の蒸散口は、薬液が蒸散する部分であり、かつ発熱体と接触する危険性がある部分に該当するという点において共通している。
これらからすれば、構成要件Bニの、蒸散口において、「保護バー」を設けることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。
(6) このように本件特許には進歩性欠如による無効理由があることが明白であるから、本件特許権の行使は権利の濫用に当たる。
【原告の主張】 本件発明は進歩性を有している。
(1) 構成要件Bロについて ア 本件発明の装置において、周隙から蒸散口へと至る器体内空間は一種の煙突に相当するものであり、煙突は長い方が気体上昇性が良好であるのが技術常識であり、蒸散性も高くなる故、その煙突距離の上限をどのようにするかは決して容易なことではない。
本件発明においては、上記距離が2.5pを超えると、天面の温度低下につながり、有効成分の付着がより多くなるとの理由から設定された数値であり、
蒸散性が高くなるからとの理由から煙突を長くするのでなく、むしろ短くして付着防止を図った点で技術常識とは逆行する設定である。
また、下限距離の0.5pは天面にヒーターが近くなるので、天面が加熱され、この加熱で天面の温度が上昇することも考えられ、温度の上昇があれば器具内の気流が乱れることから付着につながることが考えられる。このようなことから決められた数値である。
そして上限2.5p、下限0.5pという数値限定によって、「上記第1表より、本発明装置においては、外気取入れ口、蒸散口直径及び該蒸散口とヒーターとの距離が、有効成分の装置への付着性や装置の汚れ・変形状態、ひいては該装置を用いた際の殺虫効果に重大な影響を与え、之等が本発明所定の範囲内にあれば、本発明1〜11として示した通り、良好な結果が得られる。」(本件公報9欄12〜18行)、「蒸散薬液が安全カバー11の裏面に付着することが少なく、薬液のロスを実質的になくし得る利点がある。また安全カバー11の裏面に蒸散薬液が多量に付着するとこれが凝縮滴下して器内を汚染したり、接点不良などの電気系統の故障原因となるが、本発明ではこのような問題も一掃できる。」(同5欄2〜8行)という独自の効果を挙げることができるのであって、この両方の数値限定に格別の意味はないとする判断は誤っている。
イ ちなみに、乙43ないし乙47(実用新案公報等)に示されているものは、後述するようにマット方式の電気蚊取り器であるが、このマット方式では蒸散する蒸散成分量(有効成分、溶剤及び添加剤の蒸散する量)は、本件発明の間接加熱方式と比べはるかに少ない(約1/20)という事実がある。
したがって、マット方式の場合には、本件発明のような有効成分の付着というような問題は生じないのである。
(2) 構成要件Bハについて 本構成は、間接加熱方式を採用したことから生ずる周隙と蒸散口との関係を規定した構成である。
蒸散口が周隙より著しく大きいと、拡散性や蒸散性に悪影響を生じやすく、逆に蒸散口が周隙より小さいと、器体内温度が上昇しやすくなり、本件発明の技術思想と逆行することにもなるので、これらの点を克服するために設定された要件であり、自明の技術ではない。
蒸散成分(有効成分、溶剤及び添加剤)は芯側周面から上昇するので、周隙よりも外周に広がり上昇するから、蒸散口の口径を周隙と略々同じとすれば周隙より外周に広がった蒸散成分の蒸散性に支障が出ると考えられやすい。
ところが周隙と略々同じでも蒸散効果が得られるという自明でない結果を得たのである。
そして、特に指摘しておきたい点は「周隙」と「蒸散口」の関連性を記載した公知例は存在しないという事実である。
直接加熱方式では、吸液芯にヒーターを接触させるため、周隙が生じる余地はないのである。
(3) 構成要件Bニについて ア 保護バーが備えられる蒸散口については、構成要件Bハの蒸散口、すなわち「周隙と略々等しいかこれより大きい口径で開口している」ことが必要であり、周隙と関連性のない蒸散口を具有しているだけの乙41から構成要件ハと関連する構成要件ニを容易に想到できたとは到底いえないものである。
しかも、後述する被告の引用する公知例には、蒸散口に対応する開口に保護バーに対応する構成は全く具有されていない。
イ 被告は構成要件Bニの「保護バー」について、周知技術であると主張する。
(ア) 意匠公報である乙36ないし乙38及び乙42では、電気蚊取り器の外側となる器体の意匠であって、どのような薬液容器と加熱装置とが組合わされて具備されるかの具体化が不明であり、これらと蒸散口との関係も全く不明なものである。
これら各証拠は、電気蚊取器といっても、器体だけが表されたものである。
薬液の蒸散については、ヒーターがなくても自然蒸散できるので、上記各証拠の場合、揮発した成分に風を当てて該成分の揮散を助長させるためのファン用として電気を用いることも予測され、この場合、火傷とは無縁の電気蚊取り器となる。
また乙40の実用新案公報の薬剤揮散装置は、薬液吸上用芯体7が発熱性半導体膜2に直接に接触する直接加熱方式によるものであるのに対し、本件発明のような薬液の芯体とヒーターとが接触しない間接加熱方式を前提とした周隙と関連する蒸散口を具体的に想定することは明らかに困難である。
このことは直接加熱方式を採用する乙41についても同様のことが言える。
(イ) ところで、被告は乙42には、蒸散口において保護バーが設けられていると主張する。
しかしながら、この意匠公報の平面図において、開口を2分している2本の線は、開口より外側に多くのスリットを形成していることにより開口周辺が弱体化しやすいため、開口内に2本の線を補強用として設けたものである。
乙42の平面図は実物大の大きさではなく、実物を約1/2程度に縮小した図面である。同平面図を実物大に拡大すると開口はかなり大きくなり、開口を2本の線で2分しても手指の進入が可能な大きさになるのである。
よって、この2本の線は、当業者には、手指の進入防止用でなく補強リブとして理解される。
したがって、乙42が天面の領域の一部に開口を有し、開口にリブを具有していても、本件発明の構成要件Bニの「保護バー」に相当するものではない。
(ウ) また、乙43ないし乙47は被告も認めるように、マット方式による電気蚊取り器に関するものであって、本件発明の間接加熱方式とは加熱機構や蒸散機構が根本的に異なる。
すなわち、マット方式では、ヒーターとなる熱板の上にマットを載せるので、熱板が露出するおそれはなく、マットがずれたりしなければ火傷の危険性は皆無といえる構造となっている。
したがって、手指が蒸散口から入るとヒーターで火傷の危険性がある本件発明と同じようにとらえることはできない。
以下、個々にこれらの乙号各証を検討すると、乙43のマット上方に存するのは、単に架橋した棒9にすぎず、マットの飛び出しを防ぐためのものであり、乙44に存するのは、香料マットを起立状態に支持するためのホルダー3であり、乙45のブリッジ8は、マットに直接触れるのを防止すると記載されているが、クリアランスが大きいその構成からして指が入り込んだりするおそれは充分にあるものであり、乙46の格子の場合も、マットの露出を防いで火傷を防ぐというものであって、格子間のクリアランスの大きさからして指が入り込まないかどうかの安全性まで追求したものではない。
また、乙47の凹部をまたいで設けた棒体13についても、手がマットに触れるのを防ぐが、棒体のないクリアランス部分から充分に指は入る程度のものであることは一見して分かるものである。
したがって、これら乙号各証に記載されているものはいずれも、マットに手全体等大きなものが触れることを防止できても、手指がマット側に進入することまで防げるものとは到底いえないのである。
(4) 以上、本件発明の構成(特許請求の範囲に記載された有機的一体としての構成)が、新規性進歩性を有することは明らかである。
7 争点(3)(損害額)について 【原告の主張】 被告は、平成4年3月1日から平成6年5月31日までの間に、被告物件を製造、販売し、その総販売額は22億5000万円であり、少なくとも2億2500万円の利益を得たから、これが原告が受けた損害の額と推定される。
本件では、この一部である1億3440万円の支払を請求する。
【被告の主張】 争う。
争点に対する当裁判所の判断
1 争点2(権利濫用の抗弁)について (1) 被告は、本件特許は進歩性が欠如するという無効理由があることが明らかであるから、本件における本件特許権の行使は権利の濫用に当たると主張している。
特許の無効審決が確定する以前であっても、特許権侵害訴訟を審理する裁判所は、特許に無効理由が存在することが明らかであるか否かについて判断することができると解すべきであり、審理の結果、当該特許に無効理由が存在することが明らかであるときは、その特許権に基づく差止め、損害賠償等の請求は、特段の事情がない限り、権利の濫用に当たり許されないと解するのが相当である(最高裁判所第三小法廷平成12年4月11日判決・民集54巻4号1368頁参照)。
そこで、以下、被告の前記主張について検討する。
(2) 本件発明の要旨 本件発明の要旨は、訂正後の明細書及び図面から、前記「基礎となる事実」(2)記載のとおりのものと認められる。
(3) 乙21に記載された発明及び本件発明との相違点について ア 乙21(実公昭45-29244号実用新案公報)には、次の記載があると認められる。
(ア) 「本考案は電気発熱体を使用し、この発熱体に直接に接触し、若しくは空間をおいて対設したる蒸発芯を発熱体の直接伝導熱によるか輻射熱によって加熱して、上記蒸発芯に含浸する薬剤を蒸散して蝿、蚊、其他の諸虫類の駆除や殺虫を行う殺虫器、所謂電気蚊取に関する」(1欄18〜23行)。
(イ) 「1は適当なる外筺の一例であり、…」(同34行) (ウ) 「2は支持された薬剤の容器で…」(同38行) (エ) 「蒸発芯4の頂端を囲んで之れに接し、若しくは接しないで馬てい形、円筒形、火屋形(中間のふくらんだランプのほや形)等の断面形を有する電気発熱体5…を容器2若しくは外筺1若しくは其他の器枠などに設けた支持体6によって支持させる」(2欄1〜9行)。 イ また、乙21の第1図からは次のことを読み取ることができる。
(ア) 薬剤の容器2が外筺1の内部に支持されている。
(イ) 蒸発芯4と電気発熱体5の間に、下端が解放された空間が記載されている。
(ウ) 外筺1の上部に天面に相当するものが一点鎖線で記載されている。 ウ さらに、ア(エ)のとおり電気発熱体5には蒸発芯4に接しない円筒形のものがあり、これを採用した場合、円筒形の電気発熱体に、蒸発芯の周囲に空間(周隙)を形成する大きさに貫通穴が形成されると認められ、このことは、第1図において記載されているところでもある。
エ さらに、乙21自体には明確に言及されてはいないが、乙21記載の考案は、加熱蒸散式の殺虫器に係るものであり、蒸散した薬剤が外筺から外部に出ていくことによって殺虫効果が奏されるものであるから、外筺に、本件発明の「蒸散口」に相当するものが設けられていることは当業者において自明な事項である。そして、加熱蒸散式の殺虫器においては、加熱蒸散した薬液が発熱体上方に上昇することから、その蒸散口を本件発明の天面に相当する位置に設けることは周知慣用されているものといえ、(乙16〔実公昭43-25081号実用新案公報〕、乙17〔実公昭43-26272号実用新案公報〕、乙18〔特公昭52-12106号特許公報〕、乙19〔実公昭44-8361号実用新案公報〕)、この事実に照らせば、乙21記載の発明において設けられている蒸散口は、電気発熱体の上方を覆うように器体の上部に備えられた天面に開口されていると認められる。
オ 以上のことから、乙21には「@蒸発芯を具備する薬剤容器、A該薬剤容器を収納するための外筺、B外筺に収納された薬剤容器の蒸発芯の上部の周囲を周隙を存して取り囲むように外筺に備えられた円筒形の電気発熱体、C該電気発熱体の上方を覆うように外筺の上部に備えられた天面、D上記周隙の上方で開口するように上記天面に設けられた蒸散口を具備する加熱蒸散式の殺虫器」が記載されているものと認められる。
そして、乙21記載の「外筺」、「薬剤容器」、「円筒形の電気発熱体」、「蒸発芯」、「加熱蒸散式の殺虫器」は、それぞれ本件発明の「器体」、
「薬液容器」、「電気加熱式の筒状ヒーター」、「吸液芯」、「加熱蒸散装置」に相当するから、乙21には、本件発明の構成要件A@ないしDが記載されていると認められる。 カ そうすると、本件発明と乙21記載の発明とは、乙21は本件発明の構成要件Bイないしニを具備していない点で異なるといえる。
以下、この相違点について検討する。
(4) 構成要件Bイ(外気取り入れ口)について 乙21において記載されていると認められる前記(3)ア(ア)、イ(イ)からすれば、乙21記載の殺虫器は、電気発熱体との間に周隙を置いて配設した蒸発芯を加熱することによって蒸発芯に含浸されている薬剤を蒸発させ殺虫を行うものであるが、電気発熱体と蒸発芯との間の周隙はその下端が開放されているので、電気発熱体の加熱によって周隙の下端から上端へと向かう上昇気流が発生しているものと理解することができる。 ところで、乙21には、その外筺1に外気取り入れ口を設けることに関する記載は存在しないが、上記のとおり電気発熱体の加熱によって容器の内部(具体的には「周隙」)に上昇気流が発生する以上、その容器は完全密閉状態ではなく、
電気発熱体による加熱時には、外気が容器の内部に流入する構成のものであることは、当業者には明白な事項であるといえる。そして、電気蚊取り器において器体胴部の底側あるいは底側近辺に外気取り入れ口を設ける構成は、本件発明の特許出願前から周知の技術的事項である(乙16、乙25〔登録第283566号意匠公報〕)。
そうすると、乙21記載の殺虫器についても、加熱時における外気の流入を更に効率のよいものにするために、その器体の適所に外気取り入れ口を設けることは、当業者ならば容易に想到し得る事項にすぎないというべきである。
(5) 構成要件Bロ(蒸散口とヒーターとの距離)について ア 蒸散口とヒーターの距離を2.5p以下にした点について (ア) 本構成については、本件明細書において、「蒸散薬液の付着防止効果は、ヒータ3と安全カバー11の距離があまりにありすぎると低下する傾向となるので、この距離は2p程度以内にすることが望ましく、通常安全カバー11の加熱劣化などを考慮して、0.5〜2.5p程度の距離に設定される。」(本件公報4欄38〜43行)と記載されていることからすると、蒸散液の付着防止効果の観点から、ヒータ3と安全カバー11の距離があまりにありすぎると前記効果が低くなるため、その限度を決めたものと認められる。
ところで、ヒーターにより加熱気化した蒸散液は、上昇するに従って速度が低下し、拡散することは、当業者が容易に認識することであるといえる。そして、上昇速度が低下し、この蒸散液が拡散するような高さ位置において、そこに物体があればこれに付着しやすい状態になることも当業者においては技術常識というべきであり、乙21の殺虫器においては外筺の天面裏側に蒸散液が付着することが容易に認識できると認められる。そうすると、乙21において、外筺の天面を電気発熱体との関係でどこに位置させるかを考えた場合、当業者であれば、この付着が起こる前の高さ位置に配置しようとすることは、前記技術常識から当業者が容易に想到できたことである。そして、本件明細書の記載に照らして、本件発明において2.5p以下とすることに格別な効果は認められないから、2.5p以下としたことは、良好な高さをその実験等で求めた結果にすぎないというべきである。
(イ) これに対し原告は、本件発明における2.5pという上限を設けることは、蒸散性向上の観点からは距離が長い方がよいという技術常識に逆行する設定であると主張する。
しかし、上記のように、加熱によって蒸散した殺虫液が上方で拡散して、器体の天面裏面に付着しやすいことも、当業者であれば容易に認識し得るところであるから、本構成要件があえて当業者の技術常識に逆行したものであるとはいえない。
イ 蒸散口とヒーターの距離を0.5p以上としたことについて (ア) 本要件については、本件明細書において、「通常安全カバー11の加熱劣化などを考慮して、0.5〜2.5p程度の距離に設定される。」(本件公報4欄42〜43行)と記載されており、これによれば、安全カバー11の加熱劣化を考慮して決められたものと認められる。
そして、安全カバー11の加熱劣化とは、安全カバー11がヒーターに接近しすぎるとヒーターにより加熱され劣化することに他ならない。そうすると、安全カバー11の配置においてヒーター3にあまり接近しない位置に配置することは、当業者が当然配慮すべき事項であり、前記0.5p以上にしたことは、この配慮に基づき適宜設定し得る数値にすぎないというべきである。
(イ) この点について原告は、本要件はヒーターと天面との距離が近くなることによって容器内の気流が乱れ、それが蒸散液の天面への付着につながることから設けられたものであり、これにより、蒸散液の有効成分の装置への付着性や装置の汚れ・変型状態、ひいては該装置を用いた際の殺虫効果に重大な影響を与える効果を有すると主張する。
確かに本件明細書の第1表(本件発明に係る加熱蒸散装置と比較装置とを用いた実験例)の本発明9と比較4を見ると、両者は、ヒーターと蒸散口の距離が0.5p(本発明9)であるか0.4p(比較4)である点でのみ相違しているにもかかわらず、付着率及び殺虫効力試験の結果に顕著な差があることが示されている。
しかしながら、このような差が、ヒーターと蒸散口の距離がわずか0.1p異なることのみから生じたものであるとは、考え難い。すなわち、前記付着率を考える場合、蒸散口とヒーターの距離だけではなく、本件明細書の「特許請求の範囲」の項において何ら特定されていない蒸散口の口径、ヒーターの温度、周隙の大きさ等も考慮に入れる必要があり、これらがある特定された条件下によって初めて上記効果が奏されるものと考えることが自然であって、それらの条件いかんにかかわらずいかなる場合でも前記0.5p以上であれば格別の効果が奏されるとは認められない。 したがって、原告の主張は採用できない。
(6) 構成要件Bハ(蒸散口の口径)について ア この構成について、本件明細書では、「ヒータ3の加熱により蒸散した薬液は、周隙4内を上昇する上昇気流に随伴されて蒸散口2を通過することになるので、周隙4と蒸散口12が上下に一致して形成されていることと相俟って蒸散された薬液が安全カバー11の内面に付着しロスすることが極めて少なくなる。」と記載されており(本件公報4欄33〜38行)、これによれば、本構成は、蒸散口が周隙と略々等しいかこれより大きい口径で開口していることにより、上昇する蒸散薬液が容器の内面に付着することが極めて少なくなるものであると認められる。
しかし、乙21に記載される加熱蒸散式の殺虫装置においては、前記(4)記載のとおり、蒸散薬液は、蒸発芯と電気発熱体との間の前記周隙を通って上部に向かって上昇し、拡散するものであって、この場合に、外筺の蒸散口を前記周隙より小さくすると、蒸散薬液の上昇が妨げられ、薬液が器体の裏面に付着しやすくなり、殺虫装置の機能が損なわれることは当業者にとって自明のことというべきである。 したがって、本構成は、当業者であれば、乙21記載の発明において、
器体に蒸散口を設ける際に前記自明のことを考慮した設計的事項にすぎない。 イ(ア) これに対し原告は、まず、蒸散口が周隙より著しく大きいと、拡散性や蒸散性に悪影響を生じやすく、逆に蒸散口が周隙より小さいと、器体内温度が上昇しやすくなり、本件発明の技術思想と逆行することにもなるので、これらの点を克服するために設定された要件であり、自明の技術ではないと主張する。
しかし、蒸散口の口径を周隙より小さくしないようにすることが、当業者にとっての設計的事項にすぎないと認められることは前記のとおりである。また、蒸散口が周隙より著しく大きい場合についての問題点についての主張は、具体的でない上、本構成では蒸散口の大きさの上限は特に定められていないのであるから、特許請求の範囲の記載に基づかない主張でもある。
したがって、原告のこの主張は採用できない。
(イ) また、原告は、蒸散薬液は周隙よりも外周に広がって上昇するから、蒸散口の口径を周隙と略々同じとすれば蒸散性に支障が出ると考えられやすいにもかかわらず、周隙と略々同じでも蒸散効果が得られるという自明でない結果を得たのであると主張する。
しかし、先に(5)ア(ア)で述べたとおり、乙21の加熱蒸散式の殺虫器において、外筺の天面裏面に蒸散薬液が付着しやすいことは当業者であれば容易に認識し得ることであるから、このような付着が生じないように、外筺の天面の高さのみならず、天面に設けられる蒸散口の口径についても設定することは、当業者が容易に想到できたことである。また、本構成では、蒸散口の大きさの上限は特に定められていないのであるから、この原告の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張でもある。
したがって、原告のこの主張は採用できない。
(ウ) さらに、原告は、「周隙」と「蒸散口」の関連性を記載した公知例は存在しないと主張するが、本構成が定める内容が当業者にとって設計的事項にすぎないことは前記のとおりであるから、この主張も採用できない。
(7) 構成要件Bニ(保護バー)について ア 本構成について、本件明細書には、「蒸散口12には幼児などの手指の侵入防止のための保護バー13が備えられている。」との記載があり(本件公報4欄19〜21行)、この記載と特許請求の範囲の記載を併せ考えると、本構成の「保護バー」は、蒸散口に手指などが侵入することを防止するためのものであると認められる。
イ ところで、乙45(実公昭57-46791号実用新案公報)には、
「電気くん蒸殺虫器」について、「発熱体6は上蓋3の開口部4下方に位置」しており(2欄18〜19行)、「8は開口部4を横断するよう設けられたブリッジで、発熱体6や発熱体6上に載置された図示しないマットに直接触れて火傷などをするのを防止するためのものである。」(同23〜26行目)との記載があり、図面にブリッジの構造、形状が示されている。
また、乙46(実公昭57-57593号実用新案公報)には、「マット式の薬剤を加熱することにより殺虫成分を輝散させて蚊等を殺虫するくん蒸器」(1欄26〜28行)について、「従来、この種くん蒸器においてはマット式の薬剤等の載置部が露出して設けられていたため火傷の恐れが」あった(同29〜31行)ことから、「載置部を覆うようにして設けられた複数個の格子の内少なくとも1個の格子を他の格子より載置部に近づけることにより、火傷の恐れをなく」す(同34〜37行)ことを目的とし、「格子17a、17b、17cは載置部22を覆うようにして設けられているため、指等の侵入を阻止することができる。」(4欄11〜13行。なお「7a」等とあるのは誤記と認める。)との記載があり、図面に格子の構造、形状が示されている。
これらの実用新案公報の記載に照らせば、電気加熱手段により薬剤を発生散布させて、蝿、蚊、その他諸虫類の駆除や殺虫を行う殺虫装置において、その薬剤が散布される開口に、手指の進入防止を図るための保護バーを設けることは、
本件発明の出願日前から周知の技術であったと認められる。
そして、これらの周知技術はいずれもマットに含浸させた薬剤を加熱することにより殺虫成分を揮散させて蚊等の殺虫を行う、いわゆる「マット式」の殺虫装置であるが、加熱された部分に手指が触れて火傷することを防止するという点において、本件発明のものとその目的は同じであるから、これら周知技術を本件発明に適用することに何ら困難性は認められないというべきである。
ウ(ア) これに対し原告は、まず、乙44及び46のようなマット式の電気蚊取り器では、火傷の危険性は皆無であり、それらに記載されたブリッジ及び格子は手指の侵入を防止できないと主張する。
しかし、(2)引用の各記載からすれば、乙44のブリッジや乙46の格子が、マット式の電気蚊取り器における火傷の危険性を防止するために、開口部への手指の侵入を防止するものであることは明らかである。
(イ) また、原告は、保護バーが備えられる蒸散口については、構成要件Bハの蒸散口、すなわち「周隙と略々等しいかこれより大きい口径で開口している」ことが必要であり、周隙と関連性のない蒸散口を具有しているだけの公知例から構成要件ハと関連する構成要件ニを容易に想到できたとはいえないと主張する。
しかし、本構成の保護バーは、手指の侵入を防止するためのものであり、このような危険性を防止する必要のある蒸散口は、構成要件Bハ記載のものに限られるものではない(マット式の殺虫器具の開口部でもそのような必要があることは前記のとおりである。)から、構成要件Bハの蒸散口もそのような危険性がある以上、前記周知技術を本件発明に適用することに何ら困難性は認められない。
したがって、原告のこの主張は採用できない。
(8) 構成要件Bイないしニの組合せについて 本件発明において、構成要件Bイないしニを組み合わせたことによる格別な作用効果は認められず、これらの作用効果は、乙21記載のもの、前記の周知の事項、技術常識、及び、自明の事項から当業者において予期し得る範囲のものであるというべきである。 (9) まとめ 以上によれば、本件発明は、乙21記載の発明、上記周知の技術事項、技術常識及び自明の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであって、同法123条1項2号の無効理由があることが明らかである。
したがって、本件特許には無効理由があることが明白であり、無効審判請求がなされた場合には無効審決の確定により本件特許が無効とされることが確実に予見されるものというべきであるところ、本件特許について訂正請求がなされている等の特段の事情も認められないから、本件における原告による本件特許権に基づく請求は、権利の濫用として許されないものというべきである。
なお、本件特許は、特許無効審判請求事件において審判請求は成り立たないとした特許庁の平成7年8月3日審決が、審決取消訴訟において東京高等裁判所の平成9年2月4日判決により、特許法29条2項により特許を受けることができないと判断されて取り消された後に、特許庁の平成10年7月1日審決により、本件特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであるとして本件特許を無効とする審決がなされたが、同審決に対する審決取消訴訟の係属中に、訂正審判において構成要件Bニの部分(「保護バー」の構成)を特許請求の範囲に加える訂正が認められ、そのために前記東京高等裁判所の平成11年11月29日判決により前記審決が取り消されたものであるが、乙53によれば、特許庁は平成12年11月1日、前記訂正後の特許請求の範囲に記載されたとおりのものを発明の要旨とする本件発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであると判断して、本件特許を無効とする審決をしたことが認められる。
2 以上によれば、その余について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないから、主文のとおり判決する。
追加
別紙(1)イ号物件説明書1図面の説明第1図正面図第2図側面図第3図平面図第4図縦断面図第5図薬液容器を省略して示す縦断面図2構造上の特徴について。
イ号物件は、器体と薬液容器とが同じ紙箱に入れられて販売されているが、
(1)@1は吸液芯1aを有する薬液容器である。
A2は右薬液容器1を挿着することができる器体であって、上部の天面2aと下部の本体2bとで構成されている。
B右薬液容器1は、円柱状の口部1bと右器体本体2bの内部上方の円柱孔2cとを螺着式とすることで、使用にあたり着脱可能な構造になっている。
(2)@器体2の天面2aには口径2pの蒸散筒上端部開口12-1が開口され、
該蒸散筒上端部開口12-1の周方向等間隔に3つの保護片13・13・13が設けられている。
保護片13の先端から蒸散筒上端部開口12-1の中心までの距離は0.5pである。
A器体2の天面2aの内側には、一体成形により、口径2p、長さ0.9pの中空円筒状の蒸散筒15が設けられ、蒸散筒の下端部16は口径2pの円形の蒸散筒下端部開口12-2を形成している。
また器体2の両側内部には2つの開口12-3、12-3を形成している。
B3つの保護片13・13・13は、頂部において丸みを帯びた状態にて蒸散筒上端部開口12-1から内側に突出し、頂部からなだらかな裾野形状を呈して蒸散筒上端部開口12-1の周囲と一体となって連続した形状を成しており、3つの保護片13・13・13とそれらの間の蒸散筒上端部開口12-1とで、丸みを帯びた花弁形状の蒸散口(開口)を形成している。
(3)@器体2の本体2bには電気加熱式の発熱ユニット3が備えられている。発熱ユニット3には、その内側に口径1pの中空円筒状の金属リング17が設けられている。
A右薬液容器1を器体2に挿着すると、前記吸液芯1aの上部は周囲が周隙4を存して取り囲むように右金属リング17内に挿入される。
B蒸散筒15は、発熱ユニット3の内寄りの部分及び金属リング17の上方に中空円筒状の空間を形成し、前記天面2aは蒸散筒15の外側の部分で発熱ユニット3の外寄りの部分の上方を覆っている。
C前記蒸散筒上端部開口12-1と金属リング上端部18の距離は1.15pであり、蒸散筒下端部開口12-2と金属リング上端部18の距離は0.3pである。
(4)器体本体2bの下端には周方向等間隔に四個の脚19・19・19・19が設けられ、各脚間に四個の弧状の隙間14・14・14・14が形成されることで器体2の外部と連通している。
(5)以上の構造上の特徴を有する加熱蒸散装置である。
尚、図中5はスイッチ、6は接続コードである。
3使用状態の説明右加熱蒸散装置は、発熱ユニット3の金属リング17により吸液芯1aの上部を加熱すると、薬液容器内の薬液は吸液芯1aにより徐々に吸い上げられつつ蒸散される。
他方、隙間14・14・14・14より器体2の両側内部の開口12-3、12-3から取り入れられた外気は、前記金属リング17の加熱による温度上昇によって本体2b内空間から周隙4内を経て上昇し、右の蒸散する薬液を伴って蒸散筒下端部開口12-2、蒸散筒15の内部の円筒状の空間を経て、蒸散筒上端部開口12-1より外部に放散される。
イ号物件第1図第2図第3図第4図第5図別紙(2)ロ号物件説明書1図面の説明第1図正面図第2図側面図第3図平面図第4図縦断面図第5図使用状況を示す縦断面図2構造上の特徴について。
(1)@2は薬液容器1を挿着することができる器体であって、上部の天面2aと下部の本体2bとで構成されている。
A右器体本体2bの内部上方の円柱孔2cは、吸液芯1aを有する薬液容器1の円柱状の口部1bと螺着することで、薬液容器1を使用にあたり着脱可能な構造になっている。
(2)@器体2の天面2aには口径2pの開口12が形成され、該開口12の周方向等間隔に3つの保護片13・13・13が設けられている。
A保護片13の先端から開口12の中心までの距離は0.5pである。
B3つの保護片13・13・13は、頂部において丸みを帯びた状態にて蒸散筒上端部開口12-1から内側に突出し、頂部からなだらかな裾野形状を呈して蒸散筒上端部開口12-1の周囲と一体となって連続した形状を成しており、3つの保護片13・13・13とそれらの間の蒸散筒上端部開口12-1とで、丸みを帯びた花弁形状の蒸散口(開口)を形成している。
(3)@器体2の本体2bには電気加熱式の発熱ユニット3が備えられている。発熱ユニット3には、その内側に口径1pの中空円筒状の金属リング17が設けられている。
A使用時、前記吸液芯1aの上部は周囲が周隙4を存して取り囲むように右金属リング17内に挿入されている。
B天面2aは、発熱ユニット3の上方を覆っている。
C開口12と金属リング上端部18の距離は2.35pである。
(4)器体本体2bの下端には周方向等間隔に四個の脚19・19・19・19が設けられ、各脚間の隙間14・14・14・14が形成されることで器体2の外部と連通している。
(5)以上の構造上の特徴を有する加熱蒸散装置である。
尚、図中5はスイッチ、6は接続コード、7・7は内部の薬液容器1を覗く窓である。
3使用状態の説明右加熱蒸散装置は、発熱ユニット3の金属リング17により吸液芯1aの上部を加熱すると、薬液容器内の薬液は吸液芯1aにより徐々に吸い上げられつつ蒸散される。
他方、隙間14・14・14・14より取り入れられた外気は、前記金属リング17の加熱による温度上昇によって本体2b内空間から周隙4内を経て上昇し、
右の蒸散する薬液を伴って開口12より外部に放散される。
ロ号物件第1図第2図第3図第4図第5図別紙(3)ハ号物件説明書1図面の説明第1図正面図第2図側面図第3図平面図第4図縦断面図第5図薬液容器を省略して示す縦断面図2構造上の特徴について。
ハ号物件は、器体と薬液容器とが同じ紙箱に入れられて販売されているが、
(1)@1は吸液芯1aを有する薬液容器である。
A2は右薬液容器1を挿着することができる器体であって、該器体2は天面2a、本体2b及びベース部2dとで構成されている。
B右薬液容器1は、吸液芯1a及び口部1b以外の部分は露出するように円柱状の口部1bと右器体本体2bの内部上方の円柱孔2cとを螺着し、薬液容器1をベース部2dに載置するようにして、使用にあたり着脱可能な構造になっている。
(2)@器体2の天面2aには口径1.2pの蒸散筒上端部開口12-1が開口され、該蒸散筒上端部開口12-1の周方向等間隔に3つの保護片13・13・13が設けられている。
保護片13の先端から蒸散筒上端部開口12-1の中心までの距離は0.6pである。
A器体2の天面2aの内側には、一体成形により、口径1.6p、長さ0.9pの中空円筒状の蒸散筒15が設けられ、蒸散筒の下端部16は口径1.6pの円形の蒸散筒下端部開口12-2を形成している。
B3つの保護片13・13・13は、頂部において丸みを帯びた状態にて蒸散筒上端部開口12-1から内側に突出し、頂部からなだらかな裾野形状を呈して蒸散筒上端部開口12-1の周囲と一体となって連続した形状を成しており、3つの保護片13・13・13とそれらの間の蒸散筒上端部開口12-1とで、丸みを帯びた花弁形状の蒸散口(開口)を形成している。
(3)@器体2の本体2bには電気加熱式の発熱ユニット3が備えられている。発熱ユニット3には、その内側に口径1pの中空円筒状の金属リング17が設けられている。
A右薬液容器1を器体2に装着すると、前記吸液芯1aの上部は周囲が周隙4を存して取り囲むように右金属リング17内に挿入される。
B蒸散筒15は、発熱ユニット3の内寄りの部分及び金属リング17の上方に中空円筒状の空間を形成し、前記天面2aは蒸散筒15の外側の部分で発熱ユニット3の外寄りの部分の上方を覆っている。
C前記蒸散筒上端部開口12-1と金属リング上端部18の距離は0.95pであり、蒸散筒下端部開口12-2と金属リング上端部18の距離は0.3pである。
(4)器体本体2bの下部には周方向等間隔に4個の開口14・14・14・14が形成されることで器体2の外部と連通している。
(5)以上の構造上の特徴を有する加熱蒸散装置である。
尚、図中5はスイッチ、6は接続コードである。
3使用状態の説明右加熱蒸散装置は、発熱ユニット3の金属リング17により吸液芯1aの上部を加熱すると、薬液容器内の薬液は吸液芯1aにより徐々に吸い上げられつつ蒸散される。
他方、開口14・14・14・14より取り入れられた外気は、前記金属リング17の加熱による温度上昇によって本体2b内空間から周隙4内を経て上昇し、
右の蒸散する薬液を伴って蒸散筒下端部開口12-2、蒸散筒15の内部の円筒状の空間を経て、蒸散筒上端部開口12-1より外部に放散される。
ハ号物件第1図第2図第3図第4図第5図別紙(4)ホ号物件説明書1図面の説明第1図の1・2正面図第2図の1・2側面図第3図の1・2平面図第4図の1・2縦断面図第5図の1・2薬液容器を省略して示す縦断面図右各図の枝番1は「蒸散筒15」のないホ号物件、枝番2は「蒸散筒15」のあるホ号物件の各図である。
2構造上の特徴について。
ホ号物件は、器体と薬液容器とが同じ紙箱に入れられて販売されているが、
(1)@1は吸液芯1aを有する薬液容器である。
A2は右薬液容器1を挿着することができる器体であって、該器体2は天面2a及び本体2bとで構成されている。
B右薬液容器1は、吸液芯1a及び口部1b以外の部分は露出するように円柱状の口部1bと右器体本体2bの内部上方の円柱孔2cとを螺着式とし、使用にあたり着脱可能な構造になっている。
2@器体2の天面2aには口径二pの天面開口12-1が開口され、該天面開口12-1の周方向等間隔に3つの保護片13・13・13が設けられている。
保護片13の先端から天面開口12-1の中心までの距離は0.5pである。
A器体2の天面2aの内側には、一体成形により、口径2p、長さ0.9pの中空円筒状の蒸散筒15が設けられているものと、設けられていないものがあり、設けられているものでは蒸散筒下端部16は口径2pの円形の蒸散筒下端部開口12-2を形成している。
B3つの保護片13・13・13は、頂部において丸みを帯びた状態にて蒸散筒上端部開口12-1から内側に突出し、頂部からなだらかな裾野形状を呈して蒸散筒上端部開口12-1の周囲と一体となって連続した形状を成しており、3つの保護片13・13・13とそれらの間の蒸散筒上端部開口12-1とで、丸みを帯びた花弁形状の蒸散口(開口)を形成している。
(3)@器体2の本体2bには電気加熱式の発熱ユニット3が備えられている。発熱ユニット3には、その内側に口径1pの中空円筒状の金属リング17が設けられている。
A右薬液容器1を器体2に装着すると、前記吸液芯1aの上部は周囲が周隙4を存して取り囲むように右金属リング17内に挿入される。
B蒸散筒15のあるものでは、発熱ユニット3の内寄りの部分及び金属リング17の上方に中空円筒状の空間を形成し、前記天面2aは蒸散筒15の外側の部分で発熱ユニット3の外寄りの部分の上方を覆っている。
蒸散筒15のないものでは、前記天面2aは発熱ユニット3の上方を覆っている。
C前記天面開口12-1と金属リング上端部18の距離は1.05pであり、蒸散筒15のあるものでは、蒸散筒下端部開口12-2と金属リング上端部18の距離は0.3pである。
(4)器体本体2bの下部には4個の脚19、19、19、19が設けられ、周方向等間隔に四個の開口14・14・14・14が形成されることで器体2の外部と連通している。
(5)以上の構造上の特徴を有する加熱蒸散装置である。
尚、図中5はスイッチ、6は接続コードである。
3使用状態の説明右加熱蒸散装置は、発熱ユニット3の金属リング17により吸液芯1aの上部を加熱すると、薬液容器内の薬液は吸液芯1aにより徐々に吸い上げられつつ蒸散される。
他方、開口14・14・14・14より取り入れられた外気は、前記金属リング17の加熱による温度上昇によって本体2b内空間から周隙4内を経て上昇し、
蒸散筒15のないものでは右の蒸散する薬液を伴って天面開口12-1より、蒸散筒15のあるものでは右の蒸散する薬液を伴って天面開口12-2、蒸散筒15の内部の円筒状の空間を経て、天面開口12-1より外部に放散される。
ホ号物件第1図-1第1図-2第2図-1第2図-2第3図-1第3図-2第4図-1第4図-2第5図-1第5図-2別紙(5-1)へ号物件説明書(60日用)1図面の説明第1図斜視図第2図キャップを外した斜視図2構造上の特徴キャップ1c、ネジ螺旋が設けられた円柱状の口部1b及び上部は正一二角柱状、下部は円柱状の本体1からなり、本体1の底面から口部1bの上方に突出した吸液芯1aを設けてなる薬液を収納する容器ヘ号物件1第1図第2図別紙(5-2)へ号物件説明書(30日用)1図面の説明第1図斜視図第2図キャップを外した斜視図二構造上の特徴キャップ1c、ネジ螺旋が設けられた円柱状の口部1b及び上部は正一二角柱状、下部は略紡錘状柱の本体1からなり、本体1の底面から口部1bの上方に突出した吸液芯1aを設けてなる薬液を収納する容器ヘ号物件2第1図第2図別紙(6)ト号物件説明書1図面の説明第1図正面図第2図側面図第3図平面図第4図縦断面図第5図薬液容器を省略して示す縦断面図2構造上の特徴について。
ト号物件は、器体と薬液容器とが同じ紙箱に入れられて販売されているが、
(1)@1は吸液芯1aを有する薬液容器である。
A2は右薬液容器1を挿着することができる器体である。
B右薬液容器1は、円柱状の口部1bと右器体2の内部上方の円柱孔2cとを螺着式とすることで、使用にあたり着脱可能な構造になっている。
2@器体2の天面2aには口径二pの蒸散筒上端部開口12-1が開口され、
該蒸散筒上端部開口12-1の周方向等間隔に3つの保護片13・13・13が設けられている。
保護片13の先端から蒸散筒上端部開口12-1の中心までの距離は0.5pである。
A器体2の天面2aの内側には、一体成形により、口径2p、長さ0.9pの中空円筒状の蒸散筒15が設けられ、蒸散筒の下端部16は口径2pの円形の蒸散筒下端部開口12-2を形成している。
B3つの保護片13・13・13は、頂部において丸みを帯びた状態にて蒸散筒上端部開口12-1から内側に突出し、頂部からなだらかな裾野形状を呈して蒸散筒上端部開口12-1の周囲と一体となって連続した形状を成しており、3つの保護片13・13・13とそれらの間の蒸散筒上端部開口12-1とで、丸みを帯びた花弁形状の蒸散口(開口)を形成している。
(3)@器体2の上部には電気加熱式の発熱ユニット3が備えられている。発熱ユニット3には、その内側に口径1pの中空円筒状の金属リング17が設けられている。
A右薬液容器1を器体2に装着すると、前記吸液芯1aの上部は周囲が周隙4を存して取り囲むように右金属リング17内に挿入される。
B蒸散筒15は、発熱ユニット3の内寄りの部分及び金属リング17の上方に中空円筒状の空間を形成し、前記天面2aは蒸散筒15の外側の部分で発熱ユニット3の外寄りの部分の上方を覆っている。
C前記蒸散筒上端部開口12-1と金属リング上端部18の距離は1.2pであり、蒸散筒下端部開口12-2と金属リング上端部18の距離は0.3pである。
(4)器体2には、その蒸散筒上端部開口12-1に近接して周方向、等間隔に6個の細長い花弁状の形状をなすスリット14・14・14・14・14・14が形成されることで器体2の外部と連通している。
(5)以上の構造上の特徴を有する加熱蒸散装置である。
尚、図中5はスイッチ、6は接続コードである。
3使用状態の説明右加熱蒸散装置は、発熱ユニット3の金属リング17により吸液芯1aの上部を加熱すると、薬液容器内の薬液は吸液芯1aにより徐々に吸い上げられつつ蒸散される。
他方、スリット14・14・14・14・14・14より取り入れられた外気は、前記金属リング17の加熱による温度上昇によって本体2b内空間から周隙4内を経て上昇し、右の蒸散する薬液を伴って蒸散筒下端部開口12-2、蒸散筒15の内部の円筒状の空間を経て、蒸散筒上端部開口12-1より外部に放散される。
ト号物件第1図第2図第3図第4図第5図別紙(7)チ号物件説明書1図面の説明第1図正面図第2図側面図第3図平面図第4図縦断面図第5図薬液容器を省略して示す縦断面図2構造上の特徴について。
チ号物件は、器体と薬液容器とが同じ紙箱に入れられて販売されているが、
(1)@1は吸液芯1aを有する薬液容器である。
A2は右薬液容器1を挿着することができる器体である。
B右薬液容器1は、円柱状の口部1bと右器体2の内部上方の円柱孔2cとを螺着式とすることで、使用にあたり着脱可能な構造になっている。
2@器体2の天面2aには口径2pの蒸散筒上端部開口12-1が開口され、
該蒸散筒上端部開口12-1の周方向等間隔に6つの保護片13・13・13・13・13・13が設けられている。
対向する保護片13・13の間は0.5pである。
A器体2の天面2aの内側には、一体成形により、口径2p、長さ0.9pの中空円筒状の蒸散筒15が設けられ、蒸散筒の下端部16は口径2pの円形の蒸散筒下端部開口12-2を形成している。
B6つの保護片13・13・13は、頂部において丸みを帯びた状態にて蒸散筒上端部開口12-1から内側に突出し、頂部からなだらかな裾野形状を呈して蒸散筒上端部開口12-1の周囲と一体となって連続した形状を成しており、6つの保護片13・13・13とそれらの間の蒸散筒上端部開口12-1とで、細長い花弁形状の蒸散口(開口)を形成している。
(3)@器体2の上部には電気加熱式の発熱ユニット3が備えられている。発熱ユニット3には、その内側に口径1pの中空円筒状の金属リング17が設けられている。
A右薬液容器1を器体2に装着すると、前記吸液芯1aの上部は周囲が周隙4を存して取り囲むように右金属リング17内に挿入される。
B蒸散筒15は、発熱ユニット3の内寄りの部分及び金属リング17の上方に中空円筒状の空間を形成し、前記天面2aは蒸散筒15の外側の部分で発熱ユニット3の外寄りの部分の上方を覆っている。
C前記蒸散筒上端部開口12-1と金属リング上端部18の距離は1.2pであり、蒸散筒下端部開口12-2と金属リング上端部18の距離は0.3pである。
(4)器体2には、その蒸散筒上端部開口12-1に近接して周方向、等間隔に6個の細長い花弁状の形状をなすスリット14・14・14・14・14・14が形成されることで器体2の外部と連通している。
(5)以上の構造上の特徴を有する加熱蒸散装置である。
尚、図中5はスイッチ、6は接続コードである。
3使用状態の説明右加熱蒸散装置は、発熱ユニット3の金属リング17により吸液芯1aの上部を加熱すると、薬液容器内の薬液は吸液芯1aにより徐々に吸い上げられつつ蒸散される。
他方、スリット14・14・14・14・14・14より取り入れられた外気は、前記金属リング17の加熱による温度上昇によって本体2b内空間から周隙4内を経て上昇し、右の蒸散する薬液を伴って蒸散筒下端部開口12-2、蒸散筒15の内部の円筒状の空間を経て、蒸散筒上端部開口12-1より外部に放散される。
チ号物件第1図第2図第3図第4図第5図別紙(8)リ号物件説明書1図面の説明第1図正面図第2図側面図第3図平面図第4図縦断面図第5図薬液容器を省略して示す縦断面図2構造上の特徴について。
リ号物件は、器体と薬液容器とが同じ紙箱に入れられて販売されているが、
(1)@1は吸液芯1aを有する薬液容器である。
A2は右薬液容器1を挿着することができる器体である。
B右薬液容器1は、円柱状の口部1bと右器体2の内部上方の円柱孔2cとを螺着式とすることで、使用にあたり着脱可能な構造になっている。
(2)@器体2の天面2aには口径2.5pの蒸散筒上端部開口12-1が開口され、該蒸散筒上端部開口12-1の周方向等間隔に6つの保護片13・13・13・13・13・13が設けられている。
対向する保護片13・13の間は0.5pである。
A器体2の天面2aの内側には、一体成形により、口径2.5p、長さ0.9pの中空円筒状の蒸散筒15が設けられ、蒸散筒の下端部16は口径2.5pの円形の蒸散筒下端部開口12-2を形成している。
また、器体2の両側内部には、2つの開口12-3・12-3を形成している。
B6つの保護片13・13・13は、頂部において丸みを帯びた状態にて蒸散筒上端部開口12-1から内側に突出し、頂部からなだらかな裾野形状を呈して蒸散筒上端部開口12-1の周囲と一体となって連続した形状を成しており、6つの保護片13・13・13とそれらの間の蒸散筒上端部開口12-1とで、細長い花弁形状の蒸散口(開口)を形成している。
(3)@器体2の上部には電気加熱式の発熱ユニット3が備えられている。発熱ユニット3には、その内側に口径1pの中空円筒状の金属リング17が設けられている。
A右薬液容器1を器体2に装着すると、前記吸液芯1aの上部は周囲が周隙4を存して取り囲むように右金属リング17内に挿入される。
B蒸散筒15は、発熱ユニット3の内寄りの部分及び金属リング17の上方に中空円筒状の空間を形成し、前記天面2aは蒸散筒15の外側の部分で発熱ユニット3の外寄りの部分の上方を覆っている。
C前記蒸散筒上端部開口12-1と金属リング上端部18の距離は1.35pであり、蒸散筒下端部開口12-2と金属リング上端部18の距離は0.3pである。
(4)器体2には、その蒸散筒上端部開口12-1に近接して周方向、等間隔に6個の細長い花弁状の形状をなすスリット14a・14a・14a・14a・14a・14a、及び、器体2の下端の周方向等間隔に4個の脚19・19・19・19が設けられ、各脚間に4個の弧状の隙間14b・14b・14b・14bが形成されることで器体2の外部と連通している。
(5)以上の構造上の特徴を有する加熱蒸散装置である。
尚、図中5はスイッチ、6は接続コードである。
3使用状態の説明右加熱蒸散装置は、発熱ユニット3の金属リング17により吸液芯1aの上部を加熱すると、薬液容器内の薬液は吸液芯1aにより徐々に吸い上げられつつ蒸散される。
他方、スリット14a・14a・14a・14a・14a・14a及び隙間14b・14b・14b・14b、器体2の両側内部の開口12-3・12-3から取り入れられた外気は、前記金属リング17の加熱による温度上昇によって本体2b内空間から周隙4内を経て上昇し、右の蒸散する薬液を伴って蒸散筒下端部開口12-2、蒸散筒15の内部の円筒状の空間を経て、蒸散筒上端部開口12-1より外部に放散される。
リ号物件第1図第2図第3図第4図第5図別紙(9)ヌ号物件説明書1図面の説明第1図正面図第2図側面図第3図平面図第4図縦断面図第5図薬液容器を省略して示す縦断面図2構造上の特徴について。
ヌ号物件は、器体と薬液容器とが同じ紙箱に入れられて販売されているが、
(1)@1は吸液芯1aを有する薬液容器である。
A2は右薬液容器1を挿着することができる器体である。
B右薬液容器1は、円柱状の口部1bと右器体2の内部上方の円柱孔2cとを螺着式とすることで、使用にあたり着脱可能な構造になっている。
2@器体2の天面2aには口径2.5pの蒸散筒上端部開口12-1が開口され、該蒸散筒上端部開口12-1の周方向等間隔に6つの保護片13・13・13・13・13・13が設けられている。
対向する保護片13・13の間は0.5pである。
A器体2の天面2aの内側には、一体成形により、口径2.5p、長さ0.9pの中空円筒状の蒸散筒15が設けられ、蒸散筒の下端部16は口径2.5pの円形の蒸散筒下端部開口12-2を形成している。
また、器体2の両側内部には、四つの内部開口12-3・12-3・12-3・12-3が開口している。
B6つの保護片13・13・13は、頂部において丸みを帯びた状態にて蒸散筒上端部開口12-1から内側に突出し、頂部からなだらかな裾野形状を呈して蒸散筒上端部開口12-1の周囲と一体となって連続した形状を成しており、6つの保護片13・13・13とそれらの間の蒸散筒上端部開口12-1とで、細長い花弁形状の蒸散口(開口)を形成している。
(3)@器体2の上部には電気加熱式の発熱ユニット3が備えられている。発熱ユニット3には、その内側に口径1pの中空円筒状の金属リング17が設けられている。
A右薬液容器1を器体2に装着すると、前記吸液芯1aの上部は周囲が周隙4を存して取り囲むように右金属リング17内に挿入される。
B蒸散筒15は、発熱ユニット3の内寄りの部分及び金属リング17の上方に中空円筒状の空間を形成し、前記天面2aは蒸散筒15の外側の部分で発熱ユニット3の外寄りの部分の上方を覆っている。
C前記蒸散筒上端部開口12-1と金属リング上端部18の距離は1.5pであり、蒸散筒下端部開口12-2と金属リング上端部18の距離は0.3pである。
(4)器体2には、その蒸散筒上端部開口12-1に近接して周方向、等間隔に6個の細長い花弁状の形状をなすスリット14a・14a・14a・14a・14a・14a、及び、器体2の下端の周方向等間隔に四個の脚19・19・19・19が設けられ、各脚間に四個の弧状の隙間14b・14b・14b・14bが形成されることで器体2の外部と連通している。
(5)以上の構造上の特徴を有する加熱蒸散装置である。
尚、図中5はスイッチ、6は接続コードである。
3使用状態の説明右加熱蒸散装置は、発熱ユニット3の金属リング17により吸液芯1aの上部を加熱すると、薬液容器内の薬液は吸液芯1aにより徐々に吸い上げられつつ蒸散される。
他方、スリット14a・14a・14a・14a・14a・14a、隙間14b・14b・14b・14b、器体2の両側内部の開口12-3・12-3・12-3・12-3から取り入れられた外気は、前記金属リング17の加熱による温度上昇によって本体2b内空間から周隙4内を経て上昇し、右の蒸散する薬液を伴って蒸散筒下端部開口12-2、蒸散筒15の内部の円筒状の空間を経て、蒸散筒上端部開口12-1より外部に放散される。
ヌ号物件第1図第2図第3図第4図第5図別紙争点整理表
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 高松宏之
裁判官 安永武央