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関連審決 審判1997-4578
関連ワード 技術常識 /  遡及 /  実施 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 289号 審決取消請求事件
原告 【A】
被告 特許庁長官【B】
指定代理人 【C】
同 【D】
同 【E】
同 【F】
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/03/21
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成9年審判第4578号事件について平成12年6月26日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、追加の特許出願である特願昭57-175141号出願を、昭和63年6月6日に独立の特許出願に変更して、名称を「水上エレベーター装置」とする発明(以下「本願発明」という。)につき特許出願をした(特願昭63-138632号、以下「本件出願」という。)が、平成9年2月4日に拒絶査定を受けたので、同年3月26日、これに対する不服の審判の請求をした。
特許庁は、同請求を平成9年審判第4578号事件として審理した上、平成12年6月26日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年7月14日、原告に送達された。
2 平成10年11月30日付け手続補正書による補正後の明細書(以下「本件明細書」という。)に記載された特許請求の範囲 滑車E1に掛けられた索E2の一方の端に重錘Wを取付け、他方の端にシリンダーF、ピストン部Pおよびリンク機構Aからなる物体Vを取付ける。
シリンダーFの内部中間に隔壁F4を設け、隔壁F4を挟んでシリンダーF内を上下にスライド運動するピストンP8とピストンP9を設ける。ピストンP8とピストンP9は所定の間隔を置いて連結棒P7に固定する。シリンダーFに隔壁F4とピストンP9との間に気密室F1を形成するための大気が出入りするシリンダー開口部F32を設け、シリンダー開口部F32と大気とが管路によって繋がり、管路に大気の出入を制御する空気制御器F30、F31を設ける。ピストンP9の下部にダイヤフラムを介してピストンP10を設ける。ピストンP9と隔壁F4は伸縮自在な管P6によって繋げる。
連結棒P7はピストンP8より上方に伸して、連結棒P7の上端に上部シリンダーP1を設け、上部シリンダーP1内を上下運動するピストンP20を設ける。ピストンP20のロッドの上端にピストンP20を上部シリンダーP1の上死点および下死点に移動させるリンク機構Aを設ける。連結棒P7は連結棒中空部P4を有し、ピストンP9の取付部にピストン軸開口部P15が設けられていて、隔壁F4とピストンP9の間にできる空気室F1とピストンP20の上部シリンダー室P1とが連通している。
シリンダーFの上下運動の上死点および下死点には各々シリンダーFを一時的に保持するシリンダー係脱装置D2、D3が設けられている。また重錘Wの上死点には重錘Wを一時的に保持する重錘係脱装置D1を設ける。
物体VのシリンダーFとピストン部Pを水中に置いて、ピストンP9がシリンダーF内を上下運動することで、物体Vの気密室F1に空気を出入させて、物体Vに浮力を発生させたり無くしたりして、物体Vの重量を変化させて、物体Vと重錘Wとのバランスで物体Vと重錘Wとが交互に上下運動するようにした水上エレベーター装置。
3 審決の理由 審決は、別添審決謄本写し記載のとおり、@特許出願の変更による出願日の遡及は、本件明細書が、原出願である特願昭57-175141号出願の出願当初の明細書及び図面に記載した事項の範囲外の事項を含むものであるから認めない、
A本件明細書及び図面の記載上、本願発明が実現できる構成が不明であるから、本件出願は、特許法36条3項及び4項(注、「平成2年法律第30号による改正前の特許法36条3項及び4項」の趣旨と解される。)に規定する要件を満たしていないとした。
原告主張の審決取消事由
1 審決は、本件明細書及び図面に記載された技術事項を誤認して(取消事由)、本件明細書及び図面の記載上、本願発明が実現できる構成が不明であると誤って判断したものであるから、違法として取り消されるべきである。
2 取消事由(技術事項の誤認) (1) 審決は、願書に添付された図面の「第3図から第4図に移る過程が、外部エネルギーの供給無しに実現し得るものであるか」(審決謄本2頁13行目〜14行目)、すなわち、ピストンPがシリンダーFに対して下降するかどうかを、「便宜上、本願明細書(注、本件明細書)及び図面に記載された水上エレベーター装置の実施例において採用されている各部の寸法及び重量を用いるものとし、物体〔V〕の周囲、上部シリンダー室F2内、伸縮自在な管P6内及びダイヤフラム水室P11内の液体は同じ比重の水とするとともにその水中における各部材自体の占める容積、浮力或いは抵抗等は無視するものとする」(同2頁15行目〜19行目)との前提の下に、「第3図の状態(ピストンPがシリンダーFに対して上死点にある。)から、ピストンPがシリンダーFに対して1mだけ下降した過程」(同2頁20行目〜21行目)において検討したものである。
そして、審決は、「ピストンPがシリンダーFに対して下降することは不可能である。すなわち、上記経過を辿るためには、・・・大気から気密室F1内に加圧された空気を送り込むための外部エネルギーを必要とする。・・・外部エネルギー無くしては第3図の状態から第4図のような状態は実現できず」(同3頁17行目〜27行目)と認定判断したが、以下のとおり、上記認定判断は誤りである。
(2) 本願発明のシリンダ構造は、ピストンP9の下面に上方向の圧力を受けると、ピストンP9は上に動き、気密室F1を上方に閉じるものであるが、ピストンP9の上面に下方向の圧力を受けると、ピストンP9が下に動き、気密室F1を下方に開くようになっている。
審決は、「ピストンP9の下面に作用する水圧について検討する。固定板P10は、ダイヤフラムとピストンP9と共にダイヤフラム水室P11を構成しており自由に上方に動くことができるので、上記固定板P10の下面に作用する水圧22ton/uは、上記固定板P10を介してダイヤフラム水室P11内の水にも作用するものであり、ピストンP9の下面には21ton/uの水圧が作用することになる。(伸縮自在な管P6の底面積を無視するならば、ピストンP9の下面に21tonの上向き荷重が作用することを意味する。)」(同2頁35行目〜3頁4行目)、「気密室F1内の空気の影響について検討する。気密室F1内の空気は、ピストンP9の上面にその気圧に対応する下向き荷重を与える。ここで、今までの検討では、大気圧の影響を無視して検討しているから、気密室F1内の空気による下向き荷重は0である。(大気圧を考慮した場合、ピストンP9の下面には、1気圧に対応する10ton/uの大気圧を加えた31ton/uの圧力、すなわち、31tonの上向き荷重が作用し、ピストンP9の上面には、1気圧に対応する10ton/uの大気圧、すなわち、10tonの下向き荷重が作用していると言える。)」(同3頁5行目〜12行目)、「ピストンPの自重が3.5tonであり、ピストンP8に作用する上向き及び下向き荷重は相殺されるから、結局、ピストンPに作用する下向き荷重はピストンPの自重(3.5ton)+気密室F1内の空気による下向き荷重(0ton)であり、上向き荷重は、ピストンP9の下面に作用する上向き荷重(21ton)である。」(同3頁13行目〜17行目)として、上記「ピストンPがシリンダーFに対して下降することは不可能である」との判断に至ったものである。
しかしながら、水面から18メートルの位置にあるピストンP8の上面にも18ton/uの圧力が加わっており、その圧力はピストン軸を介してピストンP9にも作用している。したがって、審決のように、ピストンP9の下面に21ton/uの水圧が加わり、21トンの上向き荷重が作用すると考えるのであれば、ピストンP9に作用するこの18トンの下向き荷重も考慮しなければならないのに、審決はこれを考慮してない。
すなわち、審決は、ピストンP8に作用する上向き及び下向き荷重は相殺され、ともに0となるとしておきながら、ピストンP9に作用する上向き荷重を検討する際に、いったんは0としたピストンP8の下面に加わる水圧18ton/uを計算に入れて21トンと算出した点に誤りがある。
例えば、水1m3は水中でも1トンの重さで押し合っているように、圧力とは水の重さであって、本願発明は、ピストンP9の下面に受ける圧力を上面に受ける圧力と釣り合わせ、その上にピストン部の自重3.5トンが加わるのであり、ピストンP9と固定板P10とによって構成されたダイヤフラム水室P11が伸縮自在であるから、水室F2内の水はピストンの自重により圧力を受けて、管P6を通ってダイヤフラム水室P11を膨張させ、ピストンP9は下降して気密室F1に空気が入るものである。
また、気密室F1の開閉弁が開いて大気と連通した際には、大気圧である1気圧に、水面からピストンP9の上面までの空気の重さが加わるものであり、大気圧の1気圧は、水を介してピストンP8の上面にもかかり、同じくピストンP9の下面にもかかる。このように、大気圧はどこにおいてもかかっているで、審決が、気密室ではこれが0トンであるとしたことは誤りである。
被告の反論
1 審決の認定及び判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。
2 取消事由(技術事項の誤認)について 水中にある物体は水深に応じた水圧を受けること、その物体がその水圧に耐えることができる程度の剛体でない場合には、受けた水圧をその内部にそのまま伝達してバランスするから、物体の内部が水であるとすれば、その水にも水深に応じた水圧が生ずることは、水力学上の技術常識である。
この技術常識に従って検討すると、本願発明において、ダイヤフラム及びピストンP9とともにダイヤフラム水室P11を構成している固定板P10が、自由に上方に動くことができ、かつ、ダイヤフラム水室P11内は伸縮自在な管P6を介して上部シリンダー室F2と連絡しているから、上部シリンダー室F2を構成するピストンP8には、その上面及び下面にそれぞれ水深に応じた水圧18ton/uが作用するものである。
他方、上記ダイヤフラム水室P11を構成するピストンP9の下面にも水深に応じた水圧21ton/uが作用するが、その上面には水が存在しないから水圧は作用しない。
そうすると、第3図の状態(ピストンPがシリンダーFに対して上死点に位置する状態)でピストンP9が下降するためには、気密室F1内に加圧空気を送り込んでピストンP9を加圧し、ピストンP9の下面に作用する水圧とバランスさせること、すなわち、加圧空気を気密室F1内に送り込むための外部エネルギーが必要である。
したがって、これと同旨の審決の認定判断に誤りはない。
当裁判所の判断
1 取消事由(技術事項の誤認)について (1) 本件明細書(甲第4、第8号証)記載の実施例につき審決がした検討において、ピストンP9が水深21mの位置にあるとすれば、ピストンP9の下面に水深に応じた21ton/uの水圧がかかり、したがって、上下面の面積が1uのピストンP9(同実施例において、シリンダーFの外筒の底面積は1uである(甲第8号証10頁7行目〜8行目)から、ピストンP9、同P8の各上下面の面積も1uとしてよいものと認められる。)には上向き荷重21トン(厳密には、後記のとおり、これに大気圧に由来する上向き荷重が加わる。)が作用するのに対し、ピストンP9に作用する下向き荷重はピストンPの自重3.5トン(厳密には、後記のとおり、上記大気圧に由来する上向き荷重と等しいと考えてよい大気圧に由来する下向き荷重が加わる。)のみであるから、ピストンP9(ピストンP)がシリンダーFに対し下降することは不可能であり、これと同旨の審決の認定判断に誤りはない。
(2) 原告は、まず、審決が、ピストンP9の下面に21ton/uの水圧が加わり、21トンの上向き荷重が作用すると考えるのであれば、ピストンP8の上面にかかり、ピストン軸を介してピストンP9に作用する18トンの下向き荷重を考慮しなければならないのに、これを考慮していないことは誤りであると主張する。
しかしながら、水中にある物体は水深に応じた水圧を受けること、その物体がダイヤフラム水室のように水圧を受けて自由に変形するものである場合には、
受けた水圧をその内部にそのまま伝達してバランスし、物体の内部が水であるとすれば、その水にも水深に応じた水圧が生ずることは、被告主張のとおり、水力学上の技術常識というべきである。そして、本願発明の実施例において、ピストンP8及び隔壁F4等で構成される水室F2は、伸縮自在な管P6を介してピストンP9の下に設けられたダイヤフラム水室P11に連通しており、水室F2、ダイヤフラム水室P11及び管P6の内部は、全体として閉じた水室を構成しているが、ダイヤフラム水室P11は、これを構成するピストン(固定板)P10が自由に上方に動くことができるから、外側で受けた水圧を水室内部に伝達し、当該閉じた水室(水室F2、ダイヤフラム水室P11及び管P6)内の水にも、水深に応じた水圧が生ずるものと認められる。そうすると、ピストンP8が水深18mの位置にあるとすれば、その上面に18ton/uの水圧がかかり、上下面の面積が1uのピストンP8には下向き荷重18トン(厳密には、これに大気圧に由来する下向き荷重が加わる。)が作用するが、その下面にも18ton/uの水圧がかかり、ピストンP8には上向き荷重18トン(厳密には、上記大気圧に由来する下向き荷重と等しい大気圧に由来する上向き荷重が加わる。)が作用することになるから、結局、これらのピストンP8に作用する上向き及び下向きの各荷重は相殺されることになる。
審決が、ピストンP9の下面に作用する水圧について検討する直前にした「ピストンP8の上面に作用する水圧」及び「ピストンP8の下面に作用する水圧」についての検討(審決謄本2頁23行目〜34行目)が、上記の趣旨をいうものであることは明白であり、審決が、ピストンP9の下面に21ton/uの水圧が加わり、21トンの上向き荷重が作用すると判断した際、ピストンP8の上面にかかる18トンの下向き荷重を考慮しなかったことに原告主張の誤りはない。
なお、原告は、審決が、ピストンP8に作用する上向き及び下向きの荷重が相殺され、ともに0となるとしておきながら、ピストンP9に作用する上向き荷重を検討する際に、いったんは0としたピストンP8の下面に加わる水圧18ton/uを計算に入れて21トンと算出した点に誤りがあるとも主張するが、上記のとおり、ピストンP8に作用する上向き及び下向きの荷重が相殺されるのは、ピストンP8に作用する圧力バランスの結果であって、その上下面にそれぞれ作用する圧力がともに0になるということではない。そして、ピストンP9に作用する上向き荷重を検討するに当たって、ピストンP8の上下面にかかる水圧とは別に、ピストンP9の水深に応じて21ton/uの水圧がピストンP9の下面にかかるものとすることに誤りはない。
(3) 原告は、次に、本願発明が、ピストンP9の下面に受ける圧力を上面に受ける圧力と釣り合わせ、その上にピストン部の自重3.5トンが加わるのであり、
水室F2内の水がピストンの自重により圧力を受けて、管P6を通ってダイヤフラム水室P11を膨張させ、ピストンP9が下降して気密室F1に空気が入ると主張する。
しかしながら、本願発明においては、ピストンP9の上面とシリンダーFの隔壁F4の下面との間に気密室F1が設けられており、本件明細書(甲第8号証)には、第3図の状態(シリンダーFがストローク下死点にあって、ピストン部PがシリンダーFに対して上死点にある状態)において、開閉弁F16の弁頭側が荷台K4面に当たって下部空気制御器F31が開放され、気密室F1の開口部F32から、連通管F14、上部空気制御器F30、連通管F12、下部空気制御器F31、連通管F13、連通管F17を経て大気中の空気取入口F18に至る経路が開かれることが記載されている(12頁16行目〜21行目)から、気密室F1内の気圧は、大気圧に等しいものと考えることができる。そうすると、ピストンP9に作用する下向き荷重は、ピストンPの自重3.5トンと、上記大気圧に等しいと考えてよい気圧がピストンP9の上面にかかることによる荷重との合計であるのに対し、ピストンP9の下面には、上記21ton/uの水圧と大気に開放された水面にかかる大気圧との和がかかり、ピストンP9にはそれらによる上向き荷重が作用するところ、下向き荷重のうち大気圧に等しいと考えてよい気圧がピストンP9の上面にかかることによる分と、上向き荷重のうち大気圧がピストンP9の下面にかかることによる分とは相殺されることになるので、結局、ピストンP9には3.5トンの下向き荷重と21トンの上向き荷重とが作用し、下向き荷重より上向き荷重の方が大きいから、ピストンP9が下降することは不可能というべきである。
原告の主張は、要するに、大気と連通する気密室に面したピストンP9の上面が受ける圧力が、水深21mの水中に面したその下面が受ける圧力と釣り合うとする点において誤りがある。
(4) 原告は、さらに、気密室F1が大気と連通した際には、大気圧である1気圧に、水面からピストンP9の上面までの空気の重さが加わるものであり、また、
大気圧はどこにおいてもかかっているで、審決が、気密室ではこれが0トンであるとしたことは誤りであると主張する。
しかしながら、空気は水と異なり、その密度が極めて小さいので、20メートル前後の高度の違いがあっても、それによる気圧の変化はほとんどないと考えてよいことは技術常識である。したがって、気密室F1が大気と連通した際に、大気圧である1気圧に、水面からピストンP9の上面までの空気の重さが加わるとの原告の主張は意味がなく、気密室F1内の気圧は、上記のとおり、大気圧に等しいと考えてよいものである。
また、大気圧が、気密室F1を含め、どこにおいてもかかっていることは原告主張のとおりである。そこで、気密室F1が大気と連通した際には、上記のとおり、大気圧(大気圧に等しいと考えてよい気圧)がピストンP9の上面にかかり、他方、ピストンP9の下面には、大気に開放された水面に作用する大気圧がかかることになるが、この両者の圧力が等しく、相殺し合うことも明らかである。そして、審決が、「今までの検討では、大気圧の影響を無視して検討しているから、
気密室F1内の空気による下向き荷重は0である」(審決謄本3頁6行目〜8行目)としたのが、上記のとおり、ピストンP9の上面と下面にそれぞれかかる大気圧が相殺し合うことにより考慮する必要がないとの趣旨をいうものであることは、
これに引き続く括弧書きの「大気圧を考慮した場合、ピストンP9の下面には、1気圧に対応する10ton/uの大気圧を加えた31ton/uの圧力、すなわち、31tonの上向き荷重が作用し、ピストンP9の上面には、1気圧に対応する10ton/uの大気圧、すなわち、10tonの下向き荷重が作用していると言える」との説示にかんがみて明らかであり、審決がそのような趣旨で「気密室F1内の空気による下向き荷重は0である」としたことに誤りはない。
(5) したがって、審決が「ピストンPがシリンダーFに対して下降することは不可能である。すなわち、上記経過を辿るためには、・・・大気から気密室F1内に加圧された空気を送り込むための外部エネルギーを必要とする。・・・外部エネルギー無くしては第3図の状態から第4図のような状態は実現できず」(同3頁17行目〜27行目)と認定判断したことに、原告主張の誤りはない。
2 以上によれば、原告主張の審決取消事由は理由がなく、他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 石原直樹
裁判官 宮坂昌利