関連審決 | 不服2000-3591 |
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関連ワード | 発明の詳細な説明 / 優先権 / 国内優先権 / 実施 / 拒絶査定 / 新規事項追加(新規事項の追加) / 請求の範囲 / |
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事件 |
平成
13年
(行ケ)
138号
審決取消請求事件
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原告A 被告 特許庁長官及川耕造 指定代理人 茂木静代 同 高瀬浩一 同 山口由木 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2001/06/26 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が不服2000-3591号事件について平成13年1月30日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告 主文同旨。 |
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前提となる事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成9年5月13日、名称を「SOFT BANK SYSTEM」(その後「WINDFALL SYSTEM」と補正)と題する発明(以下「本件発明」という。)について特許出願(平成9年特許願第160386号)をしたところ、平成11年12月22日に拒絶査定(平成12年1月11日発送)を受けたので、これを不服として平成12年2月9日付け審判請求書により拒絶査定に対する審判を請求するとともに、同日付けで手続補正書を提出した。特許庁は、 同審判請求を不服2000-3591号事件として審理し、平成13年1月30日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年3月5日に原告に送達された。 2 本件発明の要旨 (1) 出願当初の特許請求の範囲 店がお客様の所有するソフトを預かり、まずソフトのオーナーとして登録してもらい、それを貸し出すというシステム (2) 平成10年5月1日付け(5月6日受付)補正に係る特許請求の範囲 ソフト1本のレンタル料を100円とした場合、消費税、著作権料(原作・脚本・監督・音楽)=各3.5%×4=14%、システム使用料2%を差し引いた残りの金額を店とオーナーが分配するというシステムである。 3 審決の理由の要点 (1) 手続の経緯 本願は、平成9年5月13日の出願であって、平成10年1月16日付け(1月19日受付)、平成10年1月23日付け(1月26日受付)、平成10年5月1日付け(5月6日受付)で手続補正があり、平成11年3月30日付けで拒絶理由が通知され、平成11年4月21日付けで意見書が提出されたが、平成11年(審決書に「12年」とあるのは「11年」の誤記と認める。)12月22日付けで拒絶査定された。 その後、平成12年2月9日付けで拒絶査定に対する審判の請求がなされ、同日付けで手続補正書が提出されたところ、平成12年2月9日付けでした手続補正について、当審で補正却下の決定がなされた。 (2) 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶理由の概要は次のとおりである。 平成10年5月6日受付でした手続補正は、次の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 すなわち、平成10年5月6日受付手続補正書の請求項1あるいは段落番号【0006】に記載された消費税、著作権料については、出願当初の明細書又は図面には何ら記載されていない。 したがって、消費税、著作権料を新たに加える補正は、出願当初の明細書又は図面に記載されていた事項から直接的かつ一義的に導かれるものであるとは認められない。 (3) 本件補正 平成12年2月9日に提出(2月10日受付)された手続補正は、当審で却下されたので、平成10年5月1日付け(5月6日受付)手続補正(以下、「本件補正」という。)を検討の対象とする。 本件補正は、下記の補正(1)及び補正(2)を含むものである。 補正(1) 【特許請求の範囲】の請求項1の次の記載 「ソフト1本のレンタル料を100円とした場合、消費税、著作権料(原作・脚本・監督・音楽)=各3.5%×4=14%、システム使用料2%を差し引いた残りの金額を店とオーナーが分配するというシステムである。」補正(2) 【発明の詳細な説明】、【0006】欄の【実施例】の次の記載 「(イ) ソフト1本のレンタル料を100円とした場合、消費税、著作権料(原作・脚本・監督・音楽)=3.5%×4=14%、本システム使 用料の設定が2%だから、これを差し引いた残りの金額は、79円である。 (ロ) 店とオーナーが残りの金額を折半する形ならば、店とオーナーの取り分は(79円÷2)=39.5円づつとなる。 (ハ) 仮に50人のオーナーがそれぞれ50本のソフトを所有していて、 これらのソフトを月に1回回転させることができると計算すると、オーナー1人分の利益は50本×39.5円=1,975円となる。よって店の売上は50人×50本×39.5円=98,750円となる。」 (4) 当初明細書又は図面 本願の願書に最初に添付された明細書又は図面の記載は、下記のとおりである。 【発明の名称】 SOFT BANK SYSTEM 【特許請求の範囲】 【請求項1】 店がお客様の所有するソフトを預かり、まずソフトのオーナーとして登録してもらい、それを貸し出すというシステム。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する分野】 このシステムはソフトを貸し出す事によって、店とオーナーと私が利益を受けるべく考えられたものである。 【0002】 【従来の技術】 従来のレンタルソフト業においては、お客様はソフトを借りるだけの立場であった。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 これまでには、次ぎのような欠点があった。 (イ)ソフトのレンタル料が高いという事。 (ロ)お客様は借りる一方だけの立場でしかなかったという事。 (ハ)店がソフトを貸すためにはまず、ソフトを購入しなければならなかった。本システムは、これらの欠点を解決するためになされたものである。 【0004】 【課題を解決するための手段】 「ソフト1本のレンタル料を100円とした場合、店とオーナーと私とで利益を配分する考えだから、配分の仕方が、49%:49%:2%だとすると、ソフト一本における貸し出しが月に一回転しかできなかった場合でも1年間ではオーナーの利益は、49円×1回転×12ヶ月=558円である。もしオーナーが30本のソフトを所有していて、これらを仮に月に一回転させられるとしたら、588円×30本=17,640円である。このような立場のオーナーを店が30人抱えていれば、一年間での店の利益は17,740円×30人=529,200円となる。 【0005】 【発明の実施の形態】 ソフト1本における貸し出しが月に2回転できた場合なら、オーナーの年間の利益は、49円×2回転×30本×12ヶ月=35,280円。 よって年間の店の利益は、35,280円×30人×12ヶ月=1048,400円となる。 【0006】 本システムの実施例について説明する。 ソフト1本のレンタル料を100円とした場合、店とオーナーと私とで、 利益を配分する考えだから、配分の仕方が、49%:49%:2%だとすると、ソフト一本における貸し出しが月に3回転できた場合なら、オーナーの年間の利益は、 49円×3回転×30本×12ヶ月=529,200円である。 よって、年間の店の利益は、529,200円×30人=1,587,600円となる。 【0007】 【発明の効果】 このシステムの活用によって、店はソフトの購入に資金を費やすことなく、オーナーは現在の銀行の預金金利よりもはるかに高額の利益を受ける事ができ、又お客様は今までよりも、とても安い値段でソフトを借りる事ができる。 なお、この出願の出願時には願書に図面が添付されていない。 (5) 審決の判断 上記補正(1)及び補正(2)は、いずれも消費税、著作権料、システム使用料を差し引いた残りの金額を対象とする旨の事項であって、かかる事項は願書に最初に添付された明細書に記載されておらず、願書に最初に添付した明細書の記載から直接的かつ一義的に導き出される事項ではないから、新規事項の追加に相当する。 よって、本件補正は、願書に最初に添付された明細書又は図面の記載事項の範囲内においてなされたものとは認められない。 (6) むすび 以上のとおり、本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の記載事項の範囲内においてしたものには該当しないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する。 |
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原告の主張(取消事由)
1 特許庁が、原告の平成9年5月13日付け(提出日)の特許願に関する手続補正書をことごとく拒絶し、審判手続において拒絶査定に対する審判請求書とともに平成12年2月9日付けで提出した手続補正書を却下したことは、違法であり、 審決の判断も誤っているから、取り消されるべきである。 2 原告は、平成10年1月16日付けで提出した手続補正書及び同月23日付けで提出した手続補正書の各々につき、手続不備により受理しない旨の通知(いずれも平成10年3月24日付け、発送日同年4月14日)を受けたので、同年4月下旬頃、上記通知に問い合わせ先として記載されていた特許庁方式審査第一課特許包袋センターに電話して相談し、同センターの担当者に補正書が手続(方式)の不備によって受理されなかったことを説明して、同担当者に協力を求め、補正書のサンプル(甲第1号証)を送ってもらった。そのサンプルは、原告の要請に基づき、 出願番号、補正をする者の住所、氏名及び補正に係る明細書の内容をワープロ文字で記載したうえ、補正をする者の氏名欄に、手書きで、「印を押して下さい。」、 発明の効果の欄に続く余白部分に、手書きで、「【図面の簡単な説明】 【図1】は・・(空欄)・・ここに図の説明を記入してください。」などと指示を書き込んだものであった。 原告は、送られたサンプルに従って手続補正書を作成し、特許庁に提出したが(平成10年5月6日受付)、この手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は却下され、その後に拒絶査定がなされた。 3 原告が平成10年5月6日受付で提出した手続補正書は、送付を受けたサンプルの図面の簡単な説明の箇所が手書きの書き込みになっていたのが気になったので、発明学会編集の中野勝征著「ネバリ強く特許を取る本」に記載された見本と照らし合わせ、図面の簡単な説明の箇所だけ、上記書籍の見本を見習って作成したものである。 原告は、方式審査第一課特許包袋センターの担当者に手続補正書の作成について相談した際、自分は一生懸命やっているのだが受理されないので補正が通るようにしてもらいたいと頼み、同担当者に補正の内容を書き込んだサンプルを作成してもらい、送られたサンプルに従った手続補正書により本件補正の手続をしたのである。それにもかかわらず、本件審決が本件補正は特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないと判断した拒絶査定を支持して、本件審判の請求は成り立たない旨の審決をしたのは、不当である。特許庁の担当者は、補正書の作成について熟知しているはずであるから、適切な教示をしてくれれば、原告は拒絶査定を受けることのない補正書を作成することができたはずである。また、本件補正をした平成10年5月6日の時点では、出願から1年を経ていなかったのであるから、 国内優先権制度の活用によるか、さもなくば特許願いを最初からやり直すようにという適切な教示がなされていれば、補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないという理由によって拒絶査定を受けることもなかったはずである。 |
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被告の反論
事実関係は、審決記載のとおりであり、審決の判断に誤りはない。原告が主張する特許庁の担当者は、方式審査第一課特許包袋センターの担当者であり、原告の要請を受けて提出書類の記載方式について教示したものである。 |
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当裁判所の判断
1 甲第1号証乃至甲第10号証及び弁論の全趣旨によれば、原告の主張2の事実(前記第3の2)が認められる。 2 原告は、原告の問い合わせに対して特許庁の担当者から適切な教示がなされていれば、平成10年5月6日受付の手続補正書による補正が不適法であるとの理由による拒絶査定を受けることはなかったはずであるから、担当者が適切な教示をしなかったことに落ち度がある旨主張する。 しかし、甲第1、第2、第6ないし第9号証及び弁論の全趣旨によれば、上記認定のとおり、原告は、平成10年1月16日付け及び同月23日付け提出の手続補正書がいずれも手続(方式)不備を理由に受理されず、不備を解消した手続補正書を再度提出するよう通知を受けていたこと、同年4月ころ、原告が手続補正書の書き方について相談したのは、方式審査第一課特許包袋センターの担当者であるところ、方式審査課の職務においては、担当者が出願人に教示するのは書類の方式に関する事項にとどまるのであって、原告の要請により前記担当者が教示した内容もそのようなものであったことが認められる。なるほど、原告が受け取った手続補正書のサンプル(甲第1号証)は、前記担当者において補正の内容をワープロで記載した態様のものであるが、これは、原告が特許庁宛に送付した平成10年1月23日付け手続補正書に記載された内容をそのまま記載したにすぎないと認められ、 前記担当者が補正の内容自体について積極的に関与したことを窺わせる証拠はない。 本来、出願書類に発明の内容として何を記載するか、あるいは、どのような内容の手続補正をするかは、出願人自らがその判断と責任において決定すべき事柄であり、特許庁の方式審査を担当する部署の担当者としては、出願書類の内容にわたる事項についてまで「適切」な教示をすべき義務はないというべきである。したがって、前記担当者が方式以外の内容について適切な教示をしなかったことが審決を取り消すべき違法に当たるという主張は、それ自体、失当であるといわざるを得ない。 3 さらに、原告は、平成12年2月9日付けの手続補正を却下したこと、及び審決が平成10年5月6日受付の手続補正についてした判断は、違法である旨の主張もする。しかしながら、審決の理由及び原告提出の証拠を検討しても、平成12年2月9日付けの手続補正を却下したことには何らの瑕疵も見いだすことはできないし、また、平成12年5月6日付け手続補正書による補正事項は、本件出願の願書に最初に添付した明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものとは認められないとした審決の判断にも誤りは認められない。 2 以上のとおりであるから、原告主張の取消事由は理由がなく、審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。 よって、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 永井紀昭 |
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裁判官 | 塩月秀平 |
裁判官 | 古城春実 |