審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成16ワ8682損害賠償請求事件 | 判例 | 特許 |
平成17ワ8874不当利得返還請求事件 平成17ワ15841不当利得返還請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18ワ1223特許権侵害行為差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成16ワ8508損害賠償等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成16ワ20636特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 製造方法 / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 公知技術 / 課題の共通性 / 上位概念 / 技術的範囲 / 先行技術 / 発明の詳細な説明 / 出願経過 / 参酌 / 置き換え / 置換 / 容易に想到(容易想到性) / 特許発明 / 実施 / 構成要件 / 差止請求(差止) / 侵害 / 損害額 / 販売数量(販売数) / 実施料 / 不法行為(民法709条) / 混同 / 拒絶理由通知 / 訂正審判 / 請求の範囲 / 減縮 / 変更 / 訂正要件 / 審決確定(審決が確定) / |
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事件 |
平成
16年
(ワ)
9540号
特許権侵害差止等請求事件
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原告 大日本印刷株式会社 訴訟代理人弁護士 椙山敬士 同 吉田正夫 同 赤尾太郎 同 市川穣 同 松田美和 訴訟代理人弁理士 牛久健司 補佐人弁理士 井上正 同 高城貞晶 同 金山聡 同 後藤直樹 被告 凸版印刷株式会社 訴訟代理人弁護士 竹田稔 同 川田篤 同 服部誠 訴訟代理人弁理士 小栗久典 同 高橋詔男 同 青山正和 同 柳井則子 補佐人弁理士 志賀正武 同 船山武 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2005/08/30 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
1 被告は,別紙リアプロジェクションテレビ目録記載のリアプロジェクションスクリーンを製造し,販売し,又は譲渡等の申出をしてはならない。 2 被告は,別紙ウェブページ目録記載のウェブページを削除せよ。 3 被告は,別紙リアプロジェクションテレビ目録記載のリアプロジェクションスクリーンを廃棄せよ。 4 被告は,原告に対し,金6億3041万6666円及びこれに対する平成16年5月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 |
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事案の概要
本件は,透過形スクリーンの発明に係る特許権を有する原告が,被告の製造販売する別紙リアプロジェクションテレビ目録記載のリアプロジェクションスクリーン(以下「本件スクリーン」という。)が原告の特許発明の技術的範囲に属し,その製造販売が原告の特許権を侵害するものであると主張して,被告に対し,特許法100条1項に基づき,本件スクリーンの製造販売等の差止めを,同条2項に基づき,本件スクリーンの宣伝広告に係るウェブページの削除及び本件スクリーンの廃棄を求めるとともに,民法709条,特許法102条3項に基づき,損害賠償金6億3041万6666円及びこれに対する遅延損害金(不法行為の後の日である平成16年5月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合によるもの。)を求めた事案である。 1 前提となる事実(当事者間に争いがないか,後記各証拠及び弁論の全趣旨により認められる。) (1) 原告は,次の特許(以下「本件特許」といい,その出願を「本件出願」という。)に基づく特許権(以下「本件特許権」という。)を有している。 発明の名称 透過形スクリーン 特許番号 第2599945号 出願日 昭和62年12月29日 登録日 平成9年1月29日 (2) 本件出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(以下,請求項1記載の特許発明を「本件発明」という。なお,発明の数は1である。)。 「【請求項1】観察側に配置される光拡散作用をもつ光拡散性基板と,前記光拡散性基板より光源側に配置されフレネルレンズ形状をもつフレネルレンズ基板とからなる透過形スクリーンにおいて,前記フレネルレンズ基板が紫外線硬化樹脂により成形されており,前記光拡散性基板に紫外線吸収作用をもたせたことを特徴とする透過形スクリーン。」 (3) 本件発明を構成要件に分説すれば,次のとおりである(以下,各要件を「構成要件A1」のように表記する。)。 A1 観察側に配置される光拡散作用をもつ光拡散性基板と, 2 前記光拡散性基板より光源側に配置されフレネルレンズ形状をもつフレネルレンズ基板と 3 からなる透過形スクリーンにおいて, B 前記フレネルレンズ基板が紫外線硬化樹脂により成形されており, C 前記光拡散性基板に紫外線吸収作用をもたせたこと D を特徴とする透過形スクリーン。 (4) 被告は,平成16年6月9日,本件特許につき無効審判を請求し,被請求人である原告は,その審理の過程において訂正請求をした(甲30。以下「本件訂正」という。)。特許庁は,平成17年4月19日,本件訂正を認め,本件特許を無効とする旨の審決をした(乙48)。これに対し,原告は,平成17年5月24日,同審決の取消訴訟を提起した(弁論の全趣旨)。 上記審決が確定した場合には,本件訂正により,本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりとなる。 「フレネルレンズ基板より観察側に配置され光拡散作用をもつレンチキュラーレンズ基板と,前記レンチキュラーレンズ基板より光源側に配置されフレネルレンズ形状をもつフレネルレンズ基板とからなるプロジェクションTV用透過形スクリーンにおいて,前記フレネルレンズ基板が紫外線硬化樹脂により成形されており,前記レンチキュラーレンズ基板に紫外線吸収作用をもたせたことを特徴とするプロジェクションTV用透過形スクリーン。」 (5) 被告は,現在,別紙部品番号目録1,4,5,7,8,10及び11記載のフレネルレンズシート及びレンチキュラーレンズシートを製造し,同目録2,3,6及び9記載のフレネルレンズシート及びレンチキュラーレンズシートを,少なくとも過去において製造販売していた。 2 本件の争点 (1) 被告は,別紙物件目録記載のフレネルレンズシート及びレンチキュラーレンズシートをそれぞれ単体として製造販売しているのか,それとも,両レンズシートを組み合わせたリアプロジェクションスクリーンとして製造販売しているのか(争点1)。 (2) 本件スクリーンの構成は,本件発明の技術的範囲に属するか(争点2)。 (3) 本件特許は無効とされるべきものか(争点3)。 (4) 原告の損害額はいくらか(争点4)。 3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点1(被告は,別紙物件目録記載のフレネルレンズシート及びレンチキュラーレンズシートをそれぞれ単体として製造販売しているのか,それとも,両レンズシートを組み合わせたリアプロジェクションスクリーンとして製造販売しているのか。)について ア 原告の主張 被告は,別紙物件目録記載のフレネルレンズシート及びレンチキュラーレンズシートを組み合わせてリアプロジェクションスクリーンを製造販売している。 被告は,フレネルレンズシート及びレンチキュラーレンズシートを単体として製造販売しているものであって,リアプロジェクションスクリーンとして製造販売しているものではないと主張する。しかし,フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートとは,一対一体のものとしてリアプロジェクションテレビにおいて用いられるものであって,被告の前記主張は,単なる形式論にすぎない。 すなわち,リアプロジェクションテレビの開発に当たっては,テレビメーカーから被告に対して提示されるシステム仕様に適合するようにスクリーンが設計され,同スクリーンを構成するフレネルレンズシート及びレンチキュラーレンズシートも,前記仕様に合わせて開発される。サンプルの製作,提出,評価及び認定においても,フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートとは,一対一体のものとして扱われ,両レンズシートに付与される部品番号も,新規に製作される場合には連番で付される。製品の受注,製造及び納入における両レンズシートの枚数も,不良品等の関係で完全には一致しないものの,ほぼ同数である。ホームページによる被告の宣伝広告においても,両レンズシートを合わせた「FCスクリーン」の名称による宣伝広告が行われている。 このように一対一体のものとしてテレビに組み込まれることが予定されているフレネルレンズシート及びレンチキュラーレンズシートが製造されれば,その後の工程は,接着テープを用いて両レンズシートを貼り合わせるか,あるいは,貼り合わせないままテレビに組み込むだけであるから,両レンズシートの製造をもって,リアプロジェクションスクリーンの製造も完了したというべきである(したがって,両レンズシートが外国に輸出された後でテレビに組み込まれる場合でも,リアプロジェクションスクリーンの製造販売は,日本国内で完結している。)。 イ 被告の反論 被告は,平成14年から翌15年にかけて,フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートとを組み合わせたリアプロジェクションスクリーンを販売したことがあるが,それ以降は,両レンズシートをそれぞれ単体として製造販売しており,リアプロジェクションスクリーンとしては製造販売していない。 原告は,フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートとは一対一体のものであるから,リアプロジェクションスクリーンとしての製造販売を否認する被告の主張は単なる形式論にすぎないと主張する。しかし,被告は,実質的にみても,フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートをそれぞれ単体として製造販売しているものである。 すなわち,両レンズシートは,必ずしも一対一体として開発されるものではなく,特定のフレネルレンズシートとの組合せを考慮せず,単独でレンチキュラーレンズシートが開発される例も多数あり,単独で開発され,製造販売される数は,被告が販売するレンチキュラーレンズシート全体の約50%にも及ぶ。両レンズシートが同時に開発され,部品番号として連番が付される場合でも,販売先企業の都合によりレンズシートの組合せが変更され,連番が付されていないレンズシートや,他社の製造するレンズシートと組み合わされることがあり得るのであり,被告は,被告の製造販売したレンズシートが実際にどのように組み合わされているのか,知ることができないのである。 また,両レンズシートを組み合わせる工程は,高度な技術力や特別な作業環境等を要するものであり,同工程を経なければリアプロジェクションスクリーンとしての機能を有することにはならないのであるから,両レンズシートがそれぞれ製造されただけでは,リアプロジェクションスクリーンの製造が完了したとはいえない。特に,日本サムスン株式会社に販売されるレンズシートは,前記の組合せ工程を経ずに,単体のまま外国へ輸出されているから,本件発明の構成要件の一部が第三者によって外国で行われているものであり,本件特許権の侵害が日本国内でされたとは評価することができない。 (2) 争点2(本件スクリーンの構成は,本件発明の技術的範囲に属するか。)について ア 原告の主張 本件スクリーンは,本件発明の構成要件をいずれも充足し,本件発明の作用効果を奏するから,本件発明の技術的範囲に属する。 a) 本件発明の構成要件を充足することについて @ 本件スクリーンの構成は,別紙物件目録に記載のとおりであり,次に述べるとおり,本件発明の構成要件をいずれも充足する。 (i) 本件スクリーンは,観察側に配置される光拡散作用をもつレンチキュラーレンズシートと,同レンズシートより光源側に配置されフレネルレンズ形状を有するフレネルレンズシートとからなる透過形スクリーンであるから,構成要件A1ないし3を充足する。 (ii) 前記フレネルレンズシートは,紫外線硬化樹脂により構成され,前記レンチキュラーレンズシートには紫外線吸収剤が含まれており,本件スクリーンはかかる特徴を有する透過形スクリーンであるから,構成要件BないしDを充足する。 (iii)なお,本件特許の特許請求の範囲の請求項1につき本件訂正を認める審決が確定した場合でも,本件訂正は,「光拡散性基板」を「レンチキュラーレンズ基板」に,「透過形スクリーン」を「プロジェクションTV用透過形スクリーン」にそれぞれ減縮し,レンチキュラーレンズ基板が「フレネルレンズ基板より」観察側に配置されるとしたものにすぎないから,本件訂正がされた後の特許請求の範囲を前提としても,本件スクリーンは本件発明の構成要件を充足するものである。 A 被告は,構成要件Bの「紫外線硬化樹脂」とは,長時間使用すると紫外線により劣化する性質を有する紫外線硬化樹脂を指すとした上で,この「劣化」とは,リアプロジェクションテレビの使用上許容し得る限度を超える場合,すなわち,黄色度(YI値)が5.0を超える場合をいうと主張する。 しかし,そもそも,構成要件Bの「紫外線硬化樹脂」につき,被告主張のような限定解釈をすべき理由はない。 仮に,「紫外線硬化樹脂」を,長時間使用すると紫外線により劣化する性質を有する紫外線硬化樹脂を指すと解釈するとしても,リアプロジェクションテレビのスクリーン市場において,黄色度の上限値なるものは存在せず,黄色度が5.0を超えない限りフレネルレンズシートは劣化していないと解する根拠はない。前記解釈における「劣化」とは,紫外線を受ける時間の経過に伴って黄変が進行していくことを意味するにすぎない。 しかるに,本件スクリーンの一部(別紙リアプロジェクションテレビ目録のNo.17,LG Electronics Inc.製造のリアプロジェクションテレビ型番RN-52SZ30Hに用いられているリアプロジェクションスクリーン。以下同じ。)について,原告が実施した耐光性促進試験(甲8,35)の結果によれば,フレネルレンズシート単体を試料として,紫外線を一定時間照射した場合に,時間の経過に伴って黄変が進行しており,このことからすれば,本件スクリーンのフレネルレンズシートは,紫外線により劣化する性質を有するものである。 被告は,本件スクリーンのフレネルレンズシートは,長時間使用しても紫外線による劣化を生じさせない構成となっていると主張する。しかし,@同レンズシートに含有されている光開始剤ダロキュア1173は,黄変が比較的少ないというだけで,黄変しないわけではなく,むしろ,ダロキュア1173自体の分解生成物が紫外線を吸収して活性化し,光酸化サイクルを開始させる契機の一つとなっていること,A同レンズシートに光安定剤であるヒンダードアミン類が含まれているとしても,光酸化サイクルがいったん開始されると,光酸化サイクルの繰返しによってラジカルの発生が加速度的に増加する結果,ヒンダードアミン類ではラジカルを捕捉しきれなくなること,B同レンズシートの樹脂原料として,芳香族系でないジイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネートが使用されているとしても,樹脂組成物中には芳香族系化合物であるo-フェニルフェノールが含まれており,同化合物によりウレタン基の変化が生じ,黄変する可能性もあることに照らせば,本件スクリーンのフレネルレンズシートは,長時間使用しても紫外線による劣化を生じさせない構成であるとはいえない。 B 被告は,構成要件Cの「前記光拡散性基板に紫外線吸収作用をもたせたこと」とは,光拡散性基板にフレネルレンズ基板の劣化を防止するための紫外線吸収作用をもたせたことを意味するものと限定的に解釈すべきであると主張する。 しかし,フレネルレンズ基板の劣化防止は,本件発明の作用効果であって,発明の構成をなすものではないから,被告主張のように限定的に解釈するべきではない。構成要件Cの該当性を判断するに当たって,被告がいかなる主観的意図ないし動機からレンチキュラーレンズシートに紫外線吸収作用をもたせたかは問題とされるべきではなく,本件スクリーンのレンチキュラーレンズシートが紫外線吸収作用を有している以上は,構成要件Cを充足するというべきである。 C 被告は,本件出願経過や公知技術を参酌すれば,構成要件B及びCは限定的に解釈されるべきであると主張する。 しかし,原告作成の平成8年5月29日付け意見書(乙24)の記載は,構成要件B及びCを限定的に解釈する根拠とはならないし,また,公知技術の参酌によっても,本件発明の進歩性が否定されることはない(後記(3)イ)から,構成要件B及びCを限定的に解釈する必要はない。 b) 本件発明の作用効果を奏することについて 本件スクリーンの一部について原告が実施した耐光性促進試験(甲8,35)の結果によれば,前記スクリーンをそのまま試料とした場合,及び,同スクリーンのフレネルレンズシートを紫外線吸収作用を有するレンチキュラーレンズシートと合わせた場合には,400時間にわたってキセノンアーク灯により紫外線を照射してもほとんど黄変しなかったのに対し,同スクリーンのフレネルレンズシートのみを試料とした場合,及び,同フレネルレンズシートと紫外線吸収作用を有しないレンチキュラーレンズシートとを合わせた場合には,20時間の紫外線照射で黄変し,その後も時間の経過に伴って黄変が進行した。これらに照らせば,本件スクリーンは,レンチキュラーレンズシートに紫外線吸収作用をもたせたことによって,フレネルレンズシートの黄変劣化を防止しているから,本件発明の作用効果を奏するものである。 被告は,原告実施の前記試験について,フレネルレンズシートのうち,凹凸の起伏が大きく屈折性の高い部位を試料としたために,正しい黄色度が測定されていないと主張する。しかし,フレネルレンズシートは,その性質上,平滑・平行でないものであり,被告が主張するような「両面が平滑で,かつ平行」との条件を充たす試料を用いて試験を実施することは,原理的に不可能である。また,被告が試料とすべきであると主張する「比較的平滑な中心部」の測定範囲は直径12oであり,そのうち平滑・平行な部分の直径はわずか0.118oにすぎないから,同部位をもって,縦670o,横1178oという大きさを有する本件スクリーンを代表させることは適当でない。本件スクリーンにおいては,紫外線硬化樹脂層の厚さや,レンズ表面の形状の相違から,中心部に比べてその周辺の主要部のほうが,黄変の程度が著しくなるから,中心部だけでなく周辺主要部も含むフレネルレンズシート全体を測定の対象とすべきである。原告が実施した試験(甲35)は,フレネルレンズシートの中心部から100oごとに,600oの位置までを測定の対象としたものであり,相当である。さらに,試料の採取部位や測定角度を一定にするなどの条件下で,同一部位を同一方法で測定した結果を比較したり,経時的な変化を把握する限りにおいて,意味のある測定を実施することが可能であるのであり,原告実施の前記試験は,このような意味を有するものとして実施されたものである。 イ 被告の反論 本件スクリーンは,本件発明の構成要件B,C及びDを充足せず,また,本件発明の作用効果も奏しない。 a) 本件発明の構成要件を充足しないことについて @ 本件明細書の記載,本件出願の経過及び公知技術を参酌すれば,本件発明の技術思想は,次のとおりである。 本件明細書の記載によれば,フレネルレンズ基板の成形に用いられる紫外線硬化樹脂には,紫外線による重合反応を開始させるための増感剤等が含有されているため,スクリーンを長時間使用すると,外光に含まれる紫外線によりフレネルレンズ基板が劣化してしまうという技術的課題があり,かかる課題を解決するために,光拡散性基板にフレネルレンズ基板の劣化を防止するための紫外線吸収作用をもたせたのが本件発明である。 本件出願の経過においても,原告は,平成8年4月2日付け拒絶理由通知に対する同年5月29日付け意見書(乙24)によって,フレネルレンズ基板の紫外線による劣化を防止するために,同基板とは別体の光拡散性基板に紫外線吸収作用をもたせるという技術思想を強調している。 また,公知技術の参酌という観点からも,本件発明の構成は単なる先行技術の組合せにすぎず,その組合せは極めて容易である(後記(3)ア)から,本件発明に特許性を認めるとするならば,フレネルレンズ基板の紫外線による劣化を防止するために,同基板とは別体の光拡散性基板に紫外線吸収作用をもたせるという技術思想についてのみ,特許性を肯定できるものである。 A 本件発明の構成要件を解釈するに当たっては,上記のような本件発明の技術思想をふまえ,同思想に基づかない製品が本件発明の構成要件を充足することとならないよう,限定的に解釈すべきである。 したがって,構成要件Bの「紫外線硬化樹脂」とは,長時間使用すると紫外線により劣化する性質を有する紫外線硬化樹脂をいい,構成要件Cの「前記光拡散性基板に紫外線吸収作用をもたせたこと」とは,光拡散性基板にフレネルレンズ基板の劣化を防止するための紫外線吸収作用をもたせたことをいうものと解すべきである。そして,前記「長時間」とは,リアプロジェクションテレビの製品寿命期間に相当する8年ないし10年をいい,前記「劣化」とは,リアプロジェクションテレビを使用する上で許容される限度を超える場合,すなわち,黄色度(YI値)が5.0を超える場合をいうものと解すべきである(黄色度5.0という値は,文献(特開平7-207086号公報,特開2001-343633号公報及び「光硬化性樹脂を応用したプラスチックメガネレンズ」工業材料35巻5号)上,長時間の使用を経ても何ら支障なく使用できるとされた例に基づいて導き出された客観的な数値である。)。 B しかるに,本件スクリーンの構成は,別紙「物件目録についての被告の主張」に記載のとおりであり,次に述べるとおり,本件発明の構成要件B,C及びDを充足しない。 (i) 本件スクリーンのフレネルレンズシートを構成する紫外線硬化樹脂は,長時間使用しても黄変劣化を生じない物質により組成されている。 すなわち,本件スクリーンのフレネルレンズシートには,@無黄変タイプの光開始剤であるダロキュア1173,A紫外線硬化樹脂の主成分である光重合性プレポリマーの劣化過程で生成する活性なラジカルを安定化させる光安定剤であるヒンダードアミン類が用いられているほか,B樹脂組成物であるウレタンアクリレートオリゴマーの原料として,同オリゴマーに含まれるウレタン基を着色性のキノンイミド構造に変化させる芳香族系のジイソシアネートではなく,脂肪族系のジイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネートが用いられている。 これらの構成により,本件スクリーンのフレネルレンズシートは,長時間使用しても紫外線による劣化を生じさせないものとなっている。 なお,本件スクリーンのフレネルレンズシートには,樹脂組成物中に芳香族系の化合物が含まれているが,同化合物はジイソシアネートではなく,ウレタン基の変化を生じさせないものである。また,同レンズシートには,樹脂組成物中のモノマー成分として,高屈折率の物質であるビフェニルオキシエチルアクリレートが含まれているが,同物質はハロゲン原子を有しない化合物であり,黄変性のないものである。 (ii) 本件スクリーンと同等の構造を有するスクリーン(別紙リアプロジェクションテレビ目録のうちLG Electronics Inc.製造のリアプロジェクションテレビに用いられるリアプロジェクションスクリーンと同等の構成を有するもの。以下同じ。)について,被告が実施した耐光性促進試験の結果(乙1)によれば,同スクリーンのフレネルレンズシートと紫外線吸収作用を有しないレンチキュラーレンズシートとを合わせた場合,フレネルレンズシートの黄色度は,紫外線照射を開始して200時間を経過した時点で,1.5にすぎず,「劣化」というにはほど遠い値である。また,フレネルレンズシートと合わせるレンチキュラーレンズシートが紫外線吸収作用を有する場合と有しない場合とを比較すると,紫外線を照射した後のフレネルレンズシートの黄色度はほぼ同じであり,このことからも,本件スクリーンのフレネルレンズシートの黄色度は,レンチキュラーレンズシートが紫外線吸収作用を有するか否かによって影響を受けないものである。 さらに,前記試験で紫外線照射された検体につき,黄色度による評価に代えて,@目視による比較,A人間の視覚において色の差を認識できるかどうかに関する指標である「色差」による比較,Bマイクロソフト社策定のカラーモニター規格による比較をしても,同様の結論が導かれる。 (iii) 本件スクリーンのレンチキュラーレンズシートに紫外線吸収作用をもたせたのは,フレネルレンズシートの紫外線による劣化を防止することを目的としたものではなく,レンチキュラーレンズシート内に設けられたブラックストライプ(遮光層)の製造に用いられる紫外線反応性樹脂が紫外線により劣化するのを防止することを目的としたものである。 (iv) 以上によれば,本件スクリーンのフレネルレンズシートは,長時間使用すると紫外線により劣化する性質を有する紫外線硬化樹脂により構成されるものではないから,構成要件Bを充足せず,また,本件スクリーンのレンチキュラーレンズシートに紫外線吸収作用をもたせたのは,フレネルレンズシートの劣化を防止するためではなく,レンチキュラーレンズシート自体の劣化を防止するためのものであるから,構成要件Cを充足せず,したがって,構成要件AないしCの特徴を有する透過形スクリーンとはいえないから,構成要件Dも充足しないものである。 b) 本件発明の作用効果を奏しないことについて 前記a)のとおり,本件スクリーンにおいてレンチキュラーレンズシートに紫外線吸収作用をもたせたのは,レンチキュラーレンズシート自体の劣化を防止する目的によるものであり,同スクリーンにおけるフレネルレンズシートは,紫外線による劣化を生じさせない紫外線硬化樹脂を用いているため,レンチキュラーレンズシートに紫外線吸収作用をもたせなくても黄色劣化を生じない。したがって,本件スクリーンは,レンチキュラーレンズシートに紫外線吸収作用をもたせたことにより,フレネルレンズシートの劣化が防止されるとの本件発明の作用効果を奏しない。 原告は,本件スクリーンの一部について原告が実施した耐光性促進試験(甲8,35)の結果に基づき,本件スクリーンは本件発明の作用効果を奏すると主張する。しかし,原告の実施した前記試験は,その実施方法において著しく適切性を欠き,重大な誤りを有するものである。すなわち,原告が先に実施した試験(甲8)では,フレネルレンズシートの中心部から250o〜300o及び300o〜350oの部位を試料としているが,同部位は,中心部とは異なり,凹凸の起伏が大きく屈折性の高い部位であり,正しい黄色度が測定できない。そのため,前記試験の結果は,紫外線を照射する前のフレネルレンズシートの黄色度が異常に高い数値となっている上,紫外線を照射して200時間経過した時点の数値についても,各試料間に大きなばらつきが生じている。また,原告が追加的に実施した試験(甲35)は,周辺主要部を試料とする点で上記と同様の問題を有するだけでなく,非レンズ面から測定光を入射させているという点で,一層不適切な方法によっている。 原告は,フレネルレンズシートの比較的平滑な中心部は,面積が小さすぎるため,同部位の測定結果をもってフレネルレンズシート全体を代表させることは適当でないと主張する。しかし,前記中心部を試料とした黄色度の測定は十分に実施可能であり,また,中心部とその周辺の主要部とで黄色度がほとんど異ならないことは,目視による観察によっても明らかであるから,中心部を測定することによってフレネルレンズシート全体の黄変劣化の有無を知ることは可能である。 (3) 争点3(本件特許は無効とされるべきものか。)について ア 被告の主張 本件発明は,次に述べる各刊行物に記載された公知の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項により特許を受けることができず,特許無効審判により無効にされるべきものである。したがって,同法104条の3第1項により,原告の本件特許権の行使は許されない。 a) 本件発明と主引例との対比 特開昭61-164807号公報(乙25。以下「引用文献1」という。)の[従来の技術]の項及び第2図(別紙「引用文献1図面」参照)には,透過形ビデオプロジェクターのスクリーンとして,光拡散物質から成るレンチキュラーレンズを観察側に,フレネルレンズを光源側に配置する構成が記載されており,この構成は,本件発明の構成要件A1ないし3及びDと一致する。同文献の[従来の技術]の項には,フレネルレンズは紫外線硬化樹脂を使用して成形されることが記載されており,この構成は,本件発明の構成要件Bと一致する。また,同文献の[従来の技術]の項には,レンチキュラーレンズが光拡散性物質を混練して成形されることが記載されており,この構成は,本件発明の構成要件Cの光拡散性基板に対応するものの,同文献には,レンチキュラーレンズに紫外線吸収作用をもたせるという記載はない(以下,引用文献1の[従来の技術]の項及び第2図に記載された上記発明を「引用発明1」という。)。 したがって,引用文献1には,本件発明の構成要件A1ないし3,B及びDと同じ構成が記載されており,また,構成要件Cに対応するレンチキュラーレンズも記載されている。したがって,本件発明と引用発明1との相違点は,レンチキュラーレンズに紫外線吸収作用をもたせるか否かの点のみである。 なお,特開昭61-219610号公報(乙26)及び特開昭61-219611号公報(乙27)にも,引用文献1の上記記載と同様の記載があり,引用発明1と同様の発明が開示されている。 b) 他の引用例における記載 特開昭51-51346号公報(乙28。以下「引用文献2」という。)には,スクリーン等に用いる光拡散部材に紫外線吸収剤を添加すること(以下「引用発明2」という。)が記載されている。 特開昭51-89419号公報(乙29。以下「引用文献3」という。)には,後面投影型スクリーンに関して,拡散板に含有されるワックスあるいは結晶性ポリマーの経時性を改良する目的で紫外線吸収剤を添加すること(以下「引用発明3」という。)が記載されている。 特開昭58-33429号公報(乙30。以下「引用文献4」という。)には,レンチキュラーレンズを含むプラスチックレンズに関して,耐候性の改良を目的として,透明性基材の表面に紫外線吸収剤を添加すること(以下「引用発明4」という。)が記載されている。 c) 容易推考性 発明の進歩性の判断において問題とされるべきは,主引例を出発点として,これと本件発明との構成上の相違点を克服して同発明に至ることが当業者にとって容易であったかどうかということにある。そして,引用発明1に引用発明2等を適用して本件発明に至る動機ないし課題が,引用例の中に見いだせるか否かは問題となり得るものの,本件発明と異なった動機ないし課題から,本件発明と同一の構成に至る場合もあるから,引用発明1に引用発明2等を適用して本件発明に至る動機ないし課題が,本件発明のものと同一か否かは問題とはなり得ない(東京高裁平成15年2月27日判決及び特許庁審査基準第U部第2章16頁21〜23行参照)。本件発明と引用例との間に技術的課題の共通性がある場合は,引用例から本件発明に至る動機付けがあるということがいえるというだけのことであって,両者間に技術的課題の共通性がないというだけで直ちに引用例から本件発明に至る動機付けが否定されるものではない。例えば,主引例と関連する技術分野に置換あるいは付加可能な技術手段があるときは,当業者が,主引例にこの技術手段を適用し,本件発明に導かれることの有力な根拠となるのである(特許庁審査基準第U部第2章15頁)。 引用発明1と本件発明との相違点は,レンチキュラーレンズに紫外線吸収作用をもたせるか否かである。そして,引用文献2ないし4には,前記レンチキュラーレンズと置換し,あるいは,これに付加することが可能な技術手段が開示されているのであるから,引用発明1のフレネルレンズの紫外線による劣化を防ぐため,あるいは,レンチキュラーレンズ自体の紫外線による劣化を防ぐために,引用発明1に引用発明2ないし4を適用し,引用発明1のレンチキュラーレンズに紫外線吸収作用をもたせることは,次に述べるとおり,当業者にとって容易に想到できる事項である。 @ 引用発明2ないし4の属する技術分野についてみると,引用発明2は,引用発明1と同じビデオプロジェクターに関するものであり,引用発明3は,ビデオプロジェクターの上位概念に当たる画像ディスプレイの分野における後面投影型スクリーンに関するもので,引用発明1と深い関連性を有する技術分野に属するものであり,引用発明4は,引用発明1と同じフレネルレンズ,レンチキュラーレンズなどのプラスチックレンズの分野に関するものであるから,いずれも,引用発明1とは技術分野が同一であるか,あるいは,極めて関連性の深い技術分野に属するものである。 引用発明2は,光拡散部材に関するものであるが,光拡散部材としてレンチキュラーレンズは周知であって,当業者にとって,引用発明2の光拡散部材にレンチキュラーレンズが含まれることは自明である。また,引用文献3及び4には,紫外線吸収剤を含有するレンチキュラーレンズが明確に示されている。 A 紫外線硬化樹脂により成形されたフレネルレンズが紫外線により劣化しやすいという技術的課題は,特開昭53-45345号公報(以下「乙31公報」という。)及び特開昭58-89609号公報(以下「乙32公報」という。)にみられるとおり,本件出願時において当業者に自明であった。 引用発明1のレンチキュラーレンズに代えて,引用発明2ないし4のように紫外線吸収作用をもたせたレンチキュラーレンズを採用すれば,外光中の紫外線がフレネルレンズに到達する前に,観察側に配置されたレンチキュラーレンズによって吸収され,フレネルレンズの劣化を防止できることは,当業者において予測可能な効果である。 したがって,引用発明1のフレネルレンズの紫外線による劣化を防ぐため,同発明のレンチキュラーレンズを引用発明2ないし4のように紫外線吸収作用をもたせたレンチキュラーレンズに置換することは,当業者が容易に想到できることである。 B 仮に,本件発明と同一の技術的課題を動機として,引用発明1に基づき本件発明に至ることが容易とはいえないとしても,引用発明1のレンチキュラーレンズの紫外線による劣化を防止するという別の技術的課題を解決するために,引用発明1に引用発明2ないし4を適用し,引用発明1のレンチキュラーレンズに紫外線吸収作用をもたせることは,当業者が容易に想到できることである。 C 原告は,引用発明1から本件発明に想到することを阻害する事由があるとして,引用発明1のレンチキュラーレンズは紫外線透過性を有するものでなければならないから,同レンズに紫外線吸収作用をもたせることはできない,と主張する。 しかし,被告は,本訴訟において,引用文献1の[従来の技術]の項及び第2図に記載されている構成のスクリーンを引用発明1としているのであり,同発明を構成するフレネルレンズとレンチキュラーレンズは,引用文献1の第1図(別紙「引用文献1図面」参照。)に示されるレンチキュラーレンズが,同レンズを透過した紫外線でフレネルレンズの紫外線硬化性樹脂を硬化させるという製造上の制約を有するため紫外線透過性を有するものであるとしても,引用発明1のレンチキュラーレンズは,そのような製造上の制約がなく,それぞれ別体のものとして製造されるものであるから,引用発明1のレンチキュラーレンズに紫外線透過性をもたせる必要はなく,これに紫外線吸収作用をもたせることは,何ら妨げられないのである。 また,引用文献1の第1図で記載されたレンチキュラーレンズが「従来方法であらかじめ製作しておいた」(乙25・2頁右下欄4〜5行)ものであるとの記載があるからといって,引用文献1に従来技術として示されている第2図のレンチキュラーレンズの物性までがこれと同じであるとすることはできない。 このことは,引用発明1のレンチキュラーレンズとフレネルレンズが全く別の工程で製造されること(乙25・1頁右下欄10行〜2頁左上欄17行)から明らかであって,フレネルレンズが紫外線硬化性樹脂で成形されるものであるからといって,レンチキュラーレンズが紫外線透過性である必要は全くないのである。なお,本件出願時,別体のフレネルレンズとレンチキュラーレンズとを組み合わせた透過形スクリーンが周知であったこと(乙44,45),フレネルレンズ及びレンチキュラーレンズの製造方法としては,種々の方法が知られていたこと(乙46)に照らせば,別々に製造されたフレネルレンズとレンチキュラーレンズとを組み合わせて透過形スクリーンを成すことは,本件出願前に周知であったといえるのであり,引用発明1のスクリーンも,別体のフレネルレンズとレンチキュラーレンズとを組み合わせて成したものであることが明らかである。 また,引用発明1のレンチキュラーレンズの材料として引用文献1に記載されているアクリル樹脂が,透明性の高いものであるからといって,これに紫外線吸収剤を添加することが妨げられるものではなく,むしろ,アクリル樹脂板に紫外線吸収剤を添加することは,適宜行われていることである(乙42参照)。 したがって,引用発明1のレンチキュラーレンズに,引用発明2ないし4を適用して紫外線吸収作用をもたせることについて,何ら阻害要因はない。 D 原告は,引用発明2ないし4の光拡散部材等は単体で使用されるものであって,他のレンズと組み合わせることは想定されていないと主張する。しかし,引用文献2ないし4には,光拡散部材等が他のレンズ等と組み合わせて用いられることについて否定的な記載は一切ない。むしろ,引用文献3の第4図には,二つの機能を有するレンズが組み合わせて使用されることが示唆されているのである。 イ 原告の反論 本件発明は,当業者が引用発明1に引用発明2ないし4を適用することによって容易に発明をすることができたものではなく,特許法29条2項に該当するものではないから,特許無効審判により無効にされるべきものには当たらない。 すなわち,引用文献1には,本件発明の構成要件A1ないし3,B及びDに対応する構成が記載されているものの,引用発明1に引用発明2ないし4を適用して本件発明に至ることは,当業者にとって容易とはいえないのである。 a) 容易推考性の判断方法について 発明の進歩性を判断するに当たっては,本件発明が存在せず,その内容がわからないという前提の下に,主引例の構成を出発点として,本件発明の構成に導かれることが当業者にとって容易であるか,その構成及び効果に予測性があるかについて判断すべきである。被告が主張するように,主引例と本件発明との構成上の相違点を克服できるか否かという観点から検討することは,本件発明の構成が既に認識されていることを前提とするものであり,本件発明の評価を誤る危険性があるから,妥当ではない。 被告は,引用例と本件発明との技術的課題の共通性は,本件発明に至る動機付けがあるとすることができる一つのケースにすぎないと主張する。しかし,特許発明と同一の構成を有する先行技術が存在しない場合には,引用例における技術的課題や,引用例がどのような方向を目指した技術であるのかを考慮せざるを得ない。なぜなら,技術は,目的及び効果を包摂するものであり,技術的課題の把握がなければ,当該技術思想を的確に把握することはできず,その構成を意図的に採用することもできないからである。 したがって,進歩性の有無を判断するに当たっては,引用例が本件発明と共通する技術的課題を意識しているかどうか,引用例における技術思想の展開が本件発明と同一の方向性にあるかどうか,引用文献の中に本件発明と矛盾する記載がないかどうかについて,検討する必要がある。 b) 引用発明1に引用発明2ないし4を適用して本件発明の構成に至ることが当業者にとって容易とはいえない理由は,次のとおりである。 @ 本件発明の技術的課題は,光拡散性基板が観察側に,フレネルレンズ基板が光源側に配置されている透過形スクリーンにおいて,フレネルレンズ基板が紫外線硬化樹脂により成形され,その重合反応を開始させるための増感剤等が含有されているために,外光に含まれる紫外線によりフレネルレンズ基板が劣化してしまうという技術的課題に着目し,長時間使用してもフレネルレンズ基板が劣化しない透過形スクリーンを提供するものである。すなわち,本件発明は,外光に含まれる紫外線によってフレネルレンズ基板が劣化するのを防止するために,フレネルレンズ基板にではなく,同基板よりも観察側に配置される光拡散性基板に紫外線吸収作用をもたせたところに,その特徴がある(これに対し,内部の光源からの光に含まれている紫外線は,光源のレンズ系により吸収されるため,同紫外線がフレネルレンズ基板に与える影響は,問題とする必要がない。)。 本件発明のこのような特徴的構成は,フレネルレンズ基板と光拡散性基板とにより構成されている2枚型の透過形スクリーンであるからこそ成り立つものである。すなわち,1枚で構成されるスクリーンの経時性を改良するために,それ自体に紫外線吸収剤を添加するという考え方から脱皮して,2枚構成のスクリーンの構造的特徴を積極的に活用し,フレネルレンズ基板を紫外線から保護するために,観察側に配置された光拡散性基板に紫外線吸収作用をもたせるという思考へ飛躍したところに,本件発明の特徴的な技術思想が存在するのである。 A 引用文献1には,上記のような技術的課題は記載も示唆もされていないばかりか,本件発明とは両立し得ない内容が記載されている。 (i) 引用文献1には,外光に含まれる紫外線によるフレネルレンズ基板の劣化を防止するという技術的課題が記載されていないばかりか,フレネルレンズにおける一般的な紫外線対策という技術的課題すら示唆されていない。 (ii) 引用文献1の第1図のスクリーンの製造方法は,レンチキュラーレンズのレンズ面を,フレネルレンズ用金型のレンズ面に対向させ,その間に紫外線硬化樹脂を注入し,前記レンチキュラーレンズを通して紫外線を照射して,紫外線硬化樹脂を硬化させ,脱型するものである。紫外線をレンチキュラーレンズを通して照射する以上,レンチキュラーレンズは紫外線透過性を有するものでなければならないから,前記第1図のスクリーンにおいては,レンチキュラーレンズに紫外線吸収作用をもたせることはできない。被告の主張する引用発明1は,引用文献1の[従来の技術]の項及び第2図に示されたスクリーンであるが,同文献の第1図に示されたレンチキュラーレンズは,「従来方法であらかじめ製作しておいた」(乙25・2頁右下欄4〜5行)ものであり,引用発明1のレンチキュラーレンズと前記第1図のレンチキュラーレンズは同じものであるから,第1図のレンチキュラーレンズに紫外線吸収作用をもたせることができない以上,引用発明1のレンチキュラーレンズにも紫外線吸収作用をもたせることはできない。 また,引用文献1では,引用発明1のレンチキュラーレンズの製造方法について,「アクリル樹脂のような透明性と熱可塑性のある樹脂にシリカ,アルミナ,粘度,ガラス粉等の光拡散性物質5を混練し,・・・成形される」(乙25・1頁右欄2段)と記載されており,このようにして製造された引用発明1のレンチキュラーレンズは,紫外線透過性を有するものである。 したがって,引用発明1は,レンチキュラーレンズに紫外線吸収作用をもたせるという本件発明の構成に至るのを阻害する構成を備えているものである。 (iii) そもそも,引用文献1は,従来技術における画質の低下等の問題を解決するため,2枚構成のスクリーンを否定し,1枚構成のスクリーンを提唱したものである。しかるに,被告は,この否定された従来技術である2枚構成のスクリーンを引用発明1とし,これに別の引用例(引用発明2ないし4)を適用して容易想到性ありとしているものであり,このような容易想到性の判断方法は誤りである。 B 被告は,引用発明1のレンチキュラーレンズに代えて,引用発明2ないし4のような紫外線吸収作用を有するレンチキュラーレンズを採用することは,当業者にとって容易に想到し得る事項であると主張する。しかし,引用発明2ないし4のいずれによっても,引用発明1と組み合わせて本件発明の構成に至ることは,当業者にとって容易ではない。 (i) 引用発明2の構成は,スクリーン等に用いられる光拡散部材に関して,内部の光源からの紫外線等の影響による光拡散部材の劣化を防止するためのものであり,外光に含まれる紫外線による劣化を防止するという技術的課題は,引用文献2には示唆されていない。 また,引用発明2は,劣化防止の対象とされている光拡散部材それ自体に紫外線吸収剤を添加するものであり,本件発明のように,フレネルレンズ基板の劣化を防止するために,別体である光拡散性基板に紫外線吸収作用をもたせるという技術思想は,引用文献2には開示されていない。 そもそも,引用発明2の光拡散部材は,単体でスクリーンとして使用されるものであり,引用文献2には他のレンズと組み合わせて用いることの示唆はないから,引用発明1のような2枚構成のスクリーンの一部であるレンチキュラーレンズと置き換える動機付けは存在しない。 したがって,引用発明1と引用発明2とを組み合わせて本件発明の構成に至ることは,当業者にとって容易ではない。 (ii) 引用発明3に係る後面投影型スクリーンは,マイクロフィルムリーダのような小型機器のスクリーンとして用いられるものであって,本件発明に係る大型プロジェクションテレビ用の透過形スクリーンとは,利用分野が異なっている。 また,引用発明3のスクリーンは,他のレンズ等と組み合わせて使用することが全く想定されておらず,同発明は,スクリーンに含有されたワックスあるいは結晶性ポリマーの経時性を改良する目的で,スクリーン自体に紫外線吸収剤を添加するものであるから,本件発明のように,別体のレンズ等の劣化を防止するために紫外線吸収作用をもたせたものではない。すなわち,引用発明3は,ワックス系スクリーン(シート状ワックスを光拡散層として用いたスクリーン)あるいは結晶性ポリマー系スクリーン(シート状結晶性高分子材料を光拡散層として用いたスクリーン)のすぐれた光学的特性が損なわれることなく,光再分布特性を制御することのできるスクリーンを提供するため,上記スクリーンとマイクロ光学素子系スクリーンとを直接組み合わせて単一の構造としたものであり,二つ以上の構造を塗布なり接着なりで一体化することを避けたものである。 したがって,引用発明1と引用発明3とを組み合わせて本件発明の構成に至ることは,当業者にとって容易ではない。 (iii) 引用文献4は,透明性基材表面に,反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマーを含む組成物を用いて反応性塗膜層を形成するというプラスチックレンズの製造方法に関して,前記組成物に紫外線吸収剤を混合することを開示するにとどまる。 また,引用発明4のプラスチックレンズも,単体で用いられるものであって,他のレンズ等と組み合わせて使用することは想定されておらず,別体のレンズ等の劣化を防止するために紫外線吸収作用をもたせたものではないことは,引用発明2及び3の場合と同様である。 したがって,引用発明1と引用発明4とを組み合わせて本件発明の構成に至ることは,当業者にとって容易ではない。 C 被告は,引用発明1と引用発明2ないし4とを組み合わせて本件発明の構成に至ることが当業者にとって容易であったことの根拠として,紫外線硬化樹脂により成形されたフレネルレンズを紫外線から保護し劣化を防止しなければならないという技術的課題が当業者にとって自明であったと主張し,乙31及び乙32公報を提出する。 しかし,乙31及び乙32公報は,光硬化触媒により硬化した樹脂組成物は耐光性が劣り,長時間光に曝露されると劣化するという,一般的な耐光性を問題としているのに対して,本件発明の技術的課題は,フレネルレンズ基板と光拡散性基板とにより構成された透過形スクリーンにおいて,紫外線硬化樹脂により成形されたフレネルレンズ基板が,外光に含まれる紫外線により劣化するという,透過形スクリーンに特有の問題であって,かかる問題が乙31及び乙32公報に示唆されているとはいえない。 しかも,乙31及び乙32公報においては,光硬化性樹脂組成物の劣化を防止するための手段として,同組成物に紫外線吸収剤を添加すると,その紫外線硬化速度が著しく抑制されてしまうため,紫外線吸収剤を添加せずに,黄変防止効果を有する別の化合物を含有させ(乙31公報),あるいは,重合開始剤を含まない構成とする(乙32公報)ことにより問題を解決しているのであるから,引用発明1に引用発明2ないし4を組み合わせる動機付けにはならない。 D 被告は,引用発明1のレンチキュラーレンズの紫外線による劣化を防止するという,本件発明の技術的課題とは別の課題を解決するために,引用発明1に引用発明2ないし4を適用して本件発明の構成に至ることが容易であるとも主張する。 しかし,技術は目的及び効果を包摂するものであり,技術的課題の把握がなければ,当該技術思想を的確に把握することはできず,その構成を意図的に採用することもできないから,レンチキュラーレンズの劣化防止という,本件発明の技術的課題とは別の課題を解決するために,本件発明の構成とたまたま一致する結果となるにすぎない場合には,本件発明の技術思想に想到したとはいえず,フレネルレンズ基板の劣化防止という本件発明の作用効果は,予期されざるものとなってしまうから,かかる場合には容易想到性を肯定すべきではない。 仮に,本件発明の技術的課題とは別の課題に基づく容易想到性を肯定する余地が一般論としてはあるとしても,引用文献1には,引用発明1のレンチキュラーレンズの劣化を防止するという技術的課題は全く示唆されていない。また,2枚構成のスクリーンである引用発明1に対して,単体として用いられる引用発明2ないし4を適用することは困難であるから,結局,引用発明1に引用発明2ないし4を適用して本件発明の構成に至ることは,当業者にとって容易であるとはいえない。 (4) 争点4(原告の損害額はいくらか。)について ア 原告の主張 被告による本件スクリーンの製造販売数は,平成14年において10万枚,平成15年において30万枚,平成16年において50万枚であり,その販売価格は,平均すると1枚当たり1万1125円である。また,本件発明の実施に対し受けるべき実施料は,売上高に対して10%の割合によるべきである。 したがって,平成14年から平成16年4月までの被告の製造販売行為により,原告が被った損害額は,次の算式のとおり,6億3041万6666円である。 (10万+30万+50万×4/12)×1万1125円×0.1 =6億3041万6666円 イ 被告の反論 原告の主張はいずれも争う。 |
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当裁判所の判断
本件においては,事案の内容にかんがみ,まず,争点3(本件特許は無効とされるべきものか。)について判断する。 1 本件発明と引用発明1との一致点及び相違点 (1) 引用文献1には,発明の詳細な説明の[従来の技術]の項に次の記載があり,また,第2図について「従来のビデオプロジエクター用スクリーンを示す分解断面図」との説明が付されている(乙25)。 ア「〔従来の技術〕 一般的な透過形ビデオプロジェクターのスクリーンは第2図に示されるように構成され,図において,1は光源,2は光源1よりの光線を平行にするためのフレネルレンズ,3はそのレンズ面,4は視角を広くするためのレンチキュラーレンズ,5はレンチキュラーレンズ4を構成する光拡散性物質を示している。」(1頁左欄18行〜右欄5行) イ「このようなスクリーン10の製造方法について説明すると,レンチキュラーレンズ4は,先ず,アクリル樹脂のような透明性と熱可塑性のある樹脂にシリカ,アルミナ,粘度,ガラス粉等の光拡散性物質5を混練し,金型を使用した加熱プレス法,ベルトプレス成形法等によつて成形される。」(1頁右欄10行〜15行) ウ「次に,フレネルレンズ2の製造方法であるが,最も一般的な方法としては,熱可塑性のアクリル樹脂等を加熱プレスして製造する方法である。この方法はフレネルレンズ用金型を加熱した後,・・・透明なアクリル板を金型に挿入して加圧成形を行ない,定時間経過後金型温度が約70℃前後まで冷却した時点で脱型するものであった。しかし,この冷却については・・・徐冷が必要で・・・金型の専有時間が長く,生産性が悪いという欠点があつた。更に,加熱プレスによる・・・冷却時の樹脂の収縮に起因する脱型不良・・・が生ずるという問題が多発していた。そこで,加熱収縮あるいは徐冷等の問題点を解決する方法として紫外線硬化性樹脂を使用して成型する方法が提案されている。」(1頁右欄末行〜2頁左上欄17行) エ「このようなことから,第2図に示されるスクリーン10において,従来,個々のレンズの角度がすべて異なつて同心円上にあるフレネルレンズ2は効率のよい紫外線硬化方式で,またレンチキュラーレンズ4は比較的レンズ形状が簡単(かまぼこ状の凸レンズで全て同一のパターン)であるためベルトプレス成形法によつて製造され,これらフレネルレンズ2とレンチキュラーレンズ4は第2図の状態で密着させてビデオプロジェクターに組み込まれた。」(2頁右上欄7行〜16行) (2) 上記認定をふまえ,本件発明と引用発明1との一致点,相違点を認定すれば,次のとおりである。 引用文献1の[従来の技術]の項及び第2図には,紫外線硬化樹脂により成形されたフレネルレンズと,アクリル樹脂にシリカ,アルミナ等の光拡散物質を添加した樹脂をプレス成形して得られた光拡散基板としてのレンチキュラーレンズとを,レンチキュラーレンズが観察側に,フレネルレンズが光源側になるように組み合わせて成る透過形スクリーンが記載されている。引用発明1のこの構成は,本件発明の構成要件A1「観察側に配置される光拡散作用をもつ光拡散性基板」,A2「前記光拡散性基板より光源側に配置されフレネルレンズ形状をもつフレネルレンズ基板」,A3「透過形スクリーン」とB「前記フレネルレンズ基板が紫外線硬化樹脂により成形されており」及びD「透過形スクリーン」と一致する。 本件発明と引用発明1との相違点は,本件発明においては光拡散性基板に紫外線吸収作用をもたせている(構成要件C)のに対し,引用発明1のレンチキュラーレンズは紫外線吸収作用を有していない点にある。 2 相違点についての判断 本件発明と引用発明1との上記相違点を踏まえて,当業者が,本件出願時において,引用発明1を出発点として,本件発明の構成に想到することが容易であるか否かについて判断する。 (1) 引用文献2には,次の記載がある(乙28)。 ア「2.特許請求の範囲 屈折率の異なる少なくとも二種の高分子から成る光拡散部材に添加剤として,帯電防止剤,紫外線吸収剤,酸化防止剤の少なくとも一種を含む事を特徴とする光拡散部材」 イ「3.発明の詳細な説明 本発明はスクリーン,照明機器,装飾器具等に用いる光拡散部材の改良に関するものである。 従来,光拡散部材としては光拡散性のある顔料やガラスビーズ,マイクロカプセル,炭酸カルシウム,二酸化硅素等をビヒクル中に分散させて透明又は半透明のプラスチックシート等の基板に塗布等の手段で光拡散層を形成したもの,或いは前記ビヒクル中に分散させたものを透明又は半透明の樹脂と混合均一化した後,固化してシート又は板状としたもの,更に別には結晶性高分子材料中に生成する結晶粒子の光拡散性を利用したもの等が知られている。 而乍ら,前述の光拡散部材を,例えばスクリーン等に用いた場合,・・・長時間の使用によつて紫外線や熱線等による劣化が生じて甚だ不便な場合が少なくない。・・・ ・・・紫外線や熱線等に関しては,光拡散部材の光を拡散するという機能を十二分に発揮させる為に通常光源との併用が避けられないが,該光源は,蛍光燈,ハロゲンランプが一般的に常用されているので紫外線や熱線の影響を受け,即ちこれ等紫外線,熱線は空気中の酸素と結びついて光拡散部材の表面を劣化し,クラックの発生或いは着色されて外観を損ねたり,機械的性質及び電気的性質を低下させるので極めて不都合である。 本発明は斯様な点に鑑み,通常の使用に於いて本来の優れた光拡散性を失うことなく・・・紫外線や熱線に対して耐性を示し,従って表面にクラックが発生せず,着色もされない優れた光拡散部材を提供する事を目的とするものである。」(1頁左欄9行〜2頁右上欄5行) ウ「実施例1 ・・・以上のように酸化防止剤,紫外線吸収剤を入れたものは劣化による透過率の低下が無添加のものに較べて少なく,その効果が認められた。」(3頁左下欄14行〜4頁左上欄12行) (2) 上記認定のとおり,引用文献2には,光拡散性のある顔料やガラスビーズ,マイクロカプセル,炭酸カルシウム,二酸化硅素等をビヒクル中に分散させて得た光拡散部材に,紫外線による劣化を防ぐために,紫外線吸収剤を添加することが記載されている。すなわち,引用文献2には,光拡散部材を長時間使用することにより,光源からの紫外線によって劣化が生じるという技術的課題があったこと,及び,この技術的課題を解決するため,光拡散部材に紫外線吸収剤を添加することにより,光拡散部材は,無添加のものに比べて,劣化による透過率の低下が少ないことが記載されているのであり,光拡散部材の紫外線による劣化を防止するために,光拡散部材に紫外線吸収作用をもたせること(引用発明2)は,本件出願時において公知であったと認められる。 したがって,当業者が,本件出願時において,引用発明を見れば,引用発明1のレンチキュラーレンズの紫外線による劣化を防止するとの技術的課題を当然に認識し,これを解決するために,引用発明1に引用発明2を適用して,レンチキュラーレンズに紫外線吸収剤を添加し,紫外線吸収作用をもたせ,本件発明と同一の構成に想到することは,容易なことであるということができる。 レンチキュラーレンズの紫外線による劣化を防止するという上記の技術的課題は,フレネルレンズの紫外線による劣化を防止するとの本件発明の技術的課題とは異なる課題である。しかし,本件発明の技術的課題とは別の課題を解決するために,引用例から本件発明と同一の構成に想到する場合であっても,引用例の中に,本件発明と同一の構成に至る動機付けとなり得る技術的課題が見いだされ,同課題の解決のために引用例から本件発明と同一の構成に想到することが容易であると認められる場合には,容易想到性は肯定されるべきである。 引用発明1のスクリーンにおいて,観察側に配置されたレンチキュラーレンズに紫外線吸収作用をもたせることは,フレネルレンズの紫外線による劣化を防止するとともに,レンチキュラーレンズそれ自体の紫外線による劣化の防止という効果を自ずと生じさせるのであり,引用発明1について,フレネルレンズの劣化防止と,レンチキュラーレンズの劣化防止とのいずれを主観的に意図するかにかかわらず,そのレンチキュラーレンズに紫外線吸収作用をもたせれば,客観的にはレンチキュラーレンズとフレネルレンズのいずれにも劣化防止の効果が生じるのである。したがって,フレネルレンズの劣化防止と,レンチキュラーレンズの劣化防止のいずれを主観的に意図して,レンチキュラーレンズに紫外線吸収作用をもたせたかということは,かかる課題を意図する者の主観的な認識にすぎないのであって,その主観的な認識・動機は,発明の構成と不可分に結びついている発明の客観的な課題ないし作用効果の一部のみを認識し,意図したにすぎないものであるから,引用例と本件発明とでその主観的な意図が異なるからといって,本件発明の進歩性を肯定することはできないのである。 (3) これに対して,原告は,本件発明の技術的課題は,外光に含まれる紫外線によりフレネルレンズ基板が劣化するのを防止することにあり,同課題は引用文献1及び2には示唆されていないとした上で,技術は目的及び効果を包摂するものであり,技術的課題の把握がなければ,当該技術思想を的確に把握することはできず,その構成を意図的に採用することもできないから,レンチキュラーレンズの劣化防止という本件発明の技術的課題とは別の課題を解決するために,本件発明の構成とたまたま一致する結果となるにすぎない場合には,本件発明の技術思想に想到したとはいえず,フレネルレンズ基板の劣化防止という本件発明の作用効果は,予期されざるものとなってしまうから,かかる場合には容易想到性を肯定すべきではない,と主張する。 しかし,原告のこの主張は,出願人の主観的な認識としての,発明の目的,効果と,客観的な発明の目的,効果とを混同する議論であり,採用することができない。当業者が異なる技術的課題により,引用例から本件発明と同じ構成を容易に想到し得る場合においては,出願人が認識した技術的課題が当業者が容易に認識する技術的課題と異なるとしても,そのことにより,進歩性を肯定する理由がないことは明らかである。なお,出願人が認識した技術的課題が異なることにより,出願人が当該発明の作用効果として,当業者が予想し得ない顕著な作用効果を奏することを発見したなどの例外的な場合は,そのような顕著な作用効果を奏することを発見したことを理由として進歩性を認めることがあり得るとしても,この場合でも,出願人が主観的に認識していた技術的課題を当業者が引用例から容易に認識することができなかったかどうかは,進歩性の判断において考慮すべき要素とはなり得ないのである。引用文献1及び2に,本件発明の技術的課題が記載されていなくとも,引用文献2に示されている技術的課題により,引用発明1に引用発明2を適用して本件発明と同一の構成に想到することが,本件出願時の当業者にとって容易であれば,本件発明の進歩性を否定すべきであることは上記のとおりである。 そして,紫外線硬化樹脂の主成分である光重合性プレポリマーの代表例であるポリウレタンアクリレートは,紫外線に対して鋭敏で光劣化を受けやすい性質を有することから,紫外線硬化樹脂による組成物は耐光性に劣り,長時間光にさらされると黄変を呈したりひび割れたりするなどの劣化を生じることは,本件出願時,当業者にとって周知であったと認められる(甲22,乙16,17,31,32)。したがって,引用発明1のスクリーンにおいて,観察側に配置されたレンチキュラーレンズに紫外線吸収作用をもたせた結果,紫外線硬化樹脂により成形されたフレネルレンズの紫外線による劣化が生じることを防止するとの効果が生じることは,当業者が予測し得ない効果であるということはできず,これを予想外の顕著な効果であるとみることはできない。 原告は,本件出願時に当業者に周知であった技術的課題は,光硬化触媒により硬化した樹脂組成物は耐光性が劣り,長時間光に暴露されると劣化するという,一般的な耐光性にすぎず,フレネルレンズと光拡散性基板とにより構成された透過型スクリーンにおいて,外光に含まれる紫外線によるフレネルレンズの劣化を防止するという,本件発明の技術的課題は,自明であったとはいえないとも主張する。 しかし,引用発明1のスクリーンにおいて,外光に含まれる紫外線によりフレネルレンズが劣化することが,技術的課題として明らかであるかどうかは,これと異なる技術的課題により本件発明の構成に至ることが容易であることは前記のとおりでるから,本件発明の進歩性の判断において論ずる必要のないことである。 (4) 原告は,引用発明1の第1図に示されたレンチキュラーレンズは,同レンズを通して紫外線を照射して,フレネルレンズの紫外線硬化樹脂を硬化させるものであるから,紫外線透過性を有するものでなければならず,レンチキュラーレンズに紫外線吸収作用をもたせるという本件発明の構成に至ることを阻害する事由がある旨主張する。 しかし,前記認定のとおり,引用発明1は,引用文献1の[従来の技術]の項及び第2図に示されたスクリーンである。同スクリーンは,フレネルレンズとレンチキュラーレンズとが別体構造となっており,レンチキュラーレンズはプレス成形法によって,フレネルレンズは紫外線硬化方式によって,それぞれ製造されたものが組み合わされているのであるから,レンチキュラーレンズに紫外線吸収作用をもたせても,フレネルレンズの紫外線硬化速度を抑制するなどの支障が生じることはなく,レンチキュラーレンズに紫外線吸収作用をもたせるという本件発明の構成に至ることを阻害する事由はない。 原告は,引用発明1は,引用文献1の[従来の技術]の項及び第2図に示されたスクリーンであるが,同文献の第1図に示されたレンチキュラーレンズは,「従来方法であらかじめ製作しておいた」(乙25・2頁右下欄4〜5行)ものであり,引用発明1のレンチキュラーレンズと前記第1図のレンチキュラーレンズは同じものであるから,第1図のレンチキュラーレンズに紫外線吸収作用をもたせることができない以上,引用発明1のレンチキュラーレンズにも紫外線吸収作用をもたせることはできない,と主張する。 しかし,引用文献1において,前記第1図のレンチキュラーレンズが「従来方法であらかじめ製作しておいた」(乙25・2頁右下欄4〜5行)とされているのは,従来方式で製造されたレンチキュラーレンズの一つを用いてなされた発明が前記第1図のスクリーンであることを示すものにすぎず,この記載から,引用文献1の[従来の技術]の項に記載された引用発明1のレンチキュラーレンズの構造や物性が規定されることにはならない。すなわち,引用発明1のレンチキュラーレンズとフレネルレンズが,全く別の方法で製造されるものであることは,引用文献1に明記されており(乙25・1頁右下欄10行〜2頁左上欄17行),また,本件出願時に,レンチキュラーレンズ及びフレネルレンズの製造法として種々の方法が知られていたこと(乙46),及び,別体のフレネルレンズとレンチキュラーレンズとを組み合わせた透過形スクリーンが周知であったこと(乙44,45)からすれば,引用文献1の[従来の技術]の項に記載された引用発明1のレンチキュラーレンズは,紫外線透過性を有するものに限られるものである必要はないのである。 また,原告は,引用発明1のレンチキュラーレンズの製造方法は,「アクリル樹脂のような透明性と熱可塑性のある樹脂にシリカ,アルミナ,粘度,ガラス粉等の光拡散性物質5を混練し・・・成形される。」(乙25・1頁右欄12〜15行)ものであるから,引用発明1のレンチキュラーレンズは,紫外線透過性を有する,と主張する。しかし,特開昭55-113561号公報には,アクリル系合成樹脂により成形されたレンチキュラーレンズについて,紫外線吸収剤を添加することが記載されているのである(乙42・特許請求の範囲1),7)項及び3頁左上欄15行)から,引用発明1のレンチキュラーレンズがアクリル樹脂により成形されることは,同レンズに紫外線吸収作用をもたせることの妨げとはならないことは明らかである。 なお,原告は,引用文献1は,従来技術における画質の低下等の問題を解決するため,2枚構成のスクリーンを否定し,1枚構成のスクリーンを提唱したものであるのに,被告は,この否定された従来技術である2枚構成のスクリーンを引用発明1とし,これに別の引用例(引用発明2ないし4)を適用して容易想到性ありとしているものであり,このような容易想到性の判断方法は誤りである,と主張する。しかし,引用文献1に記載された発明の中に,従来技術として記載された発明は,公知の発明の一つであるから,これを主引例とした上で,他の引用例に記載された周知の技術的課題から他の引用例に記載された発明を適用し,本件発明の容易想到性を判断するとの判断方法に何ら誤りはない。 (5) 原告は,引用発明2の光拡散部材は,単体でスクリーンとして使用されるものであり,引用文献2には他のレンズと組み合わせて用いることの示唆はないから,引用発明1のような2枚構成のスクリーンの一部であるレンチキュラーレンズと置き換える動機付けは存在しないと主張する。 しかし,前記認定のとおり,引用発明2の光拡散部材は,「スクリーン,照明機器,装飾器具等に用いる」ものであり,これをスクリーンとして用いる場合に,光拡散部材を単体で用いるのか,他の部材と組み合わせて用いるのかということについては,引用文献2には何ら記載されておらず,少なくとも引用文献2には,引用発明2の光拡散部材を他の部材と組み合わせて用いることについて否定的な記載は見当たらない。そして,引用発明1に開示されている光拡散部材であるレンチキュラーレンズをフレネルレンズと組み合わせた構成は,前記のとおり周知のものであるから,引用発明1のレンチキュラーレンズに引用発明2を適用して紫外線吸収剤を添加することは,当業者が容易に想到できることである。 3 以上の認定判断は,本件特許の特許請求の範囲の請求項1について本件訂正を認める審決が確定した場合にも,何らの実質的な変更を生じるものではない。なぜなら,前記前提となる事実のとおり,本件訂正は,「光拡散性基板」を「レンチキュラーレンズ基板」に,「透過形スクリーン」を「プロジェクションTV用透過形スクリーン」にそれぞれ減縮するとともに,レンチキュラーレンズ基板につき「フレネルレンズ基板より」観察側に配置されるとの限定を付したものにすぎず,これについての進歩性の有無の判断は,本件訂正前の特許請求の範囲を前提とした前記認定判断と異なるものではないからである。 なお,原告は,口頭弁論終結後の平成17年8月5日に本件特許について訂正審判請求を行ったことを理由として,弁論再開の申立てをしている。当裁判所は,この申立てについても慎重に検討したが,同訂正審判請求については,訂正要件が認められないか,あるいは,訂正後の本件発明の進歩性が認められないと判断される蓋然性が高いものと考えられるため,口頭弁論を再開する必要はないものと認める。 4 結論 以上のとおり,本件特許は無効とされるべきものであるから,原告の本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 |
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追加 | |
(別紙)リアプロジェクションテレビ目録ウェブページ目録(1)http:/-202.32.189.49/products+service/fcscreen/index.html(http:/-www.toppan.co.jp/products+service/fcscreen/index.html)(2)http:/-202.32.189.49/english/tech_info/40/article4.html(http:/-www.toppan.co.jp/english/tech_info/40/article4.html)(3)http:/-202.32.189.49/aboutus/release/article486.html(http:/-www.toppan.co.jp/aboutus/release/article486.html)(4)http:/-202.32.189.49/aboutus/release/article639.html(http:/-www.toppan.co.jp/aboutus/release/article639.html)(5)http:/-202.32.189.49/aboutus/release/article0047.html(http:/-www.toppan.co.jp/aboutus/release/article0047.html)(6)http:/-202.32.189.49/aboutus/tech_info/bulletin/40/article4.html(http:/-www.toppan.co.jp/aboutus/tech_info/bulletin/40/article4.html)(7)http:/-202.32.189.49/products+service/index_b.html(http:/-www.toppan.co.jp/products+service/index_b.html)ただし,資料1にマーキングされた部分。 (8)http:/-202.32.189.49/aboutus/release/article0013.html(http:/-www.toppan.co.jp/aboutus/release/article0013.html)(9)http:/-202.32.189.49/aboutus/release/article316.html(http:/-www.toppan.co.jp/aboutus/release/article316.html)(10)http:/-202.32.189.49/aboutus/overview/accounts/setsumei4/english/setsu6.html(http:/-www.toppan.co.jp/aboutus/overview/accounts/setsumei4/english/setsu6.html)ただし,資料2にマーキングされた部分。 (11)http:/-202.32.189.49/aboutus/overview/accounts/setsumei4/setsu6.html(http:/-www.toppan.co.jp/aboutus/overview/accounts/setsumei4/setsu6.html)ただし,資料3にマーキングされた部分。 (12)http:/-202.32.189.49/aboutus/overview/fields/optro_b.html(http:/-www.toppan.co.jp/aboutus/overview/fields/optro_b.html)ただし,資料4にマーキングされた部分。 資料1資料2資料3資料4部品番号目録(別紙)物件目録第1図面の説明第1図は,本件スクリーンをリアプロジェクションテレビに取り付けた状態を示す。 第2a図及び第2b図は,本件スクリーンを構成するレンチキュラーレンズシート及びフレネルレンズシートの中央横断面をそれぞれ拡大して模式的に示すものである。 第2符号の説明1:本件スクリーン2:TVセットボックス4:ミラー11:レンチキュラーレンズシート11a:樹脂板11b:レンチキュラーレンズ部11c:ブラックストライプ12:フレネルレンズシート12a:樹脂板12b:フレネルレンズ部31:投射レンズ32:光源部第3本件スクリーンの構成A’本件スクリーン1は,レンチキュラーレンズシート11とフレネルレンズシート12とから構成され,リアプロジェクションテレビのスクリーンとして用いられるものである。 すなわち,第1図に示すように,本件スクリーン1は,リアプロジェクションテレビのTVセットボックス2の前面開口に取り付けられるものであり,本件スクリーン1を取り付けた状態において,リアプロジェクションテレビは,TVセットボックス2内に収納された光源部32からの映像光を投射レンズ31によりミラー4を経て本件スクリーン1に投影するものである。リアプロジェクションテレビの観察者は,本件スクリーン1を透過した映像光を見る。TVセットボックス2に取り付けられたときに,レンチキュラーレンズシート11とフレネルレンズシート12は,各レンズ部(11bと12b)が互いに向き合うように,レンチキュラーレンズシート11を外側に,フレネルレンズシート12を内側にして配置される。 第2a図と第2b図は,それぞれレンチキュラーレンズシート11とフレネルレンズシート12を示すものである。 レンチキュラーレンズシート11は,ブラックストライプ11cを有し,かつ微粒子が混入された樹脂板11aと,鉛直方向にのびる多数の細かい略半楕円柱状レンズが並列に設けられたレンチキュラーレンズ部11bとから構成される。 フレネルレンズシート12は,樹脂板12aに,フレネルレンズ部12bがフレネルレンズ形状に成形されたものである。 B’フレネルレンズシート12のフレネルレンズ部12bは,ウレタンアクリレート系の樹脂により成形されており,かつダロキュア1173が含まれている。 C’レンチキュラーレンズシート11の樹脂板11aには,Tinuvin234が含まれており,かつレンチキュラーレンズシート11の光透過率は380nmの波長では3%以下であり,それより短波長側の波長ではさらに減少する。 D’以上の特徴を有する透過形スクリーンである。 第1図(別紙)物件目録についての被告の主張第1本件スクリーンの構成本件スクリーンは,以下のとおりの構成を有する透過形スクリーンである。 記Aa’1観察側に配置される光拡散作用をもつレンチキュラーレンズシート2と,a’2前記レンチキュラーレンズシート2より光源側に配置されフレネルレンズ形状をもつフレネルレンズシート9とa’3からなる透過形スクリーン1において,B’前記フレネルレンズシート9は,b’1基板11と該基板11の観察側に設けられたフレネルレンズ部10とからなり,b’2前記基板11は光拡散剤を含むMMA(メチルメタクリレート)とスチレンの共重合体により構成され,b’3前記フレネルレンズ部10は,原料となるジイソシアネートとしてHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)を用いたウレタンアクリレートオリゴマーと,光重合性モノマーである1,6-ヘキサンジオールジアクリレートと,光開始剤であるダロキュア1173と,光安定剤であるヒンダードアミン類とを含有し,増感剤は含有しない樹脂組成物を紫外線で硬化させた紫外線硬化樹脂で構成され,かつ,当該紫外線硬化樹脂は,キセノン・ウェザーメータによる耐光性促進試験(JISK-7350-2)において,後記紫外線吸収剤を含まないレンチキュラーレンズシート2と組み合わせた状態でキセノンランプで200時間暴露してもフレネルレンズシート9の黄色度が5.0を超えないものであり,C’前記レンチキュラーレンズシート2は,c’1観察側が,後記紫外線反応性樹脂6が紫外線により黄色することを防止するためのベンゾトリアゾールにより組成される紫外線吸収剤と,光拡散剤とを含む,MMA(メチルメタクリレート)とスチレンの共重合体により構成された基板3であり,その内側に,c’2粘着剤4を設け,さらにその内側に,c’3一定の間隔をおいた複数の遮光縞からなるブラックストライプ5を配置し,さらにその内側に,c’4紫外線により黄色化する紫外線反応性樹脂6,次いで,c’5PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム7を設け,そして最も内側に,c’6紫外線硬化性樹脂により成形されたレンチキュラーレンズ部8を設けたことD’を特徴とする透過形スクリーン1。 第2図面の説明図面1は,本件スクリーンをリアプロジェクションテレビに取り付けた状態を示す。 図面2は,本件スクリーンを構成するレンチキュラーレンズシートとフレネルレンズシートの中央横断面をそれぞれ拡大して模式的に示したものである。 図面1図面2引用文献1図面 |
裁判長裁判官 | 設樂隆一 |
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裁判官 | 杉浦正典 |
裁判官 | 荒井章光 |