関連審決 | 審判1998-35242 |
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関連ワード | 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 技術常識 / 発明の詳細な説明 / 参酌 / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 加工 / 設定登録 / 請求の範囲 / |
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事件 |
平成
12年
(行ケ)
184号
審決取消請求事件
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原告 株式会社ウチコン 訴訟代理人弁理士 小島清路 同 谷口直也 被告 有限会社リタッグ 被告 リタッグインコーポレーション 両名訴訟代理人弁理士 前田勘次 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2001/04/12 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 特許庁が平成10年審判第35242号事件について平成12年4月11日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告らの負担とする。 3 被告リタッグ インコーポレーションのために、この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 原告 主文第1、2項と同旨 2 被告ら 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
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当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告らは、考案の名称を「騒音の発生しない側溝」とする特許第2514918号の特許(平成5年3月1日出願、平成8年4月30日設定登録、以下「本件特許」といい、その発明を「本件発明」という。)の特許権者である。 原告は、平成10年5月28日、本件特許を無効にすることについて審判を請求し、特許庁は、この請求を平成10年審判第35242号事件として審理した結果、平成12年4月11日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本を同年5月1日に原告に送達した。 2 特許請求の範囲(別紙図面参照) 接面部a5が全面にわたって曲面に成形加工された側溝蓋1と、前記側溝蓋1の接面部a5に対応する接面部b6が全面にわたって前記側溝蓋1の接面部a5の曲面に対して幾何学的に相似な曲面に成形加工された側溝2とからなり、 前記側溝蓋1と側溝2との密着性を高め、前記側溝蓋1にかかる垂直荷重が前記側溝蓋1及び側溝2の接面部a5、b6を介して分散されて側溝2に伝達されることを特徴とする騒音の発生しない側溝。 3 審決の理由 別紙審決書の写しのとおり、@本件発明は、実願昭60-94700号(実開昭62-3885号)のマイクロフィルム(審決及び本訴の甲第2号証。以下「甲第2号証刊行物」という。)、特開昭53-145347号公報(審決及び本訴の甲第3号証。以下「引用例2」という。)、実願昭61-110036号(実開昭63-18590号)のマイクロフィルム(審決及び本訴の甲第4号証。以下「引用例1」という。)のそれぞれに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできず、また、引用例1記載の発明と、甲第2号証刊行物、引用例2又は実願昭61-188148号(実開昭63-95790号)のマイクロフィルム(審決及び本訴の甲第10号証。以下「甲第10号証刊行物」という。)のいずれか一つに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることもできない、A「全面にわたって」の文言について明細書の記載に不備はない、B本件発明の特許請求の範囲は、発明の構成に書くことのできない事項のみを記載したものである、C明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載がされている、と認定判断し、これらのいずれについても反対趣旨をいう原告の主張を退けた。 |
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原告主張の審決取消事由の要点
審決の理由第一(手続きの経緯及び本件発明)、第二(審判請求人の主張及び提示した証拠方法)、第三(被請求人の主張及び提示した証拠方法)は認める。 同第四(当審における検討)の一(理由1について)は、10頁24行の「そして、その接面部は、」から32行の「示唆すらされていない。」まで、10頁39行の「甲第3号証に」から11頁13行の「相似の項なども参照のこと)」まで、 11頁16行の「に過ぎず、本件発明におけるような」から20行の「示唆するところもない。」まで、及び、11頁25行から37行までを争い、その余は認める。同第四の二(理由2について)は、12頁4行の「そして、」から7行の「できる。」まで、及び、13頁11行から17行までを争い、その余は認める。同第四の三(理由3について)、四(理由4について)は認める。同第五(結び)は争う。 審決は、@本件発明と引用例1記載の発明の相違点についての判断を誤り(取消事由1)、明細書の記載不備についての判断を誤ったものであって(取消事由2)、これらの誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、違法として取り消されるべきである。 1 取消事由1(相違点についての判断の誤り) (1) 引用例1記載の発明と引用例2記載の発明の組合せについて 審決は、本件発明の技術内容の認定を誤った結果、引用例2記載の発明が、相違点に係る構成を備えていないと誤認したものである。すなわち、審決は、 本件発明の「幾何学的に相似な曲面」について、相似の意味を「一方が他方の拡大あるいは縮小した図形になっていることである。」とし、これを前提に、引用例2記載の発明のように「接面部の形状が同一のものは、本件発明の『曲面に対して幾何学的に相似な曲面』には該当しない」(11頁1行〜2行)と認定したが、誤りである。 以下のとおり、本件発明の「幾何学的に相似な曲面」は、「同一(実質同一又は略同一をも含む。)の曲面」という意味に解すべきである。仮にそうでないとしても、少なくとも「同一の曲面」が、これに含まれていることは、明らかというべきである。したがって、引用例2記載の発明は、相違点に係る構成を備えているのである。 ア 相似な図形において、相似比が1のときは、二つの図形は合同である。 相似において、相似比から「1」を除く必然性はなく、相似曲面に同一曲面が含まれることは数学上の常識である。 イ 本件発明に係る明細書(以下、願書添付図面も合わせて、「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載をみても、特に「幾何学的に相似」から「同一」を除く旨の記載はなく、実施例の図1には、側溝蓋1の接面部5と、側溝2の接面部6が「同一形状の」曲面となっている側溝が記載され、この説明として、「図1の正面図で示すように、接面部を曲面に成形加工した側溝蓋1を、「幾何学的に相似な曲面」に成形加工した接面部を持つ側溝2に、密着するように設置する」(【0005】)と記載されている。本件発明の「相似」には「同一」が含まれることは、このことからも明らかである。 ウ 「幾何学的に相似な曲面」同士が同一でなければ、本件明細書の図1の正面図に示すように幅をもって接触するのではなく、ただ一点で接し、蓋受け部全体から見れば、面ではなく線状に接することになるだけである。 それでは、接触面積が狭くなり、垂直荷重はこの一点に集中し、分散ということは起こり得ないので、本件明細書の記載「側溝蓋と側溝の接触面積が広くなり安定性が増す」(【0009】)、「側溝蓋1にかかる垂直荷重が前記側溝蓋1及び側溝2の接面部a5,b6を介して分散されて側溝2に伝達される」(特許請求の範囲)と矛盾することになる。 (2) 引用例1記載の発明と甲第2、第10号証刊行物記載の発明の組合せについて ア 前述のとおり、本件発明の「幾何学的に相似な曲面」は、「同一(実質同一又は略同一をも含む。)の曲面」という意味に解すべきである。仮にそうでないとしても、少なくとも、「同一の曲面」がこれに含まれていることは、明らかである。 イ 側溝等の上下水用設備具の分野において、蓋と蓋受け部を面で密着させるべく、蓋受け部の形状を、蓋の蓋受け部と接する部分の形状と同一の形状とすることは、本件出願前の技術常識である。 ウ この技術常識を前提とすると、側溝蓋及び側溝の蓋受け部が傾斜面形状である引用例1記載の発明の側溝において、傾斜面形状の蓋の代わりに、甲第2号証刊行物又は甲第10号証刊行物記載の発明の曲面形状の蓋を用いた場合、側溝の蓋受け部の形状も、これと同一の曲面形状とすることになる。 エ 「側溝蓋にかかる垂直荷重が側溝蓋及び側溝の接面部を介して分散されて側溝に伝達されるとの点」は、単に側溝蓋と側溝が曲面で接することにより、当然に得られる効果にすぎない。 オ したがって、相違点に係る構成は、技術常識に基づいて引用例1記載の発明に甲第2、第10号証刊行物を適用することにより容易に想到し得た程度のものである。 2 取消事由2(明細書の記載不備についての判断の誤り) 審決が認定したように、本件発明の「幾何学的に相似な曲面」を、「一方が他方の拡大あるいは縮小した曲面」と理解すると、そのような関係にある曲面同士は、正面から観察した場合、本件明細書の図1の正面図のように幅をもって接触するのではなく、ただ一点で接し、蓋受け部全体から見れば、面ではなく線状に接することになるだけである。 ところが、本件明細書の発明の詳細な説明には、「側溝蓋と側溝の接触面積が広くなり安定性が増す」(【0009】)、「接触面が曲面であるため」(【0010】)等、側溝蓋と側溝がただ一点で接する結果、蓋受け部全体から見て線状に接するということと矛盾する記載がなされている。 したがって、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な記載との間に矛盾があり、その結果、特許請求の範囲に記載された事項と対応する事項が記載されていないことになり、明細書の記載に不備があることは明らかである。 |
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被告らの反論の要点
1 取消事由1(相違点についての判断の誤り)について (1) 引用例1記載の発明と引用例2記載の発明の組合せについて ア 「幾何学的に相似な曲面」は「同一の曲面」ではない。 イ 側溝と側溝蓋とが密着するといっても、厳密に水も漏れないような気密状態での接触はあり得ず、図面に描けない程度の隙間はあり得る。そして、同一形状よりも、その隙間分だけは側溝蓋の接面部が側溝の接面部に対して縮小、あるいは側溝の接面部が側溝蓋の接面部に対して拡大されていた方が、密着性は高まる。 また、側溝蓋にわずかな捩れ等の歪みがあっても、側溝蓋の接面部の曲面を側溝の接面部の曲面よりも縮小することにより、つまり、互いの接面部の曲面を相似にすることにより、捩れ等の歪みを吸収でき、面接触状態が維持されるのである。 したがって、密着性を高め得るには、相似であることが好ましいのである。 ウ 側溝の接面部と側溝蓋の接面部を図で単純に描けば、側溝の接面部も側溝蓋の接面部も滑かな曲面となり、その隙間を描くこともできないことから、本件明細書のような図面となったものである。 エ 原告は、「幾何学的に相似な曲面」が同一でなければ、側溝と側溝蓋は一点で接すると主張するが、実際の側溝においては一点で接することはなく、ある幅(面積)を持って接する。たとい面積が狭くても、接面部を介して力が分散され側溝に伝達されることは明らかである。 本件明細書の発明の詳細な説明には、「また側溝蓋と側溝の接触面積が広くなり安定する。」と記載されているだけであり、これは同じ幅であっても、曲面の方が、平面よりも側溝蓋と側溝の接触面積が広くなり安定することを意味するのであって、引用例1記載の発明等の従来の側溝と比較した記載ではない。 オ 引用例2記載の発明においては、蓋周縁の突縁部を挟み込む溝状の二重の受板で拘束するには、突縁部と溝状の二重の受板とが確実に嵌合する必要があり、受板を二重して溝状にしなければならない。これに対して、本件発明には、突縁部や該突縁部を挟み込む溝はなく、作用効果を奏するためのメカニズムも異なる。 しかも、引用例2記載の発明の構造においては、二重の受板からなる構内には底面が存在し、土砂等を挟み込むおそれもある。したがって、引用例2記載の発明は、本件発明のように底面に土、小石等の異物を挟み込むことが無くなるという効果を発揮し得ない。 したがって、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明を組み合わせても、本件発明が容易に得られることにはならない。 (2) 引用例1記載の発明と甲第2、第10号証刊行物記載の発明の組合せについて 甲第2、第10号証刊行物記載の発明は、あくまで側溝蓋に関する発明であり、蓋受けについては何ら記載されていない。すなわち、側溝の蓋を開け易くした発明であり、側溝と側溝蓋の接面に係る発明ではない。 また、引用例1には、傾斜する平面同士が接する側溝蓋と側溝が示されているのであるから、引用例1記載の発明と甲第2、第10号証刊行物記載の発明を組み合わせても、接面部を相似の曲面にするという考えは生じ得ない。 原告が技術常識として挙げる資料は、審判時に証拠として提出されていないから、審決の違法性判断の資料とはなり得ない。また、これらは、本件発明とは技術が著しく相違するから、進歩性の判断には不適当な資料である。 2 取消事由2(明細書の記載不備についての判断の誤り)について 前述のとおり、「幾何学的に相似な曲面」は、同一な曲面ではなく、密着性を高め得るには、相似であることが好ましいから、本件明細書に記載の不備はない。 |
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当裁判所の判断
1 取消事由1(相違点についての判断の誤り)のうち、引用例1記載の発明と引用例2記載の発明との組合せについて検討する。 (1) 甲第3号証によれば、引用例2には、「接面部が全面にわたって曲面に成形加工されたマンホール蓋の突縁部と、前記マンホール蓋の突縁部の接面部に対応する接面部が全面にわたって前記マンホール蓋の突縁部の接面部の曲面に対して同様に曲面に成形加工された受板の嵌合溝とからなり、前記マンホール蓋の突縁部と受板の嵌合溝との密着性を高め、前記マンホール蓋の突縁部にかかる垂直荷量が前記マンホール蓋の突縁部及び受板の嵌合溝の接面部を介して分散されて受板の嵌合溝に伝達される騒音の発生しないマンホール蓋構造」(審決書9頁12行ないし18行参照)が記載され、そのマンホール蓋の突縁部と受板の嵌合溝とは、接面部の形状が同一であることが認められる。 (2) 幾何学的には、「相似」の概念に、「合同」すなわち同一の形状も含まれていることは、当裁判所に顕著である。 甲第7号証(「数学小辞典」(共立出版株式会社昭和43年10月5日発行)の「相似な図形を相似の位置に置いたとき、相似の中心が対応点を結ぶ線分を分ける比は一定である。この比をこの二つの図形の相似比という。・・・特に相似比が1のときは、二つの図形は合同である。」(321頁)、甲第8号証(「図説数学の事典」株式会社朝倉書店1992年12月10日発行)の「相似・・・k(相似比)=1のとき、像はもとの図形と合同であり、」(239頁)、甲第12号証(「サンライズ 中2数学」(株式会社旺文社2000年発行)の「『合同な図形は相似であり、その相似比は1:1である』といえます。」(145頁)との各記載は、「相似」の概念に「合同」が含まれていることを裏付けるものである。 そうである以上、「幾何学的に合同」、すなわち同一形状のものも、本件発明の特許請求の範囲の「幾何学的に相似」に該当することは、一義的に明確というべきである。 (3) なお、念のため、甲第5号証(本件特許公報)により、本件明細書の発明の詳細な説明を参酌しても、本件発明において、「幾何学的に相似」から「幾何学的に合同」を除いて解釈すべき事情は見出せない。 かえって、甲第5号証によれば、本件明細書には、「【課題を解決するための手段】図1はこの発明の原理を説明する図である。まず図1の正面図で示すように、接面部を曲面に成形加工した側溝蓋1を、幾何学的に相似な曲面に成形加工した接面部を持つ側溝2に、密着するように設置する。」(3欄7行〜11行)、 「【作用】この様にして幾何学的に相似した曲面を持った側溝蓋1と側溝2を設置すると、両者は側溝蓋1の自重により密着する。」(同欄13行〜15行)、 「【発明の効果】この発明は側溝蓋の接面部と側溝の接面部が曲面で密着することに特徴が有る。」(同欄24行〜25行)との説明とともに図1が図示されていることが認められ、以上の事実によれば、別紙図面図1の正面図に示されるような、 側溝蓋と側溝が同一断面形状のものも、本件発明の「幾何学的に相似」に該当することが認められるところである。 この点に関して、被告らは、側溝と側溝蓋とが密着するといっても、図面に描けない程度の隙間はあり得、その隙間分だけは側溝蓋の接面部が側溝の接面部に対して縮小、あるいは側溝の接面部が側溝蓋の接面部に対して拡大されていた方が、密着性は高まるが、側溝の接面部と側溝蓋の接面部を図で単純に描けば、側溝の接面部も側溝蓋の接面部も滑かな曲面となり、その隙間を描くこともできないことから、本件明細書のような図面となったものであると主張する。 しかし、側溝の接面部と側溝蓋の接面部に隙間が存在するものであれば、 それを拡大図として示したり、図面の説明として記載しなければ、被告ら主張にかかる隙間の存在は、認識できないし、また、そのようにすることは容易である。ところが、本件明細書には、それすらもされていないのであるから、本件発明が、そのような隙間を設ける趣旨であるとする被告らの主張は、採用することができない。 (4) したがって、引用例2記載の発明の突縁部と嵌合溝との接面部も、本件発明の「曲面に対して幾何学的に相似な曲面」に該当するというべきであり、これに該当しないとした審決の認定は、誤りである。そして、この誤りが、この認定を根拠として、本件発明を、引用例1記載の発明と引用例2記載の組合せに基づいて、 当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない、とした審決の判断に影響を及ぼすことは、明らかである。 審決は、引用例2に、「側溝蓋にかかる垂直荷重が側溝蓋及び側溝の接面部を介して分散されて側溝に伝達される」との点が、開示も示唆もされていないとも説示する。しかし、引用例2には、前認定のとおり、「前記マンホール蓋の突縁部にかかる垂直荷重が前記マンホール蓋の突縁部及び受板の嵌合溝の接面部を介して分散されて受板の嵌合溝に伝達される」ことが記載されているから、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明を適用した場合には、「側溝蓋にかかる垂直荷重が側溝蓋及び側溝の接面部を介して分散されて側溝に伝達される」ことになることは明らかである。引用例2記載の発明においては、「側溝蓋」と「側溝」ではなく、 「マンホール蓋」と「受板」であるために、「側溝蓋にかかる垂直荷重が側溝蓋及び側溝の接面部を介して分散されて側溝に伝達される」というものではないとしても、そのことは、審決の前記誤りが審決の判断に影響を及ぼすとの前記認定を左右するものではない。 (5) なお、被告は、@引用例2記載の発明においては、蓋周縁の突縁部を挟み込む溝状の二重の受板で拘束するには、突縁部と溝状の二重の受板とが確実に嵌合する必要があり、受板を二重して溝状にしなければならないのに対して、本件発明には、突縁部や該突縁部を挟み込む溝はなく、作用効果を奏するためのメカニズムも異なる、A引用例2記載の発明の構造においては、二重の受板からなる構内には底面が存在し、土砂等を挟み込むおそれもあるから、本件発明のように底面に土、 小石等の異物を挟み込むことがなくなるという効果を発揮し得ないと主張する。 しかし、審決が認定した本件発明と引用例1記載の発明との相違点は、 「本件発明においては、側溝蓋と側溝との接面部は、全面にわたって曲面とその全面にわたって曲面に対して幾何学的に相似な曲面に成形加工され、側溝蓋にかかる垂直荷重が側溝蓋及び側溝の接面部を介して分散されて側溝に伝達されるのに対し、甲第4号証(判決注・引用例1)に記載されたものにおいては、側溝蓋と側溝の蓋掛け部(側溝)との接面部は、それぞれ傾斜面に成形加工されている点」であり、引用例2記載の発明が、本件発明のように「突縁部や該突縁部を挟み込む溝がない」か否か、「底面に土、小石等の異物を挟み込むことがなくなるという効果を発揮し得る」か否かという点の構成を、引用例1記載の発明に適用しようとするものではない(「突縁部や該突縁部を挟み込む溝がない」、「底面に土、小石等の異物を挟み込むことがなくなるという効果を発揮し得る」というのは、引用例1記載の発明に既に存在する構成ないし効果である。)。したがって、原告の主張は、以上の認定を左右するに足りるものではない。 2 以上のとおり、審決取消事由1のうち、引用例1記載の発明と引用例2記載の発明の組合せについての審決の認定判断は誤りであって、この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、原告の請求は、その余について判断するまでもなく、理由があることが明らかである。 |
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よって、原告の本訴請求を認容することとし、訴訟費用の負担並びに上告及
び上告受理の申立てのための付加期間の付与について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、65条、96条2項を適用して、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 山下和明 |
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裁判官 | 山田知司 |
裁判官 | 阿部正幸 |