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関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  出願公開 /  発明の詳細な説明 /  分割出願 /  設定登録 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  減縮 /  変更 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 204号 審決取消請求事件
原告 株式会社キンキ代表者代表取締役 A
訴訟代理人弁理士 角田嘉宏
同 高石郷
同 古川安航
同 阪本英男
同 西谷俊男
被告 日本スピンドル製造株式会社代表者代表取締役 B
訴訟代理人弁護士 露木脩二
同 弁理士 林清明
同 森治
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/03/26
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が平成11年審判第35020号事件について平成12年4月24日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 主文と同旨 2 被告 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は、名称を「シュレッダー用切断刃」とする特許第2813572号発明(平成3年6月14日実用新案登録出願、平成7年4月10日分割出願、平成8年4月25日特許出願に変更、平成10年8月7日設定登録、以下「本件発明」という。)の特許権者である。
被告は、平成11年1月12日、原告を被請求人として、本件特許につき無効審判の請求をした。
特許庁は、同請求を、平成11年審判第35020号事件として審理した上、平成12年4月24日、「特許第2813572号発明の特許を無効とする。」との審決(以下「本件無効審決」という。)をし、その謄本は同年5月17日原告に送達された。
(2) 原告は、本件無効審決の取消しを求める本訴提起後の平成12年11月17日、本件明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の各記載を訂正する旨の訂正審判の請求をしたところ、特許庁は、同請求を訂正2000-39142号事件として審理した上、平成13年1月17日、上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」といい、本件訂正審決に係る訂正を「本件訂正」という。)をし、その謄本は同年2月5日原告に送達された。
2 特許請求の範囲の記載 (1) 本件訂正前の特許請求の範囲の記載 シュレッダーのケーシングに軸支された軸にスペーサを挟んで切断刃を装着し、この切断刃を該軸に嵌着される取付台部分とこれを取り囲む刃先部分とで分割形成し、しかもこの刃先部分を周方向に分割して複数個の刃先片で形成し、各刃先片を該取付台に接離可能に構成する共に、該刃先部分で該取付台の外周が表面に露出しないよう囲繞したシュレッダーにおいて、
前記取付台の外周に各刃先片に噛合する段状歯部を突出形成したことを特徴とするシュレッダー用切断刃。
(2) 本件訂正によって訂正された特許請求の範囲の記載(注、訂正部分を下線で示す。) シュレッダーのケーシングに軸支された軸にスペーサを挟んで切断刃を装着し、この切断刃を該軸に嵌着される取付台部分とこれを取り囲む刃先部分とで分割形成し、しかもこの刃先部分を周方向に分割して複数個の刃先片で形成し、各刃先片を該取付台に接離可能に構成する共に、該刃先部分で該取付台の外周が表面に露出しないよう囲繞し、
かつ 、該スペーサ の外径 を該取付台 の外径 より 大きく 形成して 該スペーサ で該取付台 の側面 が表面 にほぼ 露出 しないようにした シュレッダーにおいて、
前記取付台の外周 に段状歯部 を突出形成 する 一方 、各刃先片 の端部 に設けた段部 と段状歯部 とを 係合 して 刃先部分 と該段状歯部 とを 噛合 する 如く構成 したことを特徴とするシュレッダー用切断刃。
3 本件無効審決の理由 本件無効審決は、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の記載のとおり認定した上、本件発明は、実公昭57-31953号公報、実公昭57-42518号公報及び欧州特許出願公開第0401620号明細書(1990年)記載の各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反して特許されたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とされるべきものとした。
当事者の主張
1 原告 本件無効審決が、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の記載のとおり認定した点は、本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正されたため、誤りに帰したことになる。そして、この瑕疵は本件無効審決の結論に影響を及ぼすものであるから、本件無効審決は違法として取り消されるべきである。
2 被告 本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正されたことは認める。
当裁判所の判断
本件訂正審決の確定により、特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正されたことは当事者間に争いがなく、この訂正によって特許請求の範囲減縮されたことは明らかである。
そうすると、本件無効審決が、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲のとおりであると認定したことは、結果的に誤りであったことに帰する。そして、これが本件無効審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件無効審決は、瑕疵があるものとして取消しを免れない。
よって、原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 長沢幸男
裁判官 宮坂昌利