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事件 平成 13年 (行ケ) 19号 審決取消請求事件
原告 三谷セキサン株式会社
訴訟代理人弁理士 鈴木正次、涌井謙一、山本典弘
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 鈴木憲子、大野覚美、茂木静代、幸長保次郎
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/07/17
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が訂正2000-39080号事件について平成12年11月28日にした審決を取り消す。」との判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 特許第2789379号(本件特許)は、発明(本件発明)の名称を「ボーリングデーターの表示方法」として平成2年8月9日に出願され、平成10年6月12日に設定登録がされたものであり、原告が特許権者である。本件特許に対しては特許異議の申立てがあり、平成11年異議第70611号事件として審理され、平成12年2月10日に「特許第2789379号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。」との決定があり、原告は同決定の取消請求訴訟を東京高等裁判所に提起し、平成12年(行ケ)第116号事件として審理されている。
原告は、平成12年7月21日、本件特許の明細書の訂正を求める審判請求をし、訂正2000-39080事件として係属したが、平成12年11月28日「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、同年12月20日原告に送達された。
2 本件発明の要旨 (1) 訂正審判請求前の発明の要旨【請求項1】標準貫入試験におけるN値と、対応深度における掘削機の使用電流値とを対比して表示することを特徴としたボーリングデーターの表示方法【請求項2】N値には、これに対応する土質名を深度別に対比付記した請求項1記載のボーリングデーターの表示方法【請求項3】標準貫入試験におけるN値と、対応深度における掘削機の使用トルク値とを対比して表示することを特徴としたボーリングデーターの表示方法 (2) 訂正審判請求に係る発明の要旨 1 同一現場の標準貫入試験におけるN値と、対応深度範囲毎における、杭穴掘削時の掘削機の使用電流値(単位、アンペア×秒)とを、掘削杭穴の深度別土質を把握して、適切な対応をとるために、杭穴掘削と同時に対比して表示することを特徴としたボーリングデーターの表示方法 2 N値には、これに対応する土質名を深度別に対比付記した請求項1記載のボーリングデーターの表示方法 3 同一現場の標準貫入試験におけるN値と、対応深度範囲毎における、杭穴掘削時の掘削機の使用電流値(単位、アンペア×秒)に対応した使用トルク値とを、
掘削杭穴の深度別土質を把握して、適切な対応をとるために、杭穴掘削と同時に対比して表示することを特徴としたボーリングデーターの表示方法 (3) 訂正補正時(後記の平成12年10月17日付け手続補正書)の発明の要旨 1 同一現場の標準貫入試験におけるN値と、対応深度毎における、杭穴掘削時の掘削機の使用電流値(単位、アンペア×秒)とを、掘削杭穴の深度別土質を把握して、適切な対応をとるために、杭穴掘削と同時に対比して表示することを特徴としたボーリングデーターの表示方法 2 N値には、これに対応する土質名を深度別に対比付記した請求項1記載のボーリングデーターの表示方法 3 同一現場の標準貫入試験におけるN値と、対応深度毎における、杭穴掘削時の掘削機の使用電流値(単位、アンペア×秒)に対応した使用トルク値とを、掘削杭穴の深度別土質を把握して、適切な対応をとるために、杭穴掘削と同時に対比して表示することを特徴としたボーリングデーターの表示方法 3 審決の理由の要点 (1) 訂正拒絶理由通知の内容 平成12年8月24日付けの訂正拒絶理由通知の内容は次のとおりである。
訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び3における「対応深度範囲毎における、杭穴掘削時の掘削機の使用電流値(単位、アンペア×秒)・を、・・・表示する」という事項は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされた訂正ではない(いわゆる「新規事項」である。)から、本件訂正は、特許法第126条第2項の規定に適合しない。
第1図に、「A・sec」という記載及び対応深度の電流値のグラフは記載されているが、対応深度範囲毎における、杭穴掘削時の掘削機の使用電流値(単位、アンペア×秒)が表示されているとはいえない。」 (2) 手続補正書の補正の内容の検討 (2)-1 原告は、平成12年10月17日付け手続補正書において、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び請求項3中、「同一現場の標準貫入試験におけるN値と、対応深度範囲毎における」を、明瞭でない記載釈明を目的として、「同一現場の標準貫入試験におけるN値と、対応深度毎における」と補正することを補正事項の一部としている。
(2)-2 しかしながら、上記のように特許請求の範囲を補正することは、訂正審判書における訂正事項の削除や軽微な瑕疵の補正にとどまらず、特許請求の範囲の訂正事項を変更するものであり、請求書の要旨を変更するものである。
したがって、特許請求の範囲の当該補正を含む平成12年10月17日付け手続補正書は、訂正審判書の要旨を変更するものであって、特許法131条2項の規定により適法なものとは認められない。
(3) 訂正拒絶理由通知の適正性について (3)-1 上記のとおり、平成12年10月17日付け手続補正書は適法なものとは認められないことから、本件訂正請求書により訂正しようとする特許請求の範囲は、平成12年7月21日付け訂正審判請求書に添付された明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりと認められる。
(3)-2 上記のとおり、平成12年7月21日付け訂正審判請求書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び3における「対応深度範囲毎における、杭穴掘削時の掘削機の使用電流値(単位、アンペア×秒)・を、・・・表示する」という事項は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされた訂正ではない(いわゆる「新規事項」である。)から、先の訂正拒絶理由通知における判断は適正なものであり、本件訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則6条1項の規定によりなお従前の例によるとされる改正前の特許法126条1項ただし書の規定に適合しないので、本件訂正請求による訂正は適法な訂正とは認められない。
(3)-3 平成12年10月17日付け意見書において、原告(審判請求人)は、
参考資料1ないし3を添付するとともに、
『単位、アンペア×時間について従来「アンペア×時間」の単位は、積算電流計で使用され、「回路の電流の時間についての積分値(つまり電気量)を測定する計測器の単位」(単位A・h)として普通に使用されている(参考資料1)。従って単位A・hが記載されて居れば、当然一義的に積算値と読まれる。また電気量の単位はA・s(アンペア・秒)であるから(参考資料2、3)、前記A・hと、A・sが使用されることは明らかである。前記のように、本件発明の図面に示された電流値A・sは、所定の深さ範囲の積算電流値であり、該電流値をプロットして折線グラフを描いたものである。前記において、一定の深さ範囲の電流値(積算)は、地層の性質によって異なる。例えば堅い地層を掘削する場合は大きな積算電流値となり、軟らかい地層を掘削する場合は小さな積算電流値となるので、N値と対応することになる。一方瞬間的電流値(一般電流計)の場合には、所定深度(一点)の電流の多寡を示すもので、地層の性質を表すものではないから、地層の性質を示すN値との関連性はなく、地質の推定もできないということができる。』旨主張している。
(3)-4 しかしながら、「アンペア×時間」の単位は、積算電流計で使用され、
「回路の電流の時間についての積分値(つまり電気量)を測定する計測器の単位」(単位A・h)として普通に使用されていること、電気量の単位はA・s(アンペア・秒)であり、A・hと、A・sが使用されることが従来から知られているとしても、本件特許において、第1図に「A・sec」という記載はあるが、この欄は「電流記録値」の欄であり、明細書に、「電流記録値は、杭穴掘削時の電流測定値をそのまま描かせ、又は電流測定値のグラフを対比深度に合わせて貼着する。」(特許公報2頁3欄30行〜4欄1行)と記載されているだけで、積算電流計を使用すること及び所定の深さ範囲の電流値であって、かつ積算電流値(つまり電気量)を描かせることについては何ら記載はなく、さらに、「所定の深さ範囲」と、
「積算時間」との関係も不明であるから、原告の上記主張は採用できない。
(4) 審決のまとめ 以上のように、本件訂正審判請求による訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされた訂正ではなく、本件訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則6条1項の規定によりなお従前の例によるとされる改正前の特許法126条1項ただし書の規定に適合しないので、
適法な訂正とは認められない。
原告主張の審決取消事由
1 取消事由1 審決は、平成12年10月17日付け手続補正書について、「訂正審判書における訂正事項の削除や軽微な瑕疵の補正にとどまらず、特許請求の範囲の訂正事項を変更するものであり、請求書の要旨を変更するものである。」と判断したが、誤りである。 「対応深度範囲毎における」を「対応深度毎における」とした補正は、「範囲」の有無に関するもので、技術的には同一事項であって、「範囲」を削除したところで、元来権利の広狭に関係なく、不明瞭な点を明瞭にしたものである。すなわち「対応深度範囲」といえば、各深度における電流値のプロット点の前後を示し、
「対応深度」とすれば、プロット点自体を示すけれども、プロット点は電流と時間の積算値であるから、一点指示であるけれども、その数値は、直前のプロット点からの積算値で成立している。したがって内容的には同一であるけれども、範囲を入れることによって若干の不明瞭性を伴うので、削除したにすぎない。
2 取消事由2 (1) 審決は、「積算電流計を使用すること及び所定の深さ範囲の電流値であって、かつ積算電流値(つまり電気量)を描かせることについては何ら記載はなく、
さらに、「所定の深さ範囲」と、「積算時間」との関係も不明である」とした上で、「本件訂正審判請求による訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされた訂正ではなく」と判断したが、誤りである。
(2) 積算電流値であることはグラフの単位より明らかである。すなわち、本件第1図には、「電流記録値」の欄に「10^3・A・sec」と明記されており、これは数値は1000分の1に表示され、その単位は「アンペア・秒」ということであって、その他の解釈は成立しない。そして、「アンペア・秒」は、回路の電流の時間についての積分値(つまり電気量)を表すものであり、本件第1図では各プロット間(50cm毎)の積算電流値を示している。
(3) N値とは、重量63.5kgのハンマーを75cm自由落下させ、標準貫入試験用サンプラーを30cm打ち込むのに要する打撃数をいい、各深度における杭貫入のエネルギーである。一方、電流は各時間毎の電気の流れ量を示し、単なる大小を示す数値であって、エネルギーの正比例値ではないから、電流を、N値と、対応深度範囲毎に積算しなければ、エネルギーの正比例値にはならず、N値との対比の対象にもならないのである。そして、本件の請求項1及び請求項2に係る発明における電流値は、前記N値と深度別に対比することを目的としており、杭穴掘削時のオーガーの深度別エネルギーと正比例するものであるから、瞬間的電流値ではなく、直前のプロット点から当該プロット点までの積算電流値であることは当然の技術的帰結である。
(4) 通常瞬間的電流値のグラフの場合には、極めて密な折線グラフ(絶えず変動)となり、その値は100アンペア〜300アンペアのような数値であって、10,000アンペアとか20,000アンペアとかいう数値はあり得ず、第1図を瞬間的電流値のグラフとみる者は皆無といっても過言ではない。
(5) また、本件の請求項3に係る発明におけるトルク値も杭穴掘削時のオーガーの回転エネルギーであるから、「対応深度範囲毎における、杭穴掘削時の掘削機の使用電流値(単位、アンペア×秒)に対応した使用トルク値」であることも当然である。
審決取消事由に対する被告の反論
1 取消事由1に対して 「対応深度範囲毎における」は、例えば対応深度範囲を「深度1〜2m」、「深度2〜2.5m」等と決め、その深度範囲毎におけると解されるのに対し、「対応深度毎における」は、例えば対応深度を「深度1m」、「深度1.5m」等と決め、その深度毎におけると解され、「対応深度範囲毎における」と「対応深度毎における」とでは、技術的に同一事項であるとは到底認められない。
2 取消事由2に対して 本件訂正に係る「対応深度範囲毎における、杭穴掘削時の掘削機の使用電流値」とは、例えば対応深度範囲を「深度1〜2m」、「深度2〜2.5m」等と決め、
その深度範囲毎における杭穴掘削時の掘削機の使用電流値と解されるのに対し、訂正前の「対応深度における掘削機の使用電流値」とは、例えば対応深度が「深度1m」、「深度1.5m」等であれば、その深度における掘削機の使用電流値と解され、「対応深度範囲毎における」と、「対応深度における」掘削機の使用電流値の技術内容は異なるものであり、また、訂正前の「対応深度における掘削機の使用電流値」は、対応深度をどこに設定するかによって、原告が主張するような、「極めて密な折線グラフ(絶えず変動)となり」とはいえない。したがって、本件第1図のグラフを見れば一見して、深度範囲毎における杭穴掘削時の掘削機の使用電流の積算電流値のグラフであると理解できるとはいえない。
本件第1図に「A・sec」という記載はあるが、積算電流計を使用すること及び対応深度範囲毎における使用電流値(所定の深さ範囲の電流値であって、かつ積算電流値つまり電気量)を描かせることについては何ら記載はなく、さらに、「所定の深さ範囲」と、「積算時間」との関係も不明であるから、訂正された事項は、
当業者以外の者においても正しく判断されるよう、不明瞭な点を明瞭にしたものであるともいえない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(補正の適否)について 甲第9号証によれば、本件発明におけるN値(重量63.5kgのハンマーを75cm自由落下させ、標準貫入試験用サンプラーを30cm打ち込むのに要する打撃数)は、所定深度範囲の地盤の固さを反映した値であるから、訂正後の請求項1の「N値と、対応深度範囲毎における、杭穴掘削時の掘削機の使用電流値(単位、
アンペア×秒)」とは、個々のN値が表す深度範囲と対応する深度範囲を掘削する間の積算電流値と解することができる。このように、訂正後の「対応深度範囲毎における、杭穴掘削時の使用電流値(単位、アンペア)」とは、個々のN値が表す深度範囲と対応する深度範囲を掘削する間の積算電流値であると解されるのに対し、
平成12年10月17日付け手続補正書による補正部分の「対応深度毎」とは、文理上、区間又は期間を意味するものと解することはできないから、補正後の「対応深度毎における、杭穴掘削時の使用電流値(単位、アンペア)」では、積算期間が特定されていないことになり、補正後の請求項1及び3の訂正事項の意味するところは、明らかに補正前と異なるものである。
したがって、「訂正審判書における訂正事項の削除や軽微な瑕疵の補正にとどまらず、特許請求の範囲の訂正事項を変更するものであり、請求書の要旨を変更するものである。」とした審決の判断に誤りはない。
2 取消事由2(訂正の適否)について (1) 上記判断のとおり、訂正後の請求項1の「N値と、対応深度範囲毎における、杭穴掘削時の掘削機の使用電流値(単位、アンペア×秒)」とは、個々のN値が表す深度範囲と対応する深度範囲を掘削する間の積算電流値と解することができる。
(2) しかしながら、甲第2号証の1によれば、訂正前の本件明細書には「積算電流値」である旨の記載は一切なく、「電流値」又は「使用電流値」との記載があるにとどまることが認められる。このことからすると、本件第1図の記載は、何らかの積算電流値であるか、又は瞬間電流値に時間が乗算されたものを「電流記録値」欄に表示したことが推認されるところ、積算電流値であるとしても、いつからいつまでのものを積算したかについては、本件第1図のグラフから読み取ることはできない。例えば、特許第2789381号公報(甲第8号証)には「駆動モータ6の負荷電流は、負荷電流計12で連続的に検出されており」(4欄42〜43行)との記載とともに、電流値と地質との関係を示すグラフが第3図及び第4図に図示されている。このグラフにおける電流値は上記記載から瞬間電流値であるということができるが、このグラフは一見して極めて変動の激しいものであることからして、
瞬間電流値を特定の一点のみプロットしたとすれば、大きな誤差を含むことは容易に理解される。そして、このような大きな誤差を回避するためには、一瞬の電流値ではなく、プロットすべき時点を含む適宜期間の平均値又は積算値を、その適宜期間の代表値としてプロットすればよいことも容易に理解されるのであり、本件第1図の電流記録値欄のグラフも、そのような趣旨で作成された可能性を否定することができない。そして、大きな誤差を回避するために積算するのであれば、積算期間は適宜の一定期間でよく、訂正後の請求項1記載の「N値と、対応深度範囲毎における」積算である必要性も必然性もないといわざるを得ない。
したがって、「積算電流計を使用すること及び所定の深さ範囲の電流値であって、かつ積算電流値(つまり電気量)を描かせることについては何ら記載はなく、
さらに、『所定の深さ範囲』と、『積算時間』との関係も不明である」との審決の認定は、「積算電流計を使用すること」及び「積算電流値(つまり電気量)を描かせること」が記載されていないとした点においては妥当ではないもの、「所定の深さ範囲の電流値であって」について記載がないと認定した点、及び「『所定の深さ範囲』と、『積算時間』との関係も不明である」と認定した点には誤りがない。この認定に基づいて「本件訂正審判請求による訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされた訂正ではなく」とした審決のの判断にも誤りがない。
(3) 原告は、N値とは、各深度における杭貫入のエネルギーである旨、電流を、
N値と、対応深度範囲毎に積算しなければ、N値との対比の対象にもならない旨を主張するが、その主張を裏付けるべき証拠はない。
かえって、前掲特許第2789381号公報(甲第8号証)には、「地盤の固さにより、駆動モータ6に対する負荷が変わり、これに応じて負荷電流が変化する。」(4欄50行〜5欄1行)、及び「記録紙18上に予めA又はBの着色をして、これに電流値Axを画かせると、A区分に入る電流値aの部分の地質はローム質であるとか、B区分に入る電流値bの部分の地質は砂質又はこれに近似するものであるとか判別することができる(第3図、第4図)。」(6欄2〜6行)との記載のあることが認められ、第3図及び第4図での電流値が瞬間電流値であることは前示のとおりであるから、瞬間電流値が、地盤の固さを反映するもの、すなわち、
N値と対比し得る対象であると認められる。しかも、甲第2号証の1及び第8号証によれば、特許第2789381号公報は、本件発明の発明者が発明したものを、
本件出願と同日の平成2年8月9日に原告が出願したものの特許公報であることが認められるのであり、原告が本訴において主張しているような認識を、原告自身本件出願当時には有していなかったものと推認することができる。
以上説示の点を総合してみれば、第1図に積算電流を表す単位があるとしても、
それをもって原告主張のように、「直前のプロット点から当該プロット点までの積算電流値である」と解することはできないといわなければならない。
(4) 以上のとおりであり、取消事由2も理由がない。
結論
以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がないので、原告の請求は棄却されるべきである。
(平成13年7月12日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 橋本英史