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関連ワード 29条1項3号 /  頒布された刊行物 /  発明の詳細な説明 /  優先権 /  共有 /  設定登録 /  移転登録 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  減縮 /  審決確定(審決が確定) /  取消決定 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 19号 特許取消決定取消請求事件
原告 アーエスエムリソグラフイー ビー ヴェ ー
訴訟代理人弁理士 杉村暁秀
同 杉村興作
同 杉村純子
同 徳永博
同 高見和明
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 小林武
同 辻徹二
同 大野覚美
同 茂木静代
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/04/24
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が平成10年異議第72432号事件について平成11年8月18日にした決定を取り消す。
訴訟費用は各自の負担とする。
事実及び理由
請求
主文第1項と同旨
前提となる事実
1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は、発明の名称を「マスクと基板とを互に整列させるアラインメント方法及び装置」とする特許第2677558号の発明(優先権主張国をオランダ国、優先権主張日を1986年3月12日として、昭和62年3月11日に出願され、平成9年7月25日に設定登録を受けたもの。以下「本件発明」という。)の特許権者である(なお、本件発明の特許権の共有持分権者であったコーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィは、原告に対して、特許権の持分全部を譲渡し、本件訴訟提起後の平成12年2月28日に、その移転登録がされている。)。
本件発明に対して特許異議の申立てがされ、同申立ては平成10年異議第72432号事件として特許庁に係属したところ、原告は、平成11年5月6日、本件発明に係る明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲を訂正する旨の訂正請求をした。
特許庁は、同事件を審理した上、平成11年8月18日、「訂正を認める。特許第2677558号の特許請求の範囲第1項ないし第4項、第5項ないし第10項に記載された発明についての特許を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。別紙1決定書の理由写し参照)をし、その謄本は、同年9月16日、原告に送達された。
(2) 原告は、本訴提起後の平成12年11月29日、本件明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲減縮等を目的として訂正する訂正審判の請求をしたところ、特許庁は、同請求を訂正2000-39146号事件として審理した上、平成13年2月20日、上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。別紙2審決書写し参照)をし、その謄本は、同月28日、原告に送達され、本件訂正審決は確定した。
2 本件明細書の特許請求の範囲の記載 (1) 本件訂正審決による訂正前の特許請求の範囲の記載「1.マスクおよび基板に存在するアラインメントマークを使用し、第1基板マークを第1マスクマークに対して直接に整列させ、第2基板マークを第1マスクマークに対して直接に整列させ、この際基板上にマスクパターン像を形成するレンズ系によってアラインメントを行うことにより、マスクに形成したパターンと該マスクパターンの像を形成させるべき基板とを互に整列させるに当り、
前記レンズ系を使用して、さらに、少くとも1個の基板マークを第2マスクマークに対して直接に整列させることを特徴とするマスクと基板とを互に整列させるアラインメント方法。
2.個々のアラインメントを適切な時期に順次行う特許請求の範囲第1項記載の方法。
3.基板の投影区域の外側に位置し、前記第1および第2の基板マークの整列方向とは平行でない方向に整列された追加の2個の基板マークを2個のマスクマークに対して整列させる特許請求の範囲第2項記載の方法。
4.基板区域内および1個のマスクパターン像を形成させるべき各サブ区域の間に位置する基板マークをマスクマークに対して直接に整列させる特許請求の範囲第2項または第3項記載の方法。
5.第1マスクマークを基板マークに対して直接に整列させるための第1光学的アラインメント系を具え、該アラインメント系はアラインメントビームを放出する放射源と、基板マークおよび前記第1マスクマークの像を互の上に形成させるためのレンズ系と、前記基板マークおよび前記第1マスクマークの両方と相互作用した前記アラインメントビームの通路中に位置する放射検出装置とを具え、該検出装置の出力信号が前記アラインメントマークの相互位置を示すものである、マスクに形成したマスクパターンと該マスクパターンの像を形成させるべき基板とを互に整列させるアラインメント装置において第2マスクマークと基板マークとを互に直接に整列させる同様な第2光学的アラインメント系を設け、前記レンズ系は前記第1および第2のアラインメント系に共通であることを特徴とするマスクと基板とを互に整列させるアラインメント装置。
6.2個の前記アラインメント系の光軸間の距離が可変である特許請求の範囲第5項記載の装置。
7.基板マークは位相回折格子からなり、マスクマークは振幅回折格子からなる特許請求の範囲第5項または第6項記載の装置。
8.前記レンズ系と前記放射検出装置との間の前記アラインメントビームの放射通路中に位置する前記光学的直接アラインメント系のそれぞれに、前記検出装置によって観察されたマスクマークと該マスクマーク上の基板マーク像とを互に周期的に移動させるための周期的信号によって制御される手段が配置されている特許請求の範囲第5〜7項のいずれか一つの項に記載の装置。
9.前記マスクと前記放射検出装置との間の前記アラインメントビームの放射通路中に位置する前記光学的直接アラインメント系のそれぞれに、2個の前記アラインメント系に共通である前記レンズ系の瞳像を形成させるための第2レンズ系を配置し、前記瞳像の平面内に絞りを配置し、該絞りには基板格子によって一次の回折次数で回折され次いでマスク格子によって零次および一次の回折次数で回折されたサブビームの成分からなるビーム部分の入射位置に開口が設けられている特許請求の範囲第5〜8項のいずれか一つの項に記載の装置。
10. 2個の前記光学的アラインメント系に共通な前記レンズ系と前記マスクマークとの間のアラインメントビームの放射通路中に位置する前記光学的直接アラインメント系のそれぞれに、このレンズ系によって形成される基板マーク像の大きさおよび軸線位置を補正するための光学的補正素子が配置されている特許請求の範囲第5〜9項のいずれか一つの項に記載の装置。」(なお、本件決定は「アラインメント」を「アライメント」と表記している。) (2) 本件訂正審決による訂正後の特許請求の範囲の記載(上記(1)の1項は、次の下線部の箇所が追加され、5ないし10項は、削除されている。)「1.マスクおよび基板に存在するアラインメントマークを使用し、第1基板マークを第1マスクマークに対して直接に整列させ、第2基板マークを第1マスクマークに対して直接に整列させ、この際基板上にマスクパターン像を形成するレンズ系によってアラインメントを行うことにより、マスクに形成したパターンと該マスクパターンの像を形成させるべき基板とを互に整列させるに当り、
前記レンズ系を使用して、さらに、少くとも1個の基板マークを第2マスクマークに対して直接に整列させるとともに、該基板上 のマスクパターン 像の像倍率 に関する 情報 を発生 させる ことを特徴とするマスクと基板とを互に整列させるアラインメント方法。
2.個々のアラインメントを適切な時期に順次行う特許請求の範囲第1項記載の方法。
3.基板の投影区域の外側に位置し、前記第1および第2の基板マークの整列方向とは平行でない方向に整列された追加の2個の基板マークを2個のマスクマークに対して整列させる特許請求の範囲第2項記載の方法。
4.基板区域内および1個のマスクパターン像を形成させるべき各サブ区域の間に位置する基板マークをマスクマークに対して直接に整列させる特許請求の範囲第2項または第3項記載の方法。」(なお、本件訂正審決は「アラインメント」を「アライメント」と表記している。) 3 本件決定の理由の要旨 別紙1決定書の理由写しのとおり、本件決定は、上記1(1)の平成11年5月6日付けの訂正請求を認めて、本件発明の要旨を上記2(1)の本件訂正審決による訂正前の特許請求の範囲に記載のとおりと認定した上で、本件発明は、本件発明の特許出願前に外国において頒布された刊行物(米国特許第4052603号明細書、1977年10月4日発行)に記載された発明であって特許法29条1項3号の規定に該当し、取り消されるべきであるとした。
当事者の主張の要点
1 原告 上記1(2)のとおり、本件訂正審決による訂正は、特許請求の範囲減縮を目的とするものであり、本件発明の特許を取り消した本件決定の取消しを目的とする本件訴訟の係属中に、本件発明について特許請求の範囲減縮を目的とする本件訂正審決が確定した。
そこで、本件決定が本件発明の要旨を上記2(1)の本件訂正審決による訂正前の特許請求の範囲に記載のとおりと認定したことは誤りに帰し、この瑕疵は違法であるから、本件決定は取り消されなければならない。
2 被告 原告主張のとおり、本件発明について本件訂正審決が確定したことは認める。
なお、原告が特許庁における異議の審理において、今般の訂正審判請求のごとき適切な訂正請求を行ってさえおれば、本件訴訟はもともと起こり得なかったのであり、本件訴訟が原告の権利の伸張若しくは防御に必要でない行為によって生じたことは明らかである。したがって、訴訟費用は、民事訴訟法62条の規定を適用し、
原告の負担とすべきである。
理 由 1 本件訂正審決の確定により本件発明について特許請求の範囲が前記のとおり訂正されたことは当事者間に争いがなく、この訂正によって本件発明について特許請求の範囲減縮されたことは明らかである。
そうすると、本件決定が本件発明の要旨を本件訂正審決による訂正前の特許請求の範囲に記載のとおりと認定したことは、結果的に誤りがあることになり、この誤りは本件決定の結論に影響を及ぼすものとして違法であるから、本件決定は取消しを免れない。
2 よって、原告の本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法62条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 古城春実
裁判官 橋本英史